JP2009095249A - エフェクター機能が向上した抗体 - Google Patents

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Abstract

【課題】エフェクター機能が増強された抗体、該抗体を簡易に製造する方法、抗体のエフェクター機能を向上させる方法、及び該抗体を含み、薬理活性が高く投与量を低減でき、しかも副作用が少なく、広範な用途に利用可能な治療用組成物を提供する。
【解決手段】(1)特定の位置の複数のアミノ酸が置換したムテイン抗体、(2)抗体に結合する糖鎖のフコースが低減された抗体であって、KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸が、システイン残基に置き換えられた抗体。
【選択図】なし

Description

本発明は、エフェクター機能が向上した抗体に関する。
抗体は、抗原に対する認識能の特異性が高く、また抗原との相互作用も強いので医薬治療用途や診断薬用途、検査試薬等に広く利用されており、今後もその利用は拡大していくものと期待されている。
抗体の構造は、2つの重鎖と2つの軽鎖からなるポリペプチド四量体であって、重鎖と軽鎖とはジスルフィド結合により結合されている。抗体は、抗原結合部位に相当する可変部位と定常部位とを有しており、重鎖定常部位のC末端側はCH2及びCH3からなるFc領域で構成されている。Fc領域は、抗原への結合に直接関わらないが、Fcレセプター(FcR)との結合を介して同分子を表面に有する細胞に種々のエフェクター機能を発現させることができる。具体的には、Fc領域上のFcレセプター結合部位が、エフェクター細胞表面に存在するFcRに結合することにより、抗体被覆粒子の食作用および破壊、免疫複合体の浄化、活性化されたエフェクター細胞による抗体被覆された標的細胞の溶解[抗体依存性細胞障害(ADCC)と称される]、炎症メディエーターの放出、胎盤トランスファーおよび免疫グロブリン生産の制御等を含むいくつかの重要で多様な生物学的反応が引き起こされる。
IgGのADCC活性の発現には、Fc領域と、エフェクター細胞の表面上に存在するFcRとの結合が必要であり、その結合については、抗体のヒンジ領域及び定常部位の第2番目のドメイン(以下、CH2ドメインと表記する)内のいくつかのアミノ酸残基の重要性が示唆されている[Eur.J.Immunol.,23,1098(1993)/非特許文献1、Immunology,86,319(1995)/非特許文献2、Chemical Immunology,65,88(1997)/非特許文献3]。また、Fc領域とFcRとの結合には、CH2ドメインに結合している糖鎖の重要性も示されており[Chemical Immunology,65,88(1997)、第3回糖鎖科学コンソーシアムシンポジウム講演抄録p30(2005)/非特許文献4]、糖鎖構造の最適化により高いエフェクター機能を有する抗体の作成も報告されている[特開2005−224240号公報/特許文献1]。これらの報告は、ヒトIgGのエフェクター機能に糖鎖を含むFc領域のCH2ドメインが極めて重要で、その部分のアミノ酸あるいは糖鎖構造の最適化により高いエフェクター機能を有する抗体を作製することが可能であることを示している。
これまでにFcのアミノ酸置換に関する研究が盛んに行われてきた。PrestaらはFcアミノ酸のアラニン置換を網羅的に行い、適当なアミノ酸置換(S298A、E333A、K334A)がFcγRIIIaに対する結合能を上昇させ、ADCC活性が上昇することを見いだした[国際公開第WO00/42072号パンフレット/特許文献2]。さらにLazarらによると、S239D/A330L/I332Eの同時置換により、異なる抗体のADCC活性が共に上昇するというデータが示されている[US2005/0054832A1/特許文献3]。
このような抗体を生産する際には、目的の抗原を認識する抗体を産生する細胞の作成に時間と労力を要し、しかも必要な抗体活性を確保する為に動物細胞を用いる産生方法を行う必要があるため、抗体産生のコストを押し上げ、今後の抗体医療の大きな問題ともなっている。抗体の効率的な展開の為には、コスト削減の為の安価な抗体製造方法や高活性な抗体の製造方法が求められている。
特開2005−224240号公報 国際公開第00/42072号パンフレット 米国特許出願公開第2005/0054832号明細書 Eur.J.Immunol.,23,1098(1993) Immunology,86,319(1995) Chemical Immunology,65,88(1997) 第3回糖鎖科学コンソーシアムシンポジウム講演抄録p30(2005)
本発明の目的は、エフェクター機能が増強された抗体、該抗体を簡易に製造する方法、抗体のエフェクター機能を向上させる方法、及び該抗体を含み、薬理活性が高く投与量を低減でき、しかも副作用が少なく、広範な用途に利用可能な治療用組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討を行ったところ、Fc領域の特定部位を特定のアミノ酸残基に置換することにより、エフェクター機能を著しく向上しうることを見出した。また、Fc領域の特定のアミノ酸残基を置換し、該抗体の糖鎖結合部位に結合する糖鎖のフコースを低減させることにより、エフェクター機能が著しく向上しうることを見出した。
すなわち、本発明は、以下[1]から[20]を提供するものである。
[1] KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸がシステイン残基に置き換えられた抗体であって、以下の(a)及び/又は(b)に記載の特徴を有する抗体;
(a)定常領域において295番目以外の3つのアミノ酸が他のアミノ酸に置き換えられた抗体、及び/又は
(b)Fc領域に結合しているN-グリコシド結合糖鎖において還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体。
[2] KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換えられたことを特徴とする抗体。
[3] KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換えられたことを特徴とする抗体。
[4] KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸が、システイン残基に置き換えられた抗体であって、Fc領域に結合しているN-グリコシド結合糖鎖において還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体。
[5] 定常領域がヒトIgGの定常領域である[1]から[4]の何れかの項に記載の抗体。
[6] ヒト細胞表層存在分子を認識する部位を有する、[1]から[5]の何れかの項に記載の抗体。
[7] サイトカイン受容体、細胞接着分子、がん細胞表層分子、がん幹細胞表層分子、血液細胞表層分子、ウイルス感染細胞表層分子からなる群から選択される少なくとも一つを認識する、[1]から[6]の何れかの項に記載の抗体。
[8] 抗原CD3、CD11a、CD20、CD22、CD25、CD28、CD33、CD52、Her2/neu、EGF受容体、EpCAM、MUC1、GD3、CEA、CA125、HLA−DR、TNFalpha受容体、VEGF受容体、CTLA−4、AILIM/ICOS、インテグリン分子からなる群から選択される少なくとも一つを認識する、[1]から[7]の何れかの項に記載の抗体。
[9] [1]から[8]の何れかの項に記載の抗体をコードする単離された核酸。
[10] [9]に記載の核酸を含むベクター。
[11] [10]に記載のベクターを有する宿主細胞又は宿主生物。
[12] [11]に記載の宿主細胞又は宿主生物を、核酸がコードする抗体を発現するように培養することを特徴とする抗体の製造方法。
[13] [1]から[8]の何れかの項に記載の抗体を含む治療用組成物。
[14] KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられたエフェクター機能を有する抗体を発現する細胞であって、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性が低減、または欠失した細胞。
[15] 以下(1)から(3)の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法;
(1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換える工程、
(2)KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置換されたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
(3)発現産物を回収する工程。
[16] 以下(1)から(3)の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法;
(1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換える工程、
(2)KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
(3)発現産物を回収する工程。
[17] 以下(1)から(3)の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法;
(1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基をシステイン残基に置き換える工程、
(2)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性が低減、または欠失した宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
(3)発現産物を回収する工程。
[18] エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換える工程を含む、抗体のエフェクター機能を向上させる方法。
[19] エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換える工程を含む、抗体のエフェクター機能を向上させる方法。
[20] 下記(1)から(3)の工程を含む抗体のエフェクター機能を向上させる方法;
(1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基をシステイン残基に置き換える工程、
(2)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性が低減、または欠失した宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
(3)発現産物を回収する工程。
[発明の実施の形態]
本明細書中、「Fc領域」は、抗体重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は、重鎖定常部位のC末端側に位置するCH2及びCH3から構成される。
本発明の一部として、以下(I)から(IV)に記載の抗体を提供する。
(I)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸がシステイン残基に置き換えられた抗体であって、以下の(a)及び/又は(b)に記載の特徴を有する抗体;
(a)定常領域において295番目以外の3つのアミノ酸が他のアミノ酸に置き換えられた抗体、及び/又は
(b)Fc領域に結合しているN-グリコシド結合糖鎖において還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体。
(II)KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換えられたことを特徴とする抗体(以下298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型抗体と表すこともある)。
(III)KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換えられたことを特徴とする抗体(以下239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型抗体と表すこともある)。
(IV)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸が、システイン残基に置き換えられた抗体であって、Fc領域に結合しているN-グリコシド結合糖鎖において還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体(以下フコース低減295Cys型抗体と表すこともある)。
298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型抗体
(a)KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸は、それぞれ配列番号:14(H鎖)の303、338、339、300番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸をコードする塩基は、それぞれ配列番号:13(H鎖)の907-909、1012-1014、1015-1017、898-900番目の塩基に対応する。
(b) KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸は、それぞれ配列番号:16(H鎖定常領域)の181、216、217、178番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸をコードする塩基は、それぞれ配列番号:15(H鎖定常領域)の541-543、646-648、649-651、532-534番目の塩基に対応する。
(c) KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸は、それぞれ配列番号:18(H鎖Fc領域)の68、103、104、65番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸をコードする塩基は、それぞれ配列番号:17(H鎖Fc領域)の202-204、307-309、310-312、193-195番目の塩基に対応する。
239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型抗体
(a)KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸は、それぞれ配列番号:24(H鎖)の244、335、337、300番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸をコードする塩基は、それぞれ配列番号:23(H鎖)の730-732、1003-1005、1009-1011、898-900番目の塩基に対応する。
(b)KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸は、それぞれ配列番号:26(H鎖定常領域)の122、213、215、178番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸をコードする塩基は、それぞれ配列番号:25(H鎖定常領域)の364-366、637-639、643-645、532-534番目の塩基に対応する。
(c)KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸は、それぞれ配列番号:28(H鎖Fc領域)の9、100、102、65番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸をコードする塩基は、それぞれ配列番号:27(H鎖Fc領域)の25-27、298-300、304-306、193-195番目の塩基に対応する。
フコース低減295Cys型抗体
(a)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸は、配列番号:30(H鎖)の300番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸をコードする塩基は、配列番号:29(H鎖)の898-900番目の塩基に対応する。
(b)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸は、配列番号:32(H鎖定常領域)の178番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸をコードする塩基は、配列番号:31(H鎖定常領域)の532-534番目の塩基に対応する。
(c)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸は、配列番号:34(H鎖Fc領域)の65番目のアミノ酸に対応する。
KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸をコードする塩基は、配列番号:33(H鎖Fc領域)の193-195番目の塩基に対応する。
本発明の抗体は、上記構成を有するため、エフェクター機能を著しく向上することができる。エフェクター機能には、例えば抗体被覆粒子の食作用および破壊、免疫複合体の浄化、活性化されたエフェクター細胞による抗体被覆された標的細胞の溶解[抗体依存性細胞障害(ADCC)]、補体タンパク質による細胞膜破壊[補体依存性細胞障害(CDC)]、炎症メディエーターの放出、胎盤トランスファーおよび免疫グロブリン生産の制御等が含まれる。なかでも、本発明の抗体はADCC及びCDCの向上に適しており、特にADCC活性の向上に好適である。
本発明の抗体は、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCCをより効果的に媒介することができる。ADCCは、細胞が媒介する反応を意味しており、エフェクター細胞が標的細胞を認識し、標的細胞の溶解を引き起こす反応である。前記エフェクター細胞には、例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージなどが挙げられる。これらのエフェクター細胞は、通常、細胞表層にFc受容体(FcR)を発現しており、Fc領域の構造に応じて、結合可能な種類のFcRを発現する細胞が認識され、細胞障害活性を発現することができる。
本発明の抗体は、少なくともADCC活性が上昇していればよく、その安定性、溶解性、Fc受容体への結合親和性、又はCDC活性が減少している抗体も、本発明の抗体に含まれる。なお、Fc受容体としては、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、FcRn、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の抗体は、Fc領域を介してエフェクター細胞を認識することにより、ADCCを誘導、促進することができる。本発明においては、変異が導入されたまたは変異が導入されかつ抗体に結合する糖鎖のフコースが低減されたFc領域がエフェクター細胞の表層分子[FcγR等]と容易に結合して効率よく活性化できるためか、少量の抗体で高いADCC活性を速やかに誘導することができる。
CDCは、補体タンパク質が媒介する反応を意味しており、補体タンパク質が標的細胞を認識し、標的細胞の細胞膜の破壊を引き起こす反応である。前記補体タンパク質は、抗体のFc領域に結合することにより活性化される。本発明においては、変異が導入されたまたは変異が導入されかつ抗体に結合する糖鎖のフコースが低減されたFc領域が補体タンパク質[C1q等]と容易に結合して効率よく活性化できるためか、少量の抗体で高いCDC活性を速やかに誘導することができる。
本発明におけるFc領域は、エフェクター機能(特にADCC、CDC等)を効果的に媒介できる構造であることが好ましい。このような観点から、改変を加える前の定常領域(親定常領域)としては、IgGの定常領域を用いる場合が多い。なかでも、ヒトIgGの定常領域が好ましく、より好ましくはヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4の各定常領域等が用いられる。本発明においては、元来ADCC活性を有しているヒトIgG1、ヒトIgG3の定常領域が好適に用いられる。また、CDC活性はサブクラスに応じて殺効果が異なり、ヒトIgG1、ヒトIgG4等の定常領域を用いることができる。
なお、定常領域の配列としては、[Sequence of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)]に開示されている配列を例示できるが、これに限定されるものではない。
親定常領域としては、天然に存在する抗体の定常領域に限定されず、(II)の抗体を製造する場合はKabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目、(III)の抗体を製造する場合はKabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目、(IV)の抗体を製造する場合はKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸以外のアミノ酸配列の一部に欠失、付加、置換等の修飾がなされたものであってもよく、対応するアミノ酸配列からなる合成ポリペプチドであってもよい。親定常領域におけるアミノ酸の置換は、遺伝子組換え技術を用いた公知の方法を用いて行うことができる。
本発明におけるFc領域は糖鎖結合部位を含んでいる。上記(II)、(III)に記載の抗体においては、前記糖鎖結合部位には、必ずしも糖鎖が結合している必要はないが、ADCC活性を促す点で少なくとも一つの糖鎖が結合していることが好ましい。前記糖鎖としては、一以上の単糖からなる糖鎖であれば特に限定されず、例えば抗体重鎖のFc領域に結合している糖鎖やそのグライコフォーム、合成糖鎖のいずれであってもよい。例えば、下記式で表される糖鎖は、IgG1抗体重鎖のFc領域における糖鎖結合部位に結合している糖鎖の例である。
一般に、Fc領域に結合する糖鎖の構造は、エフェクター機能に密接に関連することが知られており、上記(II)、(III)に記載の抗体においては、同機能の向上を目的として、天然型糖鎖に適宜修飾が施された糖鎖を用いることも好ましい。天然型糖鎖に修飾が施された糖鎖の例としては、例えば、上記式中、N−アセチルグルコサミンに結合しているフコースに対し、付加、欠失、置換等の修飾を施した構造の糖鎖などが挙げられる。糖鎖修飾部位に結合する糖鎖は、O−結合型、N−結合型の何れであってもよいが、好ましくはN−結合型糖鎖からなる糖鎖が用いられる。
上記(IV)に記載の抗体においては、Fc領域の糖鎖結合部位に少なくとも一つの糖鎖が結合している。結合する糖鎖は還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合してないN-グリコシド結合糖鎖である。一般に、N-グリコシド結合糖鎖は、下記のコア構造を含む。下記構造において、アスパラギンと結合する糖鎖の末端を還元末端、反対側を非還元末端という。
N-グリコシド結合糖鎖には、コア構造の非還元末端にマンノースのみが結合するハイマンノース型、コア構造の非還元末端側にガラクトース-N−アセチルグルコサミン(以下、Gal-GlnNAcと称す)の枝を平行して1ないし複数本有し、更にGal-GlnNAcの非還元末端側にシアル酸、バイセクティングのN−アセチルグルコサミンなどの構造を有するコンプレックス型、コア構造の非還元末端にハイマンノース型とコンプレックス型の両方の枝を持つハイブリッド型などがあげられる。
上記(IV)の抗体が含むN-グリコシド結合糖鎖は、様々な構造を有しているが、好ましくは上記[化2]の構造において、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を含む糖鎖である。
IgGは2本のH鎖から構成されている。上記(IV)の抗体は、H鎖Fc領域の少なくとも一つの糖鎖修飾部位にN−アセチルグルコサミンにフコースが結合しないN-グリコシド結合糖鎖が付加された抗体である。より好ましくは、H鎖Fc領域の全ての糖鎖修飾部位においてN−アセチルグルコサミンにフコースが結合しないN-グリコシド結合糖鎖が付加された抗体である。
上記(IV)の抗体を含む組成物とは、組成物中の抗体のN−グリコシド結合糖鎖のうち、20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上のN−グリコシド結合糖鎖においてフコースが欠損している組成物をいう。
一般に、ヒトIgG抗体のFc領域の糖鎖は、IgG抗体のADCC活性にきわめて重要であり、糖鎖の存在そのものや、その糖鎖構造がADCC活性に密接に関与していることが知られている。また、糖鎖修飾部位への糖鎖の結合(特にN型糖鎖の発現)には、Asn−X−Ser/Thr(Xは任意のアミノ酸残基)というアミノ酸配列が必要である。本発明の抗体は、IgGにおけるFc領域にある糖鎖修飾部位を含むC末端側に存在するアミノ酸配列(例えば、297番及び299番のアミノ酸Asn及びThr)が保存され、糖鎖結合部位においてN型糖鎖等の糖鎖の発現が損われることがなく、より優れたADCC活性の向上効果を得ることができる。例えば、システイン残基の置換部位が、IgGにおけるKabat EU indexで296番目で有る場合にも、糖鎖修飾部位へ糖鎖が結合しにくいか、または結合しても糖鎖の立体構造が保持されないためか、ADCC活性の向上効果を十分に得ることができない。
本発明の抗体は、細胞表層存在分子を認識することが好ましい。より好ましくは、本発明の抗体が認識する細胞表層存在分子はヒト細胞表層存在分子である。
前記ヒト細胞表層存在分子には、例えばサイトカイン受容体、細胞接着分子、がん細胞表層分子、がん幹細胞表層分子、血液細胞表層分子、及びウィルス感染細胞表層分子等が含まれる。このようなヒト細胞表層存在分子の具体例としては、例えばCD3、CD11a、CD20、CD22、CD25、CD28、CD33、CD52、Her2/neu、EGF受容体、EpCAM、MUC1、GD3、CEA、CA125、HLA−DR、TNFalpha受容体、VEGF受容体、CTLA−4、AILIM/ICOS、及びインテグリン分子等が挙げられる。
本発明の抗体は、野生型と比較して、エフェクター機能が向上している。
本発明における抗体とは、抗原結合部位を有し、エフェクター機能(特にADCC)を誘導可能な分子であれば特に限定されず、例えばヒト抗体、マウス抗体等の非ヒト抗体などの天然型抗体及びこれらの誘導体;キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体等の抗原抗体反応を誘導可能な組換え抗体等が含まれる。これらは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体の何れであってもよく、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記天然型抗体の誘導体とは、天然型抗体のアミノ酸配列の一部に、欠失、付加、置換等の変異が導入された抗体を意味しており、これらの変異は自然に生じたものでもよく、人為的であってもよい。前記抗原結合部位には、天然型抗体のFab領域における可変部位VH及びVL(特に超可変部位CDR1〜3)及びこれらと相同な配列からなる領域等が含まれる。
