JP2009142193A - アデノシン3’,5’−ビスホスフェートを用いた無細胞タンパク質合成方法及び無細胞タンパク質合成反応液 - Google Patents

アデノシン3’,5’−ビスホスフェートを用いた無細胞タンパク質合成方法及び無細胞タンパク質合成反応液 Download PDF

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Abstract

【課題】mRNA分解の抑制を簡便に行うことによって無細胞タンパク質合成を行う方法、及びmRNA分解の抑制を簡便に行うことによって無細胞タンパク質合成を行うことができる反応液を提供する。
【解決手段】 生体細胞由来の抽出液、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸、tRNA、mRNA、緩衝剤、及びアデノシン3’,5’−ビスホスフェートを少なくとも含む無細胞タンパク質合成反応液、及び当該反応液を用いた、無細胞タンパク質合成方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、無細胞タンパク質合成方法に関する。より詳しくは、本発明は、mRNAの分解を抑制して無細胞タンパク質合成を行う方法に関する。具体的には、本発明は、アデノシン3’,5’−ビスホスフェートを用いた無細胞タンパク質合成方法及び無細胞タンパク質合成反応液に関する。
細胞内にはmRNA代謝に関わる複数のリボヌクレアーゼが存在していることから、細胞抽出液にはリボヌクレアーゼ活性が存在する。このため、細胞抽出液を用いた無細胞タンパク質合成においては、鋳型となるmRNAのリボヌクレアーゼによる分解が問題となる。
このため、無細胞タンパク質合成技術においては、mRNAの分解の問題を克服する目的で、市販のリボヌクレアーゼ阻害剤(ヒト胎盤やブタ肝臓由来)を用いることによって、無細胞タンパク質合成が行われることが多い。
ここで、細胞内に存在するmRNAは、一般的に、5’側からCAP構造、5’非翻訳領域、翻訳領域、3’非翻訳領域、及びポリA尾部で構成されている。翻訳が終了したmRNAは速やかに分解される。この際、3’末端に存在するポリA尾部の分解によってmRNAがある一定の長さになると、脱CAP反応が起き、5’エクソヌクレアーゼによって一気に5’側から分解されることが知られている(非特許文献1:Microbiol Rev. 1996 Mar;60(1):233-49)。
そこで、無細胞タンパク質合成技術においては、鋳型となるmRNAの末端からの分解を抑制する方法が報告されている。例えば、CAP構造の付与が有用であることが知られている。さらに、mRNAの5’末端と3’末端とをループにすることによりタンパク質の合成量を向上させたという方法も報告されている(非特許文献2:Biotechnol Bioeng. 1999 Jul 20;64(2):194-9)。
カポニグロ・G(Caponigro G)及びパーカー・R(Parker R)著、「マイクロバイオロジー・アンド・モレキュラー・バイオロジー・レビューズ(Microbiology and Molecular Biology Reviews)」、第60巻、第1号、1996年3月、p.233−249 ナカノ・H(Nakano H)、シンバタ・T(Shinbata T)、オクムラ・R(Okumura R)、セキグチ・S(Sekiguchi S)、フジシロ・M(Fujishiro M)及びヤマネ・T(Yamane T)著、「バイオテクノロジー・アンド・バイオエンジニアリング(Biotechnology and Bioengineering)」、第64巻、第2号、1999年7月20日、p.94−99
上述のCAP構造を付加する方法は、コストがかかり、その上、前処理も煩雑になるなどの問題がある。また、5’末端と3’末端とをループにする方法(上記非特許文献2参照)は、そのように鋳型DNAをデザインして調製する必要があり、手間がかかる。従って、いずれも現在の一般的な無細胞タンパク質合成技術においては使われていないか、使われても実用的な技術としては使われていない。このため、結局、リボヌクレアーゼ阻害剤のみ添加して無細胞タンパク質合成が行われることがほとんどである。
しかしながら、無細胞タンパク質技術において用いられてきたリボヌクレアーゼ阻害剤は、具体的にはRNaseAのように、mRNAの中ほどから分解させるエンドヌクレアーゼの効果を阻害するものである。一方、このようなリボヌクレアーゼ阻害剤は、5’又は3’末端から分解を行うエキソヌクレアーゼを阻害する効果はない。このため、反応液全体としてみれば、RNA分解抑制は効果的に行われていない。
