以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る内燃機関を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る内燃機関1は、乗用車やトラックなどの車両に搭載されて動力発生源となる。内燃機関1は、内燃機関本体100と、加圧手段としての過給機130と、熱交換手段としての熱交換装置150とを含んで構成される。まずは、内燃機関本体100を主に説明する。
内燃機関本体100は、シリンダ101内を往復運動するピストン102が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4ストロークエンジンである。
なお、内燃機関本体100は、ガソリンエンジンに限定されず、例えばディーゼルエンジンでもよい。また、内燃機関本体100は、4ストロークエンジンに限定されず、例えば2ストロークエンジンでもよい。また、内燃機関本体100は、シリンダ101とピストン102とを含んで構成されるレシプロエンジンに限定されず、例えばロータリーエンジンでもよい。
内燃機関本体100は、シリンダ101と、ピストン102と、筒内燃焼空間103と、クランク室104とを備える。シリンダ101は、円筒形状に形成される。ピストン102は、シリンダ101内に支持されて、シリンダ101の中心軸であるシリンダ軸線SL方向に往復運動する。筒内燃焼空間103は、空気と燃料との混合気が燃焼する空間である。また、筒内燃焼空間103は、ピストン102を挟んでシリンダ軸線SL方向の一方側に設けられる。クランク室104は、筒内燃焼空間103とは反対側である他方側に設けられる。
内燃機関本体100は、さらに、吸気ポート105と、排気ポート106と、インジェクタ107と、点火プラグ108と、クランクシャフト109とを備える。吸気ポート105は、筒内燃焼空間103に接続されて、筒内燃焼空間103内に空気を導入する。なお、以下内燃機関1に導入された空気を内燃機関1外の空気、すなわち大気と区別するため、吸入空気という。排気ポート106は、筒内燃焼空間103に接続されて、筒内燃焼空間103から混合気が燃焼した後の排気ガスを筒内燃焼空間103から排出する。
インジェクタ107は、例えば吸気ポート105に突出して設けられ、前記吸気ポート105に所定のタイミングで燃料を噴射する。なお、インジェクタ107は、筒内燃焼空間103内に突出して設けられ、前記筒内燃焼空間103内に所定のタイミングで燃料を噴射してもよい。点火プラグ108は、筒内燃焼空間103から突出して設けられ、前記筒内燃焼空間内の混合気に点火する。クランクシャフト109は、クランク室104に設けられ、ピストン102の往復運動を回転運動に変換する。
内燃機関本体100は、さらに、シリンダヘッド110と、シリンダブロック111と、クランクケース112と、コネクティングロッド113とを備える。シリンダヘッド110は、シリンダブロック111に連結される。クランクケース112は、シリンダヘッド110とは反対側のシリンダブロック111に連結される。シリンダブロック111の内部には、上述した円筒形状のシリンダ101が形成される。また、シリンダ101の内壁面であるシリンダ内壁面101aを、ピストン102が摺動する。
上述したように、クランクケース112の内部には、クランクシャフト109が回転できるように支持される。コネクティングロッド113は、ピストン102と、クランクシャフト109とを連結する。コネクティングロッド113は、一方の端部がピストン102と、ピストン102に対して回動できるように連結され、他方の端部が、クランクシャフト109とクランクシャフト109に対して回転できるように連結される。
ここで、シリンダヘッド110においてシリンダ101側の端面が筒内天井部103aである。また、ピストン102のクランク室104とは反対側の端面がピストン頂部102aである。筒内燃焼空間103は、筒内天井部103aとピストン頂部102aとシリンダ内壁面101aとによって囲まれて形成される。
上記構成により、ピストン102の往復運動は、コネクティングロッド113を介してクランクシャフト109の回転運動に変換される。クランクシャフト109によって回転運動に変換されたピストン102の往復運動は、内燃機関本体100の出力としてクランクシャフト109から取り出される。
また、クランクシャフト109には、クランク角センサD01が設けられる。クランク角センサD01は、クランクシャフト109の回転速度を検出する。クランク角センサD01は、後述するECU(Electronic Control Unit)114と電気的に接続される。これにより、ECU114は、クランク角センサD01からクランクシャフト109の回転速度を取得する。なお、ECU114は、クランクシャフト109の回転速度に基づいて内燃機関1が搭載される車両の速度を算出できる。
内燃機関本体100は、さらに、ECU114を備える。ECU114は、内燃機関1を構成する各構成要素の制御手段として、マイクロコンピュータを中心に構成される。ECU114は、例えば、インジェクタ107、点火プラグ108、電子スロットル弁117などと電気的に接続される。これにより、ECU114は、インジェクタ107の燃料噴射時期及び燃料噴射量、点火プラグ108の点火時期などを制御する。
内燃機関1は、吸気通路118上に吸入空気の流れの上流側から下流側に向けて順にエアクリーナ120と、過給機130のコンプレッサホイール133と、熱交換装置150の吸気通路用ウォータージャケット162と、インタークーラ121と、電子スロットル弁117と、圧力センサD02とを備える。なお、以下吸入空気や、排気ガス、水などの流体の流れの上流側を単に上流側といい、流体の流れの下流側を単に下流側という。また、内燃機関1は、吸気通路118上に上述した要素以外の要素が設けられてもよい。
エアクリーナ120は、最も上流側の吸気通路118に設けられ、吸入空気に含まれる塵を取り除く。コンプレッサホイール133は、吸入空気を加圧して下流側に送る。なお、過給機130に関しては、後に詳細に説明する。ここで吸入空気は、加圧されることにより温度が上昇する。
吸気通路用ウォータージャケット162は、加圧された吸入空気と吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水との間で熱交換する。なお、吸気通路用ウォータージャケット162の内部とは、ここでは、吸気通路用ウォータージャケット162を構成する部材の外殻と吸気通路118の外殻との間の空間をいう。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162は、加圧された吸入空気の温度を調節する。なお、吸気通路用ウォータージャケット162に関しては後に詳細に説明する。
インタークーラ121は、加圧された吸入空気を大気との間で熱交換する。車両が走行すると、インタークーラ121は、走行風が供給される。これにより、インタークーラは、加圧された吸入空気を冷却する。電子スロットル弁117は、筒内燃焼空間103に供給する空気量を調節する。
電子スロットル弁117は、ECU114と電気的に接続される。これにより、ECU114は、内燃機関本体100の運転状況に基づいて、電子スロットル弁117の開度を調節することで筒内燃焼空間103に供給する空気量を調節する。圧力センサD02は、コンプレッサホイール133によって加圧された吸入空気の圧力を検出する。また、圧力センサD02は、ECU114と電気的に接続される。これにより、ECU114は、圧力センサD02から吸入空気の圧力を取得する。
排気通路119は、一方の開口端が排気ポート106に接続され、他方の開口端が大気に開口する。これにより、排気通路119は、排気ポート106から排気ガスを大気に排出する。内燃機関1は、排気通路119上に排気ガスの流れの上流側から下流側に向けて順に過給機130のタービンホイール131と、触媒装置122とを備える。タービンホイール131は、コンプレッサホイール133の駆動力源である。触媒装置122は、排気ガスを浄化する。なお、内燃機関1は、排気通路119上に上述した要素以外の要素が設けられてもよい。
過給機130は、タービンホイール131と、シャフト132と、コンプレッサホイール133と、を含んで構成される。タービンホイール131は、排気通路119上に回転できるように設けられる。ここで、排気通路119を流れる排気ガスがタービンホイール131を通過すると、排気ガスがタービンホイール131に設けられる羽根に当たる。これにより、タービンホイール131は、排気ガスから運動エネルギーを得て回転する。また、タービンホイール131は、シャフト132と連結されると共に、シャフト132を回転軸として回転する。これにより、タービンホイール131は、シャフト132と共に回転する。
シャフト132は、略円筒形状に形成される。なお、シャフト132の形状は筒状に限定されず、タービンホイール131とコンプレッサホイール133とを連結し、タービンホイール131の回転をコンプレッサホイール133に伝達できる形状であればよい。
コンプレッサホイール133は、吸気通路118上に回転できるように設けられる。コンプレッサホイール133は、シャフト132と連結されると共に、シャフト132を回転軸として回転する。つまり、タービンホイール131とシャフト132とコンプレッサホイール133とは、シャフト132を回転軸として一体に回転する。これにより、タービンホイール131が、排気ガスから運動エネルギーを得て回転すると、コンプレッサホイール133も回転する。
