図1は、本発明の第1実施例である力学量検出装置10が備える音叉振動型センサ12の平面図を示す。図2は、本実施例の力学量検出装置10の電気的なブロック構成図を示す。また、図3は、本実施例の音叉振動型センサ12の原理モデルを表した図を示す。
本実施例の力学量検出装置10は、例えば車両や航空機等の対象物に搭載されており、その重心近傍を通る軸(具体的には鉛直軸;以下適宜、Z軸と称す)回りに生ずる角速度Ωを、半導体で構成した音叉振動型センサ12を用いて検出する角速度検出装置である。角速度センサである音叉振動型センサ12は、Z軸回りの角速度Ωに応じた信号を出力すべく、そのZ軸にそれぞれ直交するX軸及びY軸を含む平面X−Y内に配置されている。尚、X軸とY軸とは互いに直交する。
音叉振動型センサ12は、例えばシリコン結晶基板の表面に微細加工によるエッチングを施すことにより形成される。尚、具体的な製造方法としては、まず、単結晶シリコン層の上面上にシリコン酸化膜(例えば膜厚4.5μm)を介して単結晶シリコン層(例えば膜厚40μm)を設けたSOI(Silicon-On-Insulator)基板を用意し、単結晶シリコン層にリン,ボロン等の不純物をドーピングして単結晶シリコン層の上表面部を低抵抗化して導電帯層とする。そして、最下層の単結晶シリコン層を基板14とし、反応性エッチングなどにより中間層であるシリコン酸化膜(絶縁層)及び最上層である導電帯層を除去すると共に、フッ酸水溶液などを用いたエッチングにより最上層である導電帯層を残して絶縁層のみを除去することにより、同基板14上に各種機能部品を形成する。
尚、図2においては、音叉振動型センサ12の構成部分のうち、絶縁層(中間層)及び導電帯層(最上層)の両方を除去した部分を白色で、絶縁層(中間層)のみを除去した部分を点模様で、また、絶縁層(中間層)及び導電帯層(最上層)の両方を基板14上に残した部分を網模様で、それぞれ示す。また、以下の説明では、点模様の部分を基板14から浮いた部分とし、また、網模様の部分を基板14に固着した部分とする。
音叉振動型センサ12は、上記の如く形成される基板14を備えている。基板14は、X軸方向に平行に延設された2辺及びY軸方向に平行に延設された2辺を有する方形状に形成されている。基板14上には、一対の振動子16L,16Rが同基板14から浮いた状態で設けられている。振動子16L,16Rは、互いに略等しい質量を有し、基板14上でX軸方向対称位置に配置されている。一方の振動子16LのY軸方向両外側には、長尺かつ幅広のメインフレーム18L1,18L2が基板14から浮いた状態でX軸方向に延設して配置されている。また、他方の振動子16RのY軸方向両外側にも、長尺かつ幅広のメインフレーム18R1,18R2が基板14から浮いた状態でX軸方向に延設して配置されている。
振動子16Lは、そのY軸方向両端にてX軸方向外側にそれぞれ一体的に延設された長尺かつ幅広のアーム部20L1,20L2を有している。アーム部20L1,20L2は、そのX軸方向両端にて、それぞれ一対の長尺かつ幅狭の検出用梁22L1,22L2を介してメインフレーム18L1,18L2のX軸方向両端に接続されている。検出用梁22L1,22L2は、アーム部20L1,20L2及びメインフレーム18L1,18L2と一体的に基板14から浮いた状態に形成されており、X軸方向に延設されている。検出用梁22L1,22L2は、振動子16Lをメインフレーム18L1,18L2に対してX軸方向に変位し難くかつY軸方向に変位し易く支持している。
同様に、振動子16Rは、アーム部20L1,20L2と同様のアーム部20R1,20R2を有している。アーム部20R1,20R2は、そのX軸方向両端にて検出用梁22R1,22R2を介してメインフレーム18R1,18R2のX軸方向両端に接続されている。検出用梁22R1,22R2は、アーム部20R1,20R2及びメインフレーム18R1,18R2と一体的に基板14から浮いた状態に形成されており、X軸方向に延設されている。検出用梁22R1,22R2は、振動子16Rをメインフレーム18R1,18R2に対してX軸方向に変位し難くかつY軸方向に変位し易く支持している。
メインフレーム18L1のY軸方向外側には、長尺かつ幅広のサブフレーム24L1が基板14から浮いた状態でX軸方向に延設されている。サブフレーム24L1は、複数の長尺かつ幅狭の駆動梁26L1を介してメインフレーム18L1に接続されると共に、複数の長尺かつ幅狭の駆動梁28L1を介して基板14に固着された複数のアンカ30L1に接続されている。駆動梁26L1,28L1は、メインフレーム18L1及びサブフレーム24L1と一体的に基板14から浮いた状態に形成されてY軸方向に延設されている。また、メインフレーム18L1を基板14に対してX軸方向に変位し易くかつY軸方向に変位し難く支持している。すなわち、メインフレーム18L1は、駆動梁26L1、サブフレーム24L1、及び駆動梁28L1を介して基板14にX軸方向に変位し易くかつY軸方向に変位し難く支持されている。
同様に、メインフレーム18L2,18R1,18R2のY軸方向外側には、サブフレーム24L1と同様のサブフレーム24L2,24R1,24R2が設けられている。各メインフレーム18L2,18R1,18R2は、駆動梁26L2,26R1,26R2、サブフレーム24L2,24R1,24R2、及び駆動梁28L2,28R1,28R2を介して基板14にX軸方向に変位し易くかつY軸方向に変位し難く支持されている。