なかでも、良好なADCC活性を発揮でき、抗体医薬に適用しやすい点で、組換え抗体、特にキメラ抗体、ヒト化抗体などが好ましく用いられる。前記キメラ抗体とは、2以上の異種又は同種の融合タンパクからなる抗体を意味しており、例えばヒトIgGのFc領域と非ヒトIgG(マウスIgG等)のFab領域とで構成される抗体等が挙げられる。前記ヒト化抗体としては、例えば非ヒトIgG(マウスIgG等)の超可変部領域を、ヒトIgG由来のFc領域を含む残りの領域に融合させた抗体等が挙げられる。 例えば、Fab領域が非ヒト抗体由来のFab領域であり、かつFc領域がヒト抗体由来のFc領域であることを特徴とするキメラ抗体、可変領域が非ヒト抗体由来の可変領域であり、かつ定常領域がヒト抗体由来の定常領域であることを特徴とするキメラ抗体、CDRが非ヒト抗体由来のCDRであり、FRがヒト抗体由来のFRであり、かつ定常領域がヒト抗体由来の定常領域であることを特徴とするヒト化抗体が挙げられる。
抗体としては、種々の抗原に対する抗体を用いることができる。これらの抗体が認識する抗原には、膜貫通分子などのレセプター、成長因子などのリガンド等のポリペプチド;腫瘍関連糖脂質抗原などの米国特許第5091178号に記載の非ポリペプチド抗原等が含まれる。具体的な抗原としては、例えば、レニン;ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク;α-1-アンチトリプシン;インシュリンA-鎖;インシュリンB-鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びvon Willebrands因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化剤(t−PA)等のプラスミノーゲン活性化剤;ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;ベータ−ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA-4のような細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;脳誘導神経向性因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子等の神経成長因子;血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の繊維芽成長因子;表皮成長因子(EGF);TGF-α及びTGF−β(TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、及びTGF-β5等)等のトランスフォーミング成長因子(TGF);インシュリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;M−CSF、GM−SCF、及びG−CSF等のコロニー刺激因子(CSFs);IL-1からIL-10等のインターロイキン(IL);スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部等;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン(addressin);調節タンパク質;CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM等のインテグリン;HER2、HER3又はHER4レセプター等の腫瘍関連抗原;及びこれらのポリペプチドの断片等が含まれる。
本発明の抗体に対する好適な分子標的には、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20及びCD34等のCDタンパク質;HER2、HER3又はHER4レセプター等のErbBレセプターファミリー;LFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びそのα又はβサブユニットを何れか含むαv/β3インテグリン(例えば、抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体)等の細胞接着分子;VEGF等の成長因子;IgE;血液型抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインC等が含まれる。
上記に例示の抗原の中でも、可溶型抗原及びその断片は、抗体を産生するための免疫原として使用することができる。例えばレセプターのような膜貫通分子に対しては、例えば、レセプターの細胞外ドメイン等の断片を免疫原として使用することができる。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞を免疫原として使用することもできる。そのような細胞は、天然源(例えば、癌株化細胞)から取り出すことができ、又は組換えベクターを用いて膜貫通分子等の抗原認識領域を発現するように形質転換された細胞であってもよい。
これらの抗体は、抗原結合部位以外に、細胞表層存在分子を結合可能な部位を有していてもよい。このような構成を有する抗体によれば、標的細胞の認識効率を向上できるため、少量の抗体で高いエフェクター機能を発揮することが可能である。
また本発明の抗体は、その一部に他のペプチド又はポリペプチドを有するものであっても良い。他のペプチド又はポリペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-mycの断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag、E-tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α-tubulinの断片、B-tag、Protein C の断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明の抗体との融合に付される他のポリペプチドとしては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。
本発明においては、例えば下記(1)から(4)のいずれかに記載の298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型抗CD20抗体を提供する。
(1)CDR1として配列番号:2に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:4に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:6に記載のアミノ酸配列、およびCHとして配列番号:16に記載のアミノ酸配列を有するH鎖を含む抗体、
(2)配列番号:14に記載のアミノ酸配列(H鎖全長のアミノ酸配列)を有するH鎖を含む抗体、
(3)CDR1として配列番号:2に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:4に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:6に記載のアミノ酸配列、およびFc領域として配列番号:18に記載のアミノ酸配列を有するH鎖を含む抗体、
(4)上記(1)、(2)または(3)のいずれかに記載のH鎖、および、下記(i)または(ii)に記載のL鎖の対を有する抗体、
(i)CDR1として配列番号:8に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:10に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:12に記載のアミノ酸配列、およびCLとして配列番号:22に記載のアミノ酸配列を有するL鎖、
(ii)配列番号:20に記載のアミノ酸配列(L鎖全長のアミノ酸配列)を有するL鎖。
本発明は、例えば下記(5)から(8)のいずれかに記載の298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型抗CD20抗体を提供する。
(5)配列番号:1に記載の塩基配列からコードされるCDR1、配列番号:3に記載の塩基配列からコードされるCDR2、配列番号:5に記載の塩基配列からコードされるCDR3、および配列番号:15に記載の塩基配列からコードされるCHを有するH鎖を含む抗体、
(6)配列番号:13に記載の塩基配列からコードされるH鎖を含む抗体、
(7)配列番号:1に記載の塩基配列からコードされるCDR1、配列番号:3に記載の塩基配列からコードされるCDR2、配列番号:5に記載の塩基配列からコードされるCDR3、および配列番号:17に記載の塩基配列からコードされるFc領域を有するH鎖を含む抗体、
(8)上記(5)、(6)または(7)のいずれかに記載のH鎖、および、下記(i)または(ii)に記載のL鎖の対を有する抗体、
(i)配列番号:7に記載の塩基配列からコードされるCDR1、配列番号:9に記載の塩基配列からコードされるCDR2、配列番号:11に記載の塩基配列からコードされるCDR3、および配列番号:21に記載の塩基配列からコードされるCLを有するL鎖、
(ii)配列番号:19に記載の塩基配列からコードされるL鎖。
本発明においては、例えば下記(9)から(12)のいずれかに記載の239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型抗CD20抗体を提供する。
(9)CDR1として配列番号:2に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:4に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:6に記載のアミノ酸配列、およびCHとして配列番号:26に記載のアミノ酸配列を有するH鎖を含む抗体、
(10)配列番号:24に記載のアミノ酸配列(H鎖全長のアミノ酸配列)を有するH鎖を含む抗体、
(11)CDR1として配列番号:2に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:4に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:6に記載のアミノ酸配列、およびFc領域として配列番号:28に記載のアミノ酸配列を有するH鎖を含む抗体、
(12)上記(9)、(10)または(11)のいずれかに記載のH鎖、および、上記(4)の(i)または(ii)に記載のL鎖の対を有する抗体。
本発明は、例えば下記(13)から(16)のいずれかに記載の239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型抗CD20抗体を提供する。
(13)配列番号:1に記載の塩基配列からコードされるCDR1、配列番号:3に記載の塩基配列からコードされるCDR2、配列番号:5に記載の塩基配列からコードされるCDR3、および配列番号:25に記載の塩基配列からコードされるCHを有するH鎖を含む抗体、
(14)配列番号:23に記載の塩基配列からコードされるH鎖を含む抗体、
(15)配列番号:1に記載の塩基配列からコードされるCDR1、配列番号:3に記載の塩基配列からコードされるCDR2、配列番号:5に記載の塩基配列からコードされるCDR3、および配列番号27に記載の塩基配列からコードされるFc領域を有するH鎖を含む抗体、
(16)上記(13)、(14)または(15)のいずれかに記載のH鎖、および、上記(8)の(i)または(ii)に記載のL鎖の対を有する抗体。
本発明においては、例えば下記(17)から(20)のいずれかに記載のフコース低減型295Cys型抗CD20抗体を提供する。
(17)CDR1として配列番号:2に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:4に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:6に記載のアミノ酸配列、およびCHとして配列番号:32に記載のアミノ酸配列を有するH鎖を含む抗体、
(18)配列番号:30に記載のアミノ酸配列(H鎖全長のアミノ酸配列)を有するH鎖を含む抗体、
(19)CDR1として配列番号:2に記載のアミノ酸配列、CDR2として配列番号:4に記載のアミノ酸配列、CDR3として配列番号:6に記載のアミノ酸配列、およびFc領域として配列番号:34に記載のアミノ酸配列を有するH鎖を含む抗体、
(20)上記(17)、(18)または(19)のいずれかに記載のH鎖、および、上記4の(i)または(ii)に記載のL鎖の対を有する抗体。
本発明は、例えば下記(21)から(24)のいずれかに記載のフコース低減型295Cys型抗CD20抗体を提供する。
(21)配列番号:1に記載の塩基配列からコードされるCDR1、配列番号:3に記載の塩基配列からコードされるCDR2、配列番号:5に記載の塩基配列からコードされるCDR3、および配列番号:31に記載の塩基配列からコードされるCHを有するH鎖を含む抗体、
(22)配列番号:29に記載の塩基配列からコードされるH鎖を含む抗体、
(23)配列番号:1に記載の塩基配列からコードされるCDR1、配列番号:3に記載の塩基配列からコードされるCDR2、配列番号:5に記載の塩基配列からコードされるCDR3、および配列番号:33に記載の塩基配列からコードされるFc領域を有するH鎖を含む抗体、
(24)上記(21)、(22)または(23)のいずれかに記載のH鎖、および、上記(8)の(i)または(ii)に記載のL鎖の対を有する抗体。
本発明の抗体は、遺伝子組換え技術等を用いた公知の方法で製造することができる。本発明の抗体は、本発明の抗体をコードする単離された核酸を用い、該核酸を含むベクターを作成し、該ベクターを有する宿主細胞又は宿主生物を得、これらの宿主細胞又は宿主生物を核酸がコードするポリペプチドを発現するように培養する方法を用いて製造することができる。
本発明の抗体は、一般的な抗体の製造方法用いて製造することができる。抗体の製造方法は、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Antibodies,A Laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988、Monoclonal Antibodies:principles and practice,Third Edition,Acad.Press,1993、Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press,1996等に記載された方法を用いることができ、例えば、以下のように宿主細胞中で発現させて取得することができる。
抗体の製造は、例えば親Fc領域を含むポリペプチドをコードする核酸において、IgGにおけるFc領域にあるアミノ酸を目的のアミノ酸をコードするように置換された配列からなる核酸を単離する工程;抗体をコードする単離された核酸を、適当なプロモーターを含む発現ベクターに組み込んで複製可能な組換えベクターを生産する工程;得られた組換えベクターを用いて宿主細胞又は宿主生物を形質転換する工程;及び形質転換した宿主細胞又は宿主生物を培養し抗体を生産する工程を含んでいる。
親Fc領域を含むポリペプチドは、IgGにおけるFc領域にあるKabatのEUインデックス番号で239、295、298、330、及び332-334番目のアミノ酸以外のアミノ酸に欠失、付加、置換等の修飾がなされたものであってもよい。
本発明抗体をコードする核酸は、塩基配列に変異を導入する慣用の方法で得ることができ、例えば、親Fc領域における被置換アミノ酸残基をコードする核酸配列を「TGC」又は「TCT」、「GAT」又は「GAC」、「CTT」又は「CTC」又は「CTA」又は「CTG」、「GAA」又は「GAG」、「GCT」又は「GCC」又は「GCA」又は「GCG」、「TCT」又は「TCC」又は「TCA」又は「TCG」に置き換えた核酸配列を含む合成オリゴヌクレオチドを用い、親Fc領域を含むcDNAを鋳型としてPCRにより調製することができる。
上記(II)、(III)に記載の抗体においては、エフェクター機能を阻害しない範囲で、親Fc領域のアミノ酸配列に(II)、(III)に記載に記載した変異を導入する工程中または導入後に、さらに他の修飾が施されてもよく、例えばアミノ酸配列や糖鎖結合部位に結合する糖鎖の一部に欠失、付加、置換等の修飾が施されてもよい。特に本発明においては、Fc領域の糖鎖結合部位に結合する糖鎖に公知の修飾を加えることにより、エフェクター機能の向上効果を得ることができ好ましい。
複製可能な組換えベクターは、本発明の抗体をコードする核酸(DNA断片又は全長cDNA)を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより作製できる。発現ベクターとしては、導入する宿主細胞又は宿主生物の種類に応じて適宜選択することができ、宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、目的とする抗体をコードする核酸を転写可能なプロモーターを含有しているものが用いられる。これらの組換えベクターは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、2以上の組換えベクターを併用してもよい。併用する組換えベクターとしては、例えば、相補的抗体軽鎖または重鎖、あるいは所望のレセプターやリガンドの結合ドメインをコードする核酸、所望の糖鎖修飾酵素をコードする核酸等を適当なプロモーターを含む発現ベクターを用いることができる。これらの組換えベクターを併用することにより、より高いエフェクター機能を発現可能な抗体を得ることができる。2以上の組換えベクターを用いる場合には、宿主細胞又は宿主生物は同一でも異なってもよい。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。また、本発明においては、宿主細胞として、エフェクター機能に影響を及ぼす糖鎖結合部位に結合する糖鎖に対する修飾酵素の活性が低下又は欠失した細胞を選択するか、人為的手法により同活性を低下又は欠失させた細胞を用いることができる。このような酵素には、N−グリコシド結合糖鎖の修飾に係わる酵素等が含まれ、例えば、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素、N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素等が挙げられる。宿主生物としては、例えば動物個体、植物個体等が挙げられる。
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)等を利用できる。プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等をあげることができる。宿主細胞としては、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、クリュイベロミセス属、トリコスポロン属、シュワニオミセス属等に属する微生物、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomyces alluvius等をあげることができる。
組換えベクターの酵母への導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods.Enzymol.),194,182(1990)]、スフェロプラスト法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A),84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.Bacteriology),153,163(1983)]、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A),75,1929(1978)に記載の方法等をあげることができる。
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107[特開平3−22979;サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133,(1990)]、pAS3−3[特開平2−227075]、pCDM8[ネイチャー(Nature),329,840,(1987)]、pcDNAI/Amp(Invitrogen社)、pREP4(Invitrogen社)、pAGE103[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochemistry),101,1307(1987)]、pAGE210等をあげることができる。プロモーターとしては、動物細胞中で発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。宿主細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ラットミエローマ細胞、マウスミエローマ細胞、シリアンハムスター腎臓由来細胞、胚性幹細胞、受精卵細胞等をあげることができる。
組換えベクターの動物細胞への導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]、リン酸カルシウム法[特開平2−227075]、リポフェクション法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.),84,7413(1987)]、インジェクション法[マニピュレイティング・ザ・マウス・エンブリオ・ア・ラボラトリー・マニュアル]、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法[特許第2606856、特許第2517813]、DEAE−デキストラン法[バイオマニュアルシリーズ4−遺伝子導入と発現・解析法(羊土社)横田崇・新井賢一編(1994)]、ウイルスベクター法[マニピュレーティング・マウス・エンブリオ第2版]等をあげることができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6,47(1988)等に記載された方法によって、タンパク質を発現することができる。即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を発現させることができる。該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社)等をあげることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。昆虫細胞としては、Spodopterafrugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21[カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)]、Trichoplusianiの卵巣細胞であるHigh5(Invitrogen社)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.),84,7413(1987)]等をあげることができる。
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等をあげることができる。プロモーターとしては、植物細胞中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等をあげることができる。宿主細胞としては、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等をあげることができる。
組換えベクターの植物細胞への導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる方法[特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977]、エレクトロポレーション法[特開昭60−251887]、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法[日本特許第2606856、日本特許第2517813]等をあげることができる。遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、Fc領域と他のタンパク質との融合タンパク質発現等を行うことができる。
このように1又は2以上の組換えベクターが導入された形質転換体は、宿主に応じた培地を用いて、公知の方法に従って培養することにより、培養物中に抗体)を生成蓄積することができる。
大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、該生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、該生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類等を用いることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主とする形質転換体の培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中のpHは3.0〜9.0に保持する。pHの調製は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地[ザ・ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエイション(The Journal of the American Medical Association),199,519(1967)]、EagleのMEM培地[サイエンス(Science),122,501(1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[ヴュウロロジー(Virology),8,396(1959)]、199培地[プロシーディング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォア・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73,1(1950)]、Whitten培地[発生工学実験マニュアル−トランスジェニック・マウスの作り方(講談社)勝木元也編(1987)]またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(Pharmingen社)、Sf−900 II SFM培地(Life Technologies社)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRH Biosciences社)、Grace’s Insect Medium[ネイチャー(Nature),195,788(1962)]等を用いることができる。培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行う。また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
