JP2009047611A - 表面温度測定方法および表面温度測定装置 - Google Patents

表面温度測定方法および表面温度測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】波長帯の異なる複数種類の赤外線が検出されることで行われる対象物の表面温度の測定に際し、対象物の表面についての放射率の高低に応じて演算を行うことができ、測定精度を向上させることができる表面温度測定方法を提供すること。
【解決手段】対象物の表面から放射される波長帯が異なる三種類の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出工程と、前記分布の各要素について計測温度(見かけ温度)を測定温度(黒体温度)として変換する温度変換工程と、前記各波長帯に対応する前記測定温度(Trs1、Trs2、Trs3)間の温度差の全てが設定温度差値ΔTよりも小さいか否かの判定を行う判定工程と、前記温度差の全てがΔTよりも小さい場合、前記測定温度の平均を表面温度Tとして導出する表面温度導出工程と、前記温度差の全てがΔTよりも小さくない場合、前記測定温度に基づいてTを三色法により算出する表面温度算出工程とを備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、例えば鍛造用や鋳造用の金型の表面温度等の、放射率変動がある対象物の表面温度の測定に好適に用いられる表面温度測定方法および表面温度測定装置に関する。
従来、対象物の表面温度を測定する方法として、非接触式の表面温度測定方法が知られている。非接触式の表面温度測定方法の代表例としては、対象物から放射される赤外線が検出されることにより対象物の表面温度が測定される赤外線サーモグラフィが挙げられる。
赤外線サーモグラフィは、対象物の表面温度を非接触で測定できるという利点だけでなく、対象物表面の所定領域の温度(温度分布)をリアルタイムで測定できるという利点も有する。
しかし、赤外線サーモグラフィにより測定された温度分布は、対象物の放射率や反射率、あるいは周囲の温度等により大きく変動する。また、対象物の放射率や反射率は、たとえ同一の対象物であっても、その表面状態等により大きく変動し得る。これらの理由から、表面状態が時々刻々と変化する対象物については、赤外線サーモグラフィによる対象物表面の温度分布の測定精度を確保することが困難であった。
このような問題を解決する方法として、三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィが提案されている。例えば、特許文献1、特許文献2および非特許文献1に記載の如くである。
三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィにおいては、波長帯の異なる三種類の赤外線を検出可能な赤外線カメラ(例えば、フィルタを交換することにより波長帯の異なる赤外線をそれぞれ検出する赤外線カメラ、あるいはそれぞれ波長帯の異なる赤外線を検出する三台の赤外線カメラ)により、それぞれ対象物の表面温度の分布が測定される。これらの測定値(測定温度)が用いられて、(1)対象物の黒体温度(真の表面温度)、(2)対象物の放射率(反射率=1−放射率)、および(3)周囲の温度、の三つを変数とする三つの方程式(エネルギー保存則に基づく式)が取得される。そして、これらの連立方程式が解かれることにより、対象物の黒体温度(真の表面温度)の分布が、所定の収束解として算出される。
三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィは、精度良く測定することが困難な放射率や反射率、あるいは周囲の温度を必要とせずに、対象物の表面温度の分布を測定することが可能であり、作業性に優れる。
しかし、このような三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィによる表面温度測定方法(三色法)においては、次のような不具合がある。すなわち、三色法においては、前述のように対象物の表面についての放射率が必要とされないことから、対象物の表面の全放射率範囲について(対象物の表面の放射率にかかわらず)、三色法という共通の方法が用いられる。このため、三色法により算出される対象物の表面温度についての精度低下が生じる場合がある。
具体的には、対象物の表面の放射率は、その対象物である物体固有の値であるものの、対象物の表面状態などによって変動する。一方、三色法の演算では、前述したように赤外線カメラによって測定された対象物の測定温度が用いられる。この対象物の測定温度は、対象物の放射率が1またはそれに近似する値である場合、対象物の真の表面温度と同一またはそれに近似する温度となることが、実験等により判っている。対象物についての測定温度と真の表面温度とが同一または互いに近似する値となると、三色法の演算によって求められる解が、収束しにくくなる(発散しやすくなる)。このため、三色法により算出される対象物の表面温度が不安定となり、三色法によって得られる対象物の表面温度についての精度が低下する。
特開2004−219114号公報 特開平7−146179号公報 非破壊検査第48巻10号(1999) 673頁
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、波長帯の異なる複数種類の赤外線が検出されることで行われる対象物の表面温度の測定に際し、対象物の表面についての放射率の高低に応じて演算を行うことができ、測定精度を向上させることができる表面温度測定方法および表面温度測定装置を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、表面温度測定方法であって、対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる複数種類の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出工程と、前記赤外線の強度分布の各要素について、前記赤外線分布検出工程により検出された前記複数種類の赤外線の強度から計測温度を算出し、この算出した計測温度を、前記対象物が黒体である場合に対応する測定温度として変換する温度変換工程と、前記温度変換工程により得られた、前記複数種類の赤外線の各波長帯に対応する前記測定温度間の温度差の全てが、前記各波長帯に対応する前記測定温度に対して十分に小さい温度値として予め設定された所定の温度差値よりも小さいか否かの判定を行う判定工程と、前記判定工程により、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいとの判定結果が得られた場合、前記温度変換工程により得られた、前記各波長帯に対応する前記測定温度のうちのいずれかの前記測定温度、あるいは前記各波長帯に対応する前記測定温度の平均を、前記対象物の表面温度として導出する表面温度導出工程と、前記判定工程により、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さくないとの判定結果が得られた場合、前記温度変換工程により得られた、前記各波長帯に対応する前記測定温度に基づいて、前記対象物の表面温度を算出する表面温度算出工程と、を備えるものである。
請求項2においては、請求項1に記載の表面温度測定方法において、前記判定工程により得られた、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいか否かの判定結果を用いて、前記対象物の表面が、該対象物の表面についての放射率が1またはそれに近似する値となる高放射率状態であるか否かの判定を行うものである。
請求項3においては、表面温度測定装置であって、対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる複数種類の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出手段と、前記赤外線の強度分布の各要素について、前記赤外線分布検出手段により検出された前記複数種類の赤外線の強度から計測温度を算出し、この算出した計測温度を、前記対象物が黒体である場合に対応する測定温度として変換する温度変換手段と、前記温度変換手段により得られた、前記複数種類の赤外線の各波長帯に対応する前記測定温度のうちのいずれかの前記測定温度、あるいは前記各波長帯に対応する前記測定温度の平均を、前記対象物の表面温度として導出する表面温度導出手段と、前記温度変換手段により得られた、前記各波長帯に対応する前記測定温度に基づいて、前記対象物の表面温度を算出する表面温度算出手段と、前記温度変換手段により得られた、前記各波長帯に対応する前記測定温度間の温度差の全てが、前記各波長帯に対応する前記測定温度に対して十分に小さい温度値として予め設定された所定の温度差値よりも小さいか否かの判定を行い、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいと判定した場合は、前記表面温度導出手段により、前記対象物の表面温度を導出させ、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さくないと判定した場合は、前記表面温度算出手段により、前記対象物の表面温度を算出させる判定手段と、を備えるものである。
