JP2009013131A - 細胞増殖抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 細胞周期に関与するタンパク質に作用して細胞周期を制御することにより、細胞増殖を抑制し、癌の治療又は予防に有用な成分を提供すること。
【解決手段】 セサミン類を有効成分として含む細胞増殖抑制剤。
【選択図】 なし
【解決手段】 セサミン類を有効成分として含む細胞増殖抑制剤。
【選択図】 なし
Description
本発明は、セサミンを有効成分として含む、細胞増殖性疾患の治療又は予防に有用な細胞増殖抑制剤に関する。また、本発明は、前記細胞増殖抑制剤を含有する医薬組成物又は飲食品に関する。
日本人の死亡原因の第一位は癌であり、癌予防と癌治療は国民の健康上、極めて重要な課題である。疫学調査の結果、発癌のリスクが軽減されるとして注目されてきた物質(例えば、緑黄色野菜や果物に含まれるカロテノイド)が、肺癌の介入試験で予想に反して肺発癌を高めるという結果が発表されたこともあり、近年の癌治療においては、抗腫瘍剤の癌細胞への作用、すなわち抗腫瘍作用を示す分子機構を明らかにすることが重要となっている。また、より治療効果の期待できる患者を選択して治療する、いわゆるオーダーメイド医療にも、癌治療剤の抗腫瘍作用を示す分子機構を明らかにすることは、治療効果の期待できる患者を選択する上で有用であると考えられている。
1個の細胞は、順次G1期、S期、G2期及びM期からなる4つの時期からなる細胞周期の全過程を経て2個の細胞に分裂する。かかる細胞周期はG1期からS期への移行段階、S期からG2期への移行段階の2点において制御されており、この制御にはサイクリン、cdk(cyclin-dependent kinase)などの種々のタンパク質が関与している。例えば、G1期からS期への移行には、サイクリンDがcdk4及び6に結合してcdk4及びcdk6が活性化すること、並びにサイクリンEがcdk2に結合してcdk2が活性化することが必要である。このように、cdk複合体は、細胞周期の仕組みを調節する上で重要な役割を果たしており、これらの機能亢進が調節されないと、細胞増殖及び腫瘍の生成を導くと報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。最近では、cdkに対する内因性のタンパク質阻害剤が、細胞周期の調節をしており、これら阻害剤が欠乏している細胞は、調節されない成長や腫瘍形成を起こしやすいことが報告されており、治療物質としてのcdkファミリーの小分子阻害剤について、多くの研究が行われるようになってきている(特許文献1、特許文献2)。そして、上記の細胞周期を制御するタンパク質と細胞の癌化との関係が明らかにされており、癌細胞においては、サイクリンD又はEが過剰に発現しているという報告がなされている(非特許文献3)。また、副甲状腺癌、乳癌、大腸癌、リンパ腫、メラノーマ、前立腺癌などで、遺伝子増幅や過剰発現が認められ、サイクリンD1のノックアウトマウスでは癌遺伝子が引き起こす乳癌に抵抗性を示していることからサイクリンDは多くの癌でその癌発症や悪性化に関与することが示唆されている(非特許文献4)。
特表2005−511535号公報
特開平11−322610
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 9026‐9030 (1993)
Nature, 343, 555‐557 (1990)
Cancer Cell lycle. ScienceVol. 274, 1672-1677
Nature, 411, 1017‐1021 (2001)
本発明は、細胞周期に関与するタンパク質に作用して細胞周期を制御することにより、細胞増殖を抑制し、癌の治療又は予防に有用な成分を提供することを目的とする。
本出願人は、セサミンなどのジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体が乳癌抑制作用を有することを見出しているが(特開平5−43458号公報)、その分子機構や細胞周期に関与するタンパク質への関与は解明されていなかった。また、この出願の実施例では、癌誘発剤を用いた系で乳癌抑制作用があったことを報告しているが、近年、この実験系では、免疫増強と抗酸化活性増加作用であり、実際の抗腫瘍作用を必ずしも反映していないことが指摘されている。つまりは、セサミンの癌細胞に対する作用については何ら記載も示唆もされておらず、全く不明であった。
