JP2009119607A - 補強物の製造方法及び当該方法により製造される補強物 - Google Patents

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Abstract

【課題】母材に補強材を接着する補強方法において、従来の方法と比較して、補強材が母材からはく離しにくい方法を提供すること。
【解決手段】本発明の方法は、(i)母材に接着される長方形板状の第1付加材、(ii)第1付加材の平面面積よりも小さい平面面積を有する長方形板状の第2付加材及び(iii)第1付加材層と第2付加材層とを接着する接着剤層6を積層した略長方形板状の積層体を有し、かつ略長方形板状の補強材の2つの短辺縁部が階段状に形成された補強材を、接着剤層2を介して母材に接着する工程を含む。
【選択図】図4

Description

本発明は、補強物の製造方法及び当該方法により製造される補強物に関する。
コンクリート、鉄鋼、木材等の建設材で造られた構造物は、腐食、塩害、温度変化、湿気、水圧、荷重等の様々な原因により経過年数とともにその強度を失い、やがて、亀裂、歪み、崩壊、崩落、破裂等の欠陥を生じる。
現在、強度が低下した構造物を補強する主な方法として、溶接による方法、高力ボルトや添接板等の治具で建設材を拘束する方法、補強を必要とする建設材の部分にシート、プレート、ネット等の形状の補強材を接着する方法がとられている。
しかしながら、溶接による方法及び治具で建設材を拘束する方法は、特別な技術や大掛かりな足場を必要とするといった欠点を有する。また溶接は、コンクリート、石材、木材の補強方法としては不適当である。
補強材を接着する方法は、特別な技術や大掛かりな足場を必要としないため簡便且つ経済的な方法であるが、その一方で、接着剤層の付着端に高いせん断応力(はく離せん断応力)が生じると付加材層がはく離するという問題を抱えている。
具体的には、図1に示すように、接着層2を介して炭素繊維プレート等の付加材3を接着することによって母材1に生じる応力を低減させる方法の場合、図2に示すように、付加材3の付着端の接着剤2に,高いせん断応力が生じる。この高いせん断応力は、はく離せん断応力と呼ばれている。接着する付加材3の剛性が大きくなると、接着剤2を通して母材1から付加材3に伝達されるはく離せん断応力が大きくなるため、付加材3が母材1からはく離しやすくなる。従って、剛性の大きい付加材3を用いる場合には、はく離せん断応力を低下させる必要がある。
現在、単層構造の補強材が主流であるが、はく離せん断応力を低下させるための方法として、複数の材料からなる積層構造の補強材を用いる方法も報告されている(特許文献1)。
例えば、特許文献1には、炭素繊維プレート等の付加材層とガラス繊維シート等の挿入材層とを接着剤層を介して積層した補強材が記載されている(図3参照)。
しかし、はく離せん断応力をさらに低減するための方法の開発が切望されていた。
国際公開公報WO2006/88184
本発明は、母材に補強材を接着する補強方法において、従来の方法と比較して、補強材が母材からはく離しにくい方法を提供することを課題とする。
上記状況の下、本発明者らは、従来の方法と比較して、補強材が母材からよりはく離しにくい補強方法を求めて鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、略長方形板状の積層体を有し、短辺縁部が階段状である補強材を接着すること(以下、端部ステップ接着工法と示すこともある)によって、従来の方法と比較して、補強材が母材からはく離しにくくなることを見出した。本発明者らは、さらに、母材、積層体に含まれる付加材層、及び接着剤層の寸法、ヤング率等が一定の条件を満たす場合にはく離せん断応力が大幅に低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の事項に関する。
項1.(i)母材に接着される長方形板状の第1付加材、
(ii)第1付加材の平面面積よりも小さい平面面積を有する長方形板状の第2付加材及び
(iii)第1付加材層と第2付加材層とを接着する接着剤層6
を積層した略長方形板状の積層体を有し、かつ略長方形板状の補強材の2つの短辺縁部が階段状に形成された補強材を、
接着剤層2を介して母材に接着する工程を含む、母材の補強方法であって、
下記式(1)〜(3):
Figure 2009119607
[式中、cは、下記式(4)にて表される:
Figure 2009119607
ξは、下記式(5)にて表される:
Figure 2009119607
Dは、下記式(6)にて表される:
Figure 2009119607
及びtは、それぞれ、母材のヤング率及び厚さを示す。
c1及びtc1は、それぞれ、第1付加材のヤング率及び片面厚さを示す。
c2及びtc2は、それぞれ、第2付加材のヤング率及び片面厚さを示す。
e1及びhは、それぞれ、接着剤2のせん断弾性係数及び片面厚さを示す。
e2及びhは、それぞれ、接着剤6のせん断弾性係数及び片面厚さを示す。
及びlは、それぞれ、第1付加材及び第2付加材の付着半長さを示す。]
の全てを満足する、母材の補強方法。
項2.前記第1付加材及び第2付加材が同一または異なって金属、樹脂又は繊維のプレート又はシートである、項1に記載の方法。
項3.前記積層体が、第2付加材上に、さらに、少なくとも1枚の長方形板状の付加材が接着剤層を介して積層された構造を有する、項1又は2に記載の方法。
項4.前記積層体が、接着剤層内に介在する挿入層をさらに備えることを特徴とする、項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
項5.項1〜4のいずれか一項に記載の方法により補強された母材を含む構造物。
