JP2009099812A - 可撓性回路基板および電子機器 - Google Patents

可撓性回路基板および電子機器 Download PDF

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康介 若松
Kenji Otsuka
賢治 大塚
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泰秀 松尾
Kazuhisa Higuchi
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Abstract

【課題】優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れた可撓性回路基板、および、かかる可撓性回路基板を備えた信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】可撓性回路基板1は、可撓性を有する可撓性フィルム2と、この可撓性フィルム2の一方の面側に設けられた、所定の形状にパターニングされた導電体4とを有し、可撓性フィルム2に、導電体4が接合膜3を介して接合されており、この接合膜3は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、このSi骨格に結合する脱離基とを含み、エネルギーを付与したことにより、接合膜3の表面付近に存在する脱離基がSi骨格から脱離し、接合膜3に発現した接着性によって、可撓性フィルム2と導電体4とを接合している。
【選択図】図2

Description

本発明は、可撓性回路基板および電子機器に関するものである。
近年、各種電子機器において、電子機器が備えるリジットな部材同士を接続する配線や、限られたスペース内で複数の部材同士を接続する配線、さらにはヒンジ部を介して複数の部材同士を接続する配線として、可撓性を有する可撓性回路基板が用いられている。
また、プリンターヘッド、ハードディスクドライブ(HDD)やフロッピーディスクドライブ(FDD)(「フロッピー」は登録商標)のスイングアームのような部材は、電子機器本体内で所定の空間内を繰返し移動することによりその機能を発揮するが、このような部材と電子機器本体とを接続する際にも可撓性回路基板が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
このような可撓性回路基板は、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような可撓性を有する可撓性フィルム層と、所定形状にパターニングされた導電層とを、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤のような接着剤で構成される接着剤層を介して接合した積層体を有し、さらに必要に応じて積層体の導電体側を他の可撓性フィルムで保護する保護層を有するものが知られている。
かかる構成の可撓性回路基板は、屈曲して使用され、特にプリンターヘッドや、HDDおよびFDDに適用した場合では、繰返し屈曲して使用されるため、優れた屈曲性を維持しつつ、繰返しの使用にも各層の剥離やクラック(ひび割れ)の発生が好適に防止された耐屈曲性に優れたものが要求される。
このような要求を満足することを目的に、導電層の厚さを薄くしたり、接着剤層の厚さを厚くする等の対応が行われているが、現在のところ、前記要求を満足するには至っていない。
特開平5−250854号公報
本発明の目的は、優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れた可撓性回路基板、および、かかる可撓性回路基板を備えた信頼性の高い電子機器を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の可撓性回路基板は、可撓性を有する可撓性フィルムと、
該可撓性フィルムの一方の面側に設けられた、所定の形状にパターニングされた導電体とを有し、
前記可撓性フィルムに、前記導電体が接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記可撓性フィルムと前記導電体とを接合していることを特徴とする。
これにより、優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れた可撓性回路基板とすることができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%であることが好ましい。
これにより、接合膜は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜自体がより強固なものとなる。このため、接合膜は、可撓性フィルムおよび導電体に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
本発明の可撓性回路基板では、前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、可撓性フィルムと導電体とをより強固に接合することができるようになる。
本発明の可撓性回路基板では、前記Si骨格の結晶化度は、45%以下であることが好ましい。
これにより、Si骨格は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、Si骨格の特性が顕在化し、接合膜の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
本発明の可撓性回路基板では、前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものであることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基は、接合膜の接着性をより高度なものとすることができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基は化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を含む接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明の可撓性回路基板では、前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜は緻密で均質なものとなる。そして、可撓性フィルムと導電体とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、可撓性回路基板の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接合膜自体が優れた機械的特性を有するものとなる。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示す接合膜が得られる。したがって、この接合膜により、可撓性フィルムと導電体とをより強固に接合することができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、接着性に特に優れる接合膜が得られる。
本発明の可撓性回路基板では、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、可撓性フィルムと導電体との間の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものであることが好ましい。
これにより、従来に比べて寸法精度が格段に高い可撓性回路基板が得られる。また、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
本発明の可撓性回路基板では、前記可撓性フィルムは、樹脂系材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、可撓性フィルムは優れた可撓性を発揮するものとなる。
本発明の可撓性回路基板では、前記導電体は、金属系材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、接合膜と導電体とを強固に接合することができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記エネルギー線は、波長150〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中のSi骨格が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、Si骨格と脱離基との間の結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を発現させることができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、可撓性フィルムまたは導電体等が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜を確実に活性化させることができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、可撓性フィルムまたは導電体に損傷等が生じるのを避けつつ、単に圧縮するのみで、接合膜に十分な接着性を発現させることができる。
本発明の可撓性回路基板は、可撓性を有する可撓性フィルムと、
該可撓性フィルムの一方の面側に設けられた、所定の形状にパターニングされた導電体とを有し、
前記可撓性フィルムに、前記導電体が接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記可撓性フィルムと前記導電体とを接合していることを特徴とする。
これにより、優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れた可撓性回路基板とすることができる。
本発明の可撓性回路基板は、可撓性を有する可撓性フィルムと、
該可撓性フィルムの一方の面側に設けられた、所定の形状にパターニングされた導電体とを有し、
前記可撓性フィルムに、前記導電体が接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記可撓性フィルムと前記導電体とを接合していることを特徴とする。
これにより、優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れた可撓性回路基板とすることができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記導電体の前記可撓性フィルムと反対側に、前記可撓性フィルムと異なる他の可撓性フィルムを有し、
当該他の可撓性フィルムが前記導電体に接合されていることが好ましい。
かかる構成とすることにより、導電部を確実に保護することができる。
本発明の可撓性回路基板では、前記他の可撓性フィルムが、前記接合膜と同様の接合膜を介して、前記導電体に接合されていることが好ましい。
これにより、優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れた可撓性回路基板とすることができる。
本発明の電子機器は、本発明の可撓性回路基板を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
以下、本発明の可撓性回路基板および電子機器を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の可撓性回路基板の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の可撓性回路基板の第1実施形態を示す平面図、図2は、図1に示す可撓性回路基板のA−A線断面図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す可撓性回路基板(Flexible Printed Circuit)1は、可撓性を有する可撓性フィルム2と、可撓性フィルムの上側に設けられた導電体4と、可撓性フィルム2と導電体4とを接合する接合膜3と、可撓性フィルム2と異なる他の可撓性フィルム6と、他の可撓性フィルム6と導電体4とを接合する接合膜5とを有している。
可撓性フィルム2は、導電体4を支持する支持体としての機能を有するとともに、導電体4を保護する保護フィルムとしての機能を有するものである。
