JP2009149550A - 脂質吸収促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
安全性が高く、汎用性に富んだ、乳幼児に対して脂質の消化吸収促進作用を有する脂質吸収促進剤を提供すること。
【解決手段】
ラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用脂質吸収促進剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用脂質吸収促進剤、及びこれを含有する乳幼児向けの食品に関する。さらに詳しくは、乳幼児における発育に重要な脂質や脂溶性ビタミンの吸収に有用な医薬及び育児用ミルクを提供するものである。
脂質は食事中の重要な栄養素でありエネルギー源である。しかし、成人における脂質の過剰な摂取は肥満や生活習慣病の原因となるとされている。そのために、成人における脂質の過剰な摂取と吸収を防ぐことが社会問題となっている。
一方で、脂質は母乳中の総カロリーの約50%を占めており、乳幼児にとっては盛んな発育に重要なエネルギー源である。また、脂質は、ホルモンや細胞膜、血液など生体を構成する脂質である、必須脂肪酸やリン脂質、コレステロールなどの供給源であり、脂質を介して吸収される脂溶性ビタミンの媒体としても重要な栄養素である。
さらに、脂質は脳発達に必要な脂肪酸の供給源として重要である。母乳中には脳の発達に必要なドコサヘキサエン酸やアラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸が多く含まれていることが知られている。このように、乳幼児にとって脂質は発育や発達に重要な栄養素であり、脂質を十分に消化吸収することが、乳幼児においては極めて重要である。
これら脂質や脂溶性ビタミンの消化吸収には、胆汁酸が重要な役割を果たしていることが知られている。胆汁酸は、水の表面張力を低下させ、脂質の乳化を促進させ、脂質がリパーゼによる消化を受け易くする作用がある。さらに、胆汁酸が作るミセルが脂質分解物を取り込み、腸壁からの吸収を容易にしている。また、脂質分解物とともに脂溶性ビタミンもミセルの形成によって取り込まれ、吸収を容易にしている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、乳幼児の場合、脂質の消化吸収に必要な胆汁酸濃度は低いことが知られている。また、十二指腸へ胆汁酸を分泌供給するための胆汁酸プールが未熟児、新生児において成人と比較し低値であることも知られている。このような理由から、乳幼児、特に、未熟児、新生児では、脂質の消化吸収能が成人と比較して劣っているとされている(例えば、非特許文献2)。
このような乳幼児においても、母乳中の脂質の消化吸収は極めて良好であることが知られている。これは、母乳中の脂肪酸のトリアシルグリセロール構造、また母乳中に含まれる胆汁酸活性化リパーゼ(BSSL:Bile salt stimulated lipase)などが脂質の消化吸収を助長しているためであるとされている。
一方、育児用ミルクは、母乳ほどには、乳幼児における脂質の消化吸収が良好ではない。そのために、現在の育児用ミルクは、乳幼児の消化吸収性を考慮し、パーム油や大豆油、パーム核油などの植物油を用いて母乳に近い脂肪酸構成に調整され、また、パルミチン酸のβ位結合率の高いラードが用いられている(例えば、非特許文献3)。
さらに、胆汁酸産生能が低い乳幼児、特に未熟児に対しては、脂質として中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が使用される。MCTは、主としてC8とC10の飽和脂肪酸であり、消化吸収に際して胆汁酸によるミセル形成を必要とせずに消化吸収が容易となり、エネルギー供給源として優れている。ところが、MCTのみでは必須脂肪酸であるリノール酸やα−リノレン酸が含まれないために、栄養素のバランスの観点から、MCTだけで脂質の代用とすることはできない(例えば、非特許文献4)。すなわち、従来から育児用ミルクに含まれている必須脂肪酸やリン脂質、コレステロール等の脂質、及び脂溶性ビタミンの吸収を促進させることが求められていた。
ラクトフェリン(lactoferrin:以下、LFと略記することがある。)は、主に母乳中に含まれている分子量約80キロダルトンの鉄結合性糖蛋白質であり、大腸菌、カンジダ菌、クロストリジウム菌、ブドウ球菌等の有害微生物に対する抗菌作用や、免疫賦活作用、抗腫瘍作用等、様々な作用をもつ乳タンパク質として知られている。ラクトフェリンは乳由来の糖タンパク質であることから、安全性が高く、長期連用することが可能で、それ自体は殆ど無味無臭であり、各種の食品・医薬品・飼料の添加物として、汎用性が高い。
ラクトフェリンについては、ラクトフェリンが消化管における食事性脂肪の吸収を阻害して血清中の中性脂肪等の値を低下させること(特許文献1)、及び、鉄−ラクトフェリンが摂取した食品中の中性脂肪の消化管からの吸収を阻害して血清中の中性脂肪等の値を低下させること(特許文献2)が知られている。
国際公開第2003/057245号パンフレット 特開2007−197327号公報 「ヴォート生化学」、第3版、2005年、第711−714頁 「周産期の栄養と食事」、周産期医学、第35巻、増刊号、2005年、第278−279頁 「ミルクサイエンス」、第49巻、第281号、2000年、第214−215頁 「周産期の栄養と食事」、周産期医学、第35巻、増刊号、2005年、第466−468頁
