JP2009120822A - 接着剤組成物、それを用いた接着部材、ダイシング/ダイボンド一体型のフィルム、半導体搭載用支持部材及び半導体装置 - Google Patents

接着剤組成物、それを用いた接着部材、ダイシング/ダイボンド一体型のフィルム、半導体搭載用支持部材及び半導体装置 Download PDF

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大地 竹森
Takayuki Matsuzaki
隆行 松崎
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Suzushi Furuya
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Abstract

【課題】ダイシング工程でバリの発生を抑え、以降の工程でのバリ起因の不具合を防止する接着剤組成物、接着部材、ダイシング/ダイボンド一体型のフィルム、半導体搭載用支持部材及び半導体装置を提供する。
【解決手段】下記(a)と、該(a)100質量部に対し下記(b)10〜450質量部と、(c)50〜250質量部と、を含む接着剤組成物とする。
(a)エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物、
(b)架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分、
(c)無機フィラー。
【選択図】図1

Description

本発明は、接着剤組成物、それを用いた接着部材、ダイシング/ダイボンド一体型のフィルム、半導体搭載用支持部材及び半導体装置に関する。
近年、電子機器の小型化に伴い、これに搭載する半導体装置は基板への高密度実装が要求されるようになり、小型化・軽量化が進むと共に、CSP(チップサイズ半導体装置)と呼ばれる小型半導体装置の開発が進められ、半導体素子の接着部材としては高信頼性、作業性の観点から、フィルム状接着剤(以下、ダイボンドフィルムという)が用いられるようになった。
ダイボンドフィルムの使用方法の一つとしてウェハ裏面貼り付け方式が挙げられる。これはまず、半導体ウェハの裏面にダイボンドフィルムを貼り付け、次にこのダイボンドフィルムの他面にダイシングフィルムを貼り付け、その後上記ウェハ側からダイシングによって半導体素子を個片化し、個片化したダイボンドフィルム付き半導体素子をピックアップし、それを支持部材に接合、加熱硬化、ワイヤボンド、樹脂封止等の工程を経ることにより半導体装置が得られる。
このウェハ裏面貼り付け方式のダイボンドフィルムと共に用いられるダイシングフィルムは、基材フィルムの上に粘着剤層が設けられたものが一般的で、その粘着剤の特性から、感圧型ダイシングフィルムとUV型ダイシングフィルム(放射線硬化型ダイシングフィルムともいう)に大別される。
UV型ダイシングフィルムは、ダイシング時には高粘着力を有するものの、ピックアップする前に紫外線(UV)等を照射することにより低粘着力になる。そのため、感圧型ダイシングフィルムが有する課題(ダイシング時、ピックアップ時の粘着力調整)が改善されるため、ダイシングフィルムとして広く採用されるに至っている。
このようなUV型ダイシングフィルムを用いた場合のウェハ裏面貼り付け方式における次なる課題は、上記ダイシング工程までにダイボンドフィルムの貼り付けとダイシングフィルムの貼り付けという二つの貼り付け工程があるため、作業性の低下が懸念されていることである。そのためダイボンドフィルムとダイシングフィルムの機能を併せ持つダイボンドダイシング一体型フィルムの開発がされている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上記一体型フィルムはウェハラミネート後、ウェハ/ダイボンドフィルムをダイシング工程において切断するが、その際に発生するダイシングバリにより、次工程であるワイヤボンディング工程内で金パッドにバリが付着するという問題が発生する可能性がある。
特開2002−226796号公報
ダイシングテープ/ダイボンドテープからなる一体型フィルムを使用した半導体装置作製工程において、ダイシング工程で発生するバリが基板上の金パッドに付着する場合、次工程であるワイヤボンディング工程でワイヤが接着できないという不具合を発生する可能性がある。本発明は、ダイシング工程でバリの発生を抑え、以降の工程でのバリ起因の不具合を防止する接着剤組成物、それを用いた接着部材、ダイシング/ダイボンド一体型のフィルム、半導体搭載用支持部材及び半導体装置を提供することである。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、無機フィラーを適当量添加することで、接着剤組成物の弾性率を高くでき、それによりバリの発生を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記(a)と、該(a)100質量部に対し下記(b)10〜450質量部と、(c)50〜250質量部と、を含む接着剤組成物。
(a)エポキシ樹脂成分とフェノール樹脂成分との混合物、
(b)架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分、
(c)無機フィラー。
(2)前記接着剤組成物のBステージ状態の貯蔵弾性率が、25℃で2000〜3000MPaであることを特徴とする上記(1)記載の接着剤組成物。
(3)前記エポキシ樹脂の軟化点が50℃以上である上記(1)1又は(2)記載の接着剤組成物。
(4)前記フェノール樹脂の吸水率が2質量%以下である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