本発明の方法を用いて母材を補強することにより、母材から各付加材に伝達されるはく離せん断応力が大幅に低減される。従って、本発明は、より剛性の高い補強材を、はく離させることなく母材に接着させることができる。
以下、図面を用いて、本発明をより詳細に説明する。
まず、1つの実施形態において、本発明方法により補強された母材の概略図を図4に示す。
本発明の母材の補強方法は、
(i)母材に接着される長方形板状の第1付加材(図4中、付加材31と示す)、
(ii)第1付加材の平面面積よりも小さい平面面積を有する長方形板状の第2付加材(図4中、付加材32と示す)及び
(iii)第1付加材層と第2付加材層とを接着する接着剤層6
を積層した略長方形板状の積層体を有し、かつ略長方形板状の補強材の2つの短辺縁部が階段状に形成された補強材を、接着剤層2を介して母材1に接着する工程を含む。
ここで、第1付加材層、第2付加材層等を構成する付加材としては、特に限定されないが、建設構造物の補強に通常使用される材料、例えば、繊維を原料とする織物、編物、又は不織布をマトリックス高分子で硬化させたもの、繊維をマトリックス高分子中に分散させたもの、金属、樹脂が使用され、特に、繊維を原料とする織物、編物、又は不織布をマトリックス高分子で硬化させたものが好適に使用され得る。
繊維としては、無機繊維、有機繊維、金属繊維等の繊維が好適に使用され得、例えば、炭素繊維(CF)、ガラス繊維(GF)、アラミド繊維(ArF)、ポリアリレート繊維、高強度ポリエチレン繊維、ポリアセタール繊維、アルミナ繊維(AF)、炭化ケイ素繊維(SiCF)、チラノ繊維、ボロン繊維、アモルファス金属繊維、ステンレス繊維、又は、これらの組み合わせからなる群より選択される繊維が挙げられる。特に、炭素繊維及びアラミド繊維は、高強度、高剛性である点において優れている。必要に応じて、繊維を互いに絡ませたり、束状に集束させたり、糸状に撚ったりしてもよい。
繊維は常法により製造される。例えば、炭素繊維は、次のような方法により製造することができる:アクリロニトリル、コモノマー及び溶剤を触媒の存在下で重合させて得られた紡糸原液を、紡糸、水洗、後処理し、プリカーサーを得る。得られたプリカーサーを、通常200〜350℃の空気中で耐炎化させ、次いで1000〜1500℃の不活性ガス中で炭素化し、さらに表面処理やサイジング処理を施すことにより、炭素繊維を得ることができる。ガラス繊維は、短繊維の場合と長繊維の場合とで多少異なる、以下のような方法により製造することができる:短繊維のガラス繊維は、溶融ガラスを、多数の小穴(通常0.5〜0.7mm直径)のあいた短繊維紡糸装置中に入れ、約1000rpm以上の回転速度で遠心し、綿あめのように吹き飛ばすことにより得ることができる。長繊維のガラス繊維は、主として、長繊維紡糸装置中で溶融ガラスを冷却しないで直接細孔のあいたブッシングに導き、繊維化する方法(Direct Melt法)により製造することができる。
この他にも各種繊維の製造方法について、本書においてその全体が援用される「繊維便覧 第2版、繊維学会編、平成6年3月25日発行」を参照することができる。
市販の繊維を用いることもできる。例えば、炭素繊維としてパイロメックス(帝人テクノプロダクツ株式会社)、ガラス繊維としてガラスクロス(ユニチカグラスファイバー株式会社)又はガラスクロス(カネボウ株式会社)、アラミド繊維としてトワロン,テクノーラ,コーネックス(帝人テクノプロダクツ株式会社)又はKEVLAR(東レ・デュポン株式会社)等を好適に用いることができる。
織物は、常法により成形され得、例えば、たて糸を並列し、これと互い違いに交錯するようによこ糸を挿入することにより成形され得る。編物は、常法により成形され得、例えば、編針で糸のループを作り、これを既成のループに通す操作を繰り返して、ループを連結することにより形成され得る。不織布は、常法により成形され得、例えば、積層した繊維を縮充、ニードルパンチ、水流パンチなどにより絡ませることにより、或いは、積層した繊維を融着することにより成形され得る。これら以外の方法により織物、編物、又は不織布を成形してもよい。織物、編物、又は不織布の製造方法については、本書においてその全体が援用される「繊維便覧 第2版、繊維学会編、平成6年3月25日発行」を参照することができる。
マトリックス高分子としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が使用され得る。特に、成形性及び耐熱性に優れるエポキシ樹脂等が好ましい。マトリックス高分子には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤等が添加される。
付加材は、繊維の織物、編物又は不織布にマトリックス高分子を塗布するか又は含浸させ、マトリックス高分子を硬化させることにより、或いは、繊維とともにマトリックス高分子を混ぜ込んで織物、編物又は不織布を成形し、マトリックス高分子を硬化させることにより、得ることができる。
付加材として繊維をマトリックス高分子中に分散させたものを用いる場合、例えば、前述の繊維を前述のマトリックス高分子中に常法により分散させたものを用いることができる。付加材として繊維をマトリックス高分子中に分散させたものの製造方法については、本書においてその全体が援用される「繊維便覧 第2版、繊維学会編、平成6年3月25日発行」を参照することができる。
付加材として金属又は樹脂を用いる場合、金属としては、例えば、アルミニウム合金、鋼、ステンレス鋼、樹脂としては、前述のマトリックス高分子を硬化させたものを好適に使用することができる。
付加材の形状は、特に限定されないが、例えば、フィルム(0.05mm未満の厚さを有する)、シート(0.05mm以上、1mm未満の厚さを有する)、プレート(1mm以上の厚さを有する)であり、好ましくはシート又はプレートである。
