保健指導において、高い保健指導効果が得られるように、指導対象者の選定を支援する方法を提供するシステムに関する。
保険者は、被保険者の健康増進や、医療費の適正化による運営の安定を目的として、被保険者に対する健診や保健指導を実施している。特に保健指導は、健診の結果から被保険者個人に生活や健康状態の改善意識付けを行う重要な場となっている。
保健指導を始めとする保健事業は、従来、一定の基準を決めてその基準を満たす人、例えば、健診の結果として生活改善が必要と判断された人に対して実施されている。しかし、実際に指導を行う保健師が指導する人数にも制限があることから、指導が必要な人全員に指導が行われているわけではなく、保険者の保健事業を効果的且つ効率的に運営する上で保健事業の運営を支援するシステムが望まれている。
保険者の運営を支援する方法として、次のようないくつかの方法が示されている。
医療費の予測システム(特許文献1)では、その団体に属する人の年齢や生活習慣などの特性と、年齢と発症率の相関を示すデータと、医療費のデータベースから、その団体の要する将来の医療費を予測する方法が示されている。また、健康指標に基づく保健事業(保健指導)の計画方法(特許文献2)では、健康度や医療費への影響から、指導など介入の対象を決定し、介入の効果を評価する方法が示されている。
特開2005-50380
特開2004-341611
保健指導の効果は、受ける人の特性(健康状態、背景要因)などによって異なると考えられる。このため、どのような特性の人を重点指導するか決定するための健診の項目やその判定条件など、指導対象者選定の項目条件が重要である。しかし、より高い保健指導の効果が得られるように決定する方法については考慮されていなかった。
特に、どのような人から優先的に指導すべきかについては、年齢、悪化したとき、生活習慣の内容、継続的に状態が悪い人、などの議論がなされているが、指導による改善の観点から選定する方法については考慮されていなかった。
また、保健指導では、指導を受ける側から見ると、指導の結果、効果が得られなかった場合、例えばあるダイエットに取り組んでもうまく減量できなかったような場合には、健康状態の改善が図られないばかりか、それ以降の指導を受けたくなくなってしまう可能性がある。そのため、できるだけ指導による効果が得られる人に対して優先的に指導を行うことが望ましい。さらに、保険者から見ると、限られたリソースを効率的に指導に適用するという観点が必要となるが、従来の方法では、このような観点は考慮されていなかった。
上記課題を解決するため、本発明の保健指導対象者選定支援システムは、複数人の複数の項目からなる健診情報を格納するデータベースと端末とを有し、保健指導対象者の選定を支援する保健指導対象者選定支援システムであって、前記データベースは、複数人の健診情報を記録する健診情報管理手段と、前記健診情報の中で保健指導を受けた人に対する指導情報を記録する指導情報管理手段を有し、前記端末は、前記健診情報管理手段から健診情報を、前記指導情報管理手段から前記指導情報を取得する情報入出力手段と、前記健診情報から複数回の健診情報を取得して変化量を算出する変化量計算手段と、算出された前記変化量を基に健康状態が改善した群と改善しなかった群とを分類し、前記健診情報の内、改善群と非改善群との特徴が異なる項目を説明変数として選定する説明変数候補選定手段と、前記説明変数に選定された項目における健診情報と前記改善または非改善との関係を回帰分析により分析してモデル化する優先度モデル作成手段と、前記健診情報管理手段から健診情報を取得し、前記優先度モデル作成手段が算出した優先度モデルを用いて、保健指導対象者の優先度を算出する優先度算出手段とを有することを特徴としている。
本発明の保健指導対象者選定支援システムによれば、優先度モデル作成手段により健診情報と前記改善または非改善との関係を分析してモデル化した優先度モデルを作成し、優先度算出手段により優先度モデルを用いて保健指導対象者の健診結果から優先度を算出し、指導による改善の可能性が高い人から優先順位付けするので、保健指導の効果が高い人を選定して保健指導を実施することができる効果がある。
さらに、本発明の保健指導対象者選定支援システムによれば、優先度モデル作成手段において、指導を実施した群に対する優先度モデルと指導を実施しなかった群に対する優先度モデルを作成し、優先度算出手段において、対象者の健診結果から指導群のモデルから算出した優先度と非指導群のモデルから算出した優先度の差を求め、その差から指導する対象者を選定する。これにより、指導による改善が期待できる人を指導することに加えて、指導しなくても改善できる人は指導の優先順位を下げることができ、限られた保健指導のリソースを効率よく利用することができる効果がある。
以下、図を用いて本発明を実施するための最良の形態の一例について説明する。ここでは、保険者に所属している被保険者、被扶養者からメタボリックシンドロームの人を対象に保健指導を実施する対象を保険者が選ぶことに利用する場面を例に、システムの構成、データ形式、フローチャート、画面などを用いて説明する。
保健指導は、メタボリックシンドロームの状態にある人を、メタボリックシンドロームから改善することを目的に行うものとする。尚、メタボリックシンドロームは、日本内科学会などが公表した診断基準により、ここでは腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上で、血圧、血糖、脂質のいずれか2つが基準よりも高い場合にメタボリックシンドロームと判断される。血圧は最高血圧が130mmHg以上または最低血圧が85mmHg以上、血糖は空腹時血糖値が110mg/dl以上、脂質は中性脂肪が150mg/dl以上またはHDLコレステロールが40mg/dl未満で異常値と判定される。ここでは上記の診断基準を例にするが、必ずしも上記基準に限られるものではない。
また、メタボリックシンドロームからの改善は、腹囲や、血圧、血糖、脂質の検査項目のいずれかの値が改善し、メタボリックシンドロームの診断基準を満たさなくなったことを、メタボリックシンドロームからの改善とする。
図1は、本発明の保健指導対象者選定支援システムの一構成例を示す図である。保健指導対象者選定支援システムの利用者が操作する端末130と、各種のデータを管理するデータベース105から構成される。
端末130は、キーボードやマウスなどの入力装置101、ディスプレイなどの出力装置102、処理・演算を行うCPU103、処理プログラムを記憶しているハードディスクやメモリなどの記憶装置104から構成する。
記憶装置104には、データベースからの情報取得や書き込みを行う情報入出力手段107と、健診情報から検査値の変化量を計算する変化量計算手段106と、優先順位算出のための説明変数の候補を選択する説明変数候補選定手段108と、説明変数候補選定手段108で選択した説明変数の候補を用いて保健指導の対象者選定において優先順位を決定するための優先度のモデルを作成する優先度モデル作成手段109と、優先度モデル作成手段109で作成した優先度モデルを表示する優先度モデル表示手段110と、個人の健診結果に優先度モデルを適用して個人の保健指導の優先度を算出する優先度算出手段111と、作成した優先度モデルを用いて、健診受診者に優先順位をつけて指導対象者の選定を支援する指導対象者選定支援手段112と、優先度モデル作成手段109において、優先度モデルを作成するための回帰分析を行う回帰分析手段113と、作成した優先度モデルの比較評価を行う評価手段114を有している。記憶装置104に格納されている各手段は、必要に応じてCPUが読み出して処理を実行する。データベース105は、数年間の健診の検査値や問診結果などの情報を管理する健診情報管理手段121、保健指導の実施結果を管理する指導情報管理手段122、保険者に所属している被保険者、被扶養者の一覧を管理する個人情報管理手段123、被保険者の所属する会社や事業所を示すグループ情報管理手段124、優先度モデル作成手段109で作成した優先度モデルを管理する優先度モデル管理手段125、保健指導プログラムに関する情報を管理するプログラム情報管理手段126を有しており、情報の入力・更新は、健診機関等から無線、有線等の通信手段、電子媒体ないし端末の入力手段への入力等を介して適宜行われるものとする。
図2は、本発明の保健指導対象者選定支援システムの健診情報管理手段121において管理する健診情報の一例を示す図である。健診情報としては、健診を特定する健診ID210、個人を特定する個人ID201、健診の受診日202、受診時の年齢を示す受診時年齢203、測定や検査の結果として、腹囲204、最低血圧205、最高血圧206、空腹時の血糖値207、中性脂肪208など各種検査値を格納している。
このほか、図示していないが、体重、身長やそこから計算したBMI,糖尿病の検査であるHbA1c,HDLコレステロールやLDLコレステロールなどの脂質に関する検査値、肝機能の検査値や、各種問診結果を格納している。
問診情報には、喫煙、飲酒、食習慣、運動などの生活習慣や、過去の病歴、現在の病気の治療状況などがある。また、健診の結果から、医師が判定した結果として、病気の種類毎に異常なし、要改善、要治療、治療中などの情報を管理している。
健診情報は、被保険者が健診施設等で健診を受診することで発生する。発生した健診情報は、媒体や通信を介して健診施設から保険者に報告され、保険者において健診情報管理手段のデータとして保存することでデータを管理している。保健指導対象者選定支援システムとしては、蓄積・保存された健診情報を利用して、優先度モデルの作成や、対象者の選定を行う。
