しかしながら、上述の設計支援システムでは、乗員の乗降動作時の負担感を、乗降動作の開始時から終了時までの関節トルクの時間積分値に基づいて評価するようにしているため、この評価を基に決定された設計諸元値を採用した場合に、乗員の乗降動作中の負担感を時間平均では最小化することができるものの、乗降動作中のある特定の動作フェーズ(段階)においては乗員の受ける負担感が許容度合を上回り、結果として乗員が乗降動作時に感じる負担感が増大するという問題がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の乗員の乗降動作をシミュレーションすることで車両用ドア部周辺の設計諸元データを決定する車両用設計支援システムに対して、乗員の乗降動作時の負担感の評価方法に工夫を凝らすことで、該乗員の乗降動作時の負担感を確実に低減することができる設計諸元データを決定可能にしようとすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、車両の乗員の乗降動作を人体モデルによりシミュレーションすることでその動作軌跡を算出するとともに、該動作軌跡が所定の複数の動作フェーズからなるものとして、該乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の負担感の大きさを算出し、該算出した各動作フェーズ毎の負担感の大きさが全て、該各動作フェーズ毎に設定された設定閾度合以下となるように設計諸元データを決定するようにした。
具体的には、請求項1の発明では、車両の乗員の乗降動作時の負担感をシミュレーションにより評価することで車両用ドア部周辺の設計諸元値を決定する車両用設計支援システムを対象とする。
そして、上記乗員を模擬した人体モデルに関する人体特性データを記憶する人体特性データ記憶手段と、上記車両用ドア部周辺の仮の設計諸元データを記憶する設計諸元データ記憶手段と、上記人体特性データ記憶手段により記憶された人体特性データと上記設計諸元データ記憶手段により記憶された仮の設計諸元データとを基に、該仮の設計諸元データに対応する設計諸元値を有する仮想車両に対する乗員の乗降動作を上記人体モデルによりシミュレーションすることでその動作軌跡を算出する乗降動作軌跡算出手段と、上記仮想車両に対する乗員の乗降動作が複数の動作フェーズからなるものとして、該乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の負担感の大きさを、上記乗降動作軌跡算出手段により算出された動作軌跡を基に数値化して算出する負担感算出手段と、上記負担感算出手段により算出された各動作フェーズ毎の負担感の大きさが全て、該各動作フェーズ毎に設定された設定閾値以下となる目標条件を満足させる設計諸元データを決定する設計諸元データ最適化手段と、上記設計諸元データ最適化手段により決定された設計諸元データを出力する出力手段とを備えているものとする。
上記の構成により、車両用ドア部周辺の設計諸元データを決定する際には、上記人体特性データ記憶手段により記憶された乗員の人体モデルの人体特性データと上記設計諸元データ記憶手段により記憶されたドア部周辺の仮の設計諸元データとを基に、乗降動作軌跡算出手段により、該設計諸元データに対応する設計諸元値を有する仮想車両に対する乗員の乗降動作が上記人体モデルによってシミュレーションされてその動作軌跡が算出され、更に、負担感算出手段により、乗員の乗降動作が所定の複数の動作フェーズからなるものとして、該乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の負担感の大きさが数値化されて算出される。
そして、設計諸元データ最適化手段により、上記負担感割合算出手段にて算出された乗員の各動作フェーズ毎の負担感の大きさが該各動作フェーズ毎に設定された設定閾値以下となる目標条件を満足させる設計諸元データが決定され、上記出力手段により、設計諸元データ最適化手段にて決定された設計諸元データが出力される。
こうして、乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の負担感の大きさが全て設定閾値以下となるような設計諸元データを得ることができる。従って、この設計諸元データを基に車両用ドア部周辺の設計諸元値を決定して設計を行うことで、該車両に対する乗員の乗降動作時の負担感を確実に低減することが可能となる。
ここで、上記負担感算出手段による負担感の大きさの算出は、該乗降動作軌跡算出手段にて算出された動作軌跡を基に行われる。こうすることで、乗降動作軌跡算出手段によりシミュレーションされた乗員の乗降動作軌跡を基に、例えば、該乗員の各関節回りのトルクを算出することで負担感(肉体的負担感)の大きさを算出(推定)したり、該乗員の視線の先にあるものを推定して該推定物を基に乗員の負担感(精神的負担感)の大きさを算出(推定)したりすることができる。よって、負担感算出手段により、乗員の乗降動作時の負担感を精度良く推定することができ、延いては、設計諸元データ最適化手段により、乗員の乗降動作時の負担感を確実に低減可能な設計諸元データを決定することが可能となる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記設計諸元データ最適化手段は、上記複数の動作フェーズのうち上記負担感算出手段により算出された負担感の大きさが上記設定閾値を上回る動作フェーズを抽出するとともに、該抽出した動作フェーズに関連する複数の設計諸元項目を抽出した後に、該抽出した複数の設計諸元項目の中から変更する設計諸元項目を所定の優先順位にしたがって順に選択するとともに、該選択の度毎に、上記設計諸元データ記憶手段により記憶された仮の設計諸元データにおける該選択した設計諸元項目に対応するデータ値を所定範囲内で所定の刻み幅で変化させて該設計諸元データを更新しながら、上記目標条件を満足させる設計諸元データを探索決定するように構成されているものとする。
この構成により、車両用ドア部周辺の設計諸元データを決定する際には、上記設計諸元データ最適化手段により、上記複数の動作フェーズのうち上記負担感算出手段により算出された負担感の大きさが設定閾値を上回る動作フェーズが抽出されるとともに、該抽出された動作フェーズに関連する設計諸元項目が複数抽出され、更に該抽出された複数の設計諸元項目の中から、その値を変更する設計諸元が所定の優先順位にしたがって順に選択される。ここで、設計諸元データ最適化手段により、設計諸元項目が選択される度に、上記設計諸元データ記憶手段により記憶された設計諸元データにおける該選択された設計諸元項目に対応するデータ値が所定範囲内で所定の刻み幅で変更されて該設計諸元データが更新されるとともに、上記目標条件を満足させる設計諸元データ(以下、最適設計諸元データという)が探索決定される。
このように、設計諸元データ最適化手段により、所定の優先順位にしたがって設計諸元項目を選択して、該選択した設計諸元項目に対応するデータ値を優先的に変化させながら最適設計諸元データを探索するようにしたことで、優先順位の低い設計諸元項目に対応するデータ値を極力変化させずに最適設計諸元データを探索することができる。
従って、例えば、各設計諸元項目に対して設定される優先順位を、該各設計諸元項目が外観に与える影響が少ない順とすることで、設計諸元データのうち優先順位の低い設計諸元項目に対応するデータ値つまり外観に与える影響が大きい設計諸元に対応するデータ値を極力変化させずに、上記設計諸元データ最適化手段による最適設計諸元データの探索が可能となる。よって、この優先順位を、例えばユーザがドア部周辺の設計に際して重要視する設計コンセプト(外観重視や空力性能重視等のコンセプト)に応じて設定しておくことで、ユーザの求める設計コンセプトを満足させる最適設計諸元データを上記設計諸元データ最適化手段により探索決定することが可能となる。
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記乗員の乗降動作時の負担感は、肉体的負担感と精神的負担感とからなるものとされ、上記車両用ドア部周辺の各設計諸元項目の値の変化が乗員の乗降動作時の精神的負担感に与える影響度を上記各動作フェーズ毎に数値化した精神負担算出用データを記憶する精神負担算出用データ記憶手段を更に備え、上記負担感算出手段は、上記乗降動作軌跡算出手段により算出された動作軌跡と上記設計諸元データ記憶手段により記憶された仮の設計諸元データとを基に、上記仮想車両に対する上記乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の肉体的負担感の大きさを算出する肉体的負担感算出手段と、上記精神負担算出用データ記憶手段により記憶された精神負担算出用データと上記設計諸元データ記憶手段により記憶された仮の設計諸元データとを基に、上記仮想車両に対する上記乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の精神的負担感を数値化して算出する精神的負担感算出手段とを有していて、該肉体的負担感算出手段により算出された各動作フェーズ毎の肉体的負担感の大きさと該精神的負担感算出手段により算出された各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさとを基に、上記仮想車両に対する乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の負担感の大きさを数値化して算出するように構成されているものとする。
