以下、本発明を適用した光ピックアップを用いた光ディスク装置について、図面を参照して説明する。
本発明が適用された光ディスク装置1は、図1に示すように、光ディスク2から情報記録再生を行う光ピックアップ3と、光ディスク2を回転操作する駆動手段としてのスピンドルモータ4と、光ピックアップ3を光ディスク2の径方向に移動させる送りモータ5とを備えている。この光ディスク装置1は、フォーマットの異なる3種類の光ディスク及び記録層が積層化された光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行うことができる3規格間互換性を実現した光ディスク装置である。
ここで用いられる光ディスクは、例えば、発光波長が785nm程度の半導体レーザを用いたCD(Compact Disc)、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)等の光ディスクや、発光波長を655nm程度の半導体レーザを用いたDVD(Digital Versatile Disc)、DVD−R(Recordable)、DVD−RW(ReWritable)、DVD+RW(ReWritable)等の光ディスクや、さらに発光波長が短い405nm程度(青紫色)の半導体レーザを用いた高密度記録が可能なBD(Blu-ray Disc(登録商標))等の高密度記録光ディスクである。
特に、以下で光ディスク装置1により情報の再生又は記録を行う3種類の光ディスク2として、保護層の厚さが0.1mmで波長405nm程度の光ビームを記録再生光として使用する高密度記録が可能な上述したBD等の第1の光ディスク11と、保護層の厚さが0.6mmで波長655nm程度の光ビームを記録再生光として使用するDVD等の第2の光ディスク12と、保護層の厚さが1.1mmで波長785nm程度の光ビームを記録再生光として使用するCD等の第3の光ディスク13とを用いるものとして説明する。
光ディスク装置1において、スピンドルモータ4及び送りモータ5は、ディスク種類判別手段ともなるシステムコントローラ7からの指令に基づいて制御されるサーボ制御部9によりディスク種類に応じて駆動制御されており、例えば、第1の光ディスク11、第2の光ディスク12、第3の光ディスク13に応じて所定の回転数で駆動される。
光ピックアップ3は、3波長互換光学系を有する光ピックアップであり、規格の異なる光ディスクの記録層に対して異なる波長の光ビームを保護層側から照射するとともに、この光ビームの記録層における反射光を検出する。光ピックアップ3は、検出した反射光から各光ビームに対応する信号を出力する。
光ディスク装置1は、光ピックアップ3から出力された信号に基づいてフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、RF信号等を生成するプリアンプ部14と、プリアンプ部14からの信号を復調し又は外部コンピュータ17等からの信号を変調するための信号変復調器及びエラー訂正符号ブロック(以下、信号変復調&ECCブロックと記す。)15と、インターフェース16と、D/A,A/D変換器18と、オーディオ・ビジュアル処理部19と、オーディオ・ビジュアル信号入出力部20とを備える。
このプリアンプ部14は、光検出器からの出力に基づいて、非点収差法等によってフォーカスエラー信号を生成し、また、3ビーム法、DPD法、DPP法等によってトラッキングエラー信号を生成し、更にRF信号を生成し、RF信号を、信号変調&ECCブロック15に出力する。また、プリアンプ部14は、フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号とをサーボ制御部9に出力する。
信号変調&ECCブロック15は、第1の光ディスクに対して、データの記録を行うとき、インタフェース16又はD/A,A/D変換器18から入力されたディジタル信号に対して、LDC−ECC及びBIS等のエラー訂正方式によってエラー訂正処理を行い、次いで、1−7PP方式等の変調処理を行う。また、信号変調&ECCブロック15は、第2の光ディスクに対してデータを記録するとき、PC(Product Code)等のエラー訂正方式に従ってエラー訂正処理を行い、次いで、8−16変調等の変調処理を行う。更に、信号変調&ECCブロック15は、第3の光ディスクに対してデータを記録するとき、CIRC等のエラー訂正方式によってエラー訂正処理を行い、次いで、8−14変調処理等の変調処理を行う。そして、信号変調&ECCブロック15は、変調されたデータをレーザ制御部21に出力する。更に、信号変調&ECCブロック15は、各光ディスクの再生を行うとき、プリアンプ14から入力されたRF信号に基づいて復調処理を行い、更に、エラー訂正処理を行って、インタフェース16又はデータをD/A,A/D変換器18に出力する。
なお、データ圧縮してデータ記録するときには、圧縮伸長部を変調&ECCブロック15とインタフェース16又はD/A,A/D変換器18との間に設けても良い。この場合、データは、MPEG2やMPEG4といった方式でデータが圧縮される。
サーボ制御部9は、プリアンプ部14からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号が入力される。サーボ制御部9は、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号が0となるようなフォーカスサーボ信号やトラッキングサーボ信号を生成し、これらのサーボ信号に基づいて、対物レンズを駆動する2軸アクチュエータ等の対物レンズ駆動部を駆動制御する。また、プリアンプ部14からの出力より、同期信号等を検出して、CLV(Constant Linear Velocity)やCAV(Constant Angular Velocity)、更にはこれらの組み合わせの方式等で、スピンドルモータをサーボ制御する。
レーザ制御部21は、光ピックアップ3のレーザ光源を制御する。特に、この具体例では、レーザ制御部21は、記録モード時と再生モード時とでレーザ光源の出力パワーを異ならせる制御を行っている。また、光ディスク2の種類に応じてもレーザ光源の出力パワーを異ならせる制御を行っている。レーザ制御部21は、ディスク種類判別部22によって検出された光ディスク2の種類に応じて光ピックアップ3のレーザ光源を切り換えている。
ディスク種類判別部22は、第1〜第3の光ディスク11,12,13の間の表面反射率、形状的及び外形的な違い等から反射光量の変化を検出し光ディスク2の異なるフォーマットを検出することができる。
光ディスク装置1を構成する各ブロックは、ディスク種類判別部22における検出結果に応じて、装着される光ディスク2の仕様に基づく信号処理ができるように構成されている。
システムコントローラ7は、ディスク種類判別部22で判別された光ディスクの種類に応じて装置全体を制御する。また、システムコントローラ7は、ユーザからの操作入力に応じて、光ディスク最内周にあるプリマスタードピットやグルーブ等に記録されたアドレス情報や目録情報(Table Of Contents;TOC)に基づいて、記録再生を行う光ディスクの記録位置や再生位置を特定し、特定した位置に基づいて、各部を制御する。
以上のように構成された光ディスク装置1は、スピンドルモータ4によって、光ディスク2を回転操作し、サーボ制御部9からの制御信号に応じて送りモータ5を駆動制御し、光ピックアップ3を光ディスク2の所望の記録トラックに対応する位置に移動することで、光ディスク2に対して情報の記録再生を行う。
具体的には、光ディスク装置1により記録再生するときには、サーボ制御部9は、CAVやCLVやこれらの組み合わせで光ディスク2を回転する。光ピックアップ3は、光源から光ビームを照射して光検出器により光ディスク2からの戻りの光ビームを検出し、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成し、これらフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号に基づいて対物レンズ駆動機構により対物レンズを駆動してフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行う。
また、光ディスク装置1により記録する際には、外部コンピュータ17からの信号がインターフェース16を介して信号変復調&ECCブロック15に入力される。信号変復調&ECCブロック15は、インターフェース16又はA/D変換器18から入力されたディジタルデータに対して上述したような所定のエラー訂正符号を付加し、更に所定の変調処理を行った後に記録信号を生成する。レーザ制御部21は、信号変復調&ECCブロック15で生成された記録信号に基づいて、光ピックアップ3のレーザ光源を制御して、所定の光ディスクに記録する。
また、光ディスク2に記録された情報を光ディスク装置1により再生する際には、光検出器で検出された信号に対して、信号変復調&ECCブロック15が復調処理を行う。信号変復調&ECCブロック15により復調された記録信号がコンピュータのデータストレージ用であれば、インターフェース16を介して外部コンピュータ17に出力される。これにより、外部コンピュータ17は、光ディスク2に記録された信号に基づいて動作することができる。また、信号変復調&ECCブロック15により復調された記録信号がオーディオビジュアル用であれば、D/A変換器18でデジタルアナログ変換され、オーディオビジュアル処理部19に供給される。そしてオーディオビジュアル処理部19でオーディオビジュアル処理が行われ、オーディオビジュアル信号入出力部20を介して、図示しない外部のスピーカやモニターに出力される。
ここで、上述した記録再生用光ピックアップ3について詳しく説明する。
本発明を適用した光ピックアップ3は、図2に示すように、第1の波長の光ビームを出射する第1の出射部を有する第1の光源部31と、第1の波長より長い第2の波長の光ビームを出射する第2の出射部を有する第2の光源部32と、第2の波長より長い第3の波長の光ビームを出射する第3の出射部を有する第3の光源部33と、この第1乃至第3の出射部から出射された光ビームを光ディスク2の信号記録面上に集光する対物レンズ34と、第1乃至第3の出射部と対物レンズ34との間の光路上に設けられる回折光学素子35とを備える。
また、光ピックアップ3は、第2及び第3の出射部と回折光学素子35との間に設けられ、第2の出射部から出射された第2の波長の光ビームの光路と第3の出射部から出射された第3の波長の光ビームの光路とを合成する光路合成手段として第1のビームスプリッタ36と、第1のビームスプリッタ36と回折光学素子35との間に設けられ、第1のビームスプリッタ36で光路を合成された第2及び第3の波長の光ビームの光路と、第1の出射部から出射された第1の波長の光ビームの光路とを合成する光路合成手段として第2のビームスプリッタ37と、第2のビームスプリッタ37と回折光学素子35との間に設けられ、第2のビームスプリッタで光路を合成された第1乃至第3の波長の光ビームの往路の光路と、光ディスクで反射された第1乃至第3の波長の光ビームの戻り(以下、「復路」ともいう。)の光路とを分離する光路分離手段として第3のビームスプリッタ38とを有する。
さらに、光ピックアップ3は、第1の光源部31の第1の出射部と第2のビームスプリッタ37との間に設けられ、第1の出射部から出射された第1の波長の光ビームをトラッキングエラー信号等の検出のために3ビームに回折する第1のグレーティング39と、第2の光源部32の第2の出射部と第1のビームスプリッタ36との間に設けられ、第2の出射部から出射された第2の波長の光ビームをトラッキングエラー信号等の検出のために3ビームに回折する第2のグレーティング40と、第3の光源部33の第3の出射部と第1のビームスプリッタ36との間に設けられ、第3の出射部から出射された第3の波長の光ビームをトラッキングエラー信号等の検出のために3ビームに回折する第3のグレーティング41とを有する。
また、光ピックアップ3は、第3のビームスプリッタ38と回折光学素子35との間に設けられ、第3のビームスプリッタ38で光路を合成された第1乃至第3の波長の光ビームの発散角を変換して略平行光の状態又は略平行光に対して拡散若しくは収束した状態となるように調整して出射させる発散角変換手段としてのコリメータレンズ42と、コリメータレンズ42と回折光学素子35との間に設けられ、コリメータレンズ42に発散角を調整された第1乃至第3の波長の光ビームに1/4波長の位相差を与える1/4波長板43と、回折光学素子35と1/4波長板43との間に設けられ、対物レンズ34及び回折光学素子35の光軸に略直交する平面内で上述した光学部品を経由された光ビームを反射して立ち上げることにより対物レンズ34及び回折光学素子35の光軸方向に光ビームを出射させる立ち上げミラー44とを有する。
さらに、光ピックアップ3は、第3のビームスプリッタ38で往路の第1乃至第3の波長の光ビームの光路から分離された復路の第1乃至第3の波長の光ビームを受光して検出する光検出器45と、第3のビームスプリッタ38と光検出器45との間に設けられ、第3のビームスプリッタ38で分離された復路の第1乃至第3の波長の光ビームを光検出器45のフォトディテクタ等の受光面に集光させるとともにフォーカシングエラー信号等の検出のための非点収差を付与するマルチレンズ46とを有する。
第1の光源部31は、第1の光ディスク11に対して405nm程度の第1の波長の光ビームを出射する第1の出射部を有する。第2の光源部32は、第2の光ディスク12に対して655nm程度の第2の波長の光ビームを出射する第2の出射部を有する。第3の光源部33は、785nm程度の第3の光ディスクに対して第3の波長の光ビームを出射する第3の出射部を有する。尚、ここでは、第1乃至第3の出射部をそれぞれ別々の光源部31,32,33に配置するように構成したが、これに限られるものではなく、第1乃至第3の出射部の内2つの出射部を有する光源部と、残りの1つの出射部を有する光源部とを異なる位置に配置するように構成してもよく、さらに、第1乃至第3の出射部を略同一位置に有する光源部となるように構成してもよい。また、第1乃至第3の出射部から出射される光ビームの波長は、上述のものに限られるものではなく、第1の波長が450nmよりも短ければよく、第2の波長が450nmよりも長く700nmよりも短ければよく、第3の波長が700nmよりも長ければよく、これらの範囲で使用する光ディスクに合わせた各波長の光ビームを出射させるように構成すればよい。
対物レンズ34は、入射した第1乃至第3の波長の光ビームを光ディスク2の信号記録面上に集光させる。この対物レンズ34は、図示しない2軸アクチュエータ等の対物レンズ駆動機構によって移動自在に保持されている。そして、この対物レンズ34は、光検出器45で検出された光ディスク2からの戻り光のRF信号により生成されたトラッキングエラー信号及びフォーカシングエラー信号に基づいて、2軸アクチュエータ等により移動操作されることにより、光ディスク2に近接離間する方向及び光ディスク2の径方向の2軸方向へ移動される。対物レンズ34は、第1乃至第3の出射部から出射される光ビームが光ディスク2の信号記録面上で常に焦点が合うように、この光ビームを集束するとともに、この集束された光ビームを光ディスク2の信号記録面上に形成された記録トラックに追従させる。尚、対物レンズ34が保持される対物レンズ駆動機構のレンズホルダに、この対物レンズ34と一体となるように後述の回折光学素子35を保持するように構成することにより、対物レンズ34のトラッキング方向への移動等の視野振りの際にも回折光学素子35に設けた回折部50の後述の作用効果を適切に発揮することができる。
回折光学素子35は、その一方の面として例えば、入射側の面に複数の回折領域からなる回折部50が設けられており、この回折部50により、複数の回折領域毎に通過する第1乃至第3の波長の光ビームのそれぞれを所定の次数となるように回折して対物レンズ34に入射させ、すなわち、所定の発散角を有する拡散状態又は収束状態の光ビームとして対物レンズ34に入射させることで、この単一の対物レンズ34を用いて第1乃至第3の波長の光ビームをそれぞれに対応する3種類の光ディスクの信号記録面に球面収差を発生しないように適切に集光することを可能とする。
回折部50を有する回折光学素子35は、例えば、図3(a)に示すように、回折部50を通過した第1の波長の光ビームBB0を+1次回折光BB1となるように回折して対物レンズ34に入射させ、すなわち、所定の発散角を有する拡散状態の光ビームとして対物レンズ34に入射させることで、第1の光ディスク11の信号記録面に適切に集光させ、図3(b)に示すように、回折部50を通過した第2の波長の光ビームBD0を−1次回折光BD1となるように回折して対物レンズ34に入射させ、すなわち、所定の発散角を有する収束状態の光ビームとして対物レンズ34に入射させることで、第2の光ディスク12の信号記録面に適切に集光させ、図3(c)に示すように、回折部50を通過した第3の波長の光ビームBC0を−2次回折光BC1となるように回折して対物レンズ34に入射させ、すなわち、所定の発散角を有する収束状態の光ビームとして対物レンズ34に入射させることで、第3の光ディスク13の信号記録面に適切に集光させることにより、単一の対物レンズ34を用いて3種類の光ディスクの信号記録面に球面収差を発生しないように適切に集光することを可能とする。尚、ここでは、回折部50の複数の回折領域において、同じ波長の光ビームを同じ回折次数の回折光とする例について図3を用いて説明したが、本発明を適用した光ピックアップ3を構成する回折部50は、後述のように、各領域毎に各波長に対する回折次数を設定し、より球面収差を低減するように構成することを可能とする。
具体的に、図4(a)及び図4(b)に示すように、回折光学素子35の入射側の面に設けられた回折部50は、最内周部に設けられ略円形状の第1の回折領域(以下、「内輪帯」ともいう。)51と、第1の回折領域51の外側に設けられ輪帯状の第2の回折領域(以下、「中輪帯」ともいう。)52と、第2の回折領域52の外側に設けられ輪帯状の第3の回折領域(以下、「外輪帯」ともいう。)53とを有する。
