地上デジタル放送の変調方式として、多数の直交搬送波を用い、各搬送波をPSK(Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)で変調する直交周波数分割多重方式(OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式)が提案されている。
OFDM方式は、多数のサブキャリアで伝送帯域全体を分割するため、サブキャリア1波あたりの帯域は狭くなり、伝送速度は遅くなるが、トータルの伝送速度は従来の変調方式と変わらないという特徴を有している。
また、OFDM方式は、多数のサブキャリアが並列に伝送されるために、シンボル速度が遅くなるという特徴を有している。そのため、1シンボルの時間長に対する相対的なマルチパスの時間長を短くすることができ、これにより、マルチパスによる影響を受けにくくすることができるという特徴もOFDM方式は有している。
さらに、複数のサブキャリアにデータが割り当てられることから、OFDM方式は、逆フーリエ変換を変調時に行うIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)演算回路を用いることにより送信回路を構成することができ、フーリエ変換を復調時に行うFFT(Fast Fourier Transform)演算回路を用いることにより受信回路を構成することができるという特徴を有している。
以上のような特徴から、OFDM方式は、マルチパス妨害の影響を強く受ける地上デジタル放送に適用されることが多い。OFDM方式を採用した地上デジタル放送の規格としては、例えば、DVB-T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)やISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial),ISDB-TSBといった規格がある。
図1は、OFDMシンボルを示す図である。
OFDM方式においては、信号の伝送はOFDMシンボルと呼ばれる単位で行われる。
図1に示されるように、1OFDMシンボルは、送信時にIFFTが行われる信号区間である有効シンボルと、有効シンボルの後半の一部分の波形がコピーされたガードインターバル(以下、GIという)とから構成される。GIは、時間軸上で有効シンボルの前の位置に挿入される。
OFDM方式では、GIを挿入することにより、マルチパス環境下において発生するOFDMシンボル間の干渉を防ぐことが可能になる。
このようなOFDMシンボルが複数集められて1つのOFDM伝送フレームが形成される。例えば、ISDB-T規格においては、204のOFDMシンボルから1つのOFDM伝送フレームが形成される。このOFDM伝送フレームの単位を基準として、パイロット信号の挿入位置が定められている。
各サブキャリアに対する変調方式としてQAM系の変調方式を用いるOFDM方式においては、伝送時にマルチパス等の影響を受けることにより、サブキャリア毎に、振幅および位相が送信時のものと受信時のものとで異なるものになってしまう。そのため、受信側では、受信信号の振幅および位相が送信されたものと等しくなるように、信号の等化を行う必要がある。
OFDM方式では、送信側で、所定の振幅および所定の位相のパイロット信号を伝送シンボル内に離散的に挿入しておき、受信側で、パイロット信号の振幅および位相に基づいて伝送路の周波数特性を求め、求めた伝送路の特性により受信信号を等化するようにしている。
このように、伝送路特性を算出するために用いられるパイロット信号のことをスキャッタードパイロット信号(以下、SP信号)という。図2に、DVB-T規格やISDB-T規格で採用されているSP信号のOFDMシンボル内での配置パターンを示す。
図3は、従来のOFDM受信機の構成例を示すブロック図である。
図3のOFDM受信機100は、受信アンテナ1、チューナ2、A/D(Analog/Digital)変換回路3、直交復調回路4、搬送波生成回路5、FFT回路6、FFT区間制御回路7、伝送路歪み補償回路8、誤り訂正回路9、遅延プロファイル推定回路10、周波数シフト量生成回路11、および周波数補間フィルタ選択回路12から構成される。
チューナ2は、受信アンテナ1において受信されたRF信号をIF信号に周波数変換し、IF信号をA/D変換回路3に出力する。
A/D変換回路3は、チューナ2から供給されたIF信号に対してA/D変換を施し、デジタルのIF信号を直交復調回路4に出力する。
直交復調回路4は、搬送波生成回路5から供給された搬送波を用いて直交復調を行うことによって、A/D変換回路3から供給されたIF信号からベースバンドのOFDM信号を取得する。このベースバンドのOFDM信号は、FFT演算が行われる前の、いわゆる時間領域の信号である。
以下、FFT演算が行われる前のベースバンドのOFDM信号をOFDM時間領域信号という。OFDM時間領域信号は、直交復調された結果、実軸成分(Iチャンネル信号)と虚軸成分(Qチャンネル信号)を含んだ複素信号となる。直交復調回路4は、時間領域OFDM信号を搬送波生成回路5、FFT回路6、FFT区間制御回路7、および遅延プロファイル推定回路10に出力する。
搬送波生成回路5は、直交復調回路4から供給された時間領域OFDM信号に基づいて、受信信号との同期がとれた所定の周波数の搬送波を生成し、生成した搬送波を直交復調回路4に出力する。
FFT回路6は、FFT区間制御回路7から供給されたFFTトリガーパルスに基づいて、1つのOFDMシンボルの信号からGIの範囲の信号を除くことによって有効シンボル長の範囲の信号を抜き出す。
また、FFT回路6は、抜き出したOFDM時間領域信号に対してFFT演算を行うことによって、各サブキャリアに直交変調されているデータを抽出する。具体的には、FFT回路6によるFFT演算の開始位置は、OFDMシンボルの境界である図1の位置Aから、GIと有効シンボルの境界位置である位置Bまでの間のいずれかの位置となる。FFT演算範囲はFFT区間と呼ばれ、このFFT区間の開始位置が、FFT区間制御回路7から供給されるFFTトリガーパルスにより指定される。
FFT回路6は、抽出したデータを表すOFDM信号を伝送路歪み補償回路8に出力する。FFT回路6から出力されたOFDM信号は、FFT演算が行われた後の、いわゆる周波数領域の信号である。以下、FFT演算が行われた後のOFDM信号をOFDM周波数領域信号という。
FFT区間制御回路7は、直交復調回路4から供給された時間領域OFDM信号と、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいてFFT区間を決定し、決定したFFT区間の開始位置を指定するFFTトリガーパルスをFFT回路6に出力する。
伝送路歪み補償回路8は、受信信号周波数シフト回路8−1、SP抽出回路8−2、時間方向伝送路特性推定回路8−3、伝送路特性周波数シフト回路8−4、周波数補間回路8−5、および除算回路8−6から構成される。