このように、安全性が高く、汎用性に富んだ、乳幼児に対して脂質や脂溶性ビタミンの消化吸収促進作用を有する脂質吸収促進剤、及び乳幼児用の食品の開発が望まれていた。すなわち、本発明の目的は、安全性が高く、汎用性に富んだ、乳幼児に対して脂質の消化吸収促進作用を有する脂質吸収促進剤を提供することにある。さらに、本発明の目的は、乳幼児に対して脂質や脂溶性ビタミンの消化吸収促進作用を有する乳幼児用の食品(特に、育児用ミルク)を提供することにもある。
本発明者らは、乳幼児に対して脂質吸収促進作用を有する成分を鋭意探求してきた。その結果、成人において消化管における脂質の吸収を阻害する効果が知られているラクトフェリンが、乳幼児においては、成人における効果とは全く逆に、脂質や脂溶性ビタミンの消化吸収に促進的に作用し、脂質吸収促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の知見によれば、本発明に係る有効成分であるラクトフェリンは、乳幼児においては脂質の吸収促進作用を有し、これによって血中の中性脂肪の濃度を上昇させる。さらに、本発明によれば、この脂質の吸収促進作用は、胆汁酸の産生促進を伴うものであり、すなわち、胆汁酸の産生促進を介して脂質の吸収促進を行うものと考えられるために、脂質及び脂溶性栄養素(特に脂溶性ビタミン)の消化吸収に促進的に作用するものである。
したがって、本発明は、次の[1]〜[12]にある。
[1] ラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用脂質吸収促進剤。
[2] [1]に記載の乳幼児用脂質吸収促進剤からなる乳幼児用脂質吸収促進用食品添加剤。
[3] [1]に記載の乳幼児用脂質吸収促進剤、又は[2]に記載の乳幼児用脂質吸収促進用食品添加剤を含有する、乳幼児用食品。
[4] 乳幼児用食品が、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、又は低ナトリウム特殊粉乳である[3]に記載の乳幼児用食品。
[5] ラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇剤。
[6] [5]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇剤からなる乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇用食品添加剤。
[7] [5]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇剤、又は[6]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇用食品添加剤を含有する乳幼児用食品。
[8] 乳幼児用食品が、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、又は低ナトリウム特殊粉乳である[7]に記載の乳幼児用食品。
[9] ラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用胆汁酸産生促進剤。
[10] [9]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進剤からなる乳幼児用胆汁酸産生促進用食品添加剤。
[11] [9]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進剤、又は[10]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進用食品添加剤を含有する乳幼児用食品。
[12] 乳幼児用食品が、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、又は低ナトリウム特殊粉乳である[11]に記載の乳幼児用食品。
本発明の好ましい実施の態様において、乳幼児とはヒトを含み、好ましくはヒトの乳児である。
さらに、本発明は、[1]に記載の乳幼児用脂質吸収促進剤、[2]に記載の乳幼児用脂質吸収促進用食品添加剤、[3]若しくは[4]に記載の乳幼児用食品、又はラクトフェリンの、乳幼児の脂質吸収を促進するための使用(use)にもある。本発明の好適な態様において、経口または経管投与によって使用することができ、好ましくは脂質とともに、さらに好ましくは脂質及び脂溶性栄養素とともに経口または経管投与される。
さらに、本発明は、[1]に記載の乳幼児用脂質吸収促進剤、[2]に記載の乳幼児用脂質吸収促進用食品添加剤、又は、[3]若しくは[4]に記載の乳幼児用食品を投与して、乳幼児の脂質吸収を促進する方法にもある。本発明の好適な態様において、経口または経管投与によって使用することができ、好ましくは脂質とともに、さらに好ましくは脂質及び脂溶性栄養素とともに経口または経管投与される。
さらに、本発明は、[1]に記載の乳幼児用脂質吸収促進剤、[2]に記載の乳幼児用脂質吸収促進用食品添加剤、又は、[3]若しくは[4]に記載の乳幼児用食品を製造するための、ラクトフェリンの使用(use)にもある。
さらに、本発明は、[5]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇剤、[6]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇用食品添加剤、[7]若しくは[8]に記載の乳幼児用食品、又はラクトフェリンの、乳幼児の血中の中性脂肪濃度を上昇させるための使用(use)にもある。本発明の好適な態様において、経口または経管投与によって使用することができ好ましくは脂質とともに、さらに好ましくは脂質及び脂溶性栄養素とともに経口または経管投与される。
