JP2009050726A - 局所血流動態に関するインデックスを演算する方法及び装置 - Google Patents

局所血流動態に関するインデックスを演算する方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】CBPスタディにより得られるマップの診断効率を向上すること。
【解決手段】造影剤を注入された被検体の特定部位に関する連続的な複数の画像から、特定部位内の動脈に関する第1時間濃度曲線と、特定部位内の組織に関する第2時間濃度曲線を作成し、第2時間濃度曲線各々に対して最もフィッティングする第1時間濃度曲線の一を選択することにより、組織各々の局所血流動態が従属する可能性が最も高い動脈の一を特定し、組織ごとに特定された動脈の一に基づいて動脈の従属域を区別するマップが作成される。
【選択図】図6

Description

本発明は、脳組織等の局所血流動態に関するインデックスの演算方法及び演算装置に関する。
X線CT検査では、単純CT像から形態情報を、また造影CTによるダイナミックスキャンで病巣の周りの血流の動態情報をそれぞれ視覚情報として得ることができる。近年、マルチスライスCTによる高速スキャンが可能になり益々造影CTのダイナミックスキャンの活用範囲が拡大していくものと考えられる。
その一つの方向性として、脳組織内の毛細血管の血流動態に関するインデックスを演算するためのCBPスタディと呼ばれる方法がある。CBPスタディでは、組織内の局所的な血流動態、つまり局所組織内の毛細血管を通過する血流の動態を定量的に表すCBP、CBV、MTT、Err等のインデックスを求め、またこれらインデックスのマップを出力する。
CBPは、脳組織の毛細血管内の単位体積及び単位時間あたりの血流量[ml/100ml/min]を表し、CBVは、脳組織内の単位体積あたりの血液量[ml/100ml]、MTTは毛細血管の血液平均通過時間[秒]を表し、Errは伝達関数を近似する際の残差の総和又は残差の2乗和の平方根を表している。
これら脳組織中の毛細血管の血流動態を定量的に表しているインデックスCBP、CBV、MTTは、脳虚血卒中が発症してからの経過時間情報ととともに、虚血性脳血管障害の病体鑑別、毛細血管の拡大の有無、血流速などの評価のための有益な情報として期待されている。例えば、一般に虚血性の脳血管障害では、提供する動脈の血圧が低下し、その血管内の血流速の低下が見られる。その結果、CBVは一定でも、MTTが延長し、CBPは低下する。また、脳梗塞超急性期では、血圧低下による血流速の低下を補うために、毛細血管を拡張させ、血流速を増加させることにより、血流量CBPの低下を抑制しようとする働き(オートレギュレーション)がある。従って、MTTが延長することにより、CBPが低下しても、CBVが増加していれば、毛細血管の再開通の可能性を示唆する情報となる。
CBPスタディではトレーサーとして脳血管透過性を持たない造影剤、例えばヨード造影剤が使用される。ヨード造影剤は例えばインジェクターにより肘静脈から注入される。インジェクターにより静注されたヨード造影剤は、心臓、肺を経由して、脳動脈へ流れ込む。そして、造影剤は、脳動脈から、脳組織内の毛細血管を経て、脳静脈へと流れ出ていく。このとき、ヨード造影剤は正常な脳組織内の毛細血管では血管外へ漏れ出ることなく通過する。図1はこの様子を模式的に示している。
造影剤の通過の様子をダイナミックCTで撮影して、その連続画像から、脳動脈上の画素の時間濃度曲線Ca(t)、脳組織(毛細血管)上の画素の時間濃度曲線Ci(t)、脳静脈上の画素の時間濃度曲線Csss(t)をそれぞれ測定する。
ここで、CBPスタディでは、脳動脈の濃度時間曲線Ca(t)と脳組織の濃度時間曲線Ci(t)との間で成り立つ理想的な関係を解析モデルとしている。脳組織に入る直前の血管から造影剤を注入した場合、脳組織の単位体積(1画素)内の時間濃度曲線は立ち上がりが垂直で、しばらくは一定の値を維持し、その後、急勾配で立ち下がる形になる。これを矩形関数で近似する(box−MTF法:box−Modulation Transfer Function method)。
つまり、脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を入力関数、脳組織の時間濃度曲線Ci(t)を出力関数として、入力関数と出力関数との間の伝達関数を矩形関数で近似する。伝達関数は、トレーサーが毛細血管を通過する過程を表している。
CBPスタディの問題は次の通りである。
上記CBP、CBV、MTT、Errの各インデックスは、各画素(x,y,z)ごとに算出されるので、その値を画素値とする画像を構成することができ、このような画像をマップと呼ぶ。たとえばR種のインデックスが得られる場合、R枚のマップが構成できる。このようにして作成されたR枚のマップは、各画素がベクトル値をとる1枚のマップ(ベクトル値マップ)と見なすことができる。すなわち、次のように表せる。
(x,y,z)=<Pk,1(x,y,z), Pk,2(x,y,z), ... , Pk,R(x,y,z)>
例えばCBPスタディでは、典型的には、R=4とし、Pk,1(x,y,z)はCBPの値を、Pk,2(x,y,z)はCBVの値を、Pk,3(x,y,z)はMTTの値を、Pk,4(x,y,z)は残差Errの値を表すように構成できる。
このようなベクトル値マップVは、参照した脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)ごとに作成される。例えば、左右の中大脳動脈、前大脳動脈、後大脳動脈から脳動脈の時間濃度曲線を得たとするとK=6、さらに病変部周辺にある動脈数カ所から脳動脈の時間濃度曲線を得たとすると、K=10〜15程度になる。
このように脳動脈の時間濃度曲線Ca(t) (k=1,2,・・・,K)の数Kが大きい場合に、結果として得られるベクトル値マップV(k=1,2,・・・,K)の枚数が多いために、観察するのに不便である。すなわち通常のグレースケール画像あるいはカラースケール画像として観察しようとすれば、一つのマップがR枚の画像から構成され、これがK組あるのだから、合計K×R枚の画像を比較しなくてはならない。さらに、どの部位がどの動脈によって栄養されているのかは必ずしも自明でなく、解剖学的知識を用いて、各部位ごとにどのマップV(k=1,2,・・・,K)を観察するべきかを判断しなくてはならない。特に脳梗塞等の脳血管障害を生じている症例においては、組織を支配(depend)しているのがどの動脈かは、必ずしも解剖学的知識とは一致せず、異常な支配がしばしば見られる。これらの問題によって、ベクトル値マップの読影が難しいという問題点がある。
また、マルチスライスCT、あるいはボリュームCTによって撮影されたダイナミックCT画像においては、さらに多数の動脈が観察される。これは同じ動脈が複数のスライス中で観察できるからである。これらの動脈の断層像全部について脳動脈の時間濃度曲線を作ると非常に数が多くなる。
また、CBPスタディには次のような問題もある。肘静脈に、ボーラスインジェクションを行った場合、CTで観察される造影効果は、血液のCT値(造影されない時数十HU)が最大数百HUに上昇する。しかし、脳血流を有効に解析するためには造影効果を高々数パーセント以内の誤差で計測できなくてはならない。すなわち、血液の造影効果(CT値の上昇)が20〜40HU程度であってもこれを検出できる必要がある。
単位体積の脳組織中に占める毛細血管の体積比率は高々3〜4パーセント程度である。従って、血液のCT値が20〜40HU上昇した場合、脳組織の平均CT値は、0.5〜1.5HU程度上昇するに過ぎない。
CT画像ではノイズの標準偏差(sd)は、照射X線量の平方根に反比例し、典型的な照射条件においてsdは例えば5〜10HU程度である。従って、0.5HUの造影効果を検出するためには、X線量を10〜100倍程度増やさねばならず、これは患者の被曝線量が著しく大きくなることを意味する。また、ダイナミックCTにおいては同一箇所を数十回に渡って撮影するのであるから、撮影箇所に於ける皮膚の被曝は通常の数百〜数千倍に至ることになり、炎症・脱毛・壊死・発癌等の放射線障害を考慮すると、現実的ではない。
むしろダイナミックCTにおいてはX線量を通常の撮影よりも減らさなくてはならない。一般に、1スキャン当たりのX線量を例えば通常の1/2〜1/10程度に減じることが行われる。これによって、通常の1回のCT撮影に比べて数倍〜20倍程度のX線被曝に留めることができ、これは放射線障害を生じない程度である。しかし、このようなX線量を低減したCT画像において、sdは例えば15〜20HU程度であり、0.5〜1.5HU程度の造影効果は到底検出できない。
そこで、画像のノイズ成分を抑制することが、CBPスタディでは重要な課題の1つである。そのため、1)スライス厚を厚くする、2)近隣画素を平均化する、3)画像を平滑化処理に通す、が一般的に取りうる方策である。しかしこれらには以下のような問題点がある。
“スライス厚を厚くする”ために、撮影時にスライス厚を厚く設定するか、連続する薄いスライスの画像数枚を平均して厚いスライスの画像を生成する。スライス厚に比例して画素当たりのX線量が増えるため、画像ノイズのsdは、スライス厚の平方根に反比例して小さくなる。しかしながら、スライス厚を厚くすることによって、パーシャルボリューム効果が生じ、すなわち1個の画素が、一様な脳組織を表しておらず、複数の組織(白質、灰白質、血管、脳溝、脳室など)の平均的なCT値を表すことになる確率が大きくなり、解析結果として得られる脳血流量等の値の誤差が大きくなる。
特に血管の影響を含む画素は、正常な解析が不可能である。このためスライス厚を厚くすると、不正確で、しかも解析不可能な画素を沢山含む非常に品質の悪い結果しか得られなくなる。
“近隣画素を平均化する”では、空間解像度が或る程度犠牲になる。例えば一辺がn個の画素からなる正方形の領域(n×n個の画素を含む)の平均値を求め、これをその正方形全体の平均CT値とし、このような正方形を画素とみなし、これを敷き詰めて「画素束ね画像」を構成する。もとの画像が例えば一辺512個の画素からなる(512×512個の画素を含む)とし、n=2とすれば、「画素束ね画像」は一辺(512/2)個の画素から構成される(256×256個の画素を含む)画像となる。この方法によれば、ノイズは、nに反比例して減少させることが可能である。さらに、解析対象となる画素の数が1/(n×n)倍になるため、計算量も小さくなるという利点がある。
しかしながら、nを大きくすると、空間解像度が低下し、それに伴ってパーシャルボリューム効果が生じ、すなわち1個の画素が、一様な脳組織を表して居らず、複数の組織(白質、灰白質、血管、脳溝、脳室など)の平均的なCT値を表すことになる確率が大きくなり、解析結果として得られる脳血流量等の値の誤差が大きくなる。特に血管の影響を含む画素は、正常な解析が不可能である。このため、nを大きくすると、空間解像度が低く、不正確で、しかも解析不可能な画素を沢山含む非常に品質の悪い結果しか得られなくなる。このため、実用上は、n=2〜4程度が限界であり、これだけでは十分なノイズ抑制効果が得られない。
また、画像の平滑化、すなわち1枚のCT画像ごとに、2次元の空間フィルタを作用させて平滑化を行う方法を用いると、十分なノイズ抑制効果と引き換えに、空間解像度が著しく損なわれる。特に、太い血管(動脈・静脈)が存在する箇所に近接している画素には、太い血管において生じた造影効果の影響が及ぶことになり、これらの画素の時間濃度曲線は正しくなくなってしまう。従ってごく軽度の平滑化を行うに留めねばならない。ここで、ごく軽度の平滑化を行うに際して重要なのは、画像フィルタのサイズをごく小さくする事、例えば、3×3程度に設定することである。3×3の平滑化フィルタを用いて最大の画像ノイズ抑制効果を得ようとすると、その上限は、ノイズsdを1/3に低減することであり、それ以上にノイズを抑制するのは不可能である。従って十分なノイズ抑制効果は得られない。
一方、時間的平滑化、すなわち各画素について得られた時間濃度曲線を曲線とみなして、これを1次元フィルターで平滑化する手法を用いると、十分なノイズ抑制効果を得ようとすると時間分解能を著しく損なう。元来、CBPスタディでダイナミックCTを行うのは短いサンプリング周期で撮影を行うことによって高い時間分解能を得て、時間濃度曲線の僅かで速い変化(特に生理学的構造に起因する平滑化効果がどの程度生じているか)を精密に計測することが目的であるから、時間的平滑化は全く適当でない。