上記した2つの振動子16L,16Rは、基板14から浮いたリンク部32を介して互いに連結されている。リンク部32は、振動子16L側のメインフレーム18L1と振動子16R側のメインフレーム18R1とを連結する第1リンク部32−1と、振動子16L側のメインフレーム18L2と振動子16R側のメインフレーム18R2とを連結する第2リンク部32−2と、を有している。
第1リンク部32−1は、複数の長尺かつ幅狭の第1リンク梁34L1,34R1と、長尺かつ幅広の第1リンク36−1と、を有している。第1リンク梁34L1,34R1は、メインフレーム18L1,18R1と一体的に基板14から浮いた状態に形成されており、一端にてメインフレーム18L1,18R1に接続されていると共に、Y軸方向に延設され、他端にて第1リンク36−1に接続されている。第1リンク36−1は、メインフレーム18L1,18R1と一体的に基板14から浮いた状態に形成されており、X軸方向に延設されている。同様に、第2リンク部32−2は、複数の長尺かつ幅狭の第2リンク梁34L2,34R2と、長尺かつ幅広の第2リンク36−2と、を有している。
第1リンク36−1と第2リンク36−2とは、一端にて、複数の長尺かつ幅狭のサブリンク梁38L1,38L2及び長尺かつ幅広のサブリンク40Lを介して連結されていると共に、他端にて、複数の長尺かつ幅狭のサブリンク梁38R1,38R2及び長尺かつ幅広のサブリンク40Rを介して連結されている。サブリンク梁38L1,38L2,38R1,38R2はそれぞれ、第1又は第2リンク36−1,36−2と一体的に基板から浮いた状態に形成されており、一端にて第1又は第2リンク36−1,36−2に接続されていると共に、X軸方向に延設され、他端にてサブリンク40L,40Rに接続されている。サブリンク40L,40Rは、第1又は第2リンク36−1,36−2と一体的に基板から浮いた状態に形成されており、Y軸方向に延設されている。
第1及び第2リンク梁34L1,34L2,34R1,34R2は、振動子16L,16Rを第1及び第2リンク36−1,36−2に対してX軸方向に変位し易くかつY軸方向に変位し難く支持しており、リンク36−1,36−2に対する振動子16L,16RのX軸方向への変位を許容する梁である。また、サブリンク梁38L1,38L2,38R1,38R2は、第1リンク36−1と第2リンク36−2とをX軸方向に相対変位し難くかつY軸方向に相対変位し易く支持しており、第1リンク36−1と第2リンク36−2とのY軸方向への相対変位を許容する梁である。
また、基板14上には、メインフレーム18L1,18L2,18R1,18R2を基板14に対してX軸方向に駆動させるための駆動電極部42L1,42L2,42R1,42R2と、メインフレーム18L1,18L2,18R1,18R2の基板14に対するX軸方向の振動をモニタするための駆動モニタ電極部44L1,44L2,44R1,44R2と、振動子16L,16Rの基板14に対するY軸方向の振動を検出するための検出電極部46L1,46L2,46R1,46R2と、振動子16L,16Rの基板14に対するY軸方向の同相変位成分(すなわち、同一方向の変位成分)をダンピングさせるためのダンピング電極部48L1,48L2,48R1,48R2と、が設けられている。
駆動電極部42L1,42L2は、メインフレーム18L1,18L2のX軸方向外側端部にて一体的にY軸方向外側へ向けて基板14から浮かせて延設した突出部50L1,50L2のX軸方向外側に設けられている。駆動電極部42L1,42L2は、X軸方向に延設された櫛歯状の可動電極指60L1,60L2と、X軸方向に延設された櫛歯状の固定電極指62L1,62L2と、を有している。
各固定電極指62L1,62L2は、基板14上に一体的に固着した配線部64L1,64L2を介して基板14上に一体的に固着したパッド部66L1,66L2に接続されている。パッド部66L1,66L2の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド68L1,68L2が設けられている。各可動電極指60L1,60L2は、基板14から浮かせて突出部50L1,50L2からX軸方向外側に一体的に延設して形成されており、固定電極指62L1間又は62L2間のY軸方向中央位置においてX軸方向へ進入しており、固定電極指62L1,62L2にY軸方向で隣接して対向している。
駆動電極部42R1,42R2は、メインフレーム18R1,18R2のX軸方向外側端部にて一体的にY軸方向外側へ向けて基板14から浮かせて延設した突出部50R1,50R2のX軸方向内側に設けられている。駆動電極部42R1,42R2は、X軸方向に延設された櫛歯状の可動電極指60R1,60R2と、X軸方向に延設された櫛歯状の固定電極指62R1,62R2と、を有している。