本発明の好ましい実施形態において、付加材は、炭素繊維プレート、炭素繊維シート、アラミド繊維プレート、アラミド繊維シートである。
市販されている繊維製品、例えば、炭素繊維プレートとして炭素繊維トウプレート(日鉄コンポジット株式会社)又はトレカラミネート(東レ株式会社)、炭素繊維シートとして炭素繊維トウシート(日鉄コンポジット株式会社)、トレカクロス(東レ株式会社)、リペラーク(三菱化学産資株式会社)又はTUクロス(新日本石油株式会社)、アラミド繊維プレートとしてアラミド繊維トウプレート(日鉄コンポジット株式会社製)、アラミド繊維シートとしてアラミド繊維トウシート(日鉄コンポジット株式会社製)又はフィブラシート(ファイベックス株式会社)等も付加材として好適に用いることができる。
本発明において、第一付加材と第二付加材とは、その素材等が同一でも異なっていてもよい。また、第一付加材及び第二付加材に加えてさらに少なくとも1枚の付加材を用いる場合、追加の付加材は、第一付加材及び第二付加材と、その素材等が同一であっても異なっていてもよい。
本発明の方法において、補強材と母材1との接着は、第一付加材(付加材31)と母材1とを適当な接着剤で接着することによって行われる。
接着剤は、母材1の種類、第一付加材の種類、環境条件等により、適宜選択され得る。例えば、母材1がコンクリートである場合、接着剤としては、エポキシ樹脂、アクリル(酸)樹脂、酢酸ビニル樹脂、及び、酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂が好適に使用され得るが、これらに限定されない。母材1が鉄鋼である場合、接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル(酸)樹脂、及び、酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂が好適に使用され得るが、これらに限定されない。エポキシ樹脂は、接着力が大きく、強靭であり、耐薬品性が高く、寸法安定性に優れるなどの利点を有し、また、低粘度液状品から高粘度パテ状品まで調製できる点、種々の材料からなる母材に対して適用可能である点においても優れている。アクリル樹脂は、軽量であり、強靭であり、耐候性が高く、耐光性が高いなどの利点を有し、また、取扱いが容易な水系エマルジョンに調製可能な点においても優れている。接着剤は、製造や施工時の取扱い易さの点において、約5℃〜約45℃の温度で数日以内に硬化するものが好ましい。接着剤及び接着技術については、本書においてその全体が援用される「接着ハンドブック(第3版)、日本接着学会編、1996年6月28日発行」を参照することができる。
補強材と母材1との接着は、常法、例えば、接着剤を含浸させた又は塗布した母材1に補強材を重ね合わせ、接着剤を硬化させる方法、接着剤を含浸させた又は塗布した補強材を母材1に重ね合わせ、接着剤を硬化させる方法、或いは、予め所定の間隙を介して母材1に補強材の第一付加材層(付加材31)を固定しておいてから、母材1と補強材の第一付加材層との間隙に接着剤を充填し、接着剤を硬化させる方法により行われ得る。接着後、必要に応じて、圧着、光(UV、可視光)照射、脱泡、仕上げ処理(表面コーティング等)、送風乾燥、などを行ってもよい。
本発明の方法には、第一付加材と第二付加材とを積層した補強材を母材1に接着する方法、及び母材1に、第一付加材を接着し、次いで、第二付加材を積層する方法の両方が含まれる。
以下に、付加材層が第一付加材及び第二付加材の2枚である実施形態を例に、本発明の方法を説明する:
図4に示すように第一付加材(付加材31)及び第二付加材(付加材32)を、接着剤層6及び接着剤層2を介して母材1に接着した場合について、次の4階微分方程式及び2階微分方程式を導出した:
Figure 2009119607
各記号の定義を以下に示す。
Figure 2009119607
付加材31と32とが接着された母材1が引張りを受ける場合について、式(1)及び式(2)を解くことにより、母材1に生じる応力σ、ならびに接着剤2及び6に生じるせん断応力τ及びτをそれぞれ導出した。
Figure 2009119607
ここで、α、β、A1s、A2s、B1s、B2s及びlの定義は以下の通りである。
Figure 2009119607
母材1に生じる応力は中央(x=0)で最も低下する。母材1の中央の応力の低下率σ/σsnは式(10)へx=0を代入し、両辺をσsnで除して与えられる。ここで、(Ec1c1+Ec2c2)/(E)=0.5、Ec2c2/(Ec1c1)=2.0、D=1.0に対して、母材1の中央のσ/σsnとcl1との関係を図5に示す。図5から分かるように、付加材31の接着長さlが長くなるに従って、σ/σsnは,式(7)で与えられる、付加材31、付加材32及び母材1が完全に合成された場合の母材1の中央の応力の低下率ξに近づく。
接着剤2及び接着剤6に生じるせん断応力は、それぞれ付加材31と付加材32の付着端で最大となる。式(11)及び式(12)にx=l及びx=lをそれぞれ代入し、接着剤2及び接着剤6のはく離せん断応力τ1e及びτ2eがそれぞれ与えられる。
(Ec1c1+Ec2c2)/(E)=0.5及びD=1.0に対して、τ1e/(ctσsn)とclとの関係及びτ2e/(ctσsn)とclとの関係を図6に示す。
clの値が大きくなると、接着剤2及び接着剤6のはく離せん断応力τ1e及びτ2eは、それぞれ次式に収束する。
Figure 2009119607
端部ステップ接着工法では、付加材31と付加材32とが同時にはく離する場合、すなわち、τ1eとτ2eとが等しくなるとき、付加材のはく離荷重が最も大きくなる。従って式(26)と式(27)との右辺を等値して、付加材のはく離荷重を最も大きくする条件として、次の関係を得る。
