JP2009051133A - 積層体及びそれを用いる光学特性制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】励起光により光学特性が変化し、復帰光により励起光によって変化した状態から初期状態に復帰させることが可能な活性システムを有する光学活性層と、層の面内方向において復帰光透過性を有する導光層を含んで形成される積層体。好ましくは、導光層と光学活性層を含んでなる層群の少なくとも片側に、励起光を少なくとも部分的に遮蔽する励起光遮蔽層を含む層を設ける。
【選択図】図4
Description
本発明はまたこの積層体を用いる光学特性制御方法と透過性部材に関する。
このようなことから、ビルや屋外施設、自動車等の設置場所に制約が大きい対象に対しては、窓材等と一体化して簡易に駆動できる遮光・調光・遮熱手段の開発が求められていた。
本発明はまた、この積層体を用いた光学特性制御方法と、透過性部材を提供することを目的とする。
本発明の積層体は、層の面内方向において励起光及び/又は復帰光に対する透過性を有する導光層と、励起光により光学特性が変化する活性システムを有する光学活性層とを含んで形成される。積層体は所定のサイズに加工されて板状光学部材となり、調光装置において視認される面状体を構成し、積層体の板面に垂直方向の光学特性(透過率、反射率、散乱特性等)の変化が遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示等に利用される。
本発明における積層体は層の面内方向において励起光及び/又は復帰光に対する透過性を有する導光層を有する。本発明では励起光及び/又は復帰光が導光層中を面内方向に伝搬することが予定されているので、導光層中の吸収が低く励起光及び/又は復帰光に対する透過性が高いことが好ましい。透過性としては板状光学部材の大きさに応じて、積層体中を面内方向に進行する励起光及び/又は復帰光が、必要とされる範囲において光学活性システムを励起できる強度をもって到達できれば良い。導光層の面内方向における光透過性の程度としては、具体的には、励起光及び/又は復帰光の波長域における単位長さあたりの吸光度(Absorbance)として1/cm以下、好ましくは0.1/cm以下、さらに好ましくは0.01/cm以下、特に好ましくは0.005/cm以下、理想的には物質固有の吸収が無視できる程小さいことである。単位長さあたりの吸光度が高過ぎると、光が吸収され到達距離が短くなるため、この積層体を利用した板状光学部材の大きさに制約が生じる。
光学活性層は、励起光により光学特性が変化する光学活性システムを有する層である。
励起光により光学特性が変化する光学活性システムは、励起光により光学特性が変化すれば特に制約はない。広く使用されるのは各種のフォトクロミック材料である。
クロメン(chromene)、例えば、ナフトピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピラン、フェナントルピラン;
スピロピラン、例えば、スピロ(ベンズインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノピラン、スピロ(インドリン)ピラン;
オキサジン、例えば、スピロ(インドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ピリドベンゾキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ベンゾキサジン;
水銀ジチゾネート、フルギド、フルギミド(fulgimide);
ジアリールエテン及びその誘導体;
ポリジアセチレン及びその誘導体;
上述したようなフォトクロミック化合物の混合物;
光学活性システムが特定の波長域の光に対して応答する場合は、制御光としての性質上、その特定の光を主成分としていることが好ましく、他の成分を含まないことがより好ましい。光学活性システムが応答できる成分が多い方が効率的な復帰が可能であり、応答できない成分を含まない方がエネルギー消費の点で有利である。
また、光学活性層は光学活性システムを含む層として形成することもできる。この場合はマトリックス成分として存在する物質が機械的強度や耐候性を補強する役割を果したり、光学活性システムを好適に保持する機能を果たすこともできるため好ましい。例えば、一部の光学活性システムにおいてはガラス転移温度の低い高分子マトリックスの存在が光学特性変化の発現のために必要ともなっている。
この場合の基板としては、光学活性を発現できるものであれば、基板が導光層を兼用する場合と同様の種々の物質が使用でき、厚み等の範囲もそれに準ずる。
この場合のフィルムとしては、光学活性を発現できるものであれば、フィルムが導光層を兼用する場合と同様の種々の物質が使用でき、厚み等の範囲もそれに準ずる。
本発明の積層体においては、導光層の屈折率が導光層に隣接する層の屈折率より低くなるように形成するのが好ましい。本発明においては、励起光及び/又は復帰光は導光層中を面内方向に伝搬して光学活性システムに到達し、その光学特性を変化させる。制御光の指向性が高く制御光の進行角度が良く制御されていれば、制御光は導光層中を直進して活性層に直接照射され、光学活性物質の光学特性を変化させる(図1参照)。しかし、光学特性制御装置の形態によっては、積層体の厚みが薄いことが好まれることがあり、特に窓材として利用される場合は、全厚の薄さが要求される。その結果として導光層の厚みも薄くなり、直射のみに依存すると部材の面積が大きい場合は、制御光の進行角度が極めて小さく狭い範囲に制御されるとともに、光学特性の変化の程度をそろえるために制御光の強度の角度分布を精密に制御することが必要になってくる。
