JP2009136181A - 物質が有する催奇形性誘発活性の検定方法 - Google Patents

物質が有する催奇形性誘発活性の検定方法 Download PDF

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直輝 小関
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Abstract

【課題】物質が有する催奇形性誘発活性の新規な検定方法を提供する。
【解決手段】以下の工程(a)、(b)および(c):(a)心筋分化能を有する多能性幹細胞から心筋細胞様細胞への分化誘導過程において、当該細胞と被験物質とを接触させる第一工程、(b)第一工程の後、分化誘導後の心筋細胞様細胞における細胞外電場電位または活動電位を測定する第二工程、(c)第二工程の測定結果を、被験物質を接触させない対照細胞における測定結果と比較することにより得られる差異に基づき、被験物質の催奇形性誘発活性の有無又はその程度を評価する第三工程、を有することを特徴とする、物質が有する催奇形性誘発活性の検定方法等。
【選択図】図1

Description

本発明は、物質が有する催奇形性誘発活性の検定方法等に関する。
催奇形性(teratogenicity)とは、ある物質が生物の発生段階において奇形を生じさせる性質、作用のことを言い、薬剤等の投与によって誘発される副作用のうち最も重篤なものの一つである。これら催奇形性はサリドマイドを初めとする種々の薬剤や化学物質によって引き起こされるが、その重篤さゆえ、催奇形性を有すると判断される薬剤はしばしば医薬品としての開発を断念したり、臨床での使用が制限されたりする場合もある。従って被験物質が有する催奇形性誘発活性を検定することは、被験物質の毒性スクリーニングにとって重要なステップと考えられる。
催奇形性誘発活性の検定方法としては、従来より、げっ歯類や非げっ歯類等の実験動物を用いた方法が広く実施されており、例えば医薬品の製造承認申請時にも原則としてこれらの方法を用いた試験成績を添付する必要がある(非特許文献1を参照)。使われている検定方法としては、マウス・ラット等のげっ歯類およびウサギ・サル等の非げっ歯類を用い、器官形成期の妊娠動物へ被験物質を投与し、得られた胎児或いは出生児に、主として形態的な異常を惹起するかどうかを検出するものである。またin vitroにおける各種検定法も考案されており、その代表的なものには胎児の全胚培養系を用いた検定法やマイクロマスを用いた検定方法等が挙げられる(非特許文献2〜5を参照)。
また近年では、胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell, 以下ES細胞と略する)を用いた催奇形性活性の検定方法が考案されている(非特許文献6、7を参照)。当該方法は既にEuropean Centre for the Validation of Alternative Methods(ECVAM)によってバリデーション試験が実施され、in vivoで得られた催奇形性誘発活性との相関も良好であることが報告されている(非特許文献8を参照)。さらに心筋特異的なプロモーターであるα-アクチンの下流にGreen Fluorescent Protein(GFP)を導入したES細胞を作成し、GFP発現量を指標として被験物質による催奇形性活性を検定するレポーターアッセイ法を用いた検定法も報告されている(非特許文献9および特許文献1〜3を参照)。
しかしながらこれらの検定方法のうち、実験動物を用いたin vivoでの催奇形性活性の検定方法については、一定期間の実験動物への投与が必要となることより、試験成績を得るまでに時間を要する、少量の被験物質を用いた化合物スクリーニングには適していない等の問題を有している。前記手法の問題点を解決するために考案された胎児の全胚培養系やマイクロマスを用いた方法等のin vitroでの検定法については、実験毎に実験動物より胎児等を摘出する必要がある、培養液は原則100%血清を用いる必要がある、一般に普及していない特殊な回転培養機器が必要である、さらには胚やマイクロマスは一般に24〜48時間程度しかin vitroで維持できないため器官形成期を通じた被験物質曝露は困難である、等の課題を有している。
また前記のES細胞を用いた検定法では、用いられている評価項目の一つが顕微鏡下でES細胞から分化させた心筋細胞様細胞の拍動を目視で確認し、被験物質の心筋分化への影響を指標とするものである。当該評価項目は目視での観察が必要となり、評価結果が定量性に欠ける、また多検体を一度に評価するスクリーニング試験には適さない等の問題を有している。さらに心筋特異的プロモーターの下流にGFPを導入したES細胞を用いる検定法では、選択されたプロモーター(α-アクチン)の心筋分化に対する特異性が明確でない等の問題点が指摘されている。このような状況から、簡便かつ定量性の高い新たな評価系の開発が望まれている状況にあった。