さらに、本発明は、[5]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇剤、[6]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇用食品添加剤、又は、[7]若しくは[8]に記載の乳幼児用食品を投与して、乳幼児の血中の中性脂肪濃度を上昇させる方法にもある。本発明の好適な態様において、経口または経管投与によって使用することができ、好ましくは脂質とともに、さらに好ましくは脂質及び脂溶性栄養素とともに経口または経管投与される。
さらに、本発明は、[5]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇剤、[6]に記載の乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇用食品添加剤、[7]若しくは[8]に記載の乳幼児用食品を製造するための、ラクトフェリンの使用(use)にもある。
さらに、本発明は、[9]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進剤、[10]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進用食品添加剤、[11]若しくは[12]に記載の乳幼児用食品、又はラクトフェリンの、乳幼児の胆汁酸産生を促進するための使用(use)にもある。本発明の好適な態様において、経口または経管投与によって使用することができ、好ましくは脂質とともに、さらに好ましくは脂質及び脂溶性栄養素とともに経口または経管投与される。
さらに、本発明は、[9]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進剤、[10]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進用食品添加剤、又は、[11]若しくは[12]に記載の乳幼児用食品を投与して、乳幼児の胆汁酸産生を促進する方法にもある。本発明の好適な態様において、経口または経管投与によって使用することができ、好ましくは脂質とともに、さらに好ましくは脂質及び脂溶性栄養素とともに経口または経管投与される。
さらに、本発明は、[9]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進剤、[10]に記載の乳幼児用胆汁酸産生促進用食品添加剤、[11]若しくは[12]に記載の乳幼児用食品を製造するための、ラクトフェリンの使用(use)にもある。
さらに、本発明は、ラクトフェリンを有効成分として含有する飼料及び飼料添加剤にもある。さらに、本発明は、哺乳動物の乳幼児に対する、該飼料、飼料添加剤又はラクトフェリンの、脂質吸収促進のための使用(use)、血中中性脂肪濃度上昇のための使用(use)、又は胆汁酸産生促進のための使用(use)にもある。さらに、本発明は、該飼料、飼料添加剤又はラクトフェリンを哺乳動物の乳幼児に投与(好ましくは経口投与)して、脂質吸収促進、血中中性脂肪濃度上昇、又は胆汁酸産生促進する方法にもある。
本発明によれば、ラクトフェリンを有効成分として含有する安全で副作用が少ない乳幼児用の脂質吸収促進剤及び脂質吸収促進用食品添加剤、並びにこれを含有する乳幼児向けの食品、特に育児用ミルクを提供することができる。これらは、乳幼児における発育に重要な脂質に加えて、脂溶性ビタミンをも吸収促進することができ、乳幼児の発育と健康の維持に非常に有効である。
本発明による乳幼児用の脂質吸収促進剤及び脂質吸収促進用食品添加剤、並びにこれを含有する乳幼児向けの食品の有する優れた脂質吸収促進作用は、乳に由来するラクトフェリンを有効成分としてもたらされているために、ヒトおよび動物に対する安全性が高く、副作用の心配なく長期間に渡って継続して日常的に、安心して摂取することができる。
本発明による乳幼児用の脂質吸収促進剤及び脂質吸収促進用食品添加剤、並びにこれを含有する乳幼児向けの食品は、安全性が高く、長期連用することが可能であるだけではなく、保存性に優れているために、家庭内においても、臨床現場においても取り扱い容易なものである。
本発明の有効成分であるラクトフェリンは、耐熱性があり、水溶性であり、水溶液中でも安定であるために、本発明による乳幼児用の脂質吸収促進剤及び脂質吸収促進用食品添加剤、並びにこれを含有する乳幼児向けの食品は、薬剤や飲食品として安定であり、流通や保存において有利である。
本発明による乳幼児用の脂質吸収促進剤は、経口投与が可能であるために、簡便で汎用性が高い。さらに、本発明に係る脂質吸収促進剤は、生体材料として比較的安価な乳又はホエー等の原料から安定して大量に製造することができる。さらに、本発明の有効成分であるラクトフェリンは、もともと無味無臭であるために、味覚性を損なうことなく、好適に経口摂取可能なものである。
さらに、本発明によれば、有効成分であるラクトフェリンは、乳幼児においては脂質の吸収促進作用を有し、これによって血中の中性脂肪の濃度を上昇させる。さらに、この脂質の吸収促進作用は、胆汁酸の産生促進を伴うものである。したがって、本発明によれば、ラクトフェリンを有効成分として、乳幼児用の血中の中性脂肪濃度上昇剤及び中性脂肪濃度上昇用食品添加剤、並びにこれを含有する乳幼児向けの食品を得ることができ、さらに、ラクトフェリンを有効成分として、乳幼児用の胆汁酸産生促進剤及び胆汁酸産生促進用食品添加剤、並びにこれを含有する乳幼児向けの食品を得ることができ、これらについても、上記した乳幼児用の脂質吸収促進剤及び脂質吸収促進用食品添加剤、並びにこれを含有する乳幼児向けの食品と同様の優れた特徴、例えば安全性、安定性、保存性、経済性を有し、経口または経管投与(経口または経管摂取)が容易であるという利点を有している。
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
