図1に、本発明の第1の実施の形態の形彫放電加工装置が示される。放電加工回路は、工具電極と被加工物との両極間(加工間隙)1に直列に接続される直流電源2、直流電源2と極間1との間に直列かつ互いに並列接続された複数のスイッチング素子3、スイッチング素子3に直列に接続される電流制限抵抗4、スイッチング素子3と電流制限抵抗4に直列に接続される逆流阻止ダイオード5でなる。互いに並列に接続されるスイッチング素子3と電流制限抵抗4と逆流阻止ダイオード5との複数の直列回路は、図示省略されている。必要に応じてインダクタンス素子のような素子を挿入することができる。極間電圧を検出する検出回路は、極間1に直列に接続される検出抵抗6を有する。
制御装置は、放電毎に正常放電か異常放電かを検出する検出装置10と、検出装置10からの正常放電と異常放電とに基づいて加工間隙の状態が正常放電状態か異常放電状態かを判別する判別装置20と、判別装置20で判別された加工間隙の状態に対応して設定されているオフ時間を変更制御するパルス制御装置30と、パルス制御装置30からの指令データに対応してスイッチング素子3をオンオフするゲート信号を出力するパルス発生装置40と、を含んでなる。
ここで、正常放電は、正常な火花放電が発生して必要な過渡アーク電圧を維持している加工に寄与する放電である。異常放電は、主にアーク放電である。異常放電状態は、連続アーク放電や集中放電が発生する可能性のある加工間隙の状態であり、正常放電状態は、異常放電状態でない加工間隙の状態である。放電状態は、放電一発毎の放電時間中における放電の状態であり、正常放電か異常放電に分けられる。異常加工状態は、連続アーク放電や集中放電のように加工に重大な悪い影響を及ぼす加工状態である。
正常放電信号と異常放電信号は、検出装置10から判別装置20に出力される検出信号である。検出信号は、放電一発毎の放電状態を分別する信号である。したがって、1以上の検出信号に基づいて加工間隙の状態(加工状態)を判別することができる。正常放電状態信号と異常放電状態信号は、判別装置20からパルス制御装置30に出力される判別信号である。判別信号は、加工間隙の状態を分別する信号である。したがって、判別信号に基づいてオフ時間を変更制御することができる。
検出装置10は、放電一発毎に極間電圧に基づいて放電状態を検出して、判別装置20に検出信号として正常放電を示す正常放電信号(電圧レベル0)または異常放電を示す異常放電信号(電圧レベル1)を出力する。また、検出装置10は、放電一発毎に極間電圧に基づいて極間1に放電が発生したことを検出して、放電が発生したことを示す放電開始信号をパルス発生装置40に出力する。検出装置10は、広義には、検出抵抗6を含む極間電圧を検出する検出回路と、タイミングパルス発生装置50と、基準電圧発生装置60と、検出レベル設定装置70を含む。
検出装置10は、検出回路で検出される極間電圧を入力するとともに、基準電圧発生装置60から出力される第1の基準電圧(アークレベル)を入力して、極間電圧と第1の基準電圧とを比較する。検出装置10は、放電一発毎に極間電圧と第1の基準電圧を比較して、極間電圧が第1の基準電圧以下であるときに異常放電信号を出力する。検出装置10は、放電一発毎に正常放電か異常放電かを検出する構成であるので、加工間隙の状態を直接かつ短時間に検知することを可能にする。そのため、検出装置10は、異常加工状態が発生する前に異常放電状態を解消するようにオフ時間を変更制御する方法に有益である。
検出装置10は、基準電圧発生装置60から出力される無負荷電圧より数V僅かに低く第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧(放電開始レベル)を入力して、極間電圧と第2の基準電圧とを比較する。検出装置10は、極間1に電圧が印加されてから所定時間経過した以降で極間電圧が第2の基準電圧以下であるときに電圧降下を検出して、放電が発生したことを示す放電開始信号を出力する。
タイミングパルス発生装置50は、極間1に電圧を印加するためのスイッチング素子3をオンするゲート信号を入力して、極間1に電圧が印加されてから第1の時間後に電圧印加信号を出力する。第1の時間(時間幅)は、正常放電において加工間隙に印加された電圧が第2の基準電圧まで立ち上がるのに十分な時間である。また、タイミングパルス発生装置50は、ゲート信号が入力されなくなると同時に電圧印加信号の出力を停止する。
タイミングパルス発生装置50は、電圧印加信号から第2の時間後に検出時期を決定する所定時間幅のタイミングパルス(チェックパルス)を出力する。タイミングパルスの時間幅は、検出信号を出力するために必要十分な長さである。放電状態を検出するためには、放電が発生した後の極間電圧と第1の基準電圧とを比較する必要がある。したがって、第2の時間(時間幅)は、正常放電時における無負荷時間よりも長く、電気的加工条件として設定されるオン時間よりも短い時間である。第2の時間は、詳しくは、正常放電のときの無負荷時間より僅かに長い時間である。
タイミングパルス発生装置50は、最初のタイミングパルスを出力してから第3の時間後に次のタイミングパルスを出力して、それ以降同じようにして第3の時間毎にタイミングパルスを順次出力する。順次出力されるタイミングパルスの数は、オン時間と検出精度を考慮して適宜決められる。また、第3の時間(時間幅)は、検出精度を考慮して適宜決められるが、基本的には、タイミングパルスのパルス幅よりも短い時間である。
検出装置10は、タイミングパルス発生装置50からの電圧印加信号および検出時期を決定するタイミングパルスを入力して検出信号を出力する。検出装置10は、タイミングパルス発生装置50から出力される電圧印加信号が立ち上がったときに極間電圧が第1の基準電圧以下の場合は、異常放電を示す異常放電信号を出力する。また、各タイミングパルスを入力したときに極間電圧が第1の基準電圧以下のときは異常放電を示す異常放電信号を出力する。
放電時間(オン時間)を予め定められた短い時間で区分して複数の検出期間を設ける。検出装置10は、検出期間における複数のタイミングパルスのタイミングで出力される異常放電信号をオアゲートを通して出力する。オアゲートを通った各検出期間の複数の異常放電信号は、アンドゲートを通して出力される。また、検出装置10は、電圧印加直後の短い期間における異常放電信号と放電時間末期の短い期間における異常放電信号とをそれぞれその他の検出期間における異常放電信号とは別々に出力する。
検出装置10は、別々に出力される電圧印加直後の短い期間における異常放電信号と、放電時間中の各検出期間における異常放電信号と、放電時間末期の短い期間における異常放電信号とをオアゲートを通して最終的に1つの異常放電信号を出力する。例えば、電圧印加直後は異常放電信号が出力されず、放電時間中の複数の検出期間のうちである検出期間にだけ異常放電信号が出力され、放電時間末期は異常放電信号が出力されない場合は、検出装置10から判別装置20に正常放電信号が出力される。
したがって、電圧印加直後または放電時間末期で異常放電信号が出力されるときは、複数の検出期間から異常放電信号が出力されなくても、最終的に異常放電信号が出力される。また、電圧印加直後と放電時間末期から異常放電信号が出力されないときは、複数の検出期間の全てから異常放電信号が出力されない限り、最終的に正常放電信号が出力される。
そのため、検出装置10は、電圧印加直後または放電時間末期において極間電圧が第1の基準電圧を下回る場合は異常放電と検出し、放電時間中に電圧の高周波振動によって瞬間的に第1の基準電圧を下回ることがあっても異常放電として検出しない。また、平均電圧が第1の基準電圧を下回ることがあっても、異常放電として検出されるとは限らない。したがって、検出装置10の構成は、単発放電における電圧パルスの電圧変化を正確に把握して正常放電と異常放電を検出することができ、擬似異常放電を排除する。その結果、検出装置10は、誤検出が少なく異常放電の検出精度が比較的高精度である点で優れている。
検出装置10は、電圧印加信号が出力されている間に極間電圧が第2の基準電圧以下になったときに、極間1に放電が発生したことを示す放電開始信号を出力する。したがって、放電開始信号は、極間1に印加した電圧が正常に無負荷電圧まで立ち上がらなかったときでも出力される。正常に無負荷電圧まで立ち上がらないときは、異常放電状態であるから、正常放電と異常放電を正確に計数するために放電開始信号が必要である。
検出レベル設定装置70は、正常放電時における放電電圧は工具電極と被加工物の材質によって異なるので、基準電圧発生装置60から出力される第1の基準電圧を工具電極と被加工物の材質に対応して設定する。好ましくは、検出レベル設定装置70は、基準電圧発生装置60から出力される第2の基準電圧を電気的加工条件として設定されるピーク電流値と無負荷電圧(電源電圧)に対応して設定する。
判別装置20は、加工間隙に放電が発生する毎に検出装置10から検出信号を入力して加工間隙の状態を示す判別信号を出力する。判別装置20は、正常放電と異常放電に基づいて加工間隙の状態が正常放電状態か異常放電状態かを判別する。そして、正常放電状態であると判別されるときは、加工間隙の状態を示す判別信号として正常放電状態信号をパルス制御装置30に出力する。また、異常放電状態であると判別されるときは、判別信号として異常放電状態信号をパルス制御装置30に出力する。
検出装置10からの検出信号は、放電一発毎の放電状態を示しているので、ある不特定の期間内における複数の検出信号によって加工間隙の状態を判別することができる。判別装置20は、検出装置10から入力されてくる正常放電信号と異常放電信号をそれぞれ計数することによって加工間隙の状態を判別する。
判別装置20は、検出装置10から出力される検出信号を正常放電信号と異常放電信号とに分けて計数して、それぞれのカウント値を記憶している。そして、判別装置20は、検出装置10から新しい検出信号を入力したときに、正常放電信号のカウント値(正常放電数)または異常放電信号のカウント値(異常放電数)がそれぞれ予め設定されたカウント値(判別基準値)に到達した場合は、判別信号として正常放電状態信号または異常放電状態信号をパルス制御装置30に出力する。