本発明の目的は、CBPスタディにより得られるマップの診断効率を向上することにある。
本発明の第1局面は、造影剤を注入された被検体の特定部位に関する連続的な複数の画像から、前記特定部位内の動脈に関する第1時間濃度曲線と、前記特定部位内の組織に関する第2時間濃度曲線を作成し、前記第2時間濃度曲線各々に対して最もフィッティングする前記第1時間濃度曲線の一を選択することにより、前記組織各々の局所血流動態が従属する可能性が最も高い前記動脈の一を特定し、前記組織ごとに特定された動脈の一に基づいて前記動脈の従属域を区別するマップを作成することを特徴とする方法を提供する。
本発明の第2局面は、造影剤を注入された被検体の特定部位に関する連続的な複数の画像から、前記特定部位内の動脈に関する第1時間濃度曲線と、前記特定部位内の組織に関する第2時間濃度曲線を作成する時間濃度曲線作成部と、前記第2時間濃度曲線各々に対して最もフィッティングする前記第1時間濃度曲線の一を選択することにより、前記組織各々が従属する可能性が最も高い前記動脈の一を特定する手段と、前記組織ごとに特定された動脈の一に基づいて前記動脈の従属域を区別するマップを作成するマップ作成部とを具備することを特徴とする装置を提供する。
本発明によれば、CBPスタディにより得られるマップの診断効率を向上することができる。
以下、図面を参照して本発明を好ましい実施形態により説明する。
本実施形態の特徴としては、CBPスタディにより生成される多くのインデックスマップを1枚に合成することにより、CBPスタディの診断効率を向上すること、さらにコヒーレントフィルタを用いることにより、ノイズの低減と、空間及び時間分解能の低下抑制とを両立することによりインデックスの精度を向上することにある。
なお、本実施形態は、被検体の特定部位に関する時間的に連続する複数枚の画像から、局所の血流動態を表すインデックスを計算する方法及び装置に関するものであり、対象となる複数の画像を発生するモダリティは、特定装置に限定されることは無く、例えば、X線コンピュータトモグラフィ装置(X線CT装置)、シングルフォトンエミッショントモグラフィ装置(SPECT)、ポジトロンエミッショントモグラフィ装置(PET)、磁気共鳴イメージング装置(MRI)のいずれでも良い。なお、ここでは、X線CT装置を例に説明する。
(装置構成)
図2には、本実施形態に係るX線CT装置の構成を示している。X線CT装置は、ガントリ部10とコンピュータ装置20とから構成される。ガントリ部10は、X線管101、高電圧発生装置101a、X線検出器102、データ収集部103(DAS;Data Aquisition System)とを有する。X線管101とX線検出器102とは、高速で且つ連続的に回転する図示しない回転リングに被検体Pを挟んで互いに対向する位置に搭載される。
コンピュータ装置20は、画像処理装置30と、画像表示部107と、入力部109とから構成される。画像処理装置30は、制御部108を中枢として、データ収集部103から出力される生データを補正処理等を経て投影データに変換する前処理部104、投影データを記憶するメモリ部105、投影データからCT画像データを再構成する画像再構成部106、CT画像データを保管する記憶装置10M、CT画像データに対してコヒーレントフィルタ処理を実行するコヒーレントフィルタ処理部110、及びコヒーレントフィルタ処理を受けたCT画像データを使ってCBPスタディ処理を実行するCBPスタディ処理部120とから構成される。
コヒーレントフィルタ処理部110は、分散値推定部111、重み関数演算部112、画素値演算部(コヒーレントフィルタ部)113とから構成される。これら分散値推定部111、重み関数演算部112、画素値演算部113の機能については後述するコヒーレントフィルタ処理の詳細説明の中で説明する。
CBPスタディ処理部120は、ROI設定支援部121、時間濃度曲線作成部122、脳動脈時間濃度曲線補正部123、MTF処理部124、インデックス計算部125、マップ作成部126、マップ合成部127から構成される。
ROI設定支援部121は、CT画像上に脳動脈や脳静脈に対して関心領域ROIを設定する作業を支援するための情報(脳動脈ROIのためのATマップ、PTマップ、TTマップ等)を作成し提供する。
なお、脳動脈ROIは、例えば前大脳動脈(ACA)、中大脳動脈(MCA)、後大脳動脈(PCA)を対象として、左脳、右脳それぞれの領域に個別に設定される。従って、この例では左右に3個ずつ、合計6個の脳動脈ROIが設定される。また、脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を補正するために、他の時間濃度曲線Csss(t)が利用される。この時間濃度曲線Csss(t)は、パーシャルボリュームを含まない画素が存在するのに充分に太い血管上に設定されたROIに関して作成される。Csss(t)のROIは、例えば、脳血管の中で最も太い上矢状静脈洞に設定される。
時間濃度曲線作成部122は、記憶装置10Mに記憶されているダイナミックCT画像データ(時間的に連続した複数枚の画像データ)から脳動脈、脳静脈及び脳組織(毛細血管)に関する時間濃度曲線を作成する。なお、脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)は、設定された例えば6つの脳動脈ROIに関して個々に作成される。脳静脈の時間濃度曲線Csss(t)は、上矢状静脈洞に設定された脳静脈ROIに関して作成される。また、脳組織の時間濃度曲線Ci(t)は、脳組織上の全画素を対象として画素ごとに作成される。
脳動脈時間濃度曲線補正部123は、ノイズやパーシャルボリューム効果の影響を除去するために、脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を、上矢状静脈洞の時間濃度曲線Csss(t)に基づいて補正する。この補正方法については後述する。MTF処理部124は、補正された脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)と、脳組織の時間濃度曲線Ci(t)とに基づいて、box−MTF法により、伝達関数MTFを、脳組織領域内の全画素を対象として画素ごとに計算する。
インデックス計算部125は、計算された伝達関数MTFから脳組織の血流動態を表すインデックス(CBP、CBV、MTT、Err)を、脳組織領域内の全画素を対象として画素ごと計算する。マップ作成部126は、計算されたインデックス各々のマップを、脳動脈(ACA,MCA,PCA)ごとに生成する。マップは、各スライスに関して、インデックスの種類(=4)×脳動脈の数(ACA,MCA,PCAの3つ)=12種類作成される。マルチスライスでは、そのスライス数倍の種類のマップが作成される。この膨大な枚数のマップの枚数を合成処理により減らして診断効率を向上させるためにマップ合成部127が設けられている。
以下に、コヒーレントフィルタ処理とCBPスタディ処理について順番に説明する。
コヒーレントフィルタの原理について簡単に説明すると、近傍の例えば3×3等の局所内画素を加重平均し、その加重平均値を局所中心画素の値とすることを基本として、周辺画素各々の重みを中心画素と周辺画素との間の類似度に従って変えることを特徴としたものである。ここで言う類似度とは、画素間で、解剖学的に近い組織、具体的には同じ脳動脈の支配下にある脳組織(毛細血管)どうしである可能性の度合いを示す指標であり、この類似度が高い画素に対しては高い重みを与え、逆に類似度が低い画素に対してはゼロに近い低い重みを与えることにより、ノイズ抑制を果たしながらも、空間分解能の低下を抑制することを可能としている。なお、以下では、類似度は、適宜、適合度又は危険率に言い換えられる。
本実施形態では、脳血管透過性を持たない造影剤、例えばヨード造影剤を注入(静注)された被検体の脳を撮影対象として連続的に取得した複数のCT画像(ダイナミックCT画像)を用いて、各画素の時間濃度曲線の比較により類似度を計算する。そのため類似度の確からしさは、サンプリング周波数、つまり単位時間あたりの画像枚数と、サンプリング数、つまり全画像枚数とに依存して決まる。そこでスキャン間隔を例えば0.5秒に短縮することが効果的である。
(コヒーレントフィルタ)
(コヒーレントフィルタの一般的説明)
(画素値v(x))
一般に、カメラやCTスキャナ等の撮像手段を介して取得されたデジタル画像は、複数の画素(pixel)から構成されている(あるいは、当該画像をそのような画素の集合として考えることができる。)。以下の説明では、当該画素の位置をベクトルx(すなわち座標値のベクトル)として表し、画素xが有する値(例えば濃淡を表わす数値、CT値HU)をK次元ベクトルとして表す。2次元画像の場合、画素xとは画像上における位置を表す座標値(x、y)を示す2次元ベクトルである。ある画素xについて定義される「画素値v(x)」を、
v(x)=(v(x),v(x),…,v(x)) … (1)
と表記する。なお、この(1)式の右辺における、v(x),v(x),…,v(x)それぞれを、以下では、画素xについての「スカラー値」と呼ぶことにする。
例えば、画像が「カラー画像」であるとき、各画素が、それぞれ三原色(赤,緑,青)の明るさ(スカラー値)を有することから、これら各画素の画素値v(x)は、その次元がK=3のベクトルであると考えることができる。すなわち上記(1)式の右辺各項添え字が例えば「赤」,「緑」及び「青」に対応付けられる。また例えば、画像がK枚の静止画像から構成される動画像であって、第n番目の画像の各画素はスカラー値v(x)を持つという場合には、K枚の静止画像上、共通の同一点(同一座標)の画素xの持つ画素値(スカラー値)を並べて構成される、K次元ベクトル値v(x)=(v(x),v(x),…,v(x)が以下で述べるベクトル値としての画素値である。
(類似度(適合度又は危険率)と重み)
上記画素xに対して、適当な周辺画素の集合N(x)を考える(この集合N(x)は画素xを含んでよい。)。次に、中心画素xに対するN(x)の要素である周辺画素yの重みw(p(x,y))を考える。この重みw(p(x,y))は、次に記す性質を有する。
(類似度p(x,y))
まず、重みw(p(x,y))の値を左右する関数p(x,y)の意味について述べる。このp(x,y)は、本実施形態にいう「類似度」を定量化する手段であり、一般的にいえば、中心画素xと周辺画素y∈N(x)とが、何らかの意味でどの程度類似しているか(例えば、両画素x及びyの上記画素値v(x)及びv(y)間に認められる統計的差異の程度)を示す具体的数値を与える。
より具体的には例えば、p(x,y)が大きな値を示すときには、画素xと画素yとの間に、「統計的に有意な差がなく(つまり類似度が高い)」、類似である可能性が高いと判断され、p(x,y)が小さい値を示すときには、画素xと画素yとの間に、「統計的に有意な差があり(つまり類似度が低い)」、の如く判断されるということである。
ところで、画素値v(x)及びv(y)(ないしスカラー値v(x),…,v(x)及びv(y),…,v(y))には、必ずノイズが含まれている。例えば、画像がCCD撮像素子により取得された場合を考えると、それを構成する各画素については、素子内の暗電流や外界から入射する光量の不規則変動に起因するノイズ等が存在する。
このようなノイズは、一般に、全画素についてまちまちな値をとるため、画素xと画素yとが、仮に(外界における)同一物体を反映したものである場合であっても、実際に観測される画像上では、同一の値を持たないことがある。このことを逆にいえば、いずれも同一物体を反映した画素xと画素yにおいて、それぞれのノイズを除去した状況を仮に想定すれば、これらは該同一物体を表象するものとして画像上に表示され(=そのように認識され)るし、また、両者は本来同一の(あるいはごく近い)画素値を有する。
そこで、上述したノイズの性質を踏まえ、上記のp(x,y)に関し、統計的検定法でよく知られている「帰無仮説」の概念を用いると、このp(x,y)については、具体的に次のように言うことができる。すなわち、帰無仮説H「画素xと画素yとはそれぞれのノイズを除去した場合に同一の画素値を有する」言いかえれば「v(x)=v(y)、ただし、両画素のノイズに起因する差異を除く」を立てる(つまり、このような命題が成立する場合、「両画素x及びyとの間の類似度が高い(適合度が大きい)」と考える。)と、関数p(x,y)は、この仮説Hを棄却する場合の危険率(あるいは、有意水準)として構成できる(この場合、p(x,y)は、その値域が[0,1]であるような関数として定義される(p(x,y)∈[0,1]))。
