JP2009068359A - ガスタービンエンジンの性能推定システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジンのある作動点で最適に設計されたカルマンフィルタ・ゲインKと、実機エンジンを忠実にモデル化した非線形ダイナミックシミュレーション・モデルとから成る一定ゲイン拡張カルマンフィルタ(CGEKF)を利用して、観測変数と観測変数推定値との間に差が生じる場合はモデルの状態変数の一部分を成すチューニングパラメータをその差が最小となるように調整することにより、その非線形ダイナミックシミュレーション・モデルを常に実機に忠実なモデルとする。
【選択図】図1
Description
上記のように経年劣化、損傷等によるエンジンの性能変化があった場合に、エンジン制御系を適切に調整し最適な制御を行うためには、常にエンジンの性能状態を監視し、性能変化を推定する仕組みが必要となる。これまでガスパスアナリシスと呼ばれるエンジンのガス通過要素の性能変化を同定するコンディションモニタリングの手法や、カルマンフィルタを利用したエンジンの性能推定の方法等が実用化されている。
しかしこれらの手法はいずれも線形理論に基づいた手法であり、航空用エンジンのような非線形システムには適用できないため、通常、線形区分法によりあらかじめシステム・マトリクス等の必要データを計算しデータテーブルを作成しておき、実行時にはこのデータテーブルを内挿して使用する手法を採用している。このデータテーブルは、制御変数、状態変数、計測変数の数、更には飛行高度・飛行マッハ数などの異なるエンジン作動点の近似点数によって増大し、航空用エンジンの作動範囲を網羅しようとすると莫大な点数のデータが必要となり実用的でない。また、線形システム理論に基づいたカルマンフィルタの欠点を補うため、実機エンジンに忠実な非線形ダイナミックシミュレーション・モデル等を利用し、運転条件が変わる都度カルマンフィルタ・ゲインを再計算する拡張カルマンフィルタの手法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この拡張カルマンフィルタ手法を用いた場合、莫大な点数のデ一タを用意しておく必要はないが、計算負荷の高いカルマンフィルタ・ゲインの計算を都度行う必要があり計算能力の高い計算機器が必要となるが、信頼性が最優先される航空エンジン組み込み機器等においてはこのような計算能力の高い機器を用いるのは現実的でない。
しかしながら、信頼性が最優先される航空エンジン組み込み機器においては、このような計算能力の高い機器を用いるのは現実的でないという問題がある。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、エンジンの制御器に組み込み可能であり且つオンラインでリアルタイムにエンジンの計測不能項目を計測可能項目から推定し、その推定結果を用いて適切なエンジン制御を実現するガスタービンエンジンの性能推定システムを提供することを目的とする。
上記ガスタービンエンジンの性能推定システムは、観測変数(ym)と観測変数の推定値
との差が最小となるようにカルマンフィルタ・ゲイン(K)をエンジンの動作中にリアルタイムに更新するのではなく、あるエンジンの作動点でその差が最小となるように設計された一定カルマンフィルタ・ゲインを、実機エンジンをモデル化した非線形ダイナミックシミュレーション・モデルに組み合わせ、そして観測変数とその推定値との間に差が生じる場合はその差が最小となるようにモデルの状態変数の一部分を成すチューニングパラメータによって非線形ダイナミックシミュレーション・モデルを逐次チューニングすることによって常に実機に忠実なモデルとする。従って、上記非線形ダイナミックシミュレーション・モデルを必要に応じて逐次チューニングすることによって、エンジンの動作中に計算負荷の高いカルマンフィルタ・ゲインを再計算・再設計する必要がなくなり、その結果、計算機に対する負荷が好適に軽減され上記性能システムをエンジンの制御器に組み込むことが可能となる。また、非線形ダイナミックシミュレーション・モデルを逐次チューニングすることによって、計測可能項目と計測不能項目との間の相関関係を変化させる経年劣化や損傷等の影響が十分に反映された高精度な非線形ダイナミックシミュレーション・モデルとすることが可能となる。従って、この高精度な非線形ダイナミックシミュレーション・モデルから実機では計測不能な項目(観測不能変数)を高精度に推定することによって上記の目的を達成することが出来るようになる。つまり、エンジンのある作動点で最適に設計されたカルマンフィルタ・ゲインは、他の全作動点に対しても有効であり、そして観測変数と観測変数の推定値との間に差が生じる場合はモデルの状態変数の一部分を成すチューニングパラメータを使用してその差が最小となるように非線形ダイナミックシミュレーション・モデルを調整することにより、常に実機に忠実なモデルとする。その結果、上記性能推定システムは、計算負荷の高いカルマンフィルタ・ゲインの更新を都度行う必要がなくなり、計算機に対する負荷を好適に軽減すると共にエンジンの制御器に組み込むことが可能となる。
上記ガスタービンタービンエンジンの性能推定システムでは、上記構成とすることにより、オンラインでリアルタイムにエンジンの計測不能項目を計測可能項目から好適に推定することが出来るようになる。
