JP2009060821A - Acc亜分類の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
ACC患者に対して、有効な治療を行うために、ACCの悪性度と、薬剤治療適応性判定して、ACC亜分類を検出するための方法を提供することをその主な課題とする。
【解決手段】
被験者由来の組織細胞を材料として、染色体CGH(c−CGH)法、アレイCGH(a−CGH)法、または免疫組織化学的手法によって、ACC患者の染色体、及び/又は遺伝子の異常を、統計学的に正常細胞と比較解析することにより、ACCの悪性度と、チロシンキナーゼ活性阻害作用を有する薬剤のACC患者に対する有効性を判定する、ACC亜分類の検出方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ACC(adenoid cystic carcinoma)の亜分類の検出方法に関し、詳しくは、特定の染色体領域、又は遺伝子におけるDNAコピー数の増減、あるいは特定遺伝子の発現状態を指標として、ACC患者の悪性度を検出し、薬剤治療適応性を判定する方法、該判定の指標となる染色体領域および遺伝子の検出方法に関する。
ACCは、まれな悪性上皮腫瘍で、切除した後でも、徐々に再発することが多い。主として唾液腺に生じるが、唾液腺のほか、乳房、肺、気管等の組織でも報告されている。ACCは、弱い進行度で長い臨床期間を示し、唾液腺癌の5〜10%を占め、ヒトの頭・首の悪性腫の2〜4%を占める。この癌腫は、1856年にBillrothによる最初の報告がある。成長パターンは篩状、管状および充実状のタイプがある。この腫瘍は、高い頻度で神経侵入が起るため、痛みと神経障害が起る。また、この腫瘍は、早期の潜在性・無痛性の期間が長く、後期の急速な成長が始まると激しく、容赦ないことが知られている。転移はゆっくり起るが、成長が永続的で、予測できないことが多い。この疾患については、わずかの統計値しかなく、どのような疾患形態が悪性の腫瘍であるかの報告が非常に少なく、ACCの原因は明らかではない。そのため、ACCの有効な治療方針を立てることが困難であり、局部的な治療で、患者の再発防止が可能であったかどうかの判断ができない。現在、この新生物に関する何らかの特徴や血清マーカー等、この疾患に関する医薬的な情報はほとんどない。
ACCの生物学的な習性は、最初に腫瘍細胞の中でそれ自身がゲノム改変を起こすと考えられている。このまれな腫瘍の細胞遺伝学的異常性に関しては、染色体6qと9pの端の部分の異常の報告があり、ヘテロ接合性を消失した領域に癌抑制遺伝子の存在が示唆されるloss of heterozygosity(LOH)解析で、染色体6q23−35に高いLOH頻度を実証している(非特許文献1、2)。しかしながら、ACCの全ゲノムにおける異常の傾向は明確ではなく、その結果、細胞の悪性度があいまいになっている。
近年、医学・生物学的研究の進歩により、癌発症のメカニズムが分子レベルまで解明され、癌と遺伝子の関連研究が多く見られるようになった。特許においても、すでに遺伝子レベルの比較を用いた診断法はいくつか知られている。肺癌、胃癌、膵臓癌、大腸癌、胆管癌、脳腫瘍、骨髄種等の各種の癌において、正常細胞と比較して、増幅又は欠失している特定の遺伝子を網羅的に見いだし、これらの癌関連遺伝子の増幅又は欠失を指標とする癌の検出方法(特許文献1)が報告されている。染色体異常が原因として起る癌などの診断方法として、染色体の特定部位における増幅と欠失を検出することにより、リンパ節転移をする食道癌の診断法(特許文献2)、染色体全体あるいはその一部のDNAコピー数の異常を検出することによる、口腔癌細胞の検出方法(特許文献3)、同様に、胃癌、口腔扁平上皮癌の検出方法(特許文献4)、同様に、前立腺癌細胞の検出(特許文献5)等が報告されている。これらの、遺伝子の増幅又は欠失、あるいは染色体異常の分析は、主に比較ゲノムハイブリダイゼージョン(Comparative genomic hybridization:CGH)法や、アレイCGH(a−CGH)法が用いられている。
特開2005−304497号公報 特開2001−17200号公報 特開2006−94760号公報 特開2006−94733号公報 特表2000−511433号公報 Stenman G.,et al.Cancer Genet Cytogenet 22:283−293,1986 Higashi K.,et al.Genes chromosomes cancer 3:21−23,1991
現在、ACCの悪性度について、判定方法が明確ではなく、ACC患者に対する適切な治療は行われていない。そのため、ACCは難治性腫瘍と考えられている。従って、本発明は、ACC患者に対して有効な治療を行うため、ACCの悪性度を検出し、それにより薬剤治療適応性を判定するための方法を提供することをその主な課題とする。
本発明者等は、ACC患者の組織から得られたDNAコピー数について、染色体CGH(c−CGH)法で染色体の異常を検出し、さらにアレイCGH(a−CGH)法により、特定遺伝子のDNAコピー数の増減を検出し、免疫組織化学的分析により特定遺伝子の発現状態を確認することにより、ACCで特徴的な異常を示す遺伝子、および染色体領域を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(8)を提供する。
(1)被験者由来の組織細胞における遺伝子、及び/又は染色体の異常を検出することを特徴とする、ACCの悪性度、及び薬剤治療適応性を判定する、ACC亜分類の検出方法。
(2)被験者由来の組織細胞における遺伝子の異常が、AMY2A遺伝子、GON4L遺伝子、DST遺伝子、RUNX2遺伝子、TFAP2B遺伝子、TREM1遺伝子、TREML3遺伝子、TREML4遺伝子、C6orf129遺伝子、HLA−21遺伝子、HCG4P5遺伝子、HLA−A遺伝子、BTN3A1遺伝子、BTN2A3遺伝子、BTN3A3遺伝子、DOCK8遺伝子、ANKRD15遺伝子、ABL1遺伝子、MDM2遺伝子、RAP1B遺伝子、NUP107遺伝子、SLC35E3遺伝子、CPM遺伝子、SYN3遺伝子、TIMP3遺伝子、PPP1R3F遺伝子、GAGE8遺伝子、GAGE4遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子のDNAコピー数の増加、及び/又はESR1遺伝子、MAS1遺伝子、RPS6KA2遺伝子、MLLT4遺伝子、C6orf54遺伝子、THBS2遺伝子、FAM90A6P遺伝子、FAM90A7遺伝子、OCA2遺伝子、PAFAH1B1遺伝子、ZNF447遺伝子、ZNF329遺伝子、STAG2遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子のDNAコピー数の減少であって、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析することを特徴とする、上記(1)に記載の検出方法。