界面における反射率としては、概略の傾向として、入射角が大きい(光の進行方向が積層体平面により平行的)場合は、反射率が高くなり、これは屈折率の差が大きいほど高くなる。屈折率の差はそれぞれの層の屈折率の比が反射率、透過率に影響する。導光層の屈折率に対する導光層に隣接する層の屈折率の比は好ましくは1.01以上、より好ましくは1.02以上、特に好ましくは1.03以上である。また、好ましくは10以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.2以下である。屈折率の比が小さいと、光の殆どが界面で透過してしまい、反射を繰り返してより遠方に伝搬するという効果が小さくなる。屈折率の比が大きくなると、反射率は高くなるが、屈折して透過する光の割合が低下して光学活性システムに到達する光の割合が低下する。
本発明における積層体においては、導光層の屈折率が導光層に隣接する層の屈折率より一定の条件を満たすように高く形成することもできる。本構成も直射光のみによらず、反射の繰り返しにより制御光を伝搬させるものであるが、反射は導光層と導光層に隣接する層との界面における全反射(内部反射)を利用する手法である。これによれば何回かの反射を繰り返して励起光及び/又は復帰光がより遠距離まで到達するので、外部反射を利用する場合と同様、部材の厚み減少、大面積化の観点における利点がある。導光層の屈折率が導光層に隣接する層の屈折率より高ければ、入射角が一定の値以上において層の界面において全反射が生じ、すべての光は導光層内に反射される。反対側も同じ構成であれば、再び全反射が生じて光は理論上は無限に伝搬していく。全反射の生じる角度は導光層と導光層に隣接する層の屈折率、光の入射角、偏光によって決定される。これらは全反射に関する一般的な解説書、例えば、N.J.Harrick、「INTERNAL REFLECTION SPECTROSCOPY」、Interscience Publishers、1967等に記載されている。
本発明の積層体においては、導光層を制御光に対して一定の散乱を有するものとすることにより、制御光を光学活性層に導くこともできる。導光層中を面内方向に伝搬する制御光は、直射、外部反射、内部反射により導光層内を進行するが、導光層が制御光に対して一定の散乱性を有していれば、一部の光は散乱され進行方向が変化する。進行方向が変化した光の一部は導光層の外部に放出され光学活性層に到達する。特に、内部全反射との組み合わせでは、伝搬効率を高く保った上で、制御光が到達する範囲がエバネッセント波の範囲に制限されるという内部反射利用方式の限界を克服することができるため好ましい。このような導光層の例としては、例えば、ビーズ入りアクリル導光板「パネビー」((株)きもと社製)のようなものが利用できる。散乱の程度は光の伝搬と導光層外への一定の放出がバランスするようにすることが好ましい。強すぎると導光層中を光が実質的に進行しなくなる。弱すぎると散乱を利用する効果が小さくなる。
本発明の実施形態の一つにおいては、励起光を遮蔽する手段を含む層を、導光層と活性システムを有する光学活性層を含んでなる積層体の少なくとも片側に設置することができる。
本発明の一つの実施形態においては、導光層中を面内方向に進行する励起光により光学活性システムが活性化される。即ち、導光層側から到達する励起光により光学活性システムが活性化される。ここで励起光の種類が、積層体が使用される環境下、即ち積層体を用いて構成される光学特性制御装置が使用される場所に存在しない種類の光であれば問題ないが、環境に存在する種類の光であると、積層体の面に垂直方向から被制御光とともに入射した励起光により活性システムが励起され、意図しない時点において光学特性が変化する可能性がある。そこで、励起光を少なくとも部分的に遮蔽する手段を含む層を導光層と活性システムを有する光学活性層を含んでなる積層体の少なくとも片側に設けることにより、環境に由来する励起光を減衰させ、環境に存在する光の変動により意図しない光学特性変化が生じることを抑制し、制御性を高めることができる。
励起光が可視光線の場合は、例えば、可視域に吸収を有するガラスや高分子系材料としてドープポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子などが好適に用いられる。
励起光が近赤外域を含む赤外域にある場合は、対応する波長域に吸収を有する材料を用いれば良い。近赤外域では後述のマトリックスに吸収性物質を含有させる形態を利用することが好ましい。
基板としては励起光遮蔽性を発現できるものであれば良く、励起光遮蔽層が層の基本形成物質が励起光に対する吸収性を示すことによって形成されている場合に使用される物質が好適に利用できる。
フィルムとしては励起光遮蔽性を発現できるものであれば良く、励起光遮蔽層が層の基本形成物質が励起光に対する吸収性を示すことによって形成されている場合に使用される物質が好適に利用できる。
本発明の積層体はその他の層を含んで構成されても良い。
他の層としては、例えば、機械的強度を維持する基材層、紫外線(UV)を遮断し耐候性を付与するUVカット層、スクラッチ性を向上させるハードコート層、色調を調整する着色層、酸素や水分の透過を遮断して内層を保護するガスバリヤー層、導電性を付与する導電層等が挙げられる。また、光学活性システムにより制御される被制御光を恒常的に減光する層を有していても良い。被制御光は光学活性システムにより能動的に制御されるが、通常の状態においても一定の程度まで減衰しておいた方が好ましい場合もある。また、活性システムの能力から制御範囲が限られることもあり、恒常的減光手段を併用することにより制御範囲を調整することもできる。恒常的に減光する度合は80〜10%が好ましい。
