JP2009090441A - 炭化珪素の研磨剤、及びそれを用いた炭化珪素の研磨方法 - Google Patents

炭化珪素の研磨剤、及びそれを用いた炭化珪素の研磨方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環境負荷の高い化学薬品を用いることなく、硬度の高い炭化珪素(SiC)単結晶表面を高速かつ簡便に、高い平坦性および精度で研磨、研削が可能な積層体を提供する。
【解決手段】基材と、該基材上に設けられた炭素層とを備えた積層体からなる炭化珪素部材の研磨材であり、前記炭素層は、前記基材に設けられ衝撃を与えられて粉砕されたダイヤモンド微粒子と、炭素粒子の成長を阻害する不純物の生成を抑制し及び又は炭素粒子の成長を抑制する生成・成長抑制材と、炭素粒子とから構成され、該生成・成長抑制材の量は、前記基材側の下部層から上部層に向かって減少してなり、かつ炭素層の表面粗さは、4nm〜6nm、であることを特徴とする炭化珪素部材の研磨材であり、さらに前記堆積した膜の表面に水素プラズマを暴露して前記炭素膜の表面粗さを4nm〜6nmに調整することもできる。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭化珪素(SiC)単結晶表面を研磨するための、少なくとも基板上の炭素層を設けてなる積層体に関するものであり、特に、基板上に設けられた炭素層が高い硬度及び平滑な表面を有するために研磨材として有効な積層体に関する。
近年、さまざまな分野で、SiC単結晶の高い鏡面性、平坦性が必要となっている。たとえば電力用素子、半導体素子にSiCが用いられる場合には、表面粗さがナノメートル以下という、従来と比較して遥かに高い鏡面性、平坦性を有するSiC単結晶が要求されるようになってきた。このような要求を満たすため、SiC単結晶表面のより高度な研磨法の開発が必須となっている。
従来、SiC単結晶表面の研磨には、主に機械加工、および化学機械研磨(CMP)による方法が用いられていた。機械加工による方法としては、例えば、凹凸を有するSiC単結晶表面を研削機等の物理的な手段で粗削りした後、ダイヤモンド砥粒を用いて研磨するという手法が一般的に用いられている。
そして最終的な平坦性を得るためには、超微細砥粒によるナノメータスケールでの機械的除去作用と、エッチング効果を有する加工液による化学的溶去作用とを複合させる、化学機械研磨(CMP)が現状必須である。
しかしCMPは化学薬品を使用するため、廃液による環境負荷が高いことが問題となっている。したがって、このCMPに代わるより環境負荷の小さな研磨手法の開発が望まれている。
一方、本発明者らは、ガラス、シリコン、鉄、チタン、銅、プラスチックなどの基板にダイヤモンド微粒子を超音波処理によって付着させ、これに低温表面波プラズマCVD法を適用することにより、粒径2〜30nmの炭素粒子が緻密に堆積した、厚さ2μm以上の炭素膜を形成しうること、及びその炭素膜の硬度が20GPa以上であることを見出している(特許文献1参照)。
国際公開第2005/103326号パンフレット
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、炭素膜のもつ基材への高い密着性、硬度、および表面平坦性を利用し、環境負荷の高い化学薬品を用いることなく、硬度の高いSiC単結晶表面を高速かつ簡便に、高い平坦性および精度で研磨、研削が可能な積層体を提供することにある。
本発明者らは、前述の基板と該基板に設けた炭素層とからなる積層体についてさらに鋭意研究を重ねた結果、該炭素層を構成するダイヤモンド粒子及び炭素粒子に加えて、前記炭素粒子の成長を阻害する不純物の生成を抑制し及び/又は前記炭素粒子の成長を抑制する生成・成長抑制材を用いることにより、基材への高い密着性、硬度、および表面平坦性を有する炭素層の形成が可能となり、その結果、硬度の高いSiC単結晶表面を高速かつ簡便に、高い平坦性および精度で研磨、研削が可能な積層体を提供しうることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものであり、以下のとおりのものである。
(1)基材と、該基材上に設けられた炭素層とを備えた積層体からなる炭化珪素部材の研磨材であって、前記炭素層は、前記基材に設けられ衝撃を与えられて粉砕されたダイヤモンド微粒子と、炭素粒子の成長を阻害する不純物の生成を抑制し及び又は炭素粒子の成長を抑制する生成・成長抑制材と、炭素粒子とから構成され、該生成・成長抑制材の量は、前記基材側の下部層から上部層に向かって減少してなり、かつ炭素層の表面粗さRaは、4nm〜6nm、であることを特徴とする炭化珪素部材の研磨材。
(2)前記基材は、シリコン、石英、ガラス、ステンレス、アルミニウムであることを特徴とする炭化珪素部材の研磨材。
(3)基材を用意する工程と、ダイヤモンド微粒子を粉砕して前記基材上に該ダイヤモンド微粒子を設ける工程と、内部にSiO2材又はAl2O3材の供給源及び前記工程で得られた基材を設置したマイクロ波プラズマCVD反応炉内に反応ガスを導入し、該反応炉内に表面波プラズマを発生させて、該基材上にSiO2材又はAl2O3材と炭素粒子からなる膜を該SiO2材又はAl2O3材の量が前記基材側の下部層から上部層に向かって減少させる工程と、前記堆積した膜の表面に水素プラズマを暴露して前記炭素膜の表面粗さを4nm〜6nmに調整する工程と、を備える炭化珪素部材の研磨材の形成方法。
本発明の積層体は、その炭素層が有する基材への高い密着性、硬度、および表面平坦性を有している。したがって、本発明の積層体を用いることにより、環境負荷の高い化学薬品を用いることなく、SiC単結晶表面などの硬度の高い材料表面を高速かつ簡便に、高い平坦性および精度で研磨、研削が可能な積層体を提供することが可能である。
図1から図4は、本発明の積層体の基板近辺の概要を示す断面図である。
本発明の積層体は、基材と、該基材上に設けられた炭素層とを備え、前記炭素層は、前記基材に設けられ衝撃を与えられて粉砕されたダイヤモンド微粒子と、炭素粒子の成長を阻害する不純物の生成を抑制し及び又は炭素粒子の成長を抑制する生成・成長抑制材と、炭素粒子とを備え、該生成・成長抑制材の量(単位体積当りの量)は、前記基材側の下部層から上部層に向かって減少することを特徴とする積層体であり、図1に示すような積層構造を持っている。なお、本発明において、「炭素粒子の成長を阻害する不純物」とは、炭素粒子の粒界及び/又は炭素粒子間の空隙に炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイトなどのことである。
具体的には、前記炭素層は、前記基材に設けられ衝撃を与えられて粉砕されたダイヤモンド微粒子と、SiO材又はAl材と、炭素粒子とを備え、該SiO材又はAl材の量(単位体積当りの量)は前記基材側の下部層から上部層に向かって減少することを特徴とする。前記基材側の下部層から少なくとも80nm以上において該炭素粒子が70at%以上になることを特徴とする積層体であり、図2に示すような積層構造を持っている。
また本発明の別の積層体は、基材と、該基材上に設けられた密着強化層と、該密着強化層上に設けられた炭素層とを備え、前記炭素層は、前記密着強化層に設けられ衝撃を与えて粉砕されたダイヤモンド微粒子と、炭素粒子の成長を阻害する不純物の生成を抑制し及び又は炭素粒子の成長を抑制する生成・成長抑制材と、炭素粒子とを備え、該生成・成長抑制材の量(単位体積当りの量)は前記密着強化層の下部層から上部層に向かって減少することを特徴とする積層体であり、図3に示すような積層構造を持っている。
具体的には、前記炭素層は、前記密着強化層に設けられ衝撃を与えて粉砕されたダイヤモンド微粒子と、SiO材又はAl材と、炭素粒子とを備え、該SiO材又はAl材の量(単位体積当りの量)は前記密着強化層側の下部層から上部層に向かって減少することを特長とし、前記密着強化層側の炭素層の下部層から少なくとも80nm以上において該炭素粒子が70at%以上になることを特徴とする積層体であり、図4に示すような積層構造を持っている。
