JP2009066845A - 筆記具又は筆記具用レフィル - Google Patents

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淳 須貝
Fumihiro Kimura
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Abstract

【課題】 筆記具が高温環境下に置かれることで収容するインキが消色している場合であっても、インキの状態が外側から容易に確認できるので、ユーザーがインキ切れや筆記不良と誤解することなく使用できる利便性に優れた筆記具や筆記具用レフィルを提供する。
【解決手段】 加熱により消色或いは変色可能なインキを収容する筆記具であって、外側から視認可能な位置に熱変色性温度表示部を設けてなる筆記具。加熱により消色或いは変色可能なインキを収容する筆記具用レフィルであって、外側から視認可能な位置に熱変色性温度表示部を設けてなる筆記具用レフィル。前記温度表示部が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含む。
【選択図】 図3

Description

本発明は筆記具又は筆記具用レフィルに関する。詳細には、筆跡を加熱することにより消色或いは変色可能な筆記具又は筆記具用レフィルに関する。
従来、変色性インキを収容する筆記具において、筆跡の色調がどの温度帯を表す色調であるかを表示する温度表示部を軸筒に設けた、インジケーター機能を呈する筆記具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−89576号公報
前記筆記具は、温度帯に応じて3種類の色調(二色の着色状態と消色状態)を呈するインキを収容しており、筆記した用紙等を所望箇所に密接することで温度帯に応じて特定の色調に変色するものである。その際、軸筒に設けられる温度表示部で筆跡の色調を確認することで、密接箇所の温度を視覚的に確認できるものである。
そのため、筆記時の環境温度によっては、筆記した際にインキが消色しており、ユーザーが形成する筆跡を確認できないことがあるため、使い難いものとなっていた。
特に、収容するインキが外側から視認できない形態の筆記具においては、インキ切れや筆記不良等と誤解されることがあった。
本発明は、筆記具が高温環境下に置かれることで収容するインキが消色している場合であっても、インキの状態が外側から容易に確認できるので、ユーザーがインキ切れや筆記不良と誤解することなく使用できる利便性に優れた筆記具や筆記具用レフィルを提供するものである。
本発明は、加熱により消色或いは変色可能なインキを収容する筆記具であって、外側から視認可能な位置に熱変色性温度表示部を設けてなる筆記具を要件とする。
更に、加熱により消色或いは変色可能なインキを収容する筆記具用レフィルであって、外側から視認可能な位置に熱変色性温度表示部を設けてなる筆記具用レフィルを要件とする。
更に、前記インキが、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した、加熱により有色から無色に色変化するマイクロカプセル顔料Aを含むこと、前記マイクロカプセル顔料Aが、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、両状態が共存できる保持温度域が常温域にある顔料であり、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度Tに達すると消色し始め、温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、前記温度Tより低い温度Tに達すると着色し始め、温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に有色状態となり、前記温度Tと温度Tの間の温度域で有色状態或いは無色状態が保持できるヒステリシス特性を示し、温度Tは−30〜10℃の範囲にあり、温度Tが30〜80℃の範囲にあることを要件とする。
更に、前記温度表示部が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料Bを含むこと、前記マイクロカプセル顔料Bが、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相間の互変性を呈し、両相が共存できる二相保持温度域が常温域にある顔料であり、該顔料は第1色相状態にあって温度が上昇する過程では、第2の温度T3′に達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度T3′より高い温度T4′以上の温度域で完全に第2色相となり、第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度T3′より低い第1の温度T2′に達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度T2′より低い温度T1′以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度T2′と第2の温度T3′の間の温度域で第1色相と第2色相の両相が共存可能であるヒステリシス特性を示し、温度T4′が筆記具インキの温度Tに対して±5℃差以内であること、前記マイクロカプセル顔料Bの温度T1′が、筆記具インキの温度Tに対して±5℃差以内にあることを要件とする。
更には、前記温度表示部が、筆記具外装又はレフィルに設けられること、前記筆記具が擦過部材を備えてなることを要件とする。
本発明により、収容するインキの状態が表示部で確認できるので、インキが消色している場合であっても、ユーザーがインキ切れや筆記不良と誤解することなく使用できる利便性に優れた筆記具や筆記具用レフィルとなる。
前記筆記具や筆記具用レフィルに収容される、加熱により消色或いは変色可能なインキとしては、従来汎用のものが用いられ、特に、インキ中に配合される着色剤としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた顔料(マイクロカプセル顔料A)が有効である。
前記可逆熱変色性組成物のうち、加熱により消色する組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する組成物を例示できる。
