JP2009015483A - 構造物の耐震性能評価プログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】構造物の耐震性能評価プログラムを提供する。
【解決手段】異なる発生超過確率の地震動強さVsに対する構造物の応答/損傷の段階的な変化として定義された複数の耐震性能T1、T2、T3を、対象構造物Bの構造形式Fに応じた応答/損傷基準値S1〜S6に対応付けて超過確率軸と応答/損傷値軸とで定まるXY平面上にプロットすることにより複数の性能領域Z1、Z2、Z3に区画された性能評価平面Nを生成する。対象構造物Bの設置位置Lで想定される確率論的地震動Vsと対象構造物Bの応答/損傷特性Cとから対象構造物Bの発生確率Dp付き応答/損傷値Dsを算出し、各応答/損傷値Dsを降順に並び替えて求めた超過確率Deを性能評価平面N上にプロットすることにより超過確率曲線(地震リスク曲線)Pを作成する。その超過確率曲線Pが性能評価平面N上の性能領域Z0、Z1、Z2、Z3の何れに属するかを判断することにより対象構造物Bの耐震性能Tを評価する。
【選択図】 図3

Description

本発明は構造物の耐震性能評価プログラムに関し、とくに土木・建築構造物(以下、単に構造物という)の地震動に対する応答値又は損傷値の超過確率曲線を用いてその構造物の耐震性能を評価するプログラムに関する。
最近の構造物の耐震設計は、従来のように関連法令等で規定された構造・材料・設備等を採用する仕様規定型の設計から、一定の性能を満たせば多様な構造・材料・設備等を採用できる性能指向型の設計へと移行しつつある。性能指向型の耐震設計では、予め設計者が建築主に対して複数の耐震性能を提示し、目標とすべき耐震性能(目標性能)について建築主と合意したうえで、実際に設計した構造物が目標性能を満足しているか否かを評価することが必要となる。構造物に地震被害が発生する確率は、構造物自体の保有する属性だけでは定まらず、地震動の強さ(サイトの地震活動度や地盤増幅)によっても異なりうる。従って、このような条件を含めた耐震性能を分かりやすく提示し又は評価する手法として、図17に示すように、地震動の強さと構造物の応答又は損傷状態(以下、応答/損傷ということがある)とをそれぞれ複数のレベルに分け、地震動レベルと応答/損傷レベルとの組み合わせによって耐震性能を定義した耐震性能マトリクスMが提案されている(非特許文献1及び2参照)。
図17(A)の耐震性能マトリクスM1(非特許文献1)は、縦軸の再現期間(発生頻度)で表した4段階の地震動レベルと横軸の4段階の損傷レベルとの組み合わせ(地震動レベル+損傷レベル)の段階的な変化によって、構造物の重要度・用途等に応じて適用される3種類の耐震性能(性能グレード)T1、T2、T3を定義したものである。例えば、耐震性能T1は4段階の変化により、耐震性能T2は3段階の変化により、耐震性能T3は2段階の変化により定義されている。また図17(B)の耐震性能マトリクスM2(非特許文献2)は、同図(A)と同様の考え方に基づくものであるが、縦軸の2段階の地震動レベルと横軸の3種類の耐震性能(性能グレード)との各交点に構造物の損傷レベルを設定することで、基準級T1・上級T2・特級T3の3種類の耐震性能(性能グレード)を定義したものである。マトリクスM2の耐震性能T1、T2、T3は、何れも2段階の変化により定義されている。
耐震性能マトリクスM2における地震動レベル「稀に」及び「極めて稀に」は、例えば東京地区における50年間の発生超過確率(50年間に少なくとも1回地震動の強さがそのレベルを越える確率)が80%及び10%程度の地震動の強さに相当する(非特許文献2)。またマトリクスM2における損傷レベル「無被害」、「小破」、「中破」及び「大破」は、例えば図17(C)の基準値表に示された構造物の地震動に対する応答基準値(例えば、層間変形角又は応答加速度の損傷限界値、安全限界値、又はそれらの間に適当な比率で設けた安全限界余裕値等)によって判断することができる(非特許文献3)。或いは、「小破」、「中破」、「大破」等の損傷レベルの判断基準値を、構造物の応答を介さずに、構造物の地震動に対する被害損失率又は被害損失額等(以下、これらを構造物の損傷基準値ということがある)で表すことも可能である。なお、構造物の地震動に対する判断基準値(応答基準値や損傷基準値)は、構造物の構造形式(ラーメン構造、耐力壁付きラーメン構造等の外力に抵抗する形式)、構造種別(S構造、RC構造、PS構造、SRC構造等の構成材料の種別)、又は建築年代によって異なる(例えば非特許文献3参照)。
すなわち、図17の耐震性能マトリクスM1、M2は何れも、異なる発生超過確率の地震動強さに対する構造物の応答/損傷の段階的な変化として耐震性能を定義したものと考えることができる。構造物の建築主は、耐震性能マトリクスMに示された複数の耐震性能を比較することにより、例えば構造物の重要度・用途等の観点から目標とする耐震性能を決定することができる。また構造物の設計者は、例えば設計した構造物の地震応答解析(又は地震損傷解析)により求まる応答値(又は損傷値)と、その構造物の構造形式、構造種別、建築年代の何れか又は全て(以下、構造形式・種別ということがある)に応じた判断基準値(応答基準値又は損傷基準値)とを比較することにより、設計した構造物の耐震性能を評価・判定することができる。
損害保険料率算出機構「地震危険度指標に関する調査研究−地震PMLの現状と将来−」31〜48頁及び50〜51頁、2002年12月、インターネット〈URL:http://www.nliro.or.jp/disclosure/q_kenkyu/〉 日本建築構造技術者協会(JSCA)「安心できる建物を目指して−JSCA性能メニュー」2006年 北村春幸ほか「性能設計における耐震性能判断基準値に関する研究−JSCA性能メニューの安全限界値と余裕度レベルの検討−」日本建築学会構造系論文集、第604号、183〜191頁、2006年6月 石田寛ほか「地盤増幅を考慮した一様ハザードスペクトルに基づく建築構造物の地震リスク評価手法」日本建築学会構造系論文集、第583号、23〜30頁、2004年9月 日本建築学会編「地盤震動−現象と理論」日本建築学会発行、2005年1月 高橋雄司「簡易シミュレーションによる建築物の地震リスク分析」第50回構造工学シンポジウム、日本建築学会構造工学論文集、Vol.50B、453〜463頁、2004年3月
上述したように耐震性能マトリクスMは、地震動(外力)と構造物の応答値(又は損傷値)との組み合わせにより耐震性能を定義し、構造物の重要度・用途等に応じた耐震性能を分かりやすく提示・評価できる点で非常に有効な手法である。しかし、従来の耐震性能マトリクスMには次のような問題点がある。
(a)限られた数の地震動レベル(2〜4点の外力)でしか耐震性能が定義されていないので、定義以外の地震動レベルに対する耐震性能を提示・評価できない問題点がある。例えば図17(A)のマトリクスM1では、再現期間100年の地震動に対する耐震性能は不明であり、そのような地震動の震源が構造物付近に存在していても耐震性能の提示・評価の対象とすることができない(耐震性能T1、T2、T3の何れであるかを評価できない)。
(b)また、定義された各耐震性能に幅があるため、対象構造物の耐震性能を定量的に提示・評価できない問題点がある。例えば同図(B)のマトリクスM2では、同じ耐震性能T1、T2又はT3と評価された構造物でも、実質的な耐震性能は大きく異なる場合がある。
そこで本発明の目的は、構造物付近に潜在的に存在する様々な地震動に対する耐震性能を定量的に提示・評価できる構造物の耐震性能評価プログラムを提供することにある。