本発明においては、炭素層を基材に堆積するためのプラズマCVD処理に先立って、基材または密着強化層を設けた基材に対して、ナノクリスタルダイヤモンド粒子、クラスターダイヤモンド粒子またはグラファイトクラスターダイヤモンド粒子などのダイヤモンド微粒子を超音波によって衝撃を与えて粉砕し、粉砕されたダイヤモンド微粒子の一部を基材表面に食い込ませ、またその一部を基材表面に付着させる。基材表面に食い込むダイヤモンド微粒子は炭素層の基材への密着力を強化するアンカー用ダイヤモンド微粒子及び/又は炭素層の成長に寄与する成長用炭素粒子として機能する。また基材表面に付着したダイヤモンド微粒子は炭素層の成長に寄与する成長寄与用炭素粒子としての機能をもつ。
通常ナノクリスタルダイヤモンド粒子は、爆発合成により、または高温高圧合成されたダイヤモンドを粉砕することにより製造されるダイヤモンドである。
ナノクリスタルダイヤモンドは,爆発合成によるナノクリスタルダイヤモンドを溶媒に分散させたコロイド溶液が有限会社ナノ炭素研究所等から、また粉砕により製造されたナノクリスタルダイヤモンド粉末、あるいはそれを溶媒に分散させたものがトーメイダイヤ株式会社等から、既に販売されている。本発明で用いるナノクリスタルダイヤモンド粒子は、その平均粒径が4〜100nm、好ましくは4〜10nmである。ナノクリスタルダイヤモンド粒子については、例えば文献で「牧田寛,New Diamond Vol.12 No. 3, pp. 8−13 (1996)」に詳述されている。
基材または密着強化層にナノクリスタルダイヤモンド粒子を設けるには、まず該粒子を水またはエタノール中に分散させる。この際分散性を向上させるために、界面活性剤(例えばラウリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイン酸ナトリウム等)を加え、分散液を作製する。
この分散液中のナノクリスタルダイヤモンド粒子の粒径分布を、動的光散乱法を用いて測定した。測定に用いた装置は、株式会社堀場製作所製、動的光散乱式粒子サイズ評価装置(DYNAMIC LIGHT SCATTERING PATRICLE SIZA ANALYZER)LB-500型機である。測定条件およびパラメータは次のとおりである。
分布形態:単分散
データ取り込み回数:100
反復回数:100
粒子径基準:体積
試料屈折率:1.600-0.000i
分散媒屈折率:1.333
分散媒粘度:0.8270mPa・s
サンプル粘度:0.141V
測定温度:28.5℃
図5は、本発明で使用した一例の、ナノクリスタルダイヤモンド粒子分散液中のナノクリスタルダイヤモンド粒子の粒径分布の測定結果である。分散液中のナノクリスタルダイヤモンド粒子は、以下のような粒径分布をもつことが分かった。
算術平均径:0.0370μm
算術標準偏差:0.0070μm
この分散液中のナノクリスタルダイヤモンド粒子は、分散液の作成後、時間がたつにつれて分散液中で凝集が進行し、算術平均粒径が徐々に大きくなる。そして算術平均粒径が100nm(0.1μm)を超えると、本発明の積層体形成のための、ナノクリスタルダイヤモンド分散液による超音波処理に適さない。通常分散液作成後、およそ6ヶ月経過すると100nmを超える程度にナノクリスタルダイヤモンド粒子の凝集が進行する。したがって、およそ6ヶ月を目処として、ナノクリスタルダイヤモンド分散液を作製しなおし、新しいものを使用するのが、本積層体を形成するには適している。
本発明においては、上記ナノクリスタルダイヤモンド粒子の分散液に基板を浸して超音波洗浄器にかける。この超音波の物理的衝撃力、具体的には容積26リットルの超音波洗浄器を使用し、周波数40kHz、出力600Wの超音波のパワーにより、ナノクリスタルダイヤモンド粒子が、ナノクリスタルダイヤモンド粒子同士の衝突、あるいは基材または密着強化層に衝突することにより粉砕され、さらに超音波の衝撃力により基材表面または密着強化層表面に向かって加速を受け、衝突する。そのうち十分な衝撃力が与えられたものは基材表面または密着強化層表面に食い込む。これら表面に食い込んだナノクリスタルダイヤモンド粒子は、炭素層が基材表面または密着強化層表面への高い密着力を保持するためのアンカーとして機能する。一方、十分な衝撃力が与えられなかったナノクリスタルダイヤモンド粒子は、基材表面または密着強化層表面に付着する。これらは、CVD処理による炭素層の成長に寄与する機能をもつ。
上記超音波の衝撃力を有効に働かせるためには、超音波の出力が超音波洗浄器の容量1リットル当たり4W以上の超音波洗浄器を使用する必要がある。それ以下の出力の超音波洗浄器では、衝撃力が小さいため基材表面または密着強化層表面への高い保持力を得ることが困難である。
基材または密着強化層を設けた基材は上記のナノクリスタルダイヤモンド分散液による超音波処理の後、該基材または密着強化層を設けた基材をエタノール中に浸して超音波洗浄を行い、取り出して乾燥させる。
図6は、上記のナノクリスタルダイヤモンド分散液による超音波処理の後、エタノール中に浸して超音波洗浄を行い、取り出して乾燥させたホウ珪酸ガラス基材の表面を、原子間力顕微鏡を用いて観察した写真である。ホウ珪酸ガラス基材表面は粒径10nmから50nmの粒子で覆われていることが分かる。
このように上述のナノクリスタルダイヤモンド分散液による超音波処理により、ガラス基材表面には高密度のナノクリスタルダイヤモンド粒子が付着あるいは食い込んでいることが分かる。この図でガラス基材表面に食い込んでいるか付着しているナノクリスタルダイヤモンド粒子の密度は5×1010個/cmであった。ガラス基材と炭素層との積層体を後述する研磨材または研削材として利用可能な炭素層のガラス基材への密着強度を得るためには、ガラス基材表面に食い込んでいるか付着しているナノクリスタルダイヤモンド粒子の密度は、好ましくは10〜1012個/cm、さらに好ましくは1010〜1011個である。
本発明においては、基材または密着強化層にナノクリスタルダイヤモンド粒子を設けた後、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて処理を施す。
本発明においては、マイクロ波プラズマCVD反応炉内の内部に、SiO材又はAl材の供給源及び前記工程で得られた基材を設置し、CVD処理の際、基材は室温から500℃に保持しておく。
前記マイクロ波プラズマCVD反応炉内に、反応ガスとして、含炭素ガスと、アルゴンガス及び/又は水素ガスとの混合ガスを導入し、かつガス圧を1〜100パスカルにてプラズマを発生させるとともに、プラズマの電子温度が0.5〜3.0eVの位置に前記基板を配置して、プラズマ中のラジカル粒子を該基板の表面上にほぼ均一に到達するように該プラズマの発生起源から該基板に向けて移動させてなる炭素層堆積方法を採用することにより達成するものである。
本発明の積層体の製造方法について、例を挙げて概略を以下に説明する。
例えば、ガラス、シリコン、鉄及び鉄系合金、ステンレス、アルミニウム、銅、プラスチック、などの材料に、必要に応じて密着強化層を設け、或いはさらにダイヤモンド微粒子の超音波処理による前処理を施した後、これを低温マイクロ波プラズマCVD装置にて、成膜の源となるプラズマ中のラジカル粒子を、試料台に設置した基材の表面上にほぼ均一に到達するように、該プラズマの発生起源から該基板に向けて移動させるダウンフローにて供給し、プラズマCVD処理を行う。
ガラス、シリコンなどの基材では、直接これら基材表面にナノクリスタルダイヤモンド粒子の分散液を用いた超音波処理を施すことにより、基材表面に食い込んでいるか付着しているナノクリスタルダイヤモンド粒子を形成する。その後これらの基材にマイクロ波プラズマCVD装置を用いて処理を施すことで、研磨、研削に必要な炭素層の基材への密着強度を得ることができる。
また、鉄及び鉄系合金、ステンレス、アルミニウム、銅、プラスチック、などの材料でも、これら基材表面に直接ナノクリスタルダイヤモンド分散液を用いた超音波処理を施すことにより、基材表面に食い込んでいるか付着しているナノクリスタルダイヤモンド粒子を形成し、その後これらの基材にマイクロ波プラズマCVD装置を用いて処理を施すことで、炭素層の形成が可能である。
しかし、鉄及び鉄系合金、ステンレス、アルミニウム、銅、プラスチック、などの材料では、研磨、研削に必要な炭素層の基材への高い密着強度を得ることは困難である。このような種類の基材に対しては、基材表面に密着強化層を設け、この密着強化層の表面にナノクリスタルダイヤモンド分散液を用いた超音波処理を施すことにより、密着強化層の表面に食い込んでいるか付着しているナノクリスタルダイヤモンド粒子を形成するという手法が、これらの基材に対して炭素層の密着強度を得るためにたいへん有効である。これらの基材に対する炭素層の密着強化層としては、たとえば、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、炭化シリコン(SiC)、窒化珪素(Si)などが有効である。これらの密着強化層は、スパッタリング法や真空蒸着法などを用いて基材表面に設けることが可能である。またこれらの密着強化層の厚さは1μm程度が適当である。