各固定電極指62R1,62R2は、基板14上に一体的に固着した配線部64R1,64R2を介して基板14上に一体的に固着したパッド部66R1,66R2に接続されている。パッド部66R1,66R2の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド68R1,68R2が設けられている。各可動電極指60R1,60R2は、基板14から浮かせて突出部50R1,50R2からX軸方向内側に一体的に延設して形成されており、固定電極指62R1間又は62R2間のY軸方向中央位置においてX軸方向へ進入しており、固定電極指62R1,62R2にY軸方向で隣接して対向している。
駆動モニタ電極部44L1,44L2は、突出部50L1,50L2のX軸方向内側(駆動電極部42L1,42L2とはX軸方向反対側)に設けられている。駆動モニタ電極部44L1,44L2は、X軸方向に延設された櫛歯状の可動電極指70L1,70L2と、X軸方向に延設された櫛歯状の固定電極指72L1,72L2と、を有している。
各固定電極指72L1,72L2は、基板14上に一体的に固着した配線部74L1,74L2を介して基板14上に一体的に固着したパッド部76L1,76L2に接続されている。パッド部76L1,76L2の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド78L1,78L2が設けられている。各可動電極指70L1,70L2は、基板14から浮かせて突出部50L1,50L2からX軸方向内側に一体的に延設して形成されており、固定電極指72L1間又は72L2間のY軸方向中央位置においてX軸方向へ進入しており、固定電極指72L1,72L2にY軸方向で隣接して対向している。
駆動モニタ電極部44R1,44R2は、突出部50R1,50R2のX軸方向外側(駆動電極部42R1,42R2とはX軸方向反対側)に設けられている。駆動モニタ電極部44R1,44R2は、X軸方向に延設された櫛歯状の可動電極指70R1,70R2と、X軸方向に延設された櫛歯状の固定電極指72R1,72R2と、を有している。
各固定電極指72R1,72R2は、基板14上に一体的に固着した配線部74R1,74R2を介して基板14上に一体的に固着したパッド部76R1,76R2に接続されている。パッド部76R1,76R2の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド78R1,78R2が設けられている。各可動電極指70R1,70R2は、基板14から浮かせて突出部50R1,50R2からX軸方向外側に一体的に延設して形成されており、固定電極指72R1間又は72R2間のY軸方向中央位置においてX軸方向へ進入しており、固定電極指72R1,72R2にY軸方向で隣接して対向している。
検出電極部34L1,34L2,34R1,34R2は、アーム部20L1,20L2,20R1,20R2のY軸方向内側に設けられている。検出電極部34L1,34L2,34R1,34R2は、X軸方向に延設された櫛歯状の可動電極指80L1,80L2,80R1,80R2と、X軸方向に延設された櫛歯状の固定電極指82L1,82L2,82R1,82R2と、を有している。
各固定電極指82L1,82L2,82R1,82R2は、基板14上に一体的に固着した配線部84L1,84L2,84R1,84R2を介して基板14上に一体的に固着したパッド部86L1,86L2,86R1,86R2に接続されている。パッド部86L1,86L2,86R1,86R2の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド88L1,88L2,88R1,88R2が設けられている。各可動電極指80L1,80L2,80R1,80R2は、アーム部20L1,20L2,20R1,20R2のY軸方向内側に一体的に基板14から浮かせて延設された複数の突出部及び振動子16L,16Rから、基板14に対して浮かせてX軸方向に一体的に延設して形成されている。各可動電極指80L1,80L2,80R1,80R2は、固定電極指82L1間、82L2間、82R1間、又は82R2間のX軸方向へ進入しており、その固定電極指82L1,82L2,82R1,82R2にY軸方向で隣接して対向しているが、各間のY軸方向中央位置よりもY軸方向内側にオフセットして設けられている。
ダンピング電極部48L1,48L2,48R1,48R2は、振動子16L,16Rから一体的にX軸方向外側に基板14から浮かせて延設した長尺かつ幅広のアーム部54L1,54L2,54R1,54R2のY軸方向外側に設けられている。ダンピング電極部48L1,48L2,48R1,48R2は、X軸方向に延設された櫛歯状の可動電極指90L1,90L2,90R1,90R2と、X軸方向に延設された櫛歯状の固定電極指92L1,92L2,92R1,92R2と、を有している。
各固定電極指92L1,92L2,92R1,92R2は、基板14上に一体的に固着した配線部94L1,94L2,94R1,94R2を介して基板14上に一体的に固着したパッド部96L1,96L2,96R1,96R2に接続されている。パッド部96L1,96L2,96R1,96R2の上面には、導電金属(例えばアルミニウム)で形成された電極パッド98L1,98L2,98R1,98R2が設けられている。各可動電極指90L1,90L2,90R1,90R2は、アーム部54L1,54L2,54R1,54R2のY軸方向外側に一体的に基板14から浮かせて延設された複数の突出部及び振動子16L,16Rから、基板14に対して浮かせてX軸方向に一体的に延設して形成されている。各可動電極指90L1,90L2,90R1,90R2は、固定電極指92L1間、92L2間、92R1間、又は92R2間のX軸方向へ進入しており、その固定電極指92L1,92L2,92R1,92R2にY軸方向で隣接して対向しているが、各間のY軸方向中央位置よりもY軸方向内側にオフセットして設けられている。
