JP2009083316A - 液体吐出方法、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液柱を迅速に切断して、吐出速度を低下させることなくサテライトレス化を図ること。
【解決手段】ノズル51から液体を吐出する際に、ノズル51から伸長している途中の液柱34の根元に対して、ノズル51の吐出軸30上に配置されている気体口41から、気泡32を注入する。気泡32の注入は、ノズル51のメニスカスを押した後の引きで行うことが、好ましい。ノズル51の吐出軸30上に発熱体を配置して、この発熱体によって気泡を発生させてもよい。
【選択図】図1
【解決手段】ノズル51から液体を吐出する際に、ノズル51から伸長している途中の液柱34の根元に対して、ノズル51の吐出軸30上に配置されている気体口41から、気泡32を注入する。気泡32の注入は、ノズル51のメニスカスを押した後の引きで行うことが、好ましい。ノズル51の吐出軸30上に発熱体を配置して、この発熱体によって気泡を発生させてもよい。
【選択図】図1
Description
本発明は、液体を吐出する液体吐出方法、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
液体を吐出するノズルと、ノズルに連通する圧力室と、圧力室の容積を変化させることによりノズルから液体を吐出させる圧電素子とを備えた、いわゆるピエゾ式の液体吐出ヘッドが普及している。
また、液体を加熱して気泡を発生させることによりノズルから液体を吐出させる、いわゆるバブルジェット(登録商標)式の液体吐出ヘッドも知られている。
特許文献1には、ノズル内に、吐出方向とは直交する方向に向って気体を導入する通気路を配置し、吐出動作の開始前に、ノズル流路内で液体を予め分断するようにした構成が開示されている。
特開2003−94662号公報
ピエゾ式の液体吐出ヘッドでは、一般に、引き−押し−引き波形によって、液滴を吐出する。最後の「引き」波形による液柱の引きちぎり効果が、微液滴化、サテライトレス化、および高速吐出にとって重要であるが、図17に示すように、液柱34が伸び続ける一方で、ノズル51内のメニスカス31に接続された部分は引き込まれる。これに因り、吐出速度が落ちてしまう。更に、液柱34がちぎれた時点で液柱先頭部分と末尾部分とで速度差が生じ、この速度差によって、ちぎれた後の飛翔液柱が球状になるのが遅れる。これに因り、着弾するまでの間に液柱が複数のサテライト液滴を生じ易くなる。
バブルジェット(登録商標)式の液体吐出ヘッドでも、膜沸騰による気泡の発達がピエゾ式の液体吐出ヘッドにおける押し波形の効果を持ち、また、気泡の収縮がピエゾ式の液体吐出ヘッドにおける引き波形の効果を持つだけである。したがって、基本的には、ピエゾ式の液体吐出ヘッドと同様に、上述の問題が起こる。バブルジェット式の液体吐出ヘッドでは、一般に、気泡はまず閉じた状態で成長し、気泡内の気体は吐出後に急激に収縮する。これに因り、気体の収縮力が液柱後端に作用して、結果的に液柱を引き伸ばしてしまう事になる。
特許文献1に記載の構成では、吐出方向とは直交する方向に向って空気を入れ込むことによって、吐出動作の開始前にノズル流路内で液体を予め分断するようになっており、マイクロバブル(直径数μm)と比較して、極めて大きな容量の空気を供給する必要がある。したがって、液体のリフィルには実際には時間がかかり、連続吐出を行う場合にさらに吐出速度を低下させてしまう。また、ノズルの高密度化を図る観点から、容量の大きな空気を供給する気体管をノズル毎に個別に実装することは、実際には困難である。液滴体積も実際には大きいものとならざるを得ない。気体流路をどうしても引き回す必要があるため、空気の圧縮性を考慮した場合、ロバスト性が低いという別の問題もある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、液柱を迅速に切断して、吐出速度を低下させることなくサテライトレス化を図ることができる液体吐出方法、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出方法において、気泡を供給する気泡供給手段を用い、前記ノズルから伸長している途中の液柱の根元に対して、気泡を注入することを特徴とする液体吐出方法を提供する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記気泡の注入は、前記ノズルのメニスカスを前記液柱の伸長のために最初に押した後、行うことを特徴とする液体吐出方法液体吐出方法を提供する。
