JP2009140708A - 誘導加熱装置および誘導加熱装置に使用される加熱容器 - Google Patents

誘導加熱装置および誘導加熱装置に使用される加熱容器 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱性能のよい加熱コイルを選択し、加熱コイルの作動条件を規定して加熱性能のよい誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】同一の加熱コイル1を2個対向させ、対向する2個のコイルの内、一方のコイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、一方のコイルに対向する他方のコイルを短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRs(Ω)、とする。一方のコイルである加熱コイル1が、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数をf1(Hz)とする。加熱コイル1にはf1が100kHz以上のコイルが選ばれる。加熱コイル1は、加熱制御回路3によってf1(Hz)以下の周波数で駆動される。
【選択図】図1

Description

この発明は、加熱コイルに交流電流を流し、加熱コイルに近接する金属体を加熱する誘導加熱装置、および誘導加熱装置に使用される加熱容器に関する。
加熱コイルに交流電流を流し、加熱コイルに近接する金属体を加熱する誘導加熱装置は、本願の図27に示すように電力制御回路50によって加熱コイル51が制御され、金属体20が加熱される概略構成となっている。現状の誘導加熱装置において、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する効率は、約85%であり、エネルギー変換効率としては、実用的なレベルではある。しかしながら、例えば、1kWの電力を使用すると、15%の電力損失は、1000W×0.15=150Wにもなる。これらの電力は、加熱コイル51の抵抗と加熱コイル51の電力制御回路50で電力損失として消費されて熱になる。そのため、誘導加熱装置の内部で熱が発生し、その熱の放熱手段として、放熱板を電力制御回路50に装備しており、また誘導加熱装置内部で発生する熱を外部に逃がすファンなどが必要となる。
加熱コイル51の駆動周波数が高くなると、加熱コイル51の交流抵抗が上昇し、この抵抗による電力損失が増大する。鉄鍋などの強磁性体では、20kHzから30kHzの低周波数でも加熱効率がよい。そのため、加熱コイル51単体の抵抗による電力損失も少ない。一方、アルミニューム鍋や銅鍋などを加熱させるには、鉄鍋よりも高い周波数、例えば40kHzから100kHzで加熱コイル51を駆動しなければならない。よって、加熱コイル51単体の抵抗が上昇し、このコイル抵抗による電力損失が増大する。アルミ鍋や銅鍋などを効率よく加熱するには、高周波数における加熱コイル51の抵抗を減少させる必要がある。この加熱コイル51の抵抗を減少させるため、様々な改良案が提案されている。
例えば、特開2003−115368号公報(特許文献1)には、素線を右撚りに撚った集合線と、左撚りに撚った集合線を作成し、これらの集合線を束ねて加熱コイルを形成する導線とすることにより、加熱コイルの抵抗を低減する手法が記載されている。
また、特許文献1には、素線数や集合線数は、「設計によって決められる」と記載されており、加熱コイルを設計、選択する定式的な手法が存在せず、試行錯誤によってしか、性能のよい加熱コイルを実現できないことが記載されている。
また、コイルは、インダクタンスが高いか、または使用する周波数が高く、十分なリアクタンスを確保できる場合には、リアクタンス性素子として非正弦波を正弦波に戻す作用があることが知られている。例えば、高圧直流電力をサイリスタ等で三相交流に戻すときに使われる変成器は、階段波を正弦波に戻すことができる。
コイルが十分なリアクタンスを確保できない場合は、コイルにキャパシタを装備し、非正弦波を正弦波に戻している。あるいは、回路中に正のリアクタンスが存在する場合、そのリアクタンスがコイルの残留インダクタンスによるものであれ、誘導性負荷によるものであれ、正のリアクタンスを打ち消して力率を改善するキャパシタが使用される。商用電源の60Hz程度の周波数において力率を改善するキャパシタについての先行文献は多数存在する。また、高周波数で特性のよいキャパシタに関する先行文献も多数存在する。しかし、高周波数の電力回路において、正のリアクタンスを打ち消して力率を改善するキャパシタに言及した先行文献としては、特開2002−353050号公報(特許文献2)に、電力伝送装置の力率を改善するキャパシタに誘電正接の低いフィルムキャパシタ等を使用するというのが記載されている程度である。
以下、本願で使用する用語について説明しておく。交番磁場の磁気エネルギーにより金属を加熱する誘導加熱装置は、「誘導加熱」という技術用語を使用したものである。また、この誘導加熱作用を利用した「電磁調理器」は、誘導加熱装置の一形態である。よって、電磁調理器と表記している場合は、誘導加熱装置と同義とする。
そして、コイルやキャパシタに等価的に直列に存在する抵抗成分は、通常ESRと表記され、等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance)と呼ばれている。本願では、ESRの周波数特性に言及するので「実効直列抵抗」(Effective Series Resistance)に表記を統一しておく。さらに、容量性素子であるキャパシタは、日本語ではコンデンサと表記される場合が多い。本願では文献を引用する場合を含め、全て「キャパシタ」に表記を統一しておく。また、一般にキャパシタの容量値である静電容量をキャパシタンスと表記する場合が多い。しかし、キャパシタンスの表記は、キャパシタと混同しやすい。よって、キャパシタの容量値は、全て「静電容量」に表記を統一しておく。
また、一般に、真空中の誘電率に対する比である比誘電率は、単に「誘電率」と表記されている場合が多い。物理定数である誘電率εoは真空中の誘電率であって、その値は、εo=8.85×10−12(F/m)である。本願では、キャパシタの構成を真空中の誘電率εoを用いて求めている。よって、真空中の誘電率εoに対する比である比誘電率εsは「比誘電率」またはεsに表記を統一しておく。同様に、真空中の透磁率に対する比である比透磁率は、単に「透磁率」と表記されている場合が多い。しかし、本願では、透磁率、比透磁率については考察しないので、「透磁率」と表記しておく。
特開2003−115368号公報(段落番号0020、0021、0024、請求項1) 特開2002−353050号公報(段落番号0015、0019、請求項5)
図28(A)は、一般の電磁調理器に使用されているコイルと同じく、スパイラル状に巻回されたコイル1を表す。図28(B)は、コイル1に被加熱用の金属体20が対向している状態を示す。導線1xに単導線を使用した場合、導線径が太くなると、周波数の上昇に伴い、コイルの実効直列抵抗が増大することが知られている。そこで、導線1xを複数の素線を撚り合わせて構成し、実効直列抵抗の増加を抑制している。この実効直列抵抗が増加する原因として、表皮効果や渦電流損などが知られている。
しかしながら、本願発明者が実験検証した限りにおいて、導線1x間に空隙を設けることにより、周波数の上昇による実効直列抵抗の増加率を著しく改善できることが分かっている。すなわち、導線を巻回して構成されるコイルにおいては、周波数の上昇による実効直列抵抗の増加の原因として、表皮効果以外の要因が大きいものと思われる。特許文献1には、周波数の上昇により実効直列抵抗が増加する要因として「近接作用」が記載されている。「近接作用」とは、物理学で万有引力やクーロン力の作用を指すものである。一般のコイルにおいて「近接作用」により実効直列抵抗が上昇すると記載された文献は無い。本願では、特許文献1に記載の「近接作用」を、周波数の上昇によりコイルの実効直列抵抗が増加する他の要因と捉えておく。
特許文献1の段落番号0002に記載のように、コイルの直流抵抗と比べ、40kHzから100kHzにおける実効直列抵抗の増加を抑制する必要がある。ただし、周波数の上昇による実効直列抵抗の増加率が低いコイルが、必ずしも加熱コイルとしての性能がよいとは限らない。まず、誘導加熱に使用される周波数において、加熱コイル単体の実効直列抵抗が十分に小さくないといけない。加熱コイルの直流抵抗Rdに比べ、100kHzにおける加熱コイルの実効直列抵抗が直流抵抗Rdの2倍以下のように良好な周波数特性のコイルは存在する。しかし、直流抵抗Rdの絶対値自体が大きければ、このような加熱コイルは誘導加熱装置の加熱コイルとしては使用できない。
さらに加熱コイルに金属が近接したときの、加熱コイルの実効直列抵抗の変化にも着目し、コイル単体の実効直列抵抗と、金属体が加熱コイルに近接したときの、加熱コイルの実効直列抵抗との差異を求め、加熱効率がよい加熱コイルを選択しなければならない。
上述した加熱コイルの実効直列抵抗と周波数の関係を、具体的な数値を明示して効果を実証した従来技術は存在しない。しかし、加熱コイル単体の実効直列抵抗と周波数の関係以外に、コイルの性能を判断して選択する手法を見つける必要がある。本願発明者は、送電コイルと受電コイルが分離可能な電力伝送装置において、コイルの特性が、周波数が上昇すると回路理論に反することを見いだしている。そして、回路理論に反する周波数を上昇させることにより、電力伝送性能のよいコイルを選択し、実現している。
電力伝送装置の送電コイルも、誘導加熱装置の加熱コイルも、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、空間に磁気エネルギーを生成するという同一の作用を持つ。そこで、本願発明者は、電力伝送装置のコイルの特性を計測して選択する手法を誘導加熱装置に適用することを検討し、良好な結果が得られている。その詳細については後述してある。
また、特許文献1に記載されているように、コイルの特定的構成を規定しても、素線径、導線径、巻数、コイル外径など、他の構成要因が変化したときにまで、加熱コイルの実効直列抵抗が低減できるという効果が得られるとは限らない。例えば、特許文献1の段落番号0043には、実施例として「素線外径が0.1mmのものについて説明したが、素線外径が0.04〜0.06mmにおいても、同様の効果が得られる」と記載されている。しかし、特許文献1には、他の構成の導線との比較例が記載されていない。よって、特許文献1の特定的構成規定が一般性を持つことは示されていない。さらに、特許文献1の段落番号0032には「電流の向きが不揃いになる」と記載されている。しかし、特許文献1に記載された導線の特定的構成規定により「電流の向きが不揃いになる」なることも、「電流の向きが不揃いになる」ことにより加熱コイルの実効直列抵抗が低下することも、特許文献1には何ら示されておらず、これらの主張は実証されていない。
仮に、特許文献1に記載のような加熱コイルの特定的構成を規定することによって、加熱コイルの実効直列抵抗が低減できるのなら、導線径、巻数、外径が同一であり、導線の構成のみが異なる加熱コイルとの実効直列抵抗を比較しないと、効果が実証できているとは言えない。この比較は、導線の構成以外の構成が同一である複数の構成のコイルで行なう必要がある。科学技術の分野において、他の構成要因を全て同一とし、着目するパラメータ、この場合は導線の構成のみを変更したときの差異を明示しない限り、効果が実証されたとは言えない。このような手法は「対照実験」と呼ばれている。対照実験が行えない場合はともかく、特許文献1では対照実験を行える。よって、対照実験のデータが記載されていない特許文献1は、主張されている効果が実証されているとは言えない。
さらに、特許文献1の段落番号0021には、「素線数または径は設計によって決定されるものである」と記載されている。同じく、段落番号0024には、「束ねる束数は先に述べたように設計によって決定されるものである」と記載されている。すなわち、特許文献1に記載の特定的構成以外の構成、例えば、コイル外径等の仕様に合わせ、試行錯誤により、素線数または径、束ねる束数を変えて実際に加熱コイルを作成する設計試作工程と、実際に加熱性能を確認する検証工程が必要となる。この検証工程は、電力伝送装置とは異なり、加熱検証実験に時間がかかるという問題がある。
上記のように、従来の技術では、性能のよい誘導加熱装置のコイルの構成について、不明確な部分が多い。そのために、特性のよい加熱コイルを選択し、加熱コイルを設計して、加熱効率がよい加熱コイルを実現することができない。また加熱効率がよい加熱コイルを実現できないため、熱変換効率は85%が上限となっており、その上限を越える誘導加熱装置は実現できていない。これが本分野における第1の課題となっている。
次に、加熱コイルは、正弦波で駆動された場合に、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換する効率が最もよくなる。本願の図27に示すような回路構成で、加熱コイル1に印加する電圧を正弦波にする場合、電力制御回路50が、直流電力を交流電力に変換する変換効率が最高でも70%である。よって、電力制御回路50内ではスイッチング制御が行なわれており、加熱コイルに供給される電流は正弦波ではない。本分野において、加熱コイルの駆動回路の電力損失を回避する先行技術は殆ど存在しない。しかしながら、市販されている電磁調理器において、図27に示す電力制御回路50に含まれる電力変換用半導体素子には、大きな放熱板が装備され、熱抵抗を小さくしている。これは、半導体素子が、電力損失による発熱を起しており、その発熱による半導体素子の熱破壊を防止するためと推察される。このように、加熱コイルを駆動する回路において発生する電力損失を回避するのが、本分野における他の課題となっている。
前述したように、現状の誘導加熱装置は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する効率が85%と高い。しかし、誘導加熱装置に投入される電力は1kW以上である。特に卓上式の電磁調理器は形状が小さく、さらに電力損失を低減することが要請されている。