上記ガスタービンエンジンの性能推定システムでは、上記構成とすることにより、これまで実機においては不可能であった推力や燃料消費率等の観測不能変数の推定値を入力または制御目標としてフィードバック制御器に組み込むことが可能となり、その結果、観測することができないパラメータの変化をも考慮した高精度なエンジンの制御が可能となる。
また、計測項目についても非計測項目として他の計測パラメータから推定し、両者を比較することによりセンサ計測値異常などを検知することが可能となる。
の差は、エンジンのある1又は複数の動作状態において最小になるように設計されたカルマンフィルタ・ゲインKによって増幅され、一定ゲイン拡張カルマンフィルタ(CGEKF)内の非線形ダイナミックシミュレーション・モデルに入力される。制御変数・環境変数uもまた入力される。非線形ダイナミックシミュレーション・モデル内では、エンジンの状態変数とチューニング変数(パラメータ)とから成る拡張状態変数
、観測変数推定値
および観測不能変数推定値
がそれぞれ計算される。一連の計算が繰り返されることにより、観測変数ymと観測変数推定値
の差が最小となり、観測不能変数の最尤推定値が得られる。
をフィードバックしてエンジンを制御することができる。
非線形ジェットエンジンのダイナミクスは、
は、
は、
は作動点の非線形関数である。作動点が移動する場合、数(5)を繰り返し解かなければならず、制御計算機への負荷が過剰になるため、代表的作動点において求められたカルマンフィルタ・ゲイン
を全作動領域に適応することにする。これを一定ゲイン拡張カルマンフィルタ(CGEKF)と呼ぶ。
1軸ターボジェットエンジンのエンジン状態変数Xeは、
Xe=(N,m3,u3,m4,u4,m5,u5)T ・・・・(数(7))
ただし、N:ロータ回転速度、m3:コンプレッサ出口ボリュームの蓄積質量、u3:コンプレッサ出口ボリュームの蓄積内部エネルギー、m4:燃焼器ボリュームの蓄積質量、u4:燃焼器ボリュームの蓄積内部エネルギー、m5:ノズルボリュームの蓄積質量、u5:ノズルボリュームの蓄積内部エネルギー。
エンジン要素特性変化を同定するため、チューニング変数Xcは、
Xc=(Gc,ηc,Gt,ηt,An)T ・・・・(数(8))
とする。ただし、Gc:コンプレッサ流量パラメータ、ηc:コンプレッサ効率パラメータ、Gt:タービン流量パラメータ、ηt:タービン効率パラメータ、An:ノズル面積パラメータ。カルマンフィルタは状態変数を推定するものであるため、
X=(Xe T,Xc T)T
=(N,m3,u3,m4,u4,m5,u5,Gc,ηc,Gt,ηt,An)T ・・・・(数(10))
と定義する。CGEKFは、計測値ymと計測値の推定値
に差がある時、それを0にするようにXeとXcとを変化させる。例えば、経年性能劣化や異物吸い込み等でエンジン要素特性が変化すると、実機エンジンとモデルエンジンに差異が生じ、計測値とモデルエンジンによる推定値に差がでることになるが、CGEKFはその差をなくす最も合理的なXcの変化を算出する。
制御変数uは、ここでは一変数のみで、
u=Wf ・・・・(数(11))
ただし、Wf:燃料流量。計測可能変数ymは任意にとることができるが、ここでは、
ym=(N,P3,T3,P6,T6)T ・・・・(数(12))
とする。ただし、P3:コンプレッサ出口圧力、T3:コンプレッサ出口温度、P6:タービン出口圧力、T6:タービン出口温度。計測不能変数yuは、制御やモニタリングに有用な変数として、
yu=(F,TIT,SFC,ηc,ηt,・・・)T ・・・・(数(13))
とする。ただし、F:推力、TIT:タービン入口温度、SFC:燃料消費率、ηc:コンプレッサ効率、ηt:タービン効率。
各変数の次元は、次のようにまとめられる。
(a)エンジン状態変数 Xe=7
(b)同定したいエンジン変数 Xc=5
(c)計測可能変数 ym=5
(d)制御変数 u=1
カルマンフィルタが存在する必要条件は、モデルが可観測(Observable)であることである。ここで考えている1軸ターボジェットエンジンの場合、
(Xcの次元)≦(ymの次元) ・・・・(数(14))
が必要条件となる。すなわち、同定したい変数の数は、計測点数に等しいか、少なくなければならない。上の例では、両者とも5であるので、この必要条件は満足している。
(1)図1のCGEKFモデルを作成し、代表的作動点における拡張システム行列A,B,C,Dを導出する。
(2)数値計算上の問題を避けるため、拡張状態変数、制御変数、計測可能変数、計測不能変数のスケーリング値を設定し、拡張システム行列A,B,C,Dを規準化する。
(3)システムノイズ共分散行列Q、計測ノイズ共分散行列Rおよびシステムノイズ伝達行列Gを仮定する。Rは計測信号の統計的性質であり、設定することはできるが、Q,Gを明確に設定することは困難である。従って、Q,Gはカルマンフィルタ設計時のチューニングのための自由パラメータとする。ノイズ特性、応答速度等を勘案して設定する。
(4)行列(A,C)でシステムの可観測性(Observability)を確認し、カルマンフィルタ・ゲインKを求める。
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