可撓性フィルム2の構成材料としては、可撓性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)および芳香族ポリアミド等の樹脂系材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものを主材料として用いることができる。
また、可撓性フィルム2の平均厚さは、その構成材料等によって若干異なり、特に限定されないが、10〜2000μm程度であるのが好ましく、30〜300μm程度であるのがより好ましい。可撓性フィルム2の厚さが薄すぎると、可撓性フィルム2の強度が低下し、支持体としての機能が損なわれるおそれがあり、一方、可撓性フィルム2の厚さが厚過ぎると、可撓性フィルム2の可撓性が低下するおそれがある。
導電体4は、可撓性回路基板1を用いて、後述する電子機器を構築した際に、可撓性回路基板1に接続された他の部材同士を電気的に接続する機能を有するものである。
この導電体4は、本実施形態では、第1の電極42と、第2の電極(図示せず)と、これら電極同士を電気的に接続する配線41とで構成されており、第1の電極42および第2の電極に、それぞれ、他の部材を接続することにより、他の部材同士が電気的に接続される。
本実施形態の可撓性回路基板1では、この導電体4が互いに接触することなく3つ設けられている。なお、導電体4は、3つ設けられている場合に限らず、4つ以上であってもよいし、3つ未満であってもよい。また、その形状も、直線状のものに限らず、ロ字状、コ字状、L字状および櫛歯状等いかなる形状に形成されていてもよい。
導電体4の構成材料としては、例えば、Ni、Pd、Pt、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Co、Al、Cs、Rb等の金属、これらを含むMgAg、AlLi、CuLi等の合金、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物等の金属系材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものを主材料として用いることができる。
他の可撓性フィルム6は、図2に示すように、導電体4の可撓性フィルム2の反対側に設けられ、導電体4を保護する保護フィルムとして機能する。
また、可撓性フィルム6は、第1の電極42に対応する位置に、開口部61を備え、この開口部61において、第1の電極42が可撓性回路基板1の外部に対して露出する。そして、開口部61で露出する第1の電極42において、他の部材と接続することにより、導電体4と他の部材とが電気的に接続される。
可撓性フィルム6の構成材料としては、可撓性フィルム2の構成材料として挙げたものと同様のものが用いられる。
また、可撓性フィルム6の平均厚さは、可撓性フィルム2の平均厚さで挙げた範囲と同一の厚さとされる。
接合膜3は、このものを介して導電体4を可撓性フィルム2上に接合する機能を有する。
より詳しくは、接合膜3は、その少なくとも一部の領域、すなわち、平面視における接合膜の全面または一部の領域に対して、エネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に存在する脱離基303が、接合膜3から脱離して、その表面のエネルギーを付与した領域に、可撓性フィルム2との接着性が発現する。この表面に生じた接着性により、接合膜3は、可撓性フィルム2上に、導電体4を接合する。
また、本実施形態では、接合膜3は、平面視で、導電体4とほぼ同一の形状をなしている。すなわち、接合膜3は、導電体4とほぼ同一の形状にパターニングされている。なお、かかる構成とすることにより、可撓性フィルム2上の導電体4が形成されない領域では、可撓性フィルム2と他の可撓性フィルム6とが直接接合した状態となっている。
このような接合膜3は、次のような第1〜第3の構成のものが用いられる。以下、第1〜第3の構成の接合膜3について、それぞれ、詳述する。
<<第1の構成>>
まず、第1の構成の接合膜3は、エネルギーを付与する前の状態が、図3に示すように、シロキサン(Si−O)結合302を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格301と、このSi骨格301に結合する脱離基303とを含むものである。
そして、この接合膜3にエネルギーを付与すると、図4に示すように、一部の脱離基303がSi骨格301から脱離し、代わりに活性手304が生じる。これにより、接合膜3の表面35に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜3により、可撓性フィルム2と導電体4とが接合されている。
このような第1の構成の接合膜3は、シロキサン結合302を含みランダムな原子構造を有するSi骨格301の影響により、接合膜3の表面35に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、可撓性フィルム2は、接合膜3を介して導電体4に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合したものとなる。このように高い寸法精度で接合膜3が形成されることから、接合膜3は、可撓性回路基板1の全体に亘って均一な厚さを有するものとなる。その結果、可撓性回路基板1を、その各部において、均一な屈曲性を有するものとすることができる。
また、接合膜3を用いて可撓性フィルム2と導電体4とを接合したことにより、従来のエポキシ系接着剤やウレタン系接着剤のような接着剤を用いて接合した場合と比較して、接着剤がはみ出すといった問題が生じることがない。さらに、接着剤を用いた場合よりも、接合膜3の膜厚を格段に薄く設定することが可能であることから、可撓性回路基板1を優れた屈曲性を有するものとすることができる。
このように、接合膜3は、従来の接着剤と比較して、その膜厚を薄く設定した場合においても、優れた接合性を示すとともに、可撓性フィルム2の各部で、均一な膜厚で成膜される。そのため、可撓性フィルム2と導電体4とを接合する接着剤層として、この接合膜3を備える可撓性回路基板1は、優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れたものとなる。
また、接合膜3は、化学的に安定なSi骨格301の作用により、耐熱性に優れている。このため、可撓性回路基板1が高温下に曝されたとしても、接合膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。
ところで、この接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、可撓性回路基板1が備える接合膜3の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
このような接合膜3としては、特に、接合膜3を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜3は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜3自体がより強固なものとなる。また、かかる接合膜3は、可撓性フィルム2および導電体4に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
また、接合膜3中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、可撓性フィルム2と導電体4とをより強固に接合することができるようになる。
なお、接合膜3中のSi骨格301の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格301は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格301の特性が顕在化し、接合膜3の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
また、Si骨格301に結合する脱離基303は、前述したように、Si骨格301から脱離することによって、接合膜3に活性手304を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格301に確実に結合しているものである必要がある。
かかる観点から、脱離基303には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記のような各原子がSi骨格301に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
これらの各基の中でも、脱離基303は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜3の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜3は、可撓性フィルム2と導電体4とをより強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜3は、接着性に特に優れることから、本発明の可撓性回路基板に対して特に好適に適用できるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
<<第2の構成>>
また、第2の構成の接合膜3は、エネルギーを付与する前の状態が、金属原子と、この金属原子結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである(図5参照)。換言すれば、接合膜3は、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入したものと言うことができる。
このような第2の構成の接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜3(金属原子および酸素原子の少なくとも一方)から脱離し、図6に示すように、接合膜3の少なくとも表面35の付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3の表面35に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜3により、可撓性フィルム2と導電体4とが接合されている。
この第2の構成の接合膜3は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであり、接合膜3自体を高い寸法精度で形成し得ることから、接合膜3を、可撓性回路基板1の全体に亘って均一な厚さを有するものとすることができる。その結果、可撓性回路基板1を、その各部において、均一な屈曲性を有するものとすることができる。
また、接合膜3を用いて可撓性フィルム2と導電体4とを接合したことにより、従来のエポキシ系接着剤やウレタン系接着剤のような接着剤を用いて接合した場合と比較して、接着剤がはみ出すといった問題が生じることがない。さらに、接着剤を用いた場合よりも、接合膜3の膜厚を格段に薄く設定することが可能であることから、可撓性回路基板1を優れた屈曲性を有するものとすることができる。
このように、接合膜3は、従来の接着剤と比較して、その膜厚を薄く設定した場合においても、優れた接合性を示すとともに、可撓性フィルム2の各部で、均一な膜厚で成膜される。そのため、可撓性フィルム2と導電体4とを接合する接着剤層として、この接合膜3を備える可撓性回路基板1は、優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れたものとなる。
また、接合膜3は、主として金属酸化物で構成されることから、耐熱性に優れている。このため、可撓性回路基板1が高温下に曝されたとしても、接合膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。
ところで、この接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接合膜3を備える可撓性回路基板1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、本実施形態では、接合膜3は、導電性を有するものであるのが好ましい。これにより、導電体4ばかりでなく接合膜3にも導電体としての機能を発揮させることができる。