本発明の積層体は必要なサイズに形成されて光学特性制御装置の板状光学部材として利用される。板状光学部材の側面は、制御光を積層体内へ導入するために処理される。板状光学部材は、積層体の上下に別の層や板を追加しても良く、複数の積層体からなっていても良い。
以下において、本発明の積層体を用いて形成される板状光学部材を「本発明の板状光学部材」と称す場合がある。
本発明の板状光学部材は、上述の積層体を必要なサイズの板とすることにより形成される。板状光学部材を形成するにあたっては積層体を形成後、必要なサイズに裁断して利用しても良く、積層体の基材を予め板状光学部材の必要サイズに合わせて形成し、その上に積層体を形成しても良い。
本発明の積層体においては導光層中を制御光が面内方向に進行する。そのため、積層体を板状光学部材に加工した段階で、導光層中に制御光を取り込むために、板状光学部材の側面乃至上下面の少なくとも一部分が光を積層体内に導入するために処理されていることが好ましい。本発明における積層体はその積層構造をもって機能を発現するものであるが、機能を発現するための制御光が効率的に取り込まれるようにすることが積層体の設計上も好ましい。
また厚み方向としては導光層が存在する部分について処理がされていれば良い。ただし、積層体中の他の層も含めて処理されていてもかまわない。
本発明の積層体は、板状光学部材に形成された上で制御光の制御手段を付与して、光学特性制御装置として利用される。
制御光は光学活性システムの光学特性を変化させる励起光ないし復帰光である必要がある。その波長は光学活性システムの種類により変わりうる。光学活性システムが特定の波長域の光に対して応答する場合は制御光としての性質上、その特定の光を主成分とし、他の成分を含まないことがより好ましい。
人工光源は電源のオンオフで容易に励起光の制御が可能であり、光学特性制御を頻繁に行う用途にも対応できるため好ましい。また、光源種類によっては、発光強度も中間的に制御できるので調光目的として好ましい。自然光源や環境光を利用する場合は、シャッターを用いることにより制御光のオンオフが可能である。この方法は消費エネルギーが少なくなるため、長期間にわたりオンオフのどちらかが続く用法や省エネルギー目的の用途にとって好ましい。
本発明においては、光学活性システムが励起光により光学特性が変化し、復帰光により励起光により変化された状態から初期状態に復帰させることができるものであっても良い。この場合に、導光層中を面内方向に復帰光が進行するようにすることが特に好ましい。これにより、復帰過程をも制御することが可能となり、より任意性の高い光学特性制御システムを形成することが可能となる。また、励起状態が比較的安定な場合でも、強制復帰が可能となり、光学活性システムの選択の幅が広がる。励起状態が比較的安定な光学活性システムを利用すれば、間欠的に励起光を照射し光学特性を変化させ続け、復帰させたいときは復帰光で急速に元の状態に戻すというような装置形態が可能となり、トータルエネルギー削減の点でも効果がある。
制御光としての復帰光の光源、導入、入射制御は制御光として励起光の場合と同様にすることができる。
また、復帰光を被制御光と重なるものとして、板状光学部材の垂直方向から入射する復帰光と制御光としての復帰光の重畳により制御を行っても良い。
本発明の基本構成及び作動タイプの一つとしては、定常状態が無色あるいは一定の濃度で着色しており、励起状態で着色あるいはより濃く着色する光学活性システムを利用するものが挙げられる。積層体はかかる光学活性システムを含む光学活性層を含んで形成され、積層体に含まれる他の層の寄与と合わせて定常状態において一定の光学特性を有する。ここで、導光層中を面内方向に進行する励起光が作用することにより、励起光が光学活性システムに到達し、これを励起状態にすると積層体の光学特性が変化する。例えば、積層体の面に垂直方向における光透過率の低下や、積層体の表面の色調を変化が発現し、遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示等の機能を発揮できる。定常状態への復帰は励起光の停止による熱若しくは自然復帰若しくは復帰光による強制復帰によりなされる。このようにして、本発明の積層体を利用して通常状態で透明若しくは微着色、励起光オン状態で遮光・隠蔽となる光学特性制御装置が得られる。
本発明の積層体は、能動的な遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示などの機能を必要とする光学特性制御装置、遮光装置、調光装置、隠蔽装置、表示装置に利用することができる。しかして、本発明の積層体は、大面積化、曲面形成等が容易であることから、家屋、オフィス、店舗の窓・ショーウインドウ、飛行機、自動車等移動手段の窓、アーケードや競技施設等の屋外施設の屋根、屋内の仕切り窓に利用することが可能である。
(1)光学活性システム
光学活性システムとして、有機のフォトクロミック色素である、下記構造式で表されるジアリールエテン系の色素(色素A)を用いた。
色素Aを9重量部と、ポリメタクリル酸メチル81重量部をトルエン410重量部に溶解して、光学活性層作製用の塗液を調製した。これを100μm厚みのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に乾燥厚みが10μmとなるようにバーコーターで塗布し、乾燥した。
次いで、光学活性層が形成されたPETフィルムを長さ100cm、幅40cm、厚み3mmのアクリル板に貼り付けた。アクリル板は紫外線カット剤を含有する組成のものを使用した。そのため、色素Aに対する励起光に対しては励起光を遮蔽する励起光遮蔽層として機能する。アクリル板の透過スペクトルを図7に示す。
