JP2009149596A - 藍葉中の有用成分の新規な迅速抽出法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
藍葉中にはマラセチア属の真菌に対する抗菌作用が認められているトリプタントリン 等の有用成分を含んでいる。これらの成分はジクロロメタンなどの有機溶媒で抽出されているが、室温で24時間以上の長時間を要している。抽出時間の短縮が大きな課題である。
【解決手段】
藍葉からの有用成分の有機溶媒抽出過程にマイクロ波を照射すると抽出速度が著しく大きくなり、抽出時間が30分以内、生葉では5分以内にトリプタントリンなどの有用成分が抽出できることを見出した。
【選択図】なし
藍葉中にはマラセチア属の真菌に対する抗菌作用が認められているトリプタントリン 等の有用成分を含んでいる。これらの成分はジクロロメタンなどの有機溶媒で抽出されているが、室温で24時間以上の長時間を要している。抽出時間の短縮が大きな課題である。
【解決手段】
藍葉からの有用成分の有機溶媒抽出過程にマイクロ波を照射すると抽出速度が著しく大きくなり、抽出時間が30分以内、生葉では5分以内にトリプタントリンなどの有用成分が抽出できることを見出した。
【選択図】なし
Description
本発明は、葉藍からトリプタントリンなどの有用成分を迅速に抽出する方法の提供に関する。
ウコンの力のように天然物の持つ薬効効果に注目が集まり、様々な天然物中の薬効成分の探索、開発が盛んに行われている。藍布の衣類は古来から健康保持、疾病予防、解毒の作用が知られており、武士は鎧の下に藍染めの下着を着け、切り傷や虫さされから守ったと言われている。また、入院患者の寝具や寝間着に藍染めの布が最も適しているとも言われている。
藍中にはマラセチア属の真菌に対する抗菌作用が認められているトリプタントリン (Tryptanthrin)、インディルビン、血小板凝集抑制作用を有するボノイド類などが含まれていることが知られている(特許文献1、2、3、非特許文献1)。この他、様々な有用成分が認められており(特許文献3、4)、石鹸や化粧品として用いられている(特許文献5)。
トリプタントリンの抽出方法として、藍の乾燥葉を細かく粉砕し、ジクロロメタン、酢酸メチル、又は酢酸エチル中に入れ、1昼夜から数日間攪拌した後、吸引ろ過する。沈殿物はさらに新しい溶媒で再度同様の手順により抽出されている(特許文献1〜2)。2−(メタ)−アクリロイルオキシエチルホスホコリンなどの藍エキスの抽出法として、藍の全草を必要に応じて、破砕、又は乾燥処理した後、水、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、アルコール類から選ばれた1種又は2種以上の溶媒で加熱還流又はあるいは浸漬して抽出する方法が記載されている(特許文献3〜4)。
本発明は、藍葉及び沈殿藍などからトリプタントリンなどの有用成分の迅速抽出方法に関するものである。藍葉からのトリプタントリン等有用成分の抽出方法として、従来法としてジクロロメタンなどの溶媒中に入れ、1昼夜から数日攪拌して抽出する方法、藍エキスの抽出法として各種の溶媒中で、3時間以上加熱還流する方法などが行われている。しかし、いずれの方法も抽出に長時間を要し、このため熱に不安定な成分の抽出は困難であった。
また、時間をかけて溶媒抽出するため、藍葉中の溶出できる成分が抽出溶媒中に溶解しており、目的成分を濃縮・分離するためにはクロマト分離などを行う必要がある。
本発明はこれらの問題を解決するためなされたもので、藍葉および沈殿藍などからの迅速に、分別抽出を可能としたものである。
また、時間をかけて溶媒抽出するため、藍葉中の溶出できる成分が抽出溶媒中に溶解しており、目的成分を濃縮・分離するためにはクロマト分離などを行う必要がある。
本発明はこれらの問題を解決するためなされたもので、藍葉および沈殿藍などからの迅速に、分別抽出を可能としたものである。