(3)被験者由来の組織細胞における染色体の異常が、AFM298WE1,SHGC155289、RH103897、SHGC−107618、STCB44H3Bで示される染色体領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域のコピー数の増加、及び/又はSHGC−148998、SHGC−142601、SHGC−100929、SHGC−130596で示される染色体領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域のDNAコピー数の減少であって、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析することを特徴とする、上記(1)に記載の検出方法。
(4)被験者由来の組織細胞における染色体の異常が、上記(2)に記載の遺伝子、及び/又は上記(3)に記載の染色体領域を含む下記染色体の異常であって、1p21領域、1q22領域、6p12−22領域、9p24領域、9q34領域、12q15領域、20q13領域、22q12−13領域、Xp11領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域におけるDNAコピー数の増加、及び/又は6q25−27領域、8p23領域、10q26領域、15q12−13領域、17p13領域、19q13領域、Xq23領域、Xq25領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域におけるDNAコピー数の減少を、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析することを特徴とする、上記(1)に記載の検出方法。
(5)被験者由来の組織細胞における遺伝子の異常が、MDM2遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、及びc−kit遺伝子の発現状態であって、前記4つ遺伝子の発現状態を、統計学的に正常細胞における前期4つの遺伝子の発現状態と比較解析することを特徴とする、上記(1)に記載の検出方法。
(6)被験者由来の組織細胞における遺伝子、又は染色体の異常を、該組織細胞を材料として、染色体CGH(c−CGH)法、BACアレイCGH(a−CGH)法、及び免疫組織化学的手法から選ばれる方法によって測定することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の検出方法。
(7)ACCの薬剤治療適応性が、チロシンキナーゼ活性阻害作用を有する抗MDM2薬および抗c−kit薬に対するものであって、MDM2遺伝子及びABL1遺伝子のDNAコピー数の異常と、MDM2遺伝子及びc−kit遺伝子の発現状態を、統計学的に正常細胞と比較解析して薬剤選択の指標とすることを特徴とする、上記(1)に記載の検出方法。
(8)チロシンキナーゼ活性阻害物質が、トラスツズマブ、イマニチブ、ヌトリン、ベパシズムである上記(7)に記載の検出方法。
本発明により、特定の染色体領域の増加や減少、特定遺伝子の増加や減少、あるいは特定遺伝子の発現状態から、ACCの亜分類が検出できるため、ACC患者の有効な治療が可能となる。
本発明は、被験者由来の組織細胞における特定の染色体領域の増加や減少、さらにまた特定遺伝子の異常を測定することにより、ACCの悪性度、及び薬剤治療適応性を判定する、ACC亜分類を検出するものである。
ACCの悪性度について説明を行うと、「悪性度が高い」とは、ACC患者のうち死亡する可能性の高い場合をいい、その理由として化学的あるいは放射線的治療の効果が期待できないことや癌の進行が早いことがあげられる。「悪性度が低い」とは、ACC患者に対し化学的あるいは放射線的治療の効果が期待できる程度の腫瘍である場合をいう。
ACC亜分類の検出は、ACC患者の組織から得られたサンプルにおいて、染色体1p21領域、1q22領域、6p12−22領域、9p24領域、9q34領域、12q15領域、20q13領域、22q12−13領域、Xp11領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域におけるDNAコピー数の増加、あるいは6q25−27領域、8p23領域、10q26領域、15q12−13領域、17p13領域、19q13領域、Xq23領域、Xq25領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域におけるDNAコピー数の減少を、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析することにより行うことができる。上記領域でコピー数の異常が認められ、特に、1q22領域、6p12−22領域、9p24領域、9q34領域、12q15領域、20q13領域、22q12−13領域、Xp11領域におけるDNAコピー数の増加、あるいは6q25−27領域、8p23領域、10q26領域、17p13領域、19q13領域におけるDNAコピー数の減少が認められた場合、悪性度が高いと判断することができる。
また、本発明のACC亜分類の検出は、ACC患者から得られたサンプルにおいて、上記染色体群上に存在する遺伝子のコピー数の異常を、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析することによって行うことができる。