光学活性層が形成されたアクリル板を光学活性層が内側になるようにして光学活性層が形成されていない別のアクリル板と対向させ、板の2つの長辺部及び1つの短辺部に20mm角のアルミニウム製中空角棒を設置することにより、20mmの空隙よりなる導光層を形成した。これにより、基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板、空気から形成される導光層、色素Aを含有する光学活性層、光学活性層の基材であるPETフィルム、接着層、基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板より形成される積層体を形成した。この積層体の平面視外観は完全な透明で反対側が明瞭に視認された。
この積層体を用いて導光層の周囲3辺部にスペーサーが設けられ、短辺の1辺部が開口した厚み20mmの空隙よりなる導光層を有する板状光学部材とした。この板状光学部材の短辺側にある側面開口部の一方に密接して、長さ29cm、太さ12mmの点灯スイッチ付きのUV蛍光灯Aを、開口部と平行になるように設置し、光学特性制御装置を作製した。
UV蛍光灯Aの波長域は280nmから380nmであり、中心波長は351nm、その強度は距離5cmにおいて2mN/cm2である。UV蛍光灯Aの分光分布スペクトルを図8に示す。また、装置の概要を図9に示す。図9において、50は板状光学部材、51はUV蛍光灯、52は反射板、53は電源ボックスである。
積層体は通常の屋内において光源非点灯時は無色透明であった。
次いで、UV蛍光灯を点灯することによって積層体の光学特性の変化を調べた。非点灯時は無色透明であったが、UV蛍光灯を点灯すると直後から部材が青紫色透明に変化し始め、10分程で安定した濃さになり部材の透過性が低下した。UV蛍光灯を消灯しても着色は残存したが、強い照明下で徐々に退色した。点灯と消灯を多数回繰り返しても特性の変化はなかった。また、励起光は積層体の外側では検出されなかった。非点灯時と点灯時の積層体の積層面に垂直方向の透過スペクトルを図10に示す。また、図11に、照射開始10分後における積層体の積層面に垂直方向の点灯時の透過率と非点灯時の透過率の差を光源からの距離の関数として示す。
本実施例より、窓として機能しうる面を遮ることなく、導光層中を面内方向に励起光を進行させることによって、積層体の光学特性を無色透明から着色状態に変化させることが可能であることが示された。透過スペクトルにおいて吸収が増加していること、着色は青紫であってUV域にある励起光とは異なることから単に内部に導入された光によるイルミネーションで色が付いて見える現象とは異なることは明らかである。これにより着色した色素の吸収、色合いを利用して遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示の機能を有する光学特性制御装置を得ることができる。本実施例における色素は熱戻りが殆どないことから、励起光を導入して着色させればその後励起光を切ってもかなりの時間着色状態を維持するため、エネルギーを多量に消費せず上記機能を発揮することが可能となる。
実施例1において、光学活性層を有するアクリル板1枚だけを使用し、導光層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。これにより、色素Aを含有する光学活性層、光学活性層の基材であるPETフィルム、接着層、励起層遮蔽層を兼用する基板となるアクリル板より形成される積層体が形成された。
このようにして得られた積層体に実施例1と同様にしてUV蛍光灯を設置し、光学特性制御装置を作製して評価した。
この光学特性制御装置は励起光が導光層中を面内方向に進行するものではなく、積層体の面外斜め方向で励起光遮蔽層を有しない側から励起光が光学活性層に照射されるものである。
積層体は通常の屋内において光源非点灯時は無色透明であった。次いでUV蛍光灯を点灯することによって積層体の光学特性の変化を調べたところ、照射面において青紫色に着色することが確認された。ただし、蛍光灯から距離が遠い部分の着色濃度は実施例1のものと比較して低かった。また、装置周辺では光源からの直接光、積層体表面からの反射光によりUV光が検出され保護手段が必要であった。図11に照射開始10分後における積層体の積層面に垂直方向の透過率と非点灯時の透過率の差を光源からの距離の関数として示す。
(1)光学活性システム
光学活性システムとして有機のフォトクロミック色素である市販の色素(色素B、記録素材総合研究所製、サニーカラーパープル)を用いた。色素Bの励起光は紫外域にありそのピーク波長は365nmである。色素Bの励起により変化する光学特性は可視域の吸収であり、励起光非照射の場合の無色透明から、励起光の照射により赤紫色に変化する。吸収スペクトルのピーク波長は540nmである。励起光の照射を停止すると速やかに元の無色透明状態へ復帰する。色素Bの各状態におけるスペクトルを図12に示す。
色素Bを2重量部と、ポリエチレンビニルアセテート98重量部をトルエン400重量部に溶解して、光学活性層作製用の塗液を調製した。これを100μm厚みのPETフィルム上に乾燥厚みが20μmとなるようにバーコーターで塗布し乾燥した。乾燥後塗膜面に100μm厚みのPETフィルムを上からラミネートすることにより光学活性層が間に挟まれたPETフィルム多層膜を形成した。
次いで光学活性層が形成されたPETフィルム多層膜を長さ30cm、幅21cm、厚み2mmのアクリル板に貼り付けた。アクリル板は紫外線カット剤を含有する組成のものを使用した。そのため色素Bに対する励起光に対しては励起光を部分的に遮蔽する励起光遮蔽層として機能する。アクリル板の透過スペクトルを図13に示す。
