JP2009133649A - 無線測位システム、無線測位装置および無線測位方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無線測位システム100内の基地局103a〜103d間の時刻合わせに使われる時間基準信号の無駄な送信を減らす。
【解決手段】基地局103a〜103dは、移動端末101が送信した測位パルスを受信すると、受信通知を計算サーバ104に送信する。計算サーバ104は、いずれかの基地局103a〜103dから受信通知を受けたことを契機として、時間基準局102に時間基準パルスの送信開始を命令する。時間基準局102は、その命令があるまでは時間基準パルスの送信をしない。
【選択図】図1

Description

本発明は、無線通信を用いて移動端末の位置を計測する測位技術に関する。
様々な分野において、移動端末の位置を求める、すなわち移動端末の位置を測位することが求められている。また、測位方式としては、既知の位置にある複数の基地局が移動端末からの電波を受信し、例えば計算用サーバが、各基地局における電波の受信時刻から基地局間の伝搬時間差(Time Difference Of Arrival:TDOA。到着時間差や到来時間差ともいう)を算出し、算出したTDOAを用いて移動端末の位置を計測する方式が知られている。
測位の対象となる移動端末は、例えば、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)端末、電池を内蔵し無線送信機能を備えたアクティブ式のRFID(Radio Frequency Identification)タグなど、様々である。また、屋外と屋内のいずれで測位が行われるか、測位にどの程度の精度が求められるか、測位にどの種類の電波が用いられるか、といったことも、利用分野によって様々である。
図12を参照して、TDOA方式の測位システムの原理を説明する。
図12の無線測位システム1000では、位置が未知である移動端末1001が、図12に白抜き矢印で示した電波を送信する。以下の説明では、この電波がパルス波である場合を例とし、そのパルス波を測位パルスと呼んで説明する。
位置が既知である複数の基地局1003a〜1003eはそれぞれ、送信された測位パルスを受信し、測位パルスの受信時刻を測定し、ネットワークを介して受信時刻を計算サーバ1004に送信する。計算サーバ1004は、測定された受信時刻同士の差であるTDOAに基づいて移動端末1001の位置を算出する。
例えば、2次元の位置を測定する場合なら、最低3個の基地局が必要である。しかし、移動端末1001の位置によっては、遮蔽物に遮られて移動端末1001からの電波を受信することができない基地局があるかもしれない。よって、現実的には、より多くの基地局を測定範囲内に配置することが好ましい。図12は、5つの基地局1003a〜1003eが配置されている例である。
ここで、2点からの距離の差が一定の値となる点の軌跡は双曲線を描くことに注目する。すると、原理的には、計算サーバ1004が、複数組の2つの基地局の組についてそれぞれ2つの基地局間の受信時刻の時間差(すなわちTDOA)を計算し、複数の双曲線を求め、それら複数の双曲線の交点を算出すれば、算出された交点は、測位パルスを送信した移動端末1001の位置である。
このような測位計算においては、各基地局の時刻が正確に一致している必要がある。なぜなら、基地局間の受信時刻の差であるTDOAを使うので、もし基地局間の時刻が一致していないと、時間差が正確に求まらず、正しく測位計算を行うことができなくなるからである。
例えば、屋内での物品管理といった用途では、誤差を数十cm程度に抑えることが求められる。電波が1nsに進む距離は約30cmなので、基地局間の時刻は高精度で一致している必要があり、例えば差を1ns未満とすることが求められる。しかし、基地局は通
常、各々が独立した水晶などのクロック(すなわち時間基準)を持っているため、時刻はばらばらである。
そこで、例えば基地局のうちの一局を時間基準局とし、時間基準局から時刻合わせを行うためのパルス波(以下、時間基準パルスという)を送信する、という手法が取られる。図12では、基地局1003aが時間基準局1002を兼ねており、時間基準パルスが破線矢印で図示されている。計算サーバ1004は、時間基準パルスによる時刻合わせをして補正した受信時刻に基づき、移動端末1001の位置を計算する。
時刻合わせを含めた、測位の具体的な方法には様々なものがある。
例えば、特許文献1に記載の測位システムでは、次のようにして無線送信機能を持つノードの位置が測定される。まず、ノードが、位置を測定するための測位信号を送信する。基準局は、測位信号を受信した後、基準時刻を確定するための基準信号を送信する。複数のアクセスポイント(AP)は、測位信号の受信時刻Tx1と基準信号の受信時刻Tx2を測定し、位置計算サーバに送信する(xは各APに対応し、x=a,b,……である)。
位置計算サーバは、各APの座標および各APから基準局までの距離の情報を含むデータベースを備える。位置計算サーバは、各APと基準局との距離を光速で除して、基準局から各APまでの信号伝搬遅延時間Tx3を算出する。基準局が基準信号を送信した時刻Tx4(=Tx2−Tx3)は同時刻を表すので、時刻Tx4を基準として、APの時刻を同期させることができる。
例えば、AP1とAP2はそれぞれx=aとx=bに対応し、位置計算サーバは、時刻Ta4およびTb4を基準として、測位信号受信時刻Ta1とTb1の差を求める。すなわち、位置計算サーバは(Ta4−Ta1)と(Tb4−Tb1)との差を求める。位置計算サーバは、こうして求めた差と、AP1およびAP2の座標とを用いて、ノードの位置を算出する。
特許文献2にも、特許文献1と同様の方法でノードの位置を測定する測位システムが開示されている。また、特許文献2にはUWB(Ultra Wideband;超広帯域無線)のパルス方式を適用することが開示されている。
特許文献3には、基地局が測位信号を受信してから基準信号を受信するまでの時間を用いて、ノードの位置を測定する測位測距システムが開示されている。特許文献3では数式の表現の仕方が多少異なるが、本質的には特許文献1および2と同様の方法でノードの位置が測定される。また、特許文献3には、サンプリングクロックの周期が一定時間(例えば0.5ns)長くあるいは短くシフトすることによって、比較的低速の発振器(例えば約32MHz)と低速のカウンタを使用して、高精度な時間差計測を行う方法も開示されている。
図13は、上記の特許文献1〜3に記載の無線測位システムの概略を示す図である。図13(a)は無線測位システムの構成を示し、図13(b)はタイミングチャートである。
特許文献1〜3の無線測位システムでは、図13(a)の(1)に示すように、測位すべき移動端末1001から測位信号が送信される。また、基地局1003a〜1003cのうち、基地局1003aが時間基準局1002(特許文献1〜3では単に基準局と呼ばれる)を兼ねている。時間基準局1002は、移動端末1001から送信された測位信号を受信した後で基準信号を送信する。基地局1003bと1003cは測位信号と基準信
号を受信する。
基地局1003bと1003cにおける、測位信号と基準信号の受信時刻の差は、それぞれ、図13(b)に示すT1とT2である。また、時間基準局1002と基地局1003bとの距離、および時間基準局1002と基地局1003cとの距離は既知なので、距離を光速で除すことにより、基準信号の伝搬時間が算出可能である。よって、特許文献3の式(2)に示されるように、基準信号の伝搬時間の差からT1とT2との差を減ずることで、測位信号の基地局1003bと1003cそれぞれへの測位信号の伝搬時間の差が得られる。
しかしながら、特許文献1〜3の無線測位システムでは、基地局のクロック同士のスケールの違い、すなわち単位時間当たりに時刻が進む割合の違いについて考慮されていないという問題がある。一般には、クロック自体のばらつきが原因で、複数の基地局それぞれのクロックのスケールは異なる。つまり、一般には、複数の基地局それぞれのクロックは、位相が一致していないことがあるだけではなく、周波数も一致していないことがあり、そのため時刻の進み具合が基地局間で異なることがある。
したがって、基地局間の時刻を一致させるには、単に時間原点を基地局間で合わせるだけでなく、クロックのスケールも基地局間で合わせる必要がある。しかし、図13(b)に示す時間差T1とT2はいずれも、スケールが調整されていない状態の2つの時刻の差である。T1は、基地局1003bのクロックにより測定され、一方T2は、基地局1003Cのクロックにより測定される。各基地局のクロックはそれぞれ独立しており、スケール差がある。その結果、最終的に測位される移動端末1001の位置も、クロックのスケールの違いに起因する誤差を含んでしまう。
そこで、特許文献1〜3の無線測位システムとは異なる仕組みの無線測位システムが考えられる。次に、その具体的な動作について、図12〜図15を参照して説明する。
例えば「10回」など所定の数の時間基準パルスを図12の時間基準局1002が送信し、各基地局1003b〜1003eでは、個々の時間基準パルスに対応する受信時刻を測定する。時間基準局1002における時間基準パルスの送信時刻と、各基地局1003b〜1003eにおける受信時刻と、時間基準局1002と各基地局1003b〜1003eとの距離とを用いた計算により、時刻合わせが可能となる。
以下では、基準となる時刻を「基準時刻」といい、各基地局における時刻をそれぞれ当該基地局の「局所時刻」といい、時間基準局1002の局所時刻を基準時刻として用いる場合を例として時刻合わせについて説明する。
図14は、直線近似による時刻合わせを説明するグラフである。図14は、ある1つの基地局(例えば、以下の説明では図12の基地局1003bとする)に注目して、その特定の基地局1003bの局所時刻Tを時間基準局1002における基準時刻に補正する時刻合わせの方法を示している。図14のグラフの縦軸は時間基準局1002における基準時刻sであり、横軸は時刻合わせの対象である基地局1003bにおける局所時刻tである。
時間基準局1002は、(n+1)回という所定の回数、時間基準パルスを送信する。これら(n+1)個の時間基準パルスを送信した時の時間基準局1002における基準時刻は、それぞれ、
,S,S,……,Sn−2,Sn−1,S
である。また、基地局1003bがこれら(n+1)個の時間基準パルスをそれぞれ受信した時の、基地局1003bにおける局所時刻は、
,T,T,……,Tn−2,Tn−1,T
である。
図14は、0≦j≦nなる各jについて(s,t)=(S,T)なる点をプロットしたグラフである。計算サーバ1004は、これら(n+1)個の点の座標から、最小2乗法を用いて、
s=at+b
なる近似直線の係数aとbを算出することができる。すなわち、もし時間基準局1002と基地局1003bのクロック同士の原点とスケールが等しければ、Lを時間基準局1002と基地局1003bとの既知の距離、cを光速として、
s=t+L/c
となることを利用して、計算サーバ1004は、誤差の2乗和が最小となるようなaとbの値を算出する。このようにして算出された係数aとbを用いれば、時間原点、スケールの双方のずれを考慮に入れた時刻合わせが可能となる。もちろん、直線に近似する以外にも、2次曲線に近似するなど、他の方法も可能であるが、簡単のため、直線に近似する場合を例とする。
ここで、図12の無線測位システム1000が、恒常的に移動端末1001の測位を続けるものである場合、時間基準局1002は、時刻Sの(n+1)回目の時間基準パルスを送信した後にも、さらに時間基準パルスの送信を続ける。図14にはそのうち、(n+2)回目の時間基準パルスの送信時刻Sn+1と受信時刻Tn+1とが示してある。
図14に示すように、基地局1003bにおける時刻Tから時刻Tn+1までの区間(ただし時刻Tn+1を除く)を「区間A」ということにする。区間A内のある時刻Tに、基地局1003bが移動端末1001からの測位パルスを受信したとすると、その受信時刻Tは、計算サーバ1004に送られた後で、計算サーバ1004により時刻Sに補正される。つまり、計算サーバ1004は、直前に時刻S〜Sおよび時刻T〜Tから算出した係数aとbを用いて、
S=aT+b
なる、補正された時刻Sを算出する。
他方、計算サーバ1004は、(n+2)回目の時間基準パルスの送信時刻Sn+1と受信時刻Tn+1を受け取ると、係数aとbを再計算する。すなわち、
,S,……,Sn−2,Sn−1,S,Sn+1
なる(n+1)個の送信時刻と、
,T,……,Tn−2,Tn−1,T,Tn+1
なる(n+1)個の受信時刻とから、計算サーバ1004は上記と同様にして、係数aとbの値を計算しなおす。(n+3)個目以降の時間基準パルスについても同様である。
このように、計算サーバ1004による移動端末の受信時刻の補正は、次の時間基準パルスが到着するまでの間、直前の(n+1)組の送信時刻と受信時刻の組から求めた係数aとbを使って行われる。補正に使われる係数aとbは、初回の算出以降、時間基準パルスの受信時刻を計算サーバ1004が基地局1003bから受け取るたびに、再計算され、更新される。
なお、上記の説明では時刻合わせの対象として基地局1003bを取り上げたが、他の基地局1003c〜1003eについても同様である。
図15は、上記で説明した直線近似による時刻合わせの方法をまとめた図である。すなわち、図15の左側には、時間基準パルスの送信時刻S〜Sと、それに対応する受信時刻T〜Tと、時間基準局と時刻合わせの対象の基地局との距離という3種類のデー
タが示されている。図15の中央列と右列には、計算サーバ1004が、これらのデータを用いて時刻合わせを行って補正に必要な係数を算出し、区間Aに受信した移動端末からの測位パルスの受信時刻を補正することが示されている。
特開2005−140617号公報 特開2006−170891号公報 特開2007−71819号公報
上記のように時間基準パルスを複数回送受信して時刻を補正すれば、クロック同士のスケールの違い、すなわち周波数の違いも考慮されるため、より測位の精度も高まると期待される。しかし、時間基準パルスを複数回送受信する方式には、必要以上に電波の送信が行われることがある、という問題がある。図16はその問題を説明するタイミングチャートである。
図16は、図12のうちのある1つの基地局(例えば基地局1003bであると仮定して説明する)において受信されるパルスを示すタイミングチャートである。図16の上段(a)は、移動端末1001から送信された測位パルスを示し、下段(b)は時間基準局1002から送信された時間基準パルスを示す。図16(a)に示すように、測位パルスPを受信するまでは、移動端末1001から何も受信されない期間が続いている。この期間では、移動端末1001が測定範囲内にないか、あるいは、測定範囲内にあっても測位パルスを送信していないために、移動端末1001からの測位パルスが受信されない。そのため、図16ではこの期間を「待機時間」と表現してある。
一方で、待機時間の間には、図16(b)に示すように、(n+1)個よりも多い時間基準パルスQ〜Qが受信されている。すなわち、待機時間においても無線測位システム1000は稼動しており、時間基準局1002による時間基準パルスの送信と計算サーバ1004による時刻合わせの計算が行われている。
上記のように、移動端末1001の位置を測定するため、つまり測位計算を行うためには、予め、時間基準局1002から時間基準パルスを送信し、時刻合わせを完了させておく必要がある。例えば、図14の区間Aにおける測位計算のためには、予め、時間基準局1002が時刻S〜Sに(n+1)個の時間基準パルスを送信しておく必要がある。しかし、一般には、いつ移動端末1001が測定範囲内で測位パルスを送信し始めるかということを予め知ることはできない。