この構成によれば、上記負担感算出手段は、上記仮想車両に対する、上記乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の肉体的負担感の大きさを数値化して算出する肉体的負担感算出手段と、精神的負担感の大きさを数値化して算出する精神的負担感算出手段とを有しており、本発明の車両用設計支援システムにより車両用ドア部周辺の設計諸元データを決定する際には、この負担感算出手段は、肉体的負担感算出手段にて算出した各動作フェーズ毎の肉体的負担感の大きさと該精神的負担感算出手段にて算出した各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさとを基に、上記乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の負担感を数値化して算出するようになっている。
従って、上記負担感算出手段により、乗員の乗降動作時の肉体的負担感と精神的負担感との双方を考慮して負担感の大きさを算出することができて、乗員が実際に受ける負担感の大きさを精度良く推定することが可能となる。この結果、設計諸元データ最適化手段により、肉体的負担感と精神的負担感との双方を考慮に入れた最適設計諸元データの決定が可能となる。
ここで、上記肉体的負担感算出手段は、上記乗降動作軌跡算出手段により算出された動作軌跡を基に、乗員の乗降動作時の各動作フェーズ毎の肉体的負担感の大きさを算出するようになっており、これにより、乗降動作軌跡算出手段によりシミュレーション(擬似演算)された乗員の乗降動作軌跡を基に、上述の如く例えば該乗員の各関節回りのトルクや各関節に加わる力等を算出することで、該乗員の乗降動作時の肉体的負担感の大きさを精度良く推定することが可能となる。
また、上記精神的負担感算出手段は、精神負担算出用データ記憶手段により記憶された精神負担算出用データと、上記設計諸元データ記憶手段により記憶された設計諸元データとを基に、上記乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさを算出するようになっており、該精神負担算出用データ記憶手段により記憶された精神負担算出用データは、上記車両用ドア部周辺の各設計諸元の値の変化が乗員の乗降動作時の精神的負担感に与える影響度を上記各動作フェーズ毎に数値化したものとされている。このように、精神的負担感算出手段により、上記各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさを算出する際に、該各動作フェーズ毎に数値化された精神負担算出用データを利用するようにしたことで、各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさを簡単な演算でもって定量的に評価して算出することが可能となる。
請求項4の発明では、請求項3の発明において、上記乗降動作軌跡算出手段は、乗員の乗降動作時における所定関節回りの関節トルクの時間積分値が最小になるように、上記仮想車両に対する乗員の乗降動作時の動作軌跡を算出するように構成されており、上記肉体的負担感算出手段は、上記乗降動作軌跡算出手段にて算出された動作軌跡を基に乗員の乗降動作中の上記所定関節回りの関節トルクを算出する関節トルク算出手段を有していて、該関節トルク算出手段により算出された関節トルクの各動作フェーズ毎の時間積分値を、該各動作フェーズにおける乗員の乗降動作時の肉体的負担感の大きさとして算出するように構成されているものとする。
この構成によれば、肉体的負担感算出手段により、乗員の実際の乗降動作時における各動作フェーズ毎の肉体的負担感の大きさを精度良く算出することが可能となる。
すなわち、通常、乗員の車両乗降動作時における肉体的負担感は、乗員の各関節回りに加わる関節トルクに比例するが、本発明によれば、肉体的負担感算出手段は、上記乗降動作軌跡算出手段にて算出された動作軌跡を基に乗員の乗降動作中の所定関節回りの関節トルクを算出する関節トルク算出手段を有しており、本発明の車両用設計支援システムにより車両用ドア部周辺の設計諸元データを決定する際には、この肉体的負担感算出手段は、該関節トルク算出手段にて算出した関節トルクの各動作フェーズ毎の時間積分値を算出して、該各算出値を該各動作フェーズにおける乗員の乗降動作時の肉体的負担感の大きさとするようになっている。従って、乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の肉体的負担感の大きさを、該乗員の所定関節回りの関節トルクの時間積分値を基にして精度良く算出することができる。尚、所定関節とは、乗員の体の全ての関節である必要はなく、例えば、上半身の関節であってもよいし、乗降動作時に特に大きなトルクが作用する関節であってもよい。
また、通常、車両の乗員は、乗降動作時において肉体的負担感の大きさが最小となる動作軌跡を辿って乗降動作を行うが、本発明によれば、乗降動作軌跡算出手段は、乗員の乗降動作時における上半身の所定関節回りの関節トルクの時間積分値が最小になるように、乗降動作軌跡を算出するように構成されており、このため、乗員の乗降動作時の動作軌跡をシミュレーションにより精度良く算出することが可能となる。
請求項5の発明では、請求項3又は4の発明において、上記精神的負担感算出手段は、上記乗降動作軌跡算出手段により算出された動作軌跡を基に、各動作フェーズにおいて、乗員の視線の先にある車両用ドア部周辺の車両構成要素を推定するとともに上記設計諸元データ記憶手段により記憶された仮の設計諸元データのうち該推定した車両構成要素に関連するデータを抽出して、該抽出したデータと上記精神負担算出用データとを基に、上記仮想車両に対する乗員の乗降動作時の各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさを数値化して算出するように構成されているものとする。
この構成により、精神的負担感算出手段により乗員の乗降動作時の精神的負担感を精度良く算出することが可能となる。
すなわち、乗員の乗降動作時における精神的負担感は、乗員の眼から脳に伝達される視認情報つまり乗員が乗降動作中に視認する物の影響を強く受けるが、本発明によれば、精神的負担感算出手段は、上記乗降動作軌跡算出手段により算出された動作軌跡を基に、各動作フェーズにおいて、乗員の視線の先にある車両構成要素を推定するとともに、設計諸元データのうち該推定した車両構成要素に関連するデータを抽出して、つまり精神的負担感に影響する視認情報に関連するデータを抽出して、該抽出したデータと精神負担算出用データとを基に乗員の乗降動作時の各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさを算出するようになっている。これにより、乗員の乗降動作時における各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさを精度良く確実に算出することが可能となる。
請求項6の発明では、請求項3又は4の発明において、上記精神的負担感算出手段は、上記乗降動作軌跡算出手段により算出された乗員の動作軌跡を基に、上記各動作フェーズにおいて、該乗員が乗降動作時に接触する可能性のある車両用ドア部周辺の車両構成要素を推定するとともに上記設計諸元データ記憶手段により記憶された仮の設計諸元データのうち該推定した車両構成要素に関連するデータを抽出して、該抽出したデータと上記精神負担算出用データとを基に、上記仮想車両に対する乗員の乗降動作時の各動作フェーズ毎の精神的負担感の大きさを数値化して算出するように構成されているものとする。
この構成により、精神的負担感算出手段により乗員の精神的負担感の大きさを精度良く算出することが可能となる。
すなわち、乗員の乗降動作時における精神的負担感は、乗降動作時に乗員の体に物が接触することによる触感の影響を強く受けるが、本発明によれば、各動作フェーズにおいて、該乗員が乗降動作時に接触する可能性のある車両構成要素を推定するとともに上記仮の設計諸元データのうち該推定した車両構成要素に関連するデータを抽出して、つまり乗員の触感に関連するデータを抽出して、該抽出したデータと上記精神負担算出用データとを基に、上記乗員の乗降動作時の各動作フェーズ毎の精神的負担感を推定するようになっている。これにより、乗員の乗降動作時における精神的負担感の大きさを精度良く確実に算出することが可能となる。
請求項7の発明では、請求項3乃至6のいずれかの発明において、上記精神負担算出用データは、複数の被験者を予め用意した複数の車両に乗降させて、該各被験者に対して、乗員の乗降動作時の精神的負担感に影響する複数の乗降性評価項目に基づいたアンケート調査を実施してその結果を解析することで作成されるデータであるものとする。
このように、上記精神負担算出用データを複数の被験者によるアンケート調査を基に作成するようにしたことで、上記車両用ドア部周辺の各設計諸元の値の変化が乗員の乗降動作時の精神的負担感に与える影響度を各動作フェーズ毎に正確に数値化した該精神負担算出用データを作成することができる。
また、上記アンケート調査は、精神的負担感に影響する複数の乗降性評価項目に基づいて行われるが、この複数の乗降性評価項目を、例えばデータマイニングの1つであるISM法により抽出した評価項目とすることで、上記影響度をより一層正確に数値化した精神負担算出用データを作成することが可能となる。
請求項8の発明では、請求項3乃至6のいずれかの発明において、上記精神負担算出用データは、複数の被験者を予め用意した複数の車両に乗降させて、該各被験者の乗降動作時の発話内容を、乗員の乗降動作時の精神的負担感に影響する複数の乗降性評価項目を基に解析することで作成されるデータであるものとする。
このように、上記精神負担算出用データを、各被験者の発話内容を解析することで作成するようにしたことで、上記車両用ドア部周辺の各設計諸元の値の変化が乗員の乗降動作時の精神的負担感に与える影響度を各動作フェーズ毎に正確に数値化した該精神負担算出用データを作成することができる。
また、上記複数の乗降性評価項目を基に発話内容の解析を行うようになっているが、この乗降性評価項目を例えばISM法により抽出した評価項目とすることで、上記影響度をより一層正確に数値化した精神負担算出用データを作成することが可能となる。