内輪帯である第1の回折領域51は、輪帯状で、基準面に対して複数の段部からなる凹凸形状の単位周期構造(以下、「第1の単位周期構造」ともいう。)が輪帯の半径方向に連続的に設けられ、且つ単位周期構造のピッチが一定又は連続的に変化して設けられ、基準面に対する各段部の光軸方向の高さ及び1周期の幅に対する各段部の幅の割合が周期的とされた第1の回折構造が形成され、通過する第1の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第1の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m1iの回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が70%以上となるようにして発生させる。
また、第1の回折領域51は、第1の回折構造により、通過する第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m2iの回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が50%以上となるようにして発生させる。
また、第1の回折領域51は、第1の回折構造により、通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m3iの回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が30%以上となるようにして発生させる。
このように、第1の回折領域51は、上述の各波長の光ビームに対して上述の所定の次数の回折光が支配的となり且つ所定の回折効率以上となるのに適するような回折構造が形成されているため、第1の回折領域51を通過して所定の次数の回折光とされた各波長の光ビームが対物レンズ34によりそれぞれの光ディスクの信号記録面に集光される際の球面収差を補正して低減することを可能とする。
さらに、第1の回折領域51は、上記の各波長の光ビームの各次数の回折光の各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化が1%未満として各回折光を発生させることができ、波長変動により回折光の回折効率が変化しにくい性質(以下、「波長変動耐性」ともいう。)を有する構成とされている。
具体的には、第1の回折領域51は、図4及び図5(a)に示すように、光軸を中心とした輪帯状でこの輪帯の断面形状が、所定の深さ(以下、「溝深さ」ともいう。)dを有し、所定の段数S(Sは、正の整数とする。)の複数の段部からなる凹凸形状の単位周期構造が輪帯の半径方向に連続して形成されるとともに、この単位周期構造のピッチが半径方向の外周方向に向かうにつれて徐々に小さくなるように変化して形成されている。
ここで、上述の回折構造における輪帯の断面形状とは、輪帯の半径方向を含む面、すなわち、輪帯の接線方向に直交する面における断面形状を意味する。また、ここで単位周期構造が連続して形成されているとは、ある一定の周期形状が連続して複数設けられていることを意味し、具体的にここでは、基準面に対する各段部の光軸方向の高さと、1周期の幅に対する各段部の幅の割合とが周期的とされており、すなわち、隣接する単位周期構造において対応する各段部の上述の高さ及び上述の幅の割合とが等しくされている。また、ここでは、単位周期構造のピッチが半径方向の外周方向に向かうにつれて小さくなるように変化して形成されるようにしたが、単位周期構造のピッチが一定又は連続的に変化して設けられていればよい。また、単位周期構造のピッチとは、単位周期構造の形成方向、すなわち、半径方向の大きさ(幅)をいう。また、所定の段数の複数の段部からなる凹凸形状の単位周期構造とは、基準面に対して各段部の光軸方向の高さがそれぞれ所定の高さとされた第1乃至第Sの段部を有する凹凸形状が形成されている構造であり、さらに、換言すると、基準面に対して光軸方向にそれぞれ所定の距離を有して形成された第1乃至第(S+1)の光学面を有して形成されている構造である。また、回折構造における所定の深さ(溝深さ)dは、基準面に対して形成される凹凸形状の最も表面側(最高段、浅い位置)に位置される光学面と、凹凸形状の最も素子側(最低段、深い位置)に位置される光学面との光軸方向の距離を意味する。この点については、後述する図5(b)及び図5(c)についても同様である。尚、上述の第1の回折構造並びに後述の第2及び第3の回折構造において、支配的となる回折次数及び単位周期構造の溝幅等を設定することにより、所定の回折角度及び回折効率を得るとともに、回折次数がプラスであるかマイナスであるかに応じて凹凸形状の形成方向を設定することにより所望の発散角を有した拡散状態又は収束状態を得ることができる。尚、図5(a)〜図5(c)中ROは、輪帯の半径方向外側に向けた方向を示し、すなわち、光軸から離間する方向を示すものである。
ここで、第1の回折構造の1周期の幅である第1の単位周期構造のピッチ(幅)、及び後述の第2及び第3の回折構造の単位周期構造のピッチ(幅)は、対物レンズ34を介して光ディスクの信号記録面上で集光されるスポットが最適となるように、この溝幅で形成された回折領域で与える位相差に基づいて決定される。尚、ここでは、基準面を光学素子の入射側又は出射側の主面と平行な平面、すなわち光軸に直交する平面として、上述のような凹凸形状を設けることにより、図5(a)に示すような断面形状を有する光学素子を形成した例について説明するが、例えば、対物レンズの入射側又は出射側の面に設ける場合等には、その対物レンズの断面形状が、各波長の光ビームを集光するための屈折率等を考慮した曲面形状を基準面として、これに上述のように決定される凹凸形状を足し合わせたような形状とされて形成されることとなる。
また、第1の回折領域51に形成される第1の回折構造は、支配的となる回折次数、その次数の回折効率及び波長変動耐性を考慮して、以下の式(11)〜式(14)中のλp、mpi、Vap、φapのpがp=1(第1の波長の光ビームに対する条件),2(第2の波長の光ビームに対する条件),3(第3の波長の光ビームに対する条件)のとき、xが0≦x<1のうちの略全範囲でそれぞれ以下の式(11)〜式(14)を満たすように第1の単位周期構造として基準面に対して形成される凹凸形状が決定されて形成される。尚、ここでは、xが0≦x<1のうちの略全範囲で式(11)〜式(14)を満たすような凹凸形状が形成されるように第1の回折構造を構成するようにしたが、xが0≦x<1の全範囲において式(11)〜式(14)を満たすように構成してもよく、その場合には、後述のように、より波長変動耐性に優れることとなる。
|w(A)|=|{(A+π)mod(2π)}−π|<Vap ・・・(11)
A=C1×d×g(x)−C2×x−φap ・・・(12)
C1=2π×Δn/λp ・・・(13)
C2=2πmpi ・・・(14)
但し、式(11)〜(14)中
w(A):()内のAをmodで示される剰余演算を用いて−π〜πの範囲内に折り返す演算式、
A:式(12)の右辺で表されるφ’(x,d,Δn,λp,mpi)を置き換えたものであり、すなわち複数の変数によりφ’(x,d,Δn,λp,mpi)で表される波長λpのmpi次回折光の凹凸形状のxの位置を波源とした成分の位相から任意の値φapを差し引いたもの、
d:第1の回折構造の第1の単位周期構造として高さ方向の基準面に対して形成される凹凸形状における最も表面側に位置される面(以下、「最も高い面」ともいう。)と、最も素子側に位置される面(以下、「最も低い面」ともいう。)との光軸方向の距離、
x:0以上1未満の範囲の変数であり、第1の回折構造の凹凸形状の1周期内の基準(半径方向の基準)となる位置から任意の位置までの凹凸形状の形成方向、すなわち半径方向の距離を第1の回折構造の1周期の幅が1となるように規格化したときの値、
g(x):xで表された任意の位置における第1の回折構造の凹凸形状の基準面に対する光軸方向の距離をdが1となるように規格化したときの値であり、すなわち、任意の位置における上述の光軸方向の距離をdで除した(除算した)ときの値、
φap:0≦x<1の範囲のうちの上述した所定の範囲(略全範囲)で式(11)を満足する任意の値、
Δn:第1の回折構造の境界面における回折光学素子35と素子外部である空気との屈折率の差、
λp:第1の回折構造に入射される光ビームの波長、
mpi:第1の回折構造で回折される回折光の次数、
Vap:|w(A)|の範囲を規定するための値であり、Va1=0.3π、Va2=0.4π、Va3=0.6π、
である。
尚、φapは、上述したように式(11)を満足する任意の値であるが、例えば、0≦x<1の範囲のうちの略全範囲で|w(A)|の最大値が最も小さくなるように決定される任意の値としてもよく、同様の条件が得られる。
例えば、第1の回折領域51の回折構造は、図5(a)に示すように、段数Sが4とされた第1乃至第4の段部51s1,51s2,51s3,51s4からなる凹凸形状の単位周期構造が半径方向に連続して形成された回折構造である。換言すると、この単位周期構造としての凹凸形状は、第1乃至第5の光学面51f1,51f2,51f3,51f4,51f5を有している。
すなわち、任意の単位周期構造において、図5(a)に示すように、第1の光学面51f1は、半径方向の基準となる位置Pr1から半径方向に0〜Wnf1の位置に、幅方向の寸法がWnf1で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がdf1(ここではdf1=0であるため図5(a)では図示しない)の位置に形成された光学面であり、第2の光学面51f2は、半径方向の基準となる位置Pr1から半径方向にWnf1〜(Wnf1+Wnf2)の位置に、幅方向の寸法がWnf2で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がdf2の位置に形成された光学面であり、第3の光学面51f3は、半径方向の基準となる位置Pr1から半径方向に(Wnf1+Wnf2)〜(Wnf1+Wnf2+Wnf3)の位置に、幅方向の寸法がWnf3で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がdf3の位置に形成された光学面であり、第4の光学面51f4は、半径方向の基準となる位置Pr1から半径方向に(Wnf1+Wnf2+Wnf3)〜(Wnf1+Wnf2+Wnf3+Wnf4)の位置に、幅方向の寸法がWnf4で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がdf4の位置に形成された光学面であり、第5の光学面51f5は、半径方向の基準となる位置Pr1から半径方向に(Wnf1+Wnf2+Wnf3+Wnf4)〜(Wnf1+Wnf2+Wnf3+Wnf4+Wnf5)の位置に、幅方向の寸法がWnf5で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がdf5の位置に形成された光学面である。
この第1乃至第5の光学面51f1,51f2,51f3,51f4,51f5からなる単位周期構造において、溝深さdは、最も低い面である第5の光学面51f5と、最も高い面である第1の光学面51f1との光軸方向の距離であり、すなわちd=(df5−df1=df5−0=)df5であり、この単位周期構造のピッチWnは、第1乃至第5の光学面の幅方向の寸法の合計であり、すなわちWn=Wnf1+Wnf2+Wnf3+Wnf4+Wnf5である。尚、図5(a)に示す第1の回折領域51の回折構造においては、このピッチWnで形成された単位周期構造の外周方向に隣接する単位周期構造のピッチWn+1が、Wnよりも小さく(Wn>Wn+1)なるように連続して変化して形成されている。
そして、この第1乃至第5の光学面51f1,51f2,51f3,51f4,51f5からなる境界面の凹凸形状、すなわち、基準面を平坦面とするここでは単位周期構造の断面形状は、上述した式(11)〜式(14)を満足するg(x)により決定されており、換言すると、上述のdf1〜df4、Wn1〜Wn5、d、Wnを用いることにより、
g(x)=df1/d(0≦x<Wn1/Wn)
g(x)=df2/d(Wn1/Wn≦x<(Wn1+Wn2/Wn)
g(x)=df3/d((Wn1+Wn2)/Wn≦x<(Wn1+Wn2+Wn3)/Wn)
g(x)=df4/d((Wn1+Wn2+Wn3)/Wn≦x<(Wn1+Wn2+Wn3+Wn4)/Wn)
g(x)=df5/d((Wn1+Wn2+Wn3+Wn4)/Wn≦x<(Wn1+Wn2+Wn3+Wn4+Wn5)/Wn)
で表される。このように表されるg(x)が、上述のように式(11)〜式(14)を満足することとなる。
さらに、第1の回折領域51は、回折効率が最大となる各波長の回折次数、すなわちこの領域を通過する各波長の光ビームの対物レンズ34を介して対応するそれぞれの光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数(m1i,m2i,m3i)が以下の表1で示される組み合わせのいずれかの関係となるように構成されている。
以下に、内輪帯である第1の回折領域51の具体的な実施例として、溝深さd及び溝形状g(x)についての具体的な数値、形状を挙げ、各波長の光ビームに対して支配的となる次数の回折光の回折次数、及び、その回折次数の回折光の回折効率について表2に示す。尚、表2は、第1の回折領域51の実施例として内輪帯構成例1〜内輪帯構成例2と、これと比較するための内輪帯比較例1について示すものであり、表2中m1iは、第1の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数を示し、eff1は、第1の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数の回折効率を示し、m2iは、第2の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数を示し、eff2は、第2の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数の回折効率を示し、m3iは、第3の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数を示し、eff3は、第3の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数の回折効率を示し、dは、上述したような第1の回折領域51の溝深さ、すなわち凹凸形状の最低段から最高段までの距離を示し、溝形状は、それぞれ対応する溝形状を示すものであり、具体的には、「タイプ1」が、図7(a)で示される溝形状(単位周期構造)を示すものであり、「タイプ2」が、図8(a)で示される溝形状(単位周期構造)を示すものであり、「4ステップ」が、所謂4ステップの等間隔階段形状、すなわち図9(a)で示される溝形状(単位周期構造)を示すものである。ここで、等間隔階段形状とは、単位周期構造内において、各段部の溝幅及び段差が略等間隔で形成された階段形状の回折構造を意味するものとする。
ここで、表2に示す内輪帯構成例1について説明する。内輪帯構成例1においては、表2に示すように、溝深さd=3.77(μm)、段数S=4とし、図7(a)に示すような溝形状(「タイプ1」ともいう。)としたときの、第1の波長の光ビームの回折次数m1i=+1の回折効率eff1=0.86であり、第2の波長の光ビームの回折次数m2i=−1の回折効率eff2=0.69であり、第3の波長の光ビームの回折次数m3i=−2の回折効率eff3=0.48である。
次に、この内輪帯構成例1について図7(a)〜図7(c)を用いて、さらに具体的に説明する。図7(a)は、この内輪帯構成例1の溝形状(タイプ1)を規格化して示す図であり、横軸を上述のxとし、縦軸を上述のg(x)としたときの単位周期構造の状態を示す図であり、図7(b)は、表2及び図7(a)に示すような溝形状で構成された単位周期構造を有する回折構造による波長変動に対する回折効率の変化を示す図であり、図7(c)は、表2及び図7(a)に示すような溝形状で構成された単位周期構造による任意の位置xを波源とした成分の位相φ’の変化を示す図である。
尚、図7(a)中、横軸は、内輪帯構成例1の単位周期構造の凹凸形状における基準となる位置から半径方向の距離を単位周期構造の幅が1となるように規格化した値xを示し、縦軸は、xの位置における凹凸形状の基準面に対する光軸方向の距離を、溝深さdが1となるように規格化した値g(x)を示すものであり、図7(b)中、横軸は、各波長λ1,λ2,λ3に対する波長変動量(波長シフト量)を示し、縦軸は、各波長の光ビームに波長変動が生じた場合の内輪帯構成例1のように構成された回折領域により発生される各波長の光ビームの回折光の回折効率の変化を、この回折効率の、中心波長である各波長λ1、λ2、λ3の場合の回折効率に対する割合である効率比の変化として示すものであり、図7(c)中、横軸は、単位周期構造の凹凸形状の任意の位置を上述のように規格化した値xで示し、縦軸は、その任意の位置xを波源とした成分の位相φ’を示すものである。
具体的に、図7(a)に示される溝形状は、以下のg(x)で表すものである。
g(x)=0.000(0.00≦x<0.15)
g(x)=0.250(0.15≦x<0.40)
g(x)=0.500(0.40≦x<0.60)
g(x)=0.750(0.60≦x<0.85)
g(x)=1.000(0.85≦x<1.00)
このように形成された内輪帯構成例1のg(x)は、p=1,2,3のいずれの場合にも0≦x<1の全範囲において、式(11)〜式(14)を満たす。このとき、φap、Δnは、それぞれ、φa1=−0.429、φa2=−0.275 、φa3=1.316 、Δn=0.5 であり、λpは、それぞれ、λ1=0.407(μm)、λ2=0.656(μm)、λ3=0.785(μm)であり、d及びmpiは、表2に示す通りの値である。
ここで、φapが上述のような値のときの各波長(p=1,2,3)における式(12)の右辺で表される、波長λpのmpi次回折光の凹凸形状のxの位置を波源とした成分の位相から任意の値φapを差し引いた値φ’(x,d,Δn,λp,mpi)は、xの変化に対して、それぞれ図7(c)に示すような変化を示す。
