JP2009097356A - 密閉形スクロール圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】旋回スクロールの端板が周囲より中心側が下方に撓む変形に対して、旋回スクロールの端板背面に損傷を生じることのない旋回スクロール端板の背面支持構造、および圧縮機で圧縮された高圧ガスによって旋回スクロールを固定スクロール側に押し付ける高圧領域と低中圧で押し付ける低圧領域とを仕切る旋回シールのシール性を確実にする旋回スクロールの端板の背面支持構造を備える密閉形スクロール圧縮機を提供すること。
【解決手段】旋回スクロール11の端板31の背面に向けて複数のリング状の突起部71、73、75を形成し、最外側の突起部71で前記旋回スクロール11の端板31を支持するとともに、突起部71、73、75の高さが外側から中心に向って順次低くなるように設定し、最内側から2つの突起部73、75間に環状の旋回シール79を嵌合することを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、密閉ケース内に収容されるスクロール圧縮機に関し、特に、旋回スクロール端板の背面支持構造に関する。
スクロール圧縮機においては、一般に、固定スクロールのスクロール翼の先端面と旋回スクロールのスクロール翼の先端面との各スラスト面、すなわち、固定スクロールのスクロール翼の先端面と相手側の旋回スクロールの鏡面との微少隙間、および旋回スクロールのスクロール翼の先端面と相手側の固定スクロールの鏡面との微少隙間を、圧縮室内の圧縮圧力に抗して相互に密着状態にして摺接させるために、旋回スクロールを固定スクロール側に押圧する手段を設けて押し付けている。
押圧力が大きくなりすぎると、摺動抵抗が大きくなって動力損失を生じ、少なすぎると気密性が低下し、能力低下の問題を生ずるため適正な押圧力での押し付けが必要である。
さらに、前記のように旋回スクロールのスクロール翼および固定スクロールのスクロール翼によって形成される圧縮室に生じる圧力に抗して旋回スクロールを固定スクロール側に押圧する押圧手段を設けて適切な圧力で押し付けることに加えて、圧縮室内の高圧化による旋回スクロールの下向きのスラスト力によって旋回スクロール側に傾斜等の異常な挙動が生じないようにするために、旋回スクロールの旋回面を形成する端板を水平状態に支持する支持構造も必要となる。
一方、このように、スクロール圧縮機おいて旋回スクロールの端板の背面に押圧力を適切に作用させ、さらに旋回スクロールが傾斜しないように水平状態に適切に支持する構造については、種々の提案がされている。
例えば、旋回スクロールの端板の背面への押圧力の作用については、次の特許文献1、特許文献2のような技術が知られている。
特許文献1(特開昭60−224987号公報)には、図7に示すように、旋回スクロール01の背面側はシール部材02を介して、低圧チャンバー03と高圧チャンバー04とに画成し、低圧チャンバー03は固定スクロール05に形成される通路06を介して圧縮室の吸入側と連通して低圧圧力を保持し、高圧チャンバー04は通路07を介してケーシング08内に連通させ、高圧チャンバー04における旋回スクロール01の受圧面09に高圧圧力を作用させるようにして、旋回スクロール01を固定スクロール05側へ適切な押圧力で押し付けている。
また、特許文献2(特開2005−2922号公報)には、図8に示すように、旋回スクロール010の端板の直径Dと、環状シール011との外径dとの比(d/D)を0.5より大きく設定することによって、環状シール011の内側に作用する圧縮室から吐出される吐出圧力が変化しても旋回スクロール010全体を押し付けるようなプラスのスラスト力を与えることができるようにしている。
また、旋回スクロールの傾斜を抑制する支持構造については次の特許文献3、特許文献4のような技術が知られている。
