JP2009058883A - 光書き込み型表示媒体 - Google Patents

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Tomozumi Uesaka
友純 上坂
Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
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Abstract

【課題】交流駆動における表示特性や駆動能力及びそれらの繰り返し安定性、さらには解像度を向上させることが可能な光スイッチング素子を用いた光書き込み型表示媒体を提供することである。
【解決手段】一対の電極の間に、少なくとも表示層と、電荷発生層及び該電荷発生層の両面に積層された同一の両極性電荷輸送層を含む光スイッチング層と、を有する光書き込み型表示媒体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機光導電体(OPC)を用いた光スイッチング層を有する光書き込み型表示媒体に関するものである。
光書き込み型表示デバイスは、所定の電圧を素子に印加しつつ、受光した光量により光スイッチング素子のインピーダンスを変化させ、表示素子に印加される電圧あるいは電流を制御することにより、表示素子を駆動し、画像を表示するものである。特に、メモリ性のある表示素子と光導電性スイッチング素子を積層し、これに、電圧を印加すると共に、光画像を入射し、書き込みを行う光書き込み型表示媒体は、書き込み装置から媒体を切り離して持ち歩くことが可能な電子ペーパー媒体として注目されている。
光書き込み型表示媒体の表示素子としては、例えば、ポリマーに分散しメモリ性を付与したネマチック液晶、コレステリック液晶、強誘電液晶のような液晶表示素子、あるいは電気泳動素子や電界回転素子、トナー電界移動型素子や、これらをカプセル化した素子等が検討されている。
これら、受光した光量により電圧あるいは電流を制御できるような光スイッチング素子としては、例えば、電子写真の分野で用いられるアモルファスシリコン素子、有機光導電体(OPC)を用いた機能分離型二層構造のOPC素子、さらに、電荷輸送層(以下、「CTL」という場合がある)の上下に電荷発生層(以下、「CGL」という場合がある)、を形成した構造(以下、デュアルCGL構造と称する)のOPC素子が検討されている(例えば、特許文献1参照)。特に、OPC素子は、その製造工程において高温の熱処理を必要としないため、PETフィルムなどのフレキシブル基板への適用も可能であり、かつ、真空プロセスも不要なために安価に作製できるという利点を有する。
中でも、前記デュアルCGL構造は、交流駆動が可能であり、表示素子に液晶素子を用いた場合においても、直流駆動では問題になる画像の焼付き現象も生じにくいため、特に有効な構造である。
この光スイッチング素子に用いるOPC素子の電荷発生層の作製方式には、蒸着やスパッタリング等の真空プロセスを使う方式と、電荷発生材料を分散させた分散液を塗布するという方式とがあるが、真空プロセスを用いる方式では、装置が高価になるため、低価格な媒体の作製が困難である一方、塗布方式では安価に大量生産が可能であり、コスト的に優位であるため、電荷発生層の作製方式としては、塗布方式が注目されている。
前記デュアルCGL構造を塗布方式で作製するためには、上部電荷発生層の作製時に、電荷発生材料分散液の溶剤として一般的に用いられるエステル系やケトン系の溶剤が、電荷輸送層に損傷を与えるという問題が発生するため、これを回避すべく、上部電荷発生層を形成するための溶剤として、電荷輸送層を溶解・膨潤させないようなアルコール系溶剤を使用してきた(例えば、特許文献2参照)。
また、前記光書き込み型表示デバイスに用いられる光スイッチング素子には、交流駆動時の応答電圧波形の対称性(駆動対称性)が要求される。駆動対称性が崩れてしまうと、表示に必要な本来の電圧以上の印加電圧が必要になってしまったり、逆に、印加電圧をゼロにしたくても余計な残留電圧が残ってしまって必要な表示が得られない問題がある。さらに、連続使用の際に、どちらか片側の電荷キャリアのみが蓄積してしまうことにより、素子の劣化を引き起こしてしまうことがあった。また、これらの変動は単純な予測がつかないため、プロセスコントロールによる調整もできない問題があった。
そして、上記応答電圧波形の対称性に劣る光スイッチング素子を、例えば表示素子を駆動するスイッチング素子として使用した場合、光照射時表示素子に対し、一方の極性においては十分な電圧印加がなされても、反対極性においては十分な電圧印加が得られず、結果として、所望の表示画像が得られなくなることがあった。
特開2000−180888号公報 特開2002−196291号公報
本発明の目的は、交流駆動における表示特性や駆動能力及びそれらの繰り返し安定性、さらには解像度を向上させることが可能な光スイッチング素子を用いた光書き込み型表示媒体を提供することである。
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、一対の電極の間に、少なくとも表示層と、
電荷発生層及び該電荷発生層の両面に積層された同一の両極性電荷輸送層を含む光スイッチング層と、
を有する光書き込み型表示媒体である。
請求項2に係る発明は、前記両極性電荷輸送層が、低分子の電子輸送性材料を正孔輸送性高分子に分散してなる請求項1に記載の光書き込み型表示媒体である。
請求項3に係る発明は、前記正孔輸送性高分子が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される正孔輸送性高分子のうちの少なくとも1種である請求項2に記載の光書き込み型表示媒体。
Figure 2009058883
一般式(I−1)及び(I−2)中、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表し、Aは下記一般式(II−1)で示される有機基を表し、B及びB’はそれぞれ独立に−O−(Y−O)−Hまたは−O−(Y−O)−CO−Z−CO−OR’(ここで、R’は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基を表し、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表す。)を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。
Figure 2009058883
一般式(II−1)中、Arは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Tは−O−または任意の有機基を表し、k、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
請求項4に係る発明は、前記一般式(II−1)中のArが置換もしくは未置換の芳香環数2以上の芳香族基である請求項3に記載の光書き込み型表示媒体である。
請求項5に係る発明は、前記表示層が、メモリ性を有する液晶表示層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光書き込み型表示媒体である。
本発明の請求項1に係る発明によれば、交流駆動における表示特性や駆動能力及びそれらの繰り返し安定性、さらには解像度を向上させることが可能な光スイッチング層を用いた光書き込み型表示媒体を提供することができる。
請求項2に係る発明によれば、交流駆動時の光スイッチング特性や耐久性をより向上させることができる。
請求項3に係る発明によれば、さらに光スイッチング素子の柔軟性や電荷輸送層中の均一性を高めることができる。
請求項4に係る発明によれば、交流駆動時の光スイッチング特性や耐久性をより向上させることができる。
請求項5に係る発明によれば、電力等の必要なく画像表示を保持することができ、表示媒体の適用範囲を広めることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、図面を参照した説明においては、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面通して同じ符合を付与して説明する。
本発明の光書き込み型表示媒体は、一対の電極の間に、少なくとも表示層と、電荷発生層及び該電荷発生層の両面に積層された同一の両極性電荷輸送層を有する光スイッチング層と、を含むことを特徴とする
従来、光スイッチング素子に用いる前記デュアルCGL構造のOPC素子では、前記交流駆動時の応答電圧波形の対称性を確保するため、上下(CTLの両面)2層のCGL膜厚(の吸光度)で上下CGLの感度を調整する必要があった。このため、CGL形成に際しては2種類の塗布溶液を別々に準備する必要があり、製造プロセスが煩雑になるとともに製造コストの面でも問題があった。
