JP2009102755A - 生分解性プラスチック複合体およびその製造方法 - Google Patents

生分解性プラスチック複合体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛の特性、例えばポリ乳酸繊維の肌触りのよさ、抗菌性及びしなやかさと、バクテリアセルロースの吸湿性及び高強度、加えて双方の生体適合性、さらには繊維の熱的特性や布帛の構造的な特性などそれぞれの本来の特性を損なうことなく、最大限に発揮させることが可能な生分解性プラスチック複合体を提供する。
【解決手段】本発明の生分解性プラスチック複合体は、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛、およびバクテリアセルロースを含有し、前記バクテリアセルロースは、前記生分解性プラスチック繊維間の空隙に含まれている。
【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性プラスチック複合体およびその製造方法に関するものである。本発明の生分解性プラスチック複合体は、例えば、骨折固定材、伸縮性絆創膏、動物細胞担体などの医療用材料や、汗取りパッドなどのアレルギー疾患者向けの繊維製品などに好適に用いられる。
石油依存型社会から脱却し環境循環型社会へ移行することが地球規模で求められる中で期待の大きいバイオマス由来プラスチックは、自然界の作用で分解して無機化される生分解性プラスチックであり、ポリ乳酸のような脂肪族ポリエステル系の構造を有している場合が多くみられる。これらは、結晶化速度が遅いために耐熱性や強度が十分でないという課題を抱えており、結晶核剤の開発や同じくバイオマス由来の繊維材料との複合化を行うことにより、実用化に向けた取り組みが進められており、一部は自動車部品や携帯電話の筐体などに製品化されている。
ところで、前述した繊維材料の例としては、ケナフや竹繊維などの植物セルロースのほか、医療用材料など特殊な用途への利用が期待されるバクテリアセルロースなどが挙げられる。バクテリアセルロースは、酢酸菌などの微生物が菌体外に産生するセルロースであり、幅0.1μmのきわめて細いリボン状のフィブリル構造を有する。また、植物セルロースと異なりヘミセルロースやリグニンを全く含まない純粋なセルロースである。特許文献1〜4には、バクテリアセルロースを用いた高分子複合体が開示されている。
特許文献1には、培養によって得られたバクテリアセルロースを乾燥し粉状にした後に生分解性高分子材料と混合して複合化させた複合材料が開示されている。この複合材料は生分解性高分子材料単体よりも諸物性が向上するが、原料である粉状バクテリアセルロースの調製において離解・乾燥工程に分散・ろ過・溶媒置換・凍結乾燥などの煩雑な処理や、複数の有機溶剤を必要とする。
特許文献2には、成形用樹脂の補強材として用いられる芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル及びポリベンザゾール等の繊維構造物の表面にバクテリアセルロースが付着または被覆された複合材料が開示されている。この複合材料においてバクテリアセルロースは、培養または固着により繊維構造物の表面に付着しており、繊維構造物と成形用樹脂との接着性を高める目的で用いられている。また、接着性と耐熱性とのバランスを考慮し、繊維構造物に対するバクテリアセルロースの含有量を0.5〜20重量%の範囲に制御している。
特許文献3には、編織物などの繊維構造物を構成する繊維の表面が培養によりバクテリアセルロースで被覆された、柔軟な風合いとハリ・コシのある繊維構造物が開示されている。繊維表面を被覆するバクテリアセルロースの量は、吸湿性などの機能を付与するため繊維重量に対して0.01%以上が好ましいとしているが、10.0%を超えると柔軟性が損なわれ好ましくないとしている。
特許文献4には、非木材系繊維にバクテリアセルロース生産性微生物を接種し、培養することにより得られた高強度の紙が開示されている。この紙は、非木材系繊維中の粗荒な繊維を架橋するようにバクテリアセルロースの微細な繊維が形成されるため、製紙後の強度が増強されるとしている。
特開平11−241027号公報 特開2007−63709号公報 特開平9−279483号公報 特開平7−238488号公報
前述したように、生分解性プラスチックの中でも特に脂肪族ポリエステル系のバイオマス由来プラスチックは、環境循環型という側面を有しているものの、結晶化速度が遅いために耐熱性や強度が十分でない、成形に時間を要するなどの課題を抱えているケースが多くみられる。そこで、同じバイオマス由来であり、植物セルロースよりも純度の点で有利なバクテリアセルロースを用いて複合化を行う場合には、網目構造を繊維化するために特許文献1のような煩雑な工程や高度な技術を必要とするなどの課題があった。また、バクテリアセルロースの産生微生物は合成高分子上で走行することが困難で、かつバクテリアセルロースと合成高分子とは親和性を有しないことが複合化の1つの障壁となっていた。このため、特許文献2及び3では合成高分子の繊維構造物を用いて複合化を行なっているが、バクテリアセルロースは繊維構造物の表面に被覆させることはできるものの繊維構造物の内部にまで導入するには至っていない。
