JP2009099132A - 接着剤特性の計算方法、計算装置、プログラムおよび記録媒体 - Google Patents

接着剤特性の計算方法、計算装置、プログラムおよび記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】
接着剤を有する構造体の数値解析モデルの接着部強度判定について、接着剤の強度試験結果と直接比較できるようにする。
【解決手段】
構造体の数値解析モデルを構成するビーム要素について、接着面積に相当する近辺のビーム要素を探索し、それらのビーム要素に発生している応力を考慮して相当力を計算する。
【選択図】図5

Description

本発明は、接着剤を用いた接着構造における接着剤特性の計算方法、計算装置、プログラムおよび記録媒体に関する。
接着剤による接着構造は、リベットやスポット溶接などの接合手法などとともに幅広く使用されている。
スポット溶接の破断予測については、例えば特許文献1に示すように、スポット溶接部をビーム要素でモデル化した簡易モデルにおいて、ビーム要素である溶接部位回りの変形量が規定値を超えた場合のみ、詳細モデルを作成し、溶接部位周りでの応力分布を詳細に検討するといった方法を行い、計算工数を減らしながらも予測精度を維持する方法が提案されている。
また接着剤による接着構造においても、接着剤をビーム要素でモデル化する方法が簡便であり、良く使用されている。
すなわち、接着部位の各被着材間に複数のビーム要素を作成し、そのビーム要素群に発生する応力分布を接着剤の応力分布として評価する方法である。
ビーム要素は被着材の節点間を結ぶだけでモデル化でき、ソリッド要素でモデル化する方法に比べて要素のアスペクト比を問題にすることなくモデル化が可能であることから、広く使用されている。
本発明者らの知見によれば、この方法においては、接着剤の破壊判定を行うには、接着部位における最大応力が重要である。その理由を図2b、図2aを用いて説明する。図2bは、接着剤のカタログ値に記載されている強度値を算出するために実施する破壊試験で用いる試験片を模式的に示した図である。接着面積4は試験片の接着面積を示しており、図2aはその接着界面におけるせん断応力の分布を示したものである。従来技術においては、図2aに示すように、接着部位においては最大応力は接着端部で発生するため、ビーム要素に発生した応力のうち、最大応力となる応力値をカタログ値などと比較し、破断の有無を判断していた。つまり、接着部の破壊起点を評価するには、接着端部で発生する最大応力値を把握することが重要であった。あくまで最大応力値が重要なのであり、発生応力を接着面積で除した、接着部における応力の平均値が重要なのではない。
特開2002-35986号公報
しかしながら、本発明者らの知見によれば、上記従来の技術には次のような問題点があった。
スポット溶接部で問題となる力は、面直交の引きはがし力のみであることが多いことから、スポット溶接部の応力解析においては、スポット溶接部位周りの面直交方向の変形量のみに着目すればよい。
またスポット溶接では接着面に対する接着面積が小さいため、一つのスポット溶接部位を一つのビーム要素で容易にモデル化できることから、ビーム要素単体の解析結果を元にスポット溶接部の破壊判定が容易である。
これに対して接着剤による接着構造においては、引きはがし力以外の力、たとえばせん断力なども問題になることが多く、面直交方向の変形量だけを把握していたのでは強度上問題となる箇所を見出せず、スポット溶接の破断予測技術を接着構造に使用することはできなかった。
また、本発明者らの知見によれば、接着要素をビーム要素でモデル化して最大応力値で接着部が破壊に至るのかどうかを判断する場合、以下のような問題がある。
すなわち、接着剤の破壊応力値はカタログに記載されているが、この値は接着剤の強度を測定するための要素試験において、試験片の破壊強度を接着面積で除した値、すなわち、接着面に発生する応力の平均値を示している。
つまり、接着剤のカタログに記載されている接着面に発生する平均的な破壊応力値と、端部に高い応力集中が生じる現象を考慮に入れた解析結果として得られる接着端部のビーム要素に発生した最大応力値を比較すると、構造体の接着部の破壊評価には大きな誤差を生じる原因になってしまう。
言い換えれば、カタログに記載されている破壊応力値は、試験片の破壊強度を接着面積で除した値(接着面に発生する応力の平均値)であるから、応力値としては、たとえ端部であろうが、接着面積で平均化された値が出ることになり、現実には端部で発生する高い応力値でしか破壊しないものが小さい応力値で破壊してしまうという誤解を生じ、余計な安全率を考慮した設計となってしまうのである。
この問題を避けるための従来からの方法の一つは、カタログに記載されている破壊強度値で比較するのではなく、そのときに接着面で発生している最大応力値を解析を行って調べた上で比較する方法があった。すなわち、カタログに記載されている破壊強度を求めた試験と全く同じ形状で解析をビーム要素を用いて実施し、接着部のビーム要素に発生する最大応力値を計算するのである。
つまり、コストと時間をかけて余分に解析を行い、カタログ値に記載の強度における最大応力値を求め、この値を構造体に発生した最大応力値と比較するのである。接着剤の種類が変われば、その種類だけ最大応力値を調べるためにカタログに記載されている強度試験と同じ解析を実施する必要がある。
しかし、このような方法で別途有限要素解析を行ったとしても、次のような問題も生じていた。すなわち、接着剤に発生する応力場は、先に記したように接着端部で応力が最大となるため、接着部をモデル化するビーム要素の本数や、ビーム要素の配置により端部に発生する最大応力値の誤差は大きくなる。
図3bは図2bに記載の試験片を有限要素モデルでモデル化した場合の一例を示す模式図である。接着面積4内には複数のビーム要素が設けられており、それらの断面積の和は接着面積4と等しくなるようにモデル化されている。図3aは試験片に引張応力を加えた場合に図3bに示した接着層を示すビーム要素に発生するせん断応力の分布を示したものである。
