JP2009110379A - パターン予測装置、パターン予測方法及びパターン予測プログラム - Google Patents

パターン予測装置、パターン予測方法及びパターン予測プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】気象パターンなどのパターン予測において、予測精度を向上させる。
【解決手段】時空間解析部120により、自己相関係数を算出するとともに、
動き推定解析部130により、オプティカルフロー法を用いて画素毎の動きベクトルを算出して渦度を求める。これにより、時系列画像データが渦、移流、停滞のいずれのパターンであるかを分類することができるので、2つの予測モデルを適切に選択し、予測精度の向上を可能とする。また、自己回帰予測モデル適用部150が、ARMAモデルを適用する際に、自己相関係数に基づいて次数を決定することで、停滞性パターンの予測精度の向上を可能とする。さらに、移流系予測モデル適用部160が、渦度に基づいてナビエ・ストークス方程式の粘性係数を決定することにより、渦パターンの予測精度の向上を可能とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の時系列画像データに基づいてパターンを予測する技術に関する。
カメラや気象レーダ、各種センサにより観測される時空間データに基づいた近未来の変化の予測は、生活環境や社会環境における重要な先見情報である。特に、自然環境に関する時空間データは非定常性を呈することが多く、安定した予測精度を確保することは容易でない。限られた事前情報をどのように最大限活用するかが課題となっている。
気象レーダパターン(画像)においては、停滞性パターンから移流性パターンまで幅広く観測される。しかし、2次元の気象レーダの場合は、本来3次元である気象現象の断面情報に依存せざるを得ないため、予測モデルの設計には多くの工夫が必要である。現業の気象予測において、気象レーダに基づいた方法は、パターンマッチングと線形外挿入法に基づいた方法にとどまっているため、渦を伴った低気圧性パターンに限らず、停滞性パターンでの的中率低下が指摘されている。停滞性パターンは、複数の勢力のある対流現象の集合体であるが、画像上、パターンの表面には細かい発達と衰退の動きが検出される。そのため、これまでの予測法によれば、対流の動きをそのままパターン全体の移動予測に適用するアルゴリズムであったため、的中率が下がってしまう問題があった。移流性で渦パターンの場合は、線形外挿入法により、パターンは分割されて時間と共にばらばらになってしまう問題があった(非特許文献1参照)。
一方、経済予測の分野では、AR(Autoregressive:自己回帰)モデルに基づいたさまざまな1次元予測方法が考案され、短期および長期の株価の変動が予測計算されている。しかし、時系列画像の場合でのARモデルあるいは、ARMA(AR-MovingAverage:自己回帰平均)モデルの適用はほとんどなく、パラメータの1つであるモデルの当てはめに用いる次数、即ち、過去の時系列データ数(画像数)の決定方法が必要である。多くの場合、忘却係数により現在に近いデータを過去データよりも重み付けを高くするなどの処置がとられるが、画像の場合、時間方向に加えて、画像1枚ごとの空間分布(画素の持つ強度、例えば輝度)の影響を受けるため、別の処理が必要である。あるいは最小二乗法による方法が一般的である(非特許文献2参照)。
しかし、この手法を時系列画像パターンに適用した場合、時間と空間に関して、全体の画素数が膨大になることから、かなりぼやけた画像が予測されてしまう問題がある。
また、流体力学の分野では、ナビエ・ストークス方程式により、初期の速度場、圧力場から解析領域内でのデータの時間発展問題が数多く解かれている(非特許文献3参照)。しかし、画像パターンへのナビエ・ストークス方程式の適用はほとんどない。ナビエ・ストークス方程式中の粘性係数は渦構造の時間発展の影響を司るため、その決定方法が必要である。
流体現象において、流れに関する情報と伝搬の役割を記述した移流方程式がよく用いられている。ある速度のもとで変数を画像輝度値とした場合、画像輝度は画像内の速度に応じた時間発展が得られる。これを気象レーダパターンに適用した場合、上述したように、停滞性パターンにおける対流現象の影響を受けるため、パターンは時間とともに移流性パターンと同様の予測結果を生みだしてしまう問題があった。
