JP2009074447A - 垂直軸型風車 - Google Patents

垂直軸型風車

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Abstract

【課題】停止状態からの起動性と、周速比λが3よりも小さい低周速比領域(ただし、λ≧1)における効率を向上させ、従来の垂直軸型風車の性能を大幅に向上させることを目的とする。
【解決手段】本実施例の垂直軸型風車1は、風向に対して垂直に設置される回転軸2に断面が翼形状をなす3枚のブレード3が回転軸2を中心とする仮想の円周上にその円周の接線方向に対して所望の角度をなすように支持部材5を介して取り付けられており、断面がブレード3と同様に翼形状をなす補助翼4がブレード3の表面3aに間隙cを設けて設置された構造となっている。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転軸が風に対して垂直に設置される、いわゆる垂直軸型の風力発電用風車に係り、特にブレードの他に補助翼をも備えた垂直軸型風車に関する。
風車は、回転軸が風向に対して水平に設置される水平軸型風車と、回転軸が風向に対して垂直に設置される垂直軸型風車に分けられる。垂直軸型風車は水平軸型風車と比較して風向に依存しないため、風向に応じて姿勢を制御する必要がなく、また、水平軸型風車ほど回転数が高くならないため、低騒音であるという特徴を有している。さらに、風の作用によりブレードには揚力や抗力が発生するが、どちらの力を主として利用するかによって垂直軸型風車は揚力型と抗力型に分けられる。抗力型の場合、原理的に周速比(ブレード先端速度/風速)λを1よりも大きくすることができないため、効率が良くない。一方、揚力型の場合、周速比λを1よりも大きくできるが、停止時からの起動性が悪い。また、揚力型において、周速比λが3よりも小さい場合には、ブレードの回転方向の位置(以下、位相という。)によりブレードの相対風速に対する迎角が20°より大きくなる。その結果、ブレードが失速状態となって、効率が低下する。
ここで、垂直軸型風車の動作原理と上記問題点について図8を用いて具体的に説明する。
図8(a)は断面が翼形状をなす3枚のブレードを有する揚力型の垂直軸型風車の平面図であり、(b)は風によってブレードに作用する力を示す図である。なお、図8(a)中の矢印L及び矢印Dは、風車の停止状態においてブレードに作用する揚力及び抗力をそれぞれ表している。
従来技術の垂直軸型風車12は、例えば、図8(a)に示すように、風に対して垂直に設置される回転軸13と、断面が翼形状をなす3枚のブレード14と、回転軸13を中心とする円周上に3枚のブレード14をそれぞれ設置するための3本の支持具15とを備えている。回転軸13から3方に延設される支持具15の一端にはブレード14が所定の角度で取り付けられている。
ブレード14は風速Vとブレード速度Vφによって相対風速Wの風を受ける。このとき、相対風速Wの風向と翼弦線16(前縁17と後縁18とを結んだ線)とのなす角が迎角αとなり、ブレード14には相対風速Wに対して垂直方向の揚力L及び水平方向の抗力Dが作用する。これら揚力Lと抗力Dの合力Fの回転方向成分Ftが垂直軸型風車12の回転に寄与する力となる。そして、垂直軸型風車12が回転してブレード14の位相φが変化した場合、迎角αも変化する。
次に、起動時と回転時における位相φに対する迎角αの変化について図9を用いて説明する。
図9は周速比λが0と1.5の場合における位相φと迎角αの関係を示す図である。
図9に示すように、起動時(周速比λ=0)にはブレード14の位相φによって迎角αは−180°〜180°の範囲で変化する。そのため、ブレード14に作用する揚力Lと抗力Dは位相φによって大きく変化する。すなわち、図8(a)に示した複数枚のブレード14には、回転に寄与する力が作用するものと、回転を妨げる力が作用するものとが存在することになる。このように、従来の垂直軸型風車12においては、起動性が悪いという課題があった。
一方、回転時(周速比λ=1.5)にはブレード14の位相φによって迎角αは−42°〜42°の範囲で変化する。このように、周速比λが3よりも小さい場合には、迎角αが大きな値をとるため、ブレード14が失速状態となり、効率が低下する。また、ブレード14が翼弦線16に対して非対称な断面形状を有する場合には、負の迎角αに対して空力性能が極端に低下するため、注意が必要である。
