JP2009041140A - 擬似円筒状単層中空炭素繊維 - Google Patents

擬似円筒状単層中空炭素繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】高結晶性でありかつ優れたヤング率、導電性及び耐熱性を有する単層中空炭素繊維を提供すること。
【解決手段】炭素のSP2結合からなる単層の擬似円筒状炭素六角網面からなる周側面と、炭素六員環及び炭素五員環を有して形成された端部とを有する長繊維構造を有し、かつラマン分光法で測定されるGバンド及びDバンドの強度比G/Dが、100以上であることを特徴とする擬似円筒状単層中空炭素繊維。
【選択図】図2

Description

この発明は、擬似円筒状単層中空炭素繊維に関し、特に詳しくは、高結晶性でありかつ優れたヤング率、導電性及び耐熱性を有する擬似円筒状単層中空炭素繊維に関する。
特許文献1には、「炭素6員環構造を主構造とする黒鉛シートよりなる単層のらせん円筒構造の炭素繊維」が記載されている。この円筒構造の炭素繊維は、「従来法で用いる炭素電極の一方を金属にして、アーク放電を起こさせ」、「雰囲気ガスとして、希ガスと炭化水素ガスの混合ガスを用いる」ことにより形成される(特許文献1の段落番号0009参照)。この特許文献1によると、特許文献1に記載の炭素繊維はカーボンナノチューブとも称されており(特許文献1の段落番号0011参照)、「どのチューブの直径も約1nmで、直径の揃ったカーボンナノチューブで」であり(同文献の段落番号0011参照)、「またどのチューブも単層の円筒で」あり(同文献の段落番号0011参照)、「チューブの先端は閉じられており、カーボンナノチューブの長さは数十nmに成長」しており(同文献の段落番号0011参照)、「単層黒鉛のナノチューブにも螺旋構造」が形成されている(同文献の段落番号0012参照)。しかしながら、この特許文献1には、チューブの先端構造についての記載も示唆もない。
特許文献2には、「円筒状構造をもつ黒鉛繊維であって、円筒状構造は、炭素元素をその構成単位として6員環を主構造とするヘリカル構造で形成されたものであり、繊維の外径は、30nm以下の大きさであることを特徴とする円筒状構造をもつ黒鉛繊維」が記載されている。この黒鉛繊維は、「外径が30nm以下であり」(同文献の段落番号0018参照)、「内外に隣接する円筒と円筒との間隔は、グラファイト構造のC面に相当する間隔であり、これは0.34nmであると測定された」(同文献の段落番号0017参照)と、されている。しかしながら、円筒と円筒との間隔がグラファイト構造C面に相当する間隔であり得るためには、黒鉛繊維の外径は30nmよりも大きくなければならないところ、特許文献2では、グラファイト構造のC面に相当する間隔が0.34nmでありながら、外径が30nm以下である炭素繊維が存在すると主張されている。
また、非特許文献1には、気相成長炭素繊維において直径の変化によるグラファイト層間(d002)距離の変化を示すグラフが示されており、そのグラフを図1として示す。図1では、上述したようなグラファイト構造のC面に相当する間隔が0.34nmよりも大きい場合にその直径が30nm以下であり、該間隔が0.34nmである場合にはその直径が30nmよりも大きいことが分かる。この非特許文献1に記載の実験事実からすると、前記特許文献2に記載された「内外に隣接する円筒と円筒との間隔は、グラファイト構造のC面に相当する間隔であり、これは0.34nmであると測定された」(同文献の段落番号0017参照)黒鉛繊維の外径が、特許文献2で主張されるように30nm以下であるはずがないと結論せざるを得ない。
ところで、上記公開特許公報に記載された炭素繊維以外に、高結晶性であり、かつ優れたヤング率、導電性及び耐熱性を有する、不純物の少ない擬似円筒状単層中空炭素繊維が望まれていた。
特開平6−322615号公報 特開平5−125619号公報 遠藤守信、林卓哉、笠井利幸、金降岩、片山健史郎、深井泰雄、的場俊晴、「カーボンナノチューブ・ナノファイバの大量生成と応用」、国際技術情報誌 M&E、工業調査会、2001年8月、8月号、p.164−165
この発明が解決しようとする課題は、高結晶性でありかつ優れたヤング率、導電性及び耐熱性を有する擬似円筒状単層中空炭素繊維を提供することである。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、炭素のSP2結合からなる単層の擬似円筒状炭素六角網面からなる周側面と、炭素六員環及び炭素五員環を有して形成された端部とを有する長繊維構造を有し、かつラマン分光法で測定されるGバンド及びDバンドの強度比G/Dが、100以上であることを特徴とする擬似円筒状単層中空炭素繊維であり、
請求項2は、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、ヤング率が0.2〜10TPaであることを特徴とする請求項1に記載の擬似円筒状単層中空炭素繊維であり、
請求項3は、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維に電流を導通した状態から電流が不通となる状態に変化する閾値電流密度が1.5×10〜200×10A/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の擬似円筒状単層中空炭素繊維であり、
請求項4は、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維中に含まれる全物質の95%以上が炭素六角網面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の擬似円筒状単層中空炭素繊維である。