本発明者は、構造物付近に存在する様々な震源の地震動を入力として算出される構造物の地震応答値の超過確率曲線(地震リスク曲線)に注目した(非特許文献1及び4参照)。従来から地震リスクの評価・管理手法として、図5に示すように、対象構造物B付近の複数の震源E(震源モデル)と地盤特性U(地盤モデル)とから確率論的地震動Vs(例えば発生確率Vp付き地震動Vs)を算定し、その確率論的地震動Vsと構造物Bの応答特性(構造物モデル)Cとから構造物Bの地震動に対する確率論的応答値Ds(例えば発生確率Dp付き応答値Ds)を算出し、その確率論的応答値Dsの超過確率曲線(地震リスク曲線)Pによって地震環境E・地盤増幅U・構造物特性Cを考慮した構造物Bの地震リスクを定量化する方法が知られている(非特許文献4参照)。この地震リスク曲線Pは、地震応答値とその超過確率(地震応答値の再現期間)との関係を示すものであり、上述した耐震性能マトリクスMのように地震応答値と地震動の超過確率(地震動の再現期間)との関係を示すものとは異なる。しかし、地震動の超過確率(再現期間)と地震応答値の超過確率(再現期間)とには対応関係が認められるので、地震リスク曲線Pを用いて耐震性能マトリクスMに対応する耐震性能を評価できる可能性がある。本発明は、この着想に基づく研究開発の結果、完成に至ったものである。
図1のブロック図及び図2の流れ図を参照するに、本発明による構造物の耐震性能評価プログラムは、対象構造物Bの耐震性能Tを評価するためコンピュータ1を、対象構造物Bの設置位置Lと構造形式・種別Fと地震動Vsに対する応答/損傷特性Cとを記憶する記憶手段7(図2のステップS103)、異なる発生超過確率の地震動強さVsに対する構造物の応答/損傷の段階的な変化として定義された複数の耐震性能T1、T2、T3(図3(A)の耐震性能マトリクスM参照)を構造形式・種別Fに応じた応答/損傷基準値S1〜S5(図3(B)参照)に対応付けて超過確率軸と応答/損傷値軸とで定まるXY平面上にプロットすることにより複数の性能領域Z0、Z1、Z2、Z3に区画された性能評価平面N(図3(C)参照)を生成する生成手段10(ステップS104)、対象構造物Bの設置位置Lで想定される確率論的地震動Vsを入力して前記応答/損傷特性Cに応じた対象構造物Bの発生確率Dp付き応答/損傷値Dsを算出する応答/損傷算出手段30(ステップS106)、その応答/損傷値Dsを降順に並び替えて各々の超過確率Deを求め且つ性能評価平面N上にプロットして超過確率曲線(地震リスク曲線)P(図3(D)参照)を作成する作成手段40(ステップS107、108)、並びに超過確率曲線(地震リスク曲線)Pが性能領域Z0、Z1、Z2、Z3の何れに属するかを判断することにより対象構造物Bの耐震性能Tを評価する評価手段50(ステップS109)として機能させるものである。
好ましくは、記憶手段7に1以上の震源Eの位置E1・規模E2と発生確率E3と距離減衰式E4とを記憶し(図2のステップS101)、対象構造物Bの設置位置Lと各震源Eの位置E1・規模E2と発生確率E3と距離減衰式E4とから設置位置Lで想定される複数の地震動の発生確率Vp付き応答スペクトルVsを震源E毎に算出する地震動算出手段20を設け(ステップS105)、震源E毎の発生確率Vp付き応答スペクトルVsを応答/損傷算出手段30に入力して対象構造物Bの発生確率De付き応答値Dsを震源E毎に算出し(ステップS106)、作成手段40により応答値Dsの超過確率曲線Pe(図11(A)参照)を震源E別に作成し(ステップS107、108)、評価手段50により対象構造物Bの耐震性能Tを震源E別に評価する(ステップS109)。更に好ましくは、記憶手段7に対象構造物Bの設置位置Lの地盤特性Uを記憶し(ステップS102)、地震動算出手段20により対象構造物Bの設置位置Lと各震源Eの位置E1・規模E2と発生確率E3と距離減衰式E4と地盤特性Uとから設置位置Lの地表面で想定される地震動の発生確率Vp付き応答スペクトルVsを震源E毎に算出する(ステップS105〜S106)。
或いは、記憶手段7に対象構造物Bの設置位置L周辺の1以上の震源Eの断層モデルE5と過去の小・中地震記録波形又は統計的に処理された人工地震波形E6と経験的又は統計的グリーン関数法による時刻歴波形算出式E7とを記憶し、各震源Eの断層モデルE5と地震波形E6と時刻歴波形算出式E7とから設置位置Lで想定される複数の地震動の発生確率Vp付き時刻歴波形Vsを震源E毎に算出する地震動算出手段20を設け、震源E毎の発生確率Vp付き時刻歴波形Vsを応答/損傷算出手段30に入力して対象構造物Bの発生確率De付き応答値Dsを震源E毎に算出し、作成手段40により応答値Dsの超過確率曲線Pe(図11(A)参照)を震源E別に作成し(ステップS107、S108)、評価手段50により対象構造物Bの耐震性能Tを震源E別に評価してもよい。この場合も、記憶手段7に対象構造物Bの設置位置Lの地盤特性Uを記憶し(ステップS102)、地震動算出手段20により各震源Eの断層モデルE5と地震波形E6と時刻歴波形算出式E7と地盤特性Uとから設置位置Lの地表面で想定される地震動の発生確率Vp付き時刻歴波形Vsを震源E毎に算出することができる(ステップS105〜S106)。
望ましくは、作成手段40により震源E毎の超過確率曲線Peを全震源について統合した統合超過確率曲線Pt(図11(B)参照)を作成し(ステップS107、108)、評価手段50により統合超過確率曲線Ptから全震源に対する対象構造物Bの耐震性能Tを評価する(ステップS109)。或いは、作成手段40により震源E毎の超過確率曲線Peからその震源Eで地震が発生したときの条件付き超過確率曲線Pc(図11(C)参照)を作成し(ステップS107、108)、評価手段50により震源E毎の条件付超過確率曲線Psから対象構造物Bに対する震源E別の危険度を評価する(ステップS109)。
本発明による構造物の耐震性能評価プログラムは、例えば図3(A)のように耐震性能マトリクスMにより定義された複数の耐震性能T1、T2、T3を、同図(B)〜(C)のように対象構造物Bの構造形式・種別Fに応じた応答/損傷基準値S1〜S5(例えば対象構造物Bの構造形式・種別Fに応じて定まる損傷限界値、安全限界値、又はそれらの間に適当な比率で設けた安全限界余裕値等の基準値S1〜S5)に対応付けて超過確率軸と応答/損傷値軸とで定まるXY平面上にプロットすることにより複数の性能領域Z0、Z1、Z2、Z3に区画された性能評価平面Nを生成し、同図(D)のように対象構造物Bの設置位置Lで想定される確率論的地震動Vsと対象構造物Bの応答/損傷特性Cとから算出された発生確率Dp付き応答/損傷値Dsの超過確率曲線(地震リスク曲線)Pを性能評価平面N上にプロットし、その超過確率曲線Pが性能評価平面N上の性能領域Z0、Z1、Z2、Z3の何れに属するかを判断することにより対象構造物Bの耐震性能Tを評価するので、次の顕著な効果を奏する。
(イ)応答/損傷値の連続的な超過確率曲線(地震リスク曲線)Pを用いて対象構造物Bの耐震性能を評価するので、対象構造物付近に潜在的に存在する様々な震源の地震動(連続的な地震動強さ)に対する耐震性能を提示・評価することができる。
(ロ)また、応答/損傷値の連続的な超過確率曲線(地震リスク曲線)によって対象構造物Bの耐震性能を定量的に評価することができ、耐震性能グレードにより構造物の重要度等を分かりやすく提示・評価すると共に、同じグレード内の実質的な耐震性能の相違も提示・評価することができる。
(ハ)地震環境・地盤増幅・構造物特性を考慮に入れた応答/損傷値の超過確率曲線(地震リスク曲線)を用いて耐震性能を評価することにより、構造物の設置サイトの地震活動度等の影響を的確に反映した耐震性能評価が可能となる。
(ニ)応答/損傷値の超過確率曲線(地震リスク曲線)は構造物のPML(Probable Maximum Loss;予想最大損失額)や地震LCC(Life Cycle cost;ライフサイクルコスト)等の経済指標と対応付けることができ、そのような経済指標と対応付けた対象構造物Bの耐震性能を評価できる。