以上のような課題があるものの、既に述べたように垂直軸型風車は水平軸型風車と比較して風向に依存しないため、風向に応じて姿勢を制御する必要がなく、また、水平軸型風車ほど回転数が高くならず、低騒音であることから、近年、風力発電用風車として注目されている。そして、前述の課題を解決するべく、様々な研究や開発が行われており、これまでに既にいくつもの発明が開示されている。
例えば、特許文献1には、「風力発電用の風車」という名称で、広範囲の風速域において高い発電効率を示す垂直軸型風車に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、垂直回転軸に直交する面内で回転軸を中心として一定角度ごとに、1.0〜1.4の範囲の揚力係数を有するとともに翼弦に対して回転軸側が翼弦長に対して前縁から35%〜45%の位置を基点として後縁まで切り欠かれた複数のブレードを設けたことを特徴としている。なお、揚力係数とは揚力を動圧と代表面積で除して無次元化した値のことである。
このような構造の風力発電用の風車においては、前方から吹く風によってブレードに揚力が発生するとともに、後方から吹く風に対してはブレードの切欠部の存在によって抗力が増加し、ブレードを前方へ押す推進力が増大するという作用を有する。これにより、起動性が向上するとともに、低速風域における発電効率も高まる。また、ブレードが簡単でコンパクトな構造であるため、小型や中型の風車を安価に、かつ容易に製造することができる。
また、特許文献2には、「直線翼垂直軸風車の起動性改善および強風対策」という名称で、低速風での起動と強風での退避を容易に行うことができるとともに経済性に優れる直線翼垂直軸風車に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、ダリウス型の直線翼垂直軸風車において翼型の後端の内周側にスプリッタ型フラップを設けるとともに、高回転数時に翼半径を縮めて遮風カバー内に退避させる構造としたことを特徴としている。
このような構造の直線翼垂直軸風車においては、低回転数時にはフラップが主翼と離れ、高回転数時にはフラップが遠心力によって主翼に接近するという作用を有する。これにより低回転数時には抗力が大きくなり、起動性が向上する。また、高回転数時にはダリウス型本来の回転トルクを生じるため、回転効率が高まる。なお、風速がさらに増した場合には、受風面積を狭くして翼の破壊を防ぐことが可能である。
さらに、特許文献3には、「風力発電用の風車及び発電機駆動方式」という名称で、弱風域から強風域において安定した発電状態を維持することが可能な揚力型垂直軸型風車に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、ジャイロミル型風車においてブレードの中心から後半分の上部又は下部にサボニウス構造の凹曲面を埋め込むとともにブレード重心と支持位置とをずらして遠心力によりブレード角度を可変としたことを特徴とするものである。
このような構造の風車においては、ブレードの後半分に埋め込んだ凹曲面によってブレードの後方や斜めからの風による抗力が回転力に利用できる。また、強風での高速回転時には遠心力によってブレードの角度が変わることで、揚力が低下し、暴走が抑制されるという作用を有する。すなわち、本発明の風車によれば、風向きや風速が絶えず変化する状況においても効率的に発電機を回すことができる。また、強風時に過大な電圧の発生を抑えることも可能である。
特許第3451085号公報 特開2006−258083号公報 特開2006−46306号公報
前述のとおり、垂直軸型風車では、風車が一回転する間に迎角が正負の値をとって変化する。そして、迎角が負の値をとる場合、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明においては、切欠部において気流が剥離して失速状態となり、ブレードに発生する揚力が極端に低下するおそれがある。
特許文献2に開示された発明では、可動部分を設ける必要があるため、翼の構造が複雑になり、故障し易いという課題がある。
