JP2009120775A - フッ素樹脂多孔質体の表面改質方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 放射線架橋などの煩雑な後処理をすることなく、また、100nm未満の微細孔の多孔質フッ素樹脂膜の多孔性を損なうことなく、液体、特に水性液体とのなじみを改善し、しかも親水性への改質効果を、長期にわたって維持できる表面改質方法を提供する。
【解決手段】 一端がペルフルオロアルキル基で他端が親水性基である化合物の融液又は溶液中に、フッ素樹脂多孔質体を浸漬した状態で、80℃〜380℃未満に保持する工程;及び加熱後、前記フッ素樹脂多孔質体を洗浄する工程を含む。
【選択図】 なし
【解決手段】 一端がペルフルオロアルキル基で他端が親水性基である化合物の融液又は溶液中に、フッ素樹脂多孔質体を浸漬した状態で、80℃〜380℃未満に保持する工程;及び加熱後、前記フッ素樹脂多孔質体を洗浄する工程を含む。
【選択図】 なし
Description
本発明は、水、水溶液等の水性液体の濾過膜などに用いられる延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜等のフッ素樹脂多孔質体の疎水性表面を親水性に改質し、乾燥しにくくする表面改質方法、及び当該改質方法で表面改質されたフッ素樹脂多孔質体に関する。
延伸PTFE膜等のフッ素樹脂多孔質膜は、フッ素樹脂の性質に基づいて、化学的に安定で、耐薬品性及び耐汚染性に優れていることから、汚濁排水の浄化、廃酸・廃アルカリ液の処理膜、除菌膜、液体の濾過膜、分離膜として用いられている。
しかし、フッ素樹脂多孔質膜は、ポリテトラフルオロエチレンの性質に基づいて、撥水性を示すため、水性液体を流し続けると、液体中の溶存ガスが、フッ素樹脂膜表面に気泡となって付着するようになり、ひどい場合には、気泡が多孔質膜の空孔を塞いでしまう。このように気泡が付着した多孔質膜では、被処理液体の通過が阻害され、フィルターとして機能できなくなる。
表面に泡が付着したことにより液体の通過能力、濾過処理能力が低下したフッ素樹脂膜については、PTFEと水の双方に対して濡れ性がよいエタノールやイソプロパノール等のアルコールなどを通過させて、空孔から気泡を追い出すとともに、多孔質膜の空孔内をこれらの液体で充満させた後、次いで水に置換することにより処理能力を復帰させることができ、現在、このような復帰操作を行なうことで対応している。
しかし、このような復帰操作のためには、一旦、浄化、濾過等を行なっている被処理液体の流通を停止する必要があり、復帰後も、復帰のために使用したアルコール等を除去するためにフラッシングが必要になるなど、煩雑で手間がかかる。このようなことから、泡が生じるまでの液体通過可能時間(耐久時間)が長い、所謂、乾きにくいフッ素樹脂膜が要望されている。フッ素樹脂膜の耐久時間を長くするためには、フッ素樹脂膜表面を被処理液体に対して親和性を有するように、特に親水性を有するように改質する必要がある。
しかし、このような復帰操作のためには、一旦、浄化、濾過等を行なっている被処理液体の流通を停止する必要があり、復帰後も、復帰のために使用したアルコール等を除去するためにフラッシングが必要になるなど、煩雑で手間がかかる。このようなことから、泡が生じるまでの液体通過可能時間(耐久時間)が長い、所謂、乾きにくいフッ素樹脂膜が要望されている。フッ素樹脂膜の耐久時間を長くするためには、フッ素樹脂膜表面を被処理液体に対して親和性を有するように、特に親水性を有するように改質する必要がある。
フッ素系界面活性剤はPTFE膜と親和性があることが知られており、PTFE膜にフッ素系界面活性剤を塗布又は含浸することで親水性を向上できることが知られている。しかし、単にPTFE膜にフッ素系界面活性剤を塗布又は含浸させただけでは、フッ素系界面活性剤はPTFE膜とファンデルワールス力でしか結合していないため、フィルターとして使用した場合には、フッ素系界面活性剤が被処理液体中に溶出してしまい、親水性効果を持続できないといった問題があった。そもそも、浄化膜、濾過膜として使用するためには、親水化のために用いた化合物が被処理液体中へ溶出しないように、膜に付着させておく必要がある。
特開昭61−249503号公報(特許文献1)では、PTFE膜にフッ素系界面活性剤を含浸させた後、電離放射線等の高エネルギー線を照射して、架橋することにより、界面活性剤を不溶化するとともに、膜との結合を形成させることで、溶出を防止するとともに、親水性効果を持続させることが提案されている。
しかしながら、電離放射線照射によって、フッ素樹脂が分解されるなど、高エネルギー線照射によって、多孔質自体の機械的特性が損なわれたりするといった問題がある。このため、エネルギー照射をしないで親水性を向上できる方法が検討されている。
特表2000−512905号公報(特許文献2)には、Nafion(登録商標)に代表されるような、ペルフルオロカーボン共重合体液に多孔質フッ素樹脂膜を浸漬し、次いで、フッ素樹脂膜にローラ等による機械的力を与えることで、結合を生じなかった過剰の共重合体を除去した後、加熱により乾燥させるとともに、共重合体と膜との結合を強化する方法が提案されている。