また、加熱される金属体や容器は種々の材質や形状がある。そのため、金属体が近接したときに、加熱コイルの特性(インダクタンスや実効直列抵抗)が変動する。それにより、加熱効率も変動する。したがって、誘導加熱装置に適した加熱用鍋を実現する必要がある。しかし、特許文献1の記載からも、加熱用の鍋として適したものを設計する手順は困難である。この点が本分野におけるその他の課題となっている。
また、特許文献2は、電力伝送装置の発明であるが、特許文献2に記載のキャパシタは、高周波電力回路用のキャパシタでもある、したがって、特許文献2を、誘導加熱装置にも適用可能な高周波電力回路用キャパシタの先行事例として引用する。
図29は、2端子回路に正のリアクタンスLeを含む回路の等価回路図である。
特許文献2の段落番号0017には、高周波の電力回路において、送電コイルの残留リアクタンスLeを打ち消し、力率の改善(特許文献2では共振用と記載されている)を行なうキャパシタとして、誘電正接tanδが小さいキャパシタ、ポリスチレンやポリプロピレンを誘電体とするキャパシタを使用することが記載されている。しかしながら、ポリスチレンやポリプロピレンを誘電体とするキャパシタは、他の誘電体を用いたキャパシタよりいかなる周波数でも誘電正接tanδが小さいとは限らない。
さらに、本願発明者が追試したところ、一部のポリスチレンキャパシタは発熱のため使用できなかった。また、ポリプロピレンキャパシタは、構成によって電力伝送性能が異なるうえ、静電容量と周波数によっては、電力伝送性能が低下する現象が見られた。
図30は、キャパシタの等価回路を表す図である。図30において、Xcはキャパシタのリアクタンス、Rcはキャパシタの実効直列抵抗、Lcはキャパシタの寄生インダクタンスを表す。
誘電正接tanδは、キャパシタのQを使い、tanδ=1/Q(無単位)、と定義されている。キャパシタのQは、Qを計測する周波数において、キャパシタのリアクタンスをXc(Ω)、実効直列抵抗をRc(Ω)とすると、Q=Xc/Rc(無単位)、で表される。JISの規定によると、キャパシタの誘電正接tanδは、静電容量により、1kHzまたは1MHzで計測される。静電容量をC(F)とすると、キャパシタのリアクタンスXc(Ω)は、Xc=1/ωC(Ω)、であり、Xcは、角周波数ω(ω=2πf、fは周波数(Hz))と静電容量Cの積の逆数となっている。図30の記号を使うと、キャパシタの誘電正接tanδは、tanδ=ωC・Rc=Rc・Xc、となる。また、キャパシタの静電容量Cは、通常、10−6F以下である。よって、1kHzのような低い周波数においては、ωCの値が、10−6以下と、非常に小さな値となる。一方、キャパシタの実効直列抵抗Rcは、キャパシタの種類や静電容量によっても異なるが、1kHzでは、通常、10Ω以下である。したがって、一般のキャパシタの誘電正接tanδの値は、通常、後述するJISの規定値である、tanδ<0.001、となっている。
一般に、高周波数領域で実効直列抵抗Rc(Ω)が低いキャパシタは、セラミックキャパシタである。したがって、セラミックキャパシタはQが高く、誘電正接tanδも低い。実際に本願発明者が、静電容量0.1μFの積層セラミックキャパシタのQを1MHzにて実測したところ、Q≒18であり、tanδ=1/18≒0.055、正接角δは、δ≒3度であった。
後述する電力伝送性能が良いポリプロピレンキャパシタとは異なる構成の、静電容量0.1μFのポリプロピレンキャパシタのQを1MHzにて実測したところ、Q≒5であり、tanδ=1/5≒0.2、正接角δは、δ≒11.3度であった。すなわち、高周波数領域での誘電正接tanδを比較する限りにおいては、セラミックキャパシタの方が、ポリプロピレンキャパシタよりも特性がよい。しかし、本願発明者が実験検証した限りにおいては、積層セラミックキャパシタは、ポリプロピレンキャパシタより電力伝送性能が悪くなっている。
特許文献2には、単に「誘電正接が小さい」と記載されているだけである。JISの規定に準ずるとしたなら、前述したように、1kHzにて誘電正接tanδを計測して性能比較をするだけで、高周波電力回路用の最適なキャパシタが選べることになる。しかし、後述するが、キャパシタの誘電体や誘電正接のみでは、高周波電力回路用の最適なキャパシタは選べない。すなわち、周波数特性を勘案した具体的な誘電正接の値、具体的な静電容量、両者の関係、および誘電正接以外の特性要因を規定する必要がある。
また、特許文献2の段落番号0018、請求項3には、コイルの両端に2個のキャパシタを接続する手法が記載されている。これらは、特開2005−6396号公報の図1、特開2005−6459号公報の図1、特開2005−6460号公報の図1などにも記載されている。しかし、この回路構成は、キャパシタの耐電圧を上昇させる作用効果はあるが、この回路構成と電力伝送性能との相関について言及した先行文献は存在しない。
そのうえ、特許文献2の図2は、電流を流し出すとともに、電流を引き込むという、双方向に電流を流せる回路構成になっていない。そのため、この回路はコイルとキャパシタを直列接続した回路を駆動できないので、特許文献2の図2の回路は動作しない。
すなわち、従来の技術では、高周波電力回路に使用するキャパシタの構成や特性、高周波電力回路にキャパシタを使用する回路構成と作用効果が全く明確にされておらず、そのために、電力伝送性能のよい電力伝送装置が実現できていない。換言すれば、誘導加熱装置などの高周波電力回路に使用するキャパシタの選択方法と使用方法(接続方法)が確立できていない。これが、本分野における第2の課題となっている。
この発明は、実効直列抵抗を低減した、電力損失が少なく、加熱性能のよい加熱コイルを選択し、該コイルを装備した加熱効率のよい誘導加熱装置、加熱効率のよい誘導加熱装置に使用される加熱用容器を提供することを目的とする。
この発明は、導線を巻回して構成される加熱コイルを少なくとも含み、加熱コイルに近接している金属体を加熱する誘導加熱装置において、加熱コイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、加熱コイルに、短絡した加熱コイルと同一の他のコイルが対向したときの、加熱コイルの実効直列抵抗をRs(Ω)、加熱コイルが、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数をf1(Hz)、としたときに、f1が、100kHz以上となるように、加熱コイルが選ばれており、加熱コイルをf1(Hz)未満の周波数で駆動する。
この発明においては、交流電源から見た加熱コイル単体の実効直列抵抗を低下させることにより、加熱コイルを流れる交流電流による加熱コイルの電力損失による発熱を防止し、加熱性能のよい加熱コイルを選択できる。
好ましくは、さらに、誘導加熱装置は、直流電力を交流電力に変換する電力変換手段である交流電源を含み、交流電源の出力周波数をfa(Hz)、としたときに、fa(Hz)をf1(Hz)未満の周波数に設定する。
fa(Hz)をf1(Hz)の未満の周波数に設定することが、交流電源でコイルを駆動するための条件となる。
好ましくは、さらに、一方のコイルに対向する他方のコイルを開放したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)、一方のコイルが、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数をf2(Hz)、としたときに、加熱コイルを、f2(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)で駆動する。
この例では、電力を伝送する周波数において、Rs>Rn≧Rw、を満足することにより、さらに実効直列抵抗Rw(Ω)の小さいコイルを選別でき、かつ誘導加熱に最適な周波数範囲を規定できる。また、電力を伝送する周波数において、Rs>Rn≧Rw、の条件を満足するコイルを使用することにより、コイル単体、コイルを対向させた変成器、のいずれもが理想的な理論上の特性に近づき、加熱性能を向上させることが可能となる。
好ましくは、さらに、一方のコイルに、常磁性または反磁性の磁気的性質を持つ、厚さが0.5mm以上の金属または合金で構成された金属板が対向したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRj(Ω)、一方のコイルが、Rw>Rj、を満足する最高周波数をf3(Hz)、とすると、f3が100kHz以上となるように、加熱コイルが選ばれており、加熱コイルを、f3(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)で駆動する。
単に加熱コイルの実効直列抵抗を低下するだけでは、アルミ鍋や銅鍋などの金属容器を効率よく加熱する加熱コイルは実現できない。加熱コイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、加熱コイルに例えばアルミ鍋が対向したときの、加熱コイルの実効直列抵抗をRj(Ω)、とすると、RjとRwの差、Rj−Rw、がアルミ鍋の等価的な抵抗値となる。
Rj−Rw、の値がゼロとなると、交流電力は加熱コイルで消費されてしまい、アルミ鍋を加熱することができなくなる。よって、Rj−Rw、の値は大きい方が好ましい。
好ましくは、さらに、RjとRwの比Hjを、Hj=Rj/Rw、とすると、少なくとも150kHz以下の周波数領域に、Hjの値が2以上となる周波数領域が存在する。
RwとRjの比を、Rj/Rw、とし、Rj/Rw、の値が、少なくとも1.5以上でないと、加熱コイルはアルミ鍋を加熱することはできない。
好ましくは、さらに、加熱コイルの熱抵抗をθi(℃/W)、加熱コイルの許容動作温度をTw(℃)、加熱コイルが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、加熱コイルに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、なる関係を、加熱コイルが満足するように、加熱コイルの作動条件を設定する。
このように、実効直列抵抗Rw(Ω)と交流電流Ia(A)による熱条件を規定することで、少なくとも一方のコイルの交流電流Iaの上限、あるいは一方のコイルの実効直列抵抗Rwを決めるターン数の上限と、実効直列抵抗Rw(Ω)が小さい周波数領域を規定できる。
好ましくは、加熱コイルはスパイラル状に構成されている。
加熱コイルをスパイラル状に構成することにより、金属鍋などの容器を加熱することができる。
一方のコイルである加熱コイルは、ソレノイド状に構成され、他方のコイルが一方のコイルと誘導結合可能に構成されている。
加熱コイルをソレノイド状に構成することにより、円筒状の加熱容器を加熱できる。
好ましくは、加熱コイルを形成する導線には、導線内部に絶縁体層が設けられ、絶縁体層の断面積が導線全体の断面積の11%以上であって、加熱コイルは、絶縁体層が設けられた導線を単層または多層渦巻き状に密接巻きして構成されており、絶縁体層が設けられた導線の最大径をd1、前記加熱コイルの外径をDとしたとき、加熱コイルの外径Dが最大径d1の少なくとも30倍以上であり、かつ導線の巻き数が12ターン以上である。
加熱コイルをこのように構成することにより、必要な加熱性能を確保できる。
好ましくは、導線は、それぞれに絶縁被覆が施された複数の単導線の集合体で構成され、かつ、単導線中の導体の最大径をd2としたときに、d2が0.3mm以下であって、絶縁被覆の厚さtが(d2)/30以上に選ばれている。
好ましくは、導線の最大外径をd1、とすると、隣接する導線間に設ける空隙を、0.2mm以上、d1以下に設定する。
隣接する導線間に所定の空隙を設けることにより、渦電流損を低減できるので、コイルの性能を向上できる。
好ましくは、加熱コイルに被加熱用金属体が近接したときの、加熱コイルの実効直列抵抗をRk(Ω)、RwとRmの比Hkを、Hk=(Rk−Rw)/Rw、とすると、150kHz以下の周波数領域において、Hkの値が1以上であり、かつHkの値が極大となるように、前記fd(Hz)が設定されている。
加熱コイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、加熱コイルに例えば鉄鍋が対向したときの、加熱コイルの実効直列抵抗をRk(Ω)、とすると、RkとRwの差、Rk−Rw、が鉄鍋の等価的な抵抗値となる。よって、(Rk−Rw)/Rw、の値が大きい周波数領域で加熱コイルを駆動することにより、加熱効率を上げることができる。ただし、Rwによる電力損失が低い周波数領域で使用しないとならない。
好ましくは、加熱コイルに、力率改善用キャパシタを接続する。
加熱コイルにキャパシタを装備することにより、力率を改善できる。
好ましくは、加熱コイルの少なくとも一方の端子にキャパシタが直列接続され、加熱コイルとキャパシタが直列接続された2端子回路が、交流電源に接続されており、交流電源は、電流を流し出す半導体素子と、電流を引き込む半導体素子と、を含み、交流電源の出力は、2端子回路に電流を流し出す時間t1と、加熱コイルから電流を引き込む時間t2と、を交互に有する。
このような回路構成とすることにより、加熱コイルの誘導性リアクタンスを打ち消すことができ、さらに力率を改善できる。
この発明の他の局面は、上記記載の誘導加熱装置によって加熱される金属または合金から成る加熱用容器であって、加熱コイルに加熱用容器が対向したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRk(Ω)、RwとRkの比Hkを、Hk=(Rk−Rw)/Rw、とすると、被加熱用の金属容器は、150kHz以下の周波数領域で、Hkの値が極大となるように、金属または合金の材質、厚さと、加熱容器の形状とが選ばれている。
Hkの値が大きくなるように、金属容器の材質(磁石が吸着しない非磁性ステンレスでもよい)、厚さ、形状を選ぶことによって、加熱効率のよい誘導加熱装置の加熱用容器が実現できる。
