JP2009023228A - 樹脂中空成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂中空成形体の製造方法は、水溶性若しくは加水分解性の樹脂Aを用いて射出成形して中子を形成する工程と、樹脂Aの中子を金型内に少なくとも一部分が外部と接触できるように配置し、該中子の外側周囲に、所望する中空成形体の外部構造を形成するように非加水分解性でかつ疎水性の樹脂Bを、次式:樹脂Aの融点(TmA℃)>樹脂Bの射出成形温度(TB℃)−150(℃)を満足する射出温度で射出成形して、該中子と一体化された成形体を形成する工程と、一体化成形体を、加圧下かつ該樹脂Bの融点より低い温度下でのオートクレーブ養生により、中子を形成している該樹脂Aのみを、該中子が外部と接触できる部分より除去して中空部を形成する工程とを備えている。
【選択図】図1
Description
これらの複数部材の接着・接合は、通常、接着剤、パッキン、ネジ締結、溶着・溶融などの手段を用いて行われており、接合界面のシール性能を確保して、成形された後の内部中空空間を外部と遮断、安定化するための工夫・製法がとられている。
更に、所望の中空空間形状を組み立てによって形成させるために、個別に製造する個々の部材を設計する設計工程や、接合面において接合が十分であるか等の、界面のシール性の評価工程も必要となる。
従って従来の方法では、このように製造工程が複雑で多くなってしまい煩雑であり、また、製造コストが上昇する。
更に、部材を接合等するので、組み立て後の成形体の外部には接合部、即ち継ぎ目が存在することになり、使用しているうちに接合部が劣化して、例えば成形体内部に含有される液体等が漏洩する場合があった。
また、光硬化を用いた方法は、光硬化装置が高価である上に成形に長時間を要するため、大量生産するには適切な方法ではない。
特に、内面が複雑な凹凸状の部分を有する場合や、中空部に外側に向かって拡出する部分を有する場合には、上記方法では、中空部を形成する中子を完全に取り除くことはできず、所望する正確な内部形状を有する中空成形品を得ることはできない。
更に、中空形状が極めて複雑な形状であっても、簡易な方法で、寸法精度も良好に一体成形することができる、樹脂中空成形体の製造方法を提供することである。
樹脂Aの融点(TmA℃)>樹脂Bの射出成形温度(TB℃)−150(℃)
を満足する射出温度で射出成形して、該中子と一体化された成形体を形成する工程と、前記一体化成形体を、加圧下かつ該樹脂Bの融点より低い温度下でのオートクレーブ養生により、中子を形成している該樹脂Aのみを、該中子が外部と接触できる前記部分より除去して中空部を形成する工程とを備えたことを特徴とする、樹脂中空成形体の製造方法である。
樹脂Aの融点(TmA℃)>樹脂Bの射出成形温度(TB℃)−150(℃)
を満足する射出温度で射出成形して、該中子と一体化された成形体を形成する工程と、該成形体の少なくとも一部分に外部と中子とが連通する孔を設け、前記一体化成形体を、加圧下かつ該樹脂Bの融点より低い温度下でのオートクレーブ養生により、中子を形成している該樹脂Aのみを該孔より除去して中空部を形成する工程とを備えたことを特徴とする、樹脂中空成形体の製造方法である。
更に好適には、上記本発明の樹脂中空成形体の製造方法において、オートクレーブ養生でのオートクレーブ内の圧力は2〜15気圧、温度は該樹脂Bの融点よりも低くかつ樹脂Aの融点よりも高くかつ105〜200℃であることを特徴とするものである。
また、従来のように複数の部材を別個に作成する必要がないため、組み立てや接合・接着に関する工程は不要となり、従って製造工程が簡便なものとなるので、複雑な内面形状を有する樹脂中空成形体を低コストで製造することができることとなる。
このように本発明の製造方法によれば、複雑な内面凹凸中空形状を有する中空成形体や中空内部に外側に向かって拡出する部分や逆テーパー部分を有する場合であっても、寸法精度良く、樹脂製のシームレスな中空成形体を得ることが可能となる。
