JP2009146573A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池スタックを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックを構成する各単セルのアノードに充満した不純物ガスを燃料ガスによって置換する際に、燃料電池システムの外部への燃料ガスの無駄な排出を抑制する。
【解決手段】燃料電池システム1000において、燃料電池スタック100は、水素供給マニホールド40himと、アノードオフガス排出マニホールド40homと、空気供給マニホールド40aimと、カソードオフガス排出マニホールド40aomと、を備える。そして、燃料電池システム1000は、燃料電池スタック100から排出されたカソードオフガスを、アノードオフガスに対して不活性な不活性ガスとして、アノードオフガス排出マニホールド40homの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に循環させて供給するための循環配管64等を備える。燃料電池システム1000の運転は、制御ユニット80によって制御される。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関するものである。
燃料ガス(例えば、水素)と酸化剤ガス(例えば、酸素)との電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。そして、この燃料電池には、単セルを複数積層させた燃料電池スタックがある。この燃料電池スタックにおいて、各単セルは、電解質膜、および、この電解質膜の両面にそれぞれ接合された燃料ガスが供給されるアノードと、酸化剤ガスが供給されるカソードとを備えている。
燃料電池スタックには、一般に、燃料電池スタックの外部から供給された燃料ガスを、各単セルのアノードに分岐して供給するための燃料ガス供給マニホールドや、各単セルのアノードから排出された排出ガスであるアノードオフガスを集合させて燃料電池スタックの外部に排出するためのアノードオフガス排出マニホールドや、燃料電池スタックの外部から供給された酸化剤ガスを、各単セルのカソードに分岐して供給するための酸化剤ガス供給マニホールドや、各単セルのカソードから排出された排出ガスであるカソードオフガスを集合させて燃料電池スタックの外部に排出するためのカソードオフガス排出マニホールドが備えられる。
このような燃料電池スタックにおいて、各単セルのカソードに供給される酸化剤ガスとしては、一般に、酸素を含む空気が用いられる。そして、この場合、空気中に含まれる発電に寄与しないガスである窒素等の不純物ガスが、電解質膜を介して、カソード側からアノード側に透過する。このため、燃料電池スタックによる発電を長時間停止した場合には、不純物ガスが各単セルのアノード側に充満することになる。また、アノードオフガス排出マニホールドからのアノードオフガスの排出を禁止した状態で発電を行う場合や、アノードオフガス排出マニホールドから排出されたアノードオフガスを燃料ガス供給マニホールドに循環させ、アノードオフガス中に残留する燃料ガスを再利用して発電を行う場合にも、不純物ガスが燃料電池システムの外部に排出されないため、各単セルのアノード側において、時間の経過とともに、不純物ガスの量が増加していく。そこで、燃料電池スタックにおいて、各単セルのアノードに十分な燃料ガスを供給して発電を行うために、各単セルのアノード側に充満した不純物ガスを、燃料ガスによって掃気、置換する必要がある。
特開平05−217593号公報 特開2004−22487号公報 特表2007−506243号公報
ところで、燃料電池スタックにおいて、燃料ガス供給マニホールド、および、アノードオフガス排出マニホールドは、各単セルのアノードに供給される燃料ガスの単位時間当たりの流量が均一になるように、すなわち、燃料ガス供給マニホールドにおける静圧と、アノードオフガス排出マニホールドにおける静圧との差が、各単セルにおいて一定になるように設計されている。このため、各単セルのアノード側に充満した不純物ガスを燃料ガスに置換する際には、燃料電池スタックにおける各単セルの配置位置によって、置換に要する時間が異なっている。すなわち、燃料ガス供給マニホールドの燃料ガス供給口から近い位置に配置された単セルほど、燃料ガスが早く到達するので、置換に要する時間が短く、燃料ガス供給口から遠い位置に配置された単セルほど、燃料ガスが遅く到達するので、置換に要する時間が長かった。
したがって、燃料ガス供給口から遠い位置に配置された単セル内の不純物ガスが燃料ガスによって置換されるまでの期間に、燃料ガス供給口から近い位置に配置された単セルからは、燃料ガスが燃料電池システムの外部に無駄に排出されてしまい、燃費の低下を招いていた。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池スタックを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池スタックを構成する各単セルのアノードに充満した不純物ガスを燃料ガスによって置換する際に、燃料電池システムの外部への燃料ガスの無駄な排出を抑制することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]燃料電池システムであって、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって発電する単セルを複数積層させた燃料電池スタックであって、前記燃料電池スタックの外部から供給された前記燃料ガスを、複数の前記単セルのアノードに分岐して供給するための燃料ガス供給マニホールドと、前記複数の単セルのアノードから排出された排出ガスであるアノードオフガスを集合させて前記燃料電池スタックの外部に排出するためのアノードオフガス排出マニホールドを備える燃料電池スタックと、前記アノードオフガス排出マニホールドの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に、前記アノードオフガスに対して不活性な不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、を備える燃料電池システム。