光学活性層が形成されたアクリル板を光学活性層側が内側になるようにして光学活性層が形成されていない別のアクリル板と対向させ、板の2つの長辺及び1つの短辺に、導光層に向いた面にアルミニウムよりなる反射膜が形成された2cm角の角棒を設置することにより、2cmの空隙よりなる導光層を形成した。これにより基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板、空気から形成される導光層、PETフィルム、色素Bを含有する光学活性層、光学活性層の基材であるPETフィルム、接着層、基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板より形成される積層体を形成した。積層体の平面視外観は完全な透明であった。
この積層体を用いて導光層の周囲3辺部にスペーサーが設けられ、1辺部が開口した厚み2cmの空隙よりなる導光層を有する板状光学部材とし、この板状光学部材の側面開口部の一方に密接してUV蛍光灯Aを、開口部と平行になるように設置して光学特性制御装置を作製した。板状光学部材の開口部と対向していない蛍光灯の他部分は反射板により遮蔽した。装置の概要を断面図として図14に示す。図14において、61A,61Bはアクリル板、62はスペーサー、63は反射板、64はUV蛍光灯である。
積層体は通常の屋内において光源非点灯時は無色透明であった。晴天時の屋外日陰においては微かに着色が見られた。晴天時の太陽光直射時は薄く着色した。
次いで屋内においてUV蛍光灯を点灯することによって積層体の光学特性の変化を調べた。非点灯時は無色透明であったが、蛍光灯を点灯すると直後から積層体が赤紫色透明に変化し始め、1分程で安定した濃さになり部材の透過性が低下した。蛍光灯を消灯すると2分程で元の無色透明状態に完全に復帰した。点灯と消灯を多数回繰り返しても特性の変化はなかった。また、励起光は積層体の外側では検出されなかった。非点灯時と点灯時における積層体の積層面に垂直方向の透過スペクトルを図15に示す。また、表1に積層体の光源からの距離20cmでの非点灯時と点灯時の波長540nmにおける透過率及びその差を示す。
本実施例より、窓として機能しうる面を遮ることなく積層体中を面内方向に励起光を進行させることによって、光学特性を無色透明から着色状態に変化させることが可能であることが示された。これは色素を変えても実現可能であり、フォトクロミック色素の選択により色合いが変更できるとともに、熱戻りの大きい色素では速やかな無色−着色変化が得られることが示された。
実施例2において、対向させるアクリル板も光学活性層を形成したものを使用した以外は実施例2と同様にして積層体を作製した。積層体の構成は、基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板、接着層、光学活性層の基板であるPETフィルム、色素Bを含有する光学活性層、PETフィルム、空気から形成される導光層、PETフィルム、色素Bを含有する光学活性層、光学活性層の基板であるPETフィルム、接着層、基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板となった。
このようにして得られた積層体を、スペーサーに反射膜を形成しなかった以外は実施例2と同様にしてUV蛍光灯を設置し、光学特性制御装置を作製して評価した。UV蛍光灯を点灯することによって光学特性の変化を調べたところ、実施例2のものよりも着色濃度が増加していることが確認された。表1に積層体の光源からの距離20cmでの非点灯時と点灯時の波長540nmにおける透過率及びその差を示す。
実施例2において、光学活性層を有するアクリル板1枚だけを使用し、導光層を形成しなかった以外は実施例2と同様にして積層体を作製した。これによりPETフィルム、色素Bを含有する光学活性層、光学活性層の基材であるPETフィルム、接着層、基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板よりなる積層体が形成された。このようにして得られた積層体を実施例2と同様にしてUV蛍光灯を設置することにより光学特性制御装置を作製して評価した。この光学特性制御装置は、励起光が導光層中を面内方向に進行するのではなく、積層体の面外斜め方向で励起光遮蔽層を有しない側から励起光が光学活性層に照射されるものである。
この積層体は通常の屋内において光源非点灯時は無色透明であった。晴天時の屋外日陰においては明瞭に着色が見られた。晴天時の太陽光直射時は濃厚な着色が見られた。
UV蛍光灯を点灯することによって積層体の光学特性の変化を調べたところ、照射面において赤紫色に着色することが確認されたが、蛍光灯から距離が遠い部分の着色濃度は実施例2のものと比較して低かった。また、装置周辺では光源からの直接光、積層体表面からの反射光によりUV光が検出され保護手段が必要であった。表1に積層体の光源からの距離20cmでの非点灯時と点灯時の波長540nmにおける透過率及びその差を示す。
(1)光学活性システム
光学活性システムとして、有機のフォトクロミック色素である下記構造式で表されるジアリールエテン系の色素(色素C)を用いた。
色素Cを9重量部と、ポリメタクリル酸メチル91重量部をトルエン400重量部に溶解して、光学活性層作製用の塗液を調製した。これを100μm厚みのPETフィルム上に乾燥厚みが6μmとなるようにバーコーターで塗布し乾燥した。
