JP2009068379A - 風力発電システム、及びその制御方法 - Google Patents

風力発電システム、及びその制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短いなぎが発生しても出力電力の変動や発電効率の低下が起こりにくい風力発電システムを提供する。
【解決手段】本発明による風力発電システムは、ピッチ角が可変であるブレード(8)を備える風車ロータ(7)と、風車ロータ(7)によって駆動される発電機(5)と、風車ロータ(7)又は発電機(5)の回転数(ω)に応答して、発電機(5)の出力電力とブレード(8)のピッチ角とを制御する制御装置(19、22)とを具備する。制御装置(19、22)は、回転数(ω)が増大して所定の定格回転数に到達するまでの間、所定の電力−回転数曲線に従って出力電力を制御する第1制御を行い、回転数(ω)が定格回転数を超えたとき出力電力を所定の定格電力に制御する第2制御を行い、制御装置(19、22)は、一旦、第2制御を行う状態に設定された後で回転数(ω)が定格回転数よりも小さくなったとき、ピッチ角に応答して第2制御を行う状態を維持し、又は第1制御を行う状態に遷移する。
【選択図】図3

Description

本発明は、風力発電システム、及びその制御方法に関しており、特に、可変速可変ピッチ制御方式を採用する風力発電システムの出力電力及びピッチ角の制御に関する。
風力発電システムの有力な制御方式の一つは、風車ロータの回転数(即ち、発電機の回転数)が可変であり、且つ、ブレードのピッチ角が可変である、可変速可変ピッチ制御方式である。可変速可変ピッチ制御方式は、風からエネルギーをより多く取得することができ、且つ、出力変動が小さいという利点がある。
可変速可変ピッチ制御方式では、発電機の出力電力及びブレードのピッチ角の制御の最適化が重要である。特表2001−512804号公報は、磁界オリエンテーション制御によって発電機のトルクを制御する一方、発電機のトルクと独立してピッチ角を制御する制御方法を開示している。開示された制御方法では、発電機の回転数に応答して発電機の目標出力電力がルックアップテーブルを用いて決定され、その目標出力電力から発電機のトルク指令が決定される。このトルク指令に応答して、磁界オリエンテーション制御によって発電機のトルクが制御される。一方、ブレードのピッチ角は、発電機の回転数と目標回転数との偏差に応じたPID制御、PI制御、又はPD制御によって制御される。
風力発電システムの制御における一つの問題は、短いなぎ(transient wind null)が発生した場合、すなわち、風速が短時間だけ低下した場合に対する対応である。風力発電システムは、一般に、風車ロータの回転数が定格回転数以上である場合に定格電力を発生するように設計される。このような風力発電システムでは、短いなぎが発生して風車ロータの回転数が定格回転数よりも小さくなると、出力電力が定格電力よりも小さくなってしまう。これは、出力電力の変動や発電効率の低下を招く。
特表2001−512804号公報
従って、本発明の目的は、短いなぎが発生しても出力電力の変動や発電効率の低下が起こりにくい風力発電システムを提供することにある。
具体的には、本発明は、以下に述べられる手段を採用する。その手段の記述には、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]の記載との対応関係を明らかにするために、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号が付加されている。但し、付加された番号・符号は、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲を限定的に解釈するために用いてはならない。
本発明による風力発電システムは、ピッチ角が可変であるブレード(8)を備える風車ロータ(7)と、風車ロータ(7)によって駆動される発電機(5)と、風車ロータ(7)又は発電機(5)の回転数(ω)に応答して、発電機(5)の出力電力とブレード(8)のピッチ角とを制御する制御装置(19、22)とを具備する。制御装置(19、22)は、回転数(ω)が増大して所定の定格回転数に到達するまでの間、所定の電力−回転数曲線に従って出力電力を制御する第1制御を行い、回転数(ω)が定格回転数を超えたとき出力電力を所定の定格電力に制御する第2制御を行い、制御装置(19、22)は、一旦、第2制御を行う状態に設定された後で回転数(ω)が定格回転数よりも小さくなったとき、ピッチ角に応答して第2制御を行う状態を維持し、又は第1制御を行う状態に遷移する。ここで、ピッチ角とは、ブレードの翼弦とロータ回転面のなす角度である。即ち、ピッチ角が小さいと、風車ロータ(7)は、より多くのエネルギーを風から取り出し、ピッチ角が大きいと、風車ロータ(7)は、より少ないエネルギーを風から取り出すことになる。
このような構成の風力発電システムでは、短時間だけしか風速が低下していない場合には、風車ロータ(7)の回転エネルギーを利用することによって出力電力の変動を抑制することができる。これは、本発明の風力発電システムでは、前記回転数(ω)が前記定格回転数よりも小さくなった場合に、出力電力がブレード(8)のピッチ角に応じて所定の定格電力に維持されるからである。ブレード(8)のピッチ角から出力電力を所定の定格電力に維持可能な状態であると判断される場合には出力電力を定格電力に維持することにより、風車ロータ(7)の回転エネルギーが有効に取り出され、出力電力の変動と発電効率の低下とを抑制することができる。
制御装置(19、22)は、一旦、第2制御を行う状態に設定された後で回転数(ω)が定格回転数よりも小さくなったとき、ピッチ角が所定のピッチ角よりも大きい場合には前記第2制御を行う状態を維持し、ピッチ角が所定のピッチ角に到達して初めて第1制御を行う状態に遷移することが好ましい。この場合、前記制御装置(19、22)は、一旦、前記第2制御を行う状態に設定された後で前記回転数が前記定格回転数よりも小さい所定の閾値回転数よりも小さくなったとき、前記ピッチ角に無関係に前記第1制御を行う状態に遷移することが望ましい。