(5)前記フェノール樹脂の350℃における加熱質量減少率が、5質量%未満である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
(6)前記(b)高分子量成分が、エポキシ樹脂と非相溶である上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
(7)前記(b)高分子量成分が、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート0.5〜6質量%を含む、重量平均分子量が10万以上であるエポキシ基含有アクリル共重合体であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
(8)前記(c)無機フィラーの平均粒径が、0.005〜5μmである上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の接着剤組成物をフィルム状に形成して得られる接着部材。
(10)上記(9)に記載の接着部材を使用した、ダイシング/ダイボンド一体型のフィルム。
(11)支持部材の半導体素子搭載面に上記(9)に記載の接着部材を備えた半導体搭載用支持部材。
(12)半導体素子と支持部材とを上記(9)に記載の接着部材を介して接着することを特徴とする半導体装置。
本発明によれば、ダイシング工程でバリの発生を抑え、以降の工程でのバリ起因の不具合を防止する接着剤組成物、接着部材及びダイシング/ダイボンド一体型のフィルムを提供することができる。また、それらを用いることで、ダイシング工程で発生するバリ起因の不具合を防止した半導体搭載用支持部材及び半導体装置を提供することができる。
<接着組成物>
本発明の接着組成物は、下記(a)と、該(a)100質量部に対し下記(b)10〜450質量部と、(c)50〜250質量部と、を含むことを特徴とする。
(a)エポキシ樹脂成分とフェノール樹脂成分との混合物、
(b)架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分、
(c)無機フィラー。
本発明の接着剤組成物は、無機フィラーの添加により弾性率を調整することで、半導体製造プロセスであるダイシング工程においてバリの発生を抑えることが可能となり、後工程におけるバリ起因の不具合を抑えることが出来る。
なお、本発明においてバリの定義としては、一般的な半導体パッケージ構造においてチップと金パッドの距離が100μm以上であること、バリの金パッドへの付着防止が目的であることから、100μm以上の長さのバリを対象とする。
以下、本発明に用いられる材料を説明する。
[(a)混合物]
本発明の接着組成物に使用する(a)混合物を構成するエポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を呈するエポキシ硬化樹脂となるものであれば特に制限は無い。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等を使用することができ、他にも、多官能エポキシ樹脂や複素環含有エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することができる。
耐熱性の観点から、環球式で測定した軟化点が50℃以上であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、油化シェルエポキシ株式会社製 エピコート1001、1002、1003、1055、1004、1004AF、1007、1009、1003F、1004F、ダウケミカル日本株式会社製 D.E.R.661、662、663U、664、664U、667、642U、672U、673MF、668、669等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製 YDF−2004等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製 EPPN−201等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ株式会社製エピコート180S65、チバスペシャリティーケミカルズ社製 アラルダイト ECN1273、1280、1299、東都化成株式会社製 YDCN−701、702、703、704、日本化薬株式会社製 EOCN−1020、102S、103S、104S、住友化学工業株式会社製 ESCN−195X、200L、220等のクレゾールノボラックエポキシ樹脂、油化シェルエポキシ株式会社製 Epon 1031S、エピコート 1032H60、157S70、日本化薬株式会社製 EPPN 501H、502H等の多官能エポキシ樹脂、チバスペシャリティーケミカルズ社製 アラルダイトPT810等の複素環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。軟化点は、耐熱性の観点から高いほうが好ましい。
なお、エポキシ樹脂の軟化点は、環球式軟化点測定法で得られた値とする。
本発明におけるフェノール樹脂は、吸水率が2質量%以下であることが好ましい。吸水率が2質量%を超えると、半導体装置作製時に剥がれが発生する傾向がある。より好ましい吸水率は1質量%以下が好ましい。
吸水率は、85℃/85%RHでの質量変化を測定することで得られる。
本発明におけるフェノール樹脂は、350℃における加熱質量減少率が5質量%未満であることが好ましい。加熱質量減少率が5質量%を超えると半導体装置作製時に剥がれ画発生しやすい傾向がある。