プラズマCVD処理時間としては、数分から数十時間であり、またその処理温度としては20〜500℃である。
本発明においては、プラズマCVD処理のガス圧力と、基材を配置する位置はたいへん重要であり、以下のようにして確認した。
図7に、本発明の積層体形成に用いる装置の一例を示す。
図中、101はマイクロ波プラズマCVD反応炉(以下、単に「プラズマ発生室」という。)、102はマイクロ波をプラズマ発生室101に導入するためのスロット付き角型導波管、103はマイクロ波をプラズマ発生室101に導入するための石英部材、104は石英部材を支持する金属製支持部材、105は被成膜基材、106は被成膜基材を設置するための試料台であり、上下動機構と被成膜基材の冷却機構を備えており、107はその冷却水の給排水である。また108は排気であり、109はプラズマ発生用ガス導入手段である。110はプラズマCVD処理を行う反応炉である。
該装置を用いたプラズマ発生は以下のようにして行う。
排気装置(図示せず)によりプラズマ発生室101を真空排気する。つづいてプラズマ発生室用ガス導入手段109を介して所定の流量でプラズマ発生室101にプラズマ発生用ガスを導入する。次に排気装置に設けられた圧力調節バルブ(図示せず)を調整し、プラズマ発生室101内を所定の圧力に保持する。2.45GHzのマイクロ波発生装置(図示せず)より所望の電力のマイクロ波を、スロット付き角型導波管102および石英部材103を介してプラズマ発生室101内に供給することにより、プラズマ発生室101内にプラズマが発生する。これにより、成膜の源となるプラズマ中のラジカル粒子を、試料台に設置した樹脂基板の表面上にほぼ均一に到達するように、該プラズマの発生起源となるマイクロ波導入用石英部材103の下面(CVD処理反応炉側)から該基板に向けて移動させ、ダウンフローにて供給することができる。
図8は、ラングミュアプローブを用いたプラズマ特性測定で得た、プラズマ中の電子温度(電子の運動エネルギー)のマイクロ波導入用石英窓の下面(CVD反応炉側)からの距離依存性を示す。このプラズマ特性測定に用いたラングミュアプローブは、神戸製鋼所製プラズマ診断用プローブL2P型機を用いた。この際、マイクロ波励起の無電極放電プラズマのプラズマ密度および電子温度を正確に測定するため、白金とタングステンの二つのプローブを用いた、ダブルプローブ法と呼ばれる手法で測定を行った。ラングミュアプローブ法については、例えば文献「菅井秀郎,プラズマエレクトロニクス,オーム社 2000年,p.58」に詳述されている。
この図の測定に用いたガスは水素100%、圧力は10Paである。このようにプラズマ中の電子温度は、石英窓からの距離が大きくなるにしたがって減少するという特性を持っている。また図9は、プラズマ密度のマイクロ波導入用石英窓の下面(CVD反応炉側)からの距離依存性を示す。
上記測定の他、メタンガス0.5〜10モル%、炭酸ガス0〜10モル%、水素ガス0〜95.5モル%、アルゴンガス0〜95.5モル%の範囲で任意の割合で混合し、電子温度とプラズマ密度の測定を行った。その結果、測定したガス混合範囲では、プラズマの特性はほとんど変化しなかった。
基材を上下動が可能な試料台に設置して、石英窓から任意の位置に基材を配置することができるようにし、図8に示したプラズマ中の電子温度、および図9に示したプラズマ密度のデータをもとにして、水素その他のCVD処理に必要なガスをプラズマ発生室に充填し、ガス圧力10Paにおいて樹脂基板の位置をいろいろと変えて成膜実験を行い、成膜に最適な電子温度とプラズマ密度の条件の探索を行った。CVD処理に必要なガスについては、後ほど詳述する。
その結果、電子温度が3eV以上となる基板の位置では成膜されないか、本発明の炭素層ではなく、煤状の膜がわずかに堆積するだけであることがわかった。たとえば図5に示した圧力10Paでは、石英窓からの距離が20mm以下の領域が、成膜されないか、煤状の膜がわずかに堆積するだけの領域であった。
一方電子温度が3eV以下となる領域では本発明の炭素層の形成が確認できた。たとえば圧力10Paでは、20mm〜200mmの領域で成膜されることを確認した。圧力10Paのとき、この領域では電子温度は3eV〜0.8eVであった。
本実験で使用した試料台の上下動可動範囲が最大で200mmであるため、これ以上の距離での実験は行うことができなかったが、試料台を工夫することにより、さらに大きな距離での実験が可能である。
この成膜が確認された領域において、成膜速度は石英窓からの距離が50mm〜70mmで最大となった。これは図9のプラズマ密度の石英窓からの距離依存性で、プラズマ密度は50mmで最大となっていることから、50mm程度で成膜速度が最大となることが説明できる。したがって成膜速度をできるだけ大きくしたい場合、成膜に最適な基材の位置は、電子温度が3eV以下であり、かつプラズマ密度が最大となるような位置であることが明らかとなった。
上記の実験をいろいろなガス圧力で行った。その結果、炭素層の堆積に適するガス圧力は1〜100Pa、好ましくは1〜50Paであることが分かった。ガス圧力が200Pa以上では、成膜が確認できなかった。これはガス圧力が高いため、プラズマからの加熱により基材の熱損傷、熱膨張、熱変形が大きいことによると考えられる。またこれらの実験により、成膜に最適な基材の位置は、プラズマCVD処理におけるガス圧力によって変化することが明らかとなった。それぞれのガス圧力において、プラズマの電子温度が0.5〜3eVの位置に基材を配置すると、炭素層が基材に堆積可能であることが明らかとなった。
このような、成膜に適する基材の位置を選定できるのは、成膜の源となるプラズマ中のラジカル粒子を、試料台に設置した基材の表面上にほぼ均一に到達するように該プラズマの発生起源から該基板に向けて移動させたことにより、図8に示すような、該プラズマの発生起源から該基板に向けて徐々に減少するような電子温度の分布を形成することができたことによる。
本発明において、CVD処理に用いる原料ガス(反応ガス)は、含炭素ガスと、アルゴンガス及び/又は水素とからなる混合ガスである。含炭素ガスとしては、メタン、エタノール、アセトン、メタノール等が包含される。
成膜に適する混合ガスの混合比は、基材に用いるそれぞれの基材によって異なり、また、基材の表面処理の状態によっても異なるが、その含炭素ガスの濃度は0.5〜10モル%、好ましくは1〜4モル%である。含炭素ガスが前記範囲より多くなると炭素層の基材への密着強度の低下等の問題が生じるので好ましくない。
また、前記混合ガスには、添加ガスとして、COやCOを添加することが好ましい。これらのガスは酸素源として作用し、プラズマCVD処理においては、不純物を除去する作用を示す。CO及び/又はCOの添加量は、全混合ガス中、好ましくは0.5〜10モル%、さらに好ましくは1〜5モル%である。
アルゴンガス及び/又は水素の添加は、基材がプラスチック材料である場合に、表面のプラズマ損傷の防止に著しく有効である。特に樹脂の表面にプラズマ耐性膜を設けていない場合は、水素の割合に比べてアルゴンガスの割合を大きくすることが、プラズマ損傷の防止に有効である。水素ガスの割合は0〜95.5モル%、アルゴンガスの割合は0〜95.5モル%が適する。
またこのCVD処理においては、炭素層を形成する炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイト等の不純物の生成を抑制し、及び又は炭素粒子の成長を抑制するための物質を、炭素粒子の原料ガスである含炭素ガス、アルゴンガス及び/又は水素ガス、さらに必要であればCO及び/又はCOとともに、CVD処理チャンバーに供給する必要がある。本発明において、炭素層を形成する炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイト等の不純物の生成を抑制し、及び又は炭素粒子の成長を抑制するための最適な物質は、SiO材又はAl材であった。