次に、本実施例の力学量検出装置10におけるZ軸回りの角速度Ωを検出するための電気回路について説明する。
本実施例の力学量検出装置10において、上記した各電極パッド68,78,88,98にはそれぞれ、各配線を介して制御回路100が接続されている。この制御回路100は、駆動電極部42の電極パッド68及び駆動モニタ電極部44の電極パッド78の双方に接続するセンサ励振駆動部102と、検出電極部46の電極パッド88に接続する変位検出部104と、ダンピング電極部48の電極パッド98に接続するダンピング制御部106と、を有していると共に、角速度信号処理部108を有している。上記した変位検出部104は、ダンピング制御部106に接続していると共に、角速度信号処理部108に接続している。
センサ励振駆動部102は、振動子16L,16RのX軸方向への駆動振動を励起させるための励起駆動信号を電極パッド68を介して駆動電極部42へ供給すると共に、電極パッド78を介して駆動モニタ電極部44から供給される、振動子16L,16RのX軸方向への駆動振動の状態を示す励起駆動モニタ信号を受信する。変位検出部104は、電極パッド88を介して検出電極部46から供給される、振動子16L,16RのY軸方向の各変位に応じた変位信号をそれぞれ受信すると共に、検出した振動子16L,16RのY軸方向の各変位を示す錘変位信号をそれぞれ角速度信号処理部108及びダンピング制御部106の双方へ供給する。
角速度信号処理部108は、変位検出部104から供給される各振動子16L,16Rについての錘変位信号をそれぞれ受信する。また、ダンピング制御部106は、変位検出部104から供給される各振動子16L,16Rの錘変位信号をそれぞれ受信すると共に、振動子16L,16RのY軸方向への検出振動の同相変位成分をダンピングさせるためのダンピング制御駆動信号を電極パッド98を介してダンピング電極部48へ供給する。
変位検出部104は、検出電極部46側からの変位信号に基づいて振動子16L,16RのY軸方向の各変位をそれぞれ検出する。また、角速度信号処理部108は、振動子16Lと振動子16RとのY軸方向の逆相変位成分を取り出す機能、具体的には、変位検出部104からの各振動子16L,16Rについての錘変位信号が入力される減算器108aを有している。減算器108aは、振動子16LのY軸方向変位と振動子16RのY軸方向変位との変位差(すなわち変位量の差)を算出してZ軸回りの角速度Ωの成分を示す角速度成分変位信号を生成する。角速度信号処理部108は、角速度成分変位信号に基づいてZ軸回りの角速度Ωを検出する。
更に、ダンピング制御部106は、変位検出部104からの各振動子16L,16Rの錘変位信号が入力される加算器106aと、加算器106aの出力が入力される微分回路106bと、微分回路106bの出力が入力される駆動回路106cと、を有している。加算器106aは、振動子16Lと振動子16RとのY軸方向の同相変位成分を取り出す機能を発揮するものであり、振動子16LのY軸方向変位と振動子16RのY軸方向変位との和(すなわち、変位量の加算値)を算出して両振動子16L,16Rの双方に加わる慣性力による加速度の成分を示す加速度成分変位信号を生成する。微分回路106bは、加算器106aの出力である加速度成分変位信号を時間微分して、振動子16LのY軸方向変位と振動子16RのY軸方向変位との和の時間微分値を算出する。また、駆動回路106cは、微分回路106bの出力である上記した和の時間微分値に基づいて、後に詳述する如く、2つの振動子16L,16RをY軸方向の同相方向へ駆動する上記のダンピング制御駆動信号を生成して、ダンピング電極部48へ供給する。
次に、本実施例の力学量検出装置10の動作について説明する。
本実施例の力学量検出装置10を搭載する車両などがイグニションオン等により起動されると、以後、制御回路100のセンサ励振駆動部102は、電極パッド68を介して駆動電極部42に正弦波や矩形波などの周期的な駆動信号を振動子16L,16RのX軸方向の共振周波数にて印加する。かかる駆動信号が駆動電極部42に印加されると、その駆動電極部42の可動電極指60と固定電極指62との間にメインフレーム18側をX軸方向に駆動させる静電気力が発生する。この静電気力は、上記した駆動信号の印加周期に従ってX軸方向の一方と他方とに交互に作用する。
かかる静電気力が発生すると、可動電極指60に連なるメインフレーム18L1,18L2,18R1,18R2がその静電気力に応じてX軸方向に変位し、その変位が駆動梁26,28を介して振動子16L,16R側に伝達されることで、駆動梁26,28の弾性により振動子16L,16Rを含む可動部全体がX軸方向に駆動振動する。この場合、両振動子16L,16RのX軸方向の駆動振動は互いに逆相となる。すなわち、振動子16LがX軸方向左方に変位するときは、振動子16Rはその振動子16Lとは逆にX軸方向右方に変位し、一方、振動子16LがX軸方向右方に変位するときは、振動子16Rはその振動子16Lとは逆にX軸方向左方に変位する。
