JP2009058326A - 水硬性材料の線膨張係数算出方法およびその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】硬化過程における水硬性材料の線膨張係数を正確に算出することが可能な水硬性材料の線膨張係数算出方法およびその装置を提供する。
【解決手段】型枠内の供試体を徐冷または徐熱するとき、型枠の外面を空気層形成体により覆った状態で徐冷または徐熱するため、供試体の周辺に保温性の高い空気層が形成され、供試体の急激な温度変化が回避され、線膨張係数を求める相関の高い近似式が得られる。その結果、硬化過程における水硬性材料の正確な線膨張係数を求めることができる。
【選択図】図1
【解決手段】型枠内の供試体を徐冷または徐熱するとき、型枠の外面を空気層形成体により覆った状態で徐冷または徐熱するため、供試体の周辺に保温性の高い空気層が形成され、供試体の急激な温度変化が回避され、線膨張係数を求める相関の高い近似式が得られる。その結果、硬化過程における水硬性材料の正確な線膨張係数を求めることができる。
【選択図】図1
Description
この発明は水硬性材料の線膨張係数算出方法およびその装置、詳しくは、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数を正確に算出可能な水硬性材料の線膨張係数算出方法およびその装置に関する。
コンクリートに発生するひび割れの原因の一つとして、セメントの水和熱に起因した温度変化に伴う体積変化が挙げられる。この体積変化の目安として使用される線膨張係数は、コンクリートのひび割れの抵抗性を検討する上で重要である。一般に、硬化コンクリートの線膨張係数は、8×10−6/℃〜12×10−6/℃といわれている。これに対して、水の線膨張係数は100×10−6/℃で、水和発熱反応の過程は流動体から硬化体への遷移過程であることから、線膨張係数の値も水和反応の度合いに応じて変化し、容易に把握できない。そのため、温度応力解析に必要な硬化過程でのコンクリートの線膨張係数は、従前まで、その試験方法が確立されておらず、硬化コンクリートの線膨張係数の数値を代用していた。その結果、温度応力解析の精度は低かった。
そこで、これを解消する従来技術として、例えば非特許文献1に開示されたものが知られている。これは、膨張材を混和したコンクリートを対象とした計測結果より得られたコンクリートの実ひずみと温度との関係から、膨張材の効果を見かけの線膨張係数として代表させ、3次元有限要素法によって温度応力を解析する方法である。
「膨張コンクリートによる構造物の高機能化/高耐久化に関するシンポジウム 委員会報告書・論文集(2003.9)」(第1〜6頁の「水和抑制型高性能膨張材を使用したRC橋脚の温度ひび割れ低減効果」、編集著作人:社団法人日本コンクリート工学協会、発行所:社団法人日本コンクリート工学協会、2003年9月19日発行)
「膨張コンクリートによる構造物の高機能化/高耐久化に関するシンポジウム 委員会報告書・論文集(2003.9)」(第1〜6頁の「水和抑制型高性能膨張材を使用したRC橋脚の温度ひび割れ低減効果」、編集著作人:社団法人日本コンクリート工学協会、発行所:社団法人日本コンクリート工学協会、2003年9月19日発行)
しかしながら、非特許文献1に開示された方法は、このようにコンクリートの実ひずみと温度との関係から見かけの線膨張係数を求めるものであったが、その硬化過程におけるコンクリートの線膨張係数を算出する際、どのような装置を使用し、どのような試験方法を実施すれば正確な線膨張係数が求められるかは不明であった。
この発明は、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数を正確に算出することができる水硬性材料の線膨張係数算出方法およびその装置を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、供試体用の型枠の内部空間に温度計とひずみ計とを配置し、前記内部空間に水硬性材料を流し込み養生、固化することで供試体を得る工程と、前記型枠の外面を空気層形成体により覆う工程と、該空気層形成体付きの型枠内の供試体を徐冷または徐熱する工程と、この徐冷中または徐熱中、前記温度計および前記ひずみ計により、前記供試体の温度およびひずみをそれぞれ測定する工程と、得られた前記供試体の温度情報およびひずみ情報から、前記供試体の線膨張係数を算出する工程とを備えた水硬性材料の線膨張係数算出方法である。