すなわち、カタログ値記載の破壊荷重値を本モデルに加えた計算を行った場合、すべてのビーム要素に発生する荷重の和を計算すれば、接着面積4に発生する荷重、すなわちカタログ値記載の破壊荷重値と等しくなり、これを接着面積4で除した値は、接着面積4に発生する平均応力となる。
また、図4bも図3bと同様に図2に記載の試験片を有限要素モデルでモデル化した場合の一例を示す模式図であるが、図3bとは異なり、ビーム要素の本数が少ないケースを示したものである。そして図4aは試験片に引張応力を加えた場合に図4bに示した接着層を示すビーム要素に発生するせん断応力の分布を示したものである。
具体的には、図3a、図3bに示すようにビーム要素の本数が多い場合は最大応力値は高くなるが、図4a,図4bのようにビーム要素の本数が少なくなると最大応力値は低下してしまう。つまり、最大応力値の精度を高めるために、ビーム要素の本数を多く設定した場合は、解析の計算コストが高くなることや計算時間が長くかかる問題がある。一方、ビーム要素の本数を少なく設定した場合は、解析が低コストかつ計算が短時間で済むが、最大応力値の精度が低くなってしまうといった問題が生じるのである。
すなわち、ビーム要素に発生する最大応力値による比較では、接着剤の強度試験を解析するといった余分な計算を行う必要があったり、モデル化の方法によって解析精度に影響を受けたりする問題があり、設計者が簡便に使用して強度判断することができなかった。
本発明の目的は、計算コストが低く、高精度に接着部の破壊などが判別可能な、接着剤特性の計算方法、計算装置、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明によれば、2枚の被着材を接着剤で接着した接着構造を、前記各被着材をシェル要素として、前記接着剤をビーム要素としてモデル化する有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法であって、接着剤特性の計算対象とする特性計算ビーム要素の近傍に位置する近傍ビーム要素を設定し、前記特性計算ビーム要素と前記近傍ビーム要素の物理量と有限要素解析による計算結果から、前記特性計算ビーム要素における接着剤特性を計算することを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記近傍ビーム要素を設定するに際し、予め接着剤特性評価エリアを入力しておき、前記接着剤特性評価エリア内のビーム要素を前記近傍ビーム要素として設定することを特徴とする有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記接着剤特性評価エリアの面積を、既知の接着剤特性の測定条件と比較できる面積に基づいて設定する有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記近傍ビーム要素を設定する方法として、特性計算ビーム要素の構成節点を共有するシェル要素の構成節点情報を用いることを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記接着剤特性評価エリアの形状として、特性計算ビーム要素を中心とする円形を用いることを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記接着剤特性について、特性計算ビーム要素の両端でそれぞれ計算することを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記接着剤特性として、接着強度を用いることを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法が提供される。
また、本発明の別の形態によれば、2枚の被着材を接着剤で接着した接着構造を、前記各被着材をシェル要素として、前記接着剤をビーム要素でモデル化する有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置であって、接着剤特性の計算対象とする特性計算ビーム要素の近傍に位置する近傍ビーム要素を設定する近傍ビーム要素設定手段と、前記特性計算ビーム要素と前記近傍ビーム要素の物理量と有限要素解析による計算結果から、前記特性計算ビーム要素における接着剤特性を計算する特性計算手段とを有することを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記近傍ビーム要素を設定するに際し、予め接着剤特性評価エリアを入力する接着剤特性評価エリア入力手段と、前記近傍ビーム要素設定手段が前記接着剤特性評価エリア内のビーム要素を前記近傍ビーム要素として設定するものであることを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記近傍ビーム要素設定手段において、近傍ビーム要素を設定する方法として、特性計算ビーム要素の構成節点を共有するシェル要素の構成節点情報を使用することを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記接着剤特性評価エリアの形状が特性計算ビーム要素を中心とする円形であることを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記接着剤特性について、特性計算ビーム要素の両端でそれぞれ計算することを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記接着剤特性として、接着強度を用いることを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、有限要素解析モデルの接着剤特性の計算方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
以下に用語を定義する。
本発明において、「被着材」とは、接着剤により接合される母材をいう。接着面において形状が平らである必要は無く、曲面を形成していても良い。また接着部で対向する2枚の被着材は、平行である必要は無く、肉厚も一様厚さである必要は無い。