そこで、図16に示すように、移動端末1001がいつ最初の測位パルスPを送信してもかまわないように、時間基準局1002は、事前に時間基準パルスの送信を開始する。結果的には、図16の場合、時刻合わせに必要な(n+1)個の時間基準パルスQ〜Qが基地局1003bに受信された後も、しばらく移動端末1001からは何も受信されない状態が続く。その状態でも、やはり移動端末1001からの最初の測位パルスPがいつ受信されるかが不明なので、時間基準局1002は時間基準パルスの送信を続ける。
結局、図16の例では、基地局1003bは、(m+1)個目のパルスQを受信した直後に移動端末1001からの測位パルスPを受信する。よって、時刻合わせには時間基準パルスQm−n〜Qが使われ、時間基準パルスQ〜Qm−n−1は結果的に使われず、無駄となる。
一般論として、電波は限られた資源であるため、電波の送信(すなわち電波の利用)は
、必要最低限にすることが望ましい。また、他の無線通信機器への与干渉を抑制するためにも、電波の無駄な送信は控えることが望ましい。よって、基地局間の時刻を精度よく補正することによって精度よく測位を行うために複数の時間基準信号(例えば時間基準パルス)を使った時刻の補正を行う場合にも、それらの時間基準信号の過剰な送信を避けることが望ましい。
そこで、本発明は、複数の時間基準信号をできるだけ効率的に送信し、無駄な送信を低減することを目的とする。
本発明による無線測位システムは、複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を測位する無線測位システムであって、時間基準制御手段と補正時刻取得手段と測位計算手段とを備える。
前記時間基準制御手段は、前記測位信号を受信したという通知を前記複数の基地局のうち任意の1つから受信したことを契機として、前記複数の基地局それぞれの局所時刻を基準時刻に補正するための時間基準信号を無線通信により前記複数の基地局に送信することを開始する制御を行う。
前記補正時刻取得手段は、それぞれの前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記複数の基地局の位置と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻とに基づいて前記基準時刻に補正された、前記複数の基地局それぞれにおいて前記測位信号を受信した時のそれぞれの時刻を取得する。
前記測位計算手段は、前記補正時刻取得手段が取得した前記時刻に基づいて、前記複数の基地局間における前記測位信号の伝搬時間差を計算し、前記複数の基地局の位置と前記伝搬時間差とに基づいて、前記移動端末の位置を計算する。
本発明の別の態様によれば、複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を測位する無線測位システムにおいて、前記複数の基地局と接続され、上記と同様の時間基準制御手段と測位計算手段とを備えた、無線測位装置が提供される。
上記のいずれの態様においても、本発明によれば、移動端末が測位信号を送信しない限り時間基準信号は送信されないので、時間基準信号の無駄な送信を防ぐことができ、効率的な送信が実現される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1実施形態のシステム構成図である。図1の無線測位システム100は、無線電波を送信する移動端末101の位置を測位するシステムであり、時間基準局102を兼ねた基地局103aを含めて複数の基地局103a〜103dを備え、さらに計算サーバ104を備える。基地局103a〜103d同士の相対的な位置関係は既知とする。各基地局の位置は、例えば事前にレーザ測長計などの別の手段により測定したり、予め決められた位置に各基地局を配置することで、既知となっているものとする。
また、各基地局103a〜103dと計算サーバ104は、ネットワークで接続されている。本実施形態では、そのネットワークは有線LAN(Local Area Network)であるが、他の実施形態では無線LANなどの無線ネットワークであってもよい。
詳細は後述するが、本実施形態において移動端末101および時間基準局102が送信する電波はUWBのパルス波であり、より詳細にはUWBのインパルス電波である。以下、移動端末101が送信するパルス波を「測位パルス」といい、時間基準局102が送信するパルス波を「時間基準パルス」という。
無線測位システム100が稼動を始めたとき、すべての基地局103a〜103dは受信待機状態にあり、移動端末101からの測位パルスの受信を待ち受けている。この時点では、時間基準局102はまだ時間基準パルスの送信を行わない。
図1の(1)に示したように、ある時点において、無線測位システム100の測定範囲内に移動端末101が入ってきて、測位パルスの送信を開始する。すると、特に遮蔽物などがなければ、基地局103a〜103dがそれぞれ測位パルスを受信する。
続いて、基地局103a〜103dはそれぞれ、(2)に示したようにネットワークを介して、測位パルスの受信を計算サーバ104に通知する。計算サーバ104は、基地局103a〜103dからの通知のうち最初の1つを受信すると、時間基準パルスの送信が行われているか否かを判断する。もし時間基準パルスの送信が現在行われていなければ、この最初に受信した通知を契機として計算サーバ104は、(3)に示すように、時間基準パルスの送信をするよう、ネットワークを介して時間基準局102に命令を発行する。
そして、計算サーバ104からの命令にしたがって、時間基準局102は、(4)に示すように時間基準パルスの送信を開始する。
無線測位システム100は以上のように動作するので、予め時間基準パルスを複数回送信したが結果的に無駄になるといった、図16で説明した事態は生じない。すなわち、上記の方法により、無駄な時間基準パルスの送信を控えることができる。
また、移動端末101が測定範囲外に出ていった後、あるいは移動端末101が測位パルスの送信をやめた後には、基地局103a〜103d間の時刻合わせをする必要がなくなる。よって、そのときにも、無駄な電波の送信をしないようにするため、時間基準パルスの送信を控えることが望ましい。
そこで、本実施形態の計算サーバ104は、基地局103a〜103dから測位パルスを受信したという通知を受けた直近の時刻を記憶する。以下、この記憶される時刻を「最終通知受信時刻」という。すなわち、移動端末101から測位パルスを受信したという通知を基地局103a〜103dのいずれかから受信するたびに、計算サーバ104は、最終通知受信時刻をその受信時刻に更新して、記憶する。
計算サーバ104は、例えば所定の間隔で、現在時刻と最終通知受信時刻とを比較する。その比較によって、計算サーバ104は、移動端末101からの測位パルスを受信したという通知がどの基地局103a〜130dからも送信されてこない状態がどれほど続いているかを確認する。
測位パルスは、常にすべての基地局103a〜103dで受信可能であるとは限らないが、送信されれば少なくとも1つの基地局では受信可能であることがほとんどである。よって、測位パルスの受信通知がどの基地局103a〜130dからも送信されてこない状態とは、移動端末101が測位パルスを送信していない状態であると見なすことができる。
確認の結果、予め決められた閾値よりも長い時間に渡ってそのような状態が続いている
と判明すると、すなわち、現在時刻と最終通知受信時刻との差が閾値以上であると判明すると、計算サーバ104は、時間基準パルスの送信を中止すべきことを決定する。したがって、もし、その時点において時間基準局102が時間基準パルスの送信を続けていれば、計算サーバ104は時間基準局102に時間基準パルスの送信中止を命令する。
上記のように時間基準パルスの送信の開始と中止を計算サーバ104が制御することにより、図1の無線測位システム100においては、無駄な電波の送信が抑制される。なお、計算サーバ104は、時間基準局102に対して命令した最新の命令が、時間基準パルスの送信開始命令と送信中止命令のいずれであるかを記憶しているので、時間基準パルスの送信が現在行われているか否かを判断することができる。
しかし、このようにして時間基準パルスの無駄な送信を控えるだけでは、時間基準パルスの送信開始の契機を作った移動端末101からの測位パルスによる測位が行えず、測位パルスが無駄になってしまう。
なぜなら、契機を作った最初の測位パルスを受信した時点では、時間基準パルスが送信されていないため、基地局103a〜103d間の時刻合わせに必要な情報が存在しないからである。つまり、時刻合わせができないので、最初の測位パルスを使った測位もできない。そこで、測位パルスも無駄にしないように無線測位システム100を構成することが望ましい。
以下では、図14や図16と同様に第1実施形態においても、時刻合わせには、時間基準パルスの送信時刻と受信時刻の組が(n+1)組必要であるとする。この場合、(n+1)個の時間基準パルスが送信されて、時刻合わせに必要な情報が揃い、時刻合わせが完了するまでの間に各基地局103a〜103dで受信した移動端末101からの測位パルスの受信時刻を無駄にしないための仕組みを備えることが望ましい。
そこで本実施形態では、時刻合わせが完了するまでの間に基地局103a〜103dが受信した測位パルスの受信時刻を計算サーバ104がバッファリングする、すなわちメモリ等に保存する。それにより、時刻合わせが完了してから、バッファリングされた測位パルスの受信時刻を補正し、過去の移動端末101の位置を測位することが可能となるので、測位パルスが無駄にならない。つまり、本実施形態によれば、時間基準パルスも測位パルスも、ともに無駄な送信がなく、電波が有効に利用される。
次に、時間基準パルスの送信の開始・停止(中止)に関する上記の制御と、測位パルスの受信時刻のバッファリングとを含めて、測位の全体的な流れの概要を説明する。
無線測位システム100が稼動を開始した時点では、時間基準パルスは送信されていない。その状態で、移動端末101が無線測位システム100の測定範囲内に入ってきて最初の測位パルスを送信すると、上記で説明したとおり、時間基準局102が時間基準パルスを送信し始める。それと並行して、ネットワークを介して各基地局103a〜103dが、測位パルスの受信時刻を計算サーバ104に送信し、計算サーバ104はそれらの受信時刻のデータをバッファリングする。ここでバッファリングされる時刻は局所時刻で表されている。
また、時間基準パルスの送信開始後、時間基準局102は、時間基準パルスの送信時刻のデータを計算サーバ104に送信する。そして、時間基準局102以外の各基地局103b〜103dは、時間基準パルスを受信し、その受信時刻を記録し、計算サーバ104に受信時刻のデータを送信する。したがって、計算サーバ104には、基準時刻で表された時間基準パルスの送信時刻と、各基地局103b〜103dの局所時刻で表された時間基準パルスの受信時刻とのデータが蓄積される。
計算サーバ104は、時間基準パルスの送信時刻のデータが(n+1)個揃い、基地局103bにおける時間基準パルスの受信時刻のデータが(n+1)個揃った後で、時間基準局102と基地局103bとの既知の距離と、(n+1)組の送信時刻と受信時刻との組から、図14で説明したのと同様の方法で、時刻合わせを行う。すなわち、計算サーバ104は、基地局103bの局所時刻を基準時刻に補正するための係数を算出する。同様にして、計算サーバ104は、他の基地局103c〜103dについても、局所時刻を基準時刻に補正するための係数を算出する。
計算サーバ104は、基地局103bが測位パルスを受信した受信時刻をバッファから読み出し、基地局103b用に算出した係数を用いて読み出した基地局103bの局所時刻を基準時刻に補正する。同様に、基地局103cと103dにおける測位パルスの受信時刻も、計算サーバ104により基準時刻に補正される。また、基地局103aは時間基準局102であるから、基地局103aにおける測位パルスの受信時刻は、もともと基準時刻で表されている。
すなわち、時間基準パルスの送信開始の契機を作った最初の測位パルスの各基地局103a〜103dにおける受信時刻を基準時刻で表した時刻を、(n+1)個の時間基準パルスが送信された後で、計算サーバ104が取得する。計算サーバ104は、基準時刻で表されたそれら4つの受信時刻から、2つの基地局のすべての組み合わせについて、当該2つの基地局間での測位パルスのTDOAを計算する。図1の無線測位システム100の例では、4つの基地局があるので、2つの基地局の組み合わせは
=6通り
である。つまり、計算サーバ104は6つのTDOAを計算する。
算出された6つのTDOAから移動端末101の位置を計算する方法は、様々な方法が知られており、そのうちの1つについては後で詳しく説明するので、ここでは説明を省略する。理論的には、6つのTDOAに対応する6つの双曲線は、1点で交わり、その交点こそが、測位パルスを送信した時の移動端末101の位置である。しかし、実際には様々な要因による誤差があるため、6つの双曲線が1点で交わらないことがほとんどである。
こうして最初の測位パルスを送信した時点での移動端末101の位置が計算された後も、本実施形態では、上記で説明した制御によって明示的に停止が命令されない限り、時間基準局102が時間基準パルスを送信し続けている。それにともない、時間基準局102は時間基準パルスの送信時刻のデータを計算サーバ104に送信し、その他の基地局103b〜103dは時間基準パルスの受信時刻のデータを計算サーバ104に送信するという動作も続行する。
したがって、現在時刻と最終通知受信時刻との差が閾値に達しないうちに再度移動端末101が測位パルスを送信すると、直近の(n+1)組の時間基準パルスの送信時刻と受信時刻の組から得られた係数を使って、計算サーバ104が、基地局103b〜103dにおける測位パルスの受信時刻を補正し、1回目の測位パルスの場合と同様にして、移動端末101の位置を計算する。
次に、図2を参照して、第1実施形態の無線測位システム100の動作と図13の従来例とを比較する。図2は、図13と同様の形式により第1実施形態の無線測位システムの動作の概略を示す図である。
図2(a)は、図1のシステム構成を簡略化して示した図である。2次元の測位を行うためには最低限3つの基地局が必要なので、図2(a)では図13と同様に3つの基地局
のみを図示し、基地局103dと計算サーバ104の図示を省略して、図を簡略化してある。図2(a)には、上記で説明したように、移動端末101が送信した測位パルスが基地局103a〜103cで受信されることと、基地局103aでもある時間基準局102が送信した時間基準パルスが他の基地局103bと103cで受信されることが示されている。
上記で説明したように、第1実施形態では、バッファリングされたデータを使って、時刻合わせの完了後に測位が行われる。すなわち、図2(b)に示すように、基準時刻で表された各基地局103a〜103cにおける測位パルスの受信時刻から、基地局103aと103bとの間の伝搬時間差(TDOA)Taと、基地局103bと103cとの間の伝搬時間差Tbと、基地局103aと基地局103cとの間の伝搬時間差(Ta+Tb)が算出される。
図2(b)を図13(b)と比較すると、図13(b)では、基地局間のクロックのスケールの違い、すなわちクロックの周波数のばらつきに起因する時刻の進み具合の違いが補正される前の、各基地局における2つの局所時刻の差が測位に用いられるのに対し、図2(b)ではスケールの違いも含めて補正された後の、各基地局における測位パルスの受信時刻が測位に用いられる。よって、図13に示した従来の方法に比べ、本実施形態では、より高い精度での測位が可能になると期待される。
次に、測位パルスの送信が繰り返される場合の無線測位システム100の動作を、図3を参照して説明する。図3は、第1実施形態における測位パルスの送受信シーケンスおよび時間基準パルスの送信シーケンスを示したタイミングチャートである。