請求項3に記載の発明は、ノズル内の液体に圧力を与え、前記ノズルから液体を押し出して、液柱を伸長させ、伸長途中の前記液柱の根元に該液柱の根元の径よりも小さい径の気泡を注入し、前記気泡によって前記液柱を切断して、分離された液滴を飛翔させることを特徴とする液体吐出方法を提供する。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、前記ノズル内に配置された気体口から、前記ノズルの液体吐出方向に沿って、前記気泡を押し出すことを特徴とする液体吐出方法を提供する。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記ノズル内に配置された気体口から、前記液柱の根元での液体の流速以上の速度で、前記気泡を押し出すことを特徴とする液体吐出方法を提供する。
請求項6に記載の発明は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルから伸長している途中の液柱の根元に気泡を注入する気泡供給手段と、を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッドを提供する。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記気泡供給手段は、気体を出す気体口および発熱体のうち少なくとも一方を含んで構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッドを提供する。
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の発明において、前記気泡供給手段は、前記ノズルの吐出軸上に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッドを提供する。
請求項9に記載の発明は、請求項6ないし8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置を提供する。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記ノズルのメニスカスの押し及び引きのタイミングを決める液体吐出用波形と、前記気泡供給手段による気泡の注入タイミングを決める気泡供給用波形とを同期させて前記液体吐出ヘッドに供給する駆動手段を備え、前記気泡供給用波形は、前記液体吐出用波形による前記メニスカスの最初の押し後に前記気泡の注入を行うためのパルス波形を有することを特徴とする液体吐出装置を提供する。
本発明によれば、液柱を迅速に切断して、吐出速度を低下させることなくサテライトレス化を実現することができる。また、マイクロバブルを用いて液柱の切断を行うことも可能であり、その場合には、気泡の発生、輸送に要するエネルギーが小さくて済み、効率的にサテライトレス化を図ることが可能である。
以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
(液体吐出ヘッド)
本発明に係る液体吐出ヘッドの一例の要部を、図1(a)に示す。
本発明に係る液体吐出ヘッドの一例の要部を、図1(a)に示す。
液体吐出ヘッド50は、液滴を吐出するノズル51を備える。本例のノズル51は、アウトレット510の径(液体吐出側の開口径である)がインレット511の径(液体供給側の開口径である)よりも小さい、いわゆるテーパ形状を有している。ノズル51の吐出軸30上には、気体を押し出す気体口41が配置されている。
ノズル51内のメニスカス31(気液界面)を押した後の引き込みのタイミングに同期させて、吐出軸30上に設けられた気体口41から気泡32を押し出す。これに因り、気泡32は、伸長している途中の液柱34の根元35に注入される。その結果、薄い厚みのリガメント36が生じる。
液柱34に注入された気泡32は、図1(b)に示すように気体口41から分離するか、もしくは、リガメント36が切れるまで押し出される。薄い厚みのリガメント36は、表面張力によって迅速に切れる。これに因り、液柱34が過度に伸長する前に、液柱34が早期に切断される。
なお、「吐出軸上」とは、吐出軸30に気体口41の開口中心が一致している場合に限定されず、気体口41の開口の少なくとも一部が吐出軸30上に位置している場合を含む。また、吐出軸30上に気体口41がない場合(吐出軸30の近傍に気体口41が位置している場合)でも、液柱34の根元35に対して気泡32を注入可能な気体口41であれば本発明を適用できる。
本発明では、気泡32によって液柱34のトポロジーを変化させる。つまり、新たな気液界面を液柱34内に追加する。これに因り、液柱34を迅速に切断して、吐出速度を低下させることなく、サテライトレス化を実現する。また、気泡32は極めて小さいマイクロバブル(直径1〜5μm)として液柱34内に注入することが可能であり、気泡32の発生、輸送に要するエネルギーが小さくて済む。したがって、効率的にサテライトレス化および微液滴化を図ることができる。
図2は、液体吐出用圧力波形71および気泡供給用圧力波形72の一例を示すタイミングチャートである。
液体吐出用圧力波形71は、ノズル51から液滴を吐出するためにノズル51内の液体に与えられる波形であり、第1の引き波形711、押し波形712、および、第2の引き波形713を含んで構成されている。