この発明は、同一の加熱コイル2個を用いて変成器を構成し、変成器の実効直列抵抗の周波数特性を計測することにより、性能のよい加熱コイルを選択できる。さらに、加熱コイルの周波数特性から、誘導加熱装置の作動条件を規定することにより、加熱性能のよい誘導加熱装置が実現できる。
(誘導加熱装置の回路構成)
図1は、本発明の一実施形態における誘導加熱装置100の回路構成を示す図である。
直流電源6が加熱制御回路3に接続されている。また、直流電源6のプラス端子に加熱コイル1の一端が接続され、加熱コイル1の他端は、スイッチング素子Q1のドレインに接続されている。さらにスイッチング素子Q1のソースは直流電源6のマイナス端子に接続されている。スイッチング素子Q1のゲートには、加熱制御回路3の出力が与えられ、加熱制御回路3の出力に基づき、スイッチング素子Q1は、ON/OFFする。また、加熱コイル1には、並列にキャパシタ4が接続されており、加熱コイル1に流れる電流を正弦波に近くして加熱効率を上げている。加熱制御回路3とスイッチング素子Q1は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路として作動する。このインバータ回路を交流電源5と表記し、インバータ回路のスイッチング周波数をfa(Hz)と表記する。このように構成された誘導加熱装置100の加熱コイル1に近接した金属体20は、加熱コイル1が生成する交番磁場により加熱される。加熱コイル1は交流電源5により、周波数fd(Hz)で駆動される。この場合、当然、fa=fd(Hz)である。fa(Hz)、fd(Hz)はいずれも誘導加熱に使用される周波数である。fa(Hz)とfd(Hz)は、誘導加熱部のパラメータであり、作用効果も駆動部と被駆動部の違いだけである。
(誘導加熱装置の動作の説明)
図1において、加熱コイル1は空芯コイルである。加熱コイル1の特性を計測するには、同一の加熱コイル1を2個使用し、そのうち1個のコイルを一方のコイルとし、もう1個のコイルを他方のコイルとする。一方の加熱コイルを計測器に接続し、他方の加熱コイルを一方の加熱コイルと対向させる。このようにして、
(1)一方の加熱コイル単体(一方のコイルに他方のコイルが対向していないとき)の実効直列抵抗をRw(Ω)
(2)一方の加熱コイルに対向する他方の加熱コイルを短絡したときの、一方の加熱コイルの実効直列抵抗をRs(Ω)
(3)一方の加熱コイルに対向する他方の加熱コイルを開放したときの、一方の加熱コイルの実効直列抵抗をRn(Ω)
(4)一方の加熱コイルに、0.5mm以上の厚さの金属板を対向させたときの、一方の加熱コイルの実効直列抵抗をRk(Ω)
(5)一方の加熱コイルに、0.5mm以上の厚さの、反磁性または常磁性の磁気的性質を持つ金属または合金から成る金属板を対向させたときの、一方の加熱コイルの実効直列抵抗をRj(Ω)
と定義する。一方の加熱コイルも他方の加熱コイルも同一であるので、一方のコイルの実効直列抵抗Rw(Ω)と他方のコイルの実効直列抵抗Rw(Ω)は等しい。同様に、一方のコイルの実効直列抵抗Rs(Ω)と他方のコイルの実効直列抵抗Rs(Ω)は等しい。また、一方のコイルの実効直列抵抗Rn(Ω)と他方のコイルの実効直列抵抗Rn(Ω)も等しい。さらに、一方のコイルの実効直列抵抗Rk(Ω)と他方のコイルの実効直列抵抗Rk(Ω)も等しい。そして、一方のコイルの実効直列抵抗Rj(Ω)と他方のコイルの実効直列抵抗Rj(Ω)も等しい。
双方のコイルともに同一ではあるが、上記のように、特性を計測するコイルを一方のコイル、一方のコイルに対向させるコイルを他方のコイルとして区別しておく。以降、特に明記していない場合、一方のコイルと他方のコイルは同一のコイルとする。また、特に明記していない場合、一方のコイル、他方のコイルは、ともに、加熱コイルを指すものとする。単に、加熱コイルと表記されている場合、加熱コイルは一方のコイルであり、誘導加熱装置100に含まれるコイルを指す。すなわち、他方のコイル2は、加熱コイル1の性能を計測し、コイルを選択するために用いられるものである。また、0.5mmの厚さの金属板を選んでいるのは、通常の鍋を形成するには、最低でも0.3mm程度の厚さの金属板が必要であり、余裕を見て0.5mm以上の厚さとしている。
次に、誘導加熱装置100に使用される加熱コイルについて説明する。一方のコイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)とする。一方のコイルに対向する他方のコイルを短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRs(Ω)とする。後述するが、周波数が低い場合、実効直列抵抗RwとRsの関係は、Rs>Rw、となっている。周波数が高くなると、実効直列抵抗RwとRsの関係は、Rs<Rw、となっている。Rs<Rw、となる周波数は、コイルにより異なる。すなわち、Rs>Rw、の関係を満足する周波数には、上限値が存在し、コイルによって上限値は異なる。この上限値が、誘導加熱性能のよいコイルを選ぶ基準となり、誘導加熱装置を構成するコイルを使用可能な周波数範囲を規定でき、誘導加熱性能のよい誘導加熱装置を実現できるものである。
そこで、この発明の一実施形態にかかる誘導加熱装置100において、加熱コイル1が、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数をf1(Hz)、とする。加熱コイル1には、f1(Hz)が少なくとも100kHz以上であるものが選ばれる。さらに、前述したインバータ回路のスイッチング周波数fa(Hz)は、f1(Hz)以下に設定される。よって、一方のコイルである加熱コイル1は、加熱制御回路3とスイッチング素子Q1によりf1(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)で駆動される。すなわち、加熱コイル1は、fd<f1、の条件を満足する。当然のことながら、加熱コイル1は、fd(Hz)において、Rs>Rw、の関係を満足する。前述したように、加熱コイル1の「駆動周波数fd(Hz)はf1(Hz)未満に設定される」という表記は、加熱コイル1の駆動周波数fd(Hz)が、「fd<f1、の条件を満足する」のと同義である。「fd<f1、の条件を満足する」という表記は、加熱コイル1が、「fd(Hz)にて、Rs>Rw、の関係を満足している」という表記と同義である。以降、上記のいずれかの表記により、誘導加熱装置が満足すべき条件を規定する。
さらに、一方のコイルに対向する他方のコイルを開放したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)とする。そして、一方のコイルが、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数をf2(Hz)とする。後述するが、f2(Hz)はf1(Hz)よりも低くなる。一方のコイルである加熱コイル1には、f2(Hz)が少なくとも40kHz以上であるものが選ばれる。誘導加熱装置100は、加熱制御回路3に含まれる交流電源5の出力周波数fa(Hz)をf2(Hz)未満の周波数に設定する。fa(Hz)をf2(Hz)未満の周波数に設定すると、加熱コイル1である一方のコイルが、周波数fd=fa(Hz)で駆動される。すなわち、加熱コイル1は、fd<f2、の条件を満足する。当然のことながら、加熱コイル1は、fd(Hz)にて、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する。以下、前述したf1とfdの関係と同様にして、いずれかの表記にて、f2とfdの関係を規定する。
さらに、一方のコイルに、0.5mm以上の厚さの反磁性または常磁性の磁気的性質を持つ金属または合金から成る金属板を対向させたときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRj(Ω)とする。そして、一方のコイルが、Rj>Rw、の関係を満足する最高周波数をf3(Hz)とする。後述するが、f3(Hz)と、f1(Hz)、f2(Hz)の関係は、一方のコイルによって異なっている。一方のコイルである加熱コイル1には、f3(Hz)が少なくとも100kHz以上であるものが選択される。誘導加熱装置100は、加熱制御回路3に含まれる交流電源5の出力周波数fa(Hz)を、f3(Hz)未満の周波数に設定する。fa(Hz)を上記のように設定すると、加熱コイル1である一方のコイルが、周波数fd=fa(Hz)で駆動される。すなわち、加熱コイル1は、fd<f3、の条件を満足する。当然のことながら、加熱コイル1は、fd(Hz)にて、Rj>Rw、の関係を満足する。以下、前述したf1とfdの関係と同様にして、いずれかの表記にて、f3とfdの関係を規定する。
(コイルの具体例の説明)
以下、本発明の実施形態における誘導加熱装置に使用されるコイルの具体的な構成について説明する。以下に説明する各実施形態のコイルは、誘導加熱装置100の加熱コイル1として使われる。
図2は、空芯コイルの一例を示す図であり、図2(A)は平面図を示し、図2(B)は図2(A)の線1B−1Bから見た断面を拡大して示す。
この発明の一実施形態のコイル1aは、図2(A)に示すように、導線11を平板で空芯の単層渦巻き状に、隣接する導線11同士が密接するように巻回して構成される。導線11、導体部12の構成については後述する。導線11は、断面が略円形であり、最大径d1(mm)、図2(A)に示すコイル外形をD(mm)とすると、Dはd1の30倍以上である。さらに、導線11は、12ターン以上巻回されている。
さらに、図2(A)に示したコイル1a単体での実効直列抵抗をRw(Ω)とする。一方のコイル1aに対向する他方のコイルを短絡したときの、コイル1aの実効直列抵抗をRs(Ω)、とする。このときに、一方のコイルが、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数をf1(Hz)とする。一方のコイルであるコイル1aには、f1が100kHz以上となるものが選択されている。すなわち、コイル1aを、一方のコイルと他方のコイルの双方に使用した場合、100kHzにて、Rs>Rw、の関係を満足している。コイル1aは、交流電源5により、f1(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)にて駆動される。交流電源5の出力周波数であるfa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。
コイル外径D(mm)を導線11の最大径d1(mm)の30倍以上に選んだのは、必要な加熱性能を確保するためである。導線11のターン数を12以上になるように選んだのも、必要な加熱性能を確保するためである。なお、この実施形態のみならず、他の実施形態においても共通するが、コイルには、導線が巻かれない所定の内径を設けるのが望ましい。内径は、外径Dの規定を満足していれば、任意の寸法でよい。
さらに、対向する他方のコイルを開放したときの、コイル1aの実効直列抵抗を、Rn(Ω)、とする。このときに、一方のコイルであるコイル1aが、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数をf2(Hz)とする。加熱コイル1であるコイル1aには、f2(Hz)が20kHz以上となるものが選択される。すなわち、コイル1aを一方のコイルと他方のコイルの双方に使用した場合、20kHzにて、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足している。加熱コイル1であるコイル1aは、交流電源5により、f2(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)にて駆動される。交流電源5の出力周波数であるfa(Hz)は、f2(Hz)未満の周波数に設定される。
さらに、一方のコイルに、0.5mm以上の厚さの反磁性または常磁性の磁気的性質を持つ金属または合金(一部の強磁性金属を含む合金を除く)から成る金属板を対向させたときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRj(Ω)とする。そして、一方のコイルであるコイル1aが、Rj>Rw、の関係を満足する最高周波数をf3(Hz)とする。コイル1aには、f3(Hz)が少なくとも100kHz以上であるものが選択される。加熱コイル1であるコイル1aは、交流電源5によりf3(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)にて駆動される。交流電源5の出力周波数であるfa(Hz)は、f3(Hz)未満の周波数に設定される。
さらに、コイル1aの熱抵抗をθi(℃/W)、コイル1aの許容動作温度をTw(℃)、コイル1aが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、コイル1aに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、なる関係を、コイル1aが、誘導加熱を行なっているときに満足する。
このように構成されたコイル1aは、図1に示した、誘導加熱装置100の加熱コイル1として用いることができる。
なお、図2(A)の実施形態においては、導線を円形に巻回している。しかし、円形に限らず、図3(A)に示す長円形、図3(B)に示す楕円形、図3(C)に示す正方形、図3(D)に示す長方形、図3(E)に示す六角形などの多角形のように、任意の形状で巻回することができる。これは、後述する他の実施形態でも同様である。ただし、コイルの形状が円形以外の場合、コイル外径Dは、図3(A)〜図3(E)に示すように、コイルの最小外寸D´を規定する。
次に、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数f2(Hz)、Rj>Rw、の関係を満足する最高周波数f3(Hz)、加熱コイル作動時の熱条件、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、について説明する。なお、この説明は、後述する他のコイルの実施形態においても同じ作用効果をもつので、以降に記載の実施形態においては、説明を省略する。