すなわち、AMY2A遺伝子、GON4L遺伝子、DST遺伝子、RUNX2遺伝子、TFAP2B遺伝子、TREM1遺伝子、TREML3遺伝子、TREML4遺伝子、C6orf129遺伝子、HLA−21遺伝子、HCG4P5遺伝子、HLA−A遺伝子、BTN3A1遺伝子、BTN2A3遺伝子、BTN3A3遺伝子、DOCK8遺伝子、ANKRD15遺伝子、ABL1遺伝子、MDM2遺伝子、RAP1B遺伝子、NUP107遺伝子、SLC35E3遺伝子、CPM遺伝子、SYN3遺伝子、TIMP3遺伝子、PPP1R3F遺伝子、GAGE8遺伝子、GAGE4遺伝子等から選択される1種以上の遺伝子のDNAコピー数の増加を、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析して行うことができる。特に、GON4L遺伝子、DST遺伝子、RUNX2遺伝子、TFAP2B遺伝子、TREM1遺伝子、TREML3遺伝子、TREML4遺伝子、C6orf129遺伝子、HLA−21遺伝子、HCG4P5遺伝子、HLA−A遺伝子、BTN3A1遺伝子、BTN2A3遺伝子、BTN3A3遺伝子、DOCK8遺伝子、ANKRD15遺伝子、ABL1遺伝子、MDM2遺伝子、RAP1B遺伝子、NUP107遺伝子、SLC35E3遺伝子、CPM遺伝子、SYN3遺伝子、TIMP3遺伝子、PPP1R3F遺伝子、GAGE8遺伝子、GAGE4遺伝子から選択される1種以上の遺伝子にDNAコピー数の異常な増加が認められたACCでは、悪性度が高いと判断することができる。
また、ESR1遺伝子、MAS1遺伝子、RPS6KA2遺伝子、MLLT4遺伝子、C6orf54遺伝子、THBS2遺伝子、FAM90A6P遺伝子、FAM90A7遺伝子、OCA2遺伝子、PAFAH1B1遺伝子、ZNF447遺伝子、ZNF329遺伝子、STAG2遺伝子等から選択される1種以上の遺伝子のDNAコピー数の減少を、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析して行うことができる。特に、ESR1遺伝子、MAS1遺伝子、RPS6KA2遺伝子、MLLT4遺伝子、C6orf54遺伝子、THBS2遺伝子、FAM90A6P遺伝子、FAM90A7遺伝子、PAFAH1B1遺伝子、ZNF447遺伝子、ZNF329遺伝子から選択される1種以上の遺伝子にDNAコピー数の異常な減少が認められたACCでは、悪性度が高いと判断することができる。
さらに、本発明のACC亜分類の検出は、ACC患者から得られたサンプルにおいて、上記染色体群上に存在する、数100〜500程度の塩基からなる染色体領域であるAFM298WE1,SHGC155289、RH103897、SHGC−107618、STCB44H3B、SHGC−148998、SHGC−142601、SHGC−100929、SHGC−130596で示される染色体領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域のコピー数の増加あるいは減少を、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析して行うことができる。上記領域でのコピー数の異常が認められたACCでは、悪性度が高いと判断することができる。
さらにまた、本発明のACC亜分類の検出は、ACC患者から得られたサンプルにおいて、MDM2遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、及びc−kit遺伝子の発現状態を、統計学的に正常細胞における前期4つの遺伝子の発現状態と比較解析して行うことができる。正常細胞においては、MDM2遺伝子、p53遺伝子の発現がなく、p21遺伝子とc−kit遺伝子がわずかに発現していることから、ACC患者におけるMDM2遺伝子の過剰発現は、腫瘍抑制遺伝子p53の機能不全を招き、p53遺伝子の下流に位置するp21遺伝子発現を抑制すると考えられる。このため、MDM2遺伝子の高度の発現と、p53遺伝子及びp21遺伝子の未発現が認められたACCでは、抗MDM2薬剤により、p53機能不全が解除され、予後が高度に延長されることが期待できるため、ACCは軽度に分類することができ、MDM2遺伝子とp53遺伝子の高度の発現が認められたACCでは、悪性度が高いと判断される。
遺伝子の情報は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)、EMBL(European Molecular Biology Laboratory)、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)から得ることができる。
MDM2遺伝子は、ゲノム配列上12番染色体に存在する分子量90kDの核リンタンパク質である。p53に結合して複合体を形成し、p53を分解させる方向に働く。MDM2遺伝子が、過剰発現すると細胞の腫瘍形成能が高められると推定される。
p53遺伝子は、ゲノム配列上17番染色体に存在する核タンパクで、細胞周期のG0からG1への移行段階の制御に重要な役割を果たす、癌抑制遺伝子である。MDM2と直接的に結合すると、p53はユビキチン化し、分解される。
p21遺伝子は、ゲノム配列上6番染色体に存在するp53の下流遺伝子である。細胞周期のG1期の停止やDNA複製の阻害に関与し、癌細胞に対しても抑制的に働く。
c−kit遺伝子は、ゲノム配列上4番染色体に存在する、原癌遺伝子である。
ACC患者のサンプルにおいて、DNAコピー数の増加が多く認められるABL1遺伝子は、ゲノム配列上9番染色体に存在する原癌遺伝子である。細胞分化、細分裂、細胞接着、およびストレス応答の過程に関与する。BCR遺伝子と直列融合した状態では、骨髄性白血病をもたらす。また、AMY2A遺伝子は、ゲノム配列上1番染色体に存在する膵臓性アミラーゼの遺伝子で、AMY1(唾液腺性アミラーゼ)とともに、肺がんで過剰発現することが報告されている。
その他、ACC患者のサンプルにおいて、DNAコピー数の増加が認められる遺伝子であるGON4L遺伝子は1番染色体上に、DST遺伝子、RUNX2遺伝子、TFAP2B遺伝子、TREML3遺伝子、TREML4遺伝子、TREM1遺伝子、C6orf129遺伝子、HLA21遺伝子、HCG4P5遺伝子、HLA−A遺伝子、BTN3A1遺伝子、BTN2A3遺伝子、BTN3A3遺伝子はともに6番染色体上に存在し、DOCK8遺伝子、ANKRD15遺伝子は9番染色体上に、CPM遺伝子、RAP1B遺伝子、NUP107遺伝子、SLC35E3遺伝子は12番染色体上に、SYN3遺伝子、TIMP3遺伝子は22番染色体上に、PPP1R3F遺伝子、GAGE8遺伝子、GAGE4遺伝子はX染色体上に存在することが明らかにされている。
