JP2009127113A - 高炭素クロム軸受鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋳造後に鋳造片の中心域成分偏析に起因して生成する巨大炭化物を縮小又は拡散消滅させた高炭素クロム軸受鋼を製造することができると共に、生産性の向上、コストの低減を図ることができる高炭素クロム軸受鋼の製造方法を提供すること。
【解決手段】高炭素クロム軸受鋼を製造する方法である。鋳造によって得られた鋳造片を加熱設備に装入し、鋳造片中心域温度を鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域まで昇温させ、この温度域で1〜4時間保持するという加熱処理工程を有する。加熱処理工程で、上記処理を施すことにより、加熱処理後の該鋳造片中心域の固相線温度を1200℃以上まで上昇させることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】高炭素クロム軸受鋼を製造する方法である。鋳造によって得られた鋳造片を加熱設備に装入し、鋳造片中心域温度を鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域まで昇温させ、この温度域で1〜4時間保持するという加熱処理工程を有する。加熱処理工程で、上記処理を施すことにより、加熱処理後の該鋳造片中心域の固相線温度を1200℃以上まで上昇させることが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、高炭素クロム軸受鋼において、鋳造片の中心域の成分偏析に起因して存在する巨大炭化物を短時間の加熱で拡散縮小させるため、効率的にソーキング処理を施し、炭化物が均一分散したミクロ組織を有し、優れた転動疲労特性を有する高炭素クロム軸受鋼の製造方法に関する。
高炭素クロム軸受鋼は厳しい環境下で使用されるため耐久性、焼入性、転動疲労寿命などの特性が優れていることが要求され、該軸受鋼には1%程度のCと1.5%程度のCr等を含有させている。該軸受鋼の連続鋳造片の中心域は、表面部に比べて冷却速度が遅く、このため軸受鋼の連続鋳造片には冷却過程で中心域にC、Crおよび不純物元素が成分偏析し易く、これらの元素が高濃度化して鋼中のFeとも結合した共晶炭化物が生成され、この鋳造片中心域の偏析部分にはCrを含んだ巨大炭化物が存在することとなる。
この巨大炭化物は後工程の分塊圧延や製品圧延での加熱および塑性加工だけでは消滅し難く、巨大炭化物の存在は軸受鋼において重要な特性である転動疲労寿命を著しく低下させる。このため従来、高炭素クロム軸受鋼は1200〜1280℃の高温度域で10時間以上かけてC、Crなどの高濃度化した中心偏析成分を拡散し巨大炭化物を消滅させるためのソーキング処理が行われていた。
このソーキング処理は軸受鋼の製造において生産性の阻害となり、かつ大きなエネルギーロスが生じ、更に高温で長時間の加熱処理により鋳造片の表面部には過度の脱炭が生じることになる。
高炭素クロム軸受鋼の鋳造片中心域に生じる成分偏析や巨大炭化物の生成を抑制したり、また生成された巨大炭化物を効率的に拡散消滅させ、ソーキング時間を短縮させるため、従来、多くの特許が出願されている。例えば、成分偏析や巨大炭化物の生成を抑制するための方法として、連続鋳造片の冷却過程で中心偏析を抑制するため未凝固溶鋼が存在する状態で1〜3%程度の軽圧下を加え、中心偏析を抑制し巨大炭化物の発生を抑制するものが提案されている(特許文献1)。しかしながら、連続鋳片の未凝固部に軽圧下を加えるに大規模な圧下装置等を新たに設置する必要があり、また濃化溶鋼部を除去するため最終鋳造片の切捨て量が増大するなどの問題を有する。
また生成した炭化物を効率的に固溶させるため、例えば、溶融相が現出せずかつ炭化物を固溶しうる温度は1240℃以下であるとし、液相が生成した場合、ソーキングとして好ましくないことが示されている(特許文献2)。