(コイルで構成した変成器の説明)
図4は、負荷が接続された変成器の等価回路を表す図であり、図5は、コイル単体の等価回路を示し、図6は1次コイルと2次コイルの実効直列抵抗を明示した変成器単体の等価回路を表す図である。図7は、図6に示す等価回路において、2次側コイルが短絡されたときの変成器の等価回路を表す図であり、図8は、図6に示す等価回路において、2次側コイルに負荷抵抗RLが接続されたときの変成器の等価回路を表す図である。図5〜図8には、1次側コイルと2次側コイルの実効直列抵抗が等価回路中に明示してある。
加熱コイル1と、加熱コイル2とが対向して配置されると、変成器として作用する。ここでは、回路理論を参照するため、加熱コイル1を1次側コイル、加熱コイル2を2次側コイルと表記する。前述したように、加熱コイル1と加熱コイル2は同一である。Rw、Rn、Rs、の理論上の関係を求めるため、変成器の1次側のインピーダンスZ1を求めておく。図4において、L1(H)は1次側コイルのインダクタンス、L2(H)は2次側コイルのインダクタンス、M(H)は1次側コイルと2次側コイル間の相互インダクタンス、V1(V)は1次側コイルの両端電圧、V2(V)は2次側コイル(負荷抵抗RL)の両端電圧、I1(A)は1次側コイルに流れる電流、I2(A)は2次側コイルに流れる電流、RLは負荷抵抗(純抵抗)、Z1(Ω)は1次側の入力インピーダンス(複素インピーダンス)を表す。図4において、下記の回路方程式が成立し、下記の連立方程式を解くことにより、Z1の純抵抗成分(実効直列抵抗)と、リアクタンス成分(インダクタンス)を求めることができる。下記に、図4の回路方程式を記す。なお、j=−1、であり、ωは角周波数で、ω=2πf(fは周波数、(Hz))である。
V1=jωL1・I1+jωM・I2…(1)
V2=jωM・I1+jωL2・I2…(2)
V2=−RL・I2…(3)
求めたいのは、Z1=V1/I1、であるので、上記の3つの連立方程式から、V2、I2を消去すればよい。上記の連立方程式の(3)式を(2)式に代入し、V2を消去すると、
0=jωM・I1+(jωL2+RL)I2
となり、上式をI2について解き、上記連立方程式の(1)式に代入し、I2を消去すると、
V1=(jωL1+ω/(jωL2+RL))I1
となり、Z1=V1/I1、であるので、上式より、Z1は、
Z1=jωL1+ω/(jωL2+RL)
となる。実際の変成器は、1次側コイルに実効直列抵抗R1、2次側コイルに実効直列抵抗R2を持つので、図6の回路を考え、RL=R2とすると、
Z1=R1+jωL1+ω/(jωL2+R2)
となる。上式の、ω/(jωL2+R2)に、
(−jωL2+R2)/(−jωL2+R2)=1、を掛けると、
Z1=R1+jωL1+ω(−jωL2+R2)/(ωL2+R2
となり、実数項と虚数項を整理すると、
Z1=R1+R2・ω/(ωL2+R2
+jω(L1−L2・ω/(ωL2+R2))
となって、A=ωM2/(ωL2+R2)とすると、Z1は、
Z1=(R1+AR2)+jω(L1−AL2)…(4)
となる。ω>0、M≧0、L2>0、R2>0、なので、明らかに、A≧0である。すなわち、図6において、1次側コイルの入力インピーダンスZ1は、
Z1=R1+jωL1…(5)
であり、(5)式と(4)式を比較すれば明らかなように、図7のように、変成器の2次側コイルが短絡されたときには、1次側コイルの実効直列抵抗R1が増加し、インダクタンスL1が減少するのが分かる。これらは既知の回路理論である。
上記(4)式と(5)式は、Rs>Rw、Rs>Rn≧Rw、の関係を説明するのに引用する基本式である。
次に、図2(A)に示したコイル1aに関して、具体的な例について説明する。一部重複するが、記号の定義を明確にしておく。Rwは、コイル1a単体の実効直列抵抗(図5のR1)、Rnは、コイル1aに他のコイルが対向し、対向したコイルが開放されているときのコイル1aの実効直列抵抗(図6のR1)、Rsは、コイル1aに他のコイルが対向し、対向したコイルが短絡されているときのコイル1aの実効直列抵抗(図7のR1)、krは、RwとRsより近似的に求めた両コイル間の結合係数である。また、コイル1a単体のインダクタンスをLw(H)、コイル1aに他方のコイルが対向し、対向したコイルが短絡されているときのコイル1aのインダクタンスをLs(H)とする。さらに、コイル1aに他方のコイルが対向し、対向したコイルが開放されているときのコイル1aのインダクタンスをLn(H)とする。
L1がコイル自体を示すときには、L1は記号とし、インダクタンスの数値を示すときは、L1(H)として単位を付記する。これは、R1、Rw等の抵抗についても同様とする。ただし、Rs>Rw、など等号や不等号で記載されている場合、Rw等を数式中に記載したときや計算に用いている旨の記載があるときの前後にRw等が記載してある場合、「Rwは、2Ω」等の具体的な数値と単位がRw等の直後に記載されている場合、特性図の説明等で数値であることが明らかな場合等は、単位の付記を省略している。
なお、以下の説明では、コイルを対向させた変成器の1次側と2次側を区別しているが、変成器は1次側と2次側を反転させることができるので、図6のR1、L1は、2次側のR2、L2として考えても同様の結果が得られる。すなわち、同一の加熱コイルを2個使用する場合、いずれのコイルを一方のコイルとしてもよい。
(加熱コイル1に金属板が対向したときの説明)
図9は、加熱コイル1単体に、金属板20が対向したときの、加熱コイル1の実効直列抵抗Rk(Ω)を示す等価回路図である。Rk(Ω)は、コイルの構成、金属板20の種類や厚さ、あるいは周波数により変化する。Rk(Ω)の詳細については、各コイルの構成を参照して後述する。なお、金属板20は任意の磁気的性質を持つものでよい。
(加熱コイル1に0.5mmの厚さのアルミ板が対向したときの説明)
図10は、加熱コイル1単体に、0.5mmの厚さのアルミ板21が対向したときの、加熱コイル1の実効直列抵抗Rj(Ω)を示す等価回路図である。Rj(Ω)は、コイルの構成、周波数により変化する。Rj(Ω)の詳細については、各コイルの構成を参照して後述する。以下、コイル1aの具体的な構成例と特性の関係について説明してゆく。なお、0.5mmの厚さがあれば、アルミ板に限らず、銅板なども使用できる。すなわち、金属板21は強磁性以外の磁気的性質を持つものとする。
(コイル1aの具体的な構成例1Aの説明)
図11は、銅線径1mmのホルマル線を、外径70mmで25ターン(T)密接巻きしたコイル1AのRw、Rn、Rsと周波数との関係を表す図である。
本願発明者は、図2(A)に示したコイル1aとして、平板で空芯の単層渦巻き状に、ホルマル線を使い、隣接する導線同士が密接するように巻回してコイル1Aを形成した。
このコイル1Aは、後述するように、巻回方法、導線の構成を変化させた他の構成のコイルと、実効直列抵抗の周波数特性や誘導加熱性能と比較する基準として作成したものである。また、誘導加熱に使用される周波数領域での実効直列抵抗の増加要因が、表皮効果であるのか、渦電流損であるのか、その他の要因であるのかを推定する目的もある。
まず、本願発明者は、コイル1A単体の実効直列抵抗を計測してみた。コイル1Aの直流抵抗Rdは、0.05Ωと非常に小さいが、誘導加熱に使用される周波数の一例である、約50kHzになると、コイル1A単体の実効直列抵抗Rwは、約0.3Ωと、直流抵抗Rdのほぼ6倍になっていた。さらに、コイル1Aが、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1は、約70kHz、コイル1Aが、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数f2は、約25kHz、となっていた。コイル1Aを電力伝送用に使用した場合、電力伝送性能も悪い。そこで、本願発明者は、コイル1Aを基準として、改良したコイルを製作してみた。
コイルの構成を平面渦巻き状のコイルに限っても、線径、外径、巻回数、巻回法、線種などのパラメータが多く、組合せが多くなる。そこで、外径(70mm)、線径(1mm)、線種(単導線)を同一とし、巻回法(疎巻)と巻回数のみを変えたコイル1Bと、外径(70mm)、巻回法(密巻)を同一とし、線径(1mm)、巻回数(30ターン)を略同一として線種(リッツ線)のみを変えたコイル1Cを作成し、コイル1Aとの特性比較を行なってみた。コイル1Cは、コイル1Aに比べ、若干線径が細いので、30ターン巻回して外形(70mm)をコイル1Aと同一になるよう作成してある。
さらに、本願発明者は、市販の電磁調理器に使用されている加熱コイルを使い、Rw、Rn、Rs、Rk、Rjと周波数との関係を計測してみた。
(コイル1aの具体的な構成例1Bの説明)
図12は、コイル1Bを説明するための特性図である。
コイル1Bは、銅線径1mmのホルマル線を、外径70mmに、約1mmの空隙を設けて14ターン疎巻きしたものである。コイル1BのRw、Rn、Rsと周波数との関係が図12に示されている。
(コイル1aの具体的な構成例1Cの説明)
図13は、コイル1Cを説明するための特性図である。
コイル1Cは、銅線径0.05mmのホルマル線を75本束ねた電線(リッツ線)を、外径70mmに30ターン密接巻きしたものである。コイル1Cの、Rw、Rn、Rs、と周波数との関係が図13に示されている。
(コイル1aの具体的な構成例1Dの説明)
図14は、コイル1Dを説明するための特性図である。
コイル1Dは、銅線径0.45mmのホルマル線を40本束ね、導線外径を約4mmに作成した電線(リッツ線)を、外径170mmに24ターン密接巻きしたものである。コイル1DのRw、Rn、Rsと周波数との関係が図14に示されている。コイル1Dは、市販されている電磁調理器(三和電機株式会社社製、H6735)に使用されている加熱コイルである。
(コイル1aの具体的な構成例1Eの説明)
図15は、コイル1Eを説明するための特性図である。
コイル1Eは、銅線径0.35mmのホルマル線を50本束ね、導線外径を約4mmに作成した電線(リッツ線)を、外径140mmに22ターン密接巻きしたものである。コイル1EのRw、Rn、Rsと周波数との関係が図15に示されている。コイル1Eは、市販されている電磁調理器(TUAN KUEN社製、STI−IH19)に使用されている加熱コイルである。
(各コイルについての検討)
なお、図11〜図15に示す特性図は、コイル1A〜コイル1Eに関して、いずれも、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数をf2(Hz)が共通的に示されている。ただし、f1(Hz)、f2(Hz)は、コイル1Aからコイル1Eでは異なっている。
また、図11〜図15に示す特性図は、全て対向するコイル間の距離をゼロで測定したものである。コイル間の対向距離が離れても、Rs(Ω)、Rn(Ω)は、対向距離がゼロのときよりもわずかに低下するが、対向する距離がコイル外径Dの1/10程度までは殆ど変化しない。
本発明の実施形態においては、前述の、Rw、Rs、Rn、Rjを、対向距離ゼロか、または実際に使用するコイルまたは金属板の対向距離において計測し、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数f2(Hz)、Rj>Rw、の関係を満足する最高周波数f3(Hz)を求めればよい。
(Rs>Rw、の関係についての説明)
まず、Rs>Rw、の関係を満足している場合と、満足していない場合の違いについて説明する。上記に説明したように、コイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)は、周波数が上昇すると共に増加することが知られており、その原因として、表皮効果や渦電流損、あるいは特許文献1に記載の近接効果などが知られている。
さらに、上述の回路理論によると、図7に示すように、2次側コイルを短絡すると、1次側の純抵抗値は、(R1+AR2)Ω、に増加することが知られている。R2を2次側コイルの実効直列抵抗値とし、Mを1次側コイルと2次側コイル間の相互インダクタンスの値、ωを角周波数(ω=2πf、fは周波数(Hz))、L2(H)を2次側コイルの自己インダクタンスの値とすると、A=ω/(ωL2+R2)であり、ω>0、M≧0、L2>0、R2>0、であるので、明らかに、A≧0、である。そして、1次側のインダクタンスについては、L1(H)を1次側コイルの自己インダクタンスの値とすると、図7に示すように、2次側コイルを短絡すると、1次側のインダクタンスは、(L1−AL2)H、に減少することが知られている。
ところが、図11〜図15を参照すると、周波数が高い領域においては、Rs(Ω)がRw(Ω)より小さくなっている。Rs<Rw、となる周波数(ほぼf1以上)は、比較例としてのコイル1Aでは、約67kHz以上になるのに対して、コイル1Aと同一の導線を用い、疎巻した巻回数のみが異なるコイル1Bでは、f1は約7.7MHz以上になる。導線の線材のみを変えたコイル1Cでは、f1は約3.2MHz以上になる。また、市販されている電磁調理器に使用されているコイル1Dでは、f1は約43kHzとなっており、f1>100kHz、の条件を満足していない。市販されている他の電磁調理器に使用されているコイル1Eでは、f1は約125kHzとなっている。
すなわち、回路理論に従うなら、Rs>Rn=Rw、の関係を満足しないといけないが、コイル1A〜コイル1Eを使用し、図6、図7のように構成された変成器では、周波数が高い領域では、Rs>Rw、の関係を満足していない。例えば、コイル1Aでは、周波数68kHz以上の点で、Rs<Rw、となっているのが、図11より分かる。
RwとRsの関係が、Rs<Rw、となるような周波数領域では、正でないとならないAが、負になってしまう。図11〜図15で、Rs<Rw、となるような周波数領域では、図8に示す、実効直列抵抗R1およびR2の実際の値を求めることはできない。その一例を以下に示す。なお、ここでは実効直列抵抗から近似的に結合係数を求めるので、結合係数をkrと表記する。