特許文献3に開示された発明では、迎角が負になる場合に、凹曲面が形成された箇所で気流が剥離し、ブレードに発生する揚力が極端に低下してしまうおそれがある。また、ブレードの中心から後半分の上部にサボニウス構造の埋め込み形小凹曲面を設ける場合、ブレードの形状が複雑となるため、翼の製作が困難になる。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、停止状態からの起動性と、周速比λが3よりも小さい低周速比領域(ただし、λ≧1)における回転効率を向上させ、従来の垂直軸型風車の性能を大幅に向上させることを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である垂直軸型風車は、風向に対して垂直に設置される回転軸と、この回転軸を中心とする仮想の円周上にその接線方向と所望の角度をなすように設置される複数のブレードと、このブレードを回転軸に取り付ける支持部材と、ブレードの円周の半径方向の内外の少なくともいずれか一方の側に間隙を設けて設置される補助翼とを備え、補助翼は前傾して設置され、補助翼の翼弦線(以下、補助翼弦線という。)とブレードの翼弦線(以下、主翼弦線という。)は0〜15°の角度をなすことを特徴とするものである。
このような構造の垂直軸型風車においては、迎角が約0°となるような状態でブレードが前方から風を受けた場合には補助翼による抗力の増加はほとんどなく、迎角が約180°となるような状態でブレードが後方から風を受けた場合には補助翼によって抗力が増加するという作用を有する。また、ブレードが前方から風を受けるとき、迎角が大きい場合には、補助翼がブレード表面からの気流の剥離を防いで失速し難くするという作用を有する。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の垂直軸型風車において、補助翼弦線の長さ(以下、補助翼弦長という。)は主翼弦線の長さ(以下、主翼弦長という。)の5〜40%であることを特徴とするものである。
このような構造の垂直軸型風車においては、補助翼弦長を主翼弦長の5%以上とすることにより、補助翼による抗力の増加という請求項1に記載された発明の作用が確実に発揮される。また、補助翼弦長を主翼弦長の40%以下とすることにより、ブレードに前方から吹き付ける風に対して補助翼の抵抗の増加が抑えられるという作用を有する。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の垂直軸型風車において、補助翼とブレードとの間隙は主翼弦線の長さ(主翼弦長)の4〜20%であることを特徴とするものである。
このような構造の垂直軸型風車においては、ブレードに前方から吹き付ける風に対して、ブレード表面の剥離防止に有効な高速の気流を補助翼とブレードとの間隙に流入させるという作用を有する。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の垂直軸型風車において、補助翼は、その後縁が回転軸を中心とする円周の半径方向に見てブレードの前縁と後縁の間に位置するように設置されることを特徴とするものである。
このような構造の垂直軸型風車においては、前縁から後縁の間においてブレード表面からの気流の剥離が補助翼によって防止されるという作用を有する。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の垂直軸型風車において、補助翼は、その後縁が回転軸を中心とする円周の半径方向に見てブレードの前縁よりも前方に位置するように設置されることを特徴とするものである。
このような構造の垂直軸型風車においては、ブレードの前縁近傍において表面からの気流の剥離が補助翼によって防止されるという作用を有する。
以上説明したように、本発明の請求項1記載の垂直軸型風車においては、ブレードに後方から吹き付ける風を捉えて有効に回転力に利用することで、停止状態からの起動性を向上させることが可能である。また、ブレードに前方から吹き付ける風に対しては高迎角であっても失速し難くして、揚力係数の最大値を増大させるとともに、失速状態に陥る迎角の値を大きくすることが可能である。これにより、風車の回転効率が向上する。さらに、起動のための動力や起動状態を制御するための装置を別個に取り付ける必要がなく、また、簡単な構造であり、可動部もないため、製造コストの削減を図ることが可能である。そして、故障も発生し難い。
本発明の請求項2記載の垂直軸型風車においては、請求項1に記載された発明の効果を確実に発揮させることができる。