本発明は、藍葉、沈殿藍中の有用な成分をマイクロ波照射下で溶媒抽出することを特徴とする藍成分の抽出方法を提供することを要旨とするものである。
藍葉を溶媒に懸濁および浸漬させ、マイクロ波装置内に設置した容器に充填し、あるいは微粉砕した藍葉を溶媒中に懸濁したスラリーを連続注入し、温度40℃乃至溶媒の沸点の条件で、かつ処理時間30分以内の条件下でマイクロ波照射処理することを特徴とする藍エキスの抽出方法を提供するものである。
さらに前記溶媒が、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素化合物、ベンゼン、キシレン等の環状芳香族化合物、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、水から選ばれた1以上のものであることを特徴とする藍エキスの抽出方法を提供することを要旨とするものである。
また本発明は、(0007)乃至(0009)に記載の方法によって抽出されたトリプタントリンなどを含有する藍エキスを提供することを要旨とするものである。
マイクロ波加熱においては、マイクロ波照射によって極性基を持つ分子が振動・回転などの運動を行い、局所的に熱を発生する。マイクロ波吸収性物質の近傍が直接加熱され、熱化学反応が進行する。水やアルコールのような誘電損失係数の大きな分子は急速に加熱される。溶媒中にバイオマスを浸漬し、マイクロ波照射するとバイオマスの内部に侵入した溶媒が直接加熱され、有用成分を迅速に溶出する。
さらに、高温まで急速加熱すると細胞壁が破壊され、抽出速度が加速される。例えば、ウコンからクルクミノイド抽出において、アセトンを溶媒として用いた場合、最適条件下では、1分のマイクロ波照射で純度75%のクルクミノイドが抽出率60%で分離できたことが報告されている。この場合、細胞内の揮発成分が蒸発して細胞の内圧が上昇し、細胞が膨張、破壊し、また、セルロース細胞壁の高温熱劣化もおこり、バイオマス内部への溶媒の浸透性増大したものと推察されている(非特許文献2)。
通常の加熱方法でバイオマスから有用成分を抽出する場合、外部から熱を供給して加熱するため、熱伝導性の悪いバイオマスでは、外部の溶媒温度に比べ、内部温度が低く、抽出速度が遅い。藍からの有用成分抽出の場合、通常の有機溶媒抽出法では、トリプタントリンの抽出に、室温では1昼夜以上を要している(特許文献1)。
これに対し、本発明のマイクロ波加熱法では40℃以上の温度において、抽出時間は30分以内、最適条件では10分以内の短時間に目的成分を抽出することができる。
さらに、高温まで急速加熱すると細胞壁が破壊され、抽出速度が加速される。例えば、ウコンからクルクミノイド抽出において、アセトンを溶媒として用いた場合、最適条件下では、1分のマイクロ波照射で純度75%のクルクミノイドが抽出率60%で分離できたことが報告されている。この場合、細胞内の揮発成分が蒸発して細胞の内圧が上昇し、細胞が膨張、破壊し、また、セルロース細胞壁の高温熱劣化もおこり、バイオマス内部への溶媒の浸透性増大したものと推察されている(非特許文献2)。
通常の加熱方法でバイオマスから有用成分を抽出する場合、外部から熱を供給して加熱するため、熱伝導性の悪いバイオマスでは、外部の溶媒温度に比べ、内部温度が低く、抽出速度が遅い。藍からの有用成分抽出の場合、通常の有機溶媒抽出法では、トリプタントリンの抽出に、室温では1昼夜以上を要している(特許文献1)。
これに対し、本発明のマイクロ波加熱法では40℃以上の温度において、抽出時間は30分以内、最適条件では10分以内の短時間に目的成分を抽出することができる。