また、どのようなCGLであっても、その吸光度には波長依存性があり、照射光波長が変化すれば吸光度も変化する。そのため、ある照射光波長において上下CGLの吸光度をそろえて駆動対称性を調整しても、照射光波長が少しでも変化すると対称性も崩れてしまうことがあった。例えば、照射光光源としてLEDや半導体レーザーを用いた場合でも、光源の個体差や温度変化などによって照射光波長(分布)が10〜20nm以上ずれてしまう場合があるため、そのような場合でも駆動対称性を維持することは困難であった。
一方、電子輸送性材料(ETM)及び正孔輸送性材料(HTM)を混合して構成される1層の両極性CTLと1層のCGLとを積層した2層型OPC素子も、前記交流駆動用としては有効である。ここで、前記両極性CTLとは、電子、正孔ともに一定以上の移動度で輸送が可能であり、電界下において正極性及び負極性で動作可能な電荷輸送層をいう。
しかし、この2層型OPC素子ではETM及びHTMの組成比で両極性(駆動対称性)を実現するため、組成比に敏感であり、製造プロセス安定性の面から望ましくなかった。また、多くの場合ETMとHTMとでは感度の電場依存性が異なるため、ある印加電圧で駆動対称性を実現できても、別の印加電圧では駆動対称性がくずれてしまうことがあった。さらに、多くの場合前記ETMとHTMとでは、使用による維持性(寿命、耐久性)に違いがあるため、初期的に駆動対称性を実現できていても、どちらか片方のほうが維持性がより悪いため、対称性が徐々にくずれてくることもあった。
上述のほか、従来のデュアルCGL構造のOPC素子では、例えば下側のCGLで発生した正孔キャリアが正孔輸送層(CTL)を移動して上側のCGLまで到達する間に、正孔どうしの反発力や拡散力によって広がってしまい、解像度が本来のものより低下してしまう問題があった。
これに対しては、例えば、単純にCTL膜厚を半分程度に薄くすることにより、前記キャリアの広がりを小さくすることができる。しかしこの場合には、光スイッチング素子全体の膜厚が薄くなるためインピーダンスも変化してしまい、表示素子とのインピーダンス整合がとれなくなり、表示素子の駆動ができなくなるという問題がある。表示素子も薄くしてインピーダンス整合をとって駆動できるようにすることも可能であるが、その場合には表示素子の表示性能が著しく低下してしまう場合がある。
本発明の光書き込み型表示媒体では、後述するように、1層の電荷発生層の両面(上下面)に同一の両極性電荷輸送層を積層してなる両極性感光体を光スイッチング層として用いているため、前記デュアルCGL構造や2層型OPCのように駆動対称性を得るために微妙な膜厚の調整や配合比調整を行う必要がない。このため、光スイッチング層の作製をより簡便に行うことができるだけでなく、前記の解像度低下に対しても有利な層構成となり得ることが見出された。
ここで、上記「同一」とは、双方の両極性電荷輸送層中に含まれる成分(0.1質量%以上含まれるもの)が同じであり、該成分各々の組成比(質量比)が±5%の範囲で一致しており、かつ、膜厚が一方の層厚に対して±10%の範囲で一致していることをいう。以下における両極性電荷輸送層に関する「同一」も同様である。
すなわち本発明の光書き込み型表示媒体は、従来のOPC素子を用いた場合に比べ、製造プロセスや性能面で下記の利点を有する。
まず、従来のデュアルCGL構造のOPC素子では、層形成に際し上下2層のCGL用及びCTL用の併せて3種類の塗布溶液を必要とした。これに対し本発明におけるOPC素子では、CTLを2層有するがそれらは全く同じ構成であるため、層形成に際して1種類の塗布溶液のみでよく、またCGL用としては1種類の塗布溶液でよいため、併せて2種類の溶液を準備すればよい。
また、本発明におけるOPC素子では、CGLは1層であるため、吸光度による対称性の調整は必要ない。さらに、照射光波長が変化して吸光度が変化したとしても、駆動対称性の変動はない。波長による感度の違いは事前に予測できるため、プロセスコントロールによる制御も可能である。
他方、前記1層の両極性CTLを有する2層型OPC素子の場合には、ETMとHTMとの組成比で対称性を調整する必要があったが、本発明では1層のCGLの上下に全く同じ両極性CTLを形成して対称性を実現しているため、層中のETMとHTMとの組成比が多少ずれていても対称性には全く影響しない。
同様に、層中に含まれるETMとHTMとの電界依存性が異なっていても、上下2層の両極性CTLは同じものであるため、印加電圧変化に対しても対称性には影響しない。
さらに同様に、ETMとHTMとの維持性(寿命、耐久性)が異なっていても、上下2層の両極性CTLは同じものであるため、長期使用によっても対称性には影響しない。
また、これらの材料寿命等に基づく特性変化は、事前にある程度の予測が可能であるため、プロセスコントロールによる制御も可能である。
そして、前記解像度低下の課題に対しても、本発明における光スイッチング素子では2層のCTLを有するため、CTLの膜厚を半分程度に低減しても光スイッチング素子全体しては膜厚を従来の光スイッチング素子と同程度とすることができることから、表示性能を低下させることなく解像度の低下を防止することが可能となる。
なお、前記両極性電荷輸送層に関しては、電荷輸送材料として両極性電荷輸送能を有するものを用いれば容易に作製可能であるが、現状では良好な両極性電荷輸送能を有する単独材料は知られていない。
そこで、本発明者等は、従来の電子輸送材料と正孔輸送材料とを混合してなる両極性電荷輸送層について詳細に検討し、特に低電界での正、負電荷移動度に優れた材料を見出し、さらに、正孔輸送性高分子に低分子の電子輸送性材料を分散したものが、光書き込み型表示媒体用の光スイッチング層に用いる両極性電荷輸送層として特に優れていることを見出し本発明を完成させた。
以下、本発明の光書き込み型表示媒体を実施形態により説明する。
図1に、前記のごとき両極性感光体からなる光スイッチング層を用いた本実施形態の光書き込み型表示媒体の一例の概念図を示す。この光書き込み型表示媒体20は、光スイッチング層を含む光スイッチング素子30、表示層を含む表示素子40および光スイッチング素子30と表示素子40との間に挟まれた機能層50より構成され、光スイッチング素子30は基板31、電極32、両極性電荷輸送層34、電荷発生層33及び両極性電荷輸送層34’より構成され、表示素子40は、基板41、電極42および表示層(液晶層等)43から構成される。
図から明らかなように、この実施形態では図における電荷発生層33の上下(両面)に両極性電荷輸送層34、34’が形成され、この両極性電荷輸送層34、34’は同一である。前記光書き込み型表示媒体20において、光書き込みが光スイッチング素子側あるいは表示素子側から行なわれるかにより、光入射側の素子の基板および電極を光透過性にすることが必要である。また、電極32と電極42との間には交流電界が印加される。
以下、上記構成ごとに本実施形態の光書き込み型表示媒体を説明する。
<光スイッチング素子>
図2に、図1に示した光書き込み型表示媒体における光スイッチング素子の部分を拡大して示す。これを用いて、本実施形態における光スイッチング素子を説明する。
図2に示す光スイッチング素子30(両極性感光体を光スイッチング層として有する光スイッチング素子)は、前記のように電極32(導電膜)が形成された基板31上に、光スイッチング層(光導電層)として、両極性電荷輸送層34、電荷発生層33、両極性電荷輸送層34’を順次積層したものであり、図における電荷発生層33の上下(両面)に形成された両極性電荷輸送層34、34’は同一である。また、図中、矢印は光入射方向を示す(但し、光入射方向はこれに限定されるわけではない)。
基板31としては、ガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、PES(ポリエーテルスルホン)、SUS、Ni、Al等の基板が用いられる。また、光導電層(電荷発生層、電荷輸送層)に有機材料を用いる場合には高温で熱処理をする工程がないので、フレキシブル基板が得られること、成形が容易なこと、コストの点などから光透過性のプラスチック基板を用いることが有利である。
基板31の厚みとしては、50μm以上500μm以下の範囲程度が好適である。
また、電極32としては、ITO膜、Au、SnO2 、Al、Cu等が用いられる。
なお、基板31および電極32は、必ずしも光透過性である必要はない。すなわち、特開2001−100664号公報に示すように、光書き込み型表示媒体の表示素子が、メモリ性を有し、かつ、表示に必要な波長を選択的に反射する選択反射性または後方散乱性の表示素子である場合には、表示側から書き込むことが可能であるので、この場合には少なくとも表示素子側の基板41および電極42が光透過性であればよい。したがって、表示素子側から光書き込みをする場合、光スイッチング素子30の基板31あるいは電極32は光透過性である必要はなく、電極32として不透明なAl等を用いることもできる。