加熱質量減少率は、示唆熱分析方法を用いて測定できる。
本発明に使用する(a)混合物を構成するフェノール樹脂は、硬化して接着作用を呈するフェノール硬化樹脂となるものであれば特に制限は無く、フェノールノボラック型フェノール樹脂等の一般的なフェノール樹脂を用いるができる。また、吸水率が2質量%以下で且つ加熱質量減少率5質量%未満を満たす点でキシリレン基含有フェノール樹脂が好ましく、これは例えば、フェノール化合物と2価の連結基であるキシリレン化合物を、無触媒又は酸触媒の存在下に反応させて得ることができる。
本発明におけるキシリレン基含有フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール化合物としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−n−プロピルフェノール、m−n−プロピルフェノール、p−n−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−キシレノール、2,4,6−トリメチルフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−アリルフェノール、p−アリルフェノール、o−ベンジルフェノール、p−ベンジルフェノール、o−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール等が例示される。これらのフェノール化合物は、単独用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。特に好ましくは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等が挙げられる。
フェノール樹脂の製造に用いられる2価の連結基であるキシリレン化合物としては、次に示すキシリレンジハライド、キシリレンジグリコール及びそれらの誘導体が用いることができる。すなわち、α,α′−ジクロロ−p−キシレン、α,α′−ジクロロ−m−キシレン、α,α′−ジクロロ−o−キシレン、α,α′−ジブロモ−p−キシレン、α,α′−ジブロモ−m−キシレン、α,α′−ジブロモ−o−キシレン、α,α′−ジヨード−p−キシレン、α,α′−ジヨード−m−キシレン、α,α′−ジヨード−o−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−p−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−m−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−o−キシレン、α,α′−ジメトキシ−p−キシレン、α,α′−ジメトキシ−m−キシレン、α,α′−ジメトキシ−o−キシレン、α,α′−ジエトキシ−p−キシレン、α,α′−ジエトキシ−m−キシレン、α,α′−ジエトキシ−o−キシレン、α,α′−ジ−n−プロポキシ−p−キシレン、α,α′−n−プロポキシ−m−キシレン、α,α′−ジ−n−プロポキシ−o−キシレン、α,α′−ジ−イソプロポキシ−p−キシレン、α,α′−ジイソプロポキシ−m−キシレン、α,α′−ジイソプロポキシ−o−キシレン、α,α′−ジ−n−ブトキシ−p−キシレン、α,α′−ジ−n−ブトキシ−m−キシレン、α,α′−ジ−n−ブトキシ−o−キシレン、α,α′−ジイソブトキシ−p−キシレン、α,α′−ジイソブトキシ−m−キシレン、α,α′−ジイソブトキシ−o−キシレン、α,α′−ジ−tert−ブトキシ−p−キシレン、α,α′−ジ−tert−ブトキシ−m−キシレン、α,α′−ジ−tert−ブトキシ−o−キシレン等を挙げることが出来る。これらの内の一種類を単独で、あるいは二種以上を混合して用いられる。中でも好ましいのはα,α′−ジクロロ−p−キシレン、α,α′−ジクロロ−m−キシレン、α,α′−ジクロロ−o−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−p−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−m−キシレン、α,α′−ジヒドロキシ−o−キシレン、α,α′−ジメトキシ−p−キシレン、α,α′−ジメトキシ−m−キシレン、α,α′−ジメトキシ−o−キシレン等である。
上記キシリレン基含有フェノール樹脂を合成する際に用いる酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸類;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機カルボン酸類;トリフロロメタンスルホン酸等の超強酸類;アルカンスルホン酸型イオン交換樹脂のような、強酸性イオン交換樹脂類;パーフルオロアルカンスルホン酸型イオン交換樹脂の様な、超強酸性イオン交換樹脂類(商品名:ナフィオン、Nafion、Du Pont社製);天然及び合成ゼオライト類;活性白土(酸性白土)類等が挙げられる。
これらの酸触媒を用い、50〜250℃において実質的に原料であるキシリレン化合物が消失し、且つ反応組成が一定になるまで反応させる。反応時間は原料や反応温度にもよるが、おおむね1時間〜15時間程度であり、実際には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)等により反応組成を追跡しながら決定すればよい。尚、例外的に、α,α′−ジクロロ−p−キシレンのようなハロゲノキシレン誘導体を用いる場合は、対応するハロゲン化水素ガスを生じながら無触媒にて反応が進行するため、酸触媒は必要としない。その他の場合は、酸触媒の存在下において反応が進行し、対応する水又はアルコールが生じる。尚、フェノール化合物とキシリレン化合物との反応モル比は通常フェノール化合物を過剰に用い、反応後、未反応フェノール化合物を回収する。この時フェノール化合物の量により平均分子量が決定し、フェノール化合物がより多く過剰にあるほど平均分子量の低いフェノール樹脂が得られる。