受信信号周波数シフト回路8−1は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号の周波数シフトを周波数シフト量生成回路11により生成されたシフト量に従って行い、周波数シフトを行うことによって得られたOFDM周波数領域信号を除算回路8−6に出力する。
SP抽出回路8−2は、FFT回路6から供給された周波数領域OFDM信号からSP信号を抽出し、SP信号の変調成分を除去することによって、SP信号の配置位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。SP抽出回路8−2は、推定した伝送路特性を表す信号を時間方向伝送路特性推定回路8−3に出力する。
時間方向伝送路特性推定回路8−3は、SP抽出回路8−2により推定された伝送路特性に基づいて、SP信号が配置されているサブキャリアの、時間方向(OFDMシンボル方向)に並ぶ各OFDMシンボルの位置における伝送路特性を推定する。図2においては、縦方向が時間方向となり、横方向が周波数方向となる。
例えば、時間方向伝送路特性推定回路8−3は、SP抽出回路8−2により推定された図2のSP信号SP1の位置における伝送路特性と、SP信号SP2の位置における伝送路特性を用いて、図2の領域A1内の他のシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。
図2に示されるようにSP信号は同一時間上では12サブキャリア毎に挿入されるから、時間方向伝送路特性推定回路8−3においては、3サブキャリア毎に、それぞれのOFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性が推定される。時間方向伝送路特性推定回路8−3は、3サブキャリア毎の伝送路特性を表す信号を伝送路特性周波数シフト回路8−4と遅延プロファイル推定回路10に出力する。時間方向伝送路特性推定回路8−3から出力される伝送路特性を表す信号は例えば周波数軸上の信号として表される。
伝送路特性周波数シフト回路8−4は、時間方向伝送路特性推定回路8−3により推定された伝送路特性の周波数シフトを周波数シフト量生成回路11により生成されたシフト量に従って行い、周波数シフトを行うことによって得られた伝送路特性を周波数補間回路8−5に出力する。
周波数補間回路8−5は、周波数補間フィルタ選択回路12から供給されたフィルタ選択信号に従って選択した補間フィルタを用いて周波数補間処理を行い、伝送路特性周波数シフト回路8−4から供給された3サブキャリア毎の伝送路特性から、周波数方向の各OFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。周波数補間回路8−5にはそれぞれ所定の帯域幅を有する複数の補間フィルタが与えられており、この複数の補間フィルタの中から、周波数補間処理に用いる補間フィルタが選択される。
例えば、周波数補間回路8−5は、図2の領域A2に含まれるOFDMシンボルの位置のうち、伝送路特性の推定がまだ行われていないOFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。伝送路特性の推定は、SP抽出回路8−2、時間方向伝送路特性推定回路8−3により既に推定されている伝送路特性を用いて行われる。
この結果、各OFDMシンボルの位置における全サブキャリアの伝送路特性が推定される。周波数補間回路8−5は、推定した伝送路特性を表す信号を除算回路8−6に出力する。
除算回路8−6は、受信信号周波数シフト回路8−1から供給されたOFDM周波数領域信号から、周波数補間回路8−5から供給された全てのサブキャリアの伝送路特性を表す信号の成分を除算し、伝送路による歪みの成分をOFDM周波数領域信号から除去する。除算回路8−6は、歪みの成分を除去した周波数領域OFDM信号を誤り訂正回路9に出力する。
誤り訂正回路9は、送信側でインタリーブされている信号に対してデインタリーブ処理を施し、さらに、デンパンクチャ、ビタビ復号、拡散信号除去、RS復号などの処理を施す。誤り訂正回路9は、各種の処理を施すことによって得られたデータを復号データとして後段の回路に出力する。
遅延プロファイル推定回路10は、伝送路の時間応答特性を求めることによって伝送路の遅延プロファイルを推定する。例えば、遅延プロファイル推定回路10は、時間方向伝送路特性推定回路8−3により推定された伝送路特性にIFFTを施すことによって遅延プロファイルを推定する。時間方向伝送路特性推定回路8−3により推定された伝送路特性は周波数特性であり、これに対してIFFTを施すことによって求められた時間応答特性が遅延プロファイルとなる。
遅延プロファイル推定回路10は、遅延プロファイルをFFT区間制御回路7、周波数シフト量生成回路11、および周波数補間フィルタ選択回路12に出力する。なお、遅延プロファイル推定の方法としては、GI期間をタップ係数とする整合フィルタ(MF(Matched Filter))を利用して、OFDM時間領域信号から推定する方法も知られている。
周波数シフト量生成回路11は、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいて、周波数シフトに用いられるシフト量を生成する。例えば、周波数シフト量生成回路11は、遅延プロファイルに含まれるパスの時間軸方向の中心位置(遅延広がりの中心位置)が、周波数補間回路8−5の補間フィルタの帯域を時間軸上で表したときにその中心位置になるようなシフト量を生成する。
周波数シフト量生成回路11は、生成したシフト量を表す信号を受信信号周波数シフト回路8−1と伝送路特性周波数シフト回路8−4に出力する。
周波数シフト量生成回路11により生成されたシフト量に従って、受信信号周波数シフト回路8−1においては、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号の帯域が補間フィルタの帯域に収められるように周波数シフトが行われる。また、伝送路特性周波数シフト回路8−4においては、時間方向伝送路特性推定回路8−3から供給された伝送路特性を表す信号の帯域が補間フィルタの帯域に収められるように周波数シフトが行われる。
周波数補間フィルタ選択回路12は、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいて遅延広がりを求め、遅延広がりに応じた補間フィルタを、周波数補間回路8−5に与えられている補間フィルタの中から選択する。周波数補間フィルタ選択回路12は、選択した補間フィルタを指定するフィルタ選択信号を周波数補間回路8−5に出力する。
図5は、本発明の一実施形態に係るOFDM受信機の構成例を示すブロック図である。図3の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。
図5のOFDM受信機101は、受信アンテナ1、チューナ2、A/D変換回路3、直交復調回路4、搬送波生成回路5、FFT回路6、FFT区間制御回路7、伝送路歪み補償回路8、誤り訂正回路9、遅延プロファイル推定回路10、周波数シフト量生成回路11、周波数補間フィルタ選択回路12、および探索回路21から構成される。
OFDM受信機101は、探索回路21をさらに有している点で、図3のOFDM受信機100と異なる。