本発明は、ラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用脂質吸収促進剤にある。
本発明の有効成分であるラクトフェリンは、乳幼児に対して、生体内で胆汁酸の産生を効果的に産生する作用を有し、おそらくはこの作用を介して、乳幼児に対して、脂質や脂溶性栄養素(特に脂溶性ビタミン等)等の吸収促進に優れた効果を発揮することから、本発明は、当該作用効果を期待する乳幼児用の医薬品、乳幼児用の食品添加剤、及び乳幼児用の食品(飲食品)にもある。
したがって、本発明は、ラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用胆汁酸産生促進剤、及びラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用血中中性脂肪濃度上昇剤にもあり、本発明は、当該作用効果を期待する乳幼児用の医薬品、乳幼児用の食品添加剤、及び乳幼児用の食品(飲食品)にもある。
本発明において、脂質吸収促進効果を期待する、乳幼児用の脂質吸収促進剤、乳幼児用の脂質吸収促進用食品添加剤、及び乳幼児用の飲食品を、以下に乳幼児用の脂質吸収促進剤等ということがあり、同様に、胆汁酸産生促進効果を期待する、乳幼児用の胆汁酸産生促進剤、乳幼児用の胆汁酸産生促進用食品添加剤、及び乳幼児用の飲食品を、以下に乳幼児用の胆汁酸産生促進剤等ということがあり、同様に、中性脂肪濃度上昇効果を期待する、乳幼児用の中性脂肪濃度上昇剤、乳幼児用の中性脂肪濃度上昇用食品添加剤、及び乳幼児用の飲食品を、以下に乳幼児用の中性脂肪濃度上昇剤等ということがある。
本発明に使用するラクトフェリンは、市販のラクトフェリンや、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等。)の初乳、移行乳、常乳、末期乳、又はこれらの乳の処理物である脱脂乳、ホエー等を原料とし、例えばイオン交換クロマトグラフィー等の常法により、前記原料から分離して得られるラクトフェリンを用いることができる。中でも、工業的規模で製造されている市販のラクトフェリン(例えば、森永乳業社製)を使用することが好適である。更に、遺伝子工学的手法により、微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等で生産したラクトフェリンを使用することも可能である。
本発明に使用されるラクトフェリンは、ヒトのための医薬組成物、食品添加剤、飲食品に使用する場合には、哺乳動物のなかでも、その乳が伝統的に飲食用に用いられている牛、羊、山羊などの乳に由来するラクトフェリンが好ましく、特に牛乳由来のものが好ましい。これらは歴史的な年月の間、ヒトの飲食に使用されていたために、ヒトに対する安全性が極めて高い水準で担保されているからである。また、牛乳由来のホエーは、乳製品製造の副産物として安定して大量に得ることができるという利点があるために、本発明に使用するラクトフェリンの原料として、特に好適である
ここで、ラクトフェリンの調製(乳等の原料からのラクトフェリンの分離、精製)方法の一例を以下に示す。まず、イオン交換体(たとえばCM−セファロースFF(商品名、アマシャムファルマシア社製))をカラムに充填し、塩酸を通液し、水洗してイオン交換体を平衡化する。続いて、4℃に冷却したpH6.9の脱脂牛乳をカラムに通液し、透過液を回収し、再度同様にカラムに通液する。次いで、蒸留水をカラムに通液し、食塩水を通液し、イオン交換体に吸着した塩基性蛋白質の溶出液を得る。この溶出液に飽和度80%の硫酸アンモニウムを添加し、タンパク質を沈殿させ、遠心分離して沈殿物を回収する。回収した沈殿物を、飽和度80%の硫酸アンモニウム溶液で洗浄し、脱イオン水を添加して溶解し、得られた溶液を限外濾過膜モジュール(たとえばSLP0053(商品名、旭化成社製))を用いて脱塩し、凍結乾燥して、粉末状ウシラクトフェリンを得る。このようにして、純度が95質量%以上のウシラクトフェリンが得られる。なお、本明細書におけるラクトフェリンの純度は液体クロマトグラフ法により測定して得られる値とする。
ラクトフェリン中の金属含有量は特に限定されず、本発明では、ラクトフェリンを塩酸やクエン酸等により脱鉄したアポ型ラクトフェリン;該アポ型ラクトフェリンを、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属でキレートさせて得られる飽和度100%の状態の金属飽和ラクトフェリン;及び100%未満の各種飽和度で金属が結合している状態の金属部分飽和ラクトフェリンからなる群から選ばれる、いずれか1種又は複数種の混合物を用いることができる。
本発明に使用するラクトフェリンの好ましい形態としては、ヒト由来のラクトフェリン、またはウシ由来のラクトフェリンが例示され、1種を単独で使用することも、複数種を混合して用いることも可能である。
これらタンパク質においては、種、属、個体等の違いによって、1又は複数の位置での1又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位等の変異が当然存在し、このような変異を有する遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸においても変異が生じている場合がある。本発明に用いることができるラクトフェリンには、胆汁酸産生促進活性、脂質吸収促進活性、又は血中中性脂肪濃度上昇活性が損なわれない範囲において、このような変異を含むものも含有される。
本発明における、ラクトフェリンに基づく脂質吸収促進効果は、本発明の試験例において記載した方法に基づいて評価・測定することができる。