さらに鋳片の中心域温度の最高値を1160〜1250℃とし、鋳造片中心域のミクロポロシティや大きな一次炭化物の発生を防止すると共に在炉時間を短くし連続加熱炉の運転効率を向上させることが記載されている(特許文献3)。
さらに鋳片の中心域温度の最高値を1160〜1250℃とし、鋳造片中心域のミクロポロシティや大きな一次炭化物の発生を防止すると共に在炉時間を短くし連続加熱炉の運転効率を向上させることが記載されている(特許文献3)。
しかしながら、前者は0.35〜0.55%のCと6〜14%のCrを含有する工具鋼に関しソーキング処理に30時間を要するものであり、また後者はソーキング時間を短縮するため加熱炉、均熱炉さらに調整炉を用いるものであり、さらに前記3炉毎にソーキング指数を特定したものであり、設備の増加と加熱条件が複雑になるなどの問題を有する。
大断面連続鋳造装置で鋳型から引き出された高炭素クロム軸受鋼、ブルーム等の鋳造片の表面部は冷却水により強制冷却されるが、中心域は冷却速度が遅いことから、C、Cr等の元素が高濃度化し、成分偏析が生じてCrを含んだ30〜70μm程度の巨大炭化物が鋳造片中心域の成分偏析部に生成し易い。この中心偏析部に生成した巨大炭化物は分塊圧延や製品圧延等の塑性加工およびこれら圧延前の加熱において縮小され難く、中には製品に使用上有害な巨大炭化物が残存する。通常、この巨大炭化物を残存させないため、連続鋳造で製造された鋳造片を1200〜1280℃まで昇温させ、この温度で10〜20時間程度保持するという長時間のソーキング処理を行っている。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、鋳造後に鋳造片の中心域成分偏析に起因して生成する巨大炭化物を縮小又は拡散消滅させた高炭素クロム軸受鋼を製造することができると共に、生産性の向上、コストの低減を図ることができる高炭素クロム軸受鋼の製造方法を提供しようとするものである。
従来より、CはCrに比べて低温域で拡散が進行し、Crは高温域で拡散が進行することは知られている。本発明者はその現象を有効に活用し、巨大炭化物を短時間の加熱処理で拡散消滅させるため、ソーキング条件を見直し、CとCrを個別に拡散させるため種々検討した。また、本発明者は実際のソーキングにおいてCやCr等偏析元素の拡散がどの様に進行しているかを知るために、1000〜1300℃で1〜10時間加熱保持した鋳造片を加熱炉から取出し、鋳造片中心域で縦割りしてそのミクロ組織および偏析度を調査した。その結果、1200〜1300℃での加熱により中心偏析部において一部液相が生成し、炭化物が巨大なまま残存していたことをつきとめた。
本発明者は、更に鋳造片の中心域に存在する偏析成分、即ちC、Crが高濃度化して鋼中Feとも結合した共晶炭化物が成長した巨大炭化物部の固相線温度に注目し、その成分偏析に伴う固相線温度の変化について状態図計算ソフトを使って計算した。なお、固相線温度は偏析部のC、Crや不純物元素等の含有量をEPMAで測定し、この成分値から計算した。
その結果、本発明者は、高炭素クロム軸受鋼の正常成分域の固相線温度が1330℃程度であるのに対して、C、Cr等が高濃度化した中心偏析部では、その固相線温度が1150℃前後まで低下し、更に巨大炭化物そのものの固相線温度は1075℃程度まで低下することを見出した。
すなわち、通常のソーキング温度1200〜1280℃の加熱で、鋳造片中心域に巨大炭化物が存在し、CやCrが高濃度化した場合は中心域の成分偏析部の固相線温度を越え偏析元素を含む中心偏析部が溶融して、ソーキング時間内に再溶融した液相が残った場合はソーキング後再凝固時に再度巨大炭化物が晶出し、ソーキング効果がなくなることが判明した。
したがって、巨大炭化物を効率良く拡散するには、鋳造後の鋳造片の中心偏析部の固相線より低い温度域で保持し、巨大炭化物中の共析セメンタイト等の分解しやすい炭化物のみを溶融させ、炭化物中に存在する拡散速度の速いCを鋼中に拡散させる加熱処理が重要であることを見出した。