なお、関連する技術情報として以下のものがある。
T.M. Hamill、外1名、"A Short-Term Cloud Forecast Scheme Using Cross Correlations"、Weather and Forecasting, 1993, vol.8, no.4, p.404-411 日野幹雄著、"スペクトル解析"、朝倉書店、1977 荒川忠一著、"数値流体工学"、東京大学出版会、1994 J.L. Barron、外2名、"Performance of Optical Flow Techniques"、International Journal of Computer Vision, 1994, vol.12, no.1, p.43-77
上述のように、対流の動きをそのままパターン全体の移動予測に適用する従来の方法では、非定常な時空間パターンを適切に予測できないという問題があった。また、気象レーダパターンにおいては、停滞性パターンから移流性パターンまで幅広く観測されるが、停滞性パターンの的中率が低下しているという問題があった。つまり、パターンを分類し、適切な予測モデルを選択する必要がある。
さらに、経済予測の分野で用いられているARMAモデルを時系列画像パターンに適用する場合、かなりぼやけた画像が予測されてしまう問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、気象レーダパターンなどのパターン予測において、予測精度を向上することにある。
第1の本発明に係るパターン予測装置は、時系列画像の入力を受け付ける画像入力手段と、時系列画像を蓄積する画像蓄積手段と、画像蓄積手段から時系列画像を読み出し、画素毎の動きベクトルをオプティカルフロー法により算出するとともに、当該動きベクトルを用いて渦度を算出する動き解析手段と、画像蓄積手段から時系列画像を読み出し、自己相関係数を算出する相関係数算出手段と、渦度が所定の値以上のときには移流系予測モデルを選択し、渦度が所定の値より小さく自己相関係数が所定の値よりも小さいときには移流系予測モデルを選択し、渦度が所定の値より小さく自己相関係数が所定の値以上のときには自己回帰予測モデルを選択する選択手段と、選択手段が自己回帰予測モデルを選択したときには、自己相関関数に基づいて決定した次数を自己回帰平均モデルに適用してパターン予測計算を行う第1予測計算手段と、選択手段が移流系予測モデルを選択したときには、移流方程式と渦度に基づいて決定した粘性係数を用いたナビエ・ストークス方程式とを適用してパターン予測計算を行う第2予測計算手段と、を有することを特徴とする。
本発明にあっては、時系列画像に基づいて、動き解析手段により動きベクトル、渦度を算出するとともに、相関係数算出手段により自己相関係数を算出することにより、渦度および自己相関係数に基づき、時系列画像を渦、移流、停滞の3つのパターンに分類することができるので、適切な予測モデルを選択することが可能となる。また、自己回帰平均モデルを適用する第1予測計算手段では、自己相関係数に基づいて次数を決定することにより、予測精度の向上を可能とする。さらに、第2予測計算手段が適用するナビエ・ストークス方程式の粘性係数を渦度に基づいて決定することにより、予測精度の向上を可能とする。
上記パターン予測装置において、第2予測計算手段は、画像蓄積手段から3枚の時系列画像を読み出し、その内2枚の時系列画像を用いて所定の範囲でパラメータを変化させてパターンの予測計算するとともに、予測したパターンと残りの1枚の時系列画像との類似度を変化させたパラメータ毎に算出し、当該類似度が最も高いときのパラメータを採用することを特徴とする。
本発明にあっては、3枚の時系列画像の内の2枚を用いてパターンの予測計算を行った結果と、残りの1枚の画像との類似点を算出し、その類似度が最も高くなるパラメータを採用することにより、予測精度の向上を可能とする。
上記パターン予測装置において、相関係数算出手段は、読み出した時系列画像について空間周波数分布を求め、当該空間周波数分布について自己相関係数を算出することを特徴とする。