本発明の請求項3記載の垂直軸型風車においては、高迎角のブレードに対して失速状態になることを防ぐという請求項1又は請求項2に記載された発明の効果が確実に発揮される。
本発明の請求項4記載の垂直軸型風車においては、ブレードの前縁から後縁の間において表面から気流が剥離し難いことによって請求項1乃至請求項3に記載された発明の効果が発揮される。
本発明の請求項5記載の垂直軸型風車によれば、ブレードの前縁近傍において表面から気流が剥離し難いことによって請求項1乃至請求項3に記載された発明の効果が発揮される。
本発明の最良の実施の形態に係る垂直軸型風車の実施例について説明する。
実施例1の垂直軸型風車について図1乃至図6を用いて説明する(特に請求項1乃至請求項4に対応)。
図1は本発明の実施の形態に係る垂直軸型風車1の実施例1の外観斜視図である。
図1に示すように、本実施例の垂直軸型風車1は、風向に対して垂直に設置される回転軸2に断面が翼形状をなす3枚のブレード(主翼)3が支持部材5を介して取り付けられており、ブレード3の表面3aに補助翼4が間隙を設けて設置された構造となっている。なお、補助翼4の断面もブレード3と同様に翼形状をなしている。そして、3枚のブレード3は、回転軸2を中心とする仮想の円周上にその接線方向と所望の角度をなすように取り付けられている。また、支持部材5は、回転軸2から3方に延設されるとともに一端にブレード3が取り付けられるアーム5aと、アーム5aの他端を回転軸2に固定するための円板状の固定具5bによって構成されている。
図2(a)は実施例1の垂直軸型風車1を構成するブレード3と補助翼4の外観斜視図であり、(b)は同図(a)のY−Y線矢視断面図である。なお、図2(b)では、便宜上断面のハッチングを省略している。
図2(a)及び(b)に示すように、補助翼4は前縁9が後縁10より主翼弦線8に近づくように前傾して設置され、主翼弦線8と補助翼弦線11は0〜15°の角度をなしている。さらに、補助翼4の表面4aとブレード3の表面3aとの間隙(表面4aと表面3aの最短距離を意味する。)cはブレード3の翼弦長c(主翼弦線8の長さ)の4〜20%であり、補助翼4の翼弦長c(補助翼弦線11の長さ)は短すぎると後述の作用が発揮されず、また、長すぎると空気抵抗が増大することから、ブレード3の翼弦長cの5〜40%となっている。なお、補助翼4は、これを取り付けない場合に前方からの風に対してブレード3の表面3aから気流が剥離し始める位置よりも前方側に取り付けられている。また、図1及び図2では補助翼4の前縁9及び後縁10がともに回転軸2を中心とする前述の円周の半径方向に見てブレード3の前縁6及び後縁7の間に位置しているが、本実施例には補助翼4の後縁10のみがブレード3の前縁6及び後縁7の間に位置する場合も含まれる。なお、本願において、回転軸2を中心とする円周の半径方向に見るとは、回転軸2に視点を置き、ブレード3及び補助翼4側を見ることを意味している。
図3(a)乃至(c)は実施例1の垂直軸型風車1におけるブレード3及び補助翼4の周囲の気流の状態を模式的に示した図であり、(d)は従来の垂直軸型風車のブレードの周囲の気流の状態を模式的に示した図である。なお、図3(a)及び(b)はブレード3及び補助翼4が後方及び前方からそれぞれ風を受けた状態を示している。
図8を用いて従来の垂直軸型風車の構造について述べたように、本実施例の垂直軸型風車1においても、起動時あるいは低回転数時に風車が一回転する間にブレード3は後方から相対風速Wの風を受ける状態となる(図3(a))。しかしながら、上記構造の垂直軸型風車1においては、補助翼4が抗力Dを増加させるように作用する。これにより、図8に図示した回転方向Xと同一方向の回転力が増加する。一方、図3(b)に示すように、ブレード3が前方から相対風速Wの風を受ける場合、この風はブレード3の性能低下にほとんど影響しない。
図3(c)及び(d)は補助翼4を備えた本実施例のブレード3及び補助翼4を備えていない従来のブレードが前方から相対風速Wの風を受けた状態をそれぞれ示している。
図3(c)及び(d)に示すように、迎角が大きい場合、補助翼4を備えていないとブレード3の表面3aから気流が剥離してしまうが、補助翼4を備えているとブレード3の表面3aからの気流の剥離が補助翼4によって防止される。これにより、ブレード3は失速し難くなる。