また、この際、センサ励振駆動部102は、電極パッド78を介して駆動モニタ電極部44から供給される、振動子16L,16RのX軸方向への駆動振動の状態を示す励起駆動モニタ信号に基づいて、その駆動モニタ電極部44の櫛歯間の容量変化を検知して、振動子16L,16Rの駆動振動の周波数や振幅等をモニタする。そして、そのモニタ結果を、駆動電極部42に印加する駆動信号にフィードバックする。これにより、駆動電極部42に印加される駆動信号は調整されることで、振動子16L,16RのX軸方向の駆動振動は両者間で等しく常に一定振幅となるように行われる。
振動子16L,16Rが励起されて駆動振動している状態で、Z軸回りに角速度が加わると、その振動子16L,16Rに、その質量m、X軸方向の振動速度Vx、及び角速度Ωzに応じたY軸方向(検出方向)へのコリオリ力Fc=2m・Vx・Ωzが作用する。かかるコリオリ力が作用すると、振動子16L,16RがY軸方向へ変位し、角速度Ωzの大きさに比例した振幅でかつX軸方向への励起駆動振動の周波数に応じた周期で振動する。この場合、コリオリ力による振動子16L,16RのY軸方向への検出振動は互いに逆相となる。すなわち、振動子16LがY軸方向上方に変位するときは、振動子16Rはその振動子16Lとは逆にY軸方向下方に変位し、一方、振動子16LがY軸方向下方に変位するときは、振動子16Rはその振動子16Lとは逆にY軸方向上方に変位する。
また、上記の如く振動子16L,16RがY軸方向へ変位すると、その変位に応じて検出用梁22が弾性変形して、検出電極部46の可動電極指80と固定電極指82との隙間が変化して、両者間の静電容量が変化する。
変位検出部104は、振動子16Lの検出電極部46Lから供給される、上記の静電容量に応じたすなわち振動子16LのY軸方向の変位に応じた変位信号をそれぞれ受信して、その変位信号に基づいて振動子16LのY軸方向の変位量を検出すると共に、振動子16Rの検出電極部46Rから供給される、上記の静電容量に応じたすなわち振動子16RのY軸方向の変位に応じた変位信号をそれぞれ受信して、その変位信号に基づいて振動子16RのY軸方向の変位量を検出する。そして、検出した振動子16L,16RのY軸方向の各変位量を示す錘変位信号をそれぞれ角速度信号処理部108及びダンピング制御部106の双方へ供給する。
角速度信号処理部108は、変位検出部104から供給される2つの振動子16L,16Rについての各錘変位信号に基づいて、減算器108aにて振動子16LのY軸方向変位と振動子16RのY軸方向変位との変位差を算出して、Z軸回りの角速度Ωの成分を示す角速度成分変位信号を生成し、Z軸回りに生ずる角速度Ωを検出する。
このように、本実施例の力学量検出装置10において、対象物に実際にZ軸回りに角速度が作用するときは、振動子16L,16Rがコリオリ力に伴ってY軸方向に互いに逆相(変位方向が逆)で検出振動するので、それらの変位差に基づいてZ軸回りの角速度を検出することができる。
尚、本実施例の力学量検出装置10は車両や航空機等の対象物に搭載されるため、コリオリ力とは別に例えば加減速に起因する加速度を伴う慣性力(振動外乱)が対象に作用することがある。この慣性力に起因して振動子16L,16RがY軸方向に検出振動するときは、その振動子16L,16RのY軸方向への検出振動の成分は互いに同相(変位方向が同じ)となる。また、慣性力に起因して振動子16L,16RがX軸方向に変位振動するときは、その振動子16L,16RのX軸方向への駆動振動の成分は互いに同相(変位方向が同じ)となるため、そのX軸方向の駆動振動に伴うコリオリ力によって振動子16L,16RがY軸方向へ検出振動しても、その振動子16L,16RのY軸方向への検出振動の成分は互いに同相(変位方向が同じ)となる。
この慣性力に起因して振動子16L,16RのY軸方向への検出振動の成分が互いに同相になるときは、両振動子16L,16R間に変位位置の差は生じない。このため、上記の如く制御回路100の処理によれば、振動子16L,16RのY軸方向の同相変位成分は打ち消されて、その同相変位成分による角速度成分はゼロとなる。従って、本実施例の力学量検出装置10によれば、Z軸回りの角速度検出への慣性力による影響を排除してその角速度の誤検出を極力防止し、これにより、その角速度を精度よく検出することが可能となっている。
図4は、一対の振動子16L,16Rの加工公差等に起因する音叉振動型センサ12の誤出力を説明するための図を示す。ところで、角速度が作用する際は、一方の振動子16Lについての錘変位成分A1と、同タイミングにおける他方の振動子16Rの錘変位成分A2とが逆相となる(図4(A))。一方、音叉振動型センサ12の有する素子の加工バラツキ等に起因して、2つの振動子16L,16Rの間で質量やバネ特性,変位検出能力に差が生じることがある。かかる事態が生じていると、外乱振動等の慣性力が作用することによって2つの振動子16L,16RがY軸方向に同相変位した際に、それらの振動子16L,16RのY軸方向への検出振動成分(センサ出力)に逆相成分が現れる(図4(B))。このため、上記の如きZ軸回りの角速度の検出を単に各振動子16L,16RのY軸方向の変位の差に基づいて行うこととすると、角速度が作用することなく慣性力のみが作用しただけであるときにも、角速度が生じたものと判断されることが起こり得、角速度の誤検出を招くこととなってしまう。