コンプレッサホイール133が回転すると、コンプレッサホイール133に設けられる羽根に吸気通路118上の吸入空気が当たる。これにより、コンプレッサホイール133は、吸気通路118上の吸入空気に対してエネルギーを与える。よって、吸気通路118上の吸入空気は、コンプレッサホイール133によって加圧される。加圧された吸入空気は、吸気通路118を介して筒内燃焼空間103に過給される。これにより、筒内燃焼空間103に供給される吸入空気の量が増加するため、インジェクタ107が噴射する燃料の量が増加する。結果として、内燃機関本体100は、出力が向上する。
熱交換装置150は、第1水通路151と、第2水通路152と、第3水通路153と、第4水通路154と、上記課題を解決するための手段に記載の第1通路としての第5水通路155と、上記課題を解決するための手段第2通路としての第6水通路156と、第7水通路157と、上記課題を解決するための手段第3通路としての第8水通路158と、ウォーターアウトレット159と、ウォーターポンプ160と、内燃機関冷却手段としての内燃機関本体用ウォータージャケット161と、吸気通路用ウォータージャケット162と、媒体冷却手段としてのラジエタ163と、熱交換対象164とを含んで構成される。
第1水通路151から第8水通路158は、内燃機関1の各部位と熱交換する媒体である水が流れる回路を形成する。なお、水はこの回路上を循環する。ここで、一般的な技術として、例えば、冷却水をシャワー状にインタークーラ121や吸気通路118に吹き付けてこれらを冷却する技術がある。しかし、これらの冷却装置では、冷却対象の外面に水が付着するため、車両の走行中に塵が前記外面に付着するおそれがある。
本実施形態では、熱交換装置150は、回路上を水が循環するため、水は熱交換装置150の外部へ排出されない。これにより、冷却対象の外面に水が付着し、車両の走行中に塵が前記外面に付着するおそれを抑制できる。
ウォーターポンプ160は、水を加圧して前記通路上を循環させる。内燃機関本体用ウォータージャケット161は、シリンダブロック111と、シリンダヘッド110とに水が流れる通路として形成される。内燃機関本体用ウォータージャケット161は、この通路上を水が流れることによりシリンダブロック111及びシリンダヘッド110と水との間で熱交換させる。
この時、通常はシリンダブロック111及びシリンダヘッド110よりも水のほうが低温である。よって、シリンダブロック111及びシリンダヘッド110は、内燃機関本体用ウォータージャケット161により冷却される。
吸気通路用ウォータージャケット162は、例えば、コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118の側周部に水が流れる通路として設けられる。コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118は、コンプレッサホイール133より下流側である。よって、この部位を流れる吸入空気の温度は、コンプレッサホイール133よりも上流側の吸気通路118の内部を流れる吸入空気の温度よりも高温である。
また、コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118は、吸入空気を冷却するインタークーラ121よりも上流側である。これにより、コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118を流れる吸入空気の温度は、インタークーラ121よりも下流側の吸気通路118の内部を流れる吸入空気よりも高温である。
つまり、コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118は、吸気通路118全体の中で最も高温になる部位である。これにより、コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118で、吸入空気は吸気通路用ウォータージャケット162を流れる水よりも最も高温になる。
例えば、吸気通路118を流れる吸入空気が、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水と熱交換されることで冷却される場合を説明する。この場合、吸気通路用ウォータージャケット162を流れる水の温度が吸入空気の温度よりも低く、かつその温度差が大きいほど、吸入空気はより冷却される。よって、吸気通路用ウォータージャケット162は、コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118に設けられると好ましい。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162は、より吸入空気を冷却できる。
ここで、詳細は後述するが、本実施形態では、吸気通路用ウォータージャケット162は、吸気通路118を流れる吸入空気と吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水と熱交換させることで、吸入空気を暖める場合がある。この場合、吸気通路用ウォータージャケット162を流れる水の温度が吸入空気の温度よりも高く、かつその温度差が大きいほど、吸入空気はより暖められる。
ここで、吸気通路118を流れる吸入空気のうち、インタークーラ121よりも下流側の吸気通路118を流れる吸入空気は、比較的低温である。よって、吸入空気を暖める場合は、吸気通路用ウォータージャケット162は、インタークーラ121よりも下流側の吸気通路118に設けられると好ましい。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162は、より吸入空気を暖めることができる。
なお、吸気通路用ウォータージャケット162は、例えば、吸気通路118の内部に設けられてもよい。吸入空気は、水が流れる通路の側周部と、吸気通路118の内周部との間の空間を流れる。この場合、水は吸気通路用ウォータージャケット162を構成する部材を介して吸入空気と熱交換する。
但し、吸気通路用ウォータージャケット162を吸気通路118の側周部に設けると、吸気通路用ウォータージャケット162は吸気通路用ウォータージャケット162を構成する部材を介して大気とも熱交換できる。これにより、熱交換装置150は、吸気通路用ウォータージャケット162が過剰に熱くなることを抑制できる。なお、気通路用ウォータージャケット162が吸気通路118の内部に設けられる場合での、吸気通路用ウォータージャケット162の内部とは、吸気通路用ウォータージャケット162の外殻よりも内側の空間すべてをいう。
吸気通路用ウォータージャケット162が過剰に熱くなると、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水が沸騰するおそれがある。また、吸気通路用ウォータージャケット162を構成する材料に耐熱性が求められる。さらに、吸気通路用ウォータージャケット162の近傍に設けられる他部材へ空気を介して、または直接熱が伝わるおそれがある。よって、吸気通路用ウォータージャケット162を吸気通路118の側周部に設けることにより、熱交換装置150はこれらを抑制できる。
コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118の内部を流れる吸入空気は、まず吸気通路118を形成する部材と接触する。これにより、コンプレッサホイール133とインタークーラ121との間の吸気通路118の内部を流れる吸入空気は、吸気通路118を形成する部材と熱交換をする。次に、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水は、吸気通路118を形成する部材と熱交換をする。つまり、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水は、吸気通路118を形成する部材を介して吸気通路118の内部を流れる吸入空気と熱交換をする。
なお、吸気通路用ウォータージャケット162は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水と、吸気通路118を形成する部材との接触面積が大きいほど、水と吸入空気との熱交換を促進できる。よって、吸気通路用ウォータージャケット162は、水が流れる通路をより長く形成されると好ましい。
但し、吸気通路用ウォータージャケット162は、水が流れる通路を長く形成されるほど、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水の圧力損失が増大するおそれがある。これにより、内燃機関本体100が出力する動力のうち、ウォーターポンプ160に消費される動力が増大するおそれがある。
なお、以下の説明において、内燃機関本体100が出力する動力のうち、ウォーターポンプ160が消費する動力のように、内燃機関本体100が出力する動力のうち、車両が走行するのに消費する動力の以外の動力が増大することを単純に内燃機関本体100の出力損失が増大するという。
このように、吸気通路用ウォータージャケット162の水が流れる通路が長く形成されるほど、内燃機関本体100の損失は増大する。よって、吸気通路用ウォータージャケット162は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水の圧力損失による内燃機関本体100の出力損失量と、水と吸入空気との熱交換を促進することで向上した内燃機関本体100の出力量とのバランスを考慮して設計されるとよい。
吸気通路用ウォータージャケット162には、水温センサD03が設けられる。水温センサD03は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部に存在する水の温度を検出する。水温センサD03は、ECU114と電気的に接続されている。これにより、ECU114は、水温センサD03から、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる、または内部に溜まっている水の温度を取得する。