図3の(a)、(b)、(c)はそれぞれ、移動端末101による測位パルスの送信シーケンス、ある1つの基地局(例えば基地局103b)による測位パルスの受信シーケンス、時間基準局102による時間基準パルスの送信シーケンスを示す。図3におけるこれらのタイムシーケンスは、ある特定の局所時刻によってではなく、実際の絶対的な時刻によって図示されている。
図3(a)の例では、移動端末101が複数の測位パルスP〜Pa+1を送信している。測位パルス同士の間隔は一定でも一定でなくてもかまわない。以下、図3(b)の基地局が基地局103bである場合を例にして説明する。
移動端末101から送信された複数の測位パルスはそれぞれ、(1)に示した伝搬時間後に、図3(b)に示すように、基地局103bで受信される。
ところが、上記のとおり、最初の測位パルスPがいずれかの基地局103a〜103dで受信され、その受信通知が計算サーバ104に届き、計算サーバ104が時間基準局102に時間基準パルスの送信開始を命令するまでは、図3(c)に示すように、時間基準パルスの送信は行われていない。したがって、基地局103bが測位パルスPを受信した時点では、その受信時刻を局所時刻から基準時刻に補正することができない。そこで、基地局103bは、基地局103bの局所時刻で表した測位パルスPの受信時刻のデータを、計算サーバ104へ送る。計算サーバ104は、受け取ったデータをバッファリングする。
それと並行して、基地局103a〜103dのいずれかから、最も早く届いた測位パルスの受信通知を契機として、計算サーバ104は時間基準局102に時間基準パルスの送信開始を命令する。そして、時間基準局102が時間基準パルスの送信を開始する。
時刻合わせに求められる精度によって、実験などにより予め、時刻合わせに必要な時間
基準パルスの個数すなわち(n+1)が決められている。よって、時間基準局102は、時間基準パルスQの送信に続いて、適当な間隔で時間基準パルスQ〜Qの送信を続ける。また、第1実施形態では、時間基準局102は、明示的に計算サーバ104から停止を命令されない限り、時間基準パルスの送信をさらに続ける。
その一方で、図3(a)に示すように、移動端末101は測位パルスの送信を継続する。よって、図3(b)のとおり、2個目以降の測位パルスP〜Pa+1も基地局103bで次々に受信される。
図3には時間基準パルスの受信シーケンスを示さなかったが、基地局103bにおいて、測位パルスPの受信以後、測位パルスPa+1の受信よりも前に、時刻合わせに必要な(n+1)個の時間基準パルスQ〜Qを受信し終えたとする。この場合、時刻合わせに必要な時間基準パルスの受信時刻のデータが揃うよりも前に受信した測位パルスP〜Pの受信時刻は計算サーバ104にバッファリングされる。そして、基地局103bが時間基準パルスQを受信して時刻合わせが完了し、他の基地局に関しても同様に時刻合わせが完了してから、測位パルスP〜Pを送信した時点での移動端末101の位置の測位計算が行われる。
その後、各基地局で継続的に受信される測位パルスに関しては、測位パルスの送信間隔が空きすぎて明示的に時間基準パルスの停止が命令されない限り、特にバッファリングを必要とせずに、直近の(n+1)個の時間基準パルスを使った時刻補正と測位計算が順次行われる。
次に、図1の無線測位システム100のより詳細な構成について、図4を参照して説明する。図4は、第1実施形態における移動端末と基地局と計算サーバの機能ブロック図である。
図4には、図1に示した無線測位システム100の構成要素のうち、移動端末101と、時間基準局102を兼ねる基地局103aと、計算サーバ104の機能構成を図示した。なお、本実施形態において複数の基地局103a〜103dはいずれも同じ構成であるため、図4では、基地局103a〜103dのうち基地局103aのみ機能構成を示した。
図4に示すとおり、移動端末101は、測位パルスタイミング生成部201と送信部202と送信アンテナ203とを備える。第1実施形態における移動端末101は、アクティブ式のRFIDタグであり、受信機能に係る各種ハードウェアを搭載しないことにより、製造コストを抑えたものである。このようなRFIDタグは、倉庫等の屋内での物品の追跡管理用に好適である。なお、ここで「タグ」という用語を用いているが、形状や大きさを限定する趣旨ではない。例えば、移動端末101は、カードのような薄い平面的な形状でもよく、より厚みをもった形状でもよい。
ここで、移動端末101の動作を説明するために、本実施形態で用いられる無線通信の方式について説明する。
前述のとおり、第1実施形態で利用される電波はUWBのインパルス電波(UWB−IR:UWB Impulse Radio)である。UWBの定義はいくつかあるが、ここでは、500MHz前後の帯域幅を有する無線通信、または、中心周波数に対する帯域幅の比である比帯域幅が20%以上の無線通信を指すものとする。インパルスの時間幅は、例えば、2〜3ns程度のものが使われる。また、第1実施形態における無線通信の変調方式はPPM(Pulse-Position Modulation;パルス位置変調)である。
インパルス電波は、時間幅が非常に短く、波形の立ち上がりと立ち下がりが非常に急峻なので、受信時刻の時間分解能が高い。すなわち、受信時刻の精度が高い。そのため、UWB−IRは、受信時刻を正確に求めるのに適した種類の電波であり、数十cm程度の精度を求められる無線測位システムに好適である。例えば、UWB−IRは、屋内での物品の追跡管理を対象とした無線測位システムに好適である。
ところで、例えば図3(a)では、個々の測位パルスを1つの矩形パルスのように図示しているが、これは説明の便宜上、模式化して図示したものである。他の図においても同様であり、時間基準パルスに関しても同様である。以下に、移動端末101の動作とあわせて、実際に移動端末101から送信されるインパルス電波と模式化された図3(a)の測位パルスとの関係を説明する。
移動端末101が無線通信によって何らかのデジタルデータを送信するときの動作は次のとおりである。
測位パルスタイミング生成部201は、PPM変調による送信パルス列を作成するためのタイミングパルスを生成し、送信部202に出力する。測位パルスタイミング生成部201は、タイミングパルスの生成のために、例えばPN(Pseudorandom Noise;擬似ランダム雑音)系列の符号列を生成してもよい。
送信部202は、ある特定の固定パターンのインパルス列をプリアンブルとして生成し、プリアンブルに続けて、送信対象のデジタルデータを表すインパルス列を生成する。送信対象のデジタルデータを表すインパルス列は、送信対象のデジタルデータの0と1の並びに対応したデータパルス列を、測位パルスタイミング生成部201から入力されたタイミングパルスを使ってPPM変調することにより、生成される。送信部202は、例えばステップリカバリダイオードによってインパルス電波を生成してもよい。
生成されたインパルス列は、送信部202内部で、バンドパスフィルタにより許容帯域外のスペクトラム成分が除去された後に増幅されてから、送信アンテナ203に出力される。送信アンテナ203は送信部202からの入力にしたがい、UWBインパルス電波を放射する。以上の動作によって、移動端末101からのデジタルデータの無線送信が実現される。
こうして移動端末101から送信されるデジタルデータの送信時刻は、例えば、プリアンブル内の特定の位置のパルスの、生成時刻もしくは送信アンテナ203からの送信時刻であると定義されてもよい。あるいは、プリアンブル後の最初のパルスの生成時刻もしくは送信アンテナ203からの送信時刻が、デジタルデータの送信時刻として定義されてもよい。
移動端末101は測位のために、所定の形式のデジタルデータを無線送信する。このデジタルデータを以下では「測位データ」ということにする。測位データを表す無線信号は、上記測位信号の一例である。
例えば、測位データの送信回数を表し、測位データを識別する番号(以下、「送信ID」という)と、移動端末101を識別するためのIDとが、所定のデリミタで区切られて並べられた形式を、測位データの形式として採用することができる。この場合の測位データは、送信IDとデリミタと移動端末101のIDとからなる。もちろん、チェックサムなど他のデータをさらに含む形式を採用することもできるし、送信IDと移動端末101のIDがそれぞれ固定桁数で表される場合にはデリミタがなくてもよい。
図3(a)は、測位データを無線送信するための一連のインパルス列のうち、送信時刻
を規定する特定の位置の1つのインパルス、すなわち測位パルスのみを抜粋して、矩形形状で模式的に図示したものである。つまり、測位データの1回の送信に対応するパルス群を代表する1つのパルスとして、測位パルスのみを抜粋したのが図3(a)である。
例えば、図3(a)の測位パルスPは、移動端末101が測位データを最初に無線送信するときの、一連のインパルス列のうち、送信時刻を規定する特定の位置のインパルスに対応する。同様に、測位パルスPは、移動端末101が測位データを2回目に無線送信するときの、一連のインパルス列のうち、送信時刻を規定する特定の位置のインパルスに対応する。
以下では、特にデータの内容等に注目する場合でなければ、「測位パルスを送信/受信する」等の表現をすることがあるが、「測位パルスの送信/受信」は「測位データの送信/受信」を含意する。
移動端末101は、例えば予め決められた一定の周期で測位データを無線送信してもよい。すなわち、移動端末101は一定の周期で測位パルスを送信してもよい。例えば、屋内での物品の追跡管理の用途に無線測位システム100が使われる場合、物品に取り付けられた移動端末101は、例えば10Hzなどの所定の頻度で定期的に、測位データを無線送信する制御を行う。その制御のもと、測位パルスを含む一連のインパルスが、上記のようにして移動端末101から送信される。
続いて、図4を参照して基地局103aの構成および機能について説明する。基地局103aは、受信アンテナ211、受信部212、タイマ213、受信時刻測定部214、移動端末受信時刻保持部215、時間基準パルス受信時刻保持部216、時間基準パルスタイミング生成部219、送信部220、送信アンテナ221を備える。
また、各基地局には、それぞれ一意なIDが予め割り当てられており、個別に認識可能である。各基地局は不図示の設定情報格納部に自分のIDを格納しており、自分のIDを認識することができる。さらに、上記不図示の設定情報格納部は、自基地局が時間基準局102であるか否かを示す設定情報も格納しており、各基地局は、設定情報を参照することによって自基地局が時間基準局102であるか否かを認識することができる。
受信アンテナ211は、UWBのインパルス電波を受信する。受信されたインパルス電波は、受信部212において、バンドパスフィルタにより不要な周波数成分が除去され、低雑音増幅され、デジタル化される。
タイマ213は、例えば水晶振動子によってクロック信号を発生させるとともに、発生させたクロック信号の数をカウンタで計数し、基地局103a内部の局所時刻を管理する。基地局103aは時間基準局102を兼ねるので、基地局103aの局所時刻は基準時刻でもある。一般には、各基地局103a〜103dにおけるタイマ213でそれぞれ管理されるそれぞれの局所時刻は、進み方の度合い(すなわちスケール)も異なり、時刻の原点も異なる。
タイマ213は、必要に応じてクロック信号を基地局103aの各部に供給する。
受信時刻測定部214は、受信部212でデジタル化された受信パルス列と、タイマ213で管理される局所時刻とに基づいて、タイミング同期を取り、受信時刻を決定し、データを復調する。
第1実施形態において基地局103aが無線通信により受信するデータの1つは、移動端末101が送信する前述の測位データである。
また、基地局103aは時間基準局102を兼ねるので時間基準パルスを送信する側だが、他の基地局103b〜103dは時間基準パルスを受信する側である。そして、前記のように第1実施形態では、すべての基地局103a〜103dが同一構成なので、基地局103aも時間基準パルスを受信するための構成を備える。
測位データを表す一連のパルス列のうち特定の位置のパルスが測位パルスとして定義されるのと同様に、時間基準パルスも、時刻合わせ用のデータ(以下「時間基準データ」という)を表す一連のパルス列のうち特定の位置のパルスとして定義されている。時間基準データを表す無線信号は上記時間基準信号の一例である。
本実施形態における時間基準データは、何回目に送信される時間基準データであるかを示す番号を含む。この番号を以下では「送信ID」という。
したがって、本実施形態において受信時刻測定部214が処理すべきデータには、少なくとも、測位データと、時間基準データとがある。データの種類は、例えば無線送信の際に付けられるプリアンブルのパルス列のパターンの違いにより表してもよい。あるいは、送信されるデータ自体が、データの種類を表すID等の項目を含んでもよい。
以下では、測位データと、時間基準データが送信されるときのプリアンブルのパターンがそれぞれ異なるものとして説明する。また、本実施形態では、UWB−IRによる無線通信における変復調方式は、データの種類によらずPPMである。
すなわち、受信時刻測定部214は、データの種類に応じて予め決められているプリアンブルのパルス列のパターンと、受信部212から出力され、複数のパルスで構成された受信パルス列のパターンとの間で、例えばスライディング相関方式によって、時間的な相関をとる。それにより、受信時刻測定部214は、タイミング同期を取るとともに、受信パルス列が表すデータの種類を判別することができる。
さらに、受信時刻測定部214は、受信パルス列が測位データを表す場合には、受信した一連のパルス群である受信パルス列内の所定のタイミングのパルス、すなわち測位パルスとして定義された位置のパルスの受信時刻を、測位パルスの受信時刻として検出する。ここで検出される受信時刻は、タイマ213による基地局103aの局所時刻で表されている。また、受信時刻測定部214は、測位データの復調も行う。前記のとおり、測位データはPPM変調されて送信されているので、受信時刻測定部214における復調方式もPPMである。
同様に、受信時刻測定部214は、受信パルス列が時間基準データを表す場合には、時間基準パルスとして定義された位置にあるパルスの受信時刻を、時間基準パルスの受信時刻として検出し、受信時間基準データを復調する。
受信時刻測定部214は、受信したパルス列の種類すなわちデータの種類に応じて、検出した受信時刻をそれぞれの受信時刻の保持部に出力する。また、受信時刻以外にも、復調されたデータから得られた情報を、受信時刻測定部214は各保持部に出力する。
すなわち、受信したものが測位パルスだった場合、受信時刻測定部214は、検出した受信時刻と、復調した測位データに含まれる送信IDおよび移動端末101の移動端末IDとを移動端末受信時刻保持部215に出力する。
また、受信したものが時間基準パルスだった場合、受信時刻測定部214は、検出した受信時刻と、復調した時間基準データに含まれる送信IDとを時間基準パルス受信時刻保持部216に出力する。
移動端末受信時刻保持部215と時間基準パルス受信時刻保持部216は、それぞれ、受信時刻測定部214から出力されたデータを保持する。また、保持しているデータを、ネットワークを介して計算サーバ104に送信する。計算サーバ104へのデータ送信に際しては、移動端末受信時刻保持部215、時間基準パルス受信時刻保持部216は、データの送信元である基地局103aの基地局IDを付加するなどのデータの加工も行う。
また、上記のとおり本実施形態ではすべての基地局が同一構成であるから、上記で受信について説明した時間基準パルスを送信するための構成も、基地局103aは備えている。
計算サーバ104が基地局103aを時間基準局102として設定した場合、時間基準パルスタイミング生成部219は、計算サーバ104からの指示にしたがって時間基準パルスを送信するためのタイミングの制御を行う。計算サーバ104から時間基準局102に指示されるのは、時間基準パルスの送信開始、送信停止、送信間隔などである。
