JP2009150651A - フリーラジカル消去能の測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フリーラジカルそのものの増減を直接検出し、フリーラジカル消去能を測定する方法を提供すること。
【解決手段】被検試料、ラジカル発生剤、及びスピントラップ剤を含む被検試料溶液にUV光を照射し、生成したフリーラジカルの電子常磁性共鳴(EPR)信号の強度を測定し、被検試料を含まない対照試料に対して測定されたEPR信号の強度に対する相対強度を求めることを特徴とするフリーラジカル消去能の測定方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、フリーラジカル消去能の測定方法に関する。
呼吸によって生体に取り込まれた酸素の約1%が生体傷害性の酸素ラジカルに変換される。健康な生体はこの傷害性フリーラジカルに対して自然防御能をもっており、ほとんどのフリーラジカルは無害な物質に変換される。疾病、老化、ストレスなどにより自然防御能が低下するとフリーラジカルによる傷害が顕著になり、発病、病状悪化、老化促進などにいたる。
ある種の食品及び食品添加物(サプリメント)は生体内の傷害性フリーラジカルを消去しフリーラジカルに対する自然防御能を強化すると考えられている。このような物質を総括的に抗酸化物とよぶ。抗酸化物の機能を比較、評価するときにはそのフリーラジカル消去能を測定し数値を算出することが必要である。
生体中のフリーラジカル検出法として最もよく用いられているのはスピントラップ法(spin trapping)である(非特許文献1)。スピンとはフリーラジカルのことであり、トラップとは「わな」つまり捕捉という意味である。この方法はスピントラップ剤(捕捉剤)とよばれる一連の化合物を発生したフリーラジカルと反応させ、生成した化学種(元のフリーラジカルよりは長寿命な化学種)を電子スピン共鳴(ESR)装置(EPR装置と同義)で測定し定性、定量を行うものである。このような研究を報告した論文は数千にのぼる。しかしこの生成化学種は必ずしも長期に安定ではなく、またESR信号からその定量を行うことは容易ではない。
インビトロではスピントラップ法は天然抗酸化剤のスーパーオキシドラジカル消去能の測定に盛んに用いられている。スーパーオキシドラジカルは生体内では酸素から直接生成し、生体傷害性は弱いがOHラジカルの前駆体としてよく研究されている。スピントラップ法による抗酸化剤のスーパーオキシドラジカル消去能の測定では、一定量のスーパーオキシドラジカルを酵素系を用いて生成させ、これをスピントラップ剤で捕捉する。同じ反応を抗酸化剤存在下で行うとスーパーオキシドラジカルは抗酸化剤によって一部消去されるのでスピントラップによって捕捉される分は減少しESR信号は減少する。減少の大きい抗酸化剤ほどスーパーオキシド消去能の高い抗酸化剤ということになる。しかしこの方法もスピントラップ剤に捕捉された生成物が不安定であれば実験に非常な困難が生じる。ESR測定中に信号が自然寿命によって減衰してしまうからである。よく使用されるスピントラップ剤、DMPO(5,5-dimethyl pyrolline 1-oxide、ジメチルピロリン 1−オキシド)ではスーパーオキシド付加物の半減期は約一分である。
さらに、抗酸化物のフリーラジカル消去能を測定する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1)。また、RANDOX社やRoche Diagnostics Systems社からは測定キットも市販されている。これらのうちRoche Diagnostics Systems社の製品が現在最も多く使われており、これを用いて決定された抗酸化食品の標準抗酸化剤を標準としたフリーラジカル消去能(Oxygen Radical Absorbance Capacity, ORAC)の値のデータベースも公開されている。この方法は蛍光ORAC法ともよばれる。
蛍光ORAC法の原理は、アルキルアゾ化合物の熱分解によって発生した酸素ラジカル(アルキルオキシラジカル)が、その系に加えた蛍光物質(蛍光プローブ)を傷害し蛍光強度の低下が起こることを利用するものである。ここに抗酸化剤が共存するとそれは蛍光物質をフリーラジカルの傷害から部分的に保護する役割を果たす。その結果、蛍光強度の減衰あるいは遅延がおきる。これを解析して標準物質に対するORAC値を計算する。この方法はアルキルオキシラジカルあるいはアルキルパーオキシラジカルによる傷害を測定していると言われているがその直接的証拠はない。