また、光スイッチング素子30において、任意の機能層を設けることも可能である。たとえば、電極32と両極性電荷輸送層34との間に電荷の突入を防ぐ層や接着層を形成することができる。また、反射膜や遮光膜を形成することも可能であるし、これらの複数の機能を兼ねた機能層でも良い。このような機能層は電流の流れを著しく妨げない範囲で適用可能である。
(両極性感光体)
本実施形態における両極性感光体は、電荷発生層33の両面に両極性電荷輸送層34、34’を積層してなる。
電荷発生層33に用いられる電荷発生材料としては、金属又は無金属フタロシアニン顔料、スクアリウム顔料、アズレニウム顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、ジブロモアントアントロン顔料などの多環キノン顔料、等が適用可能であるが、フタロシアニン顔料である、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、あるいはチタニルフタロシアニンの一種類かあるいは混合物を主成分とする電荷発生材料が好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)がi)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°、ii)7.7°、16.5°、25.1°及び26.6°、iii)7.9°、16.5°、24.4°及び27.6°、iv)7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°、v) 6.8°、12.8°、15.8°及び26.0°又はvi)7.4°、9.9°、25.0°、26.2°及び28.2°に強い回折ピークを有するような結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
クロロガリウムフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°、又は6.8°、17.3°、23.6°及び26.9°、又は8.7°〜9.2°、17.6°、24.0°、27.4°及び28.8°に強い回折ピークを有する結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
また、チタニルフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、9.5°,9.7°,11.7°,15.0°,23.5°,24.1°,27.3°に回折ピークをもつ結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
電荷発生層33に用い得るバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂を含む)、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂などが適用可能である。特に、ポリビニルブチラール樹脂やカルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂は、電荷発生材料を良好に分散させるため、好ましいバインダー樹脂である。
なお、バインダー樹脂は必ずしも使用しなくてもよい。
電荷発生層33における電荷発生材料等の低分子化合物とバインダー樹脂との混合比(低分子化合物/バインダー樹脂)は、9/1〜3/7の範囲とすることが好ましい。
電荷発生層33の作製方法としては、真空蒸着法やスパッタ法などドライな膜形成法のほか、溶液あるいは分散液を用いるスピンコート法、ディップ法などの塗布法が適用可能であるが、作製の容易性等から塗布法により作製することが好ましい。この場合、溶剤としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、非プロトン系溶剤を用いることが好ましい。
特に、塗布法により両極性電荷輸送層34、電荷発生層33及び両極性電荷輸送層34’を順次積層形成する場合、両極性電荷輸送層34の表面に電荷発生層33を形成するに際しては、薄層の電荷発生層33を均一に形成するために両極性電荷輸送層34の表面を溶解させずに塗布を行うことが望ましい。そのため、電荷発生層形成用塗布液に用いる溶剤としては、前記のうちのアルコール系の溶剤を選択することが望ましい。
電荷発生層33の膜厚は、10nm以上1μm以下の範囲が好ましく、20nm以上500nm以下の範囲がより好ましい。10nmより薄いと、光感度が不足しかつ均一な膜の作製が難しくなる場合があり、また、1μmより厚くなると、光感度は飽和し、膜内応力によって剥離が生じ易くなる場合がある。
両極性電荷輸送層34、34’は、少なくとも電子輸送性材料及び正孔輸送性材料を含んで構成される。前記のように両極性電荷輸送層34、34’に含まれる電子輸送性材料及び正孔輸送性材料は同一である。またこの場合に、材料の組み合わせとしては、低分子電荷輸送性材料同士、低分子電荷輸送性材料及び電荷輸送性高分子、電荷輸送性高分子同士、の3つの形態がいずれも可能である。なお、本実施形態における両極性電荷輸送層は、10V/μm電界下で正孔、電子ともに10−8cm/Vs以上の移動度を有することが望ましい。
両極性電荷輸送層34、34’に含有される電荷輸送性材料としては、公知のものならいかなるものでも使用可能であるが、下記に示すものを例示することができる。
正孔輸送性材料としては、例えば2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体;1,3,5−トリフェニル−ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体;トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物;3−(p−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(p−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体;4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体;2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体;6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体;p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体;エナミン誘導体;N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体;など、あるいは、以上に示した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などを挙げることができる。
また、電子輸送性材料としては、例えばクロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジヘキシルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;など、あるいは、以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。
特に、電子輸送性材料は有機化合物の本質的な問題により、高い輸送性を有するものが得られにくいが、近年、電子写真感光体の分野において電子輸送性材料について精力的な研究がなされている。
例えば、特公昭50−10496号公報に記載されたトリニトロフルオレノン、特開昭61−143764号公報に記載されたジシアノメチレンフルオレノン誘導体、特開昭61−225151号公報に記載されたアントラキノンン誘導体、特開昭60−222477号公報に記載されたチオピラン誘導体、特開平5−279582号公報、特開平7−233134号公報、特開平7−258189号公報などに記載されたフルオレノン誘導体、特開平8−245601号公報、特開平8−283249号公報、特開平8−301858号公報、特開平8−286402号公報などに記載されたベンゾオキサゾールあるいはベンゾチアゾール誘導体、特開平8−15878号公報に記載されたベンゾキノン誘導体、電子写真学会誌 第30巻 第3号 266(1991)に記載されたジフェノキノン誘導体、特開平5−25136号公報、特開平5−25174号公報、特開平5−117274号公報、特開平5−125043号公報、特開平5−132464号公報などに記載されたイミド化合物誘導体、あるいは、特開昭52−12153号公報、特開昭52−12154号公報、Macromolecules,22,2266(1989)などに記載された電子輸送性の基をポリマー中に導入した電子輸送性ポリマーなどを挙げることができる。