チューナ2は、受信アンテナ1において受信されたRF信号をIF信号に周波数変換し、IF信号をA/D変換回路3に出力する。
A/D変換回路3は、チューナ2から供給されたIF信号に対してA/D変換を施し、デジタルのIF信号を直交復調回路4に出力する。
直交復調回路4は、搬送波生成回路5から供給された搬送波を用いて直交復調を行うことによって、A/D変換回路3から供給されたIF信号から時間領域OFDM信号を取得する。直交復調回路4は、時間領域OFDM信号を搬送波生成回路5、FFT回路6、FFT区間制御回路7、および遅延プロファイル推定回路10に出力する。
搬送波生成回路5は、直交復調回路4から供給された時間領域OFDM信号に基づいて所定の周波数の搬送波を生成し、生成した搬送波を直交復調回路4に出力する。
FFT回路6は、FFT区間制御回路7から供給されたFFTトリガーパルスに基づいて、1つのOFDMシンボルの信号からGIの範囲の信号を除くことによって有効シンボル長の範囲の信号を抜き出す。
また、FFT回路6は、抜き出したOFDM時間領域信号に対してFFT演算を行うことによって、各サブキャリアに直交変調されているデータを抽出する。FFT回路6は、抽出したデータを表すOFDM周波数領域信号を伝送路歪み補償回路8の受信信号周波数シフト回路8−1、SP抽出回路8−2と、探索回路21の受信信号周波数シフト回路21−3に出力する。
FFT区間制御回路7は、直交復調回路4から供給された時間領域OFDM信号と、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいてFFT区間を決定し、決定したFFT区間の開始位置を指定するFFTトリガーパルスをFFT回路6に出力する。
時間領域OFDM信号を用いてFFT区間を決定する場合、FFT区間制御回路7は、1OFDMシンボルの時間領域OFDM信号においてGIのコピー元として用いられた有効シンボルの後半の一部と各部の相関値を求め、相関値の高い部分をGIとして検出する。FFT区間制御回路7は、検出したGIと、有効シンボルの境界位置をFFT区間の開始位置として決定する。
また、遅延プロファイルを用いてFFT区間を決定する場合、FFT区間制御回路7は、遅延プロファイルにより表される、GIと有効シンボルの境界位置をFFT区間の開始位置として決定する。
伝送路歪み補償回路8は、受信信号周波数シフト回路8−1、SP抽出回路8−2、時間方向伝送路特性推定回路8−3、伝送路特性周波数シフト回路8−4、周波数補間回路8−5、および除算回路8−6から構成される。
受信信号周波数シフト回路8−1は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号の周波数シフトを周波数シフト量生成回路11により生成されたシフト量に従って行い、周波数シフトを行うことによって得られたOFDM周波数領域信号を除算回路8−6に出力する。
SP抽出回路8−2は、FFT回路6から供給された周波数領域OFDM信号からSP信号を抽出し、SP信号の変調成分を除去することによって、SP信号の配置位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。SP抽出回路8−2は、推定した伝送路特性を表す信号を時間方向伝送路特性推定回路8−3に出力する。
時間方向伝送路特性推定回路8−3は、SP抽出回路8−2により推定された伝送路特性に基づいて、SP信号が配置されているサブキャリアの、時間方向に並ぶ各OFDMシンボルの位置における伝送路特性を推定する。時間方向伝送路特性推定回路8−3は、3サブキャリア毎の伝送路特性を表す信号を伝送路特性周波数シフト回路8−4、遅延プロファイル推定回路10、および探索回路21の伝送路特性周波数シフト回路21−4に出力する。時間方向伝送路特性推定回路8−3から出力される伝送路特性を表す信号は例えば周波数軸上の信号として表される。
伝送路特性周波数シフト回路8−4は、時間方向伝送路特性推定回路8−3により推定された伝送路特性の周波数シフトを周波数シフト量生成回路11により生成されたシフト量に従って行い、周波数シフトを行うことによって得られた伝送路特性を周波数補間回路8−5に出力する。
周波数補間回路8−5は、周波数補間フィルタ選択回路12から供給されたフィルタ選択信号に従って選択した補間フィルタを用いて周波数補間処理を行い、伝送路特性周波数シフト回路8−4から供給された3サブキャリア毎の伝送路特性から、周波数方向の各OFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。周波数補間回路8−5にはそれぞれ所定の帯域幅を有する複数の補間フィルタが与えられており、この複数の補間フィルタの中から、周波数補間処理に用いる補間フィルタが選択される。
周波数補間回路8−5は、推定した伝送路特性を表す信号を除算回路8−6に出力する。
除算回路8−6は、受信信号周波数シフト回路8−1から供給されたOFDM周波数領域信号から、周波数補間回路8−5から供給された全てのサブキャリアの伝送路特性を表す信号の成分を除算し、伝送路による歪みの成分をOFDM周波数領域信号から除去する。除算回路8−6は、歪みの成分を除去した周波数領域OFDM信号を誤り訂正回路9に出力する。
誤り訂正回路9は、送信側でインタリーブされている信号に対してデインタリーブ処理を施し、さらに、デンパンクチャ、ビタビ復号、拡散信号除去、RS復号などの処理を施す。誤り訂正回路9は、各種の処理を施すことによって得られたデータを復号データとして後段の回路に出力する。
遅延プロファイル推定回路10は、伝送路の時間応答特性を求めることによって伝送路の遅延プロファイルを推定し、推定した遅延プロファイルをFFT区間制御回路7、周波数シフト量生成回路11、および周波数補間フィルタ選択回路12に出力する。
周波数シフト量生成回路11は、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルと探索回路21の制御回路21−1から供給された最適シフト量オフセットに基づいてシフト量を生成する。
例えば、周波数シフト量生成回路11は、遅延プロファイルの推定結果に含まれるパスの時間軸方向の中心位置が、周波数補間回路8−5の補間フィルタの帯域を時間軸上で表したときにその帯域の中心位置になるようなシフト量に、最適シフト量オフセットを加算することによってシフト量を生成する。
周波数シフト量生成回路11は、生成したシフト量を表す信号を受信信号周波数シフト回路8−1、伝送路特性周波数シフト回路8−4、および探索回路21の加算回路21−2に出力する。
周波数補間フィルタ選択回路12は、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルと制御回路21−1から供給された遅延広がり推定値を用いて、周波数補間回路8−5に与えられている補間フィルタの中から所定の補間フィルタを選択する。遅延広がり推定値が制御回路21−1から供給された場合、例えば、周波数補間フィルタ選択回路12は、遅延広がり推定値に応じた補間フィルタを選択する。