制御装置(19、22)は、風車ロータ(7)又は発電機(5)の回転数(ω)と所定の定格回転数との差、及び出力電力と定格電力との差に応答して前記ピッチ角を制御することが好ましい。
この場合、制御装置(19、22)は、出力電力が定格電力よりも小さい場合、ピッチ角が減少されるようにピッチ角を制御することが好ましい。
制御装置(19、22)は、ガストを検出した場合、前記回転数(ω)に応答して発電機(5)の出力電力を増加させることが好ましい。
また、当該風力発電システムが、更に、風車ロータ(7)の回転面の向きを旋回させる旋回機構(4)と、風上方向を検出する風向検出器(10)とを備え、風車ロータ(7)が、ブレード(8)を駆動するピッチ駆動機構(11、12)を備えている場合、制御装置(19、22)は、ピッチ駆動機構(11、12)の故障を検出したとき、風車ロータ(7)の回転面が風上方向から退避されるように旋回機構(4)を制御することが好ましい。
制御装置(19、22)は、発電機(5)に接続された電力系統の電圧に応答して発電機(5)から電力系統(13)に出力される無効電力を制御し、且つ、前記無効電力に応じて前記ピッチ角を制御することが好ましい。
当該風力発電システムが、更に、非常用バッテリ(28)と、電力系統(13)から受け取った電力によって非常用バッテリ(28)を充電する充電装置(27)とを具備し、風車ロータ(7)が、ブレード(8)を駆動するピッチ駆動機構(11、12)を備え、非常用バッテリ(28)が、発電機(5)に接続された電力系統(13)の電圧が低下したときにピッチ駆動機構(11、12)と制御装置(19、22)に電力を供給する場合、制御装置(19、22)は、非常用バッテリ(28)が充電されている間、出力電力を増加させるように出力電力を制御することが好ましい。
本発明による風力発電システムの制御方法は、ピッチ角が可変であるブレード(8)を備える風車ロータ(7)と、風車ロータ(7)によって駆動される発電機(5)とを備える風力発電システムの制御方法である。当該制御方法は、風車ロータ(7)又は発電機(5)の回転数(ω)に応答して、発電機(5)の出力電力と前記ブレード(8)のピッチ角とを制御する制御ステップを具備する。前記制御ステップは、
(A)前記回転数(ω)が増大して所定の定格回転数に到達するまでの間、所定の電力−回転数曲線に従って前記出力電力を制御する第1制御が行うステップと、
(B)前記回転数(ω)が前記定格回転数を超えたとき前記出力電力を所定の定格電力に制御する第2制御を行うステップと、
(C)一旦、前記第2制御を行う状態に設定された後で前記回転数(ω)が前記定格回転数よりも小さくなったとき、前記ピッチ角に応答して前記第2制御を行う状態を維持し、又は前記第1制御を行う状態に遷移するステップ
とを備える。
本発明により、短いなぎが発生しても出力電力の変動や発電効率の低下が起こりにくい風力発電システムが提供される。
図1は、本発明の一実施形態における風力発電システム1の構成を示す側面図である。風力発電システム1は、タワー2と、タワー2の上端に設けられたナセル3とを備えている。ナセル3は、ヨー方向に旋回可能であり、ナセル旋回機構4によって所望の方向に向けられる。ナセル3には、巻線誘導発電機5とギア6とが搭載されている。巻線誘導発電機5のロータは、ギア6を介して風車ロータ7に接合されている。
風車ロータ7は、ブレード8と、ブレード8を支持するハブ9とを備えている。ブレード8は、そのピッチ角が可変であるように設けられている。詳細には、図2に示されているように、ハブ9には、ブレード8を駆動する油圧シリンダ11と、油圧シリンダ11に油圧を供給するサーボバルブ12とが収容されている。サーボバルブ12の開度によって油圧シリンダ11に供給される油圧が制御され、これにより、ブレード8が、所望のピッチ角に制御される。
図1に戻り、ナセル3には、更に、風速計10が設けられている。風速計10は、風速と風向とを測定する。後述されるように、ナセル3は、風速計10によって測定された風速と風向に応答して旋回される。
図3は、風力発電システム1の構成の詳細を示すブロック図である。本実施形態の風力発電システム1は、2重供給可変速風力タービンシステム(doubly-fed variable speed wind turbine system)の一種である。即ち、本実施形態の風力発電システム1は、巻線誘導発電機5が発生する電力がステータ巻線及びロータ巻線の両方から電力系統13に出力可能であるように構成されている。具体的には、巻線誘導発電機5は、そのステータ巻線が電力系統13に直接に接続され、ロータ巻線がAC−DC−ACコンバータ17を介して電力系統13に接続されている。
AC−DC−ACコンバータ17は、能動整流器14、DCバス15、及びインバータ16から構成されており、ロータ巻線から受け取った交流電力を電力系統13の周波数に適合した交流電力に変換する。能動整流器14は、ロータ巻線に発生された交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をDCバス15に出力する。インバータ16は、DCバス15から受け取った直流電力を電力系統13と同一の周波数の交流電力に変換し、その交流電力を電力系統13に出力する。巻線誘導発電機5が電力系統13に出力する出力電力は、能動整流器14及びインバータ16によって制御される。
AC−DC−ACコンバータ17は、電力系統13から受け取った交流電力をロータ巻線の周波数に適合した交流電力に変換する機能も有しており、風力発電システム1の運転の状況によってはロータ巻線を励起するためにも使用される。この場合、インバータ16は、交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をDCバス15に出力する。能動整流器14は、DCバス15から受け取った直流電力をロータ巻線の周波数に適合した交流電力に変換し、その交流電力を巻線誘導発電機5のロータ巻線に供給する。