そこで本発明の目的は、mRNA分解の抑制を簡便に行うことによって無細胞タンパク質合成を行う方法、及びmRNA分解の抑制を簡便に行うことによって無細胞タンパク質合成を行うことができる反応液を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、無細胞翻訳系におけるアデノシン3’,5’−ビスホスフェートによるmRNA分解抑制効果を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1)
生体細胞由来の抽出液、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸、tRNA、mRNA、緩衝剤、及びアデノシン3’,5’−ビスホスフェートを少なくとも含む無細胞タンパク質合成反応液を用いた、無細胞タンパク質合成方法。
アデノシン3’,5’−ビスホスフェート(Adenosine-3’, 5’-bisphosphate)は、アデノシン3’,5’−ジホスフェート(Adenosine-3’, 5’-diphosphate)又は3’−ホスホアデノシン−5’−ホスフェート(3’-Phosphoadenosine 5’-Phosphate)とも呼称する。
アデノシン3’,5’−ビスホスフェートを無細胞タンパク質合成反応液に含ませることによって、mRNAの分解を抑制することができる。
前記アデノシン3’,5’−ビスホスフェートが、前記無細胞タンパク質合成反応液中1〜30mMの濃度で含まれる、前記の無細胞タンパク質合成方法。
アデノシン3’,5’−ビスホスフェートの濃度を上記範囲に設定することによって、mRNA分解抑制効果がより有効に得られる。
(2)
前記無細胞タンパク質合成反応液が、リチウムイオンLiをさらに含む、(1)に記載の無細胞タンパク質合成方法。
リチウムイオンを無細胞タンパク質合成反応液にさらに含ませることによって、pApによるmRNA分解抑制効果がより有効に、より持続性高く、或いはより安価に得られる。
(3)
無細胞タンパク質合成反応を維持する間に、アデノシン3’,5’−ビスホスフェートを、前記無細胞タンパク質合成反応液に追加添加する、(1)又は(2)に記載の無細胞タンパク質合成方法。
アデノシン3’,5’−ビスホスフェートを無細胞タンパク質合成反応液に追加添加することによって、mRNA分解抑制効果がより有効に、より持続性高く得られる。
(4)
前記生体細胞が昆虫培養細胞である、(1)〜(3)のいずれかに記載の無細胞タンパ
(5)
生体細胞由来の抽出液、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸、tRNA、mRNA、緩衝剤、及びアデノシン3’,5’−ビスホスフェートを少なくとも含む無細胞タンパク質合成反応液。
(6)リチウムイオンLiをさらに含む、(5)に記載の無細胞タンパク質合成反応液。
本発明によると、mRNA分解の抑制を簡便に行うことによって無細胞タンパク質合成を行う方法、及びmRNA分解の抑制を簡便に行うことによって無細胞タンパク質合成を行うことができる反応液を提供することができる。
本発明においては、アデノシン3’,5’−ビスホスフェート(以下、pApと記載することがある。)を無細胞タンパク質合成系中に含ませることによってタンパク質の合成を行う。本明細書において「タンパク質」とは、オリゴペプチド、ポリペプチドをも含む意味で用いる。
無細胞タンパク質合成用の反応液を構成する成分については、pApを必須成分とし、RNaseインヒビターを必須成分としないことを除いては、基本的には公知の無細胞タンパク質合成用反応液に用いられる成分を特に限定することなく挙げることができる。pAp以外の成分としては、通常、水中に、生体細胞由来の抽出液、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸、tRNA、mRNA、及び緩衝剤を少なくとも含むものが用いられる。
この中でも生体細胞由来の抽出液としては、公知のものを制限なく用いることができるが、特に、昆虫培養細胞由来の抽出液を用いることが好ましい。特に、タンパク質合成能が高く、また無血清培地にて培養が可能であることから、Trichoplusia niの卵細胞由来の細胞であるHigh Five(Invitrogen社製)やSpodoptera fruglperda卵巣細胞由来の細胞であるSf21(Invitrogen社製)を昆虫細胞として用いるのが好ましい。
