JP2009064926A - ポリイミド樹脂表面への金属薄膜形成方法 - Google Patents

ポリイミド樹脂表面への金属薄膜形成方法 Download PDF

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里奈 村山
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智雄 今瀧
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芳郎 森田
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Abstract

【課題】ポリイミド樹脂を変形させることなく、密着性に優れた金属薄膜をポリイミド樹脂表面に製造する方法を提供すること。
【解決手段】アルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する工程;金属イオン含有溶液により該改質層を処理する工程;前記ポリイミド樹脂を第1の還元剤溶液へ浸漬する工程;前記ポリイミド樹脂を水乃至は還元剤成分を含まない水溶液に浸漬する浸水工程;および前記ポリイミド樹脂を第2の還元剤溶液へ浸漬する工程を含むことを特徴とするポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂と金属との複合材の製造方法に関するものであり、詳しくはポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法に関するものである。
近年、電子機器の小型携帯化により、フレキシブル配線板の薄型化および高密度化が進
行している。フレキシブル配線板の製造方法として、直接めっき法によるポリイミド金属積層板の研究が盛んに行われている。
例えば、特許文献1に示されている手順を図9〜図11を用いて説明する。図9はフローチャートであり、図10および図11はポリイミド樹脂の模式断面図である。
・図9の工程(1)
図10(a)および図10(b)に示すとおり、ポリイミド樹脂101をアルカリ性溶液(例えば5mol/LのKOH水溶液)で処理し、ポリイミド樹脂のイミド環を開環してイオン交換基(カルボキシル基)を生成する。生成された層は、改質層102である。
・図9の工程(2)
ポリイミド樹脂を、金属イオン含有液で処理し、改質層102に金属イオンを吸着させる。前記図9の工程(1)で改質層102に導入されたイオン交換能を有する基が、金属イオンとイオン交換反応を行うことにより金属イオンが導入される。
・図9の工程(3)
ポリイミド樹脂を、還元剤溶液に浸漬し、改質層102の表面に金属薄膜103を形成する。(図10(c))
・図9の工程(4)
電気化学的手法(電解めっき、無電解めっき)を用いて、金属薄膜103上に金属を増膜し、回路形成のための増膜めっき膜104を形成する。(図10(d))
・図9の工程(5)
めっき膜104の表面にレジストパターン105を形成し(図11(a))、エッチングすることで配線パターン106、金属薄膜107を形成し(図11(b))、レジストパターン105を除去する(図11(c))。
・図9の工程(6)
酸処理により改質層102に残存したカルボキシル金属塩から金属イオン成分を除去する。
・図9の工程(7)
180℃〜200℃の高温雰囲気下で10〜80分の加熱処理を実施する。図9の工程(6)で金属イオンが除去された改質層102は、イミド環が開環した分子構造から、熱処理によってイミド環が形成された構造となる。
特開2004-6584号公報
配線パターンとポリイミドとの密着性は、ポリイミド樹脂の内部に析出する金属薄膜103によるアンカー効果によって向上させることができる。そのため、図9の工程(3)において、改質層102の内部に金属を析出させる条件を検討したところ、還元剤溶液の還元剤が低濃度の場合や、還元剤溶液が低温の場合は、その他の条件を固定すると、改質層102の内部の深い領域に析出する金属が増えることが判った。
しかしながら、このように、改質層102の内部の深い領域に金属を析出させようとすると、しばしば、ポリイミド樹脂表面の改質層が変形するという問題が生じた。改質層に変形が生じた金属薄膜付きポリイミドフィルムの表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した写真を図6に示す。従来の直接めっき法によって形成した銅薄膜はポリイミドフィルム上に30〜50nmの厚さでほぼ均一に形成されており、図6に見られる幅が数μmのしわは、変形した改質層の表面形状を反映していた。変形した改質層を再イミド化処理しても、得られる樹脂表面は変形したままであった。このような変形の問題は、配線板として使用した場合に配線精度を悪化させることにつながる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ポリイミド樹脂を変形させることなく、密着性に優れた金属薄膜をポリイミド樹脂表面に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、
アルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する工程;
金属イオン含有溶液により該改質層を処理する工程;および
還元剤溶液により該改質層を処理する還元工程;
を含むポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法であって、
前記還元工程が、
前記ポリイミド樹脂を第1の還元剤溶液へ浸漬する工程;
前記ポリイミド樹脂を水乃至は還元剤成分を含まない水溶液に浸漬する浸水工程;および
前記ポリイミド樹脂を第2の還元剤溶液へ浸漬する工程
を含むことを特徴とするポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法に関する。
本発明のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法による効果は、以下のようなものである。