特許文献3(特開昭62−199985号公報)には、図9に示すように、フレーム020には、旋回スクロール021の筒部022に対して偏心した軸受孔023が上下方向に貫通して設けられている。また、フレーム020には、旋回スクロール021の背面に加わるスラスト力を受けるとともにシール材として機能する環状のスラスト受024が設けられている。さらに、フレーム020の上面でオルダム機構025より外側位置にスラスト受024とほぼ同じ高さに突出させた補助スラスト受026が複数所定の間隔で周方向に形成されている。そして、このスラスト受024および補助スラスト受026のストッパ作用によって、圧縮室内の高圧化によって旋回スクロール021に特有の転倒モーメントによる傾きが生じようとしても、極めて小さい値に抑制している。
さらに、特許文献4(特開平9−170571号公報)には、図10に示すように、旋回スクロール030の背面に向かって軸受部材031から環状の旋回スクロール鏡板支持部032の段差が形成されて、中央側には背圧仕切帯033が環状に設けられている。そして、旋回スクロール鏡板支持部032には圧力を外側に逃がす連通路が設けられ、運転中に旋回スクロール030が傾いても、旋回スクロール鏡板支持部032で支持して傾きを抑えるとともに、連通路を通って旋回スクロール030の背面と軸受け部材031との間に生じる圧力上昇を回避している。
特開昭60−224987号公報(図1) 特開2005−2922号公報(図2) 特開昭62−199985号公報(図2) 特開平9−170571号公報(図2)
前記したように特許文献1、特許文献2には、旋回スクロールの端板の背面を、中心部側を高圧ガスによって、周囲側をそれより低い低圧ガスによって押圧する技術が示されている。これは、スクロール圧縮機においては、旋回スクロールと固定スクロールとによって形成される圧縮室内の圧力が、吐出口がある中心側の圧縮室が、吸入口がある周囲側の圧縮室より圧力が高くなることに対応しているものである。
しかし、この適切な押し付け力は、圧縮機が定常運転状態に達しないと得られず、運転開始初期時や低回転運転時においては、旋回スクロールは下方に移動している。
従って、旋回スクロールの端板が周囲より中心側が下方に撓んでいる場合には、運転開始初期時や低回転運転時においては、旋回スクロールの端板背面にスラスト座面によるかじりや片当り等による損傷を生じるおそれがある。
さらに、旋回スクロールの傾きを抑制する支持構造が示されている特許文献3においては、スラスト受024および補助スラスト受026のストッパ作用によって、圧縮室内の高圧化によって旋回スクロール021に生じる特有の転倒モーメントによる傾きを抑制しているが、スラスト受024および補助スラスト受026の高さは略同じであるため、旋回スクロールの端板が周囲より中心側が下方に撓んで下がる特有の変形に対しては、中央側のスラスト受024のエッジに接触して旋回スクロールの端板を損傷するおそれがある。
また、特許文献4に示されている技術においても、前記したように旋回スクロール鏡板支持部032の段差が外周側に形成されているが、中央側は同じ高さの支持面のため、中心部のエッジで旋回スクロールの端板を損傷するおそれがある。
さらに、旋回スクロール鏡板支持部032には圧力を外側に逃がす連通路が設けられているため、潤滑油が該支持部032の外側に流出するので、中央側に設置された環状の背圧仕切帯033への供給、保持が十分ではなく、シール性、摺動性を悪化させる問題もある。
以上のように特許文献1〜3には、旋回スクロールの端板背面の支持構造において、旋回スクロールの端板が周囲より中心側が下方に撓む特有の変形に対応したスラスト座面構造とはなっていない。また特許文献4においても、図10に示す状態で旋回スクロール030の端板が周囲より中心側が下方に撓む変形に対応したスラスト座面構造とはなっていない。
さらに、いずれの特許文献にも旋回スクロールの端板背面の中心部側に作用させる高圧ガスと、周囲側に作用させる低圧ガスとを仕切る旋回シール部材(図3の符号79に相当する部品)のシール性を改善する技術については示されていない。