よって、時間基準パルスタイミング生成部219は、計算サーバ104からの指示にしたがって時間基準パルスを送信すべく、タイマ213から供給されるクロック信号を参照しながら、送信タイミングを制御する。
また、時間基準パルスタイミング生成部219は、時間基準局102の基地局IDと送信IDとを含む時間基準データのデータパルス列も生成する。さらに、移動端末101の測位パルスタイミング生成部201と同様に、時間基準パルスタイミング生成部219は、PPM変調のためのタイミングパルスも生成し、送信部220に出力する。さらに、移動端末受信時刻保持部215などと同様に、生成した時間基準パルスの送信時刻や基地局IDを付加するなどのデータの加工を行い、ネットワークを介して計算サーバ104に送信する。時間基準パルスタイミング生成部219の以上の動作によって、計算サーバ104からの指示に応じて時間基準パルスを送信する機能が実現される。
送信部220は、移動端末101の送信部202と同様に、時間基準パルスタイミング生成部219から出力される時間基準データのデータパルス列を、上記タイミングパルスを用いてPPM変調し、プリアンブルを含むインパルス列を生成し、許容帯域外のスペクトラム成分の除去と増幅を行ってから送信アンテナ221に出力する。送信アンテナ221は、送信部220からの入力にしたがい、UWBインパルス電波を放射する。
続いて、図4を参照して計算サーバ104の構成および機能について説明する。
計算サーバ104は、測位計算部231、時間基準局制御部232、時刻補正部233、移動端末受信時刻バッファ234を備える。また、本実施形態の計算サーバ104は、有線LANによってすべての基地局103a〜103dと接続されており、有線LANを介して各基地局103a〜103dとデータ通信を行うことが可能である。
計算サーバ104は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリと、ワーキングエリアとして使われるRAM(Random Access Memory)と、ハードディスク装置等の外部記憶装置と、有線LANインターフェイスとを備え、これらがバスで相互に接続されたコンピュータである。
図4に示した計算サーバ104の構成要素のうち、時刻補正部233の一部(図8に示す時間基準パルス送信時刻バッファ236と時間基準パルス受信時刻バッファ237)と移動端末受信時刻保存部234は、例えば、RAMまたは外部記憶装置などにより実現される。それ以外の構成要素は、ROM、ハードディスク装置、またはコンピュータ読み取
り可能な可搬型記憶媒体等に格納されたプログラムを、計算サーバ104のCPUがRAMにロードして実行することにより、実現される。
測位計算部231は、各基地局103a〜103dから送られてくる測位パルスの受信時刻のデータに基づき、移動端末101の位置を測位するための測位計算を行う。測位計算のためには、まず、各基地局103a〜103dの局所時刻で表されている測位パルスの受信時刻を基準時刻に補正することが必要だが、その補正は時刻補正部233が行う。つまり、測位計算部231は、時刻補正部233によって補正された測位パルスの受信時刻を用いて、移動端末101の位置を算出する。
測位計算部231が行う具体的な計算の例は、図5〜図8を参照してデータ形式について説明してから説明する。
時間基準局制御部232は、無線測位システム100に含まれる複数の基地局103a〜103dの中から時間基準局102として基地局103aを選択し、選択した基地局103aを時間基準局102として動作させるための制御を行う。
時間基準局制御部232は、例えば、基地局103a〜103d同士の相対的な位置関係に基づいて、時間基準局102を選択してもよい。時間基準パルスは他のすべての基地局で受信される必要があるので、時間基準局制御部232は、遮蔽物の有無や他の基地局との距離を考慮して、他のどの基地局でも一定以上の受信品質が保たれるような基地局を時間基準局102として選択する。
そして、時間基準局制御部232は、時間基準局102として選択した基地局103aに対して、時間基準局102として動作するようにネットワークを介して命令する。
時刻補正部233は、時間基準局102が時間基準パルスを送信した時の送信時刻と、時間基準局102である基地局103a以外の基地局103b〜103dが時間基準パルスを受信した時の受信時刻とに基づいて、時間基準局102以外の基地局ごとに、それぞれ時刻の補正計算を行う。
ここで、時間基準局102による時間基準パルスの送信時刻は基準時刻により表された時刻であり、ある特定の基地局における時間基準パルスの受信時刻は当該基地局の局所時刻により表された時刻である。時刻補正部233による時刻の補正計算とは、当該基地局の局所時刻により表された時刻を基準時刻に換算することである。その換算に必要な係数を求めることが、時刻合わせであり、本実施形態では時刻補正部233が時刻合わせの計算も行っている。
時刻補正部233が行う具体的な計算の例は、図5〜図8を参照してデータ形式について説明してから説明する。
移動端末受信時刻保存部234は、移動端末101から各基地局103a〜103dが受信した測位パルスの受信時刻を保存する(すなわちバッファリングする)。移動端末受信時刻保存部234に保存されるデータの具体例は図8に示す。
移動端末受信時刻保存部234に保存されている受信時刻のデータは、時刻補正部233による時刻合わせが完了した後に、時刻補正部233により読み出されて基準時刻に補正され、測位計算部231へ出力され、移動端末101の位置の測位計算に用いられる。
次に、図5〜図8を参照して、計算サーバ104におけるデータのバッファリングについて詳細に説明する。
図5は、時間基準パルスの送信通知のデータ形式の一例である。つまり、時間基準局102が、時間基準パルスを送信すると計算サーバ104にネットワークを介して送るデー
タの形式を、図5は表している。図5の例では、時間基準パルスの送信通知は、「基地局ID」、「種類」、「送信/受信時刻」、「送信ID」、および「移動端末ID」という項目からなる。
「基地局ID」は、時間基準局102である基地局103aのIDを示し、この例では「001」なる値である。
「種類」は、計算サーバ104が受け取った通知の種類を識別するための項目である。図5は時間基準パルスの送信通知のデータ形式の例であるから、「種類」は、時間基準パルスの送信通知であることを示すIDである。図5では、図を分かりやすくするために、実際のIDの代わりに「時間基準パルス送信」という文字列で「種類」を表した。
時間基準パルスの送信通知における「送信/受信時刻」は、時間基準パルスの送信時刻を示す。この送信時刻は時間基準局102の基準時刻で表されている。
また、「送信ID」は、何回目に送信された時間基準パルスについての送信通知なのかを示す。
「移動端末ID」は、時間基準パルスの送信通知では実際には使われず無効な項目であるが、本実施形態では、各種の通知のデータ形式を揃えるために設けられた項目である。
図6は、測位パルスの受信通知のデータ形式の一例である。つまり、各基地局103a〜103dが、測位パルスを受信するとそれぞれにネットワークを介して計算サーバ104に送るデータの形式を、図6は表している。図6の例では、測位パルスの受信通知は図5と同じく、「基地局ID」、「種類」、「送信/受信時刻」、「送信ID」、および「移動端末ID」という項目からなる。
「基地局ID」は、測位パルスを受信して、この測位パルスの受信通知を計算サーバ104に送信した基地局のIDである。
「種類」はデータの種類を示す。図6は測位パルスの受信通知のデータ形式の例であるから、「種類」は、測位パルスの受信通知であることを示すIDである。図6では、図を分かりやすくするために、実際のIDの代わりに「測位パルス受信」という文字列で「種類」を表した。
測位パルスの受信通知における「送信/受信時刻」は、測位パルスの受信時刻を示す。
図4に関して移動端末101の動作の詳細を説明したときに述べたように、本実施形態では、移動端末101が測位データを送信する際のインパルス列のうち特定の位置のインパルスが測位パルスである。測位パルスの受信時刻は、受信時刻測定部214により検出され、移動端末受信時刻保持部215に保持されている。
そして、測位データの送信回数を表す番号である送信IDと、移動端末101のIDとが測位データには含まれている。図6の「送信ID」は、移動端末101から無線送信された測位データから、それを受信した基地局が読み取った送信IDを示す。同様に、図6の「移動端末ID」は、測位データを受信した基地局が測位データから読み取った移動端末101のIDを示す。
図4に示すように、基地局が受信した測位データを受信時刻測定部214がPPM復調することで、送信IDと移動端末IDは読み取られ、測位パルスの受信時刻とともに移動端末受信時刻保持部215に保持されている。移動端末受信時刻保持部215は、保持しているこれらのデータの形式を図6のように整えて、計算サーバ104へ測位パルスの受信通知を送信する。
なお、図示は省略するが、時間基準局102以外の基地局が時間基準パルスを受信した
とき、その受信時刻を計算サーバ104に通知する時間基準パルスの受信通知も、図5や図6と類似の形式である。すなわち、本実施形態では時間基準パルスの受信通知も、「基地局ID」、「種類」、「送信/受信時刻」、「送信ID」、および「移動端末ID」という項目からなる。
「基地局ID」は時間基準パルスを受信した基地局のIDである。「種類」は時間基準パルスの受信通知であることを示す。また、「送信/受信時刻」は時間基準パルスの受信時刻を示す。「送信ID」は、受信された時間基準パルスが何回目のものなのかを示し、受信された時間基準データから読み取られた値である。「移動端末ID」は実際には無効な項目である。
図7は、計算サーバに送信されるデータ形式の一例である。図5と図6を使って説明したとおり、本実施形態における時間基準パルスの送信通知と受信通知、および測位パルスの受信通知は、いずれも「基地局ID」、「種類」、「送信/受信時刻」、「送信ID」、および「移動端末ID」という項目からなり、共通の形式を有する。
図7は、異なる種類の通知の形式が共通であることを示す。図7の1行目のデータは時間基準パルスの送信通知であり、「種類」の「00」なるIDは時間基準パルスの送信通知を表す。2行目のデータは測位パルスの受信通知である。「種類」の「01」なるIDは測位パルスの受信通知を表す。図示は省略したが、同様に、「種類」が「02」であれば、そのデータは時間基準パルスの受信通知のデータである。
図8は、計算サーバにおけるデータのバッファリングを例示する図である。
図5〜図7に関して説明したように、ネットワークを介して計算サーバ104に送られてくる各種の通知は、本実施形態においては共通の形式である。この共通の形式が、データ301の各項目として図9にも表されている。
図1では基地局の数が4の場合を例示したが、図9に示すように、一般には基地局の数は任意である。計算サーバ104は、時間基準局102を兼ねる基地局103aを含め、複数の基地局103a〜103xからそれぞれネットワークを介して各種の通知を受け取る。
本実施形態の計算サーバ104は、通知の種別ごとに専用のバッファを有している。これらのバッファは、物理的に異なる複数のハードウェアにより実現してもよく、物理的には単一のRAMを論理的に複数のセグメントに分割することにより実現してもよい。計算サーバ104は、いずれかの基地局から何らかの通知を受信すると、その通知の種別に応じて、その種別のデータを適切なバッファに振り分けてバッファリングする(すなわち格納する)。
具体的には、計算サーバ104は、時刻補正部233の構成要素として、図8に示した時間基準パルス送信時刻バッファ236、基地局103b用の時間基準パルス受信時刻バッファ237b、基地局103c用の時間基準パルス受信時刻バッファ237cを備える。さらに、図8では図示を省略したが、無線測位システム100に含まれる基地局の数に応じて、基地局103d用の時間基準パルス受信時刻バッファ237d、……、基地局103x用の時間基準パルス受信時刻バッファ237xなどの不図示のバッファも、計算サーバ104は備えている。以下、これらの時間基準パルス受信時刻バッファの総称として「237」なる符号を用いることがある。
なお、図4で説明したように、複数の基地局のうちのいずれが時間基準局102として動作するかは、計算サーバ104の時間基準局制御部232が制御している。したがって
、計算サーバ104は、どの基地局に対応して時間基準パルス受信時刻バッファ237を設けるべきかを認識することができ、その認識にしたがって、バッファを実現するRAM等のハードウェアを、それぞれの基地局に対応する時間基準パルス受信時刻バッファ237として予め割り当てる。
時間基準パルス送信時刻バッファ236は、「送信時刻」と「送信ID」という2項目に対応する格納領域を有する。各基地局103b〜103x用の各時間基準パルス受信時刻バッファ237b〜237xはいずれも、「受信時刻」と「送信ID」という2項目に対応する格納領域を有する。
図8の移動端末受信時刻バッファ234は、図4の移動端末受信時刻保存部234に相当し、「送信ID」、「基地局ID」、「受信時刻」、「移動端末ID」という4項目に対応する格納領域を有する。
計算サーバ104の振り分け動作は次のとおりである。
いずれかの基地局からデータ301を受信すると、計算サーバ104は、データ301の「種類」という項目の値を調べる。
もし、受信したデータ301の「種類」が時間基準パルスの送信通知を表していれば、計算サーバ104は、データ301の「送信/受信時刻」の値と「送信ID」の値を、時間基準パルス送信時刻バッファ236の「送信時刻」と「送信ID」の格納領域にそれぞれ格納する。
もし、受信したデータ301の「種類」が時間基準パルスの受信通知を表していれば、計算サーバ104は、次に、データ301の「基地局ID」の値を調べる。
そして、計算サーバ104は、「基地局ID」の値に応じて、いずれかの時間基準パルス受信時刻バッファ237に、データ301を割り振る。すなわち、データ301の「送信/受信時刻」の値と「送信ID」の値を、データ301の送信元に基地局に対応する時間基準パルス受信時刻バッファ237の「受信時刻」と「送信ID」の格納領域にそれぞれ格納する。
例えば、受信したデータ301の「種類」が時間基準パルスの受信通知を表し、基地局103cの基地局IDが「003」であり、データ301の「基地局ID」の値が「003」であれば、計算サーバ104は、受信したデータ301を基地局103c用の時間基準パルス受信時刻バッファ237cに振り分ける。
また、もし受信したデータ301の「種類」が測位パルスの受信通知を表していれば、計算サーバ104は、データ301の「送信ID」、「基地局ID」、「送信/受信時刻」、「移動端末ID」の値をそれぞれ、移動端末受信時刻バッファ234の「送信ID」、「基地局ID」、「受信時刻」、「移動端末ID」の格納領域に格納する。
次に、図5〜図8で説明したデータを使った時刻合わせと基準時刻への補正について、具体的な計算方法の例を説明する。
本実施形態において、図4の時刻補正部233が基地局103bの局所時刻を基準時刻に補正するための係数を算出する時刻合わせは、次のように行われる。
前記のとおり、時刻合わせに必要な時間基準パルスの数(n+1)は予め決められている。時間基準局102から送信された、(n+1)個の時間基準パルスの送信時刻を
,S,S,……,S
とする。これらの送信時刻は基準時刻により表されている。
また、その(n+1)個の時間基準パルスの基地局103bにおける受信時刻を
,T,T,……,T
とする。これらの受信時刻は基地局103bの局所時刻により表されている。
図5や図8に示した「送信ID」により、どの送信時刻とどの受信時刻が同じ1つの時間基準パルスに対応するのかということが判別可能である。
時刻補正部233は、時間基準パルス送信時刻バッファ236に蓄積された直近の(n+1)個の時間基準パルスの送信時刻を、