請求項1に記載の発明によれば、環境温度を変化させて得られるひずみ量から硬化過程における水硬性材料の線膨張係数を算出する方法において、空気層形成体により外面が覆われた状態で型枠内の供試体を徐冷または徐熱し、このときの供試体の温度およびひずみを温度計、ひずみ計によりそれぞれ測定し、得られた供試体の温度情報およびひずみ情報から、供試体の線膨張係数を算出する。このように、型枠の外面を空気層形成体により覆うことで、供試体の周辺に保温性の高い空気層が形成され、これにより供試体の急激な温度変化が回避され、供試体内部の温度勾配の発生を防止でき、線膨張係数を求める相関の高い近似式が得られる。その結果、硬化過程における水硬性材料の正確な線膨張係数を求めることができる。
水硬性材料としては、コンクリート、モルタル、セメントペーストを採用することができる。
水硬性材料の主成分であるセメントは、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント)、混合セメント(高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント)の他、アルミナセメント、超速硬セメント、油井セメント、地熱セメント、膨張セメント、コロイドセメント、カラーセメント、メイソンリーセメントなどの特殊セメントを採用することができる。
水硬性材料の主成分であるセメントは、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント)、混合セメント(高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント)の他、アルミナセメント、超速硬セメント、油井セメント、地熱セメント、膨張セメント、コロイドセメント、カラーセメント、メイソンリーセメントなどの特殊セメントを採用することができる。
コンクリートとしては、例えば一般的なものの他、寒中コンクリート、暑中コンクリート、マスコンクリート、水中コンクリート、軽量コンクリート、流動化コンクリート、吹き付けコンクリート、プレバックドコンクリート、プレストレストコンクリート、二次コンクリートなどの特種コンクリートを採用することができる。
その他、水硬性材料には、供試体の組成に応じて、適量の混和材料および水が添加される。また、水硬性材料がコンクリートの場合、粗骨材および細骨材が適量混入される。さらに、水硬性材料がモルタルの場合、細骨材が適量混入される。
その他、水硬性材料には、供試体の組成に応じて、適量の混和材料および水が添加される。また、水硬性材料がコンクリートの場合、粗骨材および細骨材が適量混入される。さらに、水硬性材料がモルタルの場合、細骨材が適量混入される。
型枠としては、例えば鋼製型枠などを採用することができる。型枠の底面には、コンクリートが自由に膨張収縮するように、ポリスチレンボードなどを貼着することが望ましい。
型枠のサイズとしては、例えばφ10cm×高さ20cm、縦10cm×横10cm×高さ40cmなどである。
温度計としては、例えば熱電対、サーミスタ温度計などを採用することができる。
温度計の使用本数は1本でも2本以上でもよい。温度計が2本の場合、一方を型枠の中央部に配置し、他方を型枠の側板付近に配置することができる。これにより、供試体の中央部と表層部との温度差を求めることができる。
型枠のサイズとしては、例えばφ10cm×高さ20cm、縦10cm×横10cm×高さ40cmなどである。
温度計としては、例えば熱電対、サーミスタ温度計などを採用することができる。
温度計の使用本数は1本でも2本以上でもよい。温度計が2本の場合、一方を型枠の中央部に配置し、他方を型枠の側板付近に配置することができる。これにより、供試体の中央部と表層部との温度差を求めることができる。
ひずみ計としては、例えば埋め込み型ひずみ計などを採用することができる。