本発明の無細胞タンパク質合成系に好ましく用いられる昆虫細胞抽出液の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開2004−215651号公報に記載の方法、すなわち、抽出用液に懸濁した昆虫細胞を急激に凍結させた後に昆虫細胞を破砕し、抽出を行うという方法を用いることができる。この方法は、緩和な状態で細胞破砕を行うことから無細胞タンパク質合成に必須な成分を破壊することなく細胞外に取り出すことができる点、使用器具などからのRNaseなどの混入を防ぐことができる点、界面活性剤などの試薬を用いた細胞破砕の場合に懸念される翻訳反応阻害物質の持込がない点などから、好ましく用いられる。
すなわち、昆虫細胞抽出液としては、タンパク質濃度で1mg/mL〜200mg/mL、好ましくは10mg/mL〜100mg/mL含有するとともに、10mM〜500mM、好ましくは50mM〜300mMの酢酸カリウム、0.1mM〜10mM、好ましくは0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、1μM〜50mM、好ましくは0.01mM〜5mMのPMSF(フェニルメチルスフォニルフルオライド)、及び、5mM〜200mM、好ましくは10mM〜100mMのHEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)−KOH(pH4〜10、好ましくは6.5〜8.5)を含有する水溶液として調製され、好ましくはヌクレアーゼ処理を施されたものを用いると良い。さらに、上記に加え、0.1mM〜10mM、好ましくは0.5mM〜5mMのジチオトレイトール(DTT)を含有させてもよい。
そして、無細胞タンパク質合成用反応液は、このような昆虫細胞抽出液が10(v/v)%〜80(v/v)%、特には30(v/v)%〜60(v/v)%含有されるように調製されるのが好ましい。すなわち、上記反応液の全体において、昆虫細胞由来の抽出物の含有量が、タンパク質濃度で0.1mg/mL〜160mg/mLとなるように調製されるのが好ましく、3mg/mL〜60mg/mLとなるように調製されるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で0.1mg/mL未満または160mg/mLを越えると、目的のタンパク質の合成速度が低下する虞があるためである。
上記抽出液以外の成分として反応液中に用いられる、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分、RNaseインヒビター、tRNA、外来mRNA、緩衝剤については、当業者が適宜決定することができる。例えば、反応液を、50mM〜150mMの酢酸カリウム、0.5mM〜3mMの酢酸マグネシウム、0.1mM〜5mMのATP、0.05mM〜5mMのGTP、10mM〜100mMのクレアチンリン酸、10μg/mL〜500μg/mLのクレアチンキナーゼ、10μM〜200μMのアミノ酸成分、10μg/mL〜500μg/mLのtRNA、20μg/mL〜1000μg/mLの外来mRNA、10mM〜50mMのHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)を含有する水溶液として実現されるのが好ましい。
また、上記に加えて、さらにジチオトレイトール(DTT)(例えば0.2mM〜5mM)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)(例えば0.1mM〜10mM)を含有するように実現させても良い。
本発明の無細胞タンパク質合成反応液においては、上記成分にさらにpApが含まれる。pApを反応液中に含ませることによって、mRNAの分解を抑制することができる。pApによるmRNA分解抑制効果は、無細胞タンパク質合成反応液のような多量のmRNAの存在する特別な環境であるにもかかわらず、このような多量のmRNAを有効に維持することができる点で非常に優れている。
pApの添加量は特に限定されるものではないが、例えば、反応液中に1〜30mM、好ましくは5〜20mMの終濃度で含ませることができる。上記濃度より少ないと、mRNA分解抑制の効果が出にくい。
pApは、反応中に減少する傾向にある。これは、細胞抽出液に含まれる成分により代謝されることが一因であると考えられる。