さらに、未乾燥の生藍葉を用いた場合、生葉にはマイクロ波吸収性の水を含んでおり、マイクロ波照射により内部の水が局所的に急速加熱され、溶媒に可溶性の成分が迅速に溶出する。なお、5分以内の短時間マイクロ波照射処理した場合、トリプタントリンなど溶出しやすい有用成分は抽出されるが、藍の染料成分関連成分の溶出が少なく、分別抽出が可能と考えられる。逆に、溶媒抽出残渣の藍葉には染料成分が残存していると考えられ、染料として利用可能と考えられるなど更に好ましい。
本発明の実施形態は、藍葉あるいは沈殿藍からトリプタントリンなどの有用成分をマイクロ波照射下溶媒抽出するものである。
すなわち、本発明の実施形態は、藍葉あるいは沈殿藍を溶媒に懸濁および浸漬させ、マイクロ波透過性の容器に充填、あるいは藍葉の微粉砕物あるいは沈殿藍を懸濁させたスラリーを連続注入し、温度40℃乃至溶媒の沸点の条件でかつ処理時間30分以内の条件下でマイクロ波を照射するものである。
抽出時の溶媒の揮散を防止するため密閉するか、あるいは還流冷却管を装備することが好ましい。抽出時の温度制御のため熱電対あるいはファイバー温度計を装備することが好ましい。さらに容器にポンプで連続的に該スラリーを注入して、連続的にマイクロ波を照射する連続抽出法も可能であり、本発明の好ましい実施形態の1つである。
抽出温度は、高温ほど抽出効率が向上し、また室温付近では温度制御が困難であることから40℃以上とすることが好ましい。ただし、沸点以上の高温抽出は大きなエネルギーを要し、また、加圧が必要となり、抽出容器にも高い耐熱性・耐圧性を要求される。さらに熱による目的物質の分解が起こり得ることから、必要以上に高温にすることは好ましくない。従って、抽出温度は40℃乃至溶媒の沸点とすることが好ましい。
マイクロ波照射抽出法では、短時間で抽出が終結するため、長くても30分以内であることが好ましく、処理量を多くする観点から10分以内であれば更に好ましい。
すなわち、本発明の実施形態は、藍葉あるいは沈殿藍を溶媒に懸濁および浸漬させ、マイクロ波透過性の容器に充填、あるいは藍葉の微粉砕物あるいは沈殿藍を懸濁させたスラリーを連続注入し、温度40℃乃至溶媒の沸点の条件でかつ処理時間30分以内の条件下でマイクロ波を照射するものである。
抽出時の溶媒の揮散を防止するため密閉するか、あるいは還流冷却管を装備することが好ましい。抽出時の温度制御のため熱電対あるいはファイバー温度計を装備することが好ましい。さらに容器にポンプで連続的に該スラリーを注入して、連続的にマイクロ波を照射する連続抽出法も可能であり、本発明の好ましい実施形態の1つである。
抽出温度は、高温ほど抽出効率が向上し、また室温付近では温度制御が困難であることから40℃以上とすることが好ましい。ただし、沸点以上の高温抽出は大きなエネルギーを要し、また、加圧が必要となり、抽出容器にも高い耐熱性・耐圧性を要求される。さらに熱による目的物質の分解が起こり得ることから、必要以上に高温にすることは好ましくない。従って、抽出温度は40℃乃至溶媒の沸点とすることが好ましい。
マイクロ波照射抽出法では、短時間で抽出が終結するため、長くても30分以内であることが好ましく、処理量を多くする観点から10分以内であれば更に好ましい。
さらに、溶媒は、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素化合物、ベンゼン、キシレン等の環状芳香族化合物、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、水から選ばれた1以上のものである。
溶媒は、目的とする物質により種々選択可能である。例えば藍の有用成分であるトリプタントリンは、ヘキサンなどの非極性溶媒に対する溶解度が低い。またその他の成分の溶解度も考慮して選択する事が好ましい。
溶媒は、目的とする物質により種々選択可能である。例えば藍の有用成分であるトリプタントリンは、ヘキサンなどの非極性溶媒に対する溶解度が低い。またその他の成分の溶解度も考慮して選択する事が好ましい。