なお、図2では、図示の簡略化のため、液体吐出用圧力波形71における第2の引き波形713よりも後ろの波形を、定常状態に近似して直線で示しているが、実際には、第2の引き波形713には残留振動としての押し波形および引き波形が続く。
気泡供給用圧力波形72は、気泡32を供給するために気体管40内の気体に与えられる波形であり、液柱34に気泡32を注入するタイミングとしてのパルス波形720を有する。
液体吐出用圧力波形71の最初の押し波形712の最中に気体口41から気泡32を押し出してしまうと、液柱34内部に抱き込まれた気泡32が液柱34の伸長に併せて伸びてしまう。その結果として、却ってサテライト液滴を多く生じてしまう。これは特にテーパ形状のノズル51において著しい。何故ならば、ノズル51内の流速ベクトルが吐出軸30中心に向うため、気泡32も吐出軸30中心に圧縮され、液柱34内で細長くなってしまうからである。従って、図2に示すように、液柱伸長のための最初の押し波形712後の引き波形713の途中または終了時点で、パルス波形720により、気体口41から気泡32を押し出すことが、望ましい。
なお、気泡注入のためのパルス波形720が、最初の押し波形712の直後の引き波形713の期間に存在する場合を例に説明したが、このような場合に本発明は限定されず、残留振動としての図示を省略した引き波形または押し波形の期間にパルス波形720が存在する場合も本発明に含まれる。
図3は、マルチノズルの場合の液体吐出ヘッドの一例を示す平面透視図である。なお、図1で既に示した構成要素には、図1と同じ符号を付してある。
図3の液体吐出ヘッド50は、いわゆるフルライン型であり、被吐出媒体の搬送方向(図中に矢印Sで示す副走査方向)と直交する方向(図中に矢印Mで示す主走査方向)において、被吐出媒体の幅に対応する長さにわたり、被吐出媒体に向けて液体を打滴する多数のノズル51を2次元的に配列させた構造を有している。
図4は、図3の4−4線に沿った断面図である。
液体吐出ヘッド50は、ノズル51、ノズル51に連通する圧力室52、圧力室52へ液体を供給するための液体供給口53、圧力室52の容積を変化させることによりノズル51から液体を吐出させる液体吐出用の圧電素子58を含んでなる複数の液体吐出素子54が、主走査方向Mおよび主走査方向Mに対して所定の鋭角をなす斜め方向の2方向に沿って配列されている。圧力室52の液体供給口53は、複数の圧力室52で共通の液体流路に連通している。
また、液体吐出ヘッド50は、気体口41、気体口41に気体管40を介して連通する気体室42、気体室42へ気体を供給するための気体供給口43、気体室42の容積を変化させることにより気体口41から気泡を吐出させる気泡供給用の圧電素子48を含んでなる複数の気泡供給素子44が、主走査方向Mおよび主走査方向Mに対して所定の鋭角をなす斜め方向の2方向に沿って配列されている。気体室42の気体供給口43は、複数の気体室42で共通の気体流路に連通している。
なお、図3および図4では、図示の便宜上、一部の液体吐出素子54および一部の気泡供給素子44のみ描いている。
液体吐出素子54の圧電素子58には、図2の液体吐出用圧力波形71に相当する駆動信号が後述のヘッドドライバ(図16の207)から与えられる。また、気泡供給素子44の圧電素子48には、図2の気泡供給用圧力波形72に相当する駆動信号が、後述のヘッドドライバ(図16の207)から与えられる。このヘッドドライバ(図16の207)は、ノズル51のメニスカスの押し及び引きのタイミングを決める液体吐出用圧力波形71と、気体口41による気泡の注入タイミングを決める気泡供給用圧力波形72とを同期させる。この同期により、ノズル51のメニスカスが液柱の伸長のために最初に押された後、伸長途中の液柱に気泡が注入される。
気体管40は、一端が気体口41であり、他端は気体室42に接続されている。本例の気体管40は、ノズル51の吐出軸30と平行に配設されている。
このような液体吐出ヘッド50において、気泡供給素子44の圧電素子48によって気体室42の容積を変化させることにより、ノズル51内に配置された気体口41から、ノズル51の液体吐出方向に沿って、気泡が押し出される。気泡の発生面とノズル面とは略平行に配置されている。言い換えると、液体の吐出方向と気泡の押し出し方向とが略一致している。
また、液体吐出方向において、液柱の根元の液体(気体口41の近傍の液体)の流速以上の速度で、気体口41から気泡が押し出される。
なお、図2において、液体吐出用圧力波形71は、液体吐出素子54の圧電素子58に与えられる駆動信号の波形そのものを示しているわけではない。例えば、第2の引き波形713に相当する波形が駆動信号に無い場合、すなわち第2の引き波形がメニスカスの自発的な揺り返しにより形成されている場合でも、本発明を適用できる。
液柱34に気泡を注入する好適な条件について、以下説明する。