本発明の脂質吸収促進剤は、ラクトフェリン、若しくはこれらを製剤学的に許容される製剤担体と組合わせて、経口または経管的にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。本発明の脂質吸収促進剤の医薬製剤の投与単位形態は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤等を例示できる。製剤化にあたっては製剤担体として通常の薬剤に汎用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、流動性促進剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。これらを用いて常法に従って脂質吸収促進剤の製剤を製造することができる。
結合剤として、デンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が例示される。
崩壊剤としては、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等が例示される。
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80等が例示される。
滑沢剤としては、タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコール等が例示される。
流動性促進剤としては、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等が例示される。
本発明の製剤中に含まれるラクトフェリンの量は特に限定されず適宜選択すればよいが、例えばいずれも通常製剤中に0.0001〜75質量%、好ましくは0.001〜50質量%とするのがよい。
本発明の製剤の投与方法は特に限定されず、各種製剤形態、投与対象となる乳幼児(以下に、患者ということがある)の年齢、性別、その他の条件、投与対象となる乳幼児の栄養状態又は症状の程度等に応じて決定される。本発明の製剤の有効成分の投与量は、用法、投与対象となる乳幼児の年齢、性別、栄養状態又は疾患の程度、その他の条件等により適宜選択される。通常有効成分としてのラクトフェリンの量は、0.1〜1000mg/kg/日、好ましくは0.5〜500mg/kg/日、特に好ましくは5〜250mg/kg/日の範囲となる量を目安とするのが良く、1日1回又は複数回に分けて投与することができる。
本発明において、乳幼児とは、乳児及び幼児を含み、さらに詳細には、乳児、幼児、新生児を含み、さらに詳細には、乳児、幼児、新生児、未熟児、早産児、低出生体重児を含む。本発明においては、特に断りがない限り、乳幼児の種にはヒトが含まれる。乳児とは、乳児期にある子供を指し、乳児期とは母乳等の乳を主な栄養源としている時期を意味し、ヒトの場合、通常は1歳未満が乳児期にあたる。新生児とは、新生児期にある子供を指し、新生児期とは出生後間もない時期を意味し、ヒトの場合、通常は出生後4週間以内を意味する。幼児とは、一般には就学前までの時期にある子供を指すが、本発明においては、乳児期を脱した後に、未だ脂質消化吸収能力や胆汁酸産生能力が十分ではなく、本発明の優れた効果が発揮される時期にある子供を意味する。未熟児とは、一般に身体の発育が未熟なまま出生した乳児であって正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでの乳児を意味する。早産児とは、一般に妊娠後に十分な週齢を経る前に出生した新生児を意味し、ヒトの場合、例えば妊娠後第37週齢未満で出生した新生児を意味する。低出生体重児とは、一般に出生時の体重が通常よりも低い乳児を意味し、ヒトの場合、例えば出生時の体重が2500g未満である乳児を意味する。本発明の優れた効果は、未だ脂質消化吸収能力や胆汁酸産生能力が不十分であればあるほど、有用なものであるから、乳幼児のなかでも乳児において特に有効であり、乳児のなかでも新生児において特に有効であり、あるいは乳児のなかでも未熟児、早産児、低出生体重児に特に有効である。
本発明の有効成分であるラクトフェリンは、胆汁酸の産生を促進することによって、脂質の乳化を促進し、脂質がリパーゼによる消化を受け易くする作用を発揮する。さらに、胆汁酸が作るミセルは脂質分解物を取り込むために、脂質分解物が腸壁から吸収されることを容易にすることが可能である。また、脂質分解物とともに脂溶性ビタミンもミセルの形成によって取り込まれるために、これらの吸収も容易にすることが可能である。よって、脂質の消化吸収に必要な胆汁酸濃度が低いことが知られている乳幼児に対して、本発明は効果的に胆汁酸の産生を促進させ、脂質及び脂質溶解性の栄養素(特に脂溶性ビタミン)を消化吸収させることが可能である。したがって、本発明によれば、乳幼児における脂質や脂溶性ビタミンの吸収促進作用を有する医薬品及び食品添加剤や、乳幼児用の食品(飲食品)、例えば、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、低ナトリウム特殊粉乳、または母乳添加用粉末等を提供することが可能である。さらに、本発明によれば、乳幼児における胆汁酸の産生促進作用を有する医薬品及び食品添加剤や、乳幼児用の食品(飲食品)、例えば、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、低ナトリウム特殊粉乳、または母乳添加用粉末等を提供することも可能である。また、十分に消化吸収された脂質は、血中の中性脂肪濃度を上昇させる。したがって、本発明によれば、乳幼児における血中の中性脂肪濃度上昇作用を有する医薬品及び食品添加剤や、乳幼児用の食品(飲食品)、例えば、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、低ナトリウム特殊粉乳、または母乳添加用粉末等を提供することが可能である。