具体的に、判別装置20は、検出装置10から出力される正常放電信号と異常放電信号をそれぞれカウンタに入力してカウント値を記憶する。また、判別装置20は、異常放電信号が連続して入力される回数(連続異常放電数)を計数しており、そのカウント値が第1のリセット基準値(正常放電数リセット基準値)に到達したら正常放電数をリセットする。また、判別装置20は、正常放電信号が連続して入力される回数(連続正常放電数)を計数しており、そのカウント値が予め設定された第2のリセット基準値(異常放電数リセット基準値)に到達したら異常放電数をリセットする。
判別装置20は、オフ時間を設定可能な最小値から連続して段階的に拡大できる最大の段階数(ステップ数)だけ異常放電状態を判別する複数の第1の判別基準値(異常放電状態判別基準値)を有している。また、オフ時間を設定可能な最大値から最小値まで連続して段階的に縮小できる最大のステップ数だけ正常放電状態を判別する複数の第2の判別基準値(正常放電状態判別基準値)を有している。異常放電状態判別基準値と正常放電状態判別基準値は、基本的に、オフ時間を連続して拡大または縮小する各段階(ステップ毎)で値が順次大きくなるように設定されるが、隣り合うステップで同じ値が設定されてもよい。
判別装置20は、オフ時間を連続して拡大または縮小している各ステップに対応する異常放電状態判別基準値と正常放電状態判別基準値を識別してセットできるように、連続して出力されている異常放電状態信号の出力数(連続拡大ステップ数)と正常放電状態信号の出力数(連続縮小ステップ数)をそれぞれ計数する。言い換えれば、判別装置20は、オフ時間を拡大または縮小する以前にオフ時間をすでに何回連続して拡大または縮小しているかの連続数を記録している。
判別装置20は、異常放電信号を入力したときは、異常放電信号のカウント値をカウントアップするとともに、記憶している連続拡大ステップ数から現在のステップに対応する異常放電状態判別基準値をセットする。判別装置20は、セットした異常放電状態判別基準値と異常放電信号のカウント値とを比較する。カウント値が異常放電状態判別基準値に到達しているときは、異常放電状態信号を出力する。
第1の実施の形態の形彫放電加工装置では、オフ時間を最初に拡大するステップにおける異常放電状態判別基準値を1に設定している。したがって、正常放電状態の後に異常放電が一発でも発生すると異常放電状態判別基準値と一致して異常放電状態信号が出力される。オフ時間が比較的小さい時間幅であるときに異常放電が一発でも発生すると急速に異常加工状態に移行する可能性が高い。そのため、第1の実施の形態の形彫放電加工装置は、一発の異常放電で直ちにオフ時間を大幅に拡大して確実に異常加工状態を防止することができ、安全性が高い利点がある。
判別装置20は、正常放電信号を入力したときは、正常放電信号のカウント値をカウントアップするとともに、記憶している連続縮小ステップ数から現在のステップに対応する正常放電状態判別基準値をセットする。判別装置20は、セットした正常放電状態判別基準値と正常放電信号のカウント値とを比較する。カウント値が正常放電状態判別基準値に到達しているときは、正常放電状態信号を出力する。
第1の実施の形態の形彫放電加工装置では、オフ時間を最初に縮小するステップにおける正常放電状態判別基準値を1に設定している。したがって、異常放電状態の後に正常放電が一発でも発生すると正常放電状態判別基準値と一致して正常放電状態信号が出力される。オフ時間が相当大きい時間幅であるときは加工間隙の絶縁状態が回復している確率が高い。そのため、第1の実施の形態の形彫放電加工装置は、一発の正常放電で直ちに大幅にオフ時間を縮小してオフ時間を限界値付近の値にするので、加工時間を短縮して加工効率に優れる利点がある。
このように、判別装置20は、単に正常放電と異常放電のカウント値や有効放電の発生頻度に基づいて加工間隙の状態または加工状態を判別する装置とは全く異なっている。判別装置20は、オフ時間を連続して拡大または縮小していく各ステップで異なる値の複数の判別基準値を有していて、オフ時間が連続的に拡大または縮小されるステップ数が増えるに従ってオフ時間が拡大または縮小され難くされている。
また、判別装置20は、異常放電または正常放電の連続性を検出している。したがって、異常放電または正常放電が単純に連続して発生しているときだけではなく、散発的に異常放電または正常放電が発生していても実質的に異常放電または正常放電が連続して発生しているとみなせるときであっても、異常放電状態と正常放電状態を判別することができる。そのため、パルス制御装置30が、より的確にオフ時間の変更制御が行なえるように判別信号を出力することができ、安全性を確保しながら、長いオフ時間で加工する期間を可能な限り短縮することができる。
判別基準設定装置80は、正常放電状態または異常放電状態を判別する複数の異常放電状態判別基準値と正常放電状態判別基準値をそれぞれ設定する。設定する複数の異常放電状態判別基準値と正常放電状態判別基準値の数は、オフ時間を設定可能な最小値から最大値の間で段階的に拡大または縮小できる最大のステップ数である。
異常放電判別基準値と正常放電判別基準値は、基本的に、オフ時間を段階的に拡大または縮小する各ステップで値が順次大きくなるように設定されるが、隣り合うステップで同じ値が設定されてもよい。好ましくは、工具電極の種類のデータを入力して、工具電極の種類に対応して各ステップの異常放電状態判別基準値と正常放電状態判別基準値を設定する。判別基準値を変更して設定することによって、実質的に制御方法を変更することができ、安全性と加工効率のバランスを調整することができる。
判別基準値設定装置80は、正常放電数リセット基準値と異常放電数リセット基準値をそれぞれ設定する。正常放電のカウント値が異常放電数リセット基準値に到達したときは異常放電のカウント値がリセットされ、異常放電のカウント値が正常放電数リセット基準値に到達したときは正常放電のカウント値がリセットされる。したがって、正常放電数リセット基準値と異常放電数リセット基準値は、実質的に正常放電および異常放電の連続性の範囲を決定する。そのため、各リセット基準値を変更することによって制御方法を変更することができる。
パルス制御装置30は、初期値設定装置90で設定されたオフ時間を含む加工条件の初期値に基づいて指令データをパルス発生装置40に出力する。パルス制御装置30は、判別装置20から判別信号を入力して、正常放電状態の後に異常放電状態になったときは絶縁回復に必要最低限の十分長いオフ時間にし得る第1の倍率(整数倍)で現在設定されているオフ時間を急激に拡大させ、連続して異常放電状態になったときは第1の倍率よりも小さい第2の倍率(整数倍)でオフ時間をさらに拡大させるように、パルス発生装置40にオフ時間の指令データを出力する。
また、パルス制御装置30は、異常放電状態の後に正常放電状態になったときは第1の倍率でオフ時間を縮小させ、連続して正常放電状態になったときは第2の倍率でオフ時間をさらに縮小させるように、パルス発生装置40に指令データを出力する。以下、第1の倍率と第2の倍率は、百分率ではなく整数倍で表わされる。なお、オフ時間を所定の倍率で縮小させることは、現在設定されているオフ時間を倍率で除算して得られるオフ時間に変更することと同義である。
パルス制御装置30は、判別装置20から判別信号を入力して、正常放電状態信号と異常放電状態信号に分別して記憶装置に記憶させる。パルス制御装置30は、記憶している判別信号と次に新しく入力されてくる判別信号に基づいて、正常放電状態の後に異常放電状態になったときは、第1の倍率で急激にオフ時間を拡大する。
第1の倍率は、最終的に連続アーク放電や集中放電のような異常加工状態を回避するために最低限必要なオフ時間が得られる倍率である。本発明は、オフ時間を連続的に段階的に拡大するので、オフ時間を拡大する最初のステップで次に絶対に異常放電が発生しないという状態まで加工間隙を回復させることができる値までオフ時間を拡大する必要はない。むしろ、オフ時間を設定可能な最大値まで拡大し過ぎると、必要以上にオフ時間が長くなって加工時間が余計にかかり、加工効率が低下する。
したがって、第1の倍率は、連続的に段階的にオフ時間を拡大して最終的には異常加工状態が回避するのに間に合う必要最低限の時間幅までオフ時間を拡大し得る倍率である。具体的に、第1の倍率は、2の倍数倍(2X)、いわゆるバイナリ値である。実施の形態は、第1の倍率を16倍〜32倍に設定している。
パルス制御装置30は、異常放電状態の後に異常放電状態になったときは、第1の倍率よりも小さい第2の倍率でオフ時間をさらに拡大させる。オフ時間を拡大しても異常放電状態が解消しない場合は、予め決められている連続数(ステップ数)または設定可能なオフ時間の最大値(上限値)の範囲内で加工間隙の状態が回復するまでオフ時間を第2の倍率で連続して段階的に拡大することができる。
必要最低限に十分大きい第1の倍率で拡大した後に異常放電状態が解消しないときは、オフ時間が限界値に対して相当長い値に設定されているから、オフ時間を拡大し過ぎないようにするために、オフ時間を連続的に段階的に拡大する第2の倍率は、可能な限り小さい倍率にされる。実施の形態では、第2の倍率は、バイナリ値の最小値である2倍に設定される。
パルス制御装置30は、異常放電状態の後に正常放電状態になったときは、第1の倍率でオフ時間を縮小させる。異常放電状態になったときには、オフ時間は、少なくとも第1の倍率で拡大されている。したがって、オフ時間を拡大したときの倍率と同じ第1の倍率でオフ時間を縮小することで、オフ時間が限界値を下回ることなく、オフ時間を拡大前の値またはそれよりも僅かに近い値まで戻して、長めのオフ時間で加工する期間を短縮できる。
パルス制御装置30は、正常放電状態の後に正常放電状態になったときは、小さい第2の倍率でオフ時間を縮小する。オフ時間を縮小しても異常放電状態にならない場合は、予め決められている連続数(ステップ数)または設定可能なオフ時間の最小値(下限値)の範囲内でオフ時間を第2の倍率で連続して段階的に縮小することができる。
第1の倍率でオフ時間を縮小すると、オフ時間が限界近接値まで戻されている可能性がある。加工の進行に対して限界値に大きな変化がないとすると、第1の倍率で縮小されたオフ時間をさらに第1の倍率で縮小した場合、オフ時間が限界値を下回って異常放電状態になるおそれがある。したがって、異常放電状態と正常放電状態を繰り返して制御が不安定になる。オフ時間を第2の倍率で段階的に縮小するようにする場合、限界値に近付くほど縮小する時間幅が小さくなるので、オフ時間は、連続的に段階的に縮小されるに従って漸次限界値に近付けられる。そのため、限界値付近のオフ時間で加工する期間を長くすることができる点で有益である。
