図1は、本発明に係る超音波流量計の一構成例を示す図である。本構成例における超音波流量計(超音波流量計測装置)は、ガス等の被測定流体が流れる流路30と、流路30を挟んで対向する位置に配置された一対の超音波トランスジューサ10,20と、流量算出手段(流量算出部13)とを備える。
超音波トランスジューサ10は、複数の圧電素子(圧電素子群12)及び音響整合層11を有する。超音波トランスジューサ20も同様に、複数の圧電素子(圧電素子群22)及び音響整合層21を有する。これらの構成要素は、圧電素子が貼り付けなどにより複数積層され、その一方の面に音響整合層11が貼り付けなどにより積層されることで、超音波トランスジューサ10,20に設けられる。更に、各超音波トランスジューサ10,20には、それぞれ、圧電素子群12,22に電圧を印加する駆動回路(図示せず)が具備されており、この駆動回路の駆動周波数及び駆動電圧に応じて圧電素子群12,22の圧電体が駆動され、音響整合層11の放射面Sから超音波が放射されることとなる。音響整合層11は、被測定流体と圧電体との音響インピーダンスの差をマッチングさせ、被測定流体から反射する超音波を最小限に抑える。勿論、圧電素子群12,22の音響整合層11と反対側に、後方(音響整合層11とは反対側)へ向かう超音波を吸収して余分な振動を抑えるバッキング材を設けてもよい。
超音波流量計において、一対の超音波トランスジューサ10,20は、流路30の上流側及び下流側に、流れを横切るように互いに対向して配設されている。図1の例では、流れ方向に対して斜めに角度θだけ傾けた状態で、超音波トランスジューサ10,20を設置している。また、超音波トランスジューサ10,20は、双方の音響整合層11の放射面Sを水平にして配設されている。なお、図1において、超音波の伝播長Lは両者の放射面S間の距離を指す。
流量算出部13は、一対の超音波トランスジューサ10,20により被測定流体を媒質として送受信される超音波の伝播時間に基づいて、流路30を流れる被測定流体の流速、流量を算出する。流量算出部13による流速の算出、並びにその流速に基づく流量の算出については、既知の方法を採用すればよい。
そして、本発明の主たる特徴として、超音波トランスジューサ10,20は、複数の圧電素子(圧電素子群12)を「同時に動作(駆動)させ」、音響整合層11の放射面Sの変形形態を変化させる。このような駆動制御により、放射面Sから放射される超音波ビームの指向特性を微妙に変化させ、超音波ビームを放射面Sに水平な方向に一様に拡散させることを可能にする。
また、超音波流量計に超音波トランスジューサ10,20を上述のごとく設置しておくことで、上述の駆動制御により、放射面Sから放射される超音波ビームを、流路30の幅方向に一様に拡散させることができるようになる。このように、本発明に係る超音波流量計によれば、超音波ビームが常に流路幅方向の全域に渡って一様に拡散するように超音波ビームの指向特性を制御できるため、流路内部に新たに仕切部材等を介在させることや流路の窪み部に余計な部材を設置することも無く、流速分布が流量域で変化しても(すなわち流速分布の影響が有っても)、正確に被測定流体の流速を算出し流量を演算することが可能となる。
以下、本発明に係る超音波トランスジューサについて、各構成例を挙げて説明する。各構成例においては超音波トランスジューサ10についてのみ説明するが、超音波トランスジューサ20についても同様である。また、超音波トランスジューサ10,20における複数の圧電素子(電歪振動子)は、圧電体としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛:PbZr1-xTixO3)を有することが、コストや駆動制御のし易さの点から好ましい。従って、以下の各構成例においては、超音波トランスジューサ10,20に搭載する圧電素子として、PZTに電極(2枚の電極)が取り付けられたものを例に挙げて説明する。但し、圧電体としては、例えばチタン酸バリウム(通称「チタバリ」)等のPZT以外の圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:PolyVinylidine DiFluoride)に代表される高分子圧電材料など、他種のものを採用してもよい。なお、以下の各図において超音波トランスジューサ10を厚さ方向から見た図では、PZTは電極も含んだものとして示している。
<構成例1>
図2は、本発明に係る超音波トランスジューサの一構成例を示す概略図で、図2(A)はその厚さ方向から見た側面図、図2(B)は放射面とは逆方向から見た上面図、図2(C)はPZTの電極位置の一例を示す側面図、図2(D)はPZTの電極位置の他の例を示す側面図である。
また、図3は、図2の超音波トランスジューサで放射される超音波を模式的に説明するための図である。ここで、図3(A)はPZT2枚を同時に変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図、図3(B)は図3(A)のごとく放射される超音波のビームを説明するための模式図、図3(C)はPZT2枚のうち音響整合層側のPZTのみを変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図、図3(D)は図3(C)のごとく放射される超音波のビームを説明するための模式図である。なお、図3をはじめ以下の同様の様子を示す模式図は、音響整合層11や第1PZT121、第2PZT122等の変形を、分かり易く大きく表現したものである。
図2(A),(B)で例示する超音波トランスジューサ10は、音響整合層11に、圧電体として第1PZT121、第2PZT122の2つのPZTが順に貼り付けられて積層されている。第1PZT121,第2PZT122は、別の種類のPZTであると言え、それぞれ厚さがt1,t2、外径がD1,D2の円柱形状であるものとする。また、図2で図示するように、音響整合層11の外形も円柱形状であることが好ましい。そのとき、音響整合層11の直径はD1,D2より大きいものとする。なお、図2では、D1とD2がほぼ等しいものとしているが、構成例1においてはこれに限ったものではない。また、少なくとも放射面Sを円形とし、駆動対象のPZT(第1PZT121や第2PZT122)の両極(分極方向に垂直な両面)の最外形(後述の構成例のようにリング状であったとしてもその最外形)を円形にすることで、放射方向に偏りのない(異方性をもたない)超音波を発することができる。