ポリイミド樹脂表面が変形するのを抑止しながら、密着性に優れた金属薄膜を形成できるので、当該金属薄膜を、フレキシブル配線板を製造する場合の電解めっき給電層として用いた場合に、フレキシブル配線板の配線の寸法精度や平坦性を高めることができる。また、電解めっき給電層としての金属薄膜の平坦性が高まるので、電解めっきにおいて、電流密度分布を均一に近づけることになり、その結果、電解めっきの膜質を均一とすることができる。
還元処理後、ポリイミド樹脂をアルカリ金属含有溶液により処理し、さらに酸溶液により処理する残存金属イオン除去処理を行うことにより、金属薄膜とポリイミドとの密着性をより有効に向上させることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明に係るポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法は、いわゆる直接めっき法(ダイレクトメタライゼーション)を用いている。
本発明に係るポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法は、詳しくは、
(1)アルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する工程;
(2)金属イオン含有溶液により該改質層を処理して、改質層に該金属イオンを吸着させる工程;および
(3)還元剤溶液により該改質層を処理して、改質層に吸着した金属イオンを還元させる工程;
を含むものである。
以下、本発明を図1〜図2を参照して説明する。図1は、本発明に係るポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法の製造工程を示すフロー図の一例であり、図2は、製造工程の一部を説明するためのポリイミド樹脂(基板)の断面模式図の一例である。
(1)改質工程
本発明において、直接めっき法を用いるに際し、金属析出(金属薄膜形成)のためにポリイミド樹脂表面を開環処理する必要がある。詳しくは図2(a)に示すようなポリイミド樹脂1をアルカリ性溶液に浸漬することで、図2(b)に示すように両面に改質層2を形成し、水洗する。この工程により、ポリイミド樹脂表面におけるポリイミド分子のイミド環が加水分解によって開環し、カルボキシル基が生成すると同時に、カルボキシル基の水素イオンがアルカリ性溶液中の金属イオンと置換され、改質層が形成される。例えば、化学式(1)で表されるポリイミドがKOH水溶液で処理される場合、加水分解による開環によって生成したカルボキシル基にカリウムイオンが吸着し、化学式(2)で表される構造を有するようになる。
ポリイミド樹脂の構造は特に制限されるものではなく、例えば、上記化学式(1)で表されるような、ピロメリット酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて製造されたポリイミド樹脂が使用可能である。
ポリイミド樹脂の形態は特に制限されず、可撓性を有するフィルム状のものから剛性を有するボード状のものまで、いかなるポリイミド樹脂も使用可能であるが、フレキシブル配線板を製造する観点からは、厚み10〜200μmの可撓性を有するフィルム状のものが好ましく使用される。ポリイミド基板を用いる場合、市販のものを使用することができ、例えば、アピカル(R)(カネカ製)、カプトン(R)(東レデュポン製)等として入手可能である。
アルカリ性溶液はポリイミドのイミド環を開環できる限り特に制限されるものではなく、例えば、K、Na等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩を含有する水溶液、Mg、Ca等のアルカリ土類金属の水酸化物を含有する水溶液、アミノアルコール類を含有する水溶液等が使用可能である。アルカリ性溶液に含有され、本工程で水素イオンと置換する金属イオンを以下、金属イオンAと呼ぶものとする。
本工程に用いられるアルカリ性溶液は通常は、濃度が3〜10M(mol/l)、溶液温度が20〜70℃であり、処理時間は1〜10分である。好ましくは、溶液温度は30〜50℃、処理時間は3〜7分である。処理温度が高すぎるとイミド環の開環以外の分子構造を破壊する可能性があり、処理時間が長すぎると改質層の厚さが厚くなりポリイミドの強度が低下し、プロセス継続が困難になる可能性がある。
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着したアルカリ性溶液を除去するために行う。従って、流水による水洗が望ましい。通常は、1〜5L/minの水量で、5分以上の水洗を行う。
(2)金属イオン吸着工程
本工程では、金属イオン含有溶液により前記改質層2を処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる。詳しくは、改質層2を有するポリイミド樹脂を、金属イオン含有溶液に浸漬して、改質層中の金属イオンAを、当該金属イオン含有溶液中の金属イオンと置換させ、水洗する。例えば、前記化学式(2)で表されるポリイミドが銅イオン含有溶液で処理される場合、化学式(3)で表される構造を有するようになる。
金属イオン含有溶液中に含まれる金属イオンは後述の工程で還元されて金属薄膜として析出するものである。例えば、Niイオン、Cuイオン、Coイオン、Pdイオン、Agイオン、もしくはそれらの組み合わせが挙げられる。そのような金属イオンを含有する溶液として、それらの金属の硫酸塩、硝酸塩、塩化物等の水溶液が使用可能である。具体的には、例えば、NiSO水溶液、CuSO水溶液、CoSO水溶液、PdSO、AgNO水溶液、NiCl水溶液、およびそれらの混合液などが使用可能である。金属イオン含有溶液に含有され、本工程で金属イオンAと置換する金属イオンを以下、金属イオンBと呼ぶものとする。
本工程に用いられる金属イオン含有溶液は通常は、濃度が0.01〜0.1M(mol/l)、処理温度が20〜30℃であり、処理時間は5分以上である。特に本工程での処理時間は、工程(1)における改質処理の条件により適宜設定される。例えば、ポリイミド改質層の厚さが約5μmの場合、少なくとも5分間吸着処理を行えば十分である。例えば、金属イオン含有溶液が強酸性の水溶液であると、改質層には水素イオンが吸着しやすくなってしまうため、金属イオン含有溶液は弱酸性から弱アルカリ性が望ましい。特に硫酸塩の場合、上記濃度範囲であれば、pHは2以下になることはなく、問題はない。