請求項4においては、請求項3に記載の表面温度測定装置において、前記判定手段は、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいか否かの判定結果を用いて、前記対象物の表面が、該対象物の表面についての放射率が1またはそれに近似する値となる高放射率状態であるか否かの判定を行うものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、波長帯の異なる複数種類の赤外線が検出されることで行われる対象物の表面温度の測定に際し、対象物の表面についての放射率の高低に応じて演算を行うことができ、測定精度を向上させることができる。
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、図1〜図3を用いて、本発明に係る表面温度測定装置の一実施形態である表面温度測定装置1について説明する。
図1に示す如く、本実施形態に係る表面温度測定装置1は、鍛造用金型2の表面、特にキャビティ面(以下「金型キャビティ面」という。)2aの温度の分布を測定する。表面温度測定装置1は、赤外線分布検出装置10と、制御装置20とを備える。
鍛造用金型2は、温度測定に係る対象物の実施の一形態であり、その合わせ面には、鍛造物(鍛造用金型2により所定の形状に鍛造されたもの)に対応する形状の金型キャビティ面2aが形成される。
金型キャビティ面2aには、鍛造物の鍛造用金型2からの取出しが容易とされるために予め離型剤が塗布される。離型剤が塗布されるときの金型キャビティ面2aの温度が高すぎると、離型剤が金型キャビティ面2aに強固に固着し、鍛造物の取出しが容易にできなくなる場合がある。また、離型剤が塗布されるときの金型キャビティ面2aの温度が低すぎると、塗布された離型剤に水分が残留し、この水分が鍛造時に蒸発して鍛造物の品質低下を招く場合がある。
したがって、金型キャビティ面2aに離型剤が塗布されるときには、金型キャビティ面2aの温度が、離型剤が金型キャビティ面2aに強固に固着することなく、かつ、塗布された離型剤から水分が十分に蒸発する所定の温度域にあることが確認される必要がある。
そこで、本実施形態に係る表面温度測定装置1は、金型キャビティ面2aに離型剤が塗布されるときの金型キャビティ面2aの温度分布が、所定の温度域にあるか否かを判定するために用いられる。
なお、表面温度測定装置の用途は、本実施形態に限定されず、例えば鋳造用の金型など、種々の対象物の表面の温度分布を測定する用途に広く適用可能である。
赤外線分布検出装置10は、赤外線分布検出手段の実施の一形態であり、金型キャビティ面2aから放射される赤外線のうち、波長帯が異なる三種類の赤外線の強度分布を検出する。
赤外線分布検出装置10は、赤外線カメラ11と、バンドパスフィルタである短波長フィルタ12a、中波長フィルタ12b、および長波長フィルタ12cと、切り替え装置13とを備える。
赤外線カメラ11は、赤外線の強度分布を検出するものである。ここで、「強度分布」とは、対象物の表面における強度の分布を指す。具体的には、赤外線カメラ11は、赤外線サーモグラフィの本体となり、その検出した赤外線の強度分布(以下「赤外線強度分布」という。)に係る情報を、温度の分布を示す画像である熱画像として出力する。赤外線カメラ11は、検出素子11aと、レンズ11bとを備える。
本実施形態における検出素子11aは、5〜15μm程度の波長の赤外線、即ち短波長帯から長波長帯までの全ての波長帯の赤外線を検出可能なHgCdTeからなる二次元アレイ型の半導体素子である。検出素子11aは、赤外線カメラ11の視野内の所定領域における赤外線強度分布を検出することが可能である。
なお、本実施形態の赤外線カメラ11における検出素子11aは、HgCdTeからなる二次元アレイ型の半導体素子であるが、これに限定されず、他の検出素子が用いられても良い。
レンズ11bは、所定の領域(視野)から放射される赤外線を検出素子11aに収束するものである。本実施形態の場合、所定の領域(視野)内に金型キャビティ面2aが配置されることにより、金型キャビティ面2aから放射される赤外線が検出素子11aに収束される。
短波長フィルタ12a、中波長フィルタ12b、および長波長フィルタ12c(以下総称する場合、「三つのフィルタ12a・12b・12c」とする。)は、それぞれ異なる波長帯の赤外線を透過させるフィルタである。本実施形態においては、短波長フィルタ12aは、波長が7.4〜9.0μmの赤外線を透過させる。また、中波長フィルタ12bは、波長が9.3〜11.3μmの赤外線を透過させる。また、長波長フィルタ12cは、波長が10.9〜14.3μmの赤外線を透過させる。
なお、三つのフィルタ12a・12b・12cの各フィルタ(以下単に「各フィルタ」ともいう。)が透過させる赤外線の波長帯は、本実施形態に限定されない。また、各フィルタが透過させる赤外線の波長帯は、その一部が他のフィルタが透過させる赤外線の波長と重複しても良い。
また、本実施形態の赤外線分布検出装置10は、透過させる赤外線の波長帯が異なる三つのフィルタ12a・12b・12cを備える構成であるが、これに限定されず、透過させる赤外線の波長帯が異なる二つ、あるいは四つ以上フィルタを備える構成であっても良い。つまり、赤外線分布検出装置としては、金型キャビティ面2aから放射される赤外線のうち、波長帯が異なる複数種類の赤外線強度分布を検出する構成を備えるものであればよい。
切り替え装置13は、三つのフィルタ12a・12b・12cのうち、赤外線カメラ11の視野を覆うフィルタを切り替える。切り替え装置13は、ディスク13aと、モータ13bとを備える。
ディスク13aは、略円盤状の部材であり、三つのフィルタ12a・12b・12cがそれぞれ嵌め込まれるための孔部を有する。これらの孔部は、それぞれディスク13aの中心からの距離が略同じとなる位置に設けられる。ディスク13aは、モータ13bにより回転可能に設けられる。ディスク13aは、その有する孔部に嵌め込まれた三つのフィルタ12a・12b・12cのうちのいずれかのフィルタ(以下単に「いずれかのフィルタ」ともいう。)が、赤外線カメラ11のレンズ11bに対向する位置、即ち赤外線カメラ11の視野を覆う位置となるように配置される。
モータ13bは、回転駆動するアクチュエータであり、その回転軸はディスク13aの中心に固定される。
モータ13bの駆動により、ディスク13aが回転し、三つのフィルタ12a・12b・12cのうち、赤外線カメラ11の視野を覆うフィルタが切り替わる。
なお、本実施形態の赤外線分布検出装置10は、波長帯が異なる三種類の赤外線強度分布を検出するための構成として、一台の赤外線カメラ11と、それぞれ異なる波長帯の赤外線を透過させる三つのフィルタ12a・12b・12cとを有し、赤外線カメラ11の視野を覆うフィルタが切り替わる構成を備えるが、これは次のような構成で代替可能である。すなわち、それぞれ異なる波長帯の赤外線の分布を検出することができる三台の赤外線カメラが用いられる構成である。つまり、赤外線分布検出装置が備えることとなる、波長帯が異なる三種類の赤外線強度分布を検出するための構成は、本実施形態に限定されるものではない。
また、一台の赤外線カメラに対して複数のフィルタが用いられる構成においても、その赤外線カメラの視野を覆うフィルタが切り替えられるための構成は、本実施形態に限定されるものではない。フィルタが切り替えられるための構成の他の例としては、複数のフィルタを並んだ状態で配置させる部材がスライドすることにより、赤外線カメラの視野を覆うフィルタが切り替わる構成などが考えられる。
なお、以下の説明においては、各フィルタついて、その赤外線カメラ11の視野を覆う状態を「セットされた状態」という。
赤外線カメラ11は、三つのフィルタ12a・12b・12cのどのフィルタによっても視野が覆われてない状態において黒体校正される。