吸水率が2質量%以下、加熱質量減少率5質量%未満であるキシリレン基含有フェノール樹脂として代表的なものに、三井化学株式会社製 ミレックスXLC−LLシリーズ、XLシリーズ等がある。
本発明における(a)混合物中のエポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合量は、接着剤にした際の硬化性の観点から、それぞれエポキシ当量と水酸基当量の当量比で0.70/0.30〜0.30/0.70となるのが好ましく、0.65/0.35〜0.35/0.65となるのがより好ましく、0.60/0.40〜0.40/0.60となるのがさらに好ましく、0.55/0.45〜0.45/0.55となるのが特に好ましい。
[(b)高分子量成分]
本発明における(b)高分子量成分は、架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上であれば特に制限はない。
重量平均分子量10万以上のものとしては、アクリルゴム、アクリル共重合体等の重合体が挙げられる。
本発明における架橋性官能基としては、カルボン酸基、アミノ基、水酸基又はエポキシ基等が挙げられる。
本発明における(b)高分子量成分として、より好ましくは、0.5〜6質量%の架橋性官能基を有するモノマーを共重合体成分として含む、重量平均分子量が10万以上であるアクリル共重合体である。
上記架橋性官能基含有モノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
重量平均分子量が10万以上のアクリル共重合体としてはエポキシ基含有アクリル共重合体が挙げられる。
本発明における(b)高分子量成分としての上記アクリル共重合体は、アクリル共重合体を得る重合反応において、架橋性官能基含有モノマーの架橋性官能基がすべて反応せずに残存するように重合して得るか、又はアクリル共重合体を得た後、架橋性官能基含有モノマーを添加し、架橋性官能基含有モノマーの架橋性官能基が反応せずに残存するようにして得ることもできる。
本発明におけるより好ましい(b)高分子量成分は、架橋性官能基含有モノマーがグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートであり、重量平均分子量が10万以上であるアクリル共重合体が、重量平均分子量が10万以上であるエポキシ基含有アクリル共重合体であるものである。
本発明における(b)高分子量成分、特にエポキシ基含有アクリル共重合体は、本発明における(a)混合物中のエポキシ樹脂と「相溶」しないものが好ましい。ここで(a)混合物中のエポキシ樹脂と「相溶」しないとは、硬化前のエポキシ樹脂と相溶しないことであり、それにより硬化後に海島構造を形成させることができ、応力緩和性を発現することができる。
本発明において、(b)高分子量成分の相溶性は、(a)混合物中のエポキシ樹脂と(b)高分子量成分を含むワニス(成分比=1:1)から調製したフィルム(50μm)の可視光(600nm)透過率から定義した。透過率が50%以上を「相溶」とし、50%未満を「非相溶(相溶しない)」とした。本発明におけるエポキシ基含有アクリル共重合体は、該透過率が30%未満であるものが更に好ましい。
グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート0.5〜6質量%を含む重量平均分子量が10万以上であるエポキシ基含有アクリル共重合体としては、例えば、帝国化学産業株式会社製 HTR―860P−3、HM6−1M50等を用いることができる。架橋性官能基含有モノマーとして用いるグリシジル(メタ)アクリレートの量は、アクリル共重合体に対して2〜6質量%の共重合体比とする。2質量%以下だと接着力が低下する可能性があり、6質量%以上だとゲル化する可能性がある。グリシジル(メタ)アクリレート以外のアクリル共重合体の成分はエチル(メタ)アクリレートやブチル(メタ)アクリレート又は両者の混合物を用いることができる。
架橋性官能基含有モノマーのアクリル共重合体(高分子量成分)に対する混合比率は、通常、アクリル共重合体(高分子量成分)のガラス転移温度(以下、「Tg」と略す)を考慮して決定される。アクリル共重合体(高分子量成分)のTgは−10℃以上であることが好ましい。アクリル共重合体(高分子量成分)のTgが−10℃未満であると、接着部材としたときのBステージ状態での接着部材のタック性が大きくなり取り扱い性が悪化する可能性がある。また、ダイシング工程においてバリが発生しやすい傾向がある。Tgは、シート状、フィルム状での強度や可とう性やタック性が低下する可能性があるため好ましくは100℃以下、特に好ましくは50℃以下、更には30℃以下が好ましい。本発明におけるアクリル共重合体(高分子量成分)を得るための重合方法は特に制限が無く、パール重合、溶液重合等を使用することができる。
エポキシ基含有アクリル共重合体の重量平均分子量は、10万以上であれば特に制限はないが30万〜300万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましい。重量平均分子量が30万未満だと、シート状、フィルム状での強度や可とう性の低下やタック性が増大する可能性があり、300万を超えると、フロー性が小さく配線の回路充填性が低下する可能性がある。