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着した金属イオン含有溶液を除去するために行う。金属イオン含有溶液を次工程に持ち込むと還元剤溶液のpHの変動をもたらす原因となる。水洗は通常、1〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
(3)還元工程
本工程では、改質層2に吸着した金属イオンを還元させるに際し、
(3−1)前記ポリイミド樹脂を第1の還元剤溶液へ浸漬する工程;
(3−2)前記ポリイミド樹脂を水に浸漬する工程;および
(3−3)前記ポリイミド樹脂を第2の還元剤溶液へ浸漬する工程
を行う。このように還元剤溶液処理を2段階で行い、かつ、その間で浸水処理を行うことにより、還元の初期段階における改質層表面での金属結晶核の成長を抑制する。しかも改質層内部において金属の結晶核の生成を促進しながらも、その過度の成長を抑制する。その結果、改質層の内部から表面にかけて比較的多くの微細な金属粒子が析出し、改質層に発生する応力を分散できるので、金属薄膜の密着性向上を達成しながらも、改質層表面の変形を抑制できる。浸漬処理を行わない場合、還元工程の条件を比較的強く設定したときには、還元の初期段階において改質層表面で金属結晶核が過度に成長し、改質層内部に還元剤が拡散されず、内部で金属が析出しにくくなるので、金属薄膜の密着性が低下する。浸漬処理を行わない場合、還元工程の条件を比較的弱く設定したときには、改質層内部において金属結晶核が過度に成長し、析出する金属粒子が過大になるので、改質層に応力が過大になる部分が局所的に生じ、変形が発生する。2段階の還元剤溶液処理をそれぞれ適度な条件で行ったとしても、その間で浸水処理を行わないと、改質層内部で金属結晶を十分に析出させることができないため、アンカー効果が得られずに、金属薄膜の密着性が低下する。
(3−1)第1の還元剤溶液浸漬工程
本工程では、改質層2に金属イオンを吸着されたポリイミド樹脂を第1の還元剤溶液に浸漬する。これによって、還元剤を改質層2の内部に吸収および拡散させる。
本工程に使用される第1の還元剤溶液は、還元剤を改質層の内部に吸収および拡散させることができれば特に制限されず、通常は無電解めっき法で一般的に使用される還元剤の水溶液が使用できる。例えば、水素化ホウ素ナトリウムやジメチルアミンボラン等のホウ素化合物の水溶液などが使用可能である。
第1の還元剤溶液の温度は使用する還元剤により異なるが、低いほうが好ましい。例えば、還元力が強く、分解しやすい水素化ホウ素ナトリウムの水溶液は20℃以下、望ましくは0〜15℃くらいの範囲で用いる。また例えば、水素化ホウ素ナトリウムに比べると酸化還元反応が緩やかなジメチルアミンボランなどでも30℃以下で使用され、好ましくは10〜25℃で使用する。
第1の還元剤溶液の還元剤濃度は、使用する還元剤により異なるが、例えば、水素化ホウ素ナトリウムの場合、0.1〜10m mol/L、望ましくは0.5〜5m mol/Lである。また例えば、ジメチルアミンボランの濃度は0.05〜5.0mol/Lの範囲で使用する。
第1の還元剤溶液のpHは、還元剤の種類によって異なるが、還元剤が分解しない程度の範囲で低いほうが望ましい。例えば、水素化ホウ素ナトリウムの場合は、pH8〜10の範囲で使用する。還元剤溶液が酸性になると、水素化ホウ素イオンの分解速度が速まるため、還元剤溶液が疲弊するので好ましくない。逆に、還元剤溶液のpHが大きすぎると、水素化ホウ素イオンの還元力が高まり、改質層2の表面近傍で金属が析出しやすくなる。また例えば、ジメチルアミンボランは、水素化ホウ素イオンに比べて弱酸性下でも分解しにくく、pH7〜9の範囲で使用するのが望ましい。このとき、必要に応じてpH調整剤を還元剤溶液に添加しても良い。
本工程は、改質層2の表面が、析出した金属で覆われる前に終了することが望ましい。第1の還元剤溶液への浸漬時間は、還元剤溶液の条件によって異なり、例えば水素化ホウ素ナトリウム水溶液を用いて銅を析出させる場合、還元剤濃度0.1〜1m mol/L、還元剤溶液温度25℃、還元剤溶液のpHが8〜10のとき、浸漬時間は0.5〜5分の範囲である。還元剤溶液温度を低くとすると、浸漬時間をさらに長くすることができ、時間制御が容易であるので望ましい。例えば、上記条件で、還元剤溶液温度を10℃にすると、還元剤濃度は0.1〜10m mol/L、浸漬時間は1〜15分の範囲となる。
また例えば、還元剤をジメチルアミンボランにすると、さらに浸漬時間を遅くすることができる。ジメチルアミンボラン水溶液を用いて銅を析出させる場合は、還元剤濃度0.05〜5.0mol/L、還元剤溶液温度25℃、還元剤溶液のpH7〜9の場合、浸漬時間は1〜15分の範囲である。上記条件で、還元剤溶液温度を20℃にすると、浸漬時間は2〜20分の範囲となる。
第1の還元剤溶液は、後述の第2の還元剤溶液浸漬工程で使用される第2の還元剤溶液よりも、還元速度が遅いものを使用することが好ましい。そのような第1の還元剤溶液を使用すると、金属を析出させず、かつ、浸漬時間を長時間化することが可能で、改質層内部に還元剤をより有効に拡散させることができるためである。第2の還元剤溶液よりも、還元速度が早いものを使用すると、還元剤の分解反応速度や、金属イオンの還元反応速度が大きくなり、その結果、短時間で、改質層の表面付近にのみ金属が析出する。一旦、改質層表面を覆うように金属が析出すると、金属が還元剤に対して有する触媒活性によって、すでに析出した金属の周辺で金属イオンの還元反応がより一層生じやすくなる。その結果、改質層の内部で金属が析出しにくくなり、金属薄膜の密着性が低下する。
還元速度とは、金属が析出する速度であり、同じ金属イオンを飽和するまで吸着させた同じ厚さの改質層を有するポリイミド樹脂を、それぞれの還元剤溶液に浸漬し、単位時間あたりの金属析出量を測定することによって、その遅速を認識できる。例えば、上記した改質工程および金属イオン吸着工程によって得られた改質層を有するポリイミド樹脂を2つ用意し、それぞれを2種類の還元剤溶液に所定時間浸漬する。その後、乾燥して金属析出量を測定し、当該量が少ない方が還元速度が比較的遅いものである。
