JP2009065949A - 水分散性遊離型植物ステロール組成物、該組成物の製造方法、及び、該組成物を配合した飲食品 - Google Patents

水分散性遊離型植物ステロール組成物、該組成物の製造方法、及び、該組成物を配合した飲食品 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、水に溶けにくい遊離型植物ステロールを水に分散しやすい組成物とすることによって、水系の飲食品への使用を可能とし、長期間保存しても植物ステロールの結晶の沈殿や浮遊を生じることなく、安定した分散状態を保持し、かつ、添加された飲食品においても食感や風味等に悪影響を及ぼすことのない水分散性植物ステロール組成物を提供することにある。
【解決手段】乳化剤として、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とする乳化剤を使用し、水系溶媒に平均粒子径1μm以下の遊離型植物ステロール粒子を分散させることにより上記課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、遊離型植物ステロールが沈殿または浮遊しないで安定な分散状態を保ち、特別な分散装置を要することなく容易に飲食品中に分散可能であり、添加された飲食品中においても不快な風味や食感を呈することのない優れた水分散性遊離型植物ステロール組成物、当該組成物の製造方法、および、当該組成物を配合した飲食品に関する。
技術背景
植物ステロールとは、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等の、植物由来のステロールの総称である。植物ステロールは、穀物、キャベツ、レタス、菜種、ヤシなどの植物の細胞膜中に細胞膜構成成分として広く存在している。
この植物ステロールは、血漿コレステロール濃度の低下作用を有することが古くから知られている。コレステロールが吸収されるには、まずコレステロールが胆汁酸ミセルへ可溶化されなければならないところ、植物ステロールとコレステロールが共存した場合、植物ステロールはコレステロールと競合的に胆汁酸ミセルへ可溶化してコレステロールの胆汁酸ミセルへの可溶化量が減少し、その結果としてコレステロールの吸収が妨害されるためである。
高い血漿コレステロール濃度は循環器系疾患を引き起こすと考えられていることから、血漿コレステロール濃度の低下は消費者にとって重大な関心事となっている。
しかしながら、十分な血漿コレステロール濃度低下作用を得るためには、1日当たり数グラムの植物ステロールを継続して摂取することが必要であり、これをカプセル剤等で摂取しようとする場合には多量に服用しなければならず、毎日継続することは困難であった。
また植物ステロールは日常の食事からも僅かに摂取されているが、通常の食事ではコレステロールの吸収を抑制するに足りる量を摂取することは困難である。
そのため植物ステロールを効率的に摂取する方法として、植物ステロールを添加した飲料や各種食品が提案されている。日常的に摂取される食品に植物ステロールを添加することは、その保健効果を高めるとともに、植物ステロールの継続的摂取を容易とするので有意義である。
しかし、植物ステロールは水や油に対する溶解度が極めて低く、融点も150℃前後と高いため、飲食品等への利用には大きな制約があった。例えば、植物ステロールは高融点の結晶であるために食品中で結晶によるざらつき感、粒状感などの耐え難い不快な食感を生じてしまったり、溶解度の低さから飲料に添加した場合には沈殿物となって分離して商品価値を大きく損ねてしまっていた。また融点以上に加熱しても放冷後には食品内部で再び結晶化して上記の不都合が生じてしまうし、そもそもそのような加熱をすることが出来ない食品も多くあるため、植物ステロールは飲食品等には殆ど利用されていなかった。
近年、植物ステロールの化学修飾すなわち脂肪酸によるエステル化反応により、融点を低下させて油脂に対する溶解性を高め、食用油脂、ドレッシング、マーガリンのような一部の油脂食品に用いられている実態がある。
しかし、エステル化には有機溶媒を残留させないために煩雑な操作が必要となったり、長時間の酵素処理により処理コストが増大してしまう場合が多くある。またエステル化により植物ステロールの加工性はやや向上するものの、血漿コレステロール濃度低下作用は減少し、さらには親油性の栄養素の吸収を阻害してしまう不利益が生じる。さらに、このエステル型植物ステロールは多量の油脂に溶解して使用されるため、ヒトの脂質摂取量は不可避的に著しく増大することとなってしまう。また無脂肪の食品には配合出来ないという不利益もある。
そこで、遊離型植物ステロールをあらゆる食品に利用することができるようにその加工性を向上させることが強く求められている。
以下、本発明に関連する技術分野における代表的な従来技術を挙げる。
特開昭57−206336号公報 特開平10−179086号公報 特開2000−300191号公報 特開2001−117号公報 特開平11−146757号公報