風力発電システム1の制御系は、PLG(pulse logic generator)18と、主制御装置19と、電圧/電流センサ20と、コンバータ駆動制御装置21と、ピッチ制御装置22と、ヨー制御装置23とで構成されている。
PLG18は、巻線誘導発電機5の回転数ω(以下、「発電機回転数ω」という。)を測定する。
主制御装置19は、PLG18によって測定された発電機回転数ωに応答して有効電力指令P、無効電力指令Q、及びピッチ指令βを生成し、更に、風速計10によって測定された風速及び風向に応答してヨー指令を生成する。後に詳細に記述されるように、本実施形態の風力発電システム1の特徴の一つは、有効電力指令P及びピッチ指令βを生成するための制御アルゴリズムにある。
電圧/電流センサ20は、巻線誘導発電機5を電力系統13に接続する電力線に設けられており、電力系統13の電圧Vgrid(系統電圧)と、巻線誘導発電機5から電力系統13に出力される出力電流Igridとを測定する。
コンバータ駆動制御装置21は、有効電力指令P、無効電力指令Qに応答して電力系統13に出力される有効電力Pと無効電力Qを制御する。能動整流器14及びインバータ16のパワートランジスタのオンオフを制御する。具体的には、コンバータ駆動制御装置21は、電圧/電流センサ20によって測定された電力系統13の電圧Vgrid及び出力電流Igridから、電力系統13に出力される有効電力Pと無効電力Qを算出する。更にコンバータ駆動制御装置21は、有効電力Pと有効電力指令Pとの差、及び無効電力Qと無効電力指令Qとの差に応答してPWM制御を行ってPWM信号を生成し、生成されたPWM信号を能動整流器14及びインバータ16に供給する。これにより、電力系統13に出力される有効電力Pと無効電力Qが制御される。
ピッチ制御装置22は、主制御装置19から送られるピッチ指令βに応答して、ブレード8のピッチ角βを制御する。ブレード8のピッチ角βは、ピッチ指令βに一致するように制御される。
ヨー制御装置23は、主制御装置19から送られるヨー指令に応答して、ナセル旋回機構4を制御する。ナセル3は、ヨー指令によって指示された方向に向けられる。
電力系統13と巻線誘導発電機5とを接続する電力線には、AC/DCコンバータ24が接続されている。このAC/DCコンバータ24は、電力系統13から受け取った交流電力から直流電力を生成し、その直流電力を風力発電システム1の制御系、特に、ブレード8のピッチ角βを制御するために使用されるサーボバルブ12、主制御装置19、及びピッチ制御装置22に供給する。
更に、サーボバルブ12、主制御装置19、及びピッチ制御装置22に安定的に直流電力を供給するために、風力発電システム1には、充電装置27と非常用バッテリ28とを備えた無停電電源システム26が設けられている。風力発電システムの規格の要求により、たとえ系統電圧Vgridが低下した場合でも、巻線誘導発電機5が電力系統13に接続された状態が維持される必要がある。このためには、電力系統13の電圧が低下した場合でもブレード8のピッチ角が適切に制御され、これにより巻線誘導発電機5の回転数が所望値に維持される必要がある。このような要求を満足するために、系統電圧Vgridが所定の電圧まで低下した場合、無停電電源システム26がスイッチ25によってサーボバルブ12、主制御装置19、及びピッチ制御装置22に接続され、電力が、非常用バッテリ28からサーボバルブ12、主制御装置19、及びピッチ制御装置22に供給される。これにより、ブレード8のピッチ角の制御が維持される。非常用バッテリ28は、充電装置27に接続されている。充電装置27は、AC/DCコンバータ24から供給される直流電力によって非常用バッテリ28を充電する。
本実施形態の風力発電システム1の特徴の一つは、巻線誘導発電機5の出力電力Pの制御の最適化にある。図4は、有効電力指令Pと巻線誘導発電機5の回転数ωの間の関係を示すグラフであり、本実施形態の風力発電システム1において行われる出力電力Pの制御方法を示している。
発電機回転数ωが最小回転数ωminよりも小さい場合、巻線誘導発電機5の有効電力指令Pは、0に制御される。最小回転数ωminとは、巻線誘導発電機5によって発電が行われる最小の回転数であり、風力発電システム1の特性に応じて決定される。
発電機回転数ωが最小回転数ωminよりも大きい場合には、有効電力指令Pは、2つの制御モード:最適カーブ制御モードと定格値制御モードから選択された一方の制御モードで制御される。
最適カーブ制御モードでは、有効電力指令Pが、下記式:
opt=Kω, ・・・(1)
で定義される最適化電力値Poptに一致するように制御される。Kは、所定の定数である。風力発電システム1では、出力電力を発電機の回転数の3乗に比例して制御することが最適であることが知られており、第1の制御モードでは、出力電力Pが巻線誘導発電機5の発電機回転数ωの3乗に比例するように制御される。
最適カーブ制御モードは、主として、発電機回転数ωが最小回転数ωminよりも大きく、定格回転数ωmaxよりも小さい範囲で使用される。ここで、定格回転数ωmaxとは、巻線誘導発電機5が定常的に運転される回転数である。発電機回転数ωは、ブレード8のピッチ角の制御により、(それが可能である限り)定格回転数ωmaxに制御される。
一方、定格値制御モードでは、出力電力Pが定格電力Pratedに一致される。定格値制御モードは、主として、発電機回転数ωが定格回転数ωmax以上の範囲で使用される。定格風速で風が吹いている定常状態では、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxになるように制御される一方、出力電力Pは定格電力Pratedになるように制御される。
