JP2009043476A - 鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛蓄電池の電池蓋への静電気の帯電と、この静電気の放電火花による電池破損を抑制すること。
【解決手段】合成樹脂の電池蓋に装着された液口栓の排気孔に近接した位置にSnO2、Sb2O5及びポリオレフィンからなる金属酸化物層を形成する。この金属酸化物層はSnO2、Sb2O5及びポリオレフィンを含む水溶液を電池蓋上に塗布し、乾燥させることによって形成する。さらに、この金属酸化物層と負極端子を接触させるこの金属酸化物層は自由電子を有し、蓋表面の表面抵抗を下げることによって、電池蓋3へ帯電した静電気は金属酸化物層5から負極端子を通じて速やかに電池1に吸収される。その結果、排気孔7周辺での静電気による放電火花の発生が抑制されるため、電池内に滞留した水素ガスへの引火、およびこれによる電池破損を抑制することが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】合成樹脂の電池蓋に装着された液口栓の排気孔に近接した位置にSnO2、Sb2O5及びポリオレフィンからなる金属酸化物層を形成する。この金属酸化物層はSnO2、Sb2O5及びポリオレフィンを含む水溶液を電池蓋上に塗布し、乾燥させることによって形成する。さらに、この金属酸化物層と負極端子を接触させるこの金属酸化物層は自由電子を有し、蓋表面の表面抵抗を下げることによって、電池蓋3へ帯電した静電気は金属酸化物層5から負極端子を通じて速やかに電池1に吸収される。その結果、排気孔7周辺での静電気による放電火花の発生が抑制されるため、電池内に滞留した水素ガスへの引火、およびこれによる電池破損を抑制することが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、鉛蓄電池に関するものである。
鉛蓄電池は充電末期において水素ガス及び酸素ガスが発生する。これらのガスは、電池蓋に設けた排気栓より電池外部に放出される。ここに発火源があると、急激な燃焼が起こり、場合によっては電池が破損することもある。一方、静電気による電気スパークが水素ガスに引火したことが原因と思われる電池破損も少なからず発生している。具体例としては、電池を乾いた布や羽毛で拭いた場合、合成繊維の衣服を着用し、人体に静電気が帯電していることを知らずに電池に触れようとした場合等に発生している。
本発明の発明者等の再現実験によれば、電池を過充電状態として、液口栓から水素ガスが排出されている状態で液口栓付近に15kVの静電気を印加した場合、高い確率で電池破損が起こることが確認されている。従って、静電気による破損は、放電火花が液口栓周囲より電池内部に侵入することによって発生すると思われる。
一般的に静電気を防止する技術として界面活性剤を処理表面に塗布することが提案されている。しかしながら、界面活性剤を用いた場合は処理表面に対して固着していないため帯電防止効果の持続性に乏しく実用的でない。
これらの課題を解決するために、電槽及び蓋の原料である合成樹脂に予め帯電防止剤を混練した後、この樹脂を溶融して成形型に注入して電槽又は蓋を成型する蓄電池容器の製造法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。帯電防止剤を適量、合成樹脂に予め混入させることによって静電気の帯電を解消ないし緩和することができる。
また、合成樹脂で成型した電槽、蓋等の蓄電池外表面に、カーボン粉末を含有させる構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。合成樹脂中に均一にカーボンを添加した場合、合成樹脂が硬く脆くなり、結果として電池の耐衝撃性が低下する。そのため、カーボン粉末を含まない合成樹脂とカーボン粉末を添加した合成樹脂で二層構造にすることによって電槽及び蓋が割れないようにしている。
しかしながら、特許文献1のように予め帯電防止剤を合成樹脂に予め添加する場合、樹脂材料と帯電防止剤を均一に混練させることが課題となる。均一に混練しないと部分的に表面抵抗が大きな場所、表面抵抗が小さい場所が存在することになる。抵抗が大きい場合、即ち、帯電防止剤が少ない場合は帯電防止剤を混ぜない場合と同等になり、静電気の帯電や放電火花の発生を引き起こす。