本発明の樹脂中空成形体の製造方法は、水溶性若しくは加水分解性の樹脂Aを用いて中空部に相当する形状の中子を射出成形して中子を形成する工程と、前記樹脂Aの中子を金型内に少なくとも一部分が外部と接触できるように配置し、前記中子の外部と接触できる当該部分以外の該中子の外側周囲に、所望する中空成形体の外部構造を形成するように非加水分解性でかつ疎水性の樹脂Bを射出成形して、該中子と一体化された成形体を形成する工程と、前記一体化成形体を、加圧下かつ該樹脂Bの融点より低い温度下でのオートクレーブ養生により、中子を形成している該樹脂Aのみを、該中子が外部と接触できる前記部分より除去して中空部を形成する工程とを備えるものである。
樹脂Aの融点(TmA℃)>樹脂Bの射出成形温度(TB℃)−150(℃)
かかる中子の形成は、例えば中子形状のキャビティを有する中子用金型に樹脂Aを射出する射出成形方法等により形成することができる。
該中子の形成に用いられる樹脂Aは、水溶性若しくは加水分解性の樹脂であれば任意の樹脂を使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)等の水溶性ポリアクリル酸・ポリメタクリル酸誘導体等を用いることができる。
ここで、樹脂Aは、水溶性若しくは加水分解性の樹脂でなければならず、これは後の工程でのオートクレーブ養生において、樹脂Aを水蒸気または熱水により容易にかつ完全に除去することが可能となるからである。
このような熱伝導率範囲を有する樹脂Aを用いることで、中子の周囲に樹脂Bを射出した際であっても、樹脂Bの熱が樹脂Aに伝導しにくくなり、中子一体成形体の寸法精度がより向上する。
外部と接触できる該部分は、得られた射出中子一体化成形体をオートクレーブ養生して該中子を除去する際に、中子が除去される孔として機能する部分であり、該部分は少なくとも1箇所あれば、本発明における上記効果を奏することができるものである。
または中子を該製品用金型内のキャビティに設置して、該中子の周囲に樹脂Bを射出することもできる。
かかる場合には、得られた射出中子一体化成形体を次のオートクレーブ養生工程に課する前に、該射出中子一体化成形体の少なくとも一部分に、中子と成形体外部とを連通する孔を設ける工程が必要であり、該孔は上記したと同様に、オートクレーブ養生工程での中子の除去孔として機能するものである。
ここで、樹脂Bは、非加水分解性でかつ疎水性の樹脂でなければならず、更に好ましくは結晶性の樹脂であり、これは後の工程でのオートクレーブ養生において、樹脂Aが水蒸気または熱水により容易にかつ完全に除去される際にも、成形体の外殻を形成する樹脂Bが該オートクレーブ養生によって影響を及ぼされず、良好な形態保持性を維持することが可能となるからである。
樹脂Aの融点(TmA℃)>樹脂Bの射出成形温度(TB℃)−150(℃)
望ましくは、
樹脂Aの融点(TmA℃)>樹脂Bの射出成形温度(TB℃)−120(℃)
の関係を有する。
かかる関係を有することにより、樹脂Aにより形成された中子が、融解した樹脂Bの射出による応力と熱によって変形することなく、所望の中空構造の寸法安定性を保持することができる。
なお、この関係を満たさない場合は中子が変形・損傷し、所望の中空構造を得ることが困難となる。
また、樹脂の融点とは、JIS K7121 プラスチックの転移温度測定方法で測定した温度をいうものである。
まず、該射出中子一体化成形体をオートクレーブ内に設置してオートクレーブ養生等することで、該中子樹脂Aを完全に溶出させて除去し、中空部が複雑な形状を有する樹脂中空成形体を、寸法精度良好に製造することができる。
該オートクレーブ養生により、中子を形成する樹脂Aを完全に、前記孔(外部と接触している中子の部分または、中子と外部が連通するようにオートクレーブ工程前に設けられた孔)から溶出・除去させることができる。