第1発明は高炭素クロム軸受鋼を製造する方法であって、鋳造によって得られた鋳造片を加熱設備に装入し、該鋳造片中心域温度を鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域まで昇温させ、この温度域で1〜4時間保持するという加熱処理工程を有することを特徴とする高炭素クロム軸受鋼の製造方法にある(請求項1)。
この本発明のソーキング処理方法は、巨大炭化物を効率良く拡散するに、まず加熱処理工程で中心偏析部を、鋳造後の固相線より低い温度域、例えば1050〜1200℃で、1〜4時間程保持し、巨大炭化物中の分解しやすい炭化物のみを溶融し、炭化物中および成分偏析部のCを鋼中に拡散させ、鋳造片の中心偏析部の固相線温度を結果的に上昇させる。このことは、炭化物中のCを拡散させる過程で、同時に成分偏析部のCをも鋼中に拡散させることになり、鋳造片の中心偏析部の固相線温度を上げることができる。
すなわち、本発明で最も重要な点はソーキング温度を単に加熱炉の雰囲気温度や鋳造片の表面温度に注目するのではなく、鋳造片の中心域すなわち成分偏析部における加熱温度に注目し、この温度を限定することにより始めて本発明のソーキング時間を短縮することが可能となるものである。例えば、大型連続鋳造片(ブルームCC)の場合、鋳造片中心域温度と表面部温度とでは大きな差が生じ、中心域の温度がソーキング温度に達するに表面部に比べて0.5〜1時間以上の時間差が生じるものである。
さらに詳しく述べると、鋳造片を本発明の加熱処理温度までの加熱に際し、鋳造片サイズや加熱条件、例えば加熱速度、加熱雰囲気、バッチ式、連続式などにより中心域温度は表面部に比べ大きく温度が低くなる。そこで本発明者は中心域の温度が表面部の温度に近づくまでの時間を各種の実験により求めて、これに基づいて本発明の加熱処理時間を特定したものである。
上述の知見より、本発明は鋳造片中心偏析部、鋳造後の固相線温度以下の温度域で巨大炭化物中および中心偏析部の一部のCを拡散させ、該偏析部の固相線温度を1200℃以上に上昇させることが重要であることを見出した。そのためには通常の分塊圧延や製品圧延時の昇温過程で必然的にその温度域を10〜30分程度で通過させるだけでは拡散に対して不充分であり、一定時間保持することが必要であることも明らかにした。更に鋳造片のサイズや冷却速度によりC、Crの偏析量を実測し、巨大炭化物が生成しない偏析量まで拡散消滅させるのに必要な時間を見出したものである。
そして、本発明の製造方法では、上記加熱処理工程を実施した鋳造片に対して、分塊圧延や製品圧延等の後工程を加えることができる。これにより、種々の用途に適した軸受を製造することができる。
本発明はソーキング時間を大幅に短縮し得ることにより、本発明の製造方法で軸受鋼を製造した場合、従来法に比べて大幅な生産性の向上かつエネルギーロスが少なく、更に高温域での加熱時間が短いことから鋳造片の表面部の脱炭を軽減できる。
すなわち本発明は、高炭素クロム軸受鋼の鋳造片の中心域成分偏析に起因して生成する巨大炭化物を効率良く拡散消滅させるソーキング処理について種々検討した結果、ソーキング温度を従来に比べて低い温度で加熱処理し、溶融分解しやすい炭化物を先に固溶させて固相線温度を上昇させることにある。これにより、炭化物を固溶、拡散させるとともに、上述の後工程を加える際に高温加熱を行っても短時間でCrを拡散消滅させることが可能な最適な条件を見出したものである。
本発明者は成分偏析域の鋳造後の固相線温度が大幅に低下することに鑑み、まず中心域の固相線を上昇させる手段について種々検討した結果、成分偏析域のCの拡散が鋳造後の鋳造片の中心域の固相線温度以下の低い温度で行えることを見出し、鋳造片中心域温度を鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域まで昇温させる加熱処理工程を行い、炭化物を固溶、拡散させ、また、中心偏析部の固相線温度を上昇させることを明らかにした。
これにより、本発明によれば、鋳造後に鋳造片の中心域成分偏析に起因して生成する巨大炭化物を縮小又は拡散消滅させた高炭素クロム軸受鋼を製造することができると共に、生産性の向上、コストの低減を図ることができる高炭素クロム軸受鋼の製造方法を提供することができる。