適用例1の燃料電池システムでは、燃料電池スタックが備えるアノードオフガス排出マニホールドの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に、アノードオフガスに対して不活性な不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を備えている。したがって、この不活性ガス供給部によって、アノードオフガス排出マニホールドの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に不活性ガスを供給することによって、アノードオフガス排出マニホールドの主流路におけるガスの流速、特に、上記最上流部におけるガスの流速を速くし、いわゆるジェットポンプ効果(ベルヌーイ効果)を高めることができる。そして、燃料電池スタックにおいて、燃料ガス供給マニホールドにおける静圧と、アノードオフガス排出マニホールドにおける静圧との差が、単セルごとに互いに異なるようにし、各単セルのアノードに供給される燃料ガスの流量が、不均一になるようにすることができる。
したがって、本適用例の燃料電池システムでは、燃料電池スタックを構成する各単セルのアノードに充満した不純物ガスを燃料ガスによって置換する際に、単セルごとの置換に要する時間を均一化し、燃料電池システムの外部への燃料ガスの無駄な排出を抑制することができる。この結果、燃料電池システムの燃費を向上させることができる。
また、燃料電池システムにおいて、各単セルのアノードに充満した不純物ガスを燃料ガスに置換し、不純物ガス、および、燃料ガスを燃料電池システムの外部に排出するに際し、安全性を考慮して、一般に、燃料ガスを燃焼させたり、燃料ガスを希釈器によって希釈したりすることがなされていた。これに対して、本適用例の燃料電池システムでは、不活性ガスによって、アノードオフガス排出マニホールド内で、燃料ガスの希釈を行うことができるので、燃焼器や、希釈器を小型化、あるいは、省略することができる。この結果、燃料電池システムの小型化を図ることもできる。
[適用例2]適用例1記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池スタックは、さらに、前記複数の単セルのカソードから排出された排出ガスであるカソードオフガスを集合させて前記燃料電池スタックの外部に排出するためのカソードオフガス排出マニホールドを備えており、前記燃料電池システムは、さらに、前記カソードオフガス排出マニホールドから、前記カソードオフガスを排出するカソードオフガス排出部を備えており、前記不活性ガス供給部は、前記不活性ガスとして、前記カソードオフガスを、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部に循環させるための循環配管と、前記カソードオフガス排出部から、前記カソードオフガスの少なくとも一部を、前記循環配管に流すためのバルブと、を備える燃料電池システム。
適用例2の燃料電池システムでは、不活性ガス供給部は、燃料電池スタックから排出されるカソードオフガスの少なくとも一部を、上記不活性ガスとして有効利用することができる。したがって、不活性ガス供給部が、例えば、別途用意されたボンベに貯蔵された窒素等の不活性ガスを用いる場合と比較して、燃料電池システムを簡略化することができる。
[適用例3]適用例2記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池スタックは、さらに、前記燃料電池スタックの外部から供給された前記酸化剤ガスを、前記複数の単セルのカソードに分岐して供給するための酸化剤ガス供給マニホールドを備えており、前記燃料電池システムは、さらに、前記燃料ガス供給マニホールドに、前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、前記アノードオフガス排出マニホールドから、前記アノードオフガスを排出するアノードオフガス排出部と、前記酸化剤ガス供給マニホールドに、前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部と、前記各部を制御する制御部と、を備えており、前記制御部による前記各部の制御によって、前記燃料電池スタックによる発電中に、前記アノードオフガス排出マニホールドからの前記アノードオフガスの排出を禁止するとともに、前記アノードに、発電に寄与しない不純物ガスが所定量以上充満したときに、前記アノードオフガス排出マニホールドから、前記アノードオフガス、および、前記不純物ガスの排出を行う燃料電池システムであり、前記制御部は、前記アノードに、前記不純物ガスが所定量以上充満し、前記アノードオフガス排出マニホールドから、前記アノードオフガス、および、前記不純物ガスを排出するときに、前記不活性ガス供給部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部に、前記不活性ガスを供給する、燃料電池システム。
適用例3の燃料電池システムは、燃料電池スタックによる発電中に、燃料電池スタックに備えられたアノードオフガス排出マニホールドからのアノードオフガスの排出を禁止した状態で、すなわち、アノードオフガス排出部を閉塞して、燃料ガス供給部から燃料電池スタックに供給された燃料ガスのほぼすべてを発電に利用するタイプの燃料電池システムである(以下、このような燃料電池システムを、「アノードデッドエンド型燃料電池システム」と呼ぶ)。そして、アノードデッドエンド型燃料電池システムでは、発電中に、各単セルのアノードに発電に寄与しない不純物ガスが所定量以上充満したときには、各単セルのアノードに、発電に十分な燃料ガスが供給されるように、アノードオフガス排出マニホールドから、アノードオフガス、および、不純物ガスの排出が行われる。
本適用例の燃料電池システムでは、アノードデッドエンド型燃料電池システムにおいて、制御部が、各単セルのアノードに不純物ガスが所定量以上充満し、アノードオフガス排出マニホールドから、アノードオフガス、および、不純物ガスを排出するときに、不活性ガス供給部を制御して、アノードオフガス排出マニホールドの上記最上流部に、不活性ガスを供給する。したがって、燃料電池スタックによる発電中に、燃料電池システムからの燃料ガスの無駄な排出を抑制しつつ、各単セルに充満した不純物ガスを燃料ガスによって置換することができる。