図3は、本発明の保健指導対象者選定支援システムの指導情報管理手段122において管理する指導情報の一例を示す図である。
指導情報は、保健指導を行う医師や保健師が、指導を実施したこと、またその結果を記録する形で作成される。指導情報は、指導を行った医師や保健師がいる施設で作成され、結果が媒体または通信で保険者に報告され、その情報を保険者においてデータベースに保存することで管理する。
指導情報としては、個人を特定する個人ID301、保健指導の種類を示すプログラムID302、保健指導を導入する判断を行った健診を示す健診ID303、指導の開始日304、指導の終了日305と、指導の結果として生活習慣や健康状態の改善など、目標が達成できたかどうかを記録する指導結果306を格納している。保健指導は、健診でメタボリックシンドロームなど異常が見られた人に実施されるので、導入判定健診ID303は、情報入出力手段107で図2の健診ID210と突合され、保健指導と、その導入判断の元になった健診とを結びつける。保健指導の導入の判定は、本実施例では、指導対象者選定手段で行われる他、別のシステムで条件により決められる場合や、人が判断する場合などがある。
保健指導対象者選定支援システムとしては、蓄積・保存された指導情報を利用して、優先度モデルの作成を行う。
図4は、本発明の保健指導対象者選定支援システムの個人情報管理手段123において管理する被保険者・被扶養者個人の情報の一例を示す図である。個人を特定する個人ID401、氏名402、性別403、所属している企業・事業所を示すグループID404を格納している。個人ID401は、情報入出力手段107が、図2の201、図3の301と、突合して同一人物を特定する。被保険者・被扶養者の個人の情報は、保険者が管理する情報である。本例ではこのシステム内で管理して利用している(利用方法については後述)が、被保険者管理のためのシステムで管理され、保健指導対象者選定支援システムでは、その情報を参照して利用する場合もある。
図5は、本発明の保健指導対象者選定支援システムのグループ情報管理手段124で管理するグループ情報の一例を示す図である。被保険者が所属する事業所を特定するグループID501、事業所の名前を示すグループ名502、所在地503、電話番号などの連絡先504を格納している。グループID501は、情報入出力手段107が、図4のグループID401と突合して、被保険者が所属する事業所を特定する。グループ情報も、被保険者・被扶養者の情報と同様に、保険者が管理する情報である。本例ではシステム内で管理して利用しているが、被保険者を管理するためのシステムで管理され、保健指導対象者選定支援システムでは、その情報を参照して利用する場合もある。
図6は、本発明の保健指導対象者選定支援システムの優先度モデル管理手段125が管理する優先度モデルの情報の一例を示す図である。優先度モデル全体を管理する優先度モデルテーブル601と、優先度モデルの係数を管理する係数テーブル602がある。優先度モデルは、複数の説明変数とその係数からなる多項式で表現する。優先度モデルテーブル601は、その多項式全体を管理し、係数テーブル602は、その多項式の中の説明変数と係数の関係を管理する。
優先度モデルテーブル601は、優先度モデルを特定する優先度モデルID611、優先度モデルを作成した日を示す作成日612、現在の選定にその優先度モデルを適用しているかどうかを示す適用フラグ613、適用の開始日614と終了日615、係数の数616、保健指導プログラムの種類を示すプログラムID617、その優先度モデルが保健指導を行った群から作成したモデルか、保健指導を行わなかった群から作成したモデルかを示す介入/非介入フラグ618を管理する。
係数テーブル602は、優先度モデルテーブル601の優先度モデルID611と関係付けて優先度モデルを特定する優先度モデルID621、説明変数となる健診項目やその計算した値を特定する説明変数622、その説明変数に対する係数623を管理する。
図7は、本発明の保健指導対象者選定支援システムのプログラム情報管理手段126が管理する保健指導プログラムの情報の一例を示す図である。保健指導プログラムの種類を特定するプログラムID701と、プログラム名702、その内容703と、そのプログラムの一人当たりの指導コスト704などを管理している。プログラムID701は、情報入出力手段107が、図6のプログラムID617と突合して、プログラム名や内容などを管理する。プログラム情報は、保険者が管理する情報である。保健指導プログラムを導入するときに、保険者が作成して管理しておく。
次に、上述した構成のシステムを用いて保健指導の対象者選定を支援する場合の処理について、フローチャート、シーケンス、画面の一例を用いて説明する。
図8は、本発明の保健指導対象者選定支援システムにおいて、対象者を選定する際の優先順位を決定するための規則である優先順位モデルを過去のデータを用いて作成する処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図9は、優先度モデル作成処理の操作者、端末、データベースの間のデータの流れの一例を示すシーケンス図である。
図9において、保健指導の対象者を選定する保険者の担当者で、本発明のシステムを利用する操作者901であり、端末130は図1の端末130、データベース105は図1のデータベース105を示す。
ここでは、現在が2007年度の始めとし、2007年度の保健指導対象者の選定に用いる優先順位モデルを過去5年間の健診情報、保健指導情報から求める場合を例に説明する。そのため、図2に示した健診情報のうち、健診ID(210)が、0701〜0704の健診情報は健診情報管理手段121には存在せず、受診日202が2006年以前のデータのみを管理しているものとする。また、図3の保健指導情報は、説明を簡単にするため、ここではプログラムID302が“P001”のみを扱う。
図10は、本発明の保健指導対象者選定支援システムの端末130のディスプレイ102に表示する、初期画面の一例を示す図である。初期画面1001には、対象者選定の処理に進むボタン1002と、優先度モデル作成の処理に進むボタン1003を表示する。
優先順位モデル作成の処理では、まず、操作者901が、入力手段を介して端末130に対し、優先順位モデル作成を指示する(911)ことにより開始する。例えば操作者901が、端末130の出力装置102に表示された初期画面1001上の優先度モデル作成ボタン1003を、マウスなどの入力装置101で押すことで開始する。
優先順位モデル作成指示を受けて、端末130では、優先度モデル作成手段109が、情報入出力手段107を用いて、データベース105の健診情報管理手段121と指導情報管理手段122から、健診情報と保健指導情報を取得する(801)。
シーケンス上では、端末130から健診情報、保健指導情報の取得要求(912)をデータベース105に送り、データベース105から、健診情報、保健指導情報を返信する(913)。ここでは、図2に示した健診情報、図3に示した保健指導情報を取得する。また、過去5年分の健診情報、過去4年分の保健指導情報を利用するものとし、健診情報では受診日202が、2002年度から2006年度のものを取得し、保健指導情報は、導入判定健診ID303で示される健診情報の受診日202が、2003年度から2006年度の保健指導情報を取得する。ここで、指導情報が1年短いのは、後述する検査値の変化量算出のため、健診情報を1年分遡るためである。
次に、優先度モデル作成手段109は、説明変数候補選択手段108を用いて、保健指導を受けた人から、保健指導による改善する人の特徴である説明変数の候補を作成・選択する(803)。説明変数候補の選択方法については後述するが、ここでは、保健指導を受ける前の健診情報である、年齢203、腹囲204、血圧205,206、血糖値207、中性脂肪208などの値と、これらの値の、前年からの変化量の中から、保健指導による改善と関連のある項目として、血糖値207の変化量と中性脂肪208の変化量を、説明変数の候補とする。
ここでは、変化量は、前年の値に対する変化率の値を用いるものとし、たとえば、個人ID201が“K0010”の人の場合、保健指導情報の個人ID301“K0010”の保健指導情報の導入判定健診ID303は”0605“なので、健診情報の健診ID210が”0605”の情報と、その1年前の同じ個人ID201の健診ID210”0501”を用いる。血糖値207の変化量は、2006年の値”120”と2005年の値“110”の差を2005年度の値”110“で除して、変化量は”0.09“となる。
また図示していないが、図3の指導情報として、開始日304が2005年度、2004年度など、の指導情報が存在する場合、その導入判定健診ID303から、受診日202が2005年度や2004年度の健診情報と、その1年前の同じ個人ID201の健診情報を用いて、変化量を算出する。
このような計算を説明変数候補選択手段108が全ての人に対して行う。また、後述する説明変数候補の選択の結果から、説明変数の候補として血糖値の変化量と、中性脂肪の変化量の値を候補として選択したものとする。