ひずみ計の使用本数は1本でも2本以上でもよい。ひずみ計が1本の場合、例えば型枠の中央部に配置することができる。
空気層形成体としては、例えば、ビニル袋などの袋材、気泡緩衝材、発泡スチロール性のビーズなどを採用することができる。このうち、再現性が高く、短時間で緩やかに温度変化するという理由により、気泡緩衝材が最適である。
ひずみ計の使用本数は1本でも2本以上でもよい。ひずみ計が1本の場合、例えば型枠の中央部に配置することができる。
空気層形成体としては、例えば、ビニル袋などの袋材、気泡緩衝材、発泡スチロール性のビーズなどを採用することができる。このうち、再現性が高く、短時間で緩やかに温度変化するという理由により、気泡緩衝材が最適である。
請求項2に記載の発明は、前記徐冷または徐熱する工程では、前記供試体を0.04〜0.8℃/分で徐冷または徐熱する請求項1に記載の水硬性材料の線膨張係数算出方法である。
請求項2に記載の発明によれば、供試体を0.04〜0.8℃/分で徐冷または徐熱するので、供試体の自己収縮ひずみの影響を抑えながら、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数の算出精度を高めることができる。
0.04℃/分未満では、短時間で冷却できず、自己収縮の影響が大きくなる。また、0.5℃/分を超えると、供試体の中心部と表層部の温度差が大きくなり、線膨張係数の相関が低くなる。
0.04℃/分未満では、短時間で冷却できず、自己収縮の影響が大きくなる。また、0.5℃/分を超えると、供試体の中心部と表層部の温度差が大きくなり、線膨張係数の相関が低くなる。
請求項3に記載の発明は、前記供試体を所定温度に加熱または冷却後、前記供試体を室温下で30〜70分間放置する前記徐冷または徐熱工程を施す請求項1または請求項2に記載の水硬性材料の線膨張係数算出方法である。
請求項3に記載の発明によれば、室温より高い所定温度に加熱または室温より低い所定温度に冷却した供試体を徐冷または徐熱する時間を30〜70分間としたので、供試体の自己収縮ひずみの影響を抑えながら、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数の算出精度を高めることができる。
室温とは10℃〜50℃で定義される幅を持った室内の温度である。
供試体の徐冷または徐熱時間が30分間未満では、供試体の温度変化が小さい。また、徐冷または徐熱時間が70分間を超えると、供試体の自己収縮の影響が大きくなる。供試体の好ましい徐冷または徐熱時間は60分間である。これにより、供試体の自己収縮ひずみの影響を抑えながら、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数の算出精度が最も高まる。
供試体の徐冷または徐熱時間が30分間未満では、供試体の温度変化が小さい。また、徐冷または徐熱時間が70分間を超えると、供試体の自己収縮の影響が大きくなる。供試体の好ましい徐冷または徐熱時間は60分間である。これにより、供試体の自己収縮ひずみの影響を抑えながら、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数の算出精度が最も高まる。
請求項4に記載の発明は、外面が空気層形成体により覆われ、かつ内部空間に水硬性材料が流し込まれてこれを養生、固化することで供試体を得る型枠と、該型枠の内部空間に配置され、前記供試体の温度を測定する温度計と、前記型枠の内部空間に配置され、前記供試体のひずみを測定するひずみ計とを備えた水硬性材料の線膨張係数算出装置である。
請求項5に記載の発明は、前記空気層形成体は、気泡緩衝材である請求項4に記載の水硬性材料の線膨張係数算出装置である。
請求項5に記載の発明によれば、空気層形成体を気泡緩衝材としたので、例えば空気層形成体としてビニル袋などの袋材を採用した場合に比べて、再現性が高い空気層となる。しかも、例えば空気層形成体として保温性が高い発泡ビーズを採用した場合に比べて、コンクリートの温度低下およびひずみの変化に要する時間を短縮することができる。その結果、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数を正確かつ安定的に、しかも短時間で算出することができる。ビニル袋および発泡ビーズは、気泡緩衝材に比べて空気層形成体としての性能はやや劣るものの、この発明の効果を奏する空気層形成体の一種である。