次いで光学活性層が形成されたPETフィルムを実施例2で用いたものと同様のアクリル板に貼り付けた。このアクリル板は紫外線カット剤を含有する組成のものである。そのため色素Cに対する励起光に対しては励起光を遮蔽する励起光遮蔽層として機能する。
光学活性層が形成されたアクリル板を光学活性層が内側になるようにして光学活性層が形成されていない別のアクリル板と対向させ、板の2つの長辺及び1つの短辺に、導光層に向いた面にアルミニウムよりなる反射膜が形成された2cm角の角棒を設置することにより、2cmの空隙よりなる導光層を形成した。これにより基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板、空気から形成される導光層、PETフィルム、色素Cを含有する光学活性層、光学活性層の基材であるPETフィルム、接着層、基板を兼用する励起光遮蔽層となるアクリル板より形成される積層体を形成した。積層体の外観は完全な透明であった。
この積層体を用いて導光層の周囲3辺部にスペーサーが設けられ、1辺部が開口した厚み2cmの空隙よりなる導光層を有する板状光学部材とし、この板状光学部材の側面開口部の一方に密接してUV蛍光灯Aを、実施例2と同様に、開口部と平行になるように設置して光学特性制御装置を作製した。
積層体は通常の屋内において無色透明であった。晴天時の屋外日陰においても無色透明であり、晴天時の太陽光直射時は微かに着色した。
次いで屋内においてUV蛍光灯を点灯することによって積層体の光学特性の変化を調べた。非点灯時は無色透明であったが、UV蛍光灯を点灯すると直後から部材が青紫色に変化し始め、3分程で安定した濃さになり積層体の透過性が低下した。UV蛍光灯を消灯しても着色は残存したが、室内照明下で徐々に退色した。点灯と消灯を多数回繰り返しても特性の変化はなかった。また、励起光は積層体の外側では検出されなかった。非点灯時と点灯時の積層体の透過スペクトルを図17に示す。また、表2に積層体の光源からの距離20cmでの非点灯時と点灯時の波長578nmにおける透過率及びその差を示す。
本実施例より、窓として機能しうる面を遮ることなく、積層体の導光層中を面内方向に励起光を進行させることによって、光学特性を無色透明から着色状態に変化させることが可能であることが示された。これは色素を変えても実現可能であり、色素の種類により着色濃度や色合いを変えることもできることが示された。本実施例における色素は熱戻りが殆どないことから、励起光を導入して着色させればその後励起光を切ってもかなりの時間着色状態を維持させることが可能であるため、エネルギーを多量に消費せず遮蔽機能を発揮することが可能となる。
対向させるアクリル板も光学活性層を形成したものを使用した以外は実施例4と同様にして光学特性制御装置を作製した。積層体の積層構成は、基材を兼用する励起層遮蔽層となるアクリル板、接着層、光学活性層の基材となるPETフィルム、色素Cを含有する光学活性層、空気から形成される導光層、色素Cを含有する光学活性層、光学活性層の基材となるPETフィルム、接着層、基材を兼用する励起層遮蔽層となるアクリル板となった。
このようにして得られた積層体を、実施例4と同様にしてUV蛍光灯を設置することにより、光学特性制御装置を作製して評価した。UV蛍光灯を点灯することによって光学特性の変化を調べたところ、着色濃度が増加していることが確認された。表2に積層体の光源からの距離20cmでの非点灯時と点灯時の波長578nmにおける透過率及びその差を示す。
実施例4において、光学活性層を有するアクリル板1枚だけを使用し、導光層を形成しなかった以外は実施例4と同様にして積層体を作製した。これにより色素Cを含有する光学活性層、光学活性層の基材でなるPETフィルム、接着層、基材を兼用する励起層遮蔽層となるアクリル板より形成される積層体が形成された。このようにして得られた積層体を実施例4と同様にしてUV蛍光灯を設置することにより光学特性制御装置を作製して評価した。この光学特性制御装置は励起光が導光層中を面内方向に進行するのではなく、積層体の面外斜め方向で励起光遮蔽層を有しない側から励起光が光学活性層に照射されるものである。
積層体の板状光学部材部分は通常の屋内において光源非点灯時は無色透明であった。晴天時の屋外日陰、太陽光直射時においては明瞭な着色が見られた。
次いで屋内においてUV蛍光灯を点灯することによって積層体の光学特性の変化を調べたところ、照射面において青紫色に着色することが確認された。ただし、蛍光灯から距離が遠い部分の着色濃度は実施例4のものと比較して低かった。また装置周辺では光源からの直接光、積層体表面からの反射光によりUV光が検出され保護手段が必要であった。表2に積層体の光源からの距離20cmでの非点灯時と点灯時の波長578nmにおける透過率及びその差を示す。
(1)光学活性システム
光学活性システムとして実施例2で用いた有機のフォトクロミック色素である市販の色素Bを用いた。
色素Bを2重量部と、ポリエチレンビニルアセテート98重量部をトルエン400重量部に溶解して、光学活性層作製用の塗液を調製した。基板として6cm角、厚み1cmの含水石英(シグマ光機製)を6cm角の上下板面は光学研磨し、1対の対向する側面は透明性が得られるまで研磨し、残りの側面はスリガラス面としたものを用いた。この基板の研磨した側面からは反対側が視認できた。スリガラス面である側面側は透過視認性はなかった。上記の塗液をこの石英板の6cm角の板面の一方の面に乾燥厚みが20μmとなるようにバーコーターで塗布し乾燥した。
石英板の板面に垂直方向(厚み方向)の透過スペクトル及び面内方向の透過スペクトルを図18に示す。
上記の石英板を用いて光学活性層、基板を兼用する導光層となる石英板より形成される積層体とした。この積層体の積層面に垂直方向の外観は完全な透明であった。