還元速度は、還元剤溶液の濃度、pH、温度、還元剤の種類に依存する。還元剤溶液の濃度は、単位時間あたりに生じる金属イオンの還元反応の数に影響を及ぼし、還元剤溶液のpHは、還元剤の酸化反応の可逆電位に影響を及ぼすため、還元速度そのものに影響を及ぼす。還元剤溶液の温度は、還元剤が分解する反応と、還元剤の酸化還元反応、さらに、金属原子から金属結晶核が生成もしくは成長する速度にも影響を及ぼす。還元剤の種類は、その還元剤自身の還元速度はもちろんのこと、還元する金属によって触媒活性も異なる。よって、その他の条件が等しい場合、還元速度が比較的遅い第1の還元剤溶液は下記の条件のうちの少なくとも1つの条件を満たす;
還元剤の濃度が比較的薄い;
pHが比較的低い;
温度が比較的低い;および
還元剤の酸化反応の標準電極電位が比較的高い。
したがって、本発明では、第1および第2の還元剤溶液の還元剤の種類が同じ場合、下記条件から選択される少なくとも1つの条件を満たすことが好ましい;
条件A1;第1の還元剤溶液の濃度を第2の還元剤溶液よりも低くする;
条件A2;第1の還元剤溶液の温度を第2の還元剤溶液よりも低くする;および
条件A3;第1の還元剤溶液のpHを第2の還元剤溶液よりも小さくする。より好ましくは少なくとも上記条件A2を満たす。
第1の還元剤溶液の還元剤として、第2の還元剤溶液の還元剤と異なる種類の還元剤を使用する場合は、還元剤の酸化反応の可逆電位について、第1の還元剤溶液の還元剤が、第2の還元剤溶液の還元剤よりも高いものを用いることが好ましい。そのような関係を有する第1の還元剤溶液の還元剤−第2の還元剤溶液の還元剤の組み合わせとして、以下の組み合わせが挙げられる。
第1の還元剤溶液の還元剤−第2の還元剤溶液の還元剤;
ジメチルアミンボラン−水素化ホウ素ナトリウム;
トリメチルアミンボラン−ジメチルアミンボラン;
第1の還元剤溶液にはpH調整剤等の添加剤を添加してもよい。
(3−2)浸水工程
本工程では、改質層2に還元剤が拡散されたポリイミド樹脂を、還元性物質を含まない水に単に浸漬する。詳しくは、ポリイミド樹脂を浸水し、水中で静置する。これによって、改質層2の表面に付着した還元剤を除去して改質層表面での金属結晶核の成長を抑制しながらも、改質層内部において金属の結晶核を生成させる。また、第1の還元剤溶液のpHがアルカリ性であった場合には、pHが下がることによって、還元剤の分解反応が促進される。しかも、改質層内部へ還元剤が新たに供給されることはないので、改質層内部での結晶核の過度の成長を抑制する。水への浸漬の代わりに、流水洗浄を付与すると、改質層内部に拡散した還元剤が滲出し、除去されるので、改質層内部で金属が有効に析出せず、金属薄膜の密着性が低下する。本工程では、表面に付着した還元剤除去のために、ポリイミド樹脂を、浸水直後に揺動してもよい。
浸水工程の水温は、使用する還元剤により異なるが、30〜90℃が望ましい。温度が低すぎると、酸化還元反応が遅くなり、金属原子から金属結晶に変化するにあたって結晶核の生成反応よりも成長反応が優勢となって金属結晶核の数が増えなくなる。この結果、後に行う第2の還元剤溶液浸漬工程において、改質層2の内部の金属結晶粒が粗大化し、改質層2を変形させ、あるいはアンカー効果による金属薄膜とポリイミド樹脂との密着性向上効果が得られなくなる。
浸水工程の水温は、第1の還元剤溶液よりも高いことが望ましい。これよって、改質層内部で還元された金属原子から金属結晶が生成する反応において、金属結晶の核が発生する確率を高めることができる。その結果、改質層内部において微細な金属結晶を多数析出させることで改質層に発生する応力をより有効に分散させることができる。また、改質層表面上においても金属結晶の核が多数析出させることによって、金属の析出ムラが抑制される。浸水工程では通常、1〜15分間浸水する。
浸水工程(3−2)で使用される水には、還元性物質以外の物質であれば、pH調整剤等の添加剤が添加されてもよい。
本発明において第1の還元剤溶液浸漬工程(3−1)および浸水工程(3−2)は、各1回ずつ行えば良いが、改質層2の内部における金属の析出量が少ない場合には、それらの工程を1セットとして、複数セット行っても構わない。
(3−3)第2の還元剤溶液浸漬工程
本工程では、浸水工程で得られたポリイミド樹脂を第2の還元剤溶液に浸漬する。これによって、改質層2の内部に残る金属イオンを還元し、図2(c)に示すように、微細な金属結晶を改質層2の内部および表面に析出させ、金属薄膜3を形成する。
第2の還元剤溶液は、第1の還元剤溶液浸漬工程(3−1)で使用可能な第1の還元剤溶液が使用可能であり、通常は、前記したように、第1の還元剤溶液よりも、還元速度が速いものを使用することが好ましい。
第2の還元剤溶液の温度は、前記工程(3−1)の説明で記載した理由から、第1の還元剤溶液の温度よりも高いことが好ましい。例えば、水素化ホウ素ナトリウムの水溶液は20〜50℃、ジメチルアミンボラン水溶液では30〜70℃が望ましい。
第2の還元剤溶液の還元剤濃度は、前記工程(3−1)の説明で示した条件範囲で良いが、第1の還元剤溶液の濃度と同等以上であることが望ましい。例えば、水素化ホウ素ナトリウムは0.2〜10m mol/L、ジメチルアミンボランは0.05〜10mol/Lの範囲で使用する。
第2の還元剤溶液のpHは、還元剤の種類によって異なるが、還元速度を速める意味合いから、金属の水酸化物や酸化物が出ない範囲で、pHは高いことが望ましい。例えば、水素化ホウ素ナトリウム水溶液ではpH8.5〜10、ジメチルアミンボラン水溶液ではpH8〜10の範囲で使用する。
第2の還元剤溶液への浸漬時間は、第2の還元剤溶液の条件と、金属イオンの種類、改質層2の厚さによって異なる。例えば水素化ホウ素ナトリウム水溶液を用いて、厚み2〜5μmの改質層2中の銅を析出させる場合、還元剤濃度0.2〜1m mol/L、還元剤溶液温度25℃、還元剤溶液のpHが8〜10のとき、浸漬時間は15〜25分の範囲が好適である。また例えば、ジメチルアミンボラン水溶液を用いて、厚み2〜5μmの改質層2中の銅を析出させる場合は、還元剤濃度0.1〜10mol/L、還元剤溶液温度50℃、還元剤溶液のpH7〜9の場合、浸漬時間は15〜25分の範囲が好適である。