この発明は、高結晶性であり、かつ優れたヤング率、導電性及び耐熱性を有する擬似円筒状単層中空炭素繊維を提供することができる。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、炭素のSP2結合からなる単層の六角網面からなる周側面を有する円筒体又は略円筒体に形成された形状を有し、その円筒体又は略円筒体の両端が閉塞している。なお、六角網面を円筒状に形成すると、その半径方向の断面は微視的な観点においては完全な円形ではなく角を有しているので、擬似円筒状と称することとする。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、ラマン分光法により構造を解析することができ、更に高結晶性を有しているか否かを判断することもできる。詳しく言うと、この発明に係る擬似円筒状単層中空炭素繊維は、ラマン分光法においてラジアルブリージングモード(RBM)として150〜250cm−1に信号ピークを認めることができる。したがって、ラジアルブリージングモードにおける信号ピークを観測することにより、ラマン分光法による測定における被測定物は単層カーボンナノチューブであると、特定される。なお、この発明に係る擬似円筒状単層中空炭素繊維は単層カーボンナノチューブと称されることがある。また、ラマン分光法により、Gバンドと称される帯域である1580〜1595cm−1に、特に1590cm−1近辺に強い信号ピークを観測することができる。このGバンドにおける強い信号ピークは炭素のSP2結合を示す。また、この発明に係る擬似円筒状単層中空炭素繊維は、ラマン分光法により、Dバンドと称される帯域である1285〜1400cm−1に、特に1350cm−1近辺に微弱な信号ピークが認められるか、又は信号ピークが認められない。Dバンドにおける信号ピークは、アモルファスカーボンに由来する。Dバンドに信号ピークが認められない場合、その擬似円筒状単層中空炭素繊維は炭素六角網面から形成された結晶性のカーボンナノチューブであると評価することができる。Dバンドに微弱な信号ピークが認められる場合には、この発明に係る擬似円筒状単層中空炭素繊維は、ラマン分光法により得られるGバンド及びDバンドの強度比G/Dが、100以上であり、好ましくは150以上であり、更に好ましくは200以上である。この強度比G/Dが上記範囲内にあると、ラマン分光法により測定される被測定対象物が結晶構造を有するカーボンナノチューブであり、しかも高結晶性であると評価することができる。この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維が高結晶性であると、この擬似円筒状単層中空炭素繊維は、アモルファス又はダイヤモンド様の欠陥部位をほぼ含有していないので、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維が強酸又は強塩基等の存在下に置かれた場合にも、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の性状が変化し難く、更に性状が変化し難いので擬似円筒状単層中空炭素繊維は耐熱性をも有する。
また、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、ヤング率(以下、「縦弾性係数」と称することがある。)を測定することによって前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の弾性を評価することができる。詳しく言うと、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維が束状に凝集した状態であると擬似円筒状単層中空炭素繊維自体の長さ及び径を測定することが困難であるから、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を単離させ、かつ基板上に担持させることにより、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の長さ、径及びヤング率を測定することができる。この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維のヤング率は、以下に示す操作及び式にから算出できる。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維のヤング率を測定するには、先ず単離した前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の長さ及び径を測定するので、基板に固定する。前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を基板に固定する方法としては、例えばシリコン基板をレーザ等で加熱及び溶解させた箇所に単離した前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を分散させた溶液を滴下した後、電流を印加して擬似円筒状単層中空炭素繊維を電気泳動させることにより固定する方法、又は刃先を対抗させて配置した剃刀刃基板の間に、単離した前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を溶媒に分散して滴下した後、剃刀刃基板に交流電流を印加することにより、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維が電気泳動するので剃刀刃基板上に電界方向に配向して固定する方法等を用いることができる。前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を固定した後に、基板から自由端までの擬似円筒状単層中空炭素繊維の長さ及びその直径を原子間力顕微鏡で測定し、基板を振動させる。基板が振動すると、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維も共振するので、共振している前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の振動数(以下、「共振振動数」と称することがある。)を測定する。測定した長さ、径及び共振振動数を用いて以下の式よりこの発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維のヤング率を算出することができる。
Figure 2009041140