周波数補間フィルタ選択回路12は、選択した補間フィルタを指定するフィルタ選択信号を周波数補間回路8−5に出力する。
探索回路21は、制御回路21−1、加算回路21−2、受信信号周波数シフト回路21−3、伝送路特性周波数シフト回路21−4、周波数補間回路21−5、除算回路21−6、および信号品質検出回路21−7から構成される。
制御回路21−1は、周波数の所定のシフト量を表すシフト量オフセットを生成し、生成したシフト量オフセットを加算回路21−2に出力する。制御回路21−1は、このシフト量オフセットを所定の幅ずつ更新し、信号品質検出回路21−7から供給された信号品質情報に基づいて最適シフト量オフセットを算出する。制御回路21−1は、最適シフト量オフセットを周波数シフト量生成回路11に出力する。
また、制御回路21−1は、最適シフト量オフセットを算出する過程で遅延広がり推定値を算出し、算出した遅延広がり推定値を周波数補間フィルタ選択回路12に出力する。
加算回路21−2は、周波数シフト量生成回路11により生成されたシフト量に対して、制御回路21−1から供給されたシフト量オフセットを加算することによってトライアルシフト量を生成する。このトライアルシフト量は、品質を検出する対象となる、伝送路の歪みの補償後のOFDM周波数領域信号を取得するために用いるシフト量となる。トライアルシフト量の生成は、制御回路21−1からシフト量オフセットが供給される毎に繰り返される。
加算回路21−2は、トライアルシフト量を受信信号周波数シフト回路21−3と伝送路特性周波数シフト回路21−4に出力する。
受信信号周波数シフト回路21−3は、伝送路歪み補償回路8の受信信号周波数シフト回路8−1と同様の処理を行い、伝送路特性周波数シフト回路21−4は、伝送路歪み補償回路8の伝送路特性周波数シフト回路8−4と同様の処理を行なう。ただし、処理に用いるシフト量は異なる。
すなわち、受信信号周波数シフト回路21−3は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号の周波数シフトを加算回路21−2により生成されたトライアルシフト量に従って行う。受信信号周波数シフト回路21−3は、周波数シフトを行うことによって得られたOFDM周波数領域信号を除算回路21−6に出力する。
伝送路特性周波数シフト回路21−4は、時間方向伝送路特性推定回路8−3により推定された伝送路特性の周波数シフトを加算回路21−2により生成されたトライアルシフト量に従って行う。伝送路特性周波数シフト回路21−4は、周波数シフトを行うことによって得られた伝送路特性を周波数補間回路21−5に出力する。
周波数補間回路21−5は、所定の帯域の補間フィルタを用いて周波数補間処理を行い、伝送路特性周波数シフト回路21−4から供給された伝送路特性から、各OFDMシンボルの位置における全サブキャリアの伝送路特性を推定する。周波数補間回路21−5は、全サブキャリアの伝送路特性を表す信号を除算回路21−6に出力する。
除算回路21−6は、受信信号周波数シフト回路21−3から供給されたOFDM周波数領域信号から、周波数補間回路21−5から供給された全てのサブキャリアの伝送路特性を表す信号の成分を除算し、伝送路による歪みの成分をOFDM周波数領域信号から除去する。
除算回路21−6は、歪みの成分を除去した周波数領域OFDM信号を信号品質検出回路21−7に出力する。以下、適宜、伝送路の歪みの成分を除去した周波数領域OFDM信号を伝送路歪み補償後信号ともいう。
信号品質検出回路21−7は、除算回路21−6から供給された伝送路歪み補償後信号に含まれるノイズの量を検出し、検出したノイズの量を表す情報を信号品質情報として制御回路21−1に出力する。
なお、伝送路歪み補償回路8の受信信号周波数シフト回路8−1と探索回路21の受信信号周波数シフト回路21−3は同じ処理を行う回路であり、1つの回路によってまとめて実現されるようにしてもよい。
また、伝送路歪み補償回路8の伝送路特性周波数シフト回路8−4と探索回路21の伝送路特性周波数シフト回路21−4は同じ処理を行う回路であり、1つの回路によってまとめて実現されるようにしてもよい。
さらに、伝送路歪み補償回路8の除算回路8−6と探索回路21の除算回路21−6は同じ処理を行う回路であり、1つの回路によってまとめて実現されるようにしてもよい。
探索回路21の周波数補間回路21−5は、伝送路歪み補償回路8の周波数補間回路8−5とまとめて1つの回路によって実現されるか、周波数補間回路8−5が備える複数の補間フィルタのうち、最大の帯域の補間フィルタが与えられた回路によって実現される。
図6は、信号品質検出回路21−7の構成例を示すブロック図である。
図6に示されるように、信号品質検出回路21−7は、硬判定回路21−7a、減算回路21−7b、2乗演算回路21−7c、キャリア方向平均化回路21−7d、および時間方向平均化回路21−7eから構成される。除算回路21−6から出力された伝送路歪み補償後信号は硬判定回路21−7aと減算回路21−7bに入力される。
硬判定回路21−7aは、PSKやQAMなどの変調方式に従って、伝送路歪み補償後信号を対象として硬判定を行う。硬判定回路21−7aは、判定結果である硬判定値を減算回路21−7bに出力する。
減算回路21−7bは、硬判定値と伝送路歪み補償後信号の値の差を2乗演算回路21−7cに出力する。硬判定値とOFDM周波数領域信号の差がノイズ量となる。
2乗演算回路21−7cは、減算回路21−7bにより算出されたノイズ量を2乗し、パワーに変換する。2乗演算回路21−7cは、2乗演算によって求められたノイズのパワーをキャリア方向平均化回路21−7dに出力する。
キャリア方向平均化回路21−7dは、2乗演算回路21−7cにより求められたパワーのキャリア方向の平均を取ることによって、その精度を向上させる。キャリア方向平均化回路21−7dは、パワーのキャリア方向の平均を時間方向平均化回路21−7eに出力する。
1つのトライアルシフト量を複数シンボルに渡って適用する場合、時間方向に平均を取ることも可能となる。この場合、時間方向平均化回路21−7eは、同じトライアルシフト量に基づいて得られた伝送路歪み補償後信号に含まれるノイズのパワーの時間方向の平均を算出し、算出した時間方向の平均を表す情報を信号品質情報として制御回路21−1に出力する。時間方向平均化回路21−7eに対しては、それまでの演算に用いられた情報を消すためのリセット信号が、トライアルシフト量が変更される毎に入力される。
ここで、最適シフト量オフセットと遅延広がり推定値の算出方法について説明する。
図7は、2波環境での最適シフト量オフセットと遅延広がり推定値の算出方法の概念を示す図である。
以上の説明においては、周波数補間回路21−5の補間フィルタは固定であり、この補間フィルタの帯域に合わせて信号をシフトさせることによって伝送路歪み補償後信号を生成するものとしたが、説明の便宜上、図7においては、補間フィルタの帯域をシフトさせて示している。図7の帯域Z1乃至Z3は、周波数補間回路21−5の補間フィルタの帯域をシフトさせて時間軸上に表したものである。BWは補間フィルタの帯域を表す。