国際公開第02/051987号パンフレット 国際公開第05/00662号パンフレット EP1002080号公報
平成6年7月7日 薬審第470号 Archives of Toxicology Supplement,11,105-114,1987 Alternatives to Laboratory Animals (ATLA) 23, 868-882,1995 Alternatives to Laboratory Animals (ATLA) 32,245-274,2004 Alternatives to Laboratory Animals (ATLA) 32,275-307,2004 Toxicology in Vitro 13,675-681,1999 ALTEX 22, 47-57,2005 Alternatives to Laboratory Animals (ATLA) 32,209-244, 2004 Toxicology in Vitro 15,215-223,2001
本発明の目的は、簡便かつ定量的に、物質が有する催奇形性誘発活性を検定することのできる、新規な検定方法を提供することにある。
本発明者は、物質が有する催奇形性誘発活性の新たな検定方法について鋭意検討した。その結果、ES細胞から分化させた心筋細胞様細胞の拍動を目視観察するのではなく、心筋細胞様細胞の細胞外における電場電位(field potential)を測定することより、簡便かつ定量的に、催奇形性誘発活性を検定できることを見出した。
すなわち従来は、神経組織等の電気生理学的な測定に用いられてきた、細胞外電場電位の測定装置を本発明に転用し、ES細胞から分化させた心筋細胞様細胞の細胞外電場電位を測定したところ、催奇形性誘発物質の用量依存的に、催奇形性誘発活性を検定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の検定方法は、従来法である、ES細胞から分化させた心筋細胞様細胞の拍動を目視で確認する方法に比して、客観的かつ定量的に物質が有する催奇形性誘発活性を検定することができる。また、多検体を一度に評価するスクリーニング試験にも適用可能であるという利点も有する。さらに本発明の検定方法は、細胞外電場電位のみならず、活動電位を測定することによっても、同様の検定を行うことが可能である。
本発明は以上のような知見に基づき完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、
1) 物質が有する催奇形性誘発活性の検定方法であって、
(a)心筋分化能を有する多能性幹細胞から心筋細胞様細胞への分化誘導過程において、当該細胞と被験物質とを接触させる第一工程、
(b)第一工程の後、分化誘導後の心筋細胞様細胞における細胞外電場電位または活動電位を測定する第二工程、
(c)第二工程の測定結果を、被験物質を接触させない対照細胞における測定結果と比較することにより得られる差異に基づき、被験物質の催奇形性誘発活性の有無又はその程度を評価する第三工程、
を有することを特徴とする、検定方法、
2) 細胞外電場電位の測定が、多電極アレイ法により行われるものである、前記1)記載の検定方法、
3) 活動電位の測定が、微小電極法またはパッチクランプ法により行われるものである、前記1)記載の検定方法、
4) 催奇形性誘発活性を有さない物質を接触させた対照細胞における測定結果と比較し、被験物質を接触させた細胞における電場電位または活動電位の測定値が、当該対照細胞における測定値に比して低下していることを指標として行われる、前記1)〜3)いずれか記載の検定方法、
5) 催奇形性誘発活性を有する物質を探索するための方法である、前記1)〜4)いずれか記載の検定方法、ならびに
6) 心筋分化能を有する多能性幹細胞がES細胞である、前記1)〜5)いずれか記載の検定方法、に関する。
本発明により、物質が有する催奇形性誘発活性を簡便かつ定量的に検定することができる。また多検体を一度に評価することも可能である。従って本発明の測定系は、医薬品や食品添加物の開発における催奇形性誘発物質のスクリーニングに有効に用いられる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、以下の工程(a)、(b)および(c):