既知の回路理論によれば、結合係数をkrとすると、相互インダクタンスをM(H)、1次側コイルの自己インダクタンスをL1(H)、2次側コイルの自己インダクタンスをL2(H)、としたときに、M=kr・L1・L2の関係が成り立つ。1次側コイルと2次側コイルに同一のコイルを使うなら、R1=R2=Rw、L1=L2=Lw、となるので、ωL2>>R2、を満足するときには、
=ω/(ωL2+R2)≒ω/(ωL2
=kr・L1・L2/L2=kr・L1/L2=kr、となる。そこで、
(R1+AR2)から、(Rw+krRw)=Rs、となり、
kr≒(Rs−Rw)/Rw、として近似的にkrを求められ、
kr=√((Rs−Rw)/Rw)となる。
両コイルが同一の場合、R1=R2=Rw、L1=L2=Lw、である。したがって、ωL2>>R2を満足しているかは、ωLw/Rw、の値を計算し、この値が50以上の時に求めた結合係数krの値は、誤差2%程度以下と判断している。図11〜図15においては、10kHz〜30kHz以上になると、ωLw/Rw>50、となっている。Rs>Rw、の関係を満足する周波数領域では、このようにして、Rw、Rsより結合係数krを近似的に求めることができる。
しかし、Rs<Rw、となるような周波数領域では、正でないとならないAが、負になってしまい、正であるべき結合係数krの二乗であるkrも負になるので、結合係数を実効直列抵抗Rw,Rsより求めることはできず、(4)式から明らかなように、図8において、R1、R2の実際の値を求めることはできなくなる。Rs=Rwの場合なら、結合係数krはゼロとなってしまうし、Rs<Rw、となると、数学的には結合係数krは虚数になる。実際に2個のコイルが対向しており、相互インダクタンスMが、M≠0であるのに、両コイル間の結合係数がゼロになることや、あるいは虚数になることは、理論上あり得ない。したがって、コイル10aは、誘導加熱に使用される周波数を勘案して、100kHzにて、Rs>Rw、の関係を満足するコイルを選ぶ。また、コイル10aは、理論上の関係である、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)以下の周波数で使用する必要がある。このように、同一の2個のコイルを用いて変成器を構成することによって、コイル単体の特性では判断できない性能のよいコイルを選べる、また、コイル単体では規定できないコイルを使用可能な周波数を規定できる。
(Rs>Rn≧Rw、の関係を満足している場合の説明)
次に、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足している場合と、満足していない場合の違いについて説明する。前述したように、コイル単体では、この実効直列抵抗Rwを、計測によって正確に求められるが、図6のように構成された変成器においては、図11〜図15に示すように、周波数が高い領域では単に2次側コイルが対向しただけで、R1が、RwからRnに上昇する。R1は1次側コイルの実効直列抵抗であるが、図5のR1(Rwと同じ)の周波数特性と、図6のR1(Rnと同じ)の周波数特性とは異なっているのが、図11〜図15にプロットされたRwとRnの周波数特性図にて分かる。
Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する周波数領域でコイルを使用することにより、図5のコイル単体および図6に示すように構成された変成器、のいずれもが理論上の理想的な特性に近づくので、誘導加熱性能を、従来よりも向上させることが可能となる。
しかしながら、周波数領域によっては、Rn=Rw、は満足せず、Rn>Rw、となり、Rnの影響を受けるので、図8において、R1とR2の値を正確に求めることはできない。また、R1、R2は、図1に示す負荷RLの値によって変動する。すなわち、R1、R2に流れる電流により、R1、R2は変動し、当然、周波数によっても変動するので、図8において、作動時の、R1、R2の実際の正確な値は求められない。
後述するが、Rn=Rw、となっていないのは、加熱コイル1に金属体20が近接したときに、加熱コイル1単体の実効直列抵抗、Rw、が求められないのと同じである。
(密結合変成器の1次側のインピーダンスZ1について)
変成器は、コアを装備し、1次側コイルと2次側コイルを分離不能に構成することにより、結合係数をほぼ1にできる。前述した(4)式から、1次側コイルと2次側コイルに同一のコイルを使用した場合、L1=L2=Lw、R1=R2=Rw、である。図8において、ωL2>>(R2+RL)、を満足しており、かつ、RL>>R2=R1、を満足しているとする。再度(4)式を参照すると、
Z1=(R1+AR2)+jω(L1−AL2)
となっている。上式のR2は、R2+RL、であるので、それを上式に代入し、
RL>>R2=R1、の条件が成り立つとすると、上式は、
Z1=(ARL)+jω(L1−AL2)、と近似できる。
前述したが、1次側コイルと2次側コイルに同一のコイルを使用した場合、上記の仮定より、L1=L2=Lw、R1=R2、k=1、であるので、
=ω/(ωLw+(R2+RL))=ω/(ωLw
=kr・Lw/Lw=kr=1
となり、上記、Z1=(ARL)+jω(L1−AL2)は、
Z1=(1・RL)+jω(Lw−1・Lw)=RL、となる。
これは、商用電源などの正弦波交流を使用した変圧器において成立する条件である。負荷RLが、モーターなどのリアクタンス性負荷でないとすると、1次側コイルのインピーダンスは純抵抗成分RL(Ω)のみとなり、リアクタンス成分Xはゼロとなる。すなわち、図8において、ωL2>>(R2+RL)、RL>>R2=R1、k=1、の条件が成立し、L1=L2=Lw、の場合は、図8に示す変成器が存在しても、存在しなくても、1次側コイルのインピーダンスZ1は、いずれもRL(Ω)のみの純抵抗成分となる。
商用電源は、50〜60Hzと周波数は低いが、透磁率の高いコアを装備してもヒシテリシス損が少ない。したがって、図8に示す変成器を構成するコイルのインダクタンスを大きくでき、ωL2>>(R2+RL)、の条件を満足できる。さらに、商用電源の変圧器は、上記のような透磁率の高いコアを装備することにより、両コイル間の結合係数をほぼ1にできる。よって、図8において、Z1=(L1/L2)RL(Ω)が成り立つ。ただし、コアを装備した1次側コイルと2次側コイルが分離不能な変成器において、Rn(変成器は1次側コイルと2次側コイルが分離不能なため、Rw、は計測できない)、Rsを計測すると、少なくとも1kHz以上では、Rn>Rs、となっており、やはり回路理論に反する結果が得られている。
コアを装備した変成器は、回路理論に反する特性を示しているのに、電力伝送効率が、99%以上になっている。一方、回路理論に従う電力伝送装置の電力伝送効率が30%程度であるのは、まず、両コイル間の結合係数が1よりも小さいことが挙げられる。また、両コイルのインダクタンスが低いため、ωL2>>(R2+RL)、を満足しない。よって、A=ω/(ωL2+(R2+RL))を、kr・L1/L2、に近似できない。仮に、ωL2>>(R2+RL)、を満足していたとしても、kr<1、である。したがって、(4)式より、(L1−AL2)>0、となる。そのため、図8において、Z1にはリアクタンス成分が存在し、力率が低下する。
誘導加熱装置においては、図8に示す他方のコイルである2次側コイルが存在しない。図9に示すように、加熱コイル1である1次側コイルに対向するのは金属板(金属鍋)20になる。この場合においても、Rn(Ω)と同様にして、1次側コイルに金属鍋が対向したときの1次側コイルの実効直列抵抗、Rk(Ω)は、図5に示す1次側コイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)とは異なっている。誘導加熱装置においても、加熱コイルのリアクタンスがゼロとなり、金属鍋が加熱コイルに対向したときの、加熱コイルの抵抗成分をRk(Ω)とすると、Rk>>Rw、が成り立つのなら、加熱効率は、ほぼ100%になる。リアクタンス成分は、キャパシタにより打ち消してやることができる。しかし、実際には、周波数にもよるが、鉄鍋以外においては、Rk>>Rw、が成り立たず、Rkの値は、Rwの2倍程度にしかならない。金属鍋が加熱コイル1に対向したときに、図9における、R1の値が不明であることは前述した。しかし、Rkの内、コイルのみの実効直列抵抗がRw(Ω)以下となることは考えられない。電磁調理器が、鉄鍋などの強磁性体以外の材質で構成された鍋の加熱効率が悪い理由を、データを示し、以下に説明する。
(金属鍋がコイルに近接したときのコイル特性の変化について)
次に、強磁性金属(例えば鉄)で構成された加熱容器と、反磁性金属(例えば銅)、常磁性金属(例えばアルミ)で構成された加熱容器の誘導加熱作用の違いについて考察してみる。前述したが、図8のように構成された変成器において、Rnの影響により、変成器が作動時の1次側コイル単体の実効直列抵抗Rwの値は不明である。同じく、図9において、Rkの影響により、作動時の加熱コイル単体の実効直列抵抗Rwの値は不明である。
図16は、図11に示すコイル1Aに、各種の金属板を対向距離3mmで対向させたときの、コイル1Aの実効直列抵抗と周波数の関係を示す図である。図16において、Rwはコイル1A単体、Rkは厚さ0.5mmの鉄板コイル1Aに対向させた場合、Rjは厚さ0.5mmのアルミ板をコイル1Aに対向させた場合を示す。(Rk−Rw)/Rw、は、RkとRwの比の周波数特性を示す。
図17は、図12に示すコイル1Bに、各種の金属板を対向距離3mmで対向させたときの、コイル1Bの、実効直列抵抗と周波数の関係を示す図である。Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、については、図16と同じである。
図18は、図13に示すコイル1Cに、各種の金属板を対向距離3mmで対向させたときの、コイル1Cの、実効直列抵抗と周波数の関係を示す図である。Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、については、図16と同じである。
図19は、図14に示すコイル1Dに、各種の金属板を対向距離3mmで対向させたときの、コイル1Dの、実効直列抵抗と周波数の関係を示す図である。Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、については、図16と同じである。
図20は、図15に示すコイル1Eに、各種の金属板を対向距離3mmで対向させたときの、コイル1Eの、実効直列抵抗と周波数の関係を示す図である。Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、については、図16と同じである。
(Rk>Rw、Rj>Rw、の関係を満足している場合の説明)
図16〜図20を参照すると、1kHzから少なくとも400kHzまでの周波数領域で、鉄板が近接したときのコイル1Aからコイル1E単体の実効直列抵抗Rk(Ω)は、コイル1Aからコイル1E単体の実効直列抵抗Rw(Ω)よりも大きくなっている。また、Rw(Ω)に比べ、Rk(Ω)の増加率は大きい。この、Rk−Rw(Ω)が、鉄板が加熱コイル1に近接したときの、鉄板による加熱コイル1の実効直列抵抗の増加分と考えられる。すなわち、(Rk−Rw)/Rw、の値が大きいほど、加熱効率がよいものと推察される。図16〜図20には、(Rk−Rw)/Rw、の値がプロットしてあり、それぞれの極大値が示してある。ただし、誘導加熱に使用可能な周波数の上限は150kHzに規制されている。また、後述する、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、の熱条件により、加熱コイル単体の実効直列抵抗が低い領域で、加熱コイルを使用しないとならない。したがって、図17に示すコイル1Bのように、(Rk−Rw)/Rw、の極大値が400kHzとなるような場合は、100kHz程度で使用するのが好ましい。このように、従来、鉄鍋を加熱するのに最適な周波数は20kHz〜30kHzと言われているが、実際にはコイルの構成により、鉄鍋を加熱するのに最適な周波数は異なる。
一方、図16〜図20を参照すると、アルミ板が近接したときのコイル単体の実効直列抵抗Rj(Ω)は、コイル1B、コイル1Cでは、1kHzから1MHzの周波数領域で、Rj>Rw、となっている。しかし、コイル1Aでは30kHz、コイル1Dでは80kHz、コイル1Eでは80kHz以上の周波数になると、Rj<Rw、となっている。前述したように、RwとRkの差が、鉄板が加熱コイル1に近接したときの、鉄板による加熱コイル1の実効直列抵抗の増加分と考えるなら、Rj<Rw、となる周波数領域では、アルミ板を加熱できないと考えざるを得ない。このように、比較例として作成したコイル1A、実際に市販されている電磁調理器に使用されているコイル1Dおよびコイル1Eにおいても、100kHz以下の周波数に、Rj>Rw、の関係を満足しなくなる周波数(ほぼf3(Hz)に等しい)が存在する。これは、RsとRwの関係と似ている。
なお、Rjの周波数特性については、0.5mmの厚さのアルミ板、0.5mmの銅板ともに同じ特性を示しているので、銅板のデータは省略する。上述したように、単に、加熱コイルの実効直列抵抗を低下させるだけでは性能のよい加熱コイルは実現できない。図16と図17、図16と図18を比較すれば分かるように、Rj/Rw、の値が大きくなるような加熱コイルを実現しないと、アルミや銅などの強磁性体以外の金属鍋を効率よく加熱できない。前述したように、Rjの内、加熱コイル1単体の実効直列抵抗Rw(Ω)の値は不明である。また、図18より、Rj/Rw、の値は、150kHz以下、40kHz以上の周波数において、少なくとも2以上は必要となる。この条件を満足しているのは、コイル1Cである。コイル1Cは、100kHzにおいて、Rj/Rw、の値が、2.1となっており、理論上の加熱効率を50%以上とできる。このように、単に加熱コイルの実効直列抵抗を低下させるだけでは、アルミ鍋を効率よく加熱する加熱コイルは実現できない。Rj/Rw、の値が大きくなるような加熱コイルを実現する必要がある。