本発明の積層体を形成するためのプラズマCVD手法では、マイクロ波をプラズマ発生室101に導入するための部材103の材料として、石英を用いた。この石英は、炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイト等の不純物の生成を抑制し、及び又は炭素粒子の成長を抑制するための非晶質物質である、SiO材の供給源としての重要な役割を担っている。
すなわち、マイクロ波によってプラズマとなった原料ガスに石英管がさらされることにより、Siガスおよび酸素ガスが生成し、原料ガスとともにプラズマとなる。これらのプラズマは石英管に近いほど高密度であり、その拡散による広がりは、実質的に基板方向である。また拡散と同時にそれらが原料ガスとともにダウンフローにて、より効率的に基板に供給される。この供給量のコントロールはCVDチャンバー内のガス圧力を調節することによりプラズマの密度をコントロールし、Siガスおよび酸素ガスの生成率を調節することにより行う。メタンガスの濃度と同じ濃度となるようにSiガスの濃度の調整を行ったときに、炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイト等の不純物の生成を抑制し、及び又は炭素粒子の成長を抑制する効果がもっとも高いことが、ガス濃度分析により明らかとなった。たとえば、メタンガスの濃度とCOとSiガスの濃度は1〜5モル%の範囲でそれぞれ等しくなるように調整し、残りが水素ガスというガスの混合比が本発明の積層体の形成にたいへん適していた。
また、マイクロ波をプラズマ発生室101に導入するための部材103の材料としては、アルミナ(Al)を用いることができる。この場合は、アルミナが炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイト等の不純物の生成を抑制し、及び又は炭素粒子の成長を抑制する物質として機能する。
また、この非晶質物質は、後記するように、炭素粒子の粒界及び/又は炭素粒子間の空隙に高密度で析出・被覆されるように、炉内雰囲気温度を低温、好ましくは室温〜600℃、更に好ましくは室温〜450℃の温度条件下で形成しておくことが望ましい。またこれらの温度範囲以外では、非晶質物質Si及び/又はSiOの形成は認められなかった。その非晶質物質形成、Si/又はSiOの機構は以下のとおりである。炭素粒子の形成に伴って炭素粒子中に溶け込もうとするSiが、低温であるため炭素粒子表面に析出する。表面に析出したSiは、そのまま非晶質Siとして粒子表面、すなわち炭素粒子の粒界及び/又は炭素粒子間の空隙に析出するか、あるいは、プラズマ中の酸素によって酸化され、非晶質のSiOとして析出・被覆する。これまでに室温までの低温でのCVD処理により、非晶質物質であるSi及び/又はSiOの形成を確認した。
以上のようにして基材に堆積した炭素層の表面を光学顕微鏡で観察した結果、膜厚が50nm以下では基材上で炭素層を均一に成膜することが困難であることが明らかとなった。膜厚50nm以上では基材上で炭素層を均一に成膜することが可能となるが、膜厚100nm以上では基材上で炭素層をより均一に成膜することが可能であることが明らかとなった。また膜厚10μm以上では、堆積した炭素層の基材からの剥離が生じやすかった。膜厚5μm以下では、スコッチテープを用いた密着強度試験に十分耐える密着性をもつ炭素層を基材上に形成できた。したがって、基材と炭素層との積層体を形成するのに適当な炭素層の膜厚は、50nm〜10μm、好ましくは100nm〜5μmであった。
本発明により、炭素層と基材の積層体を形成することができる。この炭素層は、CuKα1線によるX線回折スペクトルにおいて、後述する図15にみられるように、ブラッグ角(2θ±0.3°)の43.9°のピークフィッティング曲線Aに41.7±0.3°のピークフィッティング曲線Bおよびベースラインを重畳して得られる近似スペクトル曲線を有するという、ダイヤモンド等他の炭素粒子および炭素層とは異なる著しい特徴を有するものである。
さらに該積層体の炭素層の場合,平坦性および密着性に優れており、その表面粗さRaは20nm以下であり,場合によっては3nm以下にも達する平坦なものである。
また、本発明の積層体膜断面の高分解能透過型電子顕微鏡による観察から,該炭素層は粒径1nmから数十nmの結晶性炭素粒子が隙間なく詰まって形成されており、しかもその炭素層と基板との界面、その炭素層中および炭素層最表面付近とにおいて、その粒径分布が変化していない(平均粒径がほぼ等しい)ことが特徴的であることがわかった。得られる炭素層の膜厚は、好ましくは2nm〜100μm、さらに好ましくは50〜500nmであり、その粒子の粒径は、好ましくは1〜100nmであり、さらに好ましくは2〜20nmである。
本発明の積層体断面を高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)で観察した。使用したHRTEM装置は(株)日立製作所製H-9000透過型電子顕微鏡であり、加速電圧300 kVで観察を行った。また、試料ホルダーは該HR-TEM装置の標準傾斜試料ホルダーを用いた。観察用試料の作製には,(1)Arイオンミリング処理による薄片化、(2)収束イオンビーム(FIB)加工による薄片化、または(3)炭素層表面をダイヤモンドペンで剥がし,得られた切片をマイクログリッドに捕集,の何れかの方法で行った。
図10から図12に観察結果の例を示す。図10から図12はガラス基板上の炭素層断面の観察例である。この場合、イオンミリング処理により試料を作製した。図10は該炭素層断面の電子顕微鏡像、図11は該炭素層の電子線回折像、図12は該炭素層を構成する炭素粒子の炭素K殻吸収端における電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトルの測定結果である。
図10から、該炭素層断面は全面が埋め尽くされており、何もない隙間はないことが分かる。
また図11の電子線回折像は、ランダム配向の多結晶ダイヤモンドのリングパターンに近い。しかし、特にダイヤモンド(111)面に対応するリング中には、1つのリングに乗らない回折スポットが多数含まれ、これらは面間隔にしてダイヤモンド(111)面より2〜6%広い面による回折に対応する。この点において、該炭素層は通常のダイヤモンドと著しく異なる。さらに、該炭素層中には粒径5nm程度の結晶粒子が存在する。また,1個の粒子が1個または複数の結晶子から構成されているのが観察された。
図12のEELSスペクトルから、C-C sp2結合の存在を示すπ-π*遷移に対応するピークが殆ど無く、sp3結合成分の存在を示すσ-σ*遷移に対応するピークが支配的であることがわかる。すなわち該炭素層は、sp3結合した炭素原子から成る、結晶性の炭素粒子から構成されていることがわかる。
ここで結晶子(crystallite)とは,単結晶とみなせる微結晶のことであり、一般に1個の粒子(grain)は1個または複数個の結晶子から構成されている。HRTEM観察結果から、該炭素層の炭素粒子(結晶子)の大きさ(平均粒径)は、基板との界面、膜中および最表面について変わりなく、2〜40nmの範囲にあった。
ここで、粒子が隙間なく詰まって炭素層が構成されていると見なせる場合、平均粒径を求めるためには、以下の手順に従って求めた。
すなわち平均粒径は、炭素層断面の透過型電子顕微鏡写真において、少なくとも100個以上の異なる粒子(結晶子)について粒径の平均をとって決定した。図10において、白い閉曲線で囲んだ部分が1つの粒子であるが、その閉曲線で囲まれた面積を求め、この値をSとすると、粒径Dは
によって決定した。ここでπは円周率を表す。
また、粒子の面密度dsは、その粒子の平均粒径から
ds=単位面積/(π×(平均粒径/2)2
によって決定した。
このようにして、本発明の積層体の炭素層の面密度を求めると、界面、膜中および最表面について変わりなく、8×1010/cmから4×1012/cmの範囲にあることが分かった。
また本発明の積層体の断面をイオンミリングにより薄片化し、さらに高分解能の透過型電子顕微鏡および電子エネルギー損失分光(EELS)を用いて、膜の構造と元素分布の観察を行った。
まず膜内のいろいろな場所において、およそΦ100nmの領域でEELSスペクトルを観察したところ、すべての測定箇所でSiが観測された。また測定箇所によりSiの量に差があることが分かった。