初期値設定装置90は、オフ時間を含む加工条件の初期値を設定する。設定されたピーク電流値、オン時間、オフ時間、無負荷電圧のような電気的加工条件は、パルス制御装置30から指令データとしてパルス発生装置40に出力される。また、基準値設定装置100は、オフ時間の下限値である基準値を設定する。
パルス発生装置40は、パルス制御装置30から出力される電気的加工条件を示す指令データをセットする。パルス発生装置40は、指令データに基づいて設定された電気的加工条件に従い放電加工回路を操作する。
パルス発生装置40は、セットされた指令データに基づき、設定されたピーク電流値に従い選択的に1以上のスイッチング素子3に設定されたオン時間とオフ時間でゲート信号を出力する。また、パルス発生装置40は、検出装置10から放電開始信号を入力して、スイッチング素子3が放電開始信号から設定されたオン時間導通するようにゲート信号を出力する。
パルス制御装置30は、第1の倍率に代えて第1の時間幅とし、第2の倍率に代えて第2の時間幅として、オフ時間を変更制御するように変形することができる。第1の時間幅は、連続的に段階的にオフ時間を拡大して最終的には異常加工状態が回避するのに間に合う程度に加工間隙を絶縁回復させる必要最低限の時間幅である。また、第1の時間幅は、第2の時間幅の倍数であり、第2の時間幅は、第1の時間幅の半分以下である。
倍率を時間幅に置き換えてオフ時間を変更制御する形彫放電加工装置の構成は、第1の実施の形態の形彫放電加工装置の構成と基本的に同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。また、第1の時間幅と第2の時間幅でオフ時間を変更制御する形彫放電加工装置の作用効果は、第1の実施の形態の形彫放電加工装置と基本的には同じである。
ただし、第1の時間幅と第2の時間幅でオフ時間を変更制御する場合、第2の時間幅を短く設定し過ぎると、オフ時間を連続的に拡大する時間がかかり過ぎて異常加工状態の回避に間に合わないおそれがある。また、拡大されたオフ時間を拡大前の値の近くの値に戻すまでに余計に時間がかかる。一方、第2の時間幅を長く設定し過ぎると、オフ時間を縮小し過ぎて限界値付近に収束しない可能性がある。
そのため、時間幅でオフ時間を変更制御する装置は、倍率でオフ時間を変更制御する装置に比べて第2の時間幅を設定することが難しく、加工時間を短縮できる利益が少ない。しかしながら、オフ時間を拡大または縮小するときに1ステップの時間幅が同じであるオフ時間を変更制御する装置に比べて加工時間が短縮される点で依然として有利である。
次に、図1に示される制御装置の動作と本発明の形彫放電加工方法の第1の実施の形態を説明する。図2に、極間電圧の波形と検出装置における各信号の波形がタイミングチャートで示される。以下に、放電を検出するプロセスを説明する。
初期値設定装置90で設定された初期の電気的加工条件に基づいてパルス制御装置30からパルス発生装置40に指令データが出力されて、パルス発生装置40にピーク電流値、オン時間、オフ時間がセットされる。セットされたピーク電流値に従いパルス発生装置40から選択された1以上のスイッチング素子3にゲート信号Bが供給されてスイッチング素子3が導通すると、極間1に直流電源2の電圧が印加され、図2に示されるように、極間電圧波形Aは無負荷電圧まで立ち上がる。
極間電圧は、検出抵抗6を含む検出回路で検出される。検出装置10は、検出された極間電圧と検出レベル設定装置70で設定される第1の基準電圧V1とを比較する。極間電圧が第1の基準電圧V1よりも低いときは、第1の比較信号が出力される。また、検出装置10は、検出された極間電圧と検出レベル設定装置70で設定される第2の基準電圧V2とを比較する。極間電圧が第2の基準電圧V2よりも低いときは、第2の比較信号が出力される。
タイミングパルス発生装置50は、ゲート信号Bが供給されて極間1に電圧が印加されてから加工間隙が正常なときに極間電圧Aが第2の基準電圧V2まで立ち上がるのに十分な時間である第1の時間t1後に電圧印加信号Cを出力する。検出装置10は、電圧印加信号Cが立ち上がったときに第1の比較信号が出力されているときは、異常放電信号を出力する。また、検出装置10は、電圧印加信号Cが出力されている間に第2の比較信号が出力されるときは、放電開始信号Dをパルス発生装置40に出力する。
タイミングパルス発生装置50は、電圧印加信号Cが出力されてから正常放電時における無負荷時間よりも十分長く加工条件として設定され得るオン時間よりも短い時間である第2の時間t2後にタイミングパルスEを出力する。検出装置10は、タイミングパルスEが出力されている間に第1の比較信号が出力されるときには、異常放電信号を出力する。
タイミングパルス発生装置50は、最初のタイミングパルスEが出力されてから第3の時間t3後に次のタイミングパルスFを出力する。検出装置10は、タイミングパルスFが出力されている間に第1の比較信号が出力されるときには、異常放電信号を出力する。
タイミングパルス発生装置50は、タイミングパルスFが出力されてから第3の時間t3後にさらに次のタイミングパルスを出力し、第3の時間t3毎に複数のタイミングパルスを順次出力する。タイミングパルスは、放電時間中(オン時間中)に出力される最後のタイミングパルスHまで第3の時間t3毎に順次出力される。そして、検出装置10は、各タイミングパルスが出力されている間に第1の比較信号が出力されるときには、異常放電信号を出力する。
例えば、タイミングパルスGが出力されている間に極間電圧が正常放電時における放電電圧よりも低い第1の基準電圧V1以下になっている場合は、極間電圧と第1の基準電圧を比較するコンパレータの出力をアナログ−デジタル変換した第1の比較信号が出力されており、第1の比較信号を保持して異常放電信号Iを出力する。
検出装置10は、電圧印加信号Cの出力が停止されると異常放電信号Iの出力を停止する。放電時間を区分した各検出期間における異常放電信号は、オアゲートを通して出力される。オアゲートを通して出力される異常放電信号は、アンドゲートを通して出力される。また、電圧印加直後の短い期間における異常放電信号と放電時間末期の短い期間における異常放電信号は、アンドゲートを通さずに別々に出力される。
検出装置10は、電圧印加信号Cが立ち上がったときに異常放電信号が出力されているときは、その後に異常放電信号が出力されるかどうかに関わらず、判別装置20に異常放電信号を出力する。また、検出装置10は、電圧印加直後の短い期間における異常放電信号と、アンドゲート通って出力される各検出期間における異常放電信号と、放電時間末期の短い期間における異常放電信号とをオアゲートを通して判別装置20に異常放電信号を出力する。
パルス発生装置40は、放電開始信号Dを入力してからセットされているオン時間後にゲート信号Bの出力を停止するので、電気的加工条件として設定されているオン時間後にスイッチング素子3が非導通になる。したがって、極間1には、設定されているオン時間の放電電流パルスが供給される。
以下に、図1に示される制御装置における判別装置の動作と第1の実施の形態の形彫放電加工方法における正常放電状態と異常放電状態とを判別するプロセスを説明する。図3に、正常放電状態と異常放電状態を判別する基本的なプロセスがフローチャートで示される。
極間1に発生する正常放電と異常放電に基づいて加工間隙の状態を判別するために必要な複数の第1の判別基準値(異常放電状態判別基準値)、複数の第2の判別基準値(正常放電状態判別基準値)、第1のリセット基準値(正常放電数リセット基準値)、および第2のリセット基準値(異常放電数リセット基準値)は、それぞれ判別基準設定装置80で予め設定されている。
初期状態では、正常放電信号と異常放電信号のカウント値は0である。また、記憶されている連続正常放電数と連続異常放電数のカウント値は0である。また、前回の検出信号が正常放電信号か異常放電信号かを示す前回の検出信号の種類を識別するフラグの値は0(正常放電)になっている。
判別装置20は、検出装置10から検出信号を入力すると(S1)、検出信号が異常放電信号であるときは(S2)、異常放電信号のカウント値をカウントアップする(S3)。そして、前回の検出信号の種類を識別するフラグを参照して前回の放電が異常放電であった場合は(S4)、連続異常放電数のカウント値をカウントアップする(S5)。カウントアップされた連続異常放電数のカウント値が正常放電数リセット基準値に到達したときは(S6)、正常放電信号のカウント値を0にリセットする(S7)。
例えば、連続異常放電数に基づく正常放電数リセット基準値を2に設定している場合は、異常放電が2発連続して発生した場合に、正常放電信号のカウント値を0にリセットする。つまり、正常放電の間にいくつかの異常放電があっても、異常放電に連続性が見られない場合は、正常放電がある程度連続して発生しているとみなして、加工は安定していると判断している。したがって、正常放電数リセット基準値は、正常放電の連続性の範囲を決定している。
第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、正常放電数リセット基準値を小さい値に設定して、異常放電が数発連続して発生すると直ちに正常放電信号のカウント値を0にリセットするようにしている。正常放電の連続性の範囲を狭くすることによって、異常放電状態を見過ごさないようにするとともに誤ってオフ時間を縮小し過ぎないようにすることができる。
一方、前回の放電が正常放電であった場合は(S4)、異常放電が連続して発生していないので、連続異常放電数のカウント値を1にするとともに(S8)、前回の検出信号の種類を識別するフラグを1(異常放電)にする(S9)。
次に、デジタルコンパレータに異常放電状態判別基準値をセットする(S10)。判別装置20は、連続拡大ステップ数を計数しているので、オフ時間を何回連続して拡大しているか連続数がわかる。したがって、複数の異常放電状態判別基準値の中から現在の連続拡大ステップ数に対応する異常放電状態判別基準値をセットする。
異常放電信号のカウント値と異常放電状態判別基準値を比較して、異常放電信号のカウント値がセットされた異常放電状態判別基準値以上であるときは(S11)、判別装置20は異常放電状態信号をパルス制御装置30に出力する(S12)。そして、連続拡大ステップ数をカウントアップするとともに(S13)、連続縮小ステップ数のカウント値をリセットする(S14)。