そこで、本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、旋回スクロールの端板が周囲より中心側が下方に撓んで、周囲より中心部が下がる旋回スクロール特有の変形に対して、旋回スクロールの端板背面に片当り等の損傷を生じることのない旋回スクロール端板の背面支持構造を備え、さらに、圧縮室で圧縮された高圧の吐出ガスによって旋回スクロールを固定スクロール側に押し付ける高圧領域と、圧縮途中のガスによる中間圧力で押付ける中間圧領域とを仕切る旋回シールについて、該旋回シールのシール性を向上する旋回スクロールの端板の背面支持構造を備えた密閉形スクロール圧縮機を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、固定スクロールと旋回スクロールとからなる圧縮機構部と、該圧縮機構部の下方に旋回スクロールを回転駆動するモータ部とを、底部に潤滑油を貯留する高圧密閉容器内に配置し、前記圧縮機構部における圧縮されたガスを前記旋回スクロールの端板背面に作用させて前記旋回スクロールを前記固定スクロールへ押し付けるように構成した密閉形スクロール圧縮機において、前記旋回スクロールの端板背面に摺接する環状の旋回シールを設け、該旋回シールの外側の前記端板背面の環状外周周囲部には、前記圧縮機構部における圧縮途中のガス圧を作用せしめ、前記旋回シールの内側の回転軸中心周りには、前記モータ部の下方に設けられモータによって駆動される給油ポンプによる高圧の潤滑油圧を作用せしめるように構成したことを特徴とする。
かかる発明によれば、旋回スクロールの端板背面を回転軸中心周りには、モータ部の下方に設けられモータによって駆動される給油ポンプによる高圧の潤滑油圧を作用せしめ、端板背面の環状外周周囲部には圧縮機構部における圧縮途中のガス圧を作用せしめるため、旋回スクロールの端板背面を固定スクロール側へバランスよく押し付けることができ、さらに給油ポンプの出力を調整することで、圧縮機構部の圧力室内の高圧ガスの圧力以上で旋回スクロール11の中心部分を固定スクロール側へ押し付けることが可能になる。
その結果、圧縮機構部の圧縮室内の高圧化による旋回スクロールの下向きのスラスト力によって生じる旋回スクロールの傾斜等の異常な挙動や、長期間の使用によって旋回スクロールの端板の中心部分が下方に撓んだ形状になることが防止される。
また、本発明は、前記旋回スクロールの端板背面に対向して配置されるとともに、前記旋回スクロールに旋回運動を与える駆動軸を軸支するフレーム部材を設け、該フレーム部材から前記端板の背面に向けて前記駆動軸の軸中心回りに複数のリング状の突起部を形成し、最外側の突起部で前記旋回スクロールの端板背面を支持するとともに、突起部の高さを外側から前記軸中心に向って順次低くなるように設定し、最内側から2つの前記突起部間に前記旋回シールを嵌合することを特徴とする。
かかる発明によれば、旋回スクロールの端板が周囲より中心側が下方に撓んで、周囲より中心部が下がる旋回スクロール特有の変形に対応して、旋回スクロールの端板の背面に向けて前記駆動軸の軸中心回りに複数のリング状の突起部を形成し、最外側の突起部で前記旋回スクロールを支持するとともに、突起部の高さが外側から前記軸中心に向って順次低くなるように設定しているため、端板の前記変形に対して中心側の突起部が接触して旋回スクロールの端板を損傷するようなことが防止される。
さらに、最内側から2つの前記突起部間に環状の旋回シールを嵌合するので、突起部の高さが低く設定されている最内側の突起部から、旋回シールへ潤滑油が供給されやすく、2つの突起部間に保持されやすいため、シール性、摺動性が確保される。
また、本発明において好ましくは、前記突起部の高さは3段階に形成され、内側の2段階の突起部間の頂部に形成された環状の凹溝に切れ目のない環状に形成した旋回シールを嵌合して前記旋回スクロールの端板背面に当接させて構成したことを特徴とする。
かかる構成によれば、内側に配置された1段目と2段目の支持部の頂部に凹溝が形成され、その凹溝内に旋回シールが嵌合されるため、1段目が最も低いので、旋回シールに中心側の潤滑油が凹溝内に供給、保持されやすく、シール性、摺動性が確保される。
その結果、旋回シールによって旋回シールの内側には高圧圧力を保持でき、外側には中間圧ないしは低圧圧力を保持できるため、バランスのよい旋回スクロールの押付け力が確実に保たれる。
また、好ましくは、前記旋回シールの内側面と前記凹溝の内面との間に形成される隙間を前記旋回シールの外側面と前記凹溝の内面との間に形成される隙間より大きく設定するとよい。