そこで、本発明者らは、癌細胞自身に作用する物質を種々探索した結果、セサミン類が癌細胞の増殖抑制作用を有することを見出した。そして、その分子機構を明らかにしたところ、意外にも、細胞周期のG1期からS期の移行における重要な制御因子であるサイクリンD1を分解の標的とすることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次のような特徴を有する。
(1) セサミン類を有効成分として含有する、細胞増殖抑制剤である。
(2) 前記細胞増殖抑制剤がサイクリンD1分解促進によるものである。
(3) 前記細胞増殖抑制剤が癌治療又は予防剤である。
(4) 前記細胞増殖抑制剤は、医薬組成物や飲食品として用いることができる。
また、本発明にかかる細胞増殖抑制剤を哺乳動物に用いることによる、癌などの細胞の過増殖に起因する疾患又は症状の、長期的な治療方法または予防方法を提供するものである。
(1) セサミン類を有効成分として含有する、細胞増殖抑制剤である。
(2) 前記細胞増殖抑制剤がサイクリンD1分解促進によるものである。
(3) 前記細胞増殖抑制剤が癌治療又は予防剤である。
(4) 前記細胞増殖抑制剤は、医薬組成物や飲食品として用いることができる。
また、本発明にかかる細胞増殖抑制剤を哺乳動物に用いることによる、癌などの細胞の過増殖に起因する疾患又は症状の、長期的な治療方法または予防方法を提供するものである。
本発明のセサミン類を有効成分として含む細胞増殖抑制剤は、サイクリンD1の分解を促進することによりG1早期停止を引き起こすという、G1早期選択的な新しいタイプの癌治療剤を提供する。この癌治療剤は、癌細胞を殺すのではなく、正常に近い分化した状態に戻す作用を発揮すると考えられるので、正常細胞に対する有害作用の少ない画期的な治療剤となりうる。
また、セサミン類は、食品由来の有効成分であるので、副作用がなく安全に摂取できることから、日常的に継続摂取でき、治療のみならず、臨床的に認識される以前の増殖細胞の癌化を遅延、あるいは予防することができる。
(細胞増殖抑制剤)
本発明は、セサミン類を有効成分として含む、細胞増殖抑制剤である。本明細書において、細胞増殖抑制剤とは、癌細胞の増殖を抑制させる作用、又は癌細胞の増殖を停止する作用を有する剤をいう。
本発明は、セサミン類を有効成分として含む、細胞増殖抑制剤である。本明細書において、細胞増殖抑制剤とは、癌細胞の増殖を抑制させる作用、又は癌細胞の増殖を停止する作用を有する剤をいう。
サイクリンD1は、細胞周期を調節するタンパク質として知られている。このサイクリンD1の発現量が増加すると、RB(Retinoblastoma protein)と呼ばれるタンパク質をリン酸化する。そして、RBがリン酸化されると、転写因子E2FがE2F−RB複合体から遊離し、細胞周期のG1期からS期へ移行が促進され、細胞増殖が活性化される(Science 274(5293), 1672−1677, 1996)。本発明の細胞増殖抑制剤は、この過剰に発現したサイクリンD1を分解の標的としてセサミン類が作用することにより、細胞周期におけるG1期の早期停止を引き起こすものである。つまり、セサミン類は、サイクリンD1分解促進剤の有効成分としても用いることができる。ここで、本発明のサイクリンD1分解促進剤とは、生体または生体の一部において、サイクリンD1の分解を促進することにより、サイクリンD1の発現を抑制させる作用を有する剤をいう。
癌患者の多く(約50%)はp53遺伝子が失活しており、その標的遺伝子であるp21遺伝子発現が低下し、cdk阻害機能が失われていることが知られている。また、同じくcdk阻害の役割を担うp16遺伝子についても、白血病や脳腫瘍、メラノーマ等のいろいろな癌で失活しており、約50%の癌で失活していることが知られている。本発明の細胞増殖抑制剤は、サイクリンD1分解促進作用を有するものであるから、サイクリンD1が過剰に発現した生体又はその一部に使用して、正常に近い状態に戻す作用を発揮する。また、本発明の細胞増殖抑制剤は、サイクリンD1を標的として分解するという、これまでのcdk阻害剤とは異なるメカニズムにより細胞増殖を抑制するものであるから、p53遺伝子やp16遺伝子が失活してcdk阻害作用が減少した生体又はその一部に対しても、有用に用いることができる。
本発明の細胞増殖抑制剤は、生体又はその一部にセサミン類を投与すればよい。ここで、本明細書において、生体とは哺乳動物の生体であり、本発明において生体とは、好ましくは癌に罹患した哺乳動物の生体である。また、生体の一部とは、哺乳動物由来の各臓器、組織、体液(血液、脳脊髄液、リンパ液、唾液などを含む)、又は細胞が含まれる。本発明において、生体の一部は、好ましくは癌を発症した各臓器、組織又は癌細胞である。癌細胞は、初代培養細胞であってもよいし、細胞株であってもよい。