また、ACC患者のサンプルにおいて、DNAコピー数の減少が認められる遺伝子であるESR1遺伝子、MAS1遺伝子、RPS6KA2遺伝子、MLLT4遺伝子、C6orf54遺伝子、THBS2遺伝子は6番染色体上に、FAM90A6P遺伝子、FAM90A7遺伝子は8番染色体上に、OCA2遺伝子は15番染色体上に、PAFAH1B1遺伝子は17番染色体上に、ZNF447遺伝子、ZNF329遺伝子は19番染色体上に、STAG2遺伝子はX染色体上に存在することが明らかにされている。
さらに、ACC患者のサンプルにおいて、DNAコピー数の異常が認められる染色体領域であるAFM298WE1,SHGC155289、SHGC−148998、SHGC−142601は6番染色体上に、SHGC−100929、SHGC−130596は10番染色体上に、RH103897は20番染色体上に、SHGC−107618、STCB44H3Bは22番染色体上に存在することが明らかにされている。
遺伝子群の発現様式のうち、特定の機能を有する遺伝子が原因で起る腫瘍であるか否かを判定する場合では、該遺伝子の発現量を、健常人や患者の正常な細胞の発現量と比較解析することで腫瘍の原因が該遺伝子にあること、さらに該遺伝子が有する特定の機能によると判定することが可能である。これは、疾病とその原因となっている遺伝子と、その特定の機能が明確になった場合には、公知の医薬が同様の原理と方法により別の腫瘍にも効果を有すると判断することができる。
MDM2遺伝子、c−kit遺伝子、ABL1遺伝子はいずれもチロシンキナーゼという作用機序を有するタンパクである。腫瘍に関与する遺伝子がチロシンキナーゼを共通に発現することは、これらの遺伝子に対する抗体、あるいは類似するが生理作用の少ないタンパクは、当該腫瘍の治療に対して効果的であることが推察される。MDM2遺伝子及びABL1遺伝子のDNAコピー数の異常、またはMDM2遺伝子及びc−kit遺伝子の発現状態を測定することによって、チロシンキナーゼ阻害活性を作用機序に有するものとして市販されている、抗c−kit薬であるイマニチブ、抗HER2(human EGFR−related 2)剤であるトラスツズマブ、MDM2増幅を持つ腫瘍に対して臨床上有効で、p53とMDM2との相互作用を阻害するヌトリン、VEGF(vascular endothelial growth factor)剤のベバシズマブ等の使用可能性を判定することができる。
ACC患者のサンプルにおいて、遺伝子のDNAコピー数の異常を検出する場合、1つの異常を検出すれば良いが、精度を高めるためには、2つ以上、好ましくは3つ以上の領域の異常を検出することが望ましい。
DNAコピー数の検出法としては、ヒト組織を材料として、c−CGH法、a−CGH法、定量的PCR法を用いることができ、遺伝子発現の増強を確認するためには、免疫組織化学的手法を用いることが望ましい。
c−CGH分析では、染色体のゲノム−ワイドの細かいスキャンで、がん細胞における多くの染色体コピー数異常、例えば10Mbの低いコピー数や、2Mbの高いコピー数増幅等、DNA配列のコピー数異常(DNA sequence copy number aberration:DSCNA)について幅広い分析を行うことができる。
さらに、精度のよい分析法として、Pinkelら(Pinkel D,et al.Nat Genet.20:208−211,1998)は、CGHアレイのBAC(Bacterial artificial chromosome)クローンを用いて、40kbについて高い分析が可能になると報告している。これはa−CGH法と呼ばれており、Macrogen’s KOGENOME Projectで作成されたDNA断片からなるBACクローンを、スライドガラス上にスポットしたアレイを用いて行うもので、BACクローンとのハイブリダイゼーション法を用いて、腫瘍/正常の蛍光強度比を測定するものである。
a−CGH法による分析は、BACクローンをスポットした市販のものを入手して利用することも可能である。例えば、Macrogen社のMAC Array(登録商標)、SPECTRAL GENOMICS社のSpectralChip(登録商標)等がある。MAC Array(登録商標)の場合、アレイスライド上には全染色体を網羅する4030個のBACクローンがスポットされている。BAC開始位置、終了位置等の情報クローン情報は、Macrogen社のHP(http://www.macrogen.com/eng/file/4K_list_041221.xls)に掲載され更新されている。
BACクローンと反応させるDNAは、ランダムプライム法等で標識するが、このような方法で蛍光標識する場合、腫瘍細胞、正常細胞はそれぞれ別の色素による標識を行う。腫瘍細胞由来の試験用DNAは、Cyanine5−dCTP(PerkinElmer社)で、正常細胞由来の対照DNAはCyanine3−dCTP(PerkinElmer社)で標識することができる。試験用DNAおよび対照DNA由来の蛍光による画像は、レーザースキャナーや、CCDカメラ等の定量的検出装置により取得し、CGH解析用ソフトウェアにより画像解析を行うことができる。
試験用DNAおよび対照DNA由来の蛍光による画像においては、試験用DNAのコピー数が多い場合には、試験用DNAの蛍光強度が増加し、試験用DNAのコピー数が少ない場合には、対照DNAの蛍光強度が増加することから、ACC患者および健常人の組織から得られたDNAサンプルのアレイスポットの特定の蛍光波長における蛍光強度を測定することによって、BACクローンごとの異常を検出することができる。a−CGHに用いるDNAにはBACクローンのほか、より短い配列のDNAを用いることもできる。
さらに、ACC患者における遺伝子の発現状態の異常を検出する方法として、免疫組織化学的手法を用いることもできる。免疫組織化学的手法は、抗原−抗体反応という特異的な結合反応を利用して、目的とする蛋白質の細胞内外および組織内の局在を検出する手法であり、抗原に対する特異的抗体である一次抗体に酵素や蛍光物質を直接結合させて検出する方法や、一次抗体に対する抗体である二次抗体を用いて可視化する方法等がある。本発明は、上記のどちらの手法を用いることもできる。また、ここで用いる抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であっても良い。抗体には、FITC(Fluorescein isothiocianate)等の蛍光物質や、ペルオキシダーゼ、ビオチン等の酵素標識を施すことにより、精度良く効率的な検出を行うことができる。これらの標識された抗体は、市販のキットを用いることもできる。
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げるが本発明はこれに限定されない。