RANDOX法などの他の方法はすべてヒドロキシラジカル消去能の測定であり、ヒドロキシラジカル発生系にはFenton反応系と呼ばれる過酸化水素と2価鉄の混合物が用いられる。Fenton反応系は鉄と過酸化水素の混合と同時にヒドロキシラジカルの発生が始まり外部からの制御は不可能である。また2価鉄の塩の不純物としての3価鉄化合物の影響があるので、これをとりのぞくことが必要となる。
蛍光ORAC法ではフリーラジカルの発生速度はフリーラジカル発生剤の濃度、温度によりある程度外部からの制御が可能である。蛍光ORAC法の欠点は次のとおりである。
1.フリーラジカルの消去を直接見ず、蛍光の減衰(回復)で間接的に見ている。
2.蛍光物質を傷害したとされるフリーラジカルは同定できない。
3.蛍光強度に影響を与えない傷害は検出できない。
4.ラジカル発生が熱分解によるものであり、37℃での実験は高濃度(100mM)のラジカル発生剤を必要とする。
5.長時間(たとえば1時間)にわたる温度の正確な制御が必要である。
6.測定所要時間が長い(40分−60分)
従って、上記従来法の欠点のない方法、すなわち、フリーラジカルそのものの増減を直接検出し、フリーラジカル消去能を測定する方法に対する要望がある。
特開2005−321367 E. G. Janzen and B. J. Blackburn Detection and Identification of Short-Lived Free Radicals by Electron Spin Resonance Trapping Techniques ( Spin Trapping). Photolysis of Organolead, -tin, and -mercury Compounds. 1969 J. Am. Chem. Soc. 91: 4481-4490.
本発明の目的は、上記従来法の欠点のないフリーラジカル消去能の測定方法を提供することである。
本発明の他の目的は、フリーラジカルそのものの増減を直接検出し、フリーラジカル消去能を測定する方法を提供することである。
本発明は以下に示すフリーラジカル消去能の測定方法を提供するものである。
1.被検試料、ラジカル発生剤、及びスピントラップ剤を含む被検試料溶液にUV光を照射し、生成したフリーラジカルの電子常磁性共鳴(EPR)信号の強度を測定し、被検試料を含まない対照試料に対して測定されたEPR信号の強度に対する相対強度を求めることを特徴とするフリーラジカル消去能の測定方法。
2.試料溶液を含む試料管をEPRキャビティー内に設置し、該キャビティーの照射窓からUV光を照射することを特徴とする上記1記載の方法。
3.UV光の照射を、光ファイバーケーブルを介して行う上記1又は2記載の方法。
4.フリーラジカルが、ヒドロキシラジカル、アルキルオキシラジカル、アルキルパーオキシラジカル、及びアルキルラジカルからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1〜3のいずれか1項記載の方法。
5.UV光の照射時間が、2〜30秒である上記1〜4のいずれか1項記載の方法。
6.試料溶液の温度が、20〜40℃である上記1〜5のいずれか1項記載の方法。
本発明は、短時間の制御されたUV光照射によって生成した一定量のヒドロキシラジカル(OH)、アルキルオキシラジカル(RO)、アルキルパーオキシラジカル(ROO)、アルキルラジカル(R)の抗酸化物共存による減少度をスピントラップ法により定量し抗酸化物単位重量あたりのラジカル消去能を算出する方法である。本発明の方法はフリーラジカルを直接観測する方法であり、また外部制御の可能なUV光照射でフリーラジカルを一定量生成させる方法を用いているので、従来の蛍光ORAC法の欠点をほとんど解決することができる。具体的には、フリーラジカルの消去を直接観測するため、蛍光物質を傷害するフリーラジカルも同定でき、低濃度(1〜10mM)のラジカル発生剤の使用により測定が可能であり、測定時間が3〜10分程度と短く、また測定温度も20〜40℃程度であれば正確な制御は必要がない。
本発明は、短時間の制御されたUV光照射によって生成した一定量のフリーラジカルの抗酸化物共存による減少度をスピントラップ法により定量し抗酸化物単位重量あたりのラジカル消去能を算出する方法である。UV光照射によるフリーラジカル発生法、スピントラップ法、EPR分光法の3種の方法はそれ自体は公知であり、また、いずれか2種又は3種全部を組み合わせてフリーラジカルのEPR信号を測定する方法も公知である(例えば、Harbour TR, chow V, Bolton JR. Can J. Chem, 1974 ;52:3549-3553; Kotake Y., Janzen EG., J. Am, Chem. Soc. 1991; 113:9503-9506)。しかし、抗酸化物(あるいは一般の物質)のフリーラジカル消去能を測定するために、これら3種の全部を組み合わせた方法を用いることは従来全く知られていない。