液柱34に気泡32を注入しない場合のメニスカス(気液界面)の変化について説明しておく。図5(a)は1回目の引き、図5(b)は1回目の押し、図5(c)は2回目の引き、図5(d)は2回目の押しにおけるメニスカスをそれぞれ示す。ここで、「引き」および「押し」とは、現象としてのメニスカスの形状に則した説明であって、必ずしも液体吐出素子54の圧電素子58に与えられた駆動信号のみに起因するものでない。たとえば、図5(c)から図5(d)への変化は、メニスカスの自発的な揺り返しも寄与している。
液柱34に気泡32を注入する場合、気泡注入のタイミングや位置には、特に注意が必要である。
最初の押しの途中に気泡を押し出した場合について、図6(a)〜(e)の模式図を用いて説明する。図6(a)は、ノズル51内のメニスカスを引く前を示しており、気体口41から気体(本例では大気)を未だ出していない。図6(b)は、メニスカスを引いた状態を示しており、気体を出す直前である。図6(c)は、メニスカスを押し始めた状態を示しており、伸長を開始したメニスカス(初期の液柱)に対して気体の注入を開始した。このようにメニスカスの最初の押しの途中に気体を出してしまうと、図6(d)および(e)に示すように、液柱34の内部に抱きこまれた気体も、液柱34の伸長に併せて伸びてしまう。この液柱34の内部の気体柱が、複数の気泡へと分裂する事に因って、却ってサテライト液滴を多く生じてしまうことになる。
この問題は、気体を押し出す速度および体積にも依存する。液体の流速に比べて十分速い速度で気体を押し出すか、ノズル51のアウトレット径に近い直径の気泡として押し出せば、上記の問題は起こらないと考えられる。しかし、気体の注入速度や体積に十分な注意が必要となるので、図6(c)に示したようなタイミングよりも、図1(a)および図2に示したように、ノズル51内のメニスカスを最初に押した後の引きのタイミングで、気体口41から気体を押し出すことが、望ましい。
なお、気泡32の直径は、図7(a)では7.5μm、図8(a)では9μm、図9(a)では7.5μmである。
以下では、大きい気泡の場合と小さい気泡の場合とに分けて、タイミングおよび位置について詳細に説明する。
大きい気泡(直径5〜10μm)は、潰れたり溶解したりする事は無いが、メニスカスの引き始め時点で早々に入れてしまうと、図7(a)に示すように、気泡32の入れる位置がメニスカス31に近接している場合には、図7(b)および(c)に示すように、引き込み時に大気側に開放されてしまって、消失する可能性がある。このような事が起こらない程度に、図8(a)に示すように、メニスカス31から離れた位置に気泡32を入れた場合でも、図8(b)および(c)に示すように、液柱34の先頭部分に気泡32が位置することになって、液柱34の分断に寄与しない。図9(a)に示すように、メニスカス31からさらに離れた位置に気泡32を入れると、図9(b)に示す状態から、液柱34の伸長と同時に気泡32が引き伸ばされて、図9(c)に示すように、液柱34の内部に複数の微小気泡として分布することになり、結局、液柱34を複数ミストに分断してしまう事になりかねない。また、図示を省略したが、ノズル51の内部では、気泡32はその位置で前後動するだけであって、やはり液柱34の分断には何ら寄与しない事になってしまう。
従って、図1(a)に示したように、ノズル51内のメニスカス31と液柱34との接続点が明確に形成されてから、そこに気泡32を入れ込むことが、望ましい。
小さい気泡(直径5μm未満)は、大きい気泡のように引き伸ばされる事は無いが、入れ込むタイミングと位置は、大きい気泡の場合と同様である。小さい気泡の場合には、メニスカスの引き始め時点で早々に入れてしまうと、特に圧力変動の大きな箇所では潰れたり溶解したりして、そもそも液柱分断時には、既に消失してしまっている事になりかねない。
つまり、気泡の大小によって考慮すべき現象には若干異なる点はあるが、図1(a)に示したように、ノズル51内のメニスカス31を最初に押した後、くびれ形状を有する液柱34の根元35に対して、気泡32を注入することが、望ましい。より好ましくは、最初の押しの直後の引きの期間において、その引き期間の後半で注入する。最も好ましくは、最初の押し直後の引きが終わる時点で注入する。
液柱34に注入する気泡32のサイズは、液柱34の根元の直径未満である。液柱34の根元の直径は、常識的に考えて、ノズル51のアウトレット510の直径以下である。
前述の図5(a)から(d)に示した場合において、図5(c)の時点(すなわち引きの終了時点)での液柱34の根元35の直径はおよそ4〜5μmであり、前述の「小さい気泡」を適切に注入することが出来る条件であれば、十分と言える。
図10(a)および(b)は、液柱34に適切に気泡32を注入した場合のシミュレーション結果を示す。その条件は以下の通りである。
<シミュレーションの条件>
液体の粘度:10cP
ノズルインレット直径:72μm
ノズルアウトレット直径:24μm
ノズル板厚:30μm
気泡の直径:1μm