,S,S,……,S
として読み出す。
また、時刻補正部233は、0≦i≦nなる各iについて、送信時刻Sに対応して時間基準パルス送信時刻バッファ236に格納されている送信IDと同じ送信IDを持ち、時間基準パルス受信時刻バッファ237bに格納されている受信時刻を、受信時刻Tとして読み出す。
また、時間基準局102と、時刻を補正する対象の基地局103bとの距離Lは既知である。既知の距離Lは、例えば、事前にハードディスク装置などに記憶されているので、時刻補正部233は距離Lの値を読み出すことができる。また、光速をCとする。
基地局103bの局所時刻から基準時刻への補正とは、式(1)が成立するような関数F(T)を定め、その関数F(T)を用いて、基地局103bの局所時刻Tから基準時刻F(T)を計算することである。なお、式(1)におけるSは基準時刻で表された時間基準パルスの送信時刻であり、Tは基地局103bの局所時刻で表された当該時間基準パルスの受信時刻である。
F(T)=S+L/C (1)
つまり、関数F(T)は、基地局103bの局所時刻により表されている時刻Tが、時間基準局102の局所時刻でもある基準時刻で表すといつになるか、という計算を行うための関数である。関数F(T)は、例えばTの1次関数でもよく、2次関数など他の関数でもよい。第1実施形態では、式(2)のように仮定する。
F(T)=aT+b (2)
一般的には、各種の誤差の影響で式(1)の等号は成立しない。そこで、時刻補正部233は最小2乗法を使って、式(3)のEが最小となるような式(2)のaとbの値を計算する。
Figure 2009133649
式(3)における関数F(T)は式(2)であるから、式(4)とおいて式を変形すると、aとbに関する連立1次方程式が得られる。
Figure 2009133649
時刻補正部233はその連立1次方程式を解いて、式(3)のEを最小とするaとbの値を計算する。式(2)のとおり、aとbは補正に必要な係数である。したがって、時刻補正部233は求めたaとbを式(2)に代入して関数F(T)を定め、基地局103bの局所時刻Tを基準時刻F(T)に補正する。
補正すべき基地局103bの局所時刻Tは、本実施形態では測位計算部231によって、基地局103bの基地局IDとともに時刻補正部233に指定される。時刻補正部233は、どの時間基準パルス受信時刻バッファ237のデータを用いて時刻合わせと補正を行うべきかを、指定された基地局IDから判断する。そして、時刻補正部233は、式(1)〜(4)を使って説明した上記の方法により時刻合わせを行い、指定された局所時刻を基準時刻に補正して、測位計算部231に返す。
基地局103b以外の基地局の局所時刻も、同様にして時刻補正部233によって基準時刻に補正される。
つまり、測位計算の対象である特定の移動端末101が送信した特定の測位パルスを使って、当該測位パルスの送信時の移動端末101の位置を計算する準備として、次の作業が行われる。まず、当該測位パルスを示す送信IDと移動端末101の移動端末IDとに関連づけられた、受信時刻および基地局IDを、測位計算部231が移動端末受信時刻バッファ234から読み出す。そして、測位計算部231は、読み出した受信時刻を、基地局103bの基地局IDとあわせて時刻補正部233に出力し、基準時刻に補正させる。測位計算部231は、こうして補正された時刻に基づいて、移動端末101の位置の測位計算を行う。
次に、時刻補正部233により基準時刻に補正された測位パルスの受信時刻を用いて、測位計算部231が行う具体的な計算の例を説明する。以下では、説明の簡単化のため、2次元の位置を測位する場合を例とするが、3次元の場合でも、変数の数が増える以外は同様の計算により、測位計算部231が測位を行うことができる。
本実施形態において、測位計算部231は、ガウス・ニュートン法による繰り返し計算により、移動端末101の位置を計算する。
以下、測位の対象は、ある特定の送信IDにより表される特定の測位パルスを送信した時点での移動端末101の位置であるとし、計算すべき当該時点での移動端末101の位置の座標を(X,Y)とする。移動端末101は、特定の移動端末IDにより識別される移動端末である。
また、時間基準局102を含む各基地局の位置の座標を(X,Y)とする。ここで、無線測位システム100に含まれる基地局の数を(N+1)とすると、添え字iは、0≦i≦Nであり、各基地局に対応する。説明の便宜上、以下では添え字iに対応する基地局を符号「B」により参照する。
測位計算部231は、測位の対象を規定する上記の特定の送信IDと、測位の対象である移動端末101の移動端末IDとに関連づけられて、図8の移動端末受信時刻バッファ234に保存されているデータを読み出す。読み出されたデータは、基地局IDと受信時刻を含む。
測位計算部231は、読み出した基地局IDが時間基準局102以外のものであれば、読み出した基地局IDと読み出した受信時刻とを時刻補正部233に対して指定し、局所時刻で表されたこの受信時刻を基準時刻に補正させ、補正された受信時刻を時刻補正部233から受け取る。もし、読み出した基地局IDが時間基準局102ものであれば、読み出した受信時刻は基準時刻で表されているので補正は不要である。
こうして基準時刻に補正されて時刻補正部233から出力された、あるいは、もともと基準時刻で表されていた、基地局Bにおける測位パルスの受信時刻を、Rとする。
ここで、移動端末101は座標(X,Y)に位置し、基地局Bは座標(X,Y)に位置し、基地局Bは座標(X,Y)に位置する。よって、この位置関係から求められる基地局Bと基地局Bとの間の測位パルスの到達時間差(TDOA)であるfij(X,Y)は、光速をCとすると、式(5)のとおりである。
Figure 2009133649
一方で、測位パルスの受信時刻から求められる基地局Bと基地局Bとの間の測位パルスの到達時間差であるRijは、式(6)のとおりである。
ij=R−R (6)
ガウス・ニュートン法では、測位計算部231が移動端末101の座標を繰り返し改良しながら推定する。誤差を含む推定値である移動端末101の座標を(Xe,Ye)とすると、この推定値を使って式(5)から得られる計算値と式(6)に示される観測値との残差が、式(7)のように定義される。
ΔRij=Rij−fij(Xe,Ye) (7)
また、ガウス・ニュートン法による反復計算での収束値は真値と見なすことができる。真値として得られる移動端末101の座標を(X,Y)とすると、1回の反復計算でのX座標の修正値は式(8)であり、Y座標の修正値は式(9)である。
ΔX=X−Xe (8)
ΔY=Y−Ye (9)
ここで、(Xe,Ye)のまわりでのテイラー展開から、式(5)の非線形な関数fij(X,Y)を線形近似すると、式(7)のΔRijは、式(10)のように近似される。
Figure 2009133649
また、互いに異なるiとjのすべての組み合わせについて、適当な順番でΔRijを縦に並べた列ベクトルをΔRとする。列ベクトルΔRの要素数をMとすると、Mは式(11)のとおりである。
M=(N+1)=(N+1)・N/2 (11)
ここで、行列Aの型はM行2列であるとし、ΔRijがΔRの第m要素であるとき、行列Aのm行1列の要素を式(12)で定義し、m行2列の要素を式(13)で定義する。すなわち、行列Aはヤコビアン行列である。
Figure 2009133649
Figure 2009133649
さらに、式(8)と式(9)から修正値ベクトルΔPを式(14)のとおり定義する。
Figure 2009133649
すると、互いに異なるiとjのすべての組み合わせについて、近似式(10)をまとめて、式(15)のように表現することができる。
ΔR=AΔP (15)
例えば、図1の無線測位システム100には4つの基地局があるので、(N+1)=4である。この場合、列ベクトルΔRと行列Aは次の式(16)と(17)のとおりである。
Figure 2009133649
Figure 2009133649
式(15)より、誤算の分散に関して適当な前提をおくことにより、最小2乗解として式(18)が得られる。ただし、上付きの文字「T」は行列の転置を表す。
ΔP=(AA)−1ΔR (18)
したがって、測位計算部231は、まず、移動端末101の座標(X,Y)として適当な初期値(X(0),Y(0))を推定し、Xe=X(0),Ye=Y(0)とおいて式(7)を使って列ベクトルΔRを求める。また、測位計算部231は、初期値(X(0),Y(0))のときの式(12)と式(13)の偏微分係数を計算することにより、行列Aを求める。そして、測位計算部231は、求めた列ベクトルΔRと行列Aから、式(18)を使って修正値ベクトルΔPを算出する。
得られた修正値ベクトルΔPを用いて、式(19)と(20)により、測位計算部231は、初期値(X(0),Y(0))を修正した1次推定値(X(1),Y(1))を算出する。
(1)=X(0)+ΔX (19)
(1)=Y(0)+ΔY (20)
そして、測位計算部231は、次に、Xe=X(1),Ye=Y(1)とおいて上記と同様に列ベクトルΔRと行列Aを求め、修正値ベクトルΔPを求める。以後、修正値が十分に小さくなるまで、測位計算部231は、式(21)と(22)によって、k次推定値から(k+1)次推定値を算出することを繰り返す。
(k+1)=X(k)+ΔX (21)
(k+1)=Y(k)+ΔY (22)
例えば、測位計算部231は、予め決められた正の閾値εを用いた式(23)が成立すれば、修正値が十分に小さくなったと判断してもよい。
ΔX+ΔY≦ε (23)
なお、初期値(X(0),Y(0))を測位計算部231が推定する方法は任意である。例えば、既知である複数の基地局の座標の重心(X、Y座標の各平均値)とおけばよい
以上のようにして、測位計算部231は、過去に基地局から受信してバッファリングしたデータが移動端末受信時刻バッファ234に残っていれば、移動端末IDと送信IDの組み合わせそれぞれに対して、移動端末受信時刻バッファ234からデータを取り出す。そして、時刻補正部233に時刻の補正をさせたうえで、当該移動端末IDの移動端末が当該送信IDの測位パルスを送信した時点での位置を計算する。
次に、図9を参照して、上記で説明した無線測位システム100における測位の動作についてまとめる。図9は、第1実施形態での無線測位システム100の動作を示すフローチャートである。なお、時間基準局102の選定などは無線測位システム100の運用開始前に予め行われる準備作業に当たるので、図9のフローチャートでは省略した。
図1の無線測位システム100の運用が開始された時点では、ステップS101に示すように、時間基準局102を含むすべての基地局103a〜103dは待受状態で動作している。すなわち、すべての基地局103a〜103dは、移動端末101からの測位パルスが受信されるのを待ち受けている。この時点では、時間基準パルスの送信は行われておらず、時刻合わせができていない状態である。
ステップS101の待受状態が続いた後、ある移動端末101が測定範囲内で最初に測位パルスの送信を開始すると、ステップS102に移行し、その測位パルスが各基地局で受信される。測位パルスを受信した各基地局は、図6に示した測位パルスの受信通知を計算サーバ104に送信する。
ただし、実際は、すべての基地局103a〜103dで測位パルスを受信することができるか否かは、測定環境の状況に依存する。例えばマルチパス波の影響で測位パルスを受信することができない基地局もあるかもしれない。しかし、測位パルスを受信可能な基地局が1つもないという場合はほとんどありえないので、無視することができる。つまり、少なくとも1つの基地局からは測位パルスの受信通知が計算サーバ104に送信される。
計算サーバ104は、いずれかの基地局から何らかの受信通知を受け取ると、ステップS103に示すように、その受信通知が時間基準パルスの受信通知か否かを判断する。図7のデータ形式から分かるとおり、この判断は、計算サーバ104が受信した通知に含まれる「種類」という項目を参照することによって可能である。
そして、計算サーバ104は、受け取った通知が測位パルスの受信通知であると判断した場合、時間基準局102にまだ時間基準パルスの送信を命令していなければ、時間基準パルスの送信を開始するよう時間基準局102に命令する。ネットワークを介してこの命令を受け取った時間基準局102は、時間基準パルスの送信を開始する。
最初の測位パルスが基地局に受信され、その受信通知が計算サーバ104に届いた場合、時間基準パルスの受信通知ではないので、処理はステップS103からステップS104へ進む。
ステップS104では計算サーバ104の時刻補正部233が、初回の時刻合わせが完了したか否かを判断する。ここで「初回」の意味は次のとおりである。
上記のとおり、本実施形態の時間基準局102は、時刻合わせに必要な(n+1)個の時間基準パルスを送信した後も、計算サーバ104から明示的に送信中止を命令されるまでは、時間基準パルスの送信を続ける。そして、その送信にあわせて、直近の(n+1)個の時間基準パルスの送信時刻と受信時刻の組による時刻合わせが、繰り返し行われる。
「初回」の時刻合わせとは、繰り返し行われる時刻合わせのうちの初回の時刻合わせことであり、図3(c)の例では時間基準パルスQ〜Qを使った時刻合わせを指す。
無線測位システム100の運用開始後はじめてステップS104が実行される場合は、上記のとおり時間基準パルス自体がまだ送信されていないので、当然初回の時刻合わせも完了していない。よって、ステップS104からステップS105へと処理が進む。
ステップS105では、ステップS103で時間基準パルスの受信通知ではないと判断された測位パルスの受信通知の内容を、移動端末受信時刻保存部234がバッファリングする。バッファリングされる内容には、測位パルスを受信した基地局における局所時刻で表された受信時刻のほかに、図8に示すように、送信ID、基地局ID、移動端末IDがある。
ステップS105の後、無線測位システム100は、再びステップS101の待受状態に戻る。
その後は、最初の測位パルスを契機として既に時間基準パルスの送信が開始されているので、待受状態の基地局が時間基準パルスを受信することがある。時間基準パルスを受信した場合も、上記と同様にステップS101からステップS102へと処理が進む。そして、時間基準パルスを受信した基地局は、時間基準パルスの受信通知を計算サーバ104に送信する。
続くステップS103では、計算サーバ104が、基地局から受信した通知が時間基準パルスの受信通知であると判断する。この場合、無線測位システム100全体の動作としては、ステップS102で時間基準パルスを受信した基地局は再度ステップS101の待受状態へと戻り、それと並行して計算サーバ104は時刻合わせ処理を行う。
つまり、計算サーバ104は、受信した時間基準パルスの受信通知を、基地局IDに応じて図8の時間基準パルス受信時刻バッファ237のうちの1つに割り振り、そこに内容を保存する。そして、時刻合わせに必要な数である(n+1)個の受信時刻が割り振り先の時間基準パルス受信時刻バッファ237に既に蓄積されていれば、時間基準パルス送信時刻バッファ236の送信時刻のデータと合わせて、時刻補正部233が、式(1)〜(4)にしたがって時刻合わせを行い、式(2)のaとbを計算する。もし(n+1)個の受信時刻がまだ蓄積されていなければ、まだ時刻合わせも行われない。
以上説明した動作が繰り返されて、最初の測位パルスを契機として送信され出した時間基準パルスが(n+1)個以上送受信され、初回の時刻合わせが完了した後、移動端末101が測位パルスを送信したときの動作は、図9のステップS106〜S108に表されている。
すなわち、ステップS101で待受状態の基地局が測位パルスを受信してステップS102に処理が移行し、基地局が測位パルスの受信通知を計算サーバ104へ送信する。そして、計算サーバ104がステップS103で、受信した通知が測位パルスの受信通知であると判断し、処理がステップS104に進む。この場合、ステップS104で、時刻補正部233により初回の時刻合わせが完了していると判断されるので、処理はステップS106に進む。