一方、ヒドロキシラジカルとヒドロペルオキシ(スーパーオキシド)ラジカルについてはこれと異なった化学的−生物学的フリーラジカル発生法、スピントラップ法、EPR分光法の3種を組み合わせた方法を用いて消去能測定を行なう方法は公知である(例えば、ヒドロペルオキシ(スーパーオキシド)ラジカル:Midori Hiramatsu, Masahiro Kohno. Determination of Superoxide Dismutase Activity By Electron Spin Resonance Spectrometry Using Spin Trap Method JEOL NEWS , Vol. 23A NO. 1(1987; 7-9);ヒドロキシラジカル:Finkelstein E, Rosen GM, Rauckman EJ. Spin trapping of superoxide and hydroxyl radical: practical aspects. Arch Biochem Biophys. 1980; 200:1-16; Finkelstein EG, Rosen M, Raunkman EJ. Spin trapping. kinetics of the reaction of superoxide and hydroxyl radicals with nitrones. J Am Chem Soc. 1980; 102:4994-4999)。上記の消去能の計算法も公知である(Buettner GR, Masa RP, Methods Enzymol, 1990; 186: 127-132)。
しかし、アルキルオキシラジカル、アルキルペルオキシラジカル、アルキルラジカルについてはフリーラジカルを特定しかつ消去能を測定した例はない。
本発明の方法において、消去能測定対象となるフリーラジカルは以下に示す4種であり、これらはすべて全く同一な光分解法で純粋に生成させることができる。
測定対象となるフリーラジカルの種類
ヒドロキシラジカル(OH)
アルキルオキシラジカル(RO)
アルキルパーオキシラジカル(ROO)
アルキルラジカル(R)(アルキルラジカルは酸素ラジカルではない)
ここでアルキルの炭素数は好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3である。
アルキルの具体例としてはメチル、エチル、プロピル、t−ブチル、n-ブチル、
等が挙げられる。
本発明においてフリーラジカルの発生は、以下に示すようにすべてラジカル発生剤(先駆体)の短時間(好ましくは2〜30秒、さらに好ましくは5〜20秒)UV光照射による。
ヒドロキシラジカル:低濃度過酸化水素のUV光分解
アルキルオキシラジカル:アルキルアゾ化合物のUV光分解
アルキルパーオキシラジカル:アルキルヒドロペルオキシドのUV光分解
アルキルラジカル(R):過酸化水素−ジアルキルスルフォキシド混合物のUV光分解
試料溶液中のラジカル発生剤の濃度は、好ましくは1〜50mM、さらに好ましくは1〜10mMである。
本発明において、UV光分解の方法は、好ましくは、ラジカル発生剤(先駆体)、抗酸化物(被検試料、対照試料)、スピントラップ剤を含む試料溶液を含む試料管をEPRキャビティー内に設置した状態でキャビティー前面の照射窓からUV光を照射することにより行われる。このとき光源と試料との距離、照射時間には厳密な再現性が要求される。
UVランプからの光を直接窓に導入しその点滅を手動で行うことは原理的には可能であるが一般には極めて困難である。本発明を実施するには、キャビティーに固定した光ファイバーケーブルを通してのUV照射が可能で、しかも照射時間がシャッターにより百分の1秒の精度で制御が可能な市販の照射装置(RUVF203SF,ラジカルリサーチ社製)を用いることが好ましい。
UV光の波長は好ましくは250〜500nm、さらに好ましくは350〜500nmであり、照射量は好ましくは50〜200W、さらに好ましくは100〜150 (単位W)である。
発生フリーラジカルの同定
上記フリーラジカル発生系にスピントラップ剤を共存させるとこれがフリーラジカルを捕捉し、それを定量的に安定ラジカルに変換する。その生成物(安定ラジカル)は捕捉したフリーラジカルの特徴を備えた電子常磁性共鳴(Electron Paramagnetic Resonance)(EPR)(電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance)(ESR)ともいう)信号を示すので同定、定量が可能である。この方法は前述のとおりスピントラップ法(Spin Trapping)と呼ばれている。