上記特許文献1〜3には、植物ステロールをビタミンEや乳化剤を含む油脂に溶解した油脂組成物が記載されている。しかしこれらの方法では、ある程度の量の植物ステロールを溶解させた場合には低温貯蔵下、植物ステロールの結晶が析出し、商品価値を大きく損ねてしまう。また水系食品に配合することが出来ず、油脂に溶解して配合するため、多量の油脂を不可避的に摂取せざるを得なくなってしまう不利益があった。
また、上記特許文献4には、水系食品に配合出来る例として、植物ステロール 、レシチン、エタノール、多価アルコールなどを含有する水中油型乳化組成物が開示されている。しかし、この方法では水中油型乳化組成物中に遊離型植物ステロールを高濃度で含有させると、経時変化で遊離型植物ステロールの結晶が析出してしまい、商品価値を大きく損ねてしまっていた。融点が150℃前後と高い遊離型植物ステロールを高濃度に含有したエマルションを長期間安定に保つことは遊離型植物ステロールの結晶性の強さを考えると極めて困難である。よって、高濃度の植物ステロールを含有する水中油型乳化組成物を得るためには油脂に対する溶解性が優れるエステル型植物ステロールを用いるほかなかった。
さらに、上記特許文献5には、平均粒子径が15μm以下の一種以上の高融点脂質と、非ステロール乳化剤とを含み、非ステロール乳化剤の高融点脂質に対する重量比が1/2未満である水性分散液又は懸濁液について開示されている。特許文献5によれば、一時的に安定な分散状態を作り出すことが出来るが、24時間程度の経時変化で遊離型植物ステロールの沈殿物を生じてしまい、液状食品などに使用した場合には商品を長期間保管すると外観及び食感が悪くなってしまっていた。
以上のように、従来はエステル型植物ステロールを用いた応用が殆どであり、飲食品、特に飲料を中心とする水系食品に添加可能な遊離型植物ステロール組成物として十分に満足しうるものは存在しなかった。
本発明が解決しようとする課題は、上記のような水に溶けにくい遊離型植物ステロールを水に分散しやすい組成物とすることによって、水系の飲食品への使用を可能とし、長期間保存しても植物ステロールの沈殿物や浮遊物を生じることなく、安定した分散状態を保持し、かつ、添加された飲食品においても食感や風味等に悪影響を及ぼすことのない水分散性遊離型植物ステロール組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題解決のため鋭意研究した結果、「クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とする乳化剤」(以下「本発明の乳化剤」ともいう。)を使用し、遊離型植物ステロール粒子を「レーザー光散乱法による平均粒子径」(以下単に「平均粒子径」ともいう。)1μm以下として水系溶媒に分散させることで、優れた分散安定性を有する水分散性遊離型植物ステロール組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の発明は、遊離型植物ステロール粒子と、乳化剤と、水系溶媒を含有する水分散性遊離型植物ステロール組成物であって、遊離型植物ステロール粒子のレーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以下であり、乳化剤がクエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とすることを特徴とする水分散性遊離型植物ステロール組成物である。
本発明の第2の発明は、第1の発明において、乳化剤が、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドに加えて、さらに、HLB値が9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB値が9以上のショ糖脂肪酸エステルを必須成分とし、水系溶媒が水、グリセリン、エタノールのうちから選択される1種又は2種以上の組み合せである水分散性遊離型植物ステロール組成物である。
本発明の第3の発明は、第1、2の発明において、遊離型植物ステロールが水分散性遊離型植物ステロール組成物の5〜40質量%であり、乳化剤が遊離型植物ステロールの配合質量に対して0.1〜2倍量であり、水系溶媒が遊離型植物ステロールの配合質量に対して1.3〜18倍量である水分散性遊離型植物ステロール組成物である。
本発明の第4の発明は、水系溶媒に、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とする乳化剤を混合し、この混合溶液に遊離型植物ステロールを分散し、次いで、遊離型植物ステロールのレーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以下となるように湿式粉砕することを特徴とする第1〜3の発明の水分散性植物ステロール組成物の製造方法である。