ステップS106において、移動端末受信時刻保存部234にバッファリングされたデータがあるか否かを測位計算部231が判断し、あればステップS107へ、なければステップS108へ進む。
ステップS107では、測位計算部231が、移動端末受信時刻保存部(移動端末受信時刻バッファ)234にバッファリングされたデータを使った測位計算を行う。この測位計算は、過去の移動端末101の位置を計算するものである。
すなわち、測位計算部231は、図8の移動端末受信時刻バッファ234において、ある同じ送信IDと移動端末IDを持つすべての行のデータを用いて、その送信IDの測位パルスを送信した時点におけるその移動端末IDの移動端末の位置を計算する。
より具体的には、測位計算部231は、基地局IDに応じた値として既に算出済みの式(2)の係数aとbを用いて、移動端末受信時刻バッファ234にバッファリングされている受信時刻を補正するよう、時刻補正部233に命令する。そして、補正された複数の受信時刻から、測位計算部231は、式(5)〜(23)で説明した方法によって、移動端末の位置を計算する。
移動端末受信時刻保存部234にバッファリングされたデータにおける、送信IDと移動端末IDのすべての組み合わせについて、測位計算部231はこの測位計算を繰り返す。また、測位計算部231は、測位計算が終わると、その測位計算に使った分のデータを移動端末受信時刻バッファ234から消去する。つまり、測位計算部231はステップS107で移動端末受信時刻バッファ234をクリアする。そして、処理はステップS108に進む。
ステップS108では、ステップS103で測位パルスの受信通知であると判断された通知のデータに含まれる基地局IDに応じた補正係数aとbを用いて、時刻補正部233が、その測位パルスの受信通知に含まれる受信時刻を基準時刻に補正する。時刻補正部233は、補正した受信時刻を送信ID、基地局ID、移動端末IDと対応づけて、例えばRAMに保存する。
ステップS108の後、無線測位システム100全体の動作としては、ステップS102で測位パルスを受信した基地局は再度ステップS101の待受状態へと戻り、それと並行して計算サーバ104は測位計算処理を行う。
すなわち、計算サーバ104の測位計算部231は、ステップS108で補正された受信時刻に対応する送信IDおよび移動端末IDと同じ送信IDおよび移動端末IDに対応づけられてRAMに保存されている、他の補正済みの受信時刻を調べる。もし、そのような他の補正済みの受信時刻があって、すべての基地局に対応する補正済みの受信時刻が揃っていることが判明すれば、測位計算部231はそれらの補正済みの受信時刻を用いて測位計算を行う。
すべての基地局に対応する補正済みの受信時刻が揃っていない場合、測位計算部231は、まだ測位計算を行わずにさらに他の基地局から測位パルスの受信通知が届くのを待つ場合と、現在RAMに保存されているデータのみから測位計算を行う場合とがある。
例えば、偶然1つまたは複数の基地局において、ある測位パルスが正常に受信されないときには、すべての基地局から当該測位パルスの受信通知が届かないので、すべての基地局に対応する補正済みの受信時刻が揃うことはない。よって、測位計算部231は、例えば、送信IDと移動端末IDの1つの組み合わせに関して、一定時間内に受信された測位パルスの受信通知のみを使って測位計算を行ってもよい。
そのために測位計算部231は、送信IDと移動端末IDの組み合わせごとに測位パルスの受信通知の受信時刻を監視してもよい。例えば、ある送信IDと移動端末IDの組み
合わせに関して1つ目の基地局から測位パルスの受信通知を受けた時点から所定の時間が経過した時点で測位計算を行うように、ステップS108の実行後、測位計算部231は割り込みの設定だけをするのでもよい。すると、仮にすべての基地局から測位パルスの受信通知が届くことがなくても、ある時点で割り込みが発生し、測位計算部231が、その時点でRAMに揃っている補正済みの受信時刻だけを用いて測位計算を行うことができる。
以上のとおり、図9のフローチャートにしたがった処理により、初回の時刻合わせが完了する前に受信された測位パルスを使った測位計算は初回の時刻合わせの完了後に行われ、初回の時刻合わせが完了してから受信された測位パルスを使った測位計算は、ほぼリアルタイムに行われる。
測位結果は、例えば、計算サーバ104が備えるハードディスク装置等に、移動端末IDおよび送信IDと関連づけて保存してもよい。あるいは、移動端末IDおよび送信IDと関連づけた測位結果を、計算サーバ104が外部の装置に送信してもよい。測位結果の利用の仕方は任意である。測位結果を保存したり送信したりするための制御も、測位計算部231が行う。
次に、図10を参照して、時刻合わせと時刻の補正が繰り返し行われる場合を例に、時刻の補正の手順を説明する。図10は、第1実施形態における時刻の補正を説明するタイミングチャートである。
局所時刻から基準時刻への補正が必要なのは、時間基準局102以外の基地局なので、図10ではそのうち基地局103bを例として、基地局103bに関する時刻の補正について説明する。つまり、図10における時間軸は基地局103bの局所時刻である。
図10において、時間軸の下にある上向きの矢印は、移動端末101からの測位パルスの基地局103bにおける受信時刻を示す。時間軸の上にある下向きの矢印は、時間基準局102からの時間基準パルスの基地局103bにおける受信時刻を示す。
また、測位パルスと時間基準パルスはいずれも複数あるので、各々のパルスを区別して説明するために、測位パルスにはP〜Pa+2なる符号を、時間基準パルスにはQ〜Qn+3なる符号を付した。図10でも、上記と同様に、時刻合わせには(n+1)個の時間基準パルスが必要である。
時間基準局102が時間基準パルスを送信していない状況で、移動端末101が測位パルスの送信を開始すると、最初の測位パルスPを受信した各基地局103a〜103dからの通知のうち最も早い通知を契機として、計算サーバ104が時間基準局102に時間基準パルスの送信開始を命令する。
図10の例では、最初の時間基準パルスQが基地局103bに受信されるのが、2番目の測位パルスPの受信よりも後である。そして、初回の時刻合わせに必要な(n+1)個の時間基準パルスQ〜Qを基地局103bが受信し終わるのは、(a+1)個の測位パルスP〜Pを受信し終えた後、(a+2)個目の測位パルスPa+1を受信する前というタイミングである。
この場合、時刻合わせに必要な所定の数である(n+1)個の時間基準パルスの受信が済んでいない状態で受信した(a+1)個の測位パルスP〜Pの受信時刻のデータは、計算サーバ104の移動端末受信時刻バッファ234にバッファリングされる。そして、(n+1)個の時間基準パルスの、時間基準局102における送信時刻と基地局103
bにおける受信時刻とのデータが計算サーバ104に揃った段階で、計算サーバ104の時刻補正部233が時刻合わせの計算を行い、補正係数として式(2)のaとbを算出する。
こうして初回の時刻合わせで得られた初回の係数aとbは、測位パルスP〜Pa+1の基地局103bにおける受信時刻を基準時刻に補正するために使われる。このことを、図10では「初回係数で時刻補正(1)」および「初回係数で時刻補正(2)」と表している。
ここで、前述の図12の移動端末1001からの測位パルスの有無に係らず時間基準パルスを送信して、予め時刻合わせをしておく従来の方法を示した図14と、図10とを比較する。
図14では、1〜(n+1)個目の時間基準パルスの送信時刻S〜Sと受信時刻T〜Tから得た補正係数を用いて、(n+2)個目の時間基準パルスの受信が行われるまでの間(つまり図14の区間A)に移動端末1001から受信した測位パルスの受信時刻の補正計算が行われる。すなわち、補正係数を得るのに使われた(n+1)個の時間基準パルスよりも未来に受信される測位パルスの受信時刻が補正されるので、未来の予測が行われている。
図10中で、この図14における未来の予測に相当するのは、最初の(n+1)個の時間基準パルスQ〜Qの受信後、次の時間基準パルスQn+1の受信前に受信された、(a+2)個目の測位パルスPa+1の受信時刻の補正であり、「初回係数で時刻補正(2)」と示した部分である。
初回の時刻合わせが終了した後の処理は、本実施形態による図10の例でも従来の図14と同様であり、時間基準パルスの送受信のたびに補正係数が再計算され、補正係数は未来の予測に用いられる。
すなわち、図10の例において時間基準局102は、計算サーバ104から中止を命令されない限り、時間基準パルスの送信を続ける。つまり、(n+1)個目の時間基準パルスQの送信後も、時間基準パルスQn+1、Qn+2、Qn+3、……が送信される。よって、基地局103bが時間基準パルスを受信するたびに、時刻合わせの計算に用いるデータが1回分更新されて、計算サーバ104の時刻補正部233で再計算が行われる。
例えば、2回目の時刻合わせとは、時間基準パルスQ〜Qn+1の送信時刻および受信時刻を使って時刻補正部233が補正係数aとbを再計算して更新することであり、3回目の時刻合わせとは、時間基準パルスQ〜Qn+2の送信時刻および受信時刻を使って時刻補正部233が補正係数aとbを再計算して更新することである。
こうして時刻合わせが繰り返し行われている状況では、更新された最新の補正係数によって測位パルスの受信時刻が補正される。例えば、図10に示すように、時間基準パルスQn+2とQn+3との間に受信した測位パルスPa+2の受信時刻は、3回目に行われた時刻合わせで得られた最新の補正係数aとbによって補正される。
なお、本実施形態では図14と同様に直線近似を採用しているので、時刻補正部233が補正係数として算出するのは式(2)のaとbであるが、他の実施形態では2次曲線近似など、他の近似方法を採用してもよい。
以上のように、図10は従来の図14との共通点もあるが、図14と大きく異なるのは
、図10中に「初回係数で時刻補正(1)」と示した部分である。すなわち、移動端末受信時刻バッファ234にバッファリングしたデータを後から補正する点が、図14にはなく、本実施形態に独自の点である。
図10に「初回係数で時刻補正(1)」と示した部分は、初回の時刻合わせに必要な時間基準パルスQ〜Qの受信が行われている期間中に受信されたか、あるいは初回の時刻合わせ用の最初の時間基準パルスよりも前に受信された測位パルスの受信時刻を、初回の時刻合わせで得られた補正係数aとbにより補正することを示す。
上記のとおり、初回の時刻合わせが完了した後で受信される測位パルスの受信時刻の補正においては、補正係数の算出に用いられる時間基準パルスの受信時刻よりも補正対象の測位パルスの受信時刻の方が未来であって、補正計算は未来の予測に相当する。
これに対し、移動端末受信時刻バッファ234にバッファリングされた受信時刻の補正においては、補正係数の算出に用いられる時間基準パルスの受信時刻(少なくともそのうち最後の時間基準パルスQの受信時刻)よりも補正対象の測位パルスの受信時刻の方が過去であって、補正計算は過去の推測に相当する。特に、図10の例では1個目と2個目の測位パルスPとPの受信時刻は、最初の時間基準パルスQの受信時刻よりもさらに前であるから、測位パルスPとPの受信時刻の補正は、過去の推測という性質がより明らかである。
このように、測位パルスの受信時刻を移動端末受信時刻バッファ234にバッファリングする本実施形態においては、初回の時刻合わせが完了する前後いずれで測位パルスが受信されたかによって、その測位パルスの受信時刻の補正が、過去の推測に当たるのか、それとも未来の予測に当たるのかが異なる。つまり、本実施形態には、同じ直線近似の式を適用する適用の仕方が、初回の時刻合わせの完了の前後で切り換えられるという特徴がある。
なお、図10のように繰り返し移動端末101が測位パルスを送信する実施形態は、移動端末101の移動に追従して移動端末101の位置を測位する必要がある場合等に好適である。例えば、移動端末101が測位パルスを送信する平均的な送信間隔と、時間基準局102が時間基準パルスを送信する平均的な送信間隔とが同程度の時間であってもよい。
ある実施形態における測位パルスの送信間隔は、例えば100msである。すなわち、測位パルスの送信頻度は10Hzである。もちろん、実施形態に応じて必要な測位のためのサンプリング間隔により、当然、測位パルスの送信間隔として異なる値が採用される。よって、必ずしも測位パルスの送信頻度は10Hzとは限らないが、10Hz程度の送信頻度であれば、ある程度の移動を追従することができる。
また、時間基準パルスの送信間隔は、測位パルスの送信間隔と同程度に設定されてもよいが、実際の環境・条件によっては、例えば、より狭い間隔あるいはより広い間隔に設定されてもよい。求められる測位精度に応じた十分な時刻補正の精度が得られるように、時間基準パルスの送信間隔および時刻合わせに必要な所定の数(n+1)は、実施形態に応じた値に適宜変更される。
次に、図11を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態では、時間基準パルスの送信間隔が調整される。その調整以外の点は、特に断らない限り第1実施形態と同様なので、適宜説明を省略する。特に、初回の時刻合わせが完了した以降の処理の流れは、第1実施形態とまったく同様である。
図11は、第2実施形態における測位パルスの送受信シーケンスおよび時間基準パルスの送信シーケンスを、図3と同様の形式によって示したタイミングチャートである。
第1実施形態の図3と同様に、図11でも、移動端末101が最初の測位パルスPを送信し、基地局103a〜103dがそれぞれ測位パルスPを受信し、計算サーバ104へと受信通知をそれぞれ送信する。そして、それら受信通知のうち最も早く計算サーバ104に到着したものを契機として、計算サーバ104が時間基準パルスの送信開始を時間基準局102に命令し、時間基準局102が最初の時間基準パルスQを送信する。
ここまでの動作は、第2実施形態においても第1実施形態と同様である。また、第2実施形態においても、時刻合わせに必要な時間基準パルスの数は(n+1)であるとする。
第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、図4の計算サーバ104の時間基準局制御部232と、時間基準局102である基地局103aの時間基準パルスタイミング生成部219の動作である。本実施形態では、最初の測位パルスPから次の測位パルスPまでの送信間隔が送信間隔Dであることを時間基準局制御部232が認識しており、時間基準局制御部232が指定する可変の送信間隔で、時間基準局102が時間基準パルスを送信する。
例えば、移動端末101が定期的に平均送信間隔Dで測位パルスを送信することが無線測位システム100の仕様として定められている場合には、不図示のハードディスク装置等から送信間隔Dの値を読み出すことで、時間基準局制御部232が、最初の測位パルスPから次の測位パルスPまでの送信間隔Dを認識することができる。この場合、当然移動端末101にも、測位パルスの平均送信間隔Dが設定されている。
あるいは、移動端末101から送信される通信データ、すなわち測位データに、送信間隔Dを表す項目が埋め込まれていてもよい。その場合、例えば、最初の測位パルスPを含むパルス列を受信した基地局が、復調した測位データから送信間隔Dの値を読み取り、読み取った値を測位パルスの受信通知に含めて計算サーバ104に送信する。
つまり、この場合の測位パルスの受信通知の形式は図6とは異なる。計算サーバ104の時間基準局制御部232は、受け取った受信通知から、最初の測位パルスPから次の測位パルスPまでの送信間隔Dを認識することができる。この方法によれば、送信間隔Dが固定されていなくてもよい。
いずれにしろ、第2実施形態の時間基準局制御部232は、時間基準局102に時間基準パルスの送信開始を命令する時点で、最初の測位パルスPから次の測位パルスPまでの送信間隔が送信間隔Dであることを認識している。
