本発明は表示装置に係り、特に2枚の液晶パネルを使用して3次元画像を得る装置に関する。
3次元画像を表示する方法のひとつとして、2枚の透過型表示パネルを間隔をもって配置し、2枚の透過型表示パネルに同様な画像を形成し、2枚の画像の輝度を制御することによって奥行き感を出して3次元画像を形成する技術がある。このような方式を開示したものとして「特許文献1」を上げることができる。このような透過型表示装置の代表は液晶表示パネルである。
液晶表示パネルには、多数の走査線、ビデオ信号線が交差して配置されている。そして、走査線、ビデオ信号線で囲まれた部分に画素が形成されている。したがって、画面を微視的に見れば明るい部分と暗い部分が規則的に生じていることになる。2枚の液晶表示パネルを距離を隔てて重ねて配置して画像を形成すると、各液晶表示パネルに規則的に形成される暗い部分と明るい部分とが、干渉を起こし、いわゆるモアレを発生する。このような構成において発生するモアレを対策するために、2枚の液晶パネルの間に光を拡散する層を配置することが「特許文献2」に記載されている。
特開2001−54144号公報
特許第3335998号
特許文献2に記載のように、2枚の液晶表示パネルの間に拡散層を配置すると、モアレは低減することができるが、副作用として、正面輝度の低下、コントラストの低下、画像のにじみ(画像の輪郭のぼやけ)等が発生する。
本発明の課題は、2枚の液晶表示パネルを距離を置いて配置して、2枚の液晶パネルへの画像信号を制御することによって3次元画像を得る方式において、上記のようなモアレを低減するとともに、正面輝度の低下、コントラストの低下、画像のにじみ等の副作用を防止する表示装置を提供することである。
2枚の液晶表示パネルを距離を置いて配置して、2枚の液晶表示パネルへの画像信号を制御することによって3次元画像を得る方式において、2枚の液晶表示パネルの間に第1の方向と第2の方向に収束作用を有する蠅の目レンズアレイを配置することによってモアレを画面全体にわたって解消することが出来る。また、本発明の第2の側面では、蠅の目レンズアレイを上側の液晶表示パネルの上に設置することによってモアレを解消することが出来る。具体的な手段は次のとおりである。
(1)第1の液晶表示パネルと前記第1の液晶表示パネルの後方に所定の間隔を隔てて第2の液晶表示パネルが設置され、前記第2の液晶表示パネルの後方にはバックライトが設置されて、前記第1の液晶表示パネルの前方から画像を視認する表示装置であって、前記第1の液晶表示パネルの前方には第1の偏光板が貼り付けられ、前記第2の液晶表示パネルの後方には第2の偏光板が貼り付けられ、前記第1の液晶表示パネルと前記第2の液晶表示パネルの間には、第1の方向と第2の方向に周期性を持つ蠅の目レンズアレイが設置されていることを特徴とする表示装置。
(2)前記蠅の目レンズアレイは前記第2の液晶表示パネルの前方に接して設置されていることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(3)前記蠅の目レンズアレイは前記第1の液晶表示パネルの後方に接して設置されていることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(4)前記蠅の目レンズアレイにおける凸レンズ又は凹レンズのピッチをP、レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/10以上であることを特徴とする(2)に記載の表示装置。
(5)前記蠅の目レンズアレイにおける凸レンズ又は凹レンズのピッチをP、レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/7以上であることを特徴とする(2)に記載の表示装置。
(6)前記第1の液晶表示パネルの液晶層から前記第2の液晶表示パネルの液晶層までの距離は7.5mm以上であって、前記蠅の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/80以上であることを特徴とする(3)に記載の表示装置。
(7)前記第1の液晶表示パネルの液晶層から前記第2の液晶表示パネルの液晶層までの距離は7.5mm以上であって、前記蠅の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/56以上であることを特徴とする(3)に記載の表示装置。
(8)前記第1の液晶表示パネルの液晶層から前記第2の液晶表示パネルの液晶層までの距離は12mm以上であって、前記蠅の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/150以上であることを特徴とする(3)に記載の表示装置。
(9)前記第1の液晶表示パネルの液晶層から前記第2の液晶表示パネルの液晶層までの距離は12mm以上であって、前記蠅の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/100以上であることを特徴とする(3)に記載の表示装置。
(10)前記第1の方向および前記第2の方向は、前記蠅の目レンズアレイの長辺に対して、各々30度から60度または、−30度から−60度であることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(11)前記第1の方向および前記第2の方向は、前記蠅の目レンズアレイの長辺に対して、各々45度または−45度であることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(12)前記蠅の目レンズアレイの各凸レンズ又は凹レンズの外形は平行4辺形であることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(13)前記蠅の目レンズアレイの各凸レンズ又は凹レンズの外形は六角形であることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(14)前記蝿の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをH、RGB画素ピッチをPi、液晶層からのレンズアレイのレンズ面までの光学距離をDとすれば、(H/P)×(D/Pi)が0.26以上、0.78以下であることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(15)前記蝿の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをH、RGB画素ピッチをPi、液晶層からのレンズアレイのレンズ面までの光学距離をDとすれば、(H/P)×(D/Pi)が0.33以上、0.52以下であることを特徴とする(1)に記載の表示装置。