本発明にあっては、時系列画像について空間周波数分布を求めて自己相関係数を算出することにより、わずかに移流し、テクスチャが類似したパターンをより正確に解析することができる。
第2の本発明に係るパターン予測方法は、画像入力手段により、時系列画像の入力を受け付けるステップと、画像蓄積手段により、時系列画像を蓄積するステップと、動き解析手段により、画像蓄積手段から時系列画像を読み出し、画素毎の動きベクトルをオプティカルフロー法により算出するとともに、当該動きベクトルを用いて渦度を算出するステップと、相関係数算出手段により、画像蓄積手段から時系列画像を読み出し、自己相関係数を算出するステップと、選択手段により、渦度が所定の値以上のときには移流系予測モデルを選択し、渦度が所定の値より小さく自己相関係数が所定の値よりも小さいときには移流系予測モデルを選択し、渦度が所定の値より小さく自己相関係数が所定の値以上のときには自己回帰予測モデルを選択するステップと、第1予測計算手段により、選択手段が自己回帰予測モデルを選択したときには、自己相関関数に基づいて決定した次数を自己回帰平均モデルに適用してパターン予測計算を行うステップと、第2予測計算手段により、選択手段が移流系予測モデルを選択したときには、移流方程式と渦度に基づいて決定した粘性係数を用いたナビエ・ストークス方程式とを適用してパターン予測計算を行うステップと、を有することを特徴とする。
上記パターン予測方法において、第2予測計算手段により、画像蓄積手段から3枚の時系列画像を読み出し、その内2枚の時系列画像を用いて所定の範囲でパラメータを変化させてパターンの予測計算するとともに、予測したパターンと残りの1枚の時系列画像との類似度を変化させたパラメータ毎に算出し、当該類似度が最も高いときのパラメータを採用するステップを有することを特徴とする。
上記パターン予測方法において、相関係数算出手段により、読み出した時系列画像について空間周波数分布を求め、当該空間周波数分布について自己相関係数を算出するステップを有することを特徴とする。
第3の本発明に係るパターン予測プログラムは、上記パターン予測方法における各ステップをコンピュータによって実行させることを特徴とする。
本発明によれば、気象レーダパターンなどのパターン予測において、予測精度を向上することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本実施の形態におけるパターン予測装置の構成を示すブロック図である。同図に示すパターン予測装置は、入力部100、蓄積部110、時空間解析部120、動き推定解析部130、予測モデル選択部140、自己回帰予測モデル適用部150、移流系予測モデル適用部160、終了判定部170および表示部180を有する。パターン予測装置を、演算処理装置、記憶装置、メモリ等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムはパターン予測装置が備える記憶装置に記憶されており、CD−ROM、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。以下、各部の詳細について説明する。
入力部100は、カメラ、センサ、気象レーダなどから時系列の画像データを入力し、その時系列画像データを蓄積部110に蓄積させる。
時空間解析部120は、蓄積部110から時系列画像データを読み出し、自己相関係数を算出し、パターン予測装置が備えた記憶装置に記憶させる。時系列画像データから自己相関係数を求めることで、入力した時系列画像が非定常性か定常性かの度合いを知ることができる。
動き推定解析部130は、蓄積部110から時系列画像データを読み出し、オプティカルフロー法により画素毎の動きベクトルを算出し、記憶装置に記憶させる。また、算出した動きベクトルを用いて渦度を求めて記憶装置に記憶させる。
予測モデル選択部140は、時系列画像データの画像特徴量である渦度および自己相関係数を参照してパターン予測計算に適用する予測モデルを選択する。渦度が小さく自己相関係数が大きい場合には自己回帰予測モデルを選択し、渦度が大きい場合、あるいは、渦度が小さく時空間解析部120が算出した自己相関係数が小さい場合には、移流系予測モデルを選択する。