還元工程(3)において金属イオンが還元されるのに伴い、金属イオンが吸着されていた改質層は金属イオンが水素イオンに置き換わった構造、あるいは、金属イオンが還元剤溶液中に含まれるアルカリ金属イオンに置き換わった構造のいずれかとなる。
第2の還元剤溶液には第1の還元剤溶液と同様の添加剤を添加してもよい。
第2の還元剤溶液浸漬工程後は通常、ポリイミド樹脂表面に付着した第2の還元剤溶液を除去するために水洗を行う。水洗は通常、1〜5リットル/分の水量で、5分以上の条件で行う。
以上の工程で改質層の内部および表面に金属薄膜が形成されたポリイミド樹脂は、通常、さらに以下の工程に付される;
(4)改質層に残存する金属イオンを除去する工程;および
(5)イミド環を閉環する再イミド化工程。
(4)残存金属イオン除去工程
還元工程(3)において、改質層中の金属イオンBは全てが還元されるわけではなく、改質層には金属イオンBが残存するので、本工程において当該金属イオンBを除去する。その方法としては、特に制限されず、後述の酸溶液改質層処理工程(4−2)を単独で行ってもよいが、アルカリ金属含有溶液処理工程(4−1)を行った後で、酸溶液処理工程(4−2)を行うことが好ましい。金属イオンBから水素イオンへの置換が十分に達成できるためである。
(4−1)アルカリ金属含有溶液処理工程
本工程では、アルカリ金属含有溶液により前記改質層2を処理して、改質層2の内部に残存する金属イオンBを該アルカリ金属イオンと置換させる。詳しくは、改質層2を有するポリイミド樹脂を、アルカリ金属含有溶液に浸漬して、改質層2中の金属イオンBを、当該アルカリ金属含有溶液中のアルカリ金属イオンと置換させ、水洗する。上記還元工程(3)で使用された還元剤溶液に金属イオンが含有されていた場合等、改質層2に金属イオンB以外のものも含有されていた場合は、本工程において、そのような金属イオンもアルカリ金属イオンと置換させることができる。
本工程で金属イオンB(例えば、Cuイオン)を一旦、アルカリ金属イオンに置換させるので、次工程における水素イオンへの置換を速やかに行うことができる。例えば金属イオンBがCuイオン、Niイオン、Coイオン等の場合、アルカリ金属含有溶液としてアルカリ性のものを使用することにより、当該金属イオンBが水酸化物として析出し、当該反応は不可逆的に進行するため、アルカリ金属イオンへの置換が容易に起こるものと考えられる。
アルカリ金属含有溶液は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を含有するアルカリ性の水溶液が使用される。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。アルカリ金属含有溶液は、置換される金属イオンBとの組み合わせについて、以下の組み合わせで使用されることが好ましい。
(アルカリ金属含有溶液−金属イオンB)
NaOH水溶液−Cuイオン
KOH水溶液−Cuイオン
NaCO水溶液−Cuイオン
NaOH水溶液−Niイオン
KOH水溶液−Niイオン
NaOH水溶液−Coイオン
KOH水溶液−Coイオン
アルカリ金属含有溶液の濃度は、工程(3)で残存した改質層中の金属イオンBの量に対して十分多い量のアルカリ金属イオンを含んでいればよく、例えば、0.1〜2mol/L、望ましくは0.5〜1mol/Lである。処理時間は、1分〜15分、望ましくは3分〜10分である。処理温度は、10℃〜40℃、望ましくは20℃〜30℃である。温度が高すぎると、ポリイミド改質層がさらに改質され、ポリイミド樹脂と金属薄膜との密着強度低下につながる恐れがある。温度が低すぎると、温度を安定させることが難しくなり、コスト増になる。また、本工程で用いる溶液に、酸化防止剤、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム等を添加しても良い。
水洗は、ポリイミド樹脂表面に付着したアルカリ金属含有溶液を除去するために行う。水洗は通常、1〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
(4−2)酸溶液処理工程
本工程では、酸溶液により前記改質層2を処理して、当該改質層2中に含有されるアルカリ金属イオンを水素イオンと置換させる。詳しくは、改質層2を有するポリイミド樹脂を酸溶液に浸漬して、改質層2中のアルカリ金属イオンを、当該酸溶液中の水素イオンと置換させる。
本工程におけるアルカリ金属イオンの水素イオンへの置換は速やかに起こる。その結果、改質層中の金属イオンの残存を防止できるので、改質層の再イミド化を有効に行うことができ、金属薄膜とポリイミド樹脂との密着性を向上できる。アルカリ金属イオンの水素イオンへの置換は、銅イオン等の前記金属イオンBの水素イオンへの置換よりも著しく円滑に起こる。
酸溶液は、具体的には、例えば、硫酸水溶液、クエン酸水溶液等が使用できる。可能であれば、工程(3)の還元処理により析出した金属薄膜を溶かさない、或いは溶かしにくい酸溶液を用いることが望ましい。
例えば、銅薄膜が析出した場合、クエン酸等が好ましく使用される。
また例えば、ニッケル薄膜が析出した場合、硫酸、クエン酸等が好ましく使用される。
酸溶液の濃度は、工程(4−1)で置換した改質層中のアルカリ金属イオンの量に対して十分多い量の水素イオンを含んでいればよく、例えば、0.1〜1.0mol/L、望ましくは0.2〜0.5mol/Lである。処理時間は1分〜15分、望ましくは2分〜10分である。処理温度は、10℃〜40℃、望ましくは20℃〜30℃である。
酸溶液処理後は通常、ポリイミド樹脂表面に付着した酸溶液を除去するために水洗し、所望により乾燥を行う。
水洗は通常、1〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
乾燥条件は特に制限されず、通常は温度が80〜140℃、望ましくは100〜120℃、時間は30〜60分である。得られた金属薄膜の酸化防止のため、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気で加熱処理することが望ましい。真空雰囲気で乾燥を行う場合は、特に加熱の必要はなく常温で実施しても良い。その場合は乾燥時間を120分以上とする等、時間を長くすることが望ましい。
