JP2009134504A - 粒子挙動解析装置、プログラム - Google Patents

粒子挙動解析装置、プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】広い解析領域においても、粒子挙動解析を精度よく現実的な計算時間で実施することができるようにする。
【解決手段】解析対象空間に配置された解析対象粒子の、連続体としての性質が強い領域と個々の粒子としての性質が強い領域とを、解析対象空間中の解析対象粒子の密度や充填率などの数に関する判断指標に基づき切り分ける(S210,S212,S216)。解析対象粒子が、連続体としての性質が強い領域と個々の粒子としての性質が強い領域との間を移動したとき、物性を移動前の状態から移動後の状態に適した物性に変換する(S214,S218)。処理ステッップごとに、解析対象粒子が、連続体としての性質が強い領域に存在するときには連続体として取り扱う挙動解析を行なうとともに、個々の粒子としての性質が強い領域に存在するときには個々の粒子として取り扱う挙動解析を行なう(S220〜S226)。
【選択図】図7

Description

本発明は、粒子挙動解析装置およびプログラムに関する。より詳細には、粉体の性質を呈する粒子の挙動をシミュレーションにより解析する仕組みに関する。たとえば、プリンタ装置、ファクシミリ装置、あるいはそれらの機能を有する複合機などの画像形成装置において使用される粉体(トナー粒子やキャリア粒子など)などにおける、1種もしくは複数種の粒子が混合された状態での粒子の挙動をシミュレーションにより解析する仕組みに関する。
たとえば、プリンタ装置、ファクシミリ装置、あるいはそれらの機能を有する複合機などの画像形成装置において、電子写真方式を利用する場合、一般的には、感光ドラムなどの光導電性絶縁体上に一様な静電荷を与え、様々な手段によりこの光導電性絶縁体上に光像を照射することによって静電潜像を形成し、次いで、形成した潜像を現像器を用いて磁性粉体を用いて現像可視化し、紙などの記録媒体にトナー粉像を転写した後に定着させ、印刷物を得る。
このような電子写真法による画像形成装置においては、容器に収容されている磁性粉体の攪拌や磁性ローラへの搬送、磁性ローラへの吸着、記録画像に応じて帯電され潜像が形成されている感光体への飛翔などの振る舞いが記録画像の画質に影響を与える。そこで、この磁性粉体の挙動の解析が電子写真装置本体や現像装置の開発にとって重要となる。
粉体や粒体(何れも個々の粒子の集合体の意味である)などにおいて個々の粒子の挙動シミュレーションについては、個別要素法あるいは離散粒子法と呼ばれる方法が普及されている。個別要素法は粉体を構成する個々の粒子の挙動を運動方程式に基づいて追跡することにより、精度よく粉体の挙動をシミュレートする方法である。粉体の性質を個々の粒子として取り扱う粒子挙動解析を粒子シミュレーションとも称する。
この個別要素法を現像プロセス中のキャリアとトナー粒子に適用してトナー粒子が感光体上の潜像に飛翔してトナー像を形成する過程や転写プロセス中のトナー粒子に適用して感光体上のトナー像が転写部材に転写される過程を解析することができる。これにより、電子写真プロセスの高精度シミュレーションが期待できる。
しかしながら、個別要素法を電子写真プロセスで用いる現像装置内の現像剤の挙動解析に適用する場合、現像ロールに現像剤が吸着搬送されるピックアップ領域、層形成領域、現像ニップ領域、ピックオフ領域に比べて、搬送領域(攪拌部)の現像剤量が極めて多く、挙動計算が膨大になる。粒子数が膨大になるため、現実的な計算時間で粒子挙動計算することが困難になる。
このような問題を解決する一手法として、流体解析を粉体挙動の解析に適用する手法が考えられている(たとえば、非特許文献1、特許文献1〜4を参照)。
植木平吾,三矢輝章,詫間康夫,片岡薫著、"流体モデルを用いた現像容器内シミュレーション・定着システムの熱解析"、日本画像学会誌,第43巻,第3号(2004),p180−185 特開平05−054016号公報 特開平06−110870号公報 特開平08−204178号公報 特開平10−185755号公報
非特許文献1に記載の仕組みでは、攪拌部に着目して、現像剤の混合状態をシミュレーションするに当たり、現像器の攪拌部の現像剤を連続体の一例である粘性流体と仮定した解析を行ない、粘度は測定装置と流体解析から算出する手法が使われている。また、現像器の攪拌部におけるトナー濃度分布の解析を一次元の流体モデルとして拡散方程式を解いてトナー濃度の時間変化を求めている。拡散係数はトナー濃度変化の実測値より決定している。粉体の性質を連続体として取り扱う粒子挙動解析を連続体シミュレーションとも称し、連続体の一例として流体を取り扱う場合は流体シミュレーションとも称する。
特許文献1〜3に記載の仕組みは、解析対象は粉体ではないが、半導体素子内の電子の挙動を超粒子と呼ばれる仮想的な粒子の挙動を乱数を用いて計算・追跡することにより粒子挙動シミュレーションとして扱うようにしている。
たとえば、特許文献1に記載の仕組みでは、解析対象領域内の輸送現象をΔtごとにモニタするときに解析時刻の直前のδt(<Δt)を個別要素法による粒子挙動シミュレーションで行ない、残りの“Δt−δt”は流体モデルによる粒子挙動シミュレーションで行なうことにより、計算時間を減少させるようにしている。この仕組みによれば、個別要素法を全時間に適用するのではなく、大部分は流体モデルを適用しつつ、出力時刻タイミングの直前のみ個別要素法を適用することで、計算負荷(計算時間)を減少させつつ、精度のよい解を得るようにしている。
特許文献2に記載の仕組みでは、解析領域全体で流体モデルを適用し、基準となる物理量に従い、超粒子の配置分布を決める。その配置分布に従い流体を超粒子化し、個別要素法を適用した粒子挙動シミュレーションを行ない、超粒子に変換されない流体の輸送には流体モデルを適用して解析する。この仕組みは、ウィンドウ法によって領域を限定して粒子挙動シミュレーションを行なう場合に、概領域の境界において不自然な粒子分布が発生しないようにするものである。また、流体モデルを適用した粒子挙動シミュレーションにより求められたエネルギ分布に従って粒子配置分布を決定する。
特許文献3に記載の仕組みでは、一部で個別要素法を適用した粒子挙動シミュレーションを行ない、物性を決定して、流体モデルを適用した粒子挙動シミュレーションの物性値として使用する。この仕組みは、領域の一部で個別要素法を適用した解析を行なって得られた流体計算用パラメータで、流体モデルを適用した解析を行なう。
特許文献4に記載の仕組みは、解析対象は粉体ではなく、流体そのものとしている。特許文献4に記載の仕組みでは、流体の界面を微細に再現するため、粒子による流体シミュレーション、すなわち流体の界面部分では、個別要素法を適用した粒子挙動シミュレーションを行なう。流体のミクロな表面形状そのものの算出やヌレおよびハジキに伴う現象をより正確に計算することを目的として、流体を仮想的な粒子に置き換えて表現し計算を行なうものである。
本発明は、広い解析対象領域においても、粒子挙動解析を、精度よく、現実的な計算時間で実施することのできる仕組みを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、解析対象の空間に配置された解析対象粒子の、連続体としての性質が強い領域と個々の粒子としての性質が強い領域とを、前記解析対象の空間中の前記解析対象粒子の数に関する判断指標に基づき切り分ける領域特定部と、前記解析対象粒子が、前記連続体としての性質が強い領域と前記個々の粒子としての性質が強い領域との間を移動したとき、当該解析対象粒子の物性を移動前の状態から移動後の状態に適した物性に変換する物性変換部と、処理ステッップごとに、前記解析対象粒子が、前記連続体としての性質が強い領域に存在するときには前記解析対象粒子を前記連続体として取り扱う挙動解析を行なうとともに、前記解析対象粒子が、前記個々の粒子としての性質が強い領域に存在するときには前記解析対象粒子を前記個々の粒子として取り扱う挙動解析を行なうデータ処理部とを備えたことを特徴とする粒子挙動解析装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明においてさらに、前記領域特定部は、前記解析対象の空間中に、1種類もしくは比重の同じ複数種類の前記解析対象粒子が存在するとき、前記解析対象の空間を細分化して計算格子を設定し、各計算格子における前記解析対象粒子の密度を前記数に関する判断指標として、当該密度と所定の閾値とを比較して、密度の高い高率格子は前記連続体としての性質が強い領域に属し、密度の低い低率格子は前記個々の粒子としての性質が強い領域に属すると判定することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明においてさらに、前記領域特定部は、前記解析対象の空間中に、比重の異なる複数種類の前記解析対象粒子が存在するとき、前記解析対象の空間を細分化して計算格子を設定し、各計算格子における前記解析対象粒子の充填率を前記数に関する判断指標として、当該充填率と所定の閾値とを比較して、充填率の高い高率格子は前記連続体としての性質が強い領域に属し、充填率の低い低率格子は前記個々の粒子としての性質が強い領域に属すると判定することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明においてさらに、前記データ処理部は、前記解析対象粒子が前記低率格子内にあるとき、もしくは前記解析対象粒子が前記低率格子の近傍となる前記高率格子内にあるときは、前記解析対象粒子を前記個々の粒子として取り扱う挙動解析を行ない、前記解析対象粒子が前記低率格子と隣接しない前記高率格子内にあるときは、前記解析対象粒子を前記連続体として取り扱う挙動解析を行なうことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明においてさらに、前記領域特定部は、前記解析対象粒子が前記低率格子内にあるときには前記解析対象粒子が当該解析対象粒子の集合体の界面の領域に存在し、前記解析対象粒子が前記高率格子内にあるときには、前記解析対象粒子が前記集合体の内部に存在すると判断し、前記データ処理部は、前記解析対象粒子が前記集合体の界面の領域にあるとき、もしくは前記解析対象粒子が前記界面の近傍となる前記集合体の内部にあるときは、前記解析対象粒子を前記個々の粒子として取り扱う挙動解析を行ない、前記解析対象粒子が前記界面の近傍とはならない前記集合体の内部にあるときは、前記解析対象粒子を前記連続体として取り扱う挙動解析を行なうことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の発明においてさらに、前記物性変換部は、前回の処理ステップでは前記低率格子内にあった前記解析対象粒子が今回の処理ステップでは前記低率格子の近傍となる前記高率格子内に移動したときは、当該解析対象粒子の物性として、前記前回の処理ステップでの前記低率格子内での物性を適用することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項4または5に記載の発明においてさらに、前記物性変換部は、前回の処理ステップでは前記高率格子内にあった前記解析対象粒子が今回の処理ステップでは前記低率格子の近傍となる前記高率格子内に移動したときは、当該解析対象粒子の物性として、前記高率格子ごとに、当該高率格子が持つ密度、当該高率格子内の密度もしくは充填率に該当する粒子数を算出し、当該高率格子に相当する領域に最密充填で配置し、配置した粒子に前記連続体の高率格子が持つ速度を適用することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、電子計算機(コンピュータ)に備えられる中央演算制御部を、解析対象の空間に配置された解析対象粒子の、連続体としての性質が強い領域と個々の粒子としての性質が強い領域とを、前記解析対象の空間中の前記解析対象粒子の数に関する判断指標に基づき切り分ける領域特定部と、前記解析対象粒子が、前記連続体としての性質が強い領域と前記個々の粒子としての性質が強い領域との間を移動したとき、当該解析対象粒子の物性を移動前の状態から移動後の状態に適した物性に変換する物性変換部と、処理ステッップごとに、前記解析対象粒子が、前記連続体としての性質が強い領域に存在するときには前記解析対象粒子を前記連続体として取り扱う挙動解析を行なうとともに、前記解析対象粒子が、前記個々の粒子としての性質が強い領域に存在するときには前記解析対象粒子を前記個々の粒子として取り扱う挙動解析を行なうデータ処理部として機能させることを特徴とするプログラムである。
請求項1に記載の発明によれば、広い解析対象領域においても粒子挙動解析を精度よく現実的な計算時間で実施することができる粒子挙動解析装置を実現できる。粒子数の多い領域は連続体として計算するため、全領域で個別要素法を適用する場合と比較して、計算負荷が減少するからである。
請求項2に記載の発明によれば、1種類もしくは比重の同じ複数種類の解析対象粒子が解析対象の空間中に存在するときには、密度の高い領域は粒子数の多い領域であると判断でき、密度の高い領域は連続体として計算するため、全領域で個別要素法を適用する場合と比較して、計算負荷が減少する。
請求項3に記載の発明によれば、比重の影響を受けることなく、充填率の高い領域は粒子数の多い領域であると判断でき、充填率の高い領域は連続体として計算するため、全領域で個別要素法を適用する場合と比較して、計算負荷が減少する。