特許文献2で使用されているペルフルオロカーボン共重合体としては、Nafion(登録商標)に代表されるようなPFSA共重合体が用いられている。このPFSA共重合体は、親水性成分としてのパーフルオロスルホン酸単位、疎水性成分としてのポリテトラフルトロエチレン単位とが1組となって繰返し単位を構成している高分子化合物である。特許文献2では、溶剤として、アルコール、ハロカーボンオイル、水−イソプロパノール混合物などを用いた、ペルフルオロカーボン共重合体の0.01〜0.10重量%の溶液が用いられている。ペルフルオロカーボン共重合体は、水をはじめとする水性媒体に対する溶解度が低いので、高エネルギー線照射のような架橋を行なわなくても、被処理液体に不溶の膜で覆うことが可能である。一方、溶剤に対するペルフルオロカーボン共重合体の溶解度が低いということは、一旦、膜に沈着すると、洗浄除去が困難になり、多孔質体の空孔を閉塞してしまうおそれがある。このため、乾燥(溶剤の揮発)及び膜に対する結合強化のための加熱前に機械的力を加えて、特に空孔部分に充填された溶液を除去している。
しかし、機械的力を与えて除去する操作では、樹脂部表面に付着したペルフルオロカーボン共重合体を優先的に残し、細孔を塞ぐペルフルオロカーボン共重合体を優先的に除去するといったことは困難である。膜の樹脂部に十分量のペルフルオロカーボンを付着させるためには、高濃度溶液を使用することが好ましいと考えるが、高濃度溶液になる程、粘度が高くなるため、機械的力、洗浄による除去が困難になるという問題がある。この問題は、多孔質膜の空孔が微細になる程、深刻になり、微細孔膜では、表面処理により多孔質膜の気孔率が損なわれてしまうといった問題を惹起することにもなる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、放射線架橋などの煩雑な後処理をすることなく、また、100nm未満の微細孔の多孔質フッ素樹脂膜の多孔性を損なうことなく、液体、特に水性液体とのなじみを改善し、しかも親水性への改質効果を、長期にわたって維持できる表面改質方法を提供することにある。
本発明のフッ素樹脂多孔質体の表面改質方法は、一端がペルフルオロアルキル基で他端が親水性基である化合物(以下「親水基連結フッ素化合物」という)液中に、フッ素樹脂多孔質体を浸漬した状態で、80℃〜380℃未満に保持する工程;及び加熱後、前記フッ素樹脂多孔質体を洗浄する工程を含む。
前記親水基連結フッ素化合物は、下記(1)式、
ペルフルオロアルキル基−A−親水基 (1)
(式中、Aは炭素数0〜10個の炭化水素基)
で表される化合物であることが好ましい。
ペルフルオロアルキル基−A−親水基 (1)
(式中、Aは炭素数0〜10個の炭化水素基)
で表される化合物であることが好ましい。
前記親水基連結フッ素化合物液は、前記親水基連結フッ素化合物の融液であってもよいし、溶剤に前記親水基連結フッ素化合物が溶解してなる溶液であってもよい。
前記フッ素樹脂多孔質体の平均流量径は0.2μm未満であることが好ましく、また厚み30μm以下の薄膜であることが好ましい。
本発明の表面改質フッ素樹脂多孔質体は、一端がペルフルオロアルキル基で他端が親水性基である化合物(以下「親水基連結フッ素化合物」という)が、室温の水性液体及び疎水性液体によって溶出しないように、フッ素樹脂多孔質体に保持されていて、前記親水基連結フッ素化合物は、前記親水性基が、前記多孔質体の樹脂部の露出面となるように保持されている。
本発明の水性液体処理用分離膜は、本発明の表面改質フッ素樹脂多孔質体からなる。
本発明の表面改質方法は、加温、浸漬、洗浄といった工程だけで、フッ素樹脂多孔質体表面を親水化することができる。
本発明の表面改質フッ素樹脂多孔質体は、多孔質体の樹脂部の露出面に、室温の水性液体及び疎水性液体によって溶出しないように親水性基が保持されているので、多孔質構造を保持した状態で安定的に親水性を示すことができる。
本発明の表面改質フッ素樹脂多孔質体は、多孔質体の樹脂部の露出面に、室温の水性液体及び疎水性液体によって溶出しないように親水性基が保持されているので、多孔質構造を保持した状態で安定的に親水性を示すことができる。
一端がペルフルオロアルキル基で他端が親水性基である化合物(以下「親水基連結フッ素化合物」という)液中に、フッ素樹脂多孔質体を浸漬した状態で、80℃〜380℃未満に保持する工程;及び加熱後、前記フッ素樹脂多孔質体を洗浄する工程を含む。
本発明の表面改質方法の対象とするフッ素樹脂多孔質体とは、フッ素樹脂からなる繊維(フィブリル)とフィブリルをつなぐ結節部(非晶質部)とからなる構成を有し、フィブリル間間隙が空孔となる多孔質体である。通常、フッ素樹脂のファインパウダーを分散させてなるディスパージョンを押出成形し、得られた成形体を延伸、焼結することにより製造される。
多孔質体を構成するフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキル・ビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロ・トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、及びポリビニルフルオライドなどが挙げられ、これらのうち、特にポリテトラフルオロエチレンが好ましく用いられる。
フィブリル間間隙に該当する空孔は連通孔であり、多孔質体とは当該連通孔を多数有する成形体で、その形態は特に限定せず、多孔質チューブ、多孔質シート、多孔質薄膜などのいずれであってもよい。