Figure 2009119607
式(28)が成立するとき、τ1e及びτ2eはともに次式となる。
Figure 2009119607
ここに、
Figure 2009119607
τ0eは、l=l及びh=0の場合の接着剤2のはく離せん断応力、すなわち、従来工法のはく離せん断応力である。従って、本発明のステップ接着工法を用いることによって、はく離せん断応力を、従来工法より
Figure 2009119607
に低減することができる。
σ/σsnがξとなるcl及びτ1eがτseとなるclは、理論上、共に無限となるので、σ/σsn=1.01ξ及びτ1e=1.01τseとなる場合を考える。ここで、図6(b)に示すように、式(28)が成立するとき、τ2eはτseより常に小さい。
(Ec1c1+Ec2c2)/(E)=0.5、及び(Ec1c1+Ec2c2)/(E)=0.5を式(28)に代入して得られるEc2c2/Ec1c1=2.0Dに対して、σ/σsn=1.01ξ及びτ1e=1.01τseを満足するl/lとclとの関係を図7に破線で示す。l/l及びclがこの図7の斜線の範囲内にあるとき、母材1の応力が低減され、従来工法よりはく離せん断応力を
Figure 2009119607
に低減できる。
図7の斜線のl/lとclとの関係は、次式で近似できる。
Figure 2009119607
式(31)は、0.125≦(Ec1c1+Ec2c2)/(E)≦1.0及び0.5≦D≦4.0の範囲で成立する。
式(31)を満足するl/lとclとの関係の上下限値を実線で図7に示す.斜線の領域を囲む縁において,実線は破線にほぼ重なっている。
本発明において用いられる補強材は、さらに、必要に応じてコーティング処理される。コーティング処理に使用されるコーティング剤としては、光(UV、可視光)遮断剤、防カビ剤、防藻剤、防サビ剤、難燃剤、顔料、着色料、色素、光沢剤、耐水性物質等の表面特性を改善する物質を含有する樹脂(例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等のコーティング剤に通常使用される樹脂)、ガラスが挙げられる。コーティングは、吹付け、ローラー塗り、刷毛塗り等の常法によってコーティング剤を補強材の表面へ塗布することにより行われ得る。
母材1としては、構造物に使用される物質であれば特に限定されないが、例えば、コンクリート、鉄鋼、アルミニウム合金、木材、石材、モルタル、レンガ、タイルが挙げられ、特に好ましくはコンクリート、鉄鋼及びアルミニウム合金である。
本発明の適用対象となる構造物としては、補強を必要とするあらゆる構造物が含まれ、例えば、建設構造物、輸送機等が挙げられる。
建設構造物には、例えば、橋梁(河川、海水面、湖水面、谷、道路、鉄道等と立体的に交差する構造物)、トンネル(山腹、河底、海底、湖底、地下に貫かれた通路)、建築物(屋根及び柱又は壁を有する構造物で、例えば、ビル、高層ビル、家屋、畜舎)、及びその他の建設構造物(ダム、煙突、塔、像、記念碑、標識、門、塀、堤防等)が含まれるが、これらに限定されない。
輸送機としては、例えば、電車、船舶、自動車、飛行機等が挙げられる。
これらの建設構造物及び輸送機は、梁、柱、桁、壁等の部材により構成されている。
本発明の方法は、通常、上記各部材に適用され、部材が補強される結果、部材で構成される構造物が補強されることになる。
1つの実施形態において、本発明において用いられる補強材に含まれる積層体は、第2付加材上に、さらに、少なくとも1枚の長方形板状の付加材が接着剤層を介して積層された構造、すなわち、3層以上の付加材を備える積層体構造を有する。
当該実施形態においては、付加層の枚数に応じて、略長方形板状積層体の短辺縁部に、3段以上の段差(以下、多段のステップと示す場合もある)が形成される。
多段のステップが設けられた場合、2段のステップの場合と同様に,各接着剤のはく離せん断応力を全て等しくすることにより、付加材が母材1からはく離するときの荷重が最大となる。片面にN枚(N≧3)の付加材を母材に接着する場合の力学モデルを図8に示す。
第n接着剤のはく離せん断応力は,次式で近似される。
Figure 2009119607
ここに、
Figure 2009119607
式(36)を式(32)に代入して、第n接着剤のはく離せん断応力が次式で与えられる。
Figure 2009119607
式(37)から算出される各接着剤のはく離せん断応力が全て等しくなるように、各付加材の剛性の比が決定される。
図8の第1付加材の付着半長さと第2付加材の付着半長さの差l12は次式で算出される。
Figure 2009119607
ここに、
η:1より大きい1に近い実数
図8の第n付加材の付着半長さと第n+1付加材の付着半長さの差ln(n+1)は次式で算出される。
Figure 2009119607
図8の第N付加材の付着半長さlは次式で算出される。
Figure 2009119607
従って、片面にN枚の付加材を母材に接着する場合に対する第1付加材の付着半長さは次式で与えられる。
=112+...+ln(n+1)+...l (46)
そして、第n付加材の付着半長さlは次式で与えられる。
=l−(l12+...+l(n−1)n) (47)
ここに,
:第n付加材の付着半長さ
(n−1)n:第n−1付加材の付着半長さと第n付加材の付着半長さの差
in及びDiNが1の場合、N段のステップを設けることによって、はく離せん断応力を、従来工法より
Figure 2009119607
に低減することができる。
さらに、1つの実施形態において、本発明の方法に用いられる補強材に含まれる積層体は、接着剤層内に介在する挿入層をさらに備えていてもよい。
当該実施形態において補強材を接着された母材の概略図を図9に示す。当該実施形態において、母材1に第一挿入材4が、第一挿入材4に第一付加材31が、第一付加材31に第二挿入材5が、第二挿入材5に第二付加材32が接着される。