赤外線カメラ11が測定する温度範囲は、測定対象たる金型キャビティ面2aの温度変動範囲に対する各フィルタによる見かけの温度変動に合わせて設定される。本実施形態では、鍛造用金型2の温度の上限は約450℃であるが、各フィルタによる見かけの温度変動が考慮され、赤外線カメラ11が測定する温度範囲の上限(黒体校正温度の上限)は約250℃に設定される。
制御装置20は、制御部21と、入力部22と、表示部23とを備える。
制御部21は、表面温度測定装置1の一連の動作を制御する。
制御部21は、実体的には、種々のプログラム等を格納する格納部、これらのプログラム等を展開する展開部、これらのプログラム等に従って所定の演算を行う演算部、演算部による演算結果などを保管する保管部等を有する。前記格納部に格納されるプログラム等には、後述する温度変換プログラム、表面温度導出プログラム、表面温度算出プログラム、判定プログラム、および三つのフィルタ12a・12b・12cによる赤外線の各波長帯での計測温度(見かけ温度)と対象物が黒体である場合に対応する温度(測定温度)との関係に基づくデータテーブルが含まれる。
制御部21としては、より具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成や、ワンチップのLSI等からなる構成が用いられる。
本実施形態の制御部21は、専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等が格納されたものでも代替可能である。
制御部21は、赤外線分布検出装置10の赤外線カメラ11に接続され、赤外線カメラ11に対して赤外線カメラ11を動作させるための信号を送信する。制御部21は、赤外線カメラ11により検出された金型キャビティ面2aから放射される各波長帯における赤外線強度分布に係る情報を受信(取得)する。
また、制御部21は、切り替え装置13のモータ13bに接続され、モータ13bに対してモータ13bの駆動および停止に係る信号を送信することにより、モータ13bの動作を制御する。制御部21は、モータ13bの動作を制御することにより、三つのフィルタ12a・12b・12cのうちのいずれのフィルタがセットされた状態となるかを選択する。
入力部22は、制御部21に接続され、制御部21に表面温度測定装置1の動作に係る種々の情報・指示等を入力する。
本実施形態の入力部22は、専用品であるが、市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等でも代替可能である。
表示部23は、表面温度測定装置1の動作状況、入力部22から制御部21への入力内容、表面温度測定装置1による測定結果(熱画像等)等を表示する。
本実施形態の表示部23は、専用品であるが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等でも代替可能である。
なお、入力部22と表示部23とは、市販のタッチパネル等を用いることにより、両者の機能を有する一体の構成品とすることができる。
以下では、制御部21の詳細構成について説明する。
制御部21は、機能的には、温度変換部21aと、表面温度導出部21bと、表面温度算出部21cと、判定部21dとを備える。
温度変換部21aは、温度変換手段の実施の一形態であり、赤外線分布検出装置10により検出される赤外線強度分布の各要素について、赤外線分布検出装置10により検出された三種類の赤外線の強度から計測温度を算出し、この算出した計測温度を、対象物が黒体である場合に対応する測定温度として変換する。
実体的には、制御部21が、その格納部に格納された温度変換プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、温度変換部21aとしての機能を果たす。
ここで、赤外線分布検出装置10により検出される赤外線強度分布の各要素とは、赤外線強度分布に基づく、温度の分布を示す画像(熱画像)の各画素(ピクセル)に対応する。すなわち、本実施形態においては、赤外線強度分布についての情報は、前述したように赤外線分布検出装置10の赤外線カメラ11によって熱画像として出力される。この赤外線カメラ11によって出力される熱画像を構成する各画素(以下単に「各画素」ともいう。)が、赤外線分布検出装置10により検出される赤外線強度分布の各要素となる。
また、温度変換部21aによる変換後の温度である、前記の対象物が黒体である場合に対応する測定温度とは、本実施形態では、温度測定の対象物である鍛造用金型2(金型キャビティ面2a)が、黒体である場合に対応する温度となる。
すなわち、赤外線カメラ11により検出される赤外線の強度は、いずれかのフィルタを介した(透過した)所定の波長帯の赤外線の強度となる。したがって、温度変換部21aにおいて算出される各画素についての計測温度は、いずれかのフィルタに対応する波長帯の赤外線の強度に基づく「見かけ温度」となる。そこで、温度変換部21aは、その算出した計測温度(見かけ温度)を、対象物が黒体である場合に対応する温度、言い換えると対象物の放射率が1(またはそれに近似する値)である場合に対応する温度(測定温度)に変換する。つまり、温度変換部21aは、計測温度を黒体校正することにより変換する。この温度変換部21aにおいて計測温度(見かけ温度)が変換された温度が、前記の対象物が黒体である場合に対応する測定温度とされる。なお、ここで得られる測定温度は、前記のとおり計測温度(見かけ温度)が黒体校正された温度であるため、計測温度よりも高い温度となる。
このように、温度変換部21aでは、いずれかのフィルタを介した赤外線の強度を検出する赤外線カメラ11により得られる、三つのフィルタ12a・12b・12cに対応する熱画像の各画素について、前述した計測温度が算出され、その算出された計測温度が、前述した測定温度として変換される。
温度変換部21aによる計測温度の測定温度への変換は、具体的には次のようにして行われる。
温度変換部21aは、まず、赤外線分布検出装置10によって取得された赤外線強度分布について、赤外線カメラ11から出力される熱画像の各画素に対応する赤外線の強度に基づき、計測温度を算出する。赤外線カメラ11から出力される熱画像におけるある一つの画素は、例えば、図1に示すように、温度測定の対象である金型キャビティ面2aにおけるある測定点部2bに対応する。
そして、温度変換部21aは、各画素について算出した計測温度を、対象物が黒体である場合に対応する測定温度に変換する。温度変換部21aは、計測温度の測定温度への変換に際し、三つのフィルタ12a・12b・12cによる赤外線の各波長帯での計測温度と対象物が黒体である場合に対応する温度(測定温度)との関係に基づくデータテーブルを参照する。
図2に、各フィルタについての計測温度(見かけ温度)と測定温度(黒体温度)との関係を示すグラフの一例を示す。図2において、三角形状の各点16aは、短波長フィルタ12aによる赤外線の波長帯での計測温度と測定温度との関係を表す点である。これら短波長フィルタ12aについての各点16aの軌跡が、直線あるいは曲線により近似されることで、短波長フィルタ12aについての計測温度と測定温度との関係を示すグラフ17aが導かれる。同様に、四角形状の各点16bで示されるグラフ17bは、中波長フィルタ12bについてのグラフであり、丸形状の各点16cで示されるグラフ17cは、長波長フィルタ12cについてのグラフである。これらのグラフから分かるように、各フィルタによって(赤外線の波長帯によって)、計測温度の変化にともなう測定温度の変化の態様(変化量)が異なる。
このような各フィルタについての計測温度と測定温度との関係を示すグラフに基づき、前記データテーブルが作成される。具体的には、図2に示すような各フィルタについてのグラフ17a・17b・17cに基づいて、計測温度に対応する測定温度が定められ、計測温度とこれに対応する(変換先の)測定温度とがテーブル化されて関連づけられる。
このように、温度変換部21aは、各フィルタがセットされた状態で得られる各熱画像の各画素についての測定温度(黒体温度)を導く。
すなわち、温度変換部21aは、短波長フィルタ12aがセットされた状態で得られる熱画像の各画素については、短波長フィルタ12aについての計測温度と測定温度との関係を示すグラフ17aに基づいて作成されるデータテーブルを参照して、算出した計測温度を測定温度に変換する。同様に、温度変換部21aは、計測温度の測定温度への変換に際しては、中波長フィルタ12bがセットされた状態で得られる熱画像の各画素については、中波長フィルタ12bについてのグラフ17bに基づいて作成されるデータテーブルを参照し、長波長フィルタ12cがセットされた状態で得られる熱画像の各画素については、長波長フィルタ12cについてのグラフ17cに基づいて作成されるデータテーブルを参照する。