ここでいう気泡緩衝材とは、梱包等に使用される緩衝材の一種で、2枚のポリエチレンシートから成り、一方のシートを成型した円柱状の突起の中に空気を閉じ込め、その空気圧で緩衝材の機能を実現させたものである。
気泡緩衝材の厚さ(型枠に重ね巻きした際の厚さも同じ)は、5〜10mmである。5mm未満では低温性が低く、急激な温度変化を回避することができない。また、10mmを超えると、保温性が高くなりすぎて、温度が下がりにくい。このように、気泡緩衝材の厚さを5〜10mmとすることで、供試体の中心部と表層部の温度差が小さく、相関の高い線膨張係数が得られる。
気泡緩衝材の厚さ(型枠に重ね巻きした際の厚さも同じ)は、5〜10mmである。5mm未満では低温性が低く、急激な温度変化を回避することができない。また、10mmを超えると、保温性が高くなりすぎて、温度が下がりにくい。このように、気泡緩衝材の厚さを5〜10mmとすることで、供試体の中心部と表層部の温度差が小さく、相関の高い線膨張係数が得られる。
請求項1に記載の水硬性材料の線膨張係数算出方法および請求項4に記載の水硬性材料の線膨張係数算出装置によれば、型枠内の供試体を徐冷または徐熱するとき、型枠の外面を空気層形成体により覆った状態で徐冷まはた徐熱するため、供試体の周辺に保温性の高い空気層が形成され、供試体の急激な温度変化が回避され、線膨張係数を求める相関の高い近似式が得られる。その結果、硬化過程における水硬性材料の正確な線膨張係数を求めることができる。
特に、請求項2に記載の発明によれば、供試体を0.04〜0.8℃/分で徐冷または徐熱するので、供試体の自己収縮ひずみの影響を抑えながら、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数の算出精度を高めることができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、空気層形成体を気泡緩衝材としたので、例えば空気層形成体としてビニル袋などの袋材を採用した場合に比べて、再現性が高い空気層となる。しかも、例えば保温性が必要以上に高い発泡ビーズを採用した場合に比べて、コンクリートの温度低下およびひずみの変化に要する時間を短縮することができる。その結果、硬化過程における水硬性材料の線膨張係数を正確かつ安定的に、しかも短時間で算出することができる。
以下、実施例によりこの発明を詳細に説明する。ただし、この発明はこの実施例に限定されない。
実施例1において、1.使用材料と、2.コンクリート供試体と、3.線膨張係数算出試験方法とを、以下に示す。
1.使用材料
供試体(コンクリート製)の使用材料は、表1に示す通りである。また、この供試体の配合は、表2に示す通りである。
1.使用材料
供試体(コンクリート製)の使用材料は、表1に示す通りである。また、この供試体の配合は、表2に示す通りである。
2.コンクリート供試体
まず、φ10cm×20cmで、かつ厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)フィルムにより内周面が覆われ、かつ底面にφ10cm、厚さ5mmのポリスチレンボードが貼着されたサミット缶製の型枠を多数準備する(図1,図2)。
次に、表1中の各材料と水道水とを表2に示す配合比で混練し、流動性を有したコンクリートを得る。すなわち、セメントが12重量%(280kg/m3)、混和剤が0.25重量%(C×%)、細骨材が36重量%(845kg/m3)、粗骨材が44重量%(1064kg/m3)で、さらに水セメント比55%となる分量の水道水(154kg/m3)をミキサに投入し、これらを所定の回転速度で所定時間だけ混練し、前記コンクリートとする。
まず、φ10cm×20cmで、かつ厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)フィルムにより内周面が覆われ、かつ底面にφ10cm、厚さ5mmのポリスチレンボードが貼着されたサミット缶製の型枠を多数準備する(図1,図2)。