本発明において、「接着剤」とは、接合部をともに形成する被着材とは別の材料で構成される物質であり、リベット接合や溶接接合とは異なり、被着材との接合の時には、被着材よりも低いヤング率をもった非定形の物体として被着材表面に沿って密着し、ついで加熱や乾燥でもって硬化することにより被着材同士を接合するための材料などをいう。典型的には硬化前においては液体やジェル状の物体である。接着剤は結合力を向上させる観点から、被着材に前処理を行っても良いし、複数の成分から構成しても良い。また、液体だけではなく、固体や粉体でも良い。
本発明において「入力する」とは、コンピュータかオペレータに受け付けたり、またはファイルなどのデータを記憶媒体などから読み出し、コンピュータの所定のメモリーにロードすることをいう。また節点や要素を入力する際には、節点や要素の番号を直接設定してもよいし、それらを記号化したものやグループ化した番号や記号を指定しても良い。
本発明において、「ビーム要素の物理量」とは、接着要素として定義したビーム要素の定義項目を示す一般名称をいう。具体的にはビーム要素の断面積や断面形状、各部寸法、弾性率、比重、線膨張率などを示す。
本発明において、「接着剤特性」とは、接着部において解析を実施し、評価する項目をいう。具体的には破壊強度や応力、ひずみ、温度などが挙げられる。
本発明において、「シェル要素の構成節点情報」とは、各シェル要素に対して定義される、各シェル要素を構成する節点番号の情報データベースをいう。1次シェル要素の場合は3または4、2次シェル要素は6まだは8の節点番号より構成されており、シェル要素番号からそのシェル要素を構成する複数の節点番号を、また逆に、ある節点を構成要素に持つシェル要素番号を探すことができる。節点は複数のシェル要素に共有されている場合も多く、この情報データベースを利用すれば、ある節点にシェル要素を介して隣接している節点番号を調査することもできる。
本発明において「接着剤特性評価エリア」とは、接着剤相当特性を評価するためにビーム要素を中心に設定する仮想的な面積をいう。特性の一例として、例えば図7に示すような接着部位において、ビーム要素45の接着剤強度を計算する場合においては、接着特性を評価したいビーム要素45を中心に、円の面積が接着剤のカタログ値に記載の強度を測定した試験片における接着面積と一致するように円を設定する。接着剤特性エリアを用いた場合は、設定した円内に位置するビーム要素46〜49をビーム要素45の近傍ビーム要素と呼ぶ。
また接着剤の場合、要素試験としてはシングルラップ試験やダブルラップ試験が多く用いられるが、その他の試験方法でもかまわない。
本発明において「接着剤相当特性」とは、接着部を構成する各ビーム要素で発生する各種接着剤特性値を用いて計算される、接着部全体としての接着剤特性値を示した値である。前記図7に示す接着構造において、前記接着剤特性評価エリア内のビーム要素46〜49で発生した引張荷重とせん断荷重、各ビーム要素の面積をもとに計算される発生荷重値は、ビーム要素45を中心とする接着剤の相当特性値の一例である。
本発明において、「有限要素解析モデル」とは、コンピュータを使用して有限要素法などの数値解析手法を用いた解析に使用される一次元(ビーム要素を含む)、二次元(シェル要素を含む)または三次元的な形状を有する多数の要素の集合体として物体の形状を表現した数値解析用モデルであって、典型的には上記各要素を区分する節点(座標データ)の座標と、要素(形状を細分化したメッシュ)、各要素のプロパティ(要素の名前、グループ、要素タイプ、使用材料番号、肉厚など。特にビーム要素の場合は断面積、中心軸、せん断中心軸、応力計算位置なども含む)と各材料の物性(熱伝導率、比重、比熱、ヤング率、ポアソン比など)の情報などを記述したデータの集合をいう。ここで、上記各要素の属性は要素プロパティ、物性は材料プロパティ、ヤング率は縦弾性係数などと呼ばれることがある。
本発明の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法によれば、接着剤特性を簡便に計算でき、例えば接着剤強度においては、実験で求めた接着剤の試験強度と簡単に比較でき、強度判定が可能な接着剤相当強度値を計算できる。これにより、解析の精度向上のために必要であった接着剤の破壊試験に関する解析を行う必要がなく、かつ解析精度を維持することができる。
以下、本発明の最良の実施形態の一例を、添付の図面を参照しながら説明する。
なお本説明では、接着部を有する構造体に関して、接着部の破壊判定を行うことを目的とした構造解析に関して記述する。
図1は、本実施形態における接着部を有する接着構造の模式図を示す。100は被着材が被着材1と被着材2から構成される接着構造であり、これらが接着剤3により接着されて構成されている。
図5は、図1に示す接着構造100のX部における接着剤3の有限要素モデルの一部を拡大して示した概略斜視図である。ビーム要素11〜15は接着剤3の有限要素モデルを示しており、重心位置21〜25は各ビーム要素の重心位置を示している。ビーム要素11〜15の片端節点は被着材1に、もう一端は被着材2と節点共有している。
接着剤特性評価エリア8はビーム要素11の重心位置21での一例を示している。接着剤特性評価エリア8の面積は、接着剤強度のカタログ記載の試験方法における接着面積4の面積と同じになるようにする。
このとき、ビーム要素12、14の重心位置22、24はビーム要素11の接着剤特性評価エリア8内にあり、ビーム要素11の近傍ビーム要素である。
図6は、図1に示す接着構造100のX部における有限要素モデルの一例の斜視図を示している。ビーム要素31〜33は接着剤3の有限要素モデルを示しており、シェル要素35は被着材2の有限要素モデルを示している。ビーム要素31は節点41で、ビーム要素32は節点42で、ビーム要素33は節点43で被着材2であるシェル要素に接続している。
ここで、ビーム要素31の接着剤特性を評価する場合について説明する。ビーム要素31の近傍には、ビーム要素32、33が存在しているが、これらの情報はビーム要素31が接続しているシェル要素35の節点情報を参照することで、容易に探し出すことができる。ビーム要素31の接着剤特性は、これら近傍のビーム要素の特性値より計算される。