(16)第1の液晶表示パネルと前記第1の液晶表示パネルの後方に所定の間隔を隔てて第2の液晶表示パネルが設置され、前記第2の液晶表示パネルの後方にはバックライトが設置されて、前記第1の液晶表示パネルの前方から画像を視認する表示装置であって、前記第1の液晶表示パネルの前方には第1の偏光板が貼り付けられ、前記第2の液晶表示パネルの後方には第2の偏光板が貼り付けられ、前記第1の液晶表示パネルに貼り付けられた前記第1の偏光板の上には、第1の方向と第2の方向に周期性を持つ蠅の目レンズアレイが設置されていることを特徴とする表示装置。
(17)前記第1の液晶表示パネルの液晶層から前記第2の液晶表示パネルの液晶層までの距離は7.5mm以上であって、前記蠅の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/100以上であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(18)前記第1の液晶表示パネルの液晶層から前記第2の液晶表示パネルの液晶層までの距離は7.5mm以上であって、前記蠅の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/70以上であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(19)前記第1の液晶表示パネルの液晶層から前記第2の液晶表示パネルの液晶層までの距離は12mm以上であって、前記蠅の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/160以上であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(20)前記第1の液晶表示パネルの液晶層から前記第2の液晶表示パネルの液晶層までの距離は12mm以上であって、前記蠅の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをHとしたとき、H/Pは1/110以上であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(21)前記第1の方向および前記第2の方向は、前記蠅の目レンズアレイの長辺に対して、各々30度から60度または−30度から−60度であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(22)前記第1の方向および前記第2の方向は、前記蠅の目レンズアレイの長辺に対して、各々45度または−45度であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(23)前記蠅の目レンズアレイの各凸レンズ又は凹レンズの外形は平行4辺形であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(24)前記蠅の目レンズアレイの各凸レンズ又は凹レンズの外形は六角形であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(25)前記蝿の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをH、RGB画素ピッチをPi、液晶層からのレンズアレイのレンズ面までの光学距離をDとすれば、(H/P)×(D/Pi)が0.26以上、0.78以下であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(26)前記蝿の目レンズアレイの各マイクロレンズは凸レンズ又は凹レンズであって、前記レンズのピッチをP、前記レンズの高さをH、RGB画素ピッチをPi、液晶層からのレンズアレイのレンズ面までの光学距離をDとすれば、(H/P)×(D/Pi)が0.33以上、0.52以下であることを特徴とする(16)に記載の表示装置。
(27)第1の液晶表示パネルと前記第1の液晶表示パネルの後方に所定の間隔を隔てて第2の液晶表示パネルが設置され、前記第2の液晶表示パネルの後方にはバックライトが設置されて、前記第1の液晶表示パネルの前方から画像を視認する表示装置であって、前記第1の液晶表示パネルの前方には第1の偏光板が貼り付けられ、前記第2の液晶表示パネルの後方には第2の偏光板が貼り付けられ、前記第2の液晶表示パネルの前方で、前記第1の液晶表示パネルと前記第2の液晶表示パネルの間には、透明な樹脂板が貼り付けられ、前記透明な樹脂板の上には、第1の方向と第2の方向に周期性を持つ蠅の目レンズアレイが設置されていることを特徴とする表示装置。
(28)前記第1の方向および前記第2の方向は、前記蠅の目レンズアレイの長辺に対して、各々45度または−45度であることを特徴とする(27)に記載の表示装置。
本発明によれば、2枚の液晶表示パネルを用いた3次元画像表示装置に対して、第1の方向と第2の方向に周期性を有するマイクロレンズアレイを備える蠅の目レンズアレイを設置することによって、画面全体にわたってモアレを均一に解消することが出来る。
また、レンズアレイを用いて透過光の周期的な規則性を乱す、即ち光の指向性に変化を与えることによってモアレを解消するので、拡散シート等を使用することによってモアレを解消する場合に比較して、偏光解消を抑制できるので、表面輝度の低下、あるいは、画像のにじみを防止することが出来る。したがって、本発明を用いることによって優れた3次元画像を形成することが出来る。
さらに、レンズアレイによっては光の集束性を上げ、光の指向性をさらに高めることもできる。つまり、レンズアレイの設計によっては正面輝度の劣化を防ぐだけでなく、向上させることも可能である。
