JP2009073924A - 二酸化炭素放出難燃剤及びそれを用いた樹脂組成物並びにその製造方法 - Google Patents

二酸化炭素放出難燃剤及びそれを用いた樹脂組成物並びにその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のノンハロゲン難燃剤よりも少量で効果があり、燃焼時に二酸化炭素を放出する二酸化炭素放出難燃剤及びそれを用いた樹脂組成物並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質の担体11に金属酸化物12を担持させ、かつ、その多孔質の担体11に二酸化炭素13を吸着させたる二酸化炭素放出難燃剤10であり、これを樹脂に混合してノンハロゲン樹脂組成物とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、高温雰囲気で、二酸化炭素を放出する難燃剤及びこの難燃剤を用いた樹脂組成物並びにその製造方法に関するものである。
近年、ポリ塩化ビニルやハロゲン系難燃剤を使用しない環境負荷の小さいノンハロゲン樹脂組成物が、電線・ケーブル分野や電子機器分野(ハウジング材料、電子部品材料)等、幅広い分野で用いられている。
これらノンハロゲン樹脂組成物では、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムを始めとする金属水酸化物をノンハロゲン難燃剤として用いている。
特開平9−876号公報
しかし、水酸化マグネシウムを始めとするノンハロゲン難燃剤は、難燃性が低いため多量の難燃剤を混和する必要がある。そのため、樹脂組成物の機械特性、押出加工性が低下する問題がある。
一方、ノンハロゲン難燃剤を減量するために、赤リンなどの難燃助剤を加える方法もあるが、赤リンは燃焼時に有害なホスフィンを発生し、廃却時にはリン酸を生成し地下水脈を汚染することが懸念される。そのため、最近では使用を控える傾向にある。
特許文献1には、多孔性のセラミック担体に塩基性酸化物層を形成し、水蒸気雰囲気において二酸化炭素の吸着を可能とする二酸化炭素親和性体が提案され、この二酸化炭素親和性体が高温の水蒸気雰囲気下で二酸化炭素を吸着することから、二酸化炭素分離膜に用いることが提案されている。
この特許文献1では、高温雰囲気中で二酸化炭素を選択的に吸着するものであるが、逆に担体に予め二酸化炭素を吸着させれば、燃焼時に吸着した二酸化炭素を放出し、難燃性を向上させることができることを見出して本発明をなすに至ったものである。
本発明の目的は、従来のノンハロゲン難燃剤よりも少量で効果があり、燃焼時に二酸化炭素を放出する二酸化炭素放出難燃剤及びそれを用いた樹脂組成物並びにその製造方法を提供するものである。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、多孔質の担体に金属酸化物を担持させ、かつ、その多孔質の担体に二酸化炭素を吸着させたことを特徴とする二酸化炭素放出難燃剤である。
請求項2の発明は、多孔質の担体は、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、シリカのいずれかもしくはこれらの混合物からなる請求項1記載の二酸化炭素放出難燃剤である。
請求項3の発明は、金属酸化物の金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのアルカリ金属、および、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのアルカリ土類金属といった塩基性金属からなる群から選ばれた単独、または二種類以上の混合物である請求項1記載の二酸化炭素放出難燃剤である。
請求項4の発明は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化炭素放出難燃剤を40〜240重量部添加してなることを特徴とするノンハロゲン樹脂組成物である。
請求項5の発明は、多孔質の担体に金属酸化物を担持させ、かつ、前記多孔質の担体に二酸化炭素を吸着させるに際して、二酸化炭素を吸着させる前に、金属酸化物を担持させた多孔質の担体の水分を除去し、その後、吸着温度300℃で二酸化炭素を吸着させることを特徴とする二酸化炭素放出難燃剤の製造方法である。
請求項6の発明は、金属酸化物を担持させた多孔質の担体を不活性ガス雰囲気下で、450〜550℃で、30分〜2時間熱処理して、担体中の水分の除去を行った後、吸着温度300℃で、3時間、二酸化炭素を吸着させる請求項5記載の二酸化炭素放出難燃剤の製造方法である。