請求項4に記載の発明によれば、解析対象粒子が低率格子の近傍となる高率格子内にある部分を緩衝領域として利用することで、連続体の適用と個別要素法の適用の切替えのための粒子物性の変換、つまり粒子の生成と消滅の計算負荷を減少させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、界面の近傍となる集合体の内部を緩衝領域として利用することで、連続体の適用と個別要素法の適用の切替えのための粒子物性の変換、つまり粒子の生成と消滅の計算負荷を減少させることができる。加えて、界面を判断指標とするので、詳しい数値判定が不要であり、連続体の適用と個別要素法の適用の切替えを簡易にできる利点もある。
請求項6に記載の発明によれば、緩衝領域の物性について、前回の処理ステップの低率格子の物性をそのまま適用するので、粒子物性の変換、つまり粒子の生成と消滅の計算負荷を割愛できる。
請求項7に記載の発明によれば、緩衝領域の物性について、前回の処理ステップの高率格子の物性に基づいて適正に低率格子の物性に変換できる。
請求項8に記載の発明によれば、広い解析対象領域においても粒子挙動解析を精度よく現実的な計算時間で実施することができる仕組みを、コンピュータを用いて実現できる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下においては、領域によって粉体の性質を強く呈する所があれば連続体(流体など)の性質を強く呈する所もある解析対象粒子が存在する装置として、たとえば、プリンタ装置、ファクシミリ装置、あるいはそれらの機能を有する複合機などの画像形成装置を例に説明する。
解析対象粒子との関係においては、トナー粒子のみあるいはキャリア粒子とトナー粒子からなる現像剤を用いる電子写真方式による画像形成装置の現像装置における現像剤挙動解析に着目する。
粉体の性質を強く呈する所は、個々の粒子としての挙動が重要となる場所を意味し、連続体の性質を強く呈する所は、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではなく、連続体としての挙動の解析でも差し支えない場所を意味する。
ただしこれは一例であって、本実施形態の仕組みが適用される装置は画像形成装置に限定されない。領域によって粉体の性質を強く呈する所があれば連続体の性質を強く呈する所もある解析対象粒子が存在する装置の全てに、後述する全ての実施形態が同様に適用できる。
<画像形成装置の概要>
図1は、印刷装置(プリンタ)や複写装置(コピー機)などの電子写真方式の画像形成装置の一構成例を示す図である。図示のように、画像形成装置1は、感光体10を中心として、その近傍に配された直流電源22、交流バイアス電源24、および帯電部26を具備した帯電装置20、レーザ光源32やポリゴンミラー34やモータ36を具備した露光装置30、図示しない攪拌機構を備えた現像装置40、転写電源52および転写部54を具備した転写装置50、およびブレード機構を持つクリーニング装置60と、用紙搬送路上の後流側の所定位置に配されたロール機構を具備した定着装置70とを備えている。
画像形成装置1を複写装置として構成する場合、先ず、帯電装置20によって、直流電源22からの直流電圧に交流バイアス電源24からの交流バイアス電圧を重畳させて帯電電位(初期電位)を生成し、この帯電電位で、感光体10の表面を一様な表面電位に帯電させる。
この後、原稿を図示しない読取装置によってスキャンして得た画像データに従って感光体10の表面に露光装置30に備えられるレーザ光源32から発せられるレーザ・ビームをモータ36により回転駆動されるポリゴンミラー34でスキャンすることによって、感光体10表面を露光して所望の潜像電位からなる静電潜像を形成する。
続いて、現像装置40は、図示しない攪拌機構において所定色のトナー粒子やキャリア粒子などでなる現像剤粒子102を混合しながら、その現像剤粒子102中のトナー粒子を感光体10の表面に形成されている静電潜像に重畳することでトナー像を感光体10の表面に形成させる。
この後、転写装置50は、感光体10の表面に形成されているトナー像を、外部から搬送されてきた印刷用紙上に転写する。感光体10と転写部54とが対向する所定範囲を転写領域と称し、転写プロセスについての粒子挙動解析では、現像剤粒子102(特にトナー粒子)に作用する電場および重力場を考慮する必要がある。
転写済の用紙は定着装置70側に搬送され、定着装置70にて加熱溶融・圧着作用によりトナー像を転写体としての印刷用紙上に定着する。定着済の用紙は、図示しない排出装置によって、画像形成装置1の外に排紙される。
一方、クリーニング装置60は、転写装置50による転写後の感光体10の表面に残留する残留トナーを除去する。清掃後の感光体10の表面には残留電位が残っているが、帯電装置20で初期電位を印加してから次の電子写真プロセスに利用される。
なお、カラー画像形成用の画像形成装置1を構成する場合、画像形成に関わる主要部の構成としては、たとえば転写装置50にて直接に用紙に感光体10のトナー像を転写体である用紙に転写させるのではなく、たとえば、K(黒),Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の出力色に対応する複数のエンジンを、たとえばK→Y→M→Cの順にインライン状に配列し、K,Y,M,Cの画像を4つのエンジンで並列的(同時進行的)に処理する、すなわち配置位置に応じた時間を隔てて、1色ずつ中間転写ベルトに感光体10のトナー像を転写(特に1次転写という)させ、その後、中間転写ベルト上のトナー像を用紙に転写(特に2次転写という)させるように構成したタンデム型のカラー画像形成装置にしてもよい。
このような電子写真プロセスでは、感光体10に対する帯電、スキャンした原稿イメージの露光、現像すなわち感光体10へのトナー重畳、用紙へのトナー転写およびトナー定着、感光体10のクリーニングという複数の工程からなる。このような電子写真プロセスでは、たとえば、攪拌、現像、転写などの各プロセスにおいて粉体挙動解析シミュレーションを適用することで、現実に画像形成実験を行なうことなく、形成される画像を予測し評価することができる。
たとえば、転写プロセスでは、感光体表面粗さや、感光体・中間転写ベルトや用紙などの転写体間の速度差、転写体の接触幅などの転写プロセスにおける条件パラメータを変更しながら、粉体挙動解析シミュレーションを繰り返し行なっていくことで、転写プロセスを再現しながら形成される画質の評価を行なうことができる。
<現像装置の概要>
図2は、画像形成装置1に使用される現像装置40の一構成例を示す図である。図2(1)に示すように、現像装置40は、感光体10に対向して配置されており、現像剤粒子102を収納容器101の内部に充填している。収納容器101は、現像剤粒子102を感光体10側に飛翔させるための開口部101aが形成されている。
図2(2)に示すように、現像剤粒子102は、それぞれ物性や粒径の異なるキャリア粒子102aとトナー粒子102b(たとえば黒色トナー粒子)とを含有して構成された2成分方式のものである。キャリア粒子102aとトナー粒子102bとの対によって、全体として磁性粉体が形成されるようにしている。
すなわち、キャリア粒子102aは磁性体から構成され、マグネットに吸着するようになっている。一方、トナー粒子102bは非磁性トナーであって、所定の色を持つ粉体である。一般的には、キャリア粒子102aの粒径の方がトナー粒子102bの粒径よりも大きい。なお、トナー粒子102bとしては、磁性トナーを使用することも可能である。
収納容器101内には、表面に現像剤粒子102を担持する担持ロールの一例である現像ロール(マグロール、マグネットローラ、磁気搬送ローラとも言われる)140を、周面が開口部101aから少し突き出すように備えている。現像ロール140内には、その内周縁に沿って、所定間隔で所定数のマグネット142が配置されている。
また、現像装置40は、現像ロール140の近傍に、高さ規制部材や層形成部材として機能する規制ブレード(トリマーバー)150を備えており、マグネット142による磁力線に沿ってできた現像剤粒子102の磁気ブラシの高さを規制するようになっている。この規制ブレード150の攪拌搬送ロール160b側の所定範囲領域を層形成領域と称し、現像剤粒子102についての粒子挙動解析では、磁場および重力場の作用を考慮する必要がある。
また、収納容器101内には、現像剤粒子102を攪拌するとともに現像ロール140側に搬送する1対の攪拌搬送ロール160(それぞれを160a,160bとする)を備えている。一方の攪拌搬送ロール160aは、収納容器101内の奥の方に配置され、他方の攪拌搬送ロール160bは現像ロール140と対向して配置されている。攪拌搬送ロール160は、その回転動作によって、現像剤粒子102を現像ロール140側に攪拌しながら搬送する。
攪拌搬送ロール160a,160bにより攪拌・搬送される所定範囲領域を攪拌搬送領域と称し、現像剤粒子102についての粒子挙動解析では、重力場の作用を考慮する必要がある。
現像ロール140は、矢印X方向に回転される感光体10とともに、感光体10と対向する側のその表面の回転移動方向が、感光体10の移動方向Xと同じ向き(矢印Y方向)に回転される。感光体10の移動方向Xと逆向きに回転駆動するようにしてもよい。
現像ロール140内にはマグネット142(図では周縁側がN1,N2,N3,S1,S2となる計5本)を内蔵しており、現像ロール140は、現像剤粒子102を攪拌搬送ロール160bから磁気力により吸着する。現像ロール140に吸着された現像剤粒子102は、規制ブレード150により、現像剤粒子102の吸着量が規制される。
すなわち、キャリア粒子102aおよびトナー粒子102bは、攪拌機能を持つ攪拌搬送ロール160により攪拌され摩擦帯電されつつ現像ロール140側に搬送され、規制ブレード150によって一定の高さで、現像ロール140の周縁に付着する。
攪拌搬送領域と層形成領域との間の現像剤粒子102が現像ロール140に磁気吸着される所定範囲領域をピックアップ領域と称し、現像剤粒子102についての粒子挙動解析では、磁場および重力場の作用を考慮する必要がある。
トナー粒子102bは、キャリア粒子102aに静電力により互いに吸着されている。キャリア粒子102aは、現像ロール140に内蔵されたマグネット142からの磁場により磁気ブラシを構成する。トナー粒子102bはキャリア粒子102aとともに、感光体10に対向する部分まで搬送される。
現像ロール140は、感光体10に対向して設けられており、現像ロール140に吸着された現像剤粒子102のうちトナー粒子102bは、帯電されており、静電気力により感光体10に吸着される。このとき、感光体10の表面は、記録画像に応じて帯電されることで静電潜像が形成されており、トナー粒子102bは、感光体10に形成された静電潜像に応じて吸着される。
つまり、現像ロール140は、キャリア粒子102aを介して現像ロール140に担持されたトナー粒子102bを感光体10側に飛翔させ、感光体10の表面に形成された潜像を現像化するようになっている。
この、感光体10と現像ロール140の各周縁が対向し現像作用の行なわれる所定範囲領域を現像ニップ領域と称し、現像剤粒子102についての粒子挙動解析では、電場、磁場、および重力場の作用を考慮する必要がある。
現像処理後のキャリア粒子102aと、感光体10側に飛翔されなかったトナー粒子102bとは、収納容器101内に回収される。この現像剤粒子102の回収される所定範囲領域をピックオフ領域と称し、現像剤粒子102についての粒子挙動解析では、磁場および重力場の作用を考慮する必要がある。
ここで、図2(2)に示すように、感光体10の表面は、記録画像に応じて帯電されており、トナー粒子102bは、静電力により感光体10の表面に飛翔する。感光体10の表面には、飛翔したトナー粒子102bが付着し、記録画像に応じたトナー像が形成される。このとき、トナー粒子102bの感光体10への吸着のされ方によって、記録画像の画質が左右される。
トナー粒子102bは、キャリア粒子102aにより感光体10に搬送されているので、トナー粒子102bの感光体10への吸着のされ方は、現像ロール140と感光体10との間の現像ニップ領域でのキャリア粒子102aおよびトナー粒子102bの挙動により決定される。このため、キャリア粒子102aおよびトナー粒子102bの挙動の解析が電子写真装置本体や現像装置40の開発にとって重要な要素となる。
<粒子挙動解析システム;基本>
図3は、本発明に係る粒子挙動解析装置の一構成例である粒子挙動解析システムの基本構成を示すブロック図である。基本構成の粒子挙動解析システム200は、それぞれ粒子挙動解析機能を有する複数台の粒子挙動解析装置202がネットワーク接続されて構成されている。
各粒子挙動解析装置202は、主要の処理データを相互にネットワーク208を介して伝達し合い、粒子挙動解析処理を並列的に実行可能になっており、粒子挙動解析システム200としては、事実上の並列型計算装置(クラスタ計算機)として構成されている。ネットワーク208は、通信状態がルーティング機能を持つネットワーク管理装置208aで管理されるようになっている。
各粒子挙動解析装置202は、一般の電子計算機と同様のもので構成されている。また、図示した例では、粒子挙動解析システム200を構成する各粒子挙動解析装置202のうちの1台が全体を統括する計算管理ノードとしての機能を持つ主粒子挙動解析装置202aとして機能するようになっており、この主粒子挙動解析装置202aに対して残りの粒子挙動解析装置202が、主粒子挙動解析装置202aにより制御される副粒子挙動解析装置202bとしてネットワーク接続されている。