なお、本発明における重量平均分子量は、GPC法で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出したものである。
本発明における(b)高分子量成分の接着剤組成物中の配合量は、前記(a)混合物100質量部に対して10〜450質量部とされる。この配合量が10質量部未満だと、弾性率の低減及び成形時のフロー性抑制効果が少ない傾向があり、450質量部を超えると、高温での取り扱い性が低下する傾向がある。
[(c)無機フィラー]
本発明における(c)無機フィラーとしては、特に制限はないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等を使用することができ、これらは、1種又は2種以上を併用することもできる。熱伝導性向上のためには、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が含有されていることが好ましい。溶融粘度の調整やチキソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が含有されていることが好ましい。
(c)無機フィラーの配合量は、上記(a)混合物100質量部に対して、50〜250質量部である。この量で配合することにより、接着剤組成物をフィルムとした際に、フィルムそのものを硬くでき、それにより切断し易くなることから、バリの発生を抑制できると考えられる。
また、接着剤組成物100質量部に対して8〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。1質量部未満だとバリに対する添加効果が充分では無く、40質量部を超えると、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題を起こす可能性がある。
(c)無機フィラーの平均粒径は0.005μ〜5μmが好ましく、0.005μmより小さい場合や5μmより大きい場合にはいずれも接着性が低下する傾向がみられる。また、粒径の異なる無機フィラーを二種類以上使用しても良く、それによって無機フィラー充填量を調整することが可能となる。
平均粒径は、光散乱法により測定できる。
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、上記(a)混合物と、該(a)混合物100質量部に対し、上記(b)高分子量成分10〜450質量部と、(c)無機フィラー50〜250質量部と、を含む。
また、本発明の接着剤組成物には、上記(a)、(b)及び(c)成分に加えて、更に硬化促進剤を添加することもできる。硬化促進剤には、特に制限が無く、各種イミダゾール類を用いることができる。イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用することもできる。
硬化促進剤の添加量は、上記(a)混合物100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましい。添加量が0.1質量部未満だと硬化性が劣る傾向があり、5質量部を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
本発明の接着剤組成物のBステージ状態の貯蔵弾性率は、25℃で2000〜3000MPaであることを特徴とする。より好ましい貯蔵弾性率は、25℃で2000〜3000MPaである。
なお、貯蔵弾性率の測定は、動的粘弾性測定装置を使用し、接着剤硬化物に引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/minで−50℃から250℃まで測定する温度依存性測定モードで実施する。
Bステージ状態の貯蔵弾性率が25℃で3000MPaを超えると、剥離やクラックを発生する可能性がある。また、ダイシング時のバリに対しても悪影響を与える傾向がある。また、2000MPa未満では、ダイシング工程におけるバリが顕著になる傾向がある。Bステージ状態の貯蔵弾性率を調整するためには、上記(c)無機フィラーの充填量を変化させるとよい。具体的には、無機フィラーの充填量を多くすると、貯蔵弾性率を小さくすることができる。
また、本発明の接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、当技術で慣用の各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられるが、シラン系カップリング剤が最も好ましい。
シラン系カップリング剤としては、特に制限は無く、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロイルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノプロピル−トリメトキシシラン、3−4,5−ジヒドロイミダゾール−1−イル−プロピルトリメトキシシラン、アミルトリクロロシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル−メチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン類、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等の尿素結合含有シラン類、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシランイソシアネート等のイソシアネート基含有シラン類、3−クロロプロピル−メチルジメトキシシラン、3−クロロプロピル−ジメトキシシラン、3−シアノプロピル−トリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等を使用することができ、これらの1種又は2種以上を併用することもできる。