以下の実施例に基づいて本発明を詳細に開示する。
図1は本発明による3次元表示装置の概略断面図である。図1において、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2には別個に画像信号が加えられ、画像が形成される。上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2とは関連する画像が形成されるが、各画像には、深さ方向の情報を加えることによって、各パネルの2次元画像を人間が見た場合、擬似的に3次元画像に見えるようにしている。具体的には、深さ方向の情報信号によって、上液晶表示パネル1に形成される画像と下液晶表示パネル2に形成される画像の輝度に差を設けることによって、奥行き感を出す。
本実施例での液晶表示パネルの有効画面の大きさは対角で9インチである。上液晶表示パネル1は一般にはガラスで形成される上基板101と下基板102、および、下基板102と上基板101との間に挟持される液晶から成る。下基板102には、多数の走査線と、走査線と直角方向に延びる多数のビデオ信号線が形成され、走査線とビデオ信号線とに囲まれた部分に画素が形成される。そして、画素部に加えられるビデオ信号によって液晶の透過率が変化し、画像が形成される。
上基板101には下基板102に形成される画素部に対応して、図6に示すように、赤フィルタ41、緑フィルタ42、青フィルタ43の、3色のカラーフィルタが形成されてカラー画像が形成される。カラーフィルタの間はコントラスを向上させるためのブラックマトリクス44が形成されている。このブラックマトリクス44は下基板102に形成される走査線およびビデオ信号線を覆って形成されることになる。したがって、下基板および上基板には、縦方向には図6に示すようなピッチPy毎に暗い線が形成され、横方向には、図6に示すPx毎に暗い線が形成される。
下液晶表示パネル2の構成も下基板202と上基板201と、これらに挟持される液晶とからなり、基本的な構成は上液晶表示パネル1と同じである。そうすると上液晶パネルと下液晶パネルとの間で、光の干渉が生じ、いわゆるモアレが発生する。また、後に述べる光学部品、特に光を集光するためのプリズムシートとの間でも光の干渉を生じてモアレが発生する。本発明は、後に説明するように、マイクロ凸レンズが2次元に配列された蠅の目レンズアレイ3を用いることによってモアレを除去する。なお、以下の実施例では、マイクロ凸レンズを2次元に配列した蝿の目レンズアレイ3を用いたが、マイクロ凹レンズを2次元に配列した蝿の目レンズアレイを用いても、同様の効果が得られる。
図1に戻り、液晶はバックライトからの光を変調することによって画像を形成するが、この液晶によって変調される光は偏光されている必要がある。このために、下液晶表示パネル2の下に下偏光板21を設置し、バックライトからの光を偏光する。下液晶表示パネル2を出た光は、後に述べるレンズアレイ3を通って上液晶表示パネル1に入射し、上液晶表示パネル1による変調を受ける。下液晶表示パネル2、上液晶表示パネル1によって変調を受け、画像形成された光のみを取り出すために上偏光板11が設置される。上液晶表示パネル1、下液晶表示パネル2、レンズアレイ3、および、それらの付属部材はサイドフレーム4内に収容される。液晶表示画面が9インチの場合、2枚の液晶表示パネルの液晶層間の距離DDは、例えば、7.2mmである。液晶表示パネルの各基板の厚さは0.6mmであり、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2の間隔Dは6.0mmとなる。レンズアレイ3の厚さは0.6mmである。
液晶表示パネルは自らは発光しないため、バックライトが必要である。図1において、下フレーム5内には光源としての蛍光管6が配設されている。本方式では液晶表示パネルを2枚使用する。各液晶表示パネルの光透過率は10%以下である。したがって、液晶表示パネル2枚の光透過率は1%以下となってしまう。よって、本方式でのバックライトは大きな輝度を持つことが必要である。図1では光源としての蛍光管6は3本設置されているが、輝度を十分取るためには、9インチ程度の画面の場合であっても9本程度の蛍光管6が必要とされる場合もある。
下フレーム5の内側は光反射面となっている。光源である蛍光管6の上には光を出来るだけ液晶パネルの主面側に集めるために、光学シート群7が形成されている。図1において、光学シート群7は下拡散シート71、下プリズムシート72、上プリズムシート73、上拡散シート74で形成されている。これらの光学シート群7は常にすべて必要というわけではなく、画面の必要な輝度、画質、コスト等を考慮して、必要に応じて設置される。
光学シート群7の下には拡散板75が設置される。拡散板75の役割は光源である蛍光管6の光を拡散させて均一な光とすることと同時に、光学シート群7を支える役割をする。拡散板75はポリカーボネイトで形成され、板厚2mm、透過率は約70%である。拡散板75には例えば、タキロン製PCDSD471Gが使用される。
図1の光学シート群7の分解斜視図を図2に示す。下拡散シート71は光源が蛍光管6で形成されているために、各蛍光管6の位置のみが明るくなって、バックライトからの光が不均一になるのを防止するために設置される。下拡散シート71には例えば、(株)ツジデンの商品名D124が使用される。下拡散シート71の上には下プリズムシート72が設置される。下プリズムシート72のA−A断面は図3のようになっており、多数の小さなプリズムが形成されている。このプリズムのピッチは例えば50μmである。この下プリズムシート72は、図2に示すa方向に広がろうとするバックライトからの光を液晶パネル方向に集光する役割を持つ。下プリズムシート72には例えば、3M製のBEFIII90/50−T(H)が使用される。