このように、旋回シールが嵌合する凹溝と旋回シールとの間に形成される隙間を、内側を外側より大きく設定することによって、高圧圧力室内において飛散される潤滑油が最も高さの低い1段目の突起部から前記隙間内に入って凹溝内に一層入り易くなり、旋回シール部の潤滑性が一層確保される。
また、好ましくは、前記旋回シールがほぼ矩形断面形状からなり、旋回シールの凹溝底面側であって旋回スクロールの回転軸中心側には前記凹溝内に流入した潤滑油を保持する切欠部が形成されている。
このように、凹溝の底面への当接面側であって前記軸中心側に切欠部を形成して、前記凹溝の底面に溜まる潤滑油を保持し、該保持された潤滑油によって旋回シールを凹溝から押し上げるように作用することで、旋回シールを旋回スクロールの端板の背面に確実に当接せしめて、旋回シールの上下動に対する追従性をよくして旋回シールのシール性を向上することができる。
また、好ましくは、前記突起部の各段差が略0.1mmに設定されていることが望ましい。このような範囲は、旋回スクロールの端板の予想される変形量と加工精度を考慮した最適な範囲である。すなわち、予測される変形量は数十μm(ミクロン)であるため、この範囲内で加工できる段差量として略0.1mmに設定する。
また、好ましくは、前記駆動軸に取付けられた旋回バランサを前記旋回スクロールの端板の背面側に前記最内側の突起部によって形成された筒状空間内に配設し、前記バランサの回転運度に伴って該バランサから前記旋回シールに向けて潤滑油が飛散されることが望ましい。
かかる構成によれば、旋回バランサの回転に伴って旋回シールに向けて潤滑油が飛散されるため、前記凹溝内に潤滑油が溜まりやすくなり、旋回シール部の潤滑性が一層確保される。
本発明によれば、旋回スクロールの端板が周囲より中心側が下方に撓んで、周囲より中心部が下がる旋回スクロール特有の変形に対して、旋回スクロールの端板背面に片当り等の損傷を生じることのない旋回スクロール端板の背面支持構造を備え、さらに、圧縮室で圧縮された高圧の吐出ガスによって旋回スクロールを固定スクロール側に押し付ける高圧領域と、圧縮途中のガスによる中間圧力で押付ける中間圧領域とを仕切る旋回シールについて、該旋回シールのシール性を向上する旋回スクロールの端板の背面支持構造を備えた密閉形スクロール圧縮機を提供できる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は、本発明にかかる密閉形スクロール圧縮機の実施形態を示す全体構成断面図であり、図2は図1の全体断面図のうちの上方の部分の拡大図である。図3は図2のA部拡大図であり、図4は図3のB部拡大図である。図5は上バランサを示す説明図であり(a)は平面図を示し、(b)は(a)のC−C断面図を示す。図6は旋回シールの全体斜視図である。
図1、図2を参照して密閉形スクロール圧縮機の全体構成について説明する。図1に示すように、密閉形スクロール圧縮機1を構成する縦長の円筒形状の密閉ケース2は、湾曲形状の下ケース3と湾曲形状の上ケース5と円筒状の中ケース6とがそれぞれ溶接接合されて形成されている。
密閉ケース2内の上方寄りに、密閉ケース2内を上下に仕切るようにフレーム部材7が中ケース6の内部に取付けられている。
そして、フレーム部材7の上方には圧縮機構部9が配置され、下方には圧縮機構部9を構成する旋回スクロール11に旋回運動の回転力を与えるモータ部のモータ13が配置されている。さらに、密閉ケース2の底部には潤滑油が収容されるようになっていて、底部に貯留された潤滑油を汲み上げる給油ポンプ15がモータ13の下方に配置されている。
図2に示すように、圧縮機構部9は、固定スクロール17と、この固定スクロール17の下方に配置された旋回スクロール11とによって構成されている。固定スクロール17は、円板状の端板19と、この端板19の一方の面の周縁部に突設された環状壁21と、この環状壁21で囲まれた部分に該環状壁21とほぼ等しい高さに突設された固定スクロール翼23と、端板19の略中央部に設けられた吐出口25と、端板19の周縁部に設けられた吸入口27とで構成されている。そして、環状壁21の延長部分がボルト29でフレーム部材7に固定されている。
一方、旋回スクロール11は、円板状の旋回スクロール11の端板31と、この端板31の一方の面に前記固定スクロール翼23と等しい高さに突設された旋回スクロール翼33と、背面側の中央部には軸受ボス部35が突設されて構成されている。