なお、図では便宜的に、ネットワーク管理装置208aから1本のネットワーク線を出し、そのネットワーク線上に主粒子挙動解析装置202aと副粒子挙動解析装置202bとを接続する態様で示しているが、実際には、ネットワーク管理装置208aに備えられる個別のポートに各粒子挙動解析装置202が接続され、各粒子挙動解析装置202間の通信は、このネットワーク管理装置208aを介してなされるようになっている。
主粒子挙動解析装置202aには、粒子挙動解析処理用の各種の操作を行なうためのキーボードやマウスなどの指示入力装置210と、処理結果をユーザに画像情報として提示する表示装置212とが接続されている。
このような基本構成のシステム構成を採ることで、複数種類の多体粒子間相互作用がある系について粒子挙動解析処理を行なうに当たり、各粒子の磁気相互作用、静電相互作用、あるいは機械的相互作用(接触力;壁などと粒子間の接触力や粒子間接触)などの各相互作用について、並列処理にて解析を実行する。なお、機械的相互作用は、たとえば、壁やその他の物体と粒子間の接触力や粒子間接触による接触力である。
たとえば、キャリア粒子102aについてはMaxwell方程式を基礎とした磁場解析法などを利用して磁気力を算出し、またトナー粒子102bについてはクーロン力に着目した静電界解析を行ない、さらに、キャリア粒子、トナー粒子の接触力を粒子の接触量から算出し、最終的には、各作用力を組み合わせて運動方程式を解き、現像剤粒子102の挙動を高精度で予測する。
なお、図3に示した粒子挙動解析システム200の基本構成では、事実上の並列型計算装置(クラスタ計算機)の構成で示したが、これに限らず、図示を割愛するが、それぞれ粒子挙動解析機能を有する複数台の粒子挙動解析装置を第1ネットワークにてネットワーク接続されて並列型計算装置として構成されている複数の粒子挙動解析システムを、さらに、別の第2ネットワークで接続して構成されたものとしてもよい。
この場合、各粒子挙動解析システムは、主要の処理データを相互に外部ネットワーク(第2ネットワーク)を介して伝達し合い、それぞれ対象の異なる粒子挙動解析処理を並列的に実行可能になり、このような変形例の粒子挙動解析システムとしては、事実上の並列型計算装置をネットワーク接続してなるグリッド型計算装置として構成される。
たとえば、各粒子挙動解析システムにおいては、磁気相互作用、静電相互作用、あるいは機械的相互作用(接触力)などの各相互作用の何れかに特化した解析処理を行ない、それぞれ個別の相互作用についての解析処理を並列して実行する。つまり、複数種類の相互作用を、それぞれ独立して同時に、別の粒子挙動解析システムを用いて解析する。
あるいは、現像剤粒子102を構成するキャリア粒子102aやトナー粒子102bの別に、磁気相互作用、静電相互作用、あるいは機械的相互作用(接触力)などの各相互作用の解析処理を並列して実行する。たとえば、磁気力の影響度が大きいキャリア粒子102aについては特に磁気力に特化した粒子挙動解析処理を行ないつつ、静電気力の影響度が大きいトナー粒子102bについては特に静電気力に特化した粒子挙動解析処理を行なうなど、粒子種ごとに、別の粒子挙動解析システムを用いて粒子挙動解析処理を行なってもよい。
このような変形構成のシステム構成を採ることで、各粒子挙動解析システムは、それぞれ独立した粒子挙動解析処理を行なうことで、基本構成のシステム構成よりもさらに処理時間の短縮を図る。
また、粒子間相互作用の計算負荷の程度に応じて、使用する粒子挙動解析システム(事実上の並列計算装置)を、その処理能力を基に選択してもよい。たとえば、異種環境(性能など)のシステムが混在する状況において、効率的に計算機リソースを用いて粒子挙動解析処理を行なう。
<粒子挙動解析装置;機能ブロック>
図4は、各粒子挙動解析装置202の一構成例を示すブロック図である。ここでは、特に計算管理ノードの機能を具備した主粒子挙動解析装置202aについて示している。
なお、粒子挙動解析装置202による後述する詳細な解析手法の説明では、電子写真プロセス方式の画像形成装置1における、たとえばキャリア粒子102aとトナー粒子102bの攪拌プロセスや、感光体10の表面に形成された静電潜像へトナー粒子102bを重畳する現像プロセスや、転写プロセスなどの所定プロセスでの現像剤粒子102を構成する成分粒子を解析対象として説明するが、この種の画像形成装置1の他に、粒子種や作用力を問わず、あらゆる粒子(粉体)を取り扱うシステムのシミュレーションにも同様に適用できる。
図示のように、主粒子挙動解析装置202aは、指示入力装置210などを利用して処理対象データを取り込むデータ入力部220と、粒子挙動解析処理を行なうデータ処理部230と、処理結果を表示装置212などを利用してユーザに提示する情報提示部240とを備えている。データ入力部220と情報提示部240とは、主粒子挙動解析装置202aの計算管理ノードに相当する部分に設けられている。
データ入力部220は、指示入力装置210を構成するキーボードやマウスを介してユーザより入力されるコマンドやデータを受け付け、データ処理部230に渡す。
データ処理部230は、データ入力部220から入力されたデータに基づいて後述する粒子挙動解析処理を行なう。このデータ処理部230は、より詳細には、データ受付部232、数値演算処理部234、および出力データ処理部236を有している。副粒子挙動解析装置202bは、このデータ処理部230のみで構成すればよい。
データ受付部232は、図示を割愛したデータ記憶部を具備しており、データ入力部220から入力されたデータをデータ記憶部に記憶し、数値計算時に必要なデータを数値演算処理部234に供給する。データ受付部232のデータ記憶部には、たとえば、解析の対象としている現像装置40の構成および現像剤粒子102の座標、物性値に関するデータなどが記憶される。
数値演算処理部234は、データ受付部232から供給されたデータに基づき、粒子の一例である現像剤粒子102(詳細にはキャリア粒子102aやトナー粒子102b)について、磁気相互作用、静電相互作用、あるいは機械的相互作用(接触力)など、複数の相互作用を同時に考慮した粒子挙動を、力分割法を適用してシミュレーション処理にて解析する。数値演算処理部234は、その解析結果を出力データ処理部236に供給する。
出力データ処理部236は、数値演算処理部234での計算結果を受け取り、数値演算処理部234での計算結果を表示データに変換し、表示装置212に供給する。表示装置212は、出力データ処理部236から供給された表示データに基づく処理結果画像を表示する。実際には確認困難な現像剤粒子102の挙動を視覚的に把握することができるように、現像剤粒子102の挙動予測を可視化して表示装置212上に表示するのである。
また、主粒子挙動解析装置202aは、計算管理ノードに相当する部分に、処理対象要素を所定の分割法により分割し、各計算システム(プロセッサとも称する;図2では粒子挙動解析装置202)に各分割部分を割り当てる境界設定機能を具備した分割処理部250を備えている。
ここで、各プロセッサのデータ処理部230は、個々の粒子の挙動を運動方程式に基づいて追跡する個別要素法を適用した粒子挙動解析と、流体モデルなど粉体を連続体として取り扱い粉体挙動の解析を行なう粒子挙動解析とを、解析対象粒子の存在する位置に応じて使い分ける手法を適用する。また、少なくとも、個別要素法を適用する際には、領域分割法や力分割法あるいはこれらを組み合わせた方法、さらにはその他の分割法の何れかを適用した複数コンピュータによる並行処理を適用する。
解析手法として、解析対象の装置の全領域について、流体モデルを適用することも考えられるが、解析対象粒子の挙動が、粒子(粉体:詳細にはその粉体を構成する個別の粒子)としての特性よりも流体としての特性の方が重要である領域には不都合がないが、流体としての特性よりも個々の粒子としての挙動が重要となる領域には、流体モデルの適用は問題となるからである。
たとえば、現像装置40の場合、攪拌部におけるトナー濃度分布解析に流体モデルを適用する分には不都合がないが、ピックアップ領域以降はキャリア粒子102aの磁気ブラシ形成やトナー粒子102bの飛翔による現像など、流体としての特性よりも個々の粒子としての挙動が重要となる。
ここで、半導体素子内の電子の挙動を超粒子と呼ばれる仮想的な粒子の挙動を乱数を用いて計算・追跡する特許文献1〜4に記載の仕組みを利用することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の仕組みでは、Δtがδtと同程度に小さい場合には流体モデルを適用したシミュレーションを行なわないため、このような場合には、粒子挙動シミュレーションの計算負荷を減じられない。加えて、粒子挙動シミュレーションを行なう場合は、全粒子分の情報を格納するためのメモリ使用量がかなり多くなると考えられる。
特許文献2に記載の仕組みでは、ウィンドウ法によって領域を限定して粒子挙動シミュレーションを行なう場合に概領域の境界において不自然な粒子分布が発生しないようにするためのものであり、目的が異なる。また、特許文献2に記載の仕組みでの流体モデルを適用したシミュレーションにより求められたエネルギ分布に従って粒子配置分布を決定するが、後述するように、本実施形態では、粒子密度の多い部分を流体モデルへと変換するため、逆の変換であり、流体計算の結果から粒子分布を生成する特許文献2に記載の仕組みは適用できない。
特許文献3に記載の仕組みでは、領域の一部で個別要素を適用したシミュレーションを行なって得られた流体計算用パラメータで流体モデルを適用したシミュレーションを実施するためのもので、後述するような本実施形態の対象と異なるため、特許文献3に記載の仕組みは適用できない。
特許文献4に記載の仕組みでは、流体の界面を微細に再現するため粒子による流体モデルを適用したシミュレーションを行なうもので、解析対象がそもそも流体であることからして、特許文献4に記載の仕組みは適用できない。
また、非特許文献1に記載のように、単純に、全領域に流体モデルを適用して粉体挙動を解析していたのでは、ピックアップ領域以降はキャリア粒子102aの磁気ブラシ形成、トナー粒子102bの飛翔による現像など、粒子としての挙動が重要となる部分についても流体モデルを適用することになってしまい、その部分の粉体の詳細な挙動については必ずしも適正な解析ができるとは限らない。
分割処理部250は、各プロセッサに処理対象要素を分割して割り当てる分割法として、処理対象要素である計算対象領域(解析領域)を分割して、分割した領域別にその領域内に存在する全粒子を各プロセッサに割り当てていく領域分割法や、処理対象要素である計算対象粒子を所定数ずつ分割して各プロセッサに割り当てていく粒子分割法や、力マトリックスを用いたアルゴリズムである力分割法、あるいはこれらを組み合わせた方法、さらにはその他の分割法の何れを用いてもよい。
また、分割処理部250は、解析対象の装置の全体について、纏めて分割対象とするのではなく、解析対象領域を複数の領域に分割し、この分割した各解析対象領域の別に、さらに領域分割法や粒子分割法や力分割法などを適用するのがよい。たとえば現像装置40の全体について解析する場合、攪拌搬送領域、ピックアップ領域、層形成領域、現像ニップ領域、ピックオフ領域の別に解析を行なうようにするとよい。
また、主粒子挙動解析装置202aは、本実施形態の特徴部分として、計算管理ノードに相当する部分に、粒子の移動境界を特定する領域特定部の機能を持つ移動境界特定部260を備えている。移動境界特定部260は、注目する解析対象領域において、たとえば、粒子の密度や充填率などの粒子数と関わりを持つ指標値を基準として、粉体の性質を強く呈する所で個々の粒子としての挙動が重要となる場所(以下個別粒子領域とも称する)と、連続体の性質を強く呈する所で、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではなく連続体としての挙動の解析でも差し支えない場所(以下連続体領域とも称する)とを区別する。つまり、本実施形態の移動境界特定部260は、粒子数に着目した領域特定(個別粒子領域と連続体領域の区別)を行なう点に特徴を有する。
なお、個別粒子領域と連続体領域との移動境界は、厚みが事実上ゼロの面であってもよいし、ある程度の幅の厚みを持たせて個別粒子領域と連続体領域との緩衝層として機能させるようにしてもよい。
たとえば、粒子数の少ない領域は個々の粒子が独立して動き得る度合いが高く個々の粒子としての挙動が重要となる場所と考えられるので個別粒子領域として取り扱い、粒子数の多い領域は個々の粒子の動きよりも粒子の集合体としての振舞いの方が強く表れ、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではない場所と考えられるので連続体領域として取り扱う。
ここで、粒子数による区別は、個数そのもので判断することもできるが、それに置き換わる指標値として、単位体積当たりの質量である密度や、単位体積当たりの粒子数である充填率を利用することもできる。