したがって、危険率p(x,y)が大きい場合、すなわち棄却が誤りである危険性が大きい場合には上記仮説Hを満たす可能性が高いといえ、逆に小さい場合、すなわち棄却が誤りである危険性が小さい場合には仮説Hを満たさない可能性が高いということができる(なお、統計的検定における周知事項ではあるが、仮説Hが「棄却」されないといっても、それが「真」であることを意味するわけではない。この場合、仮説Hが示す命題が、否定し得ないことを意味するに過ぎない)。
(重みw(p(x,y)))
さて、重みw(p(x,y))は、その表され方から明らかな通り、上記したような危険率p(x,y)の関数(より一般には、適合度の関数(適合度をρ(x,y)とすれば、w(ρ(x,y))となるように構成できる)であり、また、この重みw(p(x,y))を求めるため、x及びyの組み合わせそれぞれについて求められた危険率p(x,y)に作用させる重み関数wは、一般的にいうと、上記「棄却」を具現化する作用を有するものである。具体的には、危険率p(x,y)が大きい場合には重み関数wの値、すなわち重みw(p(x,y))が大きな正の値をとり、その逆の場合には小さな正の値(又は“0”)をとる、というように調整されている(重み関数wの具体的形式については後述する。)。つまり、重みw(p(x,y))は、画素xと画素yとが、上記仮説Hに示される命題を満たすらしい場合には、大きい値をとり、その逆の場合には小さい値をとる。一例として特に、wのとりうる値が”0”かまたは”0”でない一定値の2通りしかないように構成してもよい。
なお、以上までに述べた仮説H、危険率p(x,y)、重みw(p(x,y))間の関係をまとめると、帰無仮説Hが正しい可能性が高いとき、類似度pも高くなり、その画素に与える重みwを高くし、一方、帰無仮説Hが正しい可能性が低いとき、類似度pも低くなり、その画素に与える重みwを低くする。このように加重平均値への寄与度(重み)を類似度に応じて変えることにより、分解能の低下を抑えながら、ノイズを効果的に抑制することが可能となる。また、重み関数w(t)は、より一般に、「t∈[0,1]で定義される非負の単調増加関数」ということができ、また、該w(t)の満たすべき性質は、少なくともそのようであればよい。
(コヒーレントフィルタ処理)
以上までの説明により、「コヒーレントフィルタ」は次のように導かれる。すなわちまず、画像を構成するある画素xに対し、集合N(x)の要素たる画素yのすべてについて上記した重みw(p(x,y))を計算する。次に、これら複数の重みw(p(x,y))を用いて、当該画素xを構成する新たなスカラー値v´(x)を、以下の(2)式で計算する。すなわち、
Figure 2009050726
ただし、k=1,2,…,Kである。そして、この式で求められたv´(x)を用いて、当該画素xの変換後の画素値(新たな画素値)v´(x)を、
v´(x)=(v´(x),v´(x),…,v´(x)) … (3)
として構成する。
ここに、上記(2)式で表される、画素値v(y)=(v(y),v(y),…,v(y))(y=xである場合を含む。)を、v´(x)=(v´(x),v´(x),…,v´(x))に変換するフィルタが、「コヒーレントフィルタ」の形式である。これはその表式から明らかな通り、画素値を構成するスカラー値v(y)の重み付け平均値を表している。
このような処理は、以下のような結果をもたらす。すなわち、ノイズを除かれた画素xの画素値v´(x)と同一の画素値をとることが確からしい(=上記仮説Hの命題を満たす可能性が高い)画素yの寄与度を高めた重み付け平均値v´(x)から構成されたベクトルを表すこととなる。また、このような画素yが十分な数存在するならば、画素値v´(x)は、画素xが本来有すべきその真値から外れることなく、上記したような平均化の作用によりノイズを抑制しながらも、分解能は低下しない値を有することとなる。
なお、危険率p(x,y)が小さく、したがって、帰無仮説Hが「棄却」され、重みw(p(x,y))が小さくなるような場合であっても、上記記述からもわかる通り、必ずしもこれを完全に「棄却」するとは限らない。このようなことは、後述する重み関数wの具体的形式に依存するところであるが、危険率p(x,y)が“0”(=0%)に近いような場合でも、w(p(x,y))≠0(ただし、p(x,y)が“1”に近い場合に比べて、より小さな正の値ではある。)としてよい(なお、p(x,y)=1である場合とは、後述するように、v(x)=v(y)のときである。)。
すなわち、完全な棄却ということではなく、小さな寄与は認めるように構成してもよいということである(なおこのような場合に、w(p(x,y))=0とするのであれば、完全な棄却を行うのと同義である。
このような処理は、一般的に次のように言える。すなわち、ある画像を構成する複数の画素xが存在するとき、この画素xとある任意の画素y(上記ではy∈N(x)とされた)との適合度p(x,y)を定量化し、該適合度が大きい場合には、画素値v(y)を利用した重み付き平均化処理において、当該画素yの大きな寄与を認め、適合度が小さい場合には小さな寄与しか認めないようにすることで、当該画素xのノイズを有効に抑制する画像処理方法である、といえる。いわば、画素xと画素yとが「似たもの同士」のときには、該画素yを前記平均化処理に、より貢献させ、「似ていないもの同士」のときには、該画素yを全く又は殆ど無視する(重みをゼロ又はその近似値)、と言い換えてもよい。
このような処理を画像全体に施すことにより、画像のぼけ、つまり空間的分解能の低下を殆ど生じることなく、極めて高いノイズ抑制効果を発揮することができる。また、ノイズ抑制という用途に限定せず、例えばパターン認識の分野においても、重み関数、あるいはコヒーレントフィルタを好適な具体的形式にすることによって、優れた効果を発揮することができる。
ここで上記した「ダイナミックCT」撮影とは、上記X線管101及びX線検出器102が被検体Pの同一部位を反復撮影(反復スキャン、連続回転型CT装置では、連続回転による反復撮影がしばしば行われる。)して次々に投影データを取得するとともに、該投影データに基づいて次々に再構成処理を行って時系列的な一連の画像を得る撮影方式のことをいう(この場合、画像表示部107における画像表示は、例えば図示しないカウンタ等によって、その画像の元となった投影データ収集に係るスキャン開始点又は終点から一定時間後に行われるように制御される)。
したがって、このように取得・表示される画像は、映画等と同様に時系列的な複数枚の静止画像からなる、いわゆる動画像となる。なお、このような撮影方式は、典型的には、被検体Pに対し造影剤を注入し、その経時変化を観察・解析して、例えば血管における狭窄や閉塞等その他病変部の病態を分析するために用いられる。また、造影剤投与の前後2回だけに限り同一部位のCT撮影を行う方式も、広義のダイナミックCT撮影と考えることができる。
さて、従来においては、上記のような「ダイナミックCT」撮影時、例えばK回の撮影を実施する間に被検体Pに何らかの変化(例えば、造影剤の濃度変化や呼吸動等が一般的に考えられる)があった場合、空間解像度を損なわず画像ノイズを抑制するためには、時間方向の平滑化を行うほかなかった。その結果、時間分解能が損なわれるという弊害は避け得なかった。
ところが、ダイナミックCT撮影により取得される画像は、上述したように動画像であって、時間的変化を仔細に観察する目的で撮影を行うものであるから、その時間分解能が損なわれるというのは、本来、好ましい状況とは言えない。
コヒーレントフィルタを利用すれば、時間分解能を損ねず、K枚の静止画像のすべて(複数枚の画像)からノイズを抑制することが可能な、次のようなダイナミック・コヒーレントフィルタ処理を実施することができる。
まず、上記のようにして得られた動画像たるK枚の静止画像につき定義される画素xについては、既に述べたように、画素値v(x)として、
v(x)=(v(x),v(x),…,v(x)) … (1再掲)
を構成することができる。ここで右辺各項における添え字1,2,…,Kは、K枚の各静止画像の通し番号である。
次に、この場合における重み関数w1の具体的形式を、例えば次の(4)式により与える。
Figure 2009050726
ただし、y∈N(x)であって、かつ、この集合N(x)は、画素xにつき任意に設定してよい(=どのような基準によって設定してもよい。)。しかし実際上は、画素xと該画素xから遠く離れた位置にある画素yとが仮説「v(x)=v(y)。ただし、両画素のノイズに起因する差異を除く」を満たす可能性は一般に低いといえるから、集合N(x)をxに近接している画素の集合という基準で限定することは、演算速度向上等の実用的な意義がある。
したがってここでは、その一例として、集合N(x)を、当該画素xを中心としたその周囲の矩形状エリアに含まれる画素の集合、とする。より具体的に、集合N(x)としては、例えば、いま注目している静止画像一枚を構成する全画素が128×128画素であるような場合に、前記画素xを中心とした3×3画素分のエリアとしたり、また、512×512画素であるような場合に、当該画素xを中心とした13×13画素分のエリア等としてもよい。
また、上記(4)式におけるσは、k枚目の静止画像の各画素が、そのどれにも共通な一定の程度で有するものと仮定して推定されたノイズの標準偏差であり、一方Cは、重みw1(p(x,y))が、上記(4)式に代入された場合における作用の程度を決定する調節可能なパラメータである。
以下、これらσ及びCについての説明を順に行う。
まず、(4)式におけるσについて説明する(以下では、分散σ として説明する)。このσ は、上述したように、k枚目の静止画像上の各画素のスカラー値が有するノイズ成分の分散である。そしてまた、上記(4)式における分散σ は、k枚目の画像の各画素のスカラー値について一定値たる分散σ を持つノイズを含んでいるものと仮定して推定したものである。一般に、このような仮定は、次に記すようなことを背景として、十分な正当性を持つ。
被検体Pの大きさ、X線管101及びX線検出器102、再構成部106等の構造が一定で、かつ、照射X線のエネルギを一定にした状態では、CT画像のノイズは、照射X線量、すなわちこれと比例関係にあるX線管101における管電流と照射時間との積(いわゆる管電流時間積(mA・s))によって決定される。
一方、CT画像のノイズは加法的であり、概ねガウス分布に従うことも知られている。すなわち、ある画素xの画素値v(x)を構成する任意のスカラー値v(x)(n=1,2,…,K)について、その真値(ノイズの寄与分を除去した値)をv (x)とすると、これらの差の値v(x)−v (x)は、概ね平均0、分散σ のガウス分布に従う(なお、照射X線量ないし管電流時間積mA・sとノイズの分散σ とは、概ね反比例関係にある。)。
また、この分散σ は、画素xの位置そのもの(上で述べたように、例えば各座標値x=(x,y))にも依存するが、通常のX線CT装置100においては、X線管101及びX線検出器102の間に、X線照射量を調節する物理的なX線フィルタ(例えば銅箔や金属塊等により構成された、いわゆる「ウェッジ」あるいは「X線フィルタ」と呼称されるもの)を備えているため、これを無視することができる。なぜならばウェッジは、被検体Pが水とほぼ同じ密度を持つ物質から構成されていることを利用して、どのX線検出器102においても同程度のX線量が検出されるよう、照射されるX線の一部を減弱する作用を有するものである。従ってこのようなウェッジによれば、結果的に、ノイズの分散σ を画素xの位置に殆ど依らない概ね一定値にする効果を生じるからである(ちなみに、このウェッジは、一般に、X線検出器102のダイナミックレンジを有効に利用することを本来の目的として設置されるものである)。
以上のことから、ダイナミックCT撮影により取得されたK枚の静止画像上においては、k枚目の静止画像上におけるすべての画素について、分散σ がほぼ一定であると推定することは妥当である。むろん、画素ごとに分散が異なる場合について本実施形態を拡張することも容易に推考できる。
さて次に、上記(4)式を具体的に演算するためには、その分散σ として、どのような数値をあてるか、が問題となる。このようなことが問題となるのは、通常、ノイズの分布の形は想定できても(上記ではガウス分布)、分散σ の具体値は不明であることが多いからである。