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報、特開2005−1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態が、特定温度域で記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
前記組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について詳しく説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する最低温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは完全発色状態を保持できる最高温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは完全消色状態を保持できる最低温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する最高温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記TとT間の温度域であり、第1色相と第2色相の両相が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるTとTの間の温度域が実質変色温度域(二相保持温度域)である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
前記した組成物のうち、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を用いることにより、第1の状態(有色)から第2の状態(無色)に色彩を簡易に変色させることができ、常態と異なる色彩を互変的に視覚させることができる。
具体的には、完全発色温度Tを冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−30〜10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度Tを摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち30〜80℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜60℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
本発明で適用される筆記具は、有色状態の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含むインキを収容したものであり、前記筆記具により形成された筆跡が指触等では容易に消色されない構成であることが好ましく、しかも、消色した筆跡は再び現出しないことが好ましい。
従って、前述したTとTの温度設定は極めて重要な要件となる。
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、従来より公知のジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
尚、前記フェノール性水酸基を有する化合物として、少なくとも3以上のベンゼン環を有し、且つ、分子量が250以上、好ましくは分子量が250乃至500のフェノール性水酸基を有する化合物、又は、一般式(COH)S(式中、Rは炭素数1乃至8のアルキル基を示し、Rは水素又は炭素数1乃至8のアルキル基を示す。)で示されるフェノール性水酸基を有する化合物を用いると、消色状態から発色状態に移行する際の変色感度をより鋭敏にすることができる。具体的には、図2に示すように完全消色状態を示す温度(T)から発色を開始する温度(T)を経て完全発色温度を示す温度(T)に達する際の変色挙動において、発色を開始する温度(T)が高温側にシフトして徐々に発色する挙動を示さず、図1のように発色を開始する温度(T)と完全発色温度を示す温度(T)の温度差が小さく、消色状態から発色状態に鋭敏に移行する挙動を示し易くなる。
前記少なくとも3以上のベンゼン環を有し、且つ、分子量が250以上のフェノール性水酸基を有する化合物としては、
4,4′,4″−メチリデントリスフェノール、
2,6−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェノール)メチル〕−4−メチルフェノール、
4,4′−〔1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン〕ビスフェノール、
4,4′,4″−エチリデントリス〔2−メチルフェノール〕、
4,4′−〔(2−ヒドロキシフェニル)メチレン〕ビス[2,3,6−トリフェニルフェノール]、
2,2−メチレンビス[6−[(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール]、
2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)1,3−ベンゼンジオール、
4,4′,4″−エチリデントリスフェノール、
4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、
4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、
4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、
4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル]メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、
4,4′−[(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、
2,4−ビス[(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メチル]−6−シクロヘキシルフェノール、