なお、本明細書において、哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ウマ、ウシ、サルなど)を意味する。本明細書において、哺乳動物は好ましくはヒトである。
本発明の細胞増殖抑制剤の対象は、次のように判定できる。サイクリンD1が過剰発現している生体又はその一部は、例えば、RT−PCR法によるサイクリンD1遺伝子の発現量の測定や、ウェスタンブロット法によるサイクリンD1タンパク質の発現量の測定により評価することができる。
また、p53やp21、p16などの細胞周期調節因子が失活している生体又はその一部は、次のように判定できる。遺伝子の欠失や変異、発現量の異常については、サザンブロット法やPCR−SSCP法、ノーザンブロット法により知ることができる。タンパク質の発現量の異常や、失活については、標的タンパクのウエスタンブロット法や活性複合体の免疫沈降により確認することができる。
細胞増殖性疾患としては、癌などがあることから、本発明のセサミン類を有効成分として含む細胞増殖抑制剤は、癌治療剤としても有用である。この癌治療又は予防剤は、癌細胞を殺すのではなく、正常に近い分化した状態に戻す作用を発揮すると考えられるので、正常細胞に対する有害作用の少ない画期的な治療剤となりうる。
ここで、癌治療又は予防とは、癌に罹患した患者の癌進行を抑制すること、癌腫瘍を消失させること、腫瘍の増大を抑制すること、癌の発症を予防すること、又は癌の再発を予防することを意味する。そして、本明細書において、癌治療剤又は予防剤とは、前記の治療に用いる剤、治療効果を有する剤をいう。本発明の癌治療剤を患者に投与すると、有効成分として含まれるセサミン類によるサイクリンD1分解促進作用を介して、癌の治療を行うことができる。また、本発明の癌予防剤を癌抑制遺伝子の変異等により正常細胞が過剰分化能を有するようになった者に投与することで、当該細胞の初期増殖過程における過程増殖を止めることにより、当該細胞が臨床的に癌と認識される期間を遅延させることができる。
本発明の癌治療剤の対象となる癌は特に限定されず、例えば、脳腫瘍、頚癌、食道癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、舌癌、肺癌、乳癌、膵癌、胃癌、肝癌、胆道癌、脾臓癌、大腸癌、小腸や十二指腸癌、結腸癌、直腸癌、膀胱癌、腎癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肉腫、リンパ腫及びメラノーマからなる群から選択される少なくとも1つを挙げることができるが、好ましくはサイクリンD1の過剰発現が知られている副甲状腺癌、乳癌、大腸癌、リンパ腫、メラノーマ、前立腺癌などである。
従来より、癌治療剤の開発において、癌細胞の増殖・分裂を抑える薬剤は種々開発されているが、多くは、癌細胞のみならず、正常細胞に対しても作用し、結果として重篤な副作用の問題が生じていた。本発明の癌治療剤は、サイクリンD1を特異的なターゲットとし、それ以外の遺伝子には影響が認められない、すなわちサイクリンD1の発現を特異的に抑制するものであり、副作用の問題を回避して、癌細胞を選択的に、その増殖・分裂を阻止することが可能となる。
(セサミン類)
本発明のセサミン類とは、セサミン及びその類縁体を含む。前記のセサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がある。セサミン類の具体例としては、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン等を例示できる。なかでも、セサミン、エピセサミン又はセサミンとエピセサミンの混合物が好ましく、特に、セサミンとエピセサミンとの混合物がより好ましい成分である。
本発明のセサミン類とは、セサミン及びその類縁体を含む。前記のセサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がある。セサミン類の具体例としては、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン等を例示できる。なかでも、セサミン、エピセサミン又はセサミンとエピセサミンの混合物が好ましく、特に、セサミンとエピセサミンとの混合物がより好ましい成分である。