予測モデル選択部140により、自己回帰予測モデルが選択された場合、自己回帰予測モデル適用部150は、自己回帰平均(ARMA)モデルを適用し、過去の複数枚の時系列画像データを用いてパターンの予測計算を行う。このとき用いる時系列画像データの枚数は、自己相関係数に基づいて決定する。自己相関係数が大きい場合は、定常性であると考えられるので、多く時系列画像データを用い、自己相関係数が小さいきい場合は、非定常性であると考えられるので、少ない時系列画像データを用いる。
予測モデル選択部140により、移流系予測モデルが選択された場合、移流系予測モデル適用部160は、3枚の時系列画像データを読み出して予測計算の時間幅を最適化し、移流方程式を適用するとともに、渦度の度合いに基づいて粘性係数を決定し、ナビエ・ストークス方程式を適用してパターンの予測計算を行う。
所定の予測計算が行われたと終了判定部170が判断したときには、いずれかの予測モデルを適用して得られたパターンを表示部180で表示する。
まず、時空間解析部120について説明する。時空間解析部120は、時系列画像データに対して、その統計的な性質を解析するため、3次元自己相関係数を計算する。自己相関係数は、ある時間のある位置を基準としたとき、時間と位置が離れるに従って、どのくらい類似度が変化するのかを示す。即ち、定常性の場合、変化は緩やかで、相関係数は最大値である1.0近くになるが、非定常性の場合、著しく変化するため、わずかな時間と位置の違いにより0.5よりも小さい値になる。
図2に、時系列画像データから得られる自己相関係数を示す。時間と画像水平方向、時間と画像垂直方向、画像水平方向と画像垂直方向について、相関係数が大きいほど白色に、小さいほど黒色に表示している。
図3は、時系列画像データから得られる空間周波数の変化を示す図である。時系列画像データそれぞれの画像についてフーリエ変換により空間周波数分布を求める。そして、この空間周波数分布を表した画像について自己相関係数を計算する。これにより、画像パターンの位置がずれたとしてもテクスチャが類似する場合には、相関係数の下がり方が緩やかになる。
テクスチャが類似していても、気象パターンのように、空間的にわずかに移流している場合がある。このような場合、時間領域だけの解析ではテクスチャが類似しているという重要な特徴を見逃す可能性があるので、これを防ぐために、空間周波数解析が必要となる。
次に、動き推定解析部130における動きベクトルの算出について説明する。動き推定解析部130では、空間的局所最適化問題の枠組みで、2枚の画像データから画素単位に動きベクトル(オプティカルフロー)を計算する。時系列的に連続した2枚の画像間の輝度変動が一定という最も簡単な場合について述べる。次式(1)に示すように、1枚の画像中、10×10画素程度の部分的な領域において、輝度変動が一定という条件が満たされることを拘束条件として、画像上のある画素(i,j)の動きベクトルの成分を求める。
ここで、I,I,Iは、画像輝度Iについて、水平方向、垂直方向、時間方向についての偏微分値である。最小二乗法の枠組みにおいて、式(1)が最小となるための必要条件は、
で与えられる。故に、1画素づつ下記の計算を行うことで、画像すべての画素におけるオプティカルフローを求めることができる。
また、動き推定解析部130は、算出した動きベクトルを用いて渦度を求める。渦度の絶対値は次式(2)で定義される。
次に、予測モデル選択部140の動作について説明する。図4は、予測モデル選択部140の処理の流れを示すフローチャートである。まず、予測モデル選択部140は、動き推定解析部130が算出した渦度を読み出す(S401)。
気象パターンにおいて、停滞性パターンと移流性パターンの相違については幾つかの特徴の違いがあり、渦度の相違が最も顕著である。台風、ハリケーン、トルネードは回転運動が並進運動を伴って移動する最もわかりやすい事例である。したがって、渦度が一定以上に大きいときには(S402)、渦パターンと判断し、移流系予測モデルを選択する。