たとえば、粉体が1種類の粒子の集合体である場合や、粉体が複数種類の粒子の集合体である場合でも着目する解析対象粒子が1種類の場合や、比重の同じ複数種類の粒子の集合体である場合には、粒子数の粗密は、比重の相違の影響を受けないので、密度を使っても差し支えない。たとえば、密度の低い領域は個々の粒子が独立して動き得る度合いが高く個々の粒子としての挙動が重要となる場所と考えられるので個別粒子領域として取り扱い、密度の高い領域は個々の粒子の動きよりも粒子の集合体としての振舞いの方が強く表れ、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではない場所と考えられるので連続体領域として取り扱う。
一方、粉体が比重の異なる複数種類の粒子の集合体である場合には、粒子数の粗密は、比重の相違の影響を受けるので、密度を使ったときには粗密を正しく判定することができない。そこで、この場合には充填率を判断指標とするのがよい。たとえば、充填率の低い領域は個々の粒子が独立して動き得る度合いが高く個々の粒子としての挙動が重要となる場所と考えられるので個別粒子領域として取り扱い、充填率の高い領域は個々の粒子の動きよりも粒子の集合体としての振舞いの方が強く表れ、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではない場所と考えられるので連続体領域として取り扱う。
また、粉体の挙動と、その粉体を構成する各粒子の粗密の変化の関係に着目したとき、粉体の内部は表面(界面)側よりも粒子数の多い領域で、個々の粒子の動きよりも粒子の集合体としての振舞いの方が強く表れ、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではない場所と考えられるので連続体領域として取り扱い、粉体の表面(界面)側は内部よりも粒子数の少ない領域で、個々の粒子が独立して動き得る度合いが高く個々の粒子としての挙動が重要となる場所と考えられるので個別粒子領域として取り扱う。
この際、粉体の挙動としては、ある程度一体的に纏まって動く場合と、ある時点はある程度一体的に纏まっていたものが次の時点では複数の纏まり(グループ)に分かれてしまうこともある。後者の場合の粒子挙動解析時には、複数の纏まりとなったそれぞれについて、各纏まりの粉体(グループ)の挙動とその粉体(グループ)を構成する各粒子の粗密の変化の関係に着目して、各粉体(グループ)の内部は表面(界面)側よりも粒子数の多い領域で、個々の粒子の動きよりも粒子の集合体としての振舞いの方が強く表れ、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではない場所と考えられるので連続体領域として取り扱う。各粉体(グループ)の表面(界面)側は内部よりも粒子数の少ない領域で、個々の粒子が独立して動き得る度合いが高く個々の粒子としての挙動が重要となる場所と考えられるので個別粒子領域として取り扱う。
また、本実施形態の主粒子挙動解析装置202aは、本実施形態の特徴部分として、粉体の性質を強く呈する所で個々の粒子としての挙動が重要となる場所(個別粒子領域)と、連続体の性質を強く呈する所で、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではなく連続体としての挙動の解析でも差し支えない場所(連続体領域)との間を粒子が移動する際、粒子の物性を変換する物性変換部270を備えている。
物性変換部270は、解析対象粒子が連続体領域から個別粒子領域へ移動した際には、その解析対象粒子に関しては、連続体としての物性から個々の粒子としての物性に変換し、逆に、解析対象粒子が個別粒子領域から連続体領域へ移動した際には、その解析対象粒子に関しては、個別粒子領域としての物性から連続体領域としての物性に変換する。
ここで、本実施形態の物性変換部270は、前記の物性変換に当たっては、個別粒子領域と連続体領域との間で、粉体質量が保存されるような物性変換を行なう。たとえば、連続体領域側から個別粒子領域側へ質量が移動したときには、個別粒子領域に関しては、個別粒子領域内に移動した質量分の粒子を増加させ、逆に、個別粒子領域側から連続体領域側へ質量が移動したときには、個別粒子領域に関しては、連続体領域内に移動した質量分の粒子を減少させる。
本実施形態の粒子挙動解析システム200は、粒子に働く作用力による粒子移動の解析対象領域の移動境界(移動境界特定部260で予め特定したもの)を基準に、データ処理部230では、連続体領域においては、粉体を連続体として取り扱い、たとえばオイラー要素を用いた動解析など、流体モデルを利用した粒子挙動解析を適用する一方、個別粒子領域においては、粉体を個々の粒子として取り扱い、個別要素法を粒子挙動解析に適用する点に特徴を有する。
なお、物性変換部270は、個別粒子領域と連続体領域との移動境界に、ある程度の幅の厚みを持たせて緩衝層として機能させる場合、個別粒子領域や連続体領域と緩衝層との間を粒子が移動する際には、粒子の物性を変換しないようにする。つまり、個別粒子領域から緩衝層へ粒子が移動したときや、連続体領域から緩衝層へ粒子が移動したときには、移動前の個別粒子領域や連続体領域での粒子物性を維持しておく。また、データ処理部230は、緩衝層での粒子挙動解析には、移動前の個別粒子領域や連続体領域での手法と同様の手法を適用する。
移動境界特定部260における移動境界の特定手法や、物性変換部270による物性値の変換手法や、データ処理部230における移動境界を利用した連続体領域での流体モデルを利用した粒子挙動解析および個別粒子領域での個別要素法による粒子挙動解析に関しては、後で詳しく説明する。
<粒子挙動解析装置;計算機構成>
図5は、各粒子挙動解析装置202の他の構成例を示すブロック図である。ここでは、パーソナルコンピュータなどの電子計算機を利用して、粒子挙動解析をソフトウェアを実行するマイクロプロセッサなどから構築されるより現実的なハードウェア構成を示している。
すなわち、本実施形態において、2種類以上の相互作用力を考慮して、力マトリクスを使用した力分割並列化アルゴリズムを用いて、粒子の挙動を解析する仕組みは、ハードウェア処理回路により構成することに限らず、その機能を実現するプログラムコードに基づき電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェア的に実現することも可能である。
よって、本発明に係る仕組みを、電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェアで実現するために好適なプログラムあるいはこのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記憶媒体を発明として抽出することもできる。ソフトウェアにより実行させる仕組みとすることで、ハードウェアの変更を伴うことなく、処理手順などを容易に変更できる利点を享受できるようになる。
電子計算機に、領域分割法や粒子分割法や力分割法などの所定の分割並列化アルゴリズムを用いて2種類以上の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理機能をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ(組込マイコンなど)、あるいは、CPU(Central Processing Unit )、論理回路、記憶装置などの機能を1つのチップ上に搭載して所望のシステムを実現するSOC(System On a Chip:システムオンチップ)、または、各種のプログラムをインストールすることで各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
記録媒体は、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取装置に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気などのエネルギの状態変化を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取装置にプログラムの記述内容を伝達できるものである。
たとえば、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクFDを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory )、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MO(Magneto Optical Disk)を含む)、または半導体メモリなどよりなるパッケージメディア(可搬型の記憶媒体)により構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROMやハードディスクなどで構成されてもよい。
また、ソフトウェアを構成するプログラムは、記録媒体を用いずに、記録媒体を介して提供されることに限らず、有線あるいは無線などの通信網を介して提供されてもよい。
たとえば、力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、ハードウェア処理回路にて構成する場合と同様の効果は達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理の機能を実現する。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することで、力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理を行なう機能が実現されるだけでなく、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(Operating Systems ;基本ソフト)などが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理により力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理を行なう機能が実現される場合であってもよい。
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によって粒子挙動解析処理を行なう機能が実現される場合であってもよい。
なお、力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理を行なう機能を実現するプログラムコードを記述したファイルとしてプログラムが提供されるが、この場合、一括のプログラムファイルとして提供されることに限らず、コンピュータで構成されるシステムのハードウェア構成に応じて、個別のプログラムモジュールとして提供されてもよい。
たとえば、コンピュータシステム900は、コントローラ部901と、ハードディスク装置、フレキシブルディスク(FD)ドライブ、あるいはCD−ROM(Compact Disk ROM)ドライブ、半導体メモリコントローラなどの、所定の記憶媒体からデータを読み出したり記録したりするための記録・読取制御部902とを有する。
コントローラ部901は、CPU(Central Processing Unit )912、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)913、随時書込みおよび読出しが可能であるとともに揮発性の記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)915、および不揮発性の記憶部の一例であるRAM(NVRAMと記述する)916を有している。
なお、上記において“揮発性の記憶部”とは、装置の電源がオフされた場合には、記憶内容を消滅してしまう形態の記憶部を意味する。一方、“不揮発性の記憶部”とは、装置のメイン電源がオフされた場合でも、記憶内容を保持し続ける形態の記憶部を意味する。記憶内容を保持し続けることができるものであればよく、半導体製のメモリ素子自体が不揮発性を有するものに限らず、バックアップ電源を備えることで、揮発性のメモリ素子を"不揮発性"を呈するように構成するものであってもよい。
また、半導体製のメモリ素子により構成することに限らず、磁気ディスクや光ディスクなどの媒体を利用して構成してもよい。たとえば、ハードディスク装置を不揮発性の記憶部として利用できる。また、CD−ROMなどの記録媒体から情報を読み出す構成を採ることでも不揮発性の記憶部として利用できる。
また、コンピュータシステム900は、ユーザインタフェースをなす機能部としての指示入力部903と、操作時のガイダンス画面や処理結果などの所定の情報をユーザに提示する表示出力部904と、各機能部との間のインタフェース機能をなすインタフェース部(IF部)909とを有する。
なお、解析処理結果を印刷出力してユーザに提示する構成とするべく、処理結果を所定の出力媒体(たとえば印刷用紙)に出力する画像形成部906を設けてもよい。
指示入力部903としては、たとえば、ユーザインタフェース部985の操作キー部985bを利用してもよい。あるいは、キーボードやマウスなどを利用してもよい。
表示出力部904は、表示制御部919と表示装置とを備える。表示装置としては、たとえば、ユーザインタフェース部985の操作パネル部985aを利用してもよい。あるいは、CRT(Cathode Ray Tube;陰極線管)やLCD(Liquid Crystal Display;液晶)などでなるその他のディスプレイ部を利用してもよい。