なお、脱離基303は、図5に示すように、少なくとも接合膜3の表面35付近に存在していればよく、接合膜3のほぼ全体に存在していてもよいし、接合膜3の表面35付近に偏在していてもよい。ただし、脱離基303が表面35付近に偏在する構成とすることにより、接合膜3に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜3に、接合膜としての機能の他に、導電性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子が選択される。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜3を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜3は、優れた導電性を発揮するものとなる。
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、接合膜3中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、可撓性フィルム2と導電体4とをより強固に接合することができるようになる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
かかる観点から、脱離基303には、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のような各原子および原子団の中でも、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜3は、耐候性、耐薬品性および耐熱性等に優れたものとなる。
以上のことを考慮すると、接合膜3としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
かかる構成の接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜3は、可撓性フィルム2に対して特に強固に接着するとともに、導電体4に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、可撓性フィルム2と導電体4とを強固に接合することができる。
<<第3の構成>>
また、第3の構成の接合膜3は、エネルギーを付与する前の状態が、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである(図7参照)。
このような第3の構成の接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜3の少なくとも表面35付近から脱離し、図8に示すように、接合膜3の少なくとも表面35付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3の表面35に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜3により、可撓性フィルム2と導電体4とが接合されている。
この第3の構成の接合膜3は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であり、接合膜3自体を高い寸法精度で形成し得ることから、接合膜3を、可撓性回路基板1の全体に亘って均一な厚さを有するものとすることができる。その結果、可撓性回路基板1を、その各部において、均一な屈曲性を有するものとすることができる。
また、接合膜3を用いて可撓性フィルム2と導電体4とを接合したことにより、従来のエポキシ系接着剤やウレタン系接着剤のような接着剤を用いて接合した場合と比較して、接着剤がはみ出すといった問題が生じることがない。さらに、接着剤を用いた場合よりも、接合膜3の膜厚を格段に薄く設定することが可能であることから、可撓性回路基板1を優れた屈曲性を有するものとすることができる。
このように、接合膜3は、従来の接着剤と比較して、その膜厚を薄く設定した場合においても、優れた接合性を示すとともに、可撓性フィルム2の各部で、均一な膜厚で成膜される。そのため、可撓性フィルム2と導電体4とを接合する接着剤層として、この接合膜3を備える可撓性回路基板1は、優れた屈曲性を発揮しつつ、繰返しの屈曲にも耐え得る耐屈曲性に優れたものとなる。
ところで、この接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接合膜3を備える可撓性回路基板1の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
また、本実施形態では、接合膜3は、導電性を有するものであるのが好ましい。これにより、導電体4ばかりでなく接合膜3にも導電体としての機能を発揮させることができる。
以上のような第3の構成の接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子および脱離基303が選択される。
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
ここで、遷移金属元素は、各遷移金属元素間で、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、金属原子として遷移金属元素を用いた場合、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜3の導電性をより高めることができる。
また、金属原子として、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いた場合、接合膜3は、優れた導電性を発揮するものとなる。また、接合膜3を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜3を成膜することができる。
また、脱離基303は、前述したように、接合膜3から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
具体的には、脱離基303としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
また、かかる構成の接合膜3において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、可撓性フィルム2と導電体4とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜3を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
以上のような、第1〜第3の接合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、可撓性フィルム2と導電体4との間の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、可撓性回路基板1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、可撓性フィルム2の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、可撓性フィルム2と導電体4とを、接合膜3を介在させて貼り合わせる際に、可撓性フィルム2と導電体4との密着性を高めることができる。
また、接合膜3の平均厚さを前記範囲内のように薄く設定することにより、接合膜3も優れた可撓性を発揮して、可撓性回路基板1を優れた可撓性を有するものとすることができる。
接合膜5は、他の可撓性フィルム6と導電体4とを接合する機能を有する。
この接合膜5は、他の可撓性フィルム6と導電体4とを接合し得るものであれば、いかなる構成のものであってもよい。
具体的には、接合膜5としては、可撓性フィルム6および導電体4の構成材料によって適宜選択されるが、例えば、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤のような接着剤、半田、ろう材等で構成されるものの他、前述した接合膜3と同様の構成のものが挙げられる。これらの中でも、接合膜5は、接合膜3と同様の構成のものであるのが好ましい。これにより、接合膜5にも、接合膜3と同様の特性を付与することができ、可撓性回路基板1を、接合膜3を備えるものとすることにより得られる効果を、可撓性回路基板1により顕著に発揮させることができる。
なお、可撓性フィルム2と接合膜3との間、および、他の可撓性フィルム6と接合膜5との間のいずれか一方または双方には、それぞれ中間層が設けられていてもよい。この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3、5との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが挙げられる。このような中間層を備える構成とすることにより、信頼性の高い可撓性回路基板1とすることができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、中間層が設けられている側の可撓性フィルムと接合膜との間の接合強度を特に高めることができる。
以上説明したような本実施形態の可撓性回路基板1は、例えば、以下のようにして形成することができる。
[I] まず、可撓性フィルム2を用意し、この可撓性フィルム2上に、後工程で形成する導電体4とほぼ同一の形状をなす接合膜3を形成する。
このような、導電体4とほぼ同一の形状をなす接合膜3は、例えば、可撓性フィルム2上の全面に接合膜3を形成した後、導電体4と同一形状をなすマスクを用意し、このマスクを用いて全面に形成された接合膜3をエッチングすること、または、導電体4と同一形状をなす開口部を有するマスクを用意し、このマスクを用いて可撓性フィルム2上に接合膜3を成膜することにより得ることができる。これらの中でも、後者により可撓性フィルム2上に、導電体4とほぼ同一の形状をなす接合膜3を形成するのが好ましい。かかる方法によれば、パターニングされた接合膜3を、直接、可撓性フィルム2上に形成することができ、接合膜3をエッチングするする必要がないため、可撓性フィルム2および接合膜3が変質・劣化等してしまうのを確実に防止することができる。
また、接合膜3を成膜する方法は、接合膜3を上述した第1の構成〜第3の構成のものとする場合に応じて異なるため、以下、各構成の接合膜3毎に、順次説明する。
[IA] まず、第1の構成の接合膜3を形成する場合、接合膜3は、各種成膜法を用いて形成することができ、例えば、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜した膜にエネルギーを付与することにより得られるが、中でも、エネルギー付与前の膜として、プラズマ重合法により成膜された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜3を効率よく成膜することができる。これにより、プラズマ重合法で成膜された接合膜3は、可撓性フィルム2と導電体4とを特に強固に接合し得るものとなる。さらに、プラズマ重合法で成膜され、エネルギーが付与される前の接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持することができる。このため、可撓性回路基板1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
以下、一例として、プラズマ重合法により、接合膜3を成膜する方法について詳述するが、まず、接合膜3の形成方法を説明するのに先立って、可撓性フィルム2上にプラズマ重合法を行いて接合膜3を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明する。
図9は、第1の構成の接合膜を成膜する際に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図9に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、可撓性フィルム2を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図9に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
第1の電極130は、板状をなしており、可撓性フィルム2を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、鉛直方向に沿って設けられており、これにより、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。なお、第1の電極130は、図9に示すように、チャンバー本体と同心状に設けられている。