本発明の有効成分であるラクトフェリンを、食品又は飲料に対して、食品添加剤として添加して、飲食品組成物(飲食品)の形態で製造することができ、経口または経管的に摂取することが可能である。
このような飲食品組成物(飲食品)の形態としては、乳幼児用の食品(飲食品)として典型的なものとして、例えば、育児用ミルクをあげることができる。本発明における育児用ミルクには、調製粉乳及び液状の調製乳が含まれる。調製粉乳を、水(お湯を含む)又は適当な水溶液に溶解して、液状としたものも調製乳(育児用調製乳)として、育児用ミルクに含まれる。このような育児用ミルクとしては、例えば、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、低ナトリウム特殊粉乳をあげることができ、母乳添加用粉末もまた、育児用ミルクに含まれる。このような育児用ミルクの他に、乳幼児用の食品(飲食品)として、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調製用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の氷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、乳飲料、発酵乳、バター等の乳製品;惣菜、パン類;経腸栄養食品、流動食、スポーツ飲料;健康補助食品等の機能性食品等が例示される。
機能性食品の形態としては、顆粒状、タブレット状又は液状のサプリメントであることが、有効成分の摂取量を把握し易いという点で好ましい。これらの機能性食品は、脂質及び脂溶性栄養素を含んだ食品、例えば育児用ミルクとともに、又は前後して摂取することが好ましい。
本発明の飲食品組成物において、ラクトフェリンを添加する量は、飲食品組成物の形態によって適宜設定されるが、通常の食品又は飲料中0.0001〜75質量%、好ましくは0.001〜50質量%となるように添加すればよい。
本発明の飲食品には、有効成分である前記ラクトフェリンの他に、例えば、ラクチュロース、マルチトール、及びラクチトール等のアルコール吸収抑制性の糖類、およびそれ以外の糖類、例えばデキストリン、デンプン等;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等を含有させることができる。
本発明の飲食品は、乳幼児用の脂質吸収促進用、乳幼児用の胆汁酸産生促進用、又は乳幼児用の血中中性脂肪濃度上昇用といった用途が表示された飲食品、例えば、「乳幼児用脂質吸収促進用と表示された、ラクトフェリンを有効成分として含有する飲食品」、「乳幼児向けの脂質や脂溶性ビタミンの吸収促進用と表示されたラクトフェリンを有効成分として含有する飲食品」等として販売することが好ましい。
前記「表示」の行為(表示行為)には、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」の行為に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。具体的には、本発明の飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為を表示行為として挙げることができ、さらに商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為、等を例示できる。
一方、表示される内容(表示内容)としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましく、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
また、例えば、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができる。
以上のような用途の表示を行うために使用する文言は、「脂質吸収促進」、「脂質及び脂溶性ビタミンの吸収促進」、「胆汁酸産生促進」、「血中中性脂肪濃度上昇」という文言に限られるものでなく、それ以外の文言であっても、上記の脂質吸収促進、脂質及び脂溶性ビタミンの吸収促進、胆汁酸産生促進、血中中性脂肪濃度上昇の効果を表現する文言であれば、本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。
本発明のための食品添加剤は、各種食品添加剤を製造する際に、ラクトフェリンを含有させることによって製造することができる。ラクトフェリンとしては、上述した脂質吸収促進剤等の製造に用いられるラクトフェリンと同様のものを用いることができる。
食品添加剤には、有効成分としてのラクトフェリンの他に、通常使用される賦形剤等の添加剤を所望により含有させることができる。また、食品添加剤として公知の他の成分を所望により含有させることもできる。食品添加剤の形態には特に制限はなく、粉末、顆粒、タブレット、液体等、食品添加剤の通常の形態をとることができる。
本発明の脂質吸収促進、胆汁酸産生促進、又は血中中性脂肪濃度上昇のための食品添加剤は、脂質吸収促進、胆汁酸産生促進、又は血中中性脂肪濃度上昇のための飲食品を製造するために添加することができる。従って、有効成分としてのラクトフェリンを含み、且つ脂質吸収促進、胆汁酸産生促進、又は血中中性脂肪濃度上昇のための飲食品を製造するために添加することができるものであれば、本発明の脂質吸収促進、胆汁酸産生促進、又は血中中性脂肪濃度上昇のための食品添加剤の範囲に含有されるものである。