図7(c)に示すように、第1の波長(p=1)に対するφ’は、0≦x<1の全範囲において、−0.3π〜+0.3π(Va1)の範囲内であり、式(11)〜式(14)を満たすことが確認でき、第2の波長(p=2)に対するφ’は、0≦x<1の全範囲において、−0.4π〜+0.4π(Va2)の範囲内であり、式(11)〜式(14)を満たすことが確認でき、第3の波長(p=3)に対するφ’は、0≦x<1の全範囲において、−0.6π〜+0.6π(Va3)の範囲内であり、式(11)〜式(14)を満たすことが確認できる。
そして、このように式(11)〜式(14)を満足する内輪帯構成例1により、表2及び図7(b)に示すように、第1の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第1の光ディスクの信号記録面に集光する次数がm1i(+1)の回折光の回折効率を70%以上である86%とすることができ、第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面に集光する次数がm2i(−1)の回折光の回折効率を50%以上である69%とすることができ、第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に集光する次数がm3i(−2)の回折光の回折効率を30%以上である48%とすることができるとともに、波長シフトに対する効率比の変動を低く抑えることができ、特に後述する図9(b)(内輪帯比較例1)に比べて第2の波長の効率比の変動を低く抑えることができ、具体的には各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化を1%未満に低減することを実現できる。
ところで、第1の回折領域51のような機能を有する領域において、第1の波長をλ1(nm)とし、第2の波長をλ2(nm)とし、第3の波長をλ3(nm)とし、第1の波長の光ビームの支配的な回折次数をm1iとし、第2の波長の光ビームの支配的な回折次数をm2iとし、第3の波長の光ビームの支配的な回折次数をm3iとし、第1の光ディスクの保護層の厚さをt1(mm)とし、第2の光ディスクの保護層の厚さをt2(mm)とし、第3の光ディスクの保護層の厚さをt3(mm)としたときに、(λ1×m1i−λ2×m2i)/(t1−t2)≒(λ1×m1i−λ3×m3i)/(t1−t3)の条件式を満たすことが各波長の各光ディスクの信号記録面上の球面収差を補正して低減できる条件であることが知られている。このことは、後述のように、図6に示す各波長毎に「波長×次数(nm)」を横軸にとり、「基板厚み(mm)」を縦軸にとって点Pλ1,Pλ2,Pλ3をプロットした場合に、この3点Pλ1,Pλ2,Pλ3が略一直線上に並ぶことを意味する。この内輪帯の構成例1においては、λ1=407(nm)、λ2=656(nm)、λ3=785(nm)、t1=0.1(mm)、t2=0.6(mm)、t3=1.1(mm)としたときに、m1i=+1、m2i=−1、m3i=−2であるので、この条件式を満足することとなり、球面収差を低減できることが確認できた。
また、表2に示す内輪帯構成例2についても同様に、溝深さd=5.29(μm)、段数S=5とし、溝形状を図8(a)に示すような溝形状(「タイプ2」ともいう。)としたとき、第1の波長の光ビームの回折次数m1i=+1の回折効率eff1=0.84であり、第2の波長の光ビームの回折次数m2i=−1の回折効率eff2=0.72であり、第3の波長の光ビームの回折次数m3i=−2の回折効率eff3=0.49である。尚、図8(a)は、上述した図7(a)と同様に、この内輪帯構成例2の溝形状(タイプ3)を規格化して示す図である。ここで、図8(a)〜図8(c)中の各軸及び各線分の意味は、上述した図7(a)〜図7(c)と同様のものであるので詳細な説明は省略する。
具体的に、図8(a)に示される溝形状は、以下のg(x)で表すものである。
g(x)=0.000(0.00≦x<0.15)
g(x)=0.179(0.15≦x<0.40)
g(x)=0.357(0.40≦x<0.60)
g(x)=0.536(0.60≦x<0.85)
g(x)=0.714(0.85≦x<0.90)
g(x)=1.000(0.90≦x<1.00)
そして、このような内輪帯構成例2では、上述した図7(b)及び図7(c)と同様に、図8(b)及び図8(c)に示すように、波長変動に対する回折効率の変化及び単位周期構造による任意の位置xを波源とした成分の位相φ’の変化が得られる。
また、上述の内輪帯構成例1,2と比較するための表2に示す内輪帯比較例1については、溝深さd=3.72(μm)、段数S=4とし、図9(a)に示すような溝形状、すなわち、所謂4ステップ等間隔階段形状とした。このような内輪帯比較例1では、第1の波長の光ビームの回折次数m1i=+1の回折効率eff1=0.88であり、第2の波長の光ビームの回折次数m2i=−1の回折効率eff2=0.50であり、第3の波長の光ビームの回折次数m3i=−2の回折効率eff3=0.57である。尚、図9(a)は、上述した図7(a)と同様に、この帯比較例1の溝形状(4ステップ等間隔階段形状)を規格化して示す図である。ここで、図9(a)〜図9(c)中の各軸及び各線分の意味は、上述した図7(a)〜図7(c)と同様のものであるので詳細な説明は省略する。
そして、このような内輪帯比較例1では、上述した図7(b)及び図7(c)と同様に、図9(b)及び図9(c)に示すように、波長変動に対する回折効率の変化及び単位周期構造による任意の位置xを波源とした成分の位相φの変化が得られる。
内輪帯構成例1,2においては、図7(a)、図7(c)、図8(a)及び図8(c)に示すように、上述した式(11)〜式(14)を満たす溝形状である凹凸形状を有しており、これにより、表1に示した各波長の所定の回折次数(m1i,m2i,m3i)の組み合わせの回折光を、各波長の所定の回折次数の回折効率がそれぞれ70%以上、50%以上、30%以上となるように発生させることができるとともに、図7(b)及び図8(b)に示すように、波長変動に対する効率比の変化についても十分に低く抑えることができ、すなわち、各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化を1%未満に抑えることができる。これに対して、内輪帯比較例1においては、従来の構成及び考え方に基づき回折効率及び回折光の次数に着目して適切な溝形状を選択することにより、各波長の所定の次数の回折効率を確保して発生させることについてはできるが、式(11)〜式(14)を満足せず、具体的には、図9(c)に示すように、第2の波長について(p=2のときの)式(11)〜式(14)を満たしていないため、図9(b)に示すように、第2の波長における波長変動に対する効率比の変化について低く抑えることができず、すなわち、第2の波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化を1%未満に抑えることができない。このため、図9(a)の溝形状を有する内輪帯比較例1のような回折構造を有する場合には、設計波長においては、対物レンズ34を介して球面収差が補正される所定の発散状態又は収束状態とされた回折光を十分な回折効率で発生させて対物レンズ34に入射させることで、この各波長に対して共通の対物レンズ34により対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させることを可能とするが、光ビームの波長に波長変動が生じてしまった場合には、第2の波長の光ビームの回折効率に変動が生じてしまい、これにともない、受光部で受光される光量、光検出器で検出される信号に変動が生じることにより、良好な記録・再生に不都合が生じたり、この不都合を防止するために検出器のマージンを広く取る必要が発生することとなる。
上述した内輪帯構成例1,2のように、本発明を適用した光ピックアップ3を構成する回折部50に設けられ、上述のような式(11)〜式(14)を満たす第1の回折構造を有する第1の回折領域51は、上述の3波長互換とともに波長変動耐性を発揮して、すなわち、設計波長において、対物レンズ34を介して球面収差が補正される所定の発散状態又は収束状態とされた回折光を十分な回折効率で発生させて対物レンズ34に入射させることで、この各波長に対して共通の対物レンズ34により対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させて各波長の光ビームに対応する各種光ディスクに対して良好な記録・再生を行うことを可能とするとともに、各波長の光ビームの波長に波長変動が生じてしまった場合においても、回折効率の変化を極めて低く抑えることができ、すなわち、波長変動が生じた場合にも、受光部で受光される光量、光検出器で検出される信号に変動が生じることを防止して、検出器のマージンを広げることなく良好な記録・再生を可能とする。
中輪帯である第2の回折領域52は、上述した第1の回折構造とは異なる構造とされ、輪帯状で、基準面に対して複数の段部からなる凹凸形状の単位周期構造(以下、「第2の単位周期構造」ともいう。)が輪帯の半径方向に連続的に設けられ、単位周期構造のピッチが一定又は連続的に変化して設けられ、基準面に対する各段部の光軸方向の高さ及び1周期の幅に対する各段部の幅の割合が周期的とされた第2の回折構造が形成され、通過する第1の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第1の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m1mの回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が70%以上となるようにして発生させる。
また、第2の回折領域52は、第2の回折構造により、通過する第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m2mの回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が50%以上となるようにして発生させる。
また、第2の回折領域52は、第2の回折構造により、通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m3m以外の次数の回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させる。尚、第2の回折領域52は、第2の回折構造により、通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m3mの回折光の回折効率を十分に低減することができ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が10%以下となるように低減して発生させることができる。
このように、第2の回折領域52は、上述の各波長の光ビームに対して上述の所定の次数の回折光が所定の回折効率以上又は以下となるのに適するような回折構造が形成されているため、第2の回折領域52を通過して所定の次数の回折光とされた第1及び第2の波長の光ビームが対物レンズ34によりそれぞれの光ディスクの信号記録面に集光される際の球面収差を補正して低減することを可能とする。
さらに、第2の回折領域52は、上記の第1及び第2の波長の光ビームの各次数の回折光の各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化が1%未満として各回折光を発生させることができ、波長変動耐性(波長変動により回折光の回折効率が変化しにくい性質)を有する構成とされている。
また、第2の回折領域52は、第1及び第2の波長の光ビームに対しては上述のように機能するとともに、第3の波長の光ビームについては、この第2の回折領域52を通過して対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に集光する次数以外の次数の回折光が支配的となるようにして信号記録面に集光する次数の回折光の回折効率を十分に低減できるよう構成されていることから、この第2の回折領域52を通過した第3の波長の光ビームが対物レンズ34に入射しても第3の光ディスクの信号記録面にはほとんど影響を与えることなく、換言すると、この第2の回折領域52を通過して対物レンズ34により信号記録面に集光される第3の波長の光ビームの光量を大幅に低減して、第3の波長の光ビームに対して開口制限を行うよう機能することができる。
ところで、上述した第1の回折領域51は、その領域を通過した第3の波長の光ビームが、NA=0.45程度で開口制限される光ビームと同様の状態で対物レンズ34に入射するような大きさに形成されており、また、この第1の回折領域51の外側に形成される第2の回折領域52は、この領域を通過した第3の波長の光ビームを、対物レンズ34を介して第3の光ディスク上に集光させないため、かかる構成とされた第1及び第2の回折領域51,52を備える回折部50は、第3の波長の光ビームに対して、NA=0.45程度に開口制限を行うように機能することとなる。ここでは、回折部50において、第3の波長の光ビームに対して開口数NAを0.45程度に開口制限を行うように構成したが、上述の構成により制限される開口数はこれに限られるものではない。
具体的には、第2の回折領域52は、上述した第1の回折領域51と同様に、図4及び図5(b)に示すように、光軸を中心とした輪帯状でこの輪帯の断面形状が、所定の深さ(溝深さ)d’を有し、所定の段数Sの複数の段部からなる凹凸形状の単位周期構造が輪帯の半径方向に連続して形成されるとともに、この単位周期構造のピッチが半径方向の外周方向に向かうにつれて徐々に小さくなるように変化して形成されている。ここでは、単位周期構造のピッチが半径方向の外周方向に向かうにつれて小さくなるように変化して形成されるようにしたが、単位周期構造のピッチが一定又は連続的に変化して設けられていればよい。
また、第2の回折領域52に形成される第2の回折構造は、支配的となる回折次数、その次数の回折効率及び波長変動耐性を考慮して、以下の式(15)〜式(18)中のλp、mpm、V’ap、φ’apのpがp=1(第1の波長の光ビームに対する条件),2(第2の波長の光ビームに対する条件)のとき、x’が0≦x’<1のうちの略全範囲でそれぞれ以下の式(15)〜式(18)を満たし、且つ、以下の式(16)〜式(18)中λp、mpm、V’ap、φ’apのpがp=3(第3の波長の光ビームに対する条件)のとき、式(19)を満たすxの範囲の合計をrとしたとき式(20)を満たすように第2の単位周期構造として基準面に対して形成される凹凸形状が決定されて形成される。尚、ここでは、x’が0≦x’<1のうちの略全範囲で式(15)〜式(18)を満たすような凹凸形状が形成されるように第2の回折構造を構成するようにしたが、x’が0≦x’<1の全範囲において式(15)〜式(18)を満たすように構成してもよく、その場合には、後述のように、より波長変動耐性に優れることとなる。
|w(A’)|=|{(A’+π)mod(2π)}−π|<V’ap ・・・(15)
A’=C’1×d’×g’(x’)−C’2×x’−φ’ap ・・・(16)
C’1=2π×Δn/λp ・・・(17)
C’2=2πmpm ・・・(18)
|w(A’)|=|{(A’+π)mod(2π)}−π|>π/2 ・・・(19)
|2r−1|<0.35 ・・・(20)
但し、式(15)〜(20)中
w(A’):()内のA’をmodで示される剰余演算を用いて−π〜πの範囲内に折り返す演算式、
A’:式(16)の右辺で表されるφ’(x’,d’,Δn,λp,mpm)を置き換えたものであり、すなわち複数の変数によりφ’(x’,d’,Δn,λp,mpm)で表される波長λpのmpm次回折光の凹凸形状のx’の位置を波源とした成分の位相から任意の値φ’apを差し引いたもの、
d’:第2の回折構造の第2の単位周期構造として高さ方向の基準面に対して形成される凹凸形状における最も表面側に位置される面(以下、「最も高い面」ともいう。)と、最も素子側に位置される面(以下、「最も低い面」ともいう。)との光軸方向の距離、
x’:0以上1未満の範囲の変数であり、第2の回折構造の凹凸形状の1周期内の基準(半径方向の基準)となる位置から任意の位置までの凹凸形状の形成方向、すなわち半径方向の距離を第2の回折構造の1周期の幅が1となるように規格化したときの値、
g’(x’):x’で表された任意の位置における第2の回折構造の凹凸形状の基準面に対する光軸方向の距離をd’が1となるように規格化したときの値であり、すなわち、任意の位置における上述の光軸方向の距離をd’で除した(除算した)ときの値、
φ’ap:p=1、2のとき0≦x’<1の略全範囲で式(15)を満足する任意の値であり、p=3のとき式(20)を満足する任意の値、
Δn:第2の回折構造の界面における回折光学素子35と素子外部である空気との屈折率差、
λp:第2の回折構造に入射される光ビームの波長、
mpm:第2の回折構造で回折される回折光の次数、
V’ap:|w(A’)|の範囲を規定するための値であり、V’a1=0.3π、V’a2=0.4π、
である。
尚、φ’apは、上述したようにそれぞれ式(15)又は式(20)を満足する任意の値であるが、例えば、0≦x<1の範囲のうちの略全範囲で、|w(A’)|の最大値が最も小さくなるように決定される任意の値としてもよく、同様の条件が得られる。
例えば、第2の回折領域52の回折構造は、図5(b)に示すように、段数Sが5とされた第1乃至第5の段部52s1,52s2,52s3,52s4,52s5からなる凹凸形状の単位周期構造が半径方向に連続して形成された回折構造である。換言すると、この単位周期構造としての凹凸形状は、第1乃至第6の光学面52f1,52f2,52f3,53f4,52f5,52f6を有している。