そこで、本発明においては、無細胞タンパク質合成反応開始後、反応を持続する間にpApを追加添加することができる。このことによって、mRNAの分解抑制効果をより有効に、より持続性高く得ることが可能である。
追加添加するタイミング、及び追加添加する量としては特に限定されない。追加添加のタイミングとしては、例えば、反応開始から30〜60分後とすることができる。特に、終濃度を5mMとなるようにpApを添加した場合に、反応開始から30〜60分後とすることが好ましい。追加添加量としては、追加時に反応液中に残存しうる反応当初から存在していたpAp以外の、追加添加したpApの終濃度が、5〜10mMとなるように設定することができる。追加添加の回数も特に制限されない。例えば、1〜3回の追加添加を行うことができる。
このように、本発明においては、pApを添加するだけで、mRNAの分解を抑制することができる。このため、RNaseインヒビターの添加や、mRNAの末端からの分解を抑制するために行われた方法、たとえばキャップ構造の付与やループ状mRNAの調製などの方法が不要である。RNaseインヒビターの添加(例えば反応液中1U/μL〜10U/μL)、及びmRNAの末端からの分解を抑制するために行われうるいかなる方法を排除するものではない。
また、すでに述べたように、pApは、細胞抽出液に含まれる成分により代謝されると考えられる。例えば、酵母細胞に限っていえば、pApがHal2pによってAMPに変換されることが知られており、Hal2pはリチウムイオンによって阻害されることも知られている(例えば、The EMBO Journal (1997) 16, 7184-7195参照)。
本発明においては、無細胞タンパク質合成反応液中に、さらにリチウムイオンLiを含ませることができる。リチウムイオンを反応液中に含ませることによって、タンパク質合成量を低下させる一因であるmRNAの分解を抑制する効果を、より有効に、より持続性高く得ることができる。或いは、リチウムイオンの使用により、pApの使用量を減らすことも可能であるため、pApによるmRNA分解抑制効果をより安価に得ることも可能である。この効果は、細胞抽出液が酵母細胞に由来するものでなくとも得ることが可能である。例えば、細胞抽出液が昆虫細胞に由来するものであってもリチウムイオンによる効果を有効に得ることが可能である。
リチウムイオンの供給源としては、特に限定されないが、生化学的に許容することができるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、例えば、塩化リチウム、酢酸リチウムなどが挙げられる。
リチウムイオンの濃度としては、特に限定されないが、例えば反応液中に25〜400mM、好ましくは50〜100mMの終濃度で含ませることができる。このような範囲に設定することによって、mRNA分解抑制効果をより有効に得ることができる。
なお無細胞タンパク質合成における反応温度としては、通常、10℃〜40℃、好ましくは15℃〜30℃の範囲内である。反応温度が10℃未満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また反応温度が40℃を越えると、必須な成分が変性する傾向にあるためである。
本発明における無細胞タンパク質合成は、バッチ法によって行うことができる。反応時間としては特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。例えば、6時間程度を目安にすると良い。
本発明の無細胞系タンパク質合成方法にて合成されたタンパク質の量は、酵素の活性の測定、SDS−PAGE、免疫検定法などによって測定できる。
本発明の無細胞系のタンパク質合成方法にて合成できるタンパク質に特に制限はない。
本発明の無細胞タンパク質合成方法は、無細胞タンパク質合成系を利用したリボソームディスプレイ法、in vitro virus法といった試験管内分子選択法にも適用することができる。リボソームディスプレイ法は、mRNAとmRNAの翻訳により生じるタンパク質とをリボソームを介して複合体形成させる方法である。リボソームディスプレイ法の参考文献としては、Brief Funct Genomic Proteomic. 2002 Jul;1(2):204-12.Ribosome display: cell-free protein display technology.He M, Taussig MJ.が挙げられる。