一方、渦度が小さいときには(S403)、停滞性パターンであるか移流パターンであるかの違いを見出す必要があるので、時空間解析部120で算出した相関係数を利用する(S404)。パターン全体の移動が少ないとき場合は相関係数が大きくなるので、相関係数が一定以上で大きいときには(S405)、停滞パターンと判断し、自己回帰予測モデルを選択する。一方、移流性パターンで並進運動が顕著な場合は相関係数が小さくなるので、相関係数が小さいときには(S406)、移流性パターンと判断し、移流系予測モデルを選択する。
なお、本パターン予測装置では、渦度の閾値は0.5、相関係数の閾値は0.3を用いる。
次に、自己回帰予測モデル適用部150について説明する。自己回帰予測モデル適用部150は、ARMAモデルを適用し、過去の複数枚の時系列画像データを用いてパターンの予測計算を行う。このとき、モデルの当てはめに用いる次数、即ち、何枚の時系列画像データを用いるのかが重要となる。これまで、自己回帰予測モデルにおける最適な次数の推定方法には、よく知られているAIC(赤池情報基準)が用いられている。しかし、AICでは必ずしも最小値を出力しなかったり、最小値の場合が最適とならない場合がある。特に、膨大な画素数からなり、非定常性でもある時系列画像データに関しては別の方法が必要である。
そこで、本パターン予想装置では、非定常性信号の解析でよく用いられている自己相関係数を適用し、図5に示すように、その係数値を1.0を最大値としたときに、最大値に近いほど次数を上げている。係数値が1.0に近いほど、定常性もしくは周期性が高い。一方、係数値が低いほど、非定常もしくはランダムであると考えられる。過去のデータが定常性であれば、過去データへの依存性が高く、逆に、非定常性とは、過去の情報量は未来とほとんど無関係であることを意味する。
図6(a)は、次数を3と固定した場合に予測計算したパターンを示す。このとき予測されるパターンはほとんど線形な動きしか反映していない。一方、図6(b)は、自己相関係数に基づいて次数を決定した場合に予測計算したパターンである。同図では、過去のパターンからのうねるような特徴が反映されていることがわかる。
続いて、1次元の場合のARMAモデルについて述べる。ここでは、ある観測されたデータがあり、ある時点までのデータから一つ先のデータを予測するためには、過去の時系列データに依存する必要がある。ただし、過去のデータの各点に対しての依存度は重み付け係数として表現される。これは、データの分布により異なるものである。真の値にノイズが何らか加わったものが観測データであると考えることが一般的である。
これらのことから、AR過程においては、過去の時系列データへの重み付けの線形和モデルであり、MA過程はノイズの時系列変化の重み付けされた線形和モデルとされる。ARMAとは、2つの過程を考慮したものである。
過去の時系列データに対して、ARMAで近似表現することから、最小二乗法による係数の推定法が一般的である。しかし、外れ値の存在により、係数の当てはめ精度が大きく低下することがあるので、ここではロバスト推定の考え方を適用する。
ある時系列データ,y(1),y(2),・・・,y(n)があったとする。一つ先の値は、ARMAモデルによれば、次式(3)のように近似表現される。式(3)の第1項は、係数aとしたときに、時系列データy(k)の線形和であり、第2項は、ノイズε(l)に関して、係数bとした線形和である。
以下、式(3)の未知数推定法について述べる。ここで、式(3)の未知数推定法についてはさまざまな数値解析法があるが、まず、最小二乗法の一つであるGMRES(k)−LS法について概説する。本手法は、線形解法でありながらも、非線形なロバスト推定の効果があるため、高速である特徴がある。適用するに際して、式(3)は左辺に右辺を移動してゼロとおいたところから定式化される。なお、項数kと項数lについては別途決定される。
上記の最小化問題を考える。図7にGMRES(k)−LS法のアルゴリズムの概要を示す。
また、本パターン予測装置では、式(3)の解法に状態空間法と特異値分解法を併用する。
τ個の連続する画像の集合を
とする。時刻tの瞬間に、画像I(t)にノイズw(t)を加えた情報を観測する。
ここで、w(t)は既知の独立同分布(IID:Independent Identically Distribution)とする。n個の空間フィルタ
があるとして、n個の空間フィルタφαの出力をφ(・)とするとき、x(t)∈Rで定義される画像のピクセル値の集合x(t)のn個の空間ファルタφの出力値I(t)は、I(t)=φ(x(t))となる。