次に、優先度モデル作成手段109は、回帰分析手段113を用いて、説明変数候補選択手段で選択した検査値とその変化量を説明変数とし、指導結果306から改善を1、改善しなかったことを0として、これを目的変数として、保健指導を受けた人のデータを対象に回帰分析を行う(804)。ここでは、最も基本的な線形回帰分析を行うものとする。線形回帰分析は、最小二乗法などの手法を用いて計算を行い、血糖値変化と中性脂肪変化の係数を算出する。説明変数の血糖値変化を“X1”、中性脂肪変化を”X2”、目的変数である改善推定値を“z1”とすると、”z1=a0+a1X1+a2X2”という式の、”a0”,”a1”,”a2”を算出する。ここでは、a0=0.3、a1=0.2, a2=0.1だったものとする。
次に、優先度モデル作成手段109は、優先度モデル表示手段110を用いて、回帰分析の結果を優先度モデルとして表示する(805)。表示の具体的な方法の例については後述する。操作者は、表示された優先度モデルを確認する。
そして、操作者901が、端末130の入力装置101で、その優先度モデルで良いことを確認し(806)入力すると(916)、優先度モデル作成手段109は、情報入出力手段107を用いて、優先度モデルをデータベース105の優先度モデル管理手段125に格納する処理を行う(807)。優先度モデルの格納の処理807では、端末130から優先度モデルの情報をデータベース105に送る(917)。データベース105の優先度モデル管理手段125は、図6のようにデータを保存する。図6の優先モデルID(611)M001として、作成日612と適用開始日614が2007年4月1日、本日から適用するものとして適用フラグ613を1にし、係数の数616が3、保健指導プログラムの種類がP001、介入/非介入フラグでは、保健指導を行った人から作成した優先順位モデルなので1を記録する。さらに、係数テーブル602には、優先順位モデルM001に対する定数、血糖値変化、中性脂肪変化の3つの係数を記録する。
また、その優先度モデルでは良くないと考えた場合等、修正が必要な場合(806)、操作者(901)は、モデル作成のやり直しを選択し(914)、説明変数を指定(808)して、回帰分析のやり直しを指示する(915)。そして、前述した804の処理と同じ回帰分析を、新たに指定された説明変数で行い(809)、操作者が良い優先度モデルが得られたと判断するまで繰り返す。以上で、優先度モデル作成の手順を終了する。
次に、前述の方法で作成した優先度モデルを用いて保健指導対象者を選定する場合の処理の一例を図11のフローチャートと、図12の画面、図13のシーケンス図を用いて説明する。図13のシーケンス図では、図9と同様に操作者901、端末130、データベース105との関係を示す。
尚、対象者の選定業務は、毎月、前月の健診受診者の中から保健指導対象者を選ぶという形で行う場合を例とする。ここでは、5月のある日に、4月分の健診受診者の中から、保健指導対象者を選定する。このとき、図2の健診情報は、健診ID210が0701〜0704の健診情報が、別途登録されている状態であるものとする。尚、対象者の選出は毎月でなくとも、3ヶ月単位、半年単位等適宜選定可能である。
まず、操作者901が、入力装置101を用いて、図10の保健指導対象者選定支援システムの画面1001で、対象者選定ボタン1002を押し、対象者選定の処理開始を指示する(1301)。
端末130では、指導対象者選定手段112が、情報入出力手段107を用いて、優先度モデル管理手段125から、優先度モデルを取得する(1101)。端末130は、データベース105に対して、現在適用中の優先度モデルを要求し(1302)、データベース105は、優先度モデル管理手段125の優先度モデルID611がM001の優先度モデルの情報を端末に返す(1303)。
すると、端末130の指導対象者選定手段112は、出力装置図12のような対象者選定画面を表示する。図12は、対象者選定を行うときの画面の一例を示す図で、対象者選定画面1201上に、対象者選定の対象となる健診受診者の健診受診日の検索期間の開始日1202と終了日1203、個人に対する優先度計算を開始する優先度計算ボタン1204、結果を表示する結果表1205、などを表示する。結果表1205は、実際に指導する対象者を入力する対象者選定入力欄1206、個人ID1207、氏名1208、性別1209、所属する事業所ID1210など個人の基本的な情報のほか、保健指導プログラムに関する優先度を表示する1211を有する。尚、この対象者選定を開始する時点では結果表1205にはデータは表示されていない。
そして、操作者901が、入力装置101を用いて、対象者の健診受診日の期間を、開始日1202を2007年4月1日、終了日1203を2007年4月31日と入力し、優先度計算ボタン1204を押す(1306)。
次に、指導対象者選定手段112が、情報入出力手段107を用いて、健診情報管理手段121から、指導対象の候補となる人の健診情報を取得する(1102)。端末130は、データベース105に対して、2007年4月分の健診情報を要求し(1304)、データベース105は、健診情報管理手段121から、健診ID(210)0701〜0704など、受信日202が2007年4月の健診情報と、各個人の1年前の健診情報(健診IDが0601〜0604など)を端末130に送る(1305)。
次に、指導対象者選定手段112は、優先度算出手段111により、取得した健診情報を優先度モデルに適用して個人毎の優先度を計算する(1103)。この例では、前述のように優先度“z1=0.3+0.2×血糖値変化+0.1×中性脂肪変化なので、例えば個人ID201がK0001の場合、血糖値変化(率)=(110−105)/105、中性脂肪変化(率)=(160−140)/140で、z1=0.32となる。このとき計算された値は、この個人に保健指導を実施した場合の、改善の可能性を推定した値となり、このような形で、それぞれの人の優先度を求めていく。
次に、対象者選定手段112は、出力装置102に表示されている対象者選定画面1201の結果表1205に、選定の候補となる個人と計算した優先度の情報を表示する(1104)。このとき、プログラムの優先度1211の順に個人を表示する。ここでは降順に表示する。前述のように優先度1211は、この値が大きいほど指導することで改善する可能性が高いことを示すので、これを保健指導の優先度とすることで、指導により改善しやすい人から選定できる。
次に、操作者によって実際に指導する対象者を決定する(1105)。操作者901は、入力装置101を用いて対象者選定画面1201の、対象選定欄1206で、実際に指導する人を選択し、対象者決定ボタン1213を押す(1307)。端末130は、対象選定欄1206で指定された人の一覧を、出力装置102の一つであるプリンタで印刷して、処理を終了する。
以上、説明したように、本発明の保健指導対象者選定支援システムは、優先度モデル作成手段109により、過去の指導実績を基に、改善する人を事前の健診情報から推定する優先度モデルを作成し、指導対象者選定手段112により、その優先度モデルを用いて対象者を優先順位付けするので、保健指導の対象者を選定する時点で、より改善の可能性が高い人を選定することができる効果がある。特に、同じ人数の指導を行ったと考えた場合には、本発明の保健指導対象者選定支援システムを用いることで、健康状態の改善可能性が高い人を優先的に指導できるので、費用対効果の高い保健指導を実現できる効果がある。
また、保健指導では、検査値がある程度悪化してしまった人を対象にするので、健診を受けた時点での検査値にはそれほど差がないが、その前年からの変化を見た場合には、前回の健診から現状維持している人と、前回の健診では良かったが今回悪化した人で違いがある。さらに、一般的には、検査値が高い状態を維持してしまっている人に比べて、前回の健診では良かったが今回悪化してしまった人の方が改善が容易と言われている。上述のように、本発明の保健指導対象者選定支援システムは、保健指導による改善を推定する説明変数として、健診結果の断面的な検査値の値だけでなく、時間的な検査値の変化も用いている。これにより、検査値が高い状態を維持してしまっている人だけでなく悪化して指導が必要なレベルになった人という改善の可能性が高い人を抽出することができ、これにより保健指導の効率を高めることができる効果がある。
また、指導対象者個人を対象に優先順位付けをする方法を示したが、個人が所属するグループの情報を基に優先順位付けを行っても良い。図4の個人情報は、グループID404の情報を持っており、図5のグループ情報で、個人がどの会社に所属しているかという情報を管理している。指導対象者選定手段112は、個人毎の優先度を計算した後、グループ毎にグループに属する個人の優先度を合計する。そして、グループに所属する人数で割ってグループの優先度とする。保健師が指導を行う場合、保健師が対象者の会社に行って指導を行う場合がある。この方法を用いることで、グループ毎の指導の効率を比較することができ、保健師の指導の効率を高めることができる効果がある。
次に、優先度モデル表示手段110が表示する優先度モデルの表示方法の一例について説明する。図16は、優先度モデル表示手段110が表示する優先度モデルの表示方法の一例を示す図である。ここでは、上述の実施例の中で、図8の結果を表示・確認するステップ805で表示する場合を例にしている。
優先度モデル確認画面1601は、優先度モデル表示領域1602、優先度モデルの凡例1603、優先度モデル表示の軸選択欄1604、モデル式選択欄1605、決定ボタン1606、見直しボタン1607を表示している。