請求項9の発明では、請求項7又は8の発明において、上記複数の乗降性評価項目は、ISM法により抽出された、身体調和性、身体的開放感、安定性、空間的ゆとり、意向実現性、動作適合性、好触感、及び安心感の8つの項目からなるものとする。
このことにより、請求項7及び8の発明と同様の作用効果をより一層確実に得ることが可能となる。
請求項10の発明では、請求項1乃至9のいずれかの発明において、上記複数の動作フェーズは、乗員が内足を車内に入れる内足入れフェーズと、シートに着座する着座フェーズと、車外に残っている外足を車内に入れる外足入れフェーズと、該シートに着座した状態から外足を車外に出す外足出しフェーズと、該シートから立ち上がる起立フェーズと、車内に残っている内足を車外に出す内足出しフェーズとの6つの動作フェーズとからなるものとする。
このことにより、乗員の負担感が比較的大きい着座フェーズ及び起立フェーズと、比較的負担感が低い内足入れフェーズ及び外足入れフェーズ並びに外足出しフェーズ及び内足出しフェーズとを確実に切分けることができる。従って、設計諸元データ最適化手段により、乗員にとって乗降動作時の負担が大きい着座フェーズ及び起立フェーズにおいても、乗員の負担感が許容度合(設定閾値)以下となる最適設計諸元データを確実に決定することが可能となる。
請求項11の発明では、請求項1乃至10のいずれかの発明において、上記乗降動作軌跡算出手段は、上記仮想車両のドア開度を設定可能なドア開度設定手段を有していて、該ドア開度設定手段にて設定されたドア開度に応じて、該仮想車両に対する乗員の乗降動作時の動作軌跡を算出可能に構成されているものとする。
このことにより、ドア開度設定手段により仮想車両のドア開度を設定することができるとともに、乗降動作軌跡算出手段により、該仮想車両に対する乗員の乗降動作時の動作軌跡を該ドア開度に応じて算出することが可能となり、延いては、負担感算出手段により、該仮想車両に対する乗員の乗降動作時の動作軌跡を該ドア開度に応じて推定することが可能となる。そうして、上記設計諸元データ最適化手段により、車両のドア開度に応じた最適設計諸元データの決定が可能となる。
従って、例えば、比較的周辺スペースが無い場所での利用を想定した車両に対して、ドア部周辺の最適設計諸元データを決定する場合に、予測されるドア開度を上記ドア開度設定手段により設定することで、設計諸元データ最適化手段により、該車両の用途に適した最適設計諸元データの決定が可能となる。
以上説明したように、本発明の車両用設計支援システムによると、乗員の乗降動作時の負担感の大きさが各動作フェーズにおいて許容度合(設定閾値)を超えない車両用ドア部周辺の設計諸元データを確実に決定することができ、延いては、乗員の乗降動作時における負担感を確実に低減可能な車両用ドア部周辺の設計諸元値を得ることが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用設計支援システム100の概略構成を示し、この車両用設計支援システム100は、図示しないコンピュータにより具現化されて乗員の乗降動作をシミュレーション(模擬演算)することで、乗員の乗降動作時の負担感を後述の各動作フェーズa1乃至a6毎に評価して車両用ドア部20周辺の設計諸元値(各設計諸元項目Dnの各値Hn)を決定するシステムである。ここで、乗員の乗降動作時の負担感とは、肉体的負担感と精神的負担感とからなるものであって、以下の説明では、この負担感のことを、肉体的負担感及び精神的負担感と区別して総負担感と呼ぶものとする。尚、予め行った実験等により、乗員が車両乗降時に肉体的負担を感じるのは、車両のルーフをよけるために頚や腰を曲げる動作を行う場合や、その曲げた姿勢を維持せねばならない場合であり、乗降時の負担感の大小は、主にこの頚や腰の動作を行うための上半身の筋活動に起因するものであることが分かっており、このため、本実施形態では、上記乗降時の肉体的負担感として上半身にかかる肉体的負担感を評価するものとする。
上記車両乗員の乗降動作とは、図9の上方に示すように車両外部から車両内部に入ってシート22(図3参照)に着座する乗車動作と、上記着座状態から再び車両外部に出る降車動作とを言い、この乗降動作は、その動作の種類に応じて6つの動作フェーズa1乃至a6(段階)に分類することができる。すなわち、上記乗降動作は、内足を車内に入れる内足入れフェーズa1と、シート22に着座する着座フェーズa2と、車外に残っている外足を車内に入れる外足入れフェーズa3とに分類することができ、上記降車動作は、シート22に着座した状態から外足を車外に出す外足出しフェーズa4と、シート22から立ち上がる起立フェーズa5と、車内に残っている内足を車外に出す内足出しフェーズa6とに分類することができる。そして、車両用設計支援システム100は、この6つの動作フェーズa1乃至a6毎に乗員の総負担感を評価するようになっている。
図1に示すように、上記車両用設計支援システム100は、例えばコンピュータのハードディスクやRAM等からなる、設計諸元データ記憶部2、人体特性データ記憶部3、及び精神負担算出用データ記憶部4と、ハードディスク内に記憶されたシミュレーションプログラムの一部を構成するとともにCPU(図示省略)との協働により各種の演算を行う、動作軌跡算出部5、関節トルク算出部6、肉体的負担感推定部7、精神的負担感推定部8、及び総負担感推定部25と、設計諸元データ最適化部9と、設計諸元データ最適化部9から出力される設計諸元データQを表示するための結果表示部10と、CPUとの協働によりシステム全体を制御する主制御部11とを備えている。
上記設計諸元データ記憶部2は、乗員の乗降動作をシミュレーションする際に対象となる車両(仮想車両)の初期設計諸元データQとシミュレーション途中の仮の設計諸元データQと設計諸元データQの各値に対して優先順位(後述する変更優先順位)を設定する優先順位データとからなる設計諸元設定用データを記憶しておくためのものである。ここで、設計諸元設定用データQのうち、設計諸元データQは、各設計諸元項目Dnの値Hnを順に並べてなるデータで、設計諸元データQ=(H1,H2…,H8)と表され、優先順位データは、これらの各値Hnに対してそれぞれ設定される優先順位のデータであり、上記設計諸元設定用データはこれらのデータからなる二次元のマトリクスデータで表される。そして、仮の設計諸元データQとは、設計諸元データ最適化部9による後述の設計諸元最適化制御処理の実行により所定の目標条件を満足させる設計諸元データQが見つかるまで、シミュレーション用に使用される設計諸元データQであって、該制御処理の実行に伴って順次更新されて新たなデータに書き換えられる。尚、この仮の設計諸元データQの各データ値Hnの初期値は、最適化を図る前のドア部20周辺の設計諸元値である。
上記設計諸元項目Dnとは、ドア部20周辺の設計諸元であり、具体的には、図2及び図3に示すフロア高さD1、シート高さD2、シート位置D3、ルーフレール高さD4、フロントピラー位置D5、フロントピラー傾斜角D6、センターピラー位置D7、センターピラー傾斜角D8である(設計諸元項目Dnのnとは設計諸元の種類を表す変数であり、nを指定することで特定の設計諸元を指定することができるようになっている)。ここで、フロア高さD1、シート高さD2、ルーフレール高さD4とはそれぞれのパーツの地面からの高さである。また、上記シート位置D3とは、シート22の車幅方向の位置でありドア21からシート22までの車幅方向の距離である。また、フロントピラー位置D5及びセンターピラー位置D7とは、それぞれのパーツの車両前後方向の位置であり例えば車両前端部から各パーツまでの車両前後方向の距離である。また、フロントピラー傾斜角D6及びセンターピラー傾斜角D8は、それぞれのパーツの側面視における傾斜角である。これら設計諸元項目Dnはいずれも車両の乗降性に大きく寄与するものである。例えば、ルーフレール高さD1が低くなれば、車両の乗降時に乗員は頚をより大きく曲げねばならないので、肉体的負担感が増し乗降性が低下することになる。
上記人体特性データ記憶部3には、シミュレーション用の乗員の人体モデルJM(図4参照)に関する人体特性データが記憶されている。
この人体モデルJMは、図4に示すように、頭部M1、胸部M2、腰部M3の3剛体をそれぞれ頚関節J1及び腰関節J2を介して連結してなる乗員の上半身の剛体リンクモデル(多関節モデル)とされている。ここで、モデル化される乗員は、シミュレーションで評価したい体格の成人男性とされる。上記人体特性データは、上記人体モデルJMの座高、頭部M1の重量m1、胸部M2の重量m2、頭部M1の慣性モーメントI1、胸部M2の慣性モーメントI2等といった乗員の体格に関するデータである。
また、人体特性データ記憶部3には、上記人体特性データの他に、上記慣性モーメントI1,I2として、図8に示すような車体前後方向をx軸、鉛直方向をz軸、このx軸及びz軸に垂直な方向(紙面に垂直な方向)をy軸とした直交座標系における、各x、y、z軸周りの慣性モーメントの値がそれぞれ記憶されている。
上記乗降動作軌跡算出部5は、上記設計諸元データ記憶部2から出力された設計諸元データQ(各設計諸元項目Dnの値Hn)及び人体特性データ記憶部3から出力された各人体特性データに基づいて、乗員の車両乗降時の動作軌跡を算出して出力するものである。
ここで、乗降動作軌跡算出部5は、乗員の乗降動作中における所定関節回り(本実施形態においては頚関節及び腰関節回り)の合計関節トルクT(後述する頚関節トルクT1及び腰関節トルクT2の和)の時間積分値を最小化するべく、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)を用いて該乗降動作中の動作軌跡を算出するようになっている。尚、本実施形態においては、所定関節を、頚関節及び腰関節の2関節としているが、必ずしもこれに限ったものではなく、例えば頚関節のみ(1関節のみ)であってもよいし、3つ以上の関節であってもよい。