更に、一般的に、毎回の撮影毎に照射線量(X線管電流×照射時間(mA・s))を変更して撮影を行ってもよく、この場合、画像毎に分散σ は異なる。
さて、k枚目の画像(k=1,2,…,K)に於いて各画素のスカラー値が持つノイズの分散をσ とし、k枚目の画像の撮影に用いた照射線量をRとするとき、σ はRに比例する。従って少なくともひとつのk=kについてσkO が指定できれば、他のkに関しても、
Figure 2009050726
によってσ を正確に推定することができる。
本実施形態に於いては少なくともひとつのkについて、以下のような方法でσ の具体的数値の推定を行うことができる。
K回の撮影のうち、被検体Pに殆ど変化がなかったと仮定することのできるN回(1<N≦K)の画像を用いて、実測により、分散σ に対する期待値E[σ ]を求める方法が有効である。以下説明を簡単にするために、これらN枚の画像における照射線量は同じであり、従ってk=1,2,…Nに関してσ は一定(σと書く)と仮定する。これらN枚の画像における、ある画素xの画素値v(x)を構成する各スカラー値v(x),v(x),…,v(x)が含むノイズは、上述したように平均0、分散σのガウス分布に従うと予想されるから、これらの平均値を以下の(6)式、
Figure 2009050726
を用いると、真の分散σに対する期待値E[σ]を、
Figure 2009050726
として求めることができる。そして、この分散の期待値E[σ]は、上述した通り、K枚すべての静止画像上の全画素xにつき妥当するものと考えることができ、真の分散σの代用として用いるのに、一定程度以上確からしさが保証された値である。したがって、上記(4)式の実際の演算においては、このE[σ]を(4)式のσに代入すればよい。
なお、このようなE[σ]は、より具体的には、K枚の静止画像中、例えば1枚目と2枚目の静止画像に基づく実測値により求めてもよい(上記(6)及び(7)式で言えば、N=2とすることに該当する。)。また、上記(6)及び(7)式の実際の演算に供される画素xについては、例えば、空気や骨が撮像されている部分を除いた適当な画素xのみを選定する(複数選定した場合は得られるE[σ]すべての平均をとる)等といった工夫を施してもよい。さらに、その他一般的には、被検体Pの動きによる影響を抑える工夫等を施すと尚よい。
これらN枚の画像の撮影において照射線量が一定でない場合においても、σ がRに比例することを利用して正しくσ を推定することは容易に推考できるであろう。
さて次に、上記(4)式におけるパラメータCについての説明を行う。まず、(4)式においては、上記一般的形態で述べた危険率p(x,y)の考え方が、以下のように含まれている。すなわち、(4)式の右辺分子における根号内の表式は、いわゆるχ二乗分布に従うとされる当該χ値に一致するものであり、これを(2σ)で除し、括弧の全体をeの肩に置いた値は、危険率p1(x,y)そのものである。つまり、
Figure 2009050726
そして、上記(4)式は、この(8)式のように表されるp1(x,y)に関し、
Figure 2009050726
としたものに他ならない。尚、Aは定数でp1が(0〜1)の値になるように規格化されたものである。
結局、(4)式においては、上記したような一般的形態で述べた危険率p(x,y)が陽には表示されてはいないが、重みw1(p(x,y))の実態は、上述したように、まさしく危険率(=p1(x,y))の関数であると見ることができ((9)式)、すなわち「適合度の関数」である(ただし、危険率と適合度とは、上述したように、一方が増えれば他方も増加する関係にある)。
そして、上記(9)式からわかるように、パラメータCは、重みw1(p(x,y))が、危険率p1(x,y)にどの程度敏感に反応するかを決める効果がある。つまり、Cを大きくすると、p1(x,y)がわずかに小さくなるだけで、w1(p(x,y))は0に近づく。また、Cを小さくするとそのような過敏な反応を抑制することができる。なお、Cとして、具体的には1乃至10程度とすればよく、好適にはC=3とするとよい。
本実施形態においては、中心画素xと周辺画素yとの間の類似判定、言い換えると、両画素x及びyに関する上述した帰無仮説Hの棄却の判定は、上述したことから明らかなように、上記危険率p1(x,y)に基づいて、いわゆるχ二乗検定法(統計的検定法)によって決定されている。
また、上記(4)式の表式からわかるように、本発明においては、危険率p(x,y)をx,yの組み合わせそれぞれについて計算した後、重みw(p(x,y))を求めるといった手順を踏む必要は必ずしもなく、危険率p(x,y)を具体的に求めずに、合成関数としての(wp)を、直接計算する構成としてもよい。
以上述べたように、分散σの推定をし(例えば、(7)式のE[σ])、かつ、パラメータCを適当に決める(例えば、C=3)ことにより、(4)式を用いて、ある画素xにつき定義される集合N(x)(上述したように、例えば画素xを中心とした3×3画素分のエリア等)に含まれるすべての画素yについて、具体的な重みw1(p(x,y))を求めることができる。後は、上記(2)式におけるw(p(x,y))に代えて、このw1(p(x,y))を用いることにより、コヒーレントフィルタの具体的な数値演算を実施することが可能となる。そしてその結果、時間分解能は勿論のこと、空間分解能をも損なわずに、ノイズを強く抑制した画素値v´(x)=(v´(x),v´(x),…,v´(x))(=(3)式)、すなわちそのようなK枚の静止画像ないし動画像を、得ることができる。
このような画像処理を、概念的に把握しやすいよう図示したものが、図3(a)乃至図3(c)である。すなわちまず、図3(a)においては、1,2,…,K枚ある静止画像において、ある画素xにつき、該画素xを中心とした3×3画素分の矩形状エリアN3×3(x)が想定されている。この矩形状エリアN3×3(x)の左角隅における画素を、yとすれば、この画素yは、画素値v(y)を有している。
そして、この画素値v(y)を構成するスカラー値v(y),v(y),…,v(y)と画素値v(x)におけるスカラー値v(x),v(x),…,v(x)とのそれぞれにより、上記(4)式によって重みw1(p(x,y))が計算される(図3(b))。また、矩形状エリアN3×3(x)の残る画素y,…,yについても同様で、結局図3(b)に示すように、w1(p(x,y)),…,w1(p(x,y))及び、w1(p(x,x))が得られる。この場合、(8)式より危険率p(x,x)は、“1”であり、したがって重みw1(p(x,x))も、(9)式より“1”である(=最大の重み付けがされている)。
次に、このようにして得られた、重みw1(p(x,y)),…,w1(p(x,y)),w1(p(x,x))を、対応する画素の、k枚目の画像におけるスカラー値v(y),v(y),…,v(y),v(x)にそれぞれ乗算して総和を取り(上記(2)式における分子に該当する。)、これを矩形状エリアN3×3(x)に関する重みw1の総和(同じく(2)式の分母に該当する。)により除せば、当該k枚目の画像における画素xについての、ノイズが抑制されたスカラー値v´(x)を求めることができる(図3(c))。また、k=1,2,…,Kのすべての画像につき、同じ重みw1(p(x,y)),…,w1(p(x,y)),w1(p(x,x))を用いて、ノイズが抑制されたスカラー値v´(x)を求めることによって、画素xにおけるノイズが抑制された画素値v´(x)=(v´(x),v´(x),…,v´(x))が得られる。すべての画素xにつき、上記演算を繰り返せば、ノイズを抑制したK枚の画像が得られる。
このようにしてコヒーレントフィルタで算出された画素値v´(x)で構成される画像では、オリジナル画像で見られたランダムなノイズが、十分に抑制される。
なお、以上までに述べた各処理は、例えば図4(a),図4(b)に示すようなフローチャートに則ってこれを行えばよく、また、当該各処理に係る演算・画像表示等を実際のX線CT装置100上で実現するためには、例えば、図2に示すように、分散値推定部111、重み演算部112及び画素値演算部113により構成される画像処理部110を設けて、これを実施すればよい。
このうち重み演算部112は、上述した手順通り、画素値v(x)及びv(y)から直接重みw1(p(x,y))を求める構成となっている。したがって当該演算部112は、危険率p1(x,y)の値を具体的に求めることなく、重みを直接に求める装置である。なお、上記したような構成ではなく、具体的に危険率p1(x,y)の値を求める危険率演算部(適合度定量化部)と、その出力に基づいて重みw1(p(x,y))を求める重み演算部という、二段の手順を踏む構成としてもよい。いずれにせよ、重み演算部112は、分散値推定部111により推定された分散σと、v(x)及びv(y)を用いて重みw1(p(x,y))を算出する。
また、画素値演算部113は、画素値v(x)及びv(y)、並びに重み演算部112により数値演算された重みw1(p(x,y))を使って、画素値v´(x)を演算する。すなわち当該演算部113は、元となる画像のノイズを抑制する処理、すなわちコヒーレントフィルタの適用を実際に行う(以下、これを「コヒーレントフィルタをかける」と表現する)。
上記のようなダイナミック・コヒーレントフィルタ処理においてK枚の静止画像から構成される動画像に、コヒーレントフィルタをかける場合には、上記画像処理部110における処理は、一旦すべての静止画像を再構成した後、これらを上記記憶装置10Mに蓄え、後処理として後にこれらに対してコヒーレントフィルタをかけるようにしてもよいが、本実施形態はこのような形態に限定されるものではなく、上述した連続スキャン、連続投影データ収集、連続再構成及び連続表示という流れの中で、コヒーレントフィルタをかける処理をリアルタイムに実施する(以下、これを「リアルタイム・コヒーレントフィルタ処理」と呼ぶ。)のでもよい。
リアルタイム・コヒーレントフィルタ処理の好ましい実施形態においては、新しい画像が撮影され再構成されるたびに、以下のような処理を行う。最初に得られた画像(画像番号1)から最新の画像(画像番号M)までのうち、画像番号M,M−1,…,M−K+1を持つK枚の静止画像上、共通の同一点(同一座標)の画素xの持つ画素値(スカラー値)を並べてK次元ベクトル値v(x)=(v(x),vM−1(x),…,vM−K+1(x))を構成する。こうして、上記の「ダイナミック・コヒーレントフィルタ処理」と全く同様にコヒーレントフィルタをかけることができる。ただし、画素値演算部113は実際には画素値v´(x)の全ての要素を計算するのではなく、最新の画像(画像番号M)に対応するスカラー値v´(x)だけを計算する。この結果、計算速度が向上するので、リアルタイムでノイズが抑制された最新の画像を表示できる。
この「リアルタイム・コヒーレントフィルタ処理」の別の好ましい実施形態として、最初のK枚の画像が得られた時点で、上記と全く同様にコヒーレントフィルタをかけてv´(x),…,v´(x)を求めておき、以後は、K次元ベクトル値を画像番号M,M−1,…,M−K+1を持つK枚の静止画像を用いてv(x)=(v(x),vM−1´(x),…,vM−K+1´(x))によって構成し、これに対して上記のリアルタイム・コヒーレントフィルタ処理を適用するように構成してもよい。なお、これらのリアルタイム・コヒーレントフィルタ処理の際に画素値ベクトルv(x)の次元Kを、マニュアル設定、あるいは自動設定によって、随時変更できるように構成しておくと便利である。
このようにコヒーレントフィルタにより、空間及び時間分解能を低下させることなく、ノイズだけを効果的に抑制したCT画像を使ってCBPスタディを実行し、組織内の局所的な血流動態、つまり局所組織内の毛細血管を通過する血流の動態を定量的に解析し、その局所血流動態を表すインデックス(CBP、CBV、MTT、Err)を求めることにより、その精度及び信頼性の向上が期待できる。
以上のように分解能の低下を抑え、ノイズを除去した画像に対してCBPスタディ処理が実施される。
(CBPスタディ)
上述したように、CBPスタディでは、脳組織内の”毛細血管を通過する血流”の動態を定量的に表すCBP、CBV、MTT、Errのインデックスを求め、またこれらインデックスの空間的分布を表すマップを出力する。
CBP:脳組織の毛細血管内の単位体積及び単位時間あたりの血流量[ml/100ml/min]
CBV:脳組織内の単位体積あたりの血液量[ml/100ml]
MTT:毛細血管の血液平均通過時間[秒]
Err:解析モデルからの実測値のずれ残差の指標