すなわち、任意の単位周期構造において、図5(b)に示すように、第1の光学面52f1は、半径方向の基準となる位置Pr2から半径方向に0〜W’nf1の位置に、幅方向の寸法がW’nf1で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がd’f1(ここではd’f1=0であるため図5(b)では図示しない)の位置に形成された光学面であり、第2の光学面52f2は、半径方向の基準となる位置Pr2から半径方向にW’nf1〜(W’nf1+W’nf2)の位置に、幅方向の寸法がW’nf2で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がd’f2の位置に形成された光学面であり、第3の光学面52f3は、半径方向の基準となる位置Pr2から半径方向に(W’nf1+W’nf2)〜(W’nf1+W’nf2+W’nf3)の位置に、幅方向の寸法がW’nf3で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がd’f3の位置に形成された光学面であり、第4の光学面52f4は、半径方向の基準となる位置Pr2から半径方向に(W’nf1+W’nf2+W’nf3)〜(W’nf1+W’nf2+W’nf3+W’nf4)の位置に、幅方向の寸法がW’nf4で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がd’f4の位置に形成された光学面であり、第5の光学面52f5は、半径方向の基準となる位置Pr2から半径方向に(W’nf1+W’nf2+W’nf3+W’nf4)〜(W’nf1+W’nf2+W’nf3+W’nf4+W’nf5)の位置に、幅方向の寸法がW’nf5で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がd’f5の位置に形成された光学面であり、第6の光学面52f6は、半径方向の基準となる位置Pr2から半径方向に(W’nf1+W’nf2+W’nf3+W’nf4+W’nf5)〜(W’nf1+W’nf2+W’nf3+W’nf4+W’nf5+W’nf6)の位置に、幅方向の寸法がW’nf6で形成され、高さ方向の基準面Lrに対して距離がd’f6の位置に形成された光学面である。
この第1乃至第6の光学面52f1,52f2,52f3,52f4,52f5,52f6からなる単位周期構造において、溝深さd’は、最も低い面である第6の光学面52f6と、最も高い面である第1の光学面52f1との光軸方向の距離であり、すなわちd’=(d’f6−d’f1=d’f6−0=)d’f6であり、この単位周期構造のピッチW’nは、第1乃至第6の光学面の幅方向の寸法の合計であり、すなわちW’n=W’nf1+W’nf2+W’nf3+W’nf4+W’nf5+W’nf6である。尚、図5(b)に示す第2の回折領域52の回折構造においては、このピッチW’nで形成された単位周期構造の外周方向に隣接する単位朱記構造のピッチW’n+1が、W’nよりも小さく(W’n>W’n+1)なるように連続して変化して形成されている。
そして、この第1乃至第6の光学面52f1,52f2,52f3,52f4,52f5からなる境界面の凹凸形状、すなわち、基準面を平坦面とするここでは単位周期構造の断面形状は、上述した式(15)〜式(20)を満足するg’(x’)により決定されており、換言すると、上述のd’f1〜d’f5、W’n1〜W’n6、d’、W’nを用いることにより、
g’(x’)=d’f1/d(0≦x’<W’n1/W’n)
g’(x’)=d’f2/d’(W’n1/W’n≦x’ <(W’n1+W’n2)/W’n)
g’(x’)=d’f3/d’((W’n1+W’n2)/W’n≦x’ <(W’n1+W’n2+W’n3)/W’n)
g’(x’)=d’f4/d’((W’n1+W’n2+W’n3)/W’n≦x’ <(W’n1+W’n2+W’n3+W’n4)/W’n)
g’(x’)=d’f5/d’((W’n1+W’n2+W’n3+W’n4)/W’n≦x’ <(W’n1+W’n2+W’n3+W’n4+W’n5)/W’n)
g’(x’)=d’f6/d’((W’n1+W’n2+W’n3+W’n4+W’n5)/W’n≦x’ <(W’n1+W’n2+W’n3+W’n4+W’n5+W’n6)/W’n)
で表される。このように表されるg’(x’)が、上述のように式(15)〜式(18)を満足することとなる。
さらに、第2の回折領域52は、回折効率が最大となる第1及び第2の波長の光ビームの回折次数、及び所定の回折効率以下(10%以下)となる第3の波長の光ビームの回折次数、すなわちこの領域を通過する各波長の光ビームの対物レンズ34を介して対応するそれぞれの光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数(m1m,m2m,m3m)が上述した表1で示される(m1i,m2i,m3i)の組み合わせのいずれかの関係と同様の組み合わせとなるように構成されている。尚、第2の回折領域52における上述した所定の回折次数(m1m,m2m,m3m)の組み合わせは、第1の回折領域51における所定の回折次数(m1i,m2i,m3i)の組み合わせと異なる組み合わせとなるように形成されていてもよい。
以下に、中輪帯である第2の回折領域52の具体的な実施例として、溝深さd’及び溝形状g’(x’)についての具体的な数値、形状を挙げ、第1及び第2の波長の光ビームに対して支配的となる次数の回折光の回折次数、第3の波長の光ビームに対して所定の回折効率以下(10%以下)となる次数の回折光の回折次数、及び、その回折次数の回折光の回折効率について表3に示す。尚、表3は、第2の回折領域52の実施例として中輪帯構成例1〜中輪帯構成例2と、これと比較するための中輪帯比較例1について示すものであり、表3中m1mは、第1の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数を示し、eff1は、第1の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数の回折効率を示し、m2mは、第2の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数を示し、eff2は、第2の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数の回折効率を示し、m3mは、この領域を通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数を示し、eff3は、第3の波長の光ビームのこの回折次数m3mの回折効率を示し、d’は、上述したような第2の回折領域52の溝深さ、すなわち凹凸形状の最低段から最高段までの距離を示し、溝形状は、それぞれ対応する溝形状を示すものであり、具体的には、「タイプ3」が、図10(a)で示される溝形状(単位周期構造)を示すものであり、「タイプ4」が、図11(a)で示される溝形状(単位周期構造)を示すものであり、「3ステップ」が、所謂3ステップの等間隔階段形状、すなわち図12(a)で示される溝形状(単位周期構造)を示すものである。
ここで、表3に示す中輪帯構成例1について説明する。中輪帯構成例1においては、表3に示すように、溝深さd’=3.00(μm)、段数S=5とし、図10(a)に示すような溝形状(「タイプ3」ともいう。)としたとき、第1の波長の光ビームの回折次数m1m=+1の回折効率eff1=0.86であり、第2の波長の光ビームの回折次数m2m=−1の回折効率eff2=0.69である。また、この領域を通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数n3m=−2の回折効率eff3=0.006である。
次に、この中輪帯構成例1について図10(a)〜図10(c)を用いて、さらに具体的に説明する。図10(a)は、この中輪帯構成例1の溝形状(タイプ3)を規格化して示す図であり、横軸を上述のx’とし、縦軸を上述のg’(x’)としたときの単位周期構造の状態を示す図であり、図10(b)は、表3及び図10(a)に示すような溝形状で構成された単位周期構造を有する回折構造による波長変動に対する回折効率の変化を示す図であり、図10(c)は、表3及び図10(a)に示すような溝形状で構成された単位周期構造による任意の位置x’を波源とした成分の位相φ’の変化を示す図である。
尚、図10(a)中、横軸は、中輪帯構成例1の単位周期構造の凹凸形状における基準となる位置から半径方向の距離を単位周期構造の幅が1となるように規格化した値x’を示し、縦軸は、x’の位置におけるこの凹凸形状の基準面に対する光軸方向の距離を、溝深さd’が1となるように規格化した値g’(x’)を示すものであり、図10(b)中、横軸は、各波長λ1、λ2、λ3に対する波長変動量(波長シフト量)を示し、縦軸は、各波長の光ビームに波長変動が生じた場合の中輪帯構成例1のように構成された回折領域により発生される各波長の光ビームの回折光の回折効率の変化を、この回折効率の、中心波長である各波長λ1、λ2、λ3の場合の回折効率に対する割合である効率比の変化として示すものであり、図10(c)中、横軸は、単位周期構造の凹凸形状の任意の位置を上述のように規格化した値x’で示し、縦軸は、その任意の位置x’を波源とした成分の位相φ’を示すものであり、横軸に示すyは、式(16)〜式(18)中のp=3のときに式(19)を満たす範囲を示すものである。
具体的に、図10(a)に示される溝形状は、以下のg’(x’)で表されるものである。
g’(x’)=0.000(0.00≦x’<0.10)
g’(x’)=0.810(0.10≦x’<0.25)
g’(x’)=0.333(0.25≦x’<0.50)
g’(x’)=0.667(0.50≦x’<0.75)
g’(x’)=0.190(0.75≦x’<0.90)
g’(x’)=1.000(0.90≦x’<1.00)
このように形成された中輪帯構成例1のg’(x’)は、p=1,2のいずれの場合にも0≦x’<1の全範囲において、式(15)〜式(18)を満たし、且つp=3の場合に式(16)〜式(19)を満たすx’の範囲の合計をrとしたとき式(20)を満たす。このとき、φ’ap、Δnは、それぞれ、φ’a1=−0.406 、φ’a2=0.995 、φ’a3=−0.217 、Δn=0.5であり、λpは、それぞれ、λ1=0.407(μm)、λ2=0.656(μm)、λ3=0.785(μm)であり、d及びmpは、表3に示す通りの値であり、rは、r=0.43 である。
ここで、φ’apが上述のような値のときの各波長(p=1,2,3)における式(16)の右辺で表される、波長λpのmpm次回折光の凹凸形状のx’の位置を波源とした成分の位相から任意の値φ’apを差し引いた値φ’(x’,d’,Δn,λp,mpm)は、x’の変化に対して、それぞれ図10(c)に示すような変化を示す。
図10(c)に示すように、第1の波長(p=1)に対するφ’は、0≦x’<1の全範囲において、−0.3π〜+0.3π(V’a1)の範囲内であり、式(15)〜式(18)を満たすことが確認でき、第2の波長(p=2)に対するφ’は、0≦x’<1の全範囲において、−0.4π〜+0.4π(V’a2)の範囲内であり、式(15)〜式(18)を満たすことが確認でき、さらに、第3の波長(p=3)に対するφ’は、−0.5π〜+0.5π(式(19)の不等号の右辺)の範囲内のx’の範囲が0.43(=r)であり、この範囲外のx’の範囲が0.57であり、すなわち、|2r−1|=0.14であり式(20)を満たすことが確認できる。ここで、図10(c)中、ri1は、p=3のときのφ’が−π〜−0.5π、0.5π〜πの範囲内のx’の部分を示し、ro1,ro2は、この範囲外のx’の部分を示し、上述したrは、ri1の横軸方向の大きさを示すものである。
そして、このように式(15)〜式(20)を満足する中輪帯構成例1により、表3及び図10(b)に示すように、第1の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第1の光ディスクの信号記録面に集光する次数がm1m(+1)の回折光の回折効率を70%以上である86%とすることができ、第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面に集光する次数がm2m(−1)の回折光の回折効率を50%以上である69%とすることができ、第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に集光する次数がm3m(−2)の回折光の回折効率を10%以下である0.6%とすることができるとともに、波長シフトに対する効率比の変動を低く抑えることができ、具体的には各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化を1%未満に低減することを実現できる。
また、表3に示す中輪帯構成例2についても同様に、溝深さd’=4.35(μm)、段数S=6とし、図11(a)に示すような溝形状(「タイプ4」ともいう。)としたとき、第1の波長の光ビームの回折次数m1m=+1の回折効率eff1=0.77であり、第2の波長の光ビームの回折次数m2m=−1の回折効率eff2=0.60である。また、この領域を通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数n3m=−2の回折効率eff3=0.04である。尚、図11(a)は、上述した図10(a)と同様に、この中輪帯構成例2の溝形状(タイプ4)を規格化して示す図である。ここで、図11(a)〜図11(c)中の各軸及び各線分の意味は、上述した図10(a)〜図10(c)と同様のものであるので詳細な説明は省略する。
具体的に、図11(a)に示される溝形状は、以下のg’(x’)で表されるものである。
g’(x’)=0.222(0.00≦x’<0.14)
g’(x’)=0.762(0.14≦x’<0.22)
g’(x’)=0.981(0.22≦x’<0.48)
g’(x’)=1.000(0.48≦x’<0.63)
g’(x’)=0.645(0.63≦x’<0.70)
g’(x’)=0.318(0.70≦x’<0.80)
g’(x’)=0.000(0.80≦x’<1.00)
そして、このような中輪帯構成例2では、上述した図10(b)及び図10(c)と同様に、図11(b)及び図11(c)に示すように、波長変動に対する回折効率の変化及び単位周期構造による任意の位置x’を波源とした成分の位相φ’の変化が得られる。尚、このとき、r=0.37であり、|2r−1|=0.26である。また、図11(c)中、ri1,ri2,ri3,ri4は、p=3のときのφ’が−π〜−0.5π、0.5π〜πの範囲内のx’の部分を示し、ro1,ro2,ro3,ro4は、この範囲外のx’の部分を示し、上述したrは、ri1〜ri4の横軸方向の大きさの合計を示すものである。
また、上述の中輪帯構成例1,2と比較するための表3に示す中輪帯比較例1については、溝深さd’=2.90(μm)、段数S=3とし、図12(a)に示すような溝形状、すなわち、所謂3ステップ等間隔階段形状とした。このような中輪帯比較例1では、第1の波長の光ビームの回折次数m1m=+1の回折効率eff1=0.81であり、第2の波長の光ビームの回折次数m2m=−1の回折効率eff2=0.81である。また、この領域を通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数n3m=−2の回折効率eff3=0.19である。尚、図12(a)は、上述した図10(a)と同様に、この中輪帯比較例1の溝形状(3ステップ等間隔階段形状)を規格化して示す図である。ここで、図12(a)〜図12(c)中の各軸及び各線分の意味は、上述した図10(a)〜図10(c)と同様のものであるので詳細な説明は省略する。
そして、このような中輪帯比較例1では、上述した図10(b)及び図10(c)と同様に、図12(b)及び図12(c)に示すように、波長変動に対する回折効率の変化及び単位周期構造による任意の位置x’を波源とした成分の位相φ’の変化が得られる。尚、このとき、r=0.24であり、|2r−1|=0.52である。また、図12(c)中、ri1,ri2,ri3,ri4は、p=3のときのφ’が−π〜−0.5π、0.5π〜πの範囲内のx’の部分を示し、ro1,ro2,ro3は、この範囲外のx’の部分を示し、上述したrは、ri1〜ri4の横軸方向の大きさの合計を示すものである。
中輪帯構成例1,2においては、図10(a)、図10(c)、図11(a)及び図11(c)に示すように、上述した式(15)〜式(20)を満たす溝形状である凹凸形状を有しており、これにより、表1に示した各波長の所定の回折次数(m1m,m2m,m3m)の組み合わせの回折光を、各波長の所定の回折次数の回折効率がそれぞれ70%以上、50%以上、10%以下となるように発生させることができるとともに、図10(b)及び図11(b)に示すように、波長変動に対する効率比の変化についても十分に低く抑えることができ、すなわち、各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化を1%未満に抑えることができる。これに対して、中輪帯比較例1においては、従来の構成及び考え方に基づき回折効率及び回折光の次数に着目して溝形状を選択することにより、第1及び第2の波長の所定の次数の回折効率を確保するとともに、第3の波長の光ビームの所定の次数の回折効率を、19%とある程度低く抑えることはできるが、第1及び第2の波長の回折効率を保持したまま、第3の波長の回折効率をこれ以上に抑えることができない。このため、図12(a)の溝形状を有する中輪帯比較例1のような回折構造を有する場合には、第1及び第2の波長の光ビームを用いる場合には、所定の発散状態又は収束状態とされた回折光を十分な回折効率で発生させて対物レンズ34に入射させることで、光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させることを可能とするが、第3の波長の光ビームを用いる場合には、本来光量を十分に低減して開口制限を行いたいが、第3の光ディスクの信号記録面に集光する次数の回折光の回折効率を十分に低減できずに、換言すると開口制限としての機能を十分に発揮できず、記録再生特性を劣化させることとなる。