第1の電極130の可撓性フィルム2を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図9に示すように、可撓性フィルム2を鉛直方向に沿って支持することができる。また、可撓性フィルム2に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で可撓性フィルム2をプラズマ処理に供することができる。
第2の電極140は、可撓性フィルム2を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図9に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して可撓性フィルム2の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による可撓性フィルム2の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
次に、可撓性フィルム2上に、接合膜3を形成する方法について説明する。
[IA−1] まず、可撓性フィルム2をプラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
[IA−2] 次いで、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
[IA−3] 次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が可撓性フィルム2上に付着・堆積する。これにより、可撓性フィルム2上に、プラズマ重合膜で構成された接合膜3が形成される。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。なお、成膜される接合膜3の厚さは、主に、この処理時間に比例する。したがって、この処理時間を調整することのみで、接合膜3の厚さを容易に調整することができる。このため、従来は、接着剤を用いて可撓性フィルム2と導電体4とを接着した場合、接着剤の厚さを厳密に制御することができなかったが、接合膜3によれば、接合膜3の厚さを厳密に制御することができるので、可撓性フィルム2と導電体4との距離を厳密に制御することができる。
また、可撓性フィルム2の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、(エネルギー付与前の)第1の構成の接合膜3を得ることができる。
[IB] また、第2の構成の接合膜3を形成する場合、接合膜3は各種成膜法を用いて形成することができ、接合膜3のほぼ全体に脱離基303を存在させる際には、例えば、IBa:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成することができる。また、接合膜3の表面35付近に偏在させる際には、例えば、IBb:金属原子と前記酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成することができる。
以下、IBaおよびIBbの方法を用いて、接合膜3を成膜する場合について、詳述する。
[IBa] IBaの方法では、接合膜3は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を可撓性フィルム2に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができるため、接合膜3のほぼ全体に亘って脱離基303を導入することができる。
さらに、PVD法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく成膜することができる。これにより、PVD法で成膜された接合膜3は、導電体4に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、PVD法で成膜された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、可撓性回路基板1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気中に、金属酸化物の粒子を叩き出すことができる。そして、金属酸化物の粒子が叩き出された状態で、脱離基303を構成する原子成分を含むガスと接触させることができるため、金属酸化物(金属原子または酸素原子)への脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。
以下、PVD法により接合膜3を成膜する方法として、スパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により、接合膜3を成膜する場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、可撓性フィルム2上にイオンビームスパッタリング法により接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図10に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜3の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置200は、チャンバー(真空チャンバー)211と、このチャンバー211内に設置され、可撓性フィルム2(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)212と、チャンバー211内に設置され、チャンバー211内に向かってイオンビームBを照射するイオン源(イオン供給部)215と、イオンビームBの照射により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物(例えば、ITO)を発生させるターゲット(金属酸化物材料)216を保持するターゲットホルダー(ターゲット保持部)217とを有している。
また、チャンバー211には、チャンバー211内に、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を供給するガス供給手段260と、チャンバー211内の排気をして圧力を制御する排気手段230とを有している。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、可撓性フィルム2上に接合膜3を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
イオン源(イオン銃)215は、図11に示すように、開口(照射口)250が形成されたイオン発生室256と、イオン発生室256内に設けられたフィラメント257と、グリッド253、254と、イオン発生室256の外側に設置された磁石255とを有している。
また、イオン発生室256には、図10に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
このイオン源215では、イオン発生室256内に、ガス供給源219からガスを供給した状態で、フィラメント257を通電加熱すると、フィラメント257から電子が放出され、放出された電子が磁石255の磁場によって運動し、イオン発生室256内に供給されたガス分子と衝突する。これにより、ガス分子がイオン化する。このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254との間の電圧勾配により、イオン発生室256内から引き出されるとともに加速され、開口250を介してイオンビームBとしてイオン源215から放出(照射)される。
イオン源215から照射されたイオンビームBは、ターゲット216の表面に衝突し、ターゲット216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
また、イオン源215は、その開口250が、基板ホルダー212と異なる方向、本実施形態では、チャンバー211の底部側を向くように設置されている。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる、イオン源215を複数設置することにより、接合膜3の成膜速度をより速くすることができる。
また、ターゲットホルダー217および基板ホルダー212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができる第1のシャッター220および第2のシャッター221が配設されている。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、可撓性フィルム2および接合膜3が、不用な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
また、排気手段230は、ポンプ232と、ポンプ232とチャンバー211とを連通する排気ライン231と、排気ライン231の途中に設けられたバルブ233とで構成されており、チャンバー211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置200を用いて、以下のようにして可撓性フィルム2上に接合膜3が形成される。
[IBa−1] まず、可撓性フィルム2を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
[IBa−2] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
[IBa−3]次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して過熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出される。このとき、チャンバー211内が脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)であることから、チャンバー211内に叩き出された粒子に含まれる金属原子および酸素原子に脱離基303が導入される。そして、この脱離基303が導入された金属酸化物が可撓性フィルム2上に被着することにより、接合膜3が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、厚さ方向のほぼ全体に亘って脱離基303が存在する接合膜3を成膜することができる。
[IBb] また、IBbの方法では、接合膜3は、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成される。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を偏在させた状態で導入することができ、接合膜および金属酸化物膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
ここで、金属酸化物膜は、いかなる方法で成膜されたものでもよく、例えば、PVD法(物理的気相成膜法)、CVD法(化学的気相成膜法)、プラズマ重合法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜することができるが、中でも、特に、PVD法により成膜するのが好ましい。PVD法によれば、緻密で均質な金属酸化物膜を効率よく成膜することができる。
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびレーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、雰囲気中に金属酸化物の粒子を叩き出して、可撓性フィルム2上に供給することができるため、特性に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
さらに、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を導入する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で金属酸化物膜を熱処理する方法、イオンインプラテーション法等が挙げられるが、中でも、特に、前者の方法を用いるのが好ましい。前者の方法によれば、比較的容易に、脱離基303を金属酸化物膜の表面付近に選択的に導入することができる。また、熱処理を施す際の、雰囲気温度や処理時間等の処理条件を適宜設定することにより、導入する脱離基303の量、さらには脱離基303が導入される金属酸化物膜の厚さの制御を的確に行うことができる。