本実施形態の風力発電システム1の重要な特性は、定格値制御モードから最適カーブ制御モードへの遷移が、ブレード8のピッチ角βに応じて行われる点にある。発電機回転数ωが増加して定格回転数ωmaxに到達した場合には、電力制御が最適カーブ制御モードから定格値制御モードに遷移する。その一方で、発電機回転数ωが減少して定格回転数ωmaxよりも小さくなった場合には、まずピッチ角βが減少され、更にピッチ角βが最小値βminになって初めて、電力制御が定格値制御モードから最適カーブ制御モードに遷移される。即ち、有効電力指令Pが定格電力Pratedから最適化電力値Poptに切り換えられる。言い換えれば、ピッチ角βが最小値βminに到達しない限り(即ち、ピッチ指令βが最小値βminに到達しない限り)、有効電力指令Pが定格電力Pratedに維持される。ピッチ角βとは、ブレード8の翼弦とロータ回転面のなす角度であるから、ピッチ角βが最小値βminであるとは、ピッチ角βがファイン側の限界値に設定され、風車ロータ7の出力係数が最大である場合を意味していることに留意されたい。
ピッチ角βが最小値βminに到達するまで出力電力Pを定格電力Pratedに維持する制御は、短いなぎが発生した場合における出力電力の変動を抑制し、更に、発電効率の低下を防止するために有利である。上記のような制御では、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxよりも小さくなっても、それが短時間しか継続されなければ有効電力指令Pが定格電力Pratedに維持され、これにより、出力電力Pの変動が抑制される。加えて、本実施形態の風力発電システム1では、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxよりも小さくなったときに、ピッチ角βの減少による風車ロータ7の出力係数の増大ができなくなって初めて出力電力Pが定格電力Pratedから減少されるため、風車ロータ7の回転エネルギーが有効に活用され、発電効率を有効に向上させることができる。
ただし、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxよりも低い所定の閾値回転数ω’よりも小さくなった場合には、ピッチ角β(又はピッチ指令β)に無関係に、電力制御が定格値制御モードから最適カーブ制御モードに切り換えられる。発電機回転数ωが過小である場合に出力電力Pを定格電力Pratedに維持しようとすることは、制御の安定性を保つために好ましくない。好適には、閾値回転数ω’は、下記式:
ω’=(ω+ωmax)/2,
によって定められる回転数であることが好ましい。ここで、ωは、中間回転数であり、
ω=(ωmin+ωmax)/2,
として定義される。
図5は、図4に示されているような制御を実現するための主制御装置19の構成の例を示すブロック図である。図5は、主制御装置19の構成の一例を示しているに過ぎず、主制御装置19はハードウェア、ソフトウェア、及びハードウェアとソフトウェアの組み合わせの何れによって実現されてもよいことに留意されたい。主制御装置19は、有効電力指令P及び無効電力指令Qを生成する電力制御部31と、ピッチ指令βを生成するピッチ制御部32とを備えている。
電力制御部31は、選択器33と、減算器34と、PI制御部35と、パワー制限部36と、電力設定計算部37とを備えている。一方、ピッチ制御部32は、減算器38と、PI制御部39と、減算器40と、PI制御部41と加算器42を備えている。選択器33、減算器34、PI制御部35、パワー制限部36、電力設定計算部37、減算器38、PI制御部39、減算器40、PI制御部41、及び加算器42は、主制御装置19において使用されるクロックに同期してそれぞれに演算ステップを実行し、これにより、有効電力指令P、無効電力指令Q、及びピッチ指令βが生成される。
詳細には、選択器33は、発電機回転数ωに応答して、最小回転数ωminと定格回転数ωmaxとのうちの一方を電力制御回転数指令ω として選択する。より具体的には、選択器33は、発電機回転数ωが中間回転数ω以下である場合、電力制御回転数指令ω を最小回転数ωminに設定し、発電機回転数ωが中間回転数ωよりも大きい場合、電力制御回転数指令ω を定格回転数ωmaxに設定する。
減算器34は、発電機回転数ωから電力制御回転数指令ω を減じて偏差Δωを算出する。
PI制御部35は、偏差Δωに応答してPI制御を行い、有効電力指令Pを生成する。ただし、生成される有効電力指令Pの範囲は、パワー制限部36から供給される電力指令下限Pminと電力指令上限Pmaxによって制限される。即ち、有効電力指令Pは、電力指令下限Pmin以上、電力指令下限Pmax以下に制限される。
パワー制限部36は、発電機回転数ω及びピッチ指令βに応答して、PI制御部35に供給される電力指令下限Pmin及び電力指令下限Pmaxを決定する。パワー制限部36は、更に、定格電力Pratedをピッチ制御部32の減算器40に供給する。後述されるように、パワー制限部36によって生成される電力指令下限Pmin、電力指令下限Pmax、及び上述の選択器33によって決定される電力制御回転数指令ω を適切に決定することにより、図4に示されているような電力制御が行われる。
電力設定計算部37は、PI制御部35によって生成された有効電力指令Pと、風力発電システム1から出力される交流電力の力率を指定する力率指令とから無効電力指令Qを生成し、有効電力指令Pと無効電力指令Qとを出力する。上述されているように、有効電力指令Pと無効電力指令Qは、風力発電システム1から出力される有効電力P及び無効電力Qの制御に使用される。
一方、ピッチ制御部32の減算器38は、発電機回転数ωからピッチ制御回転数指令ωβ を減じて偏差Δωβを算出する。ピッチ制御回転数指令ωβ は、定格回転数ωmaxに一致しており、従って、偏差Δωβは、発電機回転数ωと定格回転数ωmaxとの差を表している。
PI制御部39は、偏差Δωβに応答してPI制御を行い、ピッチ指令基礎値βin を生成する。ピッチ角指令基礎値βin は、最終的に生成されるピッチ指令βを主として支配するが、ピッチ指令βに完全に一致するわけではない。ピッチ角指令基礎値βin は、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxに制御されるように決定される。