(ホ)対象構造物Bの設置位置Lや構造形式・種別F、応答/損傷特性Cを変えながら耐震性能Tの評価を繰り返すことにより、建築主にとって最適な様々な設計案を提示すると共に、設計者にとって設計した構造物の耐震性能を定量的に判断・評価するための手段とすることができる。
図1は、本発明のプログラムを内蔵したコンピュータ1のブロック図の一例を示す。図示例のコンピュータ1は、キーボード・マウス等の入力装置2とディスプレイ・プリンタ等の出力装置3とが接続され、震源データ(震源モデル)E、地盤特性データ(地盤モデル)U、構造物データ(構造物モデル)L・F・C等を記憶する記憶手段7を有している。記憶手段7に記憶するデータは、入力装置2から入力手段5を介して入力する。また図示例のコンピュータ1は、内蔵プログラムとして、耐震性能評価平面生成手段10と、地震動算出手段20と、応答/損傷算出手段30と、超過確率曲線(地震リスク曲線)算出手段40と、曲線重畳手段48と、耐震性能評価手段50と、入力手段5及び出力手段6とを有している。出力手段6は、耐震性能評価手段50による評価結果等を出力装置3に出力するプログラムである。
図2は、図1の各プログラムによって対象構造物B(図5参照)の耐震性能を評価する方法の流れ図を示す。以下、図2の流れ図を参照して図1の各プログラムを説明する。先ずステップS101において、地震リスク曲線Pを作成するために必要な震源データ(震源モデル)Eを記憶手段7に記憶する。本発明では、規模・発生場所・発生時期の何れにも不確実性が含まれる震源Eを、その位置E1と規模(マグニチュード)E2と発生確率E3とにより設定する。更に、過去の地震記録の統計解析に基づく適切な距離減衰式E4を設定し、震源Eの位置E1からの等価震源距離と震源Eの規模E2及び発生確率E3と距離減衰式E4とから経験的手法により、対象構造物Bの設置位置Lにおける発生確率Vpが規定された応答スペクトルVs(発生確率Vp付き応答スペクトルVs)を予想する(図1の応答スペクトル算出手段21参照)。例えばステップS101において、評価対象地域(例えば日本全国又は関東地方等)の1以上の震源Eの位置E1・規模E2・発生確率E3と距離減衰式E4とを記憶手段7に記憶しておき、対象構造物Bの設置位置Lの入力(ステップS103)に応じて設置位置周辺の震源Eを選択する。
或いはステップS101において、距離減衰式E4に代えて、対象構造物Bの設置位置L周辺の1以上の震源Eの断層モデルE5と過去の小・中地震記録波形又は統計的に処理された人工地震波形E6と経験的又は統計的グリーン関数法による時刻歴波形算出式E7とを記憶手段7に記憶し、各震源Eの断層モデルE5と地震波形E6と時刻歴波形算出式E7とから半経験的手法により、発生確率Vpが規定された時刻歴波形Vs(発生確率Vp付き時刻歴波形Vs)を予想することができる(図1の時刻歴波形算出手段22参照)。従来から、設置位置Lにおける過去の小・中地震動記録(波形)を経験的グリーン関数とみなして設置位置Lにおける震源Eの大地震動の時刻歴波形を予測する手法や、設置位置Lにおける適切な小・中地震動記録(波形)がない場合に他の地点の地震動記録(波形)を統計処理した統計的グリーン関数によって設置位置Lにおける震源Eの大地震動の時刻歴波形を予測する手法が開発されている(例えば非特許文献5参照)。このような経験的又は統計的グリーン関数法による時刻歴波形算出式E7を用いた半経験的手法によれば、距離減衰式E4に基づく経験的手法に比し、地震波の経路特性等を考慮に入れた詳細な地震動Vsの予測が可能となる。更に詳細な地震動Vsを予測する場合は、ステップS101において、震源Eの地震動の時刻歴波形を計算する理論的手法(差分法や有限要素法等)を記憶しておき、例えば周波数帯に応じて経験的又は統計的グリーン関数法による時刻歴波形算出式E7による波形と理論的手法による波形とを相補的に足し合わせて地震動の時刻歴波形Vsを予想することも可能である(広帯域ハイブリッド法)。
好ましくはステップS102において、対象構造物Bの設置位置Lにおける地盤特性データ(増幅特性)Uを記憶手段7に記憶する。上述した距離減衰式E4及び時刻歴波形算出式E7は工学的基盤を対象としたものであり、地表面における応答スペクトルVs又は時刻歴波形Vsは地盤の影響によって増幅される。対象構造物Bの設置位置の地盤特性データUを記憶しておけば、地盤による増幅を考慮して設置位置Lの地表面で想定される応答スペクトルVs又は時刻歴波形Vsを予測することができる(図1の地盤増幅算出手段23参照)。なお、地盤による増幅の影響については後述するステップS105の応答スペクトルVs又は時刻歴波形Vsの算出時において考慮されるが、地盤との相互作用の影響については後述するステップS106の対象構造物Bの応答値Dsの算出時において考慮される。
ステップS103において、対象構造物Bの設置位置Lと、構造形式・種別Fと、地震動Vsに対する応答/損傷特性Cとを記憶手段7に記憶する。対象構造物Bの設置位置Lは、例えば震源位置E1からの等価震源距離を算出するために利用される(ステップS105)。対象構造物Bの構造形式・種別Fは、例えば後述する複数の耐震性能(性能グレード)T1、T2、T3を、対象構造物Bの構造形式・種別Fに応じた応答基準値S1〜S5と対応付けるために利用される(ステップS104)。応答/損傷特性Cの一例は図7(C)のキャパシティ曲線(荷重変形曲線)C2であり、応答スペクトル又は時刻歴波形Vsから対象構造物Bの応答値Dsを算出するために利用される(ステップS106)。或いは、応答/損傷特性Cを同図(E)のフラジリティ曲線(地震損失率曲線)C1とし、地震動Vsの強さ(最大加速度、最大速度、最大変位等)から対象構造物Bの予想損失額Dsを算出するために利用する。
図2のステップS104は、評価平面生成手段10により耐震性能評価平面Nを生成する処理を示す。耐震性能評価平面Nは、超過確率軸と応答/損傷値軸とで定まるXY平面を、上述した耐震性能マトリクスMで定義された複数の耐震性能(性能グレード)T1、T2、T3に対応する複数の耐震性能領域Z0、Z1、Z2、Z3に区画したものである。図4は性能評価平面Nの生成処理(ステップS104)の詳細な流れ図を示し、その流れ図に従って生成した性能評価平面Nの一例を図3に示す。
図3(A)は、図17のマトリクスM2と同様に3種類の耐震性能T1、T2、T3(以下、第1性能グレードT1、第2性能グレードT2、第3性能グレードT3ということがある)を、それぞれ地震動レベル(縦軸)と損傷レベル(横軸)との組み合わせ(地震動レベル、損傷レベル)の段階的な変化として定義した耐震性能マトリクスMを示す。図17(B)を参照して上述したように、耐震性能マトリクスMの各地震動レベル(縦軸)の境界線はそれぞれ所定再現期間における地震動強さの発生超過確率(例えば50年間の発生超過確率80%、10%、5%)に対応し、各損傷レベル(横軸)の境界線はそれぞれ所定構造形式・種別Fの構造物の応答基準値S(例えば損傷限界値、安全限界値、又はそれらの間に適当な比率で設けた安全限界余裕値であるS1〜S5)に対応している。従って、地震動レベルの境界線と損傷レベルの境界線との交点R(以下、レベル通過点Rということがある)の座標は、超過確率(80%、10%、5%)と応答基準値(S1、S2、S3、S4、S5)との組み合わせ(超過確率、応答基準値)によって定めることができる。