以下、金属酸化物膜をスパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により成膜し、次に、得られた金属酸化物膜を、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で熱処理することにより、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
なお、IBbの方法を用いて接合膜3の成膜する場合も、IBaの方法を用いて接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
[IBb−1] まず、可撓性フィルム2を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
[IBb−2] 次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
[IBb−3] 次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出され、可撓性フィルム2上に被着して、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子とを含む金属酸化物膜が形成される。
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
[IBb−4] 次に、第2のシャッター221を開いた状態で、第1のシャッター220を閉じる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程において、可撓性フィルム2および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
[IBb−5] 次に、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー211内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
このように、前工程でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜3が形成される。
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
なお、チャンバー211内は、前記工程において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、表面35付近に脱離基303が偏在する接合膜3を成膜することができる。
[IC] さらに、第3の構成の接合膜3を形成する場合、接合膜3は、各種成膜法を用いて形成することができるが、例えば、IC−A:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜のほぼ全体に付与して接合膜3を形成する方法、IC−B:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜の表面付近に選択的に付与(化学修飾)して接合膜3を形成する方法、IC−C:金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、IC−Cの方法により接合膜3を成膜するのが好ましい。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜3を形成することができる。
以下、IC−Cの方法、すなわち金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法により、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置500について説明する。
図12に示す成膜装置500は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜3の形成をチャンバー511内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置500は、チャンバー(真空チャンバー)511と、このチャンバー511内に設置され、可撓性フィルム2(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)512と、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段560と、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段570と、チャンバー511内の排気をして圧力を制御する排気手段530と、基板ホルダー512を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
基板ホルダー512は、本実施形態では、チャンバー511の底部に取り付けられている。この基板ホルダー512は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、可撓性フィルム2上に接合膜を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー512の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター521が配設されている。このシャッター521は、可撓性フィルム2および接合膜3が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
有機金属材料供給手段560は、チャンバー511に接続されている。この有機金属材料供給手段560は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽562と、気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ565と、キャリアガスと気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に導くガス供給ライン561と、ガス供給ライン561の途中に設けられたポンプ564およびバルブ563とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段560では、貯留槽562は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ563を開放した状態で、ポンプ564を作動させて、キャリアガスをガスボンベ565から貯留槽562に供給すると、このキャリアガスとともに気化または霧化した有機金属材料が、供給ライン561内を通過してチャンバー511内に供給されるようになっている。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
また、本実施形態では、ガス供給手段570がチャンバー511に接続されている。ガス供給手段570は、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ575と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー511内に導くガス供給ライン571と、ガス供給ライン571の途中に設けられたポンプ574およびバルブ573とで構成されている。かかる構成のガス供給手段570では、バルブ573を開放した状態で、ポンプ574を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ575から、供給ライン571を介して、チャンバー511内に供給されるようになっている。ガス供給手段570をかかる構成とすることにより、チャンバー511内を有機金属材料に対して確実に低還元な雰囲気とすることができる。その結果、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて接合膜3を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を脱離基303として残存させた状態で接合膜3が成膜される。
チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびヘリウム、アルゴン、キセノンのような希ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜3に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜3を成膜することができる。その結果、この接合膜3は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
また、キャリアガスとして前述した窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの少なくとも1種を用いる場合には、このキャリアガスに低還元性雰囲気下とするためのガスとしての機能をも発揮させることができる。
また、排気手段530は、ポンプ532と、ポンプ532とチャンバー511とを連通する排気ライン531と、排気ライン531の途中に設けられたバルブ533とで構成されており、チャンバー511内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置500を用いてMOCVD法により、以下のようにして可撓性フィルム2上に接合膜3が形成される。
[IC−1] まず、可撓性フィルム2を成膜装置500のチャンバー511内に搬入し、基板ホルダー512に装着(セット)する。
[IC−2] 次に、排気手段530を動作させ、すなわちポンプ532を作動させた状態でバルブ533を開くことにより、チャンバー511内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、ガス供給手段570を動作させ、すなわちポンプ574を作動させた状態でバルブ573を開くことにより、チャンバー511内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段570による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10sccm程度であるのが好ましく、0.5〜5ccm程度であるのがより好ましい。
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー512を加熱する。基板ホルダー512の温度は、形成する接合膜3の種類、すなわち、接合膜3を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜300℃程度で有るのが好ましく、100〜275℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する接合膜3を成膜することができる。
[IC−3] 次に、シャッター521を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽562が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ564を動作させるとともに、バルブ563を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
このように、前記工程で基板ホルダー512が加熱された状態で、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、可撓性フィルム2上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、可撓性フィルム2上に接合膜3を形成することができる。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜3を可撓性フィルム2上に形成することができる。
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜3を確実に形成することができる。
また、本実施形態では、ガス供給手段570を動作させることにより、チャンバー511内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、可撓性フィルム2上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜3を成膜することができる。