本発明の第5の発明は、遊離型植物ステロールと第1の乳化剤の混合物からなる粒子と、第2の乳化剤と、水系溶媒を含有する組成物であって、前記粒子のレーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以下であり、第1の乳化剤が、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とする乳化剤であり、第2の乳化剤が、任意の乳化剤であることを特徴とする水分散性遊離型植物ステロール組成物である。
本発明の第6の発明は、第5の発明において、第2の乳化剤が、HLB値が9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB値が9以上のショ糖脂肪酸エステルを必須成分とする乳化剤である水分散性遊離型植物ステロール組成物である。
本発明の第7の発明は、第5又は第6の発明において、遊離型植物ステロールが水分散性遊離型植物ステロール組成物の5〜40質量%であり、第1の乳化剤と第2の乳化剤の合計量が遊離型植物ステロールの配合質量に対して0.1〜2倍量であり、水系溶媒が遊離型植物ステロールの配合質量に対して1.3〜18倍量である水分散性遊離型植物ステロール組成物である。
本発明の第8の発明は、第5〜7の発明の製造方法であって、遊離型植物ステロールと第1の乳化剤を融解混合した後、第2の乳化剤を溶解させた水系溶媒の存在下、レーザー光散乱法による平均粒径が1μm以下となるように湿式粉砕することを特徴とする水分散性遊離型植物ステロール組成物の製造方法である。
本発明の第9の発明は、第1〜3、5〜7の発明の水分散性遊離型植物ステロール組成物を配合したことを特徴とする植物ステロール含有飲食品である。
植物ステロールは植物の細胞膜中に遊離型あるいはエステル型として含まれているが、本発明では遊離型の植物ステロールを用いる。分散組成物とするため、融点の高い遊離型の植物ステロールが有利だからである。エステル型植物ステロールは融点が低い為、分散時に融解が生じる。融解状態の植物ステロールは凝集しやすく、微細な粒子として分散させることができない。
本発明に使用される植物ステロールは遊離型であれば特に限定するものではなく、植物ステロールの由来原料も特に限定するものではない。本発明に使用される遊離型植物ステロールの例示として、β−シトステロールとスチグマステロールとカンペステロールとブラシカステロールの混合物が挙げられる。
本発明においては本組成物の性能を妨げない範囲内で遊離型植物ステロールにエステル型植物ステロールを混合して使用することができる。
本発明を実施するに当たり使用される遊離型植物ステロールは、その純度に特に制限はないが、遊離型植物ステロールがより高濃度の組成物を調製するためには、純度が70質量%以上の物を使用することが好ましく、90質量%以上の物を使用することがより好ましい。
水分散性植物ステロール組成物に配合する遊離型植物ステロールの量は、5〜40質量%が好ましい。5質量%未満では組成物中の遊離型植物ステロールの濃度が薄くなってしまうため実用的ではなく、他方40質量%を越えた場合には組成物の粘度が高くなり、ハンドリングが悪くなってしまう傾向があるからである。本発明でいう遊離型植物ステロールの量とは、遊離型植物ステロール自体の量である。したがって、本発明の組成物の性能を妨げない範囲内で混合使用したエステル型植物ステロールの量や、不純物を含んだ遊離型植物ステロールを使用した場合の不純物の量は、本発明でいう遊離型植物ステロールの量には含まれない。
遊離型植物ステロール粒子を平均粒子径1μm以下になるように粉砕し、その粒径を保持するためには適切な乳化剤の選択が必要となる。遊離型植物ステロールは極めて凝集力が強く、通常の乳化剤では十分な分散を保持出来ないからである。
本発明で使用される乳化剤は、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とする乳化剤であり、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを用いることにより、初めて、遊離型植物ステロールを、平均粒子径が1μm以下の粒子として、長期間安定に分散させることが可能となった。前記のとおり、特開平11−146757号公報(特許文献5)の方法でも乳化剤が使用されており、一時的に安定な分散状態を作り出すことが出来たが、この方法で使用した乳化剤では、24時間程度の経時変化で遊離型植物ステロールの沈殿物を生じてしまい、液状食品などに使用した場合には商品を長期間保管すると外観及び食感が悪くなってしまう。これに対して、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを用いれば、実施例からわかるとおり、非常に長期に亘って安定な分散が達成される。
本発明のうち第1〜4の発明では、遊離型植物ステロールをそのまま原料として用いる。
本発明のうち第5〜8の発明では、遊離型植物ステロールを、あらかじめ、融点以上に加熱して融解させた後、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とする第1の乳化剤と混合して用いる。あらかじめ第1の乳化剤を混合することで、分散安定性がさらに向上する。