植物細胞を宿主として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。培養は、通常pH5〜9、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養している形質転換体は、自然に又は誘導により抗体を発現し、培養物中に生成蓄積することができる。抗体の発現方法としては、直接発現以外に、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。抗体の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞や、生産させる抗体の構造を変えることにより、該方法を選択することができる。
抗体が宿主細胞内あるいは宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),264,17619(1989)]、ロウらの方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.),86,8227(1989);ジーン・デベロップメント(Genes Develop.),4,1288(1990)]、または特開平05−336963、特開平06−823021等に記載の方法を準用することにより、該抗体を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
すなわち、遺伝子組換えの手法を用いて、発現ベクターに、抗体をコードするDNA、および抗体の発現に適切なシグナルペプチドをコードするDNAを挿入し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入の後に抗体を発現させることにより、目的とする抗体を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。また、特開平2−227075号公報に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。さらに、遺伝子導入した動物または植物の細胞を再分化させることにより、遺伝子が導入された動物個体(トランスジェニック非ヒト動物)または植物個体(トランスジェニック植物)を造成し、これらの個体を用いて抗体を製造することもできる。
形質転換体が動物個体または植物個体の場合は、通常の方法に従って、飼育または栽培し、抗体を生成蓄積させ、該動物個体または植物個体より該抗体を採取することにより、該抗体を製造することができる。動物個体を用いて抗体を製造する方法としては、例えば公知の方法[アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション(American Journal of Clinical Nutrition),63,639S(1996);アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション(American Journal of Clinical Nutrition),63,627S(1996);バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),9,830(1991)]に準じて遺伝子を導入して造成した動物中に目的とする抗体を生産する方法があげられる。
動物個体の場合は、例えば、抗体をコードするDNAを導入したトランスジェニック非ヒト動物を飼育し、抗体を該動物中に生成・蓄積させ、該動物中より抗体を採取することにより、抗体を製造することができる。該動物中の生成・蓄積場所としては、例えば、該動物のミルク(特開昭63−309192)、卵等をあげることができる。この際に用いられるプロモーターとしては、動物で発現できるものであればいずれも用いることができるが、例えば、乳腺細胞特異的なプロモーターであるαカゼインプロモーター、βカゼインプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、ホエー酸性プロテインプロモーター等が好適に用いられる。
植物個体を用いて抗体を製造する方法としては、例えば抗体分子をコードするDNAを導入したトランスジェニック植物を公知の方法[組織培養,20(1994);組織培養,21(1995);トレンド・イン・バイオテクノロジー(Trends in Biotechnology),15,45(1997)]に準じて栽培し、抗体を該植物中に生成・蓄積させ、該植物中より該抗体を採取することにより、抗体を生産する方法があげられる。抗体をコードする遺伝子を導入した形質転換体により製造された抗体は、例えば抗体が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化学(株)製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、抗体の精製標品を得ることができる。
また、抗体が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として抗体の不溶体を回収する。回収した抗体の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該抗体を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法により該抗体の精製標品を得ることができる。
抗体が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該抗体あるいはその誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、抗体の精製標品を得ることができる。
このようにして取得される抗体として、例えば、抗体の断片、抗体のFc領域を有する融合タンパク質(キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体等の抗原抗体反応を誘導可能な組換え抗体)などを挙げることができる。
即ち本発明は、エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換えられた工程を含む、エフェクター機能が向上した抗体の製造方法を提供する。より具体的には、本発明は、以下の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法を提供する。
(A-1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換える工程
(A-2)KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程
(A-3)発現産物を回収する工程。
上記(A-1)は、KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換えられた抗体をコードするDNAを製造する工程に置き換えてもよい。
また、本発明は、エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換えられた工程を含む、エフェクター機能が向上した抗体の製造方法を提供する。より具体的には、本発明は、以下の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法を提供する。
(B-1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換える工程
(B-2)KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程
(B-3)発現産物を回収する工程。
上記(B-1)は、KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換えられた抗体をコードするDNAを製造する工程に置き換えてもよい。
即ち本発明は、エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基をシステイン残基に置き換える工程、及び該抗体の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性を低減させる、または欠失させる工程を含む、エフェクター機能が向上した抗体の製造方法を提供する。より具体的には、本発明は、以下の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法を提供する。
(C-1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基をシステイン残基に置き換える工程、
(C-2)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性が低減、または欠失した宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
(C-3)発現産物を回収する工程。
上記(C-1)は、KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられた抗体をコードするDNAを製造する工程に置き換えてもよい。
本発明の一つの態様としては、まず、当業者に公知のエフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で上記(A)〜(C)において置換部位としたアミノ酸残基を上記(A)〜(C)において目的とするアミノ酸残基に置換する。
本発明の別の態様としては、まず、エフェクター機能を有する抗体を製造し、次いで、製造された抗体におけるKabatのEUインデックス番号で上記(A)〜(C)において置換部位としたのアミノ酸残基を目的とするアミノ酸残基に置換する。例えば、まず、後述の方法によって所望の抗原に結合する抗体を得て、次いで、得られた抗体がエフェクター機能を有するか否かを当業者に周知の方法によって判定することで、エフェクター機能を有する抗体を製造することができる。エフェクター機能の判定方法としては、例えば実施例に記載の方法が挙げられる。
本発明において、アミノ酸残基をシステイン残基に置換する方法は特に限定されるものではないが、例えば、部位特異的変異誘発法(Oligonucleotide-directed mutagenesis using M13-derived vector:an efficient and general procedure for the production of point mutations in any fragment of DNA、Mark J. Zoller and Michael Smith、Nucleic Acids Research、Volume 10 Number 20, 6487-6500, 1982;Directed evolution of green fluorescent protein by a new versatile PCR strategy for site-directed and semi-random mutagenesis Asako Sawano and Atsushi Miyawaki、Nucleic Acids Research、Volume 28, Number 16, e78, 2000)によって行うことが出来る。
本発明においては、次いで、KabatのEUインデックス番号で上記(A)〜(C)において置換部位としたアミノ酸残基が目的とするアミノ酸残基に置換されたFc領域を有するH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを、当業者に周知な方法によって宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる。次いで、当業者に周知な方法を利用することにより、発現産物を回収することが出来る。
KabatのEUインデックス番号で上記(A)〜(C)において置換部位としたアミノ酸残基が目的とするアミノ酸残基に置換されたFc領域を有するH鎖をコードするDNAは、部分DNAに分けて製造することができる。部分DNAの組み合わせとしては、例えば、可変領域をコードするDNAと定常領域をコードするDNA、あるいはFab領域をコードするDNAとFc領域をコードするDNAが挙げられるが、これら組み合わせに限定されるものではない。L鎖をコードするDNAもまた、同様に部分DNAに分けて製造することができる。
以下に所望の抗原に結合する抗体を得る方法に関して述べる。
抗体のH鎖又はL鎖をコードする遺伝子は既知の配列を用いることも可能であり、又、当業者に公知の方法で取得することもできる。例えば、抗体ライブラリーから取得することも可能であるし、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから抗体をコードする遺伝子をクローニングして取得することも可能である。
抗体ライブラリーについては既に多くの抗体ライブラリーが公知になっており、又、抗体ライブラリーの作製方法も公知であるので、当業者は適宜抗体ライブラリーを入手することが可能である。例えば、抗体ファージライブラリーについては、Clackson et al., Nature 1991, 352: 624-8、Marks et al., J. Mol. Biol. 1991, 222: 581-97、Waterhouses et al., Nucleic Acids Res. 1993, 21: 2265-6、Griffiths et al., EMBO J. 1994, 13: 3245-60、Vaughan et al., Nature Biotechnology 1996, 14: 309-14、及び特表平20−504970号公報等の文献を参照することができる。その他、真核細胞をライブラリーとする方法(WO95/15393号パンフレット)やリボソーム提示法等の公知の方法を用いることが可能である。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を元に適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に周知であり、WO92/01047、WO92/20791、WO93/06213、WO93/11236、WO93/19172、WO95/01438、WO95/15388を参考にすることができる。
ハイブリドーマから抗体をコードする遺伝子を取得する方法は、基本的には公知技術を使用し、所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングし、得られたハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成し、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結することにより得ることができる。
より具体的には、特に以下の例示に限定される訳ではないが、本発明のH鎖及びL鎖をコードする抗体遺伝子を得るための感作抗原は、免疫原性を有する完全抗原と、免疫原性を示さないハプテン等を含む不完全抗原の両方を含む。例えば、目的タンパク質の全長タンパク質、又は部分ペプチドなどを用いることができる。抗原の調製は、当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、バキュロウイルスを用いた方法(例えば、WO98/46777など)などに準じて行うことができる。ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミルステインらの方法(G. Kohler and C. Milstein, Methods Enzymol. 1981, 73: 3-46)等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。また、必要に応じ抗原を他の分子と結合させることにより可溶性抗原とすることもできる。受容体のような膜貫通分子を抗原として用いる場合、受容体の細胞外領域部分を断片として用いたり、膜貫通分子を細胞表面上に発現する細胞を免疫原として使用することも可能である。
抗体産生細胞は、上述の適当な感作抗原を用いて動物を免疫化することにより得ることができる。または、抗体を産生し得るリンパ球をin vitroで免疫化して抗体産生細胞とすることもできる。免疫化する動物としては、各種哺乳動物を使用できるが、ゲッ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が一般的に用いられる。マウス、ラット、ハムスター等のゲッ歯目、ウサギ等のウサギ目、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等のサル等の霊長目の動物を例示することができる。その他、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物も知られており、このような動物を使用することによりヒト抗体を得ることもできる(WO96/34096; Mendez et al., Nat. Genet. 1997, 15: 146-56参照)。このようなトランスジェニック動物の使用に代えて、例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させることにより、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878号公報参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を所望の抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(WO93/12227、WO92/03918、WO94/02602、WO96/34096、WO96/33735参照)。
動物の免疫化は、例えば、感作抗原をPhosphate-Buffered Saline(PBS)または生理食塩水等で適宜希釈、懸濁し、必要に応じてアジュバントを混合して乳化した後、動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。その後、好ましくは、フロイント不完全アジュバントに混合した感作抗原を4〜21日毎に数回投与する。抗体の産生の確認は、動物の血清中の目的とする抗体力価を慣用の方法により測定することにより行われ得る。
ハイブリドーマは、所望の抗原で免疫化した動物またはリンパ球より得られた抗体産生細胞を、慣用の融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を使用してミエローマ細胞と融合して作成することができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 1986, 59-103)。必要に応じハイブリドーマ細胞を培養・増殖し、免疫沈降、放射免疫分析(RIA)、酵素結合免疫吸着分析(ELISA)等の公知の分析法により該ハイブリドーマより産生される抗体の結合特異性を測定する。その後、必要に応じ、目的とする特異性、親和性または活性が測定された抗体を産生するハイブリドーマを限界希釈法等の手法によりサブクローニングすることもできる。
続いて、選択された抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマまたは抗体産生細胞(感作リンパ球等)から、抗体に特異的に結合し得るプローブ(例えば、抗体定常領域をコードする配列に相補的なオリゴヌクレオチド等)を用いてクローニングすることができる。また、mRNAからRT-PCRによりクローニングすることも可能である。
構築された抗体遺伝子を公知の方法により発現させることで、抗体を取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現させる抗体遺伝子、及びその3’側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNAを含む発現ベクターにて、抗体遺伝子を発現させることができる。例えば、プロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウイルス前期プロモーター/エンハンサーが挙げられる。また、それ以外にも、レトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター−1αなどの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いることができる。例えば、SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合には、Mullingらの方法 (Mulling RC et al., Nature (1979) 277: 108-14)に従えば、容易に抗体遺伝子を発現することができる。ヒトエロンゲーションファクター−1αを用いる場合には、Mizushimaの方法 (Mizushima, Nucleic Acids Res (1990) 18: 5322) に従えば、容易に抗体遺伝子を発現することができる。大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させたDNAを含む発現ベクターにて、抗体遺伝子を発現させることができる。例えば、プロモーターとしてLacZプロモーター、araBプロモーターが挙げられる。
ハイブリドーマ培養・増殖又は遺伝子組換えにより得られた抗体は、均一になるまで精製することができる。抗体の分離、精製は、通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、硫酸アンモニウム又は硫酸ナトリウム等による塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組合せれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)が、これらに限定されるものではない。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラム、プロテインLカラム等が挙げられる。このようにして取得された抗体がエフェクター機能を有するか否かは、当業者に周知な方法によって判定可能であり、例えば実施例に記載の方法によって判定することができる。
N−アセチルグルコサミンにフコースが結合しない、あるいは結合が低下しているN−グリコシド結合糖鎖を有する抗体を製造するための宿主細胞または動物個体あるいは植物個体としては、例えば、抗体のFc領域に結合するN−アセチルグルコサミンにフコースを付加させる酵素活性の低いまたは酵素活性を有しない細胞または個体であればいかなるものでもよい。抗体のFc領域に結合するN−アセチルグルコサミンにフコースを付加させる酵素活性の低いまたは酵素活性を有しない細胞としては、ラットミエローマYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(YB2/0細胞と略される)(ATCC CRL 1662として保存されている)、FTVIIIノックアウトCHO細胞(WO 02/31140)、Lec13 細胞(WO03/035835)、フコーストランスポーター欠損細胞(WO2006/067847、WO2006/067913)などを挙げることができる。
また、当業者は公知の方法により、宿主細胞または動物個体あるいは植物個体のα1,6結合に関与する酵素の遺伝子を欠損させたり、該遺伝子への変異を与えて酵素活性を下げるか欠失させたりすることにより、α1,6結合に関与する酵素活性の少ない、または有しない細胞または個体を製造して宿主細胞または動物個体あるいは植物個体として用いることもできる。α1,6結合に関与する酵素としては、フコシルトランスフェラーゼ、好ましくはα1,6-フコシルトランスフェラーゼ(以下FUT8と表すこともある)があげられる。宿主細胞としては、細胞、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであれば、いずれも用いることができる。
糖鎖の解析は当業者に公知の方法で行うことができる。例えば、抗体にN-Glycosidase F(Roche)等を作用させ、糖鎖を抗体から遊離させる。その後、セルロースカートリッジを用いた固相抽出(Shimizu Y. et al., Carbohydrate Research 332(2001), 381-388)による脱塩後に濃縮乾固し、2-アミノピリジンによる蛍光標識を行う(Kondo A. et al., Agricultural and Biological Chemistry 54:8(1990), 2169-2170)。得られたPA化糖鎖を、セルロースカートリッジを用いた固相抽出により脱試薬した後遠心濃縮し、精製PA化糖鎖とする。その後、ODSカラムによる逆相HPLC分析を行うことにより測定することが可能である。また、PA化糖鎖の調製を行った後、ODSカラムによる逆相HPLC分析およびアミンカラムによる順相HPLC分析を組み合わせた、二次元マッピングを実施することにより行うことも可能である。
フコースを付加する酵素の活性が低減または欠失した宿主細胞又は宿主生物を製造するには、酵素をコードするDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAを用いることができる。
アンチセンス核酸が標的遺伝子の発現を抑制する作用としては、以下のような複数の要因が存在する。すなわち、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造がつくられた部位とのハイブリッド形成による転写抑制、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエキソンとの接合点でのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行抑制、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻止、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制などである。これらは、転写、スプライシング、または翻訳の過程を阻害して、標的遺伝子の発現を抑制する。