また、旋回スクロール11の端板31の片側に突設された螺旋状の旋回スクロール翼33と、固定スクロール17の端板19の片側の突設された螺旋状の固定スクロール翼23とが噛合い、それぞれの壁の間に圧縮室37を形成している。この旋回スクロール翼33の頂部および固定スクロール翼23の頂部に設けた微小隙間により相手側の端板19および端板31の鏡面に気密を保持している。
そして、固定スクロール17と旋回スクロール11との噛み合い状態を保持して旋回スクロール11を固定スクロール17に対して相対的に旋回運動させるために、旋回スクロール11の端板31とフレーム部材7との間にオルダム機構38が設けられている。
フレーム部材7には、旋回スクロール11の軸受ボス部35の軸心線に対して偏心した筒状空間39が上下方向に貫通して設けられており、この筒状空間39の下端部分にはモータ13の駆動軸41を回転自在に支持する主軸受43が設けられている。
駆動軸41の上端部には、駆動軸41の軸中心線と偏心した位置にクランク部45が形成され、該クランク部45が旋回スクロール11の軸受ボス部35内に設けた旋回軸受に嵌入されている。
また、図1に示すように、駆動軸41の下端部には、給油ポンプ15が接続されていて、この給油ポンプ15により潤滑油をパイプ47によって汲み上げて、駆動軸41の軸中心部を貫通して設けられた貫通油路49を介して前記クランク部45の上端から軸受ボス部35内に放出するようになっている。
前記モータ13は、複数の分割ステータ51がモータフレーム53の内周に沿って環状に配設された、いわゆる分割式のステータによって構成され、回転子はモータロータ55の内部に永久磁石が埋め込まれるいわゆるIPMモータによって構成している。
さらに、このモータ13の巻線は、アンモニア冷媒に対して耐食性が強く信頼性の高いアルミニウム電線によって形成されている。
なお、使用されるガスにはアンモニア冷媒を用いており、吐出ガス温度の上昇を抑えるために当該圧縮機が接続された冷凍サイクルに用いるアンモニアの液冷媒を固定スクロール17の端板19に取付けられた液インジェクション配管57から圧縮室37内に噴射するようになっている。
また、駆動軸41に対して偏心したクランク部45の回転に伴うアンバランスを打ち消すために、駆動軸41には、上から順に上バランサ(旋回バランサ)59、中バランサ61、下バランサ63の3つのバランサが取り付けられている。
さらに、前記固定スクロール17の吸入口27には、吸入管65が上ケース5を貫通して設けられ、中ケース6にはケース内の高圧ガスを冷凍サイクル側に吐出する吐出管67が設けられている。
次に、以上のように構成された密閉形スクロール圧縮機において、前記圧縮機構部9による冷媒ガスの圧縮動作について説明する。
まず、モータ13に給電すると、駆動軸41が回転を開始する。そして、回転力が旋回スクロール11に伝えられる。
旋回スクロール11の軸受ボス部35は駆動軸41に対して偏心したクランク部45と嵌合しており、しかもオルダム機構38によって自転を規制されているため、この旋回スクロール11は自転の伴わない旋回運動を行う。
従って、この旋回運動に伴って、旋回スクロール翼33と固定スクロール翼23との間に形成された圧縮室37の容積を縮小させながら中心に移動し、吸入管65を介して吸入されたガスが圧縮されて吐出口25から吐出されて、密閉ケース2内の上方に吐出されてからフレーム部材7の周囲に形成された図示しない連通孔を通って下方側に流れて密閉ケース2内のフレーム部材7の下方の空間内に高圧ガスが流入した後、吐出管67から外部へ排出される。
次に、図3〜図6を参照して、旋回スクロール11の端板31の支持およびシール構造について説明する。
図3に示すように、フレーム部材7の上縁部には、旋回スクロール11の端板31に向かって突起部71、73、75が3段階に形成されている。
この突起部71、73、75は、環状に形成され、駆動軸41の軸中心に向かって高さが低くなるように設定されている。