前記擬似円筒状単層中空炭素繊維のヤング率は、0.2〜10TPaであるのが好ましい。この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は分散させる等の操作を行わない限りバンドルを形成しているので、バンドルを形成した状態で複合材として用いることを考えると、バンドル内で擬似円筒状単層中空炭素繊維同士のファンデルワールス力により、応力のベクトルとバンドルのすべり線ベクトルとが一致すると、バンドル内のすべりが起こり、ヤング率は0.2TPaに近づく。また、分散等のバンドル解除の操作を行って擬似円筒状単層中空炭素繊維を単離した場合はヤング率が10TPaに近づく。なお、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維のヤング率が0.2TPa未満であると、炭素繊維の側壁等に奇数の炭素で形成される奇数環、ホール及びカルボン酸等の欠陥が存在することとなり、また高い機械的特性や電気的特性が得られないことがある。結晶性の良い擬似円筒状単層中空炭素繊維のバンドルを形成していない場合は、ヤング率が約10TPaになる。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維はその両端が閉じている。その両端は、炭素六員環と炭素五員環とを有して形成される。この擬似円筒状単層中空炭素繊維の端部には炭素五員環が存在するので、端部に官能基を導入することができ、導入される官能基の種類に応じて様々にこの擬似円筒状単層中空炭素繊維を変性することができる。
また、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、その製造方法、特に流動気相法により製造された擬似円筒状単層中空炭素繊維は、その両端のいずれかに金属粒子を含有する。端部に金属粒子を含有する擬似円筒状単層中空炭素繊維は、開口部がないフラーレン構造であるので、化学的に安定といった特性を発揮し、他の材料との複合材といった用途等に有用性を発揮する。
更に、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、閾値電流密度を測定することによって導電性評価をすることができる。ここで、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維における閾値電流密度とは、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維を単離して、単離した前記擬似円筒状単層中空炭素繊維に焼き切れる等の破断が生じるまで電流を導通した場合の、破断が生じた電流値を前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の断面積で除した値を示すこととする。詳しく言うと、閾値電流密度を測定する前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、ヤング率を測定する際に単離して基板に担持させた前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を用いることができる。閾値電流密度を測定するには、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の一端を基板に担持させた箇所近傍と前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の他端とを電極に接続することもできるが、基板におけるヤング率を測定する際に前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を担持させる箇所が、ある程度の、少なくともこの発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維にできるだけ近い導電性が優れている金、銀、銅又はチタン等の金属のコーティングを接合部材として用いるのが好ましい。そうすると、基板の該金属部分に直接電極を接続することができる。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、閾値電流密度が1.5×10〜200×10A/cmであり、優れた電導性を備えていることが分かる。ここで、閾値電流密度とは、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維に金属端子を接続して電流を導通したときに、例えば擬似円筒状単層中空炭素繊維が断線すること、又は接続されている金属端子が焼け切れること等の不都合が生じて電流の導通状態が不通状態に変化した時点で算出された電流密度をいうこととする。なお、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維に電流を導通して電流値を上げていく場合、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維と金属端子との接合部における金属側に破断が生じ易い。このことから破断の要因は、接続部における金属の発熱に伴う熱応力で破断が生じ易いと推測される。よって、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は金属よりも通電による発熱が少ないと推察される。なお、閾値電流密度が1.5×10A/cm未満であると、擬似円筒状単層中空炭素繊維を形成する六角網面においてアモルファスカーボン又は欠陥が多く含まれるので、導電性材料として用いるには充分な導電性を得られない等の不都合が生じることがあり、結晶性の良い擬似円筒状単層中空炭素繊維の場合は欠陥が少なくなるにつれて200×10A/cmに近づく。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、上述したように高結晶の炭素六角網面から成るのが好ましいが、具体的には、擬似円筒状単層中空炭素繊維に含まれる全物質中の炭素六角網面の存在割合は、95%以上が好ましい。上述したラマン分光法により、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の炭素六角網面(これをグラフェンと称することがある。)の存在割合を推し量ることもできるが、より正確に純度を求める場合には、例えば熱重量/示差熱測定(以下、「TG/DTA測定」と称することがある。)