<c−CGH法によるDNAコピー数異常の検出>
腫瘍サンプル
山口大学病院外科から得られた、原発性唾液腺組織腫瘍8例、唾液腺組織からの肺転移腫瘍1例、原発性気管上皮腫瘍1例の計10例のACCサンプルを用いた。どの患者も外科へ来る前に化学療法や、放射線治療を受けていなかった。すべての標本はDNAを抽出するまで−80℃で保存した。
腫瘍と対照のDNA抽出
凍結した組織標本はHashimotoらの方法(Hashimoto Y.,Oga A.,Okami K.,Imate Y.,Yamashita Y.,Sasaki K.,et al. Cytometry 40:161−166,2000)に準じて、正常細胞の混入を少なくするためにマイクロディゼクションを行ない、DNeasy Tissue Kit(QIAGEN社)を使用して、試験用として選択的に分離した組織から、対照としてリンパ球から、DNAを抽出した。
c−CGHとデジタルイメージ解析
c−CGHは、上記Hashimotoらの方法に準じて行い、デジタルイメージは、CGHシステム(QUIPS XL、VYSIS,Downers Grove社)で解析した。各染色体で、緑−赤の平均的な蛍光率が観察され、DNAコピー数における増加と減少は、緑/赤の割合が、概ね1.2以上と、0.8以下で決定される。高いレベルのコピー数増加は、緑/赤の割合が1.4以上とした。
結果
10例中8例でDNAコピー数の異常が見られ、平均4.1カ所あり、2例では異常は観察されなかった(図1)。頻度高く異常が見られた染色体は、1番と6番の染色体であった。増加は染色体6q11−16で50%、6p11−21で30%、9pで30%が観察され、減少は、染色体6q25−27で60%、1p34−36で40%観察された。
<a−CGH法によるDNAコピー数異常の検出>
腫瘍サンプル及びDNAの抽出方法は、実施例1と同様に行った。a−CGH法は、Yamamotoらの方法(Yamamoto Y,Matsuyama H,Chochi Y,Okuda M,Kawauchi S,Inoue R,et al.Cancer Genet Cytogenet 174:42−47,2007)と、Hirasakiらの方法(Hirasaki S,Noguchi T,Mimori K,Inoue H,Sugihara K,Mori M,et al.Oncologist 12(4):407−417,2007)に準じて行った。
DNA標識プローブの作製
試験用DNAおよび対照DNA500ngをそれぞれ別々のチューブに分注し、精製水を加えて全量を21μlとした。これらDNA溶液に20μlの2.5×Random primer溶液(Invitrogen社 BioPrime(登録商標)DNA Labeling Kit)を加えて混合し、100℃にて5分間加熱後、直ちに氷上に移し、5分間冷却した。遠心(4000rpm 10秒)の後、5μlのA溶液(Macrogen社MAC Array(登録商標)Universal Kit)を加え、試験用DNAのチューブには3μlの1mM Cyanine5−dCTP(PerkinElmer社)を、対照DNAのチューブには3μlの1mM Cyanine3−dCTP(PerkinElmer社)を加え、氷上で1μl(40unit)のKlenow Fragment(Invitrogen社 BioPrime(登録商標)DNA Labeling Kit)を添加混合した後、37℃で一晩反応させた。65℃で20分加熱し酵素を失活させた後、氷上で1分間冷やした。
標識プローブの洗浄
上記で得られたDNAの各標識プローブ中の未反応Cyanine標識dCTP等を除去するため、QIA quick PCR purification kit(Qiagen社)を使用して洗浄を行った。まず、50μlの標識プローブを250μlのBinding Bufferと混合し、スピンカラムに滴下し、13000回転/分で1分間遠心した。流れ落ちた液体を捨て、700μlのWash Bufferをスピンカラムに加え、13000回転/分で1分間遠心した。流れ落ちた液体を捨て、再度13000回転/分で1分間遠心した。スピンカラムを清潔な1.5mlのチューブ内に設置し、50μlのElution Bufferを滴下して加え、3分間室温で静置した。さらに、13000回転/分で1分間遠心を行い、再度30μlのElution Bufferをスピンカラムに滴下し、3分間室温で静置した。13000回転/分で1分間遠心して、以下の試験用に使用する標識プローブを得た。
エタノール沈殿およびアレイハイブリダイゼーション混合液の作製
蛍光標識した試験用DNAおよび対照DNA各80μlおよび100μlのSolution B(Macrogen社)を混合し、さらに30μlの3M酢酸ナトリウムおよび600μlの氷冷100%エタノールを加えて混合撹拌した。冷凍庫(−20℃)にて1時間静置した後、4℃の温度下に13000回転/分で20分間遠心した。DNA残渣を残して上清を除去し、氷冷70%エタノールを500μl加え、再度13000回転/分で5分間遠心した。上清を除去した後、10分間自然乾燥させた。得られたDNA残渣に4μlの Solution D(Macrogen社)および40μlのSolution C(Macrogen社)を添加して30分間遮光下に静置してDNAを緩やかに溶解させた。DNAを十分に撹拌溶解させた後、70℃の水浴中で15分間加熱することでDNAを熱変性させ、37℃のインキュベータ内で1時間静置することで繰り返し配列のブロッキング反応を行った。
Arrayスライドの前処理
30μlのSolution Cに、10μlのSoultion Eを加えて混合し、70℃水浴中で10分間加熱して前処理液を熱変性させた後、氷上で5分間冷却した。40μの前処理液をアレイスライド(Macrogen社のMAC Array(登録商標)Karyo 4000)上に滴下し、液がアレイ全体に行き渡るよう22×40mmのカバーグラスを載せ、密閉箱中にスライドを置き、室温で30分間静置した。その後カバーグラスを外し、スライドグラスを10秒間蒸留水中に浸漬し、再度10秒間新しい蒸留水中に浸漬した後、100%イソプロパノールに浸漬した後、スライドグラスを乾燥させた。
ハイブリダイゼーション
上記で作製した44μlのアレイハイブリダイゼーション混合液をアレイスライド上に滴下した。22×40mmのカバーグラスをかけ、密閉湿潤箱中にスライドを静置し、37℃で48時間静置した。
アレイスライドの洗浄