より具体的には、上記乗降動作軌跡算出部5は、式(1)に示すように、予め各関節角θiを時間の4次関数として与えておき、式(2)に示す評価関数Vにより得られる関節トルクの時間積分値の合計値を評価値として、該評価値を最小化するパラメータai乃至eiの組合せデータを遺伝的アルゴリズムにより探索することで動作軌道を算出する。尚、関節トルクの算出は、後述する関節トルク算出部6にて実行される。
遺伝的アルゴリズムは、進化論的な考え方に基づいてデータ(本実施形態においてはパラメータai乃至eiの組合せデータ)を操作することで最適解(最適データ)を探索する手法であり、上記乗降動作軌跡算出部5における遺伝的アルゴリズムに基づくデータ操作の流れを図5を基に説明する。
すなわち、最初のステップSG1では、複数のデータの集合体である初期世代集団を生成する。
ステップSG2では、生成された集団の各固体(各データ)の適合度を計算する。ここで、適合度とは、例えば上記評価値の逆数により算出されるものであって、その値が大きい固体ほど次の世代に受け継がれ易くなる。尚、本実施形態では、適合度が高い場合であっても、各データに対応して式(1)から決まる動作軌跡が、所定の拘束条件を満足していない場合には、適合度を極端に低い値に設定するようにしている。ここで、所定の拘束条件とは、乗員と車両(仮想車両)が干渉しないように設計諸元データQを基に設定される条件である。
ステップSG3では、適合度を基にその世代全体の評価を行い、ステップSG4では、この評価を基に所定の終了条件を満たしているか否かを判定する。この判定がYESの場合にはデータ操作を終了する一方、NOの場合にはステップSG5に進む。具体的には、この判定は、例えば全固体の適合度の平均値が所定値以上にあるという条件(終了条件)を満たしているか否かにより行われる。
ステップSG5では、所謂「ルーレット選択方式」により適合度に比例した割合で個体を選択する。尚、固体の選択方式としては、例えば、集団の中から個体をある個対数(トーナメントサイズ)だけランダムに選定し、その中で適合度の最も高いものを選択する「トーナメント選択方式」や、適合度の高い個体のいくつかを、そのまま次の世代に残す「エリート戦略」を採用する等してもよい。
ステップSG6では、各固体をさらに進化させるべくGAオペレーションを実行してステップSG2に戻る。
上記GAオペレーションは、図6に示すように、上記パラメータai乃至eiからなる数列データを2進数に変換することで得られる数列データ(固体)に対して実行される。
GAオペレーションの態様としては、ある世代Gの個体(データ)をそのままコピーするクローン(図6(A))と、ある世代Gの個体を、当該世代Gには存在しないパターンに変化させる突然変異(図6(B))と、ある世代Gにおける複数の個体の一部を入れ換える交叉(図6(C))とがあり、突然変異は、その変更の程度によって大変異と小変異とに分類される。本実施形態においては、クローン:大変異:小変異:交叉=3:35:10:52に設定することにより、シミュレーション結果と人体測定による測定結果とが極めて近似する結果を得られたため、乗降動作軌跡算出部5は、GAオペレーションの実行に際して上記の比率を採用するようになっている。
こうして、この乗降動作軌跡算出部5にて算出された動作軌跡の例を図9に示す。この図は、乗降動作時における乗員の頭部M1の鉛直方向(上記z軸方向)の動作軌跡(図中の実線で示す軌跡)及び胸部M2の鉛直方向の動作軌跡(図中の破線で示す軌跡)、つまり頭部M1の重心位置及び胸部M2の重心位置の時間変化を示している。尚、この図において、横軸は時間を表し、縦軸は各重心位置を表している。
上記関節トルク算出部6は、上記乗降動作軌跡算出部5から出力される動作軌跡及び上記人体特性データ記憶部3に記憶された人体特性データに基づいて、乗降動作時の各関節(頚関節及び腰関節)にかかる関節トルクを算出するものである。この関節トルク算出部6では、車両乗降時の肉体的負担感との相関が比較的高い頚関節J1にかかる頚関節トルクT1と腰関節J2にかかる腰関節トルクT2とを演算している。
本車両用設計支援システム100では、上述のように、上半身を、頭部M1、胸部M2、腰部M3の3剛体がそれぞれ頚関節J1及び腰関節J2で連結された剛体リンクモデルとして表している。従って、この頚関節J1及び腰関節J2にかかる上記関節トルクT1,T2は、各剛体の並進加速度αから求められる関節間力とその重心回りの回転運動方程式から算出することができる。
頚関節J1にかかる頚関節トルクT1の算出方法を図7を用いて説明する。ここでは、x、y、z軸の直交座標系におけるy軸周りの頚関節トルクT1yの算出方法について説明する。
まず、上記乗降動作軌跡算出部5から出力される頭部M1のx軸及びz軸方向の動作軌跡に基づき、頭部M1のx軸方向の並進加速度α1xとz軸方向の並進加速度α1zとを算出する。そして、人体特性データ記憶部3から出力される頭部重量m1及び重力加速度gを用いて、頚関節J1にかかるx軸及びz軸方向の関節間力f1x及びf1zを以下の式(3)及び式(4)のように算出する。
f1x=m1α1x ・・・(3)
f1z=m1α1z−m1g ・・・(4)
次に、上記乗降動作軌跡算出部5から出力される頭部M1及び頚関節J1のx軸及びz軸方向の動作軌跡に基づき、図4に示すような頭部M1と頚関節J1との距離であるモーメントアーム長さr1のうちのx軸,z軸方向のモーメントアーム長さr1x,r1z(図7参照)と、頭部M1のy軸周りの角加速度θ"1yとを算出する。そして、上記式(3),(4)より算出された頚関節J1にかかるx軸及びz軸方向の関節間力f1x及びf1zと人体特性データから出力される頭部M1のy軸周りの慣性モーメントI1yとを用いて、頚関節J1のy軸周りの頚関節トルクT1yを以下の式(5)のように算出する。
T1y=−f1zr1x+f1xr1z+I1yθ"1y ・・・(5)
同様にして、頚関節J1のx軸周りの頚関節トルクT1xを、乗降動作軌跡算出部5から出力される頭部M1のy軸及びz軸方向の動作軌跡等を用いて算出する。さらに、頚関節J1のz軸周りの頚関節トルクT1zを、乗降動作軌跡算出部5から出力される頭部M1のx軸及びy軸方向の動作軌跡等を用いて算出する。そして、これら各軸成分の頚関節トルクT1x,T1y,T1zを以下の式(6)ように合成することで、頚関節トルクT1を算出する。
次に、腰関節トルクT2の算出方法について図8を用いて説明する。ここでは、上記と同様にy軸周りの腰関節トルクT2yの算出方法について説明する。
まず、上記乗降動作軌跡算出部5から出力される胸部M2のx軸及びz軸方向の動作軌跡に基づき、胸部M2のx軸方向の並進加速度α2xとz軸方向の並進加速度α2zとを算出する。そして、人体特性データから出力される胸部重量m2と重力加速度gと上記頚関節J1にかかる関節間力f1x及びf1zとを用いて、腰関節J2にかかるx軸及びz軸方向の関節間力f2x及びf2zを以下の式(7)及び式(8)のように算出する。
f2x=m2α2x−f1x ・・・(7)
f2z=−f1z−m2g+m2α2z ・・・(8)
次に、上記乗降動作軌跡算出部5から出力される頚関節J1及び腰関節J2のx軸及びz軸方向の動作軌跡に基づき、頚関節J1と腰関節J2との距離であるモーメントアーム長さr2のうちのx軸,z軸方向の距離であるモーメントアーム長さr2x,r2zと、胸部M2のy軸周りの角加速度θ"2yとを算出する。そして、上記頚関節J1にかかる関節間力f1x及びf1zと、上記腰関節J2にかかる関節間力f2x及びf2zと、人体特性データから出力される胸部M2のy軸周りの慣性モーメントI2yとを用いて、腰関節J2のy軸周りの腰関節トルクT2yを以下の式(9)のように算出する。
T2y=−f2zr2x/2+f2xf2z/2−f1zr2x/2+f1xr2z/2+I2yθ"2y+T1y・・・(9)
同様にして、腰関節J2のx軸周りの腰関節トルクT2xを、乗降動作軌跡算出部5から出力される胸部M2のy軸及びz軸方向の動作軌跡等を用いて算出する。さらに、腰関節J2のz軸周りの腰関節トルクT2zを、乗降動作軌跡算出部5から出力される胸部M2のx軸及びy軸方向の動作軌跡等を用いて算出する。そして、これら各軸成分の腰関節トルクT2x,T2y,T2zを以下の式(10)ように合成することで、腰関節トルクT2を算出する。
このようにして算出された頚関節トルクT1、腰関節トルクT2の演算結果例を図10に示す。この図は、図9に示す乗降動作時の動作軌跡を用いて各トルクT1,T2を演算したものである。図中実線で示したものが腰関節トルクT2であり、破線で示したものが頚関節トルクT1である。ここで、この乗降動作時の頚関節トルクT1の変化は、乗降動作時の乗員の僧帽筋及び胸鎖乳突筋の筋電位の変化の測定結果とよい一致を示すことが確認されている。また、腰関節トルクT2の変化は、乗員の体幹起立筋と腹直筋の筋電位の変化の測定結果とよい一致を示すことが確認されている。すなわち、上記のように乗降動作時の筋活動と上記頚関節トルクT1と腰関節トルクT2との間に高い相関があることが確認されている。従って、本車両用設計支援システム100では、これら関節トルクT1,T2に基づいて乗降動作時の肉体的負担感を上記肉体的負担感推定部7にて算出している。
この肉体的負担感推定部7では、上記のように関節トルク算出部6で算出された頚関節トルクT1と腰関節トルクT2とに基づいて、車両乗降時の乗員の各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感を算出するとともに、該各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感を合計した合計肉体的負担感を算出する。具体的には、肉体的負担感推定部7は、頚関節トルクT1及び腰関節トルクT2との和である合計関節トルクT(=T1+T2)を、各動作フェーズa1乃至a6の開始時から終了時までの区間で時間積分することで各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感Wa(a=1,2,・・・6)を算出するとともに、算出した各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感Waを全て足し合わせることで上記合計肉体的負担感Wを算出する。ここで、肉体的負担感W1乃至W6はそれぞれ各動作フェーズa1乃至a6における肉体的負担感を表しており、例えば乗降動作時における動作フェーズa1にて乗員が受ける肉体的負担感W1は以下の式(11)により算出することができ、上記合計肉体的負担感は式(12)により算出することができる。