なお、残差Errが低いことは、参照脳動脈から支配を受けている可能性が高いことを意味し、逆に、残差Errが高いことは、参照脳動脈から支配を受けている可能性が低いことを意味している。
CBPスタディでは、トレーサーとして脳血管透過性を持たない造影剤、たとえばヨード造影剤が使用される。インジェクターにより肘静脈から急速に注入されたヨード造影剤は、心臓、肺を経由して、脳動脈から流れ込む。そして、脳動脈から、脳組織内の毛細血管を経て、脳静脈へと流れ出ていく。このとき、脳血管透過性を持たない造影剤、たとえばヨード造影剤は正常な脳組織内の毛細血管では造影剤は血管外へ漏れ出ることなく通過する。
造影剤の通過の様子をダイナミックCTで連続的に撮影して、その連続画像から、脳動脈上の画素の時間濃度曲線Ca(t)、毛細血管を含む脳組織上の画素の時間濃度曲線Ci(t)、脳静脈上の画素の時間濃度曲線Csss(t)をそれぞれ測定する。
CBPスタディでは、造影剤の血中濃度について脳組織に近い脳血管の血中濃度の時間曲線Ca(t)と、毛細血管の血中濃度の時間曲線Ci(t)との間で成り立つ理想的な関係を解析モデルとして採用する。つまり脳組織に入る直前の血管から造影剤を注入した場合、毛細血管を含む脳組織単位体積(1画素)内の時間濃度曲線は垂直に立ち上がり、一定値を維持し、そして若干の勾配を持って立ち下がる。これは、矩形関数で近似することができる(box−MTF法:box−Modulation Transfer Function method)。
脳動脈血中時間濃度曲線Ca(t)を入力関数、脳組織の時間濃度曲線Ci(t)を出力関数として、毛細血管を通過する過程の特徴を、矩形関数で表される伝達関数として求めることができる。
(具体的な手順)
図5、図6には、本実施形態によるCBPスタディの典型的手順を示している。まず、肘静脈等の血管にボーラスインジェクション(造影剤を一気に投与する)を行い、その直後あるいは直前からダイナミックCT(同じ箇所を反復して撮影する)を行う。最も典型的な手技として、肘静脈へボーラスインジェクションを行った場合、概ね20〜40秒の間、例えば0.5〜2秒間隔で撮影を繰り返す。ダイナミックCTで得たN枚のCT画像のうちのj枚目の各ピクセル(x、y)のCT値をv(x、y、j)とする。これはこの画素(x、y)における時間濃度曲線(滑らかな曲線である)f(t、x、y)をサンプリングしたものに他ならない。
まず、前処理として、ステップS1で、CT画像各々から、明らかに脳組織以外の組織であることが判別される画素を、解析対象から除外する。すなわち、脳組織のCT値として考えられる範囲(例えばCT値10〜60HU)に入らない値を示す画素は、空気や骨、脂肪などに対応する画素であり、脳血流の定量とは関係ないのでこれらは無視して良い。この解析範囲は、デフォルトとして、10〜60HUに設定されるが、入力部109を介して任意に設定可能である。
また、前処理として、ステップS2で、造影効果の初期化が行われる。各画素に於ける造影効果(CT値の上昇)を得るためには、各画素(x,y)について、その画素に対応する組織に造影剤が到達する以前の画像(一般に複数枚得られる)を、通し番号1,2,…Kで表すと、その時間的平均値は、
Figure 2009050726
を求め、この値をb(x,y)とする。そして、j=K+1、K+2、…,Nの各画像の画素値v(x,y,j)について、
q(x,y,j)=v(x,y,j)−b(x,y)
j<Kについて
q(x,y,j)=0
とすればよい。処理を簡単にするためには、どの画素に関しても同じKを採用しても良い。こうして得られたq(x,y,j)は、滑らかな連続曲線の時間濃度曲線q(t,x,y)をt=t1,t2,…tNにおいてサンプリングしたものに他ならないと考えることができる。このq(t,x,y)を用いて脳血流の定量解析を行う。
定量解析にあたってはまず、右脳エリアと左脳エリアをCT画像上で分離することができる。上述したようにCBPスタディでは、毛細血管の血流動態の様子を、脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)に対する脳組織の時間濃度曲線Ci(t)の伝達関数MTFとして求めるものであり、従って、解析対象の脳組織が、参照曲線Ca(t)の脳動脈の支配下にないならば、計算しても無駄である。少なくとも左脳と右脳とでそれぞれ別々の脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を使って個別に解析する、つまり左脳の脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)は同じ左脳の脳組織の解析にだけ使用し、同様に、右脳の脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)は同じ右脳の脳組織の解析にだけ使用することは無駄な計算を減らす効果がある。
脳を左脳エリアと右脳エリアとを分割するために、図7に示すように、CT画像上に分割線が画面上に図形として重ねて表示される(S3)。分割線が最初は画像中央に表示されるように構成しても良い。操作者は、画像を参照して、分割線を移動し、また分割線を構成する複数の構成点を移動して任意に屈曲させることにより、左右エリアを分割する。
このように脳を左脳エリアと右脳エリアとに分けて、それぞれのエリアに解析範囲を限局することで、解析処理工数を減らすことができる。つまり左脳の脳動脈(左ACA、左MCA、左PCA)の時間濃度曲線Ca(t)は左脳エリアの解析(伝達関数最適化処理)にだけ使用し、同様に、右脳の脳動脈(右ACA、右MCA、右PCA)の時間濃度曲線Ca(t)は同じ右脳の脳組織の解析にだけ使用する。解析処理工数を減らすために、左脳エリアと右脳エリアをそれぞれさらに領域分割し、さらに狭いエリアに解析処理を限局しても良い。
この領域分割には、幾何学図法、例えばボロノイ図法が採用される。ボロノイ図法は、周知の通り、病院、店舗、消防署等の施設の最適な配置等の分野によりよく用いられる手法であり、平面上に配置された多数点(店舗等に相当、母点)からの距離に応じて平面を複数の勢力域に分割することを特徴とする。
図8に示すように、本実施形態では、ボロノイ図法は、左脳エリアと右脳エリアとで個別に適用される。左脳エリアは、左ACA、左MCA、左PCAを3つの母点として、左ACAの勢力域と、左MCAの勢力域と、左PCAの勢力域とに分割される。左ACA、左MCA、左PCAに対応する3つの母点を通過する円の中心にボロノイ点を設定する。ボロノイ点を中心として、左ACAと左MCAの2つの母点の垂直二等分線と、左MCAと左PCAの2つの母点の垂直二等分線と、左ACAと左PCAの2つの母点の垂直二等分線とが連結される。これら垂直二等分線により左脳エリアが3つの勢力域に分割される。同様に、右脳エリアは、右ACA、右MCA、右PCAを3つの母点として、右ACAの勢力域と、右MCAの勢力域と、右PCAの勢力域とに分割される。
左ACAの時間濃度曲線Ca(t)に対する脳組織の時間濃度曲線Ci(t)の伝達関数MTFを、左ACAの勢力域に限局して画素ごとに求める。同様に、左MCA、左PCA、右ACA、右MCA、右PCAに対してそれぞれの勢力域に限局して画素ごとに伝達関数MTFを求める。
このように左脳エリアと右脳エリアとをそれぞれ複数の勢力域に分割して、それぞれの勢力域に解析範囲を限局することで、解析処理工数をさらに減らすことができる。
次に、CT画像上で脳動脈上に脳動脈ROIを設定するのであるが、この設定の精度を向上し且つ容易にするためにROI設定支援部121により支援マップが作成され、CT画像とは別に、またはCT画像に重ねて表示される(S4)。支援マップとしては、図9(a)乃至図9(c)に示すように、例えば、AT(アピアランスタイム)マップ、PT(ピークタイム)マップ、TT(トランジットタイム)マップがあげられる。各画素について、図10に示すように、造影前の任意の時刻(例えばデータ収集開始時刻)T0から造影剤濃度がピークpeakの数パーセント(例えば1パーセント)に達する時刻までの時間AT、時刻T0から造影剤濃度がピークに達した時刻までの時間(ピークタイム)PT、又は造影剤の移動時間を例えば半値幅で表すTTが計算され、マップとして生成され表示される。デフォルトでは、これらATマップ、PTマップ、TTマップの全種類が生成され表示されるようになっているが、任意の1種類、又は任意の2種類を操作者が選択することが可能である。
これら数値は脳動脈では他の組織と比較して高い値で現れる傾向にあるので、その値を中心とした値を持つ画素だけを表示するよう設定されたカラールックアップテーブルを通してカラー表示させることで、脳動脈の場所を容易に識別し、脳動脈ROIを正確に設定することが可能となる(S5)。典型的には、左右脳エリアそれぞれに、脳動脈ROIは、前大脳動脈(ACA)、中大脳動脈(MCA)、後大脳動脈(PCA)の3箇所ずつ設定される。
なお、マルチスライス、撮影の場合、例えば隣接する4枚のスライスを解析対象とする場合、図11に示すように、その各スライスで個々に脳動脈ROIを設定することは作業負担が大きいばかりで、解析を行う上では必要のない作業である。従って、ある任意の1スライスで設定した脳動脈ROIを他のスライスにも共用する。または、後述するコヒーレントレグレッション法を使って全スライスで共通に用いることのできる脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を作成するようにしてもよい。
次に、設定された脳動脈ROI各々に関して時間濃度曲線Ca(t)が、ダイナミックCTによる連続画像データから時間濃度曲線作成部122により作成される(S6)。
ここで、画素サイズに比べて、脳動脈は非常に細いものが多く、しかも一般にCTの撮影スライスに対して直交していないため、画像上のどの画素も正確に動脈血のCT値を表しておらず、1画素が脳動脈と他の組織との混在により構成され、そのパーシャルボリューム効果のためにそれよりも低い造影効果しか示さないことがほとんどである。また、動脈をパーシャルボリュームとして含むこれらの画素において、画像ノイズが大きい。特に脳梗塞を生じている部位の動脈等においては、造影効果が比較的小さいために、ノイズの影響は甚大である。画像ノイズに関しては上述したコヒーレントフィルタにより抑制されているものの、パーシャルボリューム効果の影響は依然として残存している。
この問題は、脳動脈の時間濃度曲線は、単一のスライス画像において計測するのではなく、その動脈を含む立体内の画素を用いて後述するコヒーレントレグレッション法を適用することで抑制することが可能である。従って、上述したコヒーレントフィルタ法に代えて、この段階でコヒーレントレグレッション法を適用するようにしてもよい。
また、この方式によれば、動脈ごとにそれに対応する唯一のスライス像の時間濃度曲線が得られ、従って、撮影範囲内にある全スライス中の任意の部位の解析に利用することができ、これによって、特定の動脈について、その脳動脈の時間濃度曲線が最も明瞭に得られるスライスを選んで、その脳動脈の時間濃度曲線を全スライスに適用することができ、脳動脈の時間濃度曲線の数を減らすことができる。
(コヒーレントレグレッション法)
上記時間濃度曲線の作成では、パーシャルボリューム効果、ランダムノイズの影響を除去することが重要である。まず、「時間濃度曲線」とは、上記ダイナミックCT画像中の特定の部位におけるCT値(濃度値)の経時的変化を表す曲線である。ことに、上記医用画像診断装置においては、人体組織等における血流動態や代謝機能等の詳細を調べる事を目的として、人体の特定組織内の造影剤濃度等の経時的変化を時間濃度曲線として計測することが行われている。また、天体観測等においては、特定の天体の光度変化等を解析する目的で、時間濃度曲線が用いられる。より形式的に明示すると、すなわち、時間濃度曲線とは、時刻tにおけるある部位の濃度値をdとするとき、対の列{<t,d>(k=1,2,・・・,K)}として表現される。また、時間濃度曲線の多くの用途においては、必ずしもdの絶対的な値が必要なのではなく、むしろ最初の画像1を基準とする増分(d−d)だけが得られれば十分である。さらにそのような用途のうちの多くでは、単に(d−d)に比例するデータ A(d−d)(ここにAは未知の定数)だけが得られれば十分である。この場合には、従って、対の列{<t,A(d−d)>(k=1,2,・・・,K)}が、求める時間濃度曲線である。