第5〜8の発明の第2の乳化剤としては、任意の乳化剤が使用できる。第2の乳化剤は、第1の乳化剤と同一でも異なってもよい。第2の乳化剤として好ましいものは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、レシチン類、アラビアゴムである。この中でも、HLB値が9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB値が9以上のショ糖脂肪酸エステルが特に好ましい。
遊離型植物ステロールに対する第1の乳化剤の混合量は特に制限されないが、遊離型植物ステロールの融点降下を抑制するためには遊離型植物ステロール配合質量に対して1/3量以下とすることが望ましく、特に好ましくは1/6量以下、最も好ましくは1/12量以下である。
遊離型植物ステロール粒子や、遊離型植物ステロールと第1の乳化剤の混合物からなる粒子は、平均粒子径を1μm以下に調整することが重要である。平均粒子径が1μmを超えると、分散させても経時変化で沈殿物を生じやすくなるからである。経時変化による沈殿物の防止の為に、できるだけ微細な微粒子に調整することが望ましい。
このような微粒子の調整は、どのような手段によっても、また、どのような粉砕機を使用して行ってもよい。例えば、ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミルによる粉砕が挙げられる。
本発明においては湿式粉砕機による粉砕が、実用上好ましく且つ有利に採用される。そのような湿式粉砕機としては、例えば、ビーズ(ボール)を利用して、水に懸濁させた遊離型植物ステロールを粉砕するビーズミルが実用的である。その粉砕条件は、遊離型植物ステロールの原料の状態、ビーズの材質、大きさ、充填率等の条件及びミル運転条件等により異なるが、実験により粒径の変化を調べながら最適条件を見出すことができる。
本発明の乳化剤には静電反発力強化のために特定の乳化剤又は分散剤を組み合わせることが望ましい。特定の乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、レシチン類、アラビアゴム等が、特定の分散剤としては、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられる。その中でもHLB値が9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB値が9以上のショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
本発明における乳化剤の配合量は遊離型植物ステロールの配合質量に対して0.1〜2倍量が好ましい。乳化剤の配合量が遊離型植物ステロール量の0.1倍量未満であると遊離型植物ステロールを1μm以下に分散保持することが困難となるからであり、また2倍量を越えて配合しても特に有利な効果はなく、却って乳化剤に起因する風味の劣化が感じられる傾向があるからである。
本発明に用いる水系溶媒とは、水と水溶性溶媒の総称であり、水系溶媒は単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
水溶性溶媒としては、エタノール等の水溶性の1価アルコールや、プロピレングリコール、グリセリン、マルチトール、還元水あめ等の水溶性の多価アルコールが例示される。
水系溶媒の配合質量は遊離型植物ステロールの配合量に対して1.3〜18倍量が好ましい。1.3倍量未満であると製剤のハンドリングが極端に悪くなる傾向があり、18倍量を越えると組成物中の遊離型植物ステロールの濃度が低くなってしまうからである。
本発明の組成物は、長期間保存しても遊離型植物ステロールの沈殿物や浮遊物を生じることなく、安定した分散状態を保持する。また、本発明の組成物は、飲料を含むあらゆる食品中に安定に分散せしめることが可能で、しかも、添加された食品の食感や風味を損なうことがない。また、添加にあたって特別な装置を用いることなく容易に分散が可能で、食品製造工程の簡略化が図れる。さらに、本発明の組成物は、耐熱性に優れることから、高温・加圧下の殺菌も可能であり、添加された食品を長期間安定に保つことができる。さらに、本発明の水分散性植物ステロール組成物は、良好な水分散性と耐熱性を有するので、飲食品のみならず、化粧品等、広範な物に好適に配合することができる。
本発明の組成物の製造方法は、遊離型植物ステロール粒子や、遊離型植物ステロールと第1の乳化剤の混合物からなる粒子の平均粒径を1μm以下にし、その粒径を保持し、上記の効果を有する本発明の組成物を得るという効果を有する。本発明の飲食品は、血漿コレステロール濃度の低下作用があり、しかも、飲食品本来の外観、食感、風味が損なわれていないという効果を有する。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がかかる実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