ラジエタ163は、内燃機関1の各部位と熱交換したことで温度が上昇した水と大気との間で熱交換させる。これにより、ラジエタ163は、水を冷却する。ラジエタ163は、一般的に、車体の一番前に設置される。これにより、ラジエタ163は、走行風をより多く受けて水を冷却する。また、ラジエタ163は、ラジエタ163と隣接して設けられる冷却ファンによっても水を冷却する。
次に、水が流れる通路の構成を説明する。第1水通路151は、一方の開口端がウォーターポンプ160に接続され、他方の開口端が内燃機関本体用ウォータージャケット161の水の流れにおける入口に接続される。なお、以下、通路において流体の流れの入口を単に入口といい、通路において流体の出口を単に出口という。
第2水通路152は、一方の開口端が内燃機関本体用ウォータージャケット161の出口に接続され、他方の開口端がウォーターアウトレット159に接続される。ウォーターアウトレット159は、水を集合、分岐する部位である。第3水通路153は、一方の開口端がウォーターアウトレット159に接続され、他方の開口端が熱交換対象164の入口に接続される。
熱交換対象164は、一般的な水冷装置が水と熱交換させる対象となる部位である。熱交換対象164は、例えば、スロットルボデー、過給機130、アイドルスピードコントロールチェックバルブ、ヒーターコアなどである。
第4水通路154は、一方の開口端が熱交換対象164の出口に接続され、他方の開口端がウォーターポンプ160に接続される。以上の、第1水通路151から第4水通路154によって形成される回路が、後述するサーモスタット165や流量調節弁166の開度に関係なく、水が循環する回路である。
第5水通路155は、一方の開口端がウォーターアウトレット159に接続され、他方の開口端が吸気通路用ウォータージャケット162の入口に接続される。第6水通路156は、一方の開口端が吸気通路用ウォータージャケット162の出口に接続され、他方の開口端がラジエタ163の入口に接続される。第7水通路157は、一方の開口端がラジエタ163の出口に接続され、他方の開口端が第4水通路154に開口する。
なお、第7水通路157はこれに限定されず、一方の開口端がラジエタ163の出口に接続され、他方の開口端が内燃機関本体用ウォータージャケット161よりも上流側に開口すればよい。例えば、第7水通路157は、他方の開口端が第1水通路151に開口してもよい。これにより、ラジエタ163によって冷却された水を内燃機関本体用ウォータージャケット161に供給できる。よって、熱交換装置150は、より内燃機関本体100を冷却できる。
熱交換装置150は、第7水通路157にサーモスタット165を備える。サーモスタット165は、通路上を循環する水の温度を調節する。サーモスタット165は、水の温度に基づいて作動する弁である。本実施形態では、例えばサーモスタット165は、アクチュエータを備え、ECU114によってその開度を制御される。サーモスタット165は、水を冷却する必要がある場合に、ECU114により開弁される。
サーモスタット165が開弁されると、ラジエタ163への回路は開かれる。よって、水はラジエタ163に供給される。これにより、水は、ラジエタ163によって冷却される。結果として、サーモスタット165は、水が過剰に熱くなることを抑制する。よって、サーモスタット165は、内燃機関本体100が過剰に熱くなることを抑制する。
なお、サーモスタット165は、アクチュエータを備えなくてもよい。例えば、サーモスタット165は、ECU114と電気的に接続されなくても自動的に弁が開閉する一般的な構成のものでもよい。
また、サーモスタット165は、内燃機関1の暖機を促す場合に、ラジエタ163への回路を閉じる。これにより、サーモスタット165は、内燃機関1の暖機の遅延を抑制できる。なお、サーモスタット165は、ラジエタ163へ供給する水の流量を調節できれば、第7水通路157に設けられなくてもよい。例えば、サーモスタット165は、第5水通路155に設けられてもよいし、第6水通路156に設けられてもよい。
第8水通路158は、水が吸気通路用ウォータージャケット162を迂回して流れるように設けられる。第8水通路158は、例えば、一方の開口端が第5水通路155に開口し、他方の開口端が第6水通路156に開口する。なお、第8水通路158はこれに限定されず、一方の開口端が吸気通路用ウォータージャケット162の上流側の通路に開口し、他方の開口端が吸気通路用ウォータージャケット162の下流側の通路に開口すればよい。例えば、第8水通路158は、他方の開口端がウォーターアウトレット159に開口してもよい。
熱交換装置150は、第8水通路158上に流量調節手段としての流量調節弁166を備える。流量調節弁166は、例えば電子的に開度を調節される電磁弁である。流量調節弁166は、ECU114と電気的に接続されて、ECU114によってその開度を調節される。
流量調節弁166は、第8水通路158を流れる水の流量を調節することで、吸気通路用ウォータージャケット162に供給する水の量を調節する。流量調節弁166の開度が小さくなるほど、吸気通路用ウォータージャケット162に供給される水の量は増大する。また、流量調節弁166の開度が大きくなるほど、吸気通路用ウォータージャケット162に供給される水の量は減少する。なお、この仕組みについては後ほど詳細に説明する。
図2は、実施形態1に係る熱交換装置の水の循環回路を示す説明図である。次に、図1及び図2を用いて上記構成の熱交換装置150の通路内の水の流れを説明する。なお、サーモスタット165の開度と流量調節弁166の開度とによって、水の流れは変化する。
ここでは、まず、サーモスタット165が閉弁しているときの水の流れを説明する。サーモスタット165が閉弁しているとき、サーモスタット165によって水は流れを塞き止められる。これにより、図2中、一点破線で囲って示す吸気通路用ウォータージャケット162、ラジエタ163、流量調節弁166に水は供給されない。
図2中の矢印AR01が示すように、ウォーターポンプ160よりも上流側の水はウォーターポンプ160によって内燃機関本体用ウォータージャケット161に向かって図1に示す第1水通路151上を流れる。次に、水は、シリンダブロック111に設けられる内燃機関本体用ウォータージャケット161の入口から内燃機関本体用ウォータージャケット161に導かれる。次に、水は、内燃機関本体用ウォータージャケット161の出口側に向かって内燃機関本体用ウォータージャケット161の内部を流れる。
この時、水は上述のように内燃機関本体100と熱交換して、内燃機関本体100を冷却する。内燃機関本体用ウォータージャケット161の出口から排出された水は、ウォーターアウトレット159に導かれる。ウォーターアウトレット159に導かれた水は、矢印AR02a及び矢印AR02bが示すように、熱交換対象164へ向かって図1に示す第3水通路153を流れる。具体的には、矢印AR02aが示すように、ウォーターアウトレット159に導かれた水の一部は、スロットルボデー、アイドルスピードコントロールチェックバルブ、過給機130へ導かれる。また、矢印AR02bが示すように、残りの水は、流量を調節するウォーターバルブを介してヒーターコアに供給される。
次に、矢印AR03が示すように、水はウォーターポンプ160に向かって図1に示す第4水通路154を流れる。熱交換装置150の水は、以上の回路を基本的な循環回路として循環する。なお、このように、熱交換装置150の通路を流れる水がラジエタ163に供給されずに循環すると、水はラジエタ163によって冷却されない。つまり、熱交換装置150は、内燃機関1の暖機を促す場合に、サーモスタット165の開度を小さくする。これにより、熱交換装置150は、内燃機関1のオーバークールを抑制する。
次に、サーモスタット165が閉弁していて、流量調節弁166が閉弁しているときの水の流れを説明する。サーモスタット165が開弁すると、図2中、吸気通路用ウォータージャケット162及びラジエタ163に水が供給される。
サーモスタット165が開弁すると、ウォーターアウトレット159に存在する水の少なくとも一部は、矢印AR04が示すように吸気通路用ウォータージャケット162に向かって図1に示す第5水通路155を流れる。なお、ウォーターアウトレット159に存在する水のうち、第5水通路155側に導かれる水の流量は、サーモスタット165の開度によって調節される。
第5水通路155上を流れる水は、第5水通路155と、第8水通路158との分岐点に至る。しかしながら流量調節弁166は閉弁しているため、第5水通路155上を流れる水の全てが吸気通路用ウォータージャケット162に導かれる。
吸気通路用ウォータージャケット162の入口から吸気通路用ウォータージャケット162に導かれた水は、吸気通路用ウォータージャケット162の出口に向かって吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる。次に、吸気通路用ウォータージャケット162の出口から排出された水は、矢印AR05が示すようにラジエタ163に向かって図1に示す第6水通路156上を流れる。
ラジエタ163に導かれた水は、大気と熱交換することで、自身の熱を大気に放熱する。これにより、熱交換装置150の内部の水は、サーモスタット165が開弁することにより、ラジエタ163によって冷却される。ラジエタ163によって冷却された水は、矢印AR06が示すように、サーモスタット165を介してウォーターポンプ160の上流側の通路である図1に示す第4水通路154に向かって第7水通路157上を流れる。そして、第7水通路157を流れてきた水、すなわちラジエタ163によって冷却された水は、上述の基本的な循環回路に合流する。