この超音波トランスジューサ10は、上述のごとく第1PZT121と第2PZT122とを分極方向となる厚さ方向に貼り合わせて積層し、更に音響整合層11を第1PZT121側に貼り合わせて積層し、更に駆動回路等の制御系を備えてなる。圧電素子群12は、これら第1PZT121及び第2PZT122と、電極群(電気端子)によりなり、駆動回路は電極群を介して圧電体(第1PZT121及び第2PZT122)に電圧を印加する。
より具体的には、図2(C)で電極から導出される電極線12a〜12cを示したように、第1PZT121に電圧を印加するために、音響整合層11と第1PZT121との間(境界)に一方の電極(電極線12aに対応)を設け、更に第1PZT121と第2PZT122との間(境界)に他方の電極(電極線12bに対応)を設けている。第2PZT122に対しても電圧を印加するために、第1PZT121とは反対側の第2PZT122に一方の電極(電極線12cに対応)を設け、他方の電極は上記他方の電極(電極線12bに対応)と共有する。このように、圧電素子群12には合計3個の電極を設けておく。
なお、本構成例や以下に説明する構成例では、特に言及しない限り電極の設置範囲は圧電体の表面全体(当然厚さ方向は除く)とし、且つ均一電極とする。なお、実際には、製造歩留まりを向上させるため、電極の設置範囲を圧電体の面積より僅かに小さくするとよい。
そして、本構成例における駆動回路は、電極線12bの電極(第1PZT121と第2PZT122との境界の電極)を基準として、電極線12aの電極(音響整合層11と第1PZT121との境界の電極)に対して基本的に一定の周波数で一定の電圧を印加すると共に、電極線12cの電極(第2PZT122の第1PZT121とは反対側の電極)に対しても基本的に一定の周波数で一定の電圧を印加する。なお、前者の周波数及び電圧と後者の周波数及び電圧とは、基本的に同じ値を採用し、位相も同期させるものとする。
電極群の他の設置例として、図2(D)で電極から導出される電極線12d,12eを示したように、第1PZT121及び第2PZTに電圧を印加するために、音響整合層11と第1PZT121との間(境界)に一方の電極(電極線12dに対応)を設け、更に第1PZT121とは反対側の第2PZT122に他方の電極(電極線12eに対応)を設ける。このように、圧電素子群12には合計2つの電極を設けておく。このとき第1PZT121と第2PZT122との接する部分には電極を設けなくてよい。なお、電極線12d,12eに対応する電極は、それぞれ電極線12a,12cに対応する電極と同じものを指し、図2(D)の設置例は、図2(C)での設置例に対し電極線12b及びそれに対応する電極を取り除いたものとなる。
そして、この電極設置例に対する駆動回路は、電極線12dの電極(音響整合層11と第1PZT121との境界の電極)と、電極線12eの電極(第2PZT122の第1PZT121とは反対側の電極)との間に、基本的に一定の周波数で一定の電圧を印加する。
電極群を図2(C)、図2(D)で例示したいずれの場所に設置した場合にも、駆動回路により、第1PZT121及び第2PZT122が同時に駆動され、これらが横方向(分極方向に対して垂直方向)に変形し、この変形による応力が音響整合層11へと伝達され、機械的な曲げによる変位を引き起こす。第1PZT121及び第2PZT122を同時に駆動させる方が、1つのPZT(この例では第1PZT121)が単独で駆動させた時に比べて、圧電素子群12の変形量が大きくなるため、音響整合層11の変形の曲率もより大きく、すなわちより大きな変位を得ることができる。第1PZT121及び第2PZT122の質量や機械的剛性が異なっていた場合でも、図2(D)の電極配置ではそれらを強固に接合しておけばよく、図2(C)の電極配置ではこれらを同時に駆動させるときにそれぞれに印加する電圧を調整する(異ならせることを許容して調整する)ことで、同時に動作させることができる。
そして、音響整合層11の変位の大きさにより放射面Sから放射され送受信される超音波ビームの指向特性が決まるため、2つを同時に動作させる方が1つのPZT(この例では第1PZT121)を単独で動作させるよりも、放射面Sの変形形態を大きくできることから超音波ビームの指向性(指向特性)をより拡大させることができ、流路幅方向一様に超音波ビームを送受信させることができる。
より具体的には、PZT2枚を同時に変位させた場合、放射される超音波及びその進行方向が図3(A)に示すように、また放射される超音波ビームが図3(B)の実線で示すように、一様に拡散させることができる。これに対して、PZT2枚のうち音響整合層11側の第1PZT121のみ(第2PZT122がダミー素子となる)を変位させた場合、放射される超音波及びその進行方向が図3(C)に示すように、また放射される超音波ビームが図3(D)の実線で示すように、図3(A),(B)に比べて拡散し難くなる。なお、図3(B)においても比較のため破線にて図3(D)の超音波ビーム形状を示し、図3(D)においても比較のため一点鎖線により図3(B)の超音波ビーム形状を示している。また、図示しないが、元々PZTを1つのみ搭載して動作させた場合には図3(D)より更に細いビーム形状となる。
また、横方向振動として、分極方向と垂直方向に振動する効果の振動のみに限らず、厚み方向振動をするPZTを用いても良い。すなわち、縦(厚み)振動の分極方向の変位は、パーソン比によりこれとは垂直方向の横方向への変位を伴うため、この縦(厚み)振動による変形が、パーソン比により横方向に変形することで音響整合層11を変形させ、この変形による応力により、PZTを1つしか設けない場合や2つ設けても一方のみ単独で動作させた場合に比べ、放射面Sがより大きな曲率を持つことができる。従って、1つのPZTや2つのPZT中の一方のみ単独で動作させた時よりも2つ同時に動作させた方が、音響整合層11から放射され送受信される超音波ビームの指向性を拡散させ、流路幅方向一様に広がる音波ビームを送受信できる。
実際、流路を流れる流体は、流量により幅方向での流速分に差ができる。特に、流速が遅い範囲では、幅方向での流速分布は放物線形状であり、流速が早い時には、バスタブ形状となることが一般的に知られている。このように流速が遅い時には、すなわち層流域では、超音波ビームが横切るエリアにより、流速分布を正確に算出することができず、ましてや、流路幅一様に音波が拡散しない場合、正確な流速は算出できない。この状況は、超音波が伝播する媒質の温度により、超音波トランスジューサ10から送受信される指向性が変化するので、重要な課題であり、トランスジューサの取付け状態、固体差の影響も考慮せねばならない。