たとえば、表示制御部919が、操作パネル部985aやディスプレイ部上に、ガイダンス情報や画像読取部905が取り込んだ全体画像などを表示させる。また、各種の情報をユーザに通知する際の表示デバイスとしても利用される。なお、表示面上にタッチパネルを有するディスプレイ部とすることで、指先やペンなどで所定の情報を入力する指示入力部903を構成してもよい。
インタフェース部909としては、処理データ(画像データを含む)や制御データの転送経路であるシステムバス991の他、たとえば、画像形成部906や他のプリンタとのインタフェース機能をなすプリンタIF部996、およびネットワークとの間の通信データの受け渡しを仲介する通信IF部999を有している。
このような構成において、CPU912は、システムバス991を介してシステム全体の制御を行なう。ROM913は、CPU912の制御プログラムなどを格納する。RAM915は、SRAM(Static Random Access Memory )などで構成され、プログラム制御変数や各種処理のためのデータなどを格納する。また、RAM915は、所定のアプリケーションプログラムに従って演算して得たデータや外部から取得したデータなどを一時的に格納する領域を含んでいる。
たとえば、力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理機能をコンピュータに実行させるプログラムは、CD−ROMなどの記録媒体を通じて配布される。あるいは、このプログラムは、CD−ROMではなくFDに格納されてもよい。また、MOドライブを設け、MOに前記プログラムを格納してもよく、またフラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリカードなど、その他の記録媒体にプログラムを格納してもよい。さらに、他のサーバなどからインターネットなどのネットワークを経由してプログラムをダウンロードして取得したり、あるいは更新したりしてもよい。
なおプログラムを提供するための記録媒体としては、FDやCD−ROMなどの他にも、DVDなどの光学記録媒体、MOなどの光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、ICカードやミニチュアカードなどの半導体メモリを用いてもよい。記録媒体の一例としてのFDやCD−ROMなどには、力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理機能を実現する際の、一部または全ての機能を格納してもよい。
また、ハードディスク装置は、制御プログラムによる各種処理のためのデータを格納したり、自装置で取得したデータや外部から取得したデータなどを大量に一時的に格納したりする領域を含んでいる。
このような構成により、操作キー部985bを介した操作者による指令にて、後述する粒子挙動解析方法を実行するプログラムが記憶されているCD−ROMなどの読取可能な記録媒体からRAM915に粒子挙動解析プログラムがインストールされ、また操作キー部985bを介した操作者による指令や自動処理にて粒子挙動解析プログラムが起動される。
CPU912は、この粒子挙動解析プログラムに従って後述する粒子挙動解析方法に伴う計算処理を施し、処理結果をRAM915やハードディスクなどの記憶装置に格納し、必要により操作パネル部985a、あるいはCRTやLCDなどの表示装置に出力する。
なお、このようなコンピュータを用いた構成に限らず、図4を用いて示した各機能部の処理をなす専用のハードウェアの組合せにより、力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理を行なう粒子挙動解析システム200や粒子挙動解析装置202を構成してもよい。
たとえば、力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理のための各機能部分の全ての処理をソフトウェアで行なうのではなく、これら機能部分の一部を専用のハードウェアにて行なう処理回路908を設けてもよい。ソフトウェアで行なう仕組みは、並列処理や連続処理に柔軟に対処し得るものの、その処理が複雑になるに連れ、処理時間が長くなるため、処理速度の低下が問題となる。
これに対して、ハードウェア処理回路で構築すると、処理が複雑であっても、処理速度の低下を防ぐことができ、高いスループットを得ることができる高速化を図ったアクセラレータシステムが構築される。
たとえば、力分割並列化法を利用し複数種の相互作用力を考慮した粒子挙動解析処理機能を実現する場合であれば、処理回路908としては、図4に示したデータ処理部230を構成するデータ受付部232に相当するデータ受付部908a、数値演算処理部234に相当する数値演算処理部908b、出力データ処理部236に相当する出力データ処理部908cなどをハードウェアで構成するとよい。
また、全体を統括する主粒子挙動解析装置202aを構成する場合であれば、分割処理部250に相当する分割処理部908dや移動境界特定部260に相当する移動境界特定部908eや、物性変換部270に相当する物性変換部908fをハードウェアで構成するとよい。
<粒子挙動解析処理における並列処理;基本>
図6は、本実施形態の粒子挙動解析処理において適用する並列化処理手順の基本例を示したフローチャートである。
先ず、主粒子挙動解析装置202aにおいて、分割処理部250は、現時点において粒子挙動解析処理に使用可能なクラスタ構成の粒子挙動解析システム200を構成する粒子挙動解析装置202の数やグリッド構成の粒子挙動解析システムを構成する各粒子挙動解析システム200の数(纏めてプロセッサ数Mと呼ぶ)を特定する(S102)。
次に、分割処理部250は、領域分割法や粒子分割法や力分割法の考え方を適用して、計算対象領域(解析領域)や計算対象粒子を分割して各プロセッサに割り当てる(S103)。
ここでは、並列化のための分割法として、解析対象領域を複数の領域に分割し、この分割した解析対象領域の別に、さらに力分割法を適用して解析することで、全プロセッサ間の通信量を低減させるようにする。通信量を低減させることで、多プロセッサ使用時のプログラムの並列化性能を向上させ、計算時間を短縮するのである。
なお、力分割法の基本原理としては、プロセッサ数Mは、N^2であり、N行N列の正方の力マトリクスに配されることが前提となっている。ここでは、一例として、N=4で、プロセッサ数Mが計16(=4^2)台であるとする。この場合、各プロセッサは、4行4列の力マトリクスに配される。
この後、データ処理部230は、データ入力部220を介して、計算に必要な各種物理パラメータや粒子の初期配置や力分割法で特に必要となる解析対象粒子数などの計算条件を読み込む(S104)。
次に、分割処理部250は、ステップS102にて特定した各プロセッサを、正方行列でマトリクス配置して、解析対象の粒子(現像剤102を構成するキャリア粒子102aやトナー粒子102b)を割り当てる(S106)。各番号のプロセッサ(各粒子挙動解析装置202もしくは各粒子挙動解析システム200)をノードN(本例では0〜15の計16台)とも呼ぶ。
たとえば16個のプロセッサで32粒子について並列計算する場合、4行4列の力マトリクスに配される各プロセッサは、先ず、それぞれ2個の粒子に着目して、着目粒子ごとに対象となる他の粒子との間での相互作用を解析することになる。
移動境界を特定する予備処理でなければ(S108−NO)、移動境界特定部260は、事前に境界特定処理(S110〜S118)にて取得しておいた移動境界の情報を各プロセッサに通知する(S109)。
次に、複数種類の多体粒子間相互作用力を、力マトリクス中の自身を中心とする行方向および列方向に存在する通信を必要とするプロセッサ(特に特定プロセッサと呼ぶ)に分散してデータ処理部230にて粒子挙動を計算する(S110)。
このとき、データ処理部230では、移動境界特定部260により特定された移動境界を超える一方の領域に存在する解析対象粒子についてのみ、その一方の領域に適合した注目すべき特定の相互作用力を含む粒子挙動計算を行なう。つまり、移動境界で区分けされた領域対応の作用力に着目して粒子挙動計算を行なう。
またこのとき、複数種類の多体粒子間相互作用に対しては、それぞれ別の力マトリックスを用いて計算するのがよい。たとえば、磁気相互作用を解析するための力マトリックスを用いて磁気相互作用を解析する。また、静電相互作用を解析するための力マトリックスを用いて静電相互作用を解析する。また、機械的相互作用(接触力)を解析するための力マトリックスを用いて接触力を解析する。
各相互作用別の力マトリックスは、取り扱う粒子番号が異なる。複数種類の多体粒子間相互作用に対して各別の力マトリックスを用いて計算することで、各力マトリックスでは相互作用計算に必要な最小数の粒子のみを計算するようにし、全粒子を計算する場合に比べて計算時間を短縮するのである。また、その時間短縮分、つまり計算負荷の低減分を見越して、各プロセッサが担当する解析対象の粒子数を増やす方向で調整するようにしてもよい。
次に、特定プロセッサ間で通信し、磁気相互作用、静電相互作用、あるいは機械的相互作用(接触力)などの各相互作用について、力マトリックスにおける行方向の相互作用同士を足し合わせる、つまり、分散して計算した全ての相互作用力の全総和値SUM_Totalを求める(S112)。全総和値SUM_Totalは、静電気力、磁気力、機械的接触力、あるいは付着力などの複数の相互作用を一括して表わしたものとなる。
次に、複数の相互作用を一括して表している全総和値SUM_Totalを使用して、各粒子の運動方程式を解き、位置座標を計算する(S114)。そして、このようにして求めた各粒子の位置座標を、相互作用マトリクスに関係する特定プロセッサに送り(通信し)、計算情報を更新する(S116)。
この後、所定の計算ステップに到達するまで、ステップS110に戻り、同様の処理を繰り返す(S118)。ここで"所定の計算ステップ"とは、所定の画像を形成する時間に相当するステップ数とすればよい。
このように、プロセッサ数MがN^2の関係を満たすようにして、演算プロセッサとしてのCPUや記憶媒体(メモリ)としてのRAMなどを備えたプロセッサ(各粒子挙動解析装置202や各粒子挙動解析システム200)をネットワーク208で接続して相互通信可能にして並列型計算装置(クラスタ計算機)やグリッド型計算機を構成し、力マトリクスに従って力分割並列化アルゴリズムを用いて、磁気相互作用、静電相互作用、あるいは機械的相互作用(接触力)など、複数の相互作用を同時に考慮して挙動解析を行なう。
画像形成装置1の現像装置100に収容される現像剤102(詳しくはキャリア粒子102aやトナー粒子102b)における磁気力、静電気力、機械的接触など電子写真現像プロセスの粒子挙動シミュレーションのように、複数種類の多体粒子間相互作用がある粒子について挙動解析を、力マトリックス(粒子間相互作用規則)を用いて処理を行なう。1種類の粒子の挙動に限らず、キャリア粒子102aとトナー粒子102bから構成される2成分現像剤の相互作用を解析してもよい。
たとえば、感光体130にトナー粒子102bを電着した後のキャリア粒子102aからの電磁気的影響や摺擦の影響、また、キャリア粒子102aの中から現像に寄与するトナー粒子102bがどの程度の量、感光体130に飛翔しているのなどの解析、さらに、トナー粒子102bとキャリア粒子102aに働く接触力の影響などを解析してもよい。
並列化のための分割法として、力分割並列化アルゴリズムを用いると、それぞれの特定プロセッサは、相互作用マトリクスに関係する自身を中心とする行方向および列方向の他の特定プロセッサとの間でのみ通信を行なえばよい。使用する特定プロセッサの数を増やすほど通信量を少なくすることで、解析処理時間を確実に低減するのである。
一方、移動境界を特定する予備処理の場合には(S108−YES)、移動境界特定部260は、データ処理部230との協調処理により、移動境界を特定するための予備の粒子挙動計算(つまり境界特定処理)を行なう(S120)。この際には、移動境界を設定せずに、ステップS110〜S118と同様の粒子挙動解析処理を実行すればよい。
<現像装置での第1の適用例>
図7および図7Aは、具体的な処理の第1例を説明する図である。ここで、図7は、粒子に働く作用力による粒子移動の解析対象領域の境界(連続体領域と個別粒子領域の境界)を特定する境界特定処理(図6のステップS120に相当)と、この境界特定処理結果を利用した粒子挙動解析処理(図6のステップS110〜S118に相当)の手順の一例を示したフローチャートである。図7Aは、現像装置40での第1の適用例において、移動境界を特定する手法の詳細を計算格子の側面から示した図である。
現像装置40における装置全体の粒子挙動解析への適用、すなわち、攪拌搬送領域(攪拌部)から、攪拌搬送された現像剤粒子102(キャリア粒子102aやトナー粒子102b)が磁気力により現像ロール140に吸着されるピックアップ領域に達し、その後、現像ロール140による層形成領域、現像ニップ領域、ピックオフ領域に移行し、最終的には、攪拌搬送領域(攪拌部)に戻るまでの過程への適用例である。この点は、後述する第2例〜第4例の適用例も同様である。
ここで、基本的には、粒子数の少ない領域は個々の粒子が独立して動き得る度合いが高く個々の粒子としての挙動が重要となる場所と考えられるので個別粒子領域として、現像剤粒子102のそれぞれを個々の粒子として取り扱い、個別要素法による粒子挙動計算を行なう。一方、粒子数の多い領域は個々の粒子の動きよりも粒子の集合体としての振舞いの方が強く表れ、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではない場所と考えられるので連続体領域として、現像剤粒子102のそれぞれを纏めて連続体として取り扱い、オイラー要素を用いた動解析を行なうことを原則とする。