4,4′−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェノール)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2−メチルフェノール]、
4,4′−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、
4,6−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]1,3−ベンゼンジオール、
4,4′−[(3,4−ジ−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、
4,4′−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、
5,5′−(1−メチルエチリデン)ビス[1−フェニル−2−オール]、
4,4′,4″−メチリデントリスフェノール、
4,4′−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、
4,4′−(フェニルメチレン)ビスフェノール、
4,4′−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、
5,5′−(1,1−シクロヘキシリデン)ビス−[1−ビフェニル−2−オール]等が挙げられる。
前記一般式(COH)Sで示されるフェノール性水酸基を有する化合物としては、
ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジプロピル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−ヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−ヘプチル−4−ヒドキシフェニル)スルフィド、ビス(5−オクチル−2−ヒドロキシフェニル)スルフィド等が挙げられる。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等が挙げられる。
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
更に、前記(ハ)成分としてより好適には、特開2006−137886号公報や、特開2006−188660号公報に記載される化合物が用いられる。
本発明に適用されるマイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
筆記により形成される可逆熱変色性筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡をゴム等の摩擦体による擦過等による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
ここで、前記非円形断面形状のマイクロカプセル顔料は、最大外径の平均値が0.5〜5.0μmの範囲にあり、且つ、可逆熱変色性組成物/壁膜=7/1〜1/1(重量比)の範囲を満たしていることが好ましい。
前記マイクロカプセル顔料(円形断面形状のものを含む)は、最大外径の平均値が、5.0μmを越える系では、毛細間隙からの流出性の低下を来し、一方、最大外径の平均値が、0.5μm以下の系では高濃度の発色性を示し難く、好ましくは、最大外径の平均値が、1〜4μmの範囲、当該マイクロカプセルの平均粒子径〔(最大外径+中央部の最小外径)/2〕が1〜3μmの範囲が好適である。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を起こし、逆に、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、可逆熱変色性組成物/壁膜=6/1〜1/1(重量比)である。
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法等の公知の手段が適用できるが、本発明の前記した要件を満たす粒子径範囲の、非円形断面形状のマイクロカプセル顔料を得るためには、凝集、合一化が生じ難い界面重合法又は界面重縮合法の適用が効果的である。
前記マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、2〜50重量%(好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは、4〜30重量%)配合することができる。2重量%未満では発色濃度が不充分であり、50重量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性が阻害される。
本発明に適用される可逆熱変色性インキは、有色状態を示すマイクロカプセル顔料をビヒクル中に分散させたインキが有効であり、前記ビヒクルとしては水性ビヒクルが好ましいが、油性ビヒクルであってもよい。
具体的には、剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキや、水溶性高分子凝集剤により可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキが挙げられる。更には、可逆熱変色性顔料とビヒクルと比重差を0.05以下になるよう調節したインキが挙げられる。
前記剪断減粘性付与剤を添加することによって、マイクロカプセル顔料の凝集・沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、紙面は勿論、浸透性の高い布帛等の繊維材料に筆記しても筆跡は滲むことなく、良好な筆跡を形成できる。
更に、前記インキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
尚、前記剪断減粘性付与剤を添加したインキの粘度は、20℃でのE型回転粘度計による3.84S−1の剪断速度におけるインキ粘度が20〜300mPa・sを示し、且つ、剪断減粘指数が0.1〜0.9を示すことが好ましい。
前記した粘度範囲及び剪断減粘指数を示すことによって、更にインキ漏れだし、インキの逆流を防止することができる。
なお、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kj(Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類。N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