次に、流量調節弁166が開弁しているときの水の流れを説明する。流量調節弁166が開弁しているとき、第5水通路155と第6水通路156とは、吸気通路用ウォータージャケット162を迂回して第8水通路158を介して連通する。ここで、第6水通路156は、吸気通路用ウォータージャケット162よりも下流側に設けられている。一方、第5水通路155は、吸気通路用ウォータージャケット162よりも上流側に設けられている。上述したように、吸気通路用ウォータージャケット162によって水は圧力が低下する。
よって、第5水通路155上の水の圧力は、第6水通路156上の水の圧力よりも高い。よって、流量調節弁166が開弁しているとき、第5水通路155上の水の少なくとも一部は、矢印AR07が示すように、流量調節弁166を介して第6水通路156へ向かって図1に示す第8水通路158上を流れる。なお、流量調節弁166の開度が大きくなるほど、第8水通路158に導かれる水の流量は増加する。これにより、流量調節弁166の開度が大きくなるほど吸気通路用ウォータージャケット162に導かれる水の流量は減少する。結果として、流量調節弁166は、吸気通路用ウォータージャケット162に導かれる水の流量を調節する。
ここで、図1に示すように、第5水通路155と第8水通路158との分岐点を分岐点BPとする。熱交換装置150は、分岐点BPと吸気通路用ウォータージャケット162との間の第5水通路155にさらにもう1つ流量調節弁166が設けられてもよい。
例えば、熱交換装置150は、分岐点BPと吸気通路用ウォータージャケット162との間の第5水通路155に設けられる流量調節弁166を閉弁させ、第8水通路158に設けられる流量調節弁166を開弁させる。このように2つの流量調節弁166がECU114によって制御されることで、吸気通路用ウォータージャケット162に導かれる水の流量はより減少し、流量調節弁166の漏れ量を無視すれば吸気通路用ウォータージャケット162への水の供給を遮断できる。
このように、吸気通路用ウォータージャケット162は、流量調節弁166によって供給される水の流量を調節される。また、サーモスタット165は、図2中、一点破線で囲って示す吸気通路用ウォータージャケット162、ラジエタ163、流量調節弁166への水の供給を制御する。つまり、吸気通路用ウォータージャケット162は、サーモスタット165によって水の供給を遮断される。
図3は、実施形態1に係るECUの構成を示す概念図である。図1に示す熱交換装置150はECU114によって制御される。より具体的には、熱交換装置150は、ECU114によってサーモスタット165及び流量調節弁166が制御されることによって吸入空気と水との間の熱交換の有無を制御される。
図3に示すように、熱交換装置150は、ECU114の内部に流量調節装置170を有する。つまり、流量調節装置170は、ECU114に組み込まれて構成される。ECU114は、CPU114p(CPU:Central Processing Unit)と、記憶部114mと、入力ポートE01及び出力ポートE02と、入力インターフェースE03と、出力インターフェースE04とから構成される。なお、ECU114とは別個に、流量調節装置170を用意し、これをECU114に接続してもよい。
流量調節装置170は、弁開閉判断部171と、情報取得部172と、流量調節弁動作制御部173と、サーモスタット動作制御部174と、機関制御部175とを含んで構成される。弁開閉判断部171は、情報取得部172が取得した情報に基づき、図1に示す流量調節弁166を開弁すべきか閉弁すべきかを判断する。情報取得部172は、例えば図1に示すクランク角センサD01、圧力センサD02、水温センサD03などの検出手段が検出した結果、後述する記憶部114mに格納された情報、機関制御部175が有する情報、などを取得する。
流量調節弁動作制御部173は、弁開閉判断部171の判断に基づいて、流量調節弁166の開度を大きくする、または流量調節弁166の開度を小さくする。サーモスタット動作制御部174は、弁開閉判断部171の判断に基づいて、サーモスタット165の開度を大きくする、またはサーモスタット165の開度を小さくする。
CPU114pには、上述の流量調節装置170以外に、機関制御部175が含まれる。機関制御部175は、内燃機関1の運転制御を司る。CPU114pと、記憶部114mとは、バスB03とにより接続される。CPU114pと入力ポートE01とは、バスB01とにより接続される。CPU114pと出力ポートE02とは、バスB02とにより接続される。
流量調節装置170の情報取得部172は、機関制御部175が有する内燃機関1の運転制御データを取得し、これを利用する。また、流量調節装置170は、流量調節弁166の制御手順を、機関制御部175があらかじめ備えている内燃機関1の運転制御ルーチンに割り込ませてもよい。
入力ポートE01には、入力インターフェースE03が接続されている。入力インターフェースE03には、図1に示すクランク角センサD01、圧力センサD02、水温センサD03、その他各種検出手段が接続されている。これらの各種検出手段から出力される信号は、入力インターフェースE03内のアナログ/デジタルコンバータE03aやディジタル入力バッファE03bにより、CPU114pが利用できる信号に変換されて入力ポートE01へ送られる。これにより、CPU114pは、流量調節弁166の制御や、内燃機関1の制御に必要な情報を取得できる。
出力ポートE02には、出力インターフェースE04が接続されている。出力インターフェースE04には、サーモスタット165、流量調節弁166、その他内燃機関1における制御対象が接続されている。出力インターフェースE04は、制御回路E04a、制御回路E04bを備えており、CPU114pで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。
このような構成により、前記検出手段からの出力信号に基づき、ECU114のCPU114pは、サーモスタット165と流量調節弁166とを制御する。記憶部114mには、流量調節装置170によるサーモスタット165と流量調節弁166との制御手順を含むコンピュータプログラムや制御データマップが格納されている。ここで、記憶部114mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
上記コンピュータプログラムは、CPU114pへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、サーモスタット165と流量調節弁166との制御を実現できるものであってもよい。また、この流量調節装置170は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、上記構成と同等の機能を実現するものであってもよい。
図4は、実施形態1に係るサーモスタットと流量調節弁との制御手順を説明するフローチャートである。次に、図4を用いて、サーモスタット165と流量調節弁166との制御手順を説明する。流量調節装置170の情報取得部172は、ステップST101として、水温センサD03から吸気通路用ウォータージャケット162に導かれた水の温度である水温Tnを取得する。
次にステップST102として、弁開閉判断部171は、水温Tnと暖機完了判定水温Tsとを比較する。暖機完了判定水温Tsは、内燃機関1が比較的冷めた状態、いわゆる冷間始動であるか否かを判断するための値である。例えば、弁開閉判断部171は、水温Tnが外気と略同等の値であれば、内燃機関1は冷間始動であると判断する。つまり、ステップST102では、弁開閉判断部171は、内燃機関1が冷間始動であるか否かを判断する。
なお、弁開閉判断部171は、吸気通路用ウォータージャケット162に設けられる水温センサD03から取得した水温Tnを用いて、内燃機関1が冷間始動であるか否かを判断したが、本実施形態はこれに限定されない。弁開閉判断部171は、内燃機関1が冷間始動であるか否かを判断できればよい。
例えば、弁開閉判断部171は、触媒装置122の温度や、図1に示す点火プラグ108による最後の点火があってから現在にいたるまでの時間経過に基づいて内燃機関1が冷間始動であるか否かを判断してもよい。また、例えば、弁開閉判断部171は、冷間始動時独特の制御である点火プラグ108による点火時期の大幅遅角があったときに、冷間始動時であると判断してもよい。
ステップST102で、内燃機関1は冷間始動ではないと判定されると(ステップST102、Yes)、次にステップST103として、サーモスタット動作制御部174は、サーモスタット165を開弁する。サーモスタット165が開弁すると、水は吸気通路用ウォータージャケット162及びラジエタ163に供給される。但し、図1に示す分岐点BPと吸気通路用ウォータージャケット162との間の第5水通路155にさらにもう1つ流量調節弁166が設けられている場合は除く。この場合、サーモスタット165が開弁していても、分岐点BPと吸気通路用ウォータージャケット162との間の第5水通路155に設けられる流量調節弁166が閉弁している場合、水はラジエタ163に供給されるが、吸気通路用ウォータージャケット162には供給されない。
次にステップST104として、情報取得部172は、クランク角センサD01から車速Vnを取得する。また、情報取得部172は、圧力センサD02から吸気圧Pnを取得する。なお、情報取得部172は、車速Vnを先に取得してもよいし、吸気圧Pnを先に取得してもよい。