下プリズムシート72の上には上プリズムシート73が形成される。上プリズムシート73のB−B断面は図3のようになっており、下プリズムシート72と同様にピッチは例えば、50μmである。上プリズムシート73は、図2に示すb方向に広がろうとするバックライトからの光を液晶パネル方向に集光する役割を持つ。上プリズムシート73には、例えば、3M製のBEFIII90/50−T(V)が使用される。上プリズムシート73の上には上拡散シート74が設置される。プリズムシートから出てくる光をさらに均一にするためである。上拡散シート74には例えば、(株)ツジデンの商品名D117VGが使用される。
図4は、本実施例の要部を示す分解斜視図である。上液晶表示パネル1の上には上偏光板11が、下液晶表示パネル2の下には下偏光板21が設置される。上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2の間に蠅の目レンズアレイ3が設置される。この蠅の目レンズアレイ3は、2次元に配列されたマイクロレンズアレイであり、2方向に光を収束させる性質を持つ。また、光を収束させる方向は、マイクロレンズアレイの配列方向を変化させることによって変化させることが出来る。マイクロレンズアレイの存在によって、上液晶表示パネル1及び下液晶表示パネル2の干渉によるモアレ、あるいは、プリズムシートと、上液晶表示パネル1または下液晶表示パネル2との干渉によるモアレを解消することが出来る。
モアレを解消するには透過してくる光の周期的な規則性を乱す、即ち光の指向性に変化を与えればよい。したがって、例えば、光の拡散層を上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2の間に設置することによってもモアレを解消することが出来る。しかし、この場合は、下液晶表示パネル2を透過してきた光の偏向解消等が生じて、正面輝度が劣化するという現象を生ずる。
透過光の規則性を乱す方法として、例えば、下液晶表示パネル2と上液晶表示パネル1の間にレンチキュラーレンズのような、光を特定方向にのみ収束するレンズアレイを設置する方法、または、拡散層を設置する方法がある。
レンチキュラーレンズアレイによる方法は、光の偏光解消を抑制し、且つ、透過光の規則性を乱すことが出来るという点で、モアレ解消には有力な方法である。レンチキュラーレンズアレイが光を収束する特定方向を適切に選択することによって、画面全体にわたってモアレを解消することが出来る。
しかしながら、レンチキュラーレンズアレイは、方向性をもっているために、モアレ解消の効果は画面全面に一様ではなく、特定方向のモアレに対しては効果が大きく、特定方向と直角方向のモアレに対しては効果が小さいという現象を生ずる。これを対策するには、レンチキュラーレンズアレイを2枚設置する方法をとることが出来る。しかし、これは、製造コストの上昇を伴う。
また、単なる拡散層では微粒子での散乱(Mie散乱)によって、光の進行方向が大きく曲げられる成分も多くあり、進行方向の大きな変化が正面輝度を下げる。一方、本発明では、大きく曲がる光の成分は存在しないため、正面輝度の劣化抑制、ないしは正面輝度の向上に貢献できる。
本発明では、蠅の目レンズアレイ3を用いることによって、特定方向と特定方向と直角方向のモアレを効果的に解消し、これによって画面全体のモアレを解消するものである。図5は本実施例で使用される蠅の目レンズアレイ3の形状である。図5(a)は蠅の目レンズアレイ3の平面図であり、図5(b)は図5(a)のA−A断面図または、B−B断面図である。
図5(a)に示す各格子は小さな凸レンズの外形を示している。蠅の目レンズアレイ3は小さな凸レンズが特定方向に配列したものである。図5(a)において、凸レンズはθ方向と−θ方向に配列している。そしてθは蠅の目レンズアレイ3の長辺に対して45度である。例えば、レンチキュラーレンズアレイを45度方向に配列することによって画面全体のモアレを軽減できるが、−45度方向のモアレの軽減の度合いは小さい。これに対して、本実施例においては、凸レンズを45度方向および−45度に配列することによって、画面全体のモアレを均一に解消することが出来る。
図5(a)において、蠅の目レンズアレイ3は上下左右対称である。したがって、図5(a)に示すA−A断面図もB−B断面図も同一の図となる。図5(b)において、板厚が0.6mmの透明樹脂の板で形成された蠅の目レンズアレイ3の表面には凸レンズが形成されている。透明樹脂としては、アクリルあるいは、ポリカーボネイト等を使用することが出来る。凸レンズの強度は図5(b)における凸レンズの高さHと凸レンズのピッチPとで定義することが出来る。すなわち、H/Pが大きいほど凸レンズの強度は強い。
本実施例では蠅の目レンズアレイ3を下液晶表示パネル2に接して設置しているが、蠅の目レンズアレイ3は他の場所例えば、上液晶表示パネル1の下側あるいは上側に接して設置してもよい。図1のように、蠅の目レンズアレイ3を下液晶表示パネル2に接して設置する場合は、他の場所に設置する場合に比較して、透過光の進行方向の規則性をより強く乱す必要があるので、レンズ強度はより強くする必要がある。図1のような配置の場合は、図5(b)に示すH/P、すなわち、レンズ強度は1/10以上、より好ましくは1/7以上である。
一方、蠅の目レンズアレイ3のレンズピッチPもモアレに対して重要な影響を持つ。すなわち、蠅の目レンズアレイ3のレンズピッチが大きいと、蠅の目レンズアレイ3と上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2との干渉によるモアレが生ずる。このモアレを目立たないようにするためには、蠅の目レンズアレイ3のレンズピッチPを小さくする必要がある。
蠅の目レンズアレイ3のレンズピッチPをどの程度小さくすれば良いかは、液晶表示パネルの画素ピッチ、PxあるいはPyとの関係で決まる。図6に、上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2の画素配置を示す。図6において、R、G,Bは上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2の上基板における、赤フィルタ41、緑フィルタ42、青フィルタ画素43を示す。各フィルタは赤画素、緑画素、青画素に対応する。横方向の各画素のピッチPxは82μmである。縦方向の画素ピッチPyは246μmである。赤画素、緑画素、青画素によって1画素が形成され、1画素の大きさは縦横とも246μmとなる。
