JP2009073767A - クダモノトケイソウ果皮抽出液の製造方法 - Google Patents

クダモノトケイソウ果皮抽出液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】沈殿物の発生のない経時安定性に優れたクダモノトケイソウ果皮抽出液を製造する製造方法を提供すること。
【解決手段】トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮からクダモノトケイソウ果皮抽出液を製造する方法において、トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮を、50〜70w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液に浸漬し、これをろ過したろ液を3〜−50℃で3日間以上保存後、更にろ過することを特徴とする、沈殿物を生じないクダモノトケイソウ果皮抽出液の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、沈殿物の発生のない経時安定性に優れたクダモノトケイソウ果皮抽出液を製造する製造方法に関する。
トケイソウ科植物の全草の抽出物には鎮静作用があることが認められており、パッシフローラエキスとして珍重され、一部の愛好家に継続的に飲用されている。特にクダモノトケイソウの果皮については、血圧効果作用(特許文献1参照)、インスリン分泌促進効果(特許文献2参照)、エンドセリン−1産生抑制効果(特許文献3参照)などが認められている。また、これらに於いてクダモノトケイソウ果皮抽出液は、クダモノトケイソウの果皮を水あるいは有機溶媒に浸漬することにより簡単に抽出して得られている。
しかしながら、トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮は、沈殿性の夾雑物を多量に含有している。そのため、得られた抽出液は経時的に沈殿物を発生する問題があった。
そこで、産業利用のためには、抽出液の経時安定性を良好にし、保存中に沈殿を形成しないようなクダモノトケイソウ果皮抽出液の製造方法の開発が必要であった。
特開2005−350433号公報 特開2005−139136号公報 特開2005−075766号公報
本発明が解決しようとする課題は、製造後、一定時間経過してから沈殿物の発生することがないクダモノトケイソウ果皮抽出液を、効率よく製造する製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、乾燥させたトケイソウ科クダモノトケイソウの果皮を特定の抽出溶媒で抽出し、冷却による澱出し工程の後にろ過を行うことによるクダモノトケイソウ果皮抽出液の製造方法を確立し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、次の(1)である。
(1)トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮からクダモノトケイソウ果皮抽出液を製造する方法において、トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮を、50〜70w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液に浸漬し、これをろ過したろ液を3〜−50℃で3日間以上保存後、更にろ過することを特徴とする、沈殿物を生じないクダモノトケイソウ果皮抽出液の製造方法。
本発明によれば、製造後、一定時間経過した後も沈殿物の発生することがないクダモノトケイソウ果皮抽出液が得られる。即ち、経時安定性に優れたクダモノトケイソウ果皮抽出液が得られる。
本発明は、トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮からクダモノトケイソウ果皮抽出液を製造する方法において、トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮を、50〜70w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液に浸漬し、これをろ過したろ液を3〜−50℃で3日間以上保存後、更にろ過することを特徴とする、沈殿物を生じないクダモノトケイソウ果皮抽出液の製造方法である。以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