ここで、上記各演算はコンピュータのCPUにより行われる。従って、上記乗降動作軌跡算出部5から出力される動作軌跡は刻み時間△t毎の離散系データとなり、この動作軌跡に基づいて算出される合計関節トルクT等も△t毎の離散系データとなる。よって、この離散データである合計関節トルクTとΔtとの積により算出される離散算出データを、各動作フェーズa1乃至a6の時間区間内で足し合わせることで、式(11)に示す各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感の算出が可能となる。
肉体的負担感推定部7は、算出(推定)した各動作フェーズ毎a1乃至a6の乗員の肉体的負担感Wa(a=1,2,・・・6)及びこれらの合計である合計肉体的負担感Wに関する情報を総負担感推定部25に出力する。そうして、この肉体的負担感推定部7と上記関節トルク算出部6とで肉体的負担感算出手段を構成している。
上記精神負担算出用データ記憶部4には、精神的負担感推定部8にて乗員の乗降動作時の精神的負担感を推定(算出)する際の基となる精神負担算出用データ30(図13参照)が記憶されている。本実施形態においては、この精神負担算出用データ30は、上記設計諸元項目Dnの値Hnが異なる複数の試乗車(本実施形態においては10台の試乗車)に乗車した複数の被験者(本実施形態においては42名の被験者)による、乗降性に関するアンケート調査に対する回答を基に作成される。
このアンケート調査は、予め各被験者に配布したアンケート用紙31(図12参照)の回答項目のうち該当すると思われる項目をチェックしてもらうことで行う。具体的には、アンケート用紙31には、各回答項目32に対応してチェック欄33が設けられており、被験者が該当する質問のチェック欄にチェックを施すようになっている。図の例では、被験者が「高くてつらい」という項目に対応するチェック欄33にチェックを施したことを示している。
アンケート用紙31に記載される各回答項目は、上記精神的負担感に影響を与える8つの乗降性評価項目A1乃至A8(図11参照)をISM法により予め抽出して該抽出した項目に関連付けて上記各動作フェーズa1乃至a6毎に作成される。ISM法とは、データマイニングの1つでリンク分析に含まれる範疇のものであり、精神的負担感に影響する多くの影響因子(項目)のうち重要な乗降性評価項目A1乃至A8を的確に抽出するための手法である。具体的には、本実施形態では、この乗降性評価項目A1乃至A8として、「身体調和性」、「身体的開放性」、「安定性」、「空間的ゆとり」、「意向実現性」、「動作適合性」、「好触感」、及び「安定感」を抽出している。尚、図11中の矢印は、各乗降性評価項目A1乃至A8の相関関係を示し、各乗降性評価項目A1乃至A7は最終的には「安心感」(乗降性評価項目A8)に結びついている。
そしてアンケート用紙31には、各回答項目が上記8つの評価項目A1乃至A8(乗降性評価項目)のうちのいずれに関連付くものであるかを示す対応表34が設けられており、該関連付く項目に対応するセルには後述する影響数をカウントするためのチェック「1」が記入されている。
尚、この対応表34は、アンケート結果の集計(分析)を行う集計者の便宜のために設けられるものであって、各被験者はアンケートの回答に際してこの対応表34の記載を考慮する必要はなく、アンケート調査はそのことを予め被験者に伝えた上で実施される。
こうして実施されたアンケート調査結果を集計(分析)することで、例えば図14に示すように、各車両における乗降動作時の精神的負担感に占める各動作フェーズa1乃至a6毎の割合を算出することができる。
すなわち、仮に車両Xに関して被験者Yによるアンケート調査を実施した場合に、アンケート用紙31(図12参照)の動作フェーズa1(内足入れフェーズ)に関する「高くてつらい」という回答項目(以下、回答項目1と呼ぶ)と、動作フェーズa3(外足入れフェーズ)に関する「ドアつけ根下部にあたる」という回答項目(以下、回答項目2と呼ぶ)にチェックが施されていたとすると、回答項目1は、乗降性評価項目A6に対応するセルにのみチェックが記入されているので精神的負担感に影響する影響数が1とカウントされ、項目2は、3つの乗降性評価項目A4,A5,A7に対応するセルにチェックが記入されているので影響数が3とカウントされて、被験者Yが車両Xの乗降動作時に感じる精神的負担感は該影響数に換算して4(=1+3)とカウントすることができる。そして、この精神的負担感のうち動作フェーズa1が占める割合は該動作フェーズa1にてカウントされた影響数1を影響数の合計値4で除することにより25(=1/4×100)%と算出することができ、同様にして、精神的負担感のうち動作フェーズa3が占める割合は75(=3/4×100)%と算出することができる。
そして、本実施形態においては、システム設計者(アンケート集計者)が、このような影響数に基づいた考え方を基にアンケート結果を解析する。具体的には、システム設計者は、各車両における各動作フェーズa1乃至a6毎に又は各乗降性評価項目A1乃至A8毎に影響数をカウントすることで、各車両に対する乗員の乗降動作時の各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感割合や、更にはその各乗降性評価項目A1乃至A8毎の割合を算出する。
更に、上記システム設計者は、算出した各車両毎における乗降動作時の精神的負担感の各乗降性評価項目A1乃至A8毎の割合データに対して、重回帰分析を行うことで上記精神負担算出用データ30(図13参照)を作成する。具体的には、例えば各車両の各設計諸元項目Dnの値Hnを独立変数として、該各車両における乗降動作時の精神的負担感に占める各乗降性評価項目A1乃至A8毎の割合を従属変数として重回帰分析を行う。そうして、作成された精神負担算出用データ30の各値は、各設計諸元項目Dnの値Hnの変化が乗降性評価項目A1乃至A8に与える影響度を表しており、本実施形態においては、図13に示すように、例えば設計諸元D1の値H1の変化が内足入れフェーズa1において乗降性評価項目A3及びA4に与える影響度はそれぞれ0.7258及び0.7774となっている。このことから、内足入れフェーズa1において設計諸元D1が乗降性評価項目A4に与える影響は乗降性評価項目A3に与える影響に比べて小さいことが分かる。尚、各乗降性評価項目A1乃至A8は、上述したように乗員の乗降動作時の精神的負担感に影響する影響因子であることから、精神負担算出用データ30は、車両用ドア部周辺の各設計諸元項目Dnの値Hnの変化が乗員の乗降動作時の精神的負担感に与える影響度を上記各動作フェーズa1乃至a6毎に数値化したものであるとも言える。
そして、作成された精神負担算出用データ30は、システム設計段階において設計者により、図示しないキーボードから入力されて上記精神負担算出用データ記憶部4に記憶される。
上記精神的負担感推定部8は、上記精神負担算出用データ30から出力される精神負担算出用データ30と、設計諸元データ記憶部2から出力される設計諸元データQとを基に、該設計諸元データQに対応する設計諸元値Hnを有する車両(仮想車両)における、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感及びそれらを合計した合計精神的負担感を算出する。
具体的には、精神的負担感推定部8は、上記精神負担算出用データ30の各データセルの値(影響度)をEajn(a=1,2,…6、n,j=1,2,…8、)として、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Ma及び合計精神的負担感Mをそれぞれ、次式(13)及び(14)により算出する。ここで、添字aは各動作フェーズa1乃至a6に対応し、添字nは、各設計諸元項目Dnに対応し、添字jは、各乗降性評価項目A1乃至A8に対応している。従って、例えば影響度E113は、動作フェーズa1における設計諸元D1の乗降性評価項目A3への影響度を表していて、図13に示すようにその値は0.7258とされている。
精神的負担感推定部8は、算出した各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Ma及び合計精神的負担感Mを総負担感推定部25に出力する。そうして、この精神的負担感推定部8が精神的負担感算出手段を構成することとなる。
上記総負担感推定部25は、肉体的負担感推定部7及び精神的負担感推定部8からそれぞれ出力される、乗員の各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感Wa及び精神的負担感Maを基に、各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感を算出(推定)する。
ここで、肉体的負担感推定部7にて算出される肉体的負担感Waと、精神的負担感推定部8にて算出される精神的負担感Maとでは、それぞれの算出過程から明らかなように単位系が異なる。このため、本実施形態においては、精神的負担感推定部8は、総負担感を算出するに際して、各動作フェーズa1乃至a6の肉体的負担感Waを合計負担感Wで除することにより肉体的負担感割合RWaを算出するとともに、各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを合計精神的負担感Mで除することにより精神的負担感割合RMaを算出した上で、上記乗員の乗降動作の開始から終了までの総負担感に占める肉体的負担感と精神的負担感との割合がそれぞれ50%ずつと仮定して、各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合RSa(a=1,2,…6)を算出して該総負担感割合RSaをもって該各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感(総負担感の大きさ)とする(図15参照)。