時間基準局制御部232は、時間基準局102に時間基準パルスの送信開始を命令する際に、1個目から(n+1)個目の時間基準パルスQ〜Qは送信間隔Dで送信するよう命令するとともに、(n+1)個目の時間基準パルスQを送信した後は、送信間隔Dより長い送信間隔Dで時間基準パルスを送信するよう命令する。
逆に言えば、送信間隔Dが通常の時間基準パルスの送信間隔であり、送信間隔Dは、移動端末101からの最初の測位パルスの受信後、初回の時刻合わせが完了するまでの間、一時的に短縮された送信間隔である。このように一時的に短い送信間隔Dを設定することにより、(n+1)個の時間基準パルスの送信が速められる。
送信間隔Dは、初回の時刻合わせのための送信間隔であり、移動端末101が測位パルスを送信する送信間隔Dに基づいて、次回の測位パルスPの送信前に基地局の時刻
合わせが完了するように定められる。送信間隔Dは2回目以降の時刻合わせのための送信間隔である。
具体的には、送信間隔Dは、式(24)を満たすように時間基準局制御部232が定める。
<D/n (24)
例えば、実験等から予め定められた適切なマージンDを用いて、式(25)により送信間隔Dを時間基準局制御部232が計算して定めてもよい。
=(D−D)/n (25)
もし、送信間隔Dが予め固定されているなら、式(25)により予め計算した送信間隔Dの値を不図示のハードディスク装置等に記憶しておき、時間基準局制御部232がその値を読み出して、時間基準局102に指示してもよい。あるいは、時間基準局102の時間基準パルスタイミング生成部219が、予め、定数である送信間隔DとDの値を記憶する構成を採用することもできる。
逆に、送信間隔Dが固定されていない場合には、上記のように送信間隔Dを表す項目を含む測位データを移動端末101が送信することにより、動的に時間基準局制御部232が送信間隔DとDを決定することができる。
送信間隔Dの長さは時間基準局制御部232が適当に決定してかまわない。
例えば、移動端末101が一定の送信間隔Dで測位パルスを送信する場合に、測位のたびに時刻の補正の仕方が最新の状態を反映したものとなるように、時間基準局制御部232は送信間隔Dを送信間隔D以下の定数に設定してもよい。
例えば、D=Dと設定された場合、1番目と2番目の測位パルスPとPの受信時刻は同じ時間基準パルスQ〜Qの組を使って補正されるものの、それ以降のk番目(k≧3)の測位パルスPk−1の受信時刻は、時間基準パルスQk−2〜Qn+k−2の組を使って補正される。つまり、異なるkに対しては(n+1)個のうち少なくとも1つは異なる時間基準パルスを使って、受信時刻が補正される。よって、測位のたびに時刻の補正の仕方が最新の状態を反映したものとなる。
なお、仮に、計算サーバ104が移動端末受信時刻保存部234を備えないように第2実施形態を変形しても、時間基準パルスの送信間隔Dを調整するという時間基準局制御部232の動作から、測位に使われずに無駄になる測位パルスの数を低減するという効果は得られる。なぜなら、もし移動端末受信時刻保存部234を計算サーバ104が備えていなくても、2番目以降の測位パルスの受信時には既に初回の時刻合わせが完了しているので、測位が可能であり、測位に使われずに無駄になるのは測位パルスPのみだからである。
また、第2実施形態によれば、2個目以降の測位パルスの受信通知は、時刻合わせが完了した後で計算サーバ104に送信されるので、図4の移動端末受信時刻保存部234にバッファリングする必要がなくなる。つまり、バッファリングを続けるべき時間が短くなり、バッファリングの対象データも少なくなる。このことは、図11を図3と比較すれば明らかである。
よって、第2実施形態によれば、バッファリングの処理や、初回の時刻合わせが完了した後のバッファリングされたデータを使った測位計算の処理(図9のステップS107の処理)も、第1実施形態に比べて簡便になり、移動端末受信時刻保存部234に必要な容量も少なくなる。
以上、2つの実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、様々に変形可能である。以下にその例をいくつか述べる。
移動端末101はRFIDタグでなくてもよく、例えば、携帯電話やパームトップ型のコンピュータ端末などでもよい。
図4の時刻補正部233による時刻の補正と、測位計算部231による測位計算は、上記の計算例とは異なる方法であってもよく、様々な数値計算手法の中から適切なものを採用することができる。また、変復調方式はPPMでなくてもよく、例えばOOK(On/Off
Keying)などでもよい。
図4の説明においては、時間基準局102を含むすべての基地局が同一構成であることを前提としていたが、時間基準局102を兼ねる基地局のみが時間基準パルス受信時刻保持部216と時間基準パルスタイミング生成部219を備えることとしてもよい。
また、図11に示すように、第2実施形態では2個目の測位パルスPの受信通知が届く前に時刻合わせが完了するように送信間隔Dが設定された。しかし、送信間隔Dの設定の仕方はこれに限らない。
例えば、4個目の測位パルスPの受信通知が届く前に時刻合わせが完了するように送信間隔Dを図4の時間基準局制御部232が設定してもよい。その場合でも、例えば第1実施形態の図3の例と比較して、図3の測位パルスの添え字aの値が3以上であれば、移動端末受信時刻バッファ234の使用量を減らす効果が得られる。
また、上記では簡単のため、測位パルスや時間基準パルスがどの基地局でも良好に受信される場合について主に説明した。しかし、実環境においては、いつもすべての基地局において測位パルスや時間基準パルスがうまく受信されるとは限らない。例えば、偶然に何らかの物体あるいは人間などが遮蔽物となり、測位パルスまたは時間基準パルスが受信不能となることもある。しかし、そのような受信不能の事態が起きても、支障なく測位を行うことが可能である。
TDOA方式による2次元の位置の測位には、理論上、最低限3つの基地局が必要である。しかし、無線測位システムが4つ以上の基地局を備えた冗長構成をとることにより、測位パルスを受信することができない基地局があっても測位計算が可能となる。
例えば、図1の無線測位システム100は、4つの基地局103a〜103dを備えている。よって、移動端末101からのある特定の測位パルスを、例えば基地局103dが偶然受信することができない事態になっても、他の基地局103a〜103cでの受信時刻を使って、その特定の測位パルスを送信した時点での移動端末101の位置を計算サーバ104は計算することができる。
また、偶然受信不能となった時間基準パルスがあっても、時間合わせを行うことは可能である。例えば、時刻合わせに必要な時間基準パルスの数が(n+1)=11であり、最初の測位パルスの受信を契機として、時間基準局102からは、送信IDが
0,1,2,……
である時間基準データが順次送信されるとする。
このとき、例えば基地局103dで、送信IDが5の時間基準データを受信することができなかったとしても、時刻補正部233は、基地局103dに関する時刻合わせを正しく行うことができる。なぜなら、時刻補正部233は、時間基準パルスの送信時刻のうち

0,1,2,3,4,6,7,8,9,10,11
なる送信IDと対応づけられて記憶されているものを時間基準パルス送信時刻バッファ236から読み出し、時間基準パルス受信時刻バッファ237dから、同じく
0,1,2,3,4,6,7,8,9,10,11
なる送信IDと対応づけられて記憶されている受信時刻を読み出して、(n+1)=11組のデータに基づく時刻合わせの計算を行うからである。
このように、たとえ受信することができない時間基準パルスがあったとしても、時間基準パルスの送信通知と受信通知がともに送信IDを含むため、送信IDが5の送信時刻に、間違えて送信IDが6の受信時刻を対応させて時刻合わせの計算を行うような事態には陥らず、正しく時刻合わせを行うことができる。したがって、局所時刻から基準時刻への補正も適切に行われる。
なお、上記の場合において、送信IDが0〜11の時間基準パルスが他の基地局103bと103cでは正常に受信可能であったとする。すると、基地局103bと基地局103cに関する初回の時刻合わせは、送信IDが0〜10の時間基準パルスによって行われるので、基地局103dに関する初回の時刻合わせよりも先に完了する。そのような場合に図9のステップS104が実行されると、時刻補正部233は、
・基地局103aは時間基準局102なのでもともと時刻合わせの計算をする必要がなく、
・基地局103bと103cは初回の時刻合わせが完了しており、
・基地局103dだけ、初回の時刻合わせが完了していないので、
・無線測位システム100全体としては、初回の時刻合わせが完了していない状態である、
と判断する。
また、上記では簡単のため、1つの移動端末101のみが無線測位システム100の測定範囲内に存在する場合を主に説明した。しかし、上記実施形態の構成によれば、複数の移動端末がそれぞれ独立に測位パルスを送信する場合でも、それぞれの移動端末について測位を行うことができる。
例えば、第1実施形態において、移動端末IDが1である第1の移動端末が測定範囲内で測位パルスを送信し始めてしばらくしてから、移動端末IDが2である第2の移動端末が測定範囲内で最初の測位パルスを送信したとする。
この場合、第1の移動端末からの最初の測位パルスを契機として時間基準パルスが送信され始めるので、第2の移動端末が最初の測位パルスを送信した時点では、時間基準パルスの送信が継続されている状態である。第2の移動端末が最初の測位パルスを送信するタイミングによって、第2の移動端末が最初の測位パルスを送信した時点で既に初回の時刻合わせが完了していることもあるし、そうでないこともある。
上記のように、測位データには移動端末IDが含まれるので、各基地局および計算サーバ104は、どの移動端末から測位パルスを受信したのかを判別することができる。また、測位計算部231は、移動端末IDが1のデータのみを用いて第1の移動端末の測位計算を行い、移動端末IDが2のデータのみを用いて第2の移動端末の測位計算を行う。よって、複数の移動端末が存在しても、それぞれの移動端末の位置の計算が可能である。
また、上記の第1および第2実施形態では、計算サーバ104が基地局103a〜103dとは別に設けられていた。しかし、他の実施形態では、いずれか1つの基地局が計算
サーバ104を兼ねていてもよい。例えば、時間基準局102が計算サーバ104を兼ねてもよい。
また、上記の第1および第2実施形態では、時間基準局102における時間基準パルスの送信時刻、各基地局における時間基準パルスの受信時刻、時間基準局102を含む各基地局における測位パルスの受信時刻は、すべて計算サーバ104に通知されている。すなわち、計算サーバ104にすべてのデータが集約されている。しかし、他の実施形態では、上記実施形態における計算サーバ104の機能が複数の基地局に分散されて実装されていてもよい。
計算サーバ104へのデータの集約が行われる実施形態において、計算サーバ104は、時刻合わせに必要な所定の数である(n+1)回の時間基準パルスの送信および受信が行われたか否かを、送られてくる通知の数のモニタを行うことによって判断する。時刻合わせに必要な所定の数の時間基準パルスの送信通知および受信通知が揃う前に、各基地局から計算サーバ104が受信した測位パルスの受信通知の内容はすべて、図8に示すように移動端末受信時刻バッファ234にバッファリングされる。
しかし、計算サーバ104の機能を物理的に分散して実装する実施形態では、例えば、各基地局がそれぞれ図4の時刻補正部233と移動端末受信時刻保存部234を備えていてもよい。
その場合、時間基準パルスの送信通知を時間基準局102が他のすべての基地局にネットワークを介して送信する。そして、各基地局において、図4の時間基準パルス受信時刻保持部216は、時刻合わせに必要な(n+1)回の時間基準パルスの受信時刻を保持するように変形される。すると、各基地局は、自基地局の局所時刻の基準時刻への補正を、自基地局が備える時刻補正部233により行うことができる。
また、この場合、各基地局において、図4の移動端末受信時刻保持部215は、当該基地局において(n+1)回の時間基準パルスの送信時刻と受信時刻のデータが揃う前に受信した測位データをすべて保持するように変形され、上記実施形態における図4の移動端末受信時刻保存部234の機能を果たす。
ただし、こうして各基地局に機能が分散されたとしても、最終的には、基準時刻に補正された各基地局における測位パルスの受信時刻が、計算サーバ104あるいは基地局のうちの1つに備えられた測位計算部231に集約されて、測位計算が行われる。
また、時刻補正部233や移動端末受信時刻保存部234とは異なり、時間基準局制御部232は複数に分散されることはないが、基地局とは異なる計算サーバ104に備えられてもよく、いずれか1つの基地局に備えられてもよい。
例えば、時間基準局制御部232が時間基準局102に備えられていてもよい。その場合、時間基準局102以外の基地局は、測位パルスを受信すると、その受信通知を、時間基準局制御部232を備えた計算サーバ104あるいは基地局へと通知する。
このように、図4の計算サーバ104の各機能は実施形態によって様々に変形されうる。
例えば、図4の時間基準局制御部232は、測位信号を受信したという通知を複数の基地局のうち任意の1つから受信したことを契機として、時間基準信号を無線通信により複数の基地局に送信することを開始する制御を行う時間基準制御手段の一例であるが、時間基準制御手段に相当する物理的実体は、基地局のうちの1つにあってもよく、基地局とは
別の計算サーバ104にあってもよい。
また、図4の時刻補正部233は、それぞれの基地局において時間基準信号を受信した時の局所時刻と、複数の基地局の位置と、時間基準信号が送信された時の基準時刻とに基づいて基準時刻に補正された、複数の基地局それぞれにおいて測位信号を受信した時のそれぞれの時刻を取得する補正時刻取得手段の一例である。つまり、時刻補正部233は自ら計算を行うことにより、補正された時刻を取得している。しかし、上記のように、各基地局で分散して時刻の補正を行ってもよく、その場合、各基地局から送信される補正済みの時刻のデータを、ネットワークを介して収集することによって取得するという形態で、補正時刻取得手段が実現されてもよい。
また、図4の時間基準局制御部232は、基地局からの測位パルスの受信通知を監視することによって、複数の基地局のうちのいずれかが測位信号を受信したことを認識する第1の認識機能と、予め決められた長さの期間に渡って測位信号が複数の基地局に受信されないことを認識する第2の認識機能とを実現している。そして、時間基準局制御部232は、時間基準パルスの送信を、第1の認識機能による認識を契機として開始し、第2の認識機能による認識を契機として停止するよう、時間基準パルスの送信装置としての時間基準局102を制御する機能も備えている。別の実施形態では、これらの機能を備えた、時間基準パルスの送信を制御するための単体の時間基準装置が、各基地局と接続されていてもよい。
以上、様々な実施形態について説明したが、いずれの場合も、移動端末101からの測位パルスがいずれかの基地局で正常に受信されて初めて、時間基準局102が時間基準パルスの送信を開始する。よって、測定範囲内に移動端末101が存在しないときや、存在しても測位パルスが送信されていないときには時間基準パルスが送信されない。すなわち、上記の各実施形態によれば、無駄な時間基準パルスの送信を控えることが可能であり、無駄な電波の送信を防ぐことができるため、他の機器に対する与干渉を低減することができる。
また、図4に示したように移動端末101が受信機能を備えておらず、例えば外部から命令を送信して移動端末101からの測位パルスの送信のタイミング等を制御することができないとしても、上記実施形態によれば、時間基準パルスも測位パルスも無駄にしないで済む。