この積層体を用いて板状光学部材とした。この板状光学部材は1対の対向側面が制御光を積層体内へ導入するための側面処理として研磨されている板状光学部材である。板状光学部材の研磨した側面にUVファイバーランプ(キセノン光源)を、スリットを間において中心入射角が10度、励起光の進行方向が側面から光学活性層へ直射方向となるように設置し、UVファイバーランプが設置された側面と対向する研磨側面に平行してアルミニウムの反射膜を形成した板材を設置することにより光学特性制御装置を作製した。用いたUVファイバーランプは中心波長365nm、その強度は距離10cmにおいて1mW/cm2である。UVファイバーランプの分光分布を図19に、また、装置の概要を断面図として図20に示す。
図20において、70は石英板であり、70A,70Bは研磨側面、71は光学活性層、72はスリット、73はUVファイバーランプ、74は光源とその電源である。
積層体は通常の屋内において無色透明であった。太陽光下においては赤紫色に着色した。
次いで屋内においてUVファイバーランプを点灯することによって、積層体の光学特性の変化を調べた。非点灯時は無色透明であったが、UVファイバーランプを点灯すると速やかに部材が赤紫色透明に変化した。表3に光源が非点灯時と点灯時における積層体の積層面に垂直方向の波長540nmにおける透過率及びその差を示す。UVファイバーランプを消灯すると2分以内に元の無色透明状態に完全に復帰した。点灯と消灯を多数回繰り返しても特性の変化はなかった。
実施例6と同じ積層体を使用し、光学特性制御装置の蛍光灯の設置場所を板状光学部材の研磨した側面に平行に、スリットを間において中心入射角が10度、励起光の進行方向が側面から光学活性層へ反対方向となるように設置した。また、反射板は設置しなかった。それ以外は実施例6と同様にして光学特性制御装置を作製し評価を行った。装置の概要を断面図として図21に示す。図21において、図20におけると同一機能を奏する部材には、同一符号を付してある。
このものは、非点灯時は無色透明であったが、UVファイバーランプを点灯すると速やかに部材が赤紫色透明に変化した。UVファイバーランプを消灯すると2分以内に元の無色透明状態に完全に復帰した。点灯と消灯を多数回繰り返しても特性の変化はなかった。表3に光源が非点灯時と点灯時における積層体の積層面に垂直方向の波長540nmにおける透過率及びその差を示す。
実施例6において、光学活性層を石英板の両板面に形成し光学活性層を2層とした。これにより光学活性層、基材を兼用する導光層となる石英板、光学活性層より形成される積層体とした。この積層体を用いて実施例6と同様にして光学特性制御装置を作製し評価を行った。
このものは非点灯時は無色透明であったが、UVファイバーランプを点灯すると速やかに部材が赤紫色透明に変化した。表3に光源が非点灯時と点灯時における積層体の積層面に垂直方向の波長540nmにおける透過率及びその差を示す。UVファイバーランプを消灯すると2分以内に元の無色透明状態に完全に復帰した。点灯と消灯を多数回繰り返しても特性の変化はなかった。
実施例6において、光学活性層を石英板の両板面に形成し光学活性層を2層とした。そして光学活性層の上に励起光遮蔽層として市販のガラス保護フィルム(3M社製、スコッチティントピュアカット80)を貼り付けた。このフィルムはUVカット機能と熱線カット機能を有するほぼ透明のフィルムである。これによりUVカット層を兼用する励起光遮蔽層、粘着層、光学活性層、基材を兼用する導光層となる石英板、光学活性層、粘着層、UVカット層を兼用する励起光遮蔽層よりなる積層体を形成した。用いたガラス保護フィルムの透過スペクトルを図22に示す。積層体の外観は完全な透明であった。
この積層体を用いて、板状光学部材の蛍光灯が設置された以外の側面に平行してアルミニウムの反射膜を形成した板材を設置し、磨りガラス面は黒色のビニールテープで被覆し、それ以外は実施例6と同様にして光学特性制御装置を作製し評価を行った。
この光学特性制御装置の板状光学部材は太陽光下でも微かに着色する程度であった。次いでUVファイバーランプを点灯することによって板状光学部材の光学特性の変化を調べたところ、非点灯時は無色透明であったが、UVファイバーランプを点灯すると速やかに部材が赤紫色透明に変化した。
実施例7より導入光が光学活性層を直射しなくとも導光層の反対面で反射することにより光学活性層に到達しており、導光層内を反射で伝搬していることが示された。
実施例8より光学活性層を導光層の両面に形成することにより積層体の光学特性変化が大きくなることが示された。
実施例9より励起光遮蔽層を設ければ環境光に左右されず光学特性を能動的に制御できることが示された。
(1)光学活性システム
光学活性システムとして実施例2で用いた有機のフォトクロミック色素である市販の色素Bを用いた。
色素Bを2重量部と、ポリエチレンビニルアセテート98重量部をトルエン400重量部に溶解して、光学活性層作製用の塗液を調製した。これを長さ32cm、幅24cm、3mm厚みのPET板上に乾燥厚みが20μmとなるようにバーコーターで塗布し乾燥した。PET板は予め塗布面の反対面にUVカットフィルム(キング社製)を貼り付け処理したものを用いた。PET板は、フィルムを構成するポリエチレンテレフタレートがベンゼン環を骨格中に含有し、かつPET板の厚みが2mmあるため紫外線領域において一定の吸収を示す。そのため色素Bに対する励起光に対しては励起光を部分的に遮蔽する励起光遮蔽層として機能する。PET板、UVカットフィルム貼り付けPET板の透過スペクトルを図23に示す。