具体的には、総負担感推定部25は、次式(15)により、肉体的負担感割合RWaを算出し、次式(16)により精神的負担感割合RMaを算出し、次式(17)により総負担感割合RSaを算出する。
ここで、RW1乃至RW6、RM1乃至RM6、及びRS1乃至RS6はそれぞれ、各動作フェーズa1乃至a6における肉体的負担感割合、精神的負担感割合、及び総負担感割合を表している。
RWa=Wa/W・・・(15)
RMa=Ma/M・・・(16)
R=(RMa+RWa)/2・・・(17)
総負担感推定部25は、算出した肉体的負担感割合RWaに関する情報を設計諸元データ最適化部9に出力する。そして、この総負担感推定部25と肉体的負担感推定部7と精神的負担感推定部8と関節トルク算出部6とが本発明の負担感算出手段としての負担感推定部26(図1参照)を構成している。
設計諸元データ最適化部9は、総負担感推定部25からの情報を基に、乗員の乗降動作時の各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合RSa(負担感)が、該各動作フェーズa1乃至a6のそれぞれに対して予め設定された設定閾割合(設定閾値)以下となっているか否かを判定する。尚、この設定閾割合は、オペレータ(システム使用者)が予めキーボード(図示省略)から入力することで設定可能になっている。
そして、設計諸元データ最適化部9は、各動作フェーズa1乃至a6における総負担感割合RSaがそれぞれ設定閾割合以下となる目標条件が満足されていると判定した場合には、そのときの設計諸元データQを最適設計諸元データQとして結果表示部10に出力する一方、各動作フェーズa1乃至a6のうち1つでもその総負担感割合RSaが設定閾割合を上回っている場合(図15では、着座フェーズa2及び外足出しフェーズa4における総負担感割合RSaが設定閾割合を上回っている場合を示している)には、そのときの設計諸元データQを後述の変更優先順位に基づいて変更した上でシミュレーション用の新たな設計諸元データQとして上記設計諸元データ記憶部2に出力して記憶させる。
上記主制御部11は、各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合RSaが設定閾割合以下となるように設計諸元データQを決定するべく、上記各算出部5,6間のデータの受渡しや、該各算出部5,6における演算処理等のシステム全体を制御する設計諸元最適化制御を実行する。そして、この主制御部11と上記設計諸元データ最適化部9とが設計諸元データ最適化手段を構成することとなる。
上記結果表示部10は、図示しないコンピュータのディスプレイからなるものであって、設計諸元データ最適化部9から出力される最適設計諸元データQを該ディスプレイ上に表示してオペレータに示すものである。
次に、図16のフローチャートを参照にしながら、上記主制御部11による設計諸元最適化制御処理について説明する。尚、ステップSA7以降の処理は、主制御部11からの指令を受けた設計諸元データ最適化部9により実行されるものである。
最初のステップSA1では、上記各算出部5,6及び設計諸元データ最適化部9に対して人体特性データ記憶部3内の人体特性データを読込むように指令を出す。
ステップSA2では、上記各算出部5,6及び設計諸元データ最適化部9に対して設計諸元データ記憶部2内に記憶された仮の設計諸元データQを読込むように指令を出す。
ステップSA3では、乗降動作軌跡算出部5に対して、上記人体特性データにより置換された乗員の各関節トルクの積分値が最小となる乗降軌跡を算出させるべく演算実行指令を出す。
ステップSA4では、肉体的負担感推定部7に対して演算実行指令を行うことで、ステップSA2にて読込んだ設計諸元データQに対応する設計諸元値Hnを有する車両(仮想車両)において乗員が乗降動作時に受ける各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感割合RWaを算出させる。
ステップSA5では、精神的負担感推定部8に対して演算実行指令を行うことで、車両(仮想車両)において乗員が乗降動作時に受ける各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感割合RMaを算出させる。
ステップSA6では、総負担感推定部25に対して演算実行指令を行うことで、車両(仮想車両)において乗員が乗降動作時に受ける各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合RSaを算出させる。
ステップSA7では、設計諸元データ最適化部9に対して演算実行指令を行うことで、ステップSA6にて算出した総負担感割合RSaが、該各動作フェーズa1乃至a6毎に設定された設定閾割合以下であるか否かを判定させる。この判定がYESの場合には、ステップSA8に進み、NOの場合にはステップSA9(図17参照)に進む。
ステップSA8では、シミュレーションに使用した上記設計諸元値データQを結果表示部10に出力する。
ステップSA9(図17参照)では、総負担感割合RSaが設定閾割合を上回る動作フェーズa1乃至a6を抽出する。
ステップSA10では、ステップSA9にて抽出した動作フェーズa1乃至a6に関連する設計諸元項目Dnを抽出する。ここで、各動作フェーズa1乃至a6に関連する設計諸元項目Dnは予め設計段階で設定されてハードディスク内に記憶されている。具体的には、例えば着座フェーズa2に関連する設計諸元項目Dnは、シート22に関するものであってシート高さD2及びシート位置D3とされており、本実施形態においては、各動作フェーズa1乃至a6のそれぞれに対して2以上の設計諸元項目Dnが設定されている。
ステップSA11では、ステップSA10にて抽出した設計諸元項目Dnのうち、その値を変更したとしても車両外観に与える影響が最も少ない設計諸元項目Dnを選択する。ここで、各設計諸元項目Dnが外観に与える影響度の大きさは、予め順位付けされて上記設計諸元設定用データの優先順位データとして記憶されている。以下の説明では、この順位のことを変更優先順位と呼ぶ。
ステップSA12では、ステップSA11にて選択した設計諸元項目Dnの値(設計諸元データQにおける設計諸元項目Dnに対応するデータ値Hn)に所定の刻み値を加算して新たな設計諸元データQを作成するとともに、作成した設計諸元データQを設計諸元データ記憶部2に出力して記憶させる。
ステップSA13では、刻み値を加算した設計諸元項目Dnの値Hnが、予め設定した許容範囲内にあるか否かを判定し、この判定がYESの場合にはリターンする一方、NOの場合にはステップSA14に進む。
ステップSA14では、ステップSA11にて選択した設計諸元項目Dnの次に変更優先順位が高い設計諸元項目Dnを選択してステップSA12に戻る。尚、刻み値を加算した設計諸元項目Dnの値Hnについては許容範囲を超える直前のデータ値に戻しておく。
以上の如く上記実施形態1では、総負担感推定部25において、乗員の乗降動作が上記6つの動作フェーズa1乃至a6からなるものとして、乗員の車両(仮想車両)に対する乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合RSaを算出するとともに、設計諸元データ最適化部9において、総負担感推定部25にて算出された各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合RSaを総負担感(総負担感の大きさ)として算出して、該各総負担感割合RSaが全て設定閾割合以下となるような(目標条件を満足させる)設計諸元データQを主制御部11と協働して決定するようになっている。
こうすることで、設計諸元データ最適化部9において、乗員の乗降動作時における総負担感を確実に低減可能な設計諸元データを決定することが可能となる。すなわち、乗員の乗降動作を上述のように各動作フェーズa1乃至a6に分割せずに、例えば負担感推定部25にて乗員の乗降動作の開始から終了までの間の総負担感(各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感の合計)を推定するとともに、設計諸元データ最適化部9にて該総負担感が設定度合以下となる設計諸元データQを決定するようにした場合、この設計諸元データQに基づいて車両用ドア部周辺の設計を行うことで、該車両に対する乗員の乗降動作時の負担感を全体としては低減することができるものの、乗降動作中の特定の動作フェーズa1乃至a6においては乗員の許容負担感を上回る場合があり改善の余地があるが、上記実施形態1の如く、設計諸元データ最適化部9にて、各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合が、該各フェーズa1乃至a6毎に設定された設定閾割合以下となるように設計諸元データQを決定することで、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感を確実に許容度合以下とする設計諸元データQの決定が可能となる。