本発明で用いられるアンチセンス配列は、上記のいずれの作用で標的遺伝子の発現を抑制してもよい。一つの態様としては、遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的であろう。しかし、コード領域もしくは3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用し得る。このように、遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含むDNAも、本発明で利用されるアンチセンスDNAに含まれる。使用されるアンチセンスDNAは、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3'側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製されたDNAは、公知の方法で、所望の植物へ形質転換できる。アンチセンスDNAの配列は、形質転換する植物が持つ内在性遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的とする遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス配列を用いて、効果的に標的遺伝子の発現を阻害するには、アンチセンスDNA の長さは、少なくとも15塩基以上であり、好ましくは100塩基以上であり、さらに好ましくは500塩基以上である。通常、用いられるアンチセンスDNAの長さは5kbよりも短く、好ましくは2.5kbよりも短い。
アンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体または修飾産物もアンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いることができる。このような修飾産物の例には、メチルホスホネート型またはエチルホスホネート型などの低級アルキルホスホネート修飾物、ホスホロチオエート修飾物、およびホスホロアミデート修飾物が含まれる。
フコースを付加する酵素の活性が低減または欠失した宿主細胞又は宿主生物を製造するには、酵素をコードするDNAの転写産物と相補的なdsRNAを用いることができる。また、RNAi技術を含む。RNAiは、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二重鎖RNA(以下dsRNA)を細胞内に導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも抑制される現象である。細胞に約40〜数百塩基対のdsRNAが導入されると、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼがATP存在下で、dsRNAを3’末端から約21〜23塩基対ずつ切り出し、siRNA(short interference RNA)を生じる。このsiRNAに特異的なタンパク質が結合して、ヌクレアーゼ複合体(RISC:RNA-induced silencing complex)が形成される。この複合体はsiRNAと同じ配列を認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部で標的遺伝子のmRNAを切断する。また、この経路とは別にsiRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RsRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成される。このdsRNAが再びダイサーの基質となって、新たなsiRNAを生じて作用を増幅する経路も考えられている。
フコースを付加する酵素の活性が低減または欠失した宿主細胞又は宿主生物を製造するには、標的とする酵素のmRNAのいずれかの領域に対するアンチセンスRNAをコードしたアンチセンスコードDNAと、標的とする酵素のmRNAのいずれかの領域のセンスRNAをコードしたセンスコードDNAより発現させて用いることができる。また、これらのアンチセンスRNAおよびセンスRNAよりdsRNAを用いることもできる。
上記アンチセンスRNA、dsRNAをベクター等に保持させる場合の構成としては、同一のベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる場合と、異なるベクターからそれぞれアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる場合がある。例えば、同一のベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる構成としては、アンチセンスコードDNAおよびセンスコードDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモーターを連結させたアンチセンスRNA発現カセット、センスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを同方向にあるいは逆方向にベクターに挿入することにより構成することができる。また、異なる鎖上に対向するようにアンチセンスコードDNAとセンスコードDNAとを逆向きに配置した発現システムを構成することもできる。この構成では、アンチセンスRNAコード鎖とセンスRNAコード鎖とが対となった一つの二本鎖DNA(siRNAコードDNA)が備えられ、その両側にそれぞれの鎖からアンチセンスRNA、センスRNAとを発現し得るようにプロモーターを対向して備えられる。この場合には、センスRNA、アンチセンスRNAの下流に余分な配列が付加されることを避けるために、それぞれの鎖(アンチセンスRNAコード鎖、センスRNAコード鎖)の3'末端にターミネーターをそれぞれ備えることが好ましい。このターミネーターは、A(アデニン)塩基を4つ以上連続させた配列などを用いることができる。また、このパリンドロームスタイルの発現システムでは、二つのプロモーターの種類を異ならせることが好ましい。
また、異なるベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスコードDNAおよびセンスコードDNAの上流にそれぞれ polIII系のような短いRNAを発現し得るプロモーターを連結させたアンチセンスRNA発現カセット、センスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを異なるベクターに保持させることにより構成することができる。
フコースを付加する酵素の活性が低減または欠失した宿主細胞又は宿主生物を製造するためのdsRNAとしてsiRNAが使用されてもよい。「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる二本鎖RNA分子を指す。siRNAは、標的mRNAの翻訳を阻害する二本鎖RNA分子を意味する。DNAがRNA転写の鋳型となることを含む、siRNAを細胞に導入する標準的な技術が用いられる。siRNAには、センス核酸配列、あるいはアンチセンス核酸配列、またはその双方が含まれる。siRNAは、2つの相補的分子を含んでもよく、または、単一の転写産物が標的遺伝子由来のセンス配列および相補的アンチセンス配列の双方を有するように、すなわちいくつかの態様においてマイクロRNA(miRNA)の産生に至るヘアピンになるように構築してもよい。
siRNAを細胞に導入するためには、RNAを転写するための鋳型としてDNAを用いることを含む、標準的な技法が用いられる。siRNAの標的遺伝子との結合は、細胞によるタンパク質産生の低下をもたらす。オリゴヌクレオチドの長さは、少なくとも10ヌクレオチドであり、天然に存在する転写物と同じ長さであってもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、約19〜約25ヌクレオチド長である。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは、約75、約50、約25ヌクレオチド長未満である。さらに、siRNAの阻害活性を増強するため、ヌクレオチド「u」が標的配列のアンチセンス鎖の3'末端に付加され得る。付加される「u」の数は、少なくとも2個、一般的には約2〜約10個、好ましくは約2〜約5個である。付加された「u」は、siRNAのアンチセンス鎖の3'末端で単鎖を形成する。siRNAは、mRNA転写物と結合することができる形態で細胞へ直接導入される。これらの態様において、本発明のsiRNA分子は、典型的には、アンチセンス分子について既に記載されたようにして修飾される。その他の修飾も可能であり、例えば、コレステロールと接合したsiRNAは、改良された薬理学的特性を示した(Song et al.Nature Med.9:347-351(2003))。又は、siRNAをコードするDNAは、ベクター内に存在する。
ベクターは、例えば、両鎖の(DNA分子の転写による)発現を可能にする様式で、機能的に連結された制御配列が、標的配列に隣接するよう、標的配列を発現ベクターへクローニングすることにより作製される(Lee,N.S.,Dohjima,T.,Bauer,G.,Li,H.,Li,M.-J.,Ehsani,A.,Salvaterra,P.,and Rossi,J.(2002)ヒト細胞におけるHIV-1 rev転写物を標的とした低分子干渉RNAの発現(Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells)Nature Biotechnology 20:500-505)。標的mRNAに対してアンチセンスのRNA分子は、第一のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3'末端のプロモーター配列)により転写され、標的mRNAに対するセンス鎖であるRNA分子は、第二のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5'末端のプロモーター配列)により転写される。センス鎖及びアンチセンス鎖は、インビボでハイブリダイズし、標的遺伝子のサイレンシングのためのsiRNA構築物を生成させる。又は、二つの構築物が、siRNA構築物のセンス鎖及びアンチセンス鎖を作出するために利用される。クローニングされた標的遺伝子は、単一の転写物が標的遺伝子からのセンス配列及び相補アンチセンス配列の両方を有している、二次構造、例えば、ヘアピンを有している構築物をコードし得る。
例えば、本発明のヘアピン構造を有する好ましいsiRNAにおけるループ配列は、CCC、UUCG、CCACC、CCACACC、及びUUCAAGAGAからなる群より選択され得る。
発現は、標的配列に隣接する同一または異なる制御配列によって、時間的もしくは空間的に独立して調節され得る。siRNAは、例えば、低分子核RNA(snRNA)U6由来のRNAポリメラーゼIII転写単位又はヒトH1 RNAプロモーターを含有しているベクターへ標的遺伝子鋳型をクローニングすることにより細胞内で転写される。ベクターを細胞へ導入するため、トランスフェクション増強剤が使用され得る。FuGENE(Rochediagnostices)、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000(Invitrogen)、オリゴフェクタミン(Oligofectamine)(Invitrogen)、及びヌクレオフェクター(Nucleofector)(Wako pure Chemical)が、トランスフェクション増強剤として有用である。
siRNAのヌクレオチド配列は、アンビオン社(Ambion)のウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手しうるsiRNA設計用のコンピュータプログラムを用いて設計することができる。siRNAに関するヌクレオチド配列は、コンピュータプログラムにより、以下のプロトコールに基づいて選択される。
siRNA標的部位の選択:
1.目的の転写物のAUG開始コドンから開始して、AAジヌクレオチド配列に関して下流へとスキャンする。各AAおよび3'末端に隣接した19ヌクレオチドの出現率をsiRNA標的の可能性がある部位として記録する。Tuschlら((Targeted mRNA degradation by double-stranded RNA in vitro. Genes Dev 13(24): 3191-7(1999))は、siRNAを5'および3'非翻訳領域(UTR)ならびに開始コドン付近(75塩基内)の領域に対しては設計しないように推奨しており、これは、これらの領域には調節タンパク質の結合部位が多く含まれる可能性があるためである。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げる可能性がある。
2.標的の可能性がある部位をヒトゲノムデータベースと比較し、他のコード配列と明らかな相同性を有するどの標的領域も検討から除外する。相同性検索はBLASTを用いて行うことができ、これはNCBIのサーバー:www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/上にある。
3.合成用の適格な標的配列を選択する。アンビオン社では、遺伝子の全長に沿っていくつかの標的配列を評価用に選択することができる。
フコースを付加する酵素の活性が低減または欠失した宿主細胞又は宿主生物を製造するには、リボザイムをコードするDNAを利用して行うことも可能である。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子のことをいう。リボザイムには種々の活性を有するものがあるが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムの研究により、RNAの部位特異的な切断を目的とするリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型や、RNasePに含まれるM1RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある。
例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15のC15の3'側を切断するが、活性にはU14が9位のAと塩基対を形成することが重要とされ、15位の塩基はCの他にAまたはUでも切断されることが示されている。リボザイムの基質結合部を標的部位近傍のRNA 配列と相補的になるように設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することが可能である。例えば、阻害標的となる本発明の酵素のコード領域中には標的となりうる部位が複数存在する。
また、ヘアピン型リボザイムも、フコースを付加する酵素の活性が低減または欠失した宿主細胞又は宿主生物を製造するにために有用である。ヘアピン型リボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(J.M.Buzayan Nature 323:349,1986)。このリボザイムも、標的特異的なRNA切断を起こすように設計できることが示されている。
標的を切断できるよう設計されたリボザイムは、植物細胞中で転写されるようにカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどのプロモーターおよび転写終結配列に連結される。しかし、その際、転写されたRNAの5'末端や3'末端に余分な配列が付加されていると、リボザイムの活性が失われてしまうことがある。このようなとき、転写されたリボザイムを含むRNAからリボザイム部分だけを正確に切り出すために、リボザイム部分の5'側や3'側に、トリミングを行うためのシスに働く別のトリミングリボザイムを配置させることも可能である(K.Taira et al. (1990) Protein Eng. 3:733、A.M.Dzianottand J.J.Bujarski (1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 86:4823、 C.A.Grosshansand R.T.Cech (1991) Nucleic Acids Res. 19:3875、 K.Taira et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19:5125)。また、このような構成単位をタンデムに並べ、標的遺伝子内の複数の部位を切断できるようにして、より効果を高めることもできる(N.Yuyama et al. Biochem.Biophys.Res.Commun.186:1271,1992)。このようなリボザイムを用いて本発明で標的となる遺伝子の転写産物を特異的に切断し、該遺伝子の発現を抑制することができる。
以下に、本発明の抗体の取得のより具体的な例として、ヒト化抗体の製造方法について記すが、他の抗体を当該方法と同様にして取得することもできる。
(1)ヒト化抗体発現用ベクターの構築
ヒト化抗体発現用ベクターとは、KabatのEUインデックス番号で上記(A)〜(D)において置換部位としたアミノ酸残基が目的とするアミノ酸残基に置換されたヒト抗体の重鎖(H鎖)C領域及びヒト抗体の軽鎖(L鎖)C領域をコードする遺伝子が組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにKabatのEUインデックス番号で上記(A)〜(D)において置換部位としたアミノ酸残基が目的とするアミノ酸残基に置換されたヒト抗体のH鎖C領域及びヒト抗体のL鎖C領域をコードする遺伝子をそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
ヒト抗体のC領域としては、任意のヒト抗体のH鎖及びL鎖C領域であることができ、例えば、ヒト抗体のH鎖のIgG1サブクラスのC領域(以下、hCγ1と表記する)及びヒト抗体のL鎖のκクラスのC領域(以下、hCκと表記する)等があげられる。
ヒト抗体のH鎖及びL鎖C領域をコードする遺伝子としてはエキソンとイントロンから成る染色体DNAを用いることができ、また、cDNAを用いることもできる。
動物細胞用発現ベクターとしては、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]、pAGE103[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),101,1307(1987)]、pHSG274[ジーン(Gene),27,223(1984)]、pKCR[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.),78,1527(1981)]、pSG1βd2−4[サイトテクノロジー(Cytotechnology),4,173(1990)]等があげられる。動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),101,1307(1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスのLTR[バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.),149,960(1987)]、免疫グロブリンH鎖のプロモーター[セル(Cell),41,479(1985)]とエンハンサー[セル(Cell),33,717(1983)]等があげられる。
ヒト化抗体発現用ベクターは、抗体H鎖及びL鎖が別々のベクター上に存在するタイプあるいは同一のベクター上に存在するタイプ(以下、タンデム型と表記する)のどちらでも用いることができるが、ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖及びL鎖の発現量のバランスが均衡する等の点からタンデム型のヒト化抗体発現用ベクターの方が好ましい[ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods),167,271(1994)]。タンデム型のヒト化抗体発現ベクターとしては、pKANTEX93[モレキュラー・イムノロジー(Mol.Immunol.),37,1035(2000)]、pEE18[ハイブリドーマ(Hybridoma),17,559(1998)]などがあげられる。
構築したヒト化抗体発現用ベクターは、ヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR移植抗体の動物細胞での発現に使用できる。
(2)ヒト以外の動物の抗体のV領域をコードするcDNAの取得
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体のH鎖及びL鎖V領域をコードするcDNAは以下のようにして取得することができる。
目的のマウス抗体を産生するハイブリドーマ細胞よりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージ或いはプラスミド等のベクターにクローニングしてcDNAライブラリーを作製する。該ライブラリーより、既存のマウス抗体のC領域部分或いはV領域部分をプローブとして用い、H鎖V領域をコードするcDNAを有する組換えファージ或いは組換えプラスミド及びL鎖V領域をコードするcDNAを有する組換えファージ或いは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージ或いは組換えプラスミド上の目的のマウス抗体のH鎖及びL鎖V領域の全塩基配列を決定し、塩基配列よりH鎖及びL鎖V領域の全アミノ酸配列を推定する。
ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ等、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
ハイブリドーマ細胞から全RNAを調製する方法としては、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法[メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymol.),154,3(1987)]、また全RNAからmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989]等があげられる。また、ハイブリドーマ細胞からmRNAを調製するキットとしては、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社製)、Quick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製)等があげられる。 cDNAの合成及びcDNAライブラリー作製法としては、常法[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989;カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in MolecularBiology),Supplement 1−34]、或いは市販のキット、例えば、Super ScriptTM Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(GIBCO BRL社製)やZAP−cDNA Syntbesis Kit(Stratagene社製)を用いる方法などがあげられる。
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターは、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express[ストラテジーズ(Strategies),5,58(1992)]、pBluescript II SK(+)[ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),17,9494(1989)]、λzap II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[ディーエヌエー・クローニング:ア・プラクティカル・アプローチ(DNA Cloning:A Practical Approach),I,49(1985)]、Lambda BlueMid(Clontech社製)、λExCell、pT7T3 18U(Pharmacia社製)、pcD2[モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell.Biol.),3,280(1983)]及びpUC18[ジーン(Gene),33,103(1985)]等が用いられる。
ファージ或いはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌としては該cDNAライブラリーを導入、発現及び維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1−Blue MRF’[ストラテジーズ(Strategies),5,81(1992)]、C600[ジェネティックス(Genetics),39,440(1954)]、Y1088、Y1090[サイエンス(Science),222,778(1983)]、NM522[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol),166,1(1983)]、K802[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.),16,118(1966)]及びJM105[ジーン(Gene),38,275(1985)]等が用いられる。
cDNAライブラリーからのヒト以外の動物の抗体のH鎖及びL鎖V領域をコードするcDNAクローンの選択法としては、アイソトープ或いは蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法或いはプラーク・ハイブリダイゼーション法[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989]により選択することができる。また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNA或いはcDNAライブラリーを鋳型として、Polymerase Chain Reaction[以下、PCR法と表記する;モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989;カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology),Supplement 1−34]によりH鎖及びL鎖V領域をコードするcDNAを調製することもできる。
上記方法により選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(−)(Stratagene社製)等のプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、サンガー(Sanger)らのジデオキシ法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.),74,5463(1977)]等の反応を行い、塩基配列自動分析装置、例えば、A.L.F.DNAシークエンサー(Pharmacia社製)等を用いて解析することで該cDNAの塩基配列を決定することができる。
決定した塩基配列からH鎖及びL鎖V領域の全アミノ酸配列を推定し、既知の抗体のH鎖及びL鎖V領域の全アミノ酸配列[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of ImmunologicalInterest),US Dept.Health and Human Services,1991]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のH鎖及びL鎖V領域の完全なアミノ酸配列をコードしているかを確認することができる。