モデル式選択欄1605は、優先度モデルの式を表示しており、プログラムAに関する式1631、指導なし群に関する式1632と、その差分の式1633を表示している。この中から、優先度モデル表示領域1602に表示する式を選択する。ここでは、プログラムAの式を選択している。優先度モデルは、前述した優先度モデル作成ステップである804、1404で作成した、説明変数と係数から表示する。
軸選択欄1604は、優先度モデル表示領域1602のグラフのX軸とY軸を指定する欄である。モデル式選択欄1605に表示したモデル式で使用している説明変数を表示している。ここでは、血糖値変化1621、中性脂肪変化1622、最低血圧1623を表示していて、そのうち、血糖値変化1621をY軸、中性脂肪変化1622をX軸に指定している。
優先度モデル表示領域1602は、軸選択欄1604で指定した中性脂肪変化1622をX軸、血糖値変化1621をY軸に取り、モデル式で計算した値を色の変化で表示する。ここでは、例えば青色の濃い方から順に、1611、1612、1613、1614と薄くなっている。例えば、256階調の青で示した場合、濃度1611は255、濃度1612は170、濃度1613は85、濃度1614は0と4つの色で表示する。
グラフ上の点の値は、血糖値変化の値と、中性脂肪変化の値について、優先度モデル作成時に使用したデータの平均と標準偏差の範囲で軸の最大と最小値とし、その最大値と最小値の間の値を、例えば100×100点について優先度モデルの式に代入して計算する。優先度モデルの式は、改善を1、改善しないを0として推定するので、式から計算した値は主に1から0の範囲に分布する。そこで、これをグラフ上の点の色を、値が0.75以上の場合は濃度1611、値が0.5以上0.75未満の場合は濃度1612、値が0.25以上0.5未満の場合は濃度1613、値が0.25未満の場合は濃度1614で表示する。
また、同様に凡例1613も同様に濃い方から順に1611、1612、1613、1614と色が薄くなり、色が濃いほど、改善の期待値が高いことを示す。
以上に示したように、本発明の保健指導対象者選定支援システムは、求めた優先度モデルについて、式の説明変数をグラフのX軸、Y軸にとり、優先度モデルの値を色の濃さで表現することで、どのような特徴を持った人が改善しやすいか、どの人を優先すべきかを、利用者にわかりやすく提示できる効果がある。
次に、図19と図20を用いて、説明変数候補選定手段108が行う説明変数候補の選択の処理について説明する。図19は、説明変数候補選定手段108で行う説明変数候補の選択方法の手順の一例を示すフローチャートである。処理としては、図8のフローチャートの介入群の説明変数候補選択ステップ802、1403の具体的な手順を示している。
説明変数候補の選択処理では、まず、データベースから取得した保健指導情報とともに、保健指導情報がある人の、保健指導の導入判定をした健診情報と、その前回の健診情報を取得する(1901)。例えば、図3の指導情報から個人ID301が“K0010” の人の場合、その導入判定健診ID303が”0605”であることから、健診ID210が”0605“の健診情報と、その前年の健診ID210が”0501”の健診情報を取得する。これを、保健指導情報がある人すべてに対して実施する。
次に、その中から、保健指導情報を抽出する(1902)。ここでは、導入判定健診と前回健診の両方を受診していること、また、その両方の健診の時点で、生活習慣病の治療中でないことなどである。治療中で無いことの判定は、図には無いが、図2の健診情報の中で、医師の判定結果として治療中であるかどうかが記録されており、それを用いる。
次に、導入判定健診とその前回健診かの検査値から、変化量を計算する(1903)。変化量は、ここでは、保健指導導入判定の健診の検査値と前回健診検査値の差を前回健診の検査値で割った変化率を用いる。対象となる検査の項目は、最低血圧205、最高血圧206、血糖値207、中性脂肪208のほか、BMI、HbA1c,HDLコレステロール、腹囲などを対象に計算する。
次に、指導情報の指導結果306から、指導によって改善した“1”か、改善しなかった“0”を取得する(1904)。そして、指導結果306が“1”の改善した人(改善群)、および、“0”の改善しなかった人(非改善群)の各々について、導入判定健診の時点の検査項目、および、検査値の差の値の平均値を各検査項目について計算する。さらに、改善群と非改善群に差があるか検証する。ここでは、平均値の差の有無を統計的に検定するT検定を用いて、有意差を検定する(1905)。
そして、優位差があった検査値および検査値の差を説明変数の候補として設定し(1907)、終了する。
このように、説明変数の候補として、平均値に有意差がある項目から決定することで、改善/非改善に関連する項目のみを優先度モデルに用いる説明変数とすることができる効果がある。
また、図20は、結果を表示・確認するステップ805で、説明変数の候補選択を行った結果を表示する画面の一例を示す図である。
項目比較画面2001は、プログラムの情報を表示する欄2002と、検査値の平均を表示するグラフ2003、検査値変化量の平均を表示するグラフ2004、優先度モデルの式を表示するモデル式表示欄2005、優先度モデル計算の開始を指示する優先度モデル再計算ボタン2006、図16、図17、図18で示した優先度モデル確認画面を表示する優先度モデル確認ボタン2007を表示する。
検査値平均のグラフ2003、および、検査値変化の平均のグラフ2004は、BMI、最低血圧、最高血圧、血糖値、HbA1c、中性脂肪、HDLコレステロールの各検査項目について、改善群2011と非改善群2012の平均値を表示している。また、平均値の差のT検定によって有意差があるという結果だった項目は、有意差ありの表示2013を表示している。そして、説明変数として使用する項目を説明変数設定欄2014で指定する。ここでは、血糖値変化率、中性脂肪変化率の2つの項目で有意差があったものとして表示し、その2つの項目を説明変数に指定している。
モデル式表示欄2005は、指定された説明変数を用いて作成した優先度モデルの式を表示する。
使用する説明変数を変更したい場合には、説明変数設定欄2014で、使用する項目を選択し、優先度モデル再計算ボタン2006を押すと、優先度モデルの式の作成を再度行う。
このように、項目比較画面で改善群と非改善群の平均値の差を表示することで、改善群と非改善群に違いがある検査項目あるいは、検査値変化の値が何であるかをわかりやすく提示できる効果がある。さらに、平均値の差に有意差がある項目を表示することで、検査値や検査値の変化量に、統計的に差があることをわかりやすく提示できる。このため、改善群と非改善群に差がある項目、すなわち改善群を抽出するのに必要な項目を説明変数として指定できる効果がある。
次に、図14と図15のフローチャートを用いて、保健指導を実施した人の情報から作成した優先度モデルと、保健指導を実施しなかった人の情報から作成した優先度モデルを利用する場合の例について説明する。その他については、上述した実施例1と同様に、システム構成は図1、データは図2から図7、シーケンスは図9、画面は図10を用いて説明する。
健診情報を時系列的に追うと、ある年の健診でメタボリックシンドロームに該当した人が、特に保健指導を実施しなくても、翌年の健診ではメタボリックシンドロームに該当しなくなっている場合がある。メタボリックシンドロームでは、特定の検査数値を基準に該当するかしないかが判断されるので、例えば、検査値が基準値付近で変動している人などは、特に保健指導を行わなくてもメタボリックシンドロームの観点では改善したようになる。そのほかにも、自分で改善努力をした人がいる場合など、保健指導を行わなくても改善する場合がある。
保険者の観点からすると、保健指導をしなくても改善可能な人には指導せずに保健指導が必要な人で、指導によって改善する人を指導したい。そこで、保健指導を実施した人から作成した優先度モデルと、保健指導を実施しなかった人から作成した優先度モデルの差により優先度を決定する。
図14は、図8で示した優先順位モデル作成処理の別の例を示したフローチャートである。
ステップの1401から1404は、まず健診情報、保健指導情報をデータベース105から取得する1401、保健指導情報から過去の保健指導の実施有無の情報を作成する1402、保健指導実績がある人の健診情報から、説明変数候補を選択する1403、回帰分析を行って指導を行った人の優先順位モデルを作成する1404。ここまでのステップは、実施例1で説明した図8のステップ801から804と同じ処理である。
次に、保健指導を行わなかった人の説明変数候補を選択する(1405)。ここでは、図3の保健指導情報にデータがなく、図2の健診情報にデータが存在する人を取得する。例えば、個人ID201が“K0010”から“K0013”の人では、“K0010”と“K0011”は保健指導情報が存在するのでこれを除き、”K0012“と”K0013“のデータを使用する。ここでは、3回分のデータが存在する人の、2回目の健診情報を対象にする。”K0012”、”K0013“の人では、2005年度の年齢203、腹囲204、血圧205,206、血糖値207、中性脂肪208などの値と、これらの値の、前年(2004年度)からの変化量の中かから説明変数の候補を決める。説明変数候補の選択方法については後述するが、ここでは、最低血圧205の値を説明変数の候補として決定したものとする。