接着剤特性評価エリア34はビーム要素31の重心位置36を中心とした円であり、接着剤特性評価エリア37はそれを節点41を中心とする被着材2上に投影したものである。接着剤特性評価エリア34および37の面積は、接着剤強度のカタログ記載の試験方法における接着面積4の面積と同じになるようにする。
本例では接着剤特性評価エリア37の内側に節点42と43が入っており、それらの節点と連結しているビーム要素32、33はビーム要素31に隣接するビーム要素である。接着剤特性評価エリア内にビーム要素が入っているかどうかを判定するには、ビーム要素の重心位置を中心とする接着剤特性評価エリア34を用いて、ビーム要素の重心位置がエリア範囲内にあるかを判断しても良いが、ビーム要素を構成する両端の節点に接着剤特性評価エリア34を投影した物性評価エリア37を用いて、ビーム要素の構成節点がエリア範囲内にあるかを判断した方が、接着構造が複雑な場合でもより正確な判定が行えるため、より好ましい。
図7は、同じく図1に示す接着構造100のX部における被着材2の端部の有限要素モデルの一例の平面図を示している。
シェル要素51、52は被着材2の一部を表しており、その四角の節点は、ビーム要素45〜50と節点を共有している。ビーム要素は紙面垂直方向に伸び、被着材1と結合している。
この図では、ビーム要素45における接着剤特性を評価する方法について示す。
ビーム要素45の近傍には、ビーム要素46〜50が存在していることは、解析モデルが保有しているシェル要素の構成節点情報を参照することで可能であり、これら近傍のビーム要素の持つ特性値より、ビーム要素45の接着剤特性値が計算できる。
接着剤特性評価エリア44は、ビーム要素45における接着剤特性評価エリアを示したものである。接着剤特性評価エリア44の面積は、接着剤強度のカタログ記載の試験方法における接着面積4の面積など、既知の接着剤特性の測定条件と比較できる面積と同じになるようにする。このように設定すれば、接着剤を示すビーム要素が十分に細かく分割されている必要があるが、接着剤特性評価エリア内のビーム要素の面積の合計はカタログ値記載の接着剤の強度試験における接着面積4の面積と等しくなり、接着剤特性評価エリア内の接着剤の荷重を計算することにより、カタログ値記載の接着強度と比較できるようになる。
ビーム要素45の断面積はA、発生荷重はFである。本例においては接着特性評価エリア44内には、ビーム要素46〜49の4本の近傍ビーム要素が存在し、それぞれの近傍ビーム要素の断面積はA2〜A5、発生荷重はF2〜F5である。
図8は本発明の解析装置の一実施形態を示すブロック図である。
本実施形態例において、(300)はコンピュータやワークステーションなどの計算機、(301)はキーボード、(302)はマウス、(303)はディスプレイ、(304)は補助記憶装置である。(304)の補助記憶装置には、ハードディスク装置の他、テープ、FD(フレキシブルディスク)、MO(光磁気ディスク)、PD(相変化光ディスク)、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)などのディスクメモリー、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)メモリー、メモリーカードなどのリムーバブルメディアも利用可能である。
補助記憶装置304には、新たに数値計算モデルを作成するためのプログラム305や元となる数値計算モデル306、接着剤の要素307が保存されている。またこれらデータは補助記憶装置304に保存されていても良いし、キーボード301やマウス302によって逐次入力することもできる。
本発明において問題を解決するための実施形態について、解析装置101を使用して図9に示す動作フローチャートに従い説明する。以下、実質的にこのフローチャートと違いのないステップについては、同図と同一の符号を付して説明を省略することがある。
パーソナルコンピュータやワークステーションなどの計算機300は、数値解析モデル入力手段308によりプログラム305および数値解析モデル306の入力を行う(ST510)。
有限要素モデルデータの作成方法は問わないが、例えば汎用の計算用モデル作成ソフト(例えば、MSC社製“PATRAN(登録商標)”やUGS社製“FEMAP(登録商標)”など)を用いることができる。またデータの入力は、ディスプレイ303を参照しながらキーボート301やマウス302の入力装置を使用して、新たに作成しても良いし、既存の数値解析モデルデータ306を補助記憶装置304から入力し、そのデータをそのまま、もしくは加工して使用しても良い。また汎用の計算用モデル作成ソフトのユーザーサブルーチン機能やマクロ機能を使用し汎用の計算用モデル作成ソフト上にて半自動的に作成しても良い。
次に接着剤の要素入力手段309により、接着剤の要素307を補助記憶装置304から計算機300に入力する(ST511)。
接着剤の要素307は、数値解析モデルデータと同様に、キーボード301、マウス302などの入力装置による入力方法でも良い。接着剤の要素307の指定方法は、要素番号を直接入力しても良いし、要素を示す記号などでも良いし、あらかじめ接着剤3の要素を含む要素をグループ化しておき、そのグループ番号を指定しても良いし、接着剤3を示す要素プロパティ番号を指定しても良い。要素番号を直接入力した場合以外は、入力された情報を元に有限要素モデルデータに照会し、要素番号に変換する。
次に接着剤特性評価エリアを用いる場合は、接着剤特性評価エリア面積入力手段310により、接着剤のカタログ値に記載の接着強度の評価試験における接着剤の接着剤特性評価エリア面積を入力する(ST512)。
ビーム要素単体に発生する応力もしくは荷重を比較した場合、先に記載したように、各ビーム要素それぞれの出力結果はビーム要素の数や配置位置などのモデル化方法の影響を受けやすい。
そこで各ビーム要素の特性値について、例えば評価したいビーム要素に対して隣接しているビーム要素との平均値としたり、特性値が一定割合まで低下する範囲におけるビーム要素の平均値としたりするなどの方法で平準化し、モデル化方法の影響を受けにくくする方法が考えられる。