[適用例4]適用例3記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池スタックの電圧を測定する電圧計を備え、前記制御部は、さらに、前記電圧計によって測定された前記燃料電池スタックの電圧が、所定の下限値未満になったときに、前記アノードに前記不純物ガスが所定量以上充満したものと判断する、燃料電池システム。
先に説明したアノードデッドエンド型燃料電池システムでは、発電中に、燃料電池スタックを構成する各単セルのアノードに不純物ガスが充満するにつれて、発電に必要な燃料ガスが不足してくるため、燃料電池スタックの電圧(スタック電圧)が徐々に低下する。
適用例4の燃料電池システムでは、スタック電圧を計測する電圧計を備えるので、制御部は、この電圧計の計測値を監視し、スタック電圧が所定の下限値以下になったときに、各単セルのアノードに不純物ガスが所定量以上充満したものと判断して、各単セルのアノードにおける不純物ガスの燃料ガスによる置換を開始することができる。
[適用例5]適用例4記載の燃料電池システムであって、前記制御部は、さらに、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部への前記不活性ガスの供給中、前記電圧計によって測定された前記燃料電池スタックの電圧が所定値以上となったときに、前記不活性ガス供給部を制御して、前記不活性ガスの供給を中止するとともに、前記アノードオフガス排出部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドからの前記アノードオフガスの排出を禁止する、燃料電池システム。
適用例5の燃料電池システムでは、制御部は、各単セルのアノードに充満した不純物ガスを燃料ガスによって置換しているときに、スタック電圧を計測する電圧計の計測値を監視し、スタック電圧が所定値以上に回復したときに、各単セルのアノードにおける不純物ガスが燃料ガスによって置換されたものと判断して、各単セルのアノードにおける不純物ガスの燃料ガスによる置換を終了することができる。
[適用例6]適用例3記載の燃料電池システムであって、さらに、前記アノードオフガスの排出が禁止されてからの前記燃料電池スタックによる発電時間を計測するタイマを備え、前記制御部は、前記タイマによって計測された前記発電時間が、第1の所定時間以上経過したときに、前記アノードに前記不純物ガスが所定量以上充満したものと判断する、燃料電池システム。
先に説明したアノードデッドエンド型燃料電池システムでは、発電中に、時間の経過とともに、燃料電池スタックを構成する各単セルのアノードに不純物ガスが充満する。
適用例6の燃料電池システムでは、アノードオフガスの排出が禁止されてからの燃料電池スタックによる発電時間を計測するタイマを備えるので、制御部は、この発電時間を監視し、発電時間が第1の所定時間以上経過したときに、各単セルのアノードに不純物ガスが所定量以上充満したものと判断して、各単セルのアノードにおける不純物ガスの燃料ガスによる置換を開始することができる。なお、第1の所定時間は、実験的、あるいは、解析的に、任意に設定可能である。
[適用例7]適用例6記載の燃料電池システムであって、前記タイマは、さらに、前記不活性ガスの供給時間を計測し、前記制御部は、さらに、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部への前記不活性ガスの供給中、前記タイマによって計測された前記不活性ガスの供給時間が第2の所定時間以上経過したときに、前記不活性ガス供給部を制御して、前記不活性ガスの供給を中止するとともに、前記アノードオフガス排出部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドからの前記アノードオフガスの排出を禁止する、燃料電池システム。
適用例7の燃料電池システムでは、制御部は、各単セルのアノードに充満した不純物ガスを燃料ガスによって置換しているときに、不活性ガスの供給時間、すなわち、置換開始からの経過時間を監視し、不活性ガスの供給時間が第2の所定値以上経過したときに、各単セルのアノードにおける不純物ガスが燃料ガスによって置換されたものと判断して、各単セルのアノードにおける不純物ガスの燃料ガスによる置換を終了することができる。なお、第2の所定時間は、実験的、あるいは、解析的に、任意に設定可能である。
[適用例8]適用例3ないし7のいずれかに記載の燃料電池システムであって、前記制御部は、前記燃料電池システムの起動時に、前記燃料ガス供給部、および、前記酸化剤ガス供給部を制御して、前記燃料ガス供給マニホールド、および、前記酸化剤ガス供給マニホールドに、前記燃料ガス、および、前記酸化剤ガスをそれぞれ供給し、前記不活性ガス供給部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部に、前記不活性ガスを供給するとともに、前記アノードオフガス排出部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドから、前記アノードオフガスを排出する、燃料電池システム。
酸化剤ガスとして、例えば、酸素を含む空気を用いる場合、燃料電池システムの停止時には、各単セルにおいて、空気中に含まれる発電に寄与しない窒素等の不純物ガスが、電解質膜を介して、カソード側からアノード側に透過し、不純物ガスが各単セルのアノード側に充満することになる。したがって、燃料電池システムの起動時には、各単セルのアノードに充満した不純物ガスを燃料ガスによって置換する必要がある。
適用例8の燃料電池システムでは、燃料電池システムの起動時に、各単セルのアノードに充満した不純物ガスを燃料ガスによって置換する際に、単セルごとの置換に要する時間を均一化し、燃料電池システムの外部への燃料ガスの無駄な排出を抑制することができる。なお、上述した燃料電池システムの起動時の制御は、燃料電池システムが、アノードデッドエンド型燃料電池システムであるか否かに関わらず適用可能である。
本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、その一部を省略したり、適宜、組み合わせたりして構成することができる。また、本発明は、上述の燃料電池システムとしての構成の他、燃料電池システムの制御方法の発明として構成することもできる。また、これらを実現するコンピュータプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体、そのプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号など種々の態様で実現することが可能である。なお、それぞれの態様において、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラムを記録した記録媒体等として構成する場合には、燃料電池システムの動作を制御するプログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.燃料電池システムの構成:
図1は、本発明の一実施例としての燃料電池スタック100を備える燃料電池システム1000の概略構成を示す説明図である。
燃料電池スタック100は、水素と酸素との電気化学反応によって発電する単セル40を、複数積層させたスタック構造を有している。各単セル40は、概ね、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に、それぞれアノード、および、カソードを接合した膜電極接合体を、セパレータによって挟持した構成となっている。アノード、および、カソードは、それぞれ、電解質膜の各表面に接合された触媒層と、この触媒層の表面に接合されたガス拡散層とを備えている。本実施例では、電解質膜として、ナフィオン(登録商標)等の固体高分子膜を用いるものとした。電解質膜として、固体酸化物等、他の電解質膜を用いるものとしてもよい。各セパレータには、アノードに供給すべき燃料ガスとしての水素の流路や、カソードに供給すべき酸化剤ガスとしての空気の流路や、冷却水の流路が形成されている。なお、単セル40の積層数は、燃料電池スタック100に要求される出力に応じて任意に設定可能である。
燃料電池スタック100は、一端から、エンドプレート10a、絶縁板20a、集電板30a、複数の単セル40、集電板30b、絶縁板20b、エンドプレート10bの順に積層することによって構成されている。これらには、燃料電池スタック100内に、水素や、空気や、冷却水を流すための供給口や、排出口が設けられている。また、燃料電池スタック100内部には、水素や、空気や、冷却水を、それぞれ各単セル40に分配して供給するための供給マニホールド(水素供給マニホールド40him、空気供給マニホールド40aim、冷却水供給マニホールド(図示省略))や、各単セル40のアノードおよびカソードからそれぞれ排出されるアノードオフガスおよびカソードオフガスや、冷却水を集合させて燃料電池スタック100の外部に排出するための排出マニホールド(アノードオフガス排出マニホールド40hom、カソードオフガス排出マニホールド40aom、冷却水排出マニホールド(図示省略))が形成されている。
エンドプレート10a,10bは、剛性を確保するため、鋼等の金属によって形成されている。絶縁板20a,20bは、ゴムや、樹脂等の絶縁性部材によって形成されている。集電板30a,30bは、緻密質カーボンや、銅板などのガス不透過な導電性部材によって形成されている。集電板30a,30bには、それぞれ図示しない出力端子が設けられており、燃料電池スタック100で発電した電力を出力可能となっている。また、集電板30a,30bには、燃料電池スタック100全体の電圧であるスタック電圧を測定するための電圧計Vsが接続されている。
なお、図示は省略しているが、燃料電池スタック100は、スタック構造のいずれかの箇所における接触抵抗の増加等による電池性能の低下を抑制したり、ガスの漏洩を抑制したりするために、スタック構造の積層方向に、所定の締結荷重が加えられた状態で、締結部材によって締結されている。
燃料電池スタック100のアノードには、配管53、および、水素供給マニホールド40himを介して、高圧水素を貯蔵した水素タンク50から、燃料ガスとしての水素が供給される。水素タンク50の代わりに、アルコール、炭化水素、アルデヒドなどを原料とする改質反応によって水素リッチなガスを生成し、アノードに供給するものとしてもよい。
水素タンク50に貯蔵された高圧水素は、水素タンク50の出口に設けられたシャットバルブ51、レギュレータ52によって圧力、および、供給量が調整されて、水素供給マニホールド40himを介して、各単セル40のアノードに供給される。各単セル40のアノードから排出されるアノードオフガスは、アノードオフガス排出マニホールド40homに接続された排出配管54を介して、希釈器70に導入されて希釈された後、燃料電池スタック100の外部に排出される。なお、配管53、および、排出配管54には、それぞれ、圧力計P4、および、圧力計P5が配設されている。また、排出配管54には、排出配管54の連通状態を切り換えるバルブ55が配設されている。水素タンク50や、シャットバルブ51や、レギュレータ52や、配管53は、本発明における燃料ガス供給部に相当する。また、排出配管54や、バルブ55は、本発明におけるアノードオフガス排出部に相当する。
燃料電池スタック100のカソードには、配管61を介して、コンプレッサ60によって圧縮された圧縮空気が、酸素を含有した酸化剤ガスとして供給される。そして、この圧縮空気は、配管61に接続された空気供給マニホールド40aimを介して、各単セル40のカソードに供給される。各単セル40のカソードから排出されるカソードオフガスは、カソードオフガス排出マニホールド40aomに接続された排出配管62を介して、希釈器70に導入された後、燃料電池スタック100の外部に排出される。なお、配管61、および、排出配管62には、それぞれ、圧力計P1、および、圧力計P2が接続されている。また、排出配管62には、62の連通状態を切り換えるバルブ63が配設されている。コンプレッサ60や、配管61は、本発明における酸化剤ガス供給部に相当する。また、排出配管62や、バルブ63は、本発明におけるカソードオフガス排出部に相当する。
また、本実施例の燃料電池システム1000では、図示するように、排出配管62には、カソードオフガス排出マニホールド40aomから排出されたカソードオフガスを、アノードオフガス排出マニホールド40homの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に、循環させて流すための循環配管64が接続されている。そして、この循環配管64には、循環配管64の連通状態を切り換えるバルブ65、および、圧力計P3が配設されている。排出配管62に配設されたバルブ63、および、循環配管64に配設されたバルブ65の開閉状態を連動して切り換えることによって、燃料電池スタック100における各単セル40から排出されたカソードオフガスを、排出配管62を介して、燃料電池システム1000の外部に排出するか、循環配管64に循環させるかを切り換えることができる。本実施例の燃料電池システム1000において、カソードオフガスは、アノードオフガスに対して不活性な不活性ガスであり、循環配管64や、バルブ65は、本発明における不活性ガス供給部に相当する。