本発明の改質方法は、平均流量径200nm未満の膜にも好適に適用でき、好ましくは厚み30μm以下の薄膜に適用される。より優位な点としては、平均流量径80nm以下、さらには50nm以下の多孔質膜であっても適用できる点である。このような微細孔径のフッ素樹脂膜では、水性媒体を通過させたときに生じる泡によって、目詰まりが生じやすく親水性への改質要求が高いにもかかわらず、親水性化合物の塗布や使用する処理剤によっては、多孔質体の微細孔を塞いでしまうといった新たな解決すべき問題があったからである。
ここで、平均流量径とは、ASTM F316−86、ASTM E1294−89に基づいて測定され、流体を使用して測定される細孔分布を考慮した平均空孔径に該当する。具体的には、多孔質体に加えられる差圧と膜を通過する空気流量との関係を、膜が乾燥している場合と膜が液体で濡れている場合について測定し、得られたグラフをそれぞれ、乾き曲線及び濡れ曲線とし、乾き曲線の流量を1/2とした曲線と、濡れ曲線との交点における差圧をP(Pa)とする。平均流量径は下式により求められる。
平均流量径d(μm)=cγ/P
ここで、cは定数で2860であり、γは液体の表面張力(dynes/cm)である。
平均流量径d(μm)=cγ/P
ここで、cは定数で2860であり、γは液体の表面張力(dynes/cm)である。
なお、平均流量径100nm以下のフッ素樹脂多孔質体は、例えば、特開2007−77323号公報に開示するような方法によって製造することができる。すなわち、PTFEを一度溶融させて粒子間隙を消滅させた後、徐冷して得られる成形体を、荷重−伸び曲線上に最初に現われる一般的な降伏点を超え、破断に到る前に現われる次の変曲点まで延伸することによって得られる。
また、フッ素樹脂粉末を分散媒中に分散したディスパージョンを平滑な箔上に塗布した後、加熱により焼結してフッ素樹脂薄膜を形成し、その上に延伸PTFE多孔質体を被せた状態で加熱し、徐冷することにより、延伸PTFE多孔質体上にフッ素樹脂膜が接着した複合体を形成し、箔を除去した後、延伸することによって製造したものであってもよい。
また、フッ素樹脂粉末を分散媒中に分散したディスパージョンを平滑な箔上に塗布した後、加熱により焼結してフッ素樹脂薄膜を形成し、その上に延伸PTFE多孔質体を被せた状態で加熱し、徐冷することにより、延伸PTFE多孔質体上にフッ素樹脂膜が接着した複合体を形成し、箔を除去した後、延伸することによって製造したものであってもよい。
表面改質に用いられる親水基連結フッ素化合物は、一端がペルフルオロアルキル基で他端が親水性基の化合物で、下記(1)式で表される。
ペルフルオロアルキル基−A−親水基 (1)
ペルフルオロアルキル基−A−親水基 (1)
(1)式中のペルフルオロアルキル基としては、炭素数6〜20個のペルフルオロアルキル基が好ましく用いられる。ペルフルオロアルキル基は、フッ素樹脂多孔質体に対して親和性を有する原子団であり、熱処理によりフッ素樹脂多孔質体と一体化するために必要な原子団である。従って、短すぎると、フッ素樹脂多孔質体に対する親和力が不十分となる。一方、長くなりすぎると、親水基連結フッ素化合物が高分子化し、融点が高くなって加熱処理温度で融液を得ることが困難になる、あるいは溶剤に対する溶解性が低下しすぎて、親水基連結フッ素化合物の高濃度溶液を調製することが困難になり、さらには洗浄工程で、多孔質体に一体化保持されていない親水基連結フッ素化合物の洗浄、除去が困難となる。
式中、Aは、炭素数0〜10個の炭化水素基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖状のアルキレン基;イソプロピレン基等の分岐アルキレン基;フェニレン基、スチレン基等の芳香族などが挙げられる。炭素数0の場合とは、実質的に連結基であるAを介在することなく、ペルフルオロアルキル基と親水基が直接連結された場合である。ペルフルオロアルキル基と親水基との介在基であるAは、長鎖になったり、嵩張る基でないことが好ましい。長鎖や嵩張る基では、ペルフルオロアルキル基がフッ素樹脂多孔質体への接触を妨害するおそれがあり、また高分子化をもたらすと、融点が高くなったり、溶剤に対する溶解性低下の原因となるからである。従って、介在基Aは炭素0又は低分子アルキレン基であることが好ましく、より好ましくは、ペルフルオロアルキル基と親水基が直接連結される場合である。
親水性基は、親水性を有する基で、ポリオキシエチレン基、ポリヒドロキシアルキル基等のノニオン基;カルボン酸金属塩、スルホン酸金属塩、リン酸塩等のアニオン基;アミン、アルキルアンモニウム塩等のカチオン基;ベタイン、アミンオキシド基等の両性イオン基などが挙げられる。
本発明で用いられるフッ素化合物としては、上記のような構造を有する化合物で、加熱温度(80℃〜380℃未満)で液体として存在できるもの、あるいは適当な溶剤に高濃度で溶解できるものであればよいが、具体的には、フッ素系界面活性剤として市販されているものを使用できる。使用できるフッ素系界面活性剤としては、親水基の種類により、アニオン型、カチオン型、ノニオン型、両性イオン型があり、これらのいずれを用いることもできる。
以上のような親水基連結フッ素化合物は、単独で用いても良いし、適当な溶剤に溶解して高濃度溶液として用いてもよい。
単独で用いる場合、加熱温度(80℃〜380℃未満)で液体となることができる親水基連結フッ素化合物でなければならない。換言すると、融点が上記加熱温度以下の親水基連結フッ素化合物であれば、単独で使用することができる。