本発明に用いるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミンを選択した場合には、通常、ごま油から公知の方法(例えば、特開平4−9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または精製物という)を用いることもできるが、市販のごま油(液状)をそのまま用いることもできる。しかしながら、ごま油を用いた場合には、ごま油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、ごま油から抽出された無味無臭であるセサミン抽出物(又はセサミン精製物)を用いることが好ましい。また、ごま油を用いた場合、セサミン含有量が低いため、好ましい量のセサミンを配合しようとすると、処方される組成物の単位投与当りの体積が大きくなり過ぎるため、摂取に不都合を生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合は、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり過ぎて摂取に支障が生じる。したがって、摂取量が少なくてよいという観点からもごま油からのセサミン抽出物(又はセサミン精製物)を用いることが好ましい。なお、セサミン類の代謝体も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。
(医薬組成物、飲食品)
本発明はセサミン類を有効成分として含む、細胞増殖抑制作用を有する医薬組成物、飲食品(動物飼料を含む)も提供する。飲食品としては、通常の飲食品の他に、機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品等の健康食品が含まれる。
(医薬組成物、飲食品)
本発明はセサミン類を有効成分として含む、細胞増殖抑制作用を有する医薬組成物、飲食品(動物飼料を含む)も提供する。飲食品としては、通常の飲食品の他に、機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品等の健康食品が含まれる。
細胞増殖抑制用(癌治療用)の医薬組成物又は飲食品として使用する場合、有効成分となるセサミン類に加えて、薬理学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤等を配合し、一般的な方法により目的に応じて製剤化できる。希釈剤、担体の例としては、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等の液体希釈剤、グルコース、シュークロース、デキストリン、シクロデキストリン、アラビアガム等固体希釈剤又は賦形剤を挙げることができる。さらに、製剤化において一般的に使用される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化財、抗酸化剤等を適宜配合することができる。
本発明の医薬組成物、飲食品は、その形態は特に制限されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;溶液状、乳液状、分散液状等の液状;またはペースト状等の半固体状等の、任意の形態に調製することができる。具体的な剤形としては、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハートカプセル剤を含む)、チュアブル剤、溶液剤などが例示できる。
本発明の医薬組成物は、癌治療剤のほか、細胞増殖抑制剤、サイクリンD分解促進剤、細胞増殖刺激剤、細胞分化誘調節剤、細胞死制御剤等として利用できる。セサミン類の投与量(有効量)としては、成人(体重60kg)あたり、通常、1〜200mg/日であり、好ましくは5〜100mg/日であり、さらに好ましくは10〜60mg/日である。投与期間は、特に限定されるものではなく、例えば、1〜1000日、好ましくは7〜300日である。投与量及び投与期間は、癌などの疾患に対する治療効果と患者の状態を勘案しながら適宜設定することができる。
本発明の医薬組成物を前記の生体の一部に使用する場合、例えばその生体の一部が癌細胞である場合は、セサミン類を10-8〜10-2M、好ましくは10-7〜10-3M、より好ましくは10-6〜10-4Mの濃度で含有する培地で12〜96時間、好ましくは24〜72時間、より好ましくは48時間培養すると、サイクリンD1を分解することができる。