さらには、例えば、特開平8−248656号公報、同8−240921号公報、同8−157476号公報、同8−151534号公報、同8−151532号公報、同−151533号公報、同8−245601号公報、同8−245518号公報、同8−231502号公報、同8−113565号公報、同8−211635号公報などに記載の種々のアクセプター性化合物も好ましく用いられる。
前記正孔輸送性材料とこれらの電子輸送性材料とを組み合わせて用いる場合、該正孔輸送性材料と電子輸送性材料とが電荷移動(CT)錯体を形成してしまうと、着色したり、移動度が低下してしまったりすることがある。CT錯体は、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料のπ電子軌道が空間的に接近しやすいほど形成されやすいので、嵩高い置換基を有するものを用いることが好ましい。
上記の観点から、前記低分子の電荷輸送性材料同士の組み合わせとしては、正孔輸送性材料として、嵩高い置換基を有する芳香族第3級アミノ化合物や芳香族第3級ジアミノ化合物などを用いることが好ましく、これらに対して、低分子の電子輸送性材料として、嵩高い置換基を有するフルオレノン誘導体やジフェノキノン誘導体などを組み合わせて用いることが好ましい。
また、正孔輸送性材料Aと電子輸送性材料Bとの混合質量比(A/B)は、9/1〜1/9の範囲とすることが好ましく、7/3〜3/7の範囲とすることがより好ましい。
両極性電荷輸送層34、34’に含まれるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等が適用可能である。
特に、ポリカーボネート樹脂は、バインダーとした場合、電荷輸送材料の特性を改善するため、大変有効である。なお、両極性電荷輸送層34、34’に含まれるバインダー樹脂は同一のものである。
両極性電荷輸送層34、34’における電荷輸送性材料(低分子)とバインダー樹脂との混合質量比(電荷輸送性材料/バインダー樹脂)は、2/8〜9/1の範囲が好ましく、4/6〜7/3の範囲がより好ましい。両極性電荷輸送層34、34’における電荷輸送性材料(低分子)とバインダー樹脂との混合質量比も同一である。
本実施形態においては、両極性電荷輸送層34、34’として、低分子の電子輸送性材料を正孔輸送性高分子に分散してなる電荷輸送層を用いることが好ましい。前述の低分子の正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を組み合わせて両極性電荷輸送層を作製する場合には、正、負両電荷について一定以上の移動度を得ようとすると、各々相当量の低分子量の電荷輸送性材料を混合してバインダー樹脂中に分散して両極性電荷輸送層34、34’を形成しなければならず、両者の混合性が悪いだけでなく形成された膜が脆くなり、実使用において耐久性等が問題となる場合がある。
本発明者等は、特にバインダー樹脂を用いず、正孔輸送性高分子に低分子の電子輸送性材料を分散させたときに、電子輸送性材料を相当量混合した場合でも均一性が保たれ、電荷輸送層形成後の膜質が低下することなく、しかも正、負両電荷の移動度もバランスよく高くすることができることを見出した。
前記正孔輸送性高分子としては、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される正孔輸送性高分子のうちの少なくとも1種であることが好ましい。このような正孔輸送性高分子は、正孔輸送の基本的単位として優れたトリフェニルアミン構造を有するため、高い正孔輸送性を有すると共に、柔軟性の高いエステル連結構造を有するため、低分子化合物の分散性等にも優れる。
Figure 2009058883
一般式(I−1)及び(I−2)中、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表し、Aは下記一般式(II−1)で示される有機基を表し、B及びB’はそれぞれ独立に−O−(Y−O)−Hまたは−O−(Y−O)−CO−Z−CO−OR’(ここで、R’は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基を表し、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表す。)を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。
Figure 2009058883
一般式(II−1)中、Arは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Tは−O−または任意の有機基を表し、k、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
一般式(I−1)、(I−2)、(II−1)におけるX、Y、Z、ArおよびTは、具体的には、下記の有機基が好適に挙げられる。
まず、Xとしては、以下の基(IV−1)〜(IV−2)から選択された有機基が好適に挙げられる。
Figure 2009058883
有機基(IV−1)〜(IV−2)中、R10およびR11は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、aは0または1を表し、Vは下記の有機基(V−1)〜(V−10)から選択されるいずれかを表す。但し、有機基(V−1)〜(V−10)中、bは、1〜10の整数を、cは1〜3の整数を各々表す。
Figure 2009058883
Y及びZとしては、それぞれ独立に下記の有機基(VI−1)〜(VI−7)から選択された基が好適に挙げられる。
Figure 2009058883
有機基(VI−1)〜(VI−7)中、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、dおよびeはそれぞれ独立に1〜10の整数を、fおよびgは、それぞれ独立に0、1または2の整数を、hおよびiはそれぞれ独立に0または1を各々表す。また、Vは有機基(IV−1)〜(IV−2)中におけるVと同義である。
Arは、置換もしくは未置換の芳香族基を表し、好ましくは置換もしくは未置換の芳香環数2以上の芳香族基、さらに好ましくは芳香環数2〜10の多核芳香環、または置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の縮合芳香環である。具体的には、例えば、置換もしくは未置換のビフェニル基、置換もしくは未置換のターフェニル基、置換もしくは未置換のナフチル基、置換もしくは未置換のフルオレニル基、置換もしくは未置換のフェナントレニル基、または置換もしくは未置換のピレニル基が好適である。
ここで、前記多核芳香環または縮合芳香環の置換基としては、例えば水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、トルイル基等があげられる。前記アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられ、具体例としては前述の通りである。
Tは−O−または任意の有機基であるが、好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝状炭化水素基である。Tの具体的な構造を以下に示す。
Figure 2009058883
本実施形態における前記正孔輸送性高分子では、一般式(II−1)おけるXが下記一般式(III−1)、(III−2)及び(III−3)で示される有機基のうちのいずれかであることが特に好ましい。このようなビフェニル構造もしくはターフェニル構造を有する高分子は電荷移動度が高く、実用性の高いものであるからである。
Figure 2009058883
本実施形態における正孔輸送性高分子の重合度(p)は、5以上5000以下であることが望ましいが、成膜性、素子の安定性等の理由から、より好ましくは10以上1000以下の範囲である。また、重量平均分子量Mwは、10000以上300000以下の範囲にあることが好ましい。
本実施形態における正孔輸送性高分子について、一般式(I−1)で示される構造を有する化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。なお、Zの欄が「−」であるものは一般式(I−1)で示される正孔輸送性高分子の具体例を示し、その他は一般式(I−2)で示される正孔輸送性高分子の具体例を示す。以下、各化合物番号を付した具体例、例えば、15の番号を付した具体例は正孔輸送性高分子(15)という。