溶液として使用する場合、親水基連結フッ素化合物の融点は特に限定しないが、分解温度が加熱温度よりも高くなければならない。また、溶剤としては、親水基連結フッ素化合物を高濃度で溶解できる溶剤で且つ加熱温度でも溶剤としての役割を果たすことができるように沸点が加熱温度以上のものを使用する。なお、親水基連結フッ素化合物を親水基連結フッ素化合物溶液として使用する場合には、親水基連結フッ素化合物濃度が50%以上の高濃度溶液として使用することが好ましい。希薄溶液では、親水基連結フッ素化合物が多孔質体と接触する機会が少なくなり、十分量の親水基連結フッ素化合物を多孔質膜上に保持させることが困難になるからである。
単独で用いる場合、加熱温度(80℃〜380℃未満)で液体となることができる親水基連結フッ素化合物でなければならない。換言すると、融点が上記加熱温度以下の親水基連結フッ素化合物であれば、単独で使用することができる。
溶液として使用する場合、親水基連結フッ素化合物の融点は特に限定しないが、分解温度が加熱温度よりも高くなければならない。また、溶剤としては、親水基連結フッ素化合物を高濃度で溶解できる溶剤で且つ加熱温度でも溶剤としての役割を果たすことができるように沸点が加熱温度以上のものを使用する。なお、親水基連結フッ素化合物を親水基連結フッ素化合物溶液として使用する場合には、親水基連結フッ素化合物濃度が50%以上の高濃度溶液として使用することが好ましい。希薄溶液では、親水基連結フッ素化合物が多孔質体と接触する機会が少なくなり、十分量の親水基連結フッ素化合物を多孔質膜上に保持させることが困難になるからである。
上記のような親水基連結フッ素化合物液(親水基連結フッ素化合物の融液又は親水基連結フッ素化合物溶液)中にフッ素樹脂多孔質体を浸漬した状態で、80℃〜380℃未満に保持する。
ペルフルオロアルキル基部分はフッ素樹脂と親和性を有しているので、フッ素樹脂多孔質体の表面にペルフルオロアルキル基部分が付着するようにして、フッ素樹脂膜を取り囲むことができる。かかる状態で80℃以上に保持すると、その後、親水基連結フッ素化合物を溶解できる溶剤で洗浄しても溶出、流出されない程にまで、多孔質体に強固に付着保持されることができる。その機構、状態は明らかではないが、80℃以上の加熱状態ではフッ素樹脂多孔質体を構成しているフッ素樹脂の非晶質部分がゆるむため、この非晶質部分に親水基連結フッ素化合物のペルフルオロアルキル基部分が入み、その後、冷却により非晶質部分が再びかたまると、親水基連結フッ素化合物は、アンカーのように係合した状態で多孔質体に一体化したようになっているのではないかと考えられる。
加熱温度は、80℃以上であり、好ましくは100℃以上である。親水基連結フッ素化合物液による膨潤が生じるためには、フッ素樹脂多孔質体の非晶質部分のゆるみが生じ始める80℃以上でなければならないからである。一方、380℃以上では、多孔質体を構成するフッ素樹脂が分解し始めるからである。
加熱方法は、特に限定しないが、表面処理液に浸漬した状態で、当該温度の恒温槽、当該温度に設定した恒温槽内に保持する方法、表面処理液を当該温度に加熱保持する方法などが挙げられる。
加熱時間は、特に限定しないが、1〜20時間程度であることが好ましい。加熱時間が短すぎると、親水基連結フッ素化合物のペルフルオロアルキル基がフッ素樹脂多孔質体の非晶質内に入り込み、一体化するほどまでに拡散していくことができないからである。一方、20時間間を超えても、親水基連結フッ素化合物の付着、一体化効果は飽和して、得られる表面改質効果は変わらないからである。
加熱時間は、特に限定しないが、1〜20時間程度であることが好ましい。加熱時間が短すぎると、親水基連結フッ素化合物のペルフルオロアルキル基がフッ素樹脂多孔質体の非晶質内に入り込み、一体化するほどまでに拡散していくことができないからである。一方、20時間間を超えても、親水基連結フッ素化合物の付着、一体化効果は飽和して、得られる表面改質効果は変わらないからである。
次に、親水基連結フッ素化合物液からフッ素樹脂多孔質体を取り出し、洗浄する。
洗浄は、少なくとも親水基連結フッ素化合物を溶解できる溶剤を用いて行なう。親水基連結フッ素化合物の種類にもよるが、フッ化ポリエーテルなどのフッ素系溶剤、水、アルコールなどを用いることができる。
洗浄には、親水基連結フッ素化合物を溶解できる溶剤の他、親水基連結フッ素化合物の溶解性に拘わらず、水、親水性液体、親油性液体を用いて行なうことが好ましい。親水性液体としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコールなどが挙げられる。親油性液体としては、テトラヒドロフラン(THF)、ナフサなどが挙げられる。
洗浄は、少なくとも親水基連結フッ素化合物を溶解できる溶剤を用いて行なう。親水基連結フッ素化合物の種類にもよるが、フッ化ポリエーテルなどのフッ素系溶剤、水、アルコールなどを用いることができる。
洗浄には、親水基連結フッ素化合物を溶解できる溶剤の他、親水基連結フッ素化合物の溶解性に拘わらず、水、親水性液体、親油性液体を用いて行なうことが好ましい。親水性液体としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコールなどが挙げられる。親油性液体としては、テトラヒドロフラン(THF)、ナフサなどが挙げられる。