以上のように、接合膜3を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜3を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜3に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のようにして、可撓性フィルム2上に接合膜3を成膜することができる。
[II] 次に、他の可撓性フィルム6を用意し、この可撓性フィルム6上に、後工程で形成する導電体4とほぼ同一の形状をなす接合膜5を形成する。
この可撓性フィルム6上への接合膜5の形成方法としては、各種成膜方法が用いられるが、接合膜5が接合膜3と同様の構成となっている場合には、前記工程[I]で説明したのと同様の方法が好適に用いられる。
[III] 次に、接合膜3に対してエネルギーを付与する。
ここで、接合膜3にエネルギーを付与すると、接合膜3では、脱離基303の結合手が切れて接合膜3の表面35付近から脱離し、脱離基303が脱離した後には、活性手が接合膜3の表面35付近に生じる。これにより、接合膜3の表面35に、導電体4との接着性が発現する。
このような状態のエネルギーが付与された後の接合膜3は、導電体4と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与されるものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長150〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の脱離基303を確実に脱離させることができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、150〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面35付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜3に必要以上に紫外線が照射されない程度の時間とするのが好ましい。これにより、接合膜3が変質・劣化するのを効果的に防止することができる。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による接合膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、接合膜3の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基303を接合膜3の表面35付近から確実に切断することができる。
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基303を接合膜3から確実に切断することができる。
また、接合膜3に照射するレーザ光は、その焦点を、接合膜3の表面35に合わせた状態で、この表面35に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面35付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、接合膜3の表面35に存在する脱離基303を選択的に脱離させることができる。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3の表面35付近に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による可撓性フィルム2および接合膜3の変質・劣化、すなわち可撓性回路基板1の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜3と導電体4との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜3の表面35付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜3の表面35付近に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜3は、図3、図5および図7に示すように、その表面35付近に脱離基303を有している。かかる接合膜3にエネルギーを付与すると、脱離基303(図3、図7ではメチル基、図5では、水素原子)が接合膜3から脱離する。これにより、図4、図6および図8に示すように、接合膜3の表面35に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜3の表面に接着性が発現する。
ここで、本明細書中において、接合膜3が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面35および内部の脱離基303が脱離して、接合膜3の構成原子において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
したがって、活性手304とは、図4、図6および図8に示すように、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304が存在するようにすれば、導電体4に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜3に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成されることとなる。
また、本実施形態では、接合膜3を備える可撓性フィルム2を導電体4に接着する(貼り合わせる)前に、あらかじめ、接合膜3に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、接合膜3と導電体4とを貼り合わせる(重ね合わせる)際、または貼り合わせた(重ね合わせた)後に行うようにしてもよい。
なお、接合膜5が接合膜3と同様の構成である場合には、この接合膜5に対しても、上記と同様にして、エネルギーを付与する。
[IV] 次に、所定の形状にパターニングされた導電体4を用意する。
このような導電体4は、各種方法を用いて形成することができるが、例えば、まず、基板の一方の面の全面に仮固定された導電体を形成した後、この導電体を所定の形状にパターニングする。そして、パターニングされた導電体を、基板上から剥離(離型)することにより得ることができる。
[V] 次に、接着性が発現してなる接合膜3を備える可撓性フィルム2と、導電体4とが密着するように、可撓性フィルム2と導電体4とを貼り合わせる。そして、接合膜5が接合膜3と同様の構成である場合には、接着性が発現してなる接合膜5を備える他の可撓性フィルム6と、導電体4とが密着するように、他の可撓性フィルム6と導電体4とを貼り合わせる。
これにより、可撓性フィルム2と導電体4とを、接合膜3を介して接合(接着)することができるとともに、他の可撓性フィルム6と導電体4とを、接合膜5を介して接合(接着)することができる。
なお、本工程において、接合膜3(接合膜5)と導電体4とが接合されるメカニズムは、以下の通りであると推察される。
例えば、導電体4が上述したような金属系材料で構成されているとすると、導電体4の可撓性フィルム2との接合に供される領域の表面に、水酸基が露出していると考えられる。このように導電体4から水酸基が露出していると、本工程において、接合膜3と導電体4とが接触するように、可撓性フィルム2と導電体4とを貼り合わせたとき、接合膜3の表面35に存在する水酸基と、導電体4の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜3と導電体4とが強固に接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜3と導電体4との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜3と導電体4とがより強固に接合されると推察される。
なお、前記工程[III]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[III]の終了後、できるだけ早く本工程[V]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[III]の終了後、60分以内に本工程[V]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜3を備える可撓性フィルム2と導電体4とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
このようにして接合された可撓性フィルム2と導電体4との間は、その接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度であれば、接合界面の剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、信頼性の高い可撓性回路基板1が得られる。
なお、上記では、可撓性フィルム2上に成膜された接合膜3と導電体4とが密着するように、可撓性フィルム2と導電体4とを貼り合わせる場合について説明しているが、導電体4の下面に成膜された接合膜3と可撓性フィルム2とが密着するように、可撓性フィルム2と導電体4とを貼り合わせるようにしてもよい。
[VI] 次に、導電体4が備える第1の電極42に対応する領域に位置する、他の可撓性フィルム6および接合膜5を除去することにより、開口部61を形成する。
この開口部61の形成は、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
なお、上記のように、他の可撓性フィルム6を導電体4に接合した後に開口部61を形成するのに代えて、あらかじめ開口部61が形成された可撓性フィルム6を用意し、この可撓性フィルム6を導電体4に接合するようにしてもよい。
以上のようにして、本実施形態の可撓性回路基板1を製造することができる。
また、可撓性回路基板1を得た後、この可撓性回路基板1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([VIIA]および[VIIB])のうちの少なくとも1つの工程(可撓性回路基板1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、可撓性回路基板1の各部の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
[VIIA]得られた可撓性回路基板1を圧縮するように、すなわち、可撓性フィルム2、接合膜3、導電体4、接合膜5および他の可撓性フィルム6が互いに近づく方向に加圧する。
これにより、上記各部の表面と隣接する接合膜の表面とがより近接し、可撓性回路基板1における接合強度をより高めることができる。
また、可撓性回路基板1を加圧することにより、可撓性回路基板1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、可撓性回路基板1における接合強度をさらに高めることができる。
このとき、可撓性回路基板1を加圧する際の圧力は、可撓性回路基板1が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して可撓性回路基板1における接合強度を高めることができる。
なお、この圧力は、可撓性回路基板1の各部の構成材料や形状、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、上記条件に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、可撓性回路基板1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、可撓性回路基板1の各部の構成材料によっては、可撓性回路基板1に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、可撓性回路基板1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
[VIIB]得られた可撓性回路基板1を加熱する。
これにより、可撓性回路基板1における接合強度をより高めることができる。
また、本実施形態では、図2に示すように、可撓性フィルム2の導電体4が存在しない領域では、可撓性フィルム2と他の可撓性フィルム6とが直接接合することとなるが、このように、可撓性回路基板1を加熱する構成とすることにより、可撓性フィルム2と他の可撓性フィルム6との接合強度を確実に高めることができる。