前記水溶性高分子凝集剤としては、非イオン性水溶性高分子化合物が好適に用いられる。
具体的にはポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類、非イオン性水溶性セルロース誘導体等が挙げられる。このうち水溶性多糖類の具体例としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリンが挙げられ、また非イオン性水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
本発明の可逆熱変色性インキ中において顔料粒子間の緩い橋架け作用を示す水溶性高分子であればすべて適用することができるが、なかでも前記の非イオン性水溶性セルロース誘導体が最も有効に作用する。
前記高分子凝集剤は、インキ組成物全量に対し、0.05〜20重量%配合することができる。
インキ中に水と共に添加される水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
また、前記インキをボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗防止効果を付与することが好ましい。
その他、必要に応じてアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルローズ誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の樹脂を添加して紙面への固着性や粘性を付与することもできる。
また、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
更に、汎用の非変色性着色剤を添加することにより変色性インキを構成することができる。
前記インキは、マーキングペンチップやボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペン等の筆記具や、筆記具外装に収容して使用される筆記具用レフィルに充填して実用に供される。
ボールペンやボールペンレフィルに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内にインキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
また、ボールペンレフィルとしては、ボールを先端部に装着したチップに連通するインキ収容管に充填し、さらにインキの後端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンレフィルを例示できる。
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.2〜3.0mm、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mm径程度のものが適用できる。
尚、本発明のインキを充填する筆記具は、ボールと同様の転動作用により筆跡を形成させる、転動機構を筆記先端部に備えたものを含む。
前記インキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
また、マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるペン先を直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、前記インキ吸蔵体とペン先が連結されてなるマーキングペンの前記インキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、ペン先の押圧により開放する弁体を介してペン先とインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
また、マーキングペンレフィルとしては、インキ吸蔵体にペン先を直接又は中継部材を介して接続したものや、インキ収容管に充填されるインキを中継部材(ペン芯、繊維束、パイプ、弁機構等)を介してペン先に供給するレフィルを例示できる。
前記ペン先は、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30〜70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
前記チゼル形状のペン体にあっては、筆記面への当接位置を変えることにより細書き用、或いは太書き用として、更には一定線幅のマークを形成できる多用途性を有し、多様な熱変色性の筆跡を形成できる利便性に優れた筆記具を構成できる。
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40〜90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体は、従来汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
更に、前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のペン先を装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させた複合筆記具(両頭式やペン先繰り出し式等)であってもよい。
前記筆記具や筆記具用レフィルにより形成される筆跡は、指による擦過や加熱具等の加熱手段の適用により有色状態から無色状態に色調を変色させることができる。
前記加熱手段としては、広い面積を一括消去するのに適したコピー機等の感熱機、電球等の照明具、ヘアドライヤー等が用いられ、更には、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具等の適用が挙げられる。また、簡便な方法で変色可能な手段であることから、擦過部材(摩擦体)が好適に用いられる。
前記擦過部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体、石材、木材、金属、布帛であってもよい。