洗浄作業は、これらの洗浄用液体をフッ素樹脂多孔質体表面に流し続けることによって行なっても良いし、これらの洗浄用液体中にフッ素樹脂多孔質体を浸漬して、攪拌、洗浄液の置換などを適宜行なうことによって行なっても良い。また、必要に応じて、洗浄液を多孔質体に加圧下で通すようにしてもよい。
このような洗浄工程では、加熱工程によって、一体化できなかった親水基連結フッ素化合物が、洗浄液に溶出することにより、あるいは洗浄液の流動に伴って、除去される。例えば、多孔質体の空孔内に含浸されていただけで、多孔質体と一体化しなかった親水基連結フッ素化合物は、この洗浄工程で除去される。また、親水基連結フッ素化合物の分子サイズは、多孔質体の空孔サイズよりも小さいので、洗浄工程で空孔内に充填されていた親水基連結フッ素化合物液は除去される。従って、表面改質後も多孔質体の気孔率は、表面改質前の気孔率をほぼ保持することができる。
本発明の表面改質されたフッ素樹脂多孔質体は、以上のような表面改質方法で表面を親水性に改質したフッ素樹脂多孔質体である。すなわち、親水基連結フッ素化合物が、液体では溶出、流出しないような状態で、フッ素樹脂多孔質体に保持されている。
親水基連結フッ素化合物のペルフルオロアルキル基部分が多孔質体のフッ素樹脂側に付着し、親水基連結フッ素化合物の親水基部分が多孔質体表面を覆うように存在していると考えられるため、多孔質体は親水性を示すことができる。つまり、表面改質処理された多孔質体を水性液体内に浸漬した場合、あるいは水性液体を通過させた場合、表面に露出した親水基に基づいて、多孔質体を構成するフッ素樹脂本来の性質である撥水性が抑制され、乾燥されにくい多孔質体となっている。
しかも、親水基連結フッ素化合物は、フッ素樹脂多孔質体のフッ素樹脂部分(非晶質部)に付着しているので、多孔質構造を損なうことなく、空孔率、空孔径は、表面改質処理前の状態がほぼ保持されている。
しかも、親水基連結フッ素化合物は、フッ素樹脂多孔質体のフッ素樹脂部分(非晶質部)に付着しているので、多孔質構造を損なうことなく、空孔率、空孔径は、表面改質処理前の状態がほぼ保持されている。
さらに、本発明の方法により表面改質された多孔質体は、親水性を有する表面状態が、高温下でも損なわれることがなく、耐久性を有している。親水基連結フッ素化合物のペルフルオロアルキル基部分は、フッ素樹脂の非晶質部分に入り込み、さらには一体化する程までに拡散したような状態となることにより、再び、フッ素樹脂の非晶質部分がゆるむような温度に曝されても、親水基連結フッ素化合物のみが放出されるようになったり、親水基とペルフルオロアルキル基との結合が切断されて親水基部分だけが流出してしまうといったことがないためと考えられる。
本発明の表面改質されたフッ素樹脂多孔質体は、上記のように、改質に使用した親水基連結フッ素化合物が安定的に多孔質体表面に保持されていて、親水性を示すことができるので、水性液体の分離、濾過等に使用する分離膜として好適に利用できる。
〔測定、評価方法〕
(1)イソプロパノール(IPA)バブリングポイントの測定
バブリングポイントとは、フィルターを液体で十分ぬらした後、フィルターの一次側に空気又は窒素ガスでゆっくり加圧していくと、フィルターとの液体の表面張力が破れ、二次側にガスが連続的に発泡するときの圧力をいい、設定試験条件下で、濡れたフィルターの孔から流体がガスで置換されるときの差圧に該当する。
IPAバブルポイントは、試験体をイソプロパノール(IPA)に含浸し、孔内をIPAで充満した後、一方の面より徐々に空気圧を負荷したときに、気泡が初めて反対面より出てくるときの圧力(kPa)を測定する。
(1)イソプロパノール(IPA)バブリングポイントの測定
バブリングポイントとは、フィルターを液体で十分ぬらした後、フィルターの一次側に空気又は窒素ガスでゆっくり加圧していくと、フィルターとの液体の表面張力が破れ、二次側にガスが連続的に発泡するときの圧力をいい、設定試験条件下で、濡れたフィルターの孔から流体がガスで置換されるときの差圧に該当する。
IPAバブルポイントは、試験体をイソプロパノール(IPA)に含浸し、孔内をIPAで充満した後、一方の面より徐々に空気圧を負荷したときに、気泡が初めて反対面より出てくるときの圧力(kPa)を測定する。
(2)平均流量径(μm)の測定
Porous Materials,Inc.製の細孔分布測定器(パームポロメータCFP−1500A)により、液体としてGALWICK(プロピレン,1,1,2,3,3,3,酸化ヘキサフッ素:Porous Materials,Inc.供給)を用いて、測定した。
Porous Materials,Inc.製の細孔分布測定器(パームポロメータCFP−1500A)により、液体としてGALWICK(プロピレン,1,1,2,3,3,3,酸化ヘキサフッ素:Porous Materials,Inc.供給)を用いて、測定した。
具体的には、次にようにして求められる。まず、膜に加えられる差圧と膜を通過する空気流量との関係を、膜が乾燥している場合と膜が液体で濡れている場合について測定し、得られたグラフをそれぞれ、乾き曲線及び濡れ曲線とし、乾き曲線の流量を1/2とした曲線と、濡れ曲線との交点における差圧をP(Pa)とする。平均流量径は下式により求められる。
平均流量径d(μm)=cγ/P
ここで、cは定数で2860であり、γは液体の表面張力(dynes/cm)である。
平均流量径d(μm)=cγ/P
ここで、cは定数で2860であり、γは液体の表面張力(dynes/cm)である。
(3)親水性評価