本発明で使用されるトケイソウ科クダモノトケイソウの果皮としては、トケイソウ科の植物で、学名Passiflora edulis.として分類される植物体の、果実の可食部を除いた果皮部分が用いられる。
本発明で使用されるトケイソウ科クダモノトケイソウの果皮は、原料となる果皮の長期保存時の安全性などの観点から、乾燥した果皮を用いるのがのぞましい。
乾燥したトケイソウ科クダモノトケイソウの果皮は、採取したトケイソウ科クダモノトケイソウの果皮を、温風乾燥機を用い、45〜75℃、好ましくは50〜70℃の温風条件下で7〜40時間、好ましくは10〜30時間、乾燥させることによって得ることができる。使用する温風乾燥機は、市販の温風乾燥機から45〜75℃の温度環境を実現できるものを適宜選択して使用してよい。
果皮を乾燥する際に、45℃より低い温度では乾燥が不十分である場合があり、防腐剤の利用はなるべく避けたいとの要請から、抽出までの保存期間中にカビなどの微生物汚染に注意するなど保管管理上の問題が生じやすく、75℃より高い乾燥温度では果皮中の成分の変質によると思われるカラメル様のにおいの発生が認められることがあるが、最終的に得られる抽出物の品質には大きな問題は生じない。乾燥の時間に関して、7時間より短いと乾燥が不十分であり、40時間より長いと、果皮中の成分の変質によると思われるにおいの発生が認められることがある。果皮の乾燥条件を変化させても、最終的に得られる抽出物の品質には大きな問題は生じないが、製造中に臭気などが発生した場合は、防臭設備などを完備する必要が出てくるため、経済的なデメリットが生ずる恐れがあり注意が必要である。
トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮から、クダモノトケイソウ果皮抽出液を得る際の抽出工程は、乾燥したトケイソウ科クダモノトケイソウの果皮を抽出溶媒である50〜70w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液に浸漬することで行われる。
本発明に用いる1,3−ブチレングリコール水溶液中の1,3−ブチレングリコールの濃度は50〜70w/w%であるが、特に沈殿形成物を減少させて抽出を行う点からは、1,3−ブチレングリコールの濃度が55〜65w/w%の水溶液が好ましい。
本発明で、1,3−ブチレングリコールの濃度が50w/w%未満あるいは70w/w%を超える水溶液を抽出溶媒として使用すると、最終的に得られたクダモノトケイソウ果皮抽出液は、経時的な沈殿物を発生する。
本発明において、前記1,3−ブチレングリコール水溶液の使用量は果皮を完全に浸漬できる量を使用すればよく、通常、乾燥したトケイソウ科クダモノトケイソウの果皮重量に対して5〜50倍量用いられるのが好ましい。
本発明において、前記1,3−ブチレングリコール水溶液による抽出の温度と時間の条件は、トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮から抽出成分が十分に抽出されるならば適宜選択されてよく、通常、常温で2日間以上の抽出が好ましく、特に常温で4〜7日間の抽出時間が好ましい。
尚、前記1,3−ブチレングリコール水溶液を用いず、一般的によく使用されるエタノール水溶液や精製水を抽出溶媒として使用した場合は、最終的に得られるクダモノトケイソウ果皮抽出液は、経時的な沈殿物を発生する。
抽出工程の後、抽出成分が抜けて残渣となったトケイソウ科クダモノトケイソウの果皮をろ過により除去する。
前記、ろ過により得たろ液は、澱を出させるために、3〜−50℃で3日間以上保存する(澱出し工程)。この澱出し工程では、ろ液を静置して保存するのが好ましい。
前記、澱出し工程の温度と期間については、温度を高くすれば澱出し期間は長くなり、温度を低くすれば澱出し期間を短くすることができるが、効率よく澱出し工程を行うには、3〜−50℃で3日間以上保存、好ましくは0〜−45℃の温度で4日間以上〜1ヶ月間以内、最も好ましくは7日間静置保存するのが好ましい。
前記、澱出し工程において、保存する温度が3℃を超える場合、最終的に得られるクダモノトケイソウ果皮抽出液はさらに沈殿を生じる。また温度が−50℃より低い場合、その保存条件を満たす設備が過大であり作業性が悪化する割には効果の向上が望めない。
また保存する期間が3日間(72時間)未満の場合、最終的に得られるクダモノトケイソウ果皮抽出液は沈殿物の発生が認められることがあるので、3日間以上保存する必要がある。
本発明において、澱出し工程の後に、澱として発生した沈殿物・固形分を、更にろ過により除去し、得られたろ液を、沈殿物を生じないクダモノトケイソウ果皮抽出液として用いることができる。