図3(A)の耐震性能マトリクスMにおいて、性能グレードT1、T2、T3の各段階は、それに隣接するレベル通過点R(すなわち超過確率、応答基準値S)と対応付けることができる。レベル通過点Rとの対応付けには複数の方法がありうるが、例えば図3(B)のように、第1性能グレードT1の各段階をその左下隅の2つのレベル通過点R1(80%、S1)、R2(10%、S5)に対応付け、第2性能グレードT2の各段階をその左下隅の2つのレベル通過点R3(10%、S3)、R4(5%、S5)に対応付け、第3性能グレードT3の各段階をその左下隅の2つのレベル通過点R5(10%、S2)、R6(5%、S3)に対応付けることができる(図4のステップS201参照)。このように性能グレードT1、T2、T3の各段階をその左下隅のレベル通過点と対応付けることにより、XY平面上にプロットされたレベル通過点R1、R2を通る直線を第1性能グレードT1の下限ラインとみなし、レベル通過点R3、R4を通る直線を第2性能グレードT2の下限ラインとみなし、レベル通過点R5、R6を通る直線を第3性能グレードT3の下限ラインとみなすことができる。
図3(C)に示すように、同図(B)において性能グレードT1、T2、T3と対応付けたレベル通過点(R1、R2)、(R3、R4)、(R5、R6)を、地震動強さの超過確率軸(X軸)と構造物の応答値軸(Y軸)とで定まるXY平面上にプロットすることにより、第0性能領域Z0、第1性能領域Z1、第2性能領域Z2、第3性能領域Z3の4つの性能領域に区画された耐震性能評価平面Nを生成することができる(図4のステップS202〜S203)。上述したように、レベル通過点R1、R2を通る直線、レベル通過点R3、R4を通る直線、及びレベル通過点R5、R6を通る直線はそれぞれ各性能グレードT1、T2、T3の下限ラインとみなすことができるので、性能領域Z1、Z2、Z2はそれぞれ性能グレートT1、T2、T3の幅に対応する領域と考えることができ、性能領域Z0は第1性能グレートT1未満の耐震性能に対応する領域と考えることができる。なお、図示例では各性能グレードT1、T2、T3に対応付けた2つのレベル通過点(R1、R2)、(R3、R4)、(R5、R6)を直線により結んでプロットしているが、各性能グレードT1、T2、T3を3以上のレベル通過点Rと対応付けて折れ線としてプロットすること、又は各性能グレードT1、T2、T3に対応する複数のレベル通過点Rを放物線、双曲線等の曲線で結んでプロットすることにより、各性能領域Z0、Z1、Z2、Z3を折れ線又は曲線で区画することも可能である。
図3(C)で生成された耐震性能評価平面Nは、地震動強さの超過確率軸(X軸)と構造物の応答値軸(Y軸)とで定まる平面であるが、地震動強さの超過確率をそのまま構造物の応答値の超過確率とすることにより、構造物の応答値軸(Y軸)とその応答値の超過確率軸(X軸)とで定まる平面と考えることができる。このように耐震性能評価平面Nを構造物応答値軸とその応答値の超過確率軸とで定まる平面と考えることにより、同図(D)に示すように対象構造物Bの地震リスク曲線Pを耐震性能評価平面N上に重ね合わせ(後述する図1のステップS108参照)、その地震リスク曲線Pが性能領域Z0、Z1、Z2、Z3の何れに属するかを判断することが可能となる(ステップS109参照)。
なお、図3(B)において性能グレードT1、T2、T3と対応付けるレベル通過点R1〜R6(すなわち応答基準値S1〜S5)は対象構造物Bの構造形式・種別Fに応じて異なる値となることから、例えば図1のコンピュータ1では、様々な構造形式・種別Fに対応する各レベル通過点R1〜R6の座標(すなわち応答基準値S1〜S5)を予め記憶手段7に記憶しておき、図2のステップS104において、対象構造物Bの構造形式・種別Fの入力(ステップS103)に応じたレベル通過点R1〜R6(応答基準値S1〜S5)を耐震性能評価平面Nの生成手段10に入力して性能グレードT1、T2、T3と対応付けている。ただし、各性能グレードT1、T2、T3と対応付ける応答基準値Sはレベル通過点Rに限定されるものではなく、例えば耐震性能評価平面N上にプロットした各性能グレードT1、T2、T3の直線、折れ線又は曲線がなるべく平行に近付くように、各性能グレードT1、T2、T3に対応付ける応答基準値Sを適当に選択することができる(例えば、レベル通過点Rの中点の応答基準値Sを選択して対応付ける等)。
また、耐震性能マトリクスMの各性能グレードT1、T2、T3とレベル通過点R1〜R6(すなわち応答基準値S1〜S5)との対応付けは明確に定義されたものではなく、例えば性能グレードT1(又はT2、T3)が既知の構造物について作成した地震リスク曲線Pがその既知の性能グレードT1に対応する性能領域Z1(又はZ2、Z3)に属するように調整する必要が生じうる。例えば図1に示すように、耐震性能評価平面Nの生成手段10にその評価平面Nを更新する手段を含め、各性能グレードT1、T2、T3とレベル通過点R1〜R6(すなわち応答基準値S1〜S5)との対応付けを適宜に変更して性能領域Z0、Z1、Z2、Z3を区画し直すことにより、耐震性能評価平面Nを容易に更新できるようにすることが望ましい。
図2のステップS105〜S107は、対象構造物Bの周辺の震源データEと地盤特性データUと対象構造物Bの応答/損傷特性Cとから、対象構造物Bの地震リスク曲線Pを作成する処理を示す。具体的には、図5に示すように、1以上の震源データEと地盤特性データUとから地震動算出手段20によって対象構造物Bの設置位置Lにおける震源E別の確率論的地震動Vs(例えば発生確率Vp付き地震動Vs)を算出し(ステップS105)、その確率論的地震動Vsと地盤特性データUと対象構造物Bの応答/損傷特性Cとから応答/損傷算出手段30によって震源E別の発生確率Dp付き応答値Dsを算出し(ステップS106)、その発生確率Dp付き応答値Dsから超過確率曲線作成手段40によって地震リスク曲線P1、P2、P3、……を震源E別に作成する(ステップS107)。
図6は、図2のステップS105の一例として、地震動算出手段20(とくに応答スペクトル算出手段21)によって応答スペクトルで表現された確率論的地震動Vs、すなわち発生確率Vp付き応答スペクトルVsを算出する処理の流れ図の一例を示す。先ず図6のステップS301の距離減衰式E4により、各震源Eの規模E2(モーメントマグニチュードMw)と、各震源Eの位置E1から構造物Bの設置位置Lまでの等価震源距離Xeq(km)とから、構造物Bの設置位置Lの工学的基盤における加速度応答スペクトルSa(cm/s2、後述する確率分布の中央値)を震源E毎に算出する。ステップS301の距離減衰式E4におけるδE及びδPはそれぞれ地震毎の層別因子及び更新世に対する層別因子、a及びcはそれぞれ距離及び更新世の増幅を補正する係数、bは距離係数、dPは第三紀以前の地盤に対する更新世の増幅係数である。次にステップS302において、各震源Eの規模・発生場所の発生確率E3に基づき加速度応答スペクトルSaの確率分布を離散化し、震源E毎に複数(N個)の加速度応答スペクトルSa1〜Sanを作成する。例えば、各周期の加速度応答スペクトル値Saの確率分布が対数正規分布であるとし、それらが完全相関であるとすると、ステップS301で算出した加速度応答スペクトルSaを、ステップS302に示すように複数の加速度応答スペクトルSa1〜Sanに分解(離散化)することができる。
図6のステップS303では、工学的基盤の各加速度応答スペクトルSa1〜Sanと地盤特性データUとから、地表面での加速度応答スペクトルS'a1〜S'anを算出する。またステップS304では、地表面での各加速度応答スペクトルS'a1〜S'anから、地表面での変位応答スペクトルS'd1〜S'dnを算出する。ステップS305において、震源Eの発生時期の発生確率E3(例えば定常ポアソン過程)に基づき、複数(N個)の加速度応答スペクトルSa1〜Sanの各々の発生確率Vp1〜Vpnを算出する。すなわち図6の流れ図によれば、応答スペクトルで表現された発生確率Vp付き応答スペクトルVsとして、N個の(地表加速度応答スペクトルS'a、地表変位応答スペクトルS'd、発生確率Vp)の組を震源E毎に算出することができる(ステップS306)。