in vitro virus法は、ピューロマイシンをmRNAの3’末端にpoly(dA)もしくはPEGリンカーを介して結合させた後、翻訳により生じたタンパク質のC末端とピューロマイシンをリボソーム内にて反応させ、タンパク質−mRNA結合分子を形成する。この結合分子のmRNA部分を逆転写することにより、cDNA−mRNAのニ本鎖核酸へと変換させる方法である。in vitro virus法の参考文献としては、Miyamoto-Sato, E. et al:Genome res., 15,710(2005)Cell-free cotranslation and selection using in vitro virus for high-throughput analysis of protein-protein interactions and complexesが挙げられる。
以上に述べたように、本発明の方法は、pApを添加するだけで、無細胞タンパク質合成反応液中のmRNAの分解を簡単に抑制することができる。このため、本発明の方法は、従来のmRNA分解抑制方法を用いた無細胞タンパク質合成法より簡便であり、従ってより実用的である。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(工程1.発現用プラスミドの構築)
ヒトリゾチームcDNAクローン(pERI8602、Kanaya et al., J. Biol. Chem. 1992, 267, 15111-15115)を鋳型とし、下記配列番号1及び配列番号2にそれぞれ示す配列を有するプライマーのセット、及びKOD−Plus−(東洋紡)を用いてPCRを行った。
5’-ATGAAGGTTTTCGAGAGATGCG-3’(配列番号1)
5’-GGGGTACCAACACCACAACCTTGAACG-3’(配列番号2)
PCRにより増幅されたDNA断片の5’末端を、T4 Polynucleotide Kinase(東洋紡)によりリン酸化し、KpnI(東洋紡)で消化した。これにより得られたDNAを、pTD1 vector(島津製作所)のEcoRV/KpnI部位に、T4リガーゼ(Quick LigationTM Kit、NEB)を用いて連結した。大腸菌DH5αを形質転換させて得られたクローンより得られた目的プラスミドをpTD1−strep−h−LYZ(Ezure et. al., Proteomics, in press)と命名した。
(工程2.インビトロ転写反応およびmRNAの精製)
上記工程1.で作製した発現用プラスミドpTD1−strep−h−LYZを鋳型とし、下記配列番号3及び配列番号4にそれぞれ示す配列を有するプライマーのセット及びKOD−Plus−(東洋紡)を用いてPCRを行った。
5’-GCAGATTGTACTGAGAGTG-3’(配列番号3)
5’-GCGGATAACAATTTCACAC-3’(配列番号4)
増幅断片は、フェノール−クロロホルム抽出、及びエタノール沈殿により精製した。精製した増幅断片5μgを鋳型として、T7 RiboMAXTM Express Large Scale RNA Production System(Promega)を用い、100μLスケールで37℃、30分の転写反応を行うことにより、mRNAを合成した。得られた反応液をNick column(アマシャムバイオサイエンス社製)にアプライした後、純水で溶出した。溶出画分に酢酸カリウムを終濃度0.3Mとなるように添加し、エタノール沈殿を行って、mRNAを精製した。精製したmRNAは260nmと280nmとにおける吸光度を測定することにより定量した。
(工程3.翻訳反応)
Transdirect insect cell(島津製作所)を用い、以下の反応液をそれぞれ50μLスケールで調製した。Transdirect insect cellは、Sf21由来の抽出物を含む無細胞タンパク合成反応液であり、Sf21由来の抽出物以外の成分としては、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分、tRNA、外来mRNA、及び緩衝剤を含む。
なお、RNase阻害剤としてはヒト胎盤由来のもの(タカラバイオ)を用い、pApとしてはAdenosine 3’,5’−diphosphate sodium salt(SIGMA−ALDRICH)を用い、100mMの水溶液として用意した。それぞれの反応液を、25℃の翻訳反応に供した。
反応液1(比較用実験区):
mRNA 非添加
RNase阻害剤 非添加
pAp 非添加