尚、本発明において、澱出し工程の前後でろ過を行うが、この際、ろ過器は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、規模に応じ、通常知られるろ過器を適宜選択してよく、ろ過剤としてろ紙を用いてもあるいはろ過用充填剤などを用いてもよいが、小規模であれば漏斗を使用し5Cのろ紙を用いたろ過により好ましく実施することができ、必要に応じ、ろ紙が破壊されない程度の圧力を負荷して行っても良い。
このようにして、本発明の製造方法で得られたクダモノトケイソウ果皮抽出液は、長期保存しても澱や結晶などの沈殿物を生じないので、健康飲料や化粧料原料として有用である。
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明する。
まず、実施例1−1〜1−5においてクダモノトケイソウ果皮の乾燥条件を変えクダモノトケイソウ果皮抽出液を製造した。
実施例1−1
クダモノトケイソウ果皮を60℃の温風乾燥機に入れ24時間乾燥させた。ここでクダモノトケイソウ果皮の乾燥状態、臭気のチェック(発明者1名による主観的官能評価)を行い結果を表1に示した。その後、乾燥物を粉砕し50gを抽出溶媒である55w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液1000gに室温で5日間浸漬した後、ろ紙(アドバンテック東洋社製、5C)を用いてろ過した。そのろ液を−20℃の温度で7日間保存し澱出しを行った。生成した沈殿物を除去するためろ紙(アドバンテック東洋社製、5C)を用いてろ過を行い、得られたろ液をクダモノトケイソウ果皮抽出液とした。得られたクダモノトケイソウ果皮抽出液について目視により沈殿物を評価した(発明者1名による主観的官能評価)。その結果を表1に示した。
Figure 2009073767
実施例1−2
クダモノトケイソウ果皮を40℃の温風乾燥機に入れ24時間乾燥させた。それ以外は実施例1−1と同様の操作、評価を行い結果を表1に示した。
実施例1−3
クダモノトケイソウ果皮を60℃の温風乾燥機に入れ5時間乾燥させた。それ以外は実施例1−1と同様の操作、評価を行い結果を表1に示した。
実施例1−4
クダモノトケイソウ果皮を60℃の温風乾燥機に入れ48時間乾燥させた。それ以外は実施例1−1と同様の操作、評価を行い結果を表1に示した。
実施例1−5
クダモノトケイソウ果皮を80℃の温風乾燥機に入れ24時間乾燥させた。それ以外は実施例1−1と同様の操作、評価を行い結果を表1に示した。
(表1の結果のまとめ)
実施例1−1〜1−5において、クダモノトケイソウ果皮の乾燥条件を変えた場合について、クダモノトケイソウ果皮の乾燥状態、臭気のチェックおよび得られた抽出物について目視により沈殿物の評価を行った(いずれも同一の発明者1名による主観的官能評価)。その結果を表1に示す。結果として実施例1−1ではクダモノトケイソウ果皮は完全に乾燥し、焦げたような臭気の発生も認められなかったのに対し、果皮の乾燥温度が低い場合(実施例1−2)や乾燥時間が短い場合(実施例1−3)ではクダモノトケイソウ果皮未乾燥であった。また長時間の乾燥を行った場合(実施例1−4)や乾燥温度が高温では(実施例1−5)は、乾燥したクダモノトケイソウ果皮について臭気の発生が認められた。しかし、いずれの場合も得られた抽出物について沈殿物は観察されず、沈殿物に関して問題のない抽出物が製造できることを確認した。
続いて、以下では実施例2−1、2−2および比較例1〜4において、クダモノトケイソウ果皮抽出液の抽出溶媒を変化させて製造した。
実施例2−1
クダモノトケイソウ果皮を60℃の温風乾燥機に入れ24時間乾燥させた。その後、乾燥物を粉砕し50gを抽出溶媒である55w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液1000gに室温で5日間浸漬した後、ろ紙(アドバンテック東洋社製、5C)を用いてろ過した。そのろ液を−20℃の温度で7日間保存し澱出しを行った。生成した沈殿物を除去するためろ紙(アドバンテック東洋社製、5C)を用いてろ過を行い、得られたろ液をクダモノトケイソウ果皮抽出液とした。得られたクダモノトケイソウ果皮抽出液を5℃及び40℃に保存し、1ヵ月後の沈殿物の発生状態を目視により観察し下記の判定基準により沈殿物を評価した。結果を表2に示した。
(沈殿物の判定基準)
○:澱が全く発生しない。
△:僅かな澱が発生する。
×:明らかに確認できる澱が発生する。
Figure 2009073767
実施例2−2