さらに本発明の成分としての実施形態は、(0013)又は(0014)の方法において得られるトリプタントリンなどを含有する藍エキスである。なお、マイクロ波抽出法で得られた藍エキスにはトリプタントリン以外に、ピラン類、フィトール類、ネオフタジエン、テトラヒドロキシ-ペンタンなどの精油、パルメチン酸等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸エステル、ポリフェノール類やイソチンなどを含有する。
藍エキスは溶媒に溶解した状態で得られる。溶媒を除去し固形物或いはペースト状になった藍成分は、そのまま使用しても良いし、他の物質に混合して使用しても良い。また、エタノールなど溶媒が残留しても問題ない場合は、溶媒を完全に除去することなく使用でき好ましい。
さらに得られる藍エキス中の藍成分組成及び色は、藍乾燥葉と生葉で異なる。抽出された成分は乾燥葉の場合、染料関連成分等多くの成分が検出され、色は濃緑色であるのに対し、生葉から得られる藍エキスにはピランやトリプタントリンなど数種のピークが検出されるのみで、色も薄緑色となる。生葉からの抽出の場合、藍の染料成分などを抽出することなく、トリプタントリン等の目的成分のみを分別抽出できる可能性がある。なお、生葉の場合、酵素反応等により、酸化反応など化学変化を起こし、保存時の状態によって抽出されるエキスの成分組成が異なってくる。
なお、沈殿藍からの抽出では、リナロールやリナリルアセテート、ポリフェノール、高級脂肪酸エステル、インドール誘導体及びトリプタントリンなどが検出された。
藍成分に含まれる有用成分と併せて、藍成分の性状によって製造方法及び使用方法を選択する事が好ましい。
藍エキスは溶媒に溶解した状態で得られる。溶媒を除去し固形物或いはペースト状になった藍成分は、そのまま使用しても良いし、他の物質に混合して使用しても良い。また、エタノールなど溶媒が残留しても問題ない場合は、溶媒を完全に除去することなく使用でき好ましい。
さらに得られる藍エキス中の藍成分組成及び色は、藍乾燥葉と生葉で異なる。抽出された成分は乾燥葉の場合、染料関連成分等多くの成分が検出され、色は濃緑色であるのに対し、生葉から得られる藍エキスにはピランやトリプタントリンなど数種のピークが検出されるのみで、色も薄緑色となる。生葉からの抽出の場合、藍の染料成分などを抽出することなく、トリプタントリン等の目的成分のみを分別抽出できる可能性がある。なお、生葉の場合、酵素反応等により、酸化反応など化学変化を起こし、保存時の状態によって抽出されるエキスの成分組成が異なってくる。
なお、沈殿藍からの抽出では、リナロールやリナリルアセテート、ポリフェノール、高級脂肪酸エステル、インドール誘導体及びトリプタントリンなどが検出された。
藍成分に含まれる有用成分と併せて、藍成分の性状によって製造方法及び使用方法を選択する事が好ましい。
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
藍の乾燥葉の粉砕物10gをエタノール溶媒100mlの入った三ツ口フラスコに添加し、マイクロ波加熱装置内に設置し、還流冷却器及び熱電対を設置した。最大出力750Wの25%に出力を制御し、10分及び30分間加熱還流した後、沈殿物を吸引ろ過して、抽出液を得た。抽出液をGC-MSで成分分析を行った。図1にマイクロ波エタノール抽出した抽出液のGC-MSスペクトルチャートを示す。GC-MS分析チャートのピーク成分についてライブラリーを検索し、成分名を推察した。抽出液には、ピラン化合物、ジヒドロベンゾフラン類、ポリフェノール類、ポリオール類、高級脂肪酸とエステル類、トリプタントリンなどが検出された。
比較例としてウォーターバス上に三ツ口フラスコを設置し、還流冷却器を取付け、溶媒としてエタノールを用い、1時間加熱還流して抽出した。通常の還流法の場合、図2に示すとおり、1時間エタノール抽出してもGC-MSスペクトルのピーク数及び高さも低く、抽出される成分が限られており、トリプタントリンも検出されなかった。