また、特許文献2のように電槽・蓋の表面のみにカーボン粉末を含有させる方法として、電槽・蓋の成型金型のキャビティ部分にカーボンを吹き付けた後、樹脂を射出成型して電槽・蓋表面にカーボン含有層を形成することができる。また、ダブルインジェクションによって、カーボンを含まない合成樹脂とカーボンを含む合成樹脂を段階的に射出成型することによっても可能である。しかし、いずれの方法も工程が複雑となり、結果として鉛蓄電池が高価となり実用的ではない。
特開昭55−139756号公報
特開昭55−139757号公報
本発明は、電槽や蓋に帯電防止剤を添加した合成樹脂を使用することなく、低価格であり、かつ静電気の帯電と放電火花による電池破損が抑制された鉛蓄電池を提供するものである。
前記した課題を解決するために、本発明の請求項1にかかる発明は、オレフィン樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂からなり、極板群と電解液とを収納した電槽と、この電槽の開口部を覆う電池蓋を有した鉛蓄電池であって、前記電池蓋には、電池内部に滞留した酸素及び水素ガスを電池外部に放出するための排気孔をもつ液口栓が装着され、少なくとも前記電池蓋の前記排気孔に近接する外表面にSnO2とSb2O5及びポリオレフィンのエマルジョン(混合物)からなる金属酸化物層を形成し、前記蓋に設けた負極端子と前記金属酸化物からなる層を接触させることを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
本発明の請求項2にかかる発明は、前記SnO2とSb2O5及びポリオレフィンのエマルジョンからなる金属酸化物層は、前記電池蓋外表面にSnO2とSb2O5及びポリオレフィンを含む水溶液を塗布することによって得られたものであることを特徴とする鉛蓄電池を示すものである。
前記した本発明の構成によれば、電池蓋の外表面に導電性のSnO2及びSb2O5を含む金属酸化物層が形成される。形成された金属酸化物層は負極端子と接触される。蓋に帯電した静電気は、前記金属酸化物層の自由電子によって速やかに負極端子を通じて電池内部に吸収され、放電火花による電池破損の防止が比較的容易に可能となる。
また、この導電性の金属酸化物層は電池蓋外表面との密着性が良く、耐水性に優れ、布等による摩擦でも静電気の帯電防止効果を持続して得ることができる。
さらに、一般の静電気防止剤と異なり、空気中の湿度に影響されず静電気の帯電防止効果を持続して得ることができる。
この金属酸化物層を形成するにあたり、SnO2とSb2O5及びポリオレフィンを含む水溶液を塗布することにより、複雑な形状の外表面、例えば液口栓部等でもSnO2とSb2O5からなる金属酸化物層を形成することが可能となるため、工程的にも簡便であり、鉛蓄電池価格の増大を抑制でき、安価で、帯電防止性能に優れた鉛蓄電池を得ることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の実施形態による鉛蓄電池(以下、電池)1は、従来の鉛蓄電池と同様、極板群(図示せず)と電解液(図示せず)とを収納した電槽2と、この電槽2の開口部を覆う電池蓋3を有する。電槽2と電池蓋3は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びこれらの共重合体といったポリオレフィン系樹脂やABS樹脂等の合成樹脂であり、導電性カーボン等の帯電防止剤を含まない合成樹脂を成型して得られたものである。
電池蓋3には、電池内部に滞留した酸素ガス・水素ガスを電池外部に放出するための排気孔4aを有した液口栓4が装着され、少なくとも電池蓋3の排気孔4aに近接する外表面にSnO2とSb2O5からなる金属酸化物層5(図1における斜線部)を形成している。この金属酸化物層5と負極端子6は接触している。
この金属酸化物層5は自由電子を有しており、蓋表面の表面抵抗を下げることによって、電池蓋3へ帯電した静電気は金属酸化物層5から負極端子6を通じて速やかに電池1に吸収される。その結果、排気孔4a周辺での静電気による放電火花の発生が抑制されるため、電池内に滞留した水素ガスへの引火、これによる電池破損を抑制することが可能となる。
以上のことから、SnO2とSb2O5からなる金属酸化物層5を形成する部位は、排気孔4aに近接した部位であることが望ましく、排気孔4aを含む液口栓4の天面上に前記金属酸化物層5を形成することは好ましいことである。