図2のステップS105において、地震動算出手段20(とくに時刻歴波形算出手段22)によって時刻歴波形で表現された確率論的地震動Vs、すなわち発生確率Vp付き時刻歴波形Vsを算出することも可能である。その場合は、対象構造物Bの設置位置L周辺の各震源Eの断層モデルE5と、設置位置L周辺の過去の小・中地震記録波形又は統計的に処理された人工地震波形E6と、経験的又は統計的グリーン関数法による時刻歴波形算出式E7と、地盤特性データUとから、構造物Bの設置位置Lの地表面における複数の時刻歴波形Vsとその時刻歴波形Vsの各々の発生確率Vpとを震源E毎に算出する。各震源Eの断層モデルE5は、各震源Eの位置E1から構造物Bの設置位置Lまでの震源距離と、各震源Eの規模E2と、震源Eの発生確率E3とを含めたモデルとすることができる。
なお、図2のステップS105(地震動算出手段20による確率論的地震動Vsの算出処理)は省略可能であり、確率論的地震動Vsの算出に代えて、例えば対象構造物Bの設置位置Lで想定される適当な地震ハザード曲線等を確率論的地震動Vsとして入力することができる(図1参照)。地震ハザード曲線は特定地点における地震動Vsの強さ(最大加速度、最大速度、最大変位等)とその起こり易さ(年超過確率)との関係を表したグラフであり、例えば日本全国又は地区毎について作成されたものから対象構造物Bの設置位置Lの入力(ステップS103)に応じて選択することができる。地震ハザード曲線は、応答スペクトルや時刻歴波形で表現されたものではないが、地震動Vsの確率論的評価結果として発生確率Vpを含んでおり、例えば図7(E)に示すように地震動Vsに対する損失率Dsの特性曲線(地震損失率曲線又はフラジリティ曲線)C1を対象構造物Bの損傷特性Cとして用いることにより、応答/損傷算出手段30(とくに図1の損傷値算出手段31)によって地震ハザード曲線から発生確率Dp付き予想損失額Dsを算出し、超過確率曲線作成手段40により予想損失額Dsの超過確率曲線(地震リスク曲線)Pを作成し(図16(A)参照)、その地震リスク曲線Pから対象構造物Bの予想最大損失額(PML)を求めることができる。
図8は、図2のステップS106の一例として、震源E毎の発生確率Vp付き地震動Vs(例えば、図6のステップS306で算出したN個の(加速度応答スペクトルS'a1〜S'an、変位応答スペクトルS'd1〜S'dn、発生確率Vp1〜Vpn)の組)と、対象構造物Bの応答特性C(ステップS103)とから、応答/損傷算出手段30(とくに応答スペクトルを用いた応答値算出手段32)により、対象構造物Bの発生確率Dp付き応答値Dsを算出する処理の流れ図を示す。図8のステップS401では、対象構造物Bとして例えば図7(A)のような階層Mの多質点系モデルC3を想定し、対象構造物Bの応答特性Cとして同図(C)のような多質点系モデルの各層のキャパシティ曲線C2(荷重変形曲線)を作成し、その応答特性Cと発生確率Vp付き地震動Vs(加速度応答スペクトルS'a、変位応答スペクトルS'd)とから等価線形化法を用いて、対象構造物Bの各階層M毎の応答値Ds(例えば最大応答加速度、最大層間変形角等)を算出する(M個)。対象構造物Bのモデル化及び応答特性Cを作成する際に、地盤との相互作用の影響を考慮することができる。震源E毎のN個の発生確率Vp付き地震動Vs(加速度応答スペクトルS'a、変位応答スペクトルS'd)についてそれぞれステップS401を繰り返すことにより、ステップS402において震源別・階層別に(N×M)個の発生確率Dp付き応答値Ds(最大応答加速度、最大層間変形角等)を算出することができる。応答値Dsの発生確率Dpは、地震動Vsの発生確率Vpをそのまま用いることができる。なお、図1の時刻歴波形を用いた応答値算出手段33は、震源E毎の発生確率Vp付き時刻歴波形Vsから対象構造物Bの発生確率Dp付き応答値Dsを算出するプログラムである。
図9は、図2のステップS107の一例として、図8のステップS402で震源E毎に算出した(N×M)個の発生確率Dp付き応答値Dsから、超過確率曲線作成手段40により、対象構造物Bの震源別・階層別の地震リスク曲線Pを作成する処理の流れ図を示す。先ずステップS501において、特定震源・特定階層の応答値Dsを入力して超過確率を算出する。超過確率の算出方法の一例は、図10の流れ図に示すように、先ず特定震源・特定階層のN個の発生確率Dp付き応答値Dsを入力し(ステップS701)、ランダムに並べられた発生確率Dp付き応答値Dsを応答値Dsの降順に並べ替え(ステップS702)、並び替えた順番に沿って各応答値Dsの超過確率Deを算出する(ステップS703)。ステップS704において、各応答値Dsと対応する超過確率Deとの組(Ds、De)をそれぞれXY平面上にプロットして超過確率曲線Pとすることにより、特定震源・特定階層の応答値Ds(最大応答加速度、最大層間変形角等)の地震リスク曲線Peを作成することができる(ステップS502参照)。なお、図3(D)の耐震性能評価平面Nの超過確率軸(X軸)は図10のステップS704における地震リスク曲線Pの超過確率軸(Y軸)と逆向きであるから、地震リスク曲線Peの超過確率Deは、耐震性能評価平面Nの超過確率軸(X軸)の向きに合わせてプロットする(重ね合わせる)必要がある。
図9のステップS501〜S502を対象構造物Bの各層(M層)についてそれぞれ繰り返すことにより、特定震源Eについて対象構造物Bの全層の応答値Dsの地震リスク曲線Peを作成する。また、このステップS501〜S502を震源E毎に繰り返すことにより、対象構造物Bの応答値Dsの震源E別の地震リスク曲線Pe1、Pe2、Pe3、……を作成する。図11(A)は、耐震性能評価平面N上に重ね合わせた震源E別の地震リスク曲線Pe1、Pe2、Pe3、……の一例を示す。なお、図11(A)の耐震性能平面NのX軸は再現期間軸であるが、例えば再現期間と超過確率の関係にポアソン過程が成立するとしてX軸を超過確率軸に変換すれば、図10のステップS704における地震リスク曲線Pの超過確率Deを耐震性能評価平面Nにプロットする(重ね合わせる)ことが可能となる。
図9のステップS503〜S504は、震源E毎に作成した地震リスク曲線Pe1、Pe2、Pe3、……を全震源について統合する曲線統合手段41の処理を示す。先ずステップS503の演算式に従って、各震源Eiの地震リスク曲線Peiにおける各応答値Dsiの超過確率P(Dsi>d)を全震源について統合した各応答値Dsの統合超過確率P(Ds>d)を求める。ステップS504において、各応答値Dsとその統合超過確率P(Ds>d)とをXY平面上にプロットして超過確率曲線とすることにより、全震源について統合された特定階層の応答値Ds(応答加速度、層間変形角等)の統合地震リスク曲線Ptを作成する。また、ステップS503〜S504を対象構造物Bの各階層について繰り返すことにより、全震源について統合された各階層の統合地震リスク曲線Ptを作成する。図11(B)は、耐震性能評価平面N上に重ね合わせた統合地震リスク曲線Ptの一例を示す。
再び図2に戻り、ステップS108において、ステップS104で生成した耐震性能評価平面NとステップS105〜S107で作成した対象構造物Bの地震リスク曲線Pとを曲線重畳手段48により重ね合わせ、ステップS109において耐震性能評価手段50により対象構造物Bの耐震性能Tを評価する。図14は、図2のステップS108〜S109の一例として、耐震性能評価平面N上に重ね合わせた統合地震リスク曲線Pt(図11(B)参照)に基づき対象構造物Bの耐震性能Tを評価する方法を示す。ステップS601において、画像処理又は数式により、対象構造物Bの特定階層の応答値Ds(例えば最大層間変形角)の統合地震リスク曲線Ptを評価平面N上に重ね合わせる。ステップS602において、耐震性能評価手段50(とくに構造物性能評価手段51)により、対象構造物Bの特定階層の統合地震リスク曲線Ptがそれぞれ第0性能領域Z0、第1性能領域Z1、第2性能領域Z2、第3性能領域Z3(図11(B)では基準級*以下領域Z0、基準級*領域Z1、上級*領域Z2、特級*領域Z3と表示)の何れに属しているかを判断する。図示例では、特定階層の統合地震リスク曲線Ptが第1性能領域Z1の範囲に属していることから、対象構造物Bの特定階層の耐震性能が第1性能グレードT1 であると判断される。耐震性能評価手段50による耐震性能Tの評価結果は、例えば地震リスク曲線Pを重ね合わせた耐震性能評価平面Nと共に、出力手段6に出力して確認することができる(図1参照)。