46℃に保った洗浄液1(50%ホルムアミド/2×SSC、pH7.0)中に、アレイスライドを15分間静置し、時々振盪した。次いで、46℃に保った洗浄液2(0.1%SDS/2×SSC、pH7.0)中に、アレイスライドを30分間静置し、時々振盪した。さらに、室温に保った洗浄液3(0.1%NP−40/0.1Mリン酸緩衝液、pH7.0)中に15分間、室温に保った洗浄液4(2×SSC、pH7.0)中に、アレイスライドを5分間静置した。その後、70%エタノール、85%エタノール、100%エタノールの順に室温下でアレイスライドを各1分間ずつ浸漬後、アレイスライドを乾燥させた。
アレイスライドの読み取りおよび解析
ハイブリダイズしたアレイは、GenePix 4000A 2色蛍光スキャナーでスキャンし、GenePix software(Axon Instrument)で定量した。次に、Cy3、Cy5のイメージ獲得のための自動的にスポットし、蛍光率をカウントするために分析用ソフトウェア(MacViewer Macrogen社)を使用した。DNAコピー数増減の判定に際し、補正済みCy5/Cy3値について、底を2とする対数で表される数値を用いた。シグナル強度の補正は、正常部のCy5/Cy3値が1となるように自動的に分析用ソフトウェアで計算されることで行われる。測定スポットにおける補正後のCy5/Cy3値を、底を2とする対数で表し、logのシグナル比と呼ぶとき、増加をlogのシグナル比が、0.25以上とし、そのうちlogのシグナル比が、1.0以上を高レベルの増加(増幅)とした。同じように、減少はlogのシグナル比が−0.25以下とし、logのシグナル比が−1.0以下を高レベルの減少とした。
結果
4042箇所のDNA領域のうち、非特異的反応(交差ハイブリ)の見られることのある73箇所を除き、3969箇所について調査した。3969箇所のうち、増幅(高レベル増加)は17箇所に出現し、うち、繰り返し(2回以上)増幅がみられたのはMDM2(12q15)1箇所のみであった。また、3969箇所のうち、頻度高く(20%以上)増加の見られたのは151箇所であった。さらに高頻度(30%以上)に認めたのは4042カ所の箇所のDNA領域のうち21箇所で、交差ハイブリをする領域を除くと20箇所みられた。うち、既知の遺伝子部は染色体上の16地点に検出でき、以下の遺伝子座を含んでいた。結果を表1に示した。頻度順にABL1遺伝子、AMY2A遺伝子(50%)、GON4L遺伝子、TREML3遺伝子、TREML4遺伝子、TREM1遺伝子、PPP1R3F遺伝子、GAGE8遺伝子、GAGE4遺伝子(33%)、DST遺伝子、RUNX2遺伝子、TFAP2B遺伝子、C6orf129遺伝子、HLA−21遺伝子、HCG4P5遺伝子、HLA−A遺伝子、BTN3A1遺伝子、BTN2A3遺伝子、BTN3A3遺伝子、 DOCK8遺伝子、ANKRD15遺伝子、SYN3遺伝子、TIMP3遺伝子(30%)、MDM2遺伝子、CPM遺伝子、RAP1B遺伝子、NUP107遺伝子、SLC35E3遺伝子(20%、増幅1回以上)であった。既知の遺伝子を含まない、以下の記号で区別される染色体上の特定の領域、すなわち、20q13.2染色体上のRH103897(33%)、6p21.1染色体上のAFM298WE1、SHGC−155289、22q13.31染色体上のSHGC−107618、STCB44H3B(30%)でも遺伝子の増加は高頻度に認められた。
また、MDM2遺伝子の強い増幅と、ABL1遺伝子の頻度高いDNAコピー数の増加が見られた患者No.2、および染色体の1q22領域、6p12−22領域、9p24領域、20q13領域において増加が見られた患者No.5、6は死亡に至った。
Figure 2009060821
一方、高頻度減少領域(30%以上)は、80箇所あり交差ハイブリ(非特異的なハイブリ)を示すものとY染色体上のものを除くと60箇所あった。うち、頻度が33%以上であるもの、あるいは高レベルの減少が見られた領域を表2にまとめた(高レベル減少は一カ所もなかった)。うち、既知の遺伝子部は染色体上の11地点に検出でき、以下の遺伝子座を含んでいた。頻度順に、FAM90A6P遺伝子、FAM90A7遺伝子(60%)、ESR1遺伝子、MAS1遺伝子、RPS6KA2遺伝子、MLLT4遺伝子、C6orf54遺伝子、PAFAH1B1遺伝子(44%)、THBS2遺伝子(40%)、OCA2遺伝子、ZNF447遺伝子、ZNF329遺伝子、STAG2遺伝子(33%)であった。既知の遺伝子を含まない染色体上の特定の領域、6q26(40%)、Xq23(38%)、あるいは以下の記号で区別される染色体上の特定の領域、すなわち、6q27染色体上のSHGC−148998、SHGC−142601、10q26.2染色体上のSHGC−100929、SHGC−130596(33%)においても高頻度のコピー数の減少が認められた。
また、染色体の6q25−27領域、19q13領域、8p23領域、17p13領域においてDNAコピー数の減少が見られた患者No.5、6は死亡に至った。10q26領域と17p13領域において減少が見られた患者No.2も死亡に至った。
Figure 2009060821
以上の結果から、チロシンキナーゼに属するABL1遺伝子やMDM2遺伝子コピー数の増加、あるいは増幅は、チロシンキナーゼに関連する他の悪性腫瘍である慢性骨髄性白血病(CML)や間葉系腫瘍(GIST)と同じように、腫瘍の発生や進展を助長することが示唆された。また、上記高頻度増加あるいは減少の認められた遺伝子は、同じ方法で食道癌を調査したHirasakiらの文献(Hirasaki S,Hirano T,et al.The Oncologist,2007)で報告されている高頻度異常領域(増幅46遺伝子、減少11遺伝子)と、1箇所も一致しておらず、良性腫瘍における上記の遺伝子の異常は報告されていないことから、ACCの特徴的な遺伝子異常と推定できる。
<免疫組織化学的手法による遺伝子の評価>
腫瘍サンプル