シミュレーションは、幅1μmの円形溝を2本彫った円柱を、ノズル51の吐出軸上に配置し、且つ、溝領域に空気を置いて行った。この場合、溝は、大気には連通していないが、吐出による負圧はこの溝内の空気を引き出すのに十分であり、結果的に、液柱34内に微小気泡32が巻き込まれる。
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気泡の直径:1μm
シミュレーションは、幅1μmの円形溝を2本彫った円柱を、ノズル51の吐出軸上に配置し、且つ、溝領域に空気を置いて行った。この場合、溝は、大気には連通していないが、吐出による負圧はこの溝内の空気を引き出すのに十分であり、結果的に、液柱34内に微小気泡32が巻き込まれる。
図17に示す従来例と、図10(a)および(b)に示す本実施例とを比較する。図17の従来例も図10の本発明の実施例も、ノズル51のインレットに入力している流体の速度波形(引き−押し−引き波形による)はいずれも同一である。しかし、図17の従来例では、液体に速度波形を印加後、約26μS経っても液柱34がノズル51内のメニスカス31に接続していた。その一方で、図10(b)に示すように本発明の実施例では、液柱34の早期切断が実現し、吐出速度の低下を殆ど生じない。
以上、液柱に気泡を注入する手段として、ノズル51の吐出軸30上に液体口41を設けて、液体口41から圧力によって気体を押し出す場合を例に説明したが、このような場合に本発明は限定されない。
図11は、熱電対61(発熱抵抗体)をノズル51の吐出軸30上に配置した場合を示す。熱電対61の加熱による相変化や電気分解反応等により、気泡を発生させる。熱電対61としては、例えば、互いの接合点61Xにおいてゼーベック効果を起こす異種金属61A、61Bを用いる。異種金属61A、61Bの材料としては、例えば、ニッケル合金とクロム合金とを用いる。
図12は、気体管40として、大気に連通した管(大気連通管)を用いた場合を示す。気体管40の一端は気体口41であり、他端は大気に開放されている。液体吐出による負圧で、気体管40を介して微小気泡群が自然供給され、微小気泡群が合一して形成された気泡が液柱の内部に自然供給される。この場合、気泡が引き出されるタイミングが図2に示すタイミングに相当するように、構造決定および定常圧力調整することが必要である。
また、図4では、気体管40をノズル51の吐出軸30に沿って平行に配置した場合を例示しているが、このような場合に本発明は限定されない。図13に示すように、気体管40を吐出軸30とは非平行に配置してもよい。本例でも気体口41は、ノズル51の吐出軸30上に配置されている。気体管40の気体供給側は、本例では、ノズル51が形成されているノズル板501に配設されている。
また、図4では、気体口41をノズル51のアウトレット510の位置よりも液体供給側(図4の圧力室52側)に配置された場合を例示しているが、このような場合に本発明は限定されない。図14に符号41aで示すように、ノズル51のアウトレット510の位置よりも液体吐出側に気体口を配置してもよいし、符号41bで示すように、ノズル51のアウトレット510の位置に気体口を配置してもよい。
なお、気体口41(41a、41b、41c)の直径は、ノズル51のアウトレット510の直径よりも、小さい。なお、本例のノズル51はテーパ形状であり、ノズル51のアウトレット510の直径は、ノズル51のインレット511の直径よりも小さい。
大きな気泡を液体と同程度以下の速度で注入する場合には、符号41aで示すように液体吐出側に飛び出している形態を適用し得る。大きな気泡を低速で注入すると、液柱内で気泡が細長く伸びて分布してしまうためである。
大きな気泡を液体よりも速い速度で注入する場合、あるいは小さな気泡を注入する場合には、符号41a、41b、41cで示したいずれの位置でも可能である。すなわち液体吐出側および液体供給側のいずれでもよい。
ただし、メニスカス31を最初に押した直後の引きで液柱の根元に気泡を注入する場合には、ノズル50のアウトレット510の位置よりも液体供給側に気体口41cを配置する。
以上説明した本実施形態の液体吐出ヘッド50では、ノズル51内の液体に圧力を与え、ノズル51から液体を押し出して、液柱を伸長させ、伸長途中の液柱の根元に当該液柱の根元の径よりも小さい径の気泡を注入し、気泡によって液柱を切断して、分離された液滴を飛翔させる。これにより、液柱を迅速に切断して、吐出速度を低下させることなくサテライトレス化を実現することができる。
(画像形成装置)
図15は、画像形成装置100の一例の全体構成図である。
図15は、画像形成装置100の一例の全体構成図である。