評価平面N上に重ね合わせた統合地震リスク曲線Ptは、図11(B)のように単独の性能領域(例えば第1性能領域Z1)に属するとは限らず、複数の性能領域に属する場合もありうる。耐震性能評価手段50(構造物性能評価手段51)は、ステップS603において、例えば統合地震リスク曲線Ptが属する性能領域Z0、Z1、Z2、Z3のうち最も低い性能領域(例えば第1性能領域Z1)を判断し、その最も低い性能領域(例えば第1性能領域Z1)が対象構造物Bの特定階層の耐震性能(例えば第1性能グレードT1)であると判定する。またステップS603〜S604において、例えば全ての階層の耐震性能グレードのうち最も低い耐震性能グレード(例えば第1性能グレードT1)が、対象構造物Bの全体の耐震性能であると判断する。ただし、本発明における耐震性能の判断手法はステップS603〜S604に限定されるものではない。なお、図2及び図14のステップS110は、地震リスク曲線Ptと重ね合わせたのちに評価平面Nの性能領域Zを区画し直す必要が生じた場合に、評価平面生成手段10によって評価平面Nを更新する処理を示す。
図11(B)の統合地震リスク曲線Ptに代えて、同図(A)の震源E別の地震リスク曲線Pe1、Pe2、Pe3、……を用いて対象構造物Bの耐震性能Tを震源別に評価することもできる。この場合に耐震性能評価手段50(とくに震源別性能評価手段52)は、例えば同図(A)の特定震源E1(又はE2、E3)の地震リスク曲線Pe1がそれぞれ第0性能領域Z0、第1性能領域Z1、第2性能領域Z2、第3性能領域Z3(同図(A)では、危険度大領域Z0、危険度中領域Z1、危険度小領域Z2・Z3と表示)の何れに属しているかを判断し、地震リスク曲線Pe1の属する性能領域Z1、Z2、Z3のうち最も低い性能領域(例えば第1性能領域Z1)を、対象構造物Bの特定震源E1に対する耐震性能(例えば第1性能グレードT1)であると判定する。耐震性能Tを震源E別に判定することにより、対象構造物Bにとってどの震源Eが最も危険であるかを判断することができる。また、このような震源E別の耐震性能Tの評価結果も、耐震性能評価平面Nに重ね合わせた震源E別の地震リスク曲線Pe1、Pe2、Pe3、……と共に、出力手段6に出力して確認することができる(図1参照)。
本発明の耐震性能評価プログラムによれば、連続的な超過確率と応答/損傷値との関係である地震リスク曲線Pを用いて対象構造物Bの耐震性能を評価するので、対象構造物付近に潜在的に存在する様々な震源Eの地震動に対する耐震性能をそれぞれ提示・評価することができる。また、地震リスク曲線によって対象構造物Bの耐震性能を定量的に評価することができ、同じグレード内の実質的な耐震性能の相違も提示・評価することが可能となる。更に、様々な地震環境・地盤増幅・構造物特性を考慮に入れて地震リスク曲線を作成することにより、構造物の設置サイトの地震活動度等の影響を的確に反映した耐震性能の評価が可能となる。
こうして本発明の目的である「構造物付近に潜在的に存在する様々な地震動に対する耐震性能を定量的に提示・評価できる構造物の耐震性能評価プログラム」の提供を達成することができる。
図2の流れ図の耐震性能評価プログラムによる効果を確認するため、図7(A)に示すような3質点系モデルにより、第1層の層せん断力係数(ベースシア係数)をそれぞれ0.5、1.0とした耐力の異なる2つの構造物モデルB05、B10を作成し、各構造物モデルB05、B10の地震活動度の異なるサイトにおける耐震性能を評価する解析実験を実施した。構造物モデルB05、B10の各層の層せん断力はAi分布に比例させて設定した。構造物モデルB05、B10の各層の復元力特性を図7(B)に示す。また、構造物モデルB05、B10のパラメータを表1に示す。構造物モデルB05、B10の1次固有周期はそれぞれ0.244sec、0.173secであった。
構造物モデルB05、B10を設置するサイトとして、地震活動が比較的活発なサイトHighと地震活動が比較的活発でないサイトLowとの2つを想定し、各サイトの近傍にそれぞれ2つの活断層(震源Src)を想定した。サイトHighにおける2つの震源(Src1、Src2)のパラメータ、及びサイトLowにおける2つの震源(Src3、 Src4)のパラメータをそれぞれ表2に示す。図6のステップS301の距離減衰式を各サイトに適用して地震動Vs(加速度応答スペクトルSa)の確率分布の中央値を算出し、ステップS302〜S303に従って確率分布を離散化してN本の発生確率Vp付き地震動Vsを作成した。なお、本実験では地盤による応答スペクトルの増幅、及び構造物と地盤との相互作用は考慮しないものとした。
図17(B)の耐震性能マトリクスM2で定義された耐震性能T1〜T3(基準級T1、上級T2、特級T3)を、図3(A)のように地震動レベル(縦軸)と損傷レベル(横軸)との組み合わせによる第1性能グレードT1、第2性能グレードT2、第3性能グレードT3(以下、基準級*T1、上級*T2、特級*T3と表すことがある)とし、表3に示すように基準級*T1、上級*T2、特級*T3にそれぞれレベル通過点(加速度、層間変形角)を対応付けて下限ラインを設定することにより、同図(C)に示すように第0性能領域Z0、第1性能領域Z1、第2性能領域Z2、第3性能領域Z3(以下、基準級*以下Z0、基準級*Z1、上級*Z2、特級*Z3と表すことがある)の4性能領域に区画された耐震性能評価平面Nを生成した。なお、表3において基準級*T1、上級*T2、特級*T3に対応付けるレベル通過点は、各々の下限ラインの対数軸表示グラフがなるべく平行に近付くように設定した。図7(C)は構造物モデルB05の各階層における荷重変形曲線(キャパシティ曲線)C2を示し、同図(D)は構造物モデルB10の各階層における荷重変形曲線(キャパシティ曲線)C2を示す。
サイトHigh、サイトLowに設置した構造物モデルB05の各階層の最大応答加速度の統合地震リスクカーブPt(B05High、B05Low)と、サイトHighに設置した構造物モデルB10の各階層の最大応答加速度の統合地震リスクカーブPt(B10High)とをそれぞれ算出し、基準級*以下Z0、基準級*Z1、上級*Z2、特級*Z3の4領域に区画された耐震性能評価平面N上に重ね合わせたグラフを図12に示す。同図(A)は屋上床、同図(B)は3階床、同図(C)は2階床の最大応答加速度の地震リスクカーブである。同図(A)〜(C)の地震リスクカーブPt(B05High)のグラフは何れも、各階層の応答加速度が超過確率の高いところでは基準級*Z1の範囲に入っているが、超過確率が低くなるに従って応答加速度の増加勾配が緩やかになり応答加速度が上級*Z2〜特級*Z3の範囲に入ることを示している。
また、サイトHigh、サイトLowに設置した構造物モデルB05の各階層の最大応答層間変位角の統合地震リスクカーブPt(B05High、B05Low)と、サイトHighに設置した構造物モデルB10の各階層の最大応答層間変位角の統合地震リスクカーブPt(B10High)とをそれぞれ算出し、耐震性能評価平面N上に重ね合わせたグラフを図13に示す。同図(A)は3階、同図(B)は2階、同図(C)は1階の最大応答層間変位角の地震リスクカーブPtである。同図(A)〜(C)の各グラフから、応答層間変位角については、3階では基準級*Z1の範囲にあるが、1階・2階では特級*Z3の範囲内となっていることが分かる。また、応答層間変形角の地震リスクカーブPtは、応答加速度で見られたような超過確率の低い部分での応答の頭打ちは見られず、何れも概ね直線的に増加していることが分かる。図12及び図13から、各階層の応答加速度及び層間変形角のうち最も性能の低い性能グレードを対象構造物の耐震性能とする場合は、構造物モデルB05のサイトHighにおける耐震性能は基準級*であるということができる。