図6に示すような画素配置の場合は、蠅の目レンズアレイ3自体と上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2等との干渉によるモアレを防止するためには、蠅の目レンズアレイ3のレンズピッチPは35μmよりも小さくするほうが良い。これを上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2の画素ピッチと比較すると、横方向ピッチPxに対しては、P/Px<0.427であり、縦方向ピッチPyに対しては、P/Py<0.142である。また、図6に示すような画素配置の場合は、蠅の目レンズアレイ3自体と上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2等との干渉によるモアレを防止するためには、さらに好ましい蠅の目レンズアレイ3のレンズピッチPは25μm以下である。これを上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2の画素ピッチと比較すると、横方向ピッチPxに対しては、P/Px<0.305であり、縦方向ピッチPyに対しては、P/Py<0.102である。モアレを生じさせないための蠅の目レンズアレイ3のレンズピッチは上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2の画素ピッチによって変えることが出来る。しかし、画素ピッチが大きくなった場合でも、蠅の目レンズアレイ3のレンズピッチは小さく保っていたほうが、モアレの面からは安全である。
このような、蠅の目レンズアレイ3は、例えば、次のようにして製作することが出来る。円柱状の金属の側面に蠅の目レンズアレイ3とは凹凸が逆になった、多数の凹部を有する表面を形成する。一方、蠅の目レンズアレイ3の基材となる透明樹脂のシートに紫外線硬化樹脂をコートする。紫外線硬化樹脂がコートされた透明樹脂シートに対して、側面に多数の凹部が形成された円柱状の金属をロールしながら押し付けると、金属の側面に形成された多数の凹部に対応してシート上の紫外線硬化樹脂にマイクロ凸レンズが形成される。そしてマイクロ凸レンズの形成と同時に紫外線を紫外線硬化樹脂に照射することによって、紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、円柱状の金属を剥離する。このような製造方法によれば、長尺の樹脂シートに連続して多数の蠅の目レンズアレイ3を形成することが出来る。
一方、多少レンズ精度は落ちるが、インクジェット法等の印刷法によっても蠅の目レンズアレイ3を形成することが出来る。
図5において、蠅の目レンズアレイ3の各マイクロレンズは凸レンズである必要がある。凸レンズであるから、多数の凸レンズが連続して形成されても、その断面は正弦曲線を描かない。つまり、レンズ端部まで、外側に凸のレンズであることが望ましい。しかし、蠅の目レンズアレイ3では多数の凸レンズが連続して形成されているので、マイクロレンズの端部まで外側に凸の形状とすることは難しい。この場合でも、図5(b)に示すマイクロレンズアレイのピッチPと、マイクロレンズが外側に凸である領域Eとの関係は、レンズ効果の点から、E/P≧0.7より大きいことが望ましい。
以上のように蠅の目レンズアレイ3を設置することによって、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2との干渉によるモアレを解消することが出来る。また、蠅の目レンズアレイ3と、上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2との干渉によるモアレも防止することが出来る。さらに本発明によれば、拡散シート等によってモアレを対策する場合に比べて、偏光解消をする必要が無いので、画像のにじみ、明るさ等の劣化を生ずることなく、モアレを解消することが出来る。
なお、以上の説明では、下プリズムシート、あるいは、上プリズムシートと、上液晶表示パネルあるいは、下液晶表示パネルとの関係は説明しなかったが、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2との干渉を対策するのと同様な原理によって対策することが出来る。
図7は本発明の第2の実施例である。実施例1における図1と異なる点は、蠅の目レンズアレイ3が下液晶表示パネル2に接して設置されているのではなく、上液晶表示パネル1の下基板に接して設置されている点である。蠅の目レンズアレイ3と上液晶表示パネル1の下基板とは例えば、紫外線硬化樹脂によって接着することが出来る。
モアレは、下液晶表示パネル2を基準に考えることが出来る。本実施例においては、蠅の目レンズアレイ3は下液晶表示パネル2から離れているために、蠅の目レンズアレイ3は下液晶表示パネル2を透過してきた進行方向に指向性を持った光に対して、実施例1の場合程強くは指向性を乱す必要が無い。したがって、図5に示す蠅の目レンズアレイ3のレンズ強度は実施例1の場合程強くなくとも良い。
光学的距離は、幾何学的距離/屈折率である。実施例1を示す図1においては、液晶面から蠅の目レンズアレイ3のレンズ表面までの幾何学的な距離は、下液晶表示パネル2の上基板201および蠅の目レンズアレイ3の板厚は各々0.6mmであるから、0.6+0.6=1.2mmである。屈折率を1.53とすると、光学的な距離は0.78mmとなる。本実施例を示す図7において、液晶面から蠅の目レンズアレイ3のレンズ表面までの幾何学的な距離は、D(6.0mm)+下液晶表示パネル2の上基板101の板厚(0.6mm)=6.6mmである。このうち蠅の目レンズアレイ3および下液晶表示パネル2の上基板201の板厚は各々0.6mmであり、空間が占める距離は5.4mmである。したがって、光学的距離は、蠅の目レンズアレイ3および上基板201の屈折率を1.53とすると、1.2/1.53+5.4=6.18となる。この場合の光学距離は、実施例1の場合の約8倍となる。