このようにして、温度変換部21aにおいて得られる測定温度は、赤外線サーモグラフィ(赤外線カメラ11a)の指示値となる。以下の説明においては、温度変換部21aによって得られる測定温度について、その測定温度が得られる際にセットされた状態となっている各フィルタ(各波長帯)によって区別して指す場合は、短波長フィルタ12aがセットされた状態で得られる測定温度(短波長帯に対応する測定温度)を「第一測定温度」とし、中波長フィルタ12bがセットされた状態で得られる測定温度(中波長帯に対応する測定温度)を「第二測定温度」とし、長波長フィルタ12cがセットされた状態で得られる測定温度(長波長帯に対応する測定温度)を「第三測定温度」とする。
表面温度導出部21bは、表面温度導出手段の実施の一形態であり、温度変換部21aにより得られた、三種類の赤外線の各波長帯に対応する測定温度(第一測定温度、第二測定温度、および第三測定温度)のうちのいずれかの測定温度、あるいは前記各波長帯に対応する測定温度の平均を、鍛造用金型2の表面温度(金型キャビティ面2aの温度)として導出する。
実体的には、制御部21が、その格納部に格納された表面温度導出プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、表面温度導出部21bとしての機能を果たす。
表面温度導出部21bにより金型キャビティ面2aの温度として導出される測定温度が、前記各波長帯に対応する測定温度のうちのいずれかの測定温度である場合は、第一測定温度、第二測定温度、および第三測定温度のうちのいずれかの測定温度が、金型キャビティ面2aの温度として導出される。
ここで、表面温度導出部21bによる、金型キャビティ面2aの温度の導出(測定温度の選択)に際しては、例えば、前記三つの測定温度のうち、最大値(最高温度)のものが導出されたり、最小値(最低温度)のものが導出されたりする。言い換えると、この場合、表面温度導出部21bにおいては、金型キャビティ面2aの温度として導出する測定温度の選択の基準として、例えば、前記三つの測定温度のうち、最大値(最高温度)であることや、最小値(最低温度)であることが用いられる。
また、表面温度導出部21bにより金型キャビティ面2aの温度として導出される測定温度が、前記各波長帯に対応する測定温度の平均である場合は、第一測定温度、第二測定温度、および第三測定温度の平均温度が、金型キャビティ面2aの温度として導出される。
ここで、表面温度導出部21bによる、金型キャビティ面2aの温度の導出(測定温度の平均の算出)に際しては、例えば、前記三つの測定温度の相加平均や相乗平均が算出される。言い換えると、この場合、表面温度導出部21bにおいては、金型キャビティ面2aの温度として導出する測定温度の平均として、例えば、前記三つの測定温度の相加平均や相乗平均が用いられる。
このように、表面温度導出部21bは、温度変換部21aにより得られた第一測定温度、第二測定温度、および第三測定温度から選択することにより、あるいはこれら三つの測定温度を用いて平均を算出することにより、金型キャビティ面2aの温度を導出する。
表面温度導出部21bにおいて、金型キャビティ面2aの温度の導出に際して用いられる方法、即ち、前述したように、前記三つの測定温度から、最大値や最小値のものが選択される方法や、前記三つの測定温度の平均が算出される方法のうち、いずれの方法が用いられるかは、例えば、実験等により判明した、温度変換部21aにより得られる測定温度と、金型キャビティ面2aの真の温度との関係等による。
具体的には、例えば、温度変換部21aにより得られる測定温度が、金型キャビティ面2aの真の温度に対して低くなる傾向がある場合は、表面温度導出部21bにおける金型キャビティ面2aの温度の導出に際して、前記三つの測定温度から最大値のものが選択される方法が採用される。
また、表面温度導出部21bにおいて、金型キャビティ面2aの温度の導出に際して用いられる方法が、任意に選択可能な構成であってもよい。この場合、金型キャビティ面2aの温度の導出に際して、例えば、前記三つの測定温度のうち最大値のものが導出されるパターン、同じく最小値のものが導出されるパターン、および前記三つの測定温度の平均が算出されるパターンの三種類のパターンが任意に選択可能とされる。こうしたパターンの選択が、例えば入力部22における操作によって行われる。そして、このような金型キャビティ面2aの温度の導出に際して用いられる方法の選択が、例えば、金型キャビティ面2aの温度状況等に応じて行われる。
表面温度算出部21cは、表面温度算出手段の実施の一形態であり、温度変換部21aにより得られた、前記各波長帯に対応する測定温度(第一測定温度、第二測定温度、および第三測定温度)に基づいて、鍛造用金型2の表面温度(金型キャビティ面2aの温度)を算出する。
実体的には、制御部21が、その格納部に格納された表面温度算出プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、表面温度算出部21cとしての機能を果たす。
一般的な三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィによる対象物の真の表面温度の計算方法(三色法)においては、各波長帯の赤外線の強度に基づいて測定される温度、つまり本実施形態では前述の測定温度が、赤外線カメラ11のセンサ(検出素子11a)周りに成立するエネルギー保存式から仮定される次の数1の式が基礎式となる(非特許文献1参照)。
ここで、Trsは前述したように計測温度(見かけ温度)が変換された測定温度、Tは対象物の表面温度(真値)、Tは周囲温度、εは放射率である。また、乗数nは、赤外線の波長帯および赤外線カメラ11の検出素子11aの種類により決まる指数である。なお、添字iはフィルタ番号である。本実施形態では、i=1が短波長フィルタ12aに、i=2が中波長フィルタ12bに、i=3が長波長フィルタ12cにそれぞれ対応することとする。したがって、第一測定温度はTrs1、第二測定温度はTrs2、第三測定温度はTrs3と表される。以下の説明において、「第一フィルタ」は短波長フィルタ12aを、「第二フィルタ」は中波長フィルタ12bを、「第三フィルタ」は長波長フィルタ12cをそれぞれ差す。
上記数1の式から、各フィルタについての基礎式は、次の数2〜4の式となる。
上記数2〜4の式において、三種類の赤外線の各波長帯について、つまり各フィルタが用いられる場合について、ε=ε=ε=εの仮定が代入され(対象物についての放射率が一定と仮定され)、キルヒホッフの法則が適用されながら、εが消去されることにより、以下の六つの式(数5〜10の式)が求まる(非特許文献1参照)。
三色法においては、上記の数5〜7の式、および数8〜10の式のそれぞれから、乗数n1、n2、n3が同一とならない一式ずつが選択され、二分法、ニュートン法あるいはニュートンラプソン法等が適用されて収束解が得られる(F(T)=F(T)=0となるTが求められる)ことにより、表面温度Tが決定される(非特許文献1参照)。
上記式の選択のパターンは、数5の式と数9の式、数5の式と数10の式、数6の式と数8の式、数6の式と数9の式、数7の式と数8の式、数7の式と数10の式、の計6通りである。
そして、金型キャビティ面2aの表面温度の収束解が求められる際には、次のような判定が行われる。すなわち、(a)計算の繰り返し回数とともに表面温度Tと周囲温度Tがともに収束する場合、および(b)所定の計算の繰り返し回数(例えば10回)の時点で、表面温度Tは収束するが周囲温度Tが発散する場合には、算出された表面温度Tが正常であると判定される。一方、(c)所定の計算の繰り返し回数(例えば10回)の時点で、周囲温度Tは収束するが表面温度Tが発散する場合には、算出された表面温度Tが異常であると判定される。
本実施形態では、上記6通りの式の選択パターンの全てについて計算が行われ、表面温度Tが異常であると判定された場合が除かれた残りの表面温度Tの計算結果に基づいて、Tが決定される。ここで、例えば、正常であると判定されたTの平均値または中央値が、最終的なTの計算値とされる。また、表面温度Tおよび周囲温度Tについて、収束する場合の数値解析条件としては、残差1E−6で収束と判断される。