次に、表1中の各材料と水道水とを表2に示す配合比で混練し、流動性を有したコンクリートを得る。すなわち、セメントが12重量%(280kg/m3)、混和剤が0.25重量%(C×%)、細骨材が36重量%(845kg/m3)、粗骨材が44重量%(1064kg/m3)で、さらに水セメント比55%となる分量の水道水(154kg/m3)をミキサに投入し、これらを所定の回転速度で所定時間だけ混練し、前記コンクリートとする。
それから、図1に示す一部の型枠において、その内部空間の中央部に埋め込み型ひずみ計(株式会社東京測器研究所製、KM−100B)をそれぞれ配置し、その状態で各内部空間にコンクリートを流し込み、ひずみ測定用の供試体を養生、固化する(材齢28日)。これにより、各供試体の中央部には埋め込み型ひずみ計が埋め込まれる。
一方、コンクリート中の温度勾配を確認するため、図2に示す前記サミット缶と同サイズの別の型枠を複数用意し、各別の型枠の内部空間の中央部(周縁から50mm位置)と一側部(周縁から15mm位置)とに、それぞれ熱電対(株式会社東京測器研究所製、T型熱電対)を1本ずつ配置する。そして、この状態のまま各内部空間にコンクリートを流し込み、温度測定用の供試体を養生、固化する(材齢28日)。これにより、各供試体の中央部および一側部には熱電対が埋め込まれる。
一方、コンクリート中の温度勾配を確認するため、図2に示す前記サミット缶と同サイズの別の型枠を複数用意し、各別の型枠の内部空間の中央部(周縁から50mm位置)と一側部(周縁から15mm位置)とに、それぞれ熱電対(株式会社東京測器研究所製、T型熱電対)を1本ずつ配置する。そして、この状態のまま各内部空間にコンクリートを流し込み、温度測定用の供試体を養生、固化する(材齢28日)。これにより、各供試体の中央部および一側部には熱電対が埋め込まれる。
3.線膨張係数算出試験
硬化した供試体を用い、供試体の最適な冷却方法および冷却時間を求める試験を行った。
1)供試体の冷却方法
まず、各ひずみ測定用の供試体と各温度測定用の供試体とを40℃の恒温室にそれぞれ180分間収納し、供試体の全体を室温(ここでは20℃)と同じ温度とする(図3(a))。その後、これらの供試体を、以下に示す5つの冷却方法の何れかによってそれぞれ30分間冷却し、5分間隔で供試体の温度とひずみとを測定する。
硬化した供試体を用い、供試体の最適な冷却方法および冷却時間を求める試験を行った。
1)供試体の冷却方法
まず、各ひずみ測定用の供試体と各温度測定用の供試体とを40℃の恒温室にそれぞれ180分間収納し、供試体の全体を室温(ここでは20℃)と同じ温度とする(図3(a))。その後、これらの供試体を、以下に示す5つの冷却方法の何れかによってそれぞれ30分間冷却し、5分間隔で供試体の温度とひずみとを測定する。
すなわち、各供試体は、冷却方法1:水温30℃の恒温水槽の水面下に浸漬して冷却するか(図3(b))、冷却方法2:20℃の恒温室に入れて冷却するか(図3(c))、冷却方法3:ビニル袋に入れて20℃の空気中で冷却するか(図3(d))、冷却方法4:型枠の外面全域に気泡緩衝材を巻き付けた状態で20℃の空気中で冷却するか(図3(e))、冷却方法5:発泡ビーズ内で冷却する(図3(f))。このとき、冷却方法4で使用される気泡緩衝材としては、2枚のポリエチレンシートから成り、一方のシートを成型することで気泡径が10mmの円柱状の突起に空気を閉じ込めた市販品を採用した。また、冷却方法5で使用される発泡ビーズとしては、φ5mmの積水化成品工業株式会社製のビーズを採用した。ビーズは、φ40cm×40cmの密閉式のプラスチック製容器に充填されている。
その試験結果を、図4〜図17のグラフに示す。なお、これらの図面のうち、偶数図(図4,図6,…図16)は、温度変化量とひずみとの関係を示すグラフである。また、奇数図(図5,図7,…図17)は、コンクリート内部の経時的な温度変化を示すグラフである。これらのグラフ中、yはひずみ、xは温度変化量、R2は相関の特徴を表す決定係数である(以下、同じ)。