本発明によれば、金属酸化物を担持させた多孔質の担体に予め二酸化炭素を吸着させて難燃剤とし、これを樹脂に混合することで、樹脂の燃焼時に二酸化炭素を放出し、樹脂に難燃性を付与することができるという優れた効果を発揮するものである。
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の二酸化炭素放出難燃剤10の概略構造を示したもので、多孔質の担体11に、金属酸化物12を担持させ、その金属酸化物12を担持させた多孔質の担体11から水分を除去した後、二酸化炭素13を吸着させたものであり、二酸化炭素13は、多孔質の担体11の孔内に吸着されると共に担持した金属酸化物12と結合した状態にある。
多孔質の担体11としては、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、シリカのいずれかもしくはこれらの混合物からなる。
金属酸化物12としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのアルカリ金属、および、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのアルカリ土類金属といった塩基性金属からなる群から選ばれた単独、または二種類以上の混合物からなる。
塩基性金属は、含浸法により多孔質の担体11に担持させる。含浸法とは、塩基性金属としての硝酸塩、あるいは酢酸塩の水溶液を多孔質の担体11に含浸して塩基性金属塩を導入する。
塩基性金属塩を導入した多孔質の担体11は、まず乾燥を行い、水分を除去し、その後、高温で焼成することにより塩を熱により分解し、金属酸化物12の状態にする。
焼成温度は、塩の分解温度より高い必要がある。
硝酸塩、あるいは酢酸塩であれば、600〜800℃で1〜2時間でおこなわれる。しかし、多孔質の担体11には、耐熱温度があり、その温度を超えないようにする必要がある。例えばゼオライトであれば700℃を超える温度は好ましくない。
塩基性金属の担持量は、多孔質の担体1g当り0.1〜30mmolである。担持量が少ないと難燃性が不十分であり、担持量が多すぎると、多孔質の担体11が塩基性金属を担持しきれなくなってしまう。より好ましい塩基性金属の担持量は10〜20mmol/gである。
次に、金属酸化物を担持した多孔質の担体に二酸化炭素を通気させることにより二酸化炭素を吸着させる。
吸着を行う前処理として、不活性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴン)を通気させながら、500℃前後(450〜550℃)で1時間程度(30分〜2時間)、熱処理し、水分の除去をおこなった。
その後、300℃(250〜350℃でも可)に温度を下げて、二酸化炭素/ヘリウム混合ガス(混合比10:90)を通気させて、二酸化炭素の吸着をおこなった。
通気は吸着が十分になされるように3時間おこなった。吸着温度を300℃としたのは、300℃以上の温度で脱離する二酸化炭素を多く吸着させるためである。
このように吸着された二酸化炭素は、高温環境で脱離するため、樹脂に添加すれば、樹脂の燃焼時に二酸化炭素が脱離し、燃焼雰囲気の酸素濃度を低下させて、樹脂に難燃性を付与することができる。
この二酸化炭素放出難燃剤をEVAなどのポリオレフィン樹脂に混合して成形することで、樹脂の燃焼時に難燃剤から二酸化炭素が放出され、樹脂に難燃性を付与することができる。
また二酸化炭素放出難燃剤を樹脂に添加することにより、少ない添加量で従来のノンハロゲン難燃剤と同等の難燃性を発現させることができ、樹脂組成物の機械特性および押出加工性の低下を少なくすることができる。
なお、塩基性金属のなかで、アルカリ金属は樹脂に添加する際に高い難燃性を発現することができるが、強電解質であるため電気絶縁物として用いる際には、注意が必要である。
本発明に使用する多孔質の担体としては、上述したように酸化チタン、アルミナ、シリカ、ゼオライトなどが挙げられるが、樹脂に添加する際に、機械特性、押出加工性に影響を与えるのは、多孔質の担体の粒径である。
特に機械特性の低下を抑えるには、表面エネルギーが大きい微粒子のものが望ましい。
しかし、粒径が小さすぎると、樹脂に添加した際に増粘し、押出加工性が低下することが考えられる。また、取り扱い性も悪くなることから、粒径は、0.8〜5μmが望ましい。
鋭意検討の結果、ゼオライトのなかでも、特にA型ゼオライトが多孔質の担体として好ましいことが判った。