Figure 2009058883
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Figure 2009058883
Figure 2009058883
Figure 2009058883
次に、本実施形態に好適に用いられる正孔輸送性高分子の合成方法について説明するが、これに限定されるわけではない。
まず、前記正孔輸送性高分子の合成に使用される正孔輸送性構造を有するモノマーについて説明する。例えば、下記一般式(VII−1)で示される化合物が、電荷輸送活性モノマーとして、対応するジアリールアミン誘導体とビスハロゲン化ビフェニル誘導体(Xがビフェニル構造の場合)とを反応させるか、対応するハロゲン化ベンゼン誘導体とジアリールベンジジン誘導体(Xがビフェニル構造の場合)とを反応させて、容易に合成することができる。
次に、下記一般式(VII−1)で示される正孔輸送活性モノマーを、例えば第4版実験科学講座28巻などに記載された公知の方法で重合することにより、本発明における正孔輸送性高分子を合成することができる。なお、一般式(VII−1)中、Ar、X、T、k及びnは、前記一般式(II−1)におけるAr、X、T、k及びnと同様である。また、A’は水酸基、ハロゲン原子、または基−O−R14を表す。ここで、R14はアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基またはアラルキル基を表す。
Figure 2009058883
即ち、本実施形態における正孔輸送性高分子は、例えば、次のようにして合成することができる。
(1)A'が水酸基の場合
A'が水酸基の場合には、例えば、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、酸触媒を用いて脱水縮合エステル化反応によって重合させる。酸触媒としては硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、正孔輸送活性モノマー1質量部に対して、1/10000〜1/10質量部の範囲、好ましくは1/1000〜1/50質量部の範囲で用いられる。合成中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、正孔輸送活性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部の範囲、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。反応終了後、溶剤を用いなかった場合には、溶解可能な溶剤に溶解させ、また、溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、正孔輸送性高分子を析出させ、正孔輸送性高分子を分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、正孔輸送性高分子を析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく攪拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際に正孔輸送性高分子を溶解させる溶剤は、正孔輸送性高分子1質量部に対して、1〜100質量部の範囲、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる、また、貧溶剤は正孔輸送性高分子1質量部に対して、1〜1000質量部の範囲、好ましくは10〜500質量部の範囲で用いられる。
(2)A'がハロゲンの場合
A'がハロゲンの場合には、例えば、HO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合させる。有機塩基性触媒は、正孔輸送活性モノマー1質量部に対して、1〜10当量の範囲、好ましくは2〜5当量の範囲で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、正孔輸送活性モノマー1質量部に対して、1〜100質量部の範囲、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できる。重合後、前述のように再沈殿処理し、精製する。また、前記2価のアルコール類がビスフェノール等の酸性度の高い2価のアルコール類の場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価のアルコール類に水を加え、当量の塩基を加えて、溶解させた後、激しく攪拌しながら2価のアルコール類と当量の正孔輸送活性モノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水は2価アルコール類1質量部に対して、1〜1000質量部の範囲、好ましくは2〜500質量部の範囲で用いられる。正孔輸送活性モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、正孔輸送活性モノマー1質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲、好ましくは0.2〜5質量部の範囲で用いられる。
(3)A'が−O−R14の場合
A'が−O−R14の場合には、まずHO−(Y−O)m−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウムおよびコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換反応によりA'を−O−(Y−O)m−Hに変換させ、次に脱HO−(Y−O)m−H縮合エステル化反応によって、重合させる。2価アルコール類は正孔輸送活性モノマー1当量に対して、2〜100当量の範囲、好ましくは3〜50当量の範囲で用いられる。触媒は、正孔輸送性モノマー1質量部に対して、1/1000〜1質量部の範囲、好ましくは1/100〜1/2質量部の範囲で用いられる。反応は、反応温度200〜300℃で行い、−O−R14から−O−(Y−O−)m−Hへのエステル交換終了後はHO−(Y−O−)m−Hの脱離による重合反応を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、HO−(Y−O−)m−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、減圧下でHO−(Y−O−)m−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
以上のように本実施形態に用いる正孔輸送性高分子は、容易に合成することができる。
両極性電荷輸送層34、34’には、上記正孔輸送性高分子に加えて、他の低分子の電子輸送性材料を混合する。該電子輸送性材料としては、前記例示した電子輸送性材料のうちの低分子のものをいずれも用いることができるが、前記低分子電荷輸送材料同士と同様に、正孔輸送性高分子と電子輸送材料とがCT錯体を形成しないようにすることが好ましく、同様に電子輸送性材料としては、嵩高い置換基を複数有するものを用いることが好ましい。
上記の観点から、前記正孔輸送性高分子としては、前記一般式(II−1)中のArが置換もしくは未置換の芳香環数2以上の嵩高い芳香族基であるものを用いることが好ましく、これらに対して、低分子の電子輸送性材料として、嵩高い置換基を有するフルオレノン誘導体やジフェノキノン誘導体などを組み合わせて用いることが好ましい。
また、正孔輸送性高分子Cと電子輸送性材料Dとの混合質量比(C/D)は9/1〜1/9の範囲とすることが好ましく、7/3〜3/7の範囲とすることがより好ましい。なお、両極性電荷輸送層34、34’における電荷輸送性材料(低分子)とバインダー樹脂との混合質量比も同一である。
両極性電荷輸送層34、34’の作製方法としては、真空蒸着法やスパッタ法などドライな膜形成法のほか、溶液あるいは分散液を用いるスピンコート法、ディップ法などの湿式塗布法が適用可能である。湿式塗布法の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン、シクロペンタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。両極性電荷輸送層34、34’の成膜に用いる溶剤は組成も含めて同じものであること(全く同じ形成液を用いること)が好ましいが、成膜後の組成比と膜厚が同一であれば、溶剤およびその組成比に関しては異なっていても良い。