図15において、画像形成装置100は、インクの各色別に複数の液体吐出ヘッド112K、112C、112M、112Yを有する液体吐出部112と、各液体吐出ヘッド112K、112C、112M、112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、紙などの記録媒体116(被吐出媒体)を供給する給紙部118と、記録媒体116のカールを除去するデカール処理部120と、液体吐出部112のノズル面に対向して配置され、記録媒体116の平面性を保持しながら記録媒体116を搬送する搬送部122と、液体吐出部112による吐出結果(液滴の着弾状態である)を読み取る吐出検出部124と、プリント済みの記録媒体を外部に排出する排紙部126とを備えている。
なお、図15の液体吐出ヘッド112K、112C、112M、112Yとしては、図3および図4に示した液体吐出ヘッド50が用いられる。
液体吐出ヘッド112K、112C、112M、112Yから記録媒体116に向けて着色剤(「色材」ともいう)を含む液体(インク)を吐出することにより、記録媒体116に画像を形成する。
図15においては、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)を給紙するものを示しているが、予めカットされているカット紙を給紙するものを用いてもよい。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッタ128が設けられる。ところで、給紙部118から送り出される記録媒体116は一般に巻き癖が残りカールする。このカールを除去するために、デカール処理部120において巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム130で記録媒体116に熱を与える。デカール処理後、カット済の記録媒体116は、搬送部122へと送られる。
デカール処理後、カットされた記録紙116は、搬送用ローラ対131によってニップ搬送され、プラテン132上へと送られる。プラテン132の後段(液体吐出部112の下流側)にも搬送用ローラ対133が配置されており、前段の搬送用ローラ対131と後段の搬送用ローラ対133とが連動して記録紙116を所定の速度で搬送する。
プラテン132は記録紙116の平面性を保ちつつ記録紙116を保持(支持)する部材(記録媒体の保持手段)として機能するとともに、背面電極として機能する部材である。図15におけるプラテン132は記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有し、少なくとも液体吐出部112のノズル面及び吐出検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
搬送部122により形成される用紙搬送路上において液体吐出部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、プリント前の記録媒体116に加熱空気を吹きつけ、記録媒体116を加熱する。プリント直前に記録媒体116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
液体吐出部112は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを媒体搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。具体的には、各液体吐出ヘッド112K、112C、112M、112Yは、本画像形成装置100が対象とする最大サイズの記録媒体116の少なくとも一辺を超える長さにわたってノズル(液体吐出口)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録媒体116の搬送方向(媒体搬送方向)に沿って、上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の順に各色インクに対応した液体吐出ヘッド112K、112C、112M、112Yが配置されている。記録媒体116を搬送しつつ各液体吐出ヘッド112K、112C、112M、112Yからそれぞれ色材を含むインクを吐出することにより記録媒体116上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色別に設けられてなる液体吐出部112によれば、媒体搬送方向(副走査方向)について記録媒体116と液体吐出部112を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録媒体116の全面に画像を記録することができる。