そこで、構成例1のごとく、流路幅方向で発生する流速分布を、幅方向全体をほぼ一様に伝播するエリアが得られるように超音波トランスジューサ10から放射される超音波ビームの指向性を制御することで、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異があろうとも、その分布全域を計測できるので、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。すなわち、2種類のPZTによる振動変位が合成されることで、より多くの変形が音響整合層11へと及ぶため、音響整合層11の変形状態が変化するので、放射面Sがより曲率し、媒質中への音波の指向性が広がる効果が期待できる。これにより、温度や媒質の変化に対しても、取付け状態、更には固体差があろうとも、流路幅方向へと一様に拡散する音波ビームが得られるため、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異があったとしても、その分布全域を計測できるので、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
また、超音波トランスジューサ10の放射面Sに、放射音波を一様に拡散させられるようなメッシュ状部材を介して放射断面積を小さくし、放射特性を制御する必要がないため、取付け工数やコストの削減が図れる。そして、上述のごとく、取付け寸法精度、固体差による影響が無いため、また温度による影響も少ないため、安定性が良く高精度な流速計測が実現できる。
<構成例2>
構成例2の超音波トランスジューサ10は、構成例1において、駆動対象のPZT(第1PZT121や第2PZT122)の両極(分極方向に垂直な両面)の最外形(後述の構成例のようにリング状であったとしてもその最外形)を、全て同一にしたものである。最外形を同一にすることで、構成例1の効果に加えて、2つのPZT121,122を同時に駆動したときに同時に動作させ易くなる。
特に、図2で双方の厚さを等しくした(t1=t2)ときのように、第1PZT121と第2PZT122とを全く同一形状に構成して、貼り合わせることがより好ましい。なお、図2では、電極線群の引き出しのために、D1とD2がほぼ等しいものとしているが、ここでの同一とはこのようなものも含むものとする。これにより、第1PZT121と第2PZT122とが機械的剛性及び質量の分布の点で同じとなるため、2つのPZT121,122を同時に駆動したときに同時に動作させ易くなる。
実際、この結果として2つのPZT121,122の振動変位が合成されるため、電極方向とは垂直方向の伸び方向の変位を発生させることができる。そして、音響整合層11が電極方向(分極方向)と垂直な横方向の変位により変形し、この変位により周辺部との振動固定条件とにより曲げ方向の変形が作用する結果、振動面の変形が曲率化し、この変形により超音波の伝播状態を制御することで、指向特性を制御し、必要な広がりを有する音波ビームを送受信することを可能にする。
構成例2においても、これは逆に、1つのPZT(この例では第1PZT121)を単独で動作させた場合では、2つのPZT121,122の機械的剛性と質量分布の作用により曲げの力が低減する結果、2つのPZT121,122が同時に動作する場合と比べて変位(形)量が少なく、放射面の曲率が少なくなるので指向性は狭くなる。すなわち同一形状の2種類のPZT121,122を単独では無く、同時に動作させ超音波の放射面Sの変形状態を大きくさせることにより、単独動作の時と比べてより曲率化させることができる。その結果、構成例1の効果と同様に、微妙に指向特性を拡大させるよう制御することで、超音波ビームを流路幅方向一様に拡散させて送受信できる。
<構成例3>
図4は、本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を示す概略図で、図4(A)はその厚さ方向から見た側面図、図4(B)は放射面とは逆方向から見た上面図ある。構成例3の超音波トランスジューサ10は、構成例1又は構成例2において、圧電素子を2つとして、音響整合層11側に設けた第1PZT121を円状(すなわち円盤状)とし、音響整合層11とは反対側に設けた第2PZT122も円状としたものである。
そして、構成例3の主たる特徴として、図4(B)に示すように第2PZT122は第1PZT121側とは反対側の電極(電極線12cに対応した電極)をリング状(すなわちリング盤状)としている。但し、電極線12cで説明したように図2(C)のような電極群の設置方法を採用するものとし、構成例3では図2(D)のような設置方法は採用しないものとする。
構成例3においても、2つのPZT121,122を設けて同時に動作させるため、図3(A),(B)で説明したような構成例1等と同様の効果が得られる。すなわち、2つのPZT121,122の変形による変位が、1つのPZTの時よりも増強され、結果としてより超音波ビームを流路幅方向一様に拡散させることができる。更に構成例3では、中央部の変形が制御されつつ曲率が増加し、放射面Sの曲率をより変化させられ放射面Sの曲げ状態をより適度に制御することができる。
このように、第1PZT121と貼り合わせた面とは反対側の第2PZT122の電極形状をリング状とすることで、2つのPZT121,122が同時に駆動され変位する時に、リング電極による振動変位は周辺部の変形が大きく、電極が存在しない中央部との第2PZT122の機械的剛性及び質量分布のバランスにより、中央部の変位は適度に抑制され、変位全体が音響整合層11の放射面S全体にてほぼ一様な分布となる。これにより、放射面Sから送受信される超音波の音圧を放射面S全体でほぼ一様に拡散した分布に制御することができる。換言すると、第2PZT122の電極をリング状とすることで、第2PZT122の音圧が周辺部に集中し、これと音圧が中央部に集中している第1PZT121との、2種類の互いに振動部の異なる各PZTによる合成変位とにより、送受信の音圧を、ほぼ振動放射面一様として扱える上、中央の音圧が周辺部と比較して大きい第1PZT121による振動変位を微妙に制御できる結果、指向特性が流路幅方向で一様に拡散できるので、流量による流速分布の相異による計測誤差を抑え、正確な流量を算出することができる。