接着剤特性評価エリアを用いる場合、評価したいビーム要素を中心として、近傍ビーム要素の特性値より接着剤特性評価エリア面積における荷重値に変換する。面積を接着剤の強度試験における接着面積とすることにより、その荷重値は接着剤の強度試験の試験結果における破壊荷重値と直接比較できるようになる。以下、その一例として接着剤特性評価エリア面積を用いて計算する方法について詳細を述べる。
強度評価のための接着剤の要素試験は、用途に合わせた試験でかまわないが、通常の接着部材の場合、シングルラップ試験やダブルラップ試験が強度試験として用いられ、その際に用いた試験片の接着面積を接着剤特性評価エリア面積として入力する。評価したいビーム要素の特性値の種類に合わせ、その特性を把握するための要素試験の方法は変化するため、それに合わせて各要素試験に用いる試験片の接着面積である評価エリア面積を変化させる。
次に、先に選択した接着剤の要素307を一つずつ取り出し、ST513〜ST518の処理を行う。以下、図7におけるビーム要素45(断面積Aと発生荷重F)を例に説明する。
まず、ビーム要素45の近傍ビーム要素設定手段311を用い、ビーム要素45を中心とする接着剤特性評価エリア44内にあるビーム要素を探す(ST513)。先に示したように、接着剤評価エリア44の面積は、接着剤のカタログ値記載の強度試験方法における接着面積と同じにするのが好ましい。
本例では接着剤特性評価エリア44の中心位置をビーム要素45の被着材2との共有節点上としたが、ビーム要素の幾何学的中心や重心位置でも良いし、せん断中心でも良い。
接着剤特性評価エリア44の形状は様々に設定でき、球形や円形、多角形を仮定しても良いが、通常は構造体の中で、方向性を持たずに汎用的に適用可能なように接着剤特性評価エリア44の形状は円形とするのが望ましい。
近傍ビーム要素設定手段311においては、ビーム要素45の両端それぞれの構成節点を構成要素に持つシェル要素を照会する。その結果、例えば被着材2上の節点においてはシェル要素51と52が抽出される。さらに、それらのシェル要素を構成する節点を照会し、それら節点を構成要素に持つ隣接ビーム要素46〜50を抽出する。
そして、これらビーム要素46〜50が接着剤評価エリア44内にあるかを判断する。本例においては、ビーム要素50は接着剤特性評価エリア44の外にあるので、ビーム要素50を除く隣接ビーム要素46〜49が近傍ビーム要素として選択される。
近傍ビーム要素とは、荷重を計算したいビーム要素を中心に、接着剤特性評価エリア44内にあるすべてのビーム要素のことを示す。よって本手順においては上記工程を繰り返して実施し、接着剤特性評価エリア44内のすべてのビーム要素を求める必要がある。基本的にビーム要素は、シェル要素とを接続していることから、ユーザーが直接調査する必要はなく、シェル要素の構成節点情報を参照することにより導くことができる。しかし、前述のように隣接しないビーム要素でも近傍ビーム要素に合致する場合もあるから、実際の計算においては上記手順を繰り返して行って近傍ビーム要素にならない範囲まで範囲を広げる必要がある。そこで、モデル全体が大きすぎて時間がかかるなどの理由により、対象とするビーム要素をユーザーが直接作業グループを指定することも好ましい。
そして、近傍ビーム要素特性検索手段312により、ビーム要素46〜49のビーム要素特性の中でその断面積Aと発生荷重F(i=2〜5)について検索する。次にエリア特性計算手段313により、接着剤特性評価エリア44内におけるエリア特性値の和Fを計算する。エリア特性値とは、接着剤特性評価エリア44内にあるビーム要素に発生した要素特性値から算出される値であり、、本例では特性値の一例としてビーム要素に発生する引張荷重を例にして説明する。
エリア面積和Aとエリア特性和Fは最も単純にはそれぞれ式1、2で表される。
A=A+A+A+A+A (式1)
F=F+F+F+F+F (式2)
エリア特性は計算したい特性によって計算式を変えても良く、例えばエリア内の距離や特性量に応じた重みを付けても良い。つまり、対象とするビーム要素45により近いビーム要素49の計算結果は、ビーム要素47の結果より、よりビーム要素45付近の結果を表していると考えられるため、距離に応じた重み付けを付けても良い。
さらに接着剤相当特性計算手段314により、エリア特性和Fとエリア面積和Aから接着剤特性評価エリアにおける相当特性値Fを計算する(ST517)。対象ビーム要素および対象ビーム要素を中心とする接着剤特性評価エリア44内にある近傍ビーム要素の面積の合計は、接着剤の要素試験における接着面積4に近く、接着剤のビーム要素が十分に多く設置するほど、接着剤の要素試験における接着面積4に収束していく。よってそれらのビーム要素に発生している荷重値の合計は、接着継手に発生している荷重値となり、接着剤の要素試験における破壊強度値と直接大小関係が比較可能な値となる。
このように、エリア面積和Aは、接着剤特性評価エリア44と同じ面積になるのが理想的であるが、要素分割上の誤差や接着面端部である等の理由により、面積が一致しない場合も多く存在する。例えば図6に示すビーム要素41について検討すると、ビーム要素31は接着面の端部に位置しているため、一方の節点41を中心とする接着剤特性評価エリア37における他ビーム要素はビーム要素32、ビーム要素33の2要素のみが条件に合致する。この場合、エリア断面積和はこれら3本のビーム要素の断面積となるから、接着剤特性評価エリア8のせいぜい1/4程度となる。
そこで、エリア特性和Fとエリア面積和Aを用い、式3より、接着剤相当特性F‘を求める。
F‘=F×A’÷A (式3)
ここでA‘は接着剤特性評価エリアの面積を示す。
これにより、接着剤の強度試験における接着強度と、同じ接着面積(接着剤特性評価エリア)における発生荷重値を得ることができ、すなわち本手法によれば、従来手法では破壊判定を行うために必要であった、接着剤の要素試験における最大応力値を計算する必要はなく、接着部の破壊判定を行うことが可能である。