両極性電荷輸送層34、34’の膜厚は、0.1μm以上100μmの範囲とすることが一般的であるが、本実施形態では1μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましく、1μm以上10μm以下とすることがより好適である。1μmより薄いと、耐電圧が低くなって信頼性確保が困難となる場合があり、また、20μmより厚くなると、機能素子とのインピーダンスマッチングが困難となって設計が難しくなる場合がある。
特に、前記表示媒体における解像度低下を防止するためには、8μm以下とすることがさらに好適である。
なお、本実施形態において両極性電荷輸送層34、34’の膜厚は同一とする。具体的には、両極性電荷輸送層形成用塗布液として同一の塗布液を用い、スピンコート法における回転速度やディップ法における引き上げ速度などの塗布条件を同一にして製膜を行い、乾燥することによって、膜厚が同一の両極性電荷輸送層34、34’を得ることができる。両極性電荷輸送層34、34’は同じ方法で成膜することが好ましいが、膜厚や組成比が同一になるようにすれば別々の成膜方法を用いてもよく、たとえば基板側の両極性電荷輸送層34をブレードコートで作製し、電荷発生層上の両極性電荷輸送層34’をスピンコートで作製することもできる。
本実施形態において、両極性電荷輸送層34、34’の10V/μmでの移動度は、電子及び正孔ともに、10−6cm/Vs以上であることが好ましい。電子及び正孔の移動度がともに、あるいはいずれか一方が10−6cm/Vsに満たないと、光スイッチング素子における光感度が不足し、光書き込み型表示媒体における駆動特性が低下する場合がある。
前記移動度は、5×10−6cm/Vs以上であることがより好ましく、10−5cm/Vs以上であることがさらに好ましい。
また、前記電子及び正孔の移動度は同等であることが好ましい。どちらか片方の易動度が極端に低くなってしまうと、もう片方の易動度がたとえ良好であっても、全体としては悪い方の易動度で光スイッチング素子の光電流が限定されてしまい、結果として低感度になってしまうためである。ただしそのような場合でも、本実施形態では、一層の電荷発生層の両側に同一構成の両極性電荷輸送層がある構成をとっているため、交流駆動時の応答電圧波形の対称性には問題ない(光電流が少なくて低感度でも対称性は良好である)。具体的には、両者の移動度の比(正孔/電子)は1/5〜5/1の範囲であることが好ましい。
なお、上記両極性電荷輸送層中の電子、正孔の移動度特性は、両極性電荷輸送層34、34’において同一である。
前記移動度は、ITO基材上に約5μmに形成した両極性電荷輸送層の膜厚を正確に測定し、上部にAuをスパッタ法により設け、膜に10V/μmの電界が印加された状態で窒素ガスレーザ(パルス幅:1nsec)を照射したときに流れる過渡光電流を通常のTOF法(Time−of−flight法)によって観測し、Transit Timeを測定することにより求めた。なお、測定は、20℃、大気圧下の環境にて行った。
本実施形態における光スイッチング素子としては、前述の電荷発生層33の両面に両極性電荷輸送層34、34’が形成された構造を含んでいればよく、両極性電荷輸送層34、34’の図面における上下にさらに機能層を積層した構造であってもよい。
本実施形態における光スイッチング素子は、光スイッチング素子に交流電界を印加し、光を照射した場合にその応答対称性が優れていることに加え、デュアルCGL構造のような2つの電荷発生層の感度を調整する必要がなく、少ない塗布液数により制御が容易な条件で作製されるので、高品質かつ低コストで作製し得る光スイッチング素子であり、また、光源や印加電圧の変動や使用による材料劣化による駆動対称性の安定性にも優れる。
(表示層)
前記光スイッチング素子には、図1に示すように、表示素子40が電気的に接続される。光スイッチング素子30と表示素子40とは直列接続であっても並列接続であっても構わないし、これらの組み合わせであっても構わない。更にほかの素子と接続されていてもよい。
光書き込み型表示媒体20は、表示素子40として液晶素子を用いた場合は、光書き込み型液晶空間変調素子として使用することが可能である。特に、液晶素子は、交流駆動が基本であり直流成分を嫌うため、前記光スイッチング素子の適用が効果的である。使用できる液晶は、ネマチック、スメクチック、ディスコチック、コレステリック系などである。
また、表示素子40としては、メモリ性のある表示層43を用いることが好ましい。メモリ性のある表示層43としては、例えば、前記液晶素子のうちメモリ性のある液晶表示層を挙げることができる。メモリ性のある液晶とは、液晶を電圧印加により配向制御した後、電圧印加を解除した後も、一定時間、液晶の配向が保たれる特徴を持った液晶である。たとえば、ポリマー分散型液晶(PDLC)やカイラルスメクチックC相等の強誘電性液晶、あるいはコレステリック液晶等である。また、これらをカプセル化した液晶層でも適用可能である。メモリ性を有する液晶はそのメモリ性ゆえに、画像表示保持のための電力を必要とせず、また、表示媒体を光書き込み装置から分離して使用することが可能とすることができる。
なお、メモリ性のある表示層43を含む表示素子40としては、上記液晶表示素子の他、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子、電界回転素子を挙げることができる。
また、本実施形態においては、光スイッチング素子30と前記のごとき表示素子40とを接続する場合において、これらを一体化させて光書き込み型表示媒体20とすることが好ましい。一体化させることにより光スイッチング素子30と表示素子40との接続を安定化させることができる。
特に、メモリ性を有する表示素子40と光スイッチング素子30とを一体化することが効果的である。これらを一体化した光書き込み型表示媒体20は、デバイスを駆動する本体(光書き込み装置)から分離させることが可能となる。したがって、本体から分離させた表示媒体を、例えば配布することが可能になる。また、その使用者は自由な場所で自由な姿勢で閲覧することができる。
もちろん、表示部の画像表示のみ分離することにも適用可能である。しかし、表示素子40と光スイッチング素子30とを、再度改めて接続する場合の信頼性の確保が困難な場合があるため、表示素子40と光スイッチング素子30とを一体化したものの方が効果的である。
なお、前記一体化の方法としては、光スイッチング素子30、機能層50、および表示素子40を順次積層し一体化したデバイスとすることが、製造の容易性、表示機能の安定化の点から有利である。機能層50としては、たとえば光スイッチング素子30と表示素子40とを隔離するための隔離層や、直流成分除去用機能膜等が挙げられる。該直流成分除去用機能膜を備えたデバイスの場合には、交流電界により駆動する際の応答対称性がさらに改善されることになる。
本実施形態の光書き込み型表示媒体20としては、メモリ性を有する液晶素子と光スイッチングとを一体化したデバイス(画像表示媒体)が特に効果的である。また、上記メモリ性を有する液晶素子のなかでも、コレステリック液晶は、反射率が高く、表示性能が優れているため、コレステリック液晶表示素子と光スイッチング素子とを一体化したデバイスが特に光書き込み型表示媒体として望ましい。
<光書き込み型表示媒体への書き込み>
上記本実施形態の光書き込み型表示媒体は、例えば、少なくとも一方が透明電極である一対の電極に交流電圧を印加しつつ、一方が透明でない基板である場合には、透明基板側から画像様の光を照射することで書き込みをすることができる。
印加電圧は交流電圧であるが、波形としてはサイン波、矩形波、三角波などが適用可能であり、これらを組み合わせたものでも、全く任意の波形であっても構わない。勿論、表示素子層の構成などによっては、直流成分印加が有効である場合があるが、これを適用しても差し支えない。
図3に、本実施形態の光書き込み型表示媒体に書き込みを行うシステムの概念の一例を示す。図3において、ガラスまたはプラスチック等の光入射側基板31上に、透明な電極32と、電荷発生層33、両極性電荷輸送層34、34’からなる光スイッチング素子と、表示層43と、透明電極42と、表示側基板41と、から構成される本発明の光書き込み型表示媒体20に書き込みを行うシステムを示している。
光書き込み型表示媒体20の上下の透明電極32および42は、コネクタ14に接続され、電圧印加手段16により電圧が印加できるようになっている。コネクタ14、電圧印加手段16、光書き込み手段12、ならびに電圧印加手段16および光書き込み手段12を制御するための制御手段18により、光書き込み装置が構成される。該光書き込み装置は、一つにまとめられていてもよいし、分離していてもよい。