第一挿入材、第二挿入材等を構成する挿入材としては、特に限定されないが、建設構造物の分野において通常使用される材料、例えば、繊維を原料とする織物、編物、又は不織布をマトリックス高分子で硬化させたもの、繊維をマトリックス高分子中に分散させたもの、金属、樹脂が使用され、特に、繊維を原料とする織物、編物、又は不織布をマトリックス高分子で硬化させたものが好適に使用され得る。
繊維の具体例としては、無機繊維、有機繊維、金属繊維等の繊維が好適に使用され、例えば、炭素繊維(CF)、ガラス繊維(GF)、アラミド繊維(ArF)、ポリアリレート繊維、高強度ポリエチレン繊維、ポリアセタール繊維、アルミナ繊維(AF)、炭化ケイ素繊維(SiCF)、チラノ繊維、ボロン繊維、アモルファス金属繊維、ステンレス繊維、又は、これらの組み合わせからなる群より選択される繊維が挙げられる。必要に応じて、繊維を互いに絡ませたり、束状に集束させたり、糸状に撚ったりしてもよい。
繊維は前述の方法により製造される。市販品を用いる場合には、前述の市販の繊維を用いることができる。
織物、編物、又は不織布は、前述の方法により成形することができる。
マトリックス高分子としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が使用され得る。特に、成形性及び耐熱性に優れるエポキシ樹脂等が好ましい。マトリックス高分子には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤等が添加される。
挿入材は、繊維の織物、編物又は不織布にマトリックス高分子を塗布するか又は含浸させ、マトリックス高分子を硬化させることにより、或いは、繊維とともにマトリックス高分子を混ぜ込んで織物、編物又は不織布を成形し、マトリックス高分子を硬化させることにより、得ることができる。
挿入材として繊維をマトリックス高分子中に分散させたものを用いる場合、例えば、前述の繊維を前述のマトリックス高分子中に常法により分散させたものを用いることができる。
挿入材として金属又は樹脂を用いる場合、金属としては、例えば、鋼、ステンレス鋼樹脂としては、前述のマトリックス高分子を硬化させたものを好適に使用することができる。
挿入材の形状は、特に限定されないが、例えば、フィルム(0.05mm未満の厚さを有する)、シート(0.05mm以上、1mm未満の厚さを有する)、プレート(1mm以上の厚さを有する)であり、好ましくはフィルム又はシートである。
本発明の好ましい実施形態において、挿入材は、ガラス繊維シート、ガラス繊維フィルム、アラミド繊維シート、又はアラミド繊維フィルムである。
市販されている繊維製品、例えば、ガラス繊維シートとしてガラス繊維トウシート(日鉄コンポジット株式会社製)、アラミド繊維シートとしてアラミド繊維トウシート(日鉄コンポジット株式会社製)又はフィブラシート(ファイベックス株式会社)等も挿入材として用いることができる。
挿入材層は、複数枚の挿入材が接着剤を介して積層されたものであってもよい。このとき、各挿入材の種類や形状は、同じであってもよいし、異なってもよい。また、挿入材同士の接着に使用される接着剤としては、特に限定されないが、後述する付加材と挿入材との接着に用いられる接着剤が好適に例示される。
ここで、2段のステップの場合、第一挿入材層4の剛性は、第一付加材層31の剛性の約0.5倍以下、好ましくは約0.4倍以下、より好ましくは約0.3倍以下、さらに好ましくは約0.2倍以下である。言い換えると、第一付加材層31の剛性に対する第一挿入材層4の剛性の比は、約0.5以下、好ましくは約0.4以下、より好ましくは約0.3以下、さらに好ましくは約0.2以下である。
第二挿入材層5の剛性は、第二付加材層32の剛性の約0.5倍以下、好ましくは約0.4倍以下、より好ましくは約0.3倍以下、さらに好ましくは約0.2倍以下である。言い換えると、第二付加材層32の剛性に対する第二挿入材層5の剛性の比は、約0.5以下、好ましくは約0.4以下、より好ましくは約0.3以下、さらに好ましくは約0.2以下である。
このような範囲の剛性を有する第一挿入材層4を付加材層31と母材1との間に存在させることにより、このような範囲の剛性を有さない第一挿入材層4を付加材層31と母材1との間に存在させる場合或いは第一挿入材層4を存在させない場合と比べて、補強材が母材からはく離しにくく、より長い間又はより大きなはく離荷重に対して母材を補強することができる。
また、当該実施形態においては、前述のような範囲の剛性を有する第一挿入材層4を、第一付加材層31と母材1との間に介在させることにより、第一挿入材層4を介在させない場合と比べて、より高い剛性の第一付加材層31を用いることができるため、母材をより強固に補強することができる。
同様に、上記範囲の剛性を有する第二挿入材層5を第二付加材層32と第一付加材層31との間に存在させることにより、このような範囲の剛性を有さない第二挿入材層5を用いる場合又は第二挿入材層5を用いない場合と比べて、第二付加材層32が第一付加材層からはく離しにくく、より長い間又はより大きなはく離荷重に対して第一付加材層及び母材を補強することができる。
また、当該実施形態においては、前述のような範囲の剛性を有する第二挿入材層5を、第二付加材層32と第一付加材層31との間に介在させることにより、第二挿入材層5を介在させない場合と比べて、より高い剛性の第二付加材層32を用いることができるため、第一付加材層及び母材をより強固に補強することができる。
多段のステップの場合,第n接着剤の中央へ挿入材を挿入する場合,すなわち第n-1付加材と第n付加材の中央に第n挿入材を挿入する場合,挿入材の剛性は次式を満足するように決定される。