を用いると、結晶構造の違いにより燃え方が異なるので、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維に含まれるグラフェン以外の存在割合を測定することができ、これにより前記擬似円筒状単層中空炭素繊維に含まれる全物質中に対するグラフェンの存在割合を測定することができる。なお、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、該擬似円筒状単層中空炭素繊維に含まれている全物質に対するグラフェンの存在割合が95%未満であると、グラフェン以外の不純物の影響で前記擬似円筒状単層中空炭素繊維の物理的な特性、例えば導電性又は熱伝導性等が低下するという不都合が生じることがある。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、その外径が、通常5nm以下、特に5nm以下0.5nm以上である。
上述のような物性を有する前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法、プラズマ合成法、気相化学蒸着法又は気相流動法等の適宜の方法で得ることができる。両端が閉塞した前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を製造するには、例えば気相流動法を用いるのが好ましい。以下に、気相流動法で前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を製造する一実施態様を示す。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維を製造する方法の一実施態様としては、例えば触媒としてフェロセン、鉄カルボニル及びニッケロセン等の有機遷移金属化合物と、二硫化炭素及びチオフェン類等の硫黄原子を含有する硫黄化合物と、炭化水素を含有する有機化合物と、水素等のキャリアガスとを混合して得られる原料混合物を、800〜1300℃の温度に維持された反応領域に供給するよりこの発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維を得ることができる。
この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は、優れた縦弾性係数を有しているので、例えば前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を複合材のフィラーとして使用する態様、化学的に安定であるので、例えば燃料電池のセパレータ又は反応溶液が充填される容器本体等の素材として用いる態様、及び導電性が優れているので、例えば前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を溶媒中に分散及び希釈して導電性塗料として塗工する態様等を採用することができる。
以下にこの発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維の実施例を示す。
先ず前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を作製した。前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、触媒としてフェロセン、硫黄化合物としてチオフェン、有機化合物として炭化水素及びキャリアガスとして水素を用い、反応領域を1200℃に設定して気相流動法により得た。図3に得られた擬似円筒状単層中空炭素繊維の走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と称することがある。)画像を、また図4に透過型電子顕微鏡画像(以下、「TEM」と称することがある。)を示す。なお、株式会社日立製作所製のSEM及びTEMを使用した。図4では、擬似円筒状単層中空炭素繊維は束状の集合体を形成していることが分かる。
図2に示されるのは、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維のラマン分光法により得られたラマンスペクトルである。行ったラマンスペクトル測定は、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のNicolet Alemega XRを用いてレーザ波長532nm、露光時間5秒、露光回数3回、レーザ出力100mw及び入射スリット幅300μmの条件で測定した。得られたラマンスペクトルのG/Dは、180であった。
次に、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維のヤング率を測定した。先ず図4に示されるように擬似円筒状単層中空炭素繊維は束上の集合体を形成しているので、擬似円筒状単層中空炭素繊維をイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と称することがある。)に投入し、該IPAを飯沼理化学株式会社製の超音波ホモジナイザーで分散させた。次に、金を蒸着した溝を有し、該溝内にナイフエッジを有するシリコン基板に前記擬似円筒状単層中空炭素繊維を電気泳動させることによりナイフエッジ部に配向させた。配向している擬似円筒状単層中空炭素繊維のナイフエッジ近傍のシリコンをレーザで固着させた。ナイフエッジに固定された擬似円筒状単層中空炭素繊維をSEMにて電子線を照射し、擬似円筒状単層中空炭素繊維の二次電子強度変化から共振振動数を測定した。また、擬似円筒状単層中空炭素繊維の長さ、外径及び内径はQuesant株式会社製のAFMを用いて予め測定しておいた。更に、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維のヤング率測定と共に、擬似円筒状単層中空炭素繊維の引張強度も測定した。引張強度の測定法は、擬似円筒状単層中空炭素繊維を紡糸することで撚糸にして、株式会社製島津製作所製アムスラー型万能試験機にて引張試験を行うこととした。引張試験では20GPa以上の荷重に対し、撚糸が保持部で滑り始めたので、荷重をそれ以上にかけることができなかった。