アルミニウム系カップリング剤としては、特に制限は無く、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトイス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウム−モノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−n−ブトキシド−モノ−エチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−イソ−プロポキシド−モノ−エチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム−sec−ブチレート、アルミニウムエチレート等のアルミニウムアルコレート等を使用することができ、これらの1種又は2種以上を併用することもできる。
カップリング剤の添加量は、その効果や耐熱性及びコストから、樹脂成分((a)混合物と(b)高分子量成分)の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部とするのが好ましい。
本発明の接着剤組成物には、吸湿時の絶縁信頼性をよくするために、イオン捕捉剤を添加することもできる。イオン捕捉剤としては、特に制限が無く、銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等を使用することができ、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤を使用することもできる。
イオン捕捉剤の添加量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の観点から、接着剤組成物全体の1〜10質量%とするのが好ましい。
<本発明の接着部材>
本発明の接着部材は、本発明の接着剤組成物を溶剤に溶解又は分散してワニスとし、支持体フィルム上に塗布した後、加熱処理等により溶剤を除去することによって接着剤層をフィルム状に形成して得ることができる。
前記支持体フィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポイエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムを使用することができ、これらプラスチックフィルムは表面を離型処理して使用しることもできる。支持体フィルムは、使用時に剥離して接着剤層のみを使用することもできるし、支持体フィルムとともに使用し、後で除去することもできる。
前記ワニス化の溶剤としては、特に制限は無いが、フィルム作製時の揮発性等を考慮し、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−エトキシエタノール、トルエン、キシレン、ブチルセルソルブ、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール等比較的低沸点の溶媒を使用するのが好ましい。また、塗膜性を向上させる等の目的で、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン等比較的高沸点の溶媒を加えることもできる。
本発明の接着剤組成物からのワニスの製造には、無機フィラーの分散性を考慮して、らいかい機、3本ロール、ボールミル及びビーズミル等を使用するのが好ましく、これらを組み合せて使用することもできる。また、無機フィラーと低分子量物をあらかじめ混合した後、高分子量物を配合することによって、混合する時間を短縮することも可能となる。また、ワニスとした後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
支持体フィルム上へのワニスの塗布方法としては、既知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。接着剤層の厚みは、制限されるものでは無いが、5〜250μmが好ましい。5μmより薄いと応力緩和効果が乏しくなる傾向があり、250μmより厚いと経済的でなくなる。また、本発明の接着部材における接着剤層は、所望の厚さを得るために、2枚以上を貼り合わせることもできる。
<本発明のダイシング/ダイボンド一体型のフィルム>
本発明のダイシング/ダイボンド一体型のフィルムは、本発明の接着部材(接着剤層)を有し、接着剤層の上(支持体フィルムの半対面)に粘着剤層を有していることが好ましい。粘着剤層は、放射線照射で硬化する放射線重合性化合物、又は加熱で硬化する熱硬化性化合物を含有してなることがより好ましい。上記粘着剤層はダイシング用フィルムとして用いられる。
ダイシング/ダイボンド一体型のフィルム全体の厚みは25〜200μmであることが好ましい。厚すぎると巻き取り時に原反が分厚くなりすぎてしまう点と、薄すぎるとダイシングソウがフィルムを突き抜けてしまう可能性がある点から、50〜150μmがより好ましく、70〜120μmが特に好ましい。
ダイシング/ダイボンド一体型のフィルムにおける粘着剤層としては、特に制限はないが、一般的には主にアクリル系樹脂が使われ、放射線重合性化合物としてはアクリル酸、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート等の共重合体や、アクリレート系オリゴマー等が挙げられ、熱硬化性化合物としてはグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート等の共重合体が挙げられる。