そこで、このような一対の振動子16L,16R間のバラツキ等に起因する角速度の誤検出を防止すべく、外部からの慣性力を吸収して音叉振動型センサ12をその慣性力が作用し難くなるように防振ゴムなどを介して車体や機体の外部基板に取り付けることが考えられる。しかしながら、このような構成では、角速度検出を行うための部品点数が増大して、センサ規模の大型化や製造工程の複雑化,製造コストの上昇などの不都合が生じてしまう。
これに対して、本実施例においては、上記の如く、音叉振動型センサ12が、基板14上に、振動子16L,16Rの基板14に対するY軸方向の同相変位をダンピングさせるためのダンピング電極部48を有し、力学量検出装置10が、そのダンピング電極部48に接続するダンピング制御部106を有している。
ダンピング制御部106は、まず、加算器106aにて、変位検出部104から供給される2つの振動子16L,16Rについての各錘変位信号に基づいて、振動子16LのY軸方向変位と振動子16RのY軸方向変位との和を算出する。次に、微分回路106bにて、その算出した和に基づいてその和を時間微分することによりその時間微分値を算出し、そして、駆動回路106cにて、その算出した時間微分値に基づいて、2つの振動子16L,16RをY軸方向の同相方向へ駆動してその同相変位成分をダンピングさせるためのダンピング制御駆動信号を生成して、振動子16L,16R側それぞれのダンピング電極部48へ供給する。
ダインピング電極部48にかかるダンピング制御駆動信号が印加されると、そのダンピング電極部48の可動電極指90と固定電極指92との間に振動子16L,16RをY軸方向に駆動させる静電気力が発生する。かかる静電気力が発生すると、可動電極指90に連なる振動子16L,16Rがその静電気力に応じてY軸方向に変位する。この際、その静電気力による両振動子16L,16RのY軸方向の変位は、同相変位成分がキャンセルされるように行われる。
すなわち、本実施例において、両振動子16L,16RのY軸方向の運動方程式は、次式(1)及び(2)により表される。尚、mは振動子16の質量を、Dはダンピング定数を、kは検出用梁22のバネ定数を、Fcはコリオリ力を、yは振動子16の変位を、それぞれ示すと共に、DEは2つの振動子16の変位の和の微分値を各振動子16をY軸方向に駆動する力へ変換するための変換係数としてのダンピング定数(以下、電気ダンピング定数と称す)である。また、添字1,2は、2つの振動子16L,16Rを表す。
図5(A)は振動子16L,16RがY軸方向に互いに逆相で検出振動する逆相振動モード時における周波数とゲインとの関係を表す振動特性を、また、図5(B)は振動子16L,16RがY軸方向に互いに同相で変位振動する同相振動モード時における振動特性を、それぞれ示す。また、図6は、本実施例の力学量検出装置10による効果を説明するための図を示す。尚、図6には、逆相振動モード時における振動特性と同相振動モード時における振動特性とを比較した図を示す。
本実施例の構成において、対象物のZ軸回りに角速度が生じているときすなわち振動子16L,16RがY軸方向に互いに逆相で検出振動しているときは、それら2つの振動子16L,16RのY軸方向変位の和が略ゼロとなり、その微分値も略ゼロとなるので、上記(1)式及び(2)式における電気ダンピング定数DEの項は共に略ゼロとなる。この場合には、ダンピング制御部106からダンピング電極部48へ印加するダンピング制御駆動信号が、振動子16L,16RをY軸方向へ駆動させるものでなくなるので、ダンピング電極部48において振動子16L,16RをY軸方向へ変位駆動させる静電気力はほとんど発生せず、その結果として、2つの振動子16L,16RのY軸方向の変位はそれぞれ角速度の大きさに応じた振幅となる。
従って、本実施例の力学量検出装置10においては、振動子16L,16RがY軸方向に互いに逆相で検出振動する逆相振動モード時、振動子16L,16Rの逆相検出振動に対するダンピング作用がほとんどなく、2つの振動子16L,16Rの振動特性が、ダンピング電極部48やダンピング制御部106が全く存在しない力学量検出装置(すなわち電気ダンピング無し)におけるものと略同じになる(図5(A))。
一方、対象物にY軸方向への慣性力による加速が生じているときすなわち振動子16L,16RがY軸方向に互いに同相で変位しているときは、それら2つの振動子16L,16RのY軸方向変位の和(の絶対値)がゼロを基準にして大きな値になり、その微分値(の絶対値)もゼロを基準にして大きくなる。この場合には、ダンピング制御部106からダンピング電極部48へ印加するダンピング制御駆動信号が、振動子16L,16RをY軸方向のその変位を妨げる方向へ駆動させるものとなるので、各ダンピング電極部48において振動子16L,16RをY軸方向のその変位を妨げる方向へ変位駆動させる静電気力が発生し、その結果として、2つの振動子16L,16RのY軸方向の変位は共に抑えられる。