次に、この最低血圧205を説明変数にして、回帰分析を行い優先度モデルを作成する(1406)。このとき、回帰分析の目的変数は、前述した3回分の健診結果のうちの3回目の健診結果がメタボリックシンドロームの基準値と比べて良い場合を改善したものとして1、メタボリックシンドロームの状態に該当する場合は改善しなかったものとして0として分析を行う。これにより、指導しなかった人で、どのような状態の人が改善するかというモデルを作成する。ここでは、指導しなかった場合の改善の推定値を”z0”と置くと、”z0=b0+b1×最低血圧”という式の定数と係数“b0”と”b1”を求める。ここでは、“b0=4”、”b1=-0.05“だったものとする。
次に、この結果を表示、確認する1407は、805と同じように結果を表示し、操作者901が確認する。表示方法の例については後述する。そして、操作者がこの優先度モデルで良いということであれば1408、優先順位モデルをデータベース105に格納する(1409)。データベースに格納する場合は、指導した人の指導結果から作成した優先順位モデルとともに、指導しなかった人の指導結果から作成した優先順位モデルもデータベースの図6のテーブルに格納する。このとき、優先度モデルID621は“M002”、プログラムID617はなし、介入/非介入フラグ618は非介入を示す“0”として記録する。
また、表示の結果、操作者が優先度モデルを作成しなおすと判断した場合には(1408)、操作者が説明変数を指定して(1411)、回帰分析をやり直す(1412)。これを繰り返して、優先度モデルを作成する。
以上のように、指導しなかった人の優先度モデルでは、指導情報が存在しないので、健診情報から改善、非改善を判定する。これにより、指導しなかった場合の改善の可能性を推定するモデルを作成することができる。
次に、上述した指導した人の優先度モデルと、指導しなかった人の優先度モデルとを用いた対象者選定の処理の一例について図15のフローチャートを用いて説明する。
まず、指導対象者選定手段112は、情報入出力手段107を用いてデータベース105の優先度モデル管理手段125から優先度モデルを取得する(1501)。このとき、優先度モデルID“M001”の指導した群の優先度モデルと”M002”の指導しなかった群の優先度モデルの2つを取得する。
次に、選定対象となる健診情報を取得する(1502)。これは、1102と同じ処理である。
そして、優先度モデルを用いて、個人毎に優先度を計算する(1503)。ここでも、モデルID“M001”と”M002”の2つの優先度モデルで各々の優先度を計算する。例えば、前述のように個人ID201が“K0001”の人の場合、モデルID”M001”では、前述の説明のとおり優先度z1=0.32であった。一方、モデルID”M002”で優先度を求める場合は、最低血圧が“75”なので、優先度をz0とすると、z0=0.25となる。
次に、指導した人から作った優先度モデルを用いて求めた優先度と、指導していない人から作成した優先度モデルを用いて求めた優先度の差を計算する(1504)。例えば、個人ID201が“K0001”の人の場合は、z1-z0=0.07となる。こでを、対象の候補となる人すべての健診結果で求める。
次に、計算した優先度の差を表示する(1505)。これは、上述の例と同じように、図12の画面に一覧を表示する。このとき、優先度1211としては、差の優先度を表示し、その降順で一覧を表示する。これにより、指導した場合の優先度と指導しない場合の優先度の差が大きい順番、つまり、指導によって改善の可能性が高く、且つ、指導しない場合には改善しにくい人を上位に抽出できる。
そして、操作者が対象選定欄1206で対象者を選択して、対象者決定ボタン1213を押すことで、対象者を決定する(1506)。
以上、説明したように、本発明の保健指導対象者選定支援システムは、優先度モデル作成手段において、保健指導を実施した人の情報から指導により改善する優先度モデル、保健指導を実施していない人の情報から指導なしで改善する優先度モデルを作成し、指導対象者選定手段112において、2つの優先度モデルの差から優先度を求める。これにより、指導により改善しやすく、且つ、指導なしでは改善しにくい人を抽出することができる効果がある。指導しなくても改善する人を指導するのは、保険者の観点から見ると指導の効率が低下することになるが、本発明の方法では、そのような人の優先順位を下げ、指導が必要な人を上位に優先順位付けすることができる効果がある。
また、指導対象者個人を対象に優先順位付けをする方法を示してきたが、個人が所属するグループの情報を基に優先順位付けを行っても良い。図4の個人情報は、グループID404の情報を持っており、図5のグループ情報で、個人がどの会社に所属しているかという情報を管理している。指導対象者選定手段112は、個人毎の優先度を計算した後、グループ毎にグループに属する個人の優先度を合計する。そして、グループに所属する人数で割ってグループの優先度とする。保健師が指導を行う場合、保健師が対象者の会社に行って指導を行う場合がある。この方法を用いることで、グループ毎の指導の効率を比較することができ、保健師の指導の効率を高めることができる効果がある。
次に、優先度モデル表示手段110が表示する優先度モデルの表示方法の一例について説明する。図17は、優先度モデル表示手段110が表示する優先度モデルの表示方法の、非介入群の優先度モデルを表示した場合の一例を示す図である。図14の非介入群の優先度モデルを作成するステップ1406の結果を、表示・確認するステップ1407で表示している例を示している。結果を表示・確認するステップ1407では、実施例1で示した図16の表示から、表示を切り替えて図17のような表示となる。
優先度モデル選択欄1605で、指導なしの式1632を選択し、軸選択欄1604でY軸に最低血圧1623を選択すると、優先度モデル表示領域1602、優先度モデルの凡例1603は、プログラムAの優先度モデルを表示した場合と違う色で、改善の可能性を表示する。ここでは、赤色を用い、濃い方から順に、1711、1712、1713、1714と薄くなっている。例えば、256階調の赤で示した場合、濃度1711は255、濃度1712は170、濃度1713は85、濃度1714は0と4つの色で表示する。
グラフ上の点の値は、最低血圧の値について、優先度モデル作成時に使用したデータの平均と標準偏差の範囲で軸の最大と最小値とし、その最大値と最小値の間の値を、例えば100×100点について優先度モデルの式に代入して計算する。ここでは、X軸を指定していないので、X軸方向には同じ色を表示する。モデル式で計算した値が0.75以上の場合は濃度1711、値が0.5以上0.75未満の場合は濃度1712、値が0.25以上0.5未満の場合は濃度1713、値が0.25未満の場合は濃度1714で表示する。その結果、最低血圧が低いほど赤色が濃くなり、改善の可能性が高いことを表示する。
以上のように、指導していない非介入群について求めた優先度モデルについて、式の説明変数をX軸、Y軸に取ることで、優先度モデルの値を色の濃さで表現することで、どのような特徴の人が指導しなくても改善する可能性が高いのかを提示できる効果がある。
さらに、図18は、図16、図17で示した優先度モデル表示手段110が表示する優先度モデルの表示方法で、介入群の優先度モデルと、非介入群の優先度モデルの差分を表示した場合の一例を示す図である。
優先度モデル選択欄1605で差分1633を選択し、軸選択欄1604で、プログラムAの優先度モデルの式から血糖値変化1621をY軸に指定し、指導なしの優先度モデルの式から最低血圧1623をX軸に選択すると、優先度モデル表示領域1602、優先度モデルの凡例1603は、プログラムAの優先度モデルの式から計算した値と、非介入群の優先度モデルの式から計算した値の差を色で表示する。
差の値は、プログラムAで改善可能性が高く、指導なしでは改善可能性が低い場合は1に、プログラムAで改善可能性が低く、指導なしで改善可能性が高い場合は−1になり、値は主にその間に分布する。差の値が0より大きい場合は、図16で説明したように青色の濃度変化で表示する。一方、差の値が0より小さい場合は図17の例で説明したように赤色の濃度変化で表示するが、このとき、負の絶対値が大きい場合に濃い色で表示する。ここでは、差の値が0.75以上の場合は青の濃度255(1611)、差の値が0.5以上0.75未満の場合は青の濃度170(1612)、差の値が0.25以上0.5未満の場合は青の濃度85(1613)、差の値が−0.25以上0.25未満の場合は濃度0(1811)、差の値が−0.25より小さく−0.5以上の場合は赤の濃度85(1713)、差の値が−0.5より小さく−0.75以上の場合は赤の濃度170(1712)、差の値が−0.75より小さい場合は赤の濃度255(1711)で表示する。このようにすることで、最低血圧が高く血糖値変化が大きい人は、指導なしでは改善せず指導することで改善の可能性が高いこと、また、最低血圧が低く血糖値変化が小さい人は、指導しなくても改善する可能性が高いことを表示することができる。
以上のように、指導した群から作成した優先度モデルと、指導していない群から作成した優先度モデルの差について、正の値の場合と負の値で異なる色で表示し、絶対値が大きくなるほどそれぞれの色を濃くなるように表示することで、指導なしでは改善せず指導により改善する可能性が高い人はどのような特徴の人であるかということをわかりやすく利用者に表示することができる効果がある。
次に、説明変数候補選定手段108が、非介入群に対する説明変数候補を選択する場合の処理の流れの一例について説明する。