<本発明の接着部材を用いた半導体掲載用支持部材及び半導体装置>
本発明の半導体掲載用支持部材は、上記の接着部材を支持部材に備えることで得られる。本発明の接着部材を用いることで、切断時のバリの発生を防止できることから、バリに起因する不具合を回避した半導体掲載用支持部材が得られる。
半導体搭載用支持部材としては、ダイパットを有するリードフレーム、セラミック基板や有機基板等基板材質に限定されることなく用いることができる。セラミック基板としては、アルミナ基板、窒化アルミ基板等を用いることができる。有機基板としては、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含漬させたFR−4基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂を含漬させたBT基板、さらにはポリイミドフィルムを基材として用いたポリイミドフィルム基板等を用いることができる。
配線の形状としては、片面配線、両面配線、多層配線いずれの構造でも良く、必要に応じて電気的に接続された貫通孔、非貫通孔を設けても良い。さらに、配線が半導体装置の外部表面に現れる場合には、保護樹脂層を設けることが好ましい。本発明の接着部材を支持部材へ張り付ける方法としては、本発明の接着部材を所定の形状に切断し、その切断された接着部材を支持部材の所望の位置に熱圧着する方法が一般的ではあるが、これに限定するものではない。
また本発明は、接着部材を介して、半導体素子と支持部材が接着されている半導体装置も含まれる。本発明の接着部材を用いることで、半導体装置の製造工程における切断時のバリの発生を防止できることから、バリに起因する不具合を回避した半導体装置が得られる。
本発明の半導体装置の構造としては、半導体素子と支持部材が本発明の接着部材を介して接着されていれば特に制限はない。例えば、半導体素子の電極と支持部材とがワイヤボンディングで接続されている構造、半導体素子の電極と支持部材とがテープオートメーテッドボンディング(TAB)のインナーリードボンディングで接続されている構造等があるが、これらに限定されるものではなく、何れの場合でも効果がある。半導体素子としては、IC、LSI、VLSI等一般の半導体素子を使用することができる。
本発明の半導体搭載基板用配線基板に用いる配線基板としては、セラミック基板や有機基板等基板材質に限定されることなく用いることができる。セラミック基板としては、アルミナ基板、窒化アルミ基板等を用いることができる。有機基板としては、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含漬させたFR−4基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂を含漬させたBT基板、さらにはポリイミドフィルムを基材として用いたポリイミドフィルム基板等を用いることができる。
配線の形状としては、片面配線、両面配線、多層配線いずれの構造でも良く、必要に応じて電気的に接続された貫通孔、非貫通孔を設けても良い。更に、配線が半導体装置の外部表面に現れる場合には、保護樹脂層を設けることが好ましい。接着部材を配線基板へ張り付ける方法としては、接着部材を所定の形状に切断し、その切断された接着部材を配線基板の所望の位置に熱圧着する方法が一般的ではあるが、これを限定するものではない。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:YDCN−703、エポキシ当量210、軟化点:75−85℃)55質量部、フェノール樹脂としてキシリレン基含有フェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXLC−LL、水酸基当量175、吸水率1.8%、350℃における加熱質量減少率4%)45質量部、無機フィラーとして平均粒径0.016μmのシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジルR972)30質量部と平均粒径非開示のシリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:S0−C2、比重:2.2g/cm)60質量部、からなる組成物に、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、更にビーズミルを用いて90分混練した。
これにシランカップリング剤としてγ―ウレイドプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー株式会社製、商品名:NUC A−1160)0.7質量部、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート2〜6質量%を含むアクリルゴム(帝国化学産業株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量100万)を250質量部、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN、)0.5質量部加え、12時間攪拌し、その後、真空脱気してワニスを得た。このワニスを厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、加熱乾燥(150℃、5分)後膜厚が25μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルム1を作製した。接着フィルム1のBステージ状態の貯蔵弾性率を以下のように測定した。結果を表2に示す。