x(t)は以下に示す手順で与えられるとする。
k=1を仮定すると、ARMAが得られる。画像問題k=2の場合も同様である。
フィルタの最も簡単な形は単位行列であり、I(t)=x(t)となる。つまり、画像のピクセル値x(t)(データ次元数m)が出力結果となる。x(t)の次元数がmと大きいままでは取り扱いが非常に不便なので、x(t)の次元数の削減を可能とする以下のようなフィルタCを選択する。
このフィルタCにより、次元数nであるx(t)からI(t)が与えられる。
学習問題(最もふさわしいモデルパラメータA,B,Cと入力q(・)を決定する問題)を、対数尤度 log(p) (pは条件付き確率密度)が最大となるA^,B^,C^,q^(・)として求める。
与えられたy(1),y(2),・・・,y(τ)を用いて、式(4)のモデル式群とv(t)〜IIDq(t)に対して、
となるA^,B^,C^,q^(・)を求める問題を解く。
定常的な2次過程(second-order process)はゼロ平均のガウス雑音による線形力学システムの出力としてモデル化できることは一般によく知られている。このことを利用して、学習問題を以下のような問題として考える。
整数nが存在し、対称な正定値行列Q∈Rn×nとR∈Rm×mであると仮定して、次式において、
与えられたy(1),y(2),・・・,y(τ)を用いて、最もふさわしいモデルパラメータA,C,Q,Rを求める問題を解く。ここで、N(0,Q)は共分散行列がQである正規分布である。
次に、移流系予測モデル適用部160について説明する。移流系予測モデル適用部160は、移流方程式、ナビエ・ストークス方程式などの移流系予測モデルを用いてパターンの予測計算を行う。
まず、移流方程式について説明する。次式(5)は移流方程式を表す。Ii,j は画素(i,j),時間nにおける画像輝度である。uは動きベクトル(オプティカルフロー)である。
式(5)には、必ず初期画像として1枚の画像が必要とされる。式(5)の時間発展(n step)を計算していくとき、Ii,j は、動きベクトルに沿ってその輝度を変化させることができる。1枚以上の画像を合成していくためには、式(5)の時間nと時間n+1のときの輝度を差し替えるだけでよい。時間間隔は、δtである。
続いて、時間積分回数の可変方法について説明する。移流方程式の時間間隔δtを固定した場合に、予測精度に影響を与えるのが、予測時間と時間積分回数の関係である。式(5)においてδt=0.01として、即ち、パターンの移動において一定速度で移動させる場合、式(5)を繰り返し適用して時間発展計算をする必要がある。
2枚の画像を用いて、時刻t+1,t+2,・・・のパターンを予測計算する場合、図8(a)に示すように、直近の時刻t−1,tにおける連続した時系列画像データを適用する。
図8(b)に示すように、3枚以上の画像を利用できる場合は、まず時刻t−2,t−1から1つ先の時刻tにおけるパターンを予測計算する。そして、時刻tにおける画像データを正解パターンとして、予測計算されたパターンとの類似度を計算する。類似度は、画像の濃淡値について2枚の正規化相関係数を計算することにより求める。なお、このとき、時間積分回数が未知決定であるので、一定範囲内の時間積分回数について総当たりで計算し、図9に示すように、最も正規化相関係数が高いときの時間積分回数を最適な値として採用する。
本パターン予測装置では、時間積分回数について1回から40回の範囲で計算し、最も正規化相関係数か高いときの時間積分回数を最適な値として採用した。
次に、ナビエ・ストークス方程式について説明する。次式(6)は、ナビエ・ストークス方程式と連続式を示す。ρ,p,vはそれぞれ密度、気圧、粘性係数である。ナビエ・ストークス方程式は、速度と気圧の2つを主変数としてもつが、気圧(圧力)の初期値は画像全体に0を設定する。計算過程により、気圧または圧力が推定される。連続式が0であることは、流体の特性が非圧縮性である条件であり、同時に、数理的に扱いやすい形になる。式(6)については、よく知られたMAC法などを用いた解法が一般的である。