次にステップST105として、弁開閉判断部171は、例えば、車速Vnと吸気圧Pnとに基づいて内燃機関本体100の負荷Dnを算出する。通常、吸気圧Pnが大きくなるほど、車速Vnも大きくなる。しかし、内燃機関1を搭載した車両が上り坂を走行する場合や、前記車両が荷物を搭載して走行する場合、特に内燃機関1が搭載される車両がトレーラのような牽引車両の場合、吸気圧Pnに対する車速Vnの大きさが、通常よりも小さくなる。この状態を前記車両に設けられる内燃機関本体100の高負荷時とする。
なお、弁開閉判断部171は、負荷Dnを車速Vnと吸気圧Pnとに基づいて算出するが、本実施形態はこれに限定されない。弁開閉判断部171は、例えば、図1に示すインジェクタ107の燃料噴射量に基づいて負荷Dnを算出してもよいし、電子スロットル弁117の開度に基づいて負荷Dnを算出してもよい。
ここから先は、流量調節装置170は、内燃機関1の運転状況に基づいて流量調節弁166を制御する。具体的には、弁開閉判断部171は、車両の車速Vn(低速、高速)と、内燃機関本体100の負荷Dn(低負荷、中負荷、高負荷)との組み合わせに基づいて流量調節弁166の制御内容を決定する。以下、車両の車速Vnと内燃機関本体100の負荷Dnとを、低速‐低負荷、低速‐中負荷、低速‐高負荷、高速‐低負荷、高速‐中負荷、高速‐高負荷の6パターンに分ける。例えば、内燃機関本体100が、低速‐低負荷の時は、車両の車速Vnが比較的小さく、内燃機関本体100の負荷Dnが比較的小さい状態をいう。
なお、高速は低速よりも車速Vnが速い状態をいう。また、高負荷は中負荷よりも負荷Dnが大きい状態であり、中負荷は低負荷よりも負荷Dnが小さい状態をいう。ここでは、車速Vnが境界速度Vαよりも大きい状態を高速とし、車速Vnが境界速度Vα以下の状態を低速とする。また、負荷Dnが境界負荷Dβよりも大きい状態を高負荷とし、負荷Dnが境界負荷Dαよりも小さい状態を低負荷とし、負荷Dnが境界負荷Dβ以下であって、境界負荷Dα以上の状態を中負荷とする。
なお、流量調節装置170は、上述の6パターン以外にも場合分けをして流量調節弁166を制御してもよい。例えば、車速Vnを低速、中速、高速の3パターンに分けてもよい。また、流量調節装置170は、車速Vnと負荷Dnとを変数に設定し、この2つの変数を含んで構成される式、またはマップにより、流量調節弁166の開度を求めてもよい。つまり、流量調節装置170は、少なくとも車速Vnと負荷Dnとに基づいて、流量調節弁166を制御すればよい。
次にステップST106として、弁開閉判断部171は、車速Vnと、境界速度Vαとを比較する。つまり、弁開閉判断部171は、車両が低速か高速かを判断する。弁開閉判断部171は、車速Vnが境界速度Vαよりも小さい、つまり車両が低速であると判断すると(ステップST106、Yes)、次にステップST107へ移行する。
次にステップST107として、弁開閉判断部171は、負荷Dnと、境界負荷Dαとを比較する。つまり、弁開閉判断部171は、内燃機関本体100が低負荷状態か否かを判断する。弁開閉判断部171は、負荷Dnが境界負荷Dαよりも小さい、つまり内燃機関本体100が低負荷状態であると判断すると(ステップST107、Yes)、ステップST108へ移行する。
ここでのステップST108は、車両が低速‐低負荷状態における弁開閉判断部171の流量調節弁166の制御内容である。ステップST108として、流量調節弁動作制御部173は、流量調節弁166を閉弁させる。これにより、図1に示す第5水通路155を流れる水のうち、全ての水が吸気通路用ウォータージャケット162に供給される。ここで、車両が低速‐低負荷状態では、吸入空気は比較的低温な状態となる。吸入空気が比較的低温の場合、一般的に、内燃機関本体100の燃焼速度が低下する。これにより、内燃機関本体100の燃焼が不安定になるおそれがある。結果として、内燃機関本体100の出力が低下するおそれがある。
図1に示すように、吸気通路用ウォータージャケット162は内燃機関本体用ウォータージャケット161よりも下流側に設けられる。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水は、内燃機関本体100から熱を得ている。よって、車両が低速‐低負荷状態である場合、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水は、吸気通路118上を流れる吸入空気よりも高温な状態となる。
図5は、内燃機関本体に導入される吸入空気の温度と一般的な内燃機関に導入される吸入空気の温度とを比べて示すグラフである。温度T04は、吸気通路用ウォータージャケット162を備えない一般的な内燃機関に導入される吸入空気の温度を示す。
吸気通路用ウォータージャケット162は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水と吸入空気との間で熱交換を行い、吸入空気を暖める。これにより、図5に示すように、内燃機関本体100が低負荷状態では、吸入空気の温度は一般的な内燃機関の吸入空気の温度よりも高くなる。結果として、熱交換装置150は、低速‐低負荷状態での内燃機関本体100の出力低下を抑制できる。また、内燃機関1は、燃焼速度の低下が抑制されるので、耐ノック性の低下も抑制できる。
なお、流量調節弁動作制御部173は、流量調節弁166を完全な開弁状態と完全な閉弁状態との2つの状態に制御してもよいし、例えば、数段階に分けて流量調節弁166の開度を調節してもよい。これにより、流量調節装置170は、吸気通路用ウォータージャケット162の吸入空気との熱交換を制御できる。
以上で、流量調節装置170はサーモスタット165及び流量調節弁166の制御手順を終了し、再度ステップST101からサーモスタット165及び流量調節弁166の制御を行う。
次にステップST107で、弁開閉判断部171が、負荷Dnは境界負荷Dα以上であると判断した場合(ステップST107、No)、つまり弁開閉判断部171が、内燃機関本体100は中負荷または高負荷状態であると判断した場合を説明する。ステップST109として、弁開閉判断部171は、負荷Dnと境界負荷Dβとを比較する。つまり、弁開閉判断部171は、内燃機関本体100が高負荷状態か否かを判断する。弁開閉判断部171は、負荷Dnが境界負荷Dβよりも大きい、つまり内燃機関本体100が高負荷状態であると判断すると(ステップST109、Yes)、ステップST108へ移行する。
ここでのステップST108は、内燃機関本体100が低速‐高負荷状態における弁開閉判断部171の流量調節弁166の制御内容である。ステップST108として、流量調節弁動作制御部173は、流量調節弁166を閉弁させる。これにより、図1に示す第5水通路155を流れる水のうち、全ての水が吸気通路用ウォータージャケット162に供給される。
ここで車速Vnが小さいときは、車速Vnが大きいときに比べてインタークーラ121に供給される走行風が少ない。よって、インタークーラ121の吸入空気に対する冷却性能が不十分となる。これにより、内燃機関本体100が低速‐高負荷状態では、吸入空気は比較的高温な状態となる。吸入空気が比較的高温の場合、吸入空気は低温の場合よりも密度が低下する。これにより、図1に示す筒内燃焼空間103に供給される酸素量が低下する。筒内燃焼空間103に供給される酸素量が低下すると、図1に示すECU114はインジェクタ107の燃料噴射量を低下させる。よって、内燃機関本体100の出力が低下するおそれがある。
図6は、加圧直後の吸入空気の圧力と、温度との関係を示すグラフである。図6において、温度T01は、図1に示すコンプレッサホイール133と吸気通路用ウォータージャケット162との間の吸気通路118上の吸入空気の温度を示す。
図6に示すように、吸入空気の圧力が高くなるほど、つまり内燃機関本体100の負荷が大きくなるほど、吸入空気の温度は上昇する。内燃機関本体100が低速‐高負荷状態の時、最大でも温度T01は、170度近くまで上昇する。この時、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水の温度は、およそ80度前後である。
よって、内燃機関本体100が低速‐高負荷状態である場合、吸気通路118上を流れる吸入空気は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水よりも高温な状態となる。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水と吸入空気との間で熱交換を行い、吸入空気を冷却する。
図7は、吸入空気の圧力と、温度との関係を示すグラフである。温度T02aは、流量調節弁166が開弁しているときの図1に示す吸気通路用ウォータージャケット162とインタークーラ121との間の吸気通路118上の吸入空気の温度を示す。温度T02bは、流量調節弁166が閉弁しているときの吸気通路用ウォータージャケット162とインタークーラ121との間の吸気通路118上の吸入空気の温度を示す。温度T03aは、流量調節弁166が開弁しているときのインタークーラ121と内燃機関本体100との間の吸気通路118上の吸入空気の温度を示す。温度T03bは、流量調節弁166が閉弁しているときのインタークーラ121と内燃機関本体100との間の吸気通路118上の吸入空気の温度を示す。
図7の温度T02bが示すように、吸気通路用ウォータージャケット162は、インタークーラ121に導かれる吸入空気の温度を低下させる。結果として、温度T03bが示すように、吸気通路用ウォータージャケット162は、内燃機関本体100に導かれる吸入空気の温度を低下させる。これにより、熱交換装置150は、吸入空気の密度の低下を抑制できる。また、図5に示すように、温度T03bは、一般的な内燃機関における温度T04よりも低い。よって、熱交換装置150は、低速‐高負荷状態での図1に示す筒内燃焼空間103に供給される酸素量の低下を抑制できる。これにより、熱交換装置150は、インジェクタ107の燃料噴射量の低下を抑制できる。結果として、熱交換装置150は、内燃機関本体100の出力の低下を抑制できる。