なお、第1発明の加熱処理工程において、「鋳造片中心域温度を鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域まで昇温させ」と、具体的に温度を限定しないのは、加熱処理条件決定の方法を規定するためのものであり、製造条件が改善されるなど成分偏析域の成分濃度が変化した場合にも適用できることを包含するものである。
第2発明は第1発明の加熱処理工程で、上記処理を施すことにより、該加熱処理工程後の該鋳造片中心域の固相線温度を1200℃以上まで上昇させることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼の製造方法にある(請求項2)。
すなわち、上記加工処理工程において、炭化物中に存在する拡散速度の速いCを最初に鋼中に拡散させ、かつ同時に成分偏析部のCをも鋼中に拡散させることになり、鋳造片の中心偏析部の固相線温度を1200℃以上に上昇させる。
これにより、その後の工程、例えば、塑性加工前に1200℃を越える温度まで昇温させても、液相が生じ難く、次工程でCrを短時間で拡散が可能であり、大幅なソーキング時間の短縮に寄与するものである。
すなわち、上記加工処理工程において、炭化物中に存在する拡散速度の速いCを最初に鋼中に拡散させ、かつ同時に成分偏析部のCをも鋼中に拡散させることになり、鋳造片の中心偏析部の固相線温度を1200℃以上に上昇させる。
これにより、その後の工程、例えば、塑性加工前に1200℃を越える温度まで昇温させても、液相が生じ難く、次工程でCrを短時間で拡散が可能であり、大幅なソーキング時間の短縮に寄与するものである。
また第3発明は、高炭素クロム軸受鋼を製造する方法であって、鋳造によって得られた鋳造片を加熱設備に装入し、1050〜1150℃の温度域まで昇温させ、この温度域で1〜4時間保持するという加熱処理工程を施し、該加熱処理後の該鋳造片中心域の固相線温度を1200℃以上まで上昇させることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼の製造方法にある(請求項3)。
第1発明および第2発明において、鋳造片中心域温度を鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域とは、具体的には鋳造片中心域の成分偏析域に高濃度化したC、Crや不純物元素等の濃度(mass%)を、鋳造条件を考慮して事前に測定して成分偏析域の固相線温度を算出する必要があり、第3発明では成分偏析域の成分濃度を種々測定し、最適な加熱処理温度を1050〜1150℃と特定したものである。
なお、第1発明および第2発明において加熱処理温度を鋳造片中心域温度が鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域、また、第3発明において加熱処理温度を1050〜1150℃と限定したのは、下限については固相線温度より50℃低い温度あるいは1050℃未満では巨大炭化物中のCの拡散が充分に行うことができないためであり、また、中心偏析部の固相線温度は鋳造の方法や条件により異なるため、それらの成分偏析ばらつきを考慮しても液相を現出させないためである。一方、上限については固相線温度あるいは1150℃を超えると成分偏析部の鋳造後の固相線温度を越え偏析元素を含む中心偏析部が溶融して、ソーキング時間内に再溶融した液相が残った場合は再凝固時に再度巨大炭化物が晶出するためである。
また、第1発明及び第2発明における固相線温度は、成分によって変動するものであり、1200℃程度になる場合もある。そのため、この第1発明及び第2発明における実際の加熱処理温度は、前述したごとく、例えば1050〜1200℃の範囲から選択することができる。
一方、第3発明において限定した1050〜1150℃の範囲の加熱処理温度は、上記の固相線温度を実際に考慮しなくても、加熱処理温度だけを制御すれば、確実に上記第1発明の作用効果が得られる加熱処理温度の範囲を定めたものである。なお、第3発明では加熱処理温度を1050〜1150℃としたが、更に好ましくは1050〜1130℃にすることである。すなわち、上限温度を1130℃にすることにより鋳造片中心域の液相の生成をより確実に抑制するためのものである。