このような時間濃度曲線を求めるためには、原理的には、上記ダイナミックCT画像を構成する各画像k(k=1,2,・・・,K)における、該時間濃度曲線を測定しようとする部位に含まれる画素xのスカラー値v(x)を用いて、対の列{<t,v(x)>}あるいは、{<t,A(v(x)−v(x))>}を構成すればよい。
しかし、実用においては、上記医用画像診断装置等によって撮影されたダイナミックCT画像にランダムなノイズが含まれているために、本来測定しようとする時間濃度曲線を正確に求められないという問題がある。
さらに、実用においては、これらのダイナミックCT画像においては、いわゆる「パーシャルボリューム効果」が生じる。パーシャルボリューム効果とは、すなわち、被検体内の微小な物体の像は、画像上では少数個の画素によって表現されるが、これら少数個の画素には、被検体内の隣接する物体の像も影響を与えるため、これら少数個の画素の画素値は(本来計測しようとする濃度値の変動に比例するものの)比較的小さな変動しか示さない、という現象である。言い換えれば、これら少数個の画素の画素値は僅かな信号しか含まない。従って、パーシャルボリューム効果が生じている場合には、どの画素xを取っても対の列{<t,v(x)>(k=1,2,・・・,K)}は非常に信号レベルが低く、本来計測しようとしているのではない組織における濃度値の変化の影響を受け、さらにランダムなノイズが存在するために、本来測定しようとする時間濃度曲線{<t,d>}を正確に求められないという問題がある。
そこで、従来は、ランダムなノイズを抑制するために、時間的又は空間的平滑化を用いていたが、時間平均を行うと時間分解能が損なわれてしまい、また、空間平均を行うと、本来の該測定しようとする部位以外の部位の濃度の経時変化が計測値に混入するという問題点があった。このような問題点を解決し、より正確な時間濃度曲線を得るために、コヒーレントフィルタを採用する。
まず、本実施形態のコヒーレントフィルタにおいて用いるべき、帰無仮説について説明する。計測しようとする部位における真の時間濃度曲線を{<t,d>(k=1,2,・・・,K)}であると仮定するとき、その一次変換である{<t,A(d−d)>(k=1,2,・・・,K)}(だたしAは未知の係数)を計測することを目的とする場合において、計測しようとする部位に概ね相当する画素の集合Rを設定する。この集合Rの要素である任意の画素x∈Rについて、条件Q:「もし、この画素xが上記真の時間濃度曲線を良く反映し、しかも他の部位の経時的濃度変化の影響をほとんど受けていない」のであれば、ベクトル値としての画素値v(x)=(v(x),v(x),...,v(x))について、パーシャルボリューム効果およびランダムノイズの影響を考慮することによって、
(x)=p(x) d+q(x)+γ(x) …(11)
(k=1,2,・・・,K)
が成り立つと仮定することができる。ここに、p(x)およびq(x)は、画素xごとに異なるが画像番号k(すなわち撮影時刻tに相当)によっては変化しない未知の係数であり、パーシャルボリューム効果をモデル化したものである。またγ(x)はランダムなノイズをモデル化したものであって、画素xごとに、しかも画像番号kごとに値が異なるが、その期待値は0であり、またその統計分布は画素xにも画像番号kにも依存しない。
以上の仮定によれば、該集合Rの要素である任意の2個の画素x,yに関して、もし「画素x,yが共に上記の条件Qを満たす。」という命題が成り立つのであれば、次式の関係が成り立つことが証明できる。
(x)=a(y)+a+ξ (k=1,2,・・・,K)
… (12)
ここに、aおよびaは、画素の組x,yごとに異なるが画像番号k(すなわち撮影時刻t)によっては変化しない未知の係数である。またξはランダムなノイズであって、画素の組x,yごとに、しかも画像番号kごとに値が異なるが、その期待値は0である。
(12)式は以下のようにして導かれる。すなわち、xにyを代入して得られる式
(y)= p(y) d+q(y)+γ(y)… (13)
を変形すると、
Figure 2009050726
とおくことによって、(12)式が導かれる。ここで、(16)式のaとaは、パーシャルボリューム効果を現すパラメータであり、また(16)式のξは、ランダムなノイズを表す。
以上から、「画素x,yが共に条件Qを満たす。」という命題は、帰無仮説H´「v(x)=a(y)+a+ξ (k=1,…,K)である。」と等価であることが示された。
次に帰無仮説H´「v(x)=a(y)+a+ξ (k=1,…,K)である。」を、実質的に等価であり、かつ実際に検定できる形式の命題に変換する方法について述べる。この帰無仮説を改めて数学的に厳密な表現で述べると、帰無仮説H´「ある定数aおよびaが存在して、ξ=v(x)−a(y)−a(k=1,…,K)は平均0、分散(σh(a))の正規分布に従う。」となる。ここに係数h(a)は、
h(a)=1+a … (17)
である。(17)式はaとξの定義である(16)式、および、ランダム変数に関する分散の持つ一般的な性質から直ちに導かれる。また、上記の分散σの値は、簡便かつ実用上十分正確に推定できる。
以上から、もし、上記の定数aおよびaを決定することができれば、上記の帰無仮説H´を検定することが可能である。そして実際上は、これらの定数の最適な推定値a およびa が得られれば十分である。
このような、定数aおよびaの最適な推定値の算出には、公知の当てはめ法(fitting)がそのまま利用できる。そこで、以下では、そのような当てはめ法の典型的な具体例として、線形最小二乗法を用いる場合における概要を説明する。線形最小二乗法を本実施形態に適用するには、単に、上記の帰無仮説のξの二乗和をS(a)として、すなわち
Figure 2009050726
を定義する。S(a)の値は定数ベクトルa=(a,a)、すなわち上記の定数aおよびa、の値に依存する。このS(a)が最小の値を取るような定数ベクトルaを算出すれば、定数aおよびaに関する、不偏推定の意味での最適な推定値a およびa が得られる。なお、線形最小二乗法の具体的な計算方法としては、様々な公知の方法を利用することができ、しかも、これら公知の計算方法はいずれも非常に簡単であり、必要な計算時間はごく僅かである。
このようにして、上記の定数a,aの最適な推定値a ,a を算出した結果、次式で定義される残差
(x,y)=v(x)−a (y)−a …(19)
を具体的に計算することができる。従って、この残差r を用いて、上記の帰無仮説H´を、実質的に等価な帰無仮説H”「r (x,y)(k=1,…,K)は平均0、分散(1+(a )σの正規分布に従う。」と言い換えることができる。これは、実際に検定の計算を実行可能な具体的命題である。
なお、さらに、ベクトルによる表現
Figure 2009050726
(ただし、ベクトルa及びξは画素の組x,yに依存する。)を導入し、また、次式
f(a~,v(y))=a v(y)+a … (21)
で定義されるベクトル値関数fを用いて帰無仮説H´を言い換えると、帰無仮説H”は「v(x)=f(a~,v(y))+ξ、(ただし、ξは平均0、分散(1+(a )σの正規分布に従う。)」となり、これは上述した帰無仮説Hと全く同じ形式である。すなわち、本実施形態は上述したコヒーレントフィルタの一変形例であることは明らかである。なお、ここで、上記f(a~,v(y))とは、すなわち、画素yの画素値v(y)に対して、パーシャルボリューム効果を現すパラメータaを最適に調節して、画素xの画素値v(x)と最も高い適合度を持つように変換したものを意味する。
次に、本実施形態において、上記の帰無仮説H”を用いて、コヒーレントフィルタによって時間濃度曲線を求める方法について説明する。計測しようとする部位に概ね相当する画素の集合Rについて、この集合Rに含まれるあるひとつの画素x∈Rについて、集合Rの要素である全ての画素y∈Rに対して、以下の計算を行う。すなわち、上記の方法を用いて実際に残差r (x,y)(k=1,…,K)を算出し、次に、上記の帰無仮説H”「r (x,y)(k=1,…,K)は平均0、分散(1+(a )σの正規分布に従う。」を棄却する場合の危険率p(x,y)ないし重みw(p(x,y))を具体的に計算する。そして、重み付き平均v´(x)を下式(22)によって計算し、画素xにおける時間濃度曲線{<t,v´(x)−v´(x)>(k=1,2,・・・,K)}を構成する。
Figure 2009050726
こうして得られた時間濃度曲線は、画素xにおける真の時間濃度曲線{<t,d>}の一次変換である{<t,A(d−d)>}(だたしAは未知の係数)を近似している計測値であり、しかも、重み付き平均の効果によって、ランダムなノイズが抑制されている。また、他の画素yの画素値ベクトルに対しては、式から明らかなように、パーシャルボリューム効果の影響を補正したものが用いられている。さらに、本実施形態はコヒーレントフィルタの共通の特徴である「時間平均を全く使用せず、また空間平均を画素xとの適合度に基づく重みを使って計算する」という性質を有する。従って、本実施形態によって、時間分解能を損なわず、パーシャルボリューム効果の影響を抑制し、しかもランダムなノイズが抑制された時間濃度曲線を得ることができる。なお、このようにして時間濃度曲線を求める方式を、特に「コヒーレントレグレッション法」と称す。
次に、具体的に、医療用のX線CTにおけるダイナミックCT撮影等で得られたダイナミックCT画像における、時間濃度曲線の臨床的利用の一例を説明する。この応用例では、造影剤を血管に急速に注入しながら、ダイナミックCT等の撮影を行い、人体組織中に存在する動脈の像の濃度変化を時間濃度曲線として計測することによって、当該組織における血流動態を診断しようとするものである。
この応用例において、多くの場合、人体組織中の動脈は一般に非常に細いために、CTによる断層画像上に現れる動脈の像は、パーシャルボリューム効果を生じる。さらに、像にはランダムなノイズが含まれていることは言うまでもない。このため、従来の方法では、動脈に関する十分に正確な時間濃度曲線を得ることは困難であり、強いて計測を行えば、動脈に関する真の時間濃度曲線<t,D>の一次変換である<t,A(D−D)>(ここにDは動脈の像に相当する一群の画素の、時刻tにおける(スカラー値である)画素値を表す。また、k=1,2,・・・,K)をある程度近似する測定値<t,(v(x)−v(x))>しか得られなかった。この測定値はランダムなノイズを含む。また、パーシャルボリューム効果の影響のために、係数Aは未知のままである。
そこで、<t,A(D−D)>を十分に近似する測定値<t,(v´(x)−v´(x))>(k=1,2,・・・,K)を得ることができる。一方、同じ断層画像上で観察できる静脈の中には、相当に太いものが存在し、従ってそれらの静脈に関しては、従来の方法で、時間濃度曲線の十分に良い近似値<t,(J−J)>(k=1,2,・・・,K)を得ることができる。ここにJは静脈の像に相当する一群の画素の、時刻tにおける画素値を表す。
ところで、血液循環に関する時間濃度曲線においては、命題S:「もし、時刻tにおける血中の造影剤濃度が0であるならば、どの血管dに関する時間濃度曲線<t,(d-d)>も、その曲線下面積(AUC:Area Under Curve)が一致する」という性質が成り立つことが知られている。ここで言う曲線下面積とは、時間濃度曲線<t,(d-d)>の時間tに関する積分を意味する。
従って、ある血管dに関する時間濃度曲線<t,(d-d)>の曲線下面積AUC(d)は、例えば次式によって近似的に計算することができる。
Figure 2009050726
従って、静脈に関して従来の方法で得られた時間濃度曲線{<t,(J-J)>}に関する曲線下面積AUC(J)を(22)式を用いて計算することができる。(dにJを代入すればよい。)また、動脈に関して、仮に、時間濃度曲線{<t,(D−D)>}が知られていれば、曲線下面積AUC(D)を(18)式を用いて同様に計算することができ、しかも上記命題Sに従って、
AUC(D)≒AUC(J) … (24)
が成り立つ筈である。しかし、実際には、時間濃度曲線<t,(D−D)>は未知であるため、AUC(D)は計算できない。
一方、本実施形態に係る方式で得られた時間濃度曲線<t,(v´(x)−v´(x))>は、<t,A(D−D)>を近似するものであり、後者は未知の係数Aを含んでいる。このため、{<t,(v´(x)−v´(x))>}から(23)式を用いて具体的に計算できる曲線下面積AUC(v´)は、AUC(D)のちょうどA倍でなくてはならない。すなわち、