このように、表面温度算出部21cは、各フィルタについての放射率が一定であるとの仮定の下、温度変換部21aにより得られた三つの熱画像における各画素についての測定温度Trs、つまり第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3に基づいて三色法の演算を行うことにより、熱画像の各画素についての表面温度Tを導く。
結果として、表面温度算出部21cにより、金型キャビティ面2aの表面温度Tの分布が算出され、表面温度Tの分布を示す画像となる一つの熱画像が得られる。
判定部21dは、判定手段の実施の一形態であり、温度変換部21aにより得られた、前記各波長帯に対応する測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)間の温度差の全てが、前記各波長帯に対応する測定温度に対して十分に小さい温度値として予め設定された所定の温度差値よりも小さいか否かの判定を行う。そして、判定部21dは、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいと判定した場合は、表面温度導出部21bにより、鍛造用金型2の表面温度(金型キャビティ面2aの温度)を導出させる。また、判定部21dは、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さくないと判定した場合は、表面温度算出部21cにより、金型キャビティ面2aの温度を算出させる。
実体的には、制御部21が、その格納部に格納された判定プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、判定部21dとしての機能を果たす。
前記各波長帯に対応する測定温度間の温度差(以下単に「測定温度間の温度差」ともいう。)とは、ある波長帯に対応する測定温度と、その波長帯とは異なる波長帯に対応する測定温度との差の値(絶対値、以下同じ)である。したがって、本実施形態において、温度変換部21aにより得られた、前記各波長帯に対応する測定温度間の温度差の全てとは、第一測定温度Trs1と第二測定温度Trs2との差の値、第二測定温度Trs2と第三測定温度Trs3との差の値、および第三測定温度Trs3と第一測定温度Trs1との差の値となる。
そして、これらの測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいか否かの判定が行われる。この測定温度間の温度差に対する比較対象として用いられる所定の温度差値は、前記のとおり各波長帯に対応する測定温度に対して十分に小さい温度値として予め設定される。具体的には、例えば、各波長帯に対応する測定温度の温度値が200℃程度であるのに対して、前記所定の温度差値は、5℃程度あるいは10℃程度の温度値として設定される。以下では、この測定温度間の温度差に対する比較対象となる予め設定される所定の温度差値を、「設定温度差値ΔT」とする。
これらのことから、判定部21dにて行われる判定は、次の数11〜13の式の全てが満たされるか否かの判定となる。
すなわち、判定部21dにおいては、第一測定温度Trs1と第二測定温度Trs2との差の値が算出され、その算出された差の値と、設定温度差値ΔTとの比較が行われる。同様にして、判定部21dにおいては、第二測定温度Trs2と第三測定温度Trs3との差の値、および第三測定温度Trs3と第一測定温度Trs1との差の値が算出され、その算出された各差の値と、設定温度差値ΔTとの比較が行われる。
そして、判定部21dにより、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいとの判定結果が得られた場合、つまり上記の数11〜13の式が全て満たされるとの判定結果が得られた場合は、判定部21dは、表面温度導出部21bにより、金型キャビティ面2aの温度を導出させる。この場合、判定部21dから表面温度導出部21bに対して、金型キャビティ面2aの温度を導出させるための指令が送られる。したがって、この場合、金型キャビティ面2aの温度として、温度変換部21aにより得られた、前記各波長帯に対応する測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)のうちのいずれかの測定温度、あるいは前記各波長帯に対応する測定温度の平均が導出されることとなる。
すなわち、判定部21dにより、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいと判定された場合は、第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3が、互いに略同じ値となる。つまり、前記三つの測定温度の互いの差が、いずれも、その測定温度に対して十分に小さい温度値である設定温度差値ΔTよりも小さいということは、前記三つの測定温度が、互いに略同じ値であると言える。そして、この略同じ値となる各測定温度は、鍛造用金型2の表面温度(真温度)Tに近い(略同じ)値となる。つまり、Trs1≒Trs2≒Trs3≒Tとなる。
このように、互いに略同じ値となる測定温度が表面温度Tに近い(略同じ)値となるということは、金型キャビティ面2aが高放射率状態であることに対応する。なお、ここでいう表面温度Tに近い(略同じ)値には、表面温度Tと同一である場合も含まれる。つまり、Trs1=T、Trs2=T、Trs3=Tとなる場合も含まれる。
すなわち、三色法による温度測定に際しては、各波長帯に対応する測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)が互いに近似する場合は、それらの各測定温度が、金型キャビティ面2aの真の温度(表面温度T)に近いこと(略同じであること)、つまり金型キャビティ面2aが高放射率状態にあることが、実験等により判っている。
放射率について、図3を用いて説明する。図3(a)はある温度での黒体および対象物の放射エネルギーの分光特性を示す図、同図(b)は(a)に示す分光特性のグラフを用いた放射率の概念を示す説明図である。
図3(a)において、実線で表すグラフ18aは、黒体についての放射エネルギー(黒体放射)の分光特性を示す。また、同じく図3(a)において、破線で示すグラフ18bは、対象物、つまり本実施形態における金型キャビティ面2aについての放射エネルギー(対象物の放射)の分光特性を示す。そして、本実施形態では、各フィルタが透過させる赤外線の波長帯について、短波長フィルタ12aが透過させる短波長帯は、7.4〜9.0μmであり(Δλa参照)、中波長フィルタ12bが透過させる中波長帯は、9.3〜11.3μmであり(Δλb参照)、長波長フィルタ12cが透過させる長波長帯は、10.9〜14.3μmである(Δλc参照)。したがって、短波長帯Δλaの放射エネルギーから得られる測定温度が、第一測定温度Trs1となり、中波長帯Δλbの放射率エネルギーから得られる測定温度が、第二測定温度Trs2となり、長波長帯Δλcの放射エネルギーから得られる測定温度が、第三測定温度Trs3となる。
そして、図3に示すように、本実施形態に係る金型キャビティ面2aについての放射率は、例えば短波長帯から長波長帯までの全ての波長帯(7.4〜14.3μm)でみると、その波長帯において、黒体放射についてのエネルギー量(斜線領域19a)を1としたときの、対象物の放射についてのエネルギー量(斜線領域19b参照)の比率となる(図3(b)参照)。
このような金型キャビティ面2aの放射率について、その放射率が高い状態となる、金型キャビティ面2aが高放射率状態であることに対応して、短波長帯Δλaに対応する第一測定温度Trs1、中波長帯Δλbに対応する第二測定温度Trs2、および長波長帯Δλcに対応する第三測定温度Trs3が、互いに略同じ値となり、各測定温度が、鍛造用金型2の表面温度Tに近い(略同じ)値となる。
このように、略同じ値となる各測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)が、表面温度Tに近い(略同じ)値となると、前述した三色法の演算によって求められる解が、収束しにくくなる(発散しやすくなる)。
具体的には、第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3が、表面温度Tに近い(略同じ)値(同一の値も含む)となると、上記数8〜10の式のそれぞれの式における、右辺第二項の分母の部分および分子の部分、ならびに右辺第三項の分母の部分が、0あるいは0に近い値となる。これにより、三色法の演算によって求められる解が収束しにくくなる。このように、三色法の演算によって求められる解が収束しにくくなることは、三色法により算出される金型キャビティ面2aの温度についての不安定化を招き、三色法によって得られる表面温度についての測定精度の低下を招く。