同じようにして形成された光学活性層を有するPET板を2枚、光学活性層が内側になるようにして対向させ、板の3辺部に1cm角のアクリル角棒を設置することにより、厚み1cmの空隙よりなる導光層を形成した。アクリル角棒の導光層側は予めアルミニウム反射膜をスパッタリングにより製膜した。これにより励起光遮蔽層、接着層、基板及び励起光遮蔽層となるPET板、光学活性層、空気から形成される導光層、光学活性層、基板及び励起光遮蔽層となるPET板、接着層、励起層遮蔽層より形成される積層体を形成した。
この積層体を用いて導光層の周囲3辺部に内面に反射膜を有するスペーサーが設けられ、励起光が導入される開口部となっている1辺には制御光を積層体内へ導入するための側面処理として直径1cmの石英棒を設置された板状光学部材とした。板状光学部材の石英棒が設置された部分に密接してUV光源を設置した。UV光源は長さ20cm、太さ3mmの冷陰極UVランプ(KLV社製、TBB30−200)を、内径5mm角の1辺が開いた矩形で内部に反射膜が形成されたランプハウス内にシリコンチューブをスペーサーとして用いることにより取り付けたものを使用した。UVランプと石英棒は平行しており最短距離は1mmである。UVランプはシリコン被覆導線、コネクターを介して、蛍光灯点灯用インバーターに接続した。インバーターはスイッチを介してAC−DC電源に接続した。UV冷陰極ランプの波長域は350nmから390nmであり中心波長は365nm、その強度は距離1cmにおいて1.3mW/cm2である。ランプが設置されている部分の板状光学部材の側面、上面は遮蔽体を取り付けた。冷陰極UVランプの分光分布を図24に示す。
このようにして得られた光学特性制御装置の概要を断面図として図25に示す。図25において、80A,80Bは基板(光学活性層,UVカットフィルム付きPET板)、81はアクリル角棒のスペーサー(反射膜付き)、82は石英丸棒、83はUV光源である。
この積層体は通常の屋内において無色透明であった。また、太陽光下においても透明性を維持した。
次いでUV蛍光灯を点灯することによって積層体の光学特性の変化を調べた。非点灯時は無色透明であったが、蛍光灯を点灯すると直後から部材が赤紫色透明に変化し始め、1分程で安定した濃さになり部材の透過性が低下した。蛍光灯を消灯すると2分程で元の無色透明状態に完全に復帰した。点灯と消灯を多数回繰り返しても特性の変化はなかった。また、励起光は積層体の外側では検出されなかった。図26に積層体の波長540nmでの非点灯時と点灯時の透過率の差を光源からの距離の関数として示す。
このように、本発明は能動的に遮光・調光・遮熱・隠蔽・表示が必要とされる幅広い応用分野においてその効果が期待でき、その産業上の使用可能性は非常に有用かつ広範なものである。
2A,2B 光学活性層
3A,3B 基板
4A,4B 励起光遮蔽層
5 ハードコート層
6 UVカット層
10 励起光光源
50 板状光学部材
51 UV蛍光灯
52 反射板
53 電源ボックス
61A,61B アクリル板
62 スペーサー
63 反射板
64 UV蛍光灯
70 石英板
70A,70B 研磨側面
71 光学活性層
72 スリット
73 UVファイバーランプ
74 光源、電源
80A,80B 基板
81 スペーサー(反射膜付き)
82 石英丸棒
83 UV光源
Claims (13)
- 励起光により光学特性が変化する活性システムを有する光学活性層と、層の面内方向において励起光透過性を有する導光層とを含んで形成される積層体。
- 励起光により光学特性が変化し、復帰光により励起光によって変化した状態から初期状態に復帰させることが可能な活性システムを有する光学活性層と、層の面内方向において復帰光透過性を有する導光層を含んで形成される積層体。
- 導光層と光学活性層を含んでなる層群の少なくとも片側に励起光を少なくとも部分的に遮蔽する励起光遮蔽層を含む層を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
- 導光層が空気層であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積層体。
- 導光層の両側に光学活性層が存在する請求項1ないし4のいずれかに記載の積層体。
- 導光層が光学活性層と隣接してなる請求項1ないし5のいずれかに記載の積層体。
- 光学活性層に対して導光層の反対側に励起光遮蔽層を設けたことを特徴とする請求項5又は6に記載の積層体。
- 励起光により光学特性が変化する活性システムの光学特性の変化により制御される被制御光を恒常的に減光する層を有していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の積層体。
- 励起光が可視光又は近赤外光であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の積層体。
- 導光層内を層の面内方向に進行する励起光が、導光層の界面において内部全反射若しくは反射率50%以上の外部反射を生じることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の積層体。
- 積層体の主たる構造がプラスチックを主として形成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の積層体。
- 請求項1ないし11のいずれかに記載の積層体において、励起光を導光層内の層の面内方向に進行させることにより光学活性層中の光学活性システムの光学特性を変化させる光学特性制御方法。
- 請求項1ないし11のいずれかに記載の積層体を用いてなる光の透過率が可変の透過性部材。
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