Figure 2009119607
ここに、
gn、tgn:それぞれ、第n挿入材のヤング率及び片面厚さ
付加材と挿入材との形状の組み合わせとしては、好ましくは、挿入材がフィルムであるとき、付加材はシート又はプレートであり、挿入材がシートであるとき、付加材はシート又はプレートであり、挿入材がプレートであるとき、付加材はプレートである。言いかえると、付加材と挿入材との形状の組み合わせとしては、好ましくは、付加材がプレートであるとき、挿入材はプレート、シート又はフィルムであり、付加材がシートであるとき、挿入材はシート又はフィルムである。
付加材と挿入材との繊維原料の組み合わせとしては、好ましくは、挿入材がガラス繊維又はアラミド繊維であるとき、付加材は炭素繊維である。
本発明において使用される付加材と挿入材との好ましい組み合わせの例を、下記の表2に示す。
Figure 2009119607
当該実施形態において付加材と挿入材との接着に使用され、接着剤層を形成する接着剤としては、特に限定されないが、合成樹脂又は天然樹脂を主成分とし、これに硬化剤、硬化促進剤、希釈剤、可塑剤、充填材等を適当に配合した接着剤を好適に使用することができる。主成分となる樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル(酸)樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂又は酢酸ビニル共重合樹脂等の硬化性又は可塑性樹脂が使用され得、その中でも特に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好適に使用され得る。接着剤は、製造や施工時の取扱い易さの点において、約5℃〜約45℃の温度で数日以内に硬化するものが好ましい。また、かかる接着剤は、所望の厚さの接着剤層をもたらす量で使用される。接着剤の量は、試験片を用いて、単位面積当たりどれくらいの量の接着剤を適用すれば硬化後の接着剤層が所望の厚さになるかを確認した上で決定することが望ましい。
エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAの低分子量ジグリシジルエーテルとジアミンを反応させて得られる重合体、又は、オレフィンを過酢酸で酸化して得られる重合体が挙げられる。アクリル(酸)樹脂の例としては、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルへキシル)の重合体が挙げられる。ウレタン樹脂の例としては、ジイソシアネートとジオールとを反応させて得られるウレタン結合を主体とする重合体が挙げられる。
付加材と挿入材との接着は、常法、例えば、前述の接着剤を含浸させた又は塗布した挿入材に付加材を重ね合わせ、接着剤を硬化させる方法、前述の接着剤を含浸させた又は塗布した付加材に挿入材を重ね合わせ、接着剤を硬化させる方法、或いは、予め所定の間隙を介して付加材と挿入材を固定しておいてから、付加材と挿入材との間隙に接着剤を充填し、接着剤を硬化させる方法により行われ得る。また、接着剤に熱硬化性樹脂、UV照射性樹脂等の熱、UV等により物性が変化して硬化する接着剤を使用する場合は、必要に応じて、温風を吹き付ける、UVを照射する等の処理を施す。更に、脱泡、送風乾燥などを行ってもよい。接着剤及び接着技術については、本書においてその全体が援用される「接着ハンドブック(第3版)、日本接着学会編、1996年6月28日発行」を参照することができる。
本発明は、本発明の方法により補強された母材を含む強化構造物にも関する。
本発明の強化構造物には、補強材、接着剤層及び母材1を有する前述の構造物が含まれる。
本書において「補強」とは、特に言及しない限り、構造物の欠陥を修繕又は補修すること、構造物の予測される欠陥を防止又は軽減すること、或いは、構造物の強度を改善することを意味する。
以下、本発明の実施例を示すが、この実施例は本発明をより容易に理解するための説明であって、本発明を何ら限定するものではない。
母材として鋼板、付加材としてCFRPプレート、挿入材としてガラス繊維シート、そして接着剤にエポキシ樹脂を用い、表3、図10及び図11に記載の寸法で、試験片C、CG、CS及びCSGを製造した。
ここで、試験片Cは、従来工法によるCFRPプレート接着鋼板であり、試験片CGは挿入材工法である。試験片CSは、2段の端部ステップ接着工法であり、試験片CSGは挿入材を挿入した2段の端部ステップ接着工法である。
試験片CSは次の値を有する。これらの値は、3本の試験片の平均値である。
(Ec1c1+Ec2c2)/(E)=0.503485
c2c2/(Ec1c1)=2.006805
D=1.054326
cl=13.81108
/l=0.7142857
これらの値は、はく離荷重を最も大きくする条件式(28)及び式(31)を満足する。
試験片CSGにおいては、第一付加材層の剛性に対する第一挿入材層の剛性の比Eg1g1/(Ec1c1)、及び第二付加材層の剛性に対する第二挿入材層の剛性の比Eg2g2/(Ec2c2)はそれぞれ次の値である。これらの値は、3本の試験片の平均値である。
g1g1/(Ec1c1)=0.035237499
g2g2/(Ec2c2)=0.017565309
これらの値は、挿入材として好ましい値0.2よりさらに小さい値である。
Figure 2009119607
試験片の引張試験の結果は,以下表4の通りである。挿入材工法(CG−1〜3)は、従来工法(試験片C−1〜3)に対して、CFRPプレートがはく離したときの荷重が1.25倍になった。2段の端部ステップ工法(CS−1〜3)は、従来工法(試験片C−1〜3)に対して、CFRPプレートがはく離したときの荷重が1.58倍になった。さらに、挿入材を挿入した2段の端部ステップ接着工法(CSG−1〜3)は従来工法(試験片C−1〜3)に対して、CFRPプレートがはく離したときの荷重が1.7倍になった。