第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、オフ時間を連続的に拡大する場合の最初のステップにおける異常放電状態判別基準値を1に設定している。正常放電状態の後に異常放電が検出されるときは、連続拡大ステップ数のカウント値(連続数)は0である。また、検出信号が異常放電信号であるときは、異常放電信号がカウントアップされるので(S3)、異常放電信号のカウント値が必ず1以上になっている。したがって、正常放電状態の後に一発でも異常放電が検出されると、異常放電状態信号が出力される。
そのため、オフ時間が限界近接値である不安定な領域で加工しているときでも、異常放電が一発発生すると、第1の倍率でオフ時間が拡大され、異常加工状態が確実に回避される。その結果、これまでは加工が不安定であるとみなされて避けられてきた限界値付近のオフ時間で加工を行なうようにすることができるから、加工時間をさらに短縮することができる。
判別装置20は、入力した検出信号が正常放電信号であるときは(S2)、正常放電信号のカウント値をカウントアップする(S15)。そして、前回の検出信号の種類を識別するフラグを参照して前回の放電が正常放電であった場合は(S16)、連続正常放電数のカウント値をカウントアップする(S17)。カウントアップされた連続正常放電数のカウント値が異常放電数リセット基準値に到達したときは(S18)、異常放電信号のカウント値を0にリセットする(S19)。
例えば、連続正常放電数に基づく異常放電数リセット基準値を5に設定している場合は、正常放電が5発連続して発生した場合に、異常放電信号のカウント値を0にリセットする。つまり、異常放電の間にいくつかの正常放電があっても、正常放電に連続性が見られない場合は、正常放電が散発しているだけで異常放電は実質的に連続して発生しているとみなして、異常加工状態に陥る危険が継続していると判断している。したがって、異常放電数リセット基準値は、異常放電の連続性の範囲を決定している。
異常放電が厳密に連続して発生している場合に限らず、頻発する異常放電の間に正常放電が散発しているような場合でも異常放電が連続して発生しているとみなして異常放電の連続性を考慮することで、実際の加工間隙の状態により適応して異常放電状態を判別することができるので、連続アーク放電や集中放電のような異常加工状態をより確実に回避することができ、安全性が高い利点がある。
一方、前回の放電が異常放電であった場合は(S16)、正常放電が連続して発生していないので、連続正常放電数のカウント値を1にするとともに(S20)、フラグを0(正常放電)にする(S21)。
次に、デジタルコンパレータに正常放電状態判別基準値をセットする(S22)。判別装置20は、連続縮小ステップ数を計数しているので、オフ時間を何回連続して縮小しているか連続数がわかる。したがって、複数の正常放電状態判別基準値の中から現在の連続縮小ステップ数に対応する正常放電状態判別基準値をセットする。
正常放電信号のカウント値と正常放電状態判別基準値を比較して、正常放電信号のカウント値がセットされた正常放電状態判別基準値以上であるときは(S23)、判別装置20は正常放電状態信号をパルス制御装置30に出力する(S24)。そして、連続縮小ステップ数をカウントアップするとともに(S25)、連続拡大ステップ数のカウント値をリセットする(S26)。
第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、オフ時間を連続的に縮小する場合の最初のステップにおける正常放電状態判別基準値を1に設定している。異常放電状態の後に正常放電が検出されるときは、連続縮小ステップ数のカウント値(連続数)は0である。また、検出信号が正常放電信号であるときは、正常放電信号がカウントアップされるので(S3)、正常放電信号のカウント値が必ず1以上になっている。したがって、異常放電状態の後に一発でも正常放電が検出されると、正常放電状態信号が出力される。
そのため、オフ時間が限界値に比べて相当長い時間幅で加工しているときでも、正常放電が一発発生すると、第1の倍率でオフ時間が縮小され、限界値付近のオフ時間で加工するようにされる。その結果、これまでは加工が行なわれていなかった限界値付近のオフ時間で加工が行なわれるので、加工時間をさらに短縮することができる。
以下に、図1に示される制御装置におけるパルス制御装置の動作と第1の実施の形態の形彫放電加工方法における判別信号に基づいてオフ時間を変更制御するプロセスを説明する。図4に、第1の倍率または第2の倍率でオフ時間を拡大または縮小するプロセスがフローチャートで示される。
設定可能なオフ時間の下限値(最小値)である基準値は、基準値設定装置100で設定されてパルス制御装置30にセットされている。オフ時間の基準値は、連続する放電電流パルスがつながらない程度の時間幅以上である。基準値は、好ましくは、加工要求と初期の加工電流で推定される限界値に設定される。加工の進行にともなって限界値が変動するので、望ましくは、基準値は、推定される限界値よりも僅かに小さい値に設定される。第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、工具電極がグラファイトで被加工物が鉄であるときで、基準値をオン時間の0.1倍程度の時間幅にしている。
また、第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、オフ時間の上限値(最大値)が基準値に対する最大の倍率で決定する最大幅で設定されている。判別装置20において、異常放電状態判別基準値が比較的小さい値に設定され、異常放電数リセット基準値が比較的大きい値に設定されているときは、オフ時間が拡大しやすい条件になっている。したがって、オフ時間が拡大されたままで長期間加工が継続しないように上限値が設定されることが好ましい。第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、設定可能な上限値を基準値の256〜512倍の値に設定している。
また、初期の電気的加工条件として与えられるオフ時間の初期値は、初期値設定装置90で設定されてパルス制御装置30にセットされている。オフ時間の初期値は任意であるが、加工開始直後では加工が不安定になりがちであるので、加工要求と加工形状に対応して加工開始時に比較的加工が安定する値であることが好ましい。第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、初期値を基準値の8倍〜16倍の値に設定している。
初期状態では、前回の判別信号が正常放電状態信号か異常放電状態信号かを示す前回の判別信号の種類を識別するフラグの値は0(正常放電状態)になっている(S31)。また、初期状態では、パルス発生装置40にセットされているオフ時間は、電気的加工条件として与えられた初期値である(S32)。
パルス制御装置30は、判別装置20から判別信号を入力すると(S33)、判別信号が正常放電状態信号か異常放電状態信号かを分別する(S34)。異常放電状態信号が入力されたときに前回の判別信号の種類を識別するフラグが0である場合は(S35)、前回の加工間隙の状態が正常放電状態であるので、正常放電状態の後に異常放電状態になったことを意味する。
正常放電状態から異常放電状態になったときは、現在設定されているオフ時間を第1の倍率で拡大して設定し直して、パルス発生装置40に拡大されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S36)。
第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、判別装置20は、正常放電状態の後に異常放電が発生するときは、一発の異常放電で異常放電状態信号を出力するようにしているので、異常放電が発生すると直ちにオフ時間が第1の倍率で大幅に拡大されて、異常加工状態がより確実に回避される。このとき、オフ時間がセットできる上限値を超えるときは、オフ時間を上限値とする。
正常放電状態の後に異常放電が発生したときに、オフ時間が限界近接値以下にある場合、第1の倍率が小さいと、オフ時間が急速に進展する異常加工状態を回避することができる十分な時間幅に変更設定されない。図4に示されるプロセスでは、オフ時間が一時的に大きい値に拡大設定されても直ちに第1の倍率で縮小されるため加工時間の損失が小さいから、第1の倍率を大きくすることができ、限界値付近のオフ時間でも安全に加工できるようにする。
具体的に、第1の倍率を連続的に段階的にオフ時間を拡大して最終的には異常加工状態が回避するのに間に合う程度に加工間隙が絶縁回復させることができる必要最低限の時間幅までオフ時間を十分に拡大し得る大きい倍率にすることができる。第1の実施の形態の形彫放電加工方法では、第1の倍率を16倍〜32倍にしている。
必要十分安全なオフ時間の値は、工具電極と被加工物の材質、ピーク電流値とオン時間のような設定された電気的加工条件、加工深さを含む加工形状によって異なる。しかしながら、限界値以下の値を基準値(下限値)としてオフ時間を制御しているので、オフ時間が限界値であるときでも異常加工状態を回避し得る時間幅のオフ時間になるように第1の倍率が設定されるから、第1の倍率は、加工中に変更される必要がなく常に一定の倍率でよい。
異常放電状態信号が入力されたときに前回の判別信号の種類を識別するフラグが1である場合は(S35)、前回の加工間隙の状態が異常放電状態であるので、第1の倍率でオフ時間を相当大きい値に拡大したにも関わらず、異常放電状態が解消されていないことを意味する。このような事態は、限界値付近のオフ時間で加工しているときに起こりやすい。
連続してオフ時間を拡大する場合は、現在設定されているオフ時間を第2の倍率で拡大して設定し直して、パルス発生装置40に拡大されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S39)。このとき、すでにオフ時間がセットできる上限値であるときは、指令データを出力せず、オフ時間は変更しないようにしている(S38)。
第2の倍率は、第1の倍率でオフ時間を相当大きい値に拡大した後にさらにオフ時間を拡大する倍率であるから、オフ時間が過剰に拡大されないように、第1の倍率よりも小さい値にする。したがって、加工の失敗がなく、加工時間の損失は最小限である。第2の倍率は、可能な限り小さい整数倍であることが好ましい。第1の実施の形態の形彫放電加工方法は、第2の倍率を2倍にしている。