減算器40は、有効電力指令Pから定格電力Pratedを減じて偏差ΔPを生成し、PI制御部41は、偏差ΔPに応答してPI制御を行い、補正値Δβを生成する。加算器42は、ピッチ角指令基礎値βin と補正値Δβとを加算してピッチ指令βを生成する。
ピッチ制御部32の減算器40、及びPI制御部41は、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxまで増加して電力制御が最適カーブ制御モードから定格値制御モードに切り換えられるときに、ピッチ制御部32が電力制御に不所望に干渉することを抑制する役割を有している。ピッチ制御部32のPI制御部39は、発電機回転数ωを定格回転数ωmaxに調整しようとする。このため、電力として取り出すべき空力エネルギーが不所望に捨てられてしまう場合がある。そこで、本実施形態では、定格電力Pratedと有効電力指令Pとの差に応答してPI制御部41によって補正値Δβを生成し、この補正値Δβによってピッチ指令βが補正される。補正値Δβは、有効電力指令Pが定格電力Pratedよりも小さい場合に、即ち、偏差ΔP(=P−Prated)が負であると、ピッチ指令βがピッチ角指令基礎値βin よりも小さくなるように、即ち、ピッチ角βがよりファイン側になるように決定される。このような制御により、有効電力指令Pが定格電力Pratedに到達する直前では、ピッチ角βがフェザー側になることが抑制される。有効電力指令Pが定格電力Pratedに到達した後は、偏差ΔPは0となり、補正値Δβも0となる。
図6は、主制御装置19の電力制御部31及びピッチ制御部32の動作を示す表である。以下では、電力制御部31及びピッチ制御部32の動作が、以下の5つのケースに分けて説明される。
ケース(1):発電機回転数ωが最小回転数ωmin以上、中間回転数ω(=(ωmin+ωmax)/2)以下である場合
この場合、電力制御回転数指令ω は、選択器33によって最小回転数ωminに設定され、更に、電力指令下限Pmin及び電力指令上限Pmaxが、それぞれ、0、Popt(=Kω)に設定される。加えて、偏差Δω(=ω−ωmin)が正であり、且つ、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxになるように制御されるので、有効電力指令Pは、常に電力指令上限Pmaxに張り付くことになる。電力指令上限PmaxはPoptであるので、結果として、有効電力指令Pは、最適化電力値Poptに設定される。言い換えれば、電力制御は、最適カーブ制御モードに設定される。
この場合、ピッチ指令βは、ピッチ制御部32によって発電機回転数ωが定格回転数ωmaxになるように制御されるので、結果として、ピッチ指令βは、ファイン側の限界値に、即ち、最小ピッチ角βminに設定されることになる。
ケース(2):発電機回転数ωが、中間回転数ωを超えることによって、中間回転数ωより大きく回転数ω’よりも小さい範囲にある場合
この場合、電力制御回転数指令ω は、選択器33によって定格回転数ωmaxに設定され、更に、電力指令下限Pmin及び電力指令上限Pmaxが、それぞれ、Popt、Pratedに設定される。この場合、偏差Δω(=ω−ωmax)が負であり、且つ、発電機回転数ωがピッチ制御部32によって定格回転数ωmaxになるように制御されるので、有効電力指令Pは、常に電力指令下限Pminに張り付くことになる。電力指令下限PmaxはPoptであるので、結果として、有効電力指令Pは、最適化電力値Poptに設定される。言い換えれば、電力制御は、最適カーブ制御モードに設定される。
上述された補正値Δβによるピッチ指令βの補正は、ケース(2)において有効に機能する。ケース(2)では、有効電力指令Pが定格電力Pratedよりも小さいから、偏差ΔPが負になり、従って、補正値Δβも負になる。よって、ピッチ指令βがピッチ角指令基礎値βin よりも小さくなる、即ち、ピッチ角βがよりファイン側になる。これにより、空力エネルギーが、より有効に電力に変換される。
ケース(3):発電機回転数ωが閾値回転数ω’以上で、且つ、ピッチ角βが最小ピッチ角βminに到達している場合
この場合、電力制御回転数指令ω が選択器33によって定格回転数ωmaxに設定され、電力指令下限Pmin及び電力指令上限Pmaxが、それぞれ、Popt、定格電力Pratedに設定される。
発電機回転数ωが閾値回転数ω’以上で、且つ、定格回転数ωmaxよりも小さい範囲にある場合には、偏差Δω(=ω−ωmax)が負であり、有効電力指令Pは、常に電力指令下限Pminに張り付くことになる。電力指令下限PmaxはPoptであるので、結果として、有効電力指令Pは、最適化電力値Poptに設定される。
発電機回転数ωが定格回転数ωmaxよりも大きくなると、偏差Δω(=ω−ωmax)が正であり、有効電力指令Pは、常に電力指令上限Pmaxに張り付くことになる。従って、有効電力指令Pは、定格電力Pratedに設定される。言い換えれば、電力制御は、定格値制御モードに設定される。
一方、ピッチ指令βは、発電機回転数ωが定格回転数ω’M以上で、且つ、定格回転数ωmaxよりも小さい範囲にある場合には、PI制御によって発電機回転数ωが定格回転数ωmaxになるように制御されるので、結果として、ピッチ指令βは、ファイン側の限界値に、即ち、最小ピッチ角βminに設定されることになる。
発電機回転数ωが定格回転数ωmaxよりも大きくなり、且つ、有効電力指令Pが、定格電力Pratedに到達していないときには、上述された補正値Δβによるピッチ指令βの補正が、有効に機能する。有効電力指令Pが定格電力Pratedよりも小さいから、偏差ΔPが負になり、従って、補正値Δβも負になる。よって、ピッチ指令βがピッチ角指令基礎値βin よりも小さくなる、即ち、ピッチ角βがよりファイン側になる。これにより、空力エネルギーが、より有効に電力に変換される。有効電力指令Pが、定格電力Pratedに到達すれば、PI制御によって発電機回転数ωが定格回転数ωmaxになるように制御される。
ケース(4):発電機回転数ωが閾値回転数ω’以上で、且つ、ピッチ角βが最小ピッチ角βminに到達していない場合