光学距離が大きくなった分、蠅の目レンズアレイ3のレンズ強度を小さくすることが出来る。そうすると、図5(b)におけるレンズ強度を示すH/Pは、実施例1のアナロジーから、本実施例においては、1/80以上、よりこのましくは、1/56以上となる。以上の評価は、図7における、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2の液晶層間の距離DDが7.2mmであるとして評価をしたが、DDが7.2mm以上であっても、以上のようなレンズ強度とすることによってモアレを解消することが出来る。
一方、図7に示す距離DDは12mm程度に設定する場合がある。この場合、下液晶表示パネル2の液晶面と蠅の目レンズアレイ3のレンズ表面までの距離は、11.3mmとなる。そうすると、光学距離は、1.2/1.53+10.1=12.08となり、実施例1における光学距離0.78mmの約15倍となる。光学距離が大きくなった分、蠅の目レンズアレイ3のレンズ強度を小さくすることが出来るので、この場合、図5(b)におけるレンズ強度を示すH/Pは、実施例1のアナロジーから、1/150、より好ましくは、1/100以上となる。
なお、図7における、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2の液晶層間の距離DDが12mmであるとして評価をしたが、DDが12mm以上であっても、以上のようなレンズ強度とすることによってモアレを解消することが出来る。
このように、本実施例においては、蠅の目レンズアレイ3のレンズ強度を実施例1の場合に比べて小さくすることが出来る。凸レンズの強度を小さくすることが出来ることは、蠅の目レンズアレイ3の製作条件を緩和することが出来、蠅の目レンズアレイ3の製造コストの点で有利である。
H/Pは、RGB画素のピッチPi、2枚の液晶層の間隔(より正確にはレンズアレイとリアパネルの液晶層までの光学的距離=(媒質の厚さ/屈折率)の総和)に依存している。なお、RGB画素のピッチPiは、画素ピッチPxの3倍又は、縦方向ピッチPyと同じである。
RGB画素ピッチは0.246mm、リアパネルの液晶層とレンズアレイのレンズ形成面までの光学距離を0.6mm(リアパネルのフィルター側のガラス板厚)/1.53(ガラス屈折率)+6mm/1(空気の屈折率)=6.4mmの場合にH/Pが1/100以上、好ましくは1/80倍以上である。RGB画素のトリオピッチをPi、液晶層からのレンズアレイのレンズ面までの光学距離((媒質の厚さ/屈折率)の総和)をDとすれば、H/P×(D/6.4mm)×(0.246mm/Pi)が1/100 以上、好ましくは1/80倍以上とすればよい。つまり、(H/P)×(D/Pi)は1/100×6.4/0.246 =0.26以上、好ましくは1/80×6.4/0.246=0.33 であればよい。
(H/P)×(D/Pi)が大きすぎるとリアパネルの画像のボケが大きくなり、光の指向性が著しく損なわれる。D=6.4mm,Pi=0.246mm、P=25μmのとき、Hは0.75μm以下、好ましくは0.5μm以下である。
即ち、(H/P)×(D/Pi)は0.78以下、好ましくは0.52以下となる。
結果、RGB画素のトリオピッチをPi、液晶層からのレンズアレイのレンズ面までの光学距離((媒質の厚さ/屈折率)の総和)をDとすれば、(H/P)×(D/Pi)が0.26以上、0.78以下、好ましくは0.33以上、0.52以下が良い。
本実施例における凸レンズアレイの方向すなわち、図5におけるθは45度である。また、蠅の目レンズアレイ3のピッチも実施例1の場合と同様であり、35μm以下が好ましく、さらに好ましくは25μm以下である。また、下液晶表示パネル2あるいは上液晶表示パネル1の画素ピッチとの関係も実施例1の場合と同様である。
図8は本発明の第3の実施例である。実施例1における図1と異なる点は、蠅の目レンズアレイ3が下液晶表示パネル2に接して設置されているのではなく、上液晶表示パネル1の上偏光板11に接して設置されている点である。蠅の目レンズアレイ3と上液晶表示パネル1の上偏光板11とは例えば、紫外線硬化樹脂によって接着することが出来る。
モアレは、下液晶表示パネル2を基準に考えることが出来る。本実施例においては、蠅の目レンズアレイ3は、実施例2の場合と同様、下液晶表示パネル2から離れているために、蠅の目レンズアレイ3は下液晶表示パネル2を透過してきた規則性を持った光に対して、実施例1の場合程強くは規則性を乱す必要が無い。したがって、図5に示す蠅の目レンズアレイ3のレンズ強度は実施例1の場合程強くなくとも良い。
すなわち、実施例1において説明したように、液晶面から蠅の目レンズアレイのレンズ表面までの光学的な距離は、屈折率を1.53とすると、0.78mmである。本実施例を示す図8において、液晶面から蠅の目レンズアレイ3のレンズ表面までの幾何学的な距離は、D(6.0mm)+下液晶表示パネル3の上基板101の板厚(0.6mm)+上液晶表示パネル1の合計板厚(1.2mm、)+蠅の目レンズアレイ3の板厚(0.6mm)=8.4mmである。但し上偏光板101の板厚は無視している。このうち、空間が占める距離は6.0mmであり、液晶基板および蠅の目レンズアレイの板厚の合計は2.4mmである。基板および蠅の目レンズアレイの屈折率を1.53とすると、光学的な距離は、2.4/1.53+6.0=7.57mmである。この場合の光学距離は、実施例1の場合の約10倍となる。
光学距離が大きくなった分、蠅の目レンズアレイ3のレンズ強度を小さくすることが出来る。そうすると、図5(b)におけるレンズ強度を示すH/Pは、実施例1のアナロジーから、本実施例においては、1/100以上、よりこのましくは、1/70以上となる。以上は図8において、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2の液晶層間の距離DDが7.2mmであるとして評価をしたが、DDが7.2mm以上であっても、以上のようなレンズ強度とすることによってモアレを解消することが出来る。