オフ時間を拡大するときは、異常放電状態であった場合であるから、前回の判別信号の種類を識別するフラグを1(異常放電状態)にする(S40)。加工が終了していなければ(S41)、次に判別信号を入力するまで待機する。
次に判別信号を入力するまでの時間は、判別装置20が判別信号を出力する時間が不特定であるために、ばらつきがある。そのため、オフ時間を変更制御するタイミングが加工間隙の状態に適応しており、不適当なオフ時間で加工する期間が短く、適切なオフ時間で加工する期間がより長くなり、異常加工状態に陥ることなく限界値付近のオフ時間でより長い期間加工されている。
正常放電状態信号が入力されたときに前回の判別信号の種類を識別するフラグが1である場合は(S42)、前回の加工間隙の状態が異常放電状態であるので、異常放電状態の後に正常放電状態になったことを意味する。
異常放電状態から正常放電状態になったときは、現在設定されているオフ時間を第1の倍率で縮小、言い換えれば、現在設定されているオフ時間を第1の倍率で除算して設定し直して、パルス発生装置40に縮小されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S43)。
実施の形態の形彫放電加工方法では、判別装置20は、異常放電状態の後に正常放電が発生するときは、一発の正常放電で正常放電状態信号を出力するようにしているので、必要以上に長いオフ時間で加工する期間が短縮される。なお、オフ時間がセットできる下限値である基準値を下回るときは、オフ時間を基準値とする。
正常放電状態信号が入力されたときに前回の判別信号の種類を識別するフラグが1である場合は、前回の加工間隙の状態が異常放電状態であるので、オフ時間が少なくとも第1の倍率で拡大された値になっている。したがって、第1の倍率でオフ時間を縮小すると、オフ時間を拡大する前の値かその値よりも僅かに大きい値に戻される。その結果、オフ時間を相当大幅に拡大しても加工間隙の状態が回復すると直ちに十分短いオフ時間にされるので、必要以上に長い値のオフ時間で加工する期間がより短くなり、加工時間が短縮される。
正常放電状態信号が入力されたときに前回の判別信号の種類を識別するフラグが0である場合は(S42)、前回の加工間隙の状態が正常放電状態であるので、第1の倍率でオフ時間が大幅に縮小されて小さい時間幅に設定されていても、正常放電状態が継続していることを意味する。
連続してオフ時間を縮小する場合は、現在設定されているオフ時間を第2の倍率で縮小して設定し直して、パルス発生装置40に縮小されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S45)。このとき、すでにオフ時間が基準値であるときは、指令データを出力せず、オフ時間は変更しないようにしている(S44)。オフ時間を縮小するときは、正常放電状態であった場合であるから、前回の判別信号の種類を識別するフラグを0(正常放電状態)にする(S46)。
第2の倍率は、第1の倍率でオフ時間を相当小さい値に縮小した後にさらにオフ時間を拡大する倍率であるから、オフ時間が過剰に縮小されないように、第1の倍率よりも小さい値にする。したがって、オフ時間の値を少しずつ限界値に近付けることができ、制御が不安定にならずに限界値付近のオフ時間で加工する期間が長くなる。
第1の倍率と第2の倍率を第1の時間幅と第2の時間幅に置き換えて第1の実施の形態の形彫放電加工方法を変形することができる。この変形は、第1の実施の形態の形彫放電加工方法とプロセスが基本的に同じであるので、詳細な説明を省略する。また、変形された形彫放電加工方法の作用効果は、第1の実施の形態の形彫放電加工方法と基本的には同じである。
変形された形彫放電加工方法は、第1の実施の形態の形彫放電加工方法に比べて第2の時間幅を設定することが難しく、加工時間を短縮できる利益は少ない。しかしながら、オフ時間を拡大または縮小するときに1ステップの時間幅が同じであるオフ時間を変更制御する方法に比べて加工時間が短縮される点で依然として有利である。
変形された形彫放電加工方法において異常加工状態の回避が確実に間に合うようにするためには、第1の時間幅をより大きくするか、異常放電状態を判別する条件をより厳密にして連続的にオフ時間を拡大していく時間を短縮する。具体的には、判別装置20の異常放電状態判別基準値の値を小さくするか、異常放電数リセット基準値を大きくして異常放電状態信号が出力されやすくする。
また、変形された形彫放電加工方法において可能な限り短い時間でオフ時間を限界値付近に収束させるようにオフ時間を変更制御するためには、オフ時間を連続して縮小する各ステップ毎に第2の時間幅を段階的に短くしていくように変形することができる。言い換えれば、第2の時間幅は、オフ時間を連続的に段階的に縮小していく各ステップで常に同じ時間幅である必要がなく、少なくとも第1の時間幅に対して半分以下の短い時間幅で異なる時間幅にすることができる。
図5は、本発明の形彫放電加工方法でオフ時間を変更制御したときの変更設定されるオフ時間の長さと時間との関係を示す。オフ時間は、基準値に対する倍率で示される。図5では、変更設定されたオフ時間で加工を継続している期間が全て同じ時間幅で示されているが、オフ時間を変更するタイミングが異なるので、実際は不定である。また、図5に示される縦軸のオフ時間の時間幅は、図面のサイズの都合で、基準値に対して64倍以下の値と128倍以上の値とは同一のスケールで表わされていない。以下に、図4に示されるプロセスでオフ時間を変更制御したときの典型的なオフ時間の変化について説明する。
加工開始当初は、加工が不安定であり、オフ時間の限界値が比較的大きい値である。異常放電が発生すると、直ちにオフ時間が初期値の16倍に拡大され、基準値の128倍の値に変更設定される。比較的不安定な加工状態であるため、加工間隙の状態が回復しにくい状況にある。したがって、基準値の128倍のオフ時間でも異常放電が連続性をもって発生する場合は、さらにオフ時間が2倍拡大され、基準値の256倍の値に変更設定される。そのため、異常加工状態が確実に回避されるが、オフ時間は必要以上拡大されない。
加工間隙の状態が回復して正常放電が発生すると直ちにオフ時間が16倍縮小され、言い換えれば、16分の1にされ、基準値の16倍の値に変更設定される。加工が進んで加工が安定し、正常放電が連続性をもって発生する場合は、さらにオフ時間が2倍縮小され、基準値の8倍に変更設定される、つまり初期値に戻される。そのため、オフ時間は比較的短い時間で縮小されるので、長めのオフ時間で加工する期間が短縮される。
加工の進行とともに加工が安定してオフ時間の限界値が小さくなると、初期値は限界値に比べて十分長い値になる。そのため、正常放電が多く発生するようになる。正常放電が連続性をもって発生する場合は、さらにオフ時間が2倍縮小され、初期値よりも短い基準値の4倍の値に変更設定される。
基準値の4倍の値は、限界値付近の値であるから、異常放電が発生しやすくなる。異常放電が発生すると、直ちにオフ時間が16倍拡大され、基準値の64倍の値に変更設定される。オフ時間の大幅な拡大で加工間隙が回復すると、正常放電が発生して、直ちにオフ時間が16倍縮小され、変更設定前のオフ時間に戻される。
限界値付近のオフ時間で加工をすると異常放電が発生しやすく、限界値付近からオフ時間を大幅に拡大すると正常放電が発生しやすくなるので、暫らくの間は第1の倍率である16倍でオフ時間の拡大と縮小が繰り返される。オフ時間が16倍で拡大されたり縮小されたりする間は、長いオフ時間と短いオフ時間でそれぞれ加工する期間が総合的にみて概ね相殺されて加工時間の損失はない。
加工が進行するとオフ時間の限界値が小さくなる方向に変動するので、第1の倍率でオフ時間が縮小され限界値付近の値に戻されて、加工を続けても正常放電が発生しやすくなる。正常放電が連続性をもって発生すると、さらにオフ時間が第2の倍率で縮小されて、限界値に漸次近付けられて基準値の2倍の値に変更設定される。
基準値の2倍の値は、限界近接値であるから、異常放電が非常に発生しやすく、限界近接値からオフ時間を大幅に拡大すると正常放電が発生しやすくなるので、暫らくの間は第1の倍率である16倍でオフ時間の拡大と縮小が繰り返される。オフ時間が16倍で拡大されたり縮小されたりする間に加工が進行して加工深さがある程度深くなると、加工間隙の加工屑を含む分解生成物の排出状態が悪くなるので、加工間隙の状態が徐々に悪化する。
加工間隙の状態が悪化して加工が進みにくくなってオフ時間の限界値が大きくなる方向に変動すると、基準値の2倍程度のオフ時間がほぼ限界値になり、異常放電が頻発する。そして、基準値の2倍のオフ時間を第1の倍率である16倍で拡大して基準値の32倍の値に変更設定して加工しても異常放電が多く発生するようになる。
異常放電が連続性をもって発生すると、基準値の32倍のオフ時間がさらに2倍の倍率で拡大されて、基準値の64倍の値に変更設定される。加工間隙の状態が回復しないようならば、オフ時間は、正常放電が連続性をもって発生するようになるまで2倍で連続的に段階的に拡大され続ける。したがって、異常放電状態を確実に回避され、オフ時間は必要最小限の値になるように変更設定される。
実施の形態の形彫放電加工方法は、判別装置20が異常放電信号を入力すると直ちに異常放電状態信号を出力するようにされているので、設定されるオフ時間が限界近接値以下であっても、一発の異常放電で直ちにオフ時間が大幅に拡大される。そのため、危険な限界近接値以下のオフ時間で加工する期間は放電一発の時間でしかなく、極めて短い時間であり、加工結果に悪影響を及ぼさない。
また、判別装置20が正常放電信号を入力すると直ちに正常放電状態信号を出力するようにされているので、加工間隙が回復すると直ちにオフ時間が縮小され、長めのオフ時間で加工している期間がより短くなる。しかも、オフ時間がたとえ限界近接値であっても正常放電が続くようであるならば、可能な限り長い期間加工を継続させることができるので、異常加工状態を回避しながら短いオフ時間で加工する期間をより長くすることができる。
正常放電状態から異常放電状態になったときは、オフ時間が第1の倍率で急激に大きな時間幅に拡大されるので、直ぐに異常加工状態に進展しない。異常放電状態が続くときは、オフ時間が第2の倍率で連続的に段階的に拡大されるので、少しずつ大きな時間幅に変更設定される。そのため、オフ時間を拡大し過ぎずに異常放電状態が解消され、異常加工状態を回避できる。