反応液2(比較用実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 非添加
pAp 非添加
反応液3(比較用実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 添加(終濃度1U/mL)
pAp 非添加
反応液4(本発明の実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 非添加
pAp 添加(終濃度5mM)
(工程4.RNA抽出)
それぞれの反応液について、翻訳反応開始0、60、120分後における反応液を回収した。回収した反応液10μLを、20μLのTRIzol LS Reagent(Invitrogen)に回収し、全RNAを抽出した。抽出したRNAは10μLの純水に溶解した。
(工程5.RNAの分離検出)
抽出したRNAの溶液に、それぞれ、4μLのローディングバッファー(和光純薬)を添加し、その全量を電気泳動(TAEバッファー、1%アガロースゲル)に供した。塩基泳動により分離したRNAはEtBr(エチジウムブロマイド)染色により検出した。
得られた電気泳動像を図1に示す。図1において、レーン1は反応液1(mRNA非添加区)、レーン2は反応液2(mRNA添加区)、レーン3は反応液3(mRNA及びRNase阻害剤を添加した区)、レーン4は反応液4(mRNA及びpApを添加した区)の、反応時間0、60、120分における反応液中の全RNAの分離結果を示す。また、レーンMは1kbラダーDNAサイズマーカー(Bioneer)、レーンCはmRNAのみを泳動した結果を示す。
(mRNA分解抑制効果の確認)
得られた電気泳動結果から、各実験区、及び各反応時間におけるmRNA残存量を確認した。反応液2(mRNA添加区)と反応液3(mRNA及びRNase阻害剤を添加した区)のデータ比較から、市販のRNase阻害剤ではmRNAの分解抑制効果は認められないことが判明した。一方、反応液4(mRNA及びpApを添加した区)の、反応時間60分及び120分におけるデータから、pApに明らかに分解抑制効果があることが判明した。
[実施例2]
実施例1の工程1〜3と同様の工程により、以下の反応液について翻訳反応を行った。
反応液4(本発明の実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 非添加
pAp 添加(反応前添加:終濃度5mM、
追加添加:なし)
反応液5(本発明の実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 非添加
pAp 添加(反応前添加:終濃度10mM
追加添加:なし)
反応液6(本発明の実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 非添加
pAp 添加(反応前添加:終濃度5mM、及び追加添加)
反応液6については、pApを反応前に終濃度5mMとなるように添加し、さらに、反応開始60分後に、工程3で用意した100mM pAp水溶液を2.5μL添加した。これにより、反応当初から存在していたpAp以外の追加添加したpApの濃度は、5mMとなった。
それぞれの反応液について、翻訳反応開始0、120、180、240分後における反応液を回収した以外は、実施例1と同様の工程4及び工程5を行った。
得られた電気泳動像を図2に示す。図2において、レーン4は反応液4(pApを終濃度5mMになるよう添加し、追加添加しなかった区)、レーン5は反応液5(pApを終濃度10mMになるように添加し、追加添加しなかった区)、レーン6は反応液6(pApを終濃度が5mMになるように添加し、60分後にさらにpApを追加添加した区)の、反応時間0、120、180、240分における反応液中の全RNAの分離結果を示す。また、レーンMは1kbラダーDNAサイズマーカー(Bioneer)を示す。
得られた電気泳動結果から、各実験区、及び各反応時間におけるmRNA残存量を確認した。反応液4(pAp 5mM添加、追加添加なしの区)の180分後のデータから、pApのRNA分解抑制効果は時間とともに失われるが、反応液5(pAp 10mM添加、追加添加なしの区)の240分後のデータ、及び、反応液6(pAp 5mM添加、追加添加ありの区)の240分後のデータから、添加するpApの量を増加させること或いは追加添加により、分解抑制効果が持続することが判明した。
実施例1及び実施例2の結果から、反応液に添加するpApによってmRNAの分解が抑制可能であること、及び、添加する量によって分解抑制効果の持続時間を伸ばすことが可能であることが判明した。