なお、補正方法は本方法に限らず、経験式に基づく重み付けを行った補正方法も有効である。
以上の処理を、接着剤の要素番号入力手段309で指定したすべての要素について行い(ST518)、すべての要素について処理が終われば結果出力手段315により接着剤相当特性を出力する(ST519)。
本手法によれば、接着剤相当特性を構造体の接着部ごとに簡便に計算でき、構造体の接着部が要素試験と比較して破壊しないかどうかを判断することが可能である。
なお、本形態においては、接着材特性の一例として接着剤の引張強度について述べたが、例えば温度分布やそり量などのその他の接着剤特性値についても同様の評価が可能である。
上述のとおり、本実施形態の有限要素解析モデルの強度計算方法は、コンピュータにロードされたソフトウェアによって実現されている。かかるプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等の有形記憶媒体や、有線もしくは無線のネットワークなどの伝送経路を通じて流通される。
本実施形態の手法をCFRP製被着材と接着剤のDCB試験、及びENF試験の破壊強度予測解析に適用した場合について説明する。
(実施例1)
DCB試験(JIS K7086−1993)はCFRP層間の引きはがし強度を測定するための試験方法であり、本例ではこれを接着剤の引きはがし強度の測定に応用した。2枚の被着材の一端を残して接着し、未接着側の一端にタブを取り付け引張力を上下方向に与え、接着剤端部から破壊する際の荷重を引きはがし強度とする。図10にDCB試験の試験片形状を示す。
被着材は東レ製T700−24K平織クロス材を擬似等方に積層し、RTM(Resin Transfer Molding)成形法により厚み約1mmになるように成形したCFRP積層板を用いた。接着強度を確保するため、積層材の表面にはナイロンメッシュを積層・成形し、成形後にナイロンメッシュをはがすことでCFRP成形板の表面に凹凸ができるようにした。接着剤はウレタン系接着剤を用いて厚み1.0mmになるように塗布し、幅25mm、長さ150mm(内、接着部長さ110mm)、厚さ約3mmのCFRP/接着剤試験片を作成後、未接着端部にアルミ製タブ604、605(幅25mm×高さ10mm×長さ10mm)を同じ接着剤を用いて接着して作成した。DCB試験はN=2で実施し、引きはがし破壊時の荷重および荷重付与点の変位量を求めた。図11に荷重−荷重点変位線図を示す。DCB試験の実験結果の平均値は破壊荷重は97.8N、破壊発生時の荷重点変位量は7.30mmであった。
また一方、CAE解析において破壊判定基準とする接着剤の引きはがし強度を求めるため、接着剤の引きはがし試験をJASO M406−87記載のクロスピール試験法(接着面積625mm)に基づき実施し、破壊強度1.437kNを得た。すなわち、接着面積における引きはがし強度は1.437/625=0.023GPa=2.3MPaであった。
以上の実験結果を踏まえ、DCB試験についてCAE解析より引きはがし強度を推定した。DCB試験片のCAE解析モデルは実験と同様の形状とし、図12に示すように節点数16578、要素数18909、約1mmピッチでモデルを作成した。被着材である2枚のCFRP積層板はシェル要素でモデル化し、被着材間を接着する接着剤はCFRP積層板であるシェル要素を構成する節点間を結ぶようにビーム要素で作成した。各ビーム要素にはそのビーム要素が位置する接着剤の面積と一致するような断面特性を各ビーム要素ごとに与えた。接着剤の応力ひずみ関係は非線形性を考慮してモデル化し、各ビーム要素に発生する引きはがし応力を構造非線形解析により求めた。
各ビーム要素に発生した引きはがし応力から接着剤特性の一種である相当引張応力を計算する方法について、図13のビーム要素606の場合を例に説明する。図13は図12の点線部をCFRP積層板の上方から見た拡大図である。この図において、接着剤のビーム要素は紙面垂直方向に位置しており、丸印で示しているCFRP積層板の節点はビーム要素と節点を共有している。またCFRP積層板は前方一枚のみを図示している。ビーム要素の破壊判定基準となる接着剤の引きはがし強度はクロスピール試験の結果を用いることから、CAE解析において破壊判定を行う接着剤特性評価エリアの面積Sはクロスピール試験の接着面積(625mm)、また評価エリアの形状は円形、すなわち半径14.1mmの円形とした。すなわち、ビーム要素606の要素重心を中心に半径rの円608を設定して円内に重心を有する近傍ビーム要素を検索し、139本のビーム要素を選んだ。そして次に選んだ139本の近傍ビーム要素とビーム要素606に発生した引きはがし応力を足してこれらのビーム要素の面積和で除した値、すなわちビーム要素606の接着剤特性評価エリアにおける引きはがし応力の平均値をビーム要素606の相当引張応力とした。すべてのビーム要素について同様の方法で相当引張応力を計算して最大となるビーム要素を探索した結果、図12のビーム要素607で計算された相当引張応力が最も高く、荷重96Nを付与した際の相当引張応力が2.3MPaとなり、クロスピール試験により求めた接着剤の引きはがし強度を超えたため、CAE計算によるDCB試験の引きはがし強度を荷重96Nとした。図11にCAE計算による荷重と荷重点変位の関係を実験値とともに示す。なおこのときの荷重点変位量は7.20mmであった。この結果について、解析結果を実験結果と比較したところ、破壊強度は1.9%、荷重点変位量は1.3%の誤差であり、解析結果は実験結果と良く一致した。
(比較例1)
同じDCB試験について、CAE解析モデルは実施例1と同じモデルを使用し、従来技術を用いて破壊判定を実施した。すなわち接着剤の材料物性は線形を仮定し、各ビーム要素で発生した引張応力を接着剤のクロスピールプライ試験における引きはがし強度と直接比較し、DCB試験の破壊荷重値を求めた。その結果、荷重=8.09Nを付与したときにビーム要素の最大引張応力が材料強度を超え、破壊判定された。なおこのときの荷重点変位量は0.68mmであった。この結果について、解析結果を実験結果と比較したところ、破壊強度は91.3%、荷重点変位量は90.7%の誤差が発生し、解析結果は実験結果と一致しなかった。