また上記加熱処理工程の加熱処理時間を1〜4時間としたのは、1時間未満では充分にCを鋼中に拡散させることができないためであり、1〜4時間で充分に炭素を拡散でき、4時間を越えると生産性を阻害するためである。なお、本発明において加熱処理温度とは加熱炉等加熱設備の雰囲気温度や設定温度ではなく、鋳造片の中心域の温度を指すものである。
更に、第2発明および第3発明において、加熱処理工程で鋳造片中心域の加熱処理後の固相線温度を1200℃以上まで上昇させると限定したのは、後工程を行うことにより、偏析成分Crの速やかな拡散を行おうとする場合には、1200℃以上に昇温させる必要があり、その時に鋳造片中心域の固相線温度が1200℃未満では鋳造片中心域が溶融し液相が生成する可能性があるためである。
なお、鋳造片中心域において確実に液相の生成を抑制し、ソーキング時間を短縮するには、鋳造片中心域の固相線温度を1230℃以上にすることが望ましい。
なお、鋳造片中心域において確実に液相の生成を抑制し、ソーキング時間を短縮するには、鋳造片中心域の固相線温度を1230℃以上にすることが望ましい。
また、連続鋳造片のサイズがビレットの様に小さく、もともと巨大炭化物が20〜40μm以下と小さい場合、あるいは鋳造片から製品圧延までの減面率が大きい場合は、本加熱処理のみあるいは圧延前の加熱処理で巨大炭化物を数μm程度まで拡散消滅し得ることを知見した。
第1発明〜第3発明の効果としては、鋳造状態の鋳造片には30〜70μm程度の巨大炭化物が存在する場合もあるが、上記の加熱処理を施すことにより1/3〜1/5程度に縮小していた。またEPMAで測定した巨大炭化物を含む成分偏析部の化学成分を見ると、鋳造状態では2.4%であったC量が本加熱処理を施したものでは1.4%と6割程度まで拡散・減少していた。
本発明は高炭素クロム軸受鋼の鋳造片の中心域に存在する巨大炭化物を効率良く拡散消滅させるソーキング処理について種々検討した結果、本発明のソーキング加熱処理することにより短時間で拡散消滅させる最適な加熱条件を見出したものである。
すなわち、本発明の製造方法で軸受鋼を製造した場合、従来法に比べて大幅な生産性の向上かつエネルギーロスが少なく、更に高温域での加熱時間が短いことから鋳造片の表面部の脱炭を軽減できるものである。
すなわち、本発明の製造方法で軸受鋼を製造した場合、従来法に比べて大幅な生産性の向上かつエネルギーロスが少なく、更に高温域での加熱時間が短いことから鋳造片の表面部の脱炭を軽減できるものである。
更に本発明に用いる鋳造片は、連続鋳造により製造された鋳造片、または上注、或いは下注鋳造で製造された鋳造片でも適用される。即ち、鋳造片の中心域に成分偏析、巨大炭化物が存在するものであれば拡散消滅させる効果を有するものである。
さらに、熱効率や鋳造片の変態割れを防止し、また炭化物の組成がより拡散に難い組成に変化するのを防ぐには連続鋳造設備から引き出され、切断された鋳造片は中心温度が800〜1000℃以上の高温状態のまま連続式加熱炉に装入され引き続きソーキング処理(加熱処理)を施すことが望まれる。
また、本発明では加熱処理を施すに、連続式加熱炉でもバッチ式加熱炉でも、偏析成分を拡散し巨大炭化物を拡散消滅させる効果を有するものである。
また、本発明では加熱処理を施すに、連続式加熱炉でもバッチ式加熱炉でも、偏析成分を拡散し巨大炭化物を拡散消滅させる効果を有するものである。
また、本発明で用いる高炭素クロム軸受鋼としては、JISで規定されたSUJ1〜SUJ3、Moを0.1〜0.25%含有させたSUJ4、5、更に0.70〜0.85%のCと、1.3〜1.6%のCrを含有したものについても包含されるものである。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明は下記実施例によって制限されるものではなく、その趣旨に適合して変更を加えて実施することも本発明の技術範囲に包含されるものである。