冷却方法1では、供試体の冷却を開始した直後、供試体のひずみが急激に減少し、温度変化に対する高い相関関係が得られなかった(図4のグラフ)。そこで、恒温水槽の温度を38℃まで高めたものの、この傾向に変化はなかった。原因としては、供試体の中心部と一側部とで温度差が生じ、応力が発生してひずみが減少したことによる考えられる(図5のグラフ)。
冷却方法2では、冷却方法1に比べて、冷却開始直後のひずみの急激な変化が小さくなったものの、良好な直線関係が得られなかった(図6,図7のグラフ)。
冷却方法2では、冷却方法1に比べて、冷却開始直後のひずみの急激な変化が小さくなったものの、良好な直線関係が得られなかった(図6,図7のグラフ)。
冷却方法3では、ひずみが冷却開始直後から直線的に低下し、相関の高い近似式が得られた。供試体周辺に空気層を設けたことで、急激な温度変化を回避できたと考えられる(図8,図9のグラフ)。このことから、コンクリートの冷却にあっては、供試体の周辺に空気層形成体を設け、空気中で徐冷または徐熱する方法が望ましいと考察する。ただし、ビニル袋で覆う方法は、空気層形成体の厚さにバラつきが生じ、気泡緩衝材および発泡ビーズに比べて再現性に問題が生じる。そのため、冷却方法4の気泡緩衝材および冷却方法5の発泡ビーズを用いる方法が好適と考えられる。
冷却方法4では、温度とひずみとの関係は直線的で、かつ相関係数も高かった。しかも、この温度とひずみとの関係において、型枠の外面に対する気泡緩衝材の巻き数の違い(1〜3巻き)にほとんど差はなかった(図10〜図15)。また、供試体の中心部と一側部の温度差は、1巻き時の0.7℃が最大で、極めて小さい結果となった(図10,図11のグラフ)。
冷却方法5では断熱状態に近くなり、コンクリートの温度低下およびひずみの変化が極めて小さくなった。そのため、発泡ビーズを使用した冷却では測定時間が気泡緩衝材に比べて長くなることが判明した(図16,図17のグラフ)。以上の結果、徐冷または徐熱時の空気層形成体としては気泡緩衝材が最適であることがわかった。
冷却方法5では断熱状態に近くなり、コンクリートの温度低下およびひずみの変化が極めて小さくなった。そのため、発泡ビーズを使用した冷却では測定時間が気泡緩衝材に比べて長くなることが判明した(図16,図17のグラフ)。以上の結果、徐冷または徐熱時の空気層形成体としては気泡緩衝材が最適であることがわかった。
2)供試体の冷却時間
供試体に気泡緩衝体を2巻きし(図12,図13のグラフ)、これを恒温室に入れて40℃に温めたのち、20℃の空気中で最大80分間冷却した。このときの温度変化量とひずみとの関係の一例(20分間,40分間,60分間,80分間)を図18のグラフに示し、冷却時間と線膨張係数との関係を図19のグラフに示す。図19のグラフから明らかなように、線膨張係数は冷却時間が長くなるにしたがって一定値に収束する傾向を示した。これにより、コンクリートの線膨張係数は、冷却時間を長くすることで精度が高まると考えられた。しかしながら、冷却時間が長すぎれば、自己収縮ひずみの影響が大きくなるので、冷却時間は60分間が好適であった。
供試体に気泡緩衝体を2巻きし(図12,図13のグラフ)、これを恒温室に入れて40℃に温めたのち、20℃の空気中で最大80分間冷却した。このときの温度変化量とひずみとの関係の一例(20分間,40分間,60分間,80分間)を図18のグラフに示し、冷却時間と線膨張係数との関係を図19のグラフに示す。図19のグラフから明らかなように、線膨張係数は冷却時間が長くなるにしたがって一定値に収束する傾向を示した。これにより、コンクリートの線膨張係数は、冷却時間を長くすることで精度が高まると考えられた。しかしながら、冷却時間が長すぎれば、自己収縮ひずみの影響が大きくなるので、冷却時間は60分間が好適であった。
以下、各種のコンクリートについて、線膨張係数の推定試験を行った際の結果を報告する。
図20のフローシートに示すように、硬化した供試体が収納されたφ10cm×20cmの型枠に、気泡径10mmの気泡緩衝材を2巻きし、これを恒温室に入れて20℃の空気中で60分間冷却した。この方法により、各種のセメント(普通ポルトランドセメント(N)、中庸熱ポルトランドセメント(M)、低熱ポルトランドセメント(L)、高炉セメントB種(BB))を使用したコンクリートの温度履歴下において、材齢0.5日、材齢1日、材齢3日、材齢7日、材齢14日での線膨張係数の推定を行った。また、材齢28日後の硬化コンクリートの線膨張係数を別の方法により求め、本発明の温度履歴下における線膨張係数の推定方法を検証した。前記別の方法とは、20℃から60℃、60℃から20℃の温度変化を与えて、このときの温度とひずみの関係から線膨張係数を算出するという推定方法である。