フッ素樹脂膜をディスクホルダー(有効ろ過面積9.8cm2)に取付け、差圧0.95hPaで吸引して、イソプロパノール100mlを通過させた後、蒸留水500mlを濾過し、水に濡れた状態で、Porous Materials社製のバブリングポイント測定装置(パームポロメータCFP−1500A)に取付け、水におけるバブリングポイント(kPa)を測定した。
このバブリングポイントの値が大きいほど、多孔質膜に対する水の表面張力が大きいことを意味し、親水性に優れていること、乾きにくいことを意味する。
フッ素樹脂膜をディスクホルダー(有効ろ過面積9.8cm2)に取付け、差圧0.95hPaで吸引して、イソプロパノール100mlを通過させた後、蒸留水500mlを濾過し、水に濡れた状態で、Porous Materials社製のバブリングポイント測定装置(パームポロメータCFP−1500A)に取付け、水におけるバブリングポイント(kPa)を測定した。
このバブリングポイントの値が大きいほど、多孔質膜に対する水の表面張力が大きいことを意味し、親水性に優れていること、乾きにくいことを意味する。
(4)膜の耐久性
フッ素樹脂多孔質膜を6cm×6cmに切り取り、イソプロパノールにぬらした後、ビーカーに入れた蒸留水500mlに浸漬した。この状態で、オートクレーブに入れ、2気圧、120℃で7時間加熱した。その後、1気圧、90℃に下がったところで、フッ素樹脂膜を取り出し、外気に60秒間曝したときの乾燥状態を目視で観察した。
フッ素樹脂多孔質膜を6cm×6cmに切り取り、イソプロパノールにぬらした後、ビーカーに入れた蒸留水500mlに浸漬した。この状態で、オートクレーブに入れ、2気圧、120℃で7時間加熱した。その後、1気圧、90℃に下がったところで、フッ素樹脂膜を取り出し、外気に60秒間曝したときの乾燥状態を目視で観察した。
〔フッ素樹脂多孔質膜1〕
公称孔径0.1μm、平均流量径0.14μm、厚み30μmの延伸PTFE製多孔質膜(住友電工ファインポリマー株式会社製のポアフロンHP−010−30(バブリングポイント180kPa))を用いた。この多孔質膜の表面改質前(改質処理なし)の状態で、親水性試験及び膜の耐久性試験を行なった結果は、表1に示す通りである。
公称孔径0.1μm、平均流量径0.14μm、厚み30μmの延伸PTFE製多孔質膜(住友電工ファインポリマー株式会社製のポアフロンHP−010−30(バブリングポイント180kPa))を用いた。この多孔質膜の表面改質前(改質処理なし)の状態で、親水性試験及び膜の耐久性試験を行なった結果は、表1に示す通りである。
〔実施例1〕
上記のようなフッ素樹脂多孔質膜1(住友電工ファインポリマー株式会社製のポアフロンHP−010−30、バブリングポイント180kPa)を、ダイキン工業製のフッ素系界面活性剤(商品名「ユニダインDS−401」、ペルフルオロアルキルに親水基エチレンオキシドが連結した化合物で、常温で液体)を用いて、下記のようにして表面改質処理を行なった。
上記のようなフッ素樹脂多孔質膜1(住友電工ファインポリマー株式会社製のポアフロンHP−010−30、バブリングポイント180kPa)を、ダイキン工業製のフッ素系界面活性剤(商品名「ユニダインDS−401」、ペルフルオロアルキルに親水基エチレンオキシドが連結した化合物で、常温で液体)を用いて、下記のようにして表面改質処理を行なった。
すなわち、ステンレス容器に上記フッ素系界面活性剤をいれ、この中に、フッ素樹脂多孔質膜1を220mm×170mmを収縮防止用のステンレス鋼製の枠に固定した状態で浸漬した。容器に蓋をして密封状態とし、150℃の熱風循環高温槽内で、15時間保持した。
ステンレス鋼製枠ごと多孔質膜1を取り出し、80℃の温水5リットルに浸して、温水を交換しながら、30分間揺動することで、付着していないフッ素界面活性剤を除去した。次いで、多孔質膜1を流水で、30分間洗浄した。
次に、枠から多孔質膜1をはずし、500mlのTHFを入れた蓋付き容器(容量500ml)に入れ、容器を14時間転がしながら、攪拌洗浄した。その後、500mlのナフサを入れた蓋付き容器(容量500ml)に入れ、更に4時間、容器を転がしながら攪拌洗浄した。
多孔質膜1をステンレス製枠に再度固定し、100℃の熱風循環恒温槽内に3時間保持し、乾燥した。乾燥状態において、多孔質膜1の重量を測定したところ、0.1%の重量増加が認められた。洗浄操作によって流出しないフッ素系界面活性剤が多孔質膜1に付着、保持されていると考えられる。
次に、枠から多孔質膜1をはずし、500mlのTHFを入れた蓋付き容器(容量500ml)に入れ、容器を14時間転がしながら、攪拌洗浄した。その後、500mlのナフサを入れた蓋付き容器(容量500ml)に入れ、更に4時間、容器を転がしながら攪拌洗浄した。
多孔質膜1をステンレス製枠に再度固定し、100℃の熱風循環恒温槽内に3時間保持し、乾燥した。乾燥状態において、多孔質膜1の重量を測定したところ、0.1%の重量増加が認められた。洗浄操作によって流出しないフッ素系界面活性剤が多孔質膜1に付着、保持されていると考えられる。
得られた表面改質処理後の多孔質膜1から、径47mmのサンプル片を打ち抜き、このサンプル片をディスクホルダー(有効濾過面積9.8cm2)に取付け、吸引濾過器を取付けて、差圧0.95MPaで、イソプロパノールを濾過した。このときのイソプロパノールの流量は71ml/分であった。次いで、80℃の蒸留水500mlを0.95MPaで濾過した。このとき、水流量は255ml/分であった。その後、上述の親水性試験を行なった。