これにより、インク吐出ヘッドが媒体搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速プリントが可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録媒体の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録媒体の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)のプリントをするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)のプリントを繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録媒体の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また、本実施形態では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インクの色数や色の組み合わせについては本実施形態に示す例には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出するインク吐出ヘッドを追加する構成も可能である。
インク貯蔵/装填部114は、各液体吐出ヘッド112K、112C、112M、112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各インクタンクは図示を省略した管路を介して各液体吐出ヘッド112K、12C、112M、112Yと連通されている。
吐出検出部124は、液体吐出部112の吐出結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
吐出検出部124の後段には、後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、プリントされた画像面を乾燥させる手段であり、例えば加熱ファンが用いられる。後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の凹凸形状の表面を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部126から排出される。この画像形成装置100では、本画像のプリント物と、テストプリントのプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテストプリントとを同時に並列に形成する場合は、カッタ(第2のカッタ)148によってテストプリントの部分を切り離す。カッタ148は、排紙部126の直前に設けられており、画像余白部にテストプリントを行った場合に、本画像とテストプリント部を切断するものである。また、図示を省略したが、本画像の排出部126Aには、オーダ別に画像を集積するソータが設けられている。
図16は、画像形成装置100の一例の制御系を示すブロック図である。
図16において、画像形成装置100は、主として、液体吐出ヘッド50(図15の112)、通信インターフェース201、システムコントローラ202、メモリ203a、203b、搬送用モータ204、搬送ドライバ205、プリント制御部206、ヘッドドライバ207、給液部208、および、給液制御部209を含んで構成されている。
本画像形成装置100は、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)の各色毎に合計4つの液体吐出ヘッド50を備える。
通信インターフェース201は、ホストコンピュータ290から送信される画像データを受信する画像データ入力手段である。通信インターフェース201には、有線又は無線のインターフェースを適用することができる。この通信インターフェース201によって画像形成装置100に取り込まれた画像データは、この画像データ記憶用の第1のメモリ203aに一旦記憶される。
システムコントローラ202は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路等から構成されており、所定のプログラムに従って画像形成装置100の全体を制御する主制御手段である。すなわち、システムコントローラ202は、通信インターフェース201、搬送ドライバ205、プリント制御部206等の各部を制御する。
搬送用モータ204は、紙などの被吐出媒体を搬送するためのローラやベルト等に動力を与える。この搬送用モータ204によって、被吐出媒体と液体吐出ヘッド50とが相対的に移動される。搬送ドライバ205は、システムコントローラ202からの指示に従って搬送用モータ204を駆動する回路である。
給液部208は、インクタンク(図15のインク貯蔵/装填部114)から液体吐出ヘッド50へインクを供給する。
給液制御部209は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を含んで構成されており、給液部208を用いて、液体吐出ヘッド50に対してインクを供給する制御を行うものである。