コネクタ14は、透明電極32と、透明電極42に接続するためのコネクタで、それぞれの側に接点を有する。勿論、これは自在に取り外しが可能である。
電圧印加手段16は、光書き込み手段による光書き込みと同期して、表示のための駆動電圧パルスを印加するものであり、印加パルスの生成手段、出力するためのトリガー入力を検知する手段を有する。パルス生成手段には例えば、ROMのような波形記憶手段とDA変換手段と制御手段とを有し、電圧印加時にROMから読み出した波形をDA変換して光書き込み型表示媒体に印加する手段が適用可能であるし、また、ROMではなくパルス発生回路のような電気回路的な方式でパルスを発生させる手段が適用可能であるが、このほかにも駆動パルスを印加する手段であれば特に制限なく使用することができる。
光書き込み手段12としては、光書き込み型表示媒体20の光入射側に照射する光のパターンを生成する手段と、そのパターンを光書き込み型表示媒体に照射する光照射手段とを有する。パターンの生成には、例えば、TFTを用いた液晶ディスプレイ、単純マトリックス型液晶ディスプレイ等の透過型のディスプレイが適用可能である。光照射手段としては、蛍光ライト、ハロゲンランプ、エレクトロルミネッセンス(EL)ライト等が適用可能である。また、パターン生成手段と光照射手段を兼ね備えたELディスプレイやCRT、フィールドエミッションディスプレイ(FED)など発光型ディスプレイも適用可能である。前記のほかにも、照射する光量、波長、照射パターンを制御できる手段であれば、問題なく適用することができる。
制御手段18は、送られてくる画像データを表示データに変換するほか、上記手段の動作を制御するための手段により構成されている。
本実施形態の光書き込み型表示媒体は、以上のような構成の光書き込み装置により、画像を書き込むことができ、一度光書き込み型表示媒体20に書き込んだ画像は、コネクタ14から外しても保持され、閲覧、回覧、配布等に供することができる。また、再度コネクタ14に接続し、電圧を印加することで、書き込んだ画像を消去することもでき、再び別の画像を書き込むことも可能であるため、省資源化の要求に応え得るものである。
以下、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
<実施例1>
(光書き込み型表示媒体、分離セルの作製)
−光スイッチング素子1−
電極としてITO膜(厚さ:800Å)を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)基板(厚さ:125μm)の前記ITO膜上に、両極性電荷輸送層を形成した。具体的には、まず、低分子の電子輸送性材料である3,3’−ジメチル−5,5’−ジシクロヘキシルジフェノキノン6質量部と前記例示した正孔輸送性高分子(32)4質量部とを、モノクロロベンゼン40質量部に溶解させ塗布液(塗布液B1)を調製した。これをスピンコート法により塗布、乾燥することによって、前記ITO膜上に3μm厚の両極性電荷輸送層(I)を形成した。この両極性電荷輸送層(I)は均質であった。
次に、前記両極性電荷輸送層(I)上に電荷発生層を形成した。具体的には、まず、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°に強い回折ピークを有するもの)を電荷発生材料とし、バインダー樹脂としてブチラール樹脂(積水化学社製、BH−3)を用い、その質量比率を1:1として、1−ブタノールを用いてダイノーミルで分散させ、固形分濃度5質量%の分散液(塗布液A1)を調製した。これをスピンコート法により前記両極性電荷輸送層上に塗布後、乾燥させ、膜厚約0.3μmの電荷発生層を形成した。
さらに、前記塗布液B1を再度用いて、前記両極性電荷輸送層(I)の形成と同じ条件でスピンコート法により塗布、乾燥することによって、前記電荷発生層の上に、両極性電荷輸送層(I)と構成成分及び膜厚が同一である3μm厚の両極性電荷輸送層(II)を形成した。この両極性電荷輸送層(II)も均質であった。
以上のようにして、光スイッチング素子1を作製した。
次に、光書き込み型表示媒体を作製するため、および、後述する分離セルでの評価を実施するため、さらに、この上に隔離層および遮光層を形成した。
前記両極性電荷輸送層(II)の表面に、隔離層として、スピンコート法によりポリビニルアルコールの3質量%水溶液を塗布し、ポリビニルアルコール膜(膜厚:0.2μm)を形成した。さらに、この隔離層の上に、ブラックポリイミドBKR−105(日本化薬製)をスピンコート法により塗布し、遮光層(厚さ:1μm)を形成した。
−表示素子−
正の誘電率異方性を有するネマチック液晶E8(メルク社製)74.8質量部に、カイラル剤CB15(BDH社製)21質量部とカイラル剤R1011(メルク社製)4.2質量部とを加熱溶解し、その後、室温に戻して、ブルーグリーンの色光を選択反射するカイラルネマチック液晶を得た。このブルーグリーンカイラルネマチック液晶10質量部に、キシレンジイソシアネート3分子とトリメチロールプロパン1分子との付加物(武田薬品工業製、D−110)3質量部と酢酸エチル100質量部とを加えて均一溶液とし、油相となる液を調製した。一方、ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバール217EE)10質量部を、熱したイオン交換水1000質量部に加えて攪拌後、放置冷却することによって、水相となる液を調製した。
次に、スライダックで30Vの交流を与えた家庭用ミキサーによって、前記油相10質量部を前記水相100質量部中に1分間乳化分散処理して、水相中に油相液滴が分散した水中油エマルジョンを調製した。この水中油エマルジョンを60℃のウォーターバスで加熱しながら2時間攪拌し、界面重合を行わせ、液晶マイクロカプセルを形成した。得られた液晶マイクロカプセルの平均粒径をレーザー粒度分布計によって測定したところ、約12μmと見積もられた。得られた液晶マイクロカプセル分散液を、網目38μmのステンレスメッシュを通して濾過後、一昼夜放置し,乳白色の上澄みを取り除くことにより、液晶マイクロカプセルからなる固形成分約40質量%のスラリーを得た。得られたスラリーに、その固形成分の質量に対して2/3となる量のポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール10質量%の水溶液を加えることにより塗布液Cを調製した。
ITO膜付きのPETフィルムのITO膜面の上に、上記塗布液Cをワイヤーバー法にて塗布することにより、液晶を含む表示層を形成し、表示素子を作製した。
−光書き込み型表示媒体1−
前記光スイッチング層の遮光膜が形成された面上に、更に、ドライラミネート接着剤であるディックドライWS−321A/LD−55(大日本インキ化学工業製)を塗布し、乾燥させて厚さ1μmの接着層を形成した。この接着層の上に、前記表示層が形成されたPETフィルムを、表示層と接着層とが接するように密着させ、70℃でラミネートを行い、モノクロ表示の光書き込み型表示媒体1を得た。
−分離セル−
一方、前記と同様のITO膜付きのPETフィルムのITO膜面の上に、ドライラミネート接着剤であるディックドライWS−321A/LD−55(大日本インキ化学工業製)を塗布し、乾燥させて厚さ1μmの接着層を形成した。この接着層付きフィルムの接着層側を、前記光スイッチング層表面の遮光層と接するように密着させ、70℃でラミネートを行なうことにより、光スイッチング層の分離セルを得た。また、前記と同様にして作製した接着層付きフィルムの接着層側を、前記表示素子の表示層と接するように密着させ、70℃でラミネートを行なうことにより、表示層の分離セルを得た。
これらの分離セルは、互いの接着層型のITOどうしを電気的に接続することにより、光書き込み型表示媒体とほぼ等価な回路を形成することができるものである。
(光書き込み型表示媒体の評価)
作製した光書き込み型表示媒体1を以下のように評価し、表示媒体として有効に機能することを検証した。
−初期表示特性−
光照射は660nmにピークを持つLED光源を用いた。明時(Photo)の光量は、500μW/cmとした。駆動電圧は、50Hz、8パルスで0〜600Vまで変化させた。電圧パルスとして矩形波、第一パルスが負極性パルス、第二パルスが正極性パルスとした。なお、光照射側基板の透明電極を正に印加した場合を、正極性と定義する。同様に暗時(Dark)の反射率を調べた。なお、電圧印加に伴う反射率の変化は、反射光学濃度としてX−rite404(X−rite社製)により測定した。
その結果、最大コントラスト(電圧を固定した状態での表示層反射率の明暗比の最大値)が10、駆動マージン(最大明暗比の50%以上のコントラストが得られる電圧幅)が250Vという良好な値が得られた。