腫瘍サンプルは、実施例1及び2で使用したサンプルに、さらに11例の山口大学病院で処理された原発性唾液腺腫瘍のパラフィン組織切片を加えて試験をおこなった。21例のACC患者について、患者の臨床的、組織病理学的実際を表3に示した。診断時の患者の平均年齢は、59.7歳(35歳〜78歳)で、男性(M)39%、女性(F)61%であった。腫瘍のタイプは、篩状(Cri:cribriform)、管状(Tub:tubular)、固形状(Sol:solid)に分類し、2つの状態を兼ねた症状をもつサンプルもあった。摘出した腫瘍の場所は、口腔底(mouth floor)、上口唇(Upper lip) 、舌(Tongue)、下口唇(Lower lip)、顎下腺(Submandibular gland)、硬口蓋(Hard palatal)、口蓋(Palate)、上顎洞(maxillary sinus)、頬粘膜(Buccal mucosa)であった。腫瘍の分類をTNM(tumor lymph nodes metastasis)で示した。腫瘍の程度(T)を、1〜4で、リンパ節転移について(N)を、0、1、3で、転移について(M)を0と1で表した。これは、統計的に予後に有意差のみられる複数のクラスに分類し、腫瘍の進行度を判定する指標とする分類である(各々小さい数字の方が統計的に予後良好)。生存についての結果は、生存(A)とACCに起因した死亡(DC)、不明(NA)で表した。ACCはUICC TNMシステムにより分類した。また、患者No.4、7、16、20の正常な唾液腺組織(Normal S.Gs)から採取したサンプルを対照として使用した。
Figure 2009060821
免疫組織化学的手法
フォルマリン固定試料から4μmの厚さのパラフィン封埋の標本を作った。免疫組織化学的染色法は、Liuらの方法(Liu XP、Tsushimi K,Tsushimi M,Kawauchi S,Oga A,Furuya T,Sasaki K. Cancer Lett.170:183−189,2001)に準じて行った。すなわち、切片をキシレンでパラフィン脱着し、連続して各濃度のエタノールで脱水した。次いでクエン酸Naバッファー0.01Mを加え、MDM2溶液はpH9.0に、その他の溶液はpH6.0に調整した。電子レンジ(650W)で30分間熱処理したのち、内因性のペルオキシダーゼの活性をブロックするために3%の過酸化水素を含むメタノール液で処理した。次いで、切片を、p53に対する一次抗体のDO7(Novocastra Laboratories 社 ニューカッスル、UK)、MDM2に対する一次抗体のM4308(SIGMA−ALDRICH社、セント・ルイス、MO)、p21に対する一次抗体の556430(BD Biosciences Pharmingen社、サンジェゴ、CA)とc−kitに対する一次抗体CD117(Dako Cytomation Glostrup社、Denmark)を、Dako Real antibody Diluent S2022で、DO7は100分の1に、M4308は200分の1に、556430は100分の1に、CD117は400分の1にそれぞれ希釈して室温で60分間反応させた。次いで、免疫組織化学的染色法のキットHISTOFINE SAB−PO(M)(登録商標:ニチレイ社)を使用して固定化した後、3,3−ジアミノベンジディン−ペルオキシダーゼ(peroxidase−3,3’−diaminobenzydine:DBA)で免疫染色反応を行った。最後に、切片はMeyer’sヘマトキシリンで染色し貼り付けた。乳癌と消化管間葉系腫瘍(GISTs)を、p53、MDM2、p21とc−kitのそれぞれのポジティブコントロールとして使用した。またネガティブコントロールとして、一次抗体を作用させないものを使用した。
免疫組織化学的染色法の評価
p53、MDM2、p21とc−kitの発現については、遺伝子発現レベルの部分的な違いからくる影響を小さくするためにほぼ同一とみなせる連続切片を使用し調べた。p53、p21の発現については、核に発色を認めた場合を陽性細胞とし、MDM2とc−kitの発現については、核、細胞質、又は細胞膜に発色を認めた場合を陽性細胞と判定した。p53、MDM2、p21とc−kitの発現状態は、腫瘍細胞において陽性細胞の割合から、0−19%の発現ありの場合:陰性、20−50%の発現ありの場合:中間、50%以上発現ありの場合:陽性と、3つの基準でスコア化した。
統計解析
統計解析は、市販のソフトウェア(StatMate software, ATMS社)を使用して行った。免疫組織化学的結果は、腫瘍と正常の細胞間でGテストにより計算した。全てのテストでP値が5%以下の場合を有意差ありとした。
結果
表4に、MDM2、p53、p21とc−kitの発現の結果を示し、表5に、MDM2、p53、p21およびc−kit遺伝子の発現について、ACCと正常唾液腺部との比較を示した。p53の発現は、15例で確認され、p21の発現は9例のみであり、MDM2は全ての例で認められた。実施例2で、MDM2遺伝子の高レベル増加の見られた患者No.1と2は、2例ともMDM2の発色は強く、p21やp53の発現は見られなかった(図2、図3)。また、c−kitは、15例で強く発現し、6例で中間の発現であった。4つの正常な唾液腺では、MDM2、p53の発現がなくc−kitやp21の中間的な発現を有した。統計的な有意差検定は、P値で示した。正常唾液腺に比べACCではMDM2、c−kit、p−53の遺伝子は、有意に高発現していた(MDM2では、p=0.00041、p53では、p=0.001339、c−kitでは、p=0.01849)、一方p21の発現は正常対照と有意な差はみられなかった。
正常での発現は、MDM2遺伝子、p53遺伝子が陰性、p21遺伝子とc−kit遺伝子が中間的発現と考えられる。MDM2遺伝子の過剰発現が、腫瘍抑制遺伝子p53の機能不全を招き、その結果として細胞増殖メカニズム経路上でp53遺伝子の下流に位置するp21を抑制していると考えられるケースが、全体の33%(7/21)にみられた。これらのケースは、抗MDM2薬剤により、p53機能不全が解除され、予後が高度に延長されることが期待できる。また、ACC全例でMDM2遺伝子発現がみられることより、ACCは全例に、抗MDM2薬剤の効果が期待できる。同様にACCでは71%(15/21)でc−kitの高発現がみられ、それら症例には抗c−kit効果のある薬剤治療が予後延長をもたらすことが期待できる。なお、MDM2遺伝子、p53遺伝子がともに高発現していた症例は、2例(No.15、16)でいずれも死亡しており、予後不良型と推定できる。
Figure 2009060821
Figure 2009060821
特定の染色体領域や遺伝子のDNAコピー数の増減、あるいは特定遺伝子の発現状態を検出することにより、ACCの悪性度を検出することができる。さらにまた、薬剤治療適応性の判定により、抗MDM2薬剤や抗c−kit薬剤に関して、ACC患者に対する有効性の判断ができる。