図7のAは、シフト量オフセットに対する、信号品質情報により表されるノイズ量の変化を表す。横軸はシフト量オフセットを表し、縦軸はノイズ量を表す。上述したように、シフト量オフセットが更新される毎に伝送路歪み補償後信号のノイズ量が信号品質検出回路21−7により求められる。シフト量オフセット全範囲のノイズ量を一度に示すと図7のAに示されるようなグラフが得られる。
図7のAのグラフによって表されるノイズ量は、基本的に、伝送路の歪みによって生じたノイズの量と、伝送路上で加えられる熱雑音などのノイズの量を加算した量になる。後者のノイズは信号処理によっては除去できないノイズであるから、伝送路の歪みを正しく補償できた場合には全体のノイズ量は0に近くなり、検出できないパスが存在することなどによって伝送路の歪みを正しく補償できていない場合には全体のノイズ量は多くなる。
図7のBは、図4と同様に、パスPとパスQの2つのパスが存在する環境において推定された遅延プロファイルである。パスPとパスQのうち、パスPだけが検出可能とされている。
この場合、従来の周波数シフト量の決定方法によれば、遅延広がりは0として検出されるため、パスPの位置が補間フィルタの帯域の中心位置になるようなシフト量が生成される。検出できないパスQが実際には存在するため、このようにして決定されたシフト量を用いて得られた伝送路歪み補償後信号には、パスQが存在する分だけノイズは多くなる。
遅延プロファイルから推定できる遅延広がりの中心位置に対応するシフト量オフセットを基準(0)とし、その位置のノイズ量をNPWR0とする。図7の例においては、遅延プロファイルから推定できる遅延広がりは0であるから、パスPの位置がシフト量オフセット0の位置として設定されている。帯域Z1は、シフト量オフセットが0の場合、すなわち、パスPの位置を中心位置とする補間フィルタの帯域を表す。帯域Z1にはパスQの成分は含まれない。
制御回路21−1から出力されるシフト量オフセットが所定の幅ずつ更新されることによって、補間フィルタの帯域は、遅延プロファイルとの関係では図7に示されるように順次ずらしたものになる。
帯域Z2は、シフト量オフセットがbである場合に、そのbの位置を中心位置とする補間フィルタの帯域を表す。帯域Z3は、シフト量オフセットがfである場合に、そのfの位置を中心位置とする補間フィルタの帯域を表す。
シフト量オフセットがbからfまでの区間内の位置を中心位置とする補間フィルタの帯域にはパスQも常に含まれることになり、パスQの成分も含めて、伝送路の歪みを除去する処理が行われる。従って、この場合、図7のAのグラフに示されるように、伝送路の歪みが正しく補償されるためにノイズの量は少なくなる。
このようなノイズ量が信号品質検出回路21−7により検出された場合、制御回路21−1においては、ノイズ量が最小になる区間の左端のシフト量オフセットであるbと、右端のシフト量オフセットであるfを用いて、最適シフト量オフセットcが下式(1)に従って算出される。
また、遅延広がり推定値dが下式(2)に従って算出される。
算出された最適シフト量オフセットcは、制御回路21−1から周波数シフト量生成回路11に出力され、遅延広がり推定値dは、制御回路21−1から周波数補間フィルタ選択回路12に出力される。
このように、探索回路21においては、遅延プロファイルからでは検出できないパスQの位置をノイズの量に基づいて推定することができ、それに応じて周波数シフト量の設定や補間フィルタの選択などを行うことにより、伝送路の歪みを高い精度で補償することが可能になる。
シフト量オフセットb,fの探索についてさらに説明する。
図7のAに示されるグラフにおいてはノイズ量が直線で示されているが、実際には、伝送路での雑音、量子化や同期のジッタ、あるいは送信データに応じて、図8に示されるように、ノイズ量は変動のある形で検出される。そのため、単純に後優先と前優先の最小値探索を行うことによってはシフト量オフセットb,fを決定することはできない。
そこで、制御回路21−1においては、プラス方向の最小値探索とマイナス方向の最小値探索が順に行われ、シフト量オフセットf,bがそれぞれ決定される。
はじめに、プラス方向の最小値探索を行うことによってシフト量オフセットfを決定する処理について説明する。
図8の位置P
1は、シフト量オフセットfの探索を行うために設定されたスタート位置である。位置P
1を基準として、所定のステップ幅Δずつ、シフト量オフセットがプラス方向に更新される。これを式で表すと下式(3)のようになる。
f[n]は現在のシフト量オフセットを表し、f[n+1]は現在のシフト量オフセットを1回だけ更新した後のシフト量オフセットを表す。ステップ幅Δは時間に応じて変化させても良く、1度の探索の中で必ずしも一定でなければならないというものではない。
f[n]におけるノイズ量であるnpwr[n]が取得され、このnpwr[n]が下式(4)の条件を満たすようになるまでシフト量オフセットが更新される。所定のノイズ量がマージンとして設定される。
式(4)の条件を満足した場合、現在のシフト量オフセットf[n]の1つ前のシフト量オフセットであるf[n−1]が、シフト量オフセットfとして決定される。
図8においては、位置P5のシフト量オフセットにおいて式(4)の条件を満たすようになったことから、位置P4のシフト量オフセットがシフト量オフセットfとして決定されている。
次に、マイナス方向の最小値探索を行うことによってシフト量オフセットbを決定する処理について説明する。
シフト量オフセットbの探索のためのスタート位置はシフト量オフセットfとして決定された位置P
4となる。位置P
4を基準として、所定のステップ幅Δずつ、bの値がマイナス方向に更新される。これを式で表現すると下式(5)のようになる。
b[n]は現在のシフト量オフセットを表し、b[n+1]は現在のシフト量オフセットを1回だけ更新した後のシフト量オフセットを表す。
シフト量オフセットfの探索と同様に、b[n]におけるノイズ量であるnpwr[n]が取得され、下式(6)の条件を満たすようになるまでシフト量オフセットが更新される。
式(6)の条件を満足した場合、現在のシフト量オフセットb[n]の1つ前のシフト量オフセットであるb[n−1]が、シフト量オフセットbとして決定される。
図8においては、位置P2のシフト量オフセットにおいて式(6)の条件を満たすようになったことから、位置P3のシフト量オフセットがシフト量オフセットbとして決定されている。
このようにして決定されたシフト量オフセットb,fが、上式(1)による最適シフト量オフセットcの算出、式(2)による遅延広がり推定値dの算出に用いられる。
なお、上式(4)、(6)に含まれるマージンとして、異なる値がノイズ量に応じて設定されるようにしてもよい。通常、ノイズ量の絶対値が大きいところ程ばらつきも大きく、ノイズ量の絶対値が小さいところ程ばらつきが小さい。
このことを考慮してマージンを可変にすることで、ノイズ量の絶対値の大小に関わらず、一定の精度で、シフト量オフセットb,fの最適値を求めることが可能になる。すなわち、ノイズ量の絶対値が大きい位置には大きな値がマージンとして設定され、ノイズ量が小さい位置には小さな値がマージンとして設定されることになる。