図21は、説明変数候補選定手段108が、非介入群の説明変数候補を選択を行う処理の流れの一例を示す図である。非介入群の説明変数候補選択ステップ1405の具体的な処理を示している。なお、介入群に対する説明変数候補選択のステップ1403と、優先度モデル作成のステップ1404は、実施例1の図8のステップ803、804と同じ処理を行うものとする。
まず、説明変数候補を選択する処理として、保健指導情報から取得した指導情報に指導の記録が無い人の健診情報を取得する(2101)。そして、その健診情報の中から、使用する健診情報を抽出する(2102)。
3回(3年)連続して健診を受診して、3回よりも多く受診している人は、その最も新しい記録を用いる。さらに、その3回のうち、古い方の2回が、病気の治療中で無いこと、また、2回目の健診がメタボリックシンドロームの基準に該当していること、の3つの条件で抽出する。3回分の健診結果を取るのは、2回目を基準にして、それが改善したかどうかを3回目の健診から判断するためである。1回目と2回目は、検査値の変化を算出するのに用いる。また、3回よりも多く受診している人については、同じ人を複数回取り扱わないように、最も新しい情報のみを使用する。
また、病気の治療中でないという条件は、病気治療中の人の検査値は薬で改善している可能性があるため、その影響を除くために病気治療中で無い人のみを採用する。ここで言う病気とは、糖尿病や高血圧や脂質異常症などの生活習慣病のことを示し、健診情報の中では、図にはないが、医師による判定の結果や本人の申告の情報などから判断する。
また、2回目の健診が、メタボリックシンドロームに該当する、という条件は、指導群は基本的にはメタボリックシンドロームに該当する人の中から、それを改善するために指導を行うので、それと比較するために、指導群と同様に非指導群もメタボリックシンドロームに該当する人を対象とする。
例えば、図3の指導情報と、図2の健診情報では、個人ID201が“K0012”、”K0013”の人が指導情報を持たないので、その3回分として、個人ID201が”K0012”の人は、健診ID210が“0607””0503””0401”を、個人ID201が”K0013“の人は、健診ID210が”0608“”0504“”0402“を用いる。そして、2005年と2004年に受診した健診で病気の治療中でなく、2005年に受診したとき、腹囲85cmと血圧、血糖値、中性脂肪などから2つの異常値があるので、メタボに該当する。
次に、3回分の健診情報のうち、古い方の2回分の検査値から変化量を計算する(2103)。ここでは、2回目の検査値と1回目の検査値の差を1回目の検査値で割った変化率を用いる。例えば、個人ID201が”K0012”の人の血糖値207では、(115−111)/111で約0.04となる。同様に他の検査項目についても計算する。
次に、3回目の健診情報から目的変数を設定する(2104)。3回目の健診結果として、ここでは2006年度の健診結果がメタボリックシンドロームに該当するか病気の治療中である場合は非改善で0、メタボリックシンドロームに該当しなくたった場合は改善で1とする。例えば、個人ID201が“K0012”の人は、2005年度はメタボリックシンドロームに該当しており、2006年度の健診ID210“0607”も引き続きメタボリックシンドロームに該当するので非改善となる。また、個人ID201が“K0013”の人は、2005年度はメタボリックシンドロームに該当しているが、2006年度の健診ID210“0608”は、メタボリックシンドロームに該当しないので、改善として扱う。
次に、改善群と非改善群とで、検査値と検査値変化量の平均を求め、改善群と非改善群の平均の差の検定を行う(2105)。これは、図19の1905のステップと同じ処理である。そして、優位差があった検査値、検査値変化を説明変数の候補として(2106)、この処理を終了する。
以上に示したように、非介入群に対しては、3回分の健診情報を用い、2回目にメタボリックシンドロームに該当し、3回目の健診結果がメタボリックシンドロームに該当するかどうかによって、改善、非改善を判断している。指導を行っていない非介入群では、指導情報にある改善の結果の情報がないが、この方法を用いることで、日介入群に対しても改善か非改善かを判断することができる。そして、この方法により検査値および検査値変化の改善群と非改善群の差の有無を求めることで、指導しなくても改善する人の特徴を見出すことができる効果がある。
上述の実施例1および2では、一つの保健指導プログラムに対して優先度モデルを作成し、指導対象者の優先度を提示する方法を示したが、複数の保健指導プログラムに対する優先度モデルを作成することもできる。
図7に示したプログラム情報では、複数のプログラムを管理しており、図3の指導情報には、プログラムIDが“P002”や”P003”の保健指導プログラムを実施した記録がある。この場合、図19の介入群の説明変数候補の選択では、説明変数候補の選択を、保健指導プログラム別に実施し、保険指導プログラム毎に、検査値、検査値変化で差がある項目を抽出する。そして、図14の優先度モデル作成の優先度モデル作成ステップ1404でも、保健指導プログラム別に、回帰分析を行って、優先度モデルを作成する。これにより、複数の保健指導プログラムに対する優先度モデルを作成することができる。
また、図16から図18に示した優先度モデルの確認画面では、複数の保健指導プログラムに、各々別の色を設定して表示する。優先度モデル表示領域のグラフ上の各点毎に、優先度の値が最大の保健指導プログラムの色を設定し、その保健指導プログラムでの優先度の値で、濃度を設定して、表示する。例えば、プログラムAは青、プログラムBは緑、プログラムCは黄色などとして、それぞれに、優先度の値に応じて色の濃さを設定する。
このようにすることで、どのような特徴を持った人には、どの保健指導プログラムが適しているか、ということを分かりやすく提示することができる。
さらに、図11や図15の対象者選定の処理では、個人毎に複数保健指導プログラムに対する優先度を計算し、図12の指導対象者選定画面1201では、プログラムAの優先度1211の隣に、計算した保健指導プログラム別の優先度を表示する。これにより、その個人に対してどのプログラムの優先度が高いのかを比較することができる。また、個人毎に複数の優先度を求めたとき、個人毎に複数のプログラムの優先度を比較し、個人毎にどのプログラムに適用するのがよいかを示すことができる。
また、これまで説明した実施例1及び2では、優先度モデルを表示する図16、17、18で、優先度の値を、色の濃度を段階的に変化させる方法を例に説明したが、優先度の値に合わせて、濃度値を変化させるようにしても良い。優先度の値は、主に0から1の間に分布するので、優先度と255の積の値を濃度とすることにより、優先度の値の変化をグラデーションで示すことができる。
また、これまで説明した実施例1及び2では、優先度モデル作成手段で、線形回帰分析を使う方法の例について説明したが、他の方法を用いても良い。例えば、線形回帰では優先度が1を超える場合や負の値をとる場合があるが、ロジスティック回帰分析を用いることで、結果が0から1の間に存在するようにできる。このため、改善、非改善の2値の値の推定がより実施しやすくなる効果がある。
また、これまで説明した実施例1及び2では、説明変数候補選択手段では、各検査項目や、検査項目の前年との変化量の値について、単独の項目毎に平均をとって、有意差検定を行う方法を示したが、別の方法を用いても良い。例えば、各検査項目は、相互に相関がある可能性がある。この場合、前述のロジスティック回帰分析を用い、平均値の変わりにオッズ比の値を用いることができる。ロジスティック回帰分析を用いることで、検査値間の相互の関係を調整した上で、改善と非改善のオッズ比を求めることができる。
また、これまで説明した実施例1及び2では、説明変数候補選択手段で、手動で説明変数の候補項目を決定していたが、別の方法を用いても良い。例えば、線形回帰分析やロジスティック回帰分析では、有意差のある項目から説明変数を追加していく変数増加方や、優位差の無い項目から説明変数を削除していく変数減少法など、変数選択の方法が存在する。このような方法を用いることで、説明変数の選定を自動化できる効果がある。
また、これまで説明した実施例1及び2では、説明変数として検査値のみを使用する方法について示したが、他の項目も組み合わせてもよい。例えば、過去に保健指導を受けた経験の有無を求めて、そのときの結果(成功/失敗)を、指導情報から求め、指導経験の有無を変数の候補に用いても良い。過去に指導を受けたが失敗した人などは、過去の失敗経験からうまくいかない場合があり、結果に影響する可能性があるが、これを優先度の算出に反映することができる。また、健診の時にとる問診の結果を説明変数に入れるようにしても良い。これにより、喫煙、飲酒、運動、食習慣などの要素を、優先度に反映することができる。
また、これまで説明した実施例1及び2では、ステップ801や1401で、健診情報を過去5年分、保健指導情報を過去4年分取得して、優先度モデルを作成する場合を例に説明したが、データの年度は別の期間のデータを用いるようにしても良い。保健指導を多数実施してデータ量が多ければ、1年分の保健指導情報と、2年分の健診情報を用いても良い。どの程度の期間を用いるかについては、プログラム中に記載する方法や、利用者が入力装置101を用いて入力するようにしてもよい。このとき、健診情報は、保健指導情報より1年分多くさかのぼってデータを取得することで、変化量を計算することができる。