尚、消しゴムを使用して筆跡を擦過することもできるが、擦過時に消しカスが発生するため、好ましくは前述のような擦過部材が用いられる。
前記擦過部材の材質としては、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)等が好適に用いられるが、シリコーン樹脂は擦過により消去した部分に樹脂が付着し易く、繰り返し筆記した際に筆跡がはじかれることがあるため、SBS樹脂やSEBS樹脂がより好適に用いられる。また、前記擦過部材としては、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが55度以上のものがより好適である。
前記擦過部材は筆記具や筆記具用レフィルと別体の任意形状の部材であってもよいが、筆記具においては、外装部分に固着させることにより、携帯性に優れると共に、利便性に富んだものとなる。
前記擦過部材を固着する箇所は、キャップ先端部(頂部)、或いは、軸筒先端部(筆記先端部を設けていない部分)等が挙げられる。
更に、キャップの一部、或いは軸筒の一部に任意形象の小突部を設けて擦過部材とすることもできる。
前記擦過部材は、ガラス板上に前記擦過部材の擦過部分を荷重500gで押圧した際、ガラス板と擦過部材の接触面積が12mm以下になると共に、荷重1000gで押圧した際、ガラス板と擦過部材の接触面積が15mm以下になるように形成される。
これにより、前記筆記具による筆跡の微小面積部分のみを確実に選択して、容易に擦過消色させることができる。
また、前記いずれの荷重においても、擦過部材の強度及び成形性を考慮して、ガラス板に押圧した際の擦過部材の接触面積が0.5mm以上となるものが好ましい。
前記ガラス板としては、表面に擦過部材を接触させた際に、裏面から接触部分が視認できる程度の透明性を有すると共に、平滑表面を備えたフロートガラス板が用いられる。
前記擦過部材の形状としては、前記条件を満たすものであればどのような形状でもよいが、筆跡との接触角度によらず一定の接触面積が得られ、広域を擦過することなく目的部分のみを擦過できることから、角錐や円錐等が好ましく、また、先端を凸曲面とすることが好ましい。
前記した筆記具や筆記具用レフィルには、外側から視認可能な位置(例えば、キャップ、クリップ、頭冠、尾栓、軸筒外装、インキ収容管、チップホルダー等)に熱変色性温度表示部が設けられる。
前記熱変色性温度表示部が環境温度によって変色することで、筆記具や筆記具用レフィルの保管状態での温度履歴が視覚的に確認できるので、高温状態で保管されることで収容するインキが消色したものをユーザーが使用した場合であっても、インキ切れや筆記不良と誤認することがなくなる。
前記熱変色性温度表示部は、熱変色性着色剤の塗布やシール体の貼着、更に部材への練り込みによって形成することができる。
また、前記熱変色性温度表示部には、温度変色部と共に、変色時の温度(数値)や説明文等を表示することもできる。
前記熱変色性温度表示部は不可逆的な色変化を生じるものでもよいが、繰り返し使用が可能なことから可逆熱変色性とすることが好ましい。
前記熱変色性温度表示部を構成する熱変色性着色剤としては、汎用の変色材料を用いることができるが、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料が加工性に優れることから好適である。
前記可逆熱変色性組成物としては、前述のインキ用途で例示した化合物から適宜選択することができる。また、可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料についても、前述のインキ用途で例示したマイクロカプセルから適宜選択して使用できる。
前記熱変色性温度表示部に適用されるマイクロカプセル顔料(マイクロカプセル顔料B)は、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相(2色の着色状態又は着色状態と消色状態)間の互変性を呈し、両相が共存できる二相保持温度域が常温域にある顔料であり、該顔料は第1色相状態にあって温度が上昇する過程では、第2の温度T3′に達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度T3′より高い温度T4′以上の温度域で完全に第2色相となり、第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度T3′より低い第1の温度T2′に達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度T2′より低い温度T1′以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度T2′と第2の温度T3′の間の温度域で第1色相と第2色相の両相が共存可能であるヒステリシス特性を示す。
その際、温度T4′は、筆記具インキ(即ち、マイクロカプセル顔料A)の完全消色温度Tに対して±5℃差以内に設定されることが好ましい。
これにより、保管時に筆記具インキが消色状態になった場合であっても、熱変色性温度表示部を視覚することで、外側からインキの着消色状態が的確に確認できる。そのため、消色状態で収容されるインキに対して、インキ切れや筆記不良と誤認され難くなる。
前記温度差が+5℃を超えると、筆記具インキが消色状態になっても温度表示部は変色しない状況が生じ易くなり、収容するインキの的確な状態が確認できなくなる。また、Tに対して−5℃より低くなると、筆記具インキが着色状態であるにもかかわらず、温度表示部が変色してしまう状況が生じ易くなるため、収容するインキの的確な状態が確認できず、ユーザーに誤解を生じることがある。
また、前記マイクロカプセル顔料Bの温度T1′は、筆記具インキ(即ち、マイクロカプセル顔料A)の完全発色温度Tに対して±5℃差以内(−5℃〜+5℃差の範囲)に設定することが好ましく、より好ましくは−5℃〜0℃差の範囲に設定される。
前記範囲に設定することで、インキが消色状態となった筆記具やレフィルを冷却した際、収容したインキが着色状態に復元したことが視覚的に確認できるため、冷却時間の過少、過度を起こし難くなり、適度な状態で復色させることが可能となる。
前記T1′がTより+5℃を越える場合、冷却した際に温度表示部のみが復色した状況が生じ易くなるため、冷却過少で収容するインキが着色状態に復元しないまま筆記具を使用してしまうことがある。また、前記T1′がTより−5℃以上低い場合、冷却により収容するインキが着色状態に復元しても温度表示部が復元しない状況が生じ易くなるため、温度表示部がインジケーターとしての機能を発揮し難くなる虞がある。