AUC(v´)≒A・AUC(D) … (25)
である。すなわち、(24)式と(25)式から、
A≒AUC(v´)/AUC(J) … (26)
という関係が成り立つ。(26)式の右辺は(23)式を用いて具体的に計算できるため、未知であった係数Aの値が具体的に決定できる。そこで、この係数Aの値を用いて時間濃度曲線<t,(v´(x)−v´(x))/A>を構成すれば、これは、動脈の時間濃度曲線<t,(D−D)>を近似するものに他ならない。このように、曲線下面積を用いて、未知であった定数Aの値を決定した時間濃度曲線を構成する方法を「AUC法」と呼ぶ。
以上から、ダイナミックCT撮影等で得られたダイナミックCT画像における、時間濃度曲線の臨床的利用において、上記コヒーレントレグレッション法に、さらに上記AUC法を組み合わせることによって、従来の方法では計測が困難あるいは不可能であった、細い動脈の時間濃度曲線に関しても、パーシャルボリューム効果およびランダムなノイズの影響を排除し、しかも、未知の定数Aを含まない測定値が得られる。
なお、もちろんAUC法は、単独で従来の方法で計測された動脈に関する時間濃度曲線<t,(v´(x)−v´(x))>に対しても適用でき、(ランダムなノイズやパーシャルボリューム効果の影響は排除できないものの、)未知であった定数Aの値を決定した時間濃度曲線を構成できる。
(上矢状静脈洞の時間濃度曲線を使った脳動脈の時間濃度曲線の補正(パーシャルボリューム効果の影響を抑圧))
パーシャルボリュームの影響を抑圧するために、このコヒーレントレグレッションに代えて又は併用して、上矢状静脈洞の時間濃度曲線Csss(t)を使って脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を補正するようにしてもよい。
まず、図5のステップS7において、図12に示すように、CT画像上で上矢状静脈洞を取り囲むように大き目に上矢状静脈洞ROIを設定する。上矢状静脈洞は動脈に比べて大きく、また位置も比較的固定しているので、上矢状静脈洞ROI設定は容易である。この大き目の上矢状静脈洞ROIには、複数の画素が含まれている。
次に、上矢状静脈洞ROIの中の全ての画素がその全域に渡って上矢状静脈洞に含まれるように、上矢状静脈洞ROIを縮小処理する(S8)。縮小処理としては、例えば、まず、上矢状静脈洞ROI内の画素各々について、しきい値処理(二値化)を実行し、ROI内の二値マップ(“0”,“1”)を作成する。当該しきい値は、上矢状静脈洞の像を、その周辺の組織や骨の像と分離する値に設定される。“1”は上矢状静脈洞の像上の画素であることを表し、“0”は周辺の組織や骨の像上の画素であることを表している。この二値マップの各画素(中心画素)を、その近傍4または8画素の値に従って、置換する。中心画素が“1”であって、且つ、近傍4または8画素全てが“1”である場合のみ、中心画素の値を“1”に維持する。つまり、中心画素が“0”である場合はもちろん、たとえ“1”であったとしても、近傍4または8画素のなかの1つでも“0”を示しているときには、当該中心画素の値を“0”に置換する。従って、上矢状静脈洞ROIは、上矢状静脈洞の像の外形よりも、少なくとも1画素分縮小される。それにより縮小処理を受けた上矢状静脈洞ROIの中の全ての画素は、上矢状静脈洞像上の画素であるという条件を高い確度で実現され得る。
また、この手法に代えて、時間濃度曲線の曲線下面積AUCを使って上矢状静脈洞ROIを修正するようにしてもよい。この場合、大き目のROIを探索範囲として、その中の画素各々について時間濃度曲線の曲線下面積AUCを計算する。造影効果により上矢状静脈洞像上の画素の曲線下面積AUCは、周辺画素のそれに比べて明らかに高値を示す。従って、この曲線下面積AUCに対してしきい値処理を実行することにより、ROIの中から上矢状静脈洞像上の画素だけを選別することができる。
このようにしていずれかの手法又は両手法を併用してアンド条件によりピックアップされた上矢状静脈洞像上であるという確度の高い複数の画素に対して、各画素の時間濃度曲線が平均化され、上矢状静脈洞の時間濃度曲線Csss(t)が作成される(S9)。
ここで、ヨード造影剤は血液脳関門(Blood Brain Barrier)を通過しないので、原理的に、ヨード濃度は脳動脈と脳静脈とで変化しない、つまり、上矢状静脈洞の時間濃度曲線Csss(t)の曲線下面積AUCは、S6で作成した脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)の曲線下面積AUCに略等価になる。従って、図13に示すように、上矢状静脈洞の時間濃度曲線Csss(t)の曲線下面積AUCsssに対して、S6で作成した脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)の曲線下面積AUCaが略等価になるように、S6で作成した脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)の各時刻値に、AUC(sss/AUCa)を乗算することで補正する(S10)。
次に、以上のようにノイズ及びパーシャルボリューム効果が抑圧された図14(a)に示す脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を使って、脳組織(毛細血管)の血流動態の様子を定量化する。そのためにまず、脳組織上の各画素について、図14(b)に示す時間濃度曲線Ci(t)が作成される(S11)。
次に、S12に示すように、左右エリアで別々の脳動脈時間濃度曲線Ca(t)を使って、画素ごとに、脳動脈時間濃度曲線Ca(t)を入力関数、脳組織の時間濃度曲線Ci(t)を出力関数として、トレーサーが毛細血管を通過する過程の特徴を、伝達関数MTFとして求める。つまり、左エリアの脳組織の時間濃度曲線Ci(t)に対しては同じ左エリアの脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を使い、また右エリアの脳組織の時間濃度曲線Ci(t)に対しては同じ右エリアの脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)を使って、伝達関数MTFを求める。また、上述したように脳動脈時間濃度曲線Ca(t)は、ACA,MCA,PCAごとに作成されるので、各Ca(t)ごとに伝達関数MTFの計算が繰り返される。
ここでは、図15に示すように、脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)と、毛細血管の時間濃度曲線Ci(t)との間で成り立つ理想的な関係を解析モデルとして用いてbox−MTF法を適用する。
図16にbox−MTF法の原理を示している。脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)と、矩形関数で表される伝達関数box−MTFとのコンボルーションCi´(t)と、S11で作成した実測Ci(t)との残差を評価し、その残差の二乗和を減少させるように伝達関数box−MTFを修正する。この手続き(procedure)ルーチンを繰り返すことで、残差を最小化させる。
残差を最小化する伝達関数box−MTFに基づいて、図15に示すように、CBP、CBV、MTTが計算され(S13)、またS12で最小化した残差の二乗和をErrとして出力する。厳密には、
CBP=CBP
CBV=(1−Ht)/(1−b*Ht)*CBV'
MTT=(1−Ht)/(1−b*Ht)*MTT'
で補正される。ここで、Htは大血管のヘマトクリット値であり、b*Htは末梢血管のヘマトクリット値(一般的にはbは0.7程度)である。
なお、残差は、y(x)−f(t,x)で与えられる。y(x)は、時刻tにおけるボクセルxのスカラー値を表し、脳組織の時間濃度曲線に対応する。f(t,x)は、ボクセルxのベクトル画素値に対してフィッティングされたモデルの時刻tにおけるスカラー値を表し、伝達関数と脳動脈の時間濃度曲線とのコンボルーションに対応する。Errは、伝達関数を近似する際の残差の2乗和の平方根であり、例えば次式に示すように計算される。
Figure 2009050726
ここで、Sは定数であり、例えばS=N−pとする。pは、自由度、すなわち近似されるモデルfに含まれるパラメータの数を表している。w(t)は時刻tにおける残差がErrに寄与する度合いを決める重み係数である。例えば、w(t)は、iに依存しないで、1等の固定値としても良いし、
w(t)=αe-ti2/β
として、|t|が大きいほど、重みwが緩やかに小さくなるように構成し、時間が経つにつれて残差がErrにあまり寄与しなくなるようにしてもよい。
こうしてbox−MTF法により得られた伝達関数から計算されたCBP、CBV、MTT、Errに対して、図17に示すように、個々に出力範囲(適正範囲)が設定される(S14)。それぞれ対応する出力範囲内の値を持つ画素については、その値が維持され、出力範囲外の値を持つ画素にはその値から、例えば表示上で黒に対応する値に置換される(S15)。
次に、図18(a)乃至図18(d)に示すように、出力適正化を受けたCBP、CBV、MTT、Errからそれぞれのマップが生成される(S16)。CBP、CBV、MTT、Errのインデックスは、前大脳動脈ACA,中大脳動脈MCA,後大脳動脈PCAごと、しかも各スライスに対して個々に計算される。従って、マップは、1スライスでも、図19に示すように、4×3=12枚になる。設定する脳動脈数を増加すれば、その増加数の4倍でマップは増える。このような多くのマップを総合的に評価することは現実的ではない。そこで、マップ枚数を減少させるために、マップを合成する(S17)。
図20に示すように、合成方法としては、前大脳動脈ACAのCBPマップと、中大脳動脈MCAのCBPマップと、後大脳動脈PCAのCBPマップとを、前大脳動脈ACAの残差Err、中大脳動脈MCAの残差Err、後大脳動脈PCAの残差Errに基づいて合成する。例えば前大脳動脈ACAの時間濃度曲線Ca(t)とその支配下にある脳組織の時間濃度曲線Ci(t)とから伝達関数MTFを求めた場合、その残差Errは比較的少なく、逆に、支配下にない脳組織の時間濃度曲線Ci(t)から伝達関数MTFを求めた場合、その残差Errは比較的多くなる。つまり、残差Errは各脳動脈の支配可能性を表している。
従って、各画素ごとに、前大脳動脈ACAのCBP値と、中大脳動脈MCAのCBP値と、後大脳動脈PCAのCBP値との中から、最も残差Errの低い値に対応するCBP値をその画素の値として選択する。こうして合成されたマップは、前大脳動脈ACA,中大脳動脈MCA,後大脳動脈PCAの支配下にある可能性の高い脳組織のCBP値から構成される。他のインデックスCBV、MTTのマップ合成についても同様である。
ここで、マップ合成について以下に詳細に説明する。動脈に対応する位置にある画素から得られる時間濃度曲線は動脈血中造影剤濃度を反映しており、これに上記したコヒーレントレグレッション法等を適用して正確な動脈血中造影剤濃度の時間濃度曲線を得ることができる。このような脳動脈の時間濃度曲線は動脈ごとに作成可能であり、それぞれ血行状態によって違いがある。特に脳血管障害等を起こしている症例に於いてはこの違いが著しい場合がある。例えばK箇所の動脈で得た脳動脈の時間濃度曲線をA(t) (k=1,2,・・・,K)で表すことにする。
ある組織の時間濃度曲線を、その組織を栄養している(支配している)動脈の脳動脈の時間濃度曲線と比較することによって、当該組織に於ける微小循環(毛細血管系の構造、機能)を反映するCBP等のインデックスを得ることが出来る。これらのインデックスは各部位(x,y,z)ごとに算出されるので、その値を画素値とする画像を構成することができ、このような画像が、インデックスマップである。例えばR種類(典型的には上述したようにCBP,CBV,MTT,Errの4種)のインデックスが得られる場合、R枚のマップが構成できる。このようにして作成されたR枚のマップは、各画素がベクトル値をとる1枚のマップ(ベクトル値マップ)と見なすことができる。すなわち、
(x,y,z) = <Pk,1(x,y,z), Pk,2(x,y,z), ... , Pk,R(x,y,z)>
となる。
例えばCBPスタディでは、典型的には上述したようにR=4とし、Pk,1(x,y)はCBPの値を、Pk,2(x,y,z)はCBVの値を、Pk,3(x,y,z)はMTTの値を、Pk,4(x,y,z)は残差Errの値を表すように構成できる。