また、上記実施形態1では、設計諸元データ最適部9は、主制御部11からの演算実行指令を受けて、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合RSaが全て設定閾割合以下となっているか否か、つまり上記目標条件が満たされているか否かを判定し、該目標条件が満たされていると判定した場合(ステップSA7の判定がYESの場合)には、そのときの設計諸元データQを最適設計諸元データQと決定して結果表示部10に出力する(ステップSA8の処理を実行する)一方、上記目標条件が満たされていないと判定した場合(ステップSA7の判定がNOの場合)には、上記動作フェーズa1乃至a6のうち上記総負担感推定部25により推定された負担感割合(負担感)が設定閾割合(設定閾値)を上回る動作フェーズa1乃至a6を抽出する(ステップSA10の処理を実行する)し、該抽出した動作フェーズa1乃至a6に関連する設計諸元項目Dnを複数抽出した後に(ステップSA10の処理を実行後に)、該抽出した複数の設計諸元項目Dnの中から、変更する設計諸元項目Dnを上記変更優先順位にしたがって順に選択する(ステップSA11及び14の処理を実行する)とともに、該選択の度毎に、上記設計諸元データ記憶部2に記憶された設計諸元データQにおける該選択した設計諸元項目Dnに対応するデータ値Hnを許容範囲内(所定範囲内)で所定の刻み値で変化させて該設計諸元データQを更新するとともに(ステップSA12の処理を実行するとともに)、上記目標条件を満足させる設計諸元データQが見つかるまで(ステップSA7にてYESと判定されるまで)、ステップSA9以降の処理を繰返し実行して最適設計諸元データQを探索決定するように構成されている。
この構成により、設計諸元データ最適化部9において、変更優先順位の低い設計諸元項目Dnに対応するデータ値Hnを極力変化させずに最適設計諸元データQを探索することが可能となる。
ここで、上記実施形態1では、各設計諸元項目Dnに対して予め設定される変更優先順位は、各設計諸元項目Dnが外観に与える影響度の小さい順とされている。従って、設計諸元最適化部9において、変更優先順位の低い設計諸元項目Dnに対応するデータ値Hnを極力変化させずにつまり外観に与える影響が大きい設計諸元項目Dnに対応するデータ値Hnを極力変化させずに最適設計諸元データQの探索が可能となる。
また、上記実施形態1では、総負担感推定部25は、精神的負担感推定部8にて算出(推定)された精神的負担感Maと肉体的負担感推定部7にて算出(推定)された肉体的負担感Waとを基に、総負担感を算出(推定)するようになっている。
このように、総負担感を精神的負担感Maと肉体的負担感Waとの双方を考慮に入れて算出するようにしたことで、例えば精神的負担感Maと肉体的負担感Waとのいずれか一方のみに基づいて総負担感を算出するようにした場合に比べて、乗員が乗降動作時に実際に感じる総負担感をより一層正確に推定することができる。このため、設計諸元データ最適化部9において、乗員の負担感を確実に低減可能な最適設計諸元データQの決定が可能となる。
また、上記実施形態1では、精神的負担感推定部8は、上記精神負担算出用データ記憶部4に記憶された精神負担算出用データ30と、上記設計諸元データ記憶部2に記憶された設計諸元データQとを基に、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを式(13)により推定するようになっている。従って、精神的負担感推定部8により、各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを簡単な演算でもって算出することが可能となる。
また、上記実施形態1では、乗降動作軌跡算出部5は、乗員の乗降動作中における頚関節及び腰関節回り(所定関節回り)の関節トルク(合計関節トルクT)の時間積分値を最小化するべく、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)を用いて動作軌跡を算出するようになっている。これにより、乗員の実際の乗降動作時の動作軌跡を精度良く再現した動作軌跡の算出が可能となる。
また、上記実施形態1では、上記関節トルク算出部6は、該乗降動作軌跡算出部5にて算出された動作軌跡を基に乗員の乗降動作中の頚関節及び腰関節回り(所定関節回り)の関節トルクを算出するように構成されており、上記肉体的負担感推定部7は、上記関節トルク算出部6にて算出された関節トルク(合計関節トルクT)を各動作フェーズ毎a1乃至a6毎に時間積分することで該各動作フェーズa1乃至a6毎に該関節トルクの時間積分値を算出して、該各算出値を該各動作フェーズa1乃至a6における乗員の乗降動作時の肉体的負担感Waと推定するように構成されている。これにより、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感Waを、乗員(人体モデルJM)の頚関節及び腰関節回りの関節トルクの時間積分値に基づいて精度良く推定することができる。
また、上記実施形態1では、上記精神負担算出用データ30は、複数の被験者(42名)を予め用意した複数の車両に乗降させて、該各被験者に対して、ISM法により抽出した乗降性評価項目A1乃至A8に基づいたアンケート調査を実施してその結果を解析することで作成されるようになっている。これにより、上記車両用ドア部周辺の各設計諸元項目Dnの値Hnの変化が乗員の乗降動作時の精神的負担感に与える影響度を各動作フェーズa1乃至a6毎に正確に数値化した該精神負担算出用データ30を作成することができる。
また、上記実施形態1では、上記各動作フェーズa1乃至a6は、内足を車内に入れる内足入れフェーズa1と、シート22に着座する着座フェーズa2と、車外に残っている外足を車内に入れる外足入れフェーズa3と、該シート22に着座した状態から外足を車外に出す外足出しフェーズa4と、該シート22から立ち上がる起立フェーズa5と、車内に残っている内足を車外に出す内足出しフェーズa6との6つのフェーズからなるものとされている。これにより、乗員の負担感が比較的大きい着座フェーズa2及び起立フェーズa5と、比較的負担感が低い内足入れフェーズa1及び外足入れフェーズa3並びに外足出しフェーズa4及び内足出しフェーズa6とを確実に切分けることができる。従って、設計諸元データ最適化部9により、乗員にとって乗降動作時の負担が大きい着座フェーズa2及び起立フェーズa5においても、乗員の総負担感が許容度合以下となる最適設計諸元データQを確実に決定することが可能となる。
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、精神的負担感推定部8による精神的負担感の算出処理(図16のステップSA5において主制御部11からの演算指令を受けて精神的負担感推定部8により実行される演算処理)を上記実施形態1とは異ならせたものである。尚、以下の実施形態において車両用設計支援システム100の全体構成等(図1参照)は、乗降動作軌跡算出部5から精神的負担感推定部8への情報出力が可能になっている点を除いては上記実施形態1と同様であるものとする。
すなわち、本実施形態2では、精神的負担感推定部8は、乗降動作軌跡算出部5にて算出された乗員(人体モデルJM)の乗降動作軌道を基に、各動作フェーズa1乃至a6において乗員の視線方向の先にある物を推定するとともに該推定した物と関連性の深い設計諸元項目Dnを各動作フェーズa1乃至a6毎に抽出して、この抽出した設計諸元項目Dnと、精神負担算出用データ記憶部4に記憶された精神負担算出用データ30とを基に各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを算出するように構成されている。
具体的には、精神的負担感推定部8は、頭部中心JC(図4参照)を通り且つ該頭部中心JCと上記頚関節J1とを結ぶ直線に垂直な直線hが乗員の視線に一致するものとして、この直線と車両(仮想車両)とが交差する座標点を算出し、この算出した座標点にある車両構成要素が該乗員の視線の先にある物と推定する。ここで、各動作フェーズa1乃至a6において乗員の視線の先にあるものが2以上ある場合には、頭部中心からの距離が最も近い物を選択して推定物とする。
そして、精神的負担感推定部8は、上述のように、乗員の視線の先にあるものと推定した推定物に対して深い関連を有する設計諸元項目Dnを関連設計諸元項目Dkとして各動作フェーズa1乃至a6毎に抽出する。ここで、推定物に対してどの設計諸元項目Dnを関連設計諸元項目Dkとするかは、システム設計段階で予め設定されてハードディスク内の所定領域に記憶される。本実施形態においては、例えば、上記推定物としてのシート22(シートクッション)に深い関連を有する関連設計諸元項目Dkはシート高さD2とされている。尚、関連設計諸元項目Dkは1つに限ったものではなく、例えば2つ以上であってもよい。
そうして、精神的負担感推定部8は、各動作フェーズa1乃至a6毎に抽出した上記関連設計諸元項目Dkの各乗降性評価項目A1乃至A8への影響度を精神負担算出用データ30から読取る。そして、該読み取ったデータと、設計諸元データ記憶部2に記憶された設計諸元データQにおける該関連設計諸元項目Dkに対応するデータとを基に、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Ma及び合計精神的負担感Mをそれぞれ次式(18)及び次式(14)により算出する。
そして、精神的負担感推定部8は、算出した各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Ma及び合計精神的負担感Mに関する情報を総負担感推定部25に出力する。
以上の如く上記実施形態2では、精神的負担感推定部8は、乗降動作軌跡算出部5により算出された動作軌跡を基に、各動作フェーズa1乃至a6において、乗員の視線の先にある車両構成要素を推定するとともに、上記設計諸元データQのうち該推定した車両構成要素に関連するデータ(該車両構成要素に関連する関連設計諸元項目Dkに対応するデータ)を抽出して、該抽出したデータと、上記精神負担算出用データ30とを基に、乗員の乗降動作時の各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感を推定するようになっている。
これにより、精神的負担感推定部8にて乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを精度良く推定することが可能となる。