中子は水溶性若しくは加水分解性の樹脂を使用し、成形体の外殻を構成する樹脂Bは非加水分解性樹脂で疎水性の樹脂を使用していることで、オートクレーブ養生手段、例えば射出成形体全体を一定の高温、高圧水蒸気下等にさらすことで、該樹脂Aは、水蒸気及び熱水による樹脂Aの加水分解や溶解(主として)、熱による溶融や融解が起こり完全に溶出され、一方樹脂Bは溶出されず、変形しない。
これらの条件でオートクレーブ養生を行なうことにより、24時間以内、望ましくは15時間以内、更に望ましくは0.5〜5時間以内で、樹脂Aが完全に溶出し、中空部が複雑な形状を有する樹脂中空成形体を、寸法精度が良好に製造することができる。
(実施例1〜16、比較例1〜11)
表1の樹脂A及び樹脂Bとの組み合わせを用いて、図1及び図2に示す中空構造成形体を作成した。
なお、表1に示す樹脂A及び樹脂Bは、以下のものを用いた。
樹脂A:
(ア)ポリビニルアルコール(1)(PVA(1);耐熱性グレード、製品名:クラレポバール CP−1000、株式会社クラレ製)、TmA(融点)175℃)
(イ)ポリビニルアルコール(2)(PVA(2);通常グレード、製品名:クラレポバール PVA−102、株式会社クラレ製)、TmA(融点)145℃)
(ウ)ポリエチレングリコール(PEG、製品名:PEG−20000、日本油脂株式会社製)、Tm(融点)65℃)
(1)高密度ポリエチレン(HDPE、製品名:ハイゼックス 2200J、プライムポリマー株式会社製、融点135℃)
(2)ポリプロピレン(PP、製品名:プライムポリプロ J108M、プライムポリマー株式会社製、融点170℃)
(3)ポリスチレン(PS、製品名:GPPS G590、日本ポリスチレン株式会社製、融点230〜260℃)
(4)ポリ塩化ビニル(PVC、製品名:信越PVC 硬質グレード、信越化学工業株式会社製、融点210℃)
(5)ポリエチレンテレフタレート(PET、製品名:クラペット KS750RC、株式会社クラレ製、融点265℃)
(6)ポリカーボネート(PC、製品名:ユーピロン S−3000R、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、融点230〜260℃)
(7)ポリフェニレンスルフィド(PPS、製品名:H−1G、大日本インキ化学工業株式会社、融点280℃)
所望する最終的な樹脂中空成形体の中空構造を型作る図1及び図2中の中子2又は2’の形状の中子成形体を、上記各樹脂Aにより製造した。
具体的には、該各樹脂Aを溶融して、最終的な中空成形体1又は1’の中空構造を型作る図1及び図2中の中子2又は2’に相当する形状のキャビティを有する各中子用金型に樹脂Aを射出成形して、冷却することにより、それぞれ中子2又は2’を製造した。
次いで、該各中子2又は2’を、最終的な中空成形体製品用の金型内のキャビティの所定の位置に設置し、該各中子の周囲に各樹脂Bを、表1に示す各射出温度で射出成形して(5又は5’)、図1及び図2に示す形状の中子一体化成形体1又は1’を得た。
図1(a)は、一口開放型の中子一体化成形体の透視図、図1(b)は図1(a)のY軸に垂直な中央部の断面図、図1(c)は図1(a)のZ軸に垂直な中央部の断面図を示す。
図2(a)は、二口開放型の中子一体化成形体の透視図、図2(b)は図2(a)のY軸に垂直な中央部の断面図、図2(c)は図2(a)のZ軸に垂直な中央部の断面図を示す。
また、表1の樹脂Bの射出温度とは、樹脂Bを射出する際の温度であり、具体的には製品用金型内の樹脂Bを射出するノズル先端温度の設定温度を示す。
評価は、得られた各中子一体化成形体を切断して、該中子の形状保持性等により、以下の基準で評価した。
○・・・中子(樹脂A)の変形がなく、中子一体化成形体が得られた。
×・・・樹脂Bの射出成形時に、中子(樹脂A)が変形した。
表1より、比較例1〜5のものは、樹脂Bの射出時に中子が変形していたことが明らかとなった。