ACCサンプルにおけるc−CGH法による染色体異常を示す図である。増加は染色体イデオグラムの右側に、減少は左側に示す。増幅領域は、グレイラインで点描して示す。 染色体12番目におけるMDM2増幅と、ACCの篩状タイプにおける免疫組織化学的分析を示す図である。(A)染色体12番目以外に異常がないc−CGH法の結果を示す。(B)MDM2遺伝子、RAP1B遺伝子、NUP107遺伝子を含む染色体12q14.3−15領域のa−CGH法の結果を示す。(C)免疫組織化学的染色によるp53の非染色(<20%)を示す。(D)免疫組織化学的染色によるMDM2の強い染色(>50%)を示す。(E)免疫組織化学的染色によるp21の非染色(<20%)を示す。(F)免疫組織化学的染色によるc−kitの強い染色(>50%)を示す。 染色体12番目におけるMDM2増幅と、ACCの固形タイプにおける免疫組織化学的分析を示す図である。(G)染色体12番目で、q22−24.3に減少が認められるc−CGH法の結果を示す。(H)MDM2遺伝子、RAP1B遺伝子、NUP107遺伝子を含む染色体12q14.3−15領域のa−CGH法の結果を示す。(I)免疫組織化学的染色によるp53の非染色(0%)を示す。(J)免疫組織化学的染色によるMDM2の強い染色(>50%)を示す。(K)免疫組織化学的染色によるp21の非染色(0%)を示す。(L)免疫組織化学的染色によるc−kitの強い染色(>50%)を示す。

Claims (8)

  1. 被験者由来の組織細胞における遺伝子、及び/又は染色体の異常を検出することを特徴とする、ACCの悪性度、及び薬剤治療適応性を判定する、ACC亜分類の検出方法。
  2. 被験者由来の組織細胞における遺伝子の異常が、AMY2A遺伝子、GON4L遺伝子、DST遺伝子、RUNX2遺伝子、TFAP2B遺伝子、TREM1遺伝子、TREML3遺伝子、TREML4遺伝子、C6orf129遺伝子、HLA−21遺伝子、HCG4P5遺伝子、HLA−A遺伝子、BTN3A1遺伝子、BTN2A3遺伝子、BTN3A3遺伝子、DOCK8遺伝子、ANKRD15遺伝子、ABL1遺伝子、MDM2遺伝子、RAP1B遺伝子、NUP107遺伝子、SLC35E3遺伝子、CPM遺伝子、SYN3遺伝子、TIMP3遺伝子、PPP1R3F遺伝子、GAGE8遺伝子、GAGE4遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子のDNAコピー数の増加、及び/又はESR1遺伝子、MAS1遺伝子、RPS6KA2遺伝子、MLLT4遺伝子、C6orf54遺伝子、THBS2遺伝子、FAM90A6P遺伝子、FAM90A7遺伝子、OCA2遺伝子、PAFAH1B1遺伝子、ZNF447遺伝子、ZNF329遺伝子、STAG2遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子のDNAコピー数の減少であって、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析することを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
  3. 被験者由来の組織細胞における染色体の異常が、AFM298WE1,SHGC155289、RH103897、SHGC−107618、STCB44H3Bで示される染色体領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域のコピー数の増加、及び/又はSHGC−148998、SHGC−142601、SHGC−100929、SHGC−130596で示される染色体領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域のDNAコピー数の減少であって、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析することを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
  4. 被験者由来の組織細胞における染色体の異常が、請求項2に記載の遺伝子、及び/又は請求項3に記載の染色体領域を含む下記染色体の異常であって、1p21領域、1q22領域、6p12−22領域、9p24領域、9q34領域、12q15領域、20q13領域、22q12−13領域、Xp11領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域におけるDNAコピー数の増加、及び/又は6q25−27領域、8p23領域、10q26領域、15q12−13領域、17p13領域、19q13領域、Xq23領域、Xq25領域から選ばれる1箇所以上の染色体領域におけるDNAコピー数の減少を、統計学的に正常細胞のコピー数と比較解析することを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
  5. 被験者由来の組織細胞における遺伝子の異常が、MDM2遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、及びc−kit遺伝子の発現状態であって、前記4つ遺伝子の発現状態を、統計学的に正常細胞における前期4つの遺伝子の発現状態と比較解析することを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
  6. 被験者由来の組織細胞における遺伝子、又は染色体の異常を、該組織細胞を材料として、染色体CGH(c−CGH)法、BACアレイCGH(a−CGH)法、及び免疫組織化学的手法から選ばれる方法によって測定することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検出方法。
  7. ACCの薬剤治療適応性が、チロシンキナーゼ活性阻害作用を有する抗MDM2薬および抗c−kit薬に対するものであって、MDM2遺伝子、ABL1遺伝子のDNAコピー数の異常、またはMDM2遺伝子、c−kit遺伝子の発現状態を、統計学的に正常細胞と比較解析して薬剤選択の指標とすることを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
  8. チロシンキナーゼ活性阻害物質が、トラスツズマブ、イマニチブ、ヌトリン、ベバシズマブである請求項7に記載の検出方法。
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