従って、本実施例の力学量検出装置10においては、振動子16L,16RがY軸方向に互いに同相で変位振動する同相振動モード時、振動子16L,16Rの同相変位振動に対するダンピング作用が発揮されるものとなり、振動子16L,16RのY軸方向の振動検出のための共振のQ値が下がり、2つの振動子16L,16Rの振動特性が、ダンピング電極部48やダンピング制御部106が全く存在しない力学量検出装置(すなわち電気ダンピング無し)におけるものと異なるものになる(図5(B))。
このように、本実施例の力学量検出装置10によれば、コリオリ力により振動子16L,16RをY軸方向に互い逆相で変位させるための振動特性と、外乱振動などの慣性力により振動子16L,16RをY軸方向に互い同相で変位させるための振動特性と、を異ならせること(図6参照)ができるので、Z軸回りの角速度を検出する検出特性を変えることなくすなわちコリオリ力による2つの振動子16L,16RのY軸方向への逆相変位を抑えることなく(すなわちセンサ感度を損なうことなく)、振動外乱などの慣性力による2つの振動子16L,16RのY軸方向への同相変位を抑えることが可能となる。
この点、本実施例においては、音叉振動型センサ12のセンサ素子を構成する振動子16L,16Rの質量や検出用梁22のバネ特性,各種電極部の寸法等に、振動子16L側と振動子16R側との間で製造工程等での加工バラツキ差が存在する状況でも、慣性力入力時に、2つの振動子16L,16RのY軸方向変位に上記の加工バラツキ差に起因したその慣性力による逆相変位成分(コリオリ力による変位と等価な誤差変位成分)が現れ難く、慣性力による2つの振動子16L,16R間のY軸方向における変位差が抑えられる。従って、本実施例の力学量検出装置10によれば、Z軸回りの角速度の検出に際し外乱等の慣性力による影響を排除することができるので、音叉振動型センサ12の誤出力及びZ軸回りの角速度の誤検出を防止することができ、振動子16L,16RのY軸方向の変位差に基づくZ軸回りの角速度の検出を精度よく実現することが可能となっている。
このため、本実施例の構成によれば、音叉振動型センサ12と車体や機体の外部基板との間に、それらの振動子16L,16R間のバラツキを吸収して角速度の誤検出を防止するための防振ゴム等を介在させることは不要となるので、従って、角速度の誤検出を防止する機能を確保しつつ、その角速度を精度よく検出するために必要なゴム部材を削減して、センサ規模や装置規模の小型化や製造工程の簡素化,製造コストの低減などを図ることが可能となっている。
尚、上記の第1実施例においては、Z軸回りの角速度が特許請求の範囲に記載した「所定の力学量」に、振動子16L,16Rが特許請求の範囲に記載した「錘」に、X軸方向(駆動方向)が特許請求の範囲に記載した「所定の第1方向」に、Y軸方向(検出方向)が特許請求の範囲に記載した「検出方向」及び「所定の第2方向」に、Z軸が特許請求の範囲に記載した「所定軸」に、それぞれ相当している。
また、上記の第1実施例においては、角速度信号処理部108がZ軸回りの角速度Ωを検出することにより特許請求の範囲に記載した「検出手段」が、ダンピング制御部106の加算器106aが2つの振動子16L,16RのY軸方向における同相変位成分の和を算出しかつ微分回路106bがその和の時間微分値を算出することにより特許請求の範囲に記載した「算出手段」及び「算出ステップ」が、駆動回路106cが微分回路106bの算出した値に基づいて2つの振動子16L,16RのY軸方向の同相方向へ駆動させるダンピング制御駆動信号をダンピング電極部48に印加することにより特許請求の範囲に記載した「ダンピング制御手段」及び「ダンピング制御ステップ」が、それぞれ実現されている。
上記した第1実施例では、変位検出部104から供給される各振動子16L,16Rの錘変位信号をそれぞれ受信しかつダンピング電極部48の電極パッド98に接続するダンピング制御部106を設け、そのダンピング制御部106に、まず、加算器106aにて変位検出部104からの錘変位信号である2つの振動子16L,16RのY軸方向変位を加算させて、その後に、微分回路106bにてその加算値を時間微分させることとしている。
これに対して、本発明の第2実施例においては、変位検出部104からの錘変位信号である2つの振動子16L,16Rの各Y軸方向変位をそれぞれ時間微分し、その後に、両時間微分値を加算することとしている。
図7は、本実施例の力学量検出装置200の電気的なブロック構成図を示す。尚、図7において、上記図2に示す部分と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
すなわち、本実施例の力学量検出装置200において、各電極パッド68,78,88,98にはそれぞれ、各配線を介して制御回路202が接続されている。制御回路202は、センサ励振駆動部102と、変位検出部104と、角速度信号処理部108と、ダンピング電極部48の電極パッド98に接続するダンピング制御部204と、を有している。変位検出部104は、角速度信号処理部108に接続していると共に、ダンピング制御部204に接続している。変位検出部104の出力(各錘変位信号)は、角速度信号処理部108と共にダンピング制御部204へ供給される。