すなわち、乗員の乗降動作時における精神的負担感は、乗員の眼から脳に伝達される視認情報つまり乗員が乗降動作中に視認する物の影響を強く受けるが、上記実施形態1では、精神的負担感推定部8は、上記乗降動作軌跡算出部5により算出された動作軌跡を基に、各動作フェーズa1乃至a6において、設計諸元データQのうち乗員の視線の先にある車両構成要素に関連するデータを抽出して、つまり精神的負担感Maに影響する視認情報に関連するデータを抽出して、該抽出したデータと精神負担算出用データ30とを基に乗員の乗降動作時の各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを推定するようになっている。従って、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを精神的負担感推定部8にて精度良く確実に推定することが可能となり、延いては、総負担感推定部25にて総負担感をより精度良く算出(推定)することができる。この結果、設計諸元データ最適化部9により、乗員の実際の乗降動作時における総負担感を確実に低減可能な最適設計諸元データQを得ることが可能となる。
(実施形態3)
本発明の実施形態3は、精神的負担感推定部8による精神的負担感の算出処理(図16のステップSA5において主制御部11からの演算指令を受けて精神的負担感推定部8により実行される演算処理)を上記実施形態1及び実施形態2とは異ならせたものである。
すなわち、本実施形態3では、精神的負担感推定部8は、乗降動作軌跡算出部5にて算出された乗員(人体モデルJM)の乗降動作軌道を基に、各動作フェーズa1乃至a6において乗員と接触する可能性のある接触物を推定する。
そして、精神的負担感推定部8は、各動作フェーズa1乃至a6毎に、上記推定した接触物に対して深い関連を有する設計諸元項目Dnを関連設計諸元項目Dkとして抽出する。ここで、抽出した接触物がどの設計諸元項目Dnと深い関連を有するかは設計段階において予め設定されてハードディスク内の所定領域に記憶される。本実施形態においては、例えば、上記接触物としてのシート22(シートクッション)に深い関連を有する関連設計諸元項目Dkはシート高さD2とされている。尚、関連設計諸元項目Dkは1つに限ったものではなく、例えば2つ以上であってもよい。
そうして、精神的負担感推定部8は、各動作フェーズa1乃至a6毎に、上記抽出した関連設計諸元項目Dkの各乗降性評価項目A1乃至A8への影響度を精神負担算出用データ30から読取る。そして、該読み取ったデータと、設計諸元データ記憶部2に記憶された設計諸元データQにおける該関連設計諸元項目Dkに対応するデータとを基に、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Ma及び合計精神的負担感Mをそれぞれ、式(18)及び(14)により算出するとともに、その情報を総負担感推定部25に出力する。
以上の如く上記実施形態3では、精神的負担感推定部8は、乗降動作軌跡算出部5により算出された乗員の動作軌跡を基に、各動作フェーズa1乃至a6において、該乗員が乗降動作時に接触する可能性のある車両構成要素を推定するとともに上記設計諸元データQのうち該推定した車両構成要素に関連するデータ(該車両構成要素に関連する関連設計諸元項目Dkに対応するデータ)を抽出して、該抽出したデータと上記精神負担算出用データ30とを基に、乗員の乗降動作時の各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感を推定するように構成されている。
これにより、精神的負担感推定部8にて乗員の各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maをより一層精度良く推定することが可能となる。すなわち、乗員の乗降動作時における精神的負担感Maは、乗降動作時に乗員の体に物が接触することによる触感の影響を強く受けるが、上記実施形態3では、各動作フェーズa1乃至a6において、該乗員が乗降動作時に接触する可能性のある車両構成要素を推定するとともに上記設計諸元データQのうち該推定した車両構成要素に関連するデータを抽出して、つまり乗員の触感に関連するデータを抽出して、該抽出したデータと上記精神負担算出用データ30とを基に、上記乗員の乗降動作時の各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを推定するようになっている。従って、乗員の乗降動作時における各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを精神的負担感推定部8にて精度良く確実に推定することが可能となり、延いては、総負担感推定部25にて総負担感をより精度良く算出(推定)することができる。この結果、設計諸元データ最適化部9により、乗員の実際の乗降動作時における総負担感を確実に低減可能な最適設計諸元データQを得ることが可能となる。
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記各実施形態では、上記乗降動作軌跡算出部5は、上記設計諸元データ記憶部2から出力された各設計諸元項目Dnの値及び人体特性データ記憶部3から出力された人体特性データに基づいて、ドア21が全開状態にあるものとして乗員の車両乗降時の動作軌跡を出力するようになっているが、これに限ったものではなく、例えば、乗員の乗降動作時の動作軌跡をドア21の開度に応じて算出するようにしてもよい。この場合には、例えば、上記乗降動作軌跡算出部5に対して、車両(仮想車両)のドア開度を設定可能なドア開度設定部(ドア開度設定手段)を設けて、該ドア開度設定部にて設定されたドア開度に応じて、該仮想車両に対する乗員の乗降動作時の動作軌跡を算出するようにすればよい。
こうすることで、ドア開度設定部により仮想車両のドア開度を設定することができるとともに、該乗降動作軌跡算出部5により、該仮想車両に対する乗員の乗降動作時の動作軌跡を該ドア開度に応じて算出することが可能となり、延いては、上記負担感推定部26(総負担感推定部25)により、該仮想車両に対する乗員の乗降動作時の動作軌跡を該ドア開度に応じて推定することが可能となる。そうして、上記設計諸元データ最適化部9により、ドア開度に応じた最適設計諸元データQの決定が可能となる。
従って、例えば、比較的周辺スペースが無い場所での利用を想定した車両に対して、ドア部周辺の最適設計諸元データQを決定する場合に、予測されるドア開度を上記ドア開度設定部により設定することで、設計諸元データ最適化部9において、該車両の用途に適した最適設計諸元データQの決定が可能となる。
また、上記各実施形態では、精神負担算出用データ30を、アンケート結果に基づいて作成するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、複数の被験者を予め用意した複数の車両に乗降させて、該乗降動作時の各被験者の発話内容を、ISM法により抽出した8つの乗降性評価項目A1乃至A8を基に解析することによって作成するようにしてもよい。すなわち、例えば上記各乗降性評価項目A1乃至A8に関連付く発話フレーズ(言葉)を予め決めておくとともに、各動作フェーズa1乃至a6においてこの発話フレーズを被験者が発したか否かを調査して該調査結果に基づいて精神負担算出用データ30を作成するようにすればよい。具体的には、まず、各被験者の乗降動作をカメラで撮影するとともに音声マイクにより該各被験者の発する言葉を録音しておく。次に、該カメラにより撮影された映像と音声マイクにより録音された言葉とを基に、各動作フェーズa1乃至a6において被験者が発した発話フレーズをチェックする。そして、このチェックした結果を、上述のアンケート調査結果の解析と同様の手法(影響数に基づく手法)により解析することで上記精神負担算出用データ30を作成することができる。尚、この発話フレーズのチェックは、例えば、音声信号を解析可能な解析装置により行うようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、上記総負担感推定部25は、乗員の各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感割合RSaを算出して該総負担感割合RSaをもって各動作フェーズa1乃至a6毎の総負担感(総負担感の大きさ)として算出するようになっているが、これに限ったものではなく、例えば、精神的負担感推定部8にて算出した各動作フェーズa1乃至a6毎の精神的負担感Maを、肉体的負担感に単位系を合わせるべく換算した上で、肉体的負担感推定部7にて算出した各動作フェーズa1乃至a6毎の肉体的負担感Waと足し合わせて、その足し合わせた値を総負担感として算出するようにしてもよい。具体的には、乗員の乗降動作時の総負担感に占める肉体的負担感と精神的負担感との割合がそれぞれ50%ずつと仮定して、例えば、総負担感推定部25にて、合計肉体的負担感が100(Nms)と算出された場合には、合計精神的負担感は、肉体的負担感に換算して100(Nms)と算出される。そして、総負担感推定部25にて算出された着座フェーズa2における乗員の精神的負担感割合RMaが例えば30%であったとすると、乗員が該着座フェーズa2にて受ける精神的負担感は、肉体的負担感に換算すると30(=100×0.3)(Nms)と算出される。よって、仮に、肉体的負担感推定部7にて算出された着材フェーズa2における乗員の肉体的負担感Waが30(Nms)であったとすると、該着座フェーズa2における乗員の総負担感は60(=30+30)(Nms)と算出される。
また、上記各実施形態では、各設計諸元項目Dnの変更優先順位を、該各設計諸元項目Dnが車両の外観に与える影響が大きい順に設定するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、値を変更することによる製造コストへの影響が少ない順に設定するようにしてもよい。