そこで本発明の目的は、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチックとバクテリアセルロースの複合化を行う場合に存在する前述した課題を克服し、これらの複合化を簡便かつ効率よく行う製造方法、及びこれらが有する特性を維持しつつ最大限に発揮させることが可能な生分解性プラスチック複合体を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明の生分解性プラスチック複合体は、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛、およびバクテリアセルロースを含有し、前記バクテリアセルロースは、前記生分解性プラスチック繊維間の空隙に含まれているところに要旨を有する。
好ましい実施形態において、前記脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛と前記バクテリアセルロースの合計量100質量部に対し、前記バクテリアセルロースは1〜70質量部の割合で含有している。
好ましい実施形態において、前記脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチックはポリ乳酸である。
上記課題を解決することのできた本発明に係る生分解性プラスチック複合体の製造方法は、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛および培養液を加えた浅底の培養容器中に、バクテリアセルロース産生微生物を接種する工程と、25〜32℃の温度で5日間以上培養を行い、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛の内部にバクテリアセルロースが導入されたバクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を得る工程と、前記バクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を、前記生分解性プラスチックのガラス転移点(Tg)以上でかつ前記生分解性プラスチックの融点(mp)以下の温度において加熱する工程と、前記加熱したバクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を冷却する工程と、を包含するところに要旨を有している。
本発明の生分解性プラスチック複合体は、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛の特性、例えばポリ乳酸繊維の肌触りのよさ、抗菌性及びしなやかさと、バクテリアセルロースの吸湿性及び高強度、加えて双方の生体適合性、さらには繊維の熱的特性や布帛の構造的な特性などそれぞれの本来の特性を損なうことなく、最大限に発揮させることが可能な点において非常に有用である。本発明の複合体は、例えば、骨折固定材、伸縮性絆創膏、動物細胞担体などの医療用材料や、汗取りパッドなどのアレルギー疾患者向けの繊維製品などに好適に用いられる。
本発明者らは、前記課題を解決するため検討を重ねた結果、生分解性プラスチックについては配向結晶化によりすでに2次核が形成された繊維布帛を用いることとし、培養条件が適切に制御されたバクテリアセルロース産生微生物の培養過程において、繊維布帛に直接バクテリアセルロースを導入し、所定の温度で熱処理を行うことにより、諸特性を最大限に発揮することが可能な複合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明の生分解性プラスチック複合体は、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛およびバクテリアセルロースを含有し、バクテリアセルロースは生分解性プラスチック繊維間の空隙に含まれているところに特徴がある。以下、その詳細を示す。
まず、本発明の生分解性プラスチックは、脂肪族ポリエステル系の生分解性繊維布帛を含有することに特色がある。生分解性プラスチックの中でも特に脂肪族ポリエステル系のバイオマス由来プラスチックは、環境循環型という側面を有しているものの、結晶化速度が遅いために耐熱性や強度が十分でない、成形に時間を要するなどの課題を抱えている場合が多くみられる。そこで、繊維化されたものを用いれば、繊維の配向結晶化によってすでに2次核が形成されているため、このような課題を考慮する必要がない。繊維化の方法は特に限定されず、溶融紡糸法、溶液紡糸法など、公知の技術を採用することができる。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチックは、主鎖にエステル結合を有するポリマーであれば、特に限定されない。代表的には、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(ポリヒドロキシアルカン酸)などが挙げられる。また、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコール成分とコハク酸、アジピン酸などのカルボン酸成分よりなるポリエステル(例えばポリコハク酸ブチルなど)も包含される。さらに、これらの共重合体やこれら2種以上のポリマーからなるポリマーブレンド物も包含される。