部位(x,y,z)の内で、解析の対象となる臓器に対応していないことが明らかであるようなものは初めから解析の対象外とし、Pk,r(x,y)には解析対象外を示す特殊な値を代入するとよい(上記ステップS14,S15)。そのような値として、負で絶対値が大きい値を用いると便利である。或いは、ベクトルV(x,y,z)に追加されるべきさらにもう一個の要素として、
k,R+1(x,y,z)=((x,y,z)が解析対象外であれば0, さもなくば1)
というマップを作っても良い。このようなマップは「マスク」と呼ばれる。
このようなベクトル値マップVは、参照した脳動脈の時間濃度曲線Aごとに作成される。例えば、左右の中大脳動脈、前大脳動脈、後大脳動脈から脳動脈の時間濃度曲線を得たとするとK=6、さらにおよび病変部周辺にある動脈数カ所から脳動脈の時間濃度曲線を得たとすると、K=10〜15程度になる。
このうち、右半球にある動脈から得られた脳動脈の時間濃度曲線は右半球に属する部位(x,y,z)の解析にだけ、また左半球にある動脈から得られた脳動脈の時間濃度曲線は左半球に属する部位(x,y,z)の解析にだけ、用いられるべきである。そこで、右半球と左半球の境目(正中線)を直線、曲線もしくは折れ線、或いは平面、曲面等として操作者が指定し、それぞれの半球ごとにマップを作るように構成するのが望ましい。しかしそれでもなお、片側の半球ごとにK=3〜10程度の数の脳動脈の時間濃度曲線が存在しうる。
このように脳動脈の時間濃度曲線A (k=1,2,・・・,K)の数Kが大きい場合に、結果として得られるベクトル値マップV(k=1,2,・・・,K)の枚数が多いために、観察するのに不便である。すなわち通常のグレースケール画像あるいはカラースケール画像として観察しようとすれば、一つのマップがR枚の画像から構成され、これがK組あるのだから、合計K×R枚の画像を比較しなくてはならない。さらに、どの部位がどの動脈によって栄養されているのかは必ずしも自明でなく、解剖学的知識を用いて、各部位ごとにどのマップV(k=1,2,・・・,K)を観察するべきかを判断しなくてはならない。特に脳梗塞等の脳血管障害を生じている症例においては、組織を支配しているのがどの動脈かは、必ずしも解剖学的知識とは一致せず、異常な支配がしばしば見られる。これらの問題によって、ベクトル値マップの読影が難しいという問題点がある。
この問題を解決するために、マップ合成を行う。つまり、残差マップを利用して、K個のベクトル値マップV(k=1,2,・・・,K)を一つのベクトル値マップVに集約する。例えば、Pk,R(x,y,z)が残差マップである場合に、
V(x,y,z) = V(x,y,z) ただしk はk=1,2,・・・,Kのうちで|Pk,R(x,y,z)|が最小であるようなkとする。
また、各部位においてk=1,2,・・・,Kのうちどれが採用されたかを示すためのマップ
(x,y,z)=(k=1,2,・・・,Kのうちで|Pk,R(x,y,z)|が最小であるようなk)
を追加することもできる。
この方式によれば、すなわち通常のグレースケール画像あるいはカラースケール画像として観察しようとするときR枚ないしR+1枚の画像を観察すればよい。
この方式によれば、本来脳動脈の時間濃度曲線Aを使って算出されるべき部位(x,y,z)において誤ってAを使った算出結果が用いられる可能性がある。しかしながらこのような誤りが生じるには、V(x,y,z)の定義から明らかなように、|Pk,R(x,y,z)|<|Pj,R(x,y,z)|
となることが必要であり、このような関係は、AとAが極めて類似している場合にしか生じない。このため、部位(x,y,z)においてはV(x,y,z)とVj(x,y,z)は元々類似していると考えられ、この誤りによって、V(x,y,z)の解釈に誤りが生じる可能性はほとんどない。
実際にこの方法を適用すると、AとAが極めて類似している場合にだけ、概ね一様であると思われる組織内において、部位ごとにP(x,y,z)=kであったりP(x,y,z)=jであったりすることが起こり、そのときPk,r(x,y,z)≒Pj,r(x,y,z) (r=1,2,...,R)であって、どちらを採用しても結果はほとんど違いがないことが観察される。
逆に、特定の動脈に支配されている組織であって、それに対応する脳動脈の時間濃度曲線Aが他のカーブと似ていない場合には、本方式を用いることによって、当該組織中の部位(x,y,z)においてはほぼ確実に、しかも自動的にV(x,y,z)が選択される。従って、上記P(x,y,z)を観察することによって、解剖学的知識なしに、どの組織がどの動脈の支配を受けているかを観察することができる。
ここで、図6に戻る。図21(a)乃至図21(d)に示すように、以上のように合成された、又は各脳動脈で単独のCBPマップ、CBVマップ、MTTマップ、Errマップに対して、複数画素を含む関心領域ROIを設定し(S18)、そのROI内の画素値(CBP値,CBV値、MTT値、Err値)の平均値(CBP平均値、CBV平均値、MTT平均値、Err平均値)を計算し(S19)、その平均値を診断材料とすることがある。この平均化に際して、上記ステップS14でCBP、CBV、MTT、Err各々に対して適正範囲を設定し、その範囲内の値を維持し、その範囲から外れた値は、例えば黒色表現に対応した最小値に置換したので、この置換した値を含めて平均化すると、その平均値には当然にして誤差が含まれてしまう。そのためこの平均化処理にあたっては、適正範囲内の値だけを選択して、または置換した値を除外して、平均化処理をすることが必要である。
また、この平均化のための関心領域ROIの設定にあたっては、CBPマップ、CBVマップ、MTTマップ、Errマップのいずれかのマップ上で当該関心領域ROIを設定すれば、そのROIが他のマップにも共通で用いられるようになっており、、ROI設定作業の簡素化を図り、また、同じROIに関する平均値(CBP平均値、CBV平均値、MTT平均値、Err平均値)の計算を可能としている。
ここで、上述したように、ある脳動脈の時間濃度曲線に対するある組織の時間濃度曲線の最小残差Errは、その脳動脈がその組織をどの程度、支配しているか、つまりその脳動脈がその組織への血流供給をどの程度担っているかを表している。換言すると、その組織がその脳動脈からどの程度、従属しているか、つまりその脳組織がその脳動脈からどの程度血流供給を受けているかを表している。小さい残差Errに対応する脳動脈は、その画素の脳組織に対する支配可能性が高いことを表し、大きい残差Errに対応する脳動脈は、その画素の脳組織に対する支配可能性が低いことを表している。従って、残差Errから画素ごとに支配可能性の高い脳動脈をラベルで区別したマップ、つまり前大脳動脈ACAの支配可能性の高い領域と、中大脳動脈MCAの支配可能性の高い領域と、後大脳動脈PCAの支配可能性の高い領域とを区別した支配マップを生成することができる。
図22に示すように、脳の左右エリアそれぞれについて、前大脳動脈ACAの残差Errと、中大脳動脈MCAの残差Errと、後大脳動脈PCAの残差Errとを画素ごとに比較する。最も小さい残差を示す脳動脈(ACA,MCA又はPCA)が当該画素の脳組織を支配している可能性の最も高いことを表している。画素ごとに、最も支配可能性が高い、つまり残差Errが最も小さい値を示す脳動脈を特定する。特定した脳動脈に対応するラベルを各画素に与える。
図23に、生成した支配マップの例を示す。この支配マップは、ラベルを色や濃淡で区別して表示される。また、インデックスマップを任意のラベルでフィルタすることにより、図24(a),図24(b),図24(c)に示すように、インデックスマップから、脳動脈(ACA,MCA又はPCA)ごとにその支配可能性の高い領域を抽出することができる。
以上のように本実施形態によれば、コヒーレントフィルタ又はコヒーレントレグレッションにより、空間及び時間分解能の低下を抑えて、ノイズを抑制し、それによりCBPスタディの解析精度を向上することができる。
(変形例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
CBPスタディの原理説明図。 本発明の実施形態に係る脳組織内毛細血管の血流動態に関するインデックス演算装置の構成を示すブロック図。 本実施形態のコヒーレントフィルタによる画像処理の説明図。 本実施形態におけるコヒーレントフィルタによるノイズ抑制処理の流れを示すフローチャート。 本実施形態におけるインデックス演算処理全体の前半部のフローチャート。 本実施形態におけるインデックス演算処理全体の後半部のフローチャート。 図5のステップS3の分割線の一例を示す図。 図6のステップS12の処理工数を減少させるために用いられるボロノイ図上の各脳動脈の勢力域を示す図。 図5のステップS4のATマップ,PTマップ,TTマップを示す図。 図5のステップS4のAT,PT,TTを示す図。 図5のステップS6でスライス間で共通される脳動脈ROIを示す図。 図5のステップS7で設定される上矢状静脈洞ROIを示す図。 図5のステップS10の脳動脈の時間濃度曲線の補正に関する補足図。 図5のステップS10、S11で作成された脳動脈の時間濃度曲線Ca(t)と脳組織の時間濃度曲線Ci(t)との一例を示す図。 図6のステップS12のbox−MTF法の原理説明図。 図6のステップS12のbox−MTF処理の説明図。 図6のステップS14の各インデックスの出力範囲設定画面の一例を示す図。 図6のステップS16で作成されたCBP,CBV,MTT,Errの各マップの一例を示す図。 図6のステップS16で脳動脈ごとに作成されたCBPマップ,CBVマップ,MTTマップ,Errマップを一覧で表示した図。 図6のステップS17のマップ合成法を説明するための図。 図6のステップS19で計算された平均値の表示例を示す図。 図6のステップS17において、画素(局所組織)ごとに支配可能性の高い脳動脈(ACA,MCA,PCA)をラベルにより区別したマップ(支配マップ)の生成方法を示す図。 図22の生成法により生成された支配マップの例を示す図。 支配マップを使ってフィルタしたCBPマップを示す図。
符号の説明
10…ガントリ部、
20…コンピュータ装置、
30…画像処理装置、
101…X線管、
101a…高電圧発生装置、
102…X線検出器、
103…データ収集部、
104…前処理部、
105…メモリ部、
106…画像再構成部、
10M…記憶装置、
107…画像表示部、
108…制御部、
109…入力部、
110…コヒーレントフィルタ処理部、
111…分散値推定部、
112…重み関数演算部、
113…画素値演算部(コヒーレントフィルタ部)、
120…CBPスタディ処理部、
121…ROI設定支援部、
122…時間濃度曲線作成部、
123…脳動脈時間濃度曲線補正部、
124…MTF処理部、
125…インデックス計算部、
126…マップ作成部、
127…マップ合成部。

Claims (4)

  1. 造影剤を注入された被検体の特定部位に関する連続的な複数の画像から、前記特定部位内の動脈に関する第1時間濃度曲線と、前記特定部位内の組織に関する第2時間濃度曲線を作成し、
    前記第2時間濃度曲線各々に対して最もフィッティングする前記第1時間濃度曲線の一を選択することにより、前記組織各々の局所血流動態が従属する可能性が最も高い前記動脈の一を特定し、
    前記組織ごとに特定された動脈の一に基づいて前記動脈の従属域を区別するマップを作成することを特徴とする方法。
  2. 前記マップを前記動脈の従属域を色で区別して表示することを特徴とする請求項1の方法。
  3. 前記マップに基づいて、前記動脈に対応する前記局所血流動態を表すインデックスに関するインデックスマップを合成することを特徴とする請求項1の方法。
  4. 造影剤を注入された被検体の特定部位に関する連続的な複数の画像から、前記特定部位内の動脈に関する第1時間濃度曲線と、前記特定部位内の組織に関する第2時間濃度曲線を作成する時間濃度曲線作成部と、
    前記第2時間濃度曲線各々に対して最もフィッティングする前記第1時間濃度曲線の一を選択することにより、前記組織各々が従属する可能性が最も高い前記動脈の一を特定する手段と、
    前記組織ごとに特定された動脈の一に基づいて前記動脈の従属域を区別するマップを作成するマップ作成部とを具備することを特徴とする装置。
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