(実施例2)
ENF試験(JIS K7086−1993)はCFRP層間のせん断強度を測定するための試験方法の一手法であり、本例ではこれを接着剤のせん断強度の測定に応用した。2枚の被着材の一端を残して接着し、三点曲げ試験で接着剤端部から接着面がせん断破壊する際の強度を求める。図14にENF試験の試験片形状を示す。
DCB試験と同様にCFRP製被着材611、612を用い、間に接着剤613を挟んで接着し、支点間距離100mm、圧子径5mm、支点径3mmで三点曲げ試験を行った。
被着材は東レ製T700−24K平織クロス材を0度(試験片長手方向)に積層し、実施例1と同様にRTM成形により厚み約2mmになるように成形した。接着剤はウレタン系接着剤を厚み1.0mmになるように塗布し、幅25mm、長さ150mm(内、接着部長さ110mm)、厚さ約43mmのCFRP/接着剤試験片を作成した。
ENF試験はN=3で実施し、破壊発生時の荷重点変位量および破壊荷重を求めた。なお、実験の平均値は破壊荷重は3.33kN、破壊発生時の荷重点変位量は7.75mmであった。
また一方、CAE解析において破壊判定基準とする接着剤のせん断破壊強度求めるため、接着剤の引張せん断強度試験をJASO M406−87記載の引張せん断接着強さ試験法(接着面積312.5mm)に基づき実施し、破壊強度5.562kNを得た。すなわち、接着面積における引張せん断強度は5.562/312.5=17.8MPaであった。
以上の実験結果を踏まえ、ENF試験についてCAE解析よりせん断強度を推定した。ENF試験の解析モデルもDCB試験と同様に作成し、節点数は8154、要素数は10824であった。CFRP積層板はシェル要素、接着剤はシェル要素の節点間を結ぶようにビーム要素で作成し、各ビーム要素には、そのビーム要素が位置する接着剤の面積と一致するような断面特性を各ビーム要素ごとに与えて解析した。また、実施例1と同様に、接着剤の応力ひずみ関係は非線形性を考慮してモデル化し、各ビーム要素に発生する引きはがし応力を構造非線形解析により求めた。
各ビーム要素に発生したせん断応力から、実施例1と同様の手法により、各ビーム要素での相当せん断応力を計算した。その結果、最も応力が高い要素では、荷重3.8kNを付与した際に、ビーム要素に発生する相当せん断応力が17.7MPaとなり、接着剤のせん断強度を超え、破壊に至ったと判定された。図12に荷重と荷重点変位の関係を実験値とともに示す。なおこのときの荷重点変位量は7.68mmであり、解析と実験値の平均値との差は、荷重点変位量は0.9%、破壊強度は14%と良い一致を示した。
(比較例2)
同じENF試験について、CAE解析モデルは実施例2と同じモデルを使用し、従来技術を用いて破壊判定を実施した。すなわち接着剤の材料物性は線形を仮定し、各ビーム要素で発生したせん断応力を接着剤のせん断強度と直接比較し、ENF試験の破壊荷重値を求めた。その結果、荷重=1.68kNを付与すると、ビーム要素に発生する最大引張応力が材料強度を超え、破壊判定された。なおこのときの荷重点変位量は1.74mmであった。この結果について、解析結果を実験結果と比較したところ、破壊強度は49.5%、荷重点変位量は77.5%の誤差が発生し、解析結果は実験結果と一致しなかった
上記のDCB試験、およびENF試験の結果をまとめたものを表1に示す。
Figure 2009099132
本発明は有限要素法を用いた接着部特性の計算方法として有効であるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。
本実施形態における接着構造の模式図である。 図2bの試験片の接着界面におけるせん断応力の分布を示したものである。 接着剤のカタログ値に記載されている強度値を算出するために実施する破壊試験で用いる試験片を模式的に示した図である。 図3bの試験片の接着構造におけるビーム要素で発生するせん断力分布を示したものである。 図2bに記載の試験片を有限要素モデルでモデル化した場合の一例を示す模式図である。 図4bの試験片の接着構造におけるビーム要素で発生するせん断力分布を示したものである。 図2bに記載の試験片を有限要素モデルでモデル化した場合の一例を示す模式図であり、図3bに示した図よりビーム要素の本数が少ないケースを示したものである。 接着構造100のX部における接着剤3の有限要素モデルの一部を拡大して示した概略斜視図である。 接着構造100のX部における有限要素モデルの一例の斜視図である。 接着構造100のX部における被着材2の端部の有限要素モデルの一例の平面図である。 本発明の解析装置の一実施形態を示すブロック図である。 本発明の有限要素モデルの作成方法の一例を示すフローチャートである。 本発明の一実施例におけるDCB試験の形状を示す図である。 本発明の一実施例におけるDCB試験の結果を示すグラフ図である。 本発明の一実施例におけるDCB試験のCAE解析モデルの略図である。 図12の○印内の拡大モデル図である。 本発明の一実施例におけるENF試験の形状を示す図である。 本発明の一実施例におけるENF試験の結果を示すグラフ図である。
符号の説明
1:被着材
2:被着材
3:接着剤
4:接着面積
8:接着剤特性評価エリア
11:接着剤3を表すビーム要素
12:接着剤3を表すビーム要素
13:接着剤3を表すビーム要素
14:接着剤3を表すビーム要素
21:ビーム要素11の重心位置
22:ビーム要素12の重心位置
23:ビーム要素13の重心位置
24:ビーム要素14の重心位置
31:接着剤3を表すビーム要素
32:接着剤3を表すビーム要素
33:接着剤3を表すビーム要素
34:ビーム要素31の接着剤特性評価エリア
35:被着材2を表すシェル要素
36:ビーム要素31の重心位置
37:接着剤特性評価エリア34を節点41を中心に被着材2上に投影したもの
41:ビーム要素41とシェル要素35を共有する節点
42:ビーム要素42とシェル要素35を共有する節点
43:ビーム要素43とシェル要素35を共有する節点
44:接着剤特性評価エリア