また、図5に示すように、内燃機関本体100が中負荷以上の状態では、最終的に内燃機関1に導入される吸入空気の温度は一般的な内燃機関に導入される吸入空気の温度より低い。これにより、内燃機関1は、一般的な内燃機関よりも高負荷状態での内燃機関本体100の筒内燃焼空間103に供給される吸入空気の密度の低下を抑制できる。結果として、内燃機関1は、一般的な内燃機関よりも筒内燃焼空間103に供給される酸素量の低下を抑制できる。よって、内燃機関1は、一般的な内燃機関よりも、内燃機関本体100の出力の低下を抑制できる。
次に図4に示すステップST109で、弁開閉判断部171が、負荷Dnは境界負荷Dβ以下であると判断した場合(ステップST109、No)、つまり弁開閉判断部171が、内燃機関本体100は中負荷であると判断した場合を説明する。ステップST110として、弁開閉判断部171は、ステップST101で取得した水温Tnと、境界温度Tαとを比較する。なお、境界温度Tαは、水温Tnがそれ以上の温度であった場合、吸気通路用ウォータージャケット162はオーバーヒートするおそれがある状態であると判断できる温度である。
また、情報取得部172は、このステップST110の直前に、水温Tnを再度取得してもよい。これにより、流量調節装置170は、最新の情報で流量調節弁166を制御できる。但し、ステップST101で取得した水温Tnを用いることにより、流量調節装置170は流量調節弁166の制御における処理数の増加を抑制できる。
ステップST110で、水温Tnは境界温度Tαよりも大きいと判断されると、流量調節装置170はステップST108へ移行する。低速‐中負荷状態では、図1に示すインタークーラ121は適度な量の走行風を受ける。なお、適度な量の走行風とは、インタークーラ121によって吸入空気が適正な温度に冷却される程度の風量をいう。
これにより、インタークーラ121は、吸入空気の温度が、内燃機関本体100が良好に燃焼を行える温度になるように、吸入空気を冷却する。よって、吸入空気の温度は、内燃機関本体100が良好に燃焼を行える温度となる。つまり、吸入空気は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水との間で熱交換される必要はない。
しかしながら、吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水は、比較的高温となっている。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162が過剰に熱くなるおそれがある。吸気通路用ウォータージャケット162が過剰に熱くなると、上述したように、水の沸騰、吸気通路用ウォータージャケット162を構成する材料の耐熱性不足、他部材への熱の影響、などのおそれがある。
よって、ステップST108として、流量調節弁動作制御部173は、流量調節弁166を閉弁させる。これにより、図1に示す第5水通路155を流れる水のうち、吸気通路用ウォータージャケット162に供給される水が増加する。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水の温度は低下する。よって、流量調節装置170は、吸気通路用ウォータージャケット162のオーバーヒートを抑制できる。
次にステップST110で、弁開閉判断部171が、水温Tnは境界温度Tα以下であると判断した場合(ステップST110、No)、つまり弁開閉判断部171が、内燃機関本体100は低速‐中負荷状態かつ、吸気通路用ウォータージャケット162がオーバーヒートするおそれはないと判断した場合を説明する。
ステップST110で、水温Tnは境界温度Tα以下であると判断されると、流量調節装置170はステップST111へ移行する。低速‐中負荷状態では、上述のように、吸入空気の温度は、内燃機関本体100が良好に燃焼を行える温度となる。よって、吸入空気は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水との間で熱交換される必要はない。
ステップST111として、流量調節弁動作制御部173は、流量調節弁166を開弁させる。これにより、図1に示す第5水通路155を流れる水のうち、吸気通路用ウォータージャケット162に供給される水が減少する。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162は吸入空気を過剰に冷却しない。また、第5水通路155を流れる水は、吸気通路用ウォータージャケット162よりも圧力損失の少ない第8水通路158を流れる。これにより、熱交換装置150は、図1に示すウォーターポンプ160における水の圧力損失を抑制できる。
また、ウォーターポンプ160における水の圧力損失が抑制されるほど、熱交換装置150が必要とするポンプ容量は低下する。結果として、内燃機関本体100の出力の低下が抑制される。特に、内燃機関本体100の出力の小さいアイドル時は、ウォーターポンプ160の容量低下によって、内燃機関本体100が消費する燃料の量が低下する。また、内燃機関1は、ウォーターポンプ160が小型化できる。これにより、内燃機関1は、製作されるのに必要とするコストを抑制できる。また、内燃機関1は、部品の配設スペースが向上する。
次にステップST106で、弁開閉判断部171が、車速Vnは境界速度Vα以上であると判断した場合(ステップST106、No)、つまり弁開閉判断部171が、車両は高速であると判断した場合を説明する。
ステップST106で、車速Vnは境界速度Vα以上であると判断されると、流量調節装置170はステップST112へ移行する。ステップST112として、弁開閉判断部171は、負荷Dnと、境界負荷Dαとを比較する。つまり、弁開閉判断部171は、内燃機関本体100が低負荷状態か中負荷以上の状態かを判断する。弁開閉判断部171は、負荷Dnが境界負荷Dαよりも小さい、つまり内燃機関本体100が低負荷状態であると判断すると(ステップST112、Yes)、ステップST108へ移行する。
ここでのステップST108は、内燃機関本体100が高速‐低負荷状態における弁開閉判断部171の流量調節弁166の制御内容である。ここで、内燃機関本体100が高速‐低負荷状態の時、低速の場合に比べて、図1に示すインタークーラ121に供給される走行風多い。よって、インタークーラ121の吸入空気に対する冷却性能が高くなる。しかしながら、内燃機関本体100は低負荷な状態で運転されている。よって、吸入空気の温度は比較的低温である。
これにより、吸入空気の温度がインタークーラ121によりさらに冷却されるおそれがある。よって、内燃機関本体100は、燃焼速度が低下する。これにより、内燃機関本体100の燃焼が不安定になるおそれがある。結果として、内燃機関本体100の出力が低下するおそれがある。そこで、ステップST108として、流量調節弁動作制御部173は、流量調節弁166を閉弁させる。これにより、図1に示す第5水通路155を流れる水のうち、全ての水が吸気通路用ウォータージャケット162に供給される。
この時、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水は、内燃機関本体100から熱を得ている。よって、内燃機関本体100が高速‐低負荷状態である場合、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水は、吸気通路118上を流れる吸入空気よりも高温な状態となる。よって、吸気通路用ウォータージャケット162は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水と吸入空気との間で熱交換を行い、吸入空気を暖める。これにより、吸入空気の温度は上昇する。結果として、熱交換装置150は、低速‐低負荷状態での内燃機関本体100の出力低下を抑制できる。
次にステップST112で、弁開閉判断部171が、負荷Dnは境界負荷Dα以上であると判断した場合(ステップST112、No)、つまり弁開閉判断部171が、内燃機関本体100は中負荷または高負荷状態であると判断した場合を説明する。
ステップST112で、負荷Dnは境界負荷Dα以上であると判断されると、流量調節装置170はステップST110へ移行する。なお、内燃機関本体100が高速‐中負荷状態での流量調節装置170の流量調節弁166の制御と、高速‐高負荷状態での流量調節装置170の流量調節弁166の制御とは同様である。ここでのステップST110は、内燃機関本体100が高速‐中負荷、または高負荷状態における弁開閉判断部171の流量調節弁166の制御内容である。
ここで、内燃機関本体100が高速‐中負荷、または高負荷状態の時、図1に示すインタークーラ121は適度な走行風を受ける。これにより、インタークーラ121は、吸入空気の温度が、内燃機関本体100が良好に燃焼を行える温度になるように、吸入空気を冷却する。よって、吸入空気の温度は、内燃機関本体100が良好に燃焼を行える温度となる。つまり、吸入空気は、吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水との間で熱交換される必要はない。
しかしながら、流量調節弁166の内部の水の温度によっては、流量調節弁166がオーバーヒートするおそれがある。よって、弁開閉判断部171は、ステップST110で吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水の温度を監視する。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162は過剰に熱くなるおそれがあると判断される場合、流量調節弁動作制御部173はステップST108として、流量調節弁166を閉弁させる。