よって上限値は20GPaを採用した。測定した擬似円筒状単層中空炭素繊維の縦弾性係数及び引張強度の相関図を図5に示す。図5には、比較対象として、ケブラー、Sガラス、炭素フィラメント、ベリリウム、6061アルミニウム、住友化学株式会社製の酸化アルミニウム、日本カーボン株式会社製の酸化アルミニウム、デュポン株式会社製の酸化アルミニウム、高強度炭素、高弾性炭素、鋼、炭化珪素、炭化珪素−タングステン、ホウ素、炭化珪素コーティングを施したホウ素、炭化珪素ウィスカー及びアルミナウィスカーについて、擬似円筒状単層中空炭素繊維と同様にして測定した縦弾性係数及び引張強度も示す。図5には、縦弾性係数が0.5TPa以下の白抜き点(○)は比較対象として上述した化合物が示されている。また、擬似円筒状単層中空炭素繊維の縦弾性係数の文献値として、1000GPaに黒丸点(●)を示した。この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維の縦弾性係数を測定すると、図5の7260GPaに矩形状の黒点(■)で示される結果が得られた。この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維の縦弾性係数は、比較対象等に比べて非常に高いことがわかる。
次いで擬似円筒状単層中空炭素繊維の閾値電流密度を測定した。ヤング率の測定で擬似円筒状単層中空炭素繊維を固定した基板を用いて、基板に固定していない側の擬似円筒状単層中空炭素繊維に電極を接触させ、かつ電源及び電流計を介して擬似円筒状単層中空炭素繊維が担持している溝に電極を接触させて回路を形成した。この閾値電流密度の測定を行った装置の概略図を図6(A)に示し、また図6(B)には擬似円筒状単層中空炭素繊維を基板上に固定させた状態で得られた原子間力顕微鏡画像を示す。図6(B)では、擬似円筒状単層中空炭素繊維が単離されて、基板に配向及び固定されていることが分かる。
擬似円筒状単層中空炭素繊維のヤング率及び閾値電流密度の測定は、上述のヤング率が7260GPaであった試料とは別に5種類の長さ及び径が異なる擬似円筒状単層中空炭素繊維について行った。表1に測定したヤング率及び閾値電流密度を示す。ヤング率が7260GPa以上であった試料は試料6として示している。
Figure 2009041140
表1に示される様に、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維はヤング率及び導電性が高いことが分かる。
続いて、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維の全表面に対するグラフェンの存在割合を測定した。
グラフェンの存在割合を測定する方法として、TG/DTA測定を用いた。TG/DTA測定には、アルバック理工株式会社製の示差熱天秤TGD−9600を用いて、擬似円筒状単層中空炭素繊維を40mg、空気中で1000℃まで10℃/分の昇温速度に設定して測定を行った。TG/DTA測定の結果を図7に示す。図7に示されるように、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は400℃という高温に達するまで重量減少がほとんど生じておらず、耐熱性に優れていることが分かり、更に、測定後の重量減少割合からこの発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維の中に含まれる全物質に対し95%以上がグラフェンであることも分かった。
よって、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維は高結晶性であり、かつ優れた導電性及び縦弾性係数を有し、更に、耐熱性をも有している。
図1は、気相成長炭素繊維の直径の違いによる層間(d002)変化を示すグラフであり、非特許文献1より転載される。 図2は、この発明の一実施例である擬似円筒状単層中空炭素繊維のラマン分光スペクトルを示す。 図3は、この発明の一実施例である擬似円筒状単層中空炭素繊維のSEM画像を示す。 図4は、この発明の一実施例である擬似円筒状単層中空炭素繊維のTEM画像を示す。 図5は、この発明の一実施例である擬似円筒状単層中空炭素繊維の縦弾性係数と引張強度との相関図を示す。 図6は、この発明の擬似円筒状単層中空炭素繊維の一実施例の原子間力顕微鏡写真と閾値電流密度を測定する装置図とを示し、図6(A)は、この発明の一実施例である擬似円筒状単層中空炭素繊維の閾値電流密度を測定する閾値電流試験装置の模式図を示し、図6(B)は、この発明の一実施例である擬似円筒状単層中空炭素繊維を単離して基板に固定した原子間力顕微鏡写真を示す。 図7は、この発明の一実施例である擬似円筒状単層中空炭素繊維の熱分析(TGA)スペクトルを示す。

Claims (4)

  1. 炭素のSP2結合からなる単層の擬似円筒状炭素六角網面からなる周側面と、炭素六員環及び炭素五員環を有して形成された端部とを有する長繊維構造を有し、かつラマン分光法で測定されるGバンド及びDバンドの強度比G/Dが、100以上であることを特徴とする擬似円筒状単層中空炭素繊維。
  2. 前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、ヤング率が0.2〜10TPaであることを特徴とする請求項1に記載の擬似円筒状単層中空炭素繊維。
  3. 前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維に電流を導通した状態から電流が不通となる状態に変化する閾値電流密度が1.5×10〜200×10A/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の擬似円筒状単層中空炭素繊維。
  4. 前記擬似円筒状単層中空炭素繊維は、前記擬似円筒状単層中空炭素繊維中に含まれる全物質の95%以上が炭素六角網面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の擬似円筒状単層中空炭素繊維。
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