本発明に適用する高炭素クロム軸受鋼としてJISに規定されるSUJ2を用いた。該軸受鋼材を製造するにアーク式電気炉にて溶解、酸化精錬された溶鋼を、取鍋で還元精錬し、次いで真空脱ガス処理を施した後、連続鋳造装置により370×530×3100mmの鋳造片に鋳造した。
本例では、高炭素クロム軸受鋼の製造方法に係る実施例として表1に示した、7種類の本発明方法により製造された試料E1〜試料E7と、比較例として4種類の試料C1〜試料C4を上記に示した方法により作製した。
上記の鋳造片を加熱炉にて表1に示す加熱処理条件にてソーキング処理を施して、試験を行った(試料E1〜試料E7、試料C1〜試料C6)。各試験温度までの昇温速度は通常のソーキングにおける速度(約10℃/min)であり、表中の時間は鋳造片中心域温度が各温度に到達してからのものである。
表1に、加熱処理工程における処理温度、処理温度が鋳造後の鋳造片中心域の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域であるか否かの評価、処理時間を示す。なお、加熱処理工程における処理温度は、表1の試料E4、試料C1、試料C4における鋳造片については試験的に前記ブルームからなる常温鋳造片に孔を空け、φ3.2シース熱電対を埋設して連続加熱炉内鋳造片の表層および中心温度履歴を実測した後、3次元差分伝熱計算モデルを活用して高温状態の鋳造片中心域の温度をシミュレートした。
更に、上記以外の実験については、上記実測時の加熱条件、鋳造片中心温度およびシミュレートした結果を用いて、加熱条件を変更した場合の鋳造片中心部温度について、3次元差分伝熱計算モデルを活用して高温状態の鋳造片中心温度をシミュレートした。
加熱処理工程の処理温度が鋳造片中心域の初期の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域であるか否かの評価は、上記温度域内である場合を○、上記温度域にない場合を×とした。
加熱処理工程の処理温度が鋳造片中心域の初期の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域であるか否かの評価は、上記温度域内である場合を○、上記温度域にない場合を×とした。
得られた各高炭素クロム軸受鋼の中心域からサンプルを切り出し、該サンプルを鏡面研磨後ピクラール腐食してミクロ観察し、巨大炭化物の有無を調査した。
更に、本加熱処理後の鋳造片の中心域の固相線温度について、C、Crや不純物元素等の含有量をEPMAで測定し、この成分値から状態図計算ソフトを使って計算した。
更に、本加熱処理後の鋳造片の中心域の固相線温度について、C、Crや不純物元素等の含有量をEPMAで測定し、この成分値から状態図計算ソフトを使って計算した。
実施例で用いた本発明方法による試料E1〜試料E7と、比較例の試料C1〜試料C4はいずれも鋳造片中心域の成分偏析量の多いものから選んだものである。
なお、本発明方法による試料E1〜試料E7について、これらのうち試料E1、試料E2は第1、2発明にかかるもので、試料E3〜試料E7は第3発明に係るものである。また比較例における試料C1、試料C3は第1、2発明に対する比較例に係るもので、試料C2、試料C4は、第3発明に対する比較例に係るものである。
なお、本発明方法による試料E1〜試料E7について、これらのうち試料E1、試料E2は第1、2発明にかかるもので、試料E3〜試料E7は第3発明に係るものである。また比較例における試料C1、試料C3は第1、2発明に対する比較例に係るもので、試料C2、試料C4は、第3発明に対する比較例に係るものである。
表1において加熱処理工程の処理温度が鋳造片中心域の初期の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域であるか否かの評価は、上記温度域内である場合を○、上記温度域にない場合を×とした。