(5)再イミド化工程
本工程ではイミド環を閉環する。詳しくは、前工程で得られたポリイミド樹脂を加熱することで、改質層2が再イミド化される(再イミド化ベーク処理)。これによって、機械的強度、耐熱性、耐薬品性に劣る改質層(ポリアミック酸)を、元のポリイミド分子構造に戻すことができる。
処理条件は、改質層の再イミド化を達成できる限り特に制限されず、例えば、温度が250℃以上、時間は1時間以上である。得られた金属薄膜3の酸化防止のため、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気で加熱処理することが望ましい。
還元工程(3)における第1の還元剤溶液浸漬工程(3−1)および第2の還元剤溶液浸漬工程(3−3)で、ジメチルアミンボランやトリメチルアミンボランなどの、金属イオンを含まない還元剤だけを用いた場合、工程(3−3)が終了した時点で改質層2に吸着している金属イオンは、金属イオン吸着工程(2)で改質層2に吸着された金属イオンBのみである。この場合は、残存金属イオン除去工程(4)を行わず、水素ガス雰囲気中で再イミド化工程(5)を行って、水素ガスで金属イオンBを還元しながら、イミド環を閉環させても良い。
以上に示した本発明のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法は、ポリイミド配線板、特にフレキシブル配線板の製造方法に適用可能である。
(6)配線形成工程
例えば、本発明のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法によって得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して、いわゆるサブトラクティブ法、セミアディティブ法等によって配線パターンを形成すればよい(配線形成工程)。
詳しくはサブトラクティブ法においては、例えば、本発明で得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して、所望により電解/無電解めっき等により金属膜をさらに形成し、配線領域にレジストパターンを形成した後、金属膜の露出部(非配線領域)をエッチング除去し、レジストパターンを除去すればよい。
セミアディティブ法においては、例えば、本発明で得られた金属薄膜を有するポリイミド樹脂に対して非配線領域にレジストパターンを形成し、金属薄膜の露出部(配線領域)に電解/無電解めっき等により金属膜を形成した後、レジストパターンを除去し、さらに金属膜をマスクとして金属薄膜の露出部をエッチング除去すればよい。
本発明によるポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法について、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(実施例1)
以下に説明する工程により、ポリイミド樹脂表面へCu薄膜を形成した。
対象ポリイミド樹脂は、125μm厚のポリイミドフィルムを用いた。ポリイミドフィルムとしては、東レ・デュポン社のカプトンHを使用した(図2(a))。
<改質工程>
ポリイミドフィルム1をKOH水溶液(温度50℃、KOH濃度5mol/L)に3分間浸漬し、改質工程を実施した。図2(b)に示すように改質層2を形成した。改質層2の厚さは、ポリイミド樹脂の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、約3μmであった。次に、ポリイミドフィルム1を、2リットル/分の流水で5分間水洗を実施した。
<金属イオン吸着工程>
次に、ポリイミドフィルム1を硫酸銅水溶液(温度25℃、濃度0.05mol/L)に10分間浸漬し、改質層2に、銅イオンを吸着させた。次に、ポリイミドフィルム1の水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
<第1の還元剤溶液浸漬工程>
次に、ポリイミドフィルム1を第1の還元剤溶液(ジメチルアミンボラン水溶液、濃度0.5mol/L、温度20℃、ホウ酸によりpH7.5に調整)に5分間浸漬した。このとき、改質層2の内部および表面には、わずかに銅の析出が目視で確認できたが、改質層2の表面を覆ってはおらず、ポリイミドフィルム1の向こう側が透けて見えるような状態であった。
<浸水工程>
次に、ポリイミドフィルム1を、50℃の純水に浸水し、揺動してポリイミドフィルム1の表面に付着した還元剤溶液を除去した後、10分間、静置した。改質層2の内部には銅が析出した。また、改質層2の表面に、気泡が発生を確認した。この気泡は、改質層2の内部に吸収されていたジメチルアミンボランが分解して生じた水素ガスであると考えられ、浸水を開始して5分間程度で、気泡の新たな発生は確認されなくなった。
<第2の還元剤溶液浸漬工程>
次に、ポリイミドフィルム1を第2の還元剤溶液(ジメチルアミンボラン水溶液、濃度0.5mol/L、温度50℃、pH8.9)に20分間浸漬した。析出した銅は、改質層2の表面を覆い、図2(c)に示すように金属薄膜3を形成した。その後、ポリイミドフィルムを第2の還元剤溶液から取り出し、2リットル/分の流水で5分間、水洗した。
この工程を終えて取り出したポリイミドフィルム1を表面から観察したSEM写真を図3に示す。平滑な改質層2の上に均一な厚さで金属薄膜3が形成された結果、金属薄膜3の表面も平滑であることを確認した。
<残存金属イオン除去工程>
次に、ポリイミドフィルム1を、水酸化ナトリウム水溶液(濃度1mol/L、温度25℃)に3分間浸漬した後で、ポリイミドフィルム1を2リットル/分の流水で30分間、水洗した。
さらに、ポリイミドフィルム1をクエン酸水溶液(濃度0.2mol/L、温度25℃)に7分間浸漬後、2リットル/分の流水で5分間水洗した。
<再イミド化工程>
次に、ポリイミドフィルム1を加熱処理した。詳しくは、まず、窒素ブローによりポリイミドフィルム1の表面に付着した水分を除去した後、窒素雰囲気中で、140℃に3時間保持し、その後、昇温して300℃で1時間保持した後、冷却した。