さらに、抗体可変領域のアミノ酸配列または該可変領域をコードするDNAの塩基配列がすでに公知である場合には、以下の方法を用いて製造することができる。
アミノ酸配列が公知である場合には、アミノ酸配列を、コドンの使用頻度[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest),US Dept.Health and Human Services,1991]を考慮してDNA配列に変換し、設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さから成る数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行うことによりDNAを得ることができる。塩基配列が公知である場合には、その情報を基に100塩基前後の長さから成る数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行うことによりDNAを得ることができる。
(3)ヒト以外の動物の抗体のV領域のアミノ酸配列の解析
分泌シグナル配列を含む抗体のH鎖及びL鎖V領域の完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のH鎖及びL鎖V領域の全アミノ酸配列[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest),US Dept.Health and Human Services,1991]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さ及びN末端アミノ酸配列を推定でき、更にはそれらが属するサブグループを知ることができる。また、H鎖及びL鎖V領域の各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のH鎖及びL鎖V領域のアミノ酸配列[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest),US Dept.Health and Human Services,1991]と比較することによって見出すことができる。
(4)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のH鎖及びL鎖C領域をコードする遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体のH鎖及びL鎖V領域をコードするcDNAをクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、ヒト以外の動物の抗体のH鎖及びL鎖V領域をコードするcDNAを、ヒト以外の動物の抗体H鎖及びL鎖V領域の3’末端側の塩基配列とヒト抗体のH鎖及びL鎖C領域の5’末端側の塩基配列とから成り、かつ適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAとそれぞれ連結し、それぞれを(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のH鎖及びL鎖C領域をコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
(5)ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト型CDR移植抗体のH鎖及びL鎖V領域をコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。まず、目的のヒト以外の動物の抗体のH鎖及びL鎖V領域のCDRを移植するヒト抗体のH鎖及びL鎖V領域のフレームワーク(以下、FRと表記する)のアミノ酸配列を選択する。ヒト抗体のH鎖及びL鎖V領域のFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のものであれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bank等のデータベースに登録されているヒト抗体のH鎖及びL鎖V領域のFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のH鎖及びL鎖のV領域のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest),US Dept.Health and Human Services,1991]等があげられるが、その中でも、十分な活性を有するヒト型CDR移植抗体を作製するためには、目的のヒト以外の動物の抗体のH鎖及びL鎖V領域のFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)を有するアミノ酸配列を選択することが望ましい。
次に、選択したヒト抗体のH鎖及びL鎖V領域のFRのアミノ酸配列に目的のヒト以外の動物の抗体のH鎖及びL鎖V領域のCDRのアミノ酸配列を移植し、ヒト型CDR移植抗体のH鎖及びL鎖V領域のアミノ酸配列を設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest),US Dept.Health and Human Services,1991]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト型CDR移植抗体のH鎖及びL鎖V領域のアミノ酸配列をコードするDNA配列を設計する。設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さから成る数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行う。この場合、PCRでの反応効率及び合成可能なDNAの長さから、H鎖、L鎖とも4〜6本の合成DNAを設計することが好ましい。
また、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で構築したヒト化抗体発現用ベクターに容易にクローニングすることができる。PCR後、増幅産物をpBluescript SK(−)(Stratagene社製)等のプラスミドにクローニングし、(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト型CDR移植抗体のH鎖及びL鎖V領域のアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
(6)ヒト型CDR移植抗体発現ベクターの構築
(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のH鎖及びL鎖C領域をコードする遺伝子の上流に、(5)で構築したヒト型CDR移植抗体のH鎖及びL鎖V領域をコードするcDNAをクローニングし、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、(5)でヒト型CDR移植抗体のH鎖及びL鎖V領域を構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のH鎖及びL鎖C領域をコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングし、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。
(7)ヒト化抗体の安定的生産
(4)及び(6)に記載のヒト化抗体発現ベクターを適当な動物細胞に導入することによりヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR移植抗体(以下、併せてヒト化抗体と称す)を安定に生産する形質転換株を得ることができる。動物細胞へのヒト化抗体発現ベクターの導入法としては、エレクトロポレーション法[特開平2−257891;サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]等があげられる。ヒト化抗体発現ベクターを導入する動物細胞としては、ヒト化抗体を生産させることができる動物細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。
具体的には、マウスミエローマ細胞であるNSO細胞、SP2/0細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO/dhfr−細胞、CHO/DG44細胞、ラットミエローマYB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来であるBHK細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞などがあげられるが、好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣細胞であるCHO/DG44細胞、ラットミエローマYB2/0細胞等があげられる。
ヒト化抗体発現ベクターの導入後、ヒト化抗体を安定に生産する形質転換株は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、G418 sulfate(以下、G418と表記する;SIGMA社製)等の薬剤を含む動物細胞培養用培地により選択できる。動物細胞培養用培地としては、RPMI1640培地(日水製薬社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL302培地(JRH社製)、IMDM培地(GIBCO BRL社製)、Hybridoma−SFM培地(GIBCO BRL社製)、またはこれら培地に牛胎児血清(以下、FCSと表記する)等の各種添加物を添加した培地等を用いることができる。得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中にヒト化抗体を生産蓄積させることができる。培養上清中のヒト化抗体の生産量及び抗原結合活性は酵素免疫抗体法[以下、ELISA法と表記する;アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1998、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice),Academic Press Limited,1996]等により測定できる。また、形質転換株は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、DHFR遺伝子増幅系等を利用してヒト化抗体の生産量を上昇させることができる。
ヒト化抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインAカラムを用いて精製することができる[アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 8,1988、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice),Academic Press Limited,1996]。また、その他に通常、タンパク質の精製で用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー及び限外濾過等を組み合わせて行い、精製することができる。精製したヒト化抗体のH鎖、L鎖或いは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動[以下、SDS−PAGEと表記する;ネイチャー(Nature),227,680(1970)]やウエスタンブロッティング法[アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 12,1988、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice),Academic Press Limited,1996]等で測定することができる。
以上、動物細胞を宿主とした抗体の製造方法を示したが、上述したように、酵母、昆虫細胞、植物細胞または動物個体あるいは植物個体においても動物細胞と同様の方法により抗体を製造することができる。
すでに宿主細胞が、抗体を発現する能力を有する場合には、公知の方法を用いて本発明における、抗体を発現させる細胞を調製した後に、該細胞を培養し、該培養物から目的とする抗体を精製することにより、本発明の抗体を製造することができる。
精製した抗体の蛋白量、抗原との結合活性あるいはエフェクター機能を測定する方法としては、Monoclonal Antibodies:principles and practice,Third Edition,Acad.Press,1993、あるいはAntibodies,A Laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988等に記載の公知の方法を用いることができる。具体的な例としては、抗体がヒト化抗体の場合、抗原との結合活性、抗原陽性培養細胞株に対する結合活性はELISA法及び蛍光抗体法[キャンサー・イムノロジー・イムノセラピー(Cancer Immunol.Immunother.),36,373(1993)]等により測定できる。抗原陽性培養細胞株に対する細胞障害活性は、CDC活性、ADCC活性等を測定することにより、評価することができる[キャンサー・イムノロジー・イムノセラピー(Cancer Immunol.Immunother.),36,373(1993)]。また、抗体のヒトでの安全性、治療効果は、カニクイザル等のヒトに比較的近い動物種の適当なモデルを用いて評価することができる。
本発明の抗体は、上記方法により測定されるADCC活性について、アミノ酸置換、またはアミノ酸置換及びフコース低減前のポリペプチドと比べて向上している。このため、抗体療法に用いる場合には薬剤の使用量を低くすることができるため、経済的であり、副作用を少なくすることができる。
本発明の抗体は、上記のようにエフェクター機能が極めて向上されるため、治療、診断、評価等の広範な用途に利用可能である。
本発明の治療用組成物は、上記本発明の抗体を含んでいる。このため、ADCC活性が改善されており、少量の投与量で十分な薬理効果を得ることができ、優れた抗体治療用途に極めて有利である。治療用組成物には、上記抗体以外に、例えば核酸類、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、その他の有機化合物、無機化合物、賦形剤などの製剤用添加物及びこれらの組み合わせなどが添加されていてもよい。本発明の治療用組成物は、必要に応じて成形手段を用いて製剤化し、経口又は非経口に投与することができる。本発明の治療用組成物は、特に注射剤、点滴剤、経皮吸収剤による非経口投与等の方法で好適に利用できる。
より具体的には、本発明は、本発明の抗体および医薬的に許容し得る担体を含む、治療用組成物を提供する。また本発明は、本発明の抗体を投与することを含む、哺乳動物の治療方法を提供する。哺乳動物としては、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、サルなど)が挙げられる。
本発明の治療用組成物は、抗体に加えて医薬的に許容し得る担体を導入し、公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
投与は好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身または局部的に投与することができる。
また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。本発明の抗体を含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり、約1μgから100mg(例えば約1μgから15mg、約10μgから20mg、約0.1mgから20mg)の範囲で選ぶことが可能である。本発明の医薬組成物は、1箇所への投与又は複数の別々の部位への投与が可能である。また本発明の医薬組成物は連続投与をすることも可能である。数日間以上に渡る繰り返し投与については、状態応じて、望まれる疾患状態の抑制が起こるまで続ける。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
本発明の治療用組成物は、抗体療法を適用可能な広範な疾病の治療に用いることができる。抗体療法が適用される疾病・症状としては、例えば転移性乳ガン(抗HER2抗体)、CD20陽性B細胞非ホジキン性リンパ腫(抗CD20抗体)、関節リウマチやクローン病(抗TNFα抗体)、腎臓移植後の急性拒絶正反応(抗CD3抗体、抗CD25抗体)等が挙げられる。括弧内は治療に用いる抗体を示している。これらの疾病等に対し、従来の抗体に代えて本発明の治療用組成物を利用することにより、治療効果を著しく向上でき、患者の経済的、身体的負担を軽減することができる。さらに、抗体療法に今後適用されうる抗体医薬としても好適に利用できる。
また、本発明の抗体は、上記治療用組成物を用いた治療方法に関する。あるいは、本発明は、上記治療剤の製造における使用に関する。
また、本発明は、エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換える工程を含む、抗体のエフェクター機能を向上させる方法を提供する。
また、本発明は、エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換える工程を含む、抗体のエフェクター機能を向上させる方法を提供する。
また本発明は、下記(1)から(3)の工程を含む抗体のエフェクター機能を向上させる方法を提供する。
(1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基をシステイン残基に置き換える工程、
(2)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性が低減、または欠失した宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
(3)発現産物を回収する工程。
また本発明は、エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸をアスパラギン酸、セリン、又はアラニン残基に置き換える工程を含む、抗体のエフェクター機能を向上させる方法を提供する。
上記方法においてアミノ酸を置換する工程、及びフコースを低減する工程は、上述の方法によって行うことが出来る。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に記載された態様に限定されるものではない。
〔実施例1〕
298Ala/333Ala/334Ala型、298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型のAnti-CD20キメラ抗体を作製し、これらのAnti-CD20キメラ抗体のADCC活性を評価した。その結果、298Ala/333Ala/334Ala型のAnti-CD20キメラ抗体のADCC活性と比較して、298Ala/333Ala/334Ala型に295Cysを加えた、298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型のAnti-CD20キメラ抗体は高いADCC活性を示した。
以下に、Anti-CD20キメラ抗体の298Ala/333Ala/334Ala型、298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型の作製方法ならびにそのADCC活性測定とCD20分子に対する反応性を記載する。
1)Anti-CD20キメラ抗体の作製
キメラ抗体は、以下のA)〜F)の工程を経て、精製キメラ抗体として得られる。
A)キメラ抗体を作製する上で必要となる遺伝子のクローニング、
B)クローニングされた遺伝子の変異導入、
C)クローニングされた遺伝子及びその変異導入した遺伝子を組み合わせたキメラ抗体発現ベクターの構築、
D)キメラ抗体発現ベクターのCHO細胞への遺伝子導入とキメラ抗体を高発現するCHO細胞のスクリーニング、
E)キメラ抗体高発現CHO細胞の培養、
F)キメラ抗体高発現細胞の培養上清からのカラム精製。
以下にA)〜F)の工程を順に記載する。
A) キメラ抗体を作製する上で必要となる遺伝子のクローニング
1種のAnti-CD20キメラ抗体を作製するためには、4種の遺伝子が必要になる。この4種の遺伝子は、Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子、Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子、Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子、Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子である。この遺伝子のクローニング実施例について、以下に記述する。
(Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子)
本出願人が保有するAnti-CD20マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞からQuickPrep micro mRNA purification kit (Amersham Biosciences, code 27-9255-01)を用いてmRNAを得た。そのmRNAをFirst-Strand cDNA Synthesis kit (Amersham Biosciences, code 27-9261-01)を用いてcDNAとした。このcDNAを鋳型としてPCR法で遺伝子を増幅させるのであるが、以下に示す11パターンのPrimerの組み合わせによりPCR反応を行った。
PCR反応条件は、
マウスハイブリドーマからのcDNA 4 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
MKV1〜MKV11 primer(20μM)の11種類中の1つ 2.5 μL
MKC primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 28.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (30サイクル)
72℃ 4min
4℃ 無制限時間
PrimerのDNA配列は以下を参照。
MKV1 primer:ATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGGTGCTG(配列番号:35)
MKV2 primer:ATGGAGWCAGACACACTCCTGYTATGGGTG(配列番号:36)
MKV3 primer:ATGAGTGTGCTCACTCAGGTCCTGGSGTTG(配列番号:37)
MKV4 primer:ATGAGGRCCCCTGCTCAGWTTYTTGGMWTCTTG(配列番号:38)
MKV5 primer:ATGGATTTWCAGGTGCAGATTWTCAGCTTC(配列番号:39)
MKV6 primer:ATGAGGTKCYYTGYTSAGYTYCTGRGG(配列番号:40)
MKV7 primer:ATGGGCWTCAAGATGGAGTCACAKWYYCWGG(配列番号:41)
MKV8 primer:ATGTGGGGAYCTKTTTYCMMTTTTTCAATTG(配列番号:42)
MKV9 primer:ATGGTRTCCWCASCTCAGTTCCTTG(配列番号:43)
MKV10 primer:ATGTATATATGTTTGTTGTCTATTTCT(配列番号:44)
MKV11 primer:ATGGAAGCCCCAGCTCAGCTTCTCTTCC(配列番号:45)
MKC primer:ACTGGATGGTGGGAAGATGG(配列番号:46)
(M=A or C, R=A orG, W=A orT, S=C or G, Y=C or T, K=G orT)
PCR反応では、MKV5とMKC primerの組み合わせにより、Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子が増幅され、この遺伝子はpCR2.1ベクター(Invitogen)に一時的に挿入され保管された。また、この遺伝子は挿入されたベクターをpCR2.1-MLVと名前を付けた。遺伝子クローニングされたAnti-CD20マウスL鎖可変領域のDNA配列を図1に添付する。
また、Anti-CD20マウスL鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の塩基配列をそれぞれ、配列番号:7、9、11に示す。また、Anti-CD20マウスL鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号:8、10、12に示す。
(Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子)
Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子のクローニングと同様に、Anti-CD20マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞から調整されたcDNAを鋳型として、以下に示す12パターンのPCR増幅を行った。
マウスハイブリドーマからのcDNA 4 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
MHV1〜MHV12 primer(20μM)の12種類中の1つ 2.5 μL
MHCG2b primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 28.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (30サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
PrimerのDNA配列は以下を参照。
MHV1 primer:ATGAAATGCAGCTGGGGCATSTTCTTC(配列番号:47)
MHV2 primer:ATGGGATGGAGCTRTATCATSYTCTT(配列番号:48)
MHV3 primer:ATGAAGWTGTGGTTAAACTGGGTTTTT(配列番号:49)
MHV4 primer:ATGRACTTTGGGYTCAGCTTGRTTT(配列番号:50)
MHV5 primer:ATGGACTCCAGGCTCAATTTAGTTTTCCTT(配列番号:51)
MHV6 primer:ATGGCTGTCYTRGSGCTRCTCTTCTGC(配列番号:52)
MHV7 primer:ATGGRATGGAGCKGGRTCTTTMTCTT(配列番号:53)