次に、以上のような構成を有するOFDM受信機101の処理について説明する。以下の各処理は、適宜、他の処理と並行して、あるいは他の処理と前後して行われる。
はじめに、図9および図10のフローチャートを参照して、OFDM受信機101のOFDM復調処理について説明する。
ステップS1において、チューナ2は、受信アンテナ1において受信されたRF信号を周波数変換し、IF信号をA/D変換回路3に出力する。
ステップS2において、A/D変換回路3は、IF信号に対してA/D変換を施し、デジタルのIF信号を直交復調回路4に出力する。
ステップS3において、直交復調回路4は直交復調を行い、時間領域OFDM信号を搬送波生成回路5、FFT回路6、FFT区間制御回路7、および遅延プロファイル推定回路10に出力する。
ステップS4において、FFT回路6は、FFT区間制御回路7から供給されるFFTトリガーパルスに基づいてFFT区間を設定し、FFT演算を行う。FFT回路6は、FFT演算を行うことによって得られたOFDM周波数領域信号を受信信号周波数シフト回路8−1、SP抽出回路8−2、および受信信号周波数シフト回路21−3に出力する。
ステップS5において、SP抽出回路8−2は、周波数領域OFDM信号からSP信号を抽出し、SP信号の配置位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。SP抽出回路8−2は、推定した伝送路特性を表す信号を時間方向伝送路特性推定回路8−3に出力する。
ステップS6において、時間方向伝送路特性推定回路8−3は、3サブキャリア毎の時間方向の伝送路特性を推定し、推定した伝送路特性を伝送路特性周波数シフト回路8−4、遅延プロファイル推定回路10、および伝送路特性周波数シフト回路21−4に出力する。
ステップS7において、遅延プロファイル推定回路10は、遅延プロファイルを推定し、遅延プロファイルをFFT区間制御回路7、周波数シフト量生成回路11、および周波数補間フィルタ選択回路12に出力する。
ステップS8において、FFT区間制御回路7は、直交復調回路4から供給された時間領域OFDM信号と、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいてFFT区間を決定し、決定したFFT区間を指定するFFTトリガーパルスをFFT回路6に出力する。
ステップS9において、周波数シフト量生成回路11は、遅延プロファイルと、探索回路21の制御回路21−1から供給された最適シフト量オフセットに基づいてシフト量を生成し、生成したシフト量を表す信号を受信信号周波数シフト回路8−1、伝送路特性周波数シフト回路8−4、および加算回路21−2に出力する。周波数シフト量生成回路11に対しては、図11の処理が行われることによって算出された最適シフト量オフセットが制御回路21−1から供給される。
ステップS10において、周波数補間フィルタ選択回路12は、遅延プロファイルと、制御回路21−1から供給された遅延広がり推定値に基づいて補間フィルタを選択し、フィルタ選択信号を周波数補間回路8−5に出力する。周波数補間フィルタ選択回路12に対しては、図11の処理が行われることによって算出された遅延広がり推定値が制御回路21−1から供給される。
ステップS11において、受信信号周波数シフト回路8−1は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号の周波数シフトを行い、周波数シフトを行うことによって得られたOFDM周波数領域信号を除算回路8−6に出力する。
ステップS12において、伝送路特性周波数シフト回路8−4は、時間方向伝送路特性推定回路8−3により推定された3サブキャリア毎の伝送路特性の周波数シフトを行い、周波数シフトを行うことによって得られた伝送路特性を周波数補間回路8−5に出力する。
ステップS13において、周波数補間回路8−5は、周波数補間フィルタ選択回路12により選択された補間フィルタを用いて周波数補間処理を行うことによって、周波数方向の各OFDMシンボルの位置におけるサブキャリアの伝送路特性を推定する。周波数補間回路8−5は、各OFDMシンボルの位置における全サブキャリアの伝送路特性を表す信号を除算回路8−6に出力する。
ステップS14において、除算回路8−6は、受信信号周波数シフト回路8−1から供給されたOFDM周波数領域信号から、伝送路による歪みの成分を除去する。除算回路8−6は、歪みの成分を除去した周波数領域OFDM信号を誤り訂正回路9に出力する。
ステップS15において、誤り訂正回路9は、デインタリーブ処理、デンパンクチャ、ビタビ復号、拡散信号除去、RS復号などの各種の処理を施し、復号データを後段の回路に出力する。
以上の処理が、信号の受信を行っている間、OFDM受信機101により繰り返される。
次に、図11のフローチャートを参照して、最適シフト量オフセットと遅延広がり推定値を算出する制御回路21−1の処理について説明する。
OFDM受信機101においては、信号の受信が行われている間、常時、図9、図10の処理と並行して図11の処理が行われる。
図11のステップS22乃至S29がシフト量オフセットfを探索する処理となり、ステップS30乃至S37が、シフト量オフセットbを探索する処理となる。シフト量オフセットf,bが決定された後、最適シフト量オフセットと遅延広がり推定値が算出される。
ステップS21において、制御回路21−1は、シフト量オフセットのステップ幅Δと、マージンを設定する。
ステップS22において、制御回路21−1は、シフト量オフセットfを探索するためのスタート位置を設定する。
ステップS23において、制御回路21−1は、現在のシフト量オフセットをトライ値f[n]として設定する。
ステップS24において、制御回路21−1は信号品質情報取得処理を行う。この処理により、トライ値f[n]におけるノイズ量であるnpwr[n]が取得される。信号品質情報取得処理については図12のフローチャートを参照して後述する。
ステップS25において、制御回路21−1は、これまでに取得したnpwr[0],npwr[1],npwr[2],・・・,npwr[n−1]のうちの最小値にマージンを加えた量が、npwr[n]未満であるか否か、すなわち、上式(4)の条件を満たしているか否かを判定する。
上式(4)の条件を満たしていないとステップS25において判定した場合、ステップS26において、制御回路21−1は、npwr[n]が、npwr[0],npwr[1],npwr[2],・・・,npwr[n−1]のうちの最小値以下であるか否かを判定する。
npwr[n]が、npwr[0],npwr[1],npwr[2],・・・,npwr[n−1]のうちの最小値以下であるとステップS26において判定した場合、ステップS27において、制御回路21−1は、新たな最小値としてnpwr[n]を設定する。
npwr[n]が、npwr[0],npwr[1],npwr[2],・・・,npwr[n−1]のうちの最小値以下ではないとステップS26において判定された場合、ステップS27の処理はスキップされる。
ステップS28において、制御回路21−1はnの値を1だけ加算する。その後、ステップS23以降の処理が繰り返される。