そこで、判定部21dは、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいと判定した場合は、表面温度導出部21bにより、金型キャビティ面2aの温度を導出させる。つまりこの場合、前述したように金型キャビティ面2aが高放射率状態にあることとなるので、表面温度算出部21cによる三色法の演算による表面温度Tの算出は行われず、表面温度導出部21bにより、前記各波長帯に対応する測定温度のうちのいずれかの測定温度、あるいは前記各波長帯に対応する測定温度の平均が導出される。そして、この表面温度導出部21bにより導出された温度が、金型キャビティ面2aの真の温度となる表面温度Tとされる。
なお、ここでいう金型キャビティ面2aについての「高放射率状態」とは、金型キャビティ面2aの温度状態や表面状態等により異なるが、例えば、金型キャビティ面2aが、その放射率が0.9程度以上となるような状態を指す。一方で、放射率の変化にともなう対象物の温度変化は、対象物の温度範囲によって異なる。
したがって、前記のとおり測定温度間の温度差に対する比較対象として用いられる設定温度差値ΔTは、温度測定の対象となる金型キャビティ面2aの温度範囲等に応じて、測定温度間の温度差の全てがその設定温度差値ΔTよりも小さくなることが、金型キャビティ面2aが高放射率状態(例えば放射率が0.9程度以上となるような状態)となることに対応するように、適宜設定される。
一方、判定部21dにより、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さくないとの判定結果が得られた場合、つまり、上記の数11〜13の式のうち少なくともいずれかが満たされないとの判定結果が得られた場合は、判定部21dは、表面温度算出部21cにより、金型キャビティ面2aの温度を算出させる。この場合、判定部21dから表面温度算出部21cに対して、金型キャビティ面2aの温度を算出させるための指令が送られる。したがって、この場合、金型キャビティ面2aの温度として、温度変換部21aにより得られた、前記各波長帯に対応する測定温度(第一測定温度、第二測定温度、および第三測定温度)に基づいて行われる三色法の演算により、表面温度Tが算出されることとなる。
すなわち、判定部21dにより、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さくないと判定された場合は、第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3が、互いに略同じ値でないこととなる。つまり、前記三つの測定温度の互いの差のうち、少なくともいずれかが、その測定温度に対して十分に小さい温度値である設定温度差値ΔTよりも小さくないということは、前記三つの測定温度における少なくともいずれか二つの測定温度間において、所定の大きさ(設定温度差値ΔT)以上の温度差が存在すると言える。
このように、測定温度間において所定の大きさ(設定温度差値ΔT)以上の温度差が存在するということは、金型キャビティ面2aが高放射率状態にないことに対応する。
すなわち、三色法による温度測定に際しては、各波長帯に対応する測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)間において所定の大きさ以上の温度差が存在する場合は、それら全ての測定温度が、金型キャビティ面2aの真の温度(表面温度T)に近くないこと、つまり金型キャビティ面2aが高放射率状態にないことが、実験等により判っている。
このように、各測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)間において、所定の大きさ以上の温度差が存在する場合は、前述した三色法の演算において収束解が得られる。
そこで、判定部21dは、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さくないと判定した場合は、表面温度算出部21cにより、金型キャビティ面2aの温度を算出させる。つまりこの場合、前述したように金型キャビティ面2aが高放射率状態にないこととなるので、表面温度導出部21bによる表面温度の導出は行われず、表面温度算出部21cにより、三色法の演算によって表面温度Tが算出される。
以上のように、判定部21dにおいて用いられる設定温度差値ΔTは、制御部21においてその格納部等に予め設定され記憶される。
以上の構成を備える表面温度測定装置1においては、波長帯の異なる三種類の赤外線が検出されることで行われる鍛造用金型2の表面温度(金型キャビティ面2aの温度)の測定に際し、金型キャビティ面2aについての放射率の高低に応じて演算を行うことができ、測定精度を向上させることができる。
すなわち、表面温度測定装置1においては、金型キャビティ面2aの放射率の高低の基準となる、各波長帯に対応する測定温度間の差が用いられた判定が行われることで、その判定結果に基づき、鍛造用金型2の表面温度Tを導くための方法の選択が行われる。これにより、金型キャビティ面2aの放射率の高低にかかわらず(高放射率状態であっても)、鍛造用金型2の表面温度Tを精度良く測定することが可能となる。
次に、図4を加えて、本発明に係る表面温度測定方法の実施の一形態について説明する。
本実施形態に係る表面温度測定方法は、上述の表面温度測定装置1が用いられ、鍛造用金型2の表面、特に金型キャビティ面2aの温度の分布を測定する方法である。以下に説明する表面温度測定方法は、赤外線分布検出工程と、温度変換工程と、判定工程と、表面温度導出工程と、表面温度算出工程とを備える。
以下では、本発明に係る表面温度測定方法について、本実施の形態に即して説明する。なお、以下に説明する表面温度測定方法においては、前述したように表面温度導出部21bによって金型キャビティ面2aの表面温度Tとして導出される温度を、前記各波長帯に対応する測定温度の平均の温度とする。
図4のフロー図に示すように、本実施形態に係る表面温度測定方法では、まず、金型キャビティ面2aから放射される赤外線のうち、波長帯が異なる三種類の赤外線強度分布が検出される。つまり、金型キャビティ面2aについての計測温度(見かけ温度)が取得される(S100)。
具体的には、赤外線分布検出装置10において、各フィルタがセットされた状態での赤外線強度分布の検出が行われ、赤外線カメラ11により、各フィルタについての計測温度の熱画像が出力される。出力された各フィルタについての計測温度の熱画像は、制御装置20の制御部21へと転送される。これにより、制御部21は、金型キャビティ面2aについての計測温度を、各フィルタについての熱画像として(三つの熱画像の各画素について)取得する。
このステップS100が、本実施形態における赤外線分布検出工程に対応する。
次に、各フィルタについての熱画像の各画素について、ステップS100において検出された三種類の赤外線の強度から計測温度が算出され、この算出された計測温度が、鍛造用金型2(金型キャビティ面2a)が黒体である場合に対応する測定温度として変換される。つまり、前記S100にて取得された計測温度(見かけ温度)が、測定温度(黒体温度)に変換される(S200)。
具体的には、制御装置20の制御部21における温度変換部21aにより、各フィルタについての熱画像(計測温度の熱画像)の各画素について、計測温度の算出、および算出した計測温度の測定温度(Trs)への変換が行われる。計測温度の測定温度への変換に際しては、図2に示すような、各フィルタについての計測温度(見かけ温度)と測定温度(黒体温度)との関係を示すグラフに基づいて作成されるデータテーブルが用いられる。この計測温度の測定温度への変換により、各フィルタについて、測定温度の熱画像が得られる。
このように、温度変換部21aによって、計測温度の測定温度への変換が行われることで、各フィルタについての熱画像の各画素について、短波長帯に対応する測定温度である第一測定温度Trs1、中波長帯に対応する測定温度である第二測定温度Trs2、および長波長帯に対応する測定温度である第三測定温度Trs3が取得される(S300)。
これらステップS200およびステップS300が、本実施形態における温度変換工程に対応する。
続いて、ステップS300において得られた、三つの測定温度、つまり第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいか否かの判定が行われる(S400)。