有機溶媒としてメタノールを用いて、藍葉からの抽出実験を行い、得られた抽出液についてGC-MS分析及び抽出量を測定した。抽出液を蒸発乾固し、抽出量を算出した。藍葉のマイクロ波メタノール抽出では、抽出時間10分及び30分のいずれも抽出率は11%であり、抽出液のGC-MS分析の結果においても、図3に示すように、抽出時間10分及び30分のいずれにおいてもGC-MSスペクトルはほとんど変わらず、また、トリプタントリンのピークはいずれの抽出液においても検出されており、メタノールは溶解力が大きく、エタノールより多くの成分が抽出されており、マイクロ波照射下で藍の成分を効率よく、短時間に溶出できることが分かった。抽出液中の主要成分をライブラリーから検索し、その成分は(1)2,3-Dihydro-Benzofuran、(2)Guaiacol<4-vinyl>、(3)Isatin、(4)Neophytadiene、(5)1,4-Benzenedicarboxylic acid,2-amino-,dimethyl ester、(6)Palmetic acid、(7)Phytol Isomer、(8)Tryptanthrinであると推察した。
有機溶媒としてジクロロメタンを用いて、藍乾燥葉からの抽出実験を行い、得られた抽出液についてGC-MS分析及び抽出量を測定した。ジクロロメタンの場合、処理時間が10分ではトリプタントリンのピークは検出されず、30分間処理した抽出液ではトリプタントリンが検出された。
図4はマイクロ波ジクロロメタン抽出のGC-MSスペクトルである。アルコール系とは主要抽出成分が若干異なり、ポリフェノール類、高級脂肪酸エステル類は抽出されていない。抽出時間10分では、主要成分のネオフタジエンとその誘導体及びフィト−ル誘導体のみであるが、抽出時間が長くなるとパルメチン酸、ポリオール類、トリプタントリンが抽出されてきている。
図4はマイクロ波ジクロロメタン抽出のGC-MSスペクトルである。アルコール系とは主要抽出成分が若干異なり、ポリフェノール類、高級脂肪酸エステル類は抽出されていない。抽出時間10分では、主要成分のネオフタジエンとその誘導体及びフィト−ル誘導体のみであるが、抽出時間が長くなるとパルメチン酸、ポリオール類、トリプタントリンが抽出されてきている。
沈殿藍1gを50mlの試料瓶に入れ、メタノールを10ml加え、磁性の撹拌子を入れて、マイクロ波加熱装置内に設置し、熱電対を挿入した。撹拌下マイクロ波を照射して40℃に温度制御した。10分及び30分後に沈殿物をろ別して、抽出液中の成分をGC-MSで分析した。結果は、図5に示すとおり、沈殿藍からの抽出成分は乾燥葉の場合とは異なり、リナロール、リナリールエステルなどのリナロール類、ポリフェノール、高級脂肪酸エステル類、インドール化合物などが検出された。抽出液のGC-MSスペクトルは抽出時間10分後と30分後ではほとんど差がなく、ほぼ10分で抽出が終了しているものと思われる。トリプタントリンは40℃、10分で抽出されており、乾燥藍より沈殿藍の方がトリプタントリンを低温、短時間に抽出できることを認めた。
一方、前記との比較例として沈殿藍1g、メタノール10mlを加えた試料瓶にマグネチックスターラーを入れ、ウォーターバス中で室温並びに40℃で所定時間撹拌した。一定時間ごとに試料瓶の沈殿を濾過し、濾液についてGC-MS分析を行った。室温で撹拌した場合、4時間では抽出液中にトリプタントリンは検出されず、24時間後の抽出液に痕跡量が検出された。40℃で抽出実験を行った場合、30分後の拡大クロマトグラムでもピークは検出できなかった。主要な抽出成分はほぼ同じであった。
図5は沈殿藍のマイクロ波メタノール抽出物のGC-MSスペクトルであり、沈殿藍をメタノール溶媒中でマイクロ波照射し、温度40℃、10分間抽出して得られた。