(a) 心筋分化能を有する多能性幹細胞から心筋細胞様細胞への分化誘導過程において、当該細胞と被験物質とを接触させる第一工程、
(b) 第一工程の後、分化誘導後の心筋細胞様細胞における細胞外電場電位または活動電位を測定する第二工程、
(c) 第二工程の測定結果を、被験物質を接触させない対照細胞における測定結果と比較することにより得られる差異に基づき、被験物質の催奇形性誘発活性の有無又はその程度を評価する第三工程、
を有することを特徴とする、物質が有する催奇形性誘発活性の検定方法を提供する。
本発明方法において用いられる「心筋分化能を有する多能性幹細胞」とは、心筋へ分化する能力を有する多能性幹細胞であれば、如何なる細胞であっても本発明の検定方法に用いることができる。具体的には、例えばES細胞(Embryonic Stem Cell)、体細胞由来のiPS細胞(Induced Pluripotent Stem Cell)、EC細胞(Embryonic Carcinoma Cell)、EG細胞(Embryonic Germ Cell)、または間葉系幹細胞などが挙げられる。好ましくはES細胞が挙げられる。
ES細胞としては、マウス、サル、またはヒト由来のES細胞を挙げることができる。ここでマウスES細胞としては、例えばATCCから市販されているマウスES細胞(ES-D3: ATCC No.CRL-1934、ES-E14TG2a:ATCC No.CRL-1821)や、DSファーマバイオメディカルから市販されているマウスES細胞(129SV: Cat.No.R-CMTI-1A、C57/BL6: Cat.No.R-CMTI-2A)を用いることができる。またRF8細胞(Meiner,V. et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93: 14041-14046(1996))、JI細胞(Li,E. et al.,Cell,69:915-926(1992))、CGR8細胞(Nichols,J. et al., Development,110:1341-1348(1990))、MG1.19細胞(Gassmann,M. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,92:1292-1296(1995))なども用いることができる。
またヒトES細胞としては、KhES-1、KhES-2あるいは KhES-3(以上、京大再生研附属幹細胞医学研究センター)などが挙げられ、またサルES細胞としてはカニクイザルES細胞(田辺三菱製薬)を挙げることができる。
体細胞由来のマウスiPS細胞は、Takahashi et al., Cell,126, p1-14(2006)に従い作製することができ、またヒトiPS細胞は、Takahashi et al., Cell,131, p1-12(2007)に従い作製することができる。
EC細胞としては、マウスまたはヒト由来のEC細胞を挙げることができる。マウスEC細胞としては、例えばATCCから市販されているマウスEC細胞(P19:ATCC No.CRL-1825、NFPE:ATCC No. CRL-2069)を用いることができる。またヒトEC細胞としては、例えばATCCから市販されているヒトEC細胞(NCCIT:ATCC No.CRL-2073)を用いることができる。
胚性生殖細胞由来のマウスEG細胞は、Matsui eta al., Cell,70, p841-847(1992)に従い作製することができる。
間葉系幹細胞としては、マウスまたはヒト由来の間葉系幹細胞を挙げることができる。マウス間葉系幹細胞としては、例えばJCRB細胞バンクより分譲されているマウス骨芽細胞様株(KUM3:JCRB No.JCRB1134)を用いることができる。またヒト間葉系幹細胞としては、例えばタカラバイオから市販されているヒト間葉系幹細胞(ヒト間葉系幹細胞(hMSC, human Mesenchymal Stem Cell)Cat.No.:PT034)を用いることができる。
以下、心筋分化能を有する多能性幹細胞の代表的なものとして、ES細胞を例にとり説明するが、本発明は当該ES細胞に限定されるものではない。
本発明検定方法の第一工程(工程(a))においては、ES細胞を心筋細胞様細胞へ分化させる過程において、当該細胞に被験物質を接触させる。
ここで被験物質とは、催奇形性誘発活性を測定したい物質であり、具体的には医薬品の候補物質が挙げられる。
当該ES細胞と被験物質との接触時間としては、例えば、12時間以上を、好ましくは12時間以上10日間以内を挙げることができる。当該接触系における保温温度としては、例えば、20℃〜40℃程度を、好ましくは35℃〜40℃程度を挙げることができる。