具体的には、制御装置20の制御部21における判定部21dにより、第一測定温度Trs1と第二測定温度Trs2との差の値、第二測定温度Trs2と第三測定温度Trs3との差の値、および第三測定温度Trs3と第一測定温度Trs1との差の値が算出される。そして、これら差の値の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいか否かの判定が行われる。つまり、本ステップでは、上記の数11〜13の式の全てが満たされるか否かの判定が行われる。
このステップS400が、本実施形態における判定工程に対応する。
ステップS400において、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいとの判定結果が得られた場合、ステップS300において得られた、第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3の平均が、金型キャビティ面2aの真の温度である表面温度Tとして導出される。(S500)。
この場合、具体的には、制御装置20の制御部21における表面温度導出部21bにより、第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3の平均値が算出される。そして、この算出された測定温度の平均値が、金型キャビティ面2aの表面温度Tとして導出される。すなわち、この場合、前述したように金型キャビティ面2aが高放射率状態にあることとなるので、表面温度算出部21cによる三色法の演算による表面温度Tの算出は行われず、表面温度導出部21bにより、各波長帯に対応する測定温度の平均が導出される。そして、この表面温度導出部21bにより導出された温度が、金型キャビティ面2aの真の温度となる表面温度Tとされる。
このステップS500が、本実施形態における表面温度導出工程に対応する。
一方、ステップS400において、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さくないとの判定結果が得られた場合、ステップS300において得られた各測定温度に基づいて、金型キャビティ面2aの温度(表面温度T)が算出される。つまり、各フィルタについての放射率が一定であるとの仮定の下、ステップS300にて得られた第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3に基づいて、三色法の演算により金型キャビティ面2aの真の温度である表面温度Tが算出される(S600)。
具体的には、制御装置20の制御部21における表面温度算出部21cにより、各フィルタについての放射率ε、ε、εが一定であるとの仮定の下、上記数2〜4の式から導かれる数5〜10の式が用いられて、三色法の演算が行われ、金型キャビティ面2aの表面温度Tが算出される。つまり、各フィルタについての放射率が一定とされる三色法により、三つの熱画像について対応する画素、言い換えると熱画像における同じ位置についての三つの画素についての測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)から、その画素についての表面温度Tが算出される。結果として、表面温度Tの分布を示す画像となる一つの熱画像が得られる。
このステップS600が、本実施形態における表面温度算出工程に対応する。
以上のような本実施形態に係る表面温度測定方法においては、表面温度測定装置1において得られる効果と同様の効果が得られる。すなわち、波長帯の異なる三種類の赤外線が検出されることで行われる鍛造用金型2の表面温度(金型キャビティ面2aの温度)の測定に際し、金型キャビティ面2aについての放射率の高低に応じて演算を行うことができ、測定精度を向上させることができる。
図5に、金型キャビティ面2aの温度の測定結果である熱画像の一例(測定例)を示す。図5(a)は、上述の実施形態のような本発明に係る表面温度測定を採用した場合(以下「本発明の場合」という。)の測定例である。図5(b)は、上述の実施形態のような本発明に係る表面温度測定を採用しなかった場合、つまり金型キャビティ面2aの放射率の高低にかかわらず三色法の演算を用いて表面温度を測定した場合(以下「従来の場合」という。)の測定例である。なお、図5(a)に示す測定例は、上述の実施形態において、表面温度導出部21bによって金型キャビティ面2aの表面温度Tと導出される温度が、前記各波長帯に対応する測定温度の平均の温度である場合に対応するものである。
従来の場合、金型キャビティ面2aの温度の測定に際し、各波長帯に対応する三つの測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)を用いた金型キャビティ面2aの放射率状態の判定(判定部21dによる判定、前記ステップS400における判定)が行われることなく、つまり金型キャビティ面2aの放射率の高低にかかわらず、前記三つの測定温度に基づく三色法の演算により、熱画像における各画素についての表面温度Tが算出されることとなる。
このため、従来の場合においては、金型キャビティ面2aが高放射率状態であるときに、前述したように、各波長帯に対応する測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)が、表面温度Tに近い(略同じ)値となり、三色法の演算によって求められる解が、収束しにくくなる(発散しやすくなる)。そして、三色法の演算において、実際に収束解が得られなかった場合が、図5(b)に示す熱画像において、黒い部分として表れている(例えば符号A1や符号A2で示す部分参照)。このように、熱画像において黒い部分として表れる部分は、その部分の画素について三色法の演算により算出された表面温度Tが、例えば上記数8〜10の式における右辺第二項の分母の部分が0あるいは0に近い値となること等によって、収束解とならず(発散し)、測定温度範囲を超えた場合等に対応する部分となる。
つまり、従来の場合においては、金型キャビティ面2aにおいて高放射率状態となる部分については、その部分に対応する熱画像における画素の部分について三色法の演算による収束解が得られない(図5(b)に示す測定例のように熱画像において黒い部分が生じる)ことがある。このため、金型キャビティ面2aについて実際の温度状態に即した正確な温度測定が行われず、十分な測定精度が得られないこととなる。
これに対し、本発明の場合は、図5(a)に示す測定例である熱画像において、高放射率状態の部分(例えば図5(b)における符号A1や符号A2で示す部分参照)についても、表面温度Tが得られる(熱画像において黒い部分が生じない)こととなる。
つまり、本発明の場合においては、金型キャビティ面2aにおいて高放射率状態となる部分については、その部分に対応する熱画像における画素の部分について三色法の演算が行われず、各波長帯に対応する測定温度の平均が表面温度Tとされる。このため、熱画像において三色法の演算による収束解が得られない部分(黒い部分)が生じることが防止される。結果として、金型キャビティ面2aについて実際の温度状態に即した正確な温度測定を行うことができ、十分な測定精度が得られることとなる。
このように、本発明に係る表面温度測定が採用されることにより、波長帯の異なる三種類の赤外線が検出されることで行われる鍛造用金型2の表面温度(金型キャビティ面2aの温度)の測定に際し、測定精度を向上させることができるという測定結果が得られている。
ところで、上述した実施形態において、各波長帯に対応する三つの測定温度(第一測定温度Trs1、第二測定温度Trs2、および第三測定温度Trs3)が用いられて行われる判定、つまり測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいか否かの判定についての結果は、金型キャビティ面2aが高放射率状態にあるか否かの判定に用いることができる。
このように、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいか否かの判定結果が、金型キャビティ面2aが高放射率状態にあるか否かの判定に用いられる場合、本実施形態の表面温度測定装置1においては、判定部21dが、次のように機能することとなる。
すなわち、この場合、判定部21dは、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいか否かの判定結果を用いて、金型キャビティ面2aが、この金型キャビティ面2aについての放射率が1またはそれに近似する値となる高放射率状態であるか否かの判定を行う。