図12及び図13において、サイトLowに設置した構造物モデルB05の統合地震リスクカーブPt(B05Low)のグラフから、加速度については2階・3階が上級*Z2で1階が特級*Z3であり、層間変形角については1〜3階共に特級*Z3となっている。また層間変形角のグラフより、超過確率10-3以前では3階を除いて層降伏が起こっていないことが分かる。これに対し、サイトHighに設置した構造物モデルB05の統合地震リスクカーブPt(B05High)のグラフは、加速度については1〜3階共に基準級*Z1であり、層間変形角については1階・2階が特級*Z3で3階が基準級*Z1であることを示している。このように、地震リスクカーブPt(B05Low)と地震リスクカーブPt(B05High)との比較により、同じ構造物であってもサイトの地震活動度によって耐震性能グレードが異なり、地震活動度の高いサイトHighでは基準級*であるが、地震活動度の低いサイトLowでは上級*となることが分かる。すなわち本実験により、本発明の耐震性能評価プログラムが、地震活動度の異なるサイトにおける構造物の耐震性能評価に有効であることが確認できた。
また図12及び図13において、サイトHighに設置した構造物モデルB10の統合地震リスクカーブPt(B10High)を相互に比較すると、加速度については2階・3階で基準級*Z1を下回っているが、層間変形角については1階・2階で特級*Z3、3階で上級*Z2の範囲内であることが分かる。また層間変形角のグラフより、2階については超過確率10-3以前では層降伏が起こらなかった。このような地震リスクカーブPt(B10High)と上述した地震リスクカーブPt(B05High)との比較により、同じサイトであっても構造物の耐力によって耐震性能グレードが異なり、耐力の高い構造物は耐力に低い構造物に比して、層間変形角による性能が高く評価されるのに対し加速度による性能が低く評価されていることが分かる。すなわち本実験により、本発明の耐震性能評価プログラムが、同じサイトであっても構造物の違いによる耐震性能を評価するために有効であることが確認できた。
図11(C)は、各震源Eの対象構造物Bの応答値Dsと、その震源Eで地震が発生したときの条件付き超過確率Dcとをプロットした条件付き地震リスク曲線Pc1、Pc2、Pc3、……の実施例を示す。この条件付き地震リスク曲線Pcは、同図(A)の各震源Eの応答値Dsとその超過確率Deとをプロットした地震リスク曲線Pe1、Pe2、Pe3、……とほぼ同様の手法を用いて作成できるが、耐震性能評価手段50(とくに震源別危険度評価手段53)により、対象構造物Bに影響を及ぼす各震源Eによる地震が発生した際の危険度を評価することができる利点を有する。
各震源Eで地震が発生したときの応答値Dsの条件付き超過確率Dcは、各震源Eについて求めた応答値Dsの超過確率Deを各震源Eの発生確率P(EQ)で除した商(=De/P(EQ))で近似できる。各震源Eの発生確率P(EQ)は、図10のステップS703における最小応答値Dsminの超過確率De=ΣDpiに相当する。各震源Eの発生確率P(EQ)には対象期間内に地震が2回以上起こる確率も含まれているため、条件付き超過確率Dcと前記商(=De/P(EQ))とは厳密には一致しないが、両者の差は大きな問題とはならない。図11(C)の条件付き地震リスク曲線Pcは、同図(A)の各震源Eの地震リスク曲線Peの応答値Dsの超過確率Deを、その震源Eの発生確率P(EQ)で除した商(=De/P(EQ))をプロットすることによって作成したものである。
図15(A)は、上述した構造物モデルB05の屋上床の最大加速度の条件付き地震リスク曲線Pcを耐震性能評価平面N上に重ね合わせたグラフを示し、同図(B)は、上述した構造物モデルB05の3階の最大層間変形角の条件付き地震リスク曲線Pcを耐震性能評価平面N上に重ね合わせたグラフを示す。各震源Eの危険度は、例えば対象構造物Bの応答値Dsが大破、中破又は小破以上となる条件付超過確率Dcによって分類できる。例えば最大加速度又は最大層間変形角が中破以上となる条件付超過確率Dcが0〜25%であれば危険度小、25〜75%であれば危険度中、75〜100%であれば危険度大と設定した場合、耐震性能評価手段50(とくに震源別危険度評価手段53)は、同図(A)の最大加速度の条件付き地震リスク曲線Pcから、震源Src1及びSrc2が危険度大、震源Src3及びSrc4が危険度小と評価することができる。また、同図(B)の最大層間変形角の条件付き地震リスク曲線Pcからは、震源Src1が危険度中、他の震源Src2、Src3及びSrc4は危険度小と評価することができる。このように図15の条件付き地震リスク曲線Pcを用いることにより、各震源Eによる地震が発生した場合に、対象構造物Bにとってどの震源Eによる被害が最も大きいか(すなわち、発生した場合に最も危険な地震はどれか)を評価することができる。
図16(A)は、耐震性能評価手段50(とくに損傷費用算出手段54)により、対象構造物Bの予想損失額Dsの過確率曲線(地震リスク曲線)Pから対象構造物Bの予想最大損失額(PML)を求める実施例を示す。予想最大損失額は、例えば対象構造物Bに対して最大の損失をもたらす地震(例えば50年間の10%の超過確率で発生するであろう地震、すなわち再現期間475年相当の地震)が発生した場合に、その90%非超過確率に相当する損失額(90パーセンタイル損失額)として定義される(非特許文献1参照)。最近の構造物の耐震設計では、予想最大損失額や地震LCC等の経済指標と関連付けて構造物の耐震性能を分かりやすく提示し又は評価することが望まれているが、従来の耐震性能マトリクスMを用いる方法では耐震性能と経済指標との相関が必ずしも明確であるとはいえない問題点があった。本発明で用いる地震リスク曲線Pは、PML、LCC等の経済指標を計算する際に用いるものであり、これらの経済指標と高い相関性を有している。従って本発明によれば、そのような経済指標と対応付けた対象構造物Bの耐震性能評価が期待できる。
とくに、同図(A)に示すような対象構造物Bの予想損失額Dsの地震リスク曲線Pを用いて耐震性能を評価する場合は、その地震リスク曲線Pから、再現期間475年(年確率1/475≒0.21%、50年の超過確率10%)相当の地震動強さにおける90%非超過確率に相当する損失額(90パーセンタイル損失額)として、対象構造物Bの予想最大損失額を簡単に算出することができる。なお、地震動強さの発生超過確率Deとその地震動による予想損失額Dsとを関係をプロットした図16(A)の地震リスク曲線Pから、損失予測過程の不確実性を織り込んで、予想損失額とその損失額が生じる超過確率との関係をプロットした同図(B)のようなリスクカーブQを作成する手法が知られており(非特許文献1参照)、そのリスクカーブQから対象構造物Bの予想最大損失額を求めることも可能である。
また、地震応答解析により得られた構造物の応答値(最大加速度や最大層間変形角等)から、フラジリティ曲線(応答値に対する損失率の関係式)Wを用いて、例えば図11(B)の地震リスク曲線Ptを、図16(A)のような構造物の予想損失額(損失額=再調達価格×損失率)に変換する手法が提案されている(非特許文献6参照)。従って、記憶手段7に対象構造物Bの応答値Dsに対する損失率の関係式(フラジリティ曲線)Wを記憶しておけば、本発明の超過確率曲線作成手段40により作成された対象構造物Bの応答値Dsの超過確率曲線P(例えば図11(B)の地震リスク曲線Pt)と関係式Wとから、耐震性能評価手段50(とくに損傷費用算出手段54)において対象構造物Bの予想損失額Dsの地震リスク曲線P(図17(A)参照)を求め、その予想損失額Dsの地震リスク曲線Pから対象構造物Bの予想最大損失額を算出することができる(図1参照)。