二酸化炭素は、酸性ガスであり、塩基性金属酸化物と酸塩基反応による化学吸着により多孔質の担体に導入されると考えられる。
実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
作製した難燃剤を表1に示す。
Figure 2009073924
多孔質の担体への塩基性金属は、塩基性金属の硝酸塩あるいは酢酸塩の水溶液を多孔質の担体に含浸した後、乾燥を行い、水分を除去し、その後、高温(600〜800℃、1〜2時間)で焼成した。この塩基性金属の担持量は10〜20mmol/gとした。次に吸着の前処理として、ヘリウムガス等の不活性ガスを通気させながら500℃で1時間熱処理して水分を除去し、300℃に温度を下げて二酸化炭素/ヘリウムの混合ガス(混合比10:90)を通気させて、3時間吸着を行った。
多孔質の担体、塩基性金属の種類および組み合わせにより、難燃剤1−1〜1−9は、担体にA型ゼオライトを用い、そのA型ゼオライトに、リチウム(1−1)、ナトリウム(1−2)、カリウム(1−3)、ルビジウム(1−4)、セシウム(1−5)のアルカリ金属、および、マグネシウム(1−6)、カルシウム(1−7)、ストロンチウム(1−8)、バリウム(1−9)のアルカリ土類金属を担持させ、難燃剤1−10は、比較例として塩基性金属を担持させないA型ゼオライトのみとした。
難燃剤2−1〜2−9は、担体にゼオライト、アルミナ、酸化チタン、シリカを用い、塩基性金属として、マグネシウム単独と、マグネシウムとカリウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウムの混合物とした。塩基性金属の担持量は15mmol/gであるが、組み合わせたものはそれぞれ7.5mmol/gずつ導入した。
難燃剤3−1〜3−12は、担体としてゼオライトとアルミナと酸化チタンとシリカのうちの2種類の混合物を用い、塩基性金属として、マグネシウム単独、マグネシウムとカルシウムの混合物とした。
次に表1に示した難燃剤1−1〜1−9を、それぞれEVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)に混合した実施例1〜9と難燃剤1−6の配合割合を変えた実施例10,11の結果を表2に示す。
Figure 2009073924
表2において、難燃剤1−1〜1−9の多孔質の担体はA型ゼオライトである。塩基性金属は、多孔質の担体に対して塩基性金属を実施例1〜3では10mmol/g、実施例4〜6では15mmol/g、実施例7〜9では20mmol/g導入し、二酸化炭素を吸着させて用いた。
これらの難燃剤をEVA100重量部に対し、100重量部添加し、各種評価を行った。
すなわち、押出加工性は、40mm押出機で押し出しをおこない、モーター負荷が正常範囲内で押出が行えたもので、外観が良好なものを良好、押出負荷がやや大きいものや外観がやや悪かったものを可能、押出負荷が大きく、不可能なものについては×、として評価した。
酸素指数は、JIS K7201に基づき評価した。
目標の酸素指数を24.0とし、これ以上のものを合格、24.0未満のものを不合格とした。
引張試験は、JIS C3005に基づき評価した。引張強さが12MPa以上であれば○、12MPa未満であれば×とした。伸びは、350%以上であれば○、350%未満であれば×とした。
実施例1〜9は、引張試験において引張強さ12MPa以上、伸びが350%以上あり、また酸素指数が24.0以上、押出加工性も良好であった。
この実施例1〜9の中で最も酸素指数が低かったマグネシウムを担持した難燃剤1−6を選択し、難燃剤1−6をEVA100重量部に対し40重量部添加した実施例10で、各種評価を行った。
実施例10の難燃剤40重量部でも目標となる酸素指数24.0を上回ることがわかる。
また難燃剤1−6をEVA100重量部に対し240重量部添加した実施例11で、各種評価を行った。
実施例11の難燃剤240重量部でも引張強度、伸びともに良好であることがわかる。
次に、表1の難燃剤2−1〜2−9をEVA樹脂に混合した実施例12〜20の結果を表3に示す。
Figure 2009073924
表3において、多孔質担体の種類は、A型ゼオライト(実施例12〜14)、アルミナ(実施例15,16)、酸化チタン(実施例17,18)、シリカ(実施例19,20)であり、塩基性金属は、マグネシウム単独とマグネシウムと他の塩基性金属の二種類の金属を組み合わせである。
この難燃剤2−1〜2−9をEVA100重量部に対し100重量部添加し、各種評価を行った結果、引張強度、伸びともに良好であることが分かる。