また、別途、得られた表面改質処理後の多孔質膜1から6cm×6cmのサンプル片を切りとり、このサンプル片について、上述の耐久性試験を行なったところ、全く乾燥しなかった。2時間、外気中に放置しておくことで、乾燥状態となった。この自然乾燥したフッ素樹脂膜から径47mmのサンプル片を打ち抜き、再度、親水性試験を行なった。
結果を表1に示す。
結果を表1に示す。
表1からわかるように、実施例1の改質処理により、水バブリングポイントは260kPaと、改質前(113kPa)に比べて、2倍以上も高くなっていた。親水性が付与されたことがわかる。さらに、表面改質した多孔質膜1は、耐久性試験後も乾燥されにくい状態が保持されていた。耐久試験後のバブリングポイントは241kPaであり、高温に曝された後であっても、親水化性を維持していることが確認できた。本実施例における改質後の多孔質膜1の重量は、改質前の多孔質膜1の重量よりも0.1%増加していたことから、本実施例の改質処理により、多孔質膜1表面に親水基が露出するように且つ120℃で7時間程度の加熱でも安定な程度に、親水基連結フッ素化合物が付着したと推察される。
〔フッ素樹脂多孔質膜2〕
PTFEディスパージョンAD911、MFAラテックス、及びPFAディスパージョン920HPを、MFA/(PTFE+MFA+PFA)(体積比)が2%で且つPFA/(PTFE+MFA+PFA)(体積比)が2%であるディスパージョンを調製し、更に、このディスパージョンに分子量200万のポリエチレンオキシドを濃度3mg/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王製20T)を10mg/mlとなるように添加して、フッ素樹脂ディスパージョンを調製した。
PTFEディスパージョンAD911、MFAラテックス、及びPFAディスパージョン920HPを、MFA/(PTFE+MFA+PFA)(体積比)が2%で且つPFA/(PTFE+MFA+PFA)(体積比)が2%であるディスパージョンを調製し、更に、このディスパージョンに分子量200万のポリエチレンオキシドを濃度3mg/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王製20T)を10mg/mlとなるように添加して、フッ素樹脂ディスパージョンを調製した。
厚さ50μmのアルミ箔をガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、上記で調製したフッ素樹脂ディスパージョンを滴下した後、日本ベアリング(株)製のステンレス鋼製のスライドシャフト(ステンレスファインシャフトSNSF型、外径20mm)を転がすようにしてフッ素樹脂ディスパージョンをアルミ箔一面に均一になるようにのばした。かかる状態で、80℃で60分間、250℃で1時間、340℃で1時間と順次加熱した後、自然冷却し、アルミ箔上に固定されたフッ素樹脂薄膜を形成させた。フッ素樹脂薄膜が形成される前後のアルミ箔の単位面積当たりの重量差とフッ素樹脂の真比重(2.25g/cm3)より算出したフッ素樹脂薄膜の平均厚さは約3μmであった。
920HPを蒸留水で4倍の容積に薄めたPFAディスパージョンに更に分子量200万のポリエチレンオキシドを濃度3mg/ml、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン(花王製20T)を10mg/mlとなるように添加した4倍希釈のPFAディスパージョンを、上記アルミ箔固定化フッ素樹脂薄膜のアルミ箔面に塗布し、その上に、孔径0.45μm、厚さ80μmの延伸PTFE多孔質体(住友電工ファインポリマー株式会社製のポアフロンFP−0.45−80(商品名))(IPA−BP:150kPa、気孔率:70%、ガーレー:9.1秒)を積層した。この積層体を、80℃で60分間、250℃で1時間、320℃で1時間、317.5℃で8時間と順次加熱した後、自然冷却した。冷却後、塩酸によってアルミ箔を溶解除去することにより、熱可塑性PFAで延伸PTFE多孔質体とフッ素樹脂薄膜が接着された複合体を得た。この複合体のガーレー秒は5000秒以上で、フッ素樹脂薄膜側から室温でイソプロパノールを接触させてみたところ、浸透するような穴はないことが確認できた。
上記で得られた複合体を、引張り試験機を用いて、60℃、チャック間55mm、ストローク165mm(延伸率200%)で幅方向に延伸した後、更に同じ引張り試験機で幅方向と直交する方向に延伸して、フッ素樹脂多孔質膜2を得た。この多孔質膜2のガーレー秒は25秒と低く、高い透過性を有していた。また、IPAバブリングポイントは660kPaであった。多孔質2の0.055μm標準粒子の捕集率は100%であり、平均流量径は0.047μmであった。
多孔質膜2から径47mmのサンプル片を打ち抜き、このサンプル片をディスクホルダー(有効濾過面積9.8cm2)に取付け、吸引濾過器を取付けて、上述に従って親水性を測定した(イソプロパノールの濾過時の差圧は0.095MPa)。測定結果を表2に示す。なお、水は80℃の蒸留水を使用した。
〔実施例2〕