また、これまで説明した実施例1、実施例2では、変化量の計算方法として、1年前の検査値との差を1年前の検査値で割る変化率を用いる方法について示したが、変化量を示す方法であれば、他の方法を用いてもよい。例えば、単純に1年前との差を用いる方法、1年前との差を、その差の標準偏差で割って標準化した値を用いる方法などが考えられる。標準化を用いた場合には、回帰分析の結果の変数に対する係数の大きさを、説明変数の寄与の大きさとして比較することができる。
次に、優先度モデル上に個人の優先度を表示する場合の例について説明する。図22は、指導対象者選定手段112が、優先度モデル上に個人の優先度を表示する画面の一例を示す図である。ここでは、図12の画面で、個人を指定すると、図22の画面に遷移するものとする。
図22の改善可能性表示画面2201は、図16の優先度モデル確認画面1601と同じように、優先度モデル表示領域1602、優先度モデルの凡例1603、優先度モデル表示の軸選択欄1604、モデル式選択欄1605を有している。これらの機能は、基本的に上述した例と同じである。それに加えて、改善可能性表示画面2201では、改善の可能性を表示する個人ID表示欄2202、優先度モデル表示領域1602の上、及び、凡例1603の上に、個人の位置を示すアイコン2203を表示している。
このように、改善可能性表示では、ある個人を指定したときに、その個人が優先度モデルの中でどの位置にいるかを、グラフ上のアイコンで表示することで、その人の優先度や、どの程度改善しやすいかということを分かりやすく提示することができる効果がある。
さらに、この改善可能性表示は、対象者を選定するときだけでなく、その個人に指導を行うときにも用いることができる。例えば、保健指導で継続的な指導プログラムへの参加を勧誘するとき、対象者が改善の可能性が高い人であれば、この画面を見せることで、その人に改善の可能性が高いことをわかりやすく提示することができる。
保健指導プログラムに参加することは、対象者にとって面倒だと感じることや、できないと感じることから拒否される場合があるが、このように、改善の可能性が高いことを提示することで、対象者の指導プログラムへの参加意欲を向上させることができる。
次に、評価手段114が実施する、優先度モデルの評価の一例について説明する。ここでは、2007年度の末に評価を行う場面を例に図23と図24を用いて説明する。これまでの説明した方法で2007年度の始めに作成した優先度モデルを用いて2007年度に保健指導対象者を選定し、その保健指導の結果を2007年度の末に評価する場面を想定している。このため、図3の指導情報には、2007年度の指導結果が記録されているものとする。
図23は、評価手段114が実施する優先度モデルの評価で、優先度モデルを適用して指導を行った後に指導の結果から優先度モデルを評価する処理の一例を示すフローチャートである。また、図24は、評価手段114が、出力装置102に表示する結果評価画面の一例を示す図である。
結果評価では、まず、評価手段114は、情報入出力手段107を介して、優先度モデル管理手段125から評価対象となる現在使用している優先度モデルを取得する(2301)。ここでは、評価手段114は、優先度モデル管理手段125で管理している、図6の優先度モデルの中から、適用フラグ613が“1”で、介入/非介入フラグ618が”1”の優先度モデル“M001”の情報を取得する。
次に、評価手段114は、情報入出力手段122を介して、指導情報管理手段122から、評価対象となる優先度モデルを使って対象者の選定を行っていた期間の指導情報を取得する(2302)。ここでは、指導情報管理手段122が管理している図3の指導情報の中から、開始日304が、優先度モデル“M001”の適用開始日614の“2007/04/01”以降で、既に終了日305と、指導結果306に、成功”1”、失敗”0”が記録されている指導情報を取得する。の指導情報を取得する。ここでは、2007年度末を想定しているので、開始日が2007年4月1日以降に開始して、指導結果が記録された情報が存在するものとする。
次に、評価手段114は、情報入出力手段122を介して、健診情報管理手段121から、取得した指導情報の人の健診情報を取得する(2303)。ここでは、前段のステップで取得した指導情報の導入判定健診ID303と健診ID210が一致する健診情報を取得する。さらに、その健診と同じ個人ID201で、受診日202の年度が1年度分前の健診を取得する。ここでは、受診日202が2007年度の健診結果と、2006年度の健診結果を取得する。
次に、保健指導の導入判定健診と、その前回の健診の時点で、病気の治療中でない人のみを抽出する(2304)。図2の健診情報には、図示されていないが、糖尿病、高血圧、脂質異常症など病気の治療中か否かの判定結果が記録されており、それを利用する。
次に、評価手段114は、優先度モデルの式に、健診情報を代入して、一人一人の優先度を計算し、全員分を合計する(2305)。ここでは、優先度モデル”M001”で使用している説明変数の“血糖値変化”と、“中性脂肪変化”を代入するため、血糖値207と、中性脂肪208のデータについて、2007年度分と2006年度分の差を2006年度分で割った変化率を求め、それを優先度モデル“M001”の式に代入して、優先度の値を求める。この優先度を対象者全員分計算し、合計する。
そして、その結果をグラフ表示する。グラフでは、優先度モデルを用いて改善を予測した値と、実測された改善の結果を表示して比較する(2306)。2304までのステップで抽出された対象者の人数を指導人数として、2306のステップで計算した対象者全員の優先度を合計した値を、推定改善人数として表示する。また、実測の情報としては、対象者を指導人数とするのは同じで、その人の指導情報の指導結果306が、改善“1”の人数を改善人数として表示する。図24は、このグラフ表示のステップ2306で表示するグラフの一例を示している。結果評価画面2401は、評価結果表示欄2402にグラフを表示する。また、評価結果を見て優先度モデルを新たに作り直す場合は、優先度モデル見直しボタン2403、評価を終了する場合の閉じるボタン2404がある。グラフ2402には、前述の予測のグラフ2411と、実測のグラフ2412を表示している。予測のグラフ2411および実測のグラフ2412は、対象となった指導の人数を2413、2415で表示する。そして、予測のグラフ2411では、優先度モデルから計算した改善人数2414を表示し、実測のグラフ2412では、実際に改善した人数(2416)を表示する。これにより、同じ対象者に対して、優先度モデルで推定した値と、実際の指導結果とが一致しているかどうかを比較することができる。
評価が終了したら、閉じるボタン2404を押して、評価の処理を終了する。また、評価の結果、推定値と実測値の違いが大きく、次の年に用いる優先度モデルを作り直したいと考えた場合には、優先度モデル見直しボタン2403を押すと、評価の処理を終了し、前述した優先度モデルの作成の処理を行う。
このように、優先度モデルを用いて指導対象者を選定し、実際に指導を行った後で、評価手段により、優先度モデルと実際の指導結果とを比較評価することができる。これにより、優先度モデルから期待した結果が得られているか評価することができる。指導対象者の特性やその分布は年々変化していく可能性があり、優先度モデルもそれに合わせて見直す必要がある。利用者は、この評価結果を見て優先度モデルを見直すべきか判断でき、優先度モデルを更新していくことができる効果がある。
次に、評価手段114が実施する優先度モデルの評価の別の例として、新しく作成した優先度モデルを評価する場合の例について説明する。
ここでは、2007年の始めに2007年度に使用する優先度モデルを作成するときに、2006年度の優先度モデルと、2007年度用に新しく作成した優先度モデルの比較評価を行う場面を想定する。図6には無いが、2006年度に使用していた優先度モデルが優先度モデル管理手段125に管理されているものとする。図8や図14で示した優先度モデル作成の処理の結果の表示・確認ステップ805、1407の中で、図16などで示したモデルの表示に加えて、評価手段114により、作成した優先度モデルの評価を行うものとする。例えば、図16の画面上に、図には無いが評価ボタンを用意し、それを押した場合に評価の処理が始まるものとする。
図25は、評価手段114により、新しく作成した優先度モデルを評価する処理の一例を示すフローチャートである。また、図26は、作成した優先度モデルの評価の結果を表示する画面の一例を示す図である。
まず、評価手段114は、優先度モデル管理手段125から、情報入出力手段107を解して現在使用している優先度モデルを取得する。さらに、評価手段114は、優先度モデル作成手段109が新しく作成した優先度モデルを取得する(2501)。
次に、評価手段114は、健診情報管理手段121から、情報入出力手段107を解して、最新年度がメタボリックシンドロームに該当する人の、最新年度と、その前年度の健診情報を取得する(2502)。ここでは、最新年度は2006年度、その前年度は2005年度となる。
次に、評価手段114は、取得した健診情報から、対象者の抽出を行う(2503)。ここでは、2006年度と2005年度の健診情報から、医師の判定情報を確認し、生活習慣病の治療中でない人のみを対象者として抽出する。
次に、現在使用している優先度モデルの式に、健診情報を代入して一人一人の優先度を計算し、全員分を合計する(2504)。ここでは、2006年度の優先度モデルの式が対象となり、その式で使用している説明変数の項目を、対象者の健診情報から取得して、計算する。