食品添加剤に関する表示の行為については、飲食品について上述した通りである。以上のような用途の表示を行うために使用する文言は、「脂質吸収促進用」、「脂質及び脂溶性ビタミンの吸収促進」、「胆汁酸産生促進」、「血中中性脂肪濃度上昇」という文言に限られるものでなく、それ以外の文言であっても、上記の脂質吸収促進、脂質及び脂溶性ビタミンの吸収促進、胆汁酸産生促進、血中中性脂肪濃度上昇等の効果を表現する文言であれば、本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。
本発明の有効成分であるラクトフェリンは、ヒトの乳幼児に限られることなく、ほ乳類の乳児に対しても、上述した優れた効果を示すものである。したがって、本発明は、ラクトフェリンを有効成分として含有する飼料、及び飼料添加剤にもあり、特にほ乳動物飼育用の粉乳、及び粉乳添加剤にもある。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ウシ・ラクトフェリン(森永乳業社製)150g、ラクチュロース粉末(森永乳業社製)100g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)635g、脱脂粉乳(森永乳業社製)85g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1g、ヨーグルト・フレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製)5g、グリセリン脂肪酸エステル製剤(理研ビタミン社製)24gの各粉末を添加して均一に混合し、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、錠剤1錠当り0.5gとし、12錠/分打錠速度、9.8KPaの圧力で前記混合粉末を連続的に打錠し、ラクトフェリンを含有するタブレット1800錠(約900g)を製造した。
[実施例2]
ホエー蛋白加水分解物(森永乳業社製)10.8kg、デキストリン(昭和産業社製)36kg、および少量の水溶性ビタミンとミネラルを水200kgに溶解して水相をタンク内に調製した。これとは別に、大豆サラダ油(太陽油脂社製)3kg、パーム油(太陽油脂社製)8.5kg、サフラワー油(太陽油脂社製)2.5kg、レシチン(味の素社製)0.2kg、脂肪酸モノグリセリド(花王社製)0.2kg、及び少量の脂溶性ビタミンを混合溶解して油相を調製した。タンク内の水相に油相を添加し、攪拌して混合した後、70℃に加温し、更に、ホモゲナイザーにより14.7MPaの圧力で均質化した。次いで、90℃で10分間殺菌した後、濃縮し、噴霧乾燥して、中間製品粉末約59kgを調製した。この中間製品粉末50kgに、蔗糖(ホクレン社製)6.8kg、アミノ酸混合粉末(味の素社製)167g、およびウシ・ラクトフェリン(森永乳業社製)60gを添加し、均一に混合して、ラクトフェリンを含有する経腸栄養食粉末約56kgを製造した。
[実施例3]
市販の乳清粉末(ドモ社製)4.3kgを水道水38.7Lに溶解し、1規定の水酸化ナトリウムによりpHを8.0に調整し、市販のトリプシン(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)17.2gを添加し、37℃で12時間加水分解し、のち80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、連続遠心分離により沈殿物を除去し、透明な上清液を得た。得られた上清液を30%に濃縮し、噴霧乾燥し、分解度約50%の粉末状乳清蛋白質加水分解物約3.6kgを得た。
原料乳200kg(全固形分約13%)に、前記加水分解物3.6kg、脱塩乳清粉末(ドモ社製)2.8kg、調整脂肪(日本油脂社製)25.65kg、乳糖(メグレ社製)43.7kg、ビタミン混合物(田辺製薬社製)22g、ミネラル混合物(富田製薬社製)550g、およびラクトフェリン(森永乳業社製)790gを添加し、標準化し、調乳液を均質化し、121℃で2秒間殺菌し、次いで殺菌した調乳液を濃縮し、噴霧乾燥し、乳児用調製粉乳約90kgを得た。
この乳児用調製粉乳の13%調乳液100mlには、100mgのラクトフェリンが含有されていた。この調乳液を生後1〜5か月の乳児に哺乳させた結果、血中の中性脂肪およびビタミンE濃度が、一般の乳児用調製粉乳哺乳時に比して約1.2倍となったことから、脂質や脂溶性ビタミンの吸収が良好になったことが確認された。
[実施例4]
市販乳清粉末(ドモ社製)47kgを水道水450Lに溶解し、1規定の水酸化ナトリウムでpHを8.0に調整し、市販のトリプシン(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)190gを添加し、37℃で12時間加水分解し、のち80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、連続遠心分離により沈殿物を除去し、透明な上清液を得た。得られた上清液を30%に濃縮し、噴霧乾燥し、分解度約50%の乳清蛋白質加水分解物約40kgを得た。
市販カゼイン(日本プロテイン社製)10kgを、10%の水酸化ナトリウム溶液でpH7.3に調整した温水に溶解し、18%濃度のカゼイン溶液を調製し常法により加熱殺菌し、室温に放冷し、10%水酸化ナトリウムでpHを9.0に調整し、市販のパパイン(天野製薬社製)100gとパンクレアチンF(天野製薬社製)100gを添加し、45℃で16時間加水分解し、90℃で10分間加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、セライト瀘過により沈殿物を除去し透明な瀘過液を濃縮し、噴霧乾燥し、カゼイン加水分解物約7kgを得た。