図20のフローシートに示すように、硬化した供試体が収納されたφ10cm×20cmの型枠に、気泡径10mmの気泡緩衝材を2巻きし、これを恒温室に入れて20℃の空気中で60分間冷却した。この方法により、各種のセメント(普通ポルトランドセメント(N)、中庸熱ポルトランドセメント(M)、低熱ポルトランドセメント(L)、高炉セメントB種(BB))を使用したコンクリートの温度履歴下において、材齢0.5日、材齢1日、材齢3日、材齢7日、材齢14日での線膨張係数の推定を行った。また、材齢28日後の硬化コンクリートの線膨張係数を別の方法により求め、本発明の温度履歴下における線膨張係数の推定方法を検証した。前記別の方法とは、20℃から60℃、60℃から20℃の温度変化を与えて、このときの温度とひずみの関係から線膨張係数を算出するという推定方法である。
1.線膨張係数の試験方法
a)温度履歴下
まず、型枠に各コンクリートを流し込み、開口した上面を塞ぎ、この状態で型枠を温度可変装置に入れ、図21のグラフの温度解析結果から得られた温度履歴を材齢14日まで行った。供試体は、所定材齢(0.5日、1日、3日、7日、14日)に到達後、温度可変装置から取り出し、20℃の恒温室で60分間冷却して再び温度可変装置に戻し、温度変化とひずみの関係から各材齢時における線膨張係数を算出した。また、温度履歴終了後、硬化コンクリートの線膨張係数を次の方法により推定した。
b)温度履歴後(硬化後)
上記温度履歴下での試験後(材齢28日後)、図22のグラフに示す温度変化を供試体に与えて硬化コンクリートの線膨張係数を求めた。
a)温度履歴下
まず、型枠に各コンクリートを流し込み、開口した上面を塞ぎ、この状態で型枠を温度可変装置に入れ、図21のグラフの温度解析結果から得られた温度履歴を材齢14日まで行った。供試体は、所定材齢(0.5日、1日、3日、7日、14日)に到達後、温度可変装置から取り出し、20℃の恒温室で60分間冷却して再び温度可変装置に戻し、温度変化とひずみの関係から各材齢時における線膨張係数を算出した。また、温度履歴終了後、硬化コンクリートの線膨張係数を次の方法により推定した。
b)温度履歴後(硬化後)
上記温度履歴下での試験後(材齢28日後)、図22のグラフに示す温度変化を供試体に与えて硬化コンクリートの線膨張係数を求めた。
2.試験結果
a)温度履歴下(材齢0.5〜14日)のコンクリートの線膨張係数
図23および図24のグラフにおいて、一例として普通ポルトランドセメント(N)の温度とひずみの測定結果を示す。また、図25〜図29のグラフにおいて、一例として普通ポルトランドセメントの温度変化量とひずみとの関係を示す。温度変化量とひずみの関係は、いずれの材齢においても良好な相関が得られた。
材齢とコンクリートの線膨張係数との関係を図30のグラフに示す。
a)温度履歴下(材齢0.5〜14日)のコンクリートの線膨張係数
図23および図24のグラフにおいて、一例として普通ポルトランドセメント(N)の温度とひずみの測定結果を示す。また、図25〜図29のグラフにおいて、一例として普通ポルトランドセメントの温度変化量とひずみとの関係を示す。温度変化量とひずみの関係は、いずれの材齢においても良好な相関が得られた。
材齢とコンクリートの線膨張係数との関係を図30のグラフに示す。
b)温度履歴後(材齢28日後)の硬化コンクリートの線膨張係数
上記温度履歴下での試験後の硬化コンクリートの線膨張係数を求めた。各種セメントを使用したコンクリートの線膨張係数を図31のグラフに示す。このグラフから何れのセメントも温度履歴下における図30のグラフに示す材齢14日の線膨張係数とほぼ同等の値となった。よって、本発明により温度履歴下における線膨張係数を推定可能であることが判明した。