なお、補助翼弦線11と主翼弦線8のなす角度は本実施例に示す場合に限定されるものではない。また、補助翼4の表面4aとブレード3の表面3aとの距離あるいは補助翼弦長cも本実施例に示す場合に限定されるものではなく、適宜変更可能である。ただし、主翼弦線8と補助翼弦線11のなす角度が負の値をとる場合や15°より大きい場合あるいは補助翼弦長cが主翼弦長cの40%より長い場合には、補助翼4がブレード3に前方から吹いてくる風に対して大きな抵抗となり、風車の回転を妨げる方向(図8に示した回転方向Xと逆方向)の回転力が増加するおそれがある。
また、補助翼4の表面4aとブレード3の表面3aとの間隙が主翼弦長cの4%よりも小さい場合又は20%よりも大きい場合あるいは補助翼弦長cが主翼弦長cの5%より短い場合には、ブレード3が前方からの風を受ける際に、表面3aからの剥離防止に有効な高速の気流が補助翼4の表面4aとブレード3の表面3aとの間隙に流入しないおそれがある。
さらに、補助翼弦長cが主翼弦長cの5%より短いと、ブレード3に対して後方から風が吹き付ける場合に補助翼4による抗力Dの増加という作用が発揮されないおそれがある。
すなわち、補助翼弦線11と主翼弦線8のなす角度、補助翼4の表面4aとブレード3の表面3aの間隙及び補助翼弦長cを本実施例に示した範囲から外れた値に設定する場合には、上述の点に注意しながら、風速、垂直軸型風車1の大きさ、ブレード3及び補助翼4の断面形状等の条件に即して各値を決定することが望ましい。
図4(a)乃至(c)は実施例1の垂直軸型風車1の変形例を示した図である。なお、図4(a)は図2(a)に対応し、図4(b)及び(c)は図2(b)に対応する。
本実施例ではブレード3の幅方向(翼断面と垂直な方向)の全長にわたり補助翼4を設置しているが、これに限定されるものではない。すなわち、図4(a)に示すように2つに分割した分割翼を設けることもできる。
ただし、この場合でもブレード3の幅方向の大半にわたって設置することが望ましい。なお、分割数は2つに限らず、3つ以上としても良い。さらに、図4(b)に示すように、補助翼4を実施例1で示した場合と主翼弦線8を挟んで反対側に設置しても良い。この場合、ブレード3が前方からの風を受ける際に、ブレード3と補助翼4との間に、ブレード3の表面3aからの剥離防止に有効な高速の気流を生じさせるという前述の作用が、実施例1の場合とは正負の符号が反対の迎角に対して発揮されることになる。加えて、図4(c)に示すように、補助翼4をブレード3の両側に設置しても良い。この場合、迎角の符号によらず、補助翼4はブレード3に対して実施例1と同様の作用を発揮する。なお、本実施例では補助翼4が支柱を介してブレード3の表面3aに取り付けられているが、補助翼4をブレード3との間に少なくとも間隙を設けて取り付ければよく、実施例1のように補助翼4を主翼弦線8に対して回転軸2と反対側に設置する場合にはアーム5aを延長し、回転軸2と同じ側に設置する場合にはアーム5aを利用して取り付けることもできる。また、補助翼4の断面形状はブレード3の断面形状とは必ずしも相似である必要は無く、ブレード3と異なる断面形状であっても良い。
次に、本実施例の垂直軸型風車1において揚力係数と抗力係数を求めた実験結果について説明する。
図5は一般的な翼型であるNACA0012の断面形状を有するブレード3における180°付近の迎角αに対する抗力係数Cを示す実験データである。なお、抗力係数とは抗力を動圧と代表面積で除して無次元化した値のことである。
また、補助翼4は平板翼形状であり、補助翼弦長cは主翼弦長cの20%である。さらに、補助翼4は、主翼弦線8の延長線に沿ったブレード3の前縁6から補助翼4の後縁10までの距離が0.3cとなり、補助翼4の後縁10からブレード3の表面3aまでの距離が0.14cとなるようにブレード3の片側あるいは両側に設置されている。このとき、補助翼4の表面4aとブレード3の表面3aとの距離は0.04c〜0.2cの範囲内にある。また、ブレード3の両側に取り付けられた補助翼4は主翼弦線8に対して略対称となっている。
図5に示すように、補助翼4を設置した場合には180°付近の迎角αに対して抗力係数Cが増加している。すなわち、迎角αが約180°を示す状態でブレード3が後方から風を受けた場合に、補助翼4は抗力Dを増加させるように作用することがわかる。