<構成例4>
図5は、本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を示す概略図で、図5(A)はその厚さ方向から見た側面図、図5(B)は放射面とは逆方向から見た上面図である。また、図6は、図5の超音波トランスジューサで放射される超音波を模式的に説明するための図である。ここで、図6(A)はPZT2枚を同時に変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図、図6(B)は図6(A)のごとく放射される超音波のビームを説明するための模式図、図6(C)はPZT2枚のうち音響整合層側のPZTのみを変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図、図6(D)は図6(C)のごとく放射される超音波のビームを説明するための模式図である。
構成例4の超音波トランスジューサ10は、構成例1又は構成例2において、圧電素子を2つとして、音響整合層11側に設けた第1PZT121を円状(すなわち円盤状)とし、音響整合層11とは反対側に設けた第2PZT122をリング状(すなわちリング盤状)としたものである。図5及び図6では、第2PZT122は、中央の小さい穴(穴径:D3)をもつ外径D2のPZTとして図示している。このような構成を放射面Sと反対側から見た場合には、図5(B)に示すように、径D3の穴から第1PZT121の電極(第2PZT122の電極ともなる)として、電極線12bに対応する電極が視認できる。なお、電極線12bの導出は図2(C)のように電極の周辺部から行えばよいが、図5(B)で示すように電極線12bを径D3の穴から導出させることも可能である。但し、電極線12cで説明したように図2(C)のような電極群の設置方法を採用するものとし、構成例4では図2(D)のような設置方法は採用しないものとする。
構成例4においても、2つのPZT121,122を設けているため、構成例1等と同様に、図3(A),(B)で説明したのと同様の効果が得られる。すなわち、2つのPZT121,122の変形による変位が、1つのPZTの時よりも増強され、より超音波ビームを流路幅方向一様に拡散させることができる。更に構成例4では、2つのPZT121,122の形状による振動時の変位分布の相異と、機械的剛性及び質量分布の作用とによって中央部と周辺部との変位状態が制御され、放射面の曲率が適度に調整できる。そして、このような音波ビームの指向特性の制御の結果、図6(A),(B)に示したように、超音波ビームを流路幅方向に一様により拡散し、送受信させることができる。これに対して、PZT2枚のうち音響整合層11側の第1PZT121のみ(第2PZT122がダミー素子となる)を変位させた場合、放射される超音波及びその進行方向が図6(C)に示すように、また放射される超音波ビームが図6(D)の実線で示すように、図6(A),(B)に比べて拡散し難くなる。
このように、構成例4では、2つのPZT121,122が同時に動作し変位する時に、リング状の第2PZT122の振動変位と、その物理的形状効果(リングの中央部と周辺部との質量分布と機械的剛性)とにより、すなわち、中央部と周辺部との機械的剛性及び質量分布の相異により、リング状の第2PZT122が振動し振動による変位が伝達する際、貼り合わされた(振動の負荷となる)第1PZT121の機械的剛性及び質量による影響も加味され、中央部の変位が適度に抑えられ、変位全体が音響整合層の放射面S全体でほぼ一様に近い分布となる。これにより、放射面Sから送受信される超音波の音圧指向性を放射面全体でほぼ一様に拡散した分布状態に制御することができる。
換言すると、構成例3の効果と同様に、第2PZT122の形状がリング状であるため、第2PZT122では周辺部に音圧が集中し、これと音圧が中央部に集中している第1PZT121との合成とにより、送受信の音圧がほぼ放射面一様に均等な分布特性として扱える上、中央の音圧が周辺部と比較して大きい第1PZT121による振動変位を微妙に制御できる結果、指向特性が一様に拡散する効果と合わせて、より流量による流速分布の相異による計測誤差を低減できる。更に、構成例4では、構成例3に対して第2PZT122がリング状としているため、中央部の機械的剛性が周辺部のそれと比べて小さいので、音響整合層の中央に比べて、周辺部への変形を大きくできるため、指向性をより制御し拡大できる効果が期待できるので、温度変化に対しても、取付け状態、更には固体差があっても、より指向特性範囲の自由度を向上できる。
<構成例5>
図7は、本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を示す概略図で、図7(A)はその厚さ方向から見た側面図、図7(B)は放射面とは逆方向から見た上面図である。また、図8は、図7の超音波トランスジューサで放射される超音波を模式的に説明するための図である。ここで、図8(A)はダミーPZTを除くPZT2枚を同時に変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図、図8(B)は図8(A)のごとく放射される超音波のビームを説明するための模式図、図8(C)はPZT3枚のうち音響整合層側のPZTのみを変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図、図8(D)は図8(C)のごとく放射される超音波のビームを説明するための模式図である。
構成例5の超音波トランスジューサ10は、構成例4において、第2PZT122のリング内径D3より小さい外径D4をもつ第3PZT123を、電圧を印加しないダミー素子として第1PZT121における音響整合層11とは反対側に貼り合わせてなるものである。但し、構成例5における径D3は、第3PZT123の設置のため、構成例4における径D3より大きくしたものを採用している。すなわち、構成例5では、音響整合層11とは反対側の第2PZT122を、音響整合層11側の第1PZT121の直径D1より小さい内径D3の穴を有するリング状を持つものとし、更にそのリング状の第2PZT122の中央の穴には、D3より小さい外径D4を持つ円盤状の第3PZT123を第1PZT121と貼り合わせている。