ステンレス製容器にダイキン工業製フッ素界面活性剤(商品名ユニダインDS−401、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物)を入れ、この中に、多孔質膜2を、70mm×70mmを収縮防止用のステンレス鋼製の枠に固定した状態で浸漬した。容器に蓋を取付け密封した。この容器を150℃の熱風循環恒温層で15時間加熱した後、ステンレス鋼製枠ごと、多孔質膜2を取り出し、80℃の温水5リットルに浸し、30分間揺動させながら、余分なフッ素系界面活性剤を除去した。このとき、温水は5回交換した。その後、流水で30分間洗浄した。
ステンレス製容器にダイキン工業製フッ素界面活性剤(商品名ユニダインDS−401、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物)を入れ、この中に、多孔質膜2を、70mm×70mmを収縮防止用のステンレス鋼製の枠に固定した状態で浸漬した。容器に蓋を取付け密封した。この容器を150℃の熱風循環恒温層で15時間加熱した後、ステンレス鋼製枠ごと、多孔質膜2を取り出し、80℃の温水5リットルに浸し、30分間揺動させながら、余分なフッ素系界面活性剤を除去した。このとき、温水は5回交換した。その後、流水で30分間洗浄した。
洗浄後、多孔質膜2をはずして、500mlのTHFをいれた蓋付き容器(容量500ml)に入れ、容器を14時間転がして攪拌洗浄した。次に500mlのナフサを入れた蓋付き容器(容量500ml)に入れ、容器を4時間転がして攪拌洗浄した。洗浄後、ステンレス鋼製の金枠に多孔質膜2を再度固定し、100℃の熱風循環恒温槽中で3時間保持することにより、乾燥した。
乾燥後、径47mmのサンプル片を打ち抜き、このサンプル片をディスクホルダー(有効濾過面積9.8cm2)に取付け、吸引濾過器を取付けて、上記親水性測定を行なった。測定結果を表2に示す。
乾燥後、径47mmのサンプル片を打ち抜き、このサンプル片をディスクホルダー(有効濾過面積9.8cm2)に取付け、吸引濾過器を取付けて、上記親水性測定を行なった。測定結果を表2に示す。
改質前と比べて、水流量が10倍以上となっていた。また、水におけるバブリングポイントも10倍近くとなっていた。従って、平均流量径50nm未満の微細孔の多孔質膜2であっても、本実施例の改質処理により、多孔質膜2の微細孔を損なうことなく、親水性を向上できることが確認できた。
本発明の表面改質方法は、フッ素化合物液に浸漬、加熱といった工程で済み、フッ素樹脂多孔質体の気孔率や機械的物性に影響を与えることなく、親水性を付与することができる。従って、水性液体を通過させる分離膜、フィルターなどに用いられるフッ素樹脂多孔質体の耐久性(流体通過可能時間)を延長できることになり、流体入れ変えといった面倒な操作を行なう頻度を減らせることができるので、液体の濾過等の処理効率が向上する。
Claims (8)
- 一端がペルフルオロアルキル基で他端が親水性基である化合物(以下「親水基連結フッ素化合物」という)液中に、フッ素樹脂多孔質体を浸漬した状態で、80℃〜380℃未満に保持する工程;及び
加熱後、前記フッ素樹脂多孔質体を洗浄する工程;
を含むフッ素樹脂多孔質体の表面改質方法。 - 前記親水基連結フッ素化合物は、下記(1)式、
ペルフルオロアルキル基−A−親水基 (1)
(式中、Aは炭素数0〜10個の炭化水素基)
で表される化合物である請求項1に記載の表面改質方法。 - 前記親水基連結フッ素化合物液は、前記親水基連結フッ素化合物の融液である請求項1又は2に記載の表面改質方法。
- 前記親水基連結フッ素化合物液は、溶剤に前記親水基連結フッ素化合物が溶解してなる溶液である請求項1又は2に記載の表面改質方法。
- 前記フッ素樹脂多孔質体の平均流量径は0.2μm未満である請求項1〜4のいずれかに記載の表面改質方法。
- 前記フッ素樹脂多孔質体は、厚み30μm以下の薄膜である請求項5に記載の表面改質方法。
- 一端がペルフルオロアルキル基で他端が親水性基である化合物(以下「親水基連結フッ素化合物」という)が、室温の水性液体及び疎水性液体によって溶出しないように、フッ素樹脂多孔質体に保持されていて、
前記親水基連結フッ素化合物は、前記親水性基が、前記多孔質体の樹脂部の露出面となるように保持されている、表面改質フッ素樹脂多孔質体。 - 請求項7に記載の表面改質フッ素樹脂多孔質体からなる水性液体処理用分離膜。
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CN103613780A (zh) * | 2013-11-14 | 2014-03-05 | 中国科学院化学研究所 | 疏水性聚合物微孔膜的表面改性方法 |
KR101921701B1 (ko) * | 2015-07-31 | 2018-11-26 | 폴 코포레이션 | 친수성 다공성 폴리테트라플루오로에틸렌 막(ii) |
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JPH06228359A (ja) * | 1993-01-29 | 1994-08-16 | Nitto Denko Corp | 親水性多孔質膜およびその製造法 |
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-
2007
- 2007-11-19 JP JP2007298753A patent/JP2009120775A/ja active Pending
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