ES細胞から心筋細胞様細胞への分化誘導は、例えばES細胞の未分化維持に必要なLeukemia Inhibitory Factor(以下、LIF)の非添加培養液(血清含有)を用い、フィーダー細胞の非存在下でES細胞を培養することにより行うことができる。
本発明方法の第一工程における接触系内での被験物質の濃度としては、例えば、0.01μM〜100 mM程度を、好ましくは0.1μM〜10 mM程度を挙げることができる。また本発明方法の第一工程における接触系内での前記培養細胞の密度としては、例えば、1×104 cell/mL〜1×105 cell/mL程度を、好ましくは3.75×104 cell/mL〜5×104 cell/mL程度を挙げることができる。
本発明方法の第二工程(工程(b))においては、前記第一工程で分化誘導させた心筋細胞様細胞における、細胞外の電場電位または活動電位を測定する。
ここで細胞外の電場電位を測定する方法としては、例えば多電極アレイ法(Advances in Network Electrophysiology Using Multi-Electrode Arrays, Springer, 2006, ISBN 10:0-387-25857-4)などの公知の方法が例示される。当該多電極アレイ法は、例えばアルファメッドサイエンス社のMED64 systemや、Multi Channel Systems(マルチチャンネル システムズ)社のマルチ電極アレーシステム、QTスクリーンシステムなどの装置を用いて実施することができる。
また活動電位(action potential)を測定する方法としては、例えば微小電極法やパッチクランプ法(新パッチクランプ実験技術法、岡田泰伸編、吉岡書店、2001、ISBN 4-8427-0296-6)などの公知の方法が例示される。当該微小電極法は、例えばMolecular Devices(モレキュラーデバイス)社の電気生理システムや AXON INSTRUMENTS(アクソン インスタルメンツ)社の電気生理システムなどを用いて実施することができる。またパッチクランプ法は、HEKA社のパッチクランプシステムなどを用いて実施することができる。
細胞外電場電位または活動電位の測定により得られた数値は、周知の数学的または統計学的処理を施すことができる。例えば下記の計算式に従って、ES培養から心筋細胞様細胞への分化誘導率を求めることができる。
ES細胞の心筋細胞様細胞への分化誘導率(以下、分化誘導率と略)(%) =
(被験物質添加において電場電位または活動電位が検出された胚様体数/被験物質添加において電場電位または活動電位の測定を行った全胚様体数)×100
本発明方法の第三工程(工程(c))においては、第二工程の測定結果を、被験物質を接触させない対照細胞における測定結果と比較することにより得られる差異に基づき、被験物質の催奇形性誘発活性の有無又はその程度を評価する。
ここで「被験物質を接触させない対照細胞」とは、(1)被験物質の代わりに、催奇形性誘発活性を有さないことが既知である物質を接触させた細胞(以下、陰性対照細胞)、または(2)被験物質の代わりに、催奇形性誘発活性を有することが既知である物質を接触させた細胞(以下、陽性対照細胞)、のいずれであっても良い。
ここで「催奇形性誘発活性を有さないことが既知である物質」とは、培養液、溶媒(PBS、生理食塩水、DMSOなど)などが例示される。また「催奇形性誘発活性を有することが既知である物質」とは、バルプロ酸、ベラパミルなどが例示される。
以下、陰性対照細胞または陽性対照細胞を用いた本発明の検定方法の具体例を示す。
(1)陰性対照細胞を用いた場合
陰性対照細胞を用いた場合は、被験物質を接触させた細胞を用いて前記工程(a)〜(c)を実施することにより得られた測定結果を、陰性対照細胞を用いて前記工程(a)〜(c)を実施することにより得られた測定結果と比較し、その差異に基づいて、被験物質が催奇形性誘発活性を有するか否か、またはその程度を評価する。具体的には、当該陰性対照細胞における測定値に比して、被験物質を接触させた細胞における測定値が、低下していることを指標として行われる。例えば上記式における分化誘導率の場合、被験物質接触細胞における分化誘導率が、陰性対照細胞における分化誘導率に比して20%以上の低下を示す物質、より好ましくは40%以上の低下を示す物質を、催奇形性誘発活性を有する物質として判定する。一方、被験物質接触細胞における分化誘導率が、陰性対照細胞における分化誘導率に比して20%以内の低下を示す物質、より好ましくは陰性対照細胞と同程度の分化誘導率を示す物質を、催奇形性誘発活性を有しない物質として判定する。
(2)陽性対照細胞を用いた場合