一方、上式(4)の条件を満たしているとステップS25において判定した場合、ステップS29において、制御回路21−1は、1つ前のトライ値であるf[n−1]をシフト量オフセットfとして決定する。
ステップS30において、制御回路21−1はnの値をリセットする。
ステップS31において、制御回路21−1は、シフト量オフセットfとして決定された位置を、シフト量オフセットbの探索のためのスタート位置として設定するとともに、トライ値b[n]を設定する。
ステップS32において、制御回路21−1は信号品質情報取得処理を行う。この処理により、トライ値b[n]におけるノイズ量であるnpwr[n]が取得される。
ステップS33において、制御回路21−1は、これまでに取得したnpwr[0],npwr[1],npwr[2],・・・,npwr[n−1]のうちの最小値にマージンを加えた量が、npwr[n]未満であるか否か、すなわち、上式(6)の条件を満たしているか否かを判定する。
上式(6)の条件を満たしていないとステップS33において判定した場合、ステップS34において、制御回路21−1は、npwr[n]が、npwr[0],npwr[1],npwr[2],・・・,npwr[n−1]のうちの最小値以下であるか否かを判定する。
npwr[n]が、npwr[0],npwr[1],npwr[2],・・・,npwr[n−1]のうちの最小値以下であるとステップS34において判定した場合、ステップS35において、制御回路21−1は、新たな最小値としてnpwr[n]を設定する。
npwr[n]が、npwr[0],npwr[1],npwr[2],・・・,npwr[n−1]のうちの最小値以下ではないとステップS34において判定された場合、ステップS35の処理はスキップされる。
ステップS36において、制御回路21−1はnの値を1だけ加算する。その後、ステップS31以降の処理が繰り返される。
一方、上式(6)の条件を満たしているとステップS33において判定した場合、ステップS37において、制御回路21−1は、1つ前のトライ値であるb[n−1]をシフト量オフセットbとして決定する。
ステップS38において、制御回路21−1は、シフト量オフセットb,fを用いて上式(1)の計算を行うことによって最適シフト量オフセットcを算出し、上式(2)の計算を行うことによって遅延広がり推定値dを算出する。制御回路21−1は、最適シフト量オフセットcを周波数シフト量生成回路11に出力し、遅延広がり推定値dを周波数補間フィルタ選択回路12に出力する。
その後、ステップS21に戻り、以上の処理が繰り返される。
次に、図12のフローチャートを参照して、図11のステップS24、またはステップS32において行われる信号品質情報取得処理について説明する。
ステップS51において、加算回路21−2は、周波数シフト量生成回路11により生成されたシフト量に対して、制御回路21−1から供給されたシフト量オフセット(図11のステップS23、またはステップS31において設定されたトライ値)を加算することによってトライアルシフト量を生成する。加算回路21−2は、トライアルシフト量を受信信号周波数シフト回路21−3と伝送路特性周波数シフト回路21−4に出力する。
ステップS52において、受信信号周波数シフト回路21−3は、FFT回路6から供給されたOFDM周波数領域信号の周波数シフトをトライアルシフト量に従って行い、周波数シフトを行うことによって得られたOFDM周波数領域信号を除算回路21−6に出力する。
ステップS53において、伝送路特性周波数シフト回路21−4は、時間方向伝送路特性推定回路8−3により推定された伝送路特性の周波数シフトをトライアルシフト量に従って行い、周波数シフトを行うことによって得られた伝送路特性を周波数補間回路21−5に出力する。
ステップS54において、周波数補間回路21−5は、周波数補間処理を行うことによって各OFDMシンボルの位置における全サブキャリアの伝送路特性を推定し、推定した全サブキャリアの伝送路特性を表す信号を除算回路21−6に出力する。
ステップS55において、除算回路21−6は、受信信号周波数シフト回路21−3から供給されたOFDM周波数領域信号に含まれる、伝送路による歪みの成分を除去し、伝送路歪み補償後信号を信号品質検出回路21−7に出力する。
ステップS56において、信号品質検出回路21−7は、除算回路21−6から供給された周波数領域OFDM信号のノイズ量を検出し、検出したノイズ量を表す信号品質情報を制御回路21−1に出力する。
ステップS57において、制御回路21−1は、信号品質検出回路21−7から供給された信号品質情報を取得する。
その後、図11のステップS24、またはステップS32に戻り、それ以降の処理が行われる。
以上の処理により、遅延プロファイルからでは推定できないパスによる歪みをも補償することが可能になる。すなわち、伝送路の歪みを高い精度で補償することが可能になる。
また、以上の処理が常時行われることにより、遅延プロファイルが逐次変動するような環境においても、その変動に追従して伝送路の歪みを補償することが可能になる。
さらに、伝送路の歪みの補償を行う伝送路歪み補償回路8と並列に設けられる探索回路21において伝送路特性の推定を行い、推定結果を伝送路歪み補償回路8の処理対象となる信号に反映させるようにしたため、データの破綻が起こることもない。
図13は、本発明の一実施形態に係る他のOFDM受信機の構成例を示すブロック図である。図5のOFDM受信機101の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。
図13のOFDM受信機102は、伝送路品質情報に基づいて最適FFTトリガーパルス位置が制御回路21−1により算出され、FFT区間制御回路7に供給されるようになされている点が、図5のOFDM受信機101と異なる。最適FFTトリガーパルス位置は、FFT区間の最適な開始位置を決定するのに用いられる。
最適FFTトリガーパルス位置を取得したFFT区間制御回路7からFFT回路6に対しては、最適FFTトリガーパルス位置と、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいて決定されたFFT区間の開始位置を表すFFTトリガーパルスが出力される。最適FFTトリガーパルス位置が最早到来波の位置を表す場合、その位置をFFT区間の開始位置とするようなFFTトリガーパルスが出力される。
ここで、最適FFTトリガーパルス位置の算出方法について説明する。
図14は、3波環境での最適FFTトリガーパルス位置の算出方法の概念を示す図である。
図14の帯域Z11乃至Z13は、周波数補間回路21−5の補間フィルタの帯域をシフトさせて時間軸上に表したものである。BWは補間フィルタの帯域を表す。
図14のAは、シフト量オフセットに対する、信号品質情報により表されるノイズ量の変化を表す。横軸はシフト量オフセットを表し、縦軸はノイズ量を表す。
図14のBは、パスP、パスQ、パスRの3つのパスが存在する環境において推定された遅延プロファイルである。パスQとパスRは遅延プロファイルから検出可能とされ、最早到来波であるパスPは検出不可とされている。