さらに微小領域での元素分布を調べるため、詳細なEELS測定を行い、スペクトルの詳細な解析を行った。EELSスペクトルにおいて120eV近傍のSi(シリコン)によるピーク、300eV 近傍のC(カーボン)に、530eV 近傍のO(酸素)による信号が顕著であり、これらに特に着目した。図13は測定した試料の高分解能透過型電子顕微鏡写真を模式的に現したものである。測定点1は1個の炭素粒子の中、測定点2は炭素粒子の表面部分、測定点3は膜中にわずかに見られる炭素粒子ではない部分である。
EELSスペクトルのピークの形状から、測定点1はSiOではないSiとC、測定点2は、SiOとC、測定点3はSiOとCである。したがって本発明の積層体の炭素層では、SiOが炭素層を形成する炭素粒子の表面に存在し、好ましくは炭素粒子を囲むように形成されていることがわかる。また、図11の回折像では、結晶性のSiOの存在を示す回折リングは観測されなかった。したがって、これらSiOは炭素層中で非晶質として存在することが分かった。本発明の積層体の炭素層では、非晶質SiOが膜を形成する炭素粒子の表面に存在し、好ましくは炭素粒子を囲むように形成されている。このような特徴的な炭素層の構成は、本手法による積層体の炭素層で初めて実現されたものであり、従来のダイヤモンドやダイヤモンドライクカーボン膜などでは見られなかったものである。
この非晶質SiOは炭素粒子の粒界及び又は炭素粒子間の空隙に炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイト等の不純物の生成を抑制し、及び又は炭素粒子の成長を抑制するための物質として、非常に重要な働きをなすものである。
また本発明の積層体の炭素層の最下層(基材直上)の10〜20nm程度の領域では非晶質物質の中に結晶状の物質が点在することが確認された。EELSスペクトルのピークの形状から図13における炭素層の最下層(測定点4、測定点5)の10〜20nm程度の領域を形成する物質はSiOとCであることがわかった。また回折像の解析から、SiOは非晶質、Cは結晶質のダイヤモンドであることが分かった。したがって、炭素層の最下層の10〜20nm程度の領域は、基板表面を超音波処理によりナノクリスタルダイヤモンド粒子を施し、さらにCVD処理を施すことにより、基材表面に食い込んだか、または付着したナノクリスタルダイヤモンド粒子と、それら粒子の間隙を満たすように存在する非晶質SiOが形成されることが明らかとなった。この炭素層の最下層に存在する非晶質SiOはナノクリスタルダイヤモンド粒子の粒界、炭素粒子の粒界及び又は炭素粒子間の空隙に炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイト等の不純物の生成を抑制し、及び又は炭素粒子の成長を抑制するための物質として、非常に重要な働きをなすものである。
上記非晶質SiOは、炭素層の最下層の10〜20nm程度の領域でたいへん多く存在し、およそ50at%以上であった。またこの非晶質SiOの量は炭素層の基材側の下部層から上部層に向かって減少し、基材側の下部層から少なくとも80nm以上において炭素粒子が70at%以上であることが分かった。
このように本発明の積層体では、炭素層の最下層(基板直上)の10〜20nm程度の領域は、超音波処理によりナノダイヤモンド粒子を施すことによって基材表面に食い込んだか、または付着したナノクリスタルダイヤモンド粒子と、それら粒子の間隙を満たすように存在する非晶質SiOにより形成されていることがわかった。
本発明の積層体のこの構造において、基材表面に食い込んだナノクリスタルダイヤモンド粒子は炭素層の基材または密着強化層への密着を強化するアンカーとして機能し、また基材表面または密着強化層表面に付着するナノクリスタルダイヤモンド粒子は炭素層の成長寄与用炭素粒子として機能する。このように本発明の積層体において、これらナノクリスタルダイヤモンド粒子は、炭素膜の成長を促進し、さらに密着力を向上する大きな効果を発揮している。
さらに付着したナノクリスタルダイヤモンド粒子と、それら粒子の間隙を満たすように存在する非晶質SiOは、ナノクリスタルダイヤモンド粒子の粒界、炭素粒子の粒界及び又は炭素粒子間の空隙に炭素粒子の生成に伴って生じるアモルファスカーボンやグラファイト等の不純物の生成を抑制し、及び又は炭素粒子の成長を抑制するための物質として機能する。またさらにそれら非晶質SiOは、基板と炭素層との密着力を高めるための補助的な機能も担っている。特に、本発明の手法を用いることによって、本来炭素層の密着力の高い堆積には密着強化層が有効であるような鉄や銅などの基材に対しても、密着強化層を設けずとも、ある程度の密着力で炭素層の堆積が可能である。これは、上記非晶質SiOが、基板に食い込むナノクリスタル粒子のアンカー効果を補助し、基材への炭素層の密着力をより高める機能を担うことによる。
上記のような効果をもつ非晶質SiOが、炭素層中でどのような分布をもつか調べるため、炭素層中および基材との界面付近でのシリコンおよび酸素の濃度を二次イオン質量分析(SIMS)により測定した。図14はSIMSにより測定した、本発明の積層体の炭素層に含まれるシリコン(Si)、および酸素(O)の膜の深さ方向分布である。この積層体で基材はSiである。また炭素層の厚さはおよそ0.7μmであった。図14から炭素層中ではシリコンも酸素もほぼ一定の濃度を持つ事がわかった。炭素層の膜厚の中心部付近(0.37μm)におけるシリコンと酸素の濃度はそれぞれ6.17×1021/cm、1.00×1022/cmであった。したがってシリコンと酸素の濃度の比は1.23:2である。これは、上述の高分解能透過型電子顕微鏡および電子エネルギー損失分光(EELS)による膜の構造と元素分布観察で明らかとなったように、本発明の積層体の炭素層では、SiOが炭素層を形成する炭素粒子の表面に存在し、炭素粒子を囲むように形成されているだけでなく、さらに炭素粒子中にはSiが多少混入しているため、SiOのシリコンと酸素の原子数の比1:2よりシリコンが多い方向にずれているためである。また膜の密度はおよそ1.76×1023/cmであるので、この炭素層中のSiOの平均濃度はおよそ3.5%である。
一方本発明の積層体の炭素層のシリコン基材側の最下層付近(積層体表面からの深さが0.7μm付近)では、酸素の分布がピークとなっている。そしてさらに深い部分で酸素の濃度は非常に小さくなり、その部分はシリコン基材中であることがわかる。上述のEELS測定から明らかなように、酸素はSiOとして炭素層中に存在する。したがってこのSIMS測定から、本発明の積層体において、炭素層のシリコン基材側の最下層付近では、SiOの濃度(単位体積あたりの量)が炭素層の中央部よりもかなり大きいことが分かった。酸素の分布のピークの値、3.78×1022/cmから見積もると、炭素層の最下層でのSiO含有率はおよそ21%である。上述の高分解能透過型電子顕微鏡および電子エネルギー損失分光(EELS)による膜の構造と元素分布観察では、炭素層の最下層で非晶質SiOは多く存在し、炭素層の基材側の下部層から上部層に向かって減少する分布を持っていることが明らかとなったが、このSIMS測定でもこのような特徴的な分布が確認された。
本発明の積層体の炭素層をX線回折により観察した。以下、測定の詳細を記す。使用したX線回折装置は株式会社リガク製X線回折測定装置RINT2100 XRD-DSCIIであり、ゴニオメーターは理学社製UltimaIII水平ゴニオメーターである。このゴニオメーターに薄膜標準用多目的試料台を取り付けてある。測定した試料は上記の手法で厚さ1mmのホウ珪酸ガラス基板上に作製した膜厚500nmの炭素層である。ガラス基板ごと30mm角に切り出したものを測定した。X線は銅(Cu)のKα1線を用いた。X線管の印加電圧・電流は40kV・40mAであった。X線の検出器にはシンチレーションカウンターを用いた。まず、シリコンの標準試料を用いて、散乱角(2θ角)の校正を行った。2θ角のズレは+0.02°以下であった。次に測定用試料を試料台に固定し、2θ角を0°、すなわち検出器にX線が直接入射する条件で、X線入射方向と試料表面とが平行となり、かつ、入射するX線の半分が試料によって遮られるように調整した。この状態からゴニオメーターを回転させ、試料表面に対して0.5度の角度でX線を照射した。この入射角を固定して、2θ角を10度から90度まで0.02度きざみで回転し、それぞれの2θ角で試料から散乱するX線の強度を測定した。測定に用いたコンピュータープログラムは、株式会社リガク製RINT2000/PCソフトウェア Windows(登録商標)版である。