実施例2−1のクダモノトケイソウ乾燥物の抽出を65w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液で行った以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表2に示した。
比較例1
実施例2−1のクダモノトケイソウ乾燥物の抽出を30w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液で行った以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表2に示した。
比較例2
実施例2−1のクダモノトケイソウ乾燥物の抽出を90w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液で行った以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表2に示した。
比較例3
実施例2−1のクダモノトケイソウ乾燥物の抽出を70w/w%エタノール水溶液で行った以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表2に示した。
比較例4
実施例2−1のクダモノトケイソウ乾燥物の抽出を精製水で行った以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表2に示した。
(表2の結果のまとめ)
各種の溶媒やその溶媒濃度で抽出し製造したクダモノトケイソウ果皮抽出液を5℃及び40℃に保存し、1ヵ月後の沈殿物の発生状態を目視により観察(同一実験者による官能評価)し、結果を表2に示した。このように抽出溶媒が50〜70w/w%の1、3−ブチレングリコール水溶液で抽出した場合には保存後も澱の発生が認められず安定な抽出液であったのに対し(実施例2−1、2−2)、比較例の本発明の濃度範囲を外れたもの(比較例1、2)やエタノールによる抽出液(比較例3)、精製水による抽出(比較例4)では沈殿物のない安定なクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製することはできなかった。
続いて、実施例2−3と比較例5〜7では、クダモノトケイソウ果皮抽出液の澱だし工程の温度を実施例2−1と変化させて製造した。
実施例2−3
実施例2−1の抽出液作製後の澱出しを0℃で行った以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表3に示した。
Figure 2009073767
比較例5
実施例2−1の抽出液作製後の澱出しを行わなかった以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表3に示した。
比較例6
実施例2−1の抽出液作製後の澱出しを20℃で行った以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表3に示した。
比較例7
実施例2−1の抽出液作製後の澱出しを−20℃で2日間行った以外はすべて実施例2−1と同様の操作でクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製した。実施例2−1と同様に沈殿物を評価し、結果を表3に示した。
(表3の結果のまとめ)
初期抽出液作製後の澱だしを各種の温度で行って製造したクダモノトケイソウ果皮抽出液を5℃及び40℃に保存し、1ヵ月後の沈殿物の発生状態を目視により観察した結果を表3に示した。結果として、澱出しを0℃〜−20℃で行って製造した抽出液は保存後も澱の発生が認められず安定な抽出液であったのに対し(実施例2−1、2−3)、澱出しを行わなかったもの(比較例5)や澱出しの温度が20℃のもの(比較例6)や澱出し期間が2日間(48時間)のもの(比較例7)では沈殿物のない安定なクダモノトケイソウ果皮抽出液を作製することはできなかった。
これらから、本発明の製造方法により製造したクダモノトケイソウ果皮抽出液は大変安定であることがわかった。

Claims (1)

  1. トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮からクダモノトケイソウ果皮抽出液を製造する方法において、トケイソウ科クダモノトケイソウの果皮を、50〜70w/w%1,3−ブチレングリコール水溶液に浸漬し、これをろ過したろ液を3〜−50℃で3日間以上保存後、更にろ過することを特徴とする、沈殿物を生じないクダモノトケイソウ果皮抽出液の製造方法。
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