このような構成を放射面Sと反対側から見た場合には、図7(B)に示すように、第2PZT122の放射面Sとは反対側の電極として、電極線12cに対応する電極が視認できると共に、径D3の穴から第1PZT121の電極(第2PZT122の電極ともなる)として、電極線12bに対応する電極が視認できる。なお、電極線12bの導出は図2(C)のように電極の周辺部から行えばよいが、図7(B)で示すように電極線12bを径D3の穴から導出させることも可能である。但し、電極線12cで説明したように図2(C)のような電極群の設置方法を採用するものとし、構成例5でも図2(D)のような設置方法は採用しないものとする。
構成例5においても、駆動する2つのPZT121,122を設けているため、構成例1等と同様に、図3(A),(B)で説明したのと同様の効果が得られる。すなわち、2つのPZT121,122の変形による変位が、1つのPZTの時よりも増強され、より超音波ビームを流路幅方向一様に拡散させることができる。更に構成例5では、2つのPZT121,122が同時に動作し変位する時に、中央部と周辺部との機械的剛性及び質量分布の微妙な相異により、特に中央部においては、第2PZT122と第3PZT123のように分離した形状を採用していることにより、中央部の変位が適度に調整できる構成となり、しかも中央部の第3PZT123はダミー素子として中央部での機械的剛性及び質量の調整として作用させることができるので、変位全体が音響整合層11の放射面S全体でほぼ一様な分布とさせることが可能となる。そして、このような音波ビームの指向特性の制御の結果、図8(A),(B)に示したように、超音波ビームを流路幅方向に一様により拡散し、送受信させることができる。これに対して、音響整合層11側の第1PZT121のみ(第2PZT122,第3PZT123がダミー素子となる)を変位させた場合、放射される超音波及びその進行方向が図8(C)に示すように、また放射される超音波ビームが図8(D)の実線で示すように、図8(A),(B)に比べて拡散し難くなる。
このように、構成例5においては、構成例4の効果と同じく、第2PZT122の形状がリング状であるため、第2PZT122では周辺部に音圧が集中し、これと音圧が中央部に集中している第1PZT121との合成により、送受信の音圧がほぼ放射面Sに一様に均等な分布特性として扱えるので、指向特性が一様に拡散する効果と合わせて、より流量による流速分布の相異による計測誤差を低減できる。
これに加えて、構成例5においては、リング状の第2PZT122の中央に貼り付け配置した第3PZT123による質量及び機械的剛性とにより、第1PZT121及び第2PZT122との機械的剛性が適度に調整される。また、第3PZT123の振動も制御することで、より細かく振動状態を変化させられる効果が期待できる。そして、これらの複数の振動、剛性、質量のバランス等により、音響整合層11の変形状態が変化し、必要な指向特性に制御できるので、取付け状態、更には固体差があろうとも、温度変化に対しても、更には、余計な部材を流体の窪み部(流れが淀む超音波トランスジューサ10の取付け固定部近傍)に配置しなくても、流路幅方向へと一様に拡散する音波ビームを確保できる結果、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異があろうとも、その分布全域を計測でき、結果として流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
また、構成例5においては、第3PZT123をダミー素子として使用したが、その代わりに同様の形状の部材を採用することもできる。この部材は、PZT以外の材質の部材であればよく、他種の圧電体であっても圧電体でなくてもよい。特に、この部材による質量及び機械的剛性により、第1PZT121及び第2PZT122との機械的剛性がある程度自由に調整されるので、音響整合層11の変形を微妙に制御し、必要な指向特性に調整できる。すなわち、中央部においては、同様に分離した構成とした上に、PZTとは異なる材質の部材(物質)を採用することで、中央部の変位がより微調整できる構成となり、しかも中央部の部材はダミー素子として剛性及び質量の調整として作用させるので、変位全体が音響整合層11の放射面S全体で一様な分布とさせることができる。その結果、放射面Sから送受信される超音波の音圧を放射面S全体でほぼ一様に制御でき、流路幅方向で一様に拡散する指向特性を得ることができる。
<構成例6>
図9は、本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を示す概略図で、図9(A)はその厚さ方向から見た側面図、図9(B)は放射面とは逆方向から見た上面図である。
構成例6の超音波トランスジューサ10は、構成例4において、第1PZT121は、第2PZT122のリング内径D3より小さい(リング内径D3に収まる大きさをもつ)突起部121aを有するものである。そして、この突起部121aの音響整合層11と反対側には電極を設けず電圧が印加されない構成とする。なお、突起部121aに電極を設けてもよいが、突起部121aに電圧を印加して電気的に制御することはしない。換言すると、構成例6の超音波トランスジューサ10は、構成例5において、ダミー素子である第3PZT123を、第1PZT121に一体に構成したものであり、第1PZT121を厚さ方向からみて凸状形状を持つように構成したものである。構成例6による効果は、構成例5の効果と同様である。従って、図8は、図9の超音波トランスジューサで放射される超音波は、図8のようになる。この場合、図8(C)はPZT2枚のうち音響整合層側のPZTのみを変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図に該当する。
<構成例7>
図10は、本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を示す概略図で、図10(A)はその厚さ方向から見た側面図、図10(B)は放射面とは逆方向から見た上面図である。また、図11は、図10の超音波トランスジューサで放射される超音波を模式的に説明するための図である。ここで、図11(A)はPZT2枚を同時に変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図、図11(B)は図11(A)のごとく放射される超音波のビームを説明するための模式図、図11(C)は2つのPZTのうち音響整合層側のPZTのみを変位させた場合に放射される超音波及びその進行方向の一例を説明するための模式図、図11(D)は図11(C)のごとく放射される超音波のビームを説明するための模式図である。