測定したX線回折のスペクトルを図15に示す。図中の白丸が測定点である。2θが43.9°に明瞭なピークがあることがわかる。ここで興味深いのは、図15からわかるように、43.9°のピークはその低角度側、2θが41〜42°に肩を持っている。(スペクトルの「肩」については「化学大辞典」(東京化学同人)を参照するとよい。)したがってこのピークは、43.9°付近を中心とするピーク(第1ピーク)と、41〜42°あたりに分布するもうひとつのピーク(第2ピーク)の、2成分のピークにより構成されている。CuKα1線によるX線回折で、2θが43.9°にピークをもつ炭素系物質としてはダイヤモンドが知られている。ここで図16は、同様の方法によりダイヤモンドをX線回折測定したスペクトルであり、ピークはダイヤモンドの(111)反射によるものである。本発明の積層体の炭素層とダイヤモンドのX線回折スペクトルの違いは明瞭で、本発明の炭素層のスペクトルに見られる41〜42°あたりに分布する第2ピークは、ダイヤモンドには見ることができない。このようにダイヤモンドの(111)反射は43.9°を中心とする1成分(第1ピークのみ)で構成され、本発明の積層体の炭素層の様な低角度側の肩は観測されない。したがって本発明の積層体の炭素層のスペクトルに見られる41〜42°あたりに分布する第2ピークは、本発明の積層体の炭素層に特徴的なピークである。
また、図15の本発明の積層体の炭素層のX線回折スペクトルのピークは、図16のダイヤモンドのピークと比較して、たいへん幅が広いことがわかる。一般に膜を構成する粒子の大きさが小さくなるとX線回折ピークの幅が広くなり、本発明の積層体の炭素層を構成する粒子の大きさが非常に小さいといえる。本発明の積層体の炭素層を構成する炭素粒子の大きさ(平均の直径)を、X線回折で通常用いられるシェラー(Scherrer)の式によりピークの幅から見積もってみると、およそ15nmであった。シェラーの式については、例えば「日本学術振興会・薄膜第131委員会編 薄膜ハンドブック,オーム社1983年,p. 375」を参照するとよい。
次にこのピークの構成の詳細(それぞれのピークの成分の位置や強度など)を見ることにする。
本発明の積層体の炭素層のX線回折測定における2θが43.9°のピークの詳細な構成を知るために、2θ角が39度から48度の間で、ピークフィッティングを用いて解析した。第1ピークのフィッティングには、ピアソンVII関数と呼ばれる関数を用いた。この関数は、X線回折や中性子回折などの回折法のピークのプロファイルを表すものとして、最も一般的に用いられているものである。このピアソンVII関数については、「粉末X線解析の実際−リートベルト法入門」(日本分析化学会X線分析研究懇談会編、朝倉書店)を参照するとよい。また第2ピークのフィッティングには、いろいろな関数を検討した結果、非対称の関数を用いるとよいことが判明した。ここでは非対称正規分布関数(ガウス分布関数)を用いた。この関数はピーク位置の右側と左側で別々の分散(標準偏差)値を持つ正規分布関数であり、非対称ピークのフィッティングに用いる関数としては最も簡単な関数のひとつであるが、非常によくピークフィッティングができた。また、ベースライン(バックグラウンド)関数としては直線関数(一次関数)を用いた。
実際のフィッティング作業はいろいろなコンピュータープログラムが利用できるが、ここではORIGINバージョン6日本語版ピークフィッティングモジュール(以下、ORIGIN −PFM)を用いた。ORIGIN−PFMで、ピアソンVII関数は”Pearson7”、非対称正規分布関数は”BiGauss”、直線関数は”Line”と表されている。フィッティングの完了条件は、フィッティングの信頼度を表す相関係数(ORIGIN−PFMで”COR”あるいは”Corr Coef”)が0.99以上となることとした。
このピークフィッティングを用いた解析により、図15に示すようにこの測定スペクトルはピアソンVII関数による第1ピーク(図中フィッティング曲線A)、非対称正規分布関数による第2ピーク(図中フィッティング曲線B)、および一次関数によるベースライン(バックグラウンド)の和(図中フィッティング合計曲線)で大変よく近似できることがわかった。この測定でフィッティング曲線Aの中心は2θが43.9°にあり、これに対してフィッティング曲線Bは41.7°で最大となる。それぞれのフィッティング曲線とベースラインで囲まれた面積がそれぞれのピークの強度である。これにより第1ピークの強度に対する第2ピークの強度を解析した。この試料の場合、第2ピーク(フィッティング曲線B)の強度は第1ピーク(フィッティング曲線A)の強度の45.8%であった。
本発明の積層体の炭素層の多くの試料についてX線回折測定を行ったところ、すべての試料で2θが43.9°を中心に図15に示すような幅の広いピークが観測された。しかも図13に示すような低角度側に肩をもつ形をしており、第1ピークと第2ピークにより構成されることがわかった。多数の試料で測定したX線回折スペクトルについて同様のピークフィッティングによる解析を行ったところ、上述の関数を用いて非常にうまくフィッティングできることがわかった。第1ピークの中心は2θが43.9±0.3°であった。また第2ピークは2θが41.7±0.5°で最大となることがわかった。第1ピークに対する強度比は最小が5%で、最大が90%であった。この強度比は合成温度依存性が大きく、温度が低いほど大きくなる傾向があった。一方ピークの位置については合成温度によらずほぼ一定であった。
このX線回折測定の解析手法の注意すべき点は、X線の強度が小さいと測定データのばらつきが大きくなり、信頼できるフィッティングが不可能となることである。そのため、ピークの最大強度が5000カウント以上のものについて、上述のフィッティングによる解析を行う必要がある。
このように本発明の積層体の炭素層には、CuKα1線によるX線回折測定において、2θが43.9°を中心に幅の広いピークを持ち、しかもそのピークは低角度側に肩のある構造をもつことが明らかとなった。ピークフィッティングを用いた解析により、このピークは2θが43.9°に中心をもつピアソンVII関数による第1ピークと41.7°で最大となる非対称正規分布関数による第2ピーク、および一次関数によるベースライン(バックグラウンド)の重畳で大変よく近似できることがわかった。
同様のピークフィッティングによる解析を図16に示したダイヤモンドのスペクトルについて行った。上述の本発明の積層体の炭素層とはまったく異なり、ダイヤモンドの場合は2θが43.9°に中心をもつピアソンVII関数だけで大変よく近似できることがわかった。したがって本発明の積層体の炭素層はダイヤモンドとは異なる構造をもつ物質であることがわかった。
本発明の積層体の炭素層は上述の第2ピークが観測されることが特徴であり、ダイヤモンドとは異なる構造をもつ炭素層である。本発明の積層体の炭素層の製造工程、およびその他の測定結果を吟味し、その構造を検討した。本発明において用いている炭素層の合成法を、ダイヤモンドのCVD合成法と比較した場合、以下のような大きな特徴がある。まず、通常のダイヤモンド合成が少なくとも700℃以上の温度で行われているのに対して、本発明の積層体の炭素層は非常に低温で合成を行っている。また従来ダイヤモンド膜の粒径を小さくする場合、原料ガスに含まれる炭素源濃度(メタンガスのモル比)が10モル%程度の高い濃度により高速成長する方法が用いられてきたが、本発明では炭素源濃度が1モル%程度とかなり低い。すなわち、本手法では低温において非常にゆっくりと時間をかけ、炭素粒子を析出し、膜を形成している。したがって、炭素粒子はダイヤモンドになるかならないかのぎりぎりの状況で析出する。このため通常の立方晶のダイヤモンドより安定な炭素による結晶である六方晶ダイヤモンドの析出や、さらに安定なグラファイトの析出を促すような力が働き、結晶の析出状況としては非常に不安定である。さらにいったん析出したグラファイトおよび非晶質炭素物質も、原料ガスに含まれる大量の水素プラズマにより、エッチングにより除去される。このような析出機構により、立方晶ダイヤモンドと六方晶ダイヤモンドが入り混じり、かつエッチングによって除去された部分が非常に高濃度の欠陥として残留した構造となっている。この欠陥は原子空孔のような点欠陥であったり、転位のような線状の欠陥であったり、また積層欠陥のような面単位の欠陥も大量に含まれている。このため43.9°のX線回折ピークが低角度側に肩をもつ構造となるのである。