燃料電池スタック100は、上述した電気化学反応によって発熱するため、燃料電池スタック100には、燃料電池スタック100を冷却するためのラジエータや、循環ポンプ等の冷却系も接続されている(図示省略)。
燃料電池システム1000の運転は、制御ユニット80によって制御される。制御ユニット80は、内部にCPU、RAM、ROM、タイマなどを備えるマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されたプログラムに従って、例えば、燃料電池スタック100への要求出力や、圧力計P1〜P5や、電圧計Vsの出力等に応じて、各種バルブや、ポンプの駆動等、システムの運転を制御する。なお、本実施例の燃料電池システム1000は、燃料電池スタック100による発電中に、燃料電池スタック100に備えられたアノードオフガス排出マニホールド40homからのアノードオフガスの排出を禁止した状態で、すなわち、排出配管54に配設されたバルブ55を閉弁した状態で、水素タンク50から燃料電池スタック100に供給された水素のほぼすべてを発電に利用するアノードデッドエンド型燃料電池システムであるものとした。以下、本発明の特徴である燃料電池システム1000の起動制御処理、および、運転制御処理について説明する。
B.起動制御処理:
図2は、燃料電池システム1000の起動制御処理の流れを示すフローチャートである。燃料電池システム1000の起動時には、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードに、酸化剤ガスとしての空気に含まれる発電に寄与しない窒素等の不純物ガスが、電解質膜を介して、カソード側からアノード側に透過し、充満している。そこで、本実施例の燃料電池システム1000では、以下に説明する起動制御処理によって、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードに充満した不純物ガスを、水素によって掃気、置換する。この処理は、燃料電池システム1000の起動時に、制御ユニット80のCPUが実行する処理である。
まず、CPUは、燃料電池スタック100における各単セル40のアノード、および、カソードに、それぞれ、水素、および、空気を供給する(ステップS100)。このとき、CPUは、シャットバルブ51の開弁、レギュレータ52の開弁、バルブ55の開弁、コンプレッサ60の始動、バルブ63の閉弁、バルブ65の開弁等を行い、アノードオフガス排出マニホールド40homから、各単セル40のアノードに充満した不純物ガスを水素によって掃気するとともに、燃料電池スタック100のカソードから排出されるカソードオフガスを、循環配管64を介して、水素供給マニホールド40himの最上流部に循環させる。
次に、CPUは、電圧計Vsによって、燃料電池スタック100のスタック電圧が所定値以上になったか否かを判断する(ステップS110)。そして、燃料電池スタック100のスタック電圧が所定値以上になった場合には(ステップS110:YES)、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードに充満した不純物ガスが水素によって置換されたものと判断し、バルブ65の閉弁、バルブ63の開弁、バルブ55の閉弁を行い(ステップS120)、起動制御処理を終了する。そして、起動制御処理の終了後、CPUは、燃料電池スタック100に対する要求出力に応じた発電時の運転制御を行う。なお、燃料電池スタック100のスタック電圧に関する所定値は、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードに充満した不純物ガスが水素によって置換されたものと判断可能な範囲内で、任意に設定可能である。
ステップS110において、燃料電池スタック100のスタック電圧が所定値未満である場合には(ステップS110:NO)、CPUは、タイマを参照して、起動制御処理開始から所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS130)。そして、起動制御処理開始から所定時間が経過していない場合には(ステップS130:NO)、ステップS110に戻る。
一方、ステップS130において、起動制御処理開始から所定時間が経過した場合には(ステップS130:YES)、CPUは、燃料電池システム1000における水素、および、空気の供給系、および、排出系、または、燃料電池スタック100に異常があるものと判断して、異常終了する。このとき、異常終了したことをユーザに報知するために、図示しない警報ランプを点灯、あるいは、点滅させたり、ブザーを鳴らしたりする。
C.運転制御処理:
図3は、燃料電池システム1000の運転制御処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、先に説明した起動制御処理が終了した後、制御ユニット80のCPUが実行する処理である。
まず、CPUは、電圧計Vsによって測定された燃料電池スタック100のスタック電圧が所定の下限値未満になったか否か、あるいは、タイマを参照して、通常運転時間、すなわち、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードの水素による置換(水素置換処理)が終了した後の発電時間が所定時間T1以上経過したか否かを判断する(ステップS200)。スタック電圧についての下限値、および、所定時間T1は、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードに不純物ガスが充満したものと判断可能な範囲内で、任意に設定可能である。
そして、燃料電池スタック100のスタック電圧が所定の下限値未満になった場合、あるいは、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードの水素置換が終了した後の発電時間が所定時間T1以上経過した場合には(ステップS200:YES)、CPUは、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードに不純物ガスが充満したと判断し、水素置換処理を開始する(ステップS210)。このとき、CPUは、バルブ55の開弁、バルブ63の閉弁、バルブ65の開弁等を行う。