図8に示す距離DDは12mm程度に設定する場合がある。この場合、下液晶表示パネル2の液晶面と蠅の目レンズアレイ3のレンズ表面までの幾何学的な距離は、13.2mmとなる。但し、上偏光板101の板厚は無視している。このうち空間が占める距離は10.8mmであり、液晶基板および蠅の目レンズアレイの占める距離は2.4mmである。したがって、光学的な距離は、2.4/1.53+10.8=12.4であり、実施例1における光学的な距離0.78mmの約16倍となる。光学距離が大きくなった分、蠅の目レンズアレイ3のレンズ強度を小さくすることが出来るので、図5(b)におけるレンズ強度を示すH/Pは、実施例1のアナロジーから、1/160、より好ましくは、1/110以上となる。
なお、図8における、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2の液晶層間の距離DDが12mmであるとして評価をしたが、DDが12mm以上であっても、以上のようなレンズ強度とすることによってモアレを解消することが出来る。
このように、本実施例においては、蠅の目レンズアレイ3のレンズ強度を実施例1の場合に比べて小さくすることが出来る。凸レンズの強度を小さくすることが出来ることは、蠅の目レンズアレイ3の製作条件を緩和することが出来、蠅の目レンズアレイ3の製造コストの点で有利である。以上の構成の他は、実施例2で説明した構成、あるいはその効果と同様である。
図9は本発明の第4の実施例である。実施例1における図1と異なる点は、蠅の目レンズアレイ3が下液晶表示パネル2に接して設置されているのではなく、下液晶表示パネル2と上液晶表示パネル1の間に設置されている点である。図9において、蠅の目レンズアレイ3は下液晶表示パネル2から距離D1だけ離れた場所に設置されている。蠅の目レンズアレイ3の位置D1は、下液晶表示パネル2の上に、厚さD1の、例えば、アクリルあるいはポリカーボネイト等の透明樹脂によるスペーサ31を設置することによって設定することが出来る。スペーサ31と下液晶表示パネル2あるいは蠅の目レンズアレイ3との接着は、例えば、紫外線硬化樹脂を使用することが出来る。
この場合も、モアレは、下液晶表示パネル2を基準に考えることが出来る。本実施例においては、蠅の目レンズアレイ3は下液晶表示パネル2から離れているために、蠅の目レンズアレイ3は下液晶表示パネル2を透過してきた規則性を持った光に対して、実施例1の場合程強くは規則性を乱す必要が無い。蠅の目レンズアレイ3の強度は、下液晶表示パネル2からの距離によって変えることが出来る。すなわち、蠅の目レンズアレイ3の各凸レンズの強度については、図5(b)におけるH/Pの値を下液晶表示パネル2から離れるに従い、小さくすることが出来る。つまり、蠅の目レンズ3が下液晶表示パネル2に近い場合は、実施例1と同様に、図5(b)に示すH/Pを1/10以上、好ましくは1/7以上である。
一方、蠅の目レンズ3が上液晶表示パネル1に近い場合は光学的距離を評価する必要がある。すなわち、スペーサ31によって蠅の目レンズアレイ3を上液晶表示パネル1に近づけたと仮定する。この場合、下液晶表示パネル2の液晶層から蠅の目レンズアレイ3のレンズ表面までの幾何学的距離は7mmである。そしてこの空間は全てスペーサ、液晶表示パネルの基板、蠅の目レンズアレイ等で占められている。したがって、これらの光学要素の屈折率を1.53とすると、光学的な距離は7/1.53=4.58mmとなる。この値は実施例1で示す光学距離0.78mmの(3.3)5.8倍である。そうすると、蠅の目レンズアレイ3の図5(b)に示すH/Pを1/58以上、好ましくは1/40以上とする必要がある。
以上は図9において、上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2の液晶層間の距離DDが7.5mmであるとして評価をしたが、DDが7.5mm以上であっても、このようなレンズ強度とすることによってモアレを解消することが出来る。なお、実施例2あるいは実施例3で説明したように、図9におけるDDが12mm等の場合であっても、以上で説明したように、下液晶表示パネル2の液晶層からの光学的な距離を評価することによってモアレを解消することが出来るレンズ強度を導くことが出来る。
以上の構成の他は、実施例1または実施例2で説明した構成、あるいはその効果と同様である。
図10は本発明で使用される蠅の目レンズアレイ3の他の例である。図10は本実施例の蠅の目レンズアレイ3の平面図であり、図10のA−A断面図、B−B断面図は図5(b)と同じであるので省略する。図10において、各格子は個々の凸レンズの外形を示すが、実施例1等の図5と異なり、各格子は正方形ではなく、縦方向が横方向よりも短い菱形となっている。
各凸レンズアレイの方向θも45度ではなく、45度よりも小さな値となっている。
この場合は蠅の目レンズアレイ3の縦方向の方が横方向よりもレンズ強度が強くなる。上液晶表示パネル1と下液晶表示パネル2との縦方向の画素ピッチと横方向の画素ピッチが実施例1で説明した図6のような配列とは異なる場合もある。画素が図6と異なるような場合は、常に図5に示すような蠅の目レンズアレイ3でモアレを解消できると限らず、本実施例のような蠅の目レンズアレイ3の構成がより効果的な場合がある。ただし、本実施例においても、θが45度から大きくずれるような場合は、モアレの低減効果が小さくなる。したがって、図10のような蠅の目レンズアレイ3の場合でも、図10に示すθは30度以上が良い。
図10では、各凸レンズの外形は縦に小さく横に大きい場合であるが、上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2の画素配置によっては、逆に、各凸レンズの外形は縦に大きく横に小さいほうが良い場合もある。この場合は、図10におけるθは45度よりも大きくなる。また、各凸レンズは横方向のレンズ強度が縦方向のレンズ強度よりも大きくなる。しかしながら、この場合も、蠅の目レンズアレイ3の方向が45度よりも極端に大きくなるとモアレ低減の効果が小さくなるので、θは60以下とするのが良い。
以上のように、本実施例によれば、上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2の画素配置が多様な場合についても蠅の目レンズアレイ3によるモアレ低減の効果を得ることが出来る。