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の部は重量部である。
実施例1(図1乃至3参照)
可逆熱変色性インキの調製
(イ)成分として2−(ブチルアミノ)−8−(ジフェニルアミノ)−4−メチルスピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2−3−g]ピリミジン−5,1(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン2.0部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料A(T:−16℃、T:−8℃、T:48℃、T:58℃、ΔH:65℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、ピンク色から無色に色変化する)12.5部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.33部、尿素10部、グリセリン10部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、水66.37部からなる可逆熱変色性インキを調製した。
筆記具の作製
前記インキ4(予め−16℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料をピンク色に発色させた後、室温下で放置したもの)を内径4.4mmのポリプロピレン製パイプ(インキ収容筒21)に吸引充填し、樹脂製ホルダー22を介してボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプ21の後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体5(液栓)を充填し、更に尾栓23をパイプの後部に嵌合させ、先軸筒、後軸筒を組み付け、キャップ7を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって可逆熱変色性ボールペンを得た。
尚、前記ボールペンチップ3は、金属材料を切削加工により形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
また、後軸筒6の後部には、擦過部材8として凸曲面状頂部を有するSEBS樹脂部材が装着され、該擦過部材8は凸曲面が上になるように電子天秤に載せ、該擦過部材8上に透明ガラス板を電子天秤の計量皿と平行状態で接触させた後、500g及び1000gの荷重で前記ガラス板を垂直に押圧することにより視認される擦過部材8と透明ガラス板との接触面積を測定した結果、500gの荷重で押圧した際の接触面積が3.2mm、1000gの荷重で押圧した際の接触面積が4.9mmであった。
前記ボールペンによるピンク色の筆跡を上から擦過部材8を用いて擦過すると、該筆跡は消色して視認されなくなった。この状態は室温で維持することができたので、擦過消去した箇所に再び文字を書き込むことができた。
更に、(イ)成分として、2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2−3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン2.5部、(ロ)成分として4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール4.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料B(T1′:−18℃、T2′:−9℃、T3′:49℃、T4′:60℃、ΔH:68℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、ピンク色から無色に色変化する)を塗料用ビヒクル中に添加し、前記ボールペンの後軸表面に塗布後乾燥させることにより熱変色性温度表示部9を形成した。
前記熱変色性温度表示部9を備えた可逆熱変色性ボールペン(筆記具1)を、直射日光の当たる場所に放置し、15分後、60分後の状態を観察したところ、15分後では、温度表示部9はピンク色のままであった。その際、筆記具1を用いて用紙に筆記したところピンク色の筆跡が得られた。
また、60分放置した後には、温度表示部9が消色しており、その際に筆記具1を用いて用紙に筆記したところ筆跡も無色に変化していたことから、収容状態のインキ4が加温されて消色したことが確認された。
よって、外側から温度表示部9を視認することで、インキ4の状態が視覚的に確認できるものとなった。
尚、前記筆記具1を冷凍庫に入れて放置した際、温度表示部9が無色からピンク色に復元した時点で筆記すると、筆跡もピンク色を呈したことから、収容状態のインキ4が復色したことが確認できた。
実施例2(図1、2参照)
実施例1で得られた可逆熱変色性ボールペンにおいて、実施例1で作製したマイクロカプセル顔料Bをポリプロピレン樹脂中に添加して成形されるキャップ頭冠に変更することで、頭冠部分を熱変色性温度表示部9とする可逆熱変色性ボールペン(筆記具1)を得た。
得られたボールペン(筆記具1)を、直射日光の当たる場所に放置し、15分後、60分後の状態を観察したところ、15分後では、頭冠(温度表示部9)はピンク色のままであった。その際、筆記具1を用いて用紙に筆記したところピンク色の筆跡が得られた。
また、60分放置した後には、頭冠(温度表示部9)が無色に変化しており、その際に筆記具1を用いて用紙に筆記したところ筆跡も無色に変化していたことから、収容状態のインキ4が加温されて消色したことが確認された。
よって、外側から頭冠(温度表示部9)を視認することで、インキ4の状態が視覚的に確認できるものとなった。
尚、前記筆記具1を冷凍庫に入れて放置した際、頭冠(温度表示部9)が無色からピンク色に復元した時点で筆記すると、筆跡もピンク色を呈したことから、収容状態のインキ4が復色したことが確認できた。
実施例3(図1、2参照)
可逆熱変色性インキの調製