オイラー要素を用いた動解析の適用に当たっては、たとえば、MSC.Dytran(エムエスシーソフトウェア株式会社)というソフトウェアを使用するのがよい。オイラー要素を用いた動解析に関しては、たとえば、同ソフトウェアに関する下記の参考文献1を参照するのがよい。
参考文献1:MSC.DytranユーザーマニュアルVOL.2、平成13年10月19日第1版、日本工ムエスシー株式会社
そして、本実施形態の特徴的な処理として、移動境界特定部260により求められた移動境界を基準に、物性変換部270は、処理対象粒子に関して、移動境界を越える前の連続体としての物性を個々の粒子としての物性に変換する処理や、逆に移動境界を越える前の個々の粒子としての物性を連続体としての物性に変換する処理を行なう。
このため、先ずデータ処理部230は、データ入力部220を介して、計算に必要な各種物理パラメータや粉体の初期配置などの計算条件を読み込む(S202)。たとえば、初期状態における粉体の全体の形状プロファイルがユーザよりデータ入力部220に与えられる。
移動境界特定部260は、データ処理部230との協調処理により、移動境界面を特定する。第1例では、後述する第2例との対比として、現像剤粒子102の集合体(現像剤)である粉体が1種類の粒子の集合体である場合や、現像剤(粉体)が複数種類の粒子の集合体である場合でも着目する解析対象粒子が1種類の場合や、比重の同じ複数種類の粒子(キャリア粒子102aとトナー粒子102b)の集合体である場合を前提として、単位体積当たりの粒子数が比重の影響を受けない点に着目して、移動境界特定部260は、単位体積当たりの質量である密度を判断指標とした処理を行なう点に特徴を有する。
たとえば、現像装置40において、現像ロール140周りのピックアップ領域やピックオフ領域を解析対象領域とする場合、現像ロール140の1周分の広い領域で解析するときに、キャリア粒子102aとトナー粒子102bの2種類を扱うと膨大な粒子数となり計算時間が増大する。また、ピックオフやピックアップの各性能を解析する場合、トナー粒子102bはキャリア粒子102aと比較して低比重、小粒径でキャリア粒子102aの運動が支配的となることから、キャリア粒子102aのみを解析対象粒子として扱うことが考えられる。
すなわち、第1例では、移動境界特定部260は、粒子密度を判断指標として、連続体領域と個別粒子領域とを区別する。たとえば、移動境界特定部260は、着目する解析対象領域(たとえば攪拌搬送領域、ピックアップ領域、層形成領域、現像ニップ領域、ピックオフ領域の何れか)を、所定サイズ(微小サイズ)に細分化した微小解析領域(以下計算格子もしくは分割セルとも称する)を設定し、所定サイズで区切った計算格子ごとに移動境界位置を特定してから移動境界を特定する。
たとえば、ある時刻における計算格子および粉体の充填状況が図7A(1)に示すような状態にあり、Δt後における計算格子および粉体の充填状況が図7A(2)に示す状態に変化するものとする。因みに、粉体充填の初期状態は、ユーザによって与えられ、データ入力部220、データ処理部230を介して移動境界特定部260に通知される。
移動境界特定部260は、ある時刻における粉体(本例では現像剤粒子102の集合体)の形状プロファイルを元に、解析対象領域内の各計算格子内の現像剤粒子102の密度を算出し、密度を判断基準とした移動境界を特定する。すなわち、密度の低い計算格子を個別粒子領域に属する個別粒子計算格子に設定し、密度の高い計算格子を連続体領域に属する連続体計算格子に設定する。
一例として、移動境界特定部260は、計算格子別に粒子密度を計算し、計算格子の粒子密度がN%以上の(あるいはN%を超える)計算格子(以下高密度格子とも称する)は、連続体計算格子に設定する(S210−YES,S212)。物性変換部270は、その連続体計算格子の物性として、連続体の密度、運動量(各粒子の平均速度など)、圧力、充填率などの情報を持たせる(S214)。一方、移動境界特定部260は、計算格子の粒子密度がN%未満(あるいはN%以下)の計算格子(以下低密度格子とも称する)は、個別粒子計算格子に設定する(S210−NO,S216)。物性変換部270は、その個別粒子計算格子内の各現像剤粒子102の物性として、その計算格子内にある粉体の個々の粒子の物性情報を持たせる(S218)。なお、この際には、粒子密度が殆どゼロに近い部分は個別粒子計算格子にも該当しないとする。
次に、データ処理部230は、移動境界特定部260が特定した移動境界を用いて、現像装置40内の現像剤粒子102について、その移動境界で区別された領域(連続体領域に属する連続体計算格子と個別粒子領域に属する個別粒子計算格子)の別に、注目すべき特定の作用力を含む粒子挙動計算を行なう。
この際には、データ処理部230は、各計算格子の属性(連続体計算格子であるのか個別粒子計算格子であるのか)に適した手法を適用して、粉体の時系列挙動の計算を行なう。すなわち、データ処理部230は、粒子挙動解析時に、連続体計算格子については現像剤粒子102のそれぞれを纏めて連続体として取り扱って流体計算を行ない、具体的にはオイラー要素を用いた動解析の適用による解析を行ない(S220−YES,S222)、一方、個別粒子計算格子においては現像剤粒子102のそれぞれを個々の粒子として取り扱い、個別要素法を用いた動解析を行なうことで(S220−NO,S226)、Δt後の状態を計算する。
このようなステップS210〜S226の処理を所定時間に達するまで繰り返し実行することで(S250)、現像装置40全体の現像剤粒子102の挙動解析を連続的に実行する。このように、Δtごとに計算を進めていくことで、広い解析領域においても、計算負荷を大幅に増加させることなく、粉体の挙動について解析するようにする。
この際、物性変換部270は、連続体計算格子と個別粒子計算格子間の物性変換を、質量を基準として、以下のように行なう(S230)。先ず、個別粒子計算格子から連続体計算格子ヘ粒子が移動する場合は、物性変換部270は、当該格子間を移動する粒子の質量および運動量を計算し、連続体計算格子の当該情報を増加させる(S232−YES,S236)。一方、連続体計算格子から個別粒子計算格子ヘ粒子(質量)が移動する場合、物性変換部270は、個別粒子計算格子内では、連続体計算格子から流入する質量および運動量に基づき、連続体計算格子に接している境界側に粒子を発生させる(S232−NO,S238)。
このような変換規則により、粒子物性を物性変換部270により移動させた後は、移動境界特定部260は、ステップS210に戻り、粒子密度を算出して、計算格子の粒子密度がN%以上であるか否かに基づき、連続体計算格子と個別粒子計算格子とを再度区別する。すなわち、各計算格子における粒子密度を計算し、N%以上になっている計算格子については粒子情報を放棄し連続体計算格子として取り扱う(S210−YES,S212)。一方、N%以下になった連続体計算格子は、密度や運動量などの各情報を元にして、内部に粒子を発生させ、個別粒子計算格子として取り扱う(S210−NO,S216)。
粒子の発生させ方としては、密度から粒子数を算出し、計算格子内に、均等間隔で配置し、運動量は同じ方向で大きさを均等に分配するなどの方法(以下、標準粒子発生方法と称する)を用いる。
たとえば、物性変換部270は、連続体としての物性を個々の粒子としての物性に変換する際、たとえば、変換に該当する連続体の要素(たとえば流体解析モデルでの分割メッシュに相当する前記計算格子を意味する)ごとに、実際の現像剤粒子102と同じ粒子径を適用するとともに、計算格子が持つ密度に該当する粒子数を算出し、計算格子に相当する部分に最密充填となるように均等間隔で配置する。配置した粒子に対して、連続体要素が持つ速度を与える。
たとえば、計算格子内の現像剤粒子102の密度を割り出し、その密度と実際の現像剤粒子102の粒子径とに基づき、計算格子内に最密充填で存在し得る現像剤粒子102の粒子数を算出する。そして、現像剤粒子102のそれぞれ(計算した粒子数分)を、計算格子内で最も充填率が高くなるような位置に配置する(これを最密充填で配置すると称する)。
なお、連続体としての物性を個々の粒子としての物性に変換するに際、実際の現像剤粒子102と同じ粒子径を適用する代わりに、実際の粒子径の所定倍を適用することで、個別粒子計算格子についての個別要素法を適用する粒子数をさらに低減させ、粒子挙動計算を高速化可能にしておくようにしてもよい。
あるいは、連続体としての物性を個々の粒子としての物性に変換するに際、実際の現像剤粒子102と同じ粒子径を適用する代わりに、実際の現像剤粒子102の粒子径分布と同様の粒子径分布を適用することで、個別粒子計算格子についての個別要素法を適用した解析時に、より現実に近い粒子挙動計算を実行可能にしておくようにしてもよい。
第1例の処理手順では、現像装置40の現像剤粒子102の一連の挙動について、粒子密度の高い連続体計算格子については連続体を用いた解析を行なう一方、粒子密度の低い個別粒子計算格子については個別要素法を用いた粒子挙動解析を行ない、その過程で、連続体計算格子と個別粒子計算格子との交換が発生する場合には、連続体による解析結果を粒子に変換し、あるいは粒子挙動解析結果を連続体に変換するようにしている。
すなわち、第1例の処理手順では、画像形成装置1における現像装置40全体の現像剤粒子102の挙動をシミュレーションにより解析するに当たり、粒子密度を判断基準として、現像剤粒子102の量が多い領域(計算格子)は連続体による解析を適用し、現像剤粒子102の量が少ない領域(個別粒子計算格子)は、粉体(詳細にはその粉体を構成する個別の粒子)としての挙動が重要となる領域として、個別要素法による粒子挙動解析を適用することで、現像装置40全体の粒子挙動解析を、精度よく現実的な計算時間で実施可能にしている。密度の高い計算格子は連続体として粒子挙動解析を行なうため、全領域で個別粒子として取り扱った粒子挙動解析を行なう場合と比較して、計算負荷を大幅に減少させることができるからである。
<現像装置での第2の適用例>
図8および図8Aは、具体的な処理の第2例を説明する図である。ここで、図8は、粒子に働く作用力による粒子移動の解析対象領域の境界(連続体領域と個別粒子領域の境界)を特定する境界特定処理(図6のステップS120に相当)と、この境界特定処理結果を利用した粒子挙動解析処理(図6のステップS110〜S118に相当)の手順の一例を示したフローチャートである。図8Aは、現像装置40での第2の適用例において、移動境界を特定する手法の詳細を計算格子の側面から示した図である。
第2例は、第1例と同様に、現像装置40における装置全体の粒子挙動解析への適用例である。特に、前述の第1例との対比としては、移動境界特定部260による移動境界の特定(より具体的には計算格子が連続体計算格子と個別粒子計算格子の何れに該当するかの属性判定)時に、粒子密度ではなく、粒子充填率を判断指標とする点である。基本的には、移動境界特定部260で充填率を判断指標とした処理を行なう点を除いて、前述の第1例と同様である。なお、粒子充填率が殆どゼロに近い部分は個別粒子計算格子に該当しないとする。
第1例のように、粒子密度を用いた場合、計算格子内部で比重の異なる複数種類の粒子が混在した場合には、比重の重い粒子が存在すると、粒子密度が増加するため、個別要素法を適用した詳細な粒子挙動解析が必要な場合でも、その計算格子を連続体として取り扱い解析する場合が発生する虞れがある。これに対して、粒子密度の代わりに、体積当たりの粒子数である充填率を用いることで、高密度格子に対応する高充填率格子と、低密度格子に対応する低充填率格子とを区別することで、前記問題を回避することが可能となる。
たとえば、ステップS210,S212,S216の処理において、物性変換部270は、連続体としての物性を個々の粒子としての物性に変換する際、たとえば、変換に該当する連続体の計算格子ごとに、実際の現像剤粒子102(詳しくはたとえばキャリア粒子102aとトナー粒子102bのそれぞれ)と同じ粒子径を適用するとともに、計算格子が持つ充填率に該当する粒子数を算出し、計算格子に相当する部分に最密充填で配置する。配置した粒子に対して、連続体要素が持つ速度を与える。
たとえば、計算格子内のキャリア粒子102aとトナー粒子102bの各充填率を割り出し、その充填率と実際のキャリア粒子102aとトナー粒子102bの各粒子径とに基づき、計算格子内に最密充填で存在し得るキャリア粒子102aとトナー粒子102bの各粒子数を算出する。そして、キャリア粒子102aとトナー粒子102bのそれぞれ(計算した各粒子数分)を、計算格子内で最も充填率が高くなるような位置に配置する(すなわち、最密充填で配置する)。
<現像装置での第3の適用例>
図9および図9Aは、具体的な処理の第3例を説明する図である。ここで、図9は、粒子に働く作用力による粒子移動の解析対象領域の境界(連続体領域と個別粒子領域の境界)を特定する境界特定処理(図6のステップS120に相当)と、この境界特定処理結果を利用した粒子挙動解析処理(図6のステップS110〜S118に相当)の手順の一例を示したフローチャートである。図9Aは、現像装置40での第3の適用例において、移動境界を特定する手法の詳細を計算格子の側面から示した図である。
第3例は、先ず、移動境界特定部260は、個別粒子領域と連続体領域との移動境界として、ある程度の幅の厚みを持たせて個別粒子領域と連続体領域との緩衝層として機能させる点に特徴を有する。