しかしながら、以上のようなX線回折ピークの特徴が、本発明の積層体の炭素層の高い機能に結びついている。すなわち、低炭素源濃度での低速合成のため、グラファイトおよびグラファイト様物質などの比較的高度の低い物質のエッチングが促進される。このため、高濃度の欠陥を含む構造となるが、その一方で炭素膜の高い硬度を実現しており、本発明の積層体の高い研磨、研削特性の発現のため、非常に重要な特徴となっている。
また、低温で合成しているため立方晶ダイヤモンドと六方晶ダイヤモンドが入り混じり、かつ高濃度の欠陥を含んでいるが、そのような低温合成のおかげで、鉄および鉄系合金、アルミニウム、銅、さらにはプラスチックなどの基材への積層も可能である。CVD処理の合成温度が高いと、基材と炭素層の熱膨張の差により、CVD処理後に室温に戻した際に、炭素層に比べて基材の収縮が大きく、炭素膜中の大きな残留応力による炭素層の基材からの剥離が生じる。本発明の手法では、低温での合成のため、この残留応力が小さいため、炭素膜の基材への密着力が大きくなっている。さらに本発明の積層体の炭素層では、炭素粒子の微小な粒径が揃っており、熱による歪が非常に小さい。すなわち立方晶ダイヤモンドと六方晶ダイヤモンドが入り混じり、かつ非常に高濃度の欠陥を含んだ構造により、熱歪が緩和され、基材への高い密着力が実現された。以上のような特徴により、本発明の積層体の、高い研磨、研削特性が得られている。
本発明の積層体の炭素層表面の原子間顕微鏡(AFM)による観察を行い、表面粗さの評価を行った。この場合、基板の表面荒さが膜の表面粗さに及ぼす影響を可能な限り低く抑えるため、鏡面研磨した表面粗さの小さい(算術平均高さRa=0.9〜1.2nm)石英ディスク基板(直径10mm×厚さ3mm)に炭素層を形成し、測定用試料とした。使用したAFM装置は、米国Digital Instruments社製Nanoscope走査型プローブ顕微鏡であり、カンチレバーはVeeco Instruments社製走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー単結晶シリコン製ローテーションプローブ Tap300を使用した。測定にはタッピングモードを用い、スキャンサイズ1μm×1μm、スキャンレート1.0Hzで観察を行った。
図17には、本発明の積層体の炭素層表面の原子間力顕微鏡(AFM)による観察結果を示す。観察結果の画像処理および表面粗さの評価には、AFM装置標準の測定および解析コンピュータソフトウェアNanoscope IIIa ver. 4.43r8を用いた。その観察結果の解析より、炭素層の表面粗さは、Raで3.1 nmであった。他に多数の試料についても評価を行い、炭素層の堆積条件によって表面粗さは異なるが、Raで2.6〜20nmの範囲にあることを確認した。その炭素層を堆積する前の石英ディスク基板の表面粗さの評価についても、同様に測定を行い、Raで0.9〜1.2nmの範囲にあることが分かった。
算術平均高さRaについては、例えば「JIS B 0601-2001」または「ISO4287-1997」に詳述されている。
後述する、本発明の積層体を用いたSiC単結晶の研磨では、積層体の表面粗さと研磨速度および仕上げ面粗さとが密接に関連することが明らかとなった。すなわち、積層体の表面粗さが小さくなると被研磨物の仕上げ面粗さは小さくなり、きわめて平坦な仕上げ面を得ることができるが、その一方で、研磨速度が小さくなる。また逆に、積層体の表面粗さが大きくなると研磨速度は大きくなるが、被研磨物の仕上げ面粗さが大きくなり、平坦な表面が得られなくなる。これは積層体の表面粗さが研磨抵抗、すなわち摩擦係数に依存するためと考えられる。そこで、ガラスを基材とする本発明の積層体の表面粗さRaと摩擦係数の関係を測定した。
図18に測定結果を示す。図中の直線は、これら測定点の近似直線であり、図中の数式は表面粗さ(x)と摩擦係数(y)との関係を表す近似式である。摩擦係数の測定には、新東科学株式会社製 荷重変動型摩擦摩耗試験機(HSS2000)を用いて、以下の条件で測定し、解析ソフト(TriboWare Rev. 1.8)を用いて解析した。
測定条件:往復動試験
荷重 2.0N
相手材 直径4.7mmのSUS440Cボール
油潤滑 室温、基油中
移動速度 20nm/s
得られた表面粗さと摩擦係数との関係、および研磨試験の結果とを考察した結果、摩擦係数が0.05より小さい場合、研磨速度が非常に小さくなりほとんど実用の精密研磨とならないこと、また、摩擦係数が0.10より大きい場合は表面粗さRaが0.5nm以下となるような精密研磨ができないことが明らかとなった。
したがって、実用の精密研磨が可能となる積層体の表面粗さRaは、図18より、摩擦係数が0.05以上0.10以下となる4nm〜11nmの範囲である。
上記のように、積層体の表面粗さが研磨特性に大きく影響するので、積層体の表面粗さの調整方法が必要である。特に、積層体表面のRaが11nmより大きい場合、表面粗さを小さくすることにより、実用の精密研磨が可能であるRaが4nm〜11nmの範囲に調整可能であることが望まれる。
本発明では、CVD処理による積層体形成後、同様にして形成した他の積層体を用いて研磨することにより表面粗さを低減させることを見出した。このとき純水またはエタノールを両積層体表面に滴下し、これを潤滑材として用いて積層体同士を往復運動、回転運動または変心回転運動により擦り合わせて研磨を行った。
本発明ではさらに鋭意努力の結果、CVD処理による積層体形成後、同装置を用いて、水素ガス100モル%、ガス圧力は1〜100Pa、好ましくは1〜50Paで水素プラズマを発生し、そのプラズマに積層体表面を30秒〜5分間、好ましくは1分〜3分間にわたって暴露することにより、積層体の表面粗さを低減する手法を見出した。
上記の研磨および水素プラズマによる表面粗さ低減の効果を見るために、シリコン単結晶ウェハを基材とする積層体について、それぞれの処理の前後での表面粗さの評価を行った。表面粗さの評価には、株式会社小坂研究所製表面形状測定機 SURFCORDER ET−4300および表面微細形状解析ソフトウェアiSTAR31 Version 6.72を用いた。測定および解析は、カットオフ値0.8mm、基準長4.0mm、評価長4.0mmで行った。その結果を図21、図22、図23および図24に示す。
図21はCVD処理直後の積層体の表面形状を表す曲線であり、これから表面粗さRaは12.3 nmと評価された。この積層体表面を他の同様の積層体と約1分間、直線状に100往復およびそれと直角の方向にさらに100往復、振幅約10mmで擦り合わせた結果の表面形状が図22である。このとき潤滑材として純水を用いた。図22から求めた表面粗さRaは8.2nmであり、明らかに表面粗さが低減されていることがわかった。
図23もまたCVD処理直後の積層体表面形状を示し、この場合の表面粗さRaは10.3nmであった。図24は図23の積層体と同条件のCVD処理によって作製された積層体に、CVD処理に続けて約3分間水素プラズマに暴露させたときの表面形状である。水素プラズマ処理は水素ガス100モル%、ガス圧20Paで行った。図24より評価される表面粗さRaの値は5.0nmであり、この場合も明らかに表面粗さが低減されていることがわかった。
上記研磨および水素プラズマ処理、いずれの場合についても、表面粗さRaが11nmを超える、精密研磨に適さない積層体に対して適用することにより、精密研磨に十分使用することができる表面粗さである、Raが4〜11nmにまで表面粗さを低減できることがわかった。
本発明の積層体を用いて、単結晶炭化珪素、SiC、表面の研磨試験をおこなった。積層体の基材には直径100mm、厚さ0.5mmの円盤状の単結晶シリコンを用いた。この単結晶シリコン基材は鏡面研磨されており、CVD処理による積層体形成前に、原子間力顕微鏡で測定(観察視野1μm角)した表面粗さRaは1nm以下であった。この表面に超音波処理によりナノクリスタルダイヤモンド粒子を設け、さらに既述のCVD処理を行うことにより、およそ1μmの厚さの炭素層を堆積して積層体を形成した。さらにこのCVD処理による積層体形成後、同装置を用いて、水素ガス100モル%、ガス圧力は20Paで水素プラズマを発生し、そのプラズマに積層体表面を3分間にわたって暴露した。これにより原子間力顕微鏡で測定した積層体表面粗さ表面粗さRaが5.0nmの積層体表面を形成し、これを研磨板として用いた。