次に、CPUは、電圧計Vsによって測定された燃料電池スタック100のスタック電圧が所定以上になったか否か、あるいは、タイマを参照して、水素置換処理開始後、所定時間T2以上経過したか否かを判断する(ステップS220)。スタック電圧についての所定値、および、所定時間T2は、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードに充満した不純物ガスが水素によって置換されたもの判断可能な範囲内で、任意に設定可能である。
そして、燃料電池スタック100のスタック電圧が所定以上になった場合、あるいは、水素置換処理開始後、所定時間T2以上経過した場合には(ステップS220:YES)、CPUは、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードに充満した不純物ガスが水素によって置換されたもの判断し、水素置換処理を終了する(ステップS230)。このとき、CPUは、バルブ63の開弁、バルブ65の閉弁、バルブ55の閉弁等を行う。一方、燃料電池スタック100のスタック電圧が所定以上になっておらず、また、水素置換処理開始後、所定時間T2以上経過していない場合には(ステップS220:NO)、水素置換処理を継続する。
次に、CPUは、燃料電池システム1000の運転停止指示が入力されたか否かを判断する(ステップS240)。燃料電池システム1000の運転停止指示が入力されていない場合には(ステップS240:NO)、ステップS200に戻る。一方、燃料電池システム1000の運転停止指示が入力された場合には(ステップS240:YES)、CPUは、燃料電池システム1000の運転を停止し、運転制御処理を終了する。
ステップS200において、燃料電池スタック100のスタック電圧が所定の下限値未満になっておらず、また、燃料電池スタック100における各単セル40のアノードの水素置換が終了した後の発電時間が所定時間T1以上経過していない場合には(ステップS200:NO)、ステップS240に進む。
D.比較例、および、実施例の作用・効果:
図4は、比較例としての燃料電池システム1000Rの概略構成を示す説明図である。図1との比較から分かるように、比較例の燃料電池システム1000Rの構成は、本実施例の燃料電池システム1000の構成とほぼ同じである。ただし、比較例の燃料電池システム1000Rは、本実施例の燃料電池システム1000と異なり、燃料電池スタック100Rにおける各単セル40のカソードから排出されたカソードオフガスを、アノードオフガス排出マニホールド40homの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に、循環させて流すための循環配管64等を備えていない。このため、図示、および、詳細な説明は省略するが、燃料電池システム1000Rの起動制御処理、および、運転制御処理では、燃料電池スタック100Rにおける各単セル40のアノードに充満した不純物ガスを水素置換する際に、アノードオフガスを排出するための排出配管54に配設されたバルブ55が開弁され、水素タンク50から供給された水素の流れのみによって、上記水素置換が行われる。また、希釈器70Rは、本実施例の燃料電池システム1000が備える希釈器70よりも大型で、希釈性能の高いものである。これは、後述するように、比較例の燃料電池システム1000Rでは、水素置換時に、希釈器70Rに、高濃度の水素が導入されるからである。
図5は、本実施例の燃料電池システム1000の作用・効果を示す説明図である。図5(a)に、比較例の燃料電池システム1000Rにおいて、先に説明した燃料電池スタック100Rにおける各単セル40に充満した不純物ガスを水素置換する際の、水素、および、アノードオフガス(不純物ガスを含む)の流れを模式的に示した。また、図5(d)に、本実施例の燃料電池スタック100において、先に説明した燃料電池スタック100における各単セル40に充満した不純物ガスを水素置換する際の、水素、アノードオフガス(不純物ガスを含む)、および、循環されたカソードオフガスの流れを模式的に示した。ここで、燃料電池スタック100R,100における水素の供給口に近い側をIN側と呼び、水素の供給口から遠い側をEND側と呼ぶ。
また、図5(b)に、比較例の燃料電池スタック100Rにおける水素供給マニホールド40himの静圧分布と、アノードオフガス排出マニホールド40homの静圧分布とを示した。また、図5(e)に、本実施例の燃料電池スタック100における水素供給マニホールド40himの静圧分布と、アノードオフガス排出マニホールド40homの静圧分布とを示した。実線で示した曲線は、水素供給マニホールド40himの静圧分布であり、破線で示した曲線は、アノードオフガス排出マニホールド40homの静圧分布である。
図5(b)に示したように、比較例の燃料電池スタック100Rでは、水素供給マニホールド40himの静圧と、アノードオフガス排出マニホールド40homの静圧との差は、IN側からEND側に亘って一定である。
これに対し、図5(e)に示したように、本実施例の燃料電池スタック100では、水素供給マニホールド40himの静圧と、アノードオフガス排出マニホールド40homの静圧との差が、IN側で小さく、END側で大きくなる。これは、燃料電池スタック100では、アノードオフガス排出マニホールド40homの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部からカソードオフガスを供給することによって、アノードオフガス排出マニホールド40homの主流路におけるガスの流速が速くなり、いわゆるジェットポンプ効果(ベルヌーイ効果)が高まり、アノードオフガス排出マニホールド40homの静圧がIN側からEND側に亘って減少するからである。