上記脂肪族ポリエステル系生分解性プラスチックのうち最も好ましいのは、ポリ乳酸である。ポリ乳酸は、トウモロコシなどの植物を原料とし、透明性や弾力性に優れ、燃焼カロリーが低く、生分解性プラスチックの中でも機械的・物理的性質に優れた、現在実用化レベルにある唯一のバイオマス由来プラスチックである。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維は、前述の脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチックのみからなる繊維だけでなく、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維を主成分とし、その他の高分子繊維(例えば木綿や麻などの天然セルロース繊維やレーヨンやポリノジックなどの再生セルロース系繊維)を少量含む場合を包含する。なお、本発明は、バクテリアセルロースと同じ構造を有し親和性が良好なセルロース系組成物(特許文献4)を用いるのではなく、バクテリアセルロースとの親和性がなく導入が困難な合成高分子である脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチックを用いる点に特色がある。脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維として例えばポリ乳酸繊維を用いる場合には、ユニチカ製「テラマック」やクラレ製「プラスターチ」などの市販品を用いることができる。
本発明に用いられる布帛の構造は特に限定されず、織物、編物(ニット)、不織布、ネットなどが包含される。また、布帛が織物や編物の場合、構成する糸は前述した繊維からなるフィラメント糸や紡績糸などを用いることができる。一般に、織物よりも不織布や編物の方がバクテリアセルロースを効率よく導入することができる。その理由は、不織布及び編物は織物のように繊維が規則正しく配置されておらず、繊維が複雑に絡みあっており、かつ嵩高くなっていることが、バクテリアセルロース産生微生物の走行の物理的障害を招き、培養液界面への通り抜けが阻害される結果、繊維間の空隙に滞留しつつバクテリアセルロースが産生されるためと考えられる。
本発明に用いられる布帛の目付は、おおむね、10〜3000g/mの範囲内であることが望ましい。目付が10g/m未満では、布帛の厚さや繊維間の空隙の大きさを制御しにくいため好ましくない。一方、布帛の製造可能な上限として目付は3000g/mを超えないことが好ましい。より好ましい目付は、50〜400g/mの範囲内である。また、布帛の厚さ、密度、組織および構成する糸の太さなどは目付が上記範囲内になるよう制御されていれば、特に限定されない。
次に、本発明の生分解性プラスチック複合体は、バクテリアセルロースを含有することに特色がある。バクテリアセルロースは、セルロース産生微生物を適切な環境下で培養することにより菌体外に産生されるものである。セルロース産生微生物は特に限定されないが、代表的には、Acetobacter属の一種である酢酸菌(Acetobacter xylinum )がセルロースを大量に産生するため用いられる。例えば、ATCC23769(Gluconacetobacter hansenli)やATCC53582(Acetobacter xylinum NQ-5)などが挙げられるが、バクテリアセルロースの産生能力が非常に高いATCC53582(Acetobacter xylinum NQ-5)の使用がより好ましい。
さらに、本発明の生分解性プラスチック複合体は、バクテリアセルロースが生分解性プラスチック繊維間の空隙に含まれることを特徴とする。すなわち本発明の複合体は、前述した特許文献2や特許文献3のようにバクテリアセルロースが繊維布帛の表面部(表層)のみに付着しているのではなく、繊維布帛の内部(中間層)まで導入されていることに特徴がある。
本発明の生分解性プラスチック複合体は、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛とバクテリアセルロースの合計量100質量部に対し、バクテリアセルロースを1〜70質量部の割合で含有している。バクテリアセルロースの含有量が1質量部未満では、バクテリアセルロースを導入することによる強度などの特性向上の効果が得られず、好ましくない。一方、70質量部を超えると、複合体の柔軟性が失われ、好ましくない。バクテリアセルロースのより好ましい含有量は、10質量部以上40質量部以下である。
次に、前述した生分解性プラスチック複合体の製造方法について説明する。
本発明の生分解性プラスチック複合体の製造方法は、
脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛および培養液を加えた浅底の培養容器中に、バクテリアセルロース産生微生物を接種する工程と、
25〜32℃の温度で5日間以上培養を行い、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛の内部にバクテリアセルロースが導入されたバクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を得る工程と、