続いて、ナビエ・ストークス方程式の粘性係数の算出について説明する。ここでは、密度ρ=1.0と仮定する。粘性係数の大きさにより計算される流体の渦に対する特性が変化することが知られている。これを画像パターンから算出された動きベクトルに応用する。粘性係数が10以上に大きい場合は、図10(a)に示すように、渦は生じない。しかし、粘性係数が10より小さくなると、図10(b)に示すように、渦が生じやすくなる。即ち、渦度と粘性係数は、図11に示すように、逆比例の関係となる。そこで、ナビエ・ストークス方程式の粘性係数は、渦度の度合いに基づいて決定する。流体力学では、流体の特性はレイノルズ数で特徴づけられている。密度と距離が一定の場合、レイノルズ数と粘性係数は逆比例する。
図12は、速度場の違いによる気象パターンの移流予測結果の違いを示している。図12(a)に示すように、速度場をなにも変化させない場合、予測される気象パターンは、右上に平行移動したものである。
一方、渦度に基づいて粘性係数を決定したときには、図12(b)に示すように、湾曲した速度場を予測できる。これにより、予測された気象パターンの形状も変化しており、こちらの場合が予測精度が高くなったことを確認した。
以上説明したように、本実施の形態によれば、時空間解析部120により、自己相関係数を算出するとともに、動き推定解析部130により、オプティカルフロー法を用いて画素毎の動きベクトルを算出して渦度を求めることにより、時系列画像データが渦、移流、停滞のいずれのパターンであるかを分類することができるので、2つの予測モデルを適切に選択し、予測精度の向上を可能とする。
本実施の形態によれば、自己回帰予測モデル適用部150が、ARMAモデルを適用する際に、自己相関係数に基づいて次数を決定することで、停滞性パターンの予測精度の向上を可能とする。
本実施の形態によれば、移流系予測モデル適用部160が、渦度に基づいてナビエ・ストークス方程式の粘性係数を決定することにより、渦パターンの予測精度の向上を可能とする。
本実施の形態によれば、移流系予測モデル適用部160が、時間積分回数について所定の範囲において、時刻t−2,t−1から1つ先の時刻tにおけるパターンを予測計算し、時刻tにおける画像データを正解パターンとして、画像の濃淡値について2枚の正規化相関係数をそれぞれ計算し、その正規化相関係数が最も高いときの時間積分回数を最適な値として採用することにより、予測精度の向上を可能とする。
本実施の形態によれば、時系列画像データから空間周波数分布を求め、その空間周波数分布についた自己相関係数を算出することにより、画像パターンの位置がずれたとしてもテクスチャが類似する場合には、相関係数の下がり方が緩やかになり、テクスチャが類似していても、空間的にわずかに移流している場合など、時間領域だけの解析では見逃す可能性のある特徴を検出することができる。
一実施の形態におけるパターン予測装置の構成を示すブロック図である。 上記パターン予測装置において算出される自己相関係数を示す図である。 上記パターン予測装置において算出される空間周波数分布を示す図である。 上記パターン予測装置が時系列画像のパターンを推測する流れを示すフローチャートである。 自己相関係数と自己回帰モデルの次数との関係を示すグラフである。 自己回帰モデルの次数の違いによる予測結果の違いを示す図であり、同図(a)は次数を3と固定した場合の結果を示し、同図(b)は自己相関係数に基づいて次数を決定した場合の結果を示す。 GMRES(k)−LS法のアルゴリズムを示す図である。 用いる時系列画像の数を示す図であり、同図(a)は2枚の時系列画像を用いて次の時系列画像を予測する様子を示し、同図(b)は3枚の時系列画像を用いて次の時系列画像を予測する様子を示している。 時間積分回数と正規化相関関数との関係を示すグラフである。 粘性係数の違いによる予測結果の違いを示す図であり、同図(a)は粘性係数が大きい場合の図であり、同図(b)は粘性係数が小さい場合の図である。 渦度と粘性係数との関係を示すグラフである。 速度場の違いによる気象パターンの予測結果の違いを示しており、同図(a)は、速度場を変化させない場合を示し、同図(b)は速度場を変化させた場合を示している。
符号の説明
100…入力部
110…蓄積部
120…時空間解析部
130…動き推定解析部
140…予測モデル選択部
150…自己回帰予測モデル適用部
160…移流系予測モデル適用部