上述した各コイルの特性を参考にすると、誘導加熱器にコイルの複素インピーダンスZを検知する回路を設け、Zの純抵抗成分Rrと、コイル単体の実効直列抵抗Rwとの比、Rr/Rw、が極大となる周波数で加熱コイルを駆動することにより、加熱効率を最大にすることができる。その詳細については後述する。
(Rw、Rs、Rn、Rjに関する各コイルの特性について)
以下に、本発明の、Rw、Rs、Rn、Rjに関する規定と、規定を満足するコイルについてまとめておく。
(1)Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)が100kHz以上
・比較例としてのコイル1Aは、f1が67kHzなので規定を満足していない。
・コイル1Bは、f1が7.7MHzで、規定を満足している。
・コイル1Cは、f1が3.2MHzで、規定を満足している。
・市販の電磁調理器のコイル1Dは、f1が43kHzで、規定を満足していない。
・市販の電磁調理器のコイル1Eは、f1が125kHzで、規定を満足している。
なお、f1>100kHzは、アルミ鍋の加熱が可能な市販の電磁調理器に使用されている加熱周波数の上限値から規定した。また、電磁調理器に使用可能な周波数の上限値、150kHzより、最低でも、100kHzにて、加熱コイルが、Rs>Rw、を満足している必要がある。この周波数は特許文献1にも記載されている。
(2)Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数f2(Hz)が30kHz以上
・比較例としてのコイル1Aは、f2が25kHzなので規定を満足していない。
・コイル1Bは、f2が3.7MHzで、規定を満足している。
・コイル1Cは、f2が780kHzで、規定を満足している。
・市販の電磁調理器のコイル1Dは、f2が12kHzで、規定を満足していない。
・市販の電磁調理器のコイル1Eは、f2が18kHzで、規定を満足していない。
f2>30kHzは、アルミ鍋の加熱に対応していない市販の電磁調理器に使用されている加熱周波数の上限値30kHzから規定した。
(3)Rj>Rw、の関係を満足する最高周波数f3(Hz)が100kHz以上
・比較例としてのコイル1Aは、f3が30kHzなので規定を満足していない。
・コイル1Bは、f3が10MHz以上で、規定を満足している。
・コイル1Cは、f3が10MHz以上で、規定を満足している。
・市販の電磁調理器のコイル1Dは、f3が70kHzで、規定を満足していない。
・市販の電磁調理器のコイル1Eは、f3が80kHzで、規定を満足していない。
上記のように、一般に市販されている電磁調理器では、強磁性体で構成された鍋以外を加熱するのは困難である。コイル1B、コイル1Cを参照し、コイル1Eとの加熱性能を比較した実際の加熱性能の実験結果については後述する。
f3>100kHzは、アルミ鍋の加熱が可能な市販の電磁調理器に使用されている加熱周波数の上限値から規定した。この周波数は特許文献1にも記載されている。
(熱抵抗θi(℃/W)、温度Tw(℃)、周囲温度Ta(度)の説明)
次に、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、の関係について説明する。上述したように、図8にて、実際に負荷抵抗RLに電力を伝送しているときの、各コイル単体の実効直列抵抗R1、R2の値は不明である。また、図9においても、Rkの内、図5に示すコイル単体の実効直列抵抗Rwの値は不明である。すなわち、Rwを基準にする以外、コイルの熱条件を規定することができない。したがって、最低限、Rwを基準にしてコイルの熱条件を規定することが必要となる。
この発明を実施する場合において、コイルの熱抵抗θi(℃/W)は、コイルの構造や設置条件により決まる。例えば、コイルが空芯単体の場合は、θiは高い。コイルが放熱性のよい絶縁板に固定されているような場合は、θiは低くなる。コイルが動作可能な温度Tw(℃)は、コイルの構造や設置場所により決まる。素線にコーティングされている絶縁材の耐熱性が高く、放熱手段が装備された誘導加熱装置内部に組み込まれている場合などでは、例えば150℃〜300℃程度となる。コイルが設置される場所の周囲温度Ta(℃)は、誘導加熱装置内部などでは、例えば40℃〜50℃となる。ただし、加熱コイルの上面には、鍋を設置する熱遮断性の板が設置されており、加熱コイルの放熱性は悪い。また、加熱コイルの温度上昇に伴い、誘導加熱装置内部の温度が上昇するので、周囲温度Ta(℃)も上昇する。このような場合、ファンなどの放熱手段を装備した誘導加熱装置に加熱コイルを設置して熱抵抗を測定するのが好ましい。
通常、物体は、温度が高くなるほど、周囲に多くの熱を放散するため、正確には熱拡散方程式を解く必要がある。しかし、種々の構造を持つコイルについて、比熱等の熱定数を加味して熱拡散方程式を解くのは困難であるので、下記の方法により簡易的に熱抵抗θi(℃/W)を求める。
まず、加熱コイルが設置される場所にて、初期状態のコイル温度T1(℃)を求めておく。加熱コイルに、直流の定電流Id(A)を流して、コイルの両端電圧Vd(V)を計測し、Pd=Vd×Id(W)として、コイルの消費電力を求める。金属導線は温度が上がると抵抗値が増加し、コイルの両端電圧Vdが上昇するので、Vdはペンレコーダー等で記録して平均値を求めるか、A/D変換器等で逐次Vdをモニターし、平均値を取るのが望ましい。熱平衡に達したら、加熱コイルの温度T2(℃)を測定する。熱抵抗θi(℃/W)は、θi=(T2−T1)/Pd(℃/W)として求められる。この測定は、Idの電流値を変えて数回測定し、平均値として求めるのが好ましい。
このようにして求められた熱抵抗θi(℃/W)に、実際の使用条件下でのコイルの実効直列抵抗Rw(Ω)とコイルに流れる電流Ia(A)により決まる、実効直列抵抗Rw(Ω)が消費する電力、Rw×Ia(W)を掛けると、実際の使用条件下でのコイルの温度上昇値、Tr(℃)が求められる。Tr=θi×Rw×Ia(℃)となり、コイルが動作可能な温度をTw(℃)、コイルが設置される場所の周囲温度をTa(℃)とすると、Tr=Tw−Taとなり、不等式、(Tw−Ta)≧θi×Rw×Ia(℃)を満足しないと、コイルの使用可能温度を越えるので、本発明の実施が困難になる。
実効直列抵抗Rw(Ω)に関する規定、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)は、前記不等式を変形し、Rw(Ω)またはIa(A)の条件を規定している。誘導加熱が行なわれる周波数において、実効直列抵抗Rw(Ω)は、加熱コイル単体で実測して求められる変数、加熱コイルに流れる電流Ia(A)も実測して求められるか、加熱装置側においては電源条件により決まる変数で、他の、Tw(℃)、Ta(℃)、θi(℃/W)は既知の定数となる。したがって、Rw(Ω)が求められれば、Ia(A)の上限値が規定され、逆にIa(A)が決められれば、Rw(Ω)の上限値が規定される。
Rw(Ω)は、直流抵抗Rd(Ω)と交流抵抗Ra(Ω)の和であり、RdとRwは直接実測することが可能なので、Ia(A)を決定することにより、巻き数により増加する、RdとRaの和である実効直列抵抗Rw(Ω)の上限値を規定でき、実効直列抵抗Rw(Ω)と周波数の関係から、誘導加熱に使用可能な周波数範囲を規定することができる。
1V×10Aと、10V×1Aは、どちらも同じ10Wの電力であるが、コイルの実効直列抵抗による電力損失は、10Aの場合には、1Aの場合の100倍となる。電力ではなく、加熱コイルに流れる電流Ia(A)を考慮し、コイルの実効直列抵抗による電力損失を規定しないと、誘導加熱性能を改善することはできない。
前述の引用文献を含む従来技術では、コイルの特定的な構成を規定しているのみである。そして、特定的構成の一実施例のみを示すことにより、着目する特性、例えば、実効直列抵抗が低下していることを主張している。しかし、上述してきたように、外径や内径を同一にしても、線種、ターン数によりコイルの特性は全く異なってくる。すなわち、線材や巻き方などの特定的構成を規定しても、実際に作成されるコイルは種々の構成を持ち、それらが同じ効果を奏することは、何ら保証されていない。
したがって、コイルの特定的構成を規定するのみでは、誘導加熱装置のコイルとしての要件を充足するコイルを実現するのは不可能である。
本願のように、コイルの特定的構成以外の構成が変化したときの特性変化までも明確化し、コイルの作動条件を規定しない限り、誘導加熱性能のよいコイル、および誘導加熱性能のよい誘導加熱装置は実現できない。その一方で、本発明の実施形態は、誘導結合可能な種々の構成を持つコイルにおいて、各コイルの作動条件を規定することにより、誘導加熱性能のよい誘導加熱装置が実現できる。このように、本発明は、従来の技術では実現することが不可能であった極めて優れた効果を奏するものである。
(加熱コイルを誘導加熱に使用可能な周波数の説明)
なお、本発明の実施形態のコイルを誘導加熱に使用可能な周波数の上限は、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数であるf1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数であるf2(Hz)、の規定により求めることができるが、コイルを誘導加熱に使用可能な周波数の下限は、コイル単体に印加される電圧Vと、コイル単体に流れる電流Iの位相差を、80度以上と規定することにより求められる。
なお、図示していないが、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)が、67kHzのコイル1Aでは、5kHz未満まで、VとIの位相差が80度以上になっている。しかし、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1が、3.2MHzのコイル1Cでは、10kHz未満になると、VとIの位相差が80度以下となっている。
図13を参照すると、コイル1Cが、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1は、約3.2MHz、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数f2は、約780kHzである。Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)、の規定によるコイル1Bを使用可能な周波数領域は10kHz〜3.2MHz、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数f2(Hz)、の規定によるコイル1Cを使用可能な周波数領域は10kHz〜780kHzとなる。このようにして、本発明の実施形態におけるコイルを、理論上の理想的な特性に近い周波数領域で使用することが可能となる。上記のように、加熱コイルを使用可能な周波数の上限と下限を規定できる。
(その他の要因による、f1とf2の周波数)
なお、誘導加熱を行なう周波数は、電波障害などの関係上、150kHzが上限となっている。しかし、ここで考察しているのは、150kHz以下の周波数での加熱電力である。したがって、加熱コイルが、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数f2(Hz)は、高いほど好ましい。例えば、f1は500kHz以上であることが好ましい。同一のコイルで、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)が高いコイルを、リアクタンスが確保可能な周波数で使用する。例えば100kHz未満の周波数で駆動することにより、誘導加熱性能を確保できる。あるいは、一方のコイルが、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数f2が、150kHz以上であると、より好ましい。このような特性を持つ加熱コイルを使用することにより、加熱コイルに大電力を投入しても、加熱コイルの実効直列抵抗による電力損失を少なくできる。また、前記Hkの値を大きくでき、加熱効率が上がる。
(コイル1Aと、1Bの周波数特性の比較の説明)
図21は、図11に示した密接巻したコイル1A単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、図12に示した疎巻のコイル1B単体のコイル実効直列抵抗Rw(Ω)の周波数特性を比較した図である。図21に示すように、周波数が上昇したときに、疎巻のコイル1Bの方が密接巻のコイル1Aに比べて、コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)の増加を抑えることができる。また、同一外径のコイルでは、巻線の総延長が短くなるので、直流抵抗を低く抑えることができる。なお、コイル1Aとコイル1Bには同一の導線を使用している。
(単導線の線径と、コイルの実効直列抵抗の周波数特性との関係)
図22は、銅線径、0.2mm、0.4mm、0.8mm、1mmの各ホルマル線を平板状に25ターン密接巻きしたコイルの、周波数と各コイルの実効直列抵抗Rwの関係を示している。
図22より、0.2mm、0.4mm、0.8mm、1.0mmの各異なる線径のホルマル線を、同じ25回のターン数にしたコイル外径の異なるコイルでは、ホルマル線の線径が太くなるほど、周波数の上昇に伴う実効直列抵抗Rwの増加率も高いことが分かる。
(空隙の幅により実効直列抵抗の周波数特性が変化する例の説明)
図23は、0.4mmのホルマル線を25ターン巻いた場合、空隙の幅により、コイルの実効直列抵抗の周波数特性が、どのように変化するかを示す図である。空隙の幅は、0mm、0.2mm、0.4mmに設けてあるが、広い空隙の方が、周波数の上昇に伴う実効直列抵抗の増加が抑制できるのが分かる。なお、ターン数を同一としているので、空隙の幅が広くなるほどコイル外径は大きくなっており、コイルを構成する銅線の総延長が長くなっている。そのため、低い周波数では、空隙を設けない方が、コイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)は低くなっている。