図6はNACA0012の断面形状を有するブレード3における−45°〜45°の迎角αに対する揚力係数Cを示す実験データである。なお、実験条件は図5の場合と同じである。また、図6において、迎角αの絶対値の増大に伴って、揚力係数Cの絶対値は増大した後、一旦、減少しているが、この落ち込んだ部分が失速状態を示している。
図6に示すように、迎角αが正の値を示す場合において、補助翼4の設置により揚力係数Cの最大値が増大するとともに、失速状態に陥る迎角αの値が大きくなっている。さらに、迎角αが負の値を示す場合においても、揚力係数Cの絶対値の低下がない。すなわち、本実施例に示した補助翼4を備えたブレード3は、揚力型の垂直軸型風車として望ましい特性を有していることがわかる。
以上説明したように、垂直軸型風車1では、ブレード3が後方からの風を受ける際に発生する抗力Dが、前方からの風を受ける際に発生する抗力Dよりも大きい。そして、この2つの抗力の差は、補助翼4を設置しない場合よりも大きい。従って、この抗力差によって停止状態の起動が容易となる。すなわち、本実施例の垂直軸型風車1においては、ブレード3に対して後方から吹き付ける風を捉えて有効に回転力に利用することにより、停止状態からの起動性を向上させることが可能である。また、この抗力差の回転力への利用は周速比λが1よりも小さい低回転数時にも発揮させることが可能である。さらに、ブレード3が前方からの風を受ける場合には、高迎角であっても補助翼4によってブレード3の表面3aからの気流の剥離が防止されるため、揚力係数Cの最大値が増大するとともに、失速状態に陥る迎角αの値が大きくなる。これにより、風車の回転効率が大幅に向上する。なお、この効果は、1≦λ<3の低周速比の場合において顕著である。すなわち、本実施例の垂直軸型風車1は低風速な風況や風車が小型である場合に特に有効である。このように、本実施例の垂直軸型風車1においては、起動のための動力や起動状態を制御するための装置を別個に取り付ける必要がなく、また、構造も簡単であり、可動部をもたないため、製造コストを低減できるとともに、故障の発生を抑えることができる。
実施例2の垂直軸型風車について図7を用いて説明する(特に請求項5に対応)。
図7(a)は本発明の実施の形態に係る垂直軸型風車の実施例2を構成するブレード3及び補助翼4の断面図であり、(b)及び(c)はブレード3及び補助翼4の周囲の気流の状態を模式的に示した図である。なお、図7(a)では、便宜上断面のハッチングを省略している。また、図7(a)は実施例1の図2(b)に対応し、図7(b)及び(c)は実施例1の図3に対応する。従って、図2及び図3に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図7(a)に示すように、本実施例の垂直軸型風車は、実施例1において回転軸2を中心とする円周の半径方向に見て補助翼4の後縁10がブレード3の前縁6と後縁7の間に位置する代わりに、補助翼4の後縁10がブレード3の前縁6よりも前方に位置するように補助翼4が設置されたことを特徴とするものである。
このような構造の垂直軸型風車においても、起動時あるいは低回転数時に風車が一回転する間にブレード3は後方から相対風速Wの風を受ける状態となる(図7(b))。しかしながら、上記構造の垂直軸型風車においては、実施例1の場合と同様に補助翼4によって抗力Dが増加するという作用を有する。これにより、図8に図示した回転方向Xと同一方向の回転力が増加する。一方、図7(c)に示すように、ブレード3が前方から相対風速Wの風を受ける場合、この風はブレード3の性能低下にほとんど影響しない。そして、補助翼4がブレード3の表面3aからの気流の剥離を防ぐように作用するため、失速状態になり難い。これにより、揚力係数Cの最大値を増大させるとともに、失速状態に陥る迎角αの値を大きくすることができる。従って、回転効率が向上する。なお、補助翼4の表面4aとブレード3の表面3aとの間隙cが主翼弦長cの4%より短い場合や主翼弦長cの20%より長い場合には、前方からの風に対して、ブレード3の表面3aからの剥離防止に有効な高速の気流をブレード3と補助翼4との間に流入させるという補助翼4の作用が発揮されないおそれがある。従って、補助翼4の表面4aとブレード3の表面3aの距離を本実施例に示した範囲から外れた値に設定する場合には、この点に注意しながら、風速、垂直軸型風車の大きさ、ブレード3及び補助翼4の断面形状等の条件に即して各値を決定することが望ましい。本実施例2における間隙cは、実施例1と同様に表面4aと表面3aの最短距離を意味するので、図7(a)に示される部分の距離となる。