このとき、可撓性回路基板1を加熱する際の温度は、室温より高く、可撓性回路基板1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、可撓性回路基板1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
なお、前記工程[VIIA]、[VIIB]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、可撓性回路基板1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、可撓性回路基板1の接合強度を特に高めることができる。さらに、可撓性フィルム2上の導電体4が存在しない領域における、可撓性フィルム2と他の可撓性フィルム6との接合強度をも高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、可撓性回路基板1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
<第2実施形態>
まず、本発明の可撓性回路基板の第2実施形態について説明する。
図13は、本発明の可撓性回路基板の第2実施形態を示す平面図、図14は、図13に示す可撓性回路基板のA−A線断面図である。なお、以下の説明では、図14中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、可撓性回路基板1の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態に記載の可撓性回路基板1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態の可撓性回路基板1では、可撓性フィルム2の上面のほぼ全面に亘って接合膜3を形成し、他の可撓性フィルム6の下面のほぼ全面に亘って接合膜5を形成するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
以上のような第2実施形態の可撓性回路基板1においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
さらに、可撓性回路基板1の導電体4が存在しない領域においても、接合膜3および接合膜5が設けられた構成とすることにより、かかる領域においても、確実に、2つの可撓性フィルム2、6同士を確実に接合することができることから、可撓性回路基板1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
なお、かかる構成の可撓性回路基板1では、隣接する導電体4同士が短絡するのを防止するために、接合膜3および接合膜5は、絶縁性材料で構成される必要がある。かかる観点から、接合膜3および接合膜5は、前記第1実施形態で説明した接合膜のうち、優れた絶縁性を示す第1の構成のものが特に好適に用いられる。
<電子機器>
このような可撓性回路基板1は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図15は、本発明の電子機器を適用したハードディスクドライブの構成を示す部分平面図である。
この図において、ハードディスクドライブ1300は、ケーシング1301と、ケーシング内に配置された磁気ディスク1305と、磁気ディスク1305を回動駆動させるモータ1304と、磁気ディスクにデータの読み書きを行う磁気ヘッド1306と、磁気ヘッド1306を磁気ディスク1305の任意の位置に移動させるスイングアーム13022と、スイングアーム1302を駆動させる駆動装置1303とを有している。
磁気ヘッド1306は、図示のとおり、スイングアーム1302の先端部に設けられており、駆動装置1303を駆動してスイングアーム1302を移動させることにより、磁気ディスク1305の任意の位置に位置する。
このハードディスクドライブ1300において、磁気ヘッド1306が読み書きするデータは、スイングアーム1302に設けられた接続端子1308と、ケーシング1301に設けられた接続端子1307とを電気的に接続する接続部を介して、ハードディスクドライブ1300本体に伝達されるが、この接続部として可撓性回路基板1が設けられている。
図16は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1103を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部1105を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、ヒンジ構造部1105内部に、本体部1104と表示ユニット1106とを電気的に接続する接続部として可撓性回路基板1が設けられている。
図17は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202および受話口1206を備えた本体部1203と、送話口1204および表示部1201とを備えた表示ユニット1207とにより構成され、表示ユニット1207は、本体部1203に対しヒンジ構造部1205を介して回動可能に支持されている。
この携帯電話機1200において、ヒンジ構造部1205内部に、本体部1203と表示ユニット1207とを電気的に接続する接続部として可撓性回路基板1が設けられている。
なお、本発明の電子機器は、図15のハードディスクドライブ、図16のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図17の携帯電話機の他にも、例えば、プリンター、フロッピーディスクドライブ(「フロッピー」は登録商標)、テレビ、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、車載用レーダ探知機、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等の電子機器に適用することができる。
以上、本発明の可撓性回路基板および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の可撓性回路基板の各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成と置換することができ、その他の構成が付加されていてもよい。
例えば、前記各実施形態では、導電体上に、他の可撓性フィルムが接合膜を介して設けられている場合について説明したが、本発明の可撓性回路基板では、これら他の可撓性フィルムおよび接合膜を、必ずしも設ける必要はなく、省略することもできる。
また、前記各実施形態では、可撓性フィルムの上面に導電体が接合膜を介して設けられている場合について説明したが、この場合に限定されず、可撓性フィルムの上面および下面の双方に導電体が接合膜を介して設けられていてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.可撓性回路基板の製造
(実施例1)
<1>まず、2枚のポリイミドフィルム(縦5cm×横10cm×平均厚さ30μm)を用意した。
<2>次に、2枚のポリイミドフィルムを、図9に示すプラズマ重合装置のチャンバー内に収納し、それぞれに、平均厚さ200nmのプラズマ重合膜(接合膜)を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<成膜条件>
・原料ガスの組成 :オクタメチルトリシロキサン
・原料ガスの流量 :50sccm
・キャリアガスの組成:アルゴン
・キャリアガスの流量:100sccm
・高周波電力の出力 :100W
・チャンバー内圧力 :1Pa(低真空)
・処理時間 :15分
・基板温度 :20℃
このようにして成膜されたプラズマ重合膜は、オクタメチルトリシロキサン(原料ガス)の重合物で構成されており、シロキサン結合を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格と、アルキル基(脱離基)とを含むものである。
<3>次に、得られたプラズマ重合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
<4>次に、3枚の銅板(縦3mm×横7cm×平均厚さ40μm)を用意し、前記工程<3>で紫外線を照射してから1分後に、この3枚の銅板を2枚のポリイミドフィルム同士の間に介在させた状態で、ポリイミドフィルムが備える接合膜の紫外線を照射した面同士が接触するように、ポリイミドフィルム同士を重ね合わせた。これにより、実施例1の可撓性回路基板を得た。
<5>次に、得られた可撓性回路基板を10MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(実施例2)
<1>まず、2枚のポリイミドフィルム(縦5cm×横10cm×平均厚さ30μm)を用意した。
<2>次に、2枚のポリイミドフィルムを、図10に示す成膜装置のチャンバー内に収納し、それぞれに、ITOに水素原子が導入された接合膜(平均厚さ100nm)を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ITO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
このようにして成膜された接合膜は、ITOに水素原子が導入されたもので構成されており、金属原子(インジウムおよびスズ)と、この金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基(水素原子)とを含むものである。
<3>次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
<4>次に、3枚の銅板(縦3mm×横7cm×平均厚さ40μm)を用意し、前記工程<3>で紫外線を照射してから1分後に、この3枚の銅板を2枚のポリイミドフィルム同士の間に介在させた状態で、ポリイミドフィルムが備える接合膜の紫外線を照射した面同士が接触するように、ポリイミドフィルム同士を重ね合わせた。これにより、実施例2の可撓性回路基板を得た。
<5>次に、得られた可撓性回路基板を10MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(実施例3)
<1>まず、2枚のポリイミドフィルム(縦5cm×横10cm×平均厚さ30μm)を用意した。
<2>次に、2枚のポリイミドフィルムを、図10に示す成膜装置のチャンバー内に収納し、それぞれに、イオンビームスパッタリング法を用いて、金属酸化物膜として、平均厚さ100nmのITO膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ITO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
<3>次に、得られた金属酸化物膜に、以下に示す条件で熱処理を施して、金属酸化物膜(ITO膜)の表面付近に水素原子を導入することにより接合膜を形成した。なお、熱処理の条件は以下に示す通りである。
<熱処理の条件>
・熱処理時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :150℃
・処理時間 :60分
以上のようにして成膜された接合膜は、ITO膜の表面付近に水素原子が導入されたもので構成されており、金属原子(インジウムおよびスズ)と、この金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基(水素原子)とを含むものである。
<4>次に、得られたプラズマ重合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
<5>次に、3枚の銅板(縦3mm×横7cm×平均厚さ40μm)を用意し、前記工程<4>で紫外線を照射してから1分後に、この3枚の銅板を2枚のポリイミドフィルム同士の間に介在させた状態で、ポリイミドフィルムが備える接合膜の紫外線を照射した面同士が接触するように、ポリイミドフィルム同士を重ね合わせた。これにより、実施例3の可撓性回路基板を得た。
<6>次に、得られた可撓性回路基板を10MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(実施例4)
<1>まず、2枚のポリイミドフィルム(縦5cm×横10cm×平均厚さ30μm)を用意した。