Figure 2009119607
母材としての鋼板、付加材としてCFRPプレートそして接着剤にエポキシ樹脂を用いる場合に対して、CFRPプレートが3段設けられた場合の計算例を示す。
鋼板は、Es=200GPa、ts=9mmである。各CFRPプレートのヤング率は全て等しくEc1=EC2=Ec3=150GPaであり、CFRPプレートの片面厚さの合計は6mmである。各接着剤層のせん断弾性係数および片面厚さは全て等しく、Ge1=Ge2=Ge3=0.735GPa、h1=h2=h3=0.32mmである。
式(37)から計算される、各接着剤層のはく離せん断応力がすべて等しくなる場合に対する各CFRPプレートの厚さを表5に示す.さらに、ξn及びcnの値も表5に示す。このとき、各接着剤層に生じるはく離せん断応力はτe1=τe2=τe3=0.0928σsnである。
Figure 2009119607
η=1.01に対して、式(38)からl12=33.11mm、式(39)からl23=59.24mm及び式(41)からl=96.74mmとなる。従って式(46)より第1CFRPプレートの付着半長さはl=189.1mmとなる。
他方、従来工法では、CFRPプレートのヤング率がEc=150GPa、片面厚さがtc=6mmであり、さらに接着剤層のせん断弾性係数および片面厚さがGe1=0.735GPa、h1=0.32mmの場合、接着剤に生じるはく離せん断応力はτ0e=0.1608σsnとなる。
η=1.01に対して、従来工法のCFRP板の付着半長さlは次式から算出され、l=74.15mmとなる。
Figure 2009119607
従って、実施例2の材料に対して、CFRP板を3枚接着した場合の端部ステップ接着工法のはく離せん断応力τse=τe1=τe2=τe3は、従来工法のはく離せん断応力τ0eの0.577倍(=3−1/2)まで低減される。このとき、端部ステップ接着工法においてCFRPプレートの付着に必要とされる長さは、従来工法の2.55倍になる。
本発明の方法は、母材から付加材に伝達されるはく離せん断応力を、従来法より大幅に低減することができる。従って、本発明の方法を用いることによって、従来の補強材に用いられていた付加材よりもより高い剛性を有する付加材を備える補強材をはく離することなく母材に接着することができる。よって、本発明の方法は、従来の方法と比較して、より強度の高い補強を施すことができる。
従って、本発明の方法は、例えば、鋼桁の補強、鋼部材クラック進展防止、コンクリート(RC,PC)桁の補強等に利用することができる。
鋼桁の補強としては、例えば、規制緩和による車両の重量増加に伴う鋼桁の補強、錆等の腐食による減肉部分の補強、応力集中が生じる構造部材の応力緩和等が挙げられる。
鋼部材のクラック進展防止としては、例えば、繰り返し荷重を受ける箇所に発生した疲労クラックの進展を防止するために、クラックをまたいでCFRPを接着させる際に本発明のステップ工法を用いることが挙げられる。疲労クラックの開口防止には剛性の高いCFRPが有利であるため、より剛性が高いCFRPをはく離することなく接着することができる本発明の方法は有用である。
コンクリート(RC,PC)桁の補強としては、上記のような車両重量増加に伴う補強等が挙げられる。
図1は、従来の補強材を用いた母材の補強方法の概略図を示す。 図2は、従来の補強材を用いた母材の補強方法及び母材1から付加材3に伝達されるはく離せん断応力の概略図を示す。 図3は、従来の補強材及び挿入材を用いた母材の補強方法の概略図を示す。 図4は、本発明の端部ステップ接着工法における母材の補強方法の概略図を示す。 図5は、端部ステップ接着工法における、(Ec1c1+Ec2c2)/(E)=0.5、Ec2c2/(Ec1c1)=2.0、D=1.0に対する、母材1の中央のσ/σsnとcl1との関係を示すグラフである。 図6は、ステップ工法における、(Ec1c1+Ec2c2)/(E)=0.5及びD=1.0に対する、τ1e/(ctσsn)とclとの関係及びτ2e/(ctσsn)とclとの関係を示し、図(a)はEc2c2/(Ec1c1)=0.5に対するグラフであり、図(b)はEc2c2/(Ec1c1)=2.0に対するグラフであり、図(c)はEc2c2/(Ec1c1)=3.0に対するグラフである。 図7は、ステップ工法における、(Ec1c1+Ec2c2)/(E)=0.5及びEc2c2/(Ec1c1)=2.0に対する、σ/σsn=1.01ξ及びτ1e=1.01τseを満足するl/lとclとの関係を示し、図(a)はD=0.5に対するグラフであり、図(b)はD=1に対するグラフであり、図(c)はD=2対するグラフであり、図(d)はD=4に対するグラフである。 図8は、N枚の付加材を母材に接着する場合の力学モデルを示す。 図9は、本発明において、接着剤層内に介在する挿入層をさらに備えた実施形態の補強材を接着された母材の概略図を示す。 図10は、本願実施例の母材補強方法の概略図を示す。 図11は、本願実施例の母材補強方法の概略図を示す。
符号の説明
1:母材
2:接着剤
3:付加材
4:挿入材
5:挿入材
6:接着剤
31:第1付加材
32:第2付加材
<材料特性>
E:各材料のヤング率。
G:各材料のせん断弾性係数。
:母材のヤング率。
:従来工法の付加材のヤング率。
c1:第1付加材のヤング率。
c2:第2付加材のヤング率。
c(n-1):第n-1付加材のヤング率。
cn:第n付加材のヤング率。
c(N-1):第N-1付加材のヤング率。
cN:第N付加材のヤング率。
g1:第一挿入材のヤング率。
g2:第二挿入材のヤング率。
gn:第n挿入材のヤング率。
e1:接着剤層2のせん断弾性係数。
e2:接着剤層6のせん断弾性係数。