ORAC−EPRの方法
フリーラジカル発生剤とスピントラップ剤の混合液(例えば、0.1〜0.3ml)をいれた試料管をEPR検出器(EPRキャビティー)に設置し、これにUV光を短時間(例えば、5〜10秒)照射し、捕捉生成物のEPRスペクトルの強度(I0)を記録しこれを発生フリーラジカルの濃度とする。
既知量の抗酸化物(被検試料)存在下、同様の測定を行い、同じEPR信号強度(フリーラジカル濃度)を記録する(これをIとする)。
スピントラップ剤
原理的には以上のフリーラジカルを捕捉検出できるスピントラップ剤であればいずれも本発明の方法に使用できる。例えば、DMPO(5,5-dimetyl pyrroline N-oxide)、DEPMPO(5-diethoxyphosphoryl 5-methyl pyrroline N-oxide)、CYPMPO(5-(2,2-dimetyl-1,3-propoxy cyclophosphoryl)-5-methyl-1-pyrroline N-oxide)等が挙げられる。
これらのうちDMPO、DEPMPO、CYPMPOは市販されている。しかし捕捉生成物の安定性とスピントラップ剤そのものの取り扱い易さは千差万別であり、双方に優れた特徴をもつスピントラップ剤としてはCYPMPO(ラジカルリサーチ社製、RR-071)が挙げられる。
試料溶液中のスピントラップ剤の濃度は、好ましくは5〜50mM、さらに好ましくは10〜20mMである。
試料溶液中の抗酸化物(被検試料)の濃度は、好ましくは0.5〜15mM、さらに好ましくは1〜10mMである。
ORAC値の計算法
この系での反応は、Rを酸素ラジカル、STをスピントラップ剤、AOXを抗酸化物(被検試料)、SAを捕捉生成物とすると以下の関係が成立する。
R + ST → SA : 反応速度定数 kST 生成量 I0
R + AOX → 生成物 : 反応速度定数 kAOX 生成量 I0− I
(I0−I)/I0= kAOX/kST[R][AOX]/[R][ST]
= kAOX/ kST[AOX]/[ST]
([ ]は濃度を表わす)
[ST]と[AOX]の反応による減少は無視できるので
(I0−I)/I0= kAOX/kST[AOX]0/[ST]0
([ ]0は初濃度)
故に、抗酸化物濃度/スピントラップ剤濃度を横軸に(I0−I)/I0を縦軸にとって描いたグラフは原点を通る直線となりその勾配がkAOX/kSTとなる。
同じスピントラップ剤を用いて測定を行い、その勾配を比較することによって抗酸化物間のフリーラジカル消去能の大小を決定することが出来る。
標準抗酸化剤の使用
ある抗酸化物の活性kAOX/kSTに対して(これを単位活性として1とする)相対的に他の抗酸化物の消去活性を決定することができる。スピントラップ剤としてCYPMPOを用いるとCYPMPOを標準とする消去活性を測定することができる。CYPMPO以外の抗酸化物を標準とするときには、まずその標準抗酸化物のCYPMPOに対する相対的な消去能を測定しその数値によって他の抗酸化物の消去能を規格化する。
例えば、上記AOXとしてTrolox(ビタミンE類似市販抗酸化剤)を選択しkTrolox/kCYPMPOを決定すると他の抗酸化物のフリーラジカル消去能をTroloxを標準とした相対値として算出することができる。ちなみに蛍光ORAC法のデータベースはすべてTroloxに対する相対値である。
実施例1
Trolox及びGSH(グルタチオン還元型)のアルキルオキシラジカル消去能の測定
以下に示す条件(いずれも混合後の最終濃度)でTrolox及びGSH(グルタチオン還元型)のアルキルオキシラジカル消去能をEPR分光器(日本電子社製、JES-TE series)を用いて測定した。
フリーラジカル発生剤AAPH(2,2'-azobis(2-methylpropionamidine) dihydrochloride): 1mM
スピントラップ剤:CYPMPO 10mM
抗酸化物
Trolox(0.01、0.05、0.1mM) または
GSH(0.1、5、10mM)
燐酸緩衝液 50mM
UV照射 5s
EPR分光器条件 マイクロ波8mW、磁場変調幅0.1mT、
磁場掃引幅15mT/1min(照射停止直後掃引開始)
結果を図1〜図5に示す。
図1は、抗酸化物を加えないときのEPR信号を示す。CYPMPOのアルキルオキシ(RO)ラジカル付加物と同定できる。*印でマークした信号の高さを濃度の指標に採用する(どの線を選択してもよい)。強度862任意単位(I0
図2は、GSH(5mM)存在下でのEPR信号を示す。*印の強度がGSHによる消去のため減少している。強度399任意単位(I)
図3は、Trolox(0.05mM)存在下でのEPR信号を示す。*印の強度がTroloxによる消去のため減少している。強度491任意単位(I)