また、第3例は、粉体の挙動と、その粉体を構成する各粒子の粗密の変化の関係に着目して、粉体の内部と表面(界面)側とを切り分ける処理を行なう点に特徴を有する。すなわち、粉体の内部は表面(界面)側よりも粒子数の多い領域で、個々の粒子の動きよりも粒子の集合体としての振舞いの方が強く表れ、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではない場所と考えられるので連続体領域として取り扱い、粉体の表面(界面)側は内部よりも粒子数の少ない領域で、個々の粒子が独立して動き得る度合いが高く個々の粒子としての挙動が重要となる場所と考えられるので個別粒子領域として取り扱う。
ここで、第3例は、後述する第4例との対比として、ある時点はある程度一体的に纏まっていたものが次の時点では複数の纏まり(グループ)に分かれてしまう場合での適用例で説明する。この場合、データ処理部230は、複数の纏まりとなったそれぞれについて、各纏まりの粉体(グループ)の挙動とその粉体(グループ)を構成する各粒子の粗密の変化の関係に着目して、各粉体(グループ)の内部は連続体領域として取り扱い、各粉体(グループ)の表面(界面)側は個別粒子領域として取り扱う。第4例とは適用事例が異なるだけで、格子を区別するための判断基準の本質には相違がない。
粗密の変化の判断指標は、粉体である現像剤粒子102が比重の同じ複数種類の粒子(キャリア粒子102aとトナー粒子102b)の集合体である場合には前述の第1例のように粒子密度を使うこともでき、また、比重の相違に関わらず第2例のように粒子充填率を使うこともできる。
たとえば、ある時刻における計算格子および粉体の充填状況が図9A(1)に示すような状態にあるものとする。因みに、粉体充填の初期状態は、ユーザによって与えられ、データ入力部220、データ処理部230を介して移動境界特定部260に通知される(S302)。
移動境界特定部260は、ある時刻における粉体(本例では現像剤粒子102の集合体)の形状プロファイルを元に、解析対象領域内の各計算格子内の現像剤粒子102の密度や充填率を算出し、密度や充填率を判断基準とした移動境界を特定する。すなわち、密度や充填率の低い計算格子を個別粒子領域に属する個別粒子計算格子に設定し、密度や充填率の高い計算格子を連続体領域に属する連続体計算格子に設定する。
判断基準としては、たとえば、N%以下(充填率0%を含めて)を個別粒子計算格子として取り扱い、個別粒子計算格子に隣接する充填率N%以上の格子を緩衝格子として取り扱うことを基本とする。一例として、移動境界特定部260は、計算格子別に粒子密度もしくは粒子充填率を計算し、計算格子の粒子密度もしくは粒子充填率がN%未満(あるいはN%以下)の計算格子(低密度格子や低充填率格子)は、個別粒子計算格子に設定する(S310−YES,S312)。
加えて、前述の第1例や第2例とは異なり、粒子密度もしくは粒子充填率がN%以上の(あるいはN%を超える)計算格子(高密度格子や高充填率格子)であっても(S310−NO)、粒子密度もしくは粒子充填率がN%未満(あるいはN%以下)の低密度格子や低充填率格子に対して上・下・左・右の何れか(本例では斜めは除く)で近傍となる(本例では隣接する)計算格子(以下緩衝格子とも称する)については(S311−YES)、連続体計算格子ではなく個別粒子計算格子に設定する(S313)。物性変換部270は、その個別粒子計算格子内の各現像剤粒子102の物性として、その計算格子内にある粉体の個々の粒子の物性情報を持たせる(S314)。
一方、移動境界特定部260は、計算格子の粒子密度がN%以上の(あるいはN%を超える)部分で(S310−NO)、かつ、計算格子の粒子密度もしくは粒子充填率がN%未満(あるいはN%以下)の部分と隣接しない計算格子については(S311−NO)、連続体計算格子に設定する(S316)。物性変換部270は、その連続体計算格子の物性として、連続体の密度、運動量(各粒子の平均速度など)、圧力、充填率などの情報を持たせる(S318)。
次に、データ処理部230は、移動境界特定部260が特定した移動境界を用いて、現像装置40内の現像剤粒子102について、その移動境界で区別された領域(連続体領域に属する連続体計算格子と個別粒子領域に属する個別粒子計算格子)の別に、注目すべき特定の作用力を含む粒子挙動計算を行なう。
この際には、データ処理部230は、各計算格子の属性(連続体計算格子であるのか個別粒子計算格子であるのか)に適した手法を適用して、粉体の時系列挙動の計算を行なう。すなわち、データ処理部230は、粒子挙動解析時に、連続体計算格子については現像剤粒子102のそれぞれを纏めて連続体として取り扱って流体計算を行ない、具体的にはオイラー要素を用いた動解析の適用による解析を行ない(S320−YES,S322)、一方、個別粒子計算格子においては現像剤粒子102のそれぞれを個々の粒子として取り扱い、個別要素法を用いた動解析を行なうことで(S320−NO,S326)、Δt後の状態を計算する。
このようなステップS310〜S326の処理を所定時間に達するまで繰り返し実行することで(S350)、現像装置40全体の現像剤粒子102の挙動解析を連続的に実行する。
この際、物性変換部270は、連続体計算格子と個別粒子計算格子間の物性変換を、質量を基準として、以下のように行なう(S330)。先ず、個別粒子計算格子から連続体計算格子ヘ粒子が移動する場合は、物性変換部270は、当該格子間を移動する粒子の質量および運動量を計算し、連続体計算格子の当該情報を増加させる(S332−YES,S334)。一方、連続体計算格子から個別粒子計算格子ヘ粒子(質量)が移動する場合、物性変換部270は、個別粒子計算格子内では、連続体計算格子から流入する質量および運動量に基づき、連続体計算格子に接している境界側に粒子を発生させる(S232−YES,S236)。
このような変換規則を原則として粒子物性を物性変換部270により移動させた後は、移動境界特定部260は、ステップS310に戻り、粒子密度や粒子充填率を算出して、計算格子の粒子密度や粒子充填率がN%以下であるか否かに基づき、個別粒子計算格子と連続体計算格子とを再度区別する。すなわち、各計算格子における粒子密度や粒子充填率を計算し、N%以下になっている計算格子およびN%以下の計算格子に対して上・下・左・右の何れか(本例では斜めは除く)で隣接するN%を超える計算格子については密度や運動量などの各情報を元にして、内部に粒子を発生させ、個別粒子計算格子として取り扱う(S310−YES〜S313)。一方、N%を超えかつN%以下になっている計算格子に対して隣接しない連続体計算格子は粒子情報を放棄し連続体計算格子として取り扱う(S310−NO〜S316)。
N%以下になっている計算格子における粒子の発生させ方は、前述の第1例の場合と同様にすればよい。加えて、第3例では、前述の第1例や第2例とは異なり、緩衝格子についても個別粒子計算格子に設定するので、この緩衝格子について粒子情報の発生などについては以下の規則を適用する。
先ず、前ステップにおいて個別粒子計算格子である場合は、物性変換部270は、特に何もせずに、前回ステップの粒子情報をそのまま適用する(S333−YES)。また、粒子密度もしくは粒子充填率が粒子1つ分以上増加した場合には、物性変換部270は、それに応じた粒子数の粒子を緩衝格子内に適当に発生させる。
一方、前ステップにおいては連続体計算格子であったものが、個別粒子計算格子に対して隣接して緩衝格子となることで新規に個別粒子計算格子に変化した場合は(S333−NO)、前ステップにおける連続体の情報から、標準粒子発生方法によって緩衝格子内に粒子を発生させる(S334)。
第3例の処理手順でも第1例や第2例と同様に、現像装置40の現像剤粒子102の一連の挙動について、粒子密度の高い連続体計算格子については連続体を用いた解析を行なう一方、粒子密度の低い個別粒子計算格子については個別要素法を用いた粒子挙動解析を行ない、その過程で、連続体計算格子と個別粒子計算格子との交換が発生する場合には、連続体による解析結果を粒子に変換し、あるいは粒子挙動解析結果を連続体に変換するようにしている。これにより、現像装置40全体の粒子挙動解析を、精度よく現実的な計算時間で実施可能にしている。密度の高い計算格子は連続体として粒子挙動解析を行なうため、全領域で個別粒子として取り扱った粒子挙動解析を行なう場合と比較して、計算負荷を大幅に減少させることができるからである。
加えて、第3例の処理手順では、粒子数が多く本来は連続体計算格子となり得るが個別粒子計算格子に対して上・下・左・右の何れか(本例では斜めは除く)で隣接する緩衝格子に関しては、連続体計算格子ではなく個別粒子計算格子として取り扱うことで、計算格子の属性の切替えが頻繁に発生することを軽減し、粒子の生成・消滅に関する計算負荷を軽減している。
個別粒子計算格子と連続体計算格子の切替えを一定の閾値で行なうと、粒子の粗密が計算格子の境界で変動する場合などは、計算格子の属性の切替えが頻繁に発生するため、粒子の生成・消滅に関する計算負荷が増大する。
たとえば、ある時刻における計算格子および粉体の充填状況が図9A(1)に示すような状態にあるときに、次ステップのΔt1後には図9A(2)に示すような状態になったとする。図では詳しくは示していないが、粉体が一纏まりとなっている図9A(1)に示す状態から、複数の纏まりに分かれてしまった状態となり、さらに一纏まりに戻ってしまうケースを想定する。
たとえば、攪拌搬送領域からピックアップ領域への移行過程において、攪拌搬送領域で攪拌搬送された現像剤粒子102が現像ロール140内部に配置された磁極N3により現像ロール140側に吸着される際に、現像ロール140側のある一部分が現像ロール140に引き寄せられて纏まって空中に一旦飛び出し、重力により、また大部分が元に戻る(落下する)ようなケースである。
このようなとき、個別粒子計算格子と連続体計算格子の切替えを一定の閾値(前例ではN%)だけで単純に行なうと、粒子の粗密が計算格子の境界で変動することになり、計算格子の属性の切替えが頻繁に発生するため、粒子の生成・消滅に関する計算負荷が増大する。
これに対して、第3例の処理では、緩衝格子を個別粒子計算格子として取り扱うことで、閾値の変動に対する余裕が生まれるため、そのような計算負荷が減少することになる。
<現像装置での第4の適用例>
図10〜図10Bは、具体的な処理の第4例を説明する図である。ここで、図10は、粒子に働く作用力による粒子移動の解析対象領域の境界(連続体領域と個別粒子領域の境界)を特定する境界特定処理(図6のステップS120に相当)と、この境界特定処理結果を利用した粒子挙動解析処理(図6のステップS110〜S118に相当)の手順の一例を示したフローチャートである。図10Aは、現像装置40での第4の適用例において、移動境界を特定する手法の詳細を計算格子の側面から示した図である。図10Bは、図10Aの一部に着目して示した図である。なお、図10Bでは、現像剤粒子102の集合体(現像剤)である粉体が1種類の粒子の集合体である場合で示している。
第4例は、先ず、移動境界特定部260は、第3例と同様に、個別粒子領域と連続体領域との移動境界として、ある程度の幅の厚みを持たせて個別粒子領域と連続体領域との緩衝層として機能させる点に特徴を有する。また、第4例は、第3例と同様に、粉体の挙動と、その粉体を構成する各粒子の粗密の変化の関係に着目して、粉体の内部と表面(界面)側とを切り分ける処理を行なう点に特徴を有する。
ここで、第4例は、前述の第3例との対比として、ある程度一体的に纏まって動く場合での適用例で説明する。この場合、データ処理部230は、その纏まりについて、纏まりの粉体の挙動とその粉体を構成する各粒子の粗密の変化の関係に着目して、粉体の内部は連続体領域として取り扱い、粉体の表面(界面)側は個別粒子領域として取り扱う。
第4例における粗密の変化の判断指標の取り扱いとしては、前述の第3例(あるいは第1例や第2例)とは異なり、粒子密度や粒子充填率を使うのではなく、計算格子が粉体の界面(表層面)を含むか否かを判断指標とする。計算格子が粉体の界面を含む場合には、その計算格子内の粒子数が少なく、個々の粒子としての挙動が重要であると考えるのである。一方、計算格子が粉体の界面を含まない粉体内部の場合には、その計算格子内の粒子数が多く、個々の粒子としての挙動はさほど重要ではなく、連続体としての挙動の解析でも差し支えないと考えるのである。
また、粉体の界面を含む計算格子に対して上・下・左・右の何れか(本例では斜めは除く)で近傍となる(本例では隣接する)粉体内部側の1つ分の計算格子を緩衝格子として取り扱い、その緩衝格子を、第3例と同様に、個別粒子計算格子に設定する。その目的は、基本的には第3例と同様である。
つまり、第4例では、粉体の界面および近傍では個々の粒子としての挙動が重要となる場所であると判断して、その部分の粉体を個々の粒子として取り扱い個別要素法を粒子挙動解析に適用する一方、粉体内部では、粉体を連続体として取り扱い、たとえばオイラー要素を用いた動解析など、流体モデルを利用した粒子挙動解析を適用する。
たとえば、ある時刻における計算格子および粉体の充填状況が図10A(1)に示すような状態にあるものとする。因みに、粉体充填の初期状態は、ユーザによって与えられ、データ入力部220、データ処理部230を介して移動境界特定部260に通知される(S402)。本例では初期状態における粉体の全体の形状プロファイルを与えることにする。