前記乳清蛋白質加水分解物40kg、カゼイン加水分解物7kg、精製乳糖(メグレ社製)46kgおよび可溶性多糖類(昭和産業社製)14.6kgを精製水300Lに溶解し、調整脂肪(日本油脂社製)40kg、ビタミン混合物(田辺製薬社製)35g、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、およびラクトフェリン(森永乳業社製)1.5kgを混合溶解し、均質化し、120℃で2秒間殺菌し、濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状のペプチドミルク約145kgを得た。
このペプチドミルクに含まれる乳蛋白質は全てが酵素分解されており、13%調乳液100ml当り130mgのラクトフェリンが含有されていた。この調乳液を生後1〜5か月の乳児に哺乳させた結果、血中の中性脂肪およびビタミンE濃度が、一般のペプチドミルク哺乳時に比して約1.2倍となったことから、脂質や脂溶性ビタミンの吸収が良好になったことが確認された。
[実施例5]
原料乳200kg(全固形分約13%)に、脱塩乳清粉末(ドモ社製)7.5kg、市販カゼイン(日本プロテイン社製)2.1kg、調整脂肪(日本油脂社製)12.5kg、乳糖(メグレ社製)27.8kg、可溶性多糖類(昭和産業社製)15.8kg、ビタミン混合物(田辺製薬社製)22g、ミネラル混合物(富田製薬社製)840g、およびラクトフェリン(森永乳業社製)860gを添加し、標準化し、調乳液を均質化し、121℃で2秒間殺菌し、次いで殺菌した調乳液を濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状の低出生体重児調製粉乳約90kgを得た。
この低出生体重児調製粉乳の14%調乳液100ml当り120mgのラクトフェリンが含有されていた。この調乳液を体重1500〜2400gの低出生体重児に哺乳させた結果、血中の中性脂肪およびビタミンE濃度が、一般の低出生体重児用調製粉乳哺乳時に比して約1.2倍となったことから、脂質や脂溶性ビタミンの吸収が良好になったことが確認された。
次に試験例を示して本発明を詳細に説明する。
[試験例1]
本試験は、乳幼児に対してラクトフェリンの経口投与による胆汁酸生成促進作用、脂質の消化吸収促進作用を確認するために行った。
(1)試料の調製
ウシ・ラクトフェリン(森永乳業社製)を、2.5質量%になるように精製水に溶解して試験試料を調製した。また、ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を、2.5質量%になるように精製水に溶解して対照試料を調製した。
(2)試験方法
出生1日齢のSD系ラット19匹について、体重に偏りが生じないように試験群10匹、対象群9匹に群分けした。
試験群のラットには、試験試料の投与量が0.01ml/g体重となるように、経口ゾンデを使用して4日間、一日一回ずつ連日投与した。対照群のラットには、対照試料の投与量が0.01ml/g体重となるように、経口ゾンデを使用して4日間、一日一回ずつ連日投与した。
最終投与より6時間絶食させた後、すべてのラットを解剖した。解剖後、採取した肝臓に75%エタノールを添加し、均質化した後、50℃で2時間処理した。その後、遠心分離により上清を回収し、総胆汁酸テストワコー(和光純薬工業社製)を用いた酵素比色法により胆汁酸含量を定量した。
また解剖後、心臓より採血を実施した。遠心処理によって得られた血清をトリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業社製)を用いた酵素比色法により血清中の中性脂肪含量を定量した。
(3)試験結果
本試験結果を表1、表2に示す。表1は、肝臓中1gあたりの胆汁酸濃度の測定結果を示す。表2は、血清中の中性脂肪濃度の結果を示す。
その結果、表1から明らかな通り、肝臓中の胆汁酸濃度は、対照試料(ウシ血清アルブミン)を投与した群と比較し、試験試料(ウシ・ラクトフェリン)を投与した群で有意に高値を示し、約1.3倍の値を示した。すなわち、ラクトフェリンにより胆汁酸生成が促進することが判明した。
また、表2から明らかな通り、血清中の中性脂肪含量は、対照試料(ウシ血清アルブミン)を投与した群と比較し、試験試料(ウシ・ラクトフェリン)を投与した群で有意に高値を示し、約1.5倍の値を示した。すなわち、ラクトフェリンにより脂質の消化吸収が促進することが判明した。
従って、ラクトフェリンは、胆汁酸生成促進作用を有し、その効果によって脂質の消化吸収を促進する効果が発揮されることが明らかとなった。
Figure 2009149550
Figure 2009149550
本発明によれば、ラクトフェリンを有効成分として含有する安全で副作用が少ない乳幼児用の脂質吸収促進剤及び脂質吸収促進用食品添加剤、並びにこれを含有する乳幼児向けの食品、特に育児用ミルクを提供することができる。これらは、乳幼児における発育に重要な脂質に加えて、脂溶性ビタミンをも吸収促進することができ、乳幼児の発育と健康の維持に非常に有効である。

Claims (4)

  1. ラクトフェリンを有効成分として含有する乳幼児用脂質吸収促進剤。
  2. 請求項1に記載の乳幼児用脂質吸収促進剤からなる乳幼児用脂質吸収促進用食品添加剤。
  3. 請求項2に記載の乳幼児用脂質吸収促進用食品添加剤を含有する乳幼児用食品。
  4. 乳幼児用食品が、乳児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、又は低ナトリウム特殊粉乳である請求項3に記載の乳幼児用食品。
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