上述した中輪帯構成例1,2のように、本発明を適用した光ピックアップ3を構成する回折部50に設けられ、上述のような式(15)〜式(20)を満たす第2の回折構造を有する第2の回折領域52は、上述のように第1及び第2の波長の所定の次数の回折効率を十分に確保し、且つ第3の波長の所定の次数の回折効率を十分に低減して3波長互換を発揮するとともに波長変動耐性を発揮することができ、すなわち、第1及び第2の波長において、対物レンズ34を介して球面収差が補正される所定の発散状態又は収束状態とされた回折光を十分な回折効率で発生させて対物レンズ34に入射させることで、この各波長に対して共通の対物レンズ34により対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させ、且つ第3の波長において、対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に集光される次数の回折光の回折効率を十分に低減させることで、この波長に対して開口制限を行うことで、これらの各波長に対して共通の対物レンズ34により対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させて各波長の光ビームに対応する各種光ディスクに対して良好な記録・再生を行うことを可能とするとともに、各波長の光ビームの波長に波長変動が生じてしまった場合においても、回折効率の変化を極めて低く抑えることができ、すなわち、波長変動が生じた場合にも、受光部で受光される光量、光検出器で検出される信号に変動が生じることを防止して、良好な記録・再生を可能とする。
外輪帯である第3の回折領域53は、上述した第1及び第2の回折構造とは異なる構造とされ、輪帯状で、基準面に対して所定の深さを有する階段形状等の凹凸形状又はブレーズ状の単位周期構造が輪帯の半径方向に連続的に設けられ、単位周期構造のピッチが一定又は連続的に変化して設けられた第3の回折構造が形成され、通過する第1の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第1の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m1oの回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が70%以上となるようにして発生させる。
また、第3の回折領域53は、第3の回折構造により、通過する第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m2o以外の次数の回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させる。尚、第3の回折領域53は、第3の回折構造により、通過する第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m2oの回折光の回折効率を十分に低減することができ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が10%以下となるように低減して発生させることができる。
また、第3の回折領域53は、第3の回折構造により、通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m3o以外の次数の回折光が支配的となるように、すなわち、他の次数の回折光に対して最大の回折効率となるように発生させる。尚、第3の回折領域53は、第3の回折構造により、通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に適切なスポットを形成するよう集光する次数m3oの回折光の回折効率を十分に低減することができ、具体的にはこの次数の回折光の回折効率が10%以下となるように低減して発生させることができる。
このように、第3の回折領域53は、上述の各波長の光ビームに対して上述の所定の次数の回折光が所定の回折効率以上又は以下となるのに適するような回折構造が形成されているため、第3の回折領域53を通過して所定の次数の回折光とされた第1の波長の光ビームが対物レンズ34により光ディスクの信号記録面に集光される際の球面収差を補正して低減することを可能とする。
また、第3の回折領域53は、第1の波長の光ビームに対しては上述のように機能するとともに、第2及び第3の波長の光ビームについては、この第3の回折領域53を通過して対物レンズ34を介して第2及び第3の光ディスクの信号記録面に集光する次数以外の次数の回折光が支配的となるようにして信号記録面に集光する次数の回折光の回折効率を十分に低減できるよう構成されていることから、この第3の回折領域53を通過した第2及び第3の波長の光ビームが対物レンズ34に入射しても第2及び第3の光ディスクの信号記録面にはほとんど影響を与えることなく、換言すると、この第3の回折領域53を通過して対物レンズ34により信号記録面に集光される第2及び第3の波長の光ビームの光量を大幅に低減して、第2の波長の光ビームに対して開口制限を行うよう機能することができる。尚、第3の回折領域53は、第3の波長の光ビームに対しては、上述の第2の回折領域52とともに、開口制限を行うよう機能することができる。
ところで、上述した第2の回折領域52は、その領域を通過した第2の波長の光ビームが、NA=0.6程度で開口制限される光ビームと同様の状態で対物レンズ34に入射するような大きさに形成されており、また、この第2の回折領域52の外側に形成される第3の回折領域53は、この領域を通過した第2の波長の光ビームを、対物レンズ34を介して光ディスク上に集光させないため、かかる構成とされた第2及び第3の回折領域52,53を備える回折部50は、第2の波長の光ビームに対して、NA=0.6程度に開口制限を行うように機能することとなる。ここでは、回折部50において、第2の波長の光ビームに対して開口数NAを0.6程度に開口制限を行うように構成したが、上述の構成により制限される開口数はこれに限られるものではない。
また、第3の回折領域53は、その領域を通過した第1の波長の光ビームが、NA=0.85程度で開口制限される光ビームと同様の状態で対物レンズ34に入射するような大きさに形成されており、また、この第3の回折領域53の外側には回折構造が形成されていないため、この領域を透過した第1の波長の光ビームを、対物レンズ34を介して第1の光ディスク上に集光させないため、かかる構成とされた第3の回折領域53を備える回折部50は、第1の波長の光ビームに対して、NA=0.85程度の開口制限を行うように機能することとなる。尚、第3の回折領域53を通過する第1の波長の光ビームは、例えば0次以外の回折次数のものが支配的となるようにされている場合には、第3の回折領域53の外側の領域を透過した0次光は、対物レンズ34を介して第1の光ディスク上に集光しない場合がほとんどであるが、この0次光が、対物レンズ34を介して第1の光ディスク上に集光することになる場合や第3の回折領域53を通過する第1の波長の光ビームの回折次数が0次のものが支配的となるようにされている場合には、第3の回折領域53の外側の領域に、通過する光ビームを遮蔽する遮蔽部又は通過する光ビームを対物レンズ34を介して第1の光ディスク上に集光する次数以外の次数の光ビームが支配的となる回折構造を有する回折領域を設けることにより、開口制限を行うように構成してもよい。ここでは、回折部50において、第1の波長の光ビームに対して開口数NAを0.85程度に開口制限を行うように構成したが、上述の構成により制限される開口数はこれに限られるものではない。
具体的には、第3の回折領域53は、図4及び図5(c)に示すように、光軸を中心とした輪帯状でこの輪帯の断面形状が所定の深さdで所定の段数(ステップ数)Sの階段形状が半径方向に連続して形成されている。以下で説明する、第3の回折領域53に形成される階段形状は、単位周期構造内において、各段部の溝幅及び段差が略等間隔で形成された等間隔階段形状の回折構造を意味するものとする。尚、上述したように、第3の回折領域53に形成される回折構造は、等間隔階段形状からなるものに限られるものではなく、上述した第1及び第2の回折領域と同様に、凹凸形状の単位周期構造からなるものであってもよく、さらに、所謂ブレーズ形状からなるものであってもよい。
例えば、第3の回折領域53の回折構造は、図5(c)に示すように、段数(ステップ数)が3(S=3)とされた回折構造であり、各段の深さが略同一深さ(d’’/3)とされた第1乃至第3の段部53s1,53s2、53s3を有する階段部が半径方向に連続して形成されており、また、光軸方向に間隔が(d’’/3)で同一間隔に形成された第1乃至第4の回折面53f1,53f2,53f3,53f4を有して形成されている。さらに、任意の単位周期構造において、各回折面53f1,53f2,53f3,53f4の幅方向の寸法は、略等しく(W’’n/4)で形成されている。
また、ここでは、輪帯の断面形状が等間隔階段形状となるような回折構造を有する第3の回折領域53が形成されているものとして説明するが、上述のような各波長の光ビームに対して所定の次数の回折光が初手の回折効率以上又は以下となるような回折構造であればよく、例えば、上述した第1及び第2の回折領域と同様に、凹凸形状であってもよく、さらに例えば、輪帯の断面形状が図13に示すような所定の深さdのブレーズ形状となるような回折構造を有する回折領域53Bが形成されるように構成してもよい。
さらに、第3の回折領域53は、回折効率が最大となる第1の波長の光ビームの回折次数、及び所定の回折効率以下(10%以下)となる第2及び第3の波長の光ビームの回折次数、すなわちこの領域を通過する各波長の光ビームの対物レンズ34を介して対応するそれぞれの光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数(m1o,m20,m30)が上述した表1で示される(m1i,m2i,m3i)の組み合わせのいずれかの関係と同様の組み合わせとなるように構成されている。尚、第3の回折領域53における上述した所定の回折次数(m1o,m2o,m3o)の組み合わせは、第1の回折領域51における所定の回折次数(m1i,m2i,m3i)の組み合わせ及び/又は第2の回折領域52における所定の回折次数(m1m,m2m,m3m)の組み合わせと異なる組み合わせとなるように形成されていてもよい。
以下に、外輪帯である第3の回折領域53の具体的な実施例として、溝深さd’’及び溝形状(所定のステップ数Sの等間隔階段形状、ブレーズ形状)等についての具体的な数値、形状を挙げ、第1の波長の光ビームに対して支配的となる次数の回折光の回折次数、第2及び第3の波長の光ビームに対して所定の回折効率以下(10%以下)となる次数の回折光の回折次数、及びその回折次数の回折光の回折効率について表4に示す。尚、表4は、第3の回折領域53の実施例として外輪帯構成例1〜外輪帯構成例2について示すものであり、表4中m1oは、第1の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数を示し、eff1は、第1の波長の光ビームの回折効率が最大となる回折次数の回折効率を示し、m2oは、この領域を通過する第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数を示し、eff2は、第2の波長の光ビームのこの回折次数m2oの回折効率を示し、m3oは、この領域を通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数を示し、eff3は、第3の波長の光ビームのこの回折次数m3oの回折効率を示し、d’’は、上述したような第3の回折領域53の溝深さ、すなわち階段形状の最低段から最高段までの距離を示し、Sは、第3の回折領域53の階段形状のステップ数を示すものである。
ここで、表4に示す外輪帯構成例1について説明する。外輪帯構成例1においては、表4に示すように、溝深さd’’=0.60(μm)、段数(ステップ数)S=3とし、溝形状を上述した等間隔階段形状としたとき、第1の波長の光ビームの回折次数m1o=+1の回折効率eff1=0.81である。また、この領域を通過する第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数m2o=−1の回折効率eff2=0.05であり、この領域を通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数m30=−2の回折効率eff3=0.03である。尚、ここで、外輪帯構成例1における各波長の1nmの波長変化に対する回折効率の変化は1%未満であった。
また、表4に示す外輪帯構成例2についても同様に、溝深さd’’=0.78(μm)、溝形状を図13に示すようなブレーズ形状としたとき、第1の波長の光ビームの回折次数m1o=+1の回折効率eff1=1.00である。また、この領域を通過する第2の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第2の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数m2o=−1の回折効率eff2=0.035であり、この領域を通過する第3の波長の光ビームの対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面にスポットを形成するよう集光する回折次数m30=−2の回折効率eff3=0.016である。尚、ここで、外輪帯構成例1における各波長の1nmの波長変化に対する回折効率の変化は1%未満であった。
上述した外輪帯構成例1,2のように、本発明を適用した光ピックアップ3を構成する回折部50に設けられる第3の回折構造を有する第3の回折領域53は、上述のように第1の波長の所定の次数の回折効率を十分に確保し、且つ第2及び第3の波長の所定の次数の回折効率を十分に低減することで開口制限して3波長互換を発揮するとともに波長変動耐性を発揮することができ、すなわち、第1の波長において、対物レンズ34を介して球面収差が補正される所定の発散状態又は収束状態とされた回折光を十分な回折効率で発生させて対物レンズ34に入射させることで、この各波長に対して共通の対物レンズ34により対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させ、且つ第2及び第3の波長において、対物レンズ34を介して第2、第3の光ディスクの信号記録面に集光される次数の回折光の回折効率を十分に低減させることで、この波長に対して開口制限を行うことで、これらの各波長に対して共通の対物レンズ34により対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させて、各波長の光ビームに対応する各種光ディスクに対して良好な記録・再生を行うことを可能とするとともに、各波長の光ビームの波長に波長変動が生じてしまった場合においても、回折効率の変化を極めて低く抑えることができ、すなわち、波長変動が生じた場合においても、受光部で受光される光量、光検出器で検出される信号に変動が生じることを防止して、良好な記録・再生を可能とする。
以上のような構成とされた第1乃至第3の回折領域51,52,53を有する回折部50は、第1の回折領域51を通過する第1乃至第3の波長の光ビームを、共通の対物レンズ34を介してそれぞれ対応する種類の光ディスクの信号記録面に球面収差が発生しない発散角の状態、すなわち、対物レンズ34を介して球面収差が補正される発散状態又は収束状態で対物レンズ34に入射させて対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させることができ、第2の回折領域52を通過する第1及び第2の波長の光ビームを、共通の対物レンズ34を介してそれぞれ対応する種類の光ディスクの信号記録面に球面収差が発生しない発散角の状態、すなわち、対物レンズ34を介して球面収差が補正される発散状態又は収束状態で対物レンズ34に入射させて対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させることができ、第3の回折領域53を通過する第1の波長の光ビームを対物レンズ34を介して対応する種類の光ディスクの信号記録面に球面収差が発生しない発散角の状態、すなわち、対物レンズ34を介して球面収差が補正される発散状態又は収束状態で対物レンズ34に入射させて対応する光ディスクの信号記録面に適切なスポットを集光させることができるとともに、第1乃至第3の回折領域51,52,53に入射されるそれぞれの第1乃至第3の波長の光ビームに波長変動が生じた場合の回折効率の変動を上述のように十分に低減できる。
すなわち、光ピックアップ3の光学系における第1乃至第3の出射部と信号記録面との間の光路上に配置される回折光学素子35の一面に設けられた回折部50は、それぞれの領域(第1乃至第3の回折領域51,52,53)を通過するそれぞれの波長の光ビームを信号記録面に発生する球面収差を低減する状態で対物レンズ34に入射させることができるので、光ピックアップ3において第1乃至第3の波長の光ビームを共通の対物レンズ34を用いてそれぞれ対応する光ディスクの信号記録面に集光させたときの信号記録面に発生する球面収差を極限まで低減することができ、すなわち、3種類の光ディスクに対して3種類の波長と共通の対物レンズ34とを用いた光ピックアップの3波長互換を実現してそれぞれの光ディスクに対して適切に情報信号の記録及び/又は再生を可能とする。
よって、この回折部50は、このような3波長互換を実現するとともに、波長変動が発生した場合の回折効率の変動を十分に低減できるので、波長変動が発生した場合にもそれぞれの光ディスクに対して適切且つ良好に信号の記録及び/又は再生を可能とする。
また、第1乃至第3の回折領域51,52,53を有する回折部50は、第2及び第3の回折領域52,53を通過する第3の波長の光ビームを対物レンズ34を介して対応する種類の光ディスクの信号記録面に適切に集光する回折次数の回折光の回折効率を十分に低減できるので、第3の波長の光ビームについて、第1の回折領域51を通過した部分の光ビームのみを対物レンズ34を介して光ディスクの信号記録面に集光させるとともに、この第1の回折領域51がこの領域を通過する第3の波長の光ビームを所定のNAとなるような大きさに形成されていることにより、第3の波長の光ビームについて例えば0.45程度のNAとなるように開口制限を行うことを可能とする。
また、回折部50は、第3の回折領域53を通過する第2の波長の光ビームを対物レンズ34を介して対応する種類の光ディスクの信号記録面に適切に集光する回折次数の回折光の回折効率を十分に低減できるので、第2の波長の光ビームについて、第1及び第2の回折領域51,52を通過した部分の光ビームのみを対物レンズ34を介して光ディスクの信号記録面に集光させるとともに、この第1及び第2の回折領域51,52がこの領域を通過する第2の波長の光ビームを所定のNAとなるような大きさに形成されていることにより、第2の波長の光ビームについて例えば0.60程度のNAとなるように開口制限を行うことを可能とする。