図3に示す突起部の高さ関係は、旋回スクロール11が上方に押し上げられたときの状態を基準にして、3段目の最外側の突起部71の座面(頂上面)からH3だけ上昇した旋回スクロール11の下端面を基準面として、2段目の中間の突起部73の座面(頂上面)は基準面からH2の位置に設定され、1段目の内側の突起部75の座面(頂上面)は基準面からH1の位置に設定される。そして、座面高さの関係は、H3<H2<H1の関係となっている。
従って、該端板31背面に押し付け圧力が作用しないときには、旋回スクロール11が下に移動して、前記H3がゼロになって3段目の突起部71の座面に当たって支持される。このH3がゼロのときには2段目の突起部73の座面と旋回スクロール11の下端面との隙間は(H2−H3)だけ存在し、1段目の突起部75の座面と旋回スクロール11の下端面との隙間は(H1−H3)だけ存在するように設定されている。
さらに、突起部間の各段差、すなわち第3の突起部71と第2の突起部73との段差(H2−H3)は、略0.1mmの範囲に設けられている。
また、第2の突起部73と第1の突起部75との段差(H1−H2)は、略0.1mm前後に設けられている。
この段差の設定範囲は、旋回スクロール11の端板31の予想される変形量と加工精度及び給油状態を考慮した最適な範囲であり、端板31の予測される変形量は中央部と外周との間で数十μm(ミクロン)であるため、この範囲内で加工できる段差量として略0.1mmに設定する。
この範囲よりも小さい段差の製造は難しくなるとともに、この範囲より大きい段差を突起部71、73間に設定すると潤滑油の保持性や旋回スクロール11の押し付け力の高圧力の保持性に悪影響がでるおそれがある。
但し、突起部73、75間の段差は、筒状空間39からの潤滑油の流入と保持が重要となるので、突起部71、73間に設定略される略0.1mm前後よりも大きく設定するのが好ましい。
旋回スクロール11の端板31の背面側に向かう突起部71、73、75の高さが外側から内側に向かうに従って順次低くなるように設定されているので、旋回スクロール11の端板31が周囲より中心側が下方に撓んで、周囲より中心部が下がるような特有の変形があっても、その変形に沿った突起部の高さに設定されているので、端板31の背面側が突起部73、75に接触して端板31を損傷するようなことが防止される。
また、内側の1段目、2段目の突起部73、75は、図4に示すように、近接して配置されて突起部間の頂部に凹溝77が形成され、この凹溝77内に図6に示すような切れ目のない環状の旋回シール79が嵌合されている。
また、この旋回シール79の内側面と凹溝77の内面との間に形成される隙間D1は、前記旋回シール79の外側面と前記凹溝77の内面との間に形成される隙間D2より大きくなるように設定されている。
また、図6に示すように、旋回シール79はほぼ矩形の断面形状からなり、凹溝77の底面への当接面側であって軸中心側には凹溝77内に流入した潤滑油を保持することで、旋回シール79を持ち上げる圧力が容易に作用できるように、切欠部81が形成されている。
さらに、旋回シール79の内側の筒状空間39内には、駆動軸41の軸中心部を貫通して設けられた貫通油路49を介して前記クランク部45の上端から軸受ボス部35内に放出される潤滑油とともに密閉ケース2内の高圧のガス圧が作用していて高圧状態に保持されている。
以上のように、内側に配置された1段目と2段目の突起部73、75の頂部間に凹溝77が形成され、その凹溝77内に旋回シール79が嵌合されるため、高さが最も低い1段目の突起部75から、潤滑油が凹溝77内に入りやすく、さらに、凹溝77と旋回シール79との間に形成される隙間を外側より内側を大きくしているため、一層凹溝77内に入りやすい。
さらに、旋回シール79がほぼ矩形断面形状からなり、凹溝77の底面への当接面側であって軸中心側には凹溝77内に流入した潤滑油を保持するための切欠部81が形成されているため、凹溝77の底面に溜まる潤滑油を保持し、該保持された潤滑油によって旋回シールを凹溝77から押し上げるように作用することで、旋回シール79を旋回スクロール11の端板31の背面に確実に当接せしめて、旋回スクロール11の上下動に対する追従性をよくして旋回シール79のシール性を向上することができる。
さらに、旋回シール79は、シール性と摺動性を考慮して金属ないしはテフロン(登録商標)等の樹脂材を含む非金属材料を用いて切れ目のない環状で形成する。