ただし、渦電流損は、磁束が貫く導体体積に比例するので、単導線の最大径が0.2mm以上でないと、導線間に空隙t(mm)を設けても、周波数の上昇によるコイル単体の実効直列抵抗Rwの増加率はそれほど低下しない。図22の、線径0.2mmの単導線を密接巻きしたコイル単体の周波数と実効直列抵抗Rwの関係から見ても、線径0.2mmでは、周波数の上昇による実効直列抵抗の増加率は少なく、線径0.2mmの単導線では、空隙を設けても、実効直列抵抗Rwの周波数特性は余り改善できないのが分かる。
コイル1Bの構成から推測すると、コイル1aにおいて、導線断面が円形または長方形で、中空の導線を用い、導線間に空隙を設けて巻回することにより、コイル1aの性能を向上させることができるものと推察される。この導線の構成については後述する。また、空隙の幅は、図23から、0.2mm以上であればよい。図12に示すコイル1Bの特性より、空隙の幅は、導線外形d1(mm)を上限とすれば好ましい。
(コイルの線径と外径の関係、巻回数等について)
なお、市販の誘導加熱器に使用されているコイル1Eは、導線の断面が楕円形となっている。前記楕円形の長径は4.3mm、短径は2.8mmである。コイル1Eにおいて導線の最大径d2は4.3mm、コイルの外径Dは140mm、巻回数は22回である。コイル外径Dと導線の最大径d2の比は、140/4.3=32.5、となり、寸法公差などの余裕を見て、Dをd2の30倍以上に選び、絶縁被覆の厚さtを(d2)/30以上に選んでいる。
また、前述したコイル1Aに、線径d1と同じ空隙を設けて巻いたコイル1Bの巻回数は、14ターンである。ここも、10%程度の余裕を見て、12ターン以上の巻回数を規定している。
リッツ線の断面積中の絶縁体層は、断面に7本の素線を配し、7本の素線の前記絶縁層の規定と空気層から概略計算すると、約11%になる。
(特定的構成規定だけでは、性能がよい誘導加熱装置を実現できない説明)
上述してきたように、コイルは、例えば特定的な構成を規定するだけでは、他の構成要因を変化させることにより、実質的には無限の構成を持つ。特定的な構成を規定したコイルが、その他の特定的構成規定を要旨とする発明よりも、常に優れた誘導加熱性能を発揮する効果を奏することは証明されていない。また、証明するのは実質的に不可能である。
本発明の実施形態によってのみ、誘導加熱に適したコイルを選ぶことができるようになる。このように、本発明の実施形態は、従来例の誘導加熱コイルとは異なり、種々の実施形態における実測特性のデータを示している。誘導加熱装置の加熱コイルは、特定不能なバリエーションを持つ。そのため、任意の構成の加熱コイルにおいて誘導加熱性能を確保することは不可能である。また、従来の技術では、構成が一義的に特定された加熱コイルが、誘導加熱性能を確保可能という判断すらできない。
前述した方法により選ばれたコイルを、本発明の実施形態の要旨である特性規定による作動条件を規定することによってのみ、種々の構成を持つ誘導加熱装置の加熱コイルを使用した性能のよい誘導加熱装置が実現できる。この極めて優れた効果は、コイルの特定的構成のみを規定した従来の加熱コイルでは実現することが不可能であった。
(他の誘導加熱装置の回路構成とコイル1Bを使った実際の誘導加熱性能の一例、)
図24は、本発明のその他の実施形態における誘導加熱装置の回路構成を示すブロック図である。
図24において、直流電源6が加熱制御回路3aに接続されるとともに、直流電源6のプラス端子がスイッチング素子Q2のドレインに接続されている。スイッチング素子Q2のソースはスイッチング素子Q3のドレイン接続され、スイッチング素Q3のソースは直流電源6のマイナス端子に接続されている。スイッチング素子Q2,Q3のゲートには、加熱制御回路3aの制御出力が与えられ、加熱制御回路3aの出力に基づき、スイッチング素子Q2,Q3が交互に、ON/OFFする。スイッチング素子Q2のソースとスイッチング素子Q3のドレインとの接続点にはキャパシタ7を介して加熱コイル1の一端が接続されており、加熱コイル1の他端は参照電位である直流電源6のマイナス端子に接続されている。
キャパシタ7は、図9に示す加熱コイル1の残留リアクタンスを打ち消して力率を改善する。また、この実施形態では、Q2のソースとQ3のドレインの接続点の電圧波形は方形波である。しかし、キャパシタ7を介して加熱コイル1を駆動することにより、加熱コイル1の両端電圧、加熱コイル1に流れる電流を正弦波に近づけることができる。正弦波で加熱コイル1を駆動した場合に加熱効率がよくなることは、前述した通りである。加熱制御回路3aとスイッチング素子Q2、Q3は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路として作動する。
この例では、加熱コイル1とキャパシタ7とが直列接続された2端子回路が交流電源5に接続されている。スイッチング素子Q2は加熱制御回路3aにより制御され、ONすると電流を加熱コイル1に時間t1だけ流し出し、スイッチング素子Q2がOFFすると、スイッチング素子Q3がONして加熱コイル1から時間t2だけ電流を引き込む。この動作を交互に繰り返す。
本願発明者は、図24の回路にて、前述した図12に示すコイル1Bを加熱コイル1として使用し、底面の直径が50mm、上面の直径が70mm、深さが35mmの非磁性ステンレス製容器に50ccの脱イオン水を入れ、上面に時計皿で蓋をして加熱してみた。加熱コイルと金属容器の間隔は5mmに設定してある。駆動回路に供給される電圧は30V、駆動電流は2A、駆動回路に供給される電力は、30V×2A=60W、となる。駆動回路の出力周波数は、図17の特性図から、100kHzに設定してある。初期水温が10℃の水で、沸騰するまでの時間を計測したところ、380秒であった。1ccの水を1℃温度上昇させるには、約4.2Jのエネルギーが必要となる。50ccの水を、10℃から100℃まで温度上昇させるには、50×4.2J×90℃=18.9kJ、のエネルギーが必要となる。
1J=1W・Sであるので、50ccの水を10℃から100℃まで温度上昇させるのには、18.9kW・S、のエネルギーを必要とする。電気エネルギーを熱エネルギーに変換する効率が100%の場合、60Wの電力を投入したとして、50ccの水を沸騰させるのには、計算上、18.9kW/0.06kW=315秒、の時間がかかる。
加熱実験を行なった結果、沸騰まで、6分50秒=410秒、かかった。単純に計算すると、315/410=76.8%、の効率となる。しかし、容器からの熱放散などがあるので、後述するコイル1C、実際の電磁調理器による実験結果と比較してみる。
(コイル1Cを使った実際の誘導加熱性能の一例)
図13に示すコイル1Cを使い、コイル1Bと同じ条件で加熱実験を行なってみた。その結果、沸騰まで、6分10秒=370秒かかった。図17と図18の特性比較からも、コイル1Cの方が、コイル1Bよりも加熱性能はよい。詳細については後述する。
(コイル1Eを使った実際の誘導加熱性能の一例)
市販の電磁調理器を使い加熱実験を行なった。1.2kWの電磁調理器であるので、水量を、50cc×1200W/60W=1000cc、とし、同じく非磁性のステンレス容器を使い、加熱実験を行なった。上述したコイル1Bと同じく、計算上の沸騰時間は、315秒になる。加熱実験を行なった結果、沸騰まで、7分=420秒、かかった。
(各コイルによる実際の誘導加熱性能の検討)
コイル1B、コイル1Cを使った実験では、沸騰直後の駆動回路の温度は、45℃であり、発熱は殆ど見られなかった。また加熱コイルの温度も、50℃前後であった。一方、市販の電磁調理器では、沸騰直後の加熱コイルの温度は、85℃程度まで上昇していた。これらの温度は、全て非接触式の赤外線温度計で計測してある。
以上の実験結果から、市販の電磁調理器の加熱効率を85%と仮定すると、加熱効率が100%の場合、420×0.85=357秒、かかることになる。理論値315秒との差は、加熱容器からの熱放散などによるものと推察される。上記の357秒を加熱効率100%の場合と仮定すると、コイル1Bでは、357/410=87%、の加熱効率となる。コイル1Cでは、357/370=96.5%、の加熱効率となる。熱エネルギーへの変換効率を計測するのは簡単ではなく、加熱周波数や電力も異なるので、一概には言えないが、コイル1Bやコイル1Cを使用し、図24の回路で駆動することにより、加熱性能を従来の電磁調理器よりも向上できる可能性がある。これは、加熱コイルの温度上昇や駆動回路の温度上昇が少ないところからも推測できる。なお、駆動回路のQ2、Q3には、TO−220パッケージの、MOS−FETを、放熱板を装備せずに使用している。
(加熱実験の結果と、図16〜図20の特性図との相関について)
図16〜図20には、(Rk−Rw)/Rw、の周波数特性が共通的に図示してある。また、(Rk−Rw)/Rw、の極大値となる周波数も図示してある。(Rk−Rw)/Rw、の極大値となる周波数において、RwとRkの差が、両矢線で示してある。矢線の長さを、図16〜図20で比較すると、図18に示すコイル1Cの矢線の長さが最も長い(Rk/Rwの値が大きい)。図18では、400kHzで、(Rk−Rw)/Rw、の値が極大となっている。実際に誘導加熱に使用したのは約100kHzである。しかし、上記の実験結果は、コイル1Cの加熱性能が最もよかった。このように、RwとRkの周波数特性を計測することにより、加熱性能のよい加熱コイルが実現できる。あるいは、金属鍋の材質、厚さ、形状を選ぶことにより、特定の加熱コイルにおいて加熱性能のよい加熱用の鍋が実現できる。これらのことが、図16〜図20を見れば分かる。
(アルミ鍋の加熱実験について)
なお、メーカーの資料によると、水が入ったアルミ鍋を加熱すると、加熱コイルの温度は約300℃程度まで上昇し、加熱効率も70%程度以下にまで低下する。また、図16〜図20を参照すると、RjがRwの2倍以上となっている状態はコイル1C以外には存在しない。このような特性では、理論上、加熱効率は50%以下にしかならない、そのため、今回は、アルミ鍋の過熱実験は省略した。ただし、RjがRwの4倍程度となるように加熱コイルを設計すれば、現状よりも性能のよい電磁調理器を実現できる。すなわち、Rj/Rw>4、となるような加熱コイル、あるいは加熱鍋を実現すればよい。その意味では、単に加熱コイルの実効直列抵抗を低減することを目的とする特許文献1は、強磁性体以外の金属で構成された鍋を加熱する適切な解決方法ではない。
(断面傘型のコイルの例の説明)
図25は導線を断面傘型に巻回したコイルの断面図である。図2(A)に示したコイル1aは、導線11を平板空芯単層渦巻き状に巻回したのに対して、図25に示したコイル1bは、断面が傘型となるように空芯単層渦巻き状に形成したものである。
この場合、図25の巻き線幅D1、内径D2とし、2×D1+D2が、導線の最大外形d1の25倍以上であることを条件としている。なお、2つの巻き線幅D1を示す線がなす角度θは、180度から90度の間に設定するのが好ましい。ただし、図25において、巻き線幅D1が内径D2の概ね1/4以下で、かつ短絡したコイルが対向したときに、Rs>Rw、の関係を満足している場合には、θがゼロに近いソレノイド形状とすることもできる。このように構成した、図25に示す断面傘型のコイルを上下反対とすると、中華鍋など、底面が円形に湾曲した鍋に対応する加熱コイルになる。傘型の断面は、中華鍋の湾曲と同じように湾曲して巻回することにより、中華鍋の金属面との距離を一定にできる。なお、このように構成した加熱コイル1であるコイル1bは、同一のコイル間で誘導結合が可能な構成のコイルである。
(導体内部に絶縁層を有するコイルの例の説明)
なお、特許文献1に記載のような、素線を束ねた導線を、加熱コイルを構成する導線に使用できる。導線の構成、加熱コイルの構成は、同一のコイルを2個作成し、上述してきた本発明の実施形態のように特性を計測して、規定を満足するコイルを選ぶ。このようにして、加熱性能のよいコイルを選び、加熱性能のよい誘導加熱装置を実現できる。また、設計工数を大幅に短縮でき、加熱性能の確認工数も大幅に削減できる。
(導線の構造の説明)
図26は、この発明のその他の実施形態における誘導加熱装置のコイルを構成する導線の構造を示す図である。
図26は、パイプ状の導体17内に絶縁材料18が充填されており、パイプ内が空洞である場合に、パイプが折れて、曲げ加工ができなくなるのを防止している。なお、パイプの材質やパイプの肉厚により、パイプ自体が可撓性を持つ場合は、パイプ内が空洞であってもよい。あるいは、パイプ状の導体17の断面は楕円形、長円形、多角形であってもよい。このような構成の導線を、空隙を設けて巻くことにより、加熱コイル単体の実効直列抵抗Rwを低減し、加熱性能のよい加熱コイルが実現できる。
好ましくは、絶縁層である絶縁材料18の断面積が導体17全体の断面積の11%以上であって、加熱コイルは、絶縁材料18が設けられた導体17を単層渦巻き状に密接巻きして構成し、絶縁材料18が設けられた導体17の最大径をd1、加熱コイルの外径をDとしたとき、加熱コイルの外径Dが最大径d1の少なくとも30倍以上であり、かつ導線の巻き数が12ターン以上である。
ただし、導体17の外周部には図示されていない絶縁層が設けられており、密接して巻回する。導体17の外周部絶縁層が設けられていない場合には、導線間に0.2mm以上の空隙を設けて巻回する。この場合、巻回後に、耐熱性の高い樹脂で巻回されたコイルを固定するのが好ましい。
(ソレノイド形状のコイルについて)
上記に説明した実施形態では、スパイラル状コイルについて説明したが、円筒状の加熱容器を用い、加熱コイルをソレノイド状に構成することも当然に可能である。この場合、一方のコイルの特性を計測する他方のコイルは、一方コイルの内部に挿入可能なように直径を設定する。または他方のコイルに一方のコイルが挿入できるよう、他方のコイルの直径を設定する。他方のコイルは、直径以外の構成要因、線材、線径、ソレノイドの長さ、巻回数、巻回法などを全て同一にしておく。コイルを構成する導線に絶縁被覆が施されていない場合は、両コイルの導線の接触面に絶縁性の筒を介して、両コイル間の短絡を防止する。このように、ソレノイド状の加熱コイルを用いる場合、他方のコイルを一方のコイルと誘導結合可能なように構成すればよい。