<配線形成工程>
次に、図4(a)に示すように、電解銅めっきを行って増膜めっき膜4を形成した。電解銅めっきは、市販の硫酸銅電解めっき液(硫酸銅5水塩90g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50ppm、添加剤)を用いて、0.5〜2.0A/dm2の陰極電流密度で実施した。その後、ドライフィルムレジスト(日立化成工業(株)フォテックRYシリーズ、25μm厚)を用いて、ラミネート、露光、現像の工程を経て、図4(b)に示すようなレジストパターン5を形成した。その後、再度、上記と同様の電解銅めっきを行って配線パターン6を形成した。最後にレジストパターン5を剥離し、配線パターン6をマスクとして用いて、露出している増膜めっき膜4およびその直下の金属薄膜3をエッチングし、配線板を形成した。配線パターン6の寸法は幅3mm、厚さ18μm、長さ15cmであった。
<評価>
金属薄膜とポリイミドフィルムとの密着性を調べるため、ピール試験を実施した。
ピール試験は、JISC6471に規定されている90°引き剥がし試験方法により行った。試験機は、一般的な引張試験機を用いた。詳しくはポリイミドフィルムの裏面を、市販のエポキシ系接着剤を用いて金属板に貼り付け、その金属板をピール試験治具に取り付けた。一部だけ引き剥がした銅パターンと、引っ張り試験機のロードセルと接続した。この後、引っ張り試験を行い、ピール強度を求めた。
実施例1の条件で作製した金属薄膜のピール強度は、1.0〜1.2kN/mを示した。
(比較例1)
実施例1の比較のため、図5のフローチャートに示す工程で、ポリイミドフィルム1上に銅薄膜を形成し、その後配線板を形成した。
実施例1と同様の条件で、ポリイミドフィルムに対して、改質工程(図5の工程(1))、金属イオン吸着工程(図5の工程(2))を行った後、以下に示す還元剤溶液浸漬工程(図5の工程(3))を行った。
還元剤溶液は、実施例1の第1の還元剤溶液浸漬工程と同じく、ジメチルアミンボラン水溶液(濃度0.5mol/L、温度20℃、ホウ酸によりpH7.5に調整)を用いた。ただし、ポリイミドフィルムは還元剤溶液に50分間浸漬した。
この工程を終えて取り出したポリイミドフィルムでは、図6に示すような改質層2の変形を確認した。
この後は、実施例1と同様の工程を実施して、形成された金属薄膜のピール強度を、実施例1に記載の方法で、調べたところ、ピール強度は0.3〜0.5kN/mを示した。
(実施例2)
図1に示すフローチャートを用いて、実施例2を説明する。
本実施例では、第1の還元剤溶液浸漬工程、第2の還元剤溶液浸漬工程には、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用した。その他の条件は、実施例1と同様であるため、詳細な形成工程の説明を省略する。
<第1の還元剤溶液浸漬工程>
図1の工程(1)および(2)を実施例1と同様の条件で実施したポリイミドフィルム1を、第1の還元剤溶液(水素化ホウ素ナトリウム水溶液、濃度1m mol/L、温度10℃、pH9.4)に1分間浸漬した。このとき、改質層2の内部および表面には、わずかに銅の析出が目視で確認できたが、改質層2の表面を覆ってはおらず、ポリイミドフィルム1の向こう側が透けて見えるような状態であった。
<浸水工程>
次に、ポリイミドフィルム1を、50℃の純水に浸水し、10分間、静置した。改質層2の内部には銅が析出した。
<第2の還元剤溶液浸漬工程>
次に、ポリイミドフィルム1を第2の還元剤溶液(水素化ホウ素ナトリウム水溶液、濃度5m mol/L、温度25℃、pH9.5)に20分間浸漬した。析出した銅は、改質層2の表面を覆い、図2(c)に示すような金属薄膜3を形成した。その後、ポリイミドフィルムを第2の還元剤溶液から取り出し、2リットル/分の流水で5分間、水洗した。
この工程を終えて取り出したポリイミドフィルム1の表面は平滑であった。
この後は、実施例1と同様の工程を実施して、形成された金属薄膜のピール強度を、実施例1に記載の方法で、調べたところ、1.0〜1.2kN/mを示した。
(比較例2)
実施例2の比較のため、図5のフローチャートに示す工程で、ポリイミドフィルム1上に銅薄膜を形成し、その後配線板を形成した。
実施例2と同様の条件で、ポリイミドフィルムに対して、改質工程(図5の工程(1))、金属イオン吸着工程(図5の工程(2))を行った後、以下に示す還元剤溶液浸漬工程(図5の工程(3))を行った。
還元剤溶液は、実施例2の第1の還元剤溶液浸漬工程と同じく、水素化ホウ素ナトリウム水溶液(濃度1m mol/L、温度10℃、pH9.4)を用い、ポリイミドフィルムを浸漬した。ただし浸漬時間を50分間とした。
この工程を終えて取り出したポリイミドフィルムでは、図6に示すような改質層2の変形を確認した。
(比較例3)
実施例2の比較のため、図5のフローチャートに示す工程で、ポリイミドフィルム1上に銅薄膜を形成し、その後配線板を形成した。
実施例2と同様の条件で、ポリイミドフィルムに対して、改質工程(図5の工程(1))、金属イオン吸着工程(図5の工程(2))を行った後、以下に示す還元剤溶液浸漬工程(図5の工程(3))を行った。
還元剤溶液は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液(濃度5m mol/L、温度25℃、pH9.5)を用い、ポリイミドフィルムを20分間浸漬した。
この工程を終えて取り出したポリイミドフィルムの表面は平滑であった。
さらに、図5の工程(4)〜(6)を、実施例2と同様の条件で実施し、形成された金属薄膜の密着性を調べるため、実施例2と同様にピール試験を実施した。ピール強度は0.2〜0.4kN/mを示した。
実施例2に比べて、比較例3の条件で作製した金属薄膜3のピール強度が弱かった原因を調べるため、実施例2と比較例3の条件で作製したポリイミドフィルムそれぞれについて、金属薄膜の析出状態を比較した。
図7は、実施例2の第2の還元剤溶液浸漬工程を終えて取り出したポリイミドフィルム1の表面に析出した金属薄膜3の断面写真である。
図8は、比較例3の還元剤溶液浸漬工程の後で取り出したポリイミドフィルムの表面に析出した金属薄膜の断面写真である。