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸4−メチルベンジル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料A(T:0℃、T:11℃、T:32℃、T:42℃、ΔH:32℃、平均粒子径:3μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、黒色から無色に色変化する)12.5部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.33部、尿素10部、グリセリン10部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、水66.37部からなる可逆熱変色性インキを調製した。
筆記具の作製
前記インキ4(予め0℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を黒色に発色させた後、室温下で放置したもの)を内径4.4mmのポリプロピレン製黒色パイプ(インキ収容筒21)に吸引充填し、樹脂製ホルダー22を介してボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプ21の後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体5(液栓)を充填し、更に尾栓23をパイプの後部に嵌合させ、先軸筒、後軸筒を組み付け、キャップ7を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって可逆熱変色性ボールペンを得た。
尚、前記ボールペンチップ3は、金属材料を切削加工により形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
また、後軸筒6の後部には、擦過部材8として凸曲面状頂部を有するSEBS樹脂部材が装着され、該擦過部材8は凸曲面が上になるように電子天秤に載せ、該擦過部材8上に透明ガラス板を電子天秤の計量皿と平行状態で接触させた後、500g及び1000gの荷重で前記ガラス板を垂直に押圧することにより視認される擦過部材8と透明ガラス板との接触面積を測定した結果、500gの荷重で押圧した際の接触面積が3.2mm、1000gの荷重で押圧した際の接触面積が4.9mmであった。
前記ボールペンによる黒色の筆跡を上から擦過部材8を用いて擦過すると、該筆跡は消色して視認されなくなった。この状態は室温で維持することができたので、擦過消去した箇所に再び文字を書き込むことができた。
更に、前記マイクロカプセル顔料Aと黄色染料を塗料用ビヒクル中に添加したものを、下層に粘着層を有する透明支持体上に塗布して熱変色層(黒色から黄色に変化する)を形成した後、該熱変色層上に透明保護層を形成することで温度表示用シールを作製した。
得られた温度表示用シールをボールペンのキャップ表面に貼着することにより熱変色性温度表示部9を形成した。
前記熱変色性温度表示部9を備えた可逆熱変色性ボールペン(筆記具1)を、直射日光の当たる場所に放置し、5分後、15分後の状態を観察したところ、5分後では、温度表示部9は黒色のままであった。その際、筆記具1を用いて用紙に筆記したところ黒色の筆跡が得られた。
また、15分放置した後には、温度表示部9が黄色に変色しており、その際に筆記具1を用いて用紙に筆記したところ筆跡も無色に変化していたことから、収容状態のインキ4が加温されて消色したことが確認された。
よって、外側から温度表示部9を視認することで、インキ4の状態が視覚的に確認できるものとなった。
尚、前記筆記具1を冷凍庫に入れて放置した際、温度表示部9が黄色から黒色に復元した時点で筆記すると、筆跡も黒色を呈したことから、収容状態のインキ4が復色したことが確認できた。
実施例4(図1、4参照)
可逆熱変色性インキの調製
(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)成分としてビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド8.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物を内包したマイクロカプセル顔料A(T:−14℃、T:−6℃、T:48℃、T:60℃、ΔH:64℃、平均粒子径:2μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、青色から無色に色変化する)25.7部、サクシノグリカン0.2部、尿素5.5部、グリセリン7.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.03部、変性シリコーン系消泡剤0.15部、防腐剤0.1部、潤滑剤0.5部、トリエタノールアミン0.5部、水59.82部からなる可逆熱変色性インキを調製した。
筆記具用レフィルの作製
前記インキ4(予め−14℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を青色に発色させた後、室温下で放置したもの)を内径4.4mmのポリプロピレン製白色パイプ(インキ収容筒21)に吸引充填し、樹脂製ホルダー22を介してボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体5(液栓)を充填し、尾栓23をパイプの後部に嵌合させた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具用レフィル2とした。
尚、前記ボールペンチップ3は、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
前記ボールペンレフィル2による青色の筆跡を加熱すると、該筆跡は消色して視認されなくなった。この状態は室温で維持することができたので、擦過消去した箇所に再び文字を書き込むことができた。
更に、前記マイクロカプセル顔料Aを塗料用ビヒクル中に添加したものを、下層に粘着層を有する透明支持体上に塗布して熱変色層(青色から無色に変化する)を形成した後、該熱変色層上に透明保護層を形成することで温度表示用シールを作製した。
得られた温度表示用シールをレフィルパイプ表面に貼着することにより熱変色性温度表示部9を形成した。