本発明による耐震性能評価プログラムの一実施例の機能ブロック図である。 本発明による耐震性能評価プログラムの流れ図の一例である。 本発明で用いる耐震性能評価平面の説明図である。 耐震性能評価平面の生成手段(プログラム)の流れ図の一例である。 確率論的地震動の応答/損傷値の超過確率曲線(地震リスク曲線)の作成手法の説明図である。 確率論的地震動の算出手段(プログラム)の流れ図の一例である。 本発明で用いる対象構造物の応答/損傷特性の一例の説明図である。 応答/損傷値の算出手段(プログラム)の流れ図の一例である。 応答/損傷値の超過確率曲線の作成手段(プログラム)の流れ図の一例である。 図9における超過確率の算出方法の詳細を示す流れ図である。 震源別の耐震性能評価用の超過確率曲線、及び全震源に対する耐震性能評価用の統合超過確率曲線の説明図である。 各層の最大加速度(地震動に対する応答値)の超過確率曲線を用いて3層構造物モデルの耐震性能を評価した本発明プログラムの解析結果の一例である。 各層の最大層間変形角(地震動に対する応答値)の超過確率曲線を用いて3層構造物モデルの耐震性能を評価した本発明プログラムの解析結果の一例である。 超過確率曲線を用いた耐震性能評価手段(プログラム)の流れ図の一例である。 条件付き超過確率曲線を用いて3層構造物モデルの震源別危険度を評価した本発明プログラムの解析結果の一例である。 本発明で用いる応答/損傷値の超過確率曲線と地震PMLとの関係を示す説明図である。 従来の耐震性能マトリクスの説明図である。
符号の説明
1…コンピュータ 2…入力装置
3…出力装置 5…入力手段
6…出力手段 7…記憶手段
10…評価平面生成手段 11…評価平面更新手段
20…地震動算出手段 21…応答スペクトル算出手段
22…時刻歴波形算出手段 23…地盤増幅算出手段
30…応答/損傷算出手段 31…損傷値予測手段
32…スペクトル応答値算出手段 33…時刻歴波形応答値算出手段
40…超過確率曲線作成手段 41…曲線統合手段
42…条件付曲線作成手段 48…曲線重畳手段
50…耐震性能評価手段 51…構造物性能評価手段
52…震源別耐震性能評価手段 53…震源別危険度評価手段
54…損傷費用算出手段
A…応答加速度 B…対象構造物
C…応答/損傷特性 C1…フラジリティ(地震損失率)曲線
C2…キャパシティ(荷重−変形)曲線 C3…多質点系モデル
Ds…応答/損傷値 Dp…応答/損傷値の発生確率
De…応答/損傷値の発生超過確率 E…震源データ
F…構造形式・種別 G…関係式
L…設置位置 M…耐震性能マトリクス
N…耐震性能評価平面 P…超過確率曲線(地震リスク曲線)
Pe…震源別の超過確率曲線 Pc…震源別の条件付き超過確率曲線
Q…経済指標(予想損失額) R…レベル通過点
S…応答/損傷基準値 T…耐震性能
U…地盤増幅特性 Vs…地震動(応答スペクトル、時刻歴波形)
Vp…地震動の発生確率 W…フラジリティ(応答値−損失額)曲線
X…超過確率軸 Y…応答/損傷値軸
Z…性能領域

Claims (9)

  1. 対象構造物の耐震性能を評価するためコンピュータを、対象構造物の設置位置と構造形式・種別と地震動に対する応答/損傷特性とを記憶する記憶手段、異なる発生超過確率の地震動強さに対する構造物の応答/損傷の段階的な変化として定義された複数の耐震性能を前記構造形式・種別に応じた応答/損傷基準値に対応付けて超過確率軸と応答/損傷値軸とで定まる平面上にプロットすることにより複数の性能領域に区画された性能評価平面を生成する生成手段、対象構造物の設置位置で想定される確率論的地震動を入力して前記応答/損傷特性に応じた対象構造物の発生確率付き応答/損傷値を算出する応答/損傷算出手段、前記応答/損傷値を降順に並び替えて各々の超過確率を求め且つ前記性能評価平面上にプロットして超過確率曲線を作成する作成手段、及び前記超過確率曲線が前記性能領域の何れに属するかを判断することにより対象構造物の耐震性能を評価する評価手段として機能させる構造物の耐震性能評価プログラム。
  2. 請求項1のプログラムにおいて、前記生成手段に、前記耐震性能に対応付ける応答/損傷基準値を変更して性能領域を区画し直すことにより前記性能評価平面を更新する手段を含めてなる構造物の耐震性能評価プログラム。
  3. 請求項1又は2のプログラムにおいて、前記対象構造物の応答/損傷特性を地震動に対する損失率曲線とし、前記応答/損傷算出手段により対象構造物の発生確率付き予想損失額を算出し、前記作成手段により対象構造物の予想損失額の超過確率曲線を作成し、前記評価手段により前記予測損失額の超過確率曲線から対象構造物の予想最大損失額(PML)を求めてなる構造物の耐震性能評価プログラム。
  4. 請求項1又は2のプログラムにおいて、前記記憶手段に1以上の震源の位置・規模と発生確率と距離減衰式とを記憶し、前記対象構造物の設置位置と各震源の位置・規模と発生確率と距離減衰式とから前記設置位置で想定される複数の地震動の発生確率付き応答スペクトルを震源毎に算出する地震動算出手段を設け、前記震源毎の発生確率付き応答スペクトルを前記応答/損傷算出手段に入力して対象構造物の発生確率付き応答値を震源毎に算出し、前記作成手段により応答値の超過確率曲線を震源別に作成し、前記評価手段により対象構造物の耐震性能を震源別に評価してなる構造物の耐震性能評価プログラム。
  5. 請求項1又は2のプログラムにおいて、前記記憶手段に対象構造物の設置位置周辺の1以上の震源の断層モデルと過去の小・中地震記録波形又は統計的に処理された人工地震波形と経験的又は統計的グリーン関数法による時刻歴波形算出式とを記憶し、前記各震源の断層モデルと地震波形と時刻歴波形算出式とから前記設置位置で想定される複数の地震動の発生確率付き時刻歴波形を震源毎に算出する地震動算出手段を設け、前記震源毎の発生確率付き時刻歴波形を前記応答/損傷算出手段に入力して対象構造物の発生確率付き応答値を震源毎に算出し、前記作成手段により応答値の超過確率曲線を震源別に作成し、前記評価手段により対象構造物の耐震性能を震源別に評価してなる構造物の耐震性能評価プログラム。
  6. 請求項4又は5のプログラムにおいて、前記記憶手段に対象構造物の設置位置の地盤特性を記憶し、前記地震動算出手段により前記震源毎の応答スペクトル又は時刻歴波形と地盤特性とから設置位置表面の応答スペクトル又は時刻歴波形を算出してなる構造物の耐震性能評価プログラム。
  7. 請求項4から6の何れかのプログラムにおいて、前記作成手段により前記震源毎の超過確率曲線を全震源について統合した統合超過確率曲線を作成し、前記評価手段により前記統合超過確率曲線から全震源に対する対象構造物の耐震性能を評価してなる構造物の耐震性能評価プログラム。
  8. 請求項4から6の何れかのプログラムにおいて、前記作成手段により前記震源毎の超過確率曲線からその震源で地震が発生したときの条件付き超過確率曲線を作成し、前記評価手段により前記震源毎の条件付超過確率曲線から対象構造物に対する震源別危険度を評価してなる構造物の耐震性能評価プログラム。
  9. 請求項4から8の何れかのプログラムにおいて、前記記憶手段に対象構造物の応答値に対する損失額の関係式を記憶し、前記評価手段により前記対象構造物の応答値の超過確率曲線と前記関係式とから対象構造物の予想最大損失額(PML)を求めてなる構造物の耐震性能評価プログラム。
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