また、回折部50は、第3の回折領域53の外側の領域を通過する第1の波長の光ビームを対物レンズ34を介して対応する種類の光ディスクの信号記録面に適切に集光しないような状態又は遮蔽することで、第1の波長の光ビームについて、第1乃至第3の回折領域51,52,53を通過した部分の光ビームのみを対物レンズ34を介して光ディスクの信号記録面に集光させるとともに、この第1乃至第3の回折領域51,52,53がこの領域を通過する第1の波長の光ビームを所定のNAとなるような大きさに形成されていることにより、第1の波長の光ビームについて例えば0.85程度のNAとなるように開口制限を行うことを可能とする。
このように、上述のような光路上に配置される回折光学素子35の一面に設けられた回折部50は、3波長互換を実現するのみならず、3種類の光ディスク及び第1乃至第3の波長の光ビームのそれぞれに適応した開口数で開口制限した状態で共通の対物レンズ34に各波長の光ビームを入射させることを可能とする。すなわち、回折部50は、3波長に対応した収差補正の機能を有するのみならず、開口制限手段としての機能も有する。
尚、上述の各回折領域の実施例を適宜組み合わせて回折部を構成することが可能である。また、各回折領域により支配的となるように発生させられる各波長の回折光等の回折次数の組み合わせは、上述したように適宜選択可能である。尚、各回折領域により発生される各波長の回折次数を変える場合には、この各領域を通過した各波長の各回折次数に対応した対物レンズ34を用いればよい。
また、上述では、回折光学素子35の入射側の面に、3つの回折領域51,52,53からなる回折部50を設けるように構成したが、これに限られるものではなく、回折光学素子35の出射側の面に設けても良い。さらに、第1乃至第3の回折領域51,52,553を有する回折部50は、対物レンズ34の入射側又は出射側の面に一体に設けるように構成してもよい。例えば、対物レンズの入射側の面に設けられる場合には、対物レンズとしての機能として要求される入射側の面の面形状を基準面として、これに上述のような回折構造の面形状を合わせたような面形状が形成されることとなる。回折部を対物レンズに一体に設けることにより、さらなる光学部品の削減、及び構成の小型化を可能とする。回折部50と同様の機能を有する回折部を入射側又は出射側の面に一体に設けられた対物レンズは、光ピックアップに用いられることにより収差等を低減して光ピックアップの3波長互換を実現するとともに、部品点数を削減して、構成の簡素化及び小型化を可能とし、高生産性、低コスト化を実現する。
ここで、上述のように式(11)〜式(14)を満たすように構成された第1の回折領域51を有する回折部50が、この第1の回折領域51に入射した第1乃至第3の波長の光ビームの所定の回折次数の回折光を、所定の回折効率以上で発生させるとともに、入射する各光ビームの波長に変動が生じた場合にも回折効率の変動を抑えることを達成すること、及び、式(15)〜式(20)を満たすように構成された第2の回折領域52を有する回折部50が、この第2の回折領域52に入射した第1及び第2の波長の光ビームの所定の回折次数の回折光を、所定の回折効率以上で発生させ、且つこの第2の回折領域52に入射した第3の波長の光ビームの所定の回折次数の回折光を、所定の回折効率以下に抑えるとともに、入射する各光ビームの波長に変動が生じた場合にも回折効率の変動を抑えることを達成することについて説明するが、その説明に先立ち、スカラー回折理論による溝形状と回折効率の関係式について説明する。
ここでは、まず回折領域に形成された単位周期構造(溝形状)と、この回折領域により回折された回折光の回折効率との関係式を用いて説明する。例えば、回折素子の1ピッチ(1周期中)の幅方向の寸法を1となるように規格化し、溝形状を示す規格化された幅方向の座標を変数x(0≦x<1)とし、溝形状を示す高さ方向の座標をg(x)とする。このg(x)で表される溝形状は、単位周期構造を規格化したものである。
そして、所定の屈折率を有する材料により、溝深さをdとし、g(x)で表される溝形状が形成されたこのような回折構造による任意の波長λの光ビームが回折されることにより発生する任意のm次回折光の任意のxの位置を波源とした成分の位相φ(x,d,Δn,λ,m)は、以下の式(21)で表すことができることが知られている。尚、式(21)中、Δnは、回折構造の界面前後の媒質の屈折率差を意味するものである。
φ(x,d,Δn,λ,m)={d×Δn/λ×g(x)−m×x}×2π ・・・(21)
また、この式(21)のφを用いて、スカラー回折理論により得られる回折効率ηは、次式(22)のような数式により得ることが知られている。
ここで、式(22)中、λが任意のλ1(例えば405nm)のときの、波長変動による効率変化の度合いを示す効率波長依存性を抑えるためには、dが10μm以下のときは、ηをλにより微分した値、すなわちdη(d,Δn,λ,m)/dλ|λ=λpを一定値以下に抑えることで概ね達成できる。
そして、光ピックアップで用いられる3つの波長をλp(p=1,2,3)とするとともに、それぞれの波長の光ビームを用いる際に使用される回折次数をmpのように表すとする。このような条件で回折素子を設計する場合、Δnに対する自由度はあまりなく、mpも対物レンズとの関係等である程度制限される。結局、与えられたλp、mp、Δnについて、式(22)のη(d、Δn、λp、mp)(p=1,2,3)が必要な回折効率以上となり、かつ、dη(d,Δn,λ,mp)/dλ|λ=λpが十分小さくなるように、g(x)とdを決めることが要求される。
上述の指針はスカラー回折理論の範疇で正しいものであるが、このままで実用的な設計指針といえるものではない。その理由として、式(22)は、xの積分の形で表されており、さらにその関数のλによる微分を求めることにより評価する必要があり、これらと溝形状g(x)との関係の見通しが困難であるので、3波長に対して条件を満たす最適なg(x)の発見は従来略不可能であるとされていた。これは、上述の条件からg(x)を解析的に解くことができないからである。
また、計算機による各種最適化アルゴリズムによる解の探索も困難である。その理由は、g(x)の形状をある程度限定しても、その評価関数の形状は一様に平坦な面上にランダムに存在する無数の極大と極小とからなっており、例えば3波長互換を必要とされる光ピックアップにおいては、その極小の中のごく小数の実用的な解を見つける必要があるからである。
このような実情をふまえ、本発明では、3波長対応の光ピックアップに用いられる光学素子に設けられる回折部の単位周期構造を最適に設計されたものとして構成することにより、3波長に対して最適な回折効率を得ることと、例えば光源の波長変動に対する効率変動が少ないことを意味する波長変動耐性とを実現するものである。すなわち、従来の光ピックアップに用いられる回折光学素子の回折部に設けられる単位周期構造では、ブレーズ形状やステップ間隔及びステップ段差が略一定の所謂等間隔階段形状の中で、限られたステップ数と回折次数の組み合わせの中から実用的な深さの解を探し出し採用していたのに対し、本発明では、回折部に設けられる回折構造の単位周期構造として、従来のブレーズ形状や等間隔階段形状に限定せずに、特性の最適化自由度を高め、溝形状をこれらのものに限定しないことにより無数に存在する溝形状の中から別の指針により選択される単位周期構造を用いるものである。すなわち、本発明では、上述したスカラー回折理論に基づく指針を概略満たす、略十分条件となるxとg(x)と定数のみの簡便な関係で表すことができる見通しの良い指針を構築し、それらを3波長に対して成り立たせる溝形状g(x)を探索する方法により、設計された溝形状を構成することにより、3波長互換と波長変動耐性とを実現するものである。
次に、本発明における溝形状の構成についての設計指針、すなわち、上述のような式(11)〜式(14)を満たす第1の回折構造を有する第1の回折領域51と、上述のような式(15)〜式(20)を満たす第2の回折構造を有する第2の回折領域52とが、上述のような機能を実現することについて説明する。
ある波長λp(p=1,2,3)に対して、回折効率ef1p以上が必要である場合、以下の式を満たすようにg(x)、dを決定する。
|w(φ’(x,d,Δn,λp,mp))|<Vap ・・・(23)
φ’(x,d,Δn,λp,mp)=φ(x,d,Δn,λp,mp)−φap
=C1×d×g(x)−C2×x−φap・・・(24)
C1=2π×Δn/λp ・・・(25)
C2=2πmp ・・・(26)
ここで、wは、任意の角度(rad)を−π〜πの範囲に折り返す演算(w(a)≡{(a+π)mod(2π)}−π)である。また、φapは、−π〜πの中から式を満たすのに適したものを選ぶことができる。Vapは、ef1pの大きさに応じて適当に設定されるものである。例えば、効率70%以上が必要な場合に、Vapは0.3π程度が適当である。上述の式(23)〜式(26)を変形すると、g(x)及びdを用いた式(27)が得られる。
|w(C1×d×g(x)−C2×x−φap)|<Vap ・・・(27)
式(27)のように設定されたg(x)及びdを選ぶことで、φ(x,d,Δn,λp,mp)の値の変動が小さくなり、上述した式(22)の積分値が大きくなり、η(d,Δn,λp,mp)を一定値以上にすることが可能になる。また、dη(d,Δn,λ,mp)/dλ|λ=λpも小さくなり、波長依存性を抑えることができる。
換言すると、上述したようにφの累積合計であるともいえるηが回折効率を示すことに鑑みれば、溝形状の任意の位置を波源とした位相φ及びこのφの値から任意の値φapを差し引いたφ’のいずれか一方の分布を一定範囲に抑えること、他方の分布についても一定範囲に抑えることとなり、これによりηが大きくなるとともに、dη/dλが小さくなり、すなわち、回折効率の増大及び波長変動に対する回折効率の変動の減少を実現するものである。尚、ここでφ及びφ’の分布については、xの全範囲(0≦x<1)に亘って一定の範囲内にあることが好ましく、その場合にはより波長変動耐性に優れることは当然であるが、上述のような観点からxの範囲の内その僅か一部についてφ及びφ’の分布が一定の範囲外にあったとしても、xの範囲の内の大部分、すなわち「略全範囲」についてφ及びφ’の分布が一定の範囲内であれば回折効率が高く且つ波長変動耐性を具備するものである。具体的にはその範囲においてφ及びφ’の分布が一定の範囲であれば、上述の回折効率(λ1について70%、λ2について50%、λ3について30%)及び波長変動耐性(1nmの変化に対して回折効率変動が1%未満)を満たす範囲である。
より具体的には、例えば上述した図7(c)及び図8(c)に示すように、所定の範囲内(λ1の分布に対しては−0.3π〜+0.3π、λ2の分布に対しては−0.4π〜+0.4π、λ3の分布に対しては−0.6π〜+0.6π)にφ’の分布を抑えることにより、図7(b)及び図8(b)に示すように、波長変動耐性を備えることとなる。さらに具体的に説明すると、図9(a)に示すような溝形状では、図9(c)に示すようなλ2に対して所定の範囲外となる部分があることにより、図9(b)に示すようにλ2の光ビームに対する波長変動耐性を備えることができなかったような場合に、この図9(c)に示す所定の範囲外となってしまうx’の部分に対応する溝形状を変えることでφ及びφ’の分布を所望の状態とし、これにより回折効率を増大し波長変動耐性を具備するように構成することができる。
その一方で、あるλp(p=1,2,3のいずれか)に対して回折効率ef2p以下であることが必要な場合には、以下の式(28)、式(29)を満たすようにg(x)、dを決定する。ここで、式(29)のrは、式(22)を満たすxの範囲の合計を示す。
|w(φ’(x,d,Δn,λp,mp))|=|w(C1×d×g(x)−C2×x−φap)|>π/2 ・・・(28)
|r−(1−r)|=|2r−1|<Vbp ・・・(29)
式(28)中のC1,C2,w、φapの意味は、上述した式(23)〜式(27)のものと同じである。また、Vbpは、ef2pの大きさに応じて適切に設定されるものである。例えば効率10%以下が必要な場合、Vbpは0.35が適切である。このように選ぶことでφ(x,d,Δn,λp,mp)の値が2πラジアンの全方位に満遍なく分布し、式(22)のη(d,Δn,λp,mp)を一定値以下に減少させることが可能になる。
換言すると、上述したようにφの累積合計であるともいえるηが回折効率を示すことに鑑みれば、溝形状の任意の位置を波源とした位相φ及びこのφの値から任意の値φapを差し引いたφ’のいずれか一方の分布を、全範囲(−π〜+π)のうちの半分の範囲(−0.5π〜+0.5π)にあるものと、この範囲外にあるものとの割合がVbpで与えられる条件に当てはまる程度に近い値であれば、すなわち、φ及びφ’をこのように満遍なく分布させることで、位相が互いに打ち消し合うこととなり光量が下がり、これにより回折効率を低下させることを実現するものである。
より具体的には、例えば図10(c)及び図11(c)のλ3のときのφ’に示すように、φ’が所定の範囲内(−π〜−0.5π、+0.5π〜+π)にあるときのx’の部分と、φ’が所定の範囲外(−0.5π〜+0.5π)にあるときのx’の部分との割合が近い値であることにより、表3に示すように、回折効率を大幅に低く抑えられることとなる。
以上のように、上述した式(11)〜式(14)を満たす第1の回折構造を有する第1の回折領域51は、入射した3波長の光ビームの所定の回折次数の回折光を、所定の回折効率以上で発生させることができるとともに、波長変動耐性を発揮して、3波長互換を実現する光ピックアップに設けられる回折部の内輪帯として適したものであり、また、上述した式(15)〜式(20)を満たす第2の回折構造を有する第2の回折領域52は、入射した3波長の光ビームの所定の回折次数の回折光を、その種類に応じて所定の回折効率以上又は所定の回折効率以下とすることができるとともに、波長変動耐性を発揮して、3波長互換を実現する光ピックアップに設けられる回折部の中輪帯として適したものである。
このような第1及び第2の回折領域51,52は、上述した第3の回折領域53とともに回折部50を構成し、この回折部50は、上述したように、共通の対物レンズを用いて3波長互換を実現するとともに、波長変動が発生した場合にもそれぞれの光ディスクに対して適切且つ良好に信号の記録及び/又は再生を実現する。
また、上述のように構成された内輪帯としての第1の回折領域51に設けられた第1の回折構造は、回折効率の観点からも収差補正の観点からも優れているが、この点について以下に詳細に説明する。まず、(A)回折効率評価指標、(B)収差補正評価指標について説明した後に(C)上述した第1の回折構造の評価について説明する。
(A)回折効率評価指標
まず、回折効率評価指標について説明する。回折効率評価指標は、回折効率の観点に基づく指標であり、すなわち、回折効率の絶対値と、波長変動に対する効率変動(波長依存性)の小ささとがどの程度基準値を満足しているかを示すものであり、具体的には以下の式(31)、式(32)で示すものとする。尚、図14(a)及び図14(b)は、式(32)で示すxを横軸に、式(32)に示すf(x,x(th),xw(th))を縦軸にとって、このxに伴うfの変化を示すものであり、図14(a)は、xw(th)>0のときのものであり、図14(b)は、xw(th)<0のときのものである。
但し、式(31)、式(32)中
ηp:λp(p=1,2,3)に対する回折効率、
η(th)p:必要とされる回折効率を示す基準値であり、0.7(p=1)、0.5(p=2)、0.3(p=3)、
ηw(th)p:xの変化に対する回折効率の大きさの指標の変化がどの程度の鋭さで立ち上がるかを示す値であり、0.1(p=1)、0.1(p=2)、0.07(p=3)、
(dη/dλ)p:λp(p=1,2,3)に対する回折効率の波長依存性(%/nm)、
(dη/dλ)(th)p:必要とされる波長依存性を示す値であり、1%/nm(p=1,2,3)
(dη/dλ)w(th)p:xの変化に対する回折効率波長変動の小ささの指標の変化がどの程度の鋭さで立ち上がるかを示す基準値であり、−0.5%/nm(p=1,2,3)
x:式(31)中の式(32)で示されるfの演算式を表すために、評価されるべきものとして上述したηp又は|(dη/dλ)p|を変数として表示したもの、
f(x,x(th),xw(th)):()内で示される値x,x(th),xw(th)から式(32)右辺で示されるアークタンジェント演算(atan)を用いた演算、すなわち各指標を数値化するための演算により算出される指標を示す値、
Π:式(31)において、p=1,2,3としてそれぞれ算出された値の積として効率評価指標を算出する演算(総乗記号)を示すもの、
である。
ここで、式(31)で表される指標の値(以下、「評価値」ともいう。)は、「基準を満たすか」に対する評価指標となるように、評価対象の値に対して基準値付近で勾配が大きくなる単調関数となっている。例えば、λ3の効率に対する条件は、「0.3以上」であり、効率0.2と0.3では評価値の差は、大きくなるが、効率0.9と1.0では評価値の差は、はるかに小さくなる。3つのλ(λ1,λ2,λ3)に対する絶対値と波長依存性の各評価値の積が最終的な評価指標であり、大きいほどに望ましいものである。尚、図14(a)及び図14(b)中の横軸に表示される「x(th)」は、上述した基準値が指標の中央に位置することを示し、「2xw(th)」は、式(32)で示される変化曲線において、中心に対して横軸の±xw(th)の範囲が縦軸におけるfが0.25〜0.75の範囲に該当することを示すものである。尚、上述した式(31)で示される回折効率評価指標は、数値が高い程優れた特性を持つことを意味するものである。
(B)収差補正評価指標
次に、収差補正評価指標について説明するが、(B1)で球面収差補正を考慮した次数の選び方を説明した後に(B2)で収差補正評価指標について説明する。
(B1)球面収差補正を考慮した次数の選び方について
複数の波長と基板厚(保護層厚さ)が異なるメディア(光ディスク)を再生するため、すなわち、互換性を実現するための回折部により回折される回折光のうち用いられる回折光の回折次数を決定する際には、以下のような指針が用いられる。