なお、実施例1の場合には主としてブレード3の前縁6から後縁7の間において表面3aからの気流の剥離が防止され、実施例2の場合には主としてブレード3の前縁6の近傍において表面3aからの気流の剥離が防止される。そして、これ以外に、風速、風車の大きさ、ブレード3及び補助翼4の断面形状によって実施例1よりも実施例2の方が補助翼4の作用が十分に発揮される場合がある。従って、風車の実施条件に応じて実施例1及び実施例2をそれぞれ適宜、使い分けることが望ましい。
以上説明したように、請求項1乃至請求項5に記載された発明は、風力発電に用いられる垂直軸型風車について利用可能である。
本発明の実施の形態に係る垂直軸型風車の実施例1の外観斜視図である。 (a)は実施例1の垂直軸型風車を構成するブレードと補助翼の外観斜視図であり、(b)は同図(a)のY−Y線矢視断面図である。 (a)乃至(c)は実施例1の垂直軸型風車におけるブレード及び補助翼の周囲の気流の状態を模式的に示した図であり、(d)は従来の垂直軸型風車のブレードの周囲の気流の状態を模式的に示した図である。 (a)乃至(c)は実施例1の垂直軸型風車の変形例を示した図である。 一般的な翼型であるNACA0012の断面形状を有するブレードについて180°付近の迎角αにおける抗力係数Cを示す実験データである。 NACA0012の断面形状を有するブレードにおける−45°〜45°の迎角αに対する揚力係数Cを示す実験データである。 (a)は本発明の実施の形態に係る垂直軸型風車の実施例2を構成するブレード及び補助翼の断面図であり、(b)及び(c)はブレード及び補助翼の周囲の気流の状態を模式的に示した図である。 (a)は断面が翼形状をなす3枚のブレードを有する揚力型の垂直軸型風車の平面図であり、(b)は風によってブレードに作用する力を示す図である。 周速比λが0と1.5の場合における位相φと迎角αの関係を示す図である。
符号の説明
1…垂直軸型風車 2…回転軸 3…ブレード 3a…表面 4…補助翼 4a…表面 5…支持部材 5a…アーム 5b…固定具 6…前縁 7…後縁 8…主翼弦線 9…前縁 10…後縁 11…補助翼弦線 12…垂直軸型風車 13…回転軸 14…ブレード 15…支持具 16…翼弦線 17…前縁 18…後縁 α…迎角 φ…位相 c…主翼弦長 c…補助翼弦長 c,c…間隙 D…抗力 F…合力 F…合力Fの回転方向成分 L…揚力 Vφ…ブレード速度 V…風速 W…相対風速 X…回転方向

Claims (5)

  1. 風向に対して垂直に設置される回転軸と、この回転軸を中心とする仮想の円周上にその接線方向と所望の角度をなすように設置される複数のブレードと、このブレードを前記回転軸に取り付ける支持部材と、前記ブレードの前記円周の半径方向の内外の少なくともいずれか一方の側に間隙を設けて設置される補助翼とを備え、前記補助翼は前傾して設置され、前記補助翼の翼弦線(以下、補助翼弦線という。)と前記ブレードの翼弦線(以下、主翼弦線という。)は0〜15°の角度をなすことを特徴とする垂直軸型風車。
  2. 前記補助翼弦線の長さ(以下、補助翼弦長という。)は前記主翼弦線の長さ(以下、主翼弦長という。)の5〜40%であることを特徴とする請求項1記載の垂直軸型風車。
  3. 前記補助翼と前記ブレードとの前記間隙は前記主翼弦線の長さ(主翼弦長)の4〜20%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の垂直軸型風車。
  4. 前記補助翼は、その後縁が前記回転軸を中心とする前記円周の半径方向に見て前記ブレードの前縁と後縁の間に位置するように設置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の垂直軸型風車。
  5. 前記補助翼は、その後縁が前記回転軸を中心とする前記円周の半径方向に見て前記ブレードの前縁よりも前方に位置するように設置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の垂直軸型風車。


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