[実施例3]
実施例1の工程1〜3と同様の工程により、以下の反応液について翻訳反応を行った。
反応液4(本発明の実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 非添加
pAp 添加(終濃度5mM)
LiCl 非添加
反応液7(比較用実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 非添加
pAp 非添加
LiCl 添加(終濃度50mM)
反応液8(本発明の実験区):
mRNA 添加(終濃度320μg/mL)
RNase阻害剤 非添加
pAp 添加(終濃度5mM)
LiCl 添加(終濃度50mM)
反応液7及び8においては、ストック用に4MのLiCl水溶液を調製し、それを用いて、反応液中の終濃度が50mMとなるように調整した。
それぞれの反応液について、翻訳反応開始0、180、240分後における反応液を回収した以外は、実施例1と同様の工程4及び工程5を行った。
得られた電気泳動像を図3に示す。図3において、レーン4は反応液4(pApを終濃度5mMになるように添加し、LiClを添加しなかった区)、レーン7は反応液7(LiClを終濃度50mMになるように添加し、pApを添加しなかった区)、レーン8は反応液8(pApを終濃度5mMになるように添加し、且つLiClを終濃度50mMになるように添加した区)の、反応時間0、180、240分における反応液中の全RNAの分離結果を示す。また、レーンMは1kbラダーDNAサイズマーカー(Bioneer)を示す。
図3に示すとおり、pApとLiClをそれぞれ単独に添加した区(レーン4及びレーン7)では、180分後にほぼすべてのmRNAが分解されていることが確認されたが、pApとLiClの両方を添加した区(レーン8)では、240分後においてもmRNAが残存することが確認された。このことから、pApに加えてLiClを反応液中に添加することにより、分解抑制効果が持続することが判明した。
実施例1において、pAp非添加の反応液1〜3(それぞれレーン1〜3)及びpApを添加した反応液4(レーン4)を翻訳反応に供した後(0、60、120分後)に、反応液中に含まれるRNAを検出した電気泳動像である。 実施例2において、pApを5mM添加した反応液4(レーン4)、pApを10mM添加した反応液5(レーン5)、及びpApを5mM添加しさらに追加添加した反応液(レーン6)を翻訳反応に供した後(0、120、180、240分後)に、反応液中に含まれるRNAを検出した電気泳動像である。 実施例3において、pApを5mM添加した反応液4(レーン4)、LiClを50mM添加した反応液7(レーン7)、及びpApを5mM添加し且つLiClを50mM添加した反応液8(レーン8)を翻訳反応に供した後(0、180、240分後)に、反応液中に含まれるRNAを検出した電気泳動像である。
配列番号1〜4は、プライマーである。

Claims (6)

  1. 生体細胞由来の抽出液、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸、tRNA、mRNA、緩衝剤、及びアデノシン3’,5’−ビスホスフェートを少なくとも含む無細胞タンパク質合成反応液を用いた、無細胞タンパク質合成方法。
  2. 前記無細胞タンパク質合成反応液が、リチウムイオンをさらに含む、請求項1に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  3. 無細胞タンパク質合成反応を維持する間に、アデノシン3’,5’−ビスホスフェートを、前記無細胞タンパク質合成反応液に追加添加する、請求項1又は2に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  4. 前記生体細胞が昆虫培養細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  5. 生体細胞由来の抽出液、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸、tRNA、mRNA、緩衝剤、及びアデノシン3’,5’−ビスホスフェートを少なくとも含む無細胞タンパク質合成反応液。
  6. リチウムイオンをさらに含む、請求項5に記載の無細胞タンパク質合成反応液。
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