24kgの遊離型植物ステロール(純度96%:β−シトステロール43.5%、スチグマステロール25.5%、カンペステロール25.0%、ブラシカステロール2.0%)を160℃に加熱して融解した。これに1kgのコハク酸モノグリセライド(HLB値3.4)を溶解させ撹拌しながら放冷して固化させ、更に5℃冷蔵庫で96時間放冷して完全に固化させた。これをハンマーミルを用いて粗粉砕して、有機酸モノグリセリド含有植物ステロール組成物を得た。次に90℃の精製水60kgにグリセリン、エタノールをそれぞれ6kg及びショ糖脂肪酸エステル(HLB値12.0)3kgを溶解し、この溶液に有機酸モノグリセリド含有植物ステロール組成物を分散し、ビーズミルを用いて更に平均粒子径280nmに粉砕して、23.04質量%の遊離型植物ステロールを含有する水分散性植物ステロール組成物Aを得た。
本品0.5gを80℃の精製水99.5gに撹拌して分散し、120日間観察したところ、植物ステロールの沈殿物は見られなかった。
[比較例1]
実施例1のコハク酸モノグリセライドをプロピレングリコール脂肪酸エステル(HLB値3.0)に変え、同様に調製した。
本品を0.5gを80℃の精製水99.5gに撹拌して混合し、120日間観察したところ、植物ステロールの凝集物が見られた。
[実施例2]
90℃の精製水59kgにグリセリン、エタノールをそれぞれ6kg及びショ糖脂肪酸エステル(HLB値12.0)3kg、コハク酸モノグリセライド(HLB値3.4)2kgを混合し、この溶液に実施例1で用いた遊離型植物ステロール24kgを分散し、ビーズミルを用いて更に平均粒子径267nmに粉砕して、23.04質量%の植物ステロールを含有する水分散性植物ステロール組成物Bを得た。
本品0.5gを80℃の精製水99.5gに撹拌して分散し、120日間観察したところ、植物ステロールの沈殿物は見られなかった。
[比較例2]
実施例2のコハク酸モノグリセリドをプロピレングリコール脂肪酸エステル(HLB値3.0)に変えて、同様に調製して、水分散性植物ステロール組成物を得た。この調製の際にビーズミル内で植物ステロールが強く凝集し、十分な粉砕が行なえず、平均粒子径は6.8μmとなった。
本品0.5gを80℃の精製水99.5gに撹拌して混合し、30日間観察したところ、植物ステロールの沈殿物が多く見られた。
[実施例3]
24kgの実施例1で用いた遊離型植物ステロールを160℃に加熱して融解した。これに1kgのクエン酸モノグリセライド(HLB値3.0)を溶解させ撹拌しながら放冷して固化させ、更に5℃冷蔵庫で96時間放冷して完全に固化させた。これをハンマーミルを用いて粗粉砕して、クエン酸モノグリセライド含有植物ステロール組成物を得た。次に90℃の精製水60kgにグリセリン、エタノールをそれぞれ6kg及びポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB値13.5)3kgを溶解し、この溶液にクエン酸モノグリセライド含有植物ステロール組成物を分散し、ビーズミルを用いて更に平均粒子径277nmに粉砕して、23.04質量%の遊離型植物ステロールを含有する水分散性植物ステロール組成Cを得た。
本品0.5gを80℃の精製水99.5gに撹拌して分散し、120日間観察したところ、植物ステロールの沈殿物は見られなかった。
[実施例4]
90℃の精製水61kgにグリセリン、エタノールをそれぞれ6kg及びポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB値13.5)3kgを溶解し、この溶液に実施例1で用いた遊離型植物ステロール24kgを分散し、ビーズミルを用いて更に平均粒子径289nmに粉砕して、23.04質量%の遊離型植物ステロールを含有する水分散性植物ステロール組成Dを得た。
本品0.5gをを80℃の精製水99.5gに撹拌して分散し、120日間観察したところ、植物ステロールの沈殿物は見られなかった。
≪耐熱試験≫
実施例1〜4と比較例1、2において得られた水分散性遊離型植物ステロール組成物を用いて以下の方法で耐熱試験を実施した。
水99gに実施例1〜4と比較例1、2で得られた水分散性遊離型植物ステロール組成物を1g添加攪拌し、95℃20分加熱し、これらの水溶液を室温にて放冷した後、沈殿物の有無を目視により評価した。結果を表1に示した。
表1における分散安定性の評価基準は以下のとおりである。
◎:白濁溶液であり、沈殿、凝集を認めない。
△:白濁溶液であるが、凝集物、沈殿物を極僅かに認めることが出来る。
×:凝集物、沈殿物を多く認める。
Figure 2009065949
[実施例5]
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた水分散性植物ステロール組成物及び未処理の遊離型植物ステロール、エステル型植物ステロールを米1合当たりに遊離型植物ステロール換算で500mg添加して常法通り炊飯し、分散状態を目視で評価した。また風味、食感を厳選された5名のパネルにより評価した。結果を表2に示した。