但し、オートクレーブ養生は、予め準備した水を張った水槽内に、各成形体を開口部を下向き(図1の成形体)または上下方向(図2の成形体)にして浸漬し、該水槽を高温・高圧の水蒸気雰囲気であるオートクレーブ内に設置して行った。
但し、図1に示す各一口開放型の中子一体化成形体は、前記乾燥オーブン中に設置させた状態で行ったが、図2に示す各二口開放型の中子一体化成形体については、前記乾燥オーブン中で各中子一体化成形体を設置させるとともに開口部3から開口部4に向かって加圧(10〜100Mpa程度の圧縮空気)しながら、上記乾燥オーブン養生を行なった。
○・・・図1及び図2の中子が完全に除去され、得られた中空形状の寸法精度
も良好な成形体
×・・・図2の中子の逆テーパー部6以外の樹脂Aは除去されたが、図1の中子が
残存している成形体
××・・図1及び図2の中子がほとんど残存している成形体
また、表1より、中子一体化成形体を適正に得た比較例9〜11のものであっても、オートクレーブ養生ではなく、単に加熱しながら一方の開口部より中子を加圧する乾燥オーブン養生では、複雑な形状の中空成形体を製造するのは困難であることも明らかである。
ここで、図3は本発明の製造方法により得られた、実施例1〜16の一口開放型中空成形体のZ軸(図1参照)に垂直な中央部の透視断面図を示し、図4は本発明の製造方法により得られた、実施例1〜16の二口開放型中空成形体のZ軸(図2参照)に垂直な中央部の透視断面図を示す。
これらの図3及び図4より明らかなように、本発明の製造方法により得られた中空成形体は中子が完全に除去されており、所望する中空形状が得られている。
2、2’ 中子
3,4 開口部(円柱孔)
5,5’ 外殻体(樹脂B)
6 逆テーパー部
Claims (4)
- 水溶性若しくは加水分解性の樹脂Aを用いて中空部に相当する形状の中子を射出成形して中子を形成する工程と、
前記樹脂Aの中子を金型内に少なくとも一部分が外部と接触できるように配置し、前記中子の外部と接触できる当該部分以外の該中子の外側周囲に、所望する中空成形体の外部構造を形成するように非加水分解性でかつ疎水性の樹脂Bを、下記式:
樹脂Aの融点(TmA℃)>樹脂Bの射出成形温度(TB℃)−150(℃)
を満足する射出温度で射出成形して、該中子と一体化された成形体を形成する工程と、
前記一体化成形体を、加圧下かつ該樹脂Bの融点より低い温度下でのオートクレーブ養生により、中子を形成している樹脂Aのみを、該中子が外部と接触できる前記部分より除去して中空部を形成する工程とを備えたことを特徴とする、樹脂中空成形体の製造方法。 - 水溶性若しくは加水分解性の樹脂Aを用いて中空部に相当する形状の中子を射出成形する工程と、
前記樹脂Aの中子を金型内に配置し、該中子の外側周囲に、所望する中空成形体の外部構造を形成するように非加水分解性でかつ疎水性の樹脂Bを、下記式:
樹脂Aの融点(TmA℃)>樹脂Bの射出成形温度(TB℃)−150(℃)
を満足する射出温度で射出成形して、該中子と一体化された成形体を形成する工程と、
該成形体の少なくとも一部分に外部と中子とが連通する孔を設け、
前記一体化成形体を、加圧下かつ該樹脂Bの融点より低い温度下でのオートクレーブ養生により、中子を形成している該樹脂Aのみを該孔より除去して中空部を形成する工程とを備えたことを特徴とする、樹脂中空成形体の製造方法。 - 請求項1または2記載の中空成形体の製造方法において、水溶性若しくは加水分解性の樹脂Aの除去は、オートクレーブ内で、前記中子一体化成形体を高圧水蒸気雰囲気下に設置することにより、または高圧蒸気内の熱水と接触させることにより実施することを特徴とする、樹脂中空成形体の製造方法。
- 請求項3記載の樹脂中空成形体の製造方法において、オートクレーブ養生でのオートクレーブ内の圧力は2〜15気圧、温度は該樹脂Bの融点よりも低くかつ樹脂Aの融点よりも高くかつ105〜200℃であることを特徴とする、樹脂中空成形体の製造方法。
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