構成例7の超音波トランスジューサ10は、構成例4において第1PZT121と第2PZT122との形状を入れ替えたものであり、第2PZT122側を円状として、第1PZT121側をリング状としたものである。図10(A)では、このときの第1PZT121の中央部に設けられた穴の径をD5として図示している。このような構成を放射面Sと反対側から見た場合には、図10(B)に示すように、第2PZT122の電極として、電極線12cに対応する電極が視認できる。電極線12cで説明したように図2(C)のような電極群の設置方法を採用するものとし、構成例7でも図2(D)のような設置方法は採用しないものとする。
構成例7においても、2つのPZT121,122を設けているため、構成例1等と同様に、図3(A),(B)で説明したのと同様の効果が得られる。すなわち、2つのPZT121,122の変形による変位が、1つのPZTの時よりも増強され、より超音波ビームを流路幅方向一様に拡散させることができる。更に構成例7では、2つのPZT121,122の形状による振動時の変位分布の相異と、機械的剛性及び質量分布の作用とによって中央部と周辺部との変位状態が制御され、放射面の曲率が適度に調整できる。そして、このような音波ビームの指向特性の制御の結果、図11(A),(B)に示したように、超音波ビームを流路幅方向に一様により拡散し、送受信させることができる。これに対して、PZT2枚のうち音響整合層11側の第1PZT121のみ(第2PZT122がダミー素子となる)を変位させた場合、放射される超音波及びその進行方向が図11(C)に示すように、また放射される超音波ビームが図11(D)の実線で示すように、図11(A),(B)に比べて拡散し難くなる。
このように、構成例7では、2つのPZT121,122が同時に動作し変位する時に、リング状の第1PZT121の振動変位と、その物理的形状効果(リングの中央部と周辺部との質量分布と機械的剛性)とにより、すなわち、中央部と周辺部との機械的剛性及び質量分布の相異により、リング状の第1PZT121が振動し振動による変位が伝達する際、貼り合わされた(振動の負荷となる)第2PZT122の機械的剛性及び質量による影響も加味され、中央部の変位が適度に抑えられ、変位全体が音響整合層の放射面S全体でほぼ一様に近い分布となる。これにより、放射面Sから送受信される超音波の音圧指向性を放射面全体でほぼ一様に拡散した分布状態に制御することができる。
換言すると、構成例3の効果と同様に、第1PZT121の形状がリング状であるため、第1PZT121では周辺部に音圧が集中し、これと音圧が中央部に集中している第2PZT122との合成とにより、送受信の音圧がほぼ放射面一様に均等な分布特性として扱える上、中央の音圧が周辺部と比較して大きい第2PZT122による振動変位を微妙に制御できる結果、指向特性が一様に拡散する効果と合わせて、より流量による流速分布の相異による計測誤差を低減できる。更に、構成例7では、構成例3に対して第1PZT121がリング状としているため、中央部の機械的剛性が周辺部のそれと比べて小さいので、音響整合層の中央に比べて、周辺部への変形を大きくできるため、指向性をより制御し拡大できる効果が期待できるので、温度変化に対しても、取付け状態、更には固体差があっても、より指向特性範囲の自由度を向上できる。
<構成例8>
図12は、本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を示す概略図で、図12(A)はその厚さ方向から見た側面図、図12(B)は放射面とは逆方向から見た上面図である。構成例8の超音波トランスジューサ10は、図4で説明した構成例3において、図12(B)に示すように、第2PZT122の電極部(斜線で示す部分)の面積及びその形状を、内円をZ1からZ2まで或いはその逆方向のように、微妙に調整し変化させたものである。また、図12(C)に示すように、第2PZT122の電極部の面積及びその形状を、Z1で示す内円からZ3で示す楕円形など他の形状にかけて変化させて、調整を実行してもよい。
構成例8におけるこのような調整は、超音波流量計の設置環境によって試験しながら行えばよい。このような調整の結果得られた超音波トランスジューサ10は、機械的剛性及び質量分布の相異による変形状態の相異と、電極形状による影響とにより、周辺部の変形状態を微妙に調整することができ、更に全面電極を有する一様な振動をする第1PZT121との貼り合わせとにより、中央部、周辺電極部との振動変位を微妙に制御できる。その結果、音響整合層11の変形を微妙に制御することができ、放射面Sをより曲率化させ、媒質中への音波の指向特性を拡大できる。従って、構成例8では、温度変化に対しても、取付け状態、更には固体差があろうとも、流路幅方向へと一様に伝播し拡散する音波ビームが得られる結果、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異があろうとも、その分布全域を計測できるので、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
更に、第2PZT122のリング状電極における振動に寄与する有効面積を適度に変化させ調整した結果、この第2PZT122の周辺部での音圧の分布度合を変化させることができ、これと音圧が中央に集中している第1PZT121との変位合成により、放射面から送受信される音圧を条件に応じて最適に制御し、送受信の音圧がほぼ放射面Sに一様に拡散(すなわち流路幅一様に拡散)するように扱えるので、指向特性を一様に拡散させる効果が得られ、より流量による流速分布の相異による計測誤差を低減できる。
<構成例9>
図13は、本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を説明するための図で、第2PZT122の最外径(外形の直径寸法)D2に対する第1PZT121の最外径D1の比β(=D1/D2)による相対感度[dB]の計測結果を示す図である。図13では、第1PZT121の分極方向の厚みt1に対する第2PZT122の分極方向の厚みt2の比γ(=t2/t1)が0.4のときを実線で、1.0のときを破線で示している。ここで、2つのPZT121、122は同じ材質としている。