これにより、流量調節装置170は、吸気通路用ウォータージャケット162のオーバーヒートを抑制できる。また、吸気通路用ウォータージャケット162はオーバーヒートするおそれがないと判断される場合、流量調節弁動作制御部173はステップST111として、流量調節弁166を開弁させる。これにより、熱交換装置150は、図1に示すウォーターポンプ160のロスを抑制できる。
次にステップST102で、水温Tnは暖機完了判定水温Ts以下である、つまり、内燃機関1は冷間始動であると判定されると(ステップST102、No)、ステップST113として、サーモスタット動作制御部174は、サーモスタット165を閉弁する。ここで、冷間始動の時は、吸入空気の温度と、吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水の温度との差が比較的小さい。つまり、吸入空気と、吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水との間での熱交換量は、冷間始動時以外の状態よりも小さい。
よって、冷間始動時に、図1に示すウォーターポンプ160を駆動してまで、熱交換装置150の回路に水を流す必要はない。ここで、サーモスタット165が閉弁すると、水は吸気通路用ウォータージャケット162及びラジエタ163に供給されない。これにより、熱交換装置150は、ウォーターポンプ160のロスを抑制できる。
図8は、車両の速度と内燃機関本体の負荷とに基づいて決定される制御内容を場合分けして示す図表である。図8は、上記の制御内容と作用と効果とをまとめて示す。図8に示すように、低速‐低負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度よりも低い。よって、流量調節弁動作制御部173は吸気通路用ウォータージャケット162による熱交換を重視し、流量調節弁166を閉弁して吸気通路用ウォータージャケット162に吸入空気よりも暖かい水を供給して吸入空気を暖める。これにより、内燃機関本体100の燃焼が安定する。よって、熱交換装置150は、内燃機関本体100の出力低下を抑制できる。
低速‐中負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度である。よって、流量調節弁動作制御部173は吸気通路用ウォータージャケット162による圧力損失を抑制するべく、流量調節弁166を開弁して吸気通路用ウォータージャケット162に水を供給しない。これにより、熱交換装置150は、ウォーターポンプ160のロスを抑制できる。
低速‐高負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度よりも高い。よって、流量調節弁動作制御部173は吸気通路用ウォータージャケット162による熱交換を重視し、流量調節弁166を閉弁して吸気通路用ウォータージャケット162に吸入空気よりも冷たい水を供給して吸入空気を冷却する。これにより、熱交換装置150は、吸入空気の膨張を抑制できる。よって、熱交換装置150は、低速‐高負荷状態での図1に示す筒内燃焼空間103に供給される酸素量の低下を抑制できる。よって、熱交換装置150は、内燃機関本体100の出力の低下を抑制できる。
高速‐低負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度よりも低い。よって、流量調節弁動作制御部173は吸気通路用ウォータージャケット162による熱交換を重視し、流量調節弁166を閉弁して吸気通路用ウォータージャケット162に吸入空気よりも暖かい水を供給して吸入空気を暖める。これにより、内燃機関本体100の燃焼が安定する。よって、熱交換装置150は、内燃機関本体100の出力低下を抑制できる。
高速‐中負荷、または高速‐高負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度である。よって、流量調節弁動作制御部173は吸気通路用ウォータージャケット162による圧力損失を抑制するべく、流量調節弁166を開弁して吸気通路用ウォータージャケット162に水を供給しない。これにより、熱交換装置150は、ウォーターポンプ160のロスを抑制できる。
なお、本実施形態では、吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる水は、内燃機関本体100を冷却する水冷装置に組み込まれて構成されたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、熱交換装置150は、前記水冷装置とは別途に用意された熱交換用の媒体を用いて吸入空気と熱交換してもよい。例えば、熱交換装置150は、水を溜めるタンクを備え、その水を吸気通路用ウォータージャケット162のみに供給したあと、熱交換装置150の外部に排出してもよい。つまり、水は熱交換装置150の回路を必ずしも循環する必要はない。
なお、この場合、水は内燃機関本体100から熱を得ていない。よって、水は、インタークーラ121よりも下流側の吸気通路118を流れる吸入空気よりも低温となる。よって、吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水は、吸気通路118の内部の吸入空気と熱交換を行う。よって、吸気通路用ウォータージャケット162は、例えば、インタークーラ121よりも下流側の吸気通路118に設けられてもよい。
これにより、吸入空気の温度が適正な温度よりも高くなった場合に、熱交換装置150は、吸気通路用ウォータージャケット162に吸入空気よりも冷たい水を供給して吸入空気を冷却する。これにより、熱交換装置150は、吸入空気の膨張を抑制できる。よって、熱交換装置150は、図1に示す筒内燃焼空間103に供給される酸素量の低下を抑制できる。よって、熱交換装置150は、内燃機関本体100の出力の低下を抑制できる。
また、熱交換装置150は、内燃機関本体用ウォータージャケット161、吸気通路用ウォータージャケット162、ラジエタ163の順に水を供給したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、熱交換装置150は、水を内燃機関本体用ウォータージャケット161、ラジエタ163、吸気通路用ウォータージャケット162、の順に供給してもよい。これにより、吸気通路用ウォータージャケット162には、ラジエタ163により冷却された水が供給される。よって、吸気通路用ウォータージャケット162の冷却性能が向上する。
但し、熱交換装置150は、内燃機関本体用ウォータージャケット161、ラジエタ163、吸気通路用ウォータージャケット162、の順に水を供給すると、内燃機関本体100から水は熱を得る。よって、熱交換装置150は、低速‐低負荷、高速‐低負荷時に吸入空気に熱を与える。これにより、上記構成の場合、熱交換装置150は、内燃機関本体100の燃焼速度の低下を抑制できる。結果として、熱交換装置150は、内燃機関本体100の出力低下を抑制できる。
なお、熱交換装置150の回路構成は上述の構成に限定されない。熱交換装置150は、少なくとも吸気通路118の内部の吸入空気と吸気通路用ウォータージャケット162の内部の水との間で熱交換が行えればよい。
図9は、実施形態1に係る他の熱交換装置の水の循環回路を示す説明図である。図9の矢印AR11が示すように、まず、ウォーターポンプ160よりも上流側の水はウォーターポンプ160によって内燃機関本体用ウォータージャケット161に向かって流れる。次に、水は、シリンダブロック111に設けられる内燃機関本体用ウォータージャケット161の入口から内燃機関本体用ウォータージャケット161に導かれる。次に、水は、内燃機関本体用ウォータージャケット161の出口側に向かって内燃機関本体用ウォータージャケット161の内部を流れる。
この時、水は上述のように内燃機関本体100と熱交換して、内燃機関本体100を冷却する。内燃機関本体用ウォータージャケット161の出口から排出された水は、矢印AR12が示すように吸気通路用ウォータージャケット162に向かって流れる。ここで、まず、流量調節弁166が閉弁しているときの水の流れを説明する。
流量調節弁166は閉弁しているため、水は、その全てが吸気通路用ウォータージャケット162に導かれる。吸気通路用ウォータージャケット162の入口から吸気通路用ウォータージャケット162に導かれた水は、吸気通路用ウォータージャケット162の出口に向かって吸気通路用ウォータージャケット162の内部を流れる。次に、吸気通路用ウォータージャケット162の出口から排出された水は、矢印AR13が示すように熱交換対象164へ向かって流れる。
矢印AR14が示すように、水はウォーターアウトレット159に向かって流れる。ここで、まずはサーモスタット165が開弁しているときの水の流れを説明する。ウォーターアウトレット159の内部の水は、矢印AR15が示すように、ウォーターポンプ160に向かって流れる。熱交換装置150の水は、以上の回路を基本的な循環回路として循環する。
サーモスタット165が開弁すると、ウォーターアウトレット159に存在する水の少なくとも一部は、矢印AR16が示すように吸気通路用ウォータージャケット162に向かって流れる。なお、ウォーターアウトレット159に存在する水のうち、ラジエタ163側に導かれる水の流量は、サーモスタット165の開度によって調節される。