前記金属酸化物層5の形成方法として、SnO2とSb2O5を含む水溶液を塗布することが簡便である。より具体的には、サブミクロンの粒子径をもつSnO2とSb2O5及びポリオレフィン樹脂を含有した水溶液を蓋3や液口栓4等の金属酸化物層5を形成する面に塗布すればよい。その後、常温又は加温乾燥させて、金属酸化物層5を形成する。
前記水溶液に含まれるポリオレフィン樹脂の効果によって金属酸化物層5は電池蓋3と強固に結合し、かつ、耐薬品性や耐熱性に優れているため、容易に電池蓋3から剥離することがない。その結果、静電気の帯電抑制効果を長期間安定して得ることができる。さらに、一般の静電気防止剤と異なり、空気中の湿度の有無に影響されることがないので、使用環境によらず安定して静電気の帯電が顕著に抑制される。
また、SnO2とSb2O5の金属酸化物を含む水溶液を塗布する方式によれば、複雑な表面形状を有したものでも容易にSnO2とSb2O5からなる金属酸化物層5を形成することができるため、工程の複雑化を免れることができる。
以下、実施例により、本発明の効果を説明する。本実施例では、JIS D5301(始動用鉛蓄電池)で規定する80D26形始動用鉛蓄電池(以下、電池)の電池蓋及び液口栓の排気孔が形成された天面にSnO2、Sb2O5及びポリオレフィンを含む水溶液を塗布し、乾燥させることによって電池蓋表面の全面にSnO2及びSb2O5からなる金属酸化物層を形成し、この金属酸化物層と負極端子を接触させた電池を作成した。この電池を電池Aとする。
SnO2とSb2O5の金属酸化物を含む水溶液は、ポリオレフィン樹脂;10%、SnO2;13.5%、Sb2O5;1.5%、残部の75%は水からなる。
また、SnO2、Sb2O5及びポリオレフィンを含む水溶液を電池蓋、液口栓天面とともに電槽側壁に塗布し、乾燥させることによって電池蓋表面と電池側壁の全面にSnO2及びSb2O5からなる金属酸化物層を形成し、この金属酸化物層と負極端子を接触させた電池を作成した。この電池を電池Bとする。
そして、比較対象として、上記SnO2、Sb2O5及びポリオレフィンを含む水溶液を電池蓋、液口栓及び電槽の何れにも塗布しない電池を作成した。この電池を電池Cとする。電池Cの電池蓋及び電槽はポリプロピレン樹脂製であり、その表面抵抗率は1015Ωである。
本発明例による電池A及びBについては、電池蓋の表面抵抗率は104Ωであった。なお、これらの電池A及びBについては、塗布するSnO2及びSb2O5、ポリオレフィン樹脂を含む水溶液を水で順次希釈し、希釈したSnO2及びSb2O5、ポリオレフィンを含む水溶液を塗布することにより、表面抵抗率を106Ω、108Ω及び1010Ω
とした電池を作成した。これらの本実施例の電池を表1に示す。
とした電池を作成した。これらの本実施例の電池を表1に示す。
表1に示した各電池を満充電後、5A定電流で1時間充電し、その後各電池を開路状態で1時間放置した後、電池蓋上の排気孔から20mm離間した位置に静電気発生装置で10kVの電圧を印加、そのときの電池破損状態を確認した。なお、これらの一連の試験は25℃、65RH%の恒温恒湿内で行なった。試験結果を表2に示す。
表2に示した結果を補足すると、電池A、A1、A2、A3及び電池B、B1、B2、B3については水素ガスへの引火は全く見られず、その結果として、電池破損も全く生じなかった。電池蓋と液口栓天面に金属酸化物層を形成し、電槽側壁には金属酸化物層を形成せず、かつ電池蓋の表面抵抗率を1010Ωとした電池A3については、水素ガスへの引火燃焼が生じたが電池を破損するには至らず、小音響を発した程度である。
一方、電池蓋、液口栓天面及び電槽側壁に金属酸化物層を形成し、かつ、電池蓋の表面抵抗率を1010Ωとした電池B3については、水素ガスへの引火が抑制されていた。
さらに、金属酸化物層を全く形成しなかった電池Cについては、水素ガスへの引火によって電池が破裂し、電池蓋が破損した。
これらの結果から、電池蓋表面にSnO2とSb2O5からなる金属酸化物層を形成し、この金属酸化物層と負極端子を接触させることにより、蓋に帯電した静電気が金属酸化物層を通じて電池内部に吸収されるので、静電気による放電火花の発生が抑制され、電池破損が顕著に抑制されることがわかる。また、本実施例では、電池蓋の金属酸化物層を形成した部位の表面抵抗率が104〜1010Ωの範囲で電池破損抑止効果が得られることがわかる。特に、104〜108Ωの範囲とすることにより水素ガスへの引火も抑制されるため好ましい。