この場合、電力制御回転数指令ω が選択器33によって定格回転数ωmaxに設定される。更に、電力指令下限Pminが、1演算ステップ前の有効電力指令Pと、現演算ステップの電力指令上限Pmaxとのうちの小さい方に設定され、電力指令上限Pmaxが定格電力Pratedに設定される。この結果、有効電力指令Pは、定格電力Pratedに設定される。言い換えれば、電力制御は、定格回転数ωmaxよりも小さなっても定格値制御モードに維持される。ピッチ角βが最小ピッチ角βminに到達しているか否かは、ピッチ指令βが最小ピッチ角βminに一致しているか否かに基づいて判断される。
一方、ピッチ指令βは、発電機回転数ωが閾値回転数ω’以上で、且つ、定格回転数ωmaxよりも小さい範囲にある場合には、PI制御によって発電機回転数ωが定格回転数ωmaxになるように制御されるので、結果として、ピッチ指令βは、ファイン側の限界値に、即ち、最小ピッチ角βminに設定されることになる。
発電機回転数ωが定格回転数ωmaxよりも大きくなり、且つ、有効電力指令Pが、定格電力Pratedに到達していないときには、上述された補正値Δβによるピッチ指令βの補正が、有効に機能する。有効電力指令Pが定格電力Pratedよりも小さいから、偏差ΔPが負になり、従って、補正値Δβも負になる。よって、ピッチ指令βがピッチ角指令基礎値βin よりも小さくなる、即ち、ピッチ角βがよりファイン側になる。これにより、空力エネルギーが、より有効に電力に変換される。有効電力指令Pが、定格電力Pratedに到達すれば、PI制御によって発電機回転数ωが定格回転数ωmaxになるように制御される。
ケース(5):発電機回転数ωが、閾値回転数ω’よりも小さくなって、中間回転数ωよりも大きい範囲にある場合
この場合、電力制御回転数指令ω は、選択器33によって定格回転数ωmaxに設定され、更に、電力指令下限Pmin及び電力指令上限Pmaxが、それぞれ、Popt、Pratedに設定される。この場合、偏差Δω(=ω−ωmax)が負であり、且つ、発電機回転数ωがピッチ制御部32によって定格回転数ωmaxになるように制御されるので、有効電力指令Pは、常に電力指令下限Pminに張り付くことになる。電力指令下限PmaxはPoptであるので、結果として、有効電力指令Pは、最適化電力値Poptに設定される。言い換えれば、電力制御は、定格値制御モードから最適カーブ制御モードに設定される。
図7は、本実施形態における風力発電システム1の動作の一例を示すグラフである。風力発電システム1の動作が開始された後、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxに到達するまで、有効電力指令Pは最適化電力値Poptに設定される(上述のケース(2))。これにより、出力される有効電力Pは、発電機回転数ωの増加と共に増加される。発電機回転数ωを定格回転数ωmaxに到達させるために、ピッチ指令βは最小ピッチ角βminに設定される。
発電機回転数ωが定格回転数ωmaxを超えると、有効電力指令Pは定格電力Pratedに設定される(上述のケース(3))。これにより、出力される有効電力Pは、定格電力Pratedに維持される。発電機回転数ωが定格回転数ωmaxを超えているので、ピッチ指令βが増加し、ピッチ角βがフェザー側に移行する。
短いなぎが発生すると、発電機回転数ωが急減する。ピッチ制御部32は、発電機回転数ωを定格回転数ωmaxに維持しようとして、ピッチ指令βを減少させ、これにより、ピッチ角βを減少させる、即ち、ファイン側に移行させる。有効電力指令Pは、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxよりも小さくなってもピッチ角βが最小ピッチ角βminに到達しない限り定格電力Pratedに維持される。従って、出力される有効電力Pも定格電力Pratedに維持される。
図7の動作では、ピッチ角βが最小ピッチ角βminに到達する前に発電機回転数ωが定格回転数ωmaxに再度に復帰しており、従って、有効電力Pは定格電力Pratedに維持される。このように、本実施形態の風力発電システム1では、短いなぎが発生した場合における出力電力の変動が抑制される。更に、本実施形態の風力発電システム1では、発電機回転数ωが定格回転数ωmaxよりも小さくなったときに、ピッチ角βの減少による風車ロータ7の出力係数の増大ができなくなって初めて出力電力Pが定格電力Pratedから減少されるため、風車ロータ7の回転エネルギーが有効に活用され、発電効率を有効に向上させることができる。
本実施形態の風力発電システム1は、更に、様々な運転状況に応じた様々な制御方法を実行するように構成されることが好ましい。図8は、様々な運転状況に応じた制御を行う風力発電システム1の好適な構成を示している。
第1に、図8の風力発電システム1では、主制御装置19は、風速計10によって計測された風速及び風向によってガスト(突風)の発生を検知する。風速及び風向の代わりに、発電機回転数に基づいてガストの発生を検出してもよい。ガストの発生が検知された場合には、風車ロータ7の回転数が過剰に増大しないように、有効電力指令Pが制御される。具体的には、図9に示されているように、風速及び風向によってガストの発生が検知されると(ステップS01)、風車ロータ7の加速度(ロータ加速度)又は風車ロータ7の回転数(ロータ回転数)が監視される。ロータ加速度又はロータ回転数が所定の制限値を超えると(ステップS02)、有効電力指令Pが増大される(ステップS03)。有効電力指令Pが直前まで定格電力Pratedに制御されていた場合には、有効電力指令Pは、定格電力Pratedよりも大きくなるように制御される。これにより、風車ロータ7の回転エネルギーが電気エネルギーに変換されて電力系統13で消費される。これにより、風車ロータ7が減速される。