ラジエタ163によって冷却された水は、矢印AR17が示すように、ウォーターポンプ160の上流側の通路に向かって第7水通路157上を流れる。そして、ラジエタ163によって冷却された水は、上述の基本的な循環回路に合流する。
次に、流量調節弁166が開弁しているときの水の流れを説明する。流量調節弁166が開弁しているとき、水は矢印AR18が示すように、吸気通路用ウォータージャケット162を迂回して下流側へ流れる。
このような構成であっても、熱交換装置150は、上述の構成と略同等の効果を奏する。また、このように熱交換装置150を構成すると、サーモスタット165が閉弁しているときであっても、熱交換装置150は、吸気通路用ウォータージャケット162に水を供給できる。よって、サーモスタット165が、特殊制御されるような内燃機関であっても、熱交換装置150は、上述の構成と略同等の効果を奏する。
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係る内燃機関を模式的に示す断面図である。内燃機関1の熱交換装置150は、一般的な内燃機関が備える内燃機関本体100を冷却する水冷装置を用いたが、本実施形態に係る内燃機関2は、空気により吸入空気を冷却することに特徴がある。なお、上述の実施形態と同一の効果を奏する構成には、同一の符号を付す。また、上述の実施形態と同一の効果は説明を省略する。
図10に示すように、内燃機関2は、熱交換装置250を備える。熱交換装置250は、冷却用空気通路251と、送風手段としてのファン252とを備える。冷却用空気通路251は、コンプレッサホイール133と、インタークーラ121との間の吸気通路118を覆うように設けられる。具体的には、吸気通路118と冷却用空気通路251とで2層の管を構成する。つまり、冷却用空気通路251の内部に吸気通路118が存在する。
内燃機関本体100に導入される吸入空気は、吸気通路118の内部を流れる。冷却用空気は、図10中矢印AR10が示すように、冷却用空気通路251の一方の開口端から導入される。冷却用空気通路251に導入された冷却用空気は、吸気通路118の側周部と冷却用空気通路251の内周部との間の空間を流れる。これにより、冷却用空気は、吸気通路118を流れる吸入空気と吸気通路118を構成する部材を介して熱交換する。吸入空気との熱交換を終えた冷却用空気は、他方の開口端から冷却用空気通路251の外部に排出される。
ファン252は、冷却用空気通路251の一方の開口端に設けられる。これにより、ファン252は、大気を冷却用空気として冷却用空気通路251へ導く。また、ファン252は、例えば、インタークーラ121に冷却用空気を吹きつけつつ、冷却用空気通路251へ冷却用空気を導入してもよい。具体的には、ファン252は、インタークーラ121と対向して設置され、インタークーラ121に冷却用空気を吹きつける。冷却用空気通路251は、インタークーラ121とファン252を覆うように設けられる。
ファン252は、例えば電動モータによって羽根が回転することで空気を送風する電動ファンである。ファン252は、内燃機関2が搭載される車両が備えるバッテリから駆動力を得る。また、前記バッテリは、内燃機関本体100が出力する動力によって充電される。
また、冷却用空気通路251は、ヒートシンクを備えてもよい。ヒートシンクは、例えば、吸気通路118の側周部に設けられる。これにより、吸気通路118の側周部と冷却用空気通路251の内周部との間を流れる冷却用空気と吸気通路118を構成する部材との接触面積が向上する。これにより、吸気通路118を構成する部材を介した冷却用空気と吸入空気との熱交換が促進される。
これにより、インタークーラ121の吸入空気に対する冷却性能が向上する。よって、内燃機関本体100に導入される吸入空気の温度がより低下する。また、ファン252は、ECU114と電気的に接続され、ECU114が備える流量調節装置170により冷却用空気通路251に供給する冷却用空気の量を調節される。ここで、ファン252は、例えば回転速度を変更することで、冷却用空気通路251に供給する冷却用空気の量を調節できる。つまり、流量調節装置170は、ファン252の回転速度を制御することで、熱交換装置250の冷却性能を調節する。なお、ファン252は、羽根のピッチを調節されることで、冷却用空気通路251に供給する冷却用空気の量を調節してもよい。
図11は、実施形態2に係るECUの構成を示す概念図である。図11に示すように本実施形態では、ECU114は、弁開閉判断部171に代えて、モータ回転速度判断部271と、流量調節弁動作制御部173に代えて、モータ回転速度変更部273を備える。モータ回転速度判断部271は、内燃機関本体100の運転状況に基づいて、ファン252の回転速度を決定する。モータ回転速度変更部273は、モータ回転速度判断部271によって決定された回転速度になるように、ファン252の回転速度を制御する。
図12は、実施形態2に係るサーモスタットとファンとの制御手順を説明するフローチャートである。ステップST101からステップST107と、ステップST109と、ステップST113とは、実施形態1と制御内容が同一であるので説明を省略する。また、図4に示すステップST112は、本実施形態では、その判定によって流量調節弁動作制御部173の制御内容に差異が生じない。よって、ステップST112は実行されない。
ステップST109で、モータ回転速度判断部271によって内燃機関本体100は低速‐高負荷状態であると判断されると(ステップST109、Yes)、モータ回転速度変更部273は、ステップST201として、ファン252の回転速度を上昇させる。上述したように、車両が低速‐高負荷状態の場合、吸入空気の温度は比較的高い。
ファン252の回転速度を高くすることにより、熱交換装置250は、冷却用空気と吸入空気との熱交換を促進する。これにより、吸入空気は冷却用空気によってより冷却される。これにより、熱交換装置250は、吸入空気の膨張を抑制できる。よって、熱交換装置250は、低速‐高負荷状態での図1に示す筒内燃焼空間103に供給される酸素量の低下を抑制できる。よって、熱交換装置250は、内燃機関本体100の出力の低下を抑制できる。
次にステップST109で、モータ回転速度判断部271によって内燃機関本体100は低速‐高負荷状態以外であると判断されると(ステップST106、No)(ステップST107、Yes)(ステップST109、No)、ステップST202として、モータ回転速度変更部273は、ファン252の回転速度を低下させる、または停止させる。なお、本実施形態では、内燃機関本体100が低速‐高付加状態であるかを判断できればよいため、ステップST107を省略してもよい。
上述したように、内燃機関本体100が低速‐高負荷以外の状態の場合、図8に示すように、吸入空気の温度は比較的低いか適正の範囲である。よって、熱交換装置250は、この場合に吸入空気よりも低温である冷却用空気と冷却用空気とを熱交換させる必要がない。
ファン252の回転速度低下させる、または停止させることにより、熱交換装置250は、冷却用空気と吸入空気との熱交換を抑制する。これにより、熱交換装置250は、ファン252が駆動するのに必要とするエネルギーの消費を抑制できる。なお、ファン252は、例えば車両が備えるバッテリから駆動力を得る。そして、前記バッテリは内燃機関本体100が出力する動力によって充電される。よって、熱交換装置250は、ファン252が駆動するのに必要とするエネルギーの消費を抑制することにより、結果として内燃機関本体100の出力損失を抑制できる。
図13は、車両の速度と内燃機関本体の負荷とに基づいて決定される制御内容を場合分けして示す図表である。図13は、上記の制御内容と作用と効果とをまとめて示す。図13に示すように、低速‐低負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度よりも低い。よって、モータ回転速度変更部273はファン252のエネルギー消費の抑制を重視し、ファン252の回転速度を低下、またはファン252を停止する。これにより、熱交換装置250は、内燃機関本体100の出力損失を抑制できる。
低速‐中負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度である。よって、モータ回転速度変更部273はファン252によるエネルギー消費を抑制すべくファン252の回転速度を低下、またはファン252を停止する。これにより、熱交換装置250は、内燃機関本体100の出力損失を抑制できる。
低速‐高負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度よりも高い。よって、モータ回転速度変更部273は冷却用空気通路251及びファン252による熱交換を重視し、ファン252の回転速度を上昇させる。これにより、冷却用空気と吸入空気との熱交換が促進される。よって、吸入空気は、熱交換装置250によって冷却される。これにより、熱交換装置250は、低速‐高負荷状態での図1に示す筒内燃焼空間103に供給される酸素量の低下を抑制できる。よって、熱交換装置250は、内燃機関本体100の出力の低下を抑制できる。
高速‐低負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度よりも低い。よって、モータ回転速度変更部273はファン252のエネルギー消費の抑制を重視し、ファン252の回転速度を低下、またはファン252を停止する。これにより、熱交換装置250は、内燃機関本体100の出力損失を抑制できる。
高速‐中負荷、または高速‐高負荷の場合、吸入空気の温度は、適正温度である。よって、モータ回転速度変更部273はファン252によるエネルギー消費を抑制すべくファン252の回転速度を低下、またはファン252を停止する。これにより、熱交換装置250は、内燃機関本体100の出力損失を抑制できる。