また、使用されるガスがアンモニア冷媒の場合、アルカリ性が強く酸化被膜を形成しにくいため、密閉ケース2内における摺動部の潤滑性を悪化させる傾向にあるが、前記のような旋回シール79を摺動性の優れた材料で形成すると共に、潤滑油を凹溝77内に保持することにより潤滑性能が高められる。
次に、旋回シール79への潤滑油の供給について説明する。
下ケース3の底部に収容された潤滑油を給油ポンプ15によって汲み上げて、貫通油路49を介してクランク部45の上端から軸受ボス部35の内部に放出して、クランク部45と軸受ボス部35に設けた軸受との摺動部を潤滑し、その後、軸受ボス部35の下方に形成された隙間85、さらにフレーム部材7に径方向に形成された横穴87から密閉ケース2内に排出され、下方の油槽に戻される。
また、隙間85から流出した潤滑油の一部は上バランサ59の回転に伴う遠心力によって縦壁88に沿って上方に案内された後、図2に矢印で示すように旋回シール79に向かって噴霧状態で放出されて旋回シール部に供給されることにより、旋回シール79の摺滑面の潤滑と隙間のシールに用いられる。
この上バランサ59は、図5(a)、(b)に示すように、駆動軸41から径方向に突き出る円板86に対して軸方向に伸びる半円弧状の縦壁88を有して形成されるともに、該半円弧状の縦壁88の内側中央部にはほぼ1/3周にわたって周方向溝89が形成され、遠心力によって広がる潤滑油を周方向溝89に集めて縦壁88に沿って上方の筒状空間39内に放出するように構成されている。
さらに具体的に説明すると、円板86とその円板86の周縁部から軸方向に突出した半円弧状の縦壁88で形成され、その縦壁88の外壁面は該円板86の外径におよそ等しい外円弧Raで形成され、内壁面は外側よりの内円弧Rbと中央よりの内円弧Rcとから形成されている。
外円弧Raの中心Eは駆動軸中心におよそ一致させ、内円弧Rcの中心Fは、中心Eより縦壁の反対側すなわち図の右側に配置し、内円弧Rbの中心Gは、中心Eより縦壁側すなわち図の左側に配置して、内円弧Rbの先端が外円弧Raと内円弧Rcとの間で形成されるように縦壁88の円弧が形成されている。
そして、潤滑油は遠心力によって縦壁88に沿って放出されて旋回シール79に向かうため、旋回シール79と端板31の背面との接触域に円周方向に均等に行きわたるため、旋回シール79の潤滑性と該隙間部のシール性が良好に得られる。
さらに、旋回シール79に向かって放出された潤滑油は、前記したように1段目の突起部75の高さが他の突起部より低いとともに、凹溝77と旋回シール79の内側との隙間が外側より広いため凹溝77内に潤滑油が入りやすく、潤滑油が確実に旋回シール79に供給される。
以上のように、本実施の形態によれば、旋回スクロール11の端板31背面を回転軸中心周りには、モータ部の下方に設けられモータ13によって駆動される給油ポンプ15による高圧の潤滑油圧を作用せしめ、端板31背面の環状外周周囲部には圧縮機構部9における圧縮途中のガス圧を作用せしめるため、旋回スクロール11の端板31背面を固定スクロール17側へバランスよく押し付けることができ、さらに給油ポンプ15の出力を調整することで、圧縮機構部9の圧力室内の高圧ガスの圧力以上で旋回スクロール11の中心部分を固定スクロール17側へ押し付けることが可能になる。
その結果、圧縮機構部9の圧縮室内の高圧化による旋回スクロールの下向きのスラスト力によって生じる旋回スクロール11の傾斜等の異常な挙動や、長期間の使用によって旋回スクロール11の端板31自体が、中心部分が下方に撓んだ形状になることが防止される。
また、本実施の形態によれば、突起部71、73、75の高さが外側から中心に向って順次低くなるように設定しているため、旋回スクロール11の端板31が周囲より中心側が下方に下がる特有の変形に対して、端板31に接触して旋回スクロール11の端板31を損傷するようなことが防止される。
さらに、最内側から2つの突起部73、75間に環状の旋回シール79を嵌合することによって、旋回シール79に潤滑油の供給がされやすく、シール性、摺動性を確保することができる。