上記温度履歴下での試験後の硬化コンクリートの線膨張係数を求めた。各種セメントを使用したコンクリートの線膨張係数を図31のグラフに示す。このグラフから何れのセメントも温度履歴下における図30のグラフに示す材齢14日の線膨張係数とほぼ同等の値となった。よって、本発明により温度履歴下における線膨張係数を推定可能であることが判明した。
次に、コンクリートと同様の方法により、各種(普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメントB種)を使用したモルタルおよびセメントペーストについて、線膨張係数の推定試験を行った。その結果を報告する。モルタルの配合を表3に示し、セメントペーストの配合を表4に示す。
試験結果
a)温度履歴下(材齢0.5〜14日)のモルタルおよびセメントペーストの線膨張係数
材齢とモルタルの線膨張係数との関係を図32のグラフに示す。また、材齢とセメントペーストの線膨張係数との関係を図34のグラフに示す。
a)温度履歴下(材齢0.5〜14日)のモルタルおよびセメントペーストの線膨張係数
材齢とモルタルの線膨張係数との関係を図32のグラフに示す。また、材齢とセメントペーストの線膨張係数との関係を図34のグラフに示す。
b)温度履歴後(材齢28日後)の硬化モルタルおよび硬化セメントペーストの線膨張係数
上記温度履歴下での試験後の硬化モルタルおよび硬化セメントペーストの各線膨張係数を求めた。各種セメントを用いた硬化後のモルタルの線膨張係数を図33のグラフに示し、各種セメントを用いた硬化後のセメントペーストの線膨張係数を図35のグラフに示す。これらのグラフから何れの硬化モルタルおよび硬化セメントペーストの場合も、温度履歴下における図32または図34のグラフに示す材齢14日の線膨張係数とほぼ同等の値となった。
以上のことから、この発明の線膨張係数試験方法は、モルタルおよびセメントペーストにも適用できることが分かった。
上記温度履歴下での試験後の硬化モルタルおよび硬化セメントペーストの各線膨張係数を求めた。各種セメントを用いた硬化後のモルタルの線膨張係数を図33のグラフに示し、各種セメントを用いた硬化後のセメントペーストの線膨張係数を図35のグラフに示す。これらのグラフから何れの硬化モルタルおよび硬化セメントペーストの場合も、温度履歴下における図32または図34のグラフに示す材齢14日の線膨張係数とほぼ同等の値となった。
以上のことから、この発明の線膨張係数試験方法は、モルタルおよびセメントペーストにも適用できることが分かった。
Claims (5)
- 供試体用の型枠の内部空間に温度計とひずみ計とを配置し、前記内部空間に水硬性材料を流し込み養生、固化することで供試体を得る工程と、
前記型枠の外面を空気層形成体により覆う工程と、
該空気層形成体付きの型枠内の供試体を徐冷または徐熱する工程と、
この徐冷中または徐熱中、前記温度計および前記ひずみ計により、前記供試体の温度およびひずみをそれぞれ測定する工程と、
得られた前記供試体の温度情報およびひずみ情報から、前記供試体の線膨張係数を算出する工程とを備えた水硬性材料の線膨張係数算出方法。 - 前記徐冷または徐熱する工程では、前記供試体を0.04〜0.8℃/分で徐冷または徐熱する請求項1に記載の水硬性材料の線膨張係数算出方法。
- 前記供試体を所定温度に加熱または冷却後、前記供試体を室温下で30〜70分間放置する前記徐冷または徐熱工程を施す請求項1または請求項2に記載の水硬性材料の線膨張係数算出方法。
- 外面が空気層形成体により覆われ、かつ内部空間に水硬性材料が流し込まれてこれを養生、固化することで供試体を得る型枠と、
該型枠の内部空間に配置され、前記供試体の温度を測定する温度計と、
前記型枠の内部空間に配置され、前記供試体のひずみを測定するひずみ計とを備えた水硬性材料の線膨張係数算出装置。 - 前記空気層形成体は、気泡緩衝材である請求項4に記載の水硬性材料の線膨張係数算出装置。
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- 2007-08-31 JP JP2007225052A patent/JP2009058326A/ja active Pending
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