また、電池蓋の金属酸化物層を形成した部位の表面抵抗率が1010Ωとした電池B3とA3の比較から、電槽外壁への金属酸化物層付与が放電火花発生抑制に効果があると考えられる。電池B3では、電池蓋表面に印加された電荷が電槽側面にも移行し、電池蓋表面の電荷密度が低下したためと推測される。従って、電池蓋表面に加えて電槽側面に金属酸化物層を形成することによって、帯電がより分散され、放電火花の発生とこれによる電池破損がより顕著に抑制されたと考える。
本発明によれば、電池蓋への静電気の帯電による放電火花、及び、電池内部に滞留した水素ガスに引火することによる電池破損を抑制することが可能となり、液式の始動用鉛蓄電池等、排気孔を有するベント式鉛蓄電池に好適である。
本発明の構成によれば、電池特性を犠牲にすることなく内部着火による電池破損を防ぐことが容易に可能となり、安全性を確保するとともに工業上、極めて有用である。
1 鉛蓄電池
2 電槽
3 電池蓋
4 液口栓
4a 排気孔
5 金属酸化物層
6 負極端子
2 電槽
3 電池蓋
4 液口栓
4a 排気孔
5 金属酸化物層
6 負極端子
Claims (2)
- オレフィン樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂からなり、極板群と電解液とを収納した電槽と、この電槽の開口部を覆う電池蓋を有した鉛蓄電池であって、
前記電池蓋には、電池内部に滞留した酸素及び水素ガスを電池外部に放出するための排気孔をもつ液口栓が装着され、少なくとも前記電池蓋の前記排気孔に近接する外表面にSnO2とSb2O5及びポリオレフィンのエマルジョンからなる金属酸化物層を形成し、かつ、前記蓋に設けた負極端子と前記金属酸化物からなる層を接触させることを特徴とする鉛蓄電池。 - 前記SnO2とSb2O5及びポリオレフィンのエマルジョンからなる金属酸化物層は、前記電池蓋外表面にSnO2とSb2O5及びポリオレフィンを含む水溶液を塗布することによって得られたものであることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007205276A JP2009043476A (ja) | 2007-08-07 | 2007-08-07 | 鉛蓄電池 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007205276A JP2009043476A (ja) | 2007-08-07 | 2007-08-07 | 鉛蓄電池 |
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JP2009043476A true JP2009043476A (ja) | 2009-02-26 |
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JP2007205276A Pending JP2009043476A (ja) | 2007-08-07 | 2007-08-07 | 鉛蓄電池 |
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JP (1) | JP2009043476A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110718663A (zh) * | 2019-10-12 | 2020-01-21 | 中国电子科技集团公司第十八研究所 | 一种空间飞行器用锂氟化碳电池静电防护装置及方法 |
-
2007
- 2007-08-07 JP JP2007205276A patent/JP2009043476A/ja active Pending
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CN110718663A (zh) * | 2019-10-12 | 2020-01-21 | 中国电子科技集团公司第十八研究所 | 一种空间飞行器用锂氟化碳电池静电防护装置及方法 |
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