170…終了判定部
180…表示部

Claims (7)

  1. 時系列画像の入力を受け付ける画像入力手段と、
    前記時系列画像を蓄積する画像蓄積手段と、
    前記画像蓄積手段から前記時系列画像を読み出し、画素毎の動きベクトルをオプティカルフロー法により算出するとともに、当該動きベクトルを用いて渦度を算出する動き解析手段と、
    前記画像蓄積手段から前記時系列画像を読み出し、自己相関係数を算出する相関係数算出手段と、
    前記渦度が所定の値以上のときには移流系予測モデルを選択し、前記渦度が所定の値より小さく前記自己相関係数が所定の値よりも小さいときには移流系予測モデルを選択し、前記渦度が所定の値より小さく前記自己相関係数が所定の値以上のときには自己回帰予測モデルを選択する選択手段と、
    前記選択手段が自己回帰予測モデルを選択したときには、前記自己相関関数に基づいて決定した次数を自己回帰平均モデルに適用してパターン予測計算を行う第1予測計算手段と、
    前記選択手段が移流系予測モデルを選択したときには、移流方程式と前記渦度に基づいて決定した粘性係数を用いたナビエ・ストークス方程式とを適用してパターン予測計算を行う第2予測計算手段と、
    を有することを特徴とするパターン予測装置。
  2. 前記第2予測計算手段は、前記画像蓄積手段から3枚の時系列画像を読み出し、その内2枚の時系列画像を用いて所定の範囲でパラメータを変化させてパターンの予測計算するとともに、予測したパターンと残りの1枚の時系列画像との類似度を変化させたパラメータ毎に算出し、当該類似度が最も高いときのパラメータを採用することを特徴とする請求項1記載のパターン予測装置。
  3. 前記相関係数算出手段は、読み出した前記時系列画像について空間周波数分布を求め、当該空間周波数分布について自己相関係数を算出することを特徴とする請求項1又は2記載のパターン予測装置。
  4. 画像入力手段により、時系列画像の入力を受け付けるステップと、
    画像蓄積手段により、前記時系列画像を蓄積するステップと、
    動き解析手段により、前記画像蓄積手段から前記時系列画像を読み出し、画素毎の動きベクトルをオプティカルフロー法により算出するとともに、当該動きベクトルを用いて渦度を算出するステップと、
    相関係数算出手段により、前記画像蓄積手段から前記時系列画像を読み出し、自己相関係数を算出するステップと、
    選択手段により、前記渦度が所定の値以上のときには移流系予測モデルを選択し、前記渦度が所定の値より小さく前記自己相関係数が所定の値よりも小さいときには移流系予測モデルを選択し、前記渦度が所定の値より小さく前記自己相関係数が所定の値以上のときには自己回帰予測モデルを選択するステップと、
    第1予測計算手段により、前記選択手段が自己回帰予測モデルを選択したときには、前記自己相関関数に基づいて決定した次数を自己回帰平均モデルに適用してパターン予測計算を行うステップと、
    第2予測計算手段により、前記選択手段が移流系予測モデルを選択したときには、移流方程式と前記渦度に基づいて決定した粘性係数を用いたナビエ・ストークス方程式とを適用してパターン予測計算を行うステップと、
    を有することを特徴とするパターン予測方法。
  5. 前記第2予測計算手段により、前記画像蓄積手段から3枚の時系列画像を読み出し、その内2枚の時系列画像を用いて所定の範囲でパラメータを変化させてパターンの予測計算するとともに、予測したパターンと残りの1枚の時系列画像との類似度を変化させたパラメータ毎に算出し、当該類似度が最も高いときのパラメータを採用するステップを有することを特徴とする請求項4記載のパターン予測方法。
  6. 前記相関係数算出手段により、読み出した前記時系列画像について空間周波数分布を求め、当該空間周波数分布について自己相関係数を算出するステップを有することを特徴とする請求項4又は5記載のパターン予測方法。
  7. 請求項4乃至6のいずれか1項に記載したパターン予測方法における各ステップをコンピュータによって実行させることを特徴とするパターン予測プログラム。
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