図1,2、3の強度から(I0−I)/Iを計算し、[GSH]/[CYPMPO]あるいは[Trolox]/[CYPMPO]に対してプロットしたものを図4及び図5に示す。図4及び図5から、原点を通る近似的な直線が得られることがわかる。
Troloxをフリーラジカル消去能の標準とすると、GSHはその1.72倍(320/186)のフリーラジカル消去能をもっていることがわかる。他の抗酸化物についても全く同様な方法でアルキルオキシラジカル消去能を測定することが出来る。
他の3種のフリーラジカルについてもほぼ同様な方法で消去能を測定することができる。異なる点はラジカル発生剤の種類だけである。
例えば、ヒドロキシラジカルの場合、ラジカル発生剤として10mM過酸化水素を、アルキルパーオキシラジカル(t−ブチルペルオキシラジカル)の場合、10mMt−ブチルヒドロペルオキシドを、アルキルラジカル(メチルラジカル)の場合、50mM過酸化水素と10mMジメチルスルホキシドの混合物を使用すればよい。
実施例2
N−アセチルシステイン(NAC)のヒドロキシラジカル消去能の測定
以下に示す条件(いずれも混合後の最終濃度)で抗酸化物、NACのヒドロキシラジカル消去能をEPR分光器(日本電子社製、JES-TE series)を用いて測定した。
フリーラジカル発生剤:過酸化水素 10mM
スピントラップ剤:CYPMPO 10mM
抗酸化物
NAC(1、5、10mM) または
燐酸緩衝液 50mM
UV照射 5s
EPR分光器条件 マイクロ波8mW、磁場変調幅0.1mT、
磁場掃引幅15mT/1min(照射停止直後掃引開始)
結果を図6に示す。
[NAC]=0は抗酸化物を加えないときのEPR信号を示す。CYPMPOのヒドロキシラジカル付加物と同定できる。*印でマークした信号の高さを濃度の指標に採用する。強度862任意単位(I0
[NAC]=1mM、[NAC]=5mM、[NAC]=10mMは、NAC存在下でのEPR信号を示す。*印の強度がNACによる消去のため減少している。
図6の強度(任意単位)から(I0−I)/Iを計算し、[NAC]/[CYPMPO]に対してプロットしたものを図7に示す。原点を通る近似的な直線が得られる。その勾配からNACのヒドロキシラジカル消去能はCYPMPO標準で3.27±0.11である。DMPOの消去能はCYPMPO標準で1.34であるから、NACのヒドロキシラジカル消去能はDMPO標準で2.44(=3.27/1.34)となる。なお、DMPO標準の文献値は3.8である。
実施例1において測定された、抗酸化物を加えないときのEPR信号を示す。 実施例1において測定された、GSH(0.05mM)存在下でのEPR信号を示す。 実施例1において測定された、Trolox(0.05mM)存在下でのEPR信号を示す。 実施例1において測定された、(I0−I)/Iを[GSH]/[CYPMPO]に対してプロットした図である。 実施例1において測定された、(I0−I)/Iを[Trolox]/[CYPMPO]に対してプロットした図である。 実施例2において測定された、N−アセチルシステイン(NAC)不存在下([NAC]=0)又は存在下((1、5、又は10mM)でのEPR信号を示す。 実施例2において測定された、(I0−I)/Iを[NAC]/[CYPMPO]に対してプロットした図である。

Claims (6)

  1. 被検試料、ラジカル発生剤、及びスピントラップ剤を含む被検試料溶液にUV光を照射し、生成したフリーラジカルの電子常磁性共鳴(EPR)信号の強度を測定し、被検試料を含まない対照試料に対して測定されたEPR信号の強度に対する相対強度を求めることを特徴とするフリーラジカル消去能の測定方法。
  2. 試料溶液を含む試料管をEPRキャビティー内に設置し、該キャビティーの照射窓からUV光を照射することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. UV光の照射を、光ファイバーケーブルを介して行う請求項1又は2記載の方法。
  4. フリーラジカルが、ヒドロキシラジカル、アルキルオキシラジカル、アルキルパーオキシラジカル、及びアルキルラジカルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. UV光の照射時間が、2〜30秒である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 試料溶液の温度が、20〜40℃である請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
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