移動境界特定部260は、ある時刻における粉体(本例では現像剤粒子102の集合体)の形状プロファイルを元に、解析対象領域内の各計算格子内の現像剤粒子102の密度や充填率を算出し、密度や充填率を判断基準として各計算格子が界面(表層)を含むか、粉体内部であるか、粉体を全く含まないかもしくは殆ど含まないかを特定し、その結果に基づいて、各計算格子を個別粒子領域に属する個別粒子計算格子もしくは連続体領域に属する連続体計算格子に設定する。
第4例では、計算格子が粉体の界面(表層面)を含むか否かを判断指標としているが、詳しい数値判定を不要とするべく、着目点を「界面」としている点が第3例と異なるだけで、その判断指標の本質は第3例と同様と考えることができる。たとえば、N%以下(充填率0%を含めて)を個別粒子計算格子として取り扱い、個別粒子計算格子に隣接する充填率N%以上の格子を緩衝格子として取り扱うことを基本とすることと同様に考えることができる。たとえば、図10Aにおいて、界面格子および空気の格子を個別粒子計算格子として扱う(格子に斜めに界面がなっているところはN%以下:個別粒子計算格子と考える)。
一例として、移動境界特定部260は、計算格子別に粒子密度もしくは粒子充填率を計算し、計算格子の粒子密度もしくは粒子充填率が低い部分(粒子密度もしくは粒子充填率がN%未満(あるいはN%以下)の計算格子)を、界面(表層)を含む計算格子(以下界面格子とも称する)であると判断する(S410−YES,S412)。この際には、粒子密度もしくは粒子充填率が殆どゼロに近い部分は個別粒子計算格子および連続体計算格子の何れにも該当しないとする。
加えて、計算格子の粒子密度もしくは粒子充填率が高く粉体内部の計算格子(以下内部格子とも称する)であっても(S310−NO)、界面格子に対して隣接する計算格子(緩衝格子)については(S411−YES)、連続体計算格子ではなく個別粒子計算格子に設定する(S413)。物性変換部270は、その個別粒子計算格子内の各現像剤粒子102の物性として、その計算格子内にある粉体の個々の粒子の物性情報を持たせる(S414)。
この際、物性変換部270は、格子内部に、図10B(2)の拡大図に示すように、界面格子には個々の粒子を配し、またその界面格子に隣接する粉体内部側の格子(たとえば1つ分内側)には、所定の変換規則に従って(ステップS438を参照)、粒子を最密充填で配置する。このとき、粒子個々には、対応する連続体計算格子の平均速度および充填率(もしくは密度)から平均速度および個数を算出し格子内に与える。
一方、移動境界特定部260は、計算格子の粒子密度もしくは粒子充填率が高い内部格子(粒子密度もしくは粒子充填率がN%以上(あるいはN%を超える)計算格子)で(S410−NO)、かつ、界面格子と隣接しない計算格子については(S411−NO)、連続体計算格子に設定する(S416)。物性変換部270は、その連続体計算格子の物性として、連続体の密度、運動量(各粒子の平均速度など)、圧力、充填率などの情報を持たせる(S418)。
次に、データ処理部230は、移動境界特定部260が特定した移動境界を用いて、現像装置40内の現像剤粒子102について、その移動境界で区別された領域(連続体領域に属する連続体計算格子と個別粒子領域に属する個別粒子計算格子)の別に、注目すべき特定の作用力を含む粒子挙動計算を行なう。
この際には、データ処理部230は、各計算格子の属性(連続体計算格子であるのか個別粒子計算格子であるのか)に適した手法を適用して、粉体の時系列挙動の計算を行なう。すなわち、データ処理部230は、粒子挙動解析時に、連続体計算格子については現像剤粒子102のそれぞれを纏めて連続体として取り扱って流体計算を行ない、具体的にはオイラー要素を用いた動解析の適用による解析を行ない(S420−YES,S422)、一方、個別粒子計算格子においては現像剤粒子102のそれぞれを個々の粒子として取り扱い、個別要素法を用いた動解析を行なうことで(S420−NO,S426)、Δt後の状態を計算する。
このようなステップS410〜S426の処理を所定時間に達するまで繰り返し実行することで(S450)、現像装置40全体の現像剤粒子102の挙動解析を連続的に実行する。このように、Δtごとに計算を進めていくことで、広い解析領域においても、計算負荷を大幅に増加させることなく、粉体の挙動について解析するようにする。
この際、物性変換部270は、連続体計算格子から個別粒子計算格子側へ質量が移動した場合には、個別粒子計算格子内に移動した質量分の粒子を増加させ、逆の質量移動の場合には個別粒子計算格子内の粒子を減少させるなどして、粉体質量が保存されるように計算を行なう(S430〜S438)。
図10(2)には、Δt後の充填率に従った計算格子の種類を示されている。図10(2)の例では、表面の粉体の移動などにより、個別粒子計算格子と連続体計算格子の位置が変化した状態となっている。
連続体計算格子から個別粒子計算格子に変化した部分については、前ステップで実施したのと同様手順にて、連続体から個別粒子への粒子物性の変換を行ない、個別粒子計算格子から連続体計算格子に変化した部分については逆の変換を行なうことで、格子状態の更新を行なう。この物性変換においても、緩衝格子との関係は、第3例と同様にすることもできる。
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、前記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
たとえば、個別要素法を適用した粒子挙動解析と、粉体を連続体として取り扱い粉体挙動の解析を行なう粒子挙動解析とを、解析対象空間中の解析対象粒子の数に関する判断指標に基づき特定した領域属性に応じて使い分ける手法を適用する仕組みは、現像装置40への適用に限定されない。たとえば、電子写真方式の転写装置における転写領域やクリーニング装置における清掃領域にも適用できる。また電子写真方式以外では、岩石などの落石シミュレーション、ホッパー内の粉の流動シミュレーション、製薬用製剤装置内の粉末体の流動シミュレーションなどへの適用も可能である。
印刷装置や複写装置などの電子写真方式の画像形成装置の一構成例を示す図である。 現像装置の一構成例を示す図である。 粒子挙動解析システムの一実施形態を示すブロック図である。 粒子挙動解析装置の一構成例を示すブロック図である。 粒子挙動解析装置を、電子計算機を用いて構成する場合のハードウェア構成の一例を示した図である。 本実施形態の粒子挙動解析処理において適用する並列化処理手順の基本例を示したフローチャートである。 具体的な処理の第1例を説明するフローチャートである。 第1例において、移動境界を特定する手法の詳細を計算格子の側面から示した図である。 具体的な処理の第2例を説明するフローチャートである。 第2例において、移動境界を特定する手法の詳細を計算格子の側面から示した図である。 具体的な処理の第3例を説明するフローチャートである。 第3例において、移動境界を特定する手法の詳細を計算格子の側面から示した図である。 具体的な処理の第4例を説明するフローチャートである。 第4例において、移動境界を特定する手法の詳細を計算格子の側面から示した図である。 図10Aの一部に着目して示した図である。
符号の説明
1…画像形成装置、10…感光体10、20…帯電装置、30…露光装置、40…現像装置、50…転写装置、60…クリーニング装置、70…定着装置、101…収納容器、101a…開口部、102…現像剤粒子、102a…キャリア粒子、102b…トナー粒子、140…現像ロール、142…マグネット、150…規制ブレード、160…攪拌搬送ロール、200…粒子挙動解析システム、202…粒子挙動解析装置、202a…主粒子挙動解析装置、202b…副粒子挙動解析装置、208…ネットワーク、208a…ネットワーク管理装置、210…指示入力装置、212…表示装置、220…データ入力部、230…データ処理部、232…データ受付部、234…数値演算処理部、236…出力データ処理部、240…情報提示部、250…分割処理部、260…移動境界特定部(領域特定部)、270…物性変換部

Claims (8)

  1. 解析対象の空間に配置された解析対象粒子の、連続体としての性質が強い領域と個々の粒子としての性質が強い領域とを、前記解析対象の空間中の前記解析対象粒子の数に関する判断指標に基づき切り分ける領域特定部と、
    前記解析対象粒子が、前記連続体としての性質が強い領域と前記個々の粒子としての性質が強い領域との間を移動したとき、当該解析対象粒子の物性を移動前の状態から移動後の状態に適した物性に変換する物性変換部と、
    処理ステッップごとに、前記解析対象粒子が、前記連続体としての性質が強い領域に存在するときには前記解析対象粒子を前記連続体として取り扱う挙動解析を行なうとともに、前記解析対象粒子が、前記個々の粒子としての性質が強い領域に存在するときには前記解析対象粒子を前記個々の粒子として取り扱う挙動解析を行なうデータ処理部と
    を備えたことを特徴とする粒子挙動解析装置。
  2. 前記領域特定部は、前記解析対象の空間中に、1種類もしくは比重の同じ複数種類の前記解析対象粒子が存在するとき、前記解析対象の空間を細分化して計算格子を設定し、各計算格子における前記解析対象粒子の密度を前記数に関する判断指標として、当該密度と所定の閾値とを比較して、密度の高い高率格子は前記連続体としての性質が強い領域に属し、密度の低い低率格子は前記個々の粒子としての性質が強い領域に属すると判定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の粒子挙動解析装置。
  3. 前記領域特定部は、前記解析対象の空間中に、比重の異なる複数種類の前記解析対象粒子が存在するとき、前記解析対象の空間を細分化して計算格子を設定し、各計算格子における前記解析対象粒子の充填率を前記数に関する判断指標として、当該充填率と所定の閾値とを比較して、充填率の高い高率格子は前記連続体としての性質が強い領域に属し、充填率の低い低率格子は前記個々の粒子としての性質が強い領域に属すると判定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の粒子挙動解析装置。
  4. 前記データ処理部は、前記解析対象粒子が前記低率格子内にあるとき、もしくは前記解析対象粒子が前記低率格子の近傍となる前記高率格子内にあるときは、前記解析対象粒子を前記個々の粒子として取り扱う挙動解析を行ない、前記解析対象粒子が前記低率格子と隣接しない前記高率格子内にあるときは、前記解析対象粒子を前記連続体として取り扱う挙動解析を行なう
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の粒子挙動解析装置。
  5. 前記領域特定部は、前記解析対象粒子が前記低率格子内にあるときには前記解析対象粒子が当該解析対象粒子の集合体の界面の領域に存在し、前記解析対象粒子が前記高率格子内にあるときには、前記解析対象粒子が前記集合体の内部に存在すると判断し、
    前記データ処理部は、前記解析対象粒子が前記集合体の界面の領域にあるとき、もしくは前記解析対象粒子が前記界面の近傍となる前記集合体の内部にあるときは、前記解析対象粒子を前記個々の粒子として取り扱う挙動解析を行ない、前記解析対象粒子が前記界面の近傍とはならない前記集合体の内部にあるときは、前記解析対象粒子を前記連続体として取り扱う挙動解析を行なう
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の粒子挙動解析装置。
  6. 前記物性変換部は、前回の処理ステップでは前記低率格子内にあった前記解析対象粒子が今回の処理ステップでは前記低率格子の近傍となる前記高率格子内に移動したときは、当該解析対象粒子の物性として、前記前回の処理ステップでの前記低率格子内での物性を適用する
    ことを特徴とする請求項4または5に記載の粒子挙動解析装置。
  7. 前記物性変換部は、前回の処理ステップでは前記高率格子内にあった前記解析対象粒子が今回の処理ステップでは前記低率格子の近傍となる前記高率格子内に移動したときは、当該解析対象粒子の物性として、前記高率格子ごとに、当該高率格子が持つ密度、当該高率格子内の密度もしくは充填率に該当する粒子数を算出し、当該高率格子に相当する領域に最密充填で配置し、配置した粒子に前記連続体の高率格子が持つ速度を適用する
    ことを特徴とする請求項4または5に記載の粒子挙動解析装置。
  8. 電子計算機に備えられる中央演算制御部を、
    解析対象の空間に配置された解析対象粒子の、連続体としての性質が強い領域と個々の粒子としての性質が強い領域とを、前記解析対象の空間中の前記解析対象粒子の数に関する判断指標に基づき切り分ける領域特定部と、
    前記解析対象粒子が、前記連続体としての性質が強い領域と前記個々の粒子としての性質が強い領域との間を移動したとき、当該解析対象粒子の物性を移動前の状態から移動後の状態に適した物性に変換する物性変換部と、
    処理ステッップごとに、前記解析対象粒子が、前記連続体としての性質が強い領域に存在するときには前記解析対象粒子を前記連続体として取り扱う挙動解析を行なうとともに、前記解析対象粒子が、前記個々の粒子としての性質が強い領域に存在するときには前記解析対象粒子を前記個々の粒子として取り扱う挙動解析を行なうデータ処理部と
    して機能させることを特徴とするプログラム。
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