MHV8 primer:ATGAGAGTGCTGATTCTTTTGTG(配列番号:54)
MHV9 primer:ATGGMTTGGGTGTGGAMCTTGCTATTCCTG(配列番号:55)
MHV10 primer:ATGGGCAGACTTACATTCTCATTCCTG(配列番号:56)
MHV11 primer:ATGGATTTTGGGCTGATTTTTTTTATTG(配列番号:57)
MHV12 primer:ATGATGGTGTTAAGTCTTCTGTACCTG(配列番号:58)
MHCG2b primer:CAGTGGATAGACTGATGGGGG(配列番号:59)
(M=A or C, R=A orG, W=A orT, S=C or G, Y=C or T, K=G orT)
PCR反応では、MHV7とMHCG2b primerの組み合わせにより、Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子が増幅され、この遺伝子はpCR2.1ベクター(Invitogen)に一時的に挿入され保管された。また、この遺伝子が挿入されたベクターをpCR2.1-MHVと名前を付けた。遺伝子クローニングされたAnti-CD20マウスH鎖可変領域のDNA配列を図2に添付する。
また、Anti-CD20マウスH鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3の塩基配列をそれぞれ、配列番号:1、3、5に示す。また、Anti-CD20マウスH鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号:2、4、6に示す。
(Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子)
ヒトの血液からLymphoprep(Axis Shield)を用いてリンパ球を取り出した。このリンパ球からQuickPrep micro mRNA purification kit (Amersham Biosciences, code 27-9255-01)を用いてmRNAを得た。そのmRNAをFirst-Strand cDNA Synthesis kit (Amersham Biosciences, code 27-9261-01)を用いてcDNAとした。このヒトリンパ球からのcDNAを鋳型にして、以下のPCR反応を行いHuman IgG1 L鎖定常領域遺伝子を得た。この遺伝子もpCR2.1ベクター(Invitogen)に一時的に挿入され保管された。また、この遺伝子が挿入されたベクターをpCR2.1-LCと名前を付けた。
PCRの反応条件は以下の通りである。
ヒトリンパ球cDNA 4 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
hIgG1 LCF primer(20μM) 2.5 μL
hIgG1 LCR primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 28.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (30サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
PrimerのDNA配列は以下を参照。
hIgG1 LCF primer:ACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTC(配列番号60)
hIgG1 LCR primer:TTAACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCTT(配列番号:61)
(Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子)
Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子のクローニングと同様にして、ヒトリンパ球からのcDNAを鋳型にして、以下のPCR反応を行いHuman IgG1 H鎖定常領域遺伝子を得た。この遺伝子もpCR2.1ベクター(Invitrogen)に一時的に挿入され保管された。このベクターは、pCR2.1- HC (野生型)と名前を付けた。
PCRの反応条件は以下の通りである。
ヒトリンパ球cDNA 4 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
hIgG1 HCF primer(20μM) 2.5 μL
hIgG1 HCR primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 28.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (30サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
PrimerのDNA配列は以下を参照。
hIgG1 HCF primer:GCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTC(配列番号:62)
hIgG1 HCR primer:TTATTTACCCGGAGACAGGGAGAGGCT(配列番号:63)
B)クローニングされた遺伝子の変異導入
298Ala/333Ala/334Alaキメラ抗体、298Ala/333Ala/334Ala/295Cysキメラ抗体を得るためには、クローニングされたHuman IgG1 H鎖定常領域の特定箇所に変異を導入しなければならない。Elvin A. KabatらがSequence of proteins of Immunological Interest (NIH Publication No.91-3242, 1991) において示したHuman IgG1 H鎖定常領域の番号に従い、298番のSerをAlaに、333番 のGluをAlaに、334番 のLysをAlaに、295番 のGluをCysに変更するために、クローニングされたHunan IgG1 H鎖定常領域が挿入されたpCR2.1ベクター:pCR2.1-HC(野生型)を鋳型として、PCR法により順次変異導入した。この変異導入法の詳細を以下に記述する。
298(Ser→Ala)変異
pCR2.1-HC (野生型) (25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
298 Ala1 primer (20 μM) 1.25 μL
298 Ala2 primer (20 μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
298 Ala1プライマー:GAGCAGTACAACGCTACGTACCGTGTG(配列番号:64)
298 Ala2プライマー:CACACGGTACGTAGCGTTGTACTGCTC(配列番号:65)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、298(Ser→Ala)変異導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクターpCR2.1-HC(298Ala)と名前を付けた。
333(Glu→Ala)変異
pCR2.1-HC (298Ala) (25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
333 Ala1 primer (20 μM) 1.25 μL
333 Ala2 primer (20 μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
333 Ala1プライマー:CCAGCCCCCATCGCTAAAACCATCTCC(配列番号:66)
333 Ala2プライマー:GGAGATGGTTTTAGCGATGGGGGCTGG(配列番号:67)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、333(Glu→Ala)変異導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクターpCR2.1-HC(298Ala/333Ala)と名前を付けた。

334(Lys→Ala)変異
pCR2.1-HC (298Ala/333Ala) (25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
334 Ala1 primer (20 μM) 1.25 μL
334 Ala2 primer (20 μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
334 Ala1プライマー:GCCCCCATCGCTGCTACCATCTCCAAA(配列番号:68)
334 Ala2プライマー:TTTGGAGATGGTAGCAGCGATGGGGGC(配列番号:69)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、334(Lys→Ala)変異導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクターpCR2.1-HC(298Ala/333Ala/334Ala)と名前を付けた。
295(Glu→Cys)変異
pCR2.1-HC (298Ala/333Ala/334Ala) (25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
295 Cys1 primer (20 μM) 1.25 μL
295 Cys2 primer (20 μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
295 Cys1プライマー:ACAAAGCCGCGTGAGGAGTGCTACAACGCTACGTACCGT(配列番号:70)
295 Cys2プライマー:ACGGTACGTAGCGTTGTAGCACTCCTCACGCGGCTTTGT(配列番号:71)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、295(Glu→Cys)変異導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクターpCR2.1-HC(298Ala/333Ala/334Ala/295Cys)と名前を付けた。
C)クローニングされた遺伝子及びその変異導入した遺伝子を組み合わせたキメラ抗体発現ベクターの構築
1種類のAnti-CD20キメラ抗体を発現させるために、Anti-CD20キメラ抗体のL鎖とH鎖の2種類の発現ベクターをCHO細胞にTransfectionさせることで達成される。ここで、Anti-CD20キメラ抗体のL鎖の発現ベクターとは、Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子+ Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子を結合させたものを発現ベクターに組み込んだものであり、Anti-CD20キメラ抗体のH鎖の発現ベクターとは、Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子+ Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子を結合させたものを発現ベクターに組み込んだものである。野生型、298Ala/333Ala/334Ala型あるいは298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型のAnti-CD20キメラ抗体を作製するにあたり、Anti-CD20キメラ抗体のL鎖の発現ベクターは、これら3種のキメラ抗体を発現させるために共通に使用するものであるが、Anti-CD20キメラ抗体のH鎖の発現ベクターは、野生型、298Ala/333Ala/334Ala型あるいは298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体の各々に対して専用のH鎖発現ベクターを必要とする。ここでは、はじめに各キメラ抗体の発現に共通に使用できるAnti-CD20キメラ抗体L鎖の発現ベクターの構築について詳細を記述し、その後に298Ala/333Ala/334Ala型あるいは298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体の発現に必要な専用のAnti-CD20キメラ抗体H鎖発現ベクターの構築について記述する。
Anti-CD20キメラ抗体L鎖の発現ベクターの構築
発現ベクターとしては、BCMG-neoベクターを使用し、このベクターのXhoIとNotIサイトにAnti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子+ Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子を挿入させる。Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子は、先に作製されたpCR2.1-MLVを鋳型に以下のPCR反応を行うことで断片を得た。また、Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子は、先に作製されたpCR2.1-LCを鋳型として以下のPCR反応により断片を得た。
(Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子の増幅反応)
pCR2.1-MLV (20 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
L1 primer(20μM) 2.5 μL
L2 primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 30.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (20サイクル)
72℃ 4min
4℃ 無制限時間
L1 primer:ACCGCTCGAGATGGATTTTCAGGTGCAGATTATCAGC(配列番号:72)
L2 primer:TTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAGCACC (5’-リン酸化されている)(配列番号:73)
(Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子の増幅反応)
pCR2.1-LC (20 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
L3 primer(20μM) 2.5 μL
L4 primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 30.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (20サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
L3 primer:ACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATC (5’-リン酸化されている)(配列番号:74)
L4 primer:ATAGTTTAGCGGCCGCTTAACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCTTTGT(配列番号:75)
上記のPCR反応で得られたAnti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子断片は、制限酵素XhoI(Takara)で切断されてから精製した。また、PCR反応で得られたHuman IgG1 L鎖定常領域遺伝子断片は、制限酵素NotI(Takara)で切断されてから精製した。BCMG-neoベクターをXhoIとNotIで切断して精製した断片に、先の精製Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子断片と精製Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子断片を混同してLigationした。このLigationで得られたベクターは、シークエンスにより目的の断片が挿入されていることを確認された。このAnti-CD20キメラ抗体L鎖の発現ベクターは、pキメラLCと名前が付けられた。
Anti-CD20キメラ抗体H鎖発現ベクターの構築
発現ベクターとしては、BCMG-neoベクターを使用し、このベクターのXhoIとNotIサイトにAnti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子+ Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子を挿入させる。Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子は、先に作製されたpCR2.1-MHVを鋳型に以下のPCR反応を行うことで断片を得た。野生型、298Ala/333Ala/334Ala型あるいは298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体の各々に対して専用のH鎖発現ベクターは、Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子をPCR増幅させる際の鋳型となるプラスミドは異なるが、操作自体は全く同様に行われて各種Human IgG1 H鎖遺伝子断片を得た。以下にPCR反応を含む詳細を記述する。
(Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子の増幅反応)
pCR2.1-MHV (20 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
H1 primer(20μM) 2.5 μL
H2 primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 30.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (20サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
H1 primer:ACCGCTCGAGATGGGATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTC(配列番号:76)
H2 primer:TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCC (5’-リン酸化されている)(配列番号:77)
(Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子の増幅反応)
#各種鋳型プラスミド (20 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
H3 primer(20μM) 2.5 μL
H4 primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 30.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (20サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
H3 primer:GCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTC(5’-リン酸化されている)(配列番号:78)
H4 primer:ATAGTTTAGCGGCCGCTTATTTACCCGGAGACAGGGAGAGGCTCTT(配列番号:79)
#:野生型のAnti-CD20キメラ抗体用の遺伝子断片を調整するためには、pCR2.1-HC(野生型)を鋳型として用いた。298Ala/333Ala/334Ala型のAnti-CD20キメラ抗体用の遺伝子断片を調整するためにはpCR2.1-HC(298Ala/333Ala/334Ala)を鋳型として用いた。298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型のAnti-CD20キメラ抗体用の遺伝子断片を調整するためにはpCR2.1-HC(298Ala/333Ala/334Ala/295Cys)を鋳型として用いた。
上記のPCR反応で得られたAnti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子断片は、制限酵素XhoI(Takara)で切断されてから精製した。また、鋳型の異なる各種PCR反応で得られたHuman IgG1 H鎖定常領域遺伝子断片は、制限酵素NotI(Takara)で切断されてから精製した。BCMG-neoベクターをXhoIとNotIで切断して精製した断片に、先の精製Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子断片と精製Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子断片を混合してLigationした。このLigationで得られたベクターは、シークエンスにより目的の断片が挿入されていることを確認された。このAnti-CD20キメラ抗体H鎖の発現ベクターは、pキメラHC(野生型)、pキメラHC(298Ala/333Ala/334Ala型)あるいはpキメラHC(298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型)とそれぞれ名前が付けられた。
D)キメラ抗体発現ベクターのCHO細胞への遺伝子導入とキメラ抗体を高発現するCHO細胞のスクリーニング
構築された各種発現ベクターは、以下の組み合わせでTransIT-CHO Transfection kit(Mirus, MIR2170)を使用してCHO細胞へ遺伝子導入された。
野生型キメラ抗体:pキメラLC+ pキメラHC(野生型)
298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体:pキメラLC+pキメラHC (298Ala/333Ala/334Ala型)
298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体:pキメラLC+pキメラHC (298Ala/333Ala/334Ala/295Cys)
遺伝子導入されたCHO細胞は、10%Fetal Bovine Serum(EQITEC-BIO)と1 mg/mLのGeneticin(GIBCO, 10131-035)を補足したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(Sigma, D5796)で37℃5%二酸化炭素の条件下で培養することで増殖した。この増殖してコロニーを形成したCHO細胞の中からキメラ抗体を高発現しているCHO細胞を選択するのであるが、はじめに各コロニーの一部を96 wellプレートに移植して、さらに10日間培養した。その培養上清の一部を取り出し、以下に示すELISA測定をすることで高発現CHO細胞クローンを決定した。
(ELISA測定)
1)Anti-Human IgG (γ-chain) (MBL, 103AG)をコートした96Wellプレートに、TansfectionされたCHO細胞の培養上清を100 μL/wellで添加し、室温で1時間放置した。
2)培養上清液を96 wellプレートから捨てて、0.05%のTween20を含むPBS (PBS-0.05%Tween20)でwellを十分洗浄した。
3)Anti-Human IgG(γ-chain)Peroxidase conjugated (MBL, 208)をPBS-0.05%Tween20で2000倍希釈した溶液を100 μL/well添加して、室温で1時間放置した。
4)溶液を96 wellプレートから捨てて、PBS-0.05%Tween20でwellを十分洗浄した。
5)TMB Peroxidase Substrate (Moss, TMBE-1000s)を100 μL/well添加して、発色反応させた。
6)10〜15分の発色反応後、1N硫酸を100 μL/well添加して、発色反応を停止させた。
7)450 nm吸光度を測定した。
このELISA測定で、高い発色値を示すコロニーが、キメラ抗体を高発現するクローンである。
E)キメラ抗体高発現CHO細胞の培養
ELISA測定により選択されたキメラ抗体高発現CHO細胞は、10%Fetal Bovine Serumと0.1 mg/mLのGeneticinを補足したDulbecco’s Modified Eagle’s Mediumで37℃5%二酸化炭素の条件下で培養することで増殖させた。十分に増殖したキメラ抗体の高発現CHO細胞は、0.1 mg/mLのGeneticinを補足した無血清培地であるCHO-S-SFMII(GIBCO,12052-098)での培養に置き換えられ、継続して1000mL程度培養された。
F)キメラ抗体高発現細胞の培養上清からのカラム精製
無血清培地であるCHO-S-SFMIIで培養されたキメラ抗体高発現CHO細胞の培養上清は、回収された。野生型キメラ抗体の精製は、そのFc領域構造に変化を加えていないため、抗体精製に通常用いられるProtein Aカラム精製により実施された。しかしながら、298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体、298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体は、そのFc領域構造に変異を加えているために、Fc領域の構造変化を伴い、通常のProtein Aカラムへは、ほとんど吸着されない。この理由から、これら変異型キメラ抗体では、Protein Lカラムを使用して精製を実施した。今回作製されたAnti-CD20キメラ抗体は、その可変領域がκ鎖である。このProtein Lは、この可変領域κ鎖を認識して結合できるタンパク質である。以下に、野生型キメラ抗体のProtein Aカラム精製と変異型キメラ抗体のProtein Lカラム精製の詳細を記述する。
野生型キメラ抗体のProtein Aカラム精製
1)1000 mL のCHO-S-SFMIIで野生型キメラ抗体高発現CHO細胞を培養して得られた培養上清は、Amicon Ultrafiltration Membranes (Millipore, Code YM10)を取り付けたAmicon Stirred Uitrafiltration Cell (Millipore, Model 8400)を用いて、1000 mLから100 mLまで濃縮された。
2)培養上清濃縮液に、Protein A-SepharoseであるrProteinA Sepharose Fast Flow (Amersham Bioscience, 17-1279-03) 8mLを添加し、2日間4℃で攪拌させてProteinAに野生型キメラ抗体を吸着させた。