図11は本発明で使用される蠅の目レンズアレイ3のさらに他の例である。図11(a)は本実施例の蠅の目レンズアレイ3の平面図であり、図11(b)は図11(a)のA−A断面図である。図11(a)において、各格子は個々の凸レンズの外形を示すが、実施例1等の図5と異なり、各格子は正方形ではなく、正六角形である。そして、凸レンズアレイの方向θは30度である。
本実施例では、凸レンズの外形を六角形とすることによって、各凸レンズの外形をより円に近づけることが出来る。このことは、各凸レンズの形成をより容易とする効果がある。この効果は、蠅の目レンズアレイ3の各凸レンズをインクジェットのような方法で形成する場合に特に効果がある。また、六角形は最も細密充填をし易い形状でもある。
図11(b)は図11(a)のA−A断面図である。各凸レンズの形状の定義は図5の場合と同様である。また、凸レンズとしての機能を十分に発揮させるために、図11(b)に示す凸レンズの外側に凸である領域Eは凸レンズアレイピッチPに対して、E/Pを0.7以上とすることが好ましい。また、図11(a)に示す凸レンズアレイのピッチPは図6に示すような画素配置においては、好ましくは35μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。
本実施例での蠅の目レンズアレイ3においても、実施例1〜実施例4で説明したような位置に蠅の目レンズアレイ3を設置することが出来る。この場合に、各凸レンズの強度は実施例1〜実施例4で説明したように、下液晶表示パネル2に近いほどレンズ強度を強くすること好ましい。その他の構成および効果は実施例1〜実施例4で説明したのと同様である。
図12は本発明で使用される蠅の目レンズアレイ3のさらに他の例である。図12は本実施例の蠅の目レンズアレイ3の平面図である。本実施例も各凸レンズの外形は六角形であるが、縦長の六角形である。実施例6における正六角形の凸レンズによる蠅の目レンズアレイ3におけるレンズアレイの方向θは30度である。しかし、画素配置によっては、レンズアレイの方向θが45度の場合が望ましい場合がある。本実施例では、各凸レンズの外形を縦長の六角形とすることによってレンズアレイの方向θを45度方向としている。
この場合、各凸レンズのレンズ強度は縦方向よりも横方向の方が強い。また、図12に示す凸レンズアレイにおいても、凸レンズアレイのピッチPは図6に示すような画素配置においては、好ましくは35μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。このような構成とすることによって、各凸レンズが六角形の場合においても、色々な画素配置に対応してモアレを効果的に対策することが出来る。
図13は6角形の頂点がパネルの上下方向に位置している配置である。このような配置にすることで、より効果的にモアレを対策することができる。
実施例1〜実施例7における蠅の目レンズアレイ3は、一定のピッチによって凸レンズが配列されている。蠅の目レンズアレイ3のピッチが一定でなく、ランダムに形成されていれば、下液晶表示パネル2を通過した透過光の規則性をより効果的に乱すことが出来る。透過光の規則性を乱すことが出来ればモアレをより効果的に対策することが出来る。さらに、蠅の目レンズアレイ3のピッチがランダムに形成されていれば、蠅の目レンズアレイ3自体と上液晶表示パネル1あるいは下液晶表示パネル2との干渉によるモアレに対しても効果的に対策することが出来る。
本実施例における蠅の目レンズアレイ3は、凸レンズアレイのピッチをランダムとすることによって、モアレをより効果的に対策するものである。凸レンズアレイのピッチをランダムの形成する方法の例は次のとおりである。すなわち、規則正しいレンズの中心位置を(Xn、Yn)(N=1、2、・・・・、N)としたとき、その状態から、実際のレンズの中心位置を(ΔXn、ΔYn)(n=1、2、・・・・、N)ずらす。つまり、実際のレンズ中心位置を(Xn'、Yn')とし、
(Xn'、Yn')=(Xn'+ ΔXn、Yn'+ ΔYn)(n=1、2、・・・・、N)とする。
レンズのX方向ピッチをa,Y方向ピッチをbとし、0から1の間で一様に分布したx、yの2系等の一様乱数の組を(Rxn、Ryn)(N=1、2、・・・・、N)とし、kを1以下の小さい正の数、例えば0.3、とすれば、
ΔXn=k・a・(−0.5+Rxn)
ΔYn=k・b・(−0.5+Ryn)
で表す。こうすれば、規則正しい中心位置から、レンズピッチの±0.5k倍の範囲でレンズ位置がばらつく。その結果、レンズ位置の周期性は損なわれる。その結果、レンズアレイとLCD周期構造のモアレは低減される。
本実施例の蠅の目レンズアレイ3を使用した場合の、レンズ配置および、それに伴う効果等は実施例1〜実施例4において説明したのと同様である。以上のように、本実施例を用いることによって、モアレをより低減させることが出来る。
以上の実施例においては、蠅の目レンズアレイはマイクロ凸レンズを2次元配列したものとして説明したが、マイクロ凹レンズを2次元配列した蠅の目レンズアレイを用いても同様の効果を得ることが出来る。この場合、図5に示すマイクロレンズの断面において、Hはマイクロ凹レンズの深さ、Pはマイクロ凹レンズのピッチ、Eは凹レンズが内側に凸である範囲というように読み替えればよい。また、多数の凹レンズが連続して形成されても、その断面は正弦曲線を描かないように形成する必要がある。
実施例1の概略断面図である。
バックライトの光学シートの斜視図である。
プリズムシートの断面図である。
画像形成部の分解斜視図である。
蠅の目レンズアレイの形状である。
第2の基板におけるカラーフィルタの配置図である。
実施例2の概略断面図である。
実施例3の概略断面図である。
実施例4の概略断面図である。
実施例5の蠅の目レンズアレイである。
実施例6の蠅の目レンズアレイである。
実施例7の蠅の目レンズアレイである。
実施例7の蠅の目レンズアレイである。
符号の説明
1…上液晶表示パネル、2…下液晶表示パネル、 3…蠅の目レンズアレイ、 4…サイドフレーム、 5…下フレーム、 6…蛍光管、 7…光学シート群、 11…上偏光板、 21…下偏光板、 31…スペーサ、41…赤フィルタ 42…緑フィルタ、 43…青フィルタ、 44…ブラックマトリクス、 71…下拡散シート、72…下プリズムシート、73…上プリズムシート 74…上拡散シート、 75…拡散板。