ダンピング制御部204は、変位検出部104から供給される各振動子16L,16Rの錘変位信号をそれぞれ受信すると共に、振動子16L,16RのY軸方向への検出振動の同相変位成分をダンピングさせるためのダンピング制御駆動信号を電極パッド98を介してダンピング電極部48へ供給する。
ダンピング制御部204は、変位検出部104からの一方の振動子16Lの錘変位信号が入力される微分回路204aと、変位検出部104からの他方の振動子16Rの錘変位信号が入力される微分回路204bと、微分回路204aの出力及び微分回路204bの出力が共に入力される加算器204cと、加算器204cの出力が入力される駆動回路204dと、を有している。
微分回路204aは、振動子16LのY軸方向変位を時間微分して、その時間微分値を算出する。微分回路204bは、振動子16RのY軸方向変位を時間微分して、その時間微分値を算出する。加算器204cは、微分回路204aの出力と微分回路204bの出力との和を算出して両振動子16L,16Rの双方に加わる慣性力による加速度の成分を示す加速度成分信号を生成する。また、駆動回路204dは、加算器204cの出力である上記した2つの振動子16L,16Rの各Y軸方向変位の時間微分値の和に基づいて、後に詳述する如く、2つの振動子16L,16RをY軸方向の同相方向へ駆動する上記のダンピング制御駆動信号を生成して、ダンピング電極部48へ供給する。
すなわち、本実施例において、ダンピング制御部204は、まず、微分回路204a,204bにて、変位検出部104から供給される2つの振動子16L,16Rについての各錘変位信号に基づいて、振動子16LのY軸方向変位及び振動子16RのY軸方向変位をそれぞれ時間微分することにより各時間微分値を算出する。次に、加算器204cにて、その算出した各時間微分値に基づいてその和を算出し、そして、駆動回路204dにて、その算出した和に基づいて、2つの振動子16L,16RをY軸方向の同相方向へ駆動してその同相変位成分をダンピングさせるためのダンピング制御駆動信号を生成して、振動子16L,16R側それぞれのダンピング電極部48へ供給する。
ダインピング電極部48にかかるダンピング制御駆動信号が印加されると、上記した第1実施例と同様に、そのダンピング電極部48の可動電極指90と固定電極指92との間に振動子16L,16RをY軸方向に駆動させる静電気力が発生する。かかる静電気力が発生すると、可動電極指90に連なる振動子16L,16Rがその静電気力に応じてY軸方向に変位する。この際、その静電気力による両振動子16L,16RのY軸方向の変位は、同相変位成分がキャンセルされるように行われる。
従って、本実施例の力学量検出装置200においては、上記した第1実施例の力学量検出装置10と同様に、振動子16L,16RがY軸方向に互いに逆相で検出振動する逆相振動モード時、振動子16L,16Rの逆相検出振動に対するダンピング作用がほとんどなく、2つの振動子16L,16Rの振動特性が、ダンピング電極部48やダンピング制御部204が全く存在しない力学量検出装置(すなわち電気ダンピング無し)におけるものと略同じになると共に、振動子16L,16RがY軸方向に互いに同相で変位振動する同相振動モード時、振動子16L,16Rの同相変位振動に対するダンピング作用が発揮されるものとなり、振動子16L,16RのY軸方向の振動検出のための共振のQ値が下がり、2つの振動子16L,16Rの振動特性が、ダンピング電極部48やダンピング制御部204が全く存在しない力学量検出装置(すなわち電気ダンピング無し)におけるものと異なるものになる。
このように、本実施例の力学量検出装置200によれば、コリオリ力により振動子16L,16RをY軸方向に互い逆相で変位させるための振動特性と、外乱振動などの慣性力により振動子16L,16RをY軸方向に互い同相で変位させるための振動特性と、を異ならせること(図6参照)ができるので、Z軸回りの角速度を検出する検出特性を変えることなくすなわちコリオリ力による2つの振動子16L,16RのY軸方向への逆相変位を抑えることなく(すなわちセンサ感度を損なうことなく)、振動外乱などの慣性力による2つの振動子16L,16RのY軸方向への同相変位を抑えることが可能となる。従って、本実施例の力学量検出装置200によれば、上記した第1実施例と同様の効果を得ることが可能となっている。
尚、上記の第2実施例においては、ダンピング制御部204の微分回路204a,204bが2つの振動子16L,16RのY軸方向における同相変位成分の各時間微分値を算出しかつ加算器204cがその時間微分値の和を算出することにより特許請求の範囲に記載した「算出手段」及び「算出ステップ」が、駆動回路204dが加算器204cの算出した値に基づいて2つの振動子16L,16RのY軸方向の同相方向へ駆動させるダンピング制御駆動信号をダンピング電極部48に印加することにより特許請求の範囲に記載した「ダンピング制御手段」及び「ダンピング制御ステップ」が、それぞれ実現されている。
ところで、上記の第1及び第2実施例においては、音叉振動型センサ12を図1に示す如き構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成としてもよい。