加熱処理工程後の計算固相線温度の欄において、◎は鋳造片中心域の固相線温度が1230℃以上のものであり、○は該固相線温度が1200℃以上1230℃未満のものであり、×は該固相線温度が1200℃未満もしくは溶融したため計算不可能となったものである。
また、有害な巨大炭化物の大きさについては標準的数値がないが、本実施例における巨大炭化物の評価は、10μmを超える場合には不合格であるとして評価×とし、10μm以下の場合には合格であるとして評価○と定義し、表1の巨大炭化物の欄に示した。
試料C1の比較材は、加熱処理温度が、本発明の下限温度よりも低い温度であるため、4時間の加熱処理では炭化物の拡散が充分でなく、20μm程度の巨大炭化物が存在していた。
また、試料C2の比較材は、加熱処理温度は良いが、加熱処理時間が0.5時間であり本発明の下限よりも短いため10μmを超える巨大炭化物が存在していた。
また、試料C2の比較材は、加熱処理温度は良いが、加熱処理時間が0.5時間であり本発明の下限よりも短いため10μmを超える巨大炭化物が存在していた。
また試料C3及び試料C4の比較材は、固相線温度は本発明の上限温度を越えた温度であるため、鋳造後の鋳造片中心域の成分偏析部の固相線温度を超えており、高濃度のC、Crなどの偏析元素を含む中心偏析部が加熱処理中に再溶融し、2あるいは10時間の加熱処理では再溶融した液相が残って、冷却過程で70μm程度の巨大炭化物が再晶出したと考えられる。
これらに対して、本発明法にかかる試料E1〜試料E7は試験片の中心域温度を鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域、あるいは1050〜1150℃の温度域まで昇温させ、この温度域で1〜4時間保持するという加熱処理を施した。これにより、いずれの試験片においても10μmを越える巨大炭化物が存在することはなかった。大きさが10μm以下である炭化物は、その後、分塊圧延や製品圧延等の塑性加工を行う場合には、該塑性加工及びこれら圧延前の加熱において消滅できる大きさである。更に、試料E1、E2及び試料E6、7は固相線温度が1230℃以上まで上昇していた。
Claims (3)
- 高炭素クロム軸受鋼を製造する方法であって、鋳造によって得られた鋳造片を加熱設備に装入し、該鋳造片中心域温度を鋳造後の固相線温度〜固相線温度より50℃低い温度域まで昇温させ、この温度域で1〜4時間保持するという加熱処理工程を有することを特徴とする高炭素クロム軸受鋼の製造方法。
- 請求項1において、上記加熱処理工程で、上記処理を施すことにより、該加熱処理工程後の該鋳造片中心域の固相線温度を1200℃以上まで上昇させることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼の製造方法。
- 高炭素クロム軸受鋼を製造する方法であって、鋳造によって得られた鋳造片を加熱設備に装入し、1050〜1150℃の温度域まで昇温させ、この温度域で1〜4時間保持するという加熱処理工程を施し、該加熱処理後の該鋳造片中心域の固相線温度を1200℃以上まで上昇させることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼の製造方法。
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WO2012018239A2 (ko) | 2010-08-06 | 2012-02-09 | 주식회사 포스코 | 고탄소 크롬 베어링강 및 그 제조방법 |
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CN113714480A (zh) * | 2021-09-02 | 2021-11-30 | 河南济源钢铁(集团)有限公司 | 一种降低高碳铬轴承钢带状碳化物宽度及碳化物颗粒尺寸的方法 |
CN113714480B (zh) * | 2021-09-02 | 2023-04-25 | 河南济源钢铁(集团)有限公司 | 一种高碳铬轴承钢的生产方法 |
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