(湯沸かし器について)
誘導加熱器は、加熱コイルと被加熱用の金属板から構成される。一方、図13に示すコイル1Cを加熱コイルに使い、図11に示すコイル1Aを金属板の代わりとして使う。この場合、図7に示すような構成となる。図7に示すコイル2を短絡すると、コイル1より伝送された磁気エネルギーは、全てR2で消費される。そのため、コイル2は、R2により、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する。高周波数では、R2>>R1、と設定することが可能なので、コイル1に投入された電力をコイル2で熱に変換できる。コイルと金属板では、前述したように全く作用効果が異なる。よって、図7に示すコイル2を構成する導線を中空とし、導線内に水を流すことにより、電気の湯沸かし器が実現できる。
(本発明に用いる金属に関する説明)
この発明の実施形態において、導線を形成する導体の材質は特に限定されないが、本実施形態にて述べている各コイルは、全て導体に銅を用いている。導体として比抵抗が小さい銅を使うのが好ましいが、比抵抗が小さい他の金属、あるいは合金を導体として使うこともできる。
(特性計測に用いた計測器)
なお、上記に説明した各コイルの実効直列抵抗やインダクタンスの測定と、各キャパシタの実効直列抵抗や静電容量の測定には、1MHzまでは、アジレント社のLCRメータ、4284A、1〜10MHzの測定には、ヒューレットパッカード社のLCRメータ、4275Aを使用した。なお、1〜10MHzの計測は、1、2、4、10MHzの各点でしか計測できないので、例えば、4MHzにて、Rs>Rw、を満足し、10MHzにて、Rs>Rw、を満足しない場合は、補間により、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数f1(Hz)を推定している。
(本発明の実施例の効果について)
上述してきた、本発明の実施形態においては、鉄などの強磁性体以外で構成された鍋、例えばアルミ鍋の加熱効率を上げるための、加熱コイルの選択、加熱周波数の選択について説明してきた。しかし、本発明は、鉄などの強磁性体で構成された鍋の加熱効率も向上させるものである。加熱電力は50W前後ではあるが、上述したように、従来の電磁調理器に比べ、加熱効率を向上できている。熱の計算は、空中に放散する熱があるため、計算精度が100%信頼できるものではない。しかし、駆動回路、加熱コイルの発熱状態から見ても、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する効率は、本発明においては95%程度に達しているものと推測できる。このように、本発明は、従来の技術に比べ、加熱効率が高く、駆動回路やコイルの発熱が少ない、安全で信頼性の高い誘導加熱器が実現できるという極めて優れた効果を奏する。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明の誘導加熱装置は、加熱コイルに対向する金属鍋を加熱するのに利用できる。具体的には、電気を熱源とする電磁調理器として利用できる。
この発明の一実施形態に係る誘導加熱装置のブロック図である。 図1に示した誘導加熱装置の加熱コイルとして使用されるコイルを示す平面図および断面図である。 図2に示したコイルの外形形状の変形例を示す図である。 変成器の入力インピーダンスを求める等価回路である。 この発明の一実施形態における誘導加熱装置の加熱コイルにおける加熱コイル単体の等価回路を示す図である。 変成器の等価回路を表す図である。 2次側コイルを短絡したときの変成器の等価回路を表す図である。 2次側コイルに負荷抵抗RLが接続されたときの変成器の等価回路を表す図である。 加熱コイルに金属板が対向したときの等価回路を表す図である。 加熱コイルに0.5mmの厚さのアルミ板が対向したときの等価回路を表す図である。 線径1mmの単導線を、外径70mmで25ターン密接巻きしたコイル1Aの、Rw、Rn、Rsと周波数の関係を示す図である。 線径1mmの単導線を、外径70mmで空隙を設けて14ターン巻いたコイル1Eの、Rw、Rn、Rsと周波数の関係を示す図である。 線径0.05mmのホルマル単導線を75本束ねたリッツ線を、外径70mmで30ターン密接巻きしたコイル1Cの、Rw、Rn、Rsと周波数の関係を示す図である。 線径0.45mmのホルマル線を40本束ね、導線外径が4mmに作成したリッツ線を、外径140mmに22ターン密接巻きしたコイル1DのRw、Rn、Rs、krと周波数の関係を示す図である。 線径0.35mmのエナメル線を50本束ね、導線外径が4mmに作成したリッツ線を、外径140mmに22ターン密接巻きしたコイル1EのRw、Rn、Rs、krと周波数の関係を示す図である。 コイル1Aの、Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、と周波数との関係を示す図である。 コイル1Bの、Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、と周波数との関係を示す図である。 コイル1Cの、Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、と周波数との関係を示す図である。 コイル1Dの、Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、と周波数との関係を示す図である。 コイル1Eの、Rw、Rk、Rj、(Rk−Rw)/Rw、と周波数との関係を示す図である。 図11に示した密接巻のコイル1Aと、図12に示した疎巻のコイル1Bとの実効直列抵抗Rwが、周波数の上昇により増加する状態を比較して示した図である。 0.2mm、0.4mm、0.8mm、1mmのホルマル単導線を平板状に25回巻いたコイルの周波数と、各コイルの実効抵抗Rwの関係を示す図である。 線径0.4mmのホルマル線を、0、0.2mm、0.4mmの空隙幅を設けて25ターン巻いた各コイルのRwと周波数との関係を示す図である。 本発明のその他の実施形態である誘導加熱装置の駆動回路を示すブロック図である。 導線を断面傘型に巻回したコイルの断面図である。 パイプ状の導体内に絶縁材料が充填されている導体の断面図である。 誘導加熱器の概略ブロック図である。 誘導加熱器に用いられるコイルの一例を示す図である。 誘導加熱器の加熱コイルに金属板が近接した時の等価回路図である。 キャパシタの等価回路図である。
符号の説明
1,1a,2 コイル、3,3a 加熱制御回路、4,7 キャパシタ、5 交流電源、6 直流電源、11 導線、12 導体部、13 絶縁被覆、20 金属板、21 アルミ板、Q1,Q2,Q3 スイッチング素子。

Claims (15)

  1. 導線を巻回して構成される加熱コイルを少なくとも含み、
    前記加熱コイルに近接している金属体を加熱する誘導加熱装置において、
    同一の前記加熱コイル2個を対向させ、
    前記対向するコイルのうち、
    一方のコイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、
    前記一方のコイルに対向する他方のコイルを短絡したときの、前記一方のコイルの実効直列抵抗をRs(Ω)、
    前記一方のコイルが、Rs>Rw、の関係を満足する最高周波数をf1(Hz)、としたときに、
    前記f1が、100kHz以上となるように、前記加熱コイルが選ばれており、
    前記加熱コイルを、前記f1(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)で駆動する、誘導加熱装置。
  2. さらに、前記誘導加熱装置は、直流電力を交流電力に変換する電力変換手段である交流電源を含み、
    前記交流電源の出力周波数をfa(Hz)、としたときに、
    前記fa(Hz)を前記f1(Hz)未満の周波数に設定した、請求項1に記載の誘導加熱装置。
  3. さらに、前記一方のコイルに対向する他方のコイルを開放したときの、前記一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)、
    前記一方のコイルが、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する最高周波数をf2(Hz)、としたときに、
    前記加熱コイルを、前記f2(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)で駆動する、請求項1または2に記載の誘導加熱装置。
  4. さらに、前記一方のコイルに、常磁性または反磁性の磁気的性質を持つ、厚さが0.5mm以上の金属または合金で構成された金属板が対向したときの、前記一方のコイルの実効直列抵抗をRj(Ω)、
    前記一方のコイルが、Rw>Rj、を満足する最高周波数をf3(Hz)、とすると、
    前記f3が100kHz以上となるように、前記加熱コイルが選ばれており、
    前記加熱コイルを、前記f3(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)で駆動する、請求項1から3のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  5. さらに、前記Rjと前記Rwの比Hjを、Hj=Rj/Rw、とすると、
    少なくとも150kHz以下の周波数領域に、
    前記Hjの値が2以上となる周波数領域が存在する、請求項4に記載の誘導加熱装置。
  6. さらに、前記加熱コイルの熱抵抗をθi(℃/W)、
    前記加熱コイルの許容動作温度をTw(℃)、
    前記加熱コイルが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、
    前記加熱コイルに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、
    Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、
    なる関係を、前記加熱コイルが満足するように、前記加熱コイルの作動条件を設定した、請求項1から5のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  7. 前記加熱コイルはスパイラル状に構成されている、請求項1から6のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  8. 前記一方のコイルである加熱コイルは、ソレノイド状に構成され、
    前記他方のコイルが前記一方のコイルと誘導結合可能に構成されている、請求項1から6のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  9. 前記加熱コイルを形成する導線には、前記導線内部に絶縁体層が設けられ、
    前記絶縁体層の断面積が導線全体の断面積の11%以上であって、
    前記加熱コイルは、前記絶縁体層が設けられた導線を単層または多層渦巻き状に密接巻きして構成されており、
    前記絶縁体層が設けられた導線の最大径をd1、前記前記加熱コイルの外径をDとしたとき、
    前記加熱コイルの外径Dが前記最大径d1の少なくとも30倍以上であり、かつ導線の巻き数が12ターン以上である、請求項1から8のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  10. 前記導線は、それぞれに絶縁被覆が施された複数の単導線の集合体で構成され、かつ、前記単導線中の導体の最大径をd2としたときに、
    d2が0.3mm以下であって、前記絶縁被覆の厚さtが(d2)/30以上に選ばれている、請求項9に記載の誘導加熱装置。
  11. 前記導線の最大外径をd1、とすると、
    隣接する導線間に設ける空隙を、0.2mm以上、d1以下に設定した、請求項1から10のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  12. さらに、前記加熱コイルに被加熱用金属体が近接したときの、前記加熱コイルの実効直列抵抗をRk(Ω)、
    前記Rwと前記Rmの比Hkを、Hk=(Rk−Rw)/Rw、とすると、
    150kHz以下の周波数領域において、
    前記Hkの値が1以上であり、
    かつ前記Hkの値が極大となるように、前記fd(Hz)が設定されている、請求項1から11のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  13. 前記加熱コイルに、力率改善用キャパシタを接続した、請求項1から12のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  14. 前記加熱コイルの少なくとも一方の端子にキャパシタが直列接続され、
    前記加熱コイルと前記キャパシタが直列接続された2端子回路が、前記交流電源に接続されており、
    前記交流電源は、
    電流を流し出す第1の半導体素子と、
    電流を引き込む第2の半導体素子と、を含み、
    前記交流電源の出力は、前記2端子回路に電流を流し出す時間t1と、
    前記2端子回路から電流を引き込む時間t2と、を交互に有する、請求項2に記載の誘導加熱装置。
  15. 請求項1に記載の誘導加熱装置によって加熱される金属または合金から成る加熱用容器であって、
    前記加熱コイルに前記金属容器が対向したときの、前記一方のコイルの実効直列抵抗をRk(Ω)、
    前記Rwと前記Rkの比Hkを、Hk=(Rk−Rw)/Rw、とすると、
    前記被加熱用の金属容器は、
    150kHz以下の周波数領域で、前記Hkの値が極大となるように、
    前記金属または前記合金の材質および厚さと、
    前記容器の形状と、が選ばれている、誘導加熱装置に使用される加熱容器。
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