回折構造による回折角をθとすると、sinθは、回折次数×波長/回折構造周期に等しい。このような回折角θと球面収差量とは近似的に比例すると考えられる。すなわち、回折構造により球面収差発生量は、近似的に、回折次数×波長×(1/回折構造周期)に比例する。
ここで、メディア基板による球面収差発生量と、回折による補正量の関係を図15に示す。図15は、以下のy1sa〜y3saで表される球面収差の関係を、球面収差量に相当する基板厚さを縦軸(「y軸」ともいう。)にとり図示したものである。そして、y1saは、メディア基板で発生する球面収差を示す。このメディア基板で発生する球面収差は、近似的に基板厚みに比例するとみなすことができる。尚、図15では、Ly1に示される直線がこのy1saに相当する。ここでは、基板厚をtp(p=1,2,3)としたときに、tp=0.1mm(p=1),0.6mm(p=2),1.2mm(p=3)の3種のメディアを想定している。また、y2saは、回折構造をなくした場合、すなわち0次回折光の球面収差の補正量を示し、図15中Ly2で示されている値である。図15ではy切片を示すy2に該当する。さらに、y3saは、回折による球面収差の補正量を示し、これは波長×次数に比例する。図15中矢印Ly31,Ly32,Ly33は、それぞれ、λ1=405nm、m1=1の場合、λ2=660nm、m2=−1の場合、λ3=780nm、m3=−2の場合についての補正量y3saを示すものである。そして、y1sa=y2sa+y3saを満たすことにより球面収差が補正される。
図15(a)は、基板により発生する球面収差量と、回折による補正量の関係とを示すものである。図15(a)中Ly2は、回折構造をなくした場合、すなわちレンズ系のみの収差補正量を示すものである。
また、図15(b)は、回折による球面収差補正量が、波長×次数の一次関数で表されることを示す。各点P11,P12,P13のy座標(縦軸)であるy11,y12,y13は、基板による球面収差y1sa(直線Ly1)に略一致することを示し、x座標(横軸)は、選択した次数を用いて計算した、波長×次数を示している。そして、図15(b)に示すように、この点のx座標における直線(Ly1)の値は、Ly2にそれぞれLy31,Ly32,Ly32を足し合わせた、所謂y2sa+y3saであり、この値が各点P11,P12,P13のy座標の値(y11,y12,y13)に略対応している。
このように、横軸に「波長×次数(nm)」をとり、縦軸に「基板厚(mm)」をとることによりプロットされるP11,P12,P13が直線的に並ぶことが球面収差の補正を可能とする。そしてこのことは、点P11,P12を結ぶ直線の傾きと、点P11,P13を結ぶ直線の傾きとが一致することと等価であり、上述した条件式(λ1×m1i−λ2×m2i)/(t1−t2)≒(λ1×m1i−λ3×m3i)/(t1−t3)を満たすことは、球面収差を低減できることについても示すものである。換言すると、上述の条件式を満たすように各波長の次数を選ぶことで球面収差補正についても優れたものとすることができる。
(B2)収差補正評価指標
上述したように、図中の3点P11,P12,P13が直線的に並ぶことが球面収差の補正に必要であり、また、この条件は、図16に示すように、点P11,P12を結ぶ直線の傾き(sl(1,2))と、点P11,P13を結ぶ直線の傾き(sl(1,3))とが一致することと等価である。このことは、以下の式(33)のように表すことができる。そして、式(33)を変形して式(34)を得ることができる。尚、式(33)及び式(34)中傾きを示すsl(p1,p2)は、式(35)により得ることができる。ここで、式(35)の「p1」、「p2」は、それぞれ、1,2,3のいずれかである。
sl(1,2)=sl(1,3) ・・・(33)
1−sl(1,2)/sl(1,3)=0 ・・・(34)
sl(p1,P2)=(λp1×mp1−λp2×mp2)/(tp1−tp2) ・・・(35)
但し、式(35)中
mp:回折次数
tp:カバー層厚み
sl(p1,p2):「p1」,「p2」は、それぞれ、1,2,3のいずれかであり、この1,2,3で示される点P11,P12,P13の何れか2点で示される直線の傾き、
を示す。
式(34)の左辺の絶対値がどの程度0に近いかが、式(34)が成り立つ程度の指標となる。式(34)の左辺の絶対値の逆数を指標にすれば、それが大きいほど式(34)が成り立ち、球面収差補正にとって望ましいことになる。よって、以下の式(36)のように、収差補正評価指標を設定するものである。このような収差補正評価指標は、球面収差の補正にどの程度適しているかを示すものである。これは、上述のように、3波長それぞれのメディア規格により決まっている波長、保護層(基板)厚みに対して、回折次数を選ぶ組み合わせによって決定されるものである。尚、上述した式(36)で示される収差補正評価指標は、数値が高いほど優れた特性を持つことを意味するものである。
(C)本発明を適用する光ピックアップを構成する第1の回折構造の評価
次に、本発明を適用した光ピックアップ3を構成する第1の回折領域51に設けられる上述した第1の回折構造の効果について、上述した(A)の回折効率評価指標と、(B)の収差補正評価指標との両方の観点から図17を用いて説明する。
図17中縦軸は、回折効率の指標として回折効率の絶対値と波長依存性の小ささをどの程度満足しているかの指標を示すものであり、上述した式(31)で算出される回折効率指標を示すものである。
図17中横軸は、収差補正の指標として球面収差の補正にどれだけ適しているかの指標を示すものであり、上述した式(36)で算出される収差補正評価指標を示すものである。
そして、図中、「タイプ1」及び「タイプ2」で示されるプロットは、それぞれ上述した図7及び図8を用いて説明した内輪帯構成例1,2の評価結果を示し、「既存技術(黒ダイヤ)」で示されるプロットは、既存の階段形状により構成される回折構造の評価結果を示すものである。尚、既存技術の回折構造のプロット条件としては、ステップ数(段数)が1〜9の等間隔階段形状又はブレーズ形状であり、溝深さが0〜10μmの範囲で0.05μm間隔であり、回折次数を−10次〜+10次の範囲のもので、各波長(λ1,λ2,λ3)に対する回折効率5%以上のものを選択してプロットを行ったものである。
図17に示すように、「タイプ1」及び「タイプ2」で示されるプロットは、「既存技術」で示されるプロットに対して縦軸の上側に分布されており、回折効率の観点から優れたものであるといえ、また、横軸に対しても右側に分布されており、収差補正の観点からも優れたものである。
特に、「タイプ1」及び「タイプ2」で示されるプロットは、上述した式(11)〜式(14)をxの全範囲において完全に満足するものであるので、縦軸及び横軸において非常にバランスの良い位置にプロットされており、回折効率の観点からも収差補正の観点からも非常に優れていることが確認できる。
また、換言すると、この図17に示す「既存技術」のプロットが非常に多く分布される縦軸の回折効率指標が0.1以上のものであって、且つ横軸の収差補正指標が3.3以上のものは、既存技術に対して回折効率及び収差補正の観点からも非常に優れたものであるといえる。すなわち、「タイプ1」及び「タイプ2」に示すように、この範囲を満足する回折構造は、回折効率の観点からも収差補正の観点からも非常に優れたものである。
このように上述した第1の回折領域51は、回折効率の観点からも収差補正の観点からも優れたものであり、3波長互換を実現する光ピックアップに設けられる回折部の内輪帯として従来の回折構造にはない優れた性能を有するものであり、上述のような第2及び第3の回折領域52,53とともに回折部50を構成し、共通の対物レンズを用いて3波長互換を実現するとともに、波長変動が発生した場合にもそれぞれの光ディスクに対して適切且つ良好に信号の記録及び/又は再生を実現する。
回折光学素子35と第3のビームスプリッタ38との間に設けられたコリメータレンズ42は、第2のビームスプリッタ37で光路を合成され、第3のビームスプリッタ38を透過された、第1乃至第3の波長の光ビームの発散角をそれぞれ変換して、例えば略平行光の状態として、1/4波長板43及び回折光学素子35側に出射させる。尚、コリメータレンズ42が、第1及び第2の波長の光ビームの発散角を、略平行光の状態として上述した回折光学素子35に入射させるとともに、第3の波長の光ビームの発散角を、平行光に対してわずかに拡散若しくは収束した発散角の状態(以下、「有限系の状態」ともいう。)で回折光学素子35に入射させるように構成することにより、第3の波長の光ビームの回折光学素子35及び対物レンズ34を介して第3の光ディスクの信号記録面に集光する際の球面収差をより低減することを可能とする。ここでは、第3の波長の光ビームを出射させる第3の出射部を有する第3の光源部33とコリメータレンズ42との配置関係により、この所定の発散角の状態で回折光学素子35に入射させることを実現したが、例えば、複数の出射部を共通の光源部に配置した場合には、第3の波長の光ビームの発散角のみを変換する素子を設けることや、コリメータレンズ42を駆動する手段を設けること等により所定の発散角の状態で回折光学素子35に入射させることを実現してもよい。また、同様に、第2の波長の光ビーム、又は第2及び第3の波長の光ビームを有限系の状態で回折光学素子35に入射させるように構成して、さらに収差を低減するようにしてもよい。
マルチレンズ46は、例えば、波長選択性のマルチレンズであり、各光ディスクの信号記録面で反射され、対物レンズ34、回折光学素子35、立ち上げミラー44、1/4波長板43、及びコリメータレンズ42を経由して、第3のビームスプリッタ38で反射されて往路の光ビームより分離された戻りの第1乃至第3の波長の光ビームを光検出器45のフォトディテクタ等の受光面に適切に集光する。このとき、マルチレンズ46は、フォーカシングエラー信号等の検出のための非点収差を戻りの光ビームに付与する。
光検出器45は、マルチレンズ46で集光された戻りの光ビームを受光して、情報信号とともに、フォーカシングエラー信号及びトラッキングエラー信号等の各種検出信号を検出する。
以上のように構成された光ピックアップ3は、光検出器45によって得られたフォーカシングエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいて、対物レンズ34を駆動変位させることによって、光ディスク2の信号記録面に対して対物レンズ34が合焦位置に移動されて、光ビームが光ディスク2の信号記録面に合焦されて、光ディスク2に対して情報の記録又は再生が行われる。
光ピックアップ3は、回折光学素子35の一方の面に設けられ、第1乃至第3の回折領域51,52,53を有する回折部50により、各波長の光ビームに対して波長変動耐性を有する状態で領域毎に最適な回折効率及び回折角を与えることができ、保護層の厚さ等のフォーマットが異なる3種類の第1乃至第3の光ディスク11,12,13の信号記録面における球面収差を十分に低減でき、異なる3波長の光ビームを用いて、複数種類の光ディスク11,12,13に対して信号の読み取り及び書き込みを可能とする。
また、上述の光ピックアップ3の回折部50を有する回折光学素子35及び対物レンズ34は、入射した光ビームを所定の位置に集光させる集光光学装置として機能することができる。この集光光学装置は、回折光学素子35の一方の面に設けられる回折部50により、異なる3種類の光ディスクに対して光ビームを照射して情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられた場合に、3種類の光ディスクの信号記録面に対応する光ビームを球面収差を十分に低減した状態で適切に集光することを可能とし、すなわち、3波長に対して共通の対物レンズ34を用いる光ピックアップの3波長互換を可能とする。
また、上述では、回折部50が設けられた回折光学素子35及び対物レンズ34を一体となるように、対物レンズ34を駆動する対物レンズ駆動機構等のアクチュエータに設けるように構成したが、このアクチュエータのレンズホルダに組み付ける際の組み付け精度を高めるとともに組付けを容易にするために回折光学素子35及び対物レンズ34をユニット状にして一体としたような集光光学ユニットとして構成してもよい。例えば、回折光学素子35及び対物レンズ34を、スペーサ等を用いて、位置、間隔及び光軸を合わせながらホルダにより固定することで一体化して集光光学ユニットを構成できる。回折光学素子35及び対物レンズ34は、上述のように、対物レンズ駆動機構に一体に組み付けられることにより例えばトラッキング方向へ変位される等の視野振りの際にも第1乃至第3の波長の光ビームの球面収差を低減させた状態で各光ディスクの信号記録面に適切に集光することが可能となる。
次に、上述のように構成された光ピックアップ3における、第1乃至第3の光源部31,32,33から出射された光ビームの光路について、図2を用いて説明する。まず、第1の光ディスク11に対して第1の波長の光ビームを出射させて情報の読み取り又は書き込みを行うときの光路について説明する。
光ディスク2の種類が第1の光ディスク11であることを判別したディスク種類判別部22は、第1の光源部31の第1の出射部から第1の波長の光ビームを出射させる。
第1の出射部から出射された第1の波長の光ビームは、第1のグレーティング39によりトラッキングエラー信号等の検出のため3ビームに分割され、第2のビームスプリッタ37に入射される。第2のビームスプリッタ37に入射された第1の波長の光ビームは、そのミラー面37aで反射され、第3のビームスプリッタ38側に出射される。
第3のビームスプリッタ38に入射された第1の波長の光ビームは、そのミラー面38aを透過されて、コリメータレンズ42側に出射され、コリメータレンズ42により発散角を変換されて略平行光とされ、1/4波長板43に所定の位相差を付与され、立ち上げミラー44で反射されて回折光学素子35側に出射される。
回折光学素子35に入射した第1の波長の光ビームは、その入射側の面に設けられた回折部50の第1乃至第3の回折領域51,52,53により、各領域を通過した光ビームをそれぞれ上述のように所定の回折次数が所定の回折効率以上で且つ波長変動に対して回折効率の変動が少ない状態となるようにして出射され、対物レンズ34に入射される。尚、回折光学素子35から出射される第1の波長の光ビームは、所定の発散角の状態とされているのみならず、開口制限された状態とされている。
対物レンズ34に入射した第1の波長の光ビームは、各領域51,52,53を通過した光ビームが球面収差を低減できるような発散角の状態で入射されているので、対物レンズ34により、第1の光ディスク11の信号記録面に適切に集光される。
第1の光ディスク11で集光された光ビームは、信号記録面で反射し、対物レンズ34、回折光学素子35、立ち上げミラー44、1/4波長板43,コリメータレンズ42を経由して、第3のビームスプリッタ38のミラー面38aにより反射されて光検出器45側に出射される。
第3のビームスプリッタ38により反射された往路の光ビームから光路分岐された光ビームは、マルチレンズ46により光検出器45に受光面に集束されて検出される。
次に、第2の光ディスク12に対して第2の波長の光ビームを出射させて情報の読み取り又は書き込みを行うときの光路について説明する。
光ディスク2の種類が第2の光ディスク12であることを判別したディスク種類判別部22は、第2の光源部32の第2の出射部から第2の波長の光ビームを出射させる。
第2の出射部から出射された第2の波長の光ビームは、第2のグレーティング40によりトラッキングエラー信号等の検出のため3ビームに分割され、第1のビームスプリッタ36に入射される。第1のビームスプリッタ36に入射された第2の波長の光ビームは、そのミラー面36aを透過され、第2のビームスプリッタ37のミラー面37aも透過され、第3のビームスプリッタ38側に出射される。
第3のビームスプリッタ38に入射された第2の波長の光ビームは、そのミラー面38aを透過されて、コリメータレンズ42側に出射され、コリメータレンズ42により発散角を変換されて略平行光とされ、1/4波長板43に所定の位相差を付与され、立ち上げミラー44で反射されて回折光学素子35側に出射される。
回折光学素子35に入射した第2の波長の光ビームは、その入射側の面に設けられた回折部50の第1乃至第3の回折領域51,52,53により、第1及び第2の回折領域51,52を通過した光ビームをそれぞれ上述のような所定の回折次数が所定の回折効率以上で且つ波長変動に対して回折効率の変動が少ない状態となるようにして、及び第3の回折領域53を通過した光ビームを上述のような所定の回折次数が所定の回折効率以下となるようにして出射され、対物レンズ34に入射される。尚、回折光学素子35から出射される第2の波長の光ビームは、所定の発散角の状態とされているのみならず、対物レンズ34に入射することにより開口制限の効果が得られる状態とされている。
対物レンズ34に入射した第2の波長の光ビームは、第1及び第2の回折領域51,52を通過した光ビームが球面収差を低減できるような発散角の状態で入射されているので、対物レンズ34により、第2の光ディスク12の信号記録面に適切に集光される。
第2の光ディスク12の信号記録面で反射された光ビームの復路側の光路については、上述した第1の波長の光ビームと同様であるので、省略する。
次に、第3の光ディスク13に対して第3の波長の光ビームを出射させて情報の読み取り又は書き込みを行うときの光路について説明する。
光ディスク2の種類が第3の光ディスク13であることを判別したディスク種類判別部22は、第3の光源部33の第3の出射部から第3の波長の光ビームを出射させる。
第3の出射部から出射された第3の波長の光ビームは、第3のグレーティング41によりトラッキングエラー信号等の検出のため3ビームに分割され、第1のビームスプリッタ36に入射される。第1のビームスプリッタ36に入射された第3の波長の光ビームは、そのミラー面36aで反射され、第2のビームスプリッタ37のミラー面37aを透過され、第3のビームスプリッタ38側に出射される。
第3のビームスプリッタ38に入射された第3の波長の光ビームは、そのミラー面38aを透過されて、コリメータレンズ42側に出射され、コリメータレンズ42により発散角を変換されて略平行光に対して拡散若しくは収束した状態とされ、1/4波長板43に所定の位相差を付与され、立ち上げミラー44で反射されて回折光学素子35側に出射される。