Figure 2009073924
難燃剤として表1記載の難燃剤3−1〜13−12を用いた。
多孔質担体の種類は、A型ゼオライトとアルミナ(実施例21、22)、A型ゼオライトと酸化チタン(実施例23,24)、A型ゼオライトとシリカ(実施例25,26)、アルミナと酸化チタン(実施例27、28)、アルミナとシリカ(実施例29,30)、酸化チタンとシリカ(実施例31,32)を組み合わせて用いた。塩基性金属は、一種類または二種類の金属を組み合わせて用いた。
この難燃剤3−1〜3−12をEVA100重量部に対し100重量部添加し、各種評価を行った結果、引張強度、伸びともに良好であることが分かる。
次に比較例1〜5の結果を表5に示す。
Figure 2009073924
比較例1は、従来のノンハロゲン難燃剤であるシラン処理水酸化マグネシウムをEVA100重量部あたり100重量部添加したもの、比較例2は、ステアリン酸処理水酸化マグネシウムをEVA100重量部あたり100重量部添加し、各種評価を行ったものである。
この結果、引張試験(引張強さ、伸び)とも○で、酸素指数も合格であるが、押出加工性は、良好でないものの可能であった。
比較例3は、難燃剤として、表1記載の難燃剤1−6を用いたもので、多孔質の担体はA型ゼオライトである。塩基性金属としてマグネシウムを多孔質の担体に対して15mmol/g導入し、二酸化炭素を吸着させて用い、この難燃剤1−6をEVA100重量部に対し30重量部添加し、各種評価を行ったものである。
比較例3の難燃剤の30重量部では目標となる酸素指数24.0を上回ることができなかった。
よって、本発明の難燃剤は樹脂100重量部に対して40重量部以上添加するのがよい。
比較例4は、難燃剤1−6をEVA100重量部に対し250重量部添加し、各種評価を行ったものである。この結果、250重量部では引張強度、伸びにおいて目標値を上回ることができなかった。また、添加量が多いことにより押出加工性も悪かった。
よって、本発明の難燃剤は樹脂100重量部に対して240重量部以下添加するのがよい。
比較例5は、難燃剤として、表1の難燃剤1−10を用いたもので、多孔質の単体はA型ゼオライトで、塩基性金属を導入せず、二酸化炭素を吸着させたものを用いたものである。
この難燃剤1−10をEVA100重量部に対して240重量部添加し、各種評価を行った結果、塩基性金属の導入量0mmol/gでは、COが吸着せず、目標となる酸素指数24.0を上回ることができなかった。
本発明の二酸化炭素放出難燃剤の概略構造を示す図である。
符号の説明
10 二酸化炭素放出難燃剤
11 多孔質の担体
12 塩基性金属
13 二酸化炭素

Claims (6)

  1. 多孔質の担体に金属酸化物を担持させ、かつ、その多孔質の担体に二酸化炭素を吸着させたことを特徴とする二酸化炭素放出難燃剤。
  2. 多孔質の担体は、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、シリカのいずれかもしくはこれらの混合物からなる請求項1記載の二酸化炭素放出難燃剤。
  3. 金属酸化物の金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのアルカリ金属、および、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムのアルカリ土類金属といった塩基性金属からなる群から選ばれた単独、または二種類以上の混合物である請求項1記載の二酸化炭素放出難燃剤。
  4. ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化炭素放出難燃剤を40〜240重量部添加してなることを特徴とするノンハロゲン樹脂組成物。
  5. 多孔質の担体に金属酸化物を担持させ、かつ、前記多孔質の担体に二酸化炭素を吸着させるに際して、二酸化炭素を吸着させる前に、金属酸化物を担持させた多孔質の担体の水分を除去し、その後、吸着温度300℃で二酸化炭素を吸着させることを特徴とする二酸化炭素放出難燃剤の製造方法。
  6. 金属酸化物を担持させた多孔質の担体を不活性ガス雰囲気下で、450〜550℃で、30分〜2時間熱処理して、担体中の水分の除去を行った後、吸着温度300℃で、3時間、二酸化炭素を吸着させる請求項5記載の二酸化炭素放出難燃剤の製造方法。
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