異常放電状態から正常放電状態になったときには、オフ時間が第1の倍率で小さな時間幅に大幅に縮小されるので、加工時間が不必要にかからない。正常放電が続くときは、オフ時間が第2の倍率で連続的に段階的に縮小されるので、少しずつ小さな時間幅に変更設定される。そのため、オフ時間を縮小し過ぎずに加工時間が短縮され、加工効率が向上する。
したがって、図5に示されるように、加工全体で異常加工状態が確実に回避されながら、長いオフ時間で加工している期間が比較的短く、限界値付近のオフ時間で加工を続ける期間が比較的長くなるので、総合的な加工時間が大幅に短縮される。また、変動する限界値に対してオフ時間の変更制御が追従するので、限界値付近の値のオフ時間で加工を続ける期間が長くなり、加工時間が短縮される。
図6に、本発明の第2の実施の形態の形彫放電加工装置が示される。第2の実施の形態の形彫放電加工装置は、図1に示される第1の実施の形態の形彫放電加工装置の判別装置に相当する手段がパルス制御装置に含まれている点で第1の実施の形態の形彫放電加工装置と大きく異なる。以下、図1に示される第1の実施の形態の形彫放電加工装置と基本的に同じ構成の部材については、同じ符号を付して具体的な説明を省略する。
制御装置は、放電毎に正常放電か異常放電かを検出する検出装置10と、検出装置10で検出された正常放電または異常放電の発生状態に基づく正常放電状態または異常放電状態に対応して設定されているオフ時間を変更制御するパルス制御装置31と、パルス制御装置31からの指令データに対応してスイッチング素子3をオンオフするゲート信号を出力するパルス発生装置40と、を含んでなる。
パルス制御装置31は、初期値設定装置90で設定されたオフ時間を含む加工条件の初期値に基づいて指令データをパルス発生装置40に出力する。パルス制御装置31は、検出装置10から検出信号を入力して、放電一発毎の放電状態に基づいて判断される加工間隙の状態に対応してオフ時間を変更制御する。
パルス制御装置31は、加工間隙の状態が正常放電状態の後に異常放電状態になったときは、第1の倍率で現在設定されているオフ時間を速やかに大幅に拡大させ、連続して異常放電状態になったときは第1の倍率よりも小さい第2の倍率でオフ時間を連続的に拡大させるように、パルス発生装置40にオフ時間の指令データを出力する。
第1の倍率と第2の倍率は、第1の実施の形態の形彫放電加工装置と同じであり、整数倍で示される。具体的に、第1の倍率は、連続的に段階的にオフ時間を拡大して最終的には異常加工状態が回避するのに間に合う必要最低限の時間幅までオフ時間を拡大し得る倍率である。また、第2の倍率は、可能な限り小さい倍率であり、実用上は、2倍である。
また、パルス制御装置31は、加工間隙の状態が異常放電状態の後に正常放電状態になったときは第1の倍率でオフ時間を縮小させ、連続して正常放電状態になったときは第2の倍率でオフ時間をさらに縮小させるように、パルス発生装置40に指令データを出力する。
具体的に、パルス制御装置31は、検出装置10から検出信号を入力して、正常放電状態の後に一発でも異常放電が発生したときは、第1の倍率でオフ時間を拡大させる。また、パルス制御装置31は、第1の倍率でオフ時間を拡大させた後に異常放電が連続して発生しているときを含めてある程度連続性をもって断続的に発生している場合または高い頻度で発生している場合は、第2の倍率でオフ時間を段階的に拡大させる。
パルス制御装置31は、異常放電の発生頻度が規定値よりも多いときを除いて、異常放電状態の後に一発でも正常放電が発生したときは、第1の倍率でオフ時間を縮小させる。また、パルス制御装置31は、第1の倍率でオフ時間を拡大させた後に正常放電が連続して発生しているときを含めて正常放電がある程度連続性をもって断続的に発生している場合は、第2の倍率でオフ時間を段階的に縮小させる。オフ時間を所定の倍率で縮小させることは、現在設定されているオフ時間を倍率で除算して得られるオフ時間に変更することと同義である。
パルス制御装置31は、異常放電が連続して発生したときは、異常放電が連続して発生していることを示す連続異常放電数と異常放電がある程度連続性をもって発生していることを示す継続異常放電数とを計数する。ここで、連続異常放電数は、基本的に異常放電が連続して発生しているときの異常放電の数を示す。継続異常放電数は、異常放電の間に正常放電が散発的に発生しているときの異常放電数の数を示す。継続異常放電数を計測することによって、正常放電が散発していても実質的に連続して異常放電が発生しているとみなすことができる加工間隙の状態を発見することができる。
パルス制御装置31は、正常放電のときは正常放電数を計数する。また、正常放電のときに連続異常放電数が0でない場合とオフ時間を縮小しない場合は、連続異常放電が途切れたことを示す連続異常放電解除回数を計数する。
パルス制御装置31は、正常放電の後が異常放電である場合は、異常放電状態と判別して第1の倍率でオフ時間を拡大させる。また、第1の倍率でオフ時間が拡大された後に連続異常放電数または継続異常放電数が予め設定された第1の判別基準値(異常放電状態判別基準値)に達しているときは、異常放電状態と判別して第2の倍率でオフ時間を拡大する。
パルス制御装置31は、異常放電の後が正常放電である場合は、正常放電状態と判別して第1の倍率でオフ時間を縮小させる。ただし、継続異常放電数が異常放電状態判別基準値に達しているときは、異常放電の発生頻度が規定値よりも多いと判断して、異常放電の後に次に正常放電が発生した場合に関わらず、異常放電状態と判別して第2の倍率でオフ時間を拡大する。また、第1の倍率でオフ時間が縮小された後に正常放電数が予め設定された第2の判別基準値(正常放電状態判別基準値)を超えているときは、正常放電状態と判別して第2の倍率でオフ時間を縮小する。
パルス制御装置31は、連続異常放電数または継続異常放電数が異常放電状態判別基準値に達しているときは、正常放電数のカウント値をリセットする。また、正常放電数が正常放電状態判別基準値を超えているときは、正常放電数のカウント値をリセットする。また、パルス制御装置31は、異常放電の後に正常放電が発生して第1の倍率でオフ時間を縮小させたときは、連続異常放電数のカウント値をリセットする。言い換えれば、正常放電のときに連続異常放電数が0でない場合は、連続異常放電数のカウント値をリセットする。
連続異常放電解除回数は、正常放電のときに連続異常放電数が0でない場合とオフ時間を縮小しない場合に計数される値であるから、正常放電が頻発し加工間隙の状態が良好であることを示すパラメータであって、連続異常放電が実質的に途切れたことを示す。したがって、連続異常放電解除回数が予め設定されたリセット基準値(継続異常放電数リセット基準値)を超えているときは、異常放電が連続性をもって発生していることを示す継続異常放電数をリセットする。連続異常放電解除回数のカウント値は、異常放電が発生したときにリセットされる。
パルス制御装置31は、第1の倍率に代えて第1の時間幅とし、第2の倍率に代えて第2の時間幅として、オフ時間を変更制御するように変形することができる。第1の時間幅は、連続的に段階的にオフ時間を拡大して最終的には異常加工状態が回避するのに間に合う程度に加工間隙を絶縁回復させる必要最低限の時間幅である。また、第1の時間幅は、第2の時間幅の倍数であり、第2の時間幅は、第1の時間幅の半分以下である。
倍率を時間幅に置き換えてオフ時間を変更制御する形彫放電加工装置の構成は、第1の実施の形態の形彫放電加工装置の構成と基本的に同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。また、第1の時間幅と第2の時間幅でオフ時間を変更制御する形彫放電加工装置の作用効果は、第1の実施の形態の形彫放電加工装置と基本的には同じである。
倍率を時間幅に置き換えてオフ時間を変更制御する場合は、第2の実施の形態の形彫放電加工装置に比べて第2の時間幅を設定することが難しく、加工時間を短縮できる利益は少ない。しかしながら、オフ時間を拡大または縮小するときに1ステップの時間幅が同じであるオフ時間を変更制御する方法に比べて加工時間が短縮される点で依然として有利である。
判別基準設定装置81は、異常放電状態を判別する第1の判別基準値と正常放電状態を判別する第2の判別基準値をそれぞれ設定する。それぞれの値は、加工条件として設定することができる。ただし、異常放電状態判別基準値と正常放電状態判別基準値が加工条件として設定される場合は、初期値設定装置90から入力される。
図6に示される判別基準設定装置81では、異常状態判別基準値は、工具電極の種類に対応して設定される。工具電極の種類は、銅とグラファイトのように単に材質の相違を示すものではなく、構成物質の含有割合が異なることを示す。好ましくは、異常状態判別基準値は、油系放電加工液の種類と使用時間に対応して設定される。
異常放電状態判別基準値は、1つの値が設定される。ただし、オフ時間を設定可能な最小値から連続して段階的に拡大または縮小できる最大の段階数(ステップ数)だけ設定するように変形することができる。パルス制御装置31は、連続異常放電数または継続異常放電数が異常放電状態判別基準値になっているときにオフ時間を第2の倍率で拡大するとともに正常放電数のカウント値をリセットするように構成されているので、異常放電状態判別基準値は、実質的に正常放電の連続性の範囲を決定している。
正常放電状態判別基準値は、1つの値ではなく、設定可能なオフ時間を最小値から連続して段階的に拡大または縮小できる最大のステップ数だけ設定できる。基本的に複数の正常放電判別基準値は、オフ時間を連続して拡大または縮小する各ステップで値が順次大きくなるように設定されるが、隣り合うステップで同じ値が設定されてもよい。
判別基準値設定装置81は、継続異常放電数リセット基準値を設定する。継続異常放電数リセット基準値は、継続異常放電数のカウント値をリセットするときの基準値である。異常放電数リセット基準値は、連続異常放電が途切れたことを示す連続異常放電解除回数に基づいて継続異常放電数のカウント値をリセットするものであるから、実質的に異常放電の連続性の範囲を決定する。継続異常放電数リセット基準値は、図1に示される制御装置における異常放電数リセット基準値に相当する。