陽性対照細胞を用いた場合は、被験物質を接触させた細胞を用いて前記工程(a)〜(c)を実施することにより得られた測定結果を、陽性対照細胞を用いて前記工程(a)〜(c)を実施することにより得られた測定結果と比較し、その差異に基づいて、被験物質が催奇形性誘発活性を有するか否か、またはその程度を評価する。具体的には、当該陽性対照細胞における測定値に比して、被験物質を接触させた細胞における測定値が、同等かまたは増加していることを指標として行われる。例えば上記式における分化誘導率の場合、被験物質接触細胞における分化誘導率が、陽性対照細胞における分化誘導率に比して40%以内の増加を示す物質、より好ましくは20%以内の増加を示す物質を、催奇形性誘発活性を有する物質として判定する。一方、被験物質接触細胞における分化誘導率が、陽性対照細胞における分化誘導率に比して60%以上、より好ましくは80%以上の増加を示す物質を、催奇形性誘発活性を有しない物質として判定する。
本発明の検定方法においては、陰性対照細胞、陽性対照細胞のいずれを対照に用いて評価しても良く、また両細胞を対照に用いて評価してもよい。
本発明の検定方法を用いることにより、催奇形性誘発物質を探索することができる。具体的には、本発明の検定方法により評価された催奇形性誘発活性に基づき、催奇形性誘発活性を有する物質を選抜することが可能である。尚、当該物質は、催奇形性誘発活性を有する限り、低分子化合物、蛋白質、ペプチド、ワクチン又は感染性病原体等のいかなる物質であってもよい。
さらに本発明の検定方法は、催奇形性誘発活性を有しない物質の探索にも利用することができる。具体的には、本発明の検定方法により評価された催奇形性誘発活性に基づき、催奇形性誘発活性を有しない物質を選抜することが可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
細胞外電場電位の測定に基づく催奇形性誘発活性の検定
1.マウス・ES細胞の調製および処理
細胞はATCC(American Type Culture Collection)から購入したマウス・ES細胞(ES-D3, ATCC No. CRL.1934)を使用した。当該培養細胞をフィーダー細胞(初代マウス胚繊維芽細胞,DSファーマバイオメディカル,Cat No. R-PMEF-N)上で、下記培養液1を用いて37℃、5%CO2の条件下にてゼラチンコートした25cm2フラスコ上で培養し、未分化状態にて維持した。さらに数代培養した後、フィーダー細胞を除去した状態で下記培養液2を用いて、37℃、5%CO2の条件下にてゼラチンコートした25cm2フラスコ上で培養し、未分化状態にて維持した。
培養液1としては、Dulbecco's modified Eagle's medium(DMEM, GIBCO社製) 500mLに下記の成分が添加されたもの(未分化培地)を用いた。
・Fetal Bovine Serum(FBS):15%(V/V)
・ペニシリン(最終濃度:100 U/mL)-ストレプトマイシン(最終濃度:100μg/mL)
・Leukemia Inhibitory Factor(以下、LIF):1000 U/mL
・非必須アミノ酸:1%(W/V)
・ヌクレオシド:1%(W/V)
・β2-メルカプトエタノール:0.1 mM
・L-グルタミン:2 mM
培養液2としては、CultiCell Medium for Embryonic Stem Cells(CultiCell, ステムセルサイエンス社製)500mLに下記の成分が添加されたもの(未分化培地)を用いた。
・ペニシリン(最終濃度:100 U/mL)-ストレプトマイシン(最終濃度:100 μg/mL)
・Leukemia Inhibitory Factor(以下、LIF):1000 U/mL
・β2-メルカプトエタノール:0.1 mM
2.マウス・ES細胞からの分化誘導
上記で未分化状態にて維持したES細胞より、常法に従ってTrypsin-EDTAを用いてES細胞を回収した。ピペッティングにより単一細胞とし、上記培養液1からLIFを除いた培養液(分化培地)に変更した後、3.75×104 cell/mLに希釈して20μL/dropの液量で常法に従ってディッシュ蓋へハンギングを行った。なお分化培地には、催奇形性誘発活性を有することが知られているバルプロ酸(Valproic acid sodium salt,シグマ アルドリッチ,Cat No.P4543)を終濃度10、30、100μg/mLとなるように予め添加するか、またはベラパミル(Verapamil hydrochloride,シグマ アルドリッチ,Cat No.V4629)を終濃度0.1、0.3、1μg/mLとなるように予め添加した。3日間培養を継続し、胚様体を形成させた。その後胚様体を回収し、非接着性の96wellプレート(セルタイトスフェロイド,住友ベークライト,Cat No.MS-0096S)を用いて上記濃度のバルプロ酸またはベラパミルを予め添加した分化培地にて7日間浮遊培養を行うことにより、分化誘導を行った。