次に、新しく作成した優先度モデルの式に、健診情報を代入して一人一人の優先度を計算し、全員分を合計する(2405)。ここでは、優先度モデル作成手段109が作成した新しい優先度モデルを対象にして、その式で使用している説明変数の項目を、対象者の健診情報から取得して計算する。
そして、この結果をグラフ表示する(2506)。グラフでは、従来優先度モデルと、新優先度モデルを比較表示する。従来優先度モデルの方は、この計算で使用した対象者の人数を指導人数、2504のステップで計算した現在使用している優先度モデルから計算した人数を改善人数として表示する。また、新優先度モデルの方では、この計算で使用した対象者の人数を指導人数、2505のステップで計算した新しい優先度モデルから計算した人数を改善人数として表示する。
この結果表示した優先度モデル評価の画面の一例を図26に示す。優先度モデル評価画面2601は、2つの優先度モデルの比較を行う評価結果表示欄2602、新優先度モデルの作り直しを指示する優先度モデル見直しボタン2603、終了を示す、閉じるボタン2604を表示している。評価結果表示欄2602には、従来優先度モデルのグラフ2611と、新優先度モデルのグラフ2612を表示し、この評価に用いた対象者を指導人数2613、2615として表示し、現在使用している2006年度の優先度モデルから計算した優先度の合計を改善人数2614、新しい優先度モデルから計算した優先度の合計を改善人数2616として表示する。新しい優先度モデルの方が、改善の人数が多く、改善割合が高ければ、新しい優先度モデルの方が良いことがわかる。その場合は、閉じるボタン2604を押して処理を終了する。
また、従来優先度モデルを用いた場合と、優先度モデルを用いた場合とで、あまり結果が変わらないか、新優先度モデルを用いた場合の方が、改善人数が少ない場合は、新優先度モデルがよく無いということから、優先度モデル見直し2603ボタンを押して、優先度モデルを作り直すことができる。
以上示したように、新しい優先度モデルを作成したところで、評価手段114により、従来使用している優先度モデルを比較することができ、新しく作成した優先度モデルが良いモデルであるか判断することができる効果がある。
また、この例では、従来の優先度モデルと新優先度モデルの推定値同士を比較しているが、実際の結果と比較するようにしてもよい。対象者を2006年度に指導を実施した人とし、従来優先度モデルから計算した改善人数、新優先度モデルから計算した改善人数と、実際の結果の改善人数とを比較する。この場合、従来優先度モデルよりも、新優先度モデルの方が、より実際の結果に近ければ、良いモデルであると判断することができる。
また、これらの実施例では、評価手段114は、優先度モデルから計算した改善人数は、優先度を合計したものとしたが、優先度に閾値を設け、閾値を超えた場合を改善、閾値を超えない場合を改善しない、と判定するようにしてもよい。閾値の設定方法は、ROC曲線を使用するなどの方法が知られている。
また、評価手段では、比較している2つの改善人数について、統計的な有意差検定を行って、その結果を示すようにしてもよい。これにより、比較している2つの改善人数の値の差の有無を、統計的に判断することができる。
これまで説明した各実施例では、端末とデータベースを用いる構成を例として説明したが、データベースやその管理手段は別の形を採っても良い。例えば、健診情報は健診情報の管理システム、保健指導情報は保健指導情報の管理システムが別途存在し、そのデータを直接、情報入出力手段107が取得してもよいし、有線、無線等の通信手段を介して取得してもよい。また、情報入出力手段107は、データベースからデータを有線、無線等の通信手段や媒体等を介して取得するだけでなく、媒体等に格納されたデータを入力しても良い。また、マウスやキーボード、OCR装置などの入力装置を用いて、データを直接入力してもよい。健診情報、指導情報を始め、個人情報、グループ情報、優先度モデル情報、プログラム情報を、情報入出力手段107を用いて入出力できれば、あらゆる方法を用いることができる。
本発明の保健指導対象者選定支援システムの一構成例を示す図。
健診情報管理手段において管理する健診情報の一例を示す図。
指導情報管理手段において管理する指導情報の一例を示す図。
個人情報管理手段において管理する被保険者・被扶養者個人の情報の一例を示す図。
グループ情報管理手段で管理するグループ情報の一例を示す図。
優先度モデル管理手段が管理する優先度モデルの情報の一例を示す図。
プログラム情報管理手段が管理する保健指導プログラムの情報の一例を示す図。
優先順位モデルを過去のデータを用いて作成する処理手順の一例を示すフローチャート。
優先度モデル作成処理の操作者、端末、データベースの間のデータの流れの一例を示すシーケンス図。
端末130のディスプレイ102に表示する、初期画面の一例を示す図。
作成した優先度モデルを用いて保健指導対象者を選定する場合の処理の一例を示すフローチャート。
対象者選定を行うときの画面の一例を示す図。
作成した優先度モデルを用いて保健指導対象者を選定する場合の流れの一例を示すシーケンス図。
優先順位モデル作成処理の別の例を示したフローチャート。
指導した人の優先度モデルと、指導しなかった人の優先度モデルとを用いた対象者選定の処理の一例を示すフローチャート。
優先度モデル表示手段110が表示する優先度モデルの表示方法の一例を示す図。
優先度モデル表示手段110が表示する優先度モデルの表示方法の、非介入群の優先度モデルを表示した場合の一例を示す図。
図16、図17で示した優先度モデル表示手段110が表示する優先度モデルの表示方法で、介入群の優先度モデルと、非介入群の優先度モデルの差分を表示した場合の一例を示す図。
説明変数候補選定手段108で行う説明変数候補の選択方法の手順の一例を示すフローチャート。
結果を表示・確認するステップ805、1407で、説明変数の候補選択を行った結果を表示する画面の一例を示す図。
説明変数候補選定手段108が、非介入群の説明変数候補を選択を行う処理の流れの一例を示す図。
指導対象者選定手段112が、優先度モデル上に個人の優先度を表示する画面の一例を示す図。
評価手段114が実施する優先度モデルの評価で、優先度モデルを適用して指導を行った後に指導の結果から優先度モデルを評価する処理の一例を示すフローチャート。
評価手段114が、出力装置102に表示する結果評価画面の一例を示す図。
評価手段114により、新しく作成した優先度モデルを評価する処理の一例を示すフローチャート。
作成した優先度モデルの評価の結果を表示する画面の一例を示す図。
符号の説明
101…入力装置、102…出力装置、103…CPU、104…記憶装置、105…データベース、106…変化量計算手段、107…情報入出力手段、108…説明変数候補選定手段、109…優先度モデル作成手段、110…優先度モデル表示手段、111…優先度算出手段、112…指導対象者選定手段、113…回帰分析手段、121…健診情報管理手段、122…指導情報管理手段、123…個人情報管理手段、124…グループ情報管理手段、125…優先度モデル管理手段、126…プログラム情報管理手段、201、301、401…個人ID,202…受診日、203…受診時年齢、204…腹囲、205…最低血圧、206…最高血圧、207…血糖値、208…中性脂肪、210…健診ID、302…プログラムID、303…導入判定健診ID、304…開始日、305…終了日、306…指導結果、402…氏名、403…性別、404、501…グループID、502…グループ名、503…所在地、504…連絡先、601…優先度モデルテーブル、602…係数テーブル、611、621…優先度モデルID、612…作成日、613…適用フラグ、614…適用開始日、615…適用終了日、616…係数の数、617、701…プログラムID、618…介入/非介入フラグ、622…説明変数、623…係数、702…プログラム名、703…プログラム内容、704…指導コスト、901…操作者、1001…初期画面、1002…対象者選定ボタン、1003…優先度モデル作成ボタン、1201…指導対象者選定画面、1202…受診日開始日、1203…受診日終了日、1204…優先度計算ボタン、1205…結果表、1206…対象選定入力欄、1207…個人ID、1208…氏名、1209…性別、1210…事業所ID、1211…優先度、1601…優先度モデル確認表示画面、1602…優先度モデル表示領域、1603…優先度モデルの凡例、1604…軸選択欄、1605…モデル式選択欄、1606…決定ボタン、1607…見直しボタン、2001…項目比較画面、2002…プログラム情報表示欄、2003…検査値平均表示グラフ、2004…検査値変化量平均表示グラフ、2005…モデル式表示欄、2006…優先度モデル再計算ボタン、2007…優先度モデル確認ボタン、2011…改善群、2012…非改善群、2013…有意差ありの表示、2014…説明変数設定欄、2201…改善可能性表示画面、2202…個人ID表示欄、2203…個人の位置を示すアイコン、2401…結果評価画面、2402、2602…評価結果表示欄、2403、2603…優先度モデル見直しボタン、2404、2604…閉じるボタン、2411…予測のグラフ、2412…実測のグラフ、2601…優先度モデル評価画面、2611…従来優先度モデルのグラフ、2612…新優先度モデルのグラフ。