したがって、異常放電状態判別基準値、正常放電状態判別基準値、または継続異常放電数リセット基準値の設定値をそれぞれ変更することによって実質的に制御方法を変更することができる。制御方法が変更できることは、異常加工状態を回避する安全性と加工時間の短縮のバランスを調整することができる点で有利である。
次に、図6に示される第2の実施の形態の形彫放電加工装置における制御装置の動作と本発明の形彫放電加工方法の好ましい第2の実施の形態を説明する。図7および図8に、図6に示されるパルス制御装置の動作がフローチャートで示される。検出装置の構成と動作は、図1に示される第1の実施の形態の形彫放電加工装置と基本的に同じであり、説明は省略される。
正常放電数OKは、正常放電の計数値である。正常放電数OKは、加工間隙に発生する放電が正常放電であるときにカウントアップされる。正常放電数OKは、連続異常放電数NGまたは継続異常放電数SNGが予め設定された第1の判別基準値(異常放電状態判別基準値)RFAであるときか、正常放電数OKが予め設定された第2の判別基準値(正常放電状態判別基準値)RFBよりも大きいときにリセットされる。したがって、正常放電数OKは、正常放電が連続して発生しているか、異常放電が散発しているものの全体的に正常放電が頻発している正常放電状態であることを示す。
連続異常放電数NGは、連続して発生している異常放電の数である。連続異常放電数NGは、基本的には異常放電であるときにカウントアップされるとともに、正常放電の後に異常放電が発生したときで連続異常放電解除回数RNGが継続異常放電数リセット基準値RFC以下であるときに継続異常放電数SNGと同じ値にされる。また、連続異常放電数NGは、正常放電が発生したときに連続異常放電数NGが0でない場合にリセットされる。
継続異常放電数SNGは、連続性をもって発生している異常放電の数である。継続異常放電数SNGは、基本的には正常放電の後に異常放電が発生したときで継続異常放電数リセット基準値RFC以下であるときにカウントアップされるとともに、異常放電が連続して発生するときに連続異常放電数NGと同じ値にされ、連続異常放電解除回数RNGが予め設定された継続異常放電数リセット基準値RFCよりも大きいときにリセットされる。
連続異常放電解除回数RNGは、正常放電が発生したときで、連続異常放電数NGが0でない場合またはオフ時間を第2の倍率で縮小しない場合にカウントアップされ、異常放電が発生したときにリセットされる。したがって、連続異常放電解除回数RNGは、実質的に、正常放電が連続性をもって発生している状況を示す。
また、継続異常放電数SNGに基づいて異常放電状態とみなされたときは、比較的長期間にわたって異常放電頻度が規定よりも多いものとして異常放電頻度のフラグを1にし、それ以外のときは、異常放電状態を判別するには期間が短いか、異常放電頻度が規定よりも少ないものとして異常放電頻度のフラグを0にするようにしている。
パルス制御装置31は、検出装置10から検出信号を入力すると(S51)、検出信号が異常放電信号であるときは(S52)、連続異常放電数NGが0でなくて、かつ連続異常放電数NGが異常放電状態判別基準値RFAでないかどうかを判別する(S53)。
連続異常放電数NGが0でなくて、かつ連続異常放電数NGが異常放電状態判別基準値RFAでないときは、異常放電の後に異常放電が発生しているが、異常放電状態であるとまでは言えない状況を示している。したがって、オフ時間を変更することなく連続異常放電数NGをカウントアップする(S54)。また、継続異常放電数SNGを連続異常放電数NGと同じ値にする(S55)。そして、連続異常放電解除回数RNGをリセットしておく(S56)。
連続異常放電数NGが0ではないが、連続異常放電数NGが異常放電状態判別基準値RFAであるときは(S57)、オフ時間を第1の倍率で拡大したにも関わらず、異常放電が予め設定された数まで連続して発生している状況を示している(S58)。そこで、パルス制御装置31は、現在設定されているオフ時間を第2の倍率で拡大して設定し直して、パルス発生装置40に拡大されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S59)。
そして、異常放電が連続して発生しているので、正常放電数OKをリセットするとともに(S60)、連続異常放電解除回数RNGをリセットする(S61)。図7および図8で示されるプロセスでは、継続異常放電数SNGが異常放電状態判別基準値RFAであるときは、比較的長期間でみて異常放電が頻発していて加工が不安定になっている可能性があるので、異常放電頻度のフラグを1(頻度大)にして、次に正常放電が発生してもオフ時間を第2の倍率で拡大するようにしている。そのため、第2の倍率でオフ時間を拡大した後に(S59)、正常放電が発生したとき、不必要にオフ時間を拡大してしまう可能性があるので、異常放電頻度のフラグを0(頻度小)に戻しておく(S62)。
連続異常放電数NGが0であるときは(S53)、正常放電の後に異常放電が発生したことを示している。連続して異常放電が発生している異常放電状態を判断するための異常放電状態判別基準値RFAが0に設定されることがないので、連続異常放電数NGが0であるときに連続異常放電数NGが異常放電状態判別基準値RFAであることはない。したがって、パルス制御装置31は、連続異常放電解除回数RNGが継続異常放電数リセット基準値RFCよりも大きいかどうかを判別する(S63)。
正常放電の後に異常放電が発生したときは(S53)、以前にオフ時間を第1の倍率で縮小しているから(S90)、異常放電が一発でも発生すると急速に異常加工状態に陥る可能性がある。そこで、パルス制御装置31は、連続異常放電解除回数RNGが継続異常放電数リセット基準値RFCよりも大きいときは(S63)、一発の異常放電で異常放電状態とみなして(S64)、現在設定されているオフ時間を第1の倍率で拡大して設定し直して、パルス発生装置40に拡大されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S65)。
連続異常放電解除回数RNGの値は、正常放電が連続性をもって発生していることを示しているので、連続異常放電解除回数RNGが継続異常放電数リセット基準値RFCよりも大きいときは(S63)、正常放電の発生頻度が比較的多い中で異常放電が発生した状況であることがわかる。したがって、パルス制御装置31は、連続異常放電数NGを1にするとともに(S66)、継続異常放電数SNGを1にする(S67)。また、異常放電が発生したときであるので、連続異常放電解除回数RNGをリセットする(S68)。
パルス制御装置31は、連続異常放電解除回数RNGが継続異常放電数リセット基準値RFC以下であるときは(S63)、継続異常放電数SNGと異常放電状態判別基準値RFAとを比較する(S69)。継続異常放電数SNGが異常放電状態判別基準値RFAであるときは、正常放電の後に異常放電が発生した場合であって(S53)、連続異常放電数NGが異常放電状態判別基準値RFAではなく、異常放電が連続して発生しているわけではないが(S57)、異常放電の間に正常放電が散発していて異常放電がある程度の連続性をもって発生している状況であることを示している。
このとき、異常放電が連続性をもって発生していると判断する異常放電の連続性の範囲は、継続異常放電数SNGのカウント値の継続異常放電数リセット基準値RFCが決定しているとみなせることができ、継続異常放電数リセット基準値RFCの値が大きいほど異常放電の連続性をより広く捉えて、オフ時間が拡大されている期間が長くなり、安全性が高くなる一方、加工時間が長くなる。
正常放電の後に異常放電が発生したときは(S53)、直前にオフ時間を第1の倍率で縮小しているから(S90)、異常放電が一発でも発生すると急速に異常加工状態に陥る可能性がある。そこで、パルス制御装置31は、継続異常放電数SNGが異常放電状態判別基準値RFAであるときは(S69)、一発の異常放電で異常放電状態とみなして(S70)、現在設定されているオフ時間を第1の倍率で拡大して設定し直して、パルス発生装置40に拡大されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S71)。
継続異常放電数SNGのカウント値の継続異常放電数リセット基準値RFCは異常放電の連続性を示すので、継続異常放電数SNGが異常放電状態判別基準値RFAであるときは(S69)、ある程度長い期間異常放電が連続性をもって頻発し、正常放電が散発している状況である。したがって、正常放電数OKをリセットするとともに(S72)、連続異常放電解除回数RNGをリセットする(S73)。
また、ある程度長い期間加工間隙の状態がよくない状態にあるため、第1の倍率でオフ時間を拡大しても次に異常放電が発生する可能性がある。次に異常放電が発生するときは、オフ時間をより速やかに連続的に拡大することが要求されるので、連続異常放電数NGを異常放電状態判別基準値RFAと同じ値にしておく(S74)。連続異常放電数NGを異常放電状態判別基準値RFAと同じ値にすることによって、次に異常放電が発生したときは、異常放電連続数NGが異常放電状態判別基準値RFAと等しくなるから(S57)、パルス制御装置31は、一発の異常放電でオフ時間を第2の倍率で連続的に拡大するようにすることができる(S59)。
したがって、第2の実施の形態の形彫放電加工方法は、比較的長い期間で正常放電が散発しながらも異常放電が連続性をもって頻発していて急速に異常加工状態に陥るおそれのある状況で、単に異常放電を計測するだけでは判別できない加工間隙の悪化している状態を適切に検知して、第1の倍率でオフ時間を拡大しても異常放電が連発する危険な状態であっても極めて短時間に異常放電が発生しなくなる安全な値までオフ時間が急速に拡大するので、異常加工状態を確実に回避することができ、極めて安全である。
オフ時間が大幅に拡大されたとしても、拡大されたオフ時間で加工を行なうことによって加工間隙の状態は速やかに回復して正常放電が発生すると、第2の実施の形態の形彫放電加工方法では、一発の正常放電で直ちにオフ時間が大きい第1の倍率で急激に縮小されるので(S90)、長過ぎるオフ時間で加工している時間はより短時間である。
加えて、継続異常放電数SNGが異常放電状態判別基準値RFAであるときは(S69)、ある程度長い期間異常放電が連続性をもって頻発し、正常放電が散発している状況であるから、異常放電頻度のフラグを1(頻度大)にしておく(S75)。