図5(c)、および、図5(f)に、それぞれ、比較例の燃料電池スタック100R、および、本実施例の燃料電池スタック100における水素置換の様子を模式的に示した。比較例の燃料電池スタック100Rでは、先に説明したように、燃料ガス供給マニホールドにおける静圧と、アノードオフガス排出マニホールドにおける静圧との差が、各単セル40において一定になっている(図5(b)参照)。このため、図5(c)に示したように、燃料電池スタック100Rにおいて、IN側に配置された単セル40ほど、水素が早く到達するので、水素置換に要する時間が短く、END側に配置された単セル40ほど、水素が遅く到達するので、水素置換に要する時間が長くなる。したがって、END側に配置された単セル40内の不純物ガスが水素置換されるまでの期間に、IN側に配置された単セル40からは、水素が燃料電池システム1000Rの外部に無駄に排出されてしまい、燃費の低下を招いていた。
これに対し、本実施例の燃料電池スタック100では、先に説明したように、水素供給マニホールド40himの静圧と、アノードオフガス排出マニホールド40homの静圧との差が、IN側で小さく、END側で大きくなる(図5(e)参照)。つまり、単セル40ごとに、内部を流れるガスの単位時間当たりの流量が異なり、燃料電池スタック100において、IN側に配置された単セル40ほど、内部を流れるガスの単位時間当たりの流量が少なくなり、END側に配置された単セル40ほど、内部を流れるガスの単位時間当たりの流量が多くなる。このため、燃料電池スタック100において、IN側に配置された単セル40における水素置換に要する時間を、比較例の燃料電池スタック100Rよりも長くし、また、END側に配置された単セル40における水素置換に要する時間を、比較例の燃料電池スタック100Rよりも短くすることができる。そして、図5(f)に示したように、IN側からEND側に亘って、各単セル40における水素置換に要する時間を均一化し、燃料電池システム1000の外部への水素の無駄な排出を抑制することができる。
以上説明したように、本実施例の燃料電池システム1000によれば、燃料電池スタック100が備えるアノードオフガス排出マニホールド40homの主流路を流れるガス流れ方向の最上流部に、燃料電池スタック100から排出されたカソードオフガスを循環させて供給するための循環配管64等を備えるので、燃料電池スタック100を構成する各単セル40のアノードに充満した不純物ガスを水素置換する際に、燃料電池システム1000の外部への水素の無駄な排出を抑制することができる。この結果、燃料電池システム1000の燃費を向上させることができる。
また、本実施例の燃料電池システム1000では、カソードオフガスによって、燃料電池スタック100が備えるアノードオフガス排出マニホールド40hom内で、アノードオフガスに含まれる水素の希釈を行うことができるので、希釈器70を、比較例の燃料電池システム1000Rが備える希釈器70Rよりも小型化することができる。この結果、燃料電池システム1000の小型化を図ることもできる。
E.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
E1.変形例1:
上記実施例では、燃料電池システム1000は、燃料電池スタック100が備えるアノードオフガス排出マニホールド40homの主流路を流れるガス流れ方向の最上流部に、燃料電池スタック100から排出されたカソードオフガスを循環させて供給するための循環配管64等を備えるものとしたが、本発明は、これに限られない。本発明は、一般に、燃料電池スタック100が備えるアノードオフガス排出マニホールド40homの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に、アノードオフガスに対して不活性な不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を備えるようにすればよく、例えば、窒素等の不活性ガスを貯蔵したボンベを用意し、その不活性ガスを、アノードオフガス排出マニホールド40homの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に供給するようにしてもよい。ただし、本実施例の燃料電池システム1000によれば、不活性ガスを供給するためのボンベ等を別途用意する必要がないので、燃料電池システムを簡略化することができる。
E2.変形例2:
上記実施例では、図3に示した運転制御処理のステップS200において、スタック電圧、または、発電時間に基づいて、水素置換処理を開始するか否かを判断するものとしたが、本発明は、これに限られない。例えば、排出配管54に、水素濃度を検出する濃度センサを配設し、この濃度センサによって検出された水素濃度に基づいて、水素置換処理を開始するか否かを判断するようにしてもよい。ステップS220における水素置換処理の終了の判断についても同様である。
E3.変形例3:
上記実施例では、燃料電池システム1000は、アノードデッドエンド型燃料電池システムであるものとしたが、本発明は、これに限られない。本発明を、燃料電池スタック100が備えるアノードオフガス排出マニホールド40homから排出されたアノードオフガスを水素供給マニホールド40himに循環させ、アノードオフガス中に残留する水素を再利用して発電を行うタイプの燃料電池システムに適用するようにしてもよい。
本発明の一実施例としての燃料電池スタック100を備える燃料電池システム1000の概略構成を示す説明図である。 燃料電池システム1000の起動制御処理の流れを示すフローチャートである。 燃料電池システム1000の運転制御処理の流れを示すフローチャートである。 比較例としての燃料電池システム1000Rの概略構成を示す説明図である。 本実施例の燃料電池システム1000の作用・効果を示す説明図である。
符号の説明
1000,1000R…燃料電池システム
100,100R…燃料電池スタック
10a,10b…エンドプレート
20a,20b…絶縁板
30a,30b…集電板
40…単セル
40him…水素供給マニホールド
40hom…アノードオフガス排出マニホールド
40aim…空気供給マニホールド
40aom…カソードオフガス排出マニホールド
50…水素タンク
51…シャットバルブ
52…レギュレータ
53…配管
54…排出配管
55…バルブ
60…コンプレッサ
61…配管
62…排出配管
63…バルブ
64…循環配管
65…バルブ
70,70R…希釈器
80…制御ユニット
P1〜P5…圧力計
Vs…電圧計

Claims (8)

  1. 燃料電池システムであって、
    燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって発電する単セルを複数積層させた燃料電池スタックであって、前記燃料電池スタックの外部から供給された前記燃料ガスを、複数の前記単セルのアノードに分岐して供給するための燃料ガス供給マニホールドと、前記複数の単セルのアノードから排出された排出ガスであるアノードオフガスを集合させて前記燃料電池スタックの外部に排出するためのアノードオフガス排出マニホールドと、を備える燃料電池スタックと、
    前記アノードオフガス排出マニホールドの主流路を流れるガスの流れ方向の最上流部に、前記アノードオフガスに対して不活性な不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、
    を備える燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の燃料電池システムであって、
    前記燃料電池スタックは、さらに、前記複数の単セルのカソードから排出された排出ガスであるカソードオフガスを集合させて前記燃料電池スタックの外部に排出するためのカソードオフガス排出マニホールドを備えており、
    前記燃料電池システムは、さらに、前記カソードオフガス排出マニホールドから、前記カソードオフガスを排出するカソードオフガス排出部を備えており、
    前記不活性ガス供給部は、
    前記不活性ガスとして、前記カソードオフガスを、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部に循環させるための循環配管と、
    前記カソードオフガス排出部から、前記カソードオフガスの少なくとも一部を、前記循環配管に流すためのバルブと、
    を備える燃料電池システム。
  3. 請求項2記載の燃料電池システムであって、
    前記燃料電池スタックは、さらに、前記燃料電池スタックの外部から供給された前記酸化剤ガスを、前記複数の単セルのカソードに分岐して供給するための酸化剤ガス供給マニホールドを備えており、
    前記燃料電池システムは、さらに、
    前記燃料ガス供給マニホールドに、前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、
    前記アノードオフガス排出マニホールドから、前記アノードオフガスを排出するアノードオフガス排出部と、
    前記酸化剤ガス供給マニホールドに、前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部と、
    前記各部を制御する制御部と、を備えており、
    前記制御部による前記各部の制御によって、前記燃料電池スタックによる発電中に、前記アノードオフガス排出マニホールドからの前記アノードオフガスの排出を禁止するとともに、前記アノードに、発電に寄与しない不純物ガスが所定量以上充満したときに、前記アノードオフガス排出マニホールドから、前記アノードオフガス、および、前記不純物ガスの排出を行う燃料電池システムであり、
    前記制御部は、前記アノードに、前記不純物ガスが所定量以上充満し、前記アノードオフガス排出マニホールドから、前記アノードオフガス、および、前記不純物ガスを排出するときに、前記不活性ガス供給部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部に、前記不活性ガスを供給する、
    燃料電池システム。
  4. 請求項3記載の燃料電池システムであって、さらに、
    前記燃料電池スタックの電圧を測定する電圧計を備え、
    前記制御部は、さらに、前記電圧計によって測定された前記燃料電池スタックの電圧が、所定の下限値未満になったときに、前記アノードに前記不純物ガスが所定量以上充満したものと判断する、
    燃料電池システム。
  5. 請求項4記載の燃料電池システムであって、
    前記制御部は、さらに、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部への前記不活性ガスの供給中、前記電圧計によって測定された前記燃料電池スタックの電圧が所定値以上となったときに、前記不活性ガス供給部を制御して、前記不活性ガスの供給を中止するとともに、前記アノードオフガス排出部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドからの前記アノードオフガスの排出を禁止する、
    燃料電池システム。
  6. 請求項3記載の燃料電池システムであって、さらに、
    前記アノードオフガスの排出が禁止されてからの前記燃料電池スタックによる発電時間を計測するタイマを備え、
    前記制御部は、前記タイマによって計測された前記発電時間が、第1の所定時間以上経過したときに、前記アノードに前記不純物ガスが所定量以上充満したものと判断する、
    燃料電池システム。
  7. 請求項6記載の燃料電池システムであって、
    前記タイマは、さらに、前記不活性ガスの供給時間を計測し、
    前記制御部は、さらに、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部への前記不活性ガスの供給中、前記タイマによって計測された前記不活性ガスの供給時間が第2の所定時間以上経過したときに、前記不活性ガス供給部を制御して、前記不活性ガスの供給を中止するとともに、前記アノードオフガス排出部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドからの前記アノードオフガスの排出を禁止する、
    燃料電池システム。
  8. 請求項3ないし7のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
    前記制御部は、前記燃料電池システムの起動時に、前記燃料ガス供給部、および、前記酸化剤ガス供給部を制御して、前記燃料ガス供給マニホールド、および、前記酸化剤ガス供給マニホールドに、前記燃料ガス、および、前記酸化剤ガスをそれぞれ供給し、前記不活性ガス供給部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドの前記最上流部に、前記不活性ガスを供給するとともに、前記アノードオフガス排出部を制御して、前記アノードオフガス排出マニホールドから、前記アノードオフガスを排出する、
    燃料電池システム。
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