表2における植物ステロールの分散状態の評価は以下のとおりである。
均一:炊飯物中に植物ステロールを目視できない。
不均一:炊飯物中に植物ステロールを目視できる。
表2における風味・食感の点数は、下記の基準で官能評価し、採点した5名のパネルの合計点である。
<官能評価>
無添加と比較して風味劣化、ざらつきを感じない:3点
無添加と比較して僅かに風味劣化、ざらつきを感じる:2点
無添加と比較して著しい風味劣化、ざらつきを感じる:1点
Figure 2009065949
[実施例6]
市販コーヒー飲料99gに、実施例3の水分散性植物ステロール組成物Cを1g混合し、植物ステロールを含有するコーヒー飲料を得た。このコーヒー飲料は90℃10分間の殺菌後も植物ステロールの分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。また本品のコーヒー飲料を30日間保管後にも沈殿物などは生じていなかった。
以上のように、本発明品である水分散性植物ステロール組成物は、水系添加できることから、該組成物含有飲食品を調製するにあたり何ら困難を伴うことはなく、該組成物の飲食品への汎用性が確認できた。

Claims (9)

  1. 遊離型植物ステロール粒子と、乳化剤と、水系溶媒を含有する水分散性遊離型植物ステロール組成物であって、遊離型植物ステロール粒子のレーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以下であり、乳化剤がクエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とすることを特徴とする水分散性遊離型植物ステロール組成物。
  2. 乳化剤が、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドに加えて、さらに、HLB値が9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB値が9以上のショ糖脂肪酸エステルを必須成分とし、水系溶媒が水、グリセリン、エタノールのうちから選択される1種又は2種以上の組み合せである請求項1記載の水分散性遊離型植物ステロール組成物。
  3. 遊離型植物ステロールが水分散性遊離型植物ステロール組成物の5〜40質量%であり、乳化剤が遊離型植物ステロールの配合質量に対して0.1〜2倍量であり、水系溶媒が遊離型植物ステロールの配合質量に対して1.3〜18倍量である請求項1又は請求項2記載の水分散性遊離型植物ステロール組成物。
  4. 水系溶媒に、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とする乳化剤を混合し、この混合溶液に遊離型植物ステロールを分散し、次いで、遊離型植物ステロールのレーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以下となるように湿式粉砕することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の水分散性植物ステロール組成物の製造方法。
  5. 遊離型植物ステロールと第1の乳化剤の混合物からなる粒子と、第2の乳化剤と、水系溶媒を含有する組成物であって、前記粒子のレーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以下であり、第1の乳化剤が、クエン酸モノグリセライド及び/又はコハク酸モノグリセライドを必須成分とする乳化剤であり、第2の乳化剤が、任意の乳化剤であることを特徴とする水分散性遊離型植物ステロール組成物。
  6. 第2の乳化剤が、HLB値が9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はHLB値が9以上ショ糖脂肪酸エステルを必須成分とする乳化剤である請求項5記載の水分散性遊離型植物ステロール組成物。
  7. 遊離型植物ステロールが水分散性遊離型植物ステロール組成物の5〜40質量%であり、第1の乳化剤と第2の乳化剤の合計量が遊離型植物ステロールの配合質量に対して0.1〜2倍量であり、水系溶媒が遊離型植物ステロールの配合質量に対して1.3〜18倍量である請求項5又は請求項6記載の水分散性遊離型植物ステロール組成物。
  8. 遊離型植物ステロールと第1の乳化剤を融解混合した後、第2の乳化剤を溶解させた水系溶媒の存在下、レーザー光散乱法による平均粒径が1μm以下となるように湿式粉砕することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項記載の水分散性遊離型植物ステロール組成物の製造方法。
  9. 請求項1〜3、5〜7のいずれか1項記載の水分散性遊離型植物ステロール組成物を配合したことを特徴とする植物ステロール含有飲食品。
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