また、図8の風力発電システム1は、ブレード8を駆動するピッチ駆動機構に故障が検知された場合には、ナセル旋回機構4によって風車ロータ7の回転面を風上方向から退避させ、これにより、風車ロータ7を停止させるように構成されている。この目的を達成するために、ピッチ制御装置22が、図2の油圧シリンダ11及び/又はサーボバルブ12の故障を検出することができるように構成されている。主制御装置19は、油圧シリンダ11及び/又はサーボバルブ12の故障が検出されると、それに応答してヨー指令を生成する。
図10は、風車ロータ7の回転面が風上方向から退避される手順を示している。ピッチ制御装置22によって油圧シリンダ11及び/又はサーボバルブ12の故障が検出されると(ステップS06)ピッチ故障信号が活性化される。主制御装置19は、ピッチ故障信号の活性化に応答してヨー指令をナセル3のヨー角を制御し、これにより、風車ロータ7の回転面を風上方向から退避させる(ステップS07)。風上方向は、風速計10によって計測された風向によって判断可能である。風車ロータ7の回転面が風上方向から退避されることによって、風車ロータ7に流入する風の風速が減少され、回転トルクが減少される(ステップS08)。この結果、風車ロータ7が減速されて停止される。
加えて、図8の風力発電システム1は、系統電圧Vgridの過剰な増加及び減少が発生したときに電力系統13に供給される無効電力Qを制御し、更に、その無効電力Qに応じてピッチ制御が行われるように構成されている。図11は、このような制御の手順を示すフローチャートである。
系統電圧Vgridが所定の定格電圧VratedのX%を超えた場合(Xは、100よりも大きい所定値)、又は、所定の定格電圧VratedのY%よりも小さくなった場合(Yは、100よりも小さい所定値)(ステップS11)、電力制御部31に与えられる力率指令が修正される(ステップS12)。修正された力率指令は、電力系統13の制御システムから与えられることが可能であり、また、主制御装置19自身が系統電圧Vgridに応じて力率指令を修正することも可能である。これにより、系統電圧Vgridが所定の定格電圧VratedのX%を超えた場合には無効電力指令Qが減少され、系統電圧Vgridが所定の定格電圧VratedのY%を超えた場合には無効電力指令Qが増加される。風力発電システム1から電力系統13に供給される皮相電力Sは一定であるから、無効電力指令Qが減少されるときには有効電力指令Pが増加され、無効電力指令Qが増加されるときには有効電力指令Pが減少されることになる。AC−DC−ACコンバータ17が有効電力指令P及び無効電力指令Qに応答して制御されることにより、電力系統13に供給される無効電力Qが制御される(ステップS13)。
無効電力指令Qが大きく増大された場合には、有効電力指令Pが減少されることになり、これは、風力発電システム1の出力を低下させる。このような不都合を回避するために、無効電力指令Qの増大が所定の増加量よりも大きい場合には、ピッチ指令βを減少させることにより(即ち、ピッチ指令βがファイン側に移行されることにより)、有効電力Pが増大される(ステップS15)。
無効電力指令Qが大きく減少された場合には、有効電力指令Pが増加されることになり、これは、風力発電システム1の出力を不必要に増加させる。このような不都合を回避するために、無効電力指令Qの減少が所定の減少量よりも大きい場合には、ピッチ指令βを増加せることにより(即ち、ピッチ指令βがフェザー側に移行されることにより)、有効電力Pが減少される。
更に、図8の風力発電システム1は、非常用バッテリ28が充電される間、出力する有効電力Pを増大するように構成されている。これは、非常用バッテリ28の充電に使用される電力の分を補償するためである。具体的には、図12に示されているように、充電装置27が非常用バッテリ28の充電を開始すると(ステップS21)、充電装置27は、充電開始信号を活性化する。主制御装置19は、充電開始信号の活性化に応答して、有効電力指令Pを増加させる(ステップS22)。有効電力指令Pの増加量は、非常用バッテリ28の充電に使用される電力の量と同じに設定される。充電が行われない場合には、PI制御部35によって生成された有効電力指令PがAC−DC−ACコンバータ17の制御に使用される。
なお、本発明は、上述されている実施形態に限定されて解釈されてはならない。例えば、本実施形態の風力発電システム1は、2重供給可変速風力タービンシステムであるが、本発明は、風車ロータの回転数及びピッチ角の両方が可変である他の形式の風力発電システムにも適用可能である。例えば、本発明は、発電機によって発電された交流電力の全てが、AC−DC−ACコンバータによって電力系統の周波数に合わせた交流電力に変換されるような風力発電システムに適用可能である。
また、非常用バッテリ28の充電は、電力系統から受け取った電力ではなく、発電機から出力される電力によって行われることも可能である。
更に、風車ロータ7の回転数は、発電機回転数ωに依存しているから、発電機回転数ωの代わりに風車ロータ7の回転数を使用してもよいことは、当業者には自明的である。例えば、本実施形態のように、風車ロータ7がギア6を介して巻線誘導発電機5に接続される場合には、風車ロータ7の回転数は、発電機回転数ωに一対一に対応している。また、ギア6の代わりにトロイダル変速機のような無段階変速機が使用される場合でも、発電機回転数ωが風車ロータ7の回転数の増大に伴って増大されるから、発電機回転数ωの代わりに風車ロータ7の回転数を使用することができる。
図1は、本発明の一実施形態における風力発電システムの構成を示す側面図である。 図2は、本実施形態の風力発電システムのピッチ駆動機構の構成を示すブロック図である。 図3は、本実施形態の風力発電システムの構成を示すブロック図である。 図4は、本実施形態の風力発電システムにおいて行われる電力制御の方法を示すグラフである。 図5は、本実施形態の風力発電システムの主制御装置の構成の一例を示すブロック図である。 図6は、本実施形態の風力発電システムの電力制御部及びピッチ制御部の動作を説明する表である。 図7は、本実施形態の風力発電システムの動作の一例を示すグラフである。 図8は、本実施形態の風力発電システムの他の構成を示すブロック図である。 図9は、本実施形態の風力発電システムで行われる好適な制御のフローチャートである。 図10は、本実施形態の風力発電システムで行われる他の好適な制御のフローチャートである。 図11は、本実施形態の風力発電システムで行われる更に他の好適な制御のフローチャートである。 図12は、本実施形態の風力発電システムで行われる更に他の好適な制御のフローチャートである。