さらに、初回の時刻合わせが完了する前に移動端末101から基地局が受信した測位パルスの受信時刻を、無線測位システム100内のどこかに集中または分散して設けられたバッファにバッファリングする実施形態においては、移動端末からの送信パルスを無駄なく利用して測位を行うこともできる。つまり、バッファリングした受信時刻を、初回の時刻合わせが完了した後で基準時刻に補正し、過去の移動端末101の位置を事後に測位計算することにより、時刻合わせができていない状態で受信された測位パルスも無駄なく利用されるようになる。
また、初回の時刻合わせが完了するまでは一時的に時間基準パルスの送信間隔を短くすることによっても、測位パルスがなるべく無駄にされないようにするという効果が得られる。
以上説明したことを概観すれば本発明は以下のような構成を備えるものである。
(付記1)
複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を測位する無線測位システムであって、
前記測位信号を受信したという通知を前記複数の基地局のうち任意の1つから受信したことを契機として、前記複数の基地局それぞれの局所時刻を基準時刻に補正するための時間基準信号を無線通信により前記複数の基地局に送信することを開始する制御を行う時間基準制御手段と、
それぞれの前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記複数の基地局の位置と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻とに基づいて前記基準時刻に補正された、前記複数の基地局それぞれにおいて前記測位信号を受信した時のそれぞれの時刻を取得する補正時刻取得手段と、
前記補正時刻取得手段が取得した前記時刻に基づいて、前記複数の基地局間における前記測位信号の伝搬時間差を計算し、前記複数の基地局の位置と前記伝搬時間差とに基づいて、前記移動端末の位置を計算する測位計算手段とを備える、
ことを特徴とする無線測位システム。
(付記2)
n≧1として、前記時間基準制御手段が、前記契機の後に(n+1)回以上、前記時間基準信号を送信する制御をし、
前記補正時刻取得手段は、(n+1)組の、前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻との組に基づいて補正された時刻を取得する、
ことを特徴とする付記1に記載の無線測位システム。
(付記3)
(n+1)個の前記時間基準信号を受信する前に前記基地局が前記測位信号を受信した時の前記局所時刻を保存する保存手段をさらに備え、
前記基地局が(n+1)個目の前記時間基準信号を受信した後に、前記保存手段が保存する前記局所時刻が補正されて前記補正時刻取得手段に取得され、前記測位計算手段が前記移動端末の位置を計算する、
ことを特徴とする付記2に記載の無線測位システム。
(付記4)
前記移動端末は複数回前記測位信号を送信し、
前記時間基準制御手段は、(n+1)個の前記時間基準信号の送信間隔を、前記測位信号の送信間隔に基づいて設定する、
ことを特徴とする付記2に記載の無線測位システム。
(付記5)
前記測位信号は、複数回送信される前記測位信号同士の送信間隔に関する間隔情報を含み、
前記時間基準制御手段は、前記複数の基地局のうちの1つである時間基準局に備えられ、該時間基準局が受信した前記測位信号に含まれる前記間隔情報に基づいて、(n+1)個の前記時間基準信号の送信間隔を設定する、
ことを特徴とする付記4に記載の無線測位システム。
(付記6)
前記時間基準信号の送信を開始する契機をもたらした第1の測位信号と、該第1の測位信号の次に送信される第2の測位信号との送信間隔以下の時間で、(n+1)回の前記時間基準信号の送信が終了するように、前記時間基準制御手段は(n+1)個の前記時間基準信号の送信間隔を設定する、
ことを特徴とする付記4に記載の無線測位システム。
(付記7)
前記時間基準制御手段は、前記測位信号の前記送信間隔に基づいて設定した前記送信間隔で(n+1)個の前記時間基準信号を送信する制御をした後、設定した前記送信間隔よりも長い送信間隔で、(n+2)個目以降の前記時間基準信号の送信を続ける制御を行う、
ことを特徴とする付記4に記載の無線測位システム。
(付記8)
前記時間基準制御手段は前記複数の基地局のうちの1つである時間基準局に備えられ、
前記時間基準局の前記局所時刻が前記基準時刻として使われる、
ことを特徴とする付記1に記載の無線測位システム。
(付記9)
前記測位信号を受信したという通知が、予め決められた長さの期間に渡って、複数の前記基地局のいずれからも受信されない場合、前記時間基準制御手段は前記時間基準信号の送信を停止する制御を行う、
ことを特徴とする付記1に記載の無線測位システム。
(付記10)
前記測位信号は、超広帯域無線パルスを用いたものである、
ことを特徴とする付記1に記載の無線測位システム。
(付記11)
前記基地局が、前記局所時刻から前記基準時刻への補正を行い、
前記補正時刻取得手段が、前記基準時刻に補正された前記時刻を前記基地局から受信する、
ことを特徴とする付記1に記載の無線測位システム。
(付記12)
前記補正時刻取得手段は、前記基地局から前記局所時刻を受信し、受信した前記局所時刻を前記基準時刻に補正する計算を行う、
ことを特徴とする付記1に記載の無線測位システム。
(付記13)
複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を測位する無線測位システムにおいて、前記複数の基地局と接続された無線測位装置であって、
前記測位信号を受信したという通知を前記複数の基地局のうち任意の1つから受信したことを契機として、前記複数の基地局それぞれの局所時刻を基準時刻に補正するための時間基準信号を無線通信により前記複数の基地局に送信することを開始する制御を行う時間基準制御手段と、
それぞれの前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記複数の基地局の位置と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻とに基づいて前記基準時刻に補正された、前記複数の基地局それぞれにおいて前記測位信号を受信した時のそれぞれの時刻に基づいて、前記複数の基地局間における前記測位信号の伝搬時間差を計算し、前記複数の基地局の位置と前記伝搬時間差とに基づいて、前記移動端末の位置を計算する測位計算手段と、
を備える無線測位装置。
(付記14)
複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を、前記複数の基地局への前記測位信号の伝搬時間差に基づいて測位する無線測位システムにおいて前記複数の基地局それぞれの局所時刻を1つの基準時刻に補正するために用いられる時間基準装置であって、
前記複数の基地局のうちのいずれかが前記測位信号を受信したことを認識する第1の認識手段と、
予め決められた長さの期間に渡って前記測位信号が前記複数の基地局に受信されないことを認識する第2の認識手段と、
前記局所時刻を前記基準時刻に補正するための時間基準信号の送信を、前記第1の認識手段による認識を契機として開始し、前記第2の認識手段による認識を契機として停止するよう、前記時間基準信号を前記複数の基地局に送信する送信装置を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする時間基準装置。
(付記15)
複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を測位する無線測位システムにおいて、
前記測位信号を受信したという通知を前記複数の基地局のうち任意の1つから受信したことを契機として、前記複数の基地局それぞれの局所時刻を基準時刻に補正するための時間基準信号を無線通信により前記複数の基地局に送信することを開始する制御を、時間基準制御手段が行い、
それぞれの前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記複数の基地局の位置と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻とに基づいて前記基準時刻に補正された、前記複数の基地局それぞれにおいて前記測位信号を受信した時のそれぞれの時刻に基づいて、前記複数の基地局間における前記測位信号の伝搬時間差を、測位計算手段が計算し、
前記複数の基地局の位置と前記伝搬時間差とに基づいて、前記測位計算手段が前記移動端末の位置を計算する、
ことを特徴とする無線測位方法。
第1実施形態のシステム構成図である。 第1実施形態の無線測位システムの動作の概略を示す図である。 第1実施形態における測位パルスの送受信シーケンスおよび時間基準パルスの送信シーケンスを示したタイミングチャートである。 第1実施形態における移動端末と基地局と計算サーバの機能ブロック図である。 時間基準パルスの送信通知のデータ形式の一例である。 測位パルスの受信通知のデータ形式の一例である。 計算サーバに送信されるデータ形式の一例である。 計算サーバにおけるデータのバッファリングを例示する図である。 第1実施形態での無線測位システムの動作を示すフローチャートである。 第1実施形態における時刻の補正を説明するタイミングチャートである。 第2実施形態における測位パルスの送受信シーケンスおよび時間基準パルスの送信シーケンスを示したタイミングチャートである。 TDOA方式の測位システムの原理を説明する図である。 特許文献1〜3に記載の無線測位システムの概略を示す図である。 直線近似による時刻合わせを説明するグラフである。 直線近似による時刻合わせの方法をまとめた図である。 時間基準パルスを複数回送受信する方式における問題を説明するタイミングチャートである。
符号の説明
100、1000 無線測位システム
101、1001 移動端末
102、1002 時間基準局
103a〜103x、1003a〜1003e 基地局
104、1004 計算サーバ
201 測位パルスタイミング生成部
202 送信部
203 送信アンテナ
211 受信アンテナ
212 受信部
213 タイマ
214 受信時刻測定部
215 移動端末受信時刻保持部
216 時間基準パルス受信時刻保持部
219 時間基準パルスタイミング生成部
220 送信部
221 送信アンテナ
231 測位計算部
232 時間基準局制御部
233 時刻補正部
234 移動端末受信時刻保存部、移動端末受信時刻バッファ
236 時間基準パルス送信時刻バッファ
237b、237c 時間基準パルス受信時刻バッファ
301 データ

Claims (7)

  1. 複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を測位する無線測位システムであって、
    前記測位信号を受信したという通知を前記複数の基地局のうち任意の1つから受信したことを契機として、前記複数の基地局それぞれの局所時刻を基準時刻に補正するための時間基準信号を無線通信により前記複数の基地局に送信することを開始する制御を行う時間基準制御手段と、
    それぞれの前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記複数の基地局の位置と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻とに基づいて前記基準時刻に補正された、前記複数の基地局それぞれにおいて前記測位信号を受信した時のそれぞれの時刻を取得する補正時刻取得手段と、
    前記補正時刻取得手段が取得した前記時刻に基づいて、前記複数の基地局間における前記測位信号の伝搬時間差を計算し、前記複数の基地局の位置と前記伝搬時間差とに基づいて、前記移動端末の位置を計算する測位計算手段とを備える、
    ことを特徴とする無線測位システム。
  2. n≧1として、前記時間基準制御手段が、前記契機の後に(n+1)回以上、前記時間基準信号を送信する制御をし、
    前記補正時刻取得手段は、(n+1)組の、前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻との組に基づいて補正された時刻を取得する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線測位システム。
  3. (n+1)個の前記時間基準信号を受信する前に前記基地局が前記測位信号を受信した時の前記局所時刻を保存する保存手段をさらに備え、
    前記基地局が(n+1)個目の前記時間基準信号を受信した後に、前記保存手段が保存する前記局所時刻が補正されて前記補正時刻取得手段に取得され、前記測位計算手段が前記移動端末の位置を計算する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の無線測位システム。
  4. 前記移動端末は複数回前記測位信号を送信し、
    前記時間基準制御手段は、(n+1)個の前記時間基準信号の送信間隔を、前記測位信号の送信間隔に基づいて設定する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の無線測位システム。
  5. 前記測位信号を受信したという通知が、予め決められた長さの期間に渡って、複数の前記基地局のいずれからも受信されない場合、前記時間基準制御手段は前記時間基準信号の送信を停止する制御を行う、
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線測位システム。
  6. 複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を測位する無線測位システムにおいて、前記複数の基地局と接続された無線測位装置であって、
    前記測位信号を受信したという通知を前記複数の基地局のうち任意の1つから受信したことを契機として、前記複数の基地局それぞれの局所時刻を基準時刻に補正するための時間基準信号を無線通信により前記複数の基地局に送信することを開始する制御を行う時間基準制御手段と、
    それぞれの前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記複数の基地局の位置と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻とに基づいて前
    記基準時刻に補正された、前記複数の基地局それぞれにおいて前記測位信号を受信した時のそれぞれの時刻に基づいて、前記複数の基地局間における前記測位信号の伝搬時間差を計算し、前記複数の基地局の位置と前記伝搬時間差とに基づいて、前記移動端末の位置を計算する測位計算手段と、
    を備える無線測位装置。
  7. 複数の基地局を備え、測位に用いられる無線信号である測位信号を送信する移動端末の位置を測位する無線測位システムにおいて、
    前記測位信号を受信したという通知を前記複数の基地局のうち任意の1つから受信したことを契機として、前記複数の基地局それぞれの局所時刻を基準時刻に補正するための時間基準信号を無線通信により前記複数の基地局に送信することを開始する制御を、時間基準制御手段が行い、
    それぞれの前記基地局において前記時間基準信号を受信した時の前記局所時刻と、前記複数の基地局の位置と、前記時間基準信号が送信された時の前記基準時刻とに基づいて前記基準時刻に補正された、前記複数の基地局それぞれにおいて前記測位信号を受信した時のそれぞれの時刻に基づいて、前記複数の基地局間における前記測位信号の伝搬時間差を、測位計算手段が計算し、
    前記複数の基地局の位置と前記伝搬時間差とに基づいて、前記測位計算手段が前記移動端末の位置を計算する、
    ことを特徴とする無線測位方法。
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