3.胚様体の多点電極プローブ上での測定
上記で浮遊培養した分化誘導後の胚様体を回収し、多点電極プローブ(アルファメッドサイエンス社製、カタログNo. MED-P210A)上に胚様体を載せ、電場電位についてMED64システム(アルファメッドサイエンス社製)を用いて測定した。電場電位の形成があった場合は図1の1、無かった場合は図1の2のような波形パターンが示された。次に、以下の式に従いES培養から心筋細胞様細胞への分化誘導率を求めた。
分化誘導率(%)=(バルプロ酸またはベラパミル添加において電場電位または活動電位が検出された胚様体数/バルプロ酸またはベラパミル添加において電場電位または活動電位の測定を行った全胚様体数)×100
バルプロ酸で催奇形性を誘発した場合の結果を図2に、ベラパミルで催奇形性を誘発した場合の結果を図3に、それぞれ示す。
図2および図3より明らかなように、催奇形性誘発活性を有することが知られているバルプロ酸およびベラパミルのいずれを添加した場合も、用量依存的に、心筋細胞様細胞への分化誘導率の減少が認められた。これらの結果により、ES細胞の分化誘導後の心筋細胞様細胞における細胞外電場電位を測定することによって、催奇形性誘発活性を定量的に検定できることが明らかとなった。
本発明により、物質が有する催奇形性誘発活性を従来より簡便かつ定量的に検定するための方法が提供可能になった。
図1は、(1)電場電位の形成があった場合、および(2)なかった場合、の波形パターンの一例を示す。バルプロ酸を最終濃度30および100μg/mL、ベラパミルを最終濃度0.3および1μg/mLとなるように添加した場合、電場電位の形成がなかった場合(2)の波形パターンが用量依存的に増加した。 図2は、バルプロ酸の最終濃度0(溶媒対照)、10、30および100μg/mLにおける心筋細胞様細胞への分化誘導率を示したグラフである。グラフ中のエラーバーは、標準偏差を示す。用量依存的に心筋細胞様細胞への分化誘導率の減少が認められた。尚、100μg/mLの場合は分化誘導率0%であった。 図3は、ベラパミルの最終濃度0(溶媒対照)、0.1、0.3および1μg/mLにおける心筋細胞様細胞への分化誘導率を示したグラフである。グラフ中のエラーバーは、標準偏差を示す。用量依存的に心筋細胞様細胞への分化誘導率の減少が認められた。

Claims (4)

  1. 物質が有する催奇形性誘発活性の検定方法であって、
    (a)心筋分化能を有する多能性幹細胞から心筋細胞様細胞への分化誘導過程において、当該細胞と被験物質とを接触させる第一工程、
    (b)第一工程の後、分化誘導後の心筋細胞様細胞における細胞外電場電位または活動電位を測定する第二工程、
    (c)第二工程の測定結果を、被験物質を接触させない対照細胞における測定結果と比較することにより得られる差異に基づき、被験物質の催奇形性誘発活性の有無又はその程度を評価する第三工程、
    を有することを特徴とする、検定方法。
  2. 催奇形性誘発活性を有さない物質を接触させた対照細胞における測定結果と比較し、被験物質を接触させた細胞における電場電位または活動電位の測定値が、当該対照細胞における測定値に比して低下していることを指標として行われる、請求項1記載の検定方法。
  3. 催奇形性誘発活性を有する物質を探索するための方法である、請求項1または2記載の検定方法。
  4. 心筋分化能を有する多能性幹細胞がES細胞である、請求項1〜3いずれか記載の検定方法。
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JP2013522649A (ja) * 2010-03-22 2013-06-13 ステミナ バイオマーカー ディスカバリー, インコーポレイテッド ヒト幹細胞様細胞及びメタボロミクスを使用した医薬のヒト発生毒性の予測

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JP2013522649A (ja) * 2010-03-22 2013-06-13 ステミナ バイオマーカー ディスカバリー, インコーポレイテッド ヒト幹細胞様細胞及びメタボロミクスを使用した医薬のヒト発生毒性の予測
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