チョッパーで粉砕した藍生葉28.77g(乾燥重量:3.51g)を三ツ口フラスコにいれ、50mlのメタノールを添加し、攪拌子を入れ、熱電対を挿入し、還流冷却管を接続した。マイクロ波を照射し、昇温速度25℃/minで66℃まで加熱し、2分間保持した後、照射を止め、直ちにろ別した。抽出液についてGC−MSで成分分析を行った。抽出液は薄い緑色で、乾燥葉の場合の濃緑色であったのに比べて大きく異なった。
図6は藍生葉を66℃で2分間マイクロ波抽出したもののGC−MSスペクトルである。先の図1〜3と大きく異なり、検出されたピークからピラン類、ポリフェノール類(グアヤコール)、トリプタントリンが検出され、インドール系の小さなピークが認められたが、20min以降の主要ピークは認められなかった。
藍生葉5g(乾燥重量0.74g)を50mlの試料瓶にとり、メタノールを25ml添加し、熱電対を挿入したゴム栓を試料瓶の上に装着し、熱電対が液中に浸るようにセットした。温度を40℃及び60℃で所定時間マイクロ波加熱した。加熱処理後、直ちにろ別した後、GC-MSで成分分析し、トリプタントリンの濃度を測定した。
図7に40及び60℃でマイクロ波抽出時間と抽出液中のトリプタントリン濃度との関係を示したものである。60℃の場合、保持時間0分、すなわち、60℃に到達すると同時にマイクロ波の照射を止めたもののトリプタントリン濃度が最も高く、40℃の場合は抽出時間5分が最適であった。乾燥藍葉1g当たり、2mgのトリプタントリンが溶出した。
トリプタントリンはマラセチア属の真菌に対する抗菌作用が認められており、また、ポリフェノール類は抗酸化剤として機能し、芳香成分等は生理機能を有している。健康食品や化粧品など多方面への応用が期待されている。本発明では10分以内という短時間での抽出が可能であり、藍葉を粉砕し、溶媒中に分散させた溶液を連続的にマイクロ波照射装置内に設置した反応容器に送液することにより、連続的に抽出することが可能である。
藍生葉の場合、0〜5分の短時間にトリプタントリンが溶出し、インジゴ関連成分の溶出が少なく、溶媒抽出処理済みの藍葉に染料成分が残存しており、染料として利用可能と考えている。すなわち、藍葉粉砕物から連続的にトリプタントリン等の有用成分を抽出し、残存物から染料を製造する工業的なプロセスが可能となる。
藍生葉の場合、0〜5分の短時間にトリプタントリンが溶出し、インジゴ関連成分の溶出が少なく、溶媒抽出処理済みの藍葉に染料成分が残存しており、染料として利用可能と考えている。すなわち、藍葉粉砕物から連続的にトリプタントリン等の有用成分を抽出し、残存物から染料を製造する工業的なプロセスが可能となる。
Claims (4)
- 藍葉あるいは沈殿藍からトリプタントリンなどの有用成分をマイクロ波照射下溶媒抽出することを特徴とする抽出方法。
- 藍葉あるいは沈殿藍を溶媒に懸濁および浸漬させ、マイクロ波装置内に設置した容器に充填し、あるいは微粉砕した藍葉あるいは沈殿藍を溶媒中に懸濁したスラリーを連続注入し、温度40℃乃至溶媒の沸点の条件で、かつ処理時間30分以内の条件下でマイクロ波照射処理することを特徴とする請求項1記載の藍エキスの抽出方法。
- 前記溶媒が、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素化合物、ベンゼン、キシレン等の環状芳香族化合物、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、水から選ばれた1以上のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の藍エキスの抽出方法。
- 請求項1乃至3に記載の方法によって抽出されたトリプタントリンなどを含有する藍エキス。
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2008
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