プリント制御部206は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路等から構成されており、画像形成装置100に入力される画像データに基づいて、液体吐出ヘッド50が被吐出媒体に向けて吐出(打滴)を行って被吐出媒体上にドットを形成するために必要なドットデータ(「打滴データ」ともいう)を生成する。すなわち、プリント制御部206は、システムコントローラ202の制御に従い、第1のメモリ203a内の画像データから打滴用のドットデータを生成するための各種の加工、補正などの画像処理を行う画像処理手段として機能し、生成したドットデータをヘッドドライバ207に供給する。
プリント制御部206には第2のメモリ203bが付随しており、プリント制御部206における画像処理時にドットデータ等が第2のメモリ203bに一時的に格納される。
ヘッドドライバ207は、プリント制御部206から与えられるドットデータ(第2のメモリ203bに記憶されたドットデータである)に基づき、液体吐出ヘッド50の液体吐出用の圧電素子58に対して液体吐出用の駆動信号を出力する。このヘッドドライバ207から出力された駆動信号が液体吐出ヘッド50の液体吐出用の圧電素子58に与えられることによって、液体吐出ヘッド50のノズル51から被吐出媒体に向けて液体(液滴)が吐出される。
また、ヘッドドライバ207は、ドットデータに基づき、液体液体吐出ヘッド50の気泡供給用の圧電素子48に対して気泡供給用の駆動信号を出力する。このヘッドドライバ207から出力された駆動信号が液体吐出ヘッド50の気泡供給用の圧電素子48に与えられることによって、液体吐出ヘッド50の気体口41から液柱に向けて気泡が注入される。
なお、インクを吐出する場合について説明したが、このような場合に本発明は特に限定されず、インク以外の液体を吐出する場合に適用できることは、言うまでもない。
また、いわゆるピエゾ式の液体吐出ヘッドを例に説明したが、このような場合に本発明は特に限定されず、ピエゾ式以外の例えばバブルジェット式等の液体吐出ヘッドを用いる場合に適用できることも、言うまでもない。
本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
30…吐出軸、32…気泡、34…液柱、40…気体管、41…気体口(気泡供給手段)、42…気体室、48…圧電素子、50…液体吐出ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、58…圧電素子、61…熱電対(気泡供給手段)、206…プリント制御部、207…ヘッドドライバ(駆動手段)、510…ノズルのアウトレット、511…ノズルのインレット
Claims (10)
- ノズルから液体を吐出する液体吐出方法において、
気泡を供給する気泡供給手段を用い、前記ノズルから伸長している途中の液柱の根元に対して、気泡を注入することを特徴とする液体吐出方法。 - 前記気泡の注入は、前記ノズルのメニスカスを前記液柱の伸長のために最初に押した後、行うことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出方法。
- ノズル内の液体に圧力を与え、前記ノズルから液体を押し出して、液柱を伸長させ、
伸長途中の前記液柱の根元に該液柱の根元の径よりも小さい径の気泡を注入し、
前記気泡によって前記液柱を切断して、分離された液滴を飛翔させることを特徴とする液体吐出方法。 - 前記ノズル内に配置された気体口から、前記ノズルの液体吐出方向に沿って、前記気泡を押し出すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体吐出方法。
- 前記ノズル内に配置された気体口から、前記液柱の根元での液体の流速以上の速度で、前記気泡を押し出すことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出方法。
- 液体を吐出するノズルと、
前記ノズルから伸長している途中の液柱の根元に気泡を注入する気泡供給手段と、
を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記気泡供給手段は、気体を出す気体口および発熱体のうち少なくとも一方を含んで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記気泡供給手段は、前記ノズルの吐出軸上に配置されていることを特徴とする請求項6または7に記載の液体吐出ヘッド。
- 請求項6ないし8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置。
- 前記ノズルのメニスカスの押し及び引きのタイミングを決める液体吐出用波形と、前記気泡供給手段による気泡の注入タイミングを決める気泡供給用波形とを同期させて前記液体吐出ヘッドに供給する駆動手段を備え、
前記気泡供給用波形は、前記液体吐出用波形による前記メニスカスの最初の押し後に前記気泡の注入を行うためのパルス波形を有することを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
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