<2>次に、2枚のポリイミドフィルムを、図12に示す成膜装置のチャンバー内に収納し、それぞれに、原材料を2,4−ペンタジオネート−銅(II)とし、MOCVD法を用いて、平均厚さ100nmの接合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
<成膜条件>
・チャンバー内の雰囲気 :窒素ガス + 水素ガス
・有機金属材料(原材料) :2,4−ペンタジオネート−銅(II)
・霧化した有機金属材料の流量 :1sccm
・キャリアガス :窒素ガス
・キャリアガスの流量 :500sccm
・水素ガスの流量 :0.2sccm
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・基板ホルダーの温度 :275℃
・処理時間 :10分
以上のようにして成膜された接合膜は、金属原子として銅原子を含み、脱離基として、2,4−ペンタジオネート−銅(II)に含まれる有機物の一部が残存しているものである。
<3>次に、得られたプラズマ重合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
<4>次に、3枚の銅板(縦3mm×横7cm×平均厚さ40μm)を用意し、前記工程<3>で紫外線を照射してから1分後に、この3枚の銅板を2枚のポリイミドフィルム同士の間に介在させた状態で、ポリイミドフィルムが備える接合膜の紫外線を照射した面同士が接触するように、ポリイミドフィルム同士を重ね合わせた。これにより、実施例4の可撓性回路基板を得た。
<5>次に、得られた可撓性回路基板を10MPaで加圧しつつ、120℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
(比較例)
前記接合膜に代えて、2つのポリイミドフィルム同士をエポキシ系接着剤で接合した以外は、前記実施例1と同様にして、可撓性回路基板を得た。
2.可撓性回路基板の評価
各実施例および比較例で得られた可撓性回路基板について、それぞれ、MIT形試験機による耐折強さ試験方法(JIS P8115に準拠)に基づいて、下記の条件で15分間、屈曲を繰返し行った。
<屈曲条件>
・折り曲げ半径 :0.38mm
・荷重 :500g
・折り曲げ速度 :175回/分
・折り曲げ角度 :135°
以上のような条件で、屈曲を繰返し行った可撓性回路基板について、ポリイミドフィルムと銅板の間の剥離を確認したところ、比較例の可撓性回路基板では剥離が認められたものの、各実施例の可撓性回路基板では、いずれも剥離が認められなかった。
本発明の可撓性回路基板の第1実施形態を示す平面図である。 図1に示す可撓性回路基板のA−A線断面図である。 第1の構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 第1の構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 第2の構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 第2の構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 第3の構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。 第3の構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。 第1の構成の接合膜を成膜する際に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す縦断面図である。 第2の構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 図10に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。 第3の構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。 本発明の可撓性回路基板の第2実施形態を示す平面図である。 図13に示す可撓性回路基板のA−A線断面図である。 本発明の電子機器を適用したハードディスクドライブの構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。 本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
符号の説明
1……可撓性回路基板 2……可撓性フィルム 3、5……接合膜 35……表面 301……Si骨格 302……シロキサン結合 303……脱離基 304……活性手 4……導電体 41……配線 42……第1の電極 6……他の可撓性フィルム 61……開口部 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 200……成膜装置 211……チャンバー 212……基板ホルダー 215……イオン源 216……ターゲット 217……ターゲットホルダー 219……ガス供給源 220……第1のシャッター 221……第2のシャッター 230……排気手段 231……排気ライン 232……ポンプ 233……バルブ 250……開口 253……グリッド 254……グリッド 255……磁石 256……イオン発生室 257……フィラメント 260……ガス供給手段 261……ガス供給ライン 262……ポンプ 263……バルブ 264……ガスボンベ 500……成膜装置 511……チャンバー 512……基板ホルダー 521……シャッター 530……排気手段 531……排気ライン 532……ポンプ 533……バルブ 560……有機金属材料供給手段 561……ガス供給ライン 562……貯留槽 563……バルブ 564……ポンプ 565……ガスボンベ 570……ガス供給手段 571……ガス供給ライン 573……バルブ 574……ポンプ 575……ガスボンベ 1100‥‥パーソナルコンピュータ 1102‥‥キーボード 1104、1203‥‥本体部 1105、1205‥‥ヒンジ構造部 1106、1207‥‥表示ユニット 1200‥‥携帯電話機 1202‥‥操作ボタン 1204‥‥送話口 1206‥‥受話口 1300‥‥ハードディスクドライブ 1301‥‥ケーシング 1302‥‥スイングアーム 1303‥‥駆動装置 1304‥‥モータ 1305‥‥磁気ディスク 1306‥‥磁気ヘッド 1307、1308‥‥接続端子

Claims (22)

  1. 可撓性を有する可撓性フィルムと、
    該可撓性フィルムの一方の面側に設けられた、所定の形状にパターニングされた導電体とを有し、
    前記可撓性フィルムに、前記導電体が接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
    当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記可撓性フィルムと前記導電体とを接合していることを特徴とする可撓性回路基板。
  2. 前記接合膜を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%である請求項1に記載の可撓性回路基板。
  3. 前記接合膜中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1または2に記載の可撓性回路基板。
  4. 前記Si骨格の結晶化度は、45%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  5. 前記脱離基は、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子が前記Si骨格に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  6. 前記脱離基は、アルキル基である請求項5に記載の可撓性回路基板。
  7. 前記接合膜は、プラズマ重合法により形成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  8. 前記接合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として構成されている請求項7に記載の可撓性回路基板。
  9. 前記ポリオルガノシロキサンは、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものである請求項8に記載の可撓性回路基板。
  10. 前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし9のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  11. 前記接合膜は、流動性を有しない固体状のものである請求項1ないし10のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  12. 前記可撓性フィルムは、樹脂系材料を主材料として構成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  13. 前記導電体は、金属系材料を主材料として構成されている請求項1ないし12のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  14. 前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および、前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし13のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  15. 前記エネルギー線は、波長150〜300nmの紫外線である請求項14に記載の可撓性回路基板。
  16. 前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項14または15に記載の可撓性回路基板。
  17. 前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項14ないし16のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  18. 可撓性を有する可撓性フィルムと、
    該可撓性フィルムの一方の面側に設けられた、所定の形状にパターニングされた導電体とを有し、
    前記可撓性フィルムに、前記導電体が接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、金属原子と、該金属原子に結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
    当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記可撓性フィルムと前記導電体とを接合していることを特徴とする可撓性回路基板。
  19. 可撓性を有する可撓性フィルムと、
    該可撓性フィルムの一方の面側に設けられた、所定の形状にパターニングされた導電体とを有し、
    前記可撓性フィルムに、前記導電体が接合膜を介して接合されており、
    前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
    前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記可撓性フィルムと前記導電体とを接合していることを特徴とする可撓性回路基板。
  20. 前記導電体の前記可撓性フィルムと反対側に、前記可撓性フィルムと異なる他の可撓性フィルムを有し、
    当該他の可撓性フィルムが前記導電体に接合されている請求項1ないし19のいずれかに記載の可撓性回路基板。
  21. 前記他の可撓性フィルムが、前記接合膜と同様の接合膜を介して、前記導電体に接合されている請求項20に記載の可撓性回路基板。
  22. 請求項1ないし21のいずれかに記載の可撓性回路基板を備えることを特徴とする電子機器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015139954A (ja) * 2014-01-29 2015-08-03 富士システムズ株式会社 シリコーン部材の接着方法

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