本発明によれば、旋回スクロールの端板が周囲より中心側が下方に撓んで、周囲より中心部が下がる旋回スクロール特有の変形に対して、旋回スクロールの端板背面に片当り等の損傷を生じることのない旋回スクロール端板の背面支持構造、および、圧縮機で圧縮されたガスによって旋回スクロールを固定スクロール側に押し付ける高圧領域と低中圧で押し付ける低圧ないしは中圧領域とを仕切る旋回シールのシール性を確実にする旋回スクロールの端板の背面支持構造を提供して、旋回スクロールを密閉ケース内に確実に支持することができるので、冷凍空調用密閉形圧縮機を始めとして潤滑油を用いて摺動部を潤滑するカーエアコン用圧縮機、空気圧縮機及び真空ポンプ等を含むスクロール流体機械への適用に際して有益である。
本発明にかかる密閉形スクロール圧縮機の実施形態を示す全体構成断面図である。 図1の全体断面図のうちの上方の部分の拡大図である。 図2のA部拡大図である。 図3のB部拡大図である。 上バランサ(旋回バランサ)を示す説明図であり(a)は平面図を示し、(b)は(a)のC−C断面図を示す。 旋回シールの全体斜視図である。 従来技術の説明図である。 従来技術の説明図である 従来技術の説明図である。 従来技術の説明図である。
符号の説明
1 密閉形スクロール圧縮機
2 密閉ケース
7 フレーム部材
9 スクロール圧縮機構部(圧縮機構部)
11 旋回スクロール
13 モータ
17 固定スクロール
19、31 端板
41 駆動軸(回転軸)
43 主軸受
59 上バランサ
61 中バランサ
63 下バランサ
71、73、75 突起部
77 凹溝
79 旋回シール

Claims (7)

  1. 固定スクロールと旋回スクロールとからなる圧縮機構部と、該圧縮機構部の下方に旋回スクロールを回転駆動するモータ部とを、底部に潤滑油を貯留する高圧密閉容器内に配置し、前記圧縮機構部における圧縮されたガスを前記旋回スクロールの端板背面に作用させて前記旋回スクロールを前記固定スクロールへ押し付けるように構成した密閉形スクロール圧縮機において、
    前記旋回スクロールの端板背面に摺接する環状の旋回シールを設け、該旋回シールの外側の前記端板背面の環状外周周囲部には、前記圧縮機構部における圧縮途中のガス圧を作用せしめ、前記旋回シールの内側の回転軸中心周りには、前記モータ部の下方に設けられモータによって駆動される給油ポンプによる高圧の潤滑油圧を作用せしめるように構成したことを特徴とする密閉形スクロール圧縮機。
  2. 前記旋回スクロールの端板背面に対向して配置されるとともに、前記旋回スクロールに旋回運動を与える駆動軸を軸支するフレーム部材を設け、該フレーム部材から前記端板の背面に向けて前記駆動軸の軸中心回りに複数のリング状の突起部を形成し、最外側の突起部で前記旋回スクロールの端板背面を支持するとともに、突起部の高さを外側から前記軸中心に向って順次低くなるように設定し、最内側から2つの前記突起部間に前記旋回シールを嵌合することを特徴とする請求項1記載の密閉形スクロール圧縮機。
  3. 前記突起部の高さは3段階に形成され、内側の2段階の突起部間の頂部に形成された環状の凹溝に切れ目のない環状に形成した旋回シールを嵌合して前記旋回スクロールの端板背面に当接させて構成したことを特徴とする請求項2記載の密閉形スクロール圧縮機。
  4. 前記旋回シールの内側面と前記凹溝の内面との間に形成される隙間を前記旋回シールの外側面と前記凹溝の内面との間に形成される隙間より大きく設定されることを特徴とする請求項3記載の密閉形スクロール圧縮機。
  5. 前記旋回シールがほぼ矩形断面形状からなり、旋回シールの凹溝底面側であって旋回スクロールの回転軸中心側には前記凹溝内に流入した潤滑油を保持する切欠部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の密閉形スクロール圧縮機。
  6. 前記突起部の各段差が略0.1mmに設定されていることを特徴とする請求項2記載の密閉形スクロール圧縮機。
  7. 前記駆動軸に取付けられた旋回バランサを前記旋回スクロールの端板の背面側に前記最内側の突起部によって形成された筒状空間内に配設し、前記バランサの回転運動に伴って該バランサから前記旋回シールに向けて潤滑油が飛散される構成としたことを特徴とする請求項3及至5の何れか1項記載の密閉形スクロール圧縮機。
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