判定部21dによる判定結果について、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいとの判定結果が得られた場合、前述したように、金型キャビティ面2aが高放射率状態にあることとなる。
また、同じく判定部21dによる判定結果について、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さくないとの判定結果が得られた場合、金型キャビティ面2aが高放射率状態にないこととなる。
したがって、判定部21dは、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいとの判定結果を得た場合は、金型キャビティ面2aが、この金型キャビティ面2aについての放射率が1またはそれに近似する値となる高放射率状態であると判定する。
また、判定部21dは、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さくないとの判定結果を得た場合は、金型キャビティ面2aが、この金型キャビティ面2aについての放射率が1またはそれに近似する値となる高放射率状態でないと判定する。
ここで、金型キャビティ面2aの放射率について、1に近似する値には、金型キャビティ面2aの温度状態や表面状態等により異なるが、例えば、金型キャビティ面2aの放射率が0.9程度以上となるような値が含まれる。
そして、判定部21dによる金型キャビティ面2aが高放射率状態にあるか否かの判定結果は、例えば制御装置20において制御部21から表示部23に出力され、表示部23において表示される。
このような金型キャビティ面2aが高放射率状態にあるか否かの判定が行われる場合、本実施形態の表面温度測定方法においては、次のような手順となる。
すなわち、この場合、図4に示すフロー図において、ステップS400により得られた、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいか否かの判定結果が用いられて、金型キャビティ面2aが、この金型キャビティ面2aについての放射率が1またはそれに近似する値となる高放射率状態であるか否かの判定が行われることとなる。
このように、測定温度間の温度差の全てが、設定温度差値ΔTよりも小さいか否かの判定結果を用いて、金型キャビティ面2aが高放射率状態にあるか否かの判定を行うことにより、金型キャビティ面2aの温度状態(温度範囲)によって、その放射率を直接測定することができない場合であっても、金型キャビティ面2aの放射率の高低、つまり金型キャビティ面2aが高放射率状態であるか否かを判定することが可能となる。
そして、金型キャビティ面2aが高放射率状態であるか否かの判定結果を用いることで、例えば次のような表面温度測定を行うことが可能となる。
すなわち、各波長帯について得られる熱画像の略全体部分について、金型キャビティ面2aが高放射率状態にあるとの判定結果が得られた場合、三色法の演算を行うことなく、金型キャビティ面2aの表面温度Tとして、赤外線カメラ11によって得られる測定温度(各フィルタ介することなく得られる測定温度)を採用することができる。この場合、三色法の演算に際して行われる金型キャビティ面2aの放射率の設定等の作業を省略することができ、金型キャビティ面2aの温度測定に際して、作業の簡略化が図れる。
以上の本実施形態では、三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィによる表面温度測定方法(三色法)の場合について説明したが、これに限定されず、二色放射温度計が用いられる場合や、波長帯が異なる四種類以上の赤外線を検出可能な温度計が用いられる場合であってもよい。つまり、本発明は、波長帯が異なる複数種類の赤外線が検出されることにより行われる表面温度測定であれば適用可能である。
本発明に係る表面温度測定装置の実施の一形態を示す図。 計測温度(見かけ温度)と測定温度(黒体温度)との関係を示すグラフの一例を示す図。 放射率についての説明図。 本発明に係る表面温度測定方法の実施の一形態を示すフロー図。 金型キャビティ面の温度の測定結果である熱画像の一例を示す図。
符号の説明
1 表面温度測定装置
2 鍛造用金型(対象物)
2a 金型キャビティ面(対象物の表面)
10 赤外線分布検出装置(赤外線分布検出手段)
11 赤外線カメラ
12a 短波長フィルタ
12b 中波長フィルタ
12c 長波長フィルタ
21 制御部
21a 温度変換部
21b 表面温度導出部
21c 表面温度算出部
21d 判定部

Claims (4)

  1. 対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる複数種類の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出工程と、
    前記赤外線の強度分布の各要素について、前記赤外線分布検出工程により検出された前記複数種類の赤外線の強度から計測温度を算出し、この算出した計測温度を、前記対象物が黒体である場合に対応する測定温度として変換する温度変換工程と、
    前記温度変換工程により得られた、前記複数種類の赤外線の各波長帯に対応する前記測定温度間の温度差の全てが、前記各波長帯に対応する前記測定温度に対して十分に小さい温度値として予め設定された所定の温度差値よりも小さいか否かの判定を行う判定工程と、
    前記判定工程により、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいとの判定結果が得られた場合、前記温度変換工程により得られた、前記各波長帯に対応する前記測定温度のうちのいずれかの前記測定温度、あるいは前記各波長帯に対応する前記測定温度の平均を、前記対象物の表面温度として導出する表面温度導出工程と、
    前記判定工程により、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さくないとの判定結果が得られた場合、前記温度変換工程により得られた、前記各波長帯に対応する前記測定温度に基づいて、前記対象物の表面温度を算出する表面温度算出工程と、
    を備える表面温度測定方法。
  2. 前記判定工程により得られた、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいか否かの判定結果を用いて、前記対象物の表面が、該対象物の表面についての放射率が1またはそれに近似する値となる高放射率状態であるか否かの判定を行う請求項1に記載の表面温度測定方法。
  3. 対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる複数種類の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出手段と、
    前記赤外線の強度分布の各要素について、前記赤外線分布検出手段により検出された前記複数種類の赤外線の強度から計測温度を算出し、この算出した計測温度を、前記対象物が黒体である場合に対応する測定温度として変換する温度変換手段と、
    前記温度変換手段により得られた、前記複数種類の赤外線の各波長帯に対応する前記測定温度のうちのいずれかの前記測定温度、あるいは前記各波長帯に対応する前記測定温度の平均を、前記対象物の表面温度として導出する表面温度導出手段と、
    前記温度変換手段により得られた、前記各波長帯に対応する前記測定温度に基づいて、前記対象物の表面温度を算出する表面温度算出手段と、
    前記温度変換手段により得られた、前記各波長帯に対応する前記測定温度間の温度差の全てが、前記各波長帯に対応する前記測定温度に対して十分に小さい温度値として予め設定された所定の温度差値よりも小さいか否かの判定を行い、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいと判定した場合は、前記表面温度導出手段により、前記対象物の表面温度を導出させ、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さくないと判定した場合は、前記表面温度算出手段により、前記対象物の表面温度を算出させる判定手段と、
    を備える表面温度測定装置。
  4. 前記判定手段は、前記測定温度間の温度差の全てが、前記所定の温度差値よりも小さいか否かの判定結果を用いて、前記対象物の表面が、該対象物の表面についての放射率が1またはそれに近似する値となる高放射率状態であるか否かの判定を行う請求項3に記載の表面温度測定装置。
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