したがって、第2の実施の形態の形彫放電加工方法は、比較的長い期間で異常放電が連続性をもって頻発していて急速に異常加工状態に陥るおそれのある状況で、次に正常放電が発生したときでも異常放電頻度が大きいと判断してオフ時間を縮小せずに第2の倍率でオフ時間を拡大するので、オフ時間を縮小して異常加工状態を誘発する危険がなく、むしろ極めて短時間に異常放電が発生しなくなる安全な値までオフ時間が急速に拡大することができ、より安全である。
継続異常放電数SNGが異常放電状態判別基準値RFA以下であるときは(S69)、正常放電の後に異常放電が発生した場合であって(S53)、連続異常放電数NGが異常放電状態判別基準値RFAに達しておらず、異常放電が連続して発生しているものではなく(S57)、異常放電がある程度の連続性をもって発生している異常放電の頻度が高い状況でもないことを示している。
正常放電の後に異常放電が発生したときは(S53)、直前にオフ時間を第1の倍率で縮小しているから(S90)、異常放電が一発でも発生すると急速に異常加工状態に陥る可能性がある。そこで、パルス制御装置31は、一発の異常放電で異常放電状態とみなして(S76)、現在設定されているオフ時間を第1の倍率で拡大して設定し直して、パルス発生装置40に拡大されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S77)。
継続異常放電数SNGが異常放電状態判別基準値RFA以下であるときは(S69)、正常放電と異常放電が適度に発生しており、異常放電が発生してはいるが、急速に異常加工状態に陥る危険性がない状況である。そこで、正常放電数OKをリセットせずに、継続異常放電数SNGをカウントアップするともに(S78)、連続異常放電数NGを継続異常放電数SNGと同じ値にしておく(S79)。このとき、オフ時間を第1の倍率で拡大したので(S77)、正常放電の連続性は失われたとみなすことができ、連続異常放電解除回数RNGをリセットしておく(S80)。
パルス制御装置31は、検出信号を入力して(S51)、検出信号が正常放電信号であるときは(S52)、図8に示される正常放電検出処理プロセスに従って正常放電数OKをカウントアップする(S81)。
ここで、既述のとおり、継続異常放電数SNGが異常放電状態判別基準値RFAであるときは(S69)、異常放電頻度のフラグが1にされており(S75)、急速に異常加工状態に陥るおそれのある状況である。したがって、パルス制御装置31は、異常放電頻度のフラグが1のときは(S82)、危険を回避するために異常放電状態とみなして(S83)、オフ時間を縮小しないで現在設定されているオフ時間を第2の倍率で拡大して設定し直して、パルス発生装置40に拡大されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S84)。
このとき、ある程度の連続性をもって異常放電が発生している状況であるから、正常放電数OKをリセットするとともに(S85)、連続異常放電解除回数RNGをリセットする(S86)。また、次に正常放電が発生したとき、つまり正常放電が連続して発生するときに、不必要にオフ時間が拡大されることを防ぐために、異常放電頻度のフラグを0に戻しておく(S87)。
正常放電が発生したときで異常放電頻度が0である場合は(S82)、正常放電が連続して発生しているか、正常放電と異常放電が適度に発生しており、異常放電が発生してはいるが、急速に異常加工状態に陥る危険性がない状況である。
この状況で連続異常放電数NGが0でないときは(S88)、異常放電の後に正常放電が発生したときであるから、オフ時間を安全な値に拡大した後である。そこで、パルス制御装置31は、正常放電状態とみなして(S89)、現在設定されているオフ時間を第1の倍率で大幅に縮小するように、言い換えれば、第1の倍率で除算したオフ時間に設定し直して、パルス発生装置40に縮小されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S90)。
オフ時間を第1の倍率で縮小する場合は、異常放電の後に正常放電が発生したときであって異常放電が途切れたときであるから、連続異常放電数NGをリセットする(S91)。また、異常放電が途切れて連続異常放電数NGをリセットしたので、連続異常放電解除回数をカウントアップする(S92)。
したがって、オフ時間が安全な値に拡大されて加工間隙の状態が良好であるか、回復している傾向にあるときは、オフ時間が拡大される前の値または拡大前の値よりも僅かに長い値に戻される。そのため、長過ぎるオフ時間で加工する時間が短縮される。
連続異常放電数NGは、基本的には異常放電が発生したときに計数されるので(S54,S66,S74,S78)、連続異常放電数NGが0のときは(S88)、正常放電の後に正常放電が発生しているときである。つまり、正常放電が連続して発生している状況である。そこで、パルス制御装置31は、正常放電数OKと正常放電状態判別基準値RFBとを比較して(S93)、正常放電の発生頻度を判別する。
正常放電数OKが正常放電状態判別基準値RFBを超えているときは、正常放電のある程度連続性をもって発生しているとともに正常放電の発生頻度が高いので、加工状態が安定している状況である。また、正常放電の後に正常放電が発生したときであるので、オフ時間が第1の倍率で縮小された後である(S90)。
そこで、パルス制御装置31は、正常放電状態とみなして(S94)、現在設定されているオフ時間を第2の倍率で縮小するように、言い換えれば、第2の倍率で除算したオフ時間に設定し直して、パルス発生装置40に縮小されたオフ時間の指令データを出力し、パルス発生装置40にセットされているオフ時間を変更する(S95)。そして、オフ時間を連続的に縮小したので、正常放電数OKをリセットしておく(S96)。
正常放電が連続して発生していても(S88)、正常放電数OKが正常放電状態判別基準値RFB以下であるときは(S93)、オフ時間を変更しないで、連続異常放電解除回数RNGと継続異常放電数リセット基準値RFCとを比較する(S97)。
連続異常放電解除回数RNGは、正常放電が連続性をもって発生している状況を示すものであるから、連続異常放電解除回数RNGが継続異常放電数リセット基準値RFCを超えているときは、正常放電が予め設定された相当数連続して発生しており、逆に異常放電の連続性が認められず、異常放電が散発している状況を示しているので、継続異常放電数SNGをリセットする(S98)。
正常放電数OKが正常放電状態判別基準RFB以下で(S93)、連続異常放電解除回数RNGが継続異常放電数リセット基準値RFC以下であるときは(S97)、正常放電が連続して発生しているが、予め設定された相当数まで連続して発生しているのではないので、連続異常放電解除回数をカウントアップだけしておく(S99)。
第2の実施の形態の形彫放電加工方法では、パルス制御装置31は、単に異常放電が連続して発生している場合に限らず、正常放電が散発していても異常放電の連続性を考慮してオフ時間を拡大する。また、同時に比較的長い不定の期間中の放電頻度を考慮してオフ時間を高速に連続的に拡大する。一方、正常放電の連続性を考慮してオフ時間を縮小する。したがって、異常加工状態を一層確実に回避しながら加工時間を短縮することができる。また、オフ時間の拡大と縮小を長時間繰り返すことがなく制御が不安定になりにくい。そのため、安全性が高く加工効率に優れる。
第2の実施の形態の形彫放電加工方法は、オフ時間を縮小した後にオフ時間を拡大するときは、最終的に異常加工状態に陥ることを回避するのに間に合う程度に加工間隙が絶縁回復する必要最低限の十分大きい長さのオフ時間になる第1の倍率で拡大し、オフ時間を第1の倍率で拡大した後にオフ時間を連続して拡大するときは可能な限り小さい第2の倍率で速やかにステップ毎に順次拡大する。したがって、一層確実に異常加工状態を回避しながら必要以上にオフ時間を拡大しない。そのため、安全性が高く加工効率に優れる。
また、オフ時間を拡大した後にオフ時間を縮小するときは、比較的大きい第1の倍率で急速に縮小し、第1の倍率で縮小した後にオフ時間を連続して縮小するときは可能な限り小さい第2の倍率でステップ毎に徐々に縮小する。したがって、必要以上に長い時間幅のオフ時間で加工している期間が短く、短い時間幅のオフ時間で加工している期間が比較的長く、制御が安定する。そのため、安全性が高く加工効率に優れる。
図7および図8のプロセスでオフ時間を変更制御したときの典型的なオフ時間の変化は、本質的に図5に示されるオフ時間の変化と同じである。第2の実施の形態の形彫放電加工方法は、オフ時間が短く異常加工状態に陥る危険があるときは高速にオフ時間を安全な時間幅まで拡大することができ、限界値で長期間加工を続けることがなく、一方、加工が安定するときは高速にオフ時間を拡大前の限界値付近の時間幅に戻すことができ、限界値付近のオフ時間で比較的長期間良好な加工が続けられる。
第1の倍率と第2の倍率を第1の時間幅と第2の時間幅に置き換えて第2の実施の形態の形彫放電加工方法を変形することができる。この変形は、第2の実施の形態の形彫放電加工方法とプロセスが基本的に同じであるので、詳細な説明を省略する。また、変形された形彫放電加工方法の作用効果は、第2の実施の形態の形彫放電加工方法と基本的に同じである。
変形された形彫放電加工方法は、第2の実施の形態の形彫放電加工方法に比べて第2の時間幅を設定することが難しく、加工時間を短縮できる利益は少ない。しかしながら、オフ時間を拡大または縮小するときに1ステップの時間幅が同じであるオフ時間を変更制御する方法に比べて加工時間が短縮される点で依然として有利である。
変形された形彫放電加工方法において異常加工状態の回避が確実に間に合うようにするためには、第1の時間幅をより大きくするか、異常放電状態を判別する条件をより厳しくして連続的にオフ時間を拡大していく時間を短縮する。具体的には、パルス制御装置31の異常放電状態判別基準値の値を小さくするか、継続異常放電数リセット基準値を大きくする。
以上に説明される本発明の形彫放電加工方法および形彫放電加工装置は、実施の形態に限定されるものではなく、本発明の作用効果を得ることができる範囲で、すでにいくつかの例が記載されているが、変形、置換、組合せ、追加が可能である。また、本発明の作用効果を得ることができる範囲で、他の適応制御装置と組み合わせて実施することができる。