回折光学素子35に入射した第3の波長の光ビームは、その入射側の面に設けられた回折部50の第1乃至第3の回折領域51,52,53により、第1の回折領域51を通過した光ビームを上述のような所定の回折次数が所定の回折効率以上で且つ波長変動に対して回折効率の変動が少ない状態となるようにして、及び第2及び第3の回折領域52,53を通過した光ビームをそれぞれ上述のような所定の回折次数が所定の回折効率以下となるようにして出射され、対物レンズ34に入射される。尚、回折光学素子35から出射される第3の波長の光ビームは、所定の発散角の状態とされているのみならず、対物レンズ34に入射することにより開口制限の効果が得られる状態とされている。
対物レンズ34に入射した第3の波長の光ビームは、第1の回折領域51を通過した光ビームが球面収差を低減できるような発散角の状態で入射されているので、対物レンズ34により、第3の光ディスク13の信号記録面に適切に集光される。
第3の光ディスク13の信号記録面で反射された光ビームの復路側の光路については、上述した第1の波長の光ビームと同様であるので、省略する。
尚、ここでは、第3の波長の光ビームは、第3の出射部の配置を調整することで、コリメータレンズ42により発散角を変換され回折光学素子35に入射される光ビームを略平行光の状態に対して拡散若しくは収束した状態となるように構成したが、波長選択性を有して発散角を変換する素子を設けることにより、又はコリメータレンズ42を光軸方向に駆動するような手段を設けることにより、回折光学素子35に入射するように構成してもよい。
また、ここでは、第1及び第2の波長の光ビームが、略平行光の状態で回折光学素子35に入射されるとともに、第3の波長の光ビームが、発散光又は収束光の状態で回折光学素子35に入射されるように構成したが、これに限られるものではなく、例えば、第1乃至第3の波長の光ビーム全てを平行光の状態で、又は、第1乃至第3の波長の光ビームの内、いずれか又は全部の光ビームを発散光又は集束光の状態で回折光学素子に入射するように構成してもよい。
本発明を適用した光ピックアップ3は、第1乃至第3の波長の光ビームを出射する第1乃至第3の出射部と、第1乃至第3の出射部から出射された第1乃至第3の波長の光ビームを光ディスクの信号記録面に集光する対物レンズ34と、第1乃至第3の波長の光ビームの往路の光路上に配置される光学素子の一方の面に設けられる回折部50とを備え、回折部50が、第1乃至第3の回折領域51,52,53を有し、第1乃至第3の回折領域51,52,53が、輪帯状で且つ所定の深さを有する凹凸形状等であってそれぞれ異なる回折構造とされるとともに、各波長の光ビームに対して上述のような所定の回折次数の回折光が所定の回折効率以上又は所定の回折効率以下となるように発生させるとともに各所定の次数の回折光の各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化が1%未満となるようにする第1乃至第3の回折構造を有するように構成したことにより、それぞれ使用波長を異にする3種類の光ディスクに対して、共通の一の対物レンズ34を用いてそれぞれ対応する光ビームを信号記録面に適切に集光することを可能として、構成を複雑にすることなく、対物レンズ34を共通とした3波長互換を実現してそれぞれの光ディスクに対して良好な情報信号の記録及び/又は再生を実現するとともに、各波長の光ビームに波長変動が発生した場合にも良好な記録及び/又は再生を実現する。
すなわち、本発明を適用した光ピックアップ3は、第1乃至第3の波長の光ビームの光路内の一面に設けられた回折部50により最適な回折効率及び回折角を得ることで、各光源部31,32,33に設けられた複数の出射部から出射される異なる波長の光ビームを用いて、複数種類の光ディスク11,12,13に対して信号の読み取り及び書き込みを可能とし、且つ波長変動耐性を有するとともに、対物レンズ34等の光学部品を共通化することができるので、部品点数を削減して、構成の簡素化及び小型化を可能とし、高生産性、低コスト化を実現するとともに波長変動が発生した場合の記録再生特性の向上を実現する。
また、本発明を適用した光ピックアップ3は、対物レンズ34を3波長に対して共通とすることができるので、アクチュエータにおける可動部の重量が増大することによる感度低下等の問題の発生を防止できる。また、本発明を適用した光ピックアップ3は、3波長互換の際の共通の対物レンズ34を用いた場合に問題となる球面収差を光学素子の一面に設けた回折部50により十分に低減できるので、従来のような球面収差低減用の回折部を複数面に設けた場合の各回折部間の位置合わせや、複数の回折部を設けることによる回折効率の低下等の問題を防止でき、すなわち、組立工程の簡素化及び光の利用効率の向上を実現する。また、本発明を適用した光ピックアップ3は、波長変動耐性を有することにより、光源の発振波長の誤差の許容範囲を拡げることを可能とし、光源の歩留まりを上昇させ、コストを低減することを実現する。
さらに、本発明を適用した光ピックアップ3は、上述した回折光学素子35の一面に設けられた回折部50により3波長互換を実現するのみならず、3種類の光ディスク及び3種類の波長の光ビームに対応した開口数で開口制限を行うことができ、さらに、構成の簡素化、小型化、及び低コスト化を実現する。
また、上述では、光ピックアップ3において、第1の光源部31に第1の出射部を設け、第2の光源部32に第2の出射部を設け、第3の光源部33に第3の出射部を設けるように構成したが、これに限られるものではなく、例えば、第1乃至第3の出射部の内2つの出射部を有する光源部と、残りの1つの出射部を有する光源部とを異なる位置に配置して設けるように構成してもよい。
次に、第1の出射部を有する光源部と、第2及び第3の出射部を有する光源部とを備える図18に示す光ピックアップ60について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ3と共通する部分については、共通の符号を付して詳細な説明は、省略する。
本発明を適用した光ピックアップ60は、図18に示すように、第1の波長の光ビームを出射する第1の出射部を有する第1の光源部61と、第2の波長の光ビームを出射する第2の出射部と、第3の波長の光ビームを出射する第3の出射部とを有する第2の光源部62と、この第1乃至第3の出射部から出射された光ビームを光ディスク2の信号記録面上に集光する対物レンズ34と、第1乃至第3の出射部と対物レンズ34との間の光路上に設けられる回折光学素子35とを備える。
また、光ピックアップ60は、第1の光源部61の第1の出射部から出射された第1の波長の光ビームの光路と、第2の光源部62の第2及び第3の出射部から出射された第2及び第3の波長の光ビームの光路とを合成する光路合成手段としてビームスプリッタ63と、上述の第3のビームスプリッタ38と同様の機能を有するビームスプリッタ64とを有する。
さらに、光ピックアップ60は、第1のグレーティング39と、第2の光源部62とビームスプリッタ63との間に設けられ、第2及び第3の出射部から出射された第2及び第3の波長の光ビームをトラッキングエラー信号等の検出のためにそれぞれ3ビームに回折する波長依存性を有するグレーティング65とを有する。
また、光ピックアップ60は、コリメータレンズ42と、1/4波長板43と、立ち上げミラー44と、光検出器45と、マルチレンズ46とを有するとともに、このコリメータレンズ42を光軸方向に駆動するコリメータレンズ駆動手段66とを有する。コリメータレンズ駆動手段66は、コリメータレンズ42を光軸方向に駆動することで、上述したように、コリメータレンズ42を通過した光ビームの発散角を調整することができることにより、球面収差をより低減することを可能とするのみならず、装着された光ディスクが信号記録面を複数有する所謂多層光ディスクであった場合には、そのいずれの信号記録面への記録及び/又は再生をも可能とする。
以上のように構成された光ピックアップ60において、各光学部品の機能は、上述したことを除いて光ピックアップ3と同様であり、第1乃至第3の出射部から出射された第1乃至第3の波長の光ビームの光路についても、上述したことを除いて、すなわちビームスプリッタ64で各波長の光ビームの光路が合成された後は光ピックアップ3と同様であるので詳細な説明は省略する。
本発明を適用した光ピックアップ60は、第1乃至第3の波長の光ビームを出射する第1乃至第3の出射部と、第1乃至第3の出射部から出射された第1乃至第3の波長の光ビームを光ディスクの信号記録面に集光する対物レンズ34と、第1乃至第3の波長の光ビームの往路の光路上に配置される光学素子の一方の面に設けられる回折部50とを備え、回折部50が、第1乃至第3の回折領域51,52,53を有し、第1乃至第3の回折領域51,52,53が、輪帯状で且つ所定の深さを有する凹凸形状等であってそれぞれ異なる回折構造とされるとともに、各波長の光ビームに対して上述のような所定の回折次数の回折光が所定の回折効率以上又は所定の回折効率以下となるように発生されるとともに各所定の次数の回折光の各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化が1%未満となるようにする第1乃至第3の回折構造を有するように構成したことにより、それぞれ使用波長を異にする3種類の光ディスクに対して、共通の一の対物レンズ34を用いてそれぞれ対応する光ビームを信号記録面に適切に集光することを可能として、構成を複雑にすることなく、対物レンズ34を共通とした3波長互換を実現してそれぞれの光ディスクに対して良好な情報信号の記録及び/又は再生を実現するとともに、各波長の光ビームに波長変動が発生した場合にも良好な記録及び/又は再生を実現する。また、光ピックアップ60は、その他の上述した光ピックアップ3と同様の効果を有している。
さらに、光ピックアップ60は、第2及び第3の出射部を共通の光源部62に配置するように構成したことから、さらなる構成の簡素化及び小型化を実現する。尚、同様に、本発明を適用した光ピックアップは、第1乃至第3の出射部を略同一位置に有する光源部に配置するように構成してもよく、そのような構成とした場合には、さらなる構成の簡素化及び小型化を実現する。
また、上述した光ピックアップ3,60における、第1の回折領域51又は第2の回折領域52は、複数種類の光ディスクに対して第1の波長の光ビームと、第2の波長の光ビームと、第3の波長の光ビームとを選択的に照射することにより情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップに用いられ第1乃至第3の波長の光ビームの光路内に設けられる本発明を適用した光学素子を構成する。
本発明を適用した光学素子は、いずれか一方の面に反射型又は透過型の回折部を備え、回折部が、一方の面の一部又は全部に、複数の段部からなる凹凸形状の単位周期構造が連続的に、且つ単位周期構造のピッチが一定又は連続的に変化して設けられた回折構造を有する上述した第1の回折領域51のような回折領域を有し、この回折領域に入射した第1の波長の光ビームの次数がm1の回折光を回折効率が70%以上となるように発生させ、回折領域に入射した第2の波長の光ビームの次数がm2の回折光を回折効率が50%以上となるように発生させ、回折領域に入射した第3の波長の光ビームの次数がm3の回折光を回折効率が30%以上となるように発生させるとともに、各次数がm1,m2,m3の回折光の各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化が1%未満として各回折光を発生させるように構成される。尚、この光学素子を構成する回折領域には、上述した第1の回折領域51と同様に、上述した式(11)〜式(14)を満たす回折構造が形成される。また、この次数(m1,m2,m3)の組み合わせは、上述した表1で示される(m1i,m2i,m3i)の組み合わせのいずれかの関係となるようにされている。また、上述の第1の回折領域51には、輪帯状の第1の回折構造が設けられるように構成したが、この光学素子を構成する回折領域に形成される回折構造は、輪帯状に限られるものではなく、複数波長の光ビームを選択的にその光路の角度を変えることで光路を合成したり分離したりするために、例えば所定の一方向に向けて形成される回折構造であってもよく、そのような場合には、その回折構造の断面形状、すなわちこの一方向に直交する断面形状が上述したような条件(式(11)〜式(14))を満たすものであればよい。さらに、上述では、透過型の回折部50について説明したが、この光学素子を構成する回折部は、透過型であっても反射型であってもよい。尚、反射型の回折部として構成する場合には、上述したΔn=2として条件を満たすように構成すればよい。
このような本発明を適用した光学素子は、上述した光ピックアップ3の回折部50の内輪帯と同様の機能を有し、その他の中輪帯及び外輪帯と同様の機能を有する光学部品とともに用いられることにより、構成を複雑にすることなく、それぞれ使用波長を異にする3種類の光ディスクに対して、共通の一の対物レンズを用いて光ビームを信号記録面に集光することを可能とし、複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を実現するとともに、各波長の光ビームに波長変動が発生した場合にも良好な記録及び/又は再生を実現する。また、本発明を適用した光学素子は、3波長互換を有する光ピックアップにおいて、波長変動耐性を有し高い回折効率で複数種類の光ビームから選択的に任意の光ビームの光路を変えることを可能として、光ピックアップの光学系において光路を合成したり分離したりすることを可能として、光ピックアップの3波長互換を簡易な構成で実現する。
また、本発明を適用した光学素子は、いずれか一方の面に反射型又は透過型の回折部を備え、回折部が、一方の面の一部又は全部に、複数の段部からなる凹凸形状の単位周期構造が連続的に、且つ単位周期構造のピッチが一定又は連続的に変化して設けられた回折構造を有する上述した第2の回折領域52のような回折領域を有し、この回折領域に入射した第1の波長の光ビームの次数がm’1の回折光を回折効率が70%以上となるように発生させ、回折領域に入射した第2の波長の光ビームの次数がm’2の回折光を回折効率が50%以上となるように発生させ、回折領域に入射した第3の波長の光ビームの次数がm’3の回折光を回折効率が10%以下となるように発生させるとともに、各波長がm’1,m’2の回折光の各波長における1nmの波長変化に対する回折効率の変化が1%未満として各回折光を発生させるように構成される。尚、この光学素子を構成する回折領域には、上述した第2の回折領域52と同様に、上述した式(15)〜式(20)を満たす回折構造が形成される。また、この次数(m’1,m’2,m’3)の組み合わせは、上述した表1で示される(m1i,m2i,m3i)の組み合わせのいずれかの関係となるようにされている。また、上述の第2の回折領域52には、輪帯状の第2の回折構造が設けられるように構成したが、この光学素子を構成する回折領域に形成される回折構造は、輪帯状に限られるものではなく、複数波長の光ビームを選択的にその光路の角度を変えることで光路を合成したり分離したりするために、例えば所定の一方向に向けて形成される回折構造であってもよく、そのような場合には、その回折構造の断面形状が上述したような条件(式(15)〜式(20))を満たすものであればよい。さらに、上述では、透過型の回折部50について説明したが、この光学素子を構成する回折部は、透過型であっても反射型であってもよい。尚、反射型の回折部として構成する場合には、上述したΔn=2として条件を満たすように構成すればよい。
このような本発明を適用した光学素子は、上述した光ピックアップ3の回折部50の中輪帯と同様の機能を有し、その他の内輪帯及び外輪帯と同様の機能を有する光学部品とともに用いられることにより、構成を複雑にすることなく、それぞれ使用波長を異にする3種類の光ディスクに対して、共通の一の対物レンズを用いて光ビームを信号記録面に集光することを可能とし、複数種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を実現するとともに、各波長の光ビームに波長変動が発生した場合にも良好な記録及び/又は再生を実現する。また、本発明を適用した光学素子は、3波長互換を有する光ピックアップにおいて、波長変動耐性を有し高い回折効率で複数種類の光ビームから選択的に任意の光ビームの光路を変えることを可能として、光ピックアップの光学系において光路を合成したり分離したりすることを可能として、光ピックアップの3波長互換を簡易な構成で実現する。
また、本発明を適用した光ディスク装置1は、第1乃至第3の光ディスクから任意に選択される光ディスクを保持して回転駆動する駆動手段と、この駆動手段によって回転駆動される光ディスクに対し波長を異にする複数の光ビームを選択的に照射することにより情報信号の記録及び/又は再生を行う光ピックアップとを備え、この光ピックアップとして上述した光ピックアップ3,60を用いたことにより、第1乃至第3の波長の光ビームの光路上の光学素子の一面に設けられた回折部により、それぞれ使用波長を異にする3種類の光ディスクに対して、共通の一の対物レンズ34を用いてそれぞれ対応する光ビームを信号記録面に適切に集光することを可能として、構成を複雑にすることなく、対物レンズ34を共通した3波長互換を実現するとともに、各波長の光ビームに波長変動が発生した場合にも各波長の光ビームの各回折光の回折効率の変動を小さく抑えることを実現するので、構成の簡素化及び小型化を可能とするとともに良好な記録・再生特性を得ることを実現する。
1 光ディスク装置、 2 光ディスク、 3 光ピックアップ、 4 スピンドルモータ、 5 送りモータ、 9 サーボ制御部、22 ディスク種類判別部、 31 第1の光源部、 32 第2の光源部、 33 第3の光源部、 34 対物レンズ、 35 回折光学素子、 36 第1のビームスプリッタ、 37 第2のビームスプリッタ、 38 第3のビームスプリッタ、 39 第1のグレーティング、 40 第2のグレーティング、 41 第3のグレーティング、 42 コリメータレンズ、 43 1/4波長板、 44 立ち上げミラー、 45 光検出器、 46 マルチレンズ、 50 回折部、 51 第1の回折領域、 52 第2の回折領域、 53 第3の回折領域