符号の説明
1:風力発電システム
2:タワー
3:ナセル
4:ナセル旋回機構
5:巻線誘導発電機
6:ギア
7:風車ロータ
8:ブレード
9:ハブ
10:風速計
11:油圧シリンダ
12:サーボバルブ
13:電力系統
14:能動整流器
15:DCバス
16:インバータ
17:AC−DC−ACコンバータ
18:PLG
19:主制御装置
20:電圧/電流センサ
21:コンバータ駆動制御装置
22:ピッチ制御装置
23:ヨー制御装置
24:AC/DCコンバータ
25:スイッチ
26:無停電電源システム
27:充電装置
28:非常用バッテリ
31:電力制御部
32:ピッチ制御部
33:選択器
34:減算器
35:PI制御部
36:パワー制限部
37:電力設定計算部
38:減算器
39:PI制御部
40:減算器
41:PI制御部
42:加算器

Claims (10)

  1. ピッチ角が可変であるブレードを備える風車ロータと、
    前記風車ロータによって駆動される発電機と、
    前記風車ロータ又は前記発電機の回転数に応答して、前記発電機の出力電力と前記ブレードの前記ピッチ角とを制御する制御装置
    とを具備し、
    前記制御装置は、前記回転数が増大して所定の定格回転数に到達するまでの間、所定の電力−回転数曲線に従って前記出力電力を制御する第1制御を行い、前記回転数が前記定格回転数を超えたとき前記出力電力を所定の定格電力に制御する第2制御を行い、
    前記制御装置は、一旦、前記第2制御を行う状態に設定された後で前記回転数が前記定格回転数よりも小さくなったとき、前記ピッチ角に応答して前記第2制御を行う状態を維持し、又は前記第1制御を行う状態に遷移する
    風力発電システム。
  2. 請求項1に記載の風力発電システムであって、
    前記制御装置は、一旦、前記第2制御を行う状態に設定された後で前記回転数が前記定格回転数よりも小さくなったとき、前記ピッチ角が所定のピッチ角よりも大きい場合には前記第2制御を行う状態を維持し、前記ピッチ角が前記所定のピッチ角に到達して初めて前記第1制御を行う状態に遷移する
    風力発電システム。
  3. 請求項2に記載の風力発電システムであって、
    前記制御装置は、一旦、前記第2制御を行う状態に設定された後で前記回転数が前記定格回転数よりも小さい所定の閾値回転数よりも小さくなったとき、前記ピッチ角に無関係に前記第1制御を行う状態に遷移する
    風力発電システム。
  4. 請求項1に記載の風力発電システムであって、
    前記制御装置は、前記回転数と所定の定格回転数との差、及び前記出力電力と前記定格電力との差に応答して前記ピッチ角を制御する
    風力発電システム。
  5. 請求項4に記載の風力発電システムであって、
    前記制御装置は、前記出力電力が前記定格電力よりも小さい場合に前記ピッチ角が減少されるように前記ピッチ角を制御する
    風力発電システム。
  6. 請求項1に記載の風力発電システムであって、
    前記制御装置は、ガストを検出した場合、前記回転数に応答して前記発電機の出力電力を増加させる
    風力発電システム。
  7. 請求項1に記載の風力発電システムであって、
    更に、
    風車ロータの回転面の向きを旋回させる旋回機構と、
    風上方向を検出する風向検出器
    とを備え、
    前記風車ロータは、前記ブレードを駆動するピッチ駆動機構を備え、
    前記制御装置は、前記ピッチ駆動機構の故障を検出したとき、前記風車ロータの回転面が前記風上方向から退避されるように前記旋回機構を制御する
    風力発電システム。
  8. 請求項1に記載の風力発電システムであって、
    前記制御装置は、前記発電機に接続された電力系統の電圧に応答して前記発電機から前記電力系統に出力される無効電力を制御し、且つ、前記無効電力に応じて前記ピッチ角を制御する
    風力発電システム。
  9. 請求項1に記載の風力発電システムであって、
    更に、
    非常用バッテリと、
    前記電力系統から受け取った電力によって前記非常用バッテリを充電する充電装置
    とを具備し、
    前記風車ロータは、前記ブレードを駆動するピッチ駆動機構を備え、
    前記非常用バッテリは、発電機に接続された電力系統の電圧が低下したときに前記ピッチ駆動機構と前記制御装置に電力を供給し、
    前記制御装置は、前記非常用バッテリが充電されている間、前記出力電力を増加させるように前記出力電力を制御する
    風力発電システム。
  10. ピッチ角が可変であるブレードを備える風車ロータと、
    前記風車ロータによって駆動される発電機
    とを備える風力発電システムの制御方法であって、
    前記風車ロータ又は前記発電機の回転数に応答して、前記発電機の出力電力と前記ブレードの前記ピッチ角とを制御する制御ステップ
    を具備し、
    前記制御ステップは、
    (A)前記回転数が増大して所定の定格回転数に到達するまでの間、所定の電力−回転数曲線に従って前記出力電力を制御する第1制御が行うステップと、
    (B)前記回転数が前記定格回転数を超えたとき前記出力電力を所定の定格電力に制御する第2制御を行うステップと、
    (C)一旦、前記第2制御を行う状態に設定された後で前記回転数が前記定格回転数よりも小さくなったとき、前記ピッチ角に応答して前記第2制御を行う状態を維持し、又は前記第1制御を行う状態に遷移するステップ
    とを備える
    風力発電システムの制御方法。
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