貯蔵弾性率の測定は、動的粘弾性測定装置((株)レオロジー社製 DVE−V4)を使用し、接着剤硬化物に引張り荷重をかけて、周波数100Hz、昇温速度5〜10℃/minで−50℃から300℃まで測定する温度依存性測定モードで実施した。
(実施例2)
実施例1のアクリルゴム(HTR−860P−3)の250質量部を400質量部に変更し、さらに無機フィラーとしてのシリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:S0−C2)を150質量部に添加量を変更した以外は実施例1と全く同様の操作を行い、接着フィルム2を作製した。Bステージ状態の貯蔵弾性率の測定結果を表2に示す。
(比較例1)
実施例1の無機フィラーとしてのシリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:S0−C2)を添加せず、それ以外は全く実施例1と同様の操作を行い、接着フィルム3を作製した。Bステージ状態の貯蔵弾性率の測定結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1の無機フィラーとしてのシリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:S0−C2)を60質量部から230質量部に添加量を変更し、それ以外は全く実施例1と同様の操作を行い、接着フィルム4を作製した。Bステージ状態の貯蔵弾性率の測定結果を表2に示す。
<ダイシング/ダイボンド一体型フィルムの作製>
上記で作製した接着フィルム1〜4をダイシングテープ(古河電気工業株式会社製、品名:DC、膜厚:110μm)と貼り合わせを行った後、所定の寸法にプリカットを行い、ダイシング/ダイボンド一体型フィルム1〜4を作製した。
<ダイシングテスト>
上記で作製したダイシング/ダイボンド一体型フィルム1〜4をミラーウェハ(ウェハ厚み:100μm)のミラー面にフィルムラミネートを行った(ラミネート温度80℃)。ラミネート後ダイシングを行い、ダイシング後のチップ端面を観察した。ダイシング条件を表1に示す。ダイシング後のチップ端面に発生している100μm以上の長さのバリをカウントした。バリの個数は10チップ観察を行い、その平均を値として採用した。ダイシング/ダイボンド一体型フィルム1及び2の端面の観察結果を図1に、ダイシング/ダイボンド一体型フィルム3及び4の端面の観察結果を図2に、バリ発生個数を表2に示した。
チップサイズ:10mm×10mm
図1、図2、上記表2から、フィルムの弾性率を調整することで、ダイシング工程において発生する100μm以上のバリ低減が図れることが分かる。
本発明の接着剤組成物は、無機フィラーの添加により高温弾性率を高く維持することで、半導体装置作製工程であるダイシング工程におけるバリの発生を低減することが出来た。このことにより、次工程であるワイヤボンディング工程におけるバリの金パッドへの付着を防ぐことが出来る。
実施例で得られたダイシング/ダイボンド一体型フィルムの端面の観察結果を示す写真である。 比較例で得られたダイシング/ダイボンド一体型フィルム1〜4の端面の観察結果を示す写真である。

Claims (12)

  1. 下記(a)と、該(a)100質量部に対し下記(b)10〜450質量部と、(c)50〜250質量部と、を含む接着剤組成物。
    (a)エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物、
    (b)架橋性官能基を含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分、
    (c)無機フィラー
  2. 前記接着剤組成物のBステージ状態の貯蔵弾性率が、25℃で2000〜3000MPaであることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
  3. 前記エポキシ樹脂の軟化点が50℃以上である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  4. 前記フェノール樹脂の吸水率が2質量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  5. 前記フェノール樹脂の350℃における加熱質量減少率が、5質量%未満である請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  6. 前記(b)高分子量成分が、エポキシ樹脂と非相溶である請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  7. 前記(b)高分子量成分が、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート0.5〜6質量%を含む、重量平均分子量が10万以上であるエポキシ基含有アクリル共重合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  8. 前記(c)無機フィラーの平均粒径が、0.005〜5μmである請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着剤組成物をフィルム状に形成して得られる接着部材。
  10. 請求項9に記載の接着部材を使用した、ダイシング/ダイボンド一体型のフィルム。
  11. 支持部材の半導体素子搭載面に請求項9に記載の接着部材を備えた半導体搭載用支持部材。
  12. 半導体素子と支持部材とを請求項9に記載の接着部材を介して接着することを特徴とする半導体装置。
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