構成例9の超音波トランスジューサ10は、上述した各構成例において最外形が共に円形である2つのPZT121,122を有する例に適用される。そして、構成例9の主たる特徴は、図13に示したように、相対感度が0dB以上となるβ(=D1/D2)の値である0.6<β<1.0としたことにある。
直径寸法の比βを0.6<β<1.0の間で変化させて調整することで、放射面の直径方向の機械的剛性及び質量分布、そして電気変位に対する振動(動作)面積を微妙に制御できる。そして、第1PZT121及び第2PZT122とを同時に動作させたとき、その電気変位に対する応力により、振動板全体の曲げモーメントが、PZTが1枚でもう一枚が非動作である時と比較して、放射面Sの変形状態をより均一化し曲率を変化させることができる。その結果、超音波ビームの音圧を制御し、放射面S全体から拡散させ送受信音波を流路幅一様に拡散させることができる。
また、比βがこの範囲に無い場合でも、双方の直径寸法を異ならしめることで、PZTそのものの電気入力に対する変位量と、直径(外形)による機械的な強度、曲げのモーメントを微妙に調整できる効果が期待できる。従って、音響整合層11の変形状態が制御でき、放射面Sの曲率状態による、媒質中への音波の指向性を微妙に制御できるので、温度変化に対しても、取付け状態、更には固体差があろうとも、流路幅方向へと一様に拡散する音波ビームが得られ、その結果、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異があろうとも、その分布全域を計測でき、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
<構成例10>
図14は、本発明に係る超音波トランスジューサの他の構成例を説明するための図で、第1PZT121の分極方向の厚みt1に対する第2PZT122の分極方向の厚みt2の比γ(=t2/t1)による相対感度[dB]の計測結果を示す図である。図14では、第2PZT122と第1PZT121のヤング率の比が1であるときの計測結果を示している。
構成例10の超音波トランスジューサ10は、上述した各構成例において2つのPZT121,122を有する例に適用される。そして、構成例10の主たる特徴は、図14に示したように、相対感度が3dB以上となるγ(=t2/t1)の値である0.4<γ<1.5としたことにある。なお、PZTの分極方向である厚みt1,t2は、電極の厚みを含んだものとしてもよいが、含まずに圧電体の厚みとして規定する方が好ましい。
双方の分極方向の厚みの比γを0.4<γ<1.5の範囲とすることで、第1PZT121及びPZT122の振動特性(振動効率、感度)を損ねず、音響整合層11を含む振動板全体の機械的剛性及び質量分布を適度に調整できる結果、振動板全体の曲げ状態を微妙に制御でき効率良く屈曲した振動を発生できる。そして、2つのPZT121,122とを同時に動作させたとき、その電気変位に対する応力による振動板全体の曲げモーメントが、PZTが1枚でもう一枚が非動作である時と比較して、放射面の変形状態をより均一化し曲率を変化させることができる。その結果、超音波ビームの音圧を制御し、放射面全体から拡散させ送受信音波を流路幅一様に拡散させることができる。
また、比γがこの範囲に無い場合でも、双方の厚みを異ならしめることで、PZTそのものの電気入力に対する変位量と、厚みによる機械的な強度、曲げのモーメントを微妙に調整できる効果が期待できる。従って、音響整合層11の変形状態が制御でき、放射面Sの曲率状態による、媒質中への音波の指向性を微妙に制御できるので、温度変化に対しても、取付け状態、更には固体差があろうとも、流路幅方向へと一様に拡散する音波ビームが得られ、その結果、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異があろうとも、その分布全域を計測でき、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
<構成例11>
構成例11は、上述した各構成例4〜7(及びそれらを適用した構成例9,10)の超音波トランスジューサ10において、リング状のPZTを有するものに適用される。構成例11では、超音波流量計に設置するに際し、媒質(ガス種)が変化してもまた異なる流路寸法であっても、更には取付け状態、固体差があっても、音波ビームの指向特性を最適化し、流路幅方向へと一様に拡散する音波ビームを得るために、リング状のPZTの穴径(外形)寸法を調整したものである。このような調整により、PZTそのものの電気入力に対する変位量と、形状(リング状の有効面積)による機械的な強度、曲げのモーメントを微妙に調整し、音響整合層11の変形状態が微妙に制御させることで、放射面Sの曲率状態による、媒質中への音波の指向性を微妙に制御する。
このように構成例11では、リング状のPZTの穴径(外形)寸法を異ならせることで、PZTそのものの電気入力に対する変位量と、形状(リング状の有効面積)による機械的な強度、曲げのモーメントを微妙に調整できる効果が期待できるので、音響整合層11の変形状態が制御でき、放射面Sの曲率状態による、媒質中への音波の指向性を微妙に制御できる。従って、媒質(ガス種)が変化しても、また流路寸法が異なった場合でも(別の寸法の流路に対しても)、流路幅方向へと一様に拡散する音波ビームが得られ、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異があろうとも、その分布全域を計測できるので、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
<構成例12>
構成例12は、上述した各構成例5,6(及びそれらを適用した構成例9〜11)の超音波トランスジューサ10において、リング状のPZTを有し、第3PZT123や第3の部材、或いは第1PZT121に突起部121aを持ったものに適用される。構成例12では、超音波流量計に設置するに際し、媒質(ガス種)が変化してもまた流路寸法が異なっても、更には取付け状態、更には固体差に対して、音波ビームの指向特性を最適化し、流路幅方向へと一様に拡散する音波ビームを得るために、リング状PZTの中央部の穴に貼り付け固定するPZT等の直径(外形)及び厚みを異ならせるものである。これにより、外形(形状の有効面積)による機械的な剛性、質量分布を微妙に調整し変化させ、曲げのモーメントを微妙に調整することで、音響整合層の変形状態が制御でき、音響整合層の放射面の曲率状態による、媒質中への音波の指向性を微妙に制御する。