前記バクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を、前記生分解性プラスチックのガラス転移点(Tg)以上でかつ前記生分解性プラスチックの融点(mp)以下の温度において加熱する工程と、
前記加熱したバクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を冷却する工程と、
を包含する。
まず、前述の脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛および培養液を加えた浅底の培養容器中に、バクテリアセルロース産生微生物を接種する。
培養液は、バクテリアセルロース産生微生物の生育に適した、炭素源、窒素源、無機塩類のほか、微量のアミノ酸、ビタミン等の各種栄養素を含有しており、かつpHが3から7の範囲にあれば特に限定されない。例えば酢酸菌を用いる場合には、HS培地(Hestrin−Schramm標準培地)が好ましく用いられる。
また、培養容器は、特許文献2にある三角フラスコや特許文献3にあるポリエチレン製の袋を用いるのではなく、浅底の培養容器を用いる点に留意する。その理由は、好気性菌であるバクテリアセルロース産生微生物が空気や繊維布帛との接触をできるだけ多く図れるように、培養液の表面積を広く、かつ厚さを薄くする必要があるためである。浅底の培養容器は、前述の繊維布帛が培養液に十分に浸潤されれば形状は特に限定されないが、深さは繊維布帛の厚さよりも厚く、かつできるだけ近い方が好ましい。また、繊維布帛の表面全体ができるだけ空気に触れるようにすることが好ましい。
次に、25〜32℃の温度で5日間以上培養を行い、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛の内部にバクテリアセルロースが導入されたバクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を得る。
培養方法は、通気撹拌培養、振とう培養、静置培養のいずれでもよいが、繊維布帛の繊維間の空隙にバクテリアセルロース産生微生物を滞留させやすくするため、静置培養が好ましい。また、通気撹拌培養や振とう培養の場合には、バクテリアセルロースの拡散を抑制するため、ゆるやかに撹拌または振とうさせることが好ましい。
培養中の温度は、25〜32℃の範囲内に設定することが好ましく、培養期間は微生物の種類にもよるが、バクテリアセルロースを前記範囲の含有量確保するため、5日以上とすることが好ましい。さらに、バクテリアセルロースを繊維布帛の表裏両面から同程度に導入するため、培養期間中、培養液の交換および繊維布帛の表裏を返す操作を行なってもよい。なお、伸縮性を有する編物などの布帛の場合には、布帛を引っ張った状態で培養を行うことにより、伸縮性のある複合体を得ることができる。
さらに、得られたバクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を、生分解性プラスチックのガラス転移点(Tg)以上でかつ生分解性プラスチックの融点(mp)以下の温度において加熱した後、冷却することにより、複合体シートを得る。
熱処理方法については特に限定されないが、本発明では、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチックにおける耐熱性や強度に係る課題を克服するため当該繊維を用いていることから、熱処理温度については注意が必要である。すなわち、示差走査熱量分析により発明者らが脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチックの熱的挙動を確認したところ、融点(mp)よりも高い温度で溶融処理した場合には、当該繊維の熱履歴が抹消し結晶状態が変化するために、当該繊維が本来有する耐熱性や強度などの諸特性を生かすことができなくなることが分かった。したがって本発明では、当該繊維が元々持つ熱履歴を保存しつつ諸特性の強化を図る意味から、熱処理温度は生分解性プラスチックのガラス転移点(Tg)以上でかつ前記生分解性プラスチックの融点(mp)以下の温度範囲内とすることが重要である。例えば、ポリ乳酸の場合、おおむね50℃以上160℃以下の温度範囲内とすることができるが、好ましくは80℃以上120℃以下の範囲である。
また、冷却方法は空冷・急冷(熱処理後、直ちに水冷)のいずれかとすることができるが、結晶化の進行を防ぐためには急冷することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下の実施例における「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
実施例1
下記組成のHS培地(Hestrin−Schramm標準培地)50mLを入れた角型シャーレ(10cm×14cm×1cm)に、同じく下記に示す酢酸菌溶液1000μLを加えた後、ポリ乳酸布帛(ユニチカ製テラマック、目付100g/m、約9.5cm×13.5cm)を浮かべ30℃で14日間静置培養した。なお、培養期間中、7日経過後に培地の入替え及び不織布の表裏を返す操作を行なった。培養後の不織布はアルカリ処理(60℃の0.1%NaOH水溶液中30分間撹拌)後、蒸留水で十分に洗浄し40℃で1昼夜乾燥した。
(HS培地)