この場合、従来の周波数シフト量の決定方法によれば、遅延広がりはパスQとパスRの間隔の分だけ検出されるため、パスQとパスRの中心位置が補間フィルタの帯域の中心位置になるようなシフト量が生成される。図14の帯域Z11は、パスQとパスRの中心位置と同じ位置を中心位置とする補間フィルタの帯域を表す。
また、従来のFFTトリガーパルスの生成方法によれば、FFTトリガーパルスは、図14の矢印A1に示されるように、検出可能な最早到来波であるパスQの位置に合わせて生成される。
図13の制御回路21−1においては、図5の制御回路21−1により行われるのと同様にしてシフト量オフセットf,bが決定される。
図14の帯域Z12は、シフト量オフセットがfである場合に、そのfの位置を中心位置とする補間フィルタの帯域を表す。帯域Z13は、シフト量オフセットがbである場合に、そのbの位置を中心位置とする補間フィルタの帯域を表す。
シフト量オフセットf,bはノイズ量が最も少ない区間の両端の位置を表すから、シフト量オフセットがbからfまでの区間内の位置を中心位置とする補間フィルタの帯域にはパスPも常に含まれる。
シフト量オフセットf,bのうちの少なくともシフト量オフセットfが決定された後、制御回路21−1においては、下式(7)に従って最適FFTトリガーパルス位置tが算出される。
最適FFTトリガーパルス位置tは、遅延プロファイルから検出できるパスQとパスRの中心位置を基準として表される、最適なFFTトリガーパルスの位置の意味を持っている。
すなわち、遅延プロファイルから検出できる遅延広がりの中心位置を基準として、ノイズ量が最小となるシフト量オフセットの区間が検出されるとともに、検出された区間内で最大となるシフト量オフセットfと、補間フィルタの帯域BWに基づいて、実際の最早到来波であるパスPの位置が推定され、式(2)に従って算出された遅延広がり推定値dがGI長より小さい場合、推定された位置をFFT区間の開始位置とするように、最適FFTトリガーパルス位置tが設定される。図14においては、矢印A2で示される位置はパスPの位置と同じ位置であり、この矢印A2で示される位置が、最適FFTトリガーパルス位置tとして算出されている。
このようにして算出された最適FFTトリガーパルス位置tは制御回路21−1からFFT区間制御回路7に出力され、FFT区間制御回路7において、最適FFTトリガーパルス位置tと、遅延プロファイル推定回路10により推定された遅延プロファイルに基づいてFFT区間の開始位置が決定される。
ここで、図13のOFDM受信機102の処理について説明する。
OFDM受信機102の処理は、基本的に、最適FFTトリガーパルス位置の算出が行われる点と、FFT区間の決定が最適FFTトリガーパルス位置を考慮して行われる点を除いて、OFDM受信機101の処理と同様の処理である。
すなわち、図9、図10の処理と同様の処理がOFDM受信機102により行われる。図9のステップS8においては、FFT区間を制御するために、最適FFTトリガーパルス位置が考慮される。
図15のフローチャートを参照して、最適シフト量オフセットと遅延広がり推定値に加えて、最適FFTトリガーパルス位置を算出する制御回路21−1の処理について説明する。
図15のステップS71乃至S88は、図11のステップS21乃至S38と同様の処理である。すなわち、ステップS72乃至ステップS79においてシフト量オフセットfの探索が行われ、ステップS80乃至ステップS87においてシフト量オフセットbの探索が行われる。シフト量オフセットf,bが求められた後、ステップS88において、最適シフト量オフセットcと遅延広がり推定値dが算出される。
ステップS89において、制御回路21−1は、シフト量オフセットfと補間フィルタの帯域BWを用いて上式(7)の計算を行うことによって最適FFTトリガーパルス位置tを算出する。制御回路21−1は、最適FFTトリガーパルス位置tをFFT区間制御回路7に出力する。
その後、ステップS71に戻り、以上の処理が繰り返される。
以上の処理により、遅延プロファイルからでは検出できない最早到来波の位置を推定することができ、その位置を考慮してFFT区間を設定することが可能になる。これにより、シンボル間干渉による信号の劣化を抑圧することができる。
以上においては、硬判定を行うことによってノイズ量を検出するものとしたが、伝送路歪み補償後信号の雑音成分や、誤り訂正数により算出できるBER(Bit Error Rate)が信号品質情報として生成されるようにしてもよい。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされ
図16は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53は、バス54により相互に接続されている。
バス54には、さらに、入出力インターフェース55が接続されている。入出力インターフェース55には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部56、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部57、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部58、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部59、光ディスクや半導体メモリなどのリムーバブルメディア61を駆動するドライブ60が接続されている。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU51が、例えば、記憶部58に記憶されているプログラムを入出力インタフェース55及びバス54を介してRAM53にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
CPU51が実行するプログラムは、例えばリムーバブルメディア61に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供され、記憶部58にインストールされる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
101,102 OFDM受信機, 1 受信アンテナ, 2 チューナ, 3 A/D変換回路, 4 直交復調回路, 5 搬送波生成回路, 6 FFT回路, 7 FFT区間制御回路, 8 伝送路歪み補償回路, 8−1 受信信号周波数シフト回路, 8−2 SP抽出回路, 8−3 時間方向伝送路特性推定回路, 8−4 伝送路特性周波数シフト回路, 8−5 周波数補間回路, 8−6 除算回路, 9 誤り訂正回路, 10 遅延プロファイル推定回路, 11 周波数シフト量生成回路, 12 周波数補間フィルタ選択回路, 21 探索回路, 21−1 制御回路, 21−2 加算回路, 21−3 受信信号周波数シフト回路, 21−4 伝送路特性周波数シフト回路, 21−5 周波数補間回路, 21−6 除算回路, 21−7 信号品質検出回路