図7と図8を比較すると、比較例3では改質層の内部に析出した金属の量が、実施例2に比べて少ないことがわかった。比較例3は、改質層は変形しなかったが、改質層の内部に析出した金属が少なかったため、アンカー効果による金属薄膜の密着性向上効果が得られなかったと考えられる。
[実験例2]
図6に示すような改質層が変形して皺が発生する問題は、表1〜表3の実験結果に示すように、還元剤溶液の温度が低い、還元剤溶液の還元剤濃度が低い、還元剤溶液のpHが低い、還元剤溶液への浸漬時間が長い、といった条件において発生し、特に還元剤溶液の温度が低い場合に改質層の変形が大きかった。これらの実験結果から、改質層内部に析出する金属粒子サイズが大きくなった場合に、改質層内に局所的に応力の大きな場所が生じ、改質層が変形したと考えられる。
詳しくは、所定の還元剤溶液に所定時間だけ浸漬させることにより、還元剤溶液浸漬工程を行ったこと以外、比較例1から3と同様の方法により、金属薄膜を形成した。
本発明の方法はフレキシブル配線板の製造に利用可能であり、片面フレキシブル配線板、両面フレキシブル配線板を複数枚積層した多層フレキシブル配線板や、ガラスエポキシ基板などの硬質基板とも合わせて積層したリジッド−フレキシブル配線板の製造などにも広く利用可能である。
本発明によるポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法の工程フロー図。 本発明によるポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法の工程を説明する模式断面図。 本発明によるポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法によって形成されたポリイミド樹脂表面上の金属薄膜のSEM写真。 本発明によるポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法の工程を説明する模式断面図。 従来のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法の工程フロー図。 従来のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法によって形成されたポリイミド樹脂上の金属薄膜のSEM写真。 本発明によるポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法によって形成されたポリイミド樹脂表面上の金属薄膜断面のSEM写真。 従来のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法によって形成されたポリイミド樹脂上の金属薄膜断面のSEM写真。 従来のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法の工程フロー図。 従来のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法の工程を説明する模式断面図。 従来のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法の工程を説明する模式断面図。
符号の説明
1:101:ポリイミド樹脂、2:102:改質層、3:103:金属薄膜、4:104:増膜めっき膜、5:105:レジスト、6:106:配線パターン。

Claims (7)

  1. アルカリ性溶液によりポリイミド樹脂表面を処理してイミド環を開環し、改質層を形成する工程;
    金属イオン含有溶液により該改質層を処理する工程;および
    還元剤溶液により該改質層を処理する還元工程;
    を含むポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法であって、
    前記還元工程が、
    前記ポリイミド樹脂を第1の還元剤溶液へ浸漬する工程;
    前記ポリイミド樹脂を水乃至は還元剤成分を含まない水溶液に浸漬する浸水工程;および
    前記ポリイミド樹脂を第2の還元剤溶液へ浸漬する工程
    を含むことを特徴とするポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法。
  2. 前記浸水工程で、前記ポリイミド樹脂を前記第1の還元剤溶液よりも高温の水乃至は還元剤成分を含まない水溶液に浸漬することを特徴とする請求項1に記載のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法。
  3. 前記第1の還元剤溶液の還元速度のほうが、第2の還元剤溶液に比べて遅いことを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法。
  4. 前記第1の還元剤溶液と前記第2の還元剤溶液に含まれる還元剤の種類が同じで、かつ、前記第1の還元剤溶液の温度が、前記第2の還元剤溶液よりも低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法。
  5. 前記第1の還元剤溶液と前記第2の還元剤溶液に含まれる還元剤の種類が同じで、かつ、前記第1の還元剤溶液の濃度が、前記第2の還元剤溶液よりも低いことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法。
  6. 前記第1の還元剤溶液と前記第2の還元剤溶液に含まれる還元剤の種類が同じで、かつ、前記第1の還元剤溶液のpHが、前記第2の還元剤溶液よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法。
  7. 前記還元工程後、さらに以下の工程を順次行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド樹脂への金属薄膜製造方法;
    前記ポリイミド樹脂をアルカリ金属含有溶液により処理する工程;
    前記ポリイミド樹脂を酸溶液により処理する工程;および
    イミド環を閉環する再イミド化工程。
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