en:第n接着剤層のせん断弾性係数。
ei:第i接着剤層のせん断弾性係数。
<寸法>
:母材の厚さ。
vn:母材の厚さ及びヤング率、ならびにn−1枚の付加材のそれぞれの厚さ及びヤング率から成る、板厚に関するパラメータ。
vN:母材の厚さ及びヤング率、ならびにN−1枚の付加材のそれぞれの厚さ及びヤング率から成る、板厚に関するパラメータ。
:従来工法の付加材の片面厚さ。
c1:第1付加材の片面厚さ。
c2:第2付加材の片面厚さ。
c(n-1):第n-1付加材の片面厚さ。
cn:第n付加材の片面厚さ。
c(N-1):第N-1付加材の片面厚さ。
cN:第N付加材の片面厚さ。
gn:第n挿入材の片面厚さ。
:接着剤層2の片面厚さ。
:接着剤層6の片面厚さ。
n:第n接着剤層の片面厚さ。
i:第i接着剤層の片面厚さ。
:従来工法の付加材の付着半長さ。
:第1付加材の付着半長さ。
:第2付加材の付着半長さ。
::第n付加材の付着半長さ。
12:第1付加材の付着半長さと第2付加材の付着半長さとの差。
(n-1)n:第n-1付加材の付着半長さと第n付加材の付着半長さとの差。
n(n+1):第n付加材の付着半長さと第n+1付加材の付着半長さとの差。
N:第N付加材の付着半長さ。
<応力>
σ:付加材が接着されている位置の母材1に生じる応力。
σsn:付加材が接着されていない位置の母材1に生じる応力。
σvn:t、tvn及びσsnから成る、応力に関するパラメータ。
τ:接着剤2に生じる離せん断応力。
τ:接着剤6に生じる離せん断応力。
τ1e:第1付加材の付着端の位置において接着剤2に生じるはく離せん断応力。
τ2e:第2付加材の付着端の位置において接着剤6に生じるはく離せん断応力。
τse:τ1eとτ2eとが等しいときのはく離せん断応力。
τ0e:従来工法において接着剤に生じるはく離せん断応力。
τen:第n接着剤に生じるはく離せん断応力。
<その他の記号>
n :接着剤および付加材に対して,母材に近い順番で、1から順に付けられた番号
N :付加材の片面の接着枚数の総数
i :正の整数
c:Ge1、h、ξ、E及びtから成るパラメータ。
n:Gen、hn、ξn、Es及びtvnから成るパラメータ。
N:GeN、hN、ξN、Es及びtvNから成るパラメータ。
ξ:Ec1、tc1、Ec2、tc2、E及びtから成るパラメータ。
ξ:Es、tvn、Ecn及びtcnから成るパラメータ。
ξ:Es、tvN、EcN及びtcNから成るパラメータ。
:λ、J、ξ、D及びJから成るパラメータ。
:λ、J、ξ、D及びJから成るパラメータ。
λ:J及びξから成るパラメータ。
J:Ec2、tc2、E、t、Ec1及びtc1から成るパラメータ。
D:h、h、Ge1及びGe2から成るパラメータ。
in:hi、hn、Gei及びGenから成るパラメータ。
iN:hi、hN、Gei及びGeNから成るパラメータ。
α:r及びsから成るパラメータ。
β:r及びsから成るパラメータ。
1S:Z、Z、Z、Z、Z及びZから成るパラメータ。
2S:Z、Z、Z、Z、Z及びZから成るパラメータ。
1S:α、λ、A1S、c、l、A2S及びβから成るパラメータ。
2S:A1S、α、c、l、A2S、β、J及びξから成るパラメータ。
:α、λ、c、l12及びlから成るパラメータ。
:β、λ、c、l12及びlから成るパラメータ。
:J、ξ、λ、α、c及びlから成るパラメータ。
:J、ξ、λ、β、c及びlから成るパラメータ。
:J、ξ、λ、α及びl12から成るパラメータ。
:J及びξから成るパラメータ。
η:1より大きい1に近い実数。

Claims (5)

  1. (i)母材に接着される長方形板状の第1付加材、
    (ii)第1付加材の平面面積よりも小さい平面面積を有する長方形板状の第2付加材及び
    (iii)第1付加材層と第2付加材層とを接着する接着剤層6
    を積層した略長方形板状の積層体を有し、かつ略長方形板状の補強材の2つの短辺縁部が階段状に形成された補強材を、
    接着剤層2を介して母材に接着する工程を含む、母材の補強方法であって、
    下記式(1)〜(3):
    Figure 2009119607
    [式中、cは、下記式(4)にて表される:
    Figure 2009119607
    ξは、下記式(5)にて表される:
    Figure 2009119607
    Dは、下記式(6)にて表される:
    Figure 2009119607
    及びtは、それぞれ、母材のヤング率及び厚さを示す。
    c1及びtc1は、それぞれ、第1付加材のヤング率及び片面厚さを示す。
    c2及びtc2は、それぞれ、第2付加材のヤング率及び片面厚さを示す。
    e1及びhは、それぞれ、接着剤2のせん断弾性係数及び片面厚さを示す。
    e2及びhは、それぞれ、接着剤6のせん断弾性係数及び片面厚さを示す。
    及びlは、それぞれ、第1付加材及び第2付加材の付着半長さを示す。]
    の全てを満足する、母材の補強方法。
  2. 前記第1付加材及び第2付加材が同一または異なって金属、樹脂又は繊維のプレート又はシートである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記積層体が、第2付加材上に、さらに、少なくとも1枚の長方形板状の付加材が接着剤層を介して積層された構造を有する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記積層体が、接着剤層内に介在する挿入層をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により補強された母材を含む構造物。
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