D−グルコース:2.0%、バクトペプトン:0.5%、酵母エキス:0.5%、クエン酸:0.115%、リン酸水素二ナトリウム:0.27%(pH6.0)
(酢酸菌溶液)
酢酸菌(ATCC23769 Gluconacetobacter hansenli)を所定の方法に従って復元後、2回継代培養した菌株(1白金耳)をHS培地50mLに7日間前培養した。
得られたバクテリアセルロース導入ポリ乳酸不織布について、走査型電子顕微鏡により断面の観察を行なったところ、図1に示すように、表層および内部の中間層にある繊維間の空隙にバクテリアセルロースが存在していることが確認された。また、培養前後の質量変化により不織布へのバクテリアセルロースのおおよその導入率を算出したところ、11.6%であった。
得られたバクテリアセルロース導入ポリ乳酸不織布は、熱プレス機(テスター産業(株)製SA−302)を用い、温度100℃、圧20MPaで10分間、熱プレスを行なった後、空冷して複合化シートとし、JIS K7161に準じ引張試験を行い、縦方向の引張応力(MPa)及び引張弾性率(MPa)を算出した。なお、引張試験の条件は、試験機:(株)エー・アンド・ディー テンシロンRTC−240、ロードセル容量:250N、試験速度:5mm/分、試験片:10mm×50mm、つかみ具間距離:20mmとした。
比較例1
実施例1において培養工程を行わない以外は実施例1と同様にして、ポリ乳酸シートを得、引張試験を行った。
試験結果
ポリ乳酸不織布(実施例1の処理前のもの)、実施例1及び比較例1の結果を表1に示す。
実施例1の複合化シートは、ポリ乳酸不織布や比較例1のポリ乳酸シートと比較し、引張応力、引張弾性率ともに増強の効果が認められた。
実施例2
実施例1において、酢酸菌をATCC53582(Acetobacter xylinum NQ-5)とし、培養期間を7日間(培養入替えなどの操作なし)以外は、実施例1と同様にしてバクテリアセルロース導入ポリ乳酸不織布を得た。得られたバクテリアセルロース導入ポリ乳酸不織布は、走査型電子顕微鏡による断面観察(図2を参照)により、表層及び内部の中間層にある繊維間の空隙にバクテリアセルロースの存在が確認された。また、バクテリアセルロースのおおよその導入率は、16.8%であった。
実施例3
実施例2において、ポリ乳酸不織布をポリ乳酸編物(ユニチカ製テラマック、糸の太さ20/1c、約9.5cm×13.5cm)に変更した以外は、実施例1と同様にしてバクテリアセルロース導入ポリ乳酸編物を得た。得られたバクテリアセルロース導入ポリ乳酸編物は、走査型電子顕微鏡による断面観察(図3を参照)により、表層及び内部の中間層にある繊維間の空隙にバクテリアセルロースの存在が確認された。また、バクテリアセルロースのおおよその導入率は、18.5%であった。
図1は、実施例1におけるバクテリアセルロース導入ポリ乳酸不織布の走査型電子顕微鏡断面観察写真(倍率1000倍)である。 図2は、実施例2におけるバクテリアセルロース導入ポリ乳酸不織布の走査型電子顕微鏡断面観察写真(倍率250倍)である。 図3は、実施例3におけるバクテリアセルロース導入ポリ乳酸編物の走査型電子顕微鏡断面観察写真(倍率250倍)である。

Claims (4)

  1. 脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛、およびバクテリアセルロースを含有し、
    前記バクテリアセルロースは、前記生分解性プラスチック繊維間の空隙に含まれていることを特徴とする生分解性プラスチック複合体。
  2. 前記脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛と前記バクテリアセルロースの合計量100質量部に対し、前記バクテリアセルロースを1〜70質量部の割合で含有する請求項1に記載の生分解性プラスチック複合体。
  3. 前記脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチックはポリ乳酸である請求項1または2に記載の生分解性プラスチック複合体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性プラスチック複合体を製造する方法であって、
    脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛および培養液を加えた浅底の培養容器中に、バクテリアセルロース産生微生物を接種する工程と、
    25〜32℃の温度で5日間以上培養を行い、脂肪族ポリエステル系の生分解性プラスチック繊維布帛の内部にバクテリアセルロースが導入されたバクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を得る工程と、
    前記バクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を、前記生分解性プラスチックのガラス転移点(Tg)以上でかつ前記生分解性プラスチックの融点(mp)以下の温度において加熱する工程と、
    前記加熱したバクテリアセルロース導入プラスチック繊維布帛を冷却する工程と、
    を包含することを特徴とする生分解性プラスチック複合体の製造方法。
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