また、同様の評価を波長660nmのLEDの代わりに波長640nmのLEDを用いて評価したところ、全く同じ結果が得られ光源の光波長変化に対しても表示特性は変化しないことが確認された。
−耐久性−
図3に示した光書き込み装置を用いて、作製した光書き込み型表示媒体1に電圧を印加し、モノクロ画像表示を試みた。書き込みパルスとして矩形波、50Hz、8パルス、300Vを印加した。駆動パルスとしては第一パルスが負極性パルス、第二パルスが正極性パルスとし、これを順次第八パルスまで印加し、最終の第八パルスは正極性パルスとした。正極性パルスは光照射側基板の透明電極に印加した。この結果、暗部と光照射部とにおいて、光照射部はグリーン、暗部はブラックのモノクロ画像が得られた。
この操作を繰り返したところ、消し残りによる色むら等の画像劣化は1000回の繰り返しでも発生しなかった。
−解像度−
前記作製した光書き込み型表示媒体1を用い、解像度評価を行なった。具体的には、書き込みパターンとして100dpiから1200dpiまでのラインパターンを用い、図3に示した光書き込み装置を用いて書き込みを行い、書き込まれたラインパターンについて目視による評価を行なった。
その結果、この光書き込み型表示媒体では1000dpiまで全く問題なく解像が確認できた。
(分離セルを用いた対称性評価)
−初期特性−
作製した光スイッチング素子1および表示素子の分離セルを、両者の接着層側のITOどうしを電気的に接続し、前記の光書き込み型表示媒体の評価と同様の書き込み評価を行なった。その際、光スイッチング層に印加される電圧波形をオシロスコープによって観察し、駆動対称性を評価した。なお、オシロスコープへの入力には、入力インピーダンス1GΩのプローブを用いた。駆動対称性としては、光照射側基板の透明電極を正に印加した場合のピーク値を1として規格化し、負に印加した場合のピーク値の絶対値で評価した。
その結果、PhotoおよびDarkのどちらの駆動の場合にも、全ての印加電圧の範囲内において対称性は0.9〜1.1の範囲にあり、良好な対称性を示していた。また、LEDの波長を660nmから640nmに変えて同じ実験を行なっても、同様の結果が得られた。
−耐久性−
前記光スイッチング素子1および表示素子の分離セルを接続したものを用い、光書き込み型表示媒体の評価と同様の耐久性評価を実施したところ、1000回の繰返しでも対称性の低下は見られなかった。また、LEDの波長を660nmから640nmに変えて同じ実験を行なっても、同様の結果が得られた。
<比較例1>
(光書き込み型表示媒体、分離セルの作製)
−光スイッチング素子2−
実施例1の光スイッチング素子の作製における塗布液A1を作製において、固形分濃度を2質量%とした以外は全く同様にして塗布液A2を作製した。これを、実施例1で用いたITO膜を形成したPET基板のITO面にスピンコート法により塗布し、乾燥させることによって、膜厚約0.1μmの電荷発生層を形成した。
正孔輸送材料としてN,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビスフェニル−4−アミンと、バインダー樹脂としてポリ(4,4'−シクロヘキシリデンジフェニレンカーボネート)(ビスフェノール−Z、三菱瓦斯化学社製、重量平均分子量:3万)とを、6:4の質量比で混合した後、これをモノクロロベンゼンに溶解させ20質量%の溶液(塗布液B2)を調製した。この塗布液B2を、前記電荷発生層の上にスピンコート法により塗布し、乾燥させることによって、膜厚6μmの電荷輸送層を形成した。この上に、実施例1の塗布液A1を用いてスピンコート法により塗布、乾燥させることによって、膜厚約0.3μmの電荷発生層を形成した。このようにして、従来のデュアルCGL構成の光スイッチング素子2を作製した。
さらに、その上に、実施例1と同様の方法で、隔離層および遮光層を形成した。
−光書き込み型表示媒体2、分離セル−
前記光スイッチング素子2、および実施例1で作製したものと同じ表示素子を用い、実施例1と同様の方法で、光書き込み型表示媒体2、および分離セルを作製した。
(光書き込み型媒体、分離セルの評価)
−表示特性、耐久性−
作製した光書き込み型表示媒体2について実施例1と同様の方法で評価したところ、初期におけるコントラストが10、駆動マージンが250Vと、良好な結果となった。また、1000回の繰返し評価を行なったところ、実施例1と同様の良好な結果となった。
しかし、LEDを波長640nmのものに変えて同じ実験を行なったところ、初期のコントラストが9、駆動マージンが220Vと、若干低下した。さらに、1000回繰返し後には、コントラストが6、駆動マージンが210Vと低下してしまった。
そこで、実施例1と同様にして、前記作製した光スイッチング素子2の分離セルを用いて、640nmのLEDを用いた駆動対称性の評価を行なったところ、初期の対称性が1.0〜1.2と悪化しており、1000回繰り返し後には1.1〜1.3まで悪化していた。また、1000回繰り返し後には、対称性の悪化によると思われる電荷蓄積により、明部電圧の切れが悪くなり、このことが原因でコントラストの低下が起こっていたと予想された。
−解像度−
実施例1における解像度の評価と同様にして、上記光書き込み型表示媒体2の解像度評価を行なった。
その結果、書き込まれたラインパターンは600dpiまでは良好だったものの、750dpiではつぶれた表示となってしまった。
以上の結果のように、実施例における光書き込み型表示媒体では、良好な光書き込み特性、繰り返し安定性が得られた。
一方、比較例では、光源の波長がわずかに変化するだけで初期から駆動対称性が悪化し、さらに解像度も劣るものであった。
実施形態の光書き込み型表示媒体の一形態を示す概略構成図である。 実施形態における光スイッチング素子の一形態を示す概略構成図である。 実施形態の光書き込み型記録媒体に書き込みを行うシステムの概念の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
12 光書き込み手段
14 コネクタ
16 電圧印加手段
18 制御手段
20 光書き込み型表示媒体
30 光スイッチング素子
31、41 基板
32、42 電極
33 電荷発生層
34、34’ 両極性電荷輸送層
40 表示素子
43 表示層
50 機能層

Claims (5)

  1. 一対の電極の間に、少なくとも表示層と、
    電荷発生層及び該電荷発生層の両面に積層された同一の両極性電荷輸送層を含む光スイッチング層と、
    を有することを特徴とする光書き込み型表示媒体。
  2. 前記両極性電荷輸送層が、低分子の電子輸送性材料を正孔輸送性高分子に分散してなることを特徴とする請求項1に記載の光書き込み型表示媒体。
  3. 前記正孔輸送性高分子が、下記一般式(I−1)及び(I−2)で示される正孔輸送性高分子のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の光書き込み型表示媒体。
    Figure 2009058883

    (一般式(I−1)及び(I−2)中、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表し、Aは下記一般式(II−1)で示される有機基を表し、B及びB’はそれぞれ独立に−O−(Y−O)−Hまたは−O−(Y−O)−CO−Z−CO−OR’(ここで、R’は水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基を表し、Y及びZはそれぞれ独立に任意の有機基を表す。)を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。)
    Figure 2009058883

    (一般式(II−1)中、Arは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の芳香族基を表し、Tは−O−または任意の有機基を表し、k、nはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。)
  4. 前記一般式(II−1)中のArが置換もしくは未置換の芳香環数2以上の芳香族基であることを特徴とする請求項3に記載の光書き込み型表示媒体。
  5. 前記表示層が、メモリ性を有する液晶表示層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光書き込み型表示媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113013348A (zh) * 2021-04-29 2021-06-22 武汉华美晨曦光电有限责任公司 一种oled器件及光源组件

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