このように構成例12では、リング状PZTの中央の穴に貼り付け固定するPZT等の直径(外形)及び厚みを異ならせることで、外形(形状の有効面積)による機械的な強度、質量分布を微妙に調整し変化させられるので、曲げのモーメントを微妙に調整できる効果が期待できるので、音響整合層11の変形状態が制御でき、放射面Sの曲率状態による、媒質中への音波の指向性を微妙に制御できる。従って、媒質(ガス種)が変化しても、また流路寸法が異なっても、更には取付け状態、更には固体差があろうとも、流路幅方向へと一様に拡散する音波ビームが得られるので、流路幅方向で発生する流速分布のパターンによる微妙な相異があろうとも、その分布全域を計測できるので、流量による流速分布の相異による計測誤差を著しく低減することができる。
<構成例13>
図15は、本発明に係る超音波流量計における超音波トランスジューサの駆動周波数と流量との関係を示す図である。構成例13は、上述した各構成例1〜12のいずれかの超音波トランスジューサ10を一対搭載した超音波流量計である。設置方法については図1を参照して説明した通りである。そして、構成例13の主たる特徴としては、被測定流体又は流路外の温度を計測する温度センサと、次の駆動制御手段とを備えるものとする。流路外の温度を計測対象とするとき、超音波トランスジューサ10の圧電素子の設置位置付近の温度とすることが好ましい。温度センサ及び駆動制御手段の設置場所は任意であり、温度センサは計測位置に設置すればよいだけである。
この駆動制御手段は、流量算出部13により算出された流速、流量、伝播時間のいずれか1又は複数と、温度センサで計測された温度とに基づいて、一対の超音波トランスジューサ10,20の駆動周波数(パルス駆動の場合はパルス周波数に相当)及び駆動電圧を変化させるよう制御する。各超音波トランスジューサ10,20は、この制御に基づき、所定の周波数及び電圧でPZT等の圧電体を駆動することとなる。
駆動制御手段における制御の一例として、図15を参照して、温度変化に対して、超音波トランスジューサ10を駆動する周波数及び駆動電圧を経時的に変化させる例を説明する。まず、駆動制御手段での制御のための制御データを得るテスト(校正)を行う。基準周波数f0(この例では300KHz)及び基準電圧V0(この例では5V)で計測した結果での流量値が、規定の流量未満の時、使用温度範囲の上下限近傍の温度となった時を見計らって、基準の駆動周波数f0及び駆動電圧V0を基準とし、駆動制御手段により駆動周波数及び駆動電圧を変化させて、データを得る。
また、簡単のため、ここでは駆動電圧を5Vを基準に3V、7Vと変化させた場合のみ示す。100L/h未満の流量を対象とする測定をこの超音波流量計で行う場合、規定の流量未満として流量が100L/h未満を採用すればよい。また、この超音波流量計の使用温度範囲を−10°C〜+50°Cとすると、その上下限近傍の2点のデータを得ればよい。このような場合のテストとしては、例えば、−10°C、5Vのとき図15(A)のごとき7つの駆動周波数でデータを得、50°C、5Vのとき図15(B)のごとき7つの駆動周波数でデータを得、−10°C、7Vのとき図15(C)のごとき7つの駆動周波数でデータを得、50°C、3Vのとき図15(D)のごとき7つの駆動周波数でデータを得る、などすればよい。
ここで得るデータとは、測定される伝播時間、或いはその結果から算出される流速、或いはその流速から算出される流量を指す。このようにして、駆動制御手段は、駆動周波数及び駆動電圧を変化させて実際に計測される伝播時間を記憶し、この伝播時間、或いはこの伝播時間結果から算出される流速結果、或いは流量演算結果が、基準の駆動周波数及び駆動電圧で計測した時のそれとズレが発生した場合には、ズレが最大となり、何れ飽和する時の駆動周波数及び駆動電圧を用いて伝播時間を計測し、流量を演算するように、制御データを設定する。すなわち、この時の駆動周波数が流路幅一様に音波ビームが拡散したと判断することになる。
ここで、ズレが最大となり何れ飽和する時の駆動周波数及び駆動電圧とは、図15(A)〜(D)のそれぞれで円で囲った周波数及び各図での電圧を指す。そして、結果として設定される制御データにより、この例では−10°Cのときには5V、280KHzか、7V、260KHzかの、いずれかで駆動させるよう制御する。また、50°Cのときには5V、290KHzか、3V、280KHzかの、いずれかで駆動させるよう制御する。−10°C〜+50°Cの温度に対する制御データは、これら2点での制御データに基づき補間などにより得てもよいし、細かな温度範囲でテストして結果を得ておいてもよい。
構成例13のように、或る駆動周波数が流路幅一様に音波ビームが拡散したと判断された結果、駆動周波数及び駆動電圧を微妙に変化させて制御することで、例えば第2PZT122の変形状態を制御でき、これにより振動状態を微妙に制御できる効果が得られる。これにより、流路幅全域に超音波ビームを一様に拡散させられることで、指向性範囲が欠如してもこれをカバーできるので、温度変化幅、経時ドリフト、更には超音波トランスジューサ10,20の取付け状態、固体差による指向特性の変動に追従させる結果、計測誤差が抑えられ、長期に渡って安定した計測が確保でき、信頼性を向上させることができる。
このように、構成例13では、温度変化幅、経時ドリフト、更には超音波トランスジューサ10,20の取付け状態、固体差による指向特性の変動に追従させるため、トランスジューサ10,20を駆動する周波数及び駆動電圧を変化させ、更に2つのPZTの変形状態を制御することにより、振動状態を微妙に制御できる効果が期待できる。そして、流路幅全域に超音波ビームを一様に拡散させられることで、指向性範囲をカバーできるので、計測誤差を抑えられ、長期に渡って安定した計測が確保でき、信頼性を向上できる。なお、指向特性の変動に追従する必要がある場合としては、例えば流路幅方向に満たない指向性となる場合や、中心軸から非対称となり全方向で広がりが一様とならない場合などが挙げられる。
10,20…超音波トランスジューサ、11,21…音響整合層、12,22…圧電素子群、13…流量算出部、30…流路、121,122…PZT、12a〜12e…電極線。