46:ビーム要素45を中心とする接着剤特性評価エリア44内に位置するビーム要素
47:ビーム要素45を中心とする接着剤特性評価エリア44内に位置するビーム要素
48:ビーム要素45を中心とする接着剤特性評価エリア44内に位置するビーム要素
49:ビーム要素45を中心とする接着剤特性評価エリア44内に位置するビーム要素
50:ビーム要素45を中心とする接着剤特性評価エリア44外に位置するビーム要素
51:ビーム要素45と構成節点を共有するシェル要素
52:ビーム要素45と構成節点を共有するシェル要素
101:解析装置
300:コンピュータ
301:キーボード
302:マウス
303:ディスプレイ
304:補助記憶装置
601:CFRP製被着材
602:CFRP製被着材
603:接着剤
604:アルミ製タブ
605:アルミ製タブ
606:ビーム要素A
607:ビーム要素B
608:ビーム要素Aの接着剤特性評価エリア
611:CFRP製被着材
612:CFRP製被着材
613:接着剤

Claims (15)

  1. 2枚の被着材を接着剤で接着した接着構造を、前記各被着材をシェル要素として、前記接着剤をビーム要素としてモデル化する有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法であって、接着剤特性の計算対象とする特性計算ビーム要素の近傍に位置する近傍ビーム要素を設定し、前記特性計算ビーム要素と前記近傍ビーム要素の物理量と有限要素解析による計算結果から、前記特性計算ビーム要素における接着剤特性を計算することを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法。
  2. 前記近傍ビーム要素を設定するに際し、予め接着剤特性評価エリアを入力しておき、前記接着剤特性評価エリア内のビーム要素を前記近傍ビーム要素として設定することを特徴とする請求項1に記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法。
  3. 前記接着剤特性評価エリアの面積を、既知の接着剤特性の測定条件と比較できる面積に基づいて設定することを特徴とする請求項2に記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法。
  4. 前記近傍ビーム要素を設定する方法として、特性計算ビーム要素の構成節点を共有するシェル要素の構成節点情報を用いることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法。
  5. 前記接着剤特性評価エリアの形状として、特性計算ビーム要素を中心とする円形を用いることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法。
  6. 前記接着剤特性について、特性計算ビーム要素の両端でそれぞれ計算することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法。
  7. 前記接着剤特性として、接着強度を用いることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法。
  8. 2枚の被着材を接着剤で接着した接着構造を、前記各被着材をシェル要素として、前記接着剤をビーム要素でモデル化する有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置であって、接着剤特性の計算対象とする特性計算ビーム要素の近傍に位置する近傍ビーム要素を設定する近傍ビーム要素設定手段と、前記特性計算ビーム要素と前記近傍ビーム要素の物理量と有限要素解析による計算結果から、前記特性計算ビーム要素における接着剤特性を計算する特性計算手段とを有することを特徴とする、有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置。
  9. 前記近傍ビーム要素を設定するに際し、予め接着剤特性評価エリアを入力する接着剤特性評価エリア入力手段と、前記近傍ビーム要素設定手段が前記接着剤特性評価エリア内のビーム要素を前記近傍ビーム要素として設定するものであることを特徴とする請求項8に記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置。
  10. 前記近傍ビーム要素設定手段において、近傍ビーム要素を設定する方法として、特性計算ビーム要素の構成節点を共有するシェル要素の構成節点情報を使用することを特徴とする、請求項8または9に記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置。
  11. 前記接着剤特性評価エリアの形状が特性計算ビーム要素を中心とする円形であることを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置。
  12. 前記接着剤特性について、特性計算ビーム要素の両端でそれぞれ計算することを特徴とする、請求項8から11のいずれかに記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算装置。
  13. 前記接着剤特性として、接着強度を用いることを特徴とする、請求項8から12のいずれかに記載の有限要素解析モデルによる接着剤特性の計算方法。
  14. 請求項1〜7のいずれかに記載の有限要素解析モデルの接着剤特性の計算方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  15. 請求項14に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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WO2020136976A1 (ja) * 2018-12-27 2020-07-02 日立化成株式会社 接着剤の弾性特性の同定方法

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