研磨試験に使用した試料は、CREE社(株)製4H-SiC(0001)単結晶のオンアクシス(on-axis)Si面である。この表面の、(0001)面からのズレの角度、ミスオリエンテーション角は0.2度以下である。また研磨前の表面は、メーカーによる化学機械研磨が施されており、観察視野1μm角の原子間力顕微鏡観察で表面粗さRaは0.2nmであった。このSiC単結晶を10mm角に切り出し、研磨試料とした。
このシリコンを基材とする積層体の研磨盤を定盤に固定し、15℃の冷水をかけることで冷却し、さらに研磨助剤としてエタノールを滴下した。この研磨盤表面にSiC単結晶研磨試料を指で押さえつけ、ゆっくりと20mm程度の往復直線運動による擦り合わせを10回行い、研磨を行った。指で押さえつけた際SiC単結晶研磨試料に加えた荷重はおよそ20gである。
図19は上記研磨後のSiC研磨試料表面の、原子間力顕微鏡観察結果である。観察視野は1μm角である。研磨後の表面粗さRaは0.102nmであり、研磨前と比較して、表面平坦性を向上することができた。また図のように、原子間力顕微鏡像には明瞭な縞状のコントラストが観察された。図20は、図19の矢印-矢印間の凹凸を表すものである。このように図20の縞状コントラストに対応した山と谷が構成されていることがわかる。この山と谷の平均振幅は0.278nmであり、4H-SiC単結晶の(0001)面の原子層間隔0.251nmとよく一致する。したがって、図19の縞状コントラストは、4H-SiC(0001)単結晶表面の原子層ステップに対応する縞状コントラストであることが明らかとなった。
以上のような、本発明の積層体を用いた研磨盤によるSiC単結晶表面の原子層ステップが観察されるほどの平坦性は、従来の固定砥粒方式の研磨盤ではまったく実現できなかったものであり、本発明の積層体を用いた研磨盤の顕著な性能を示すものである。
また単結晶シリコンを基材とし、表面粗さRaを6.0nm、および7.0nmに調整した積層体表面を形成し、これを研磨板として単結晶炭化珪素、SiC、表面の研磨試験をおこなった。その結果、表面粗さRaが6.0nmの研磨盤を用いた場合、上記と同様に研磨後のSiC表面の原子間力顕微鏡像には原子層ステップに対応する明瞭な縞状のコントラストが観察された。一方、表面粗さRaが7.0nmの研磨盤を用いた場合、研磨後のSiC表面の原子間力顕微鏡像には原子層ステップに対応する縞状のコントラストは観察できなかった。したがって、4H-SiC(0001)単結晶表面を原子間力顕微鏡により原子層ステップが観察されるほど極めて平坦に研磨するためには、本発明の積層体による研磨盤の表面粗さRaは6nm以下である必要があることがわかった。また表面粗さRaが4nmより小さい場合は、記述のように、研磨速度が非常に小さくなりほとんど実用の精密研磨とならない。したがって、4H-SiC(0001)単結晶表面を原子間力顕微鏡により原子層ステップが観察されるほど極めて平坦に研磨するための実用的な研磨盤の表面粗さRaは、4nm〜6nmである。
以上の実験から、本発明の積層体において、炭素層の最下層の10〜20nm程度の領域で非晶質SiOの占める割合がおよそ50at%以上であり、またこの非晶質SiOの量は炭素層の基材側の下部層から上部層に向かって減少し、基材側の下部層から少なくとも80nm以上において炭素粒子が70at%以上であり、表面粗さRaが4nm〜6nmという特徴的な構成により、炭化珪素部材の研磨材として優れた機能を発揮する積層体を形成することができることが明らかとなった。
以上のような、本発明の積層体の有する優れた研削および研磨機能は、基板または密着強化層を設けた基板と炭素層とからなる積層体についての鋭意研究の結果、図1〜4に示す積層体の構成を見出すに至り、高い硬度、および表面平坦性と同時に、以下に詳述するような基材への高い密着性を有する炭素層の形成が可能となった効果である。
炭化珪素、SiC、を材料として用いた半導体素子、電力用素子などの製造分野で利用される。
本発明の積層体の積層構造を示す図。 本発明の積層体の積層構造を示す図。 本発明の積層体の積層構造を示す図。 本発明の積層体の積層構造を示す図。 動的光散乱法を用いて測定したナノクリスタルダイヤモンド分散液中のナノクリスタルダイヤモンド粒子の粒径分布を示す図。 原子間力顕微鏡を用いて観察した、ナノクリスタルダイヤモンド分散液による超音波処理を施したホウ珪酸ガラス基材の表面。 本発明の積層体の製造装置の構成を示す図。 ラングミュアプローブを用いたプラズマ特性測定で得た、プラズマ中の電子温度(電子の運動エネルギー)のマイクロ波導入用石英窓の下面(CVD反応炉側)からの距離依存性を示す図。 プラズマ密度のマイクロ波導入用石英窓の下面(CVD反応炉側)からの距離依存性を示す図。 高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)で観察した本発明の積層体の炭素層の断面。 本発明の積層体の炭素層の電子線回折像。 電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトル(C-K殻吸収端)図。 本発明のシリコン基板と炭素層による積層体の、シリコン基板直上の炭素層断面の高分解能透過型電子顕微鏡観察による模式図。 二次イオン質量分析法により測定した、本発明のシリコン基材と炭素層との積層体の炭素層に含まれるシリコン(Si)、および酸素(O)の膜の深さ方向分布を示す図。 本発明の積層体の炭素層のCuKα1X線によるX線回折スペクトルの一例、およびピークフィッティング結果を示す図。 ダイヤモンドにおけるCuKα1X線による典型的なX線回折スペクトル((111)反射ピーク)、およびピークフィッティング結果を示す図。 原子間力顕微鏡(AFM)で観察した、本発明の石英基材(平均表面粗さRa=0.87nm)と炭素層(厚さ1.6μm)との積層体の、炭素層表面。 本発明の積層体の表面粗さRaと摩擦係数μとの関係を表す図。 原子間力顕微鏡で観察した、本発明の積層体で研磨した4H-SiC(0001)単結晶Si面。 図19に示す、本発明の積層体で研磨した4H-SiC(0001)単結晶Si面の原子間力顕微鏡像の矢印-矢印間の凹凸。 表面形状測定機を用いて測定した本発明の積層体の表面形状と表面粗さRa。 本発明の積層体同士によって表面を研磨した積層体の表面形状とRa。 本発明の積層体の、CVD処理直後の表面形状とRa。 CVD処理後、水素プラズマに曝した本発明の積層体の表面形状とRa。
符号の説明
101 プラズマ発生室
102 スロット付き角型導波管
103 マイクロ波導入するための石英部材
104 石英部材を支持する金属製支持部材
105 被成膜基材
106 被成膜基材を設置するための試料台
107 冷却水の給排水
108 排気
109 プラズマ発生用ガス導入手段
110 反応炉

Claims (3)

  1. 基材と、該基材上に設けられた炭素層とを備えた積層体からなる炭化珪素部材の研磨材であって、前記炭素層は、前記基材に設けられ衝撃を与えられて粉砕されたダイヤモンド微粒子と、炭素粒子の成長を阻害する不純物の生成を抑制し及び又は炭素粒子の成長を抑制する生成・成長抑制材と、炭素粒子とから構成され、該生成・成長抑制材の量は、前記基材側の下部層から上部層に向かって減少してなり、かつ炭素層の表面粗さは、4nm〜6nm、であることを特徴とする炭化珪素部材の研磨材。
  2. 前記基材は、シリコン、石英、ガラス、ステンレス、アルミニウムであることを特徴とする炭化珪素部材の研磨材。
  3. 基材を用意する工程と、ダイヤモンド微粒子を粉砕して前記基材上に該ダイヤモンド微粒子を設ける工程と、内部にSiO2材又はAl2O3材の供給源及び前記工程で得られた基材を設置したマイクロ波プラズマCVD反応炉内に反応ガスを導入し、該反応炉内に表面波プラズマを発生させて、該基材上にSiO2材又はAl2O3材と炭素粒子からなる膜を該SiO2材又はAl2O3材の量が前記基材側の下部層から上部層に向かって減少させる工程と、前記堆積した膜の表面に水素プラズマを暴露して前記炭素膜の表面粗さを4nm〜6nmに調整する工程と、を備える炭化珪素部材の研磨材の形成方法。
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