前記熱変色性温度表示部9を備えたボールペンレフィル2を、直射日光の当たる場所に放置し、15分後、60分後の状態を観察したところ、15分後では、温度表示部9は青色のままであった。その際、ボールペンレフィル2を用いて用紙に筆記したところ青色の筆跡が得られた。
また、60分放置した後には、温度表示部9が消色しており、その際に用紙に筆記したところ筆跡も無色に変化していたことから、収容状態のインキ4が加温されて消色したことが確認された。
よって、外側から温度表示部9を視認することで、インキ4の状態が視覚的に確認できるものとなった。
尚、前記ボールペンレフィル2を冷凍庫に入れて放置した際、温度表示部9が無色から青色に復元した時点で筆記すると、筆跡も青色を呈したことから、収容状態のインキ4が復色したことが確認できた。
筆記具の作製
更に、前記熱変色性温度表示部9を備えたレフィル2を軸筒6(先軸筒と透明な後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップ7を嵌めて可逆熱変色性ボールペン(筆記具1)を得た。
尚、キャップ7頂部には、擦過部材8として凸曲面状頂部を有するSEBS樹脂部材が装着され、該擦過部材8は凸曲面が上になるように電子天秤に載せ、該擦過部材8上に透明ガラス板を電子天秤の計量皿と平行状態で接触させた後、500g及び1000gの荷重で前記ガラス板を垂直に押圧することにより視認される擦過部材8と透明ガラス板との接触面積を測定した結果、500gの荷重で押圧した際の接触面積が2.4mm、1000gの荷重で押圧した際の接触面積が4.0mmであった。
また、軸筒6の後方が透明性を有するため、収容されるレフィル2に設けられた熱変色性温度表示部9を外側から確認できるものとなった。尚、軸筒6が透明性を有しない場合であっても、筆記具外装(軸筒6)からレフィル2を取り出して温度表示部9を確認することで、レフィル内のインキの状態を視覚的に確認できるため、不具合なく使用できる。
本発明に用いられる可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。 本発明の筆記具の一例を示す縦断面説明図である。 図2の筆記具の一部縦断面説明図である。 本発明の筆記具の一例を示す縦断面説明図である。
符号の説明
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 筆記具(ボールペン)
2 レフィル
21 インキ収容筒
22 ホルダー
23 尾栓
3 ボールペンチップ
4 熱変色性インキ
5 インキ逆流防止体
6 軸筒
7 キャップ
8 擦過部材
9 熱変色性温度表示部

Claims (9)

  1. 加熱により消色或いは変色可能なインキを収容する筆記具であって、外側から視認可能な位置に熱変色性温度表示部を設けてなる筆記具。
  2. 加熱により消色或いは変色可能なインキを収容する筆記具用レフィルであって、外側から視認可能な位置に熱変色性温度表示部を設けてなる筆記具用レフィル。
  3. 前記インキが、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した、加熱により有色から無色に色変化するマイクロカプセル顔料Aを含む請求項1又は2に記載の筆記具又は筆記具用レフィル。
  4. 前記マイクロカプセル顔料Aが、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、両状態が共存できる保持温度域が常温域にある顔料であり、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度Tに達すると消色し始め、温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、前記温度Tより低い温度Tに達すると着色し始め、温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に有色状態となり、前記温度Tと温度Tの間の温度域で有色状態或いは無色状態が保持できるヒステリシス特性を示し、温度Tは−30〜10℃の範囲にあり、温度Tが30〜80℃の範囲にある請求項3記載の筆記具又は筆記具用レフィル。
  5. 前記温度表示部が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料Bを含む請求項1又は2に記載の筆記具又は筆記具用レフィル。
  6. 前記マイクロカプセル顔料Bが、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相間の互変性を呈し、両相が共存できる二相保持温度域が常温域にある顔料であり、該顔料は第1色相状態にあって温度が上昇する過程では、第2の温度T3′に達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度T3′より高い温度T4′以上の温度域で完全に第2色相となり、第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度T3′より低い第1の温度T2′に達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度T2′より低い温度T1′以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度T2′と第2の温度T3′の間の温度域で第1色相と第2色相の両相が共存可能であるヒステリシス特性を示し、温度T4′が筆記具インキの温度Tに対して±5℃差以内である請求項5記載の筆記具又は筆記具用レフィル。
  7. 前記マイクロカプセル顔料Bの温度T1′が、筆記具インキの温度Tに対して±5℃差以内にある請求項6記載の筆記具又は筆記具用レフィル。
  8. 前記温度表示部が、筆記具外装又はレフィルに設けられる請求項1乃至7のいずれかに記載の筆記具又は筆記具用レフィル。
  9. 前記筆記具が擦過部材を備えてなる請求項1記載の筆記具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020002276A (ja) * 2018-06-29 2020-01-09 株式会社パイロットコーポレーション 筆記具用熱変色性インキ組成物及びそれを用いた筆記具
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