3)野生型キメラ抗体を吸着したProteinA-Sepharoseは、直径1.5 cm、長さ8 cmのカラムに充填させた。
4)ProteinA-Sepharoseが充填されたカラムは、PBS 100 mLで洗浄された後、Elution Buffer (0.17M Glycine-HCl, pH2.3) でカラムから野生型キメラ抗体を溶出した。
5)溶出された野生型キメラ抗体溶液は、すぐに1M Tris-HCl pH8.5を適量加えてpHを中性にした。
6)野生型キメラ抗体溶出液は、透析チューブであるCell Sep T2 (Membrane filtration products Inc, 8030-23)に入れて4℃でPBS 5 Lに透析された。透析後に回収した野生型キメラ抗体を、精製品とした。
変異型キメラ抗体のProtein Lカラム精製
1)1000 mL のCHO-S-SFMIIでCys型キメラ抗体高発現CHO細胞を培養して得られた培養上清は、Amicon Ultrafiltration Membranes (Millipore, Code YM10)を取り付けたAmicon Stirred Uitrafiltration Cell (Millipore, Model 8400)を用いて、1000mLから100mLまで濃縮された。
2)培養上清濃縮液100 mLは、ProteinL Binding Buffer (0.1M Phosphate, 0.15 M NaCl,pH 7.2) 100 mLを加えて混合された。
3)直径1.5 cm、長さ8 cmのカラムにProtein L-SepharoseであるImmunoPure Immobilized Protein L Plus (PIERCE, 20250) 2 mLを充填させた。
4) 2)で調整した液をカラム上端から加えて、カラム下端からゆっくり流し出した。この操作でProtein L-Sepharoseへ変異型キメラ抗体を吸着させた。その後、Protein L Binding Buffer 50 mLでカラムを洗浄し、カラムに吸着した余分な蛋白を除去した。
5)Elution Buffer (0.17M Glycine-HCl, pH2.3) でカラムから変異型キメラ抗体を溶出した。溶出された変異型キメラ抗体溶液は、すぐに1M Tris-HCl pH8.5を適量加えてpHを中性にした。
6)変異型キメラ抗体溶出液は、透析チューブであるCell Sep T2 (Membrane filtration products Inc, 8030-23)に入れて4℃でPBS 5 Lに透析された。透析後に回収した変異型キメラ抗体を、精製品とした。
以上のように、精製された野生型キメラ抗体あるいは変異型キメラ抗体は、12.5%SDS-PAGEで電気泳動されたのち、銀染色された。この電気泳動像を図3に添付する。
<各種キメラ抗体のADCC活性評価>
各種キメラ抗体のAntibody-dependent Cellular Cytotoxicity (ADCC)活性評価は、lactate dehydrogenase release assayにより行った。このAssayでは、Target細胞としてCD20分子を細胞膜表面に持つDaudi細胞を用い、Effector細胞として、Human peripheral blood mononuclear cells (PBMC)を用いた。このHuman PBMCは、Lymphoprep (Axis Shield)を使って、ヒトの血液から調整された。
Daudi細胞(1×104個/50 μL)は、96-well U-bottomedプレートの各wellに入れ、Effector細胞であるHuman PBMCが、E/T ratioが20/1となるように2×105個加えられた。この細胞液にさらに、各種Anti-CD20キメラ抗体を連続的な希釈系列となるように添加して、37℃で20時間保温された。保温後に、96-well U-bottomedプレートは、遠心分離され、その上清中のlactate dehydrogenase activityをCytoTox 96 Non-Radioactive Cytotoxicity Assay Kit (Promega, G1780)を用いて測定された。抗体依存的かつ特異的な細胞障害(Cytotoxicity)%は、以下の式と用いて算出された。
% Cytotoxicity = 100×(E−SE−ST)/(M−ST)
ここで、EとはExperimental releaseを表し、抗体とEffctor細胞が、Target細胞と共に保温された時のTarget細胞からrelaeseされたlactate dehydrogenase活性である。SEとは、Effector細胞からの自然発生的に放出されたlactate dehydrogenase活性である。STとは、Target細胞からも自然発生的に放出されたlactate dehydrogenase活性である。Mとは、Target細胞の最大に放出されるlactate dehydrogenase活性を表し、これはLysis Solution (9% Triton X-100)の添加により、Target細胞から放出されたlactate dehydrogenase活性である。
以上のような評価方法により、野生型、298Ala/333Ala/334Ala、298Ala/333Ala/334Ala/295CysのAnti-CD20キメラ抗体のADCC活性結果を図4に添付する。この図4から、野生型キメラ抗体のADCC活性と比較して、抗体の高濃度条件下(0.001〜10 μg/mL)で、298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体と298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体は非常に高いADCC活性を示した。298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体に295Cysを加えた298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体は、低濃度(0.001 μg/mL以下の濃度)で298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体よりも高いADCC活性を示した。
さらに、298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体と298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体の細胞障害の割合を、lactate dehydrogenase release assayによって比較した。その結果、添加した抗体の濃度が0.00001、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、10μg/mLの場合における細胞障害の割合は、298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体の場合それぞれ5.8%、10.3%、20.7%、41.4%、52.2%、52.6%、55.3%、298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体の場合はそれぞれ10%、21.8%、26.6%、36.6%、51.1%、51.4%、58.6%であった。よって、ADCC活性の比(野生型抗体と変異型抗体が同一濃度である2点間における、298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体に対する298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体の細胞障害の割合の比)は、それぞれ、1.7倍、2.1倍、1.3倍、0.9倍、1倍、1倍、1.1倍となることがわかった(表1)。
また表1より、298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体と298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体との間で細胞障害の割合が同程度である2点を選択し、ADCC活性の比較を試みた。例えば、298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体は0.0001μg/mLで約20%、298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体は0.001μg/mLで約20%の細胞障害を示している。この2点を用いて比較した場合、同じADCC活性を得るために必要な抗体濃度が10分の1に減少した。このことから、ADCC活性が約10倍上昇した(298Ala/333Ala/334Ala型キメラ抗体と298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型キメラ抗体が同一の細胞障害の割合を示す2点間における、野生型抗体に対する変異型抗体の濃度の比が10倍になった)と判断することが出来る。
このようなADCC活性の上昇(約10倍程度)は、他の濃度域でも確認された。当業者であれば、上記の方法に倣い、図4および表1よりADCC活性の上昇を算出することが可能である。
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法で、239Asp/330Leu/332Glu型、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型のAnti-CD20キメラ抗体を作製し、これら各種変異型のAnti-CD20キメラ抗体のADCC活性を評価した。その結果、239Asp/330Leu/332Glu型のAnti-CD20キメラ抗体のADCC活性と比較して、239Asp/330Leu/332Glu型に295Cysを加えた、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型Anti-CD20キメラ抗体は高いADCC活性を示した。
以下に、Anti-CD20キメラ抗体の239Asp/330Leu/332Glu型、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型の作製方法ならびにそのADCC活性測定とCD20分子に対する反応性を記載する。
1)Anti-CD20キメラ抗体の作製
キメラ抗体は、以下のA)〜F)の工程を経て、精製キメラ抗体として得られる。
A)キメラ抗体を作製する上で必要となる遺伝子のクローニング、
B)クローニングされた遺伝子の変異導入、
C)クローニングされた遺伝子及びその変異導入した遺伝子を組み合わせたキメラ抗体発現ベクターの構築、
D)キメラ抗体発現ベクターのCHO細胞への遺伝子導入とキメラ抗体を高発現するCHO細胞のスクリーニング、
E)キメラ抗体高発現CHO細胞の培養、
F)キメラ抗体高発現細胞の培養上清からのカラム精製。
これらの工程のうち、A)、C)〜F)は実施例1と同一である。従って本実施例では、工程B)について説明する。
B)クローニングされた遺伝子の変異導入
239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体を得るためには、クローニングされたHuman IgG1 H鎖定常領域の特定箇所に変異を導入しなければならない。Elvin A.KabatらがSequence of proteins of Immunological Interest (NIH Publication No.91-3242, 1991) において示したHuman IgG1 H鎖定常領域の番号に従い、239番のSerをAspに、330番 のAlaをLeuに、332番 のIleをGlu、295番目のGluをCysに変更するために、クローニングされたHunan IgG1 H鎖定常領域が挿入されたpCR2.1ベクター:pCR2.1-HC(野生型)を鋳型として、PCR法により変異導入した。この変異導入法の詳細を以下に記述する。
(1)239(Ser→Asp)への変異導入
pCR2.1-HC (野生型)(25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
239 Asp1 primer (20μM) 1.25 μL
239 Asp2 primer (20μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
239 Asp1 primer : GAACTCCTGGGGGGACCGGATGTCTTCCTCTTCCCCCCA(配列番号:80)
239 Asp2 primer : TGGGGGGAAGAGGAAGACATCCGGTCCCCCCAGGAGTTC(配列番号:81)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、変異239(Ser→Asp)導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクター(239Asp)と名前を付けた。
(2)332(Ile→Glu)への変異導入
pCR2.1-HC (239Asp)(25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
332 Glu1 primer (20μM) 1.25 μL
332 Glu2 primer (20μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
332 Glu1 primer : AAAGCCCTCCCAGCCCCCGAAGAGAAAACCATCTCCAAA(配列番号:82)
332 Glu2 primer : TTTGGAGATGGTTTTCTCTTCGGGGGCTGGGAGGGCTTT(配列番号:83)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、変異332(Ile→Glu)導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクター(239Asp/332Glu)を得た。
(3)330(Ala→Leu)への変異導入
pCR2.1-HC (239Asp/332Glu)(25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
332 Glu1 primer (20μM) 1.25 μL
332 Glu2 primer (20μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
330 Leu1 primer : TCCAACAAAGCCCTCCCACTCCCCGAAGAGAAAACCATC(配列番号:84)
330 Leu2 primer : GATGGTTTTCTCTTCGGGGAGTGGGAGGGCTTTGTTGGA(配列番号:85)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、変異330(Ala→Leu)導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクター(239Asp/330Leu/332Glu)を得た。
(4)295(Glu→Cys)への変異導入
pCR2.1-HC (239Asp/330Leu/332Glu)(25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
295 Cys3 primer (20μM) 1.25 μL
295 Cys4 primer (20μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
295 Cys3 primer : ACAAAGCCGCGTGAGGAGTGCTACAACAGCACGTACCGT(配列番号:86)
295 Cys4 primer : ACGGTACGTGCTGTTGTAGCACTCCTCACGCGGCTTTGT(配列番号:87)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、変異295(Glu→Cys)導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクター(239Asp/330Leu/332Glu/295Cys)と名前を付けた。
<精製された各種キメラ抗体の銀染色分析>
精製された各種キメラ抗体の銀染色分析は、実施例1に記載の方法と同様の方法に従って行った(図5)。
<各種キメラ抗体のADCC活性評価>
各種キメラ抗体のAntibody-dependent Cellular Cytotoxicity (ADCC)活性評価も、実施例1に記載の方法と同様の方法に従って行った。野生型、239Asp/330Leu/332Glu、239Asp/330Leu/332Glu/295CysのAnti-CD20キメラ抗体のADCC活性結果を図6に示す。図から、239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体は、野生型と比べて高濃度条件下(0.001〜10 μg/mL)で、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体は、全濃度域で野生型と比べて、高いADCC活性を示した。また、239Asp/330Leu/332Glu/295Cysは、239Asp/330Leu/332Gluと比べ、低濃度(0.001 μg/mL以下の濃度)で高いADCC活性を示した。
さらに、239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体と239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体の細胞障害の割合を、lactate dehydrogenase release assayによって比較した。その結果、添加した抗体の濃度が0.0000001、0.000001、0.00001、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、10μg/mLの場合における細胞障害の割合は、239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体の場合それぞれ7.2%、7.3%、9.5%、15.1%、26%、39.5%、56.4%、52.5%、53.3%、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体の場合はそれぞれ23.4%、19.6%、22.9%、26.3%、30.1%、39.5%、53.2%、54.3%、52.5%であった。よって、ADCC活性の比(239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体と239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体が同一濃度である2点間における、239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体に対する239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体の細胞障害の割合の比)は、それぞれ、3.3倍、2.7倍、2.4倍、1.7倍、1.2倍、1倍、0.9倍、1倍、1倍となることがわかった(表2)。
また表より、239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体と239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体との間で細胞障害の割合が同程度である2点を選択し、ADCC活性の比較を試みた。例えば、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体は0.01μg/mLで約40%、239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体は1μg/mLで約40%の細胞障害を示している。この2点を用いて比較した場合、同じADCC活性を得るために必要な抗体濃度が約100分の1に減少した。このことから、ADCC活性が約100倍上昇した(239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体と239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体が同一の細胞障害の割合を示す2点間における、239Asp/330Leu/332Glu型キメラ抗体に対する239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型キメラ抗体の濃度の比が100倍になった)と判断することが出来る。
当業者であれば、上記の方法に倣い、図6および表2よりADCC活性の上昇を算出することが可能である。
〔実施例3〕
実施例1と同様の方法で、フコース低減野生型、フコース低減295CysのAnti-CD20キメラ抗体を作製し、これら各種のAnti-CD20キメラ抗体のADCC活性を評価した。
以下に、Anti-CD20キメラ抗体のフコース低減野生型、フコース低減295Cys型の作製方法ならびにそのADCC活性測定とCD20分子に対する反応性を記載する。
1)Anti-CD20キメラ抗体の作製
キメラ抗体は、以下のA)〜G)の工程を経て、精製キメラ抗体として得られる。
A)キメラ抗体を作製する上で必要となる遺伝子のクローニング、
B)クローニングされた遺伝子の変異導入、
C)クローニングされた遺伝子及びその変異導入した遺伝子を組み合わせたキメラ抗体発現ベクターの構築、
D)FUT8 Knock Down CHO細胞の作製、
E)キメラ抗体発現ベクターのフコースKnock Down CHO細胞への遺伝子導入とキメラ抗体を高発現するフコースKnock Down CHO細胞のスクリーニング、
F)キメラ抗体高発現フコースKnock Down CHO細胞の培養、
G)キメラ抗体高発現細胞の培養上清からのカラム精製。
これらの工程のうち、A)は実施例1と同一である。従って本実施例では、工程B)、C)、D)、E)、F)、G)について説明する。
B)クローニングされた遺伝子の変異導入
フコース低減295Cys型キメラ抗体を得るためには、クローニングされたHuman IgG1 H鎖定常領域の特定箇所に変異を導入しなければならない。Elvin A.KabatらがSequence of proteins of Immunological Interest (NIH Publication No.91-3242, 1991) において示したHuman IgG1 H鎖定常領域の番号に従い、295番のGluをCysに変更するために、クローニングされたHunan IgG1 H鎖定常領域が挿入されたpCR2.1ベクター:pCR2.1-HC(野生型)を鋳型として、PCR法により変異導入した。この変異導入法の詳細を以下に記述する。
(1)295(Glu→Cys)への変異導入
pCR2.1-HC (野生型)(25 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
295 Cys3 primer (20μM) 1.25 μL
295 Cys4 primer (20μM) 1.25 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu DNA polymerase 1 μL
滅菌水 35.5 μL
total 50 μL
(PCR増幅反応)
95℃ 30 sec
95℃ 30 sec 55℃ 1 min 68℃ 13 min (12サイクル)
68℃ 4 min
4℃ 無制限時間
Primerの塩基配列は以下の通りである。
295 Cys3 primer : ACAAAGCCGCGTGAGGAGTGCTACAACAGCACGTACCGT(配列番号:86)
295 Cys4 primer : ACGGTACGTGCTGTTGTAGCACTCCTCACGCGGCTTTGT(配列番号:87)
上記のPCR反応終了後、DpnI (New England BioLabs)を1 μL添加して、2時間37℃でインキュベーションした。インキュベーション終了した液を用いて、大腸菌JM109を形質転換し、形質転換された大腸菌からプラスミドを精製した。精製プラスミドのDNAシークエンスを確認することで、変異295(Glu→Cys)導入されたHuman IgG1 H鎖定常領域を挿入したpCR2.1ベクター(295Cys)と名前を付けた。
C)クローニングされた遺伝子及びその変異導入した遺伝子を組み合わせたキメラ抗体発現ベクターの構築
1種類のAnti-CD20キメラ抗体を発現させるために、Anti-CD20キメラ抗体のL鎖とH鎖の2種類の発現ベクターをCHO細胞にTransfectionさせることで達成される。ここで、Anti-CD20キメラ抗体のL鎖の発現ベクターとは、Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子+ Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子を結合させたものを発現ベクターに組み込んだものであり、Anti-CD20キメラ抗体のH鎖の発現ベクターとは、Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子+ Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子を結合させたものを発現ベクターに組み込んだものである。野生型、295Cys型のAnti-CD20キメラ抗体を作製するにあたり、Anti-CD20キメラ抗体のL鎖の発現ベクターは、これら2種のキメラ抗体を発現させるために共通に使用するものであるが、Anti-CD20キメラ抗体のH鎖の発現ベクターは、野生型、295Cys型キメラ抗体の各々に対して専用のH鎖発現ベクターを必要とする。ここでは、はじめに各フコース低減キメラ抗体の発現に共通に使用できるAnti-CD20キメラ抗体L鎖の発現ベクターの構築について詳細を記述し、その後に295Cys型キメラ抗体の発現に必要な専用のAnti-CD20キメラ抗体H鎖発現ベクターの構築について記述する。
Anti-CD20キメラ抗体L鎖の発現ベクターの構築
発現ベクターとしては、pQCXIH(Clontech)ベクターを使用し、このベクターのNotIとEcoRIサイトにAnti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子+ Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子を挿入させる。Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子は、先に作製されたpCR2.1-MLVを鋳型に以下のPCR反応を行うことで断片を得た。また、Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子は、先に作製されたpCR2.1-LCを鋳型として以下のPCR反応により断片を得た。
(Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子の増幅反応)
pCR2.1-MLV (20 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
L5 primer(20μM) 2.5 μL
L2 primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 30.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (20サイクル)
72℃ 4min
4℃ 無制限時間
L5 primer:AATAGCGGCCGCATGGATTTTCAGGTGCAGATTATCA(配列番号:88)
L2 primer:TTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAGCACC (5’-リン酸化されている)(配列番号:73)
(Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子の増幅反応)
pCR2.1-LC (20 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
L3 primer(20μM) 2.5 μL
L6 primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 30.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (20サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
L3 primer:ACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATC (5’-リン酸化されている)(配列番号:74)
L6 primer:CGGTAGAATTCCTAACACTCTCCCCTGTTGAAGCTC(配列番号:89)
上記のPCR反応で得られたAnti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子断片は、制限酵素NotI(Takara)で切断されてから精製した。また、PCR反応で得られたHuman IgG1 L鎖定常領域遺伝子断片は、制限酵素EcoRI(Takara)で切断されてから精製した。pQCXIHベクターをNotIとEcoRIで切断して精製した断片に、先の精製Anti-CD20マウスL鎖可変領域遺伝子断片と精製Human IgG1 L鎖定常領域遺伝子断片を混同してLigationした。このLigationで得られたベクターは、シークエンスにより目的の断片が挿入されていることを確認された。このAnti-CD20キメラ抗体L鎖の発現ベクターは、pKDキメラLCと名前が付けられた。
Anti-CD20キメラ抗体H鎖発現ベクターの構築
発現ベクターとしては、pQCXIPベクター(Clontech)を使用し、このベクターのNotIとEcoRIサイトにAnti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子+ Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子を挿入させる。Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子は、先に作製されたpCR2.1-MHVを鋳型に以下のPCR反応を行うことで断片を得た。野生型、295Cys型キメラ抗体の各々に対して専用のH鎖発現ベクターは、Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子をPCR増幅させる際の鋳型となるプラスミドは異なるが、操作自体は全く同様に行われて各種Human IgG1 H鎖遺伝子断片を得た。以下にPCR反応を含む詳細を記述する。
(Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子の増幅反応)
pCR2.1-MHV (20 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
H5 primer(20μM) 2.5 μL
H2 primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 30.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (20サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
H5 primer:AATAGCGGCCGCATGGGATGGAGCTGGGTCTTTCTC(配列番号:90)
H2 primer:TGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCC (5’-リン酸化されている)(配列番号:77)
(Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子の増幅反応)
#各種鋳型プラスミド (20 ng/μL) 2 μL
2.5 mM dNTPs 4 μL
H3 primer(20μM) 2.5 μL
H6 primer(20μM) 2.5 μL
DMSO 2.5 μL
×10 pfu polymerase Buffer 5 μL
pfu polymerase 1 μL
滅菌水 30.5 μL
total 50 μL
94℃ 2 min
94℃ 1 min 55℃ 2min 72℃ 2min (20サイクル)
72℃ 4 min
4℃ 無制限時間
H3 primer:GCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTC(5’-リン酸化されている)(配列番号:78)
H6 primer:CGGTAGAATTCTTATTTACCCGGAGACAGGGAGAGGC(配列番号:91)
#:野生型のAnti-CD20キメラ抗体用の遺伝子断片を調整するためには、pCR2.1-HC(野生型)を鋳型として用いた。295Cys型のAnti-CD20キメラ抗体用の遺伝子断片を調整するためにはpCR2.1-HC(295cys)を鋳型として用いた。
上記のPCR反応で得られたAnti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子断片は、制限酵素NotI(Takara)で切断されてから精製した。また、鋳型の異なる各種PCR反応で得られたHuman IgG1 H鎖定常領域遺伝子断片は、制限酵素EcoRI(Takara)で切断されてから精製した。pQCXIPベクターをNotIとEcoRIで切断して精製した断片に、先の精製Anti-CD20マウスH鎖可変領域遺伝子断片と精製Human IgG1 H鎖定常領域遺伝子断片を混合してLigationした。このLigationで得られたベクターは、シークエンスにより目的の断片が挿入されていることを確認された。このAnti-CD20キメラ抗体H鎖の発現ベクターは、pKDキメラHC(野生型)、pKDキメラHC(295Cys)と名前が付けられた。
D)FUT8 Knock Down CHO細胞の作製
フコース低減キメラ抗体は、α1.6フコース転移酵素(FUT8)をknock downしたCHO細胞に、Anti-CD20キメラ抗体のL鎖とH鎖の2種類の発現ベクターをTransfectionすることで作製できる(FUT8の塩基配列を配列番号:96、アミノ酸配列を配列番号:97に示す)。ここでは、フコース低減キメラ抗体の作製に必要なFUT8 Knock Down CHO細胞の作製方法について記述する。
FUT8cDNA配列(+190〜+208)を基に設計されたFUT8 siRNA Sense primer (5’-gatccccgctgagtctctccgaatacttcaagagagtattcggagagactcagcttttta-3’配列番号:92)およびFUT8 siRNA Anti-Sense primer (5’-tcgataaaaagctgagtctctccgaatactctcttgaagtattcggagagactcagcggg-3’配列番号:93)を、常法に従いNaCl存在下99℃、2min加熱後、72℃から4℃まで2時間かけて冷却することによってアニーリングさせた。得られたDNA断片を、pSuper gfp+neo(Oligoengine)に挿入した。挿入されたDNA塩基配列はABI3100-Avant(Applied Biosystems社製)を用いて確認を行い、FUT-8 siRNA発現ベクター FUT-8 SiRNA/pSuper gfp+neoを構築した。
得られたFUT-8 siRNA発現ベクター FUT-8 siRNA/pSuper gfp+neo はFuGENE(Roche社製)を用い、取扱説明書に従ってCHO-K1細胞(ATCC Catalog No. CCL-61)に遺伝子導入した。遺伝子導入されたCHO-K1細胞は10% FCS (Hyclone社製) -ペニシリン-ストレプトマイシン (SIGMA社製) 含有RPMI-1640 培地(SIGMA社製) にて培養し、さらにG418(和光純薬社製)0.6 mg/mlを添加して薬剤選択を行った。薬剤耐性を獲得した細胞はセルソーター(EPICS ALTRA、Beckman Coulter社製)を用いてGFP発現量を指標にソーティングを行った。ソーティング後の細胞は限界希釈を行い、GFP高発現細胞、すなわちFUT-8 siRNAを高発現する細胞を得た。同細胞におけるFUT-8 mRNA発現量は、FUT-8発現解析用sense primerおよび(5'-AATGAAGACTTGAGGCGAATGG-3'配列番号:94)FUT-8発現解析用anti-sense primer(5'-ATTGACCAGGGGACAGCTACA-3'配列番号:95)とABI PRISM 7000(Applied Biosystems社製)を用いたReal time PCR法を用いて定量し、mRNA発現量が遺伝子導入前の細胞の22.8%とFUT-8が発現抑制されていることを確認した。得られたFUT-8 siRNA発現量の高い細胞をFUT-8 knockdown CHO-K1細胞として実験に使用した。
E)キメラ抗体発現ベクターのFUT8 Knock Down CHO細胞への遺伝子導入とキメラ抗体を高発現するCHO細胞のスクリーニング
構築された各種発現ベクターは、以下の組み合わせでTransIT-CHO Transfection kit(Mirus, MIR2170)を使用してFUT8 Knock Down CHO細胞へ遺伝子導入された。
野生型キメラ抗体:pKDキメラLC+ pKDキメラHC(野生型)
295Cys型キメラ抗体:pKDキメラLC+pKDキメラHC (295Cys型)
遺伝子導入されたFUT8 Knock Down CHO細胞は、10% Fetal Bovine Serum(EQITEC-BIO)と0.2 mg/mL Geneticin(GIBCO, 10131-035)、0.1mg/mL Hygromycin(Invitrogen, 10687-010)、2μg/mL Puromycin(メルクジャパン, 540411-25MG)を補足したRPMI1640(Sigma, R8758)で37℃5%二酸化炭素の条件下で培養することで増殖した。この増殖してコロニーを形成したFUT8 Knock Down CHO細胞の中からキメラ抗体を高発現しているFUT8 Knock Down CHO細胞を選択するのであるが、はじめに各コロニーの一部を96 wellプレートに移植して、さらに10日間培養した。その培養上清の一部を取り出し、以下に示すELISA測定をすることで高発現FUT8 Knock Down CHO細胞クローンを決定した。
(ELISA測定)
1)Anti-Human IgG (γ-chain) (MBL, 103AG)をコートした96Wellプレートに、TansfectionされたCHO細胞の培養上清を100 μL/wellで添加し、室温で1時間放置した。
2)培養上清液を96 wellプレートから捨てて、0.05%のTween20を含むPBS (PBS-0.05%Tween20)でwellを十分洗浄した。
3)Anti-Human IgG(γ-chain)Peroxidase conjugated (MBL, 208)をPBS-0.05%Tween20で2000倍希釈した溶液を100 μL/well添加して、室温で1時間放置した。
4)溶液を96 wellプレートから捨てて、PBS-0.05%Tween20でwellを十分洗浄した。
5)TMB Peroxidase Substrate (Moss, TMBE-1000s)を100 μL/well添加して、発色反応させた。
6)10〜15分の発色反応後、1N硫酸を100 μL/well添加して、発色反応を停止させた。
7)450 nm吸光度を測定した。
このELISA測定で、高い発色値を示すコロニーが、キメラ抗体を高発現するクローンである。
E)キメラ抗体高発現FUT8 Knock Down CHO細胞の培養
ELISA測定により選択されたキメラ抗体高発現CHO細胞は、10% Fetal Bovine Serumと0.2 mg/mL Geneticin、0.1mg/mL Hygromycin、2μg/mL Puromycinを補足したRPMI1640で37℃5%二酸化炭素の条件下で培養することで増殖させた。十分に増殖したキメラ抗体の高発現FUT8 Knock Down CHO細胞は、0.2 mg/mL Geneticin、0.1mg/mL Hygromycin、2μg/mL Puromycinを補足した無血清培地であるCHO-S-SFMII(GIBCO,12052-098)の培養に置き換えられ、継続して1000mL程度培養された。
F)キメラ抗体高発現細胞の培養上清からのカラム精製
無血清培地であるCHO-S-SFMIIで培養されたキメラ抗体高発現FUT8 Knock Down CHO細胞の培養上清は、回収された。野生型キメラ抗体の精製は、そのFc領域構造に変化を加えていないため、抗体精製に通常用いられるProtein Aカラム精製により実施された。しかしながら、295Cys型キメラ抗体は、そのFc領域構造に変異を加えているために、Fc領域の構造変化を伴い、通常のProtein Aカラムへは、ほとんど吸着されない。この理由から、これら変異型キメラ抗体では、Protein Lカラムを使用して精製を実施した。今回作製されたAnti-CD20キメラ抗体は、その可変領域がκ鎖である。このProtein Lは、この可変領域κ鎖を認識して結合できるタンパク質である。以下に、野生型キメラ抗体のProtein Aカラム精製と変異型キメラ抗体のProtein Lカラム精製の詳細を記述する。
野生型キメラ抗体のProtein Aカラム精製
1)1000 mL のCHO-S-SFMIIで野生型キメラ抗体高発現FUT8 Knock Down CHO細胞を培養して得られた培養上清は、Amicon Ultrafiltration Membranes (Millipore, Code YM10)を取り付けたAmicon Stirred Uitrafiltration Cell (Millipore, Model 8400)を用いて、1000 mLから100 mLまで濃縮された。
2)培養上清濃縮液に、Protein A-SepharoseであるrProteinA Sepharose Fast Flow (Amersham Bioscience, 17-1279-03) 8mLを添加し、2日間4℃で攪拌させてProteinAに野生型キメラ抗体を吸着させた。
3)野生型キメラ抗体を吸着したProteinA-Sepharoseは、直径1.5 cm、長さ8 cmのカラムに充填させた。
4)ProteinA-Sepharoseが充填されたカラムは、PBS 100 mLで洗浄された後、Elution Buffer (0.17M Glycine-HCl, pH2.3) でカラムから野生型キメラ抗体を溶出した。
5)溶出された野生型キメラ抗体溶液は、すぐに1M Tris-HCl pH8.5を適量加えてpHを中性にした。
6)野生型キメラ抗体溶出液は、透析チューブであるCell Sep T2 (Membrane filtration products Inc, 8030-23)に入れて4℃でPBS 5 Lに透析された。透析後に回収した野生型キメラ抗体を、精製品とした。
変異型キメラ抗体のProtein Lカラム精製
1)1000 mL のCHO-S-SFMIIで295Cys型キメラ抗体高発現FUT8 Knock Down CHO細胞を培養して得られた培養上清は、Amicon Ultrafiltration Membranes (Millipore, Code YM10)を取り付けたAmicon Stirred Uitrafiltration Cell (Millipore, Model 8400)を用いて、1000mLから100mLまで濃縮された。
2)培養上清濃縮液100 mLは、ProteinL Binding Buffer (0.1M Phosphate, 0.15 M NaCl,pH 7.2) 100 mLを加えて混合された。
3)直径1.5 cm、長さ8 cmのカラムにProtein L-SepharoseであるImmunoPure Immobilized Protein L Plus (PIERCE, 20250) 2 mLを充填させた。
4) 2)で調整した液をカラム上端から加えて、カラム下端からゆっくり流し出した。この操作でProtein L-Sepharoseへ変異型キメラ抗体を吸着させた。その後、Protein L Binding Buffer 50 mLでカラムを洗浄し、カラムに吸着した余分な蛋白を除去した。
5)Elution Buffer (0.17M Glycine-HCl, pH2.3) でカラムから変異型キメラ抗体を溶出した。溶出された変異型キメラ抗体溶液は、すぐに1M Tris-HCl pH8.5を適量加えてpHを中性にした。
6)変異型キメラ抗体溶出液は、透析チューブであるCell Sep T2 (Membrane filtration products Inc, 8030-23)に入れて4℃でPBS 5 Lに透析された。透析後に回収した変異型キメラ抗体を、精製品とした。
以上のように、精製された野生型キメラ抗体あるいは変異型キメラ抗体は、12.5%SDS-PAGEで電気泳動されたのち、銀染色された。この電気泳動像を図に添付する(図7)。
本発明の抗体によれば、抗体のFc領域における特定のアミノ酸残基に変異を加える、または変異を加えた抗体に結合する糖鎖のフコースを低減させることにより、エフェクター機能を著しく向上することができる。このような抗体からなる治療用組成物は、少量で優れた薬理効果を得ることができるため、抗体医薬として極めて有用である。また、使用量の低減によりコストを抑えることができ、しかも特異性が高く副作用が少ないため、患者の経済的、身体的負担を極めて軽減することができる。また、抗体を用いた治療と併用されてきた化学療法や放射性同位元素標識抗体などの他の治療方法を控えることができ、これらの治療方法による副作用を回避することも可能である。
Anti-CD20マウスL鎖可変領域のDNA配列を示す図である。 Anti-CD20マウスH鎖可変領域のDNA配列を示す図である。 精製された野生型抗CD20キメラ抗体、298Ala/333Ala/334Ala型抗CD20キメラ抗体、及び298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型抗CD20キメラ抗体の電気泳動結果を示す写真である。 実施例1において、野生型抗CD20キメラ抗体、298Ala/333Ala/334Ala型抗CD20キメラ抗体、及び298Ala/333Ala/334Ala/295Cys型抗CD20キメラ抗体のADCC活性を測定した評価結果を示すグラフである。 精製された野生型CD20キメラ抗体、239Asp/330Leu/332Glu型CD20キメラ抗体、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型CD20キメラ抗体の電気泳動結果を示す写真である。 実施例2において、野生型CD20キメラ抗体、239Asp/330Leu/332Glu型CD20キメラ抗体、239Asp/330Leu/332Glu/295Cys型CD20キメラ抗体のADCC活性を測定した評価結果を示すグラフである。 精製された野生型抗CD20キメラ抗体、フコース低減野生型キメラ抗体、フコース低減295Cys型キメラ抗体の電気泳動結果を示す写真である。

Claims (20)

  1. KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸がシステイン残基に置き換えられた抗体であって、以下の(a)及び/又は(b)に記載の特徴を有する抗体;
    (a)定常領域において295番目以外の3つのアミノ酸が他のアミノ酸に置き換えられた抗体、及び/又は
    (b)Fc領域に結合しているN-グリコシド結合糖鎖において還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体。
  2. KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換えられたことを特徴とする抗体。
  3. KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換えられたことを特徴とする抗体。
  4. KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸が、システイン残基に置き換えられた抗体であって、Fc領域に結合しているN-グリコシド結合糖鎖において還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体。
  5. 定常領域がヒトIgGの定常領域である請求項1から4の何れかの項に記載の抗体。
  6. ヒト細胞表層存在分子を認識する部位を有する、請求項1から5の何れかの項に記載の抗体。
  7. サイトカイン受容体、細胞接着分子、がん細胞表層分子、がん幹細胞表層分子、血液細胞表層分子、ウイルス感染細胞表層分子からなる群から選択される少なくとも一つを認識する、請求項1から6の何れかの項に記載の抗体。
  8. 抗原CD3、CD11a、CD20、CD22、CD25、CD28、CD33、CD52、Her2/neu、EGF受容体、EpCAM、MUC1、GD3、CEA、CA125、HLA−DR、TNFalpha受容体、VEGF受容体、CTLA−4、AILIM/ICOS、インテグリン分子からなる群から選択される少なくとも一つを認識する、請求項1から7の何れかの項に記載の抗体。
  9. 請求項1から8の何れかの項に記載の抗体をコードする単離された核酸。
  10. 請求項9に記載の核酸を含むベクター。
  11. 請求項10に記載のベクターを有する宿主細胞又は宿主生物。
  12. 請求項11に記載の宿主細胞又は宿主生物を、核酸がコードする抗体を発現するように培養することを特徴とする抗体の製造方法。
  13. 請求項1から8の何れかの項に記載の抗体を含む治療用組成物。
  14. KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられたエフェクター機能を有する抗体を発現する細胞であって、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性が低減、または欠失した細胞。
  15. 以下(1)から(3)の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法;
    (1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換える工程、
    (2)KabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置換されたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
    (3)発現産物を回収する工程。
  16. 以下(1)から(3)の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法;
    (1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換える工程、
    (2)KabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸が、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
    (3)発現産物を回収する工程。
  17. 以下(1)から(3)の工程を含むエフェクター機能が向上した抗体の製造方法;
    (1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基をシステイン残基に置き換える工程、
    (2)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性が低減、または欠失した宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
    (3)発現産物を回収する工程。
  18. エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で298、333、334、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アラニン、アラニン、アラニン、及びシステイン残基に置き換える工程を含む、抗体のエフェクター機能を向上させる方法。
  19. エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で239、330、332、及び295番目のアミノ酸を、それぞれ、アスパラギン酸、ロイシン、グルタミン酸、及びシステイン残基に置き換える工程を含む、抗体のエフェクター機能を向上させる方法。
  20. 下記(1)から(3)の工程を含む抗体のエフェクター機能を向上させる方法;
    (1)エフェクター機能を有する抗体におけるKabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基をシステイン残基に置き換える工程、
    (2)KabatのEUインデックス番号で295番目のアミノ酸残基がシステイン残基に置き換えられたH鎖をコードするDNA、及び、L鎖をコードするDNAを、還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素の活性が低減、または欠失した宿主細胞又は宿主生物に導入し、該DNAを発現させる工程、及び
    (3)発現産物を回収する工程。
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