本発明の医薬組成物、飲食品には、セサミン類の効果を損なわない、すなわち、セサミン類との配合により好ましくない相互作用を生じない限り、必要に応じて、他の生理活性成分、例えば、ミネラル;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;栄養成分;香料;色素などの他の添加物を混合することができる。これらの添加物はいずれも医薬品、飲食品に一般的に用いられるものが使用できる。
本発明を以下の実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1. セサミンの細胞増殖抑制作用
細胞は癌抑制遺伝子p16の発現が欠失しているヒト乳がん由来MCF−7細胞を用い、培養培地には10%ウシ胎仔血清を含有するD-MEM培地を用いた。MCF−7細胞を12穴プレートに1×105/wellで播種し、その24時間後に、終濃度12.5〜100μMの濃度となるように、セサミン及びエピセサミンの1:1混合物(以下、「セサミン類混合物」とも称する)を添加した。セサミン類混合物は溶媒(0.1%DMSO)に溶解させた形で添加した。セサミン類混合物添加後、10%ウシ胎仔血清を含有するD−MEM培地(+0.1%DMSO)に交換し、さらに4日間培養した。培養中、経時的に細胞数をトリパンブルー色素排除法で細胞数を数え、細胞増殖に対するセサミン類混合物の影響を検討した。また、対照として、セサミン類混合物の溶媒として用いた0.1%DMSOのみを加えた培地でも試験した。
実施例1. セサミンの細胞増殖抑制作用
細胞は癌抑制遺伝子p16の発現が欠失しているヒト乳がん由来MCF−7細胞を用い、培養培地には10%ウシ胎仔血清を含有するD-MEM培地を用いた。MCF−7細胞を12穴プレートに1×105/wellで播種し、その24時間後に、終濃度12.5〜100μMの濃度となるように、セサミン及びエピセサミンの1:1混合物(以下、「セサミン類混合物」とも称する)を添加した。セサミン類混合物は溶媒(0.1%DMSO)に溶解させた形で添加した。セサミン類混合物添加後、10%ウシ胎仔血清を含有するD−MEM培地(+0.1%DMSO)に交換し、さらに4日間培養した。培養中、経時的に細胞数をトリパンブルー色素排除法で細胞数を数え、細胞増殖に対するセサミン類混合物の影響を検討した。また、対照として、セサミン類混合物の溶媒として用いた0.1%DMSOのみを加えた培地でも試験した。
図1に結果を示す。培養2日目にセサミン類混合物を添加したところ、MCF−7細胞の増殖が顕著に抑制された。この細胞増殖抑制作用は、セサミン類混合物の濃度に依存しており、セサミン類混合物を100μM添加した場合には、MCF−7細胞の増殖が全く認められなかった。
実施例2. セサミンのG1期停止作用
実施例1により得られたセサミン類混合物を100μM添加した細胞(図中、「Sesamin 100μM」と表記する)と、対照(DMSOのみを添加;図中、「DMSO」と表記する)の細胞について、細胞周期を解析した。具体的には、培養後の細胞をPI(Propidium Iodine)染色し、Becton Dickinson FACS caliber(Becton Dickinson社)により細胞周期の分布を解析した。
実施例2. セサミンのG1期停止作用
実施例1により得られたセサミン類混合物を100μM添加した細胞(図中、「Sesamin 100μM」と表記する)と、対照(DMSOのみを添加;図中、「DMSO」と表記する)の細胞について、細胞周期を解析した。具体的には、培養後の細胞をPI(Propidium Iodine)染色し、Becton Dickinson FACS caliber(Becton Dickinson社)により細胞周期の分布を解析した。
結果を図2に示す。図中、縦軸は細胞数を示し、横軸はPIの蛍光強度を示す。図に示されるように、対照(DMSO)の細胞に比べ、セサミン類混合物が添加された細胞では、S期の細胞が減少しG 1 期 の細胞数が相対的に増えている。これは、セサミン類混合物の添加により、MCF−7細胞の細胞周期が主にG1期で停止されていることを示している。
実施例3.遺伝子の発現に及ぼすセサミンの影響
G1−S期移行を制御する遺伝子の発現に及ぼすセサミンの効果を、ウエスタンブロット法で解析した。
1)RB(レチノブラストーマタンパク質)
100μMのセサミン類混合物添加によるRBの脱リン酸化を、常法に従いウエスタンブロットで検討した。具体的には、細胞は溶解液(50mM Tris−HCl,pH7.5, および0.1%SDS)にて溶解し、タンパク抽出物を5分煮沸した。サンプルは7% ポリアクリルアミドゲルにて泳動した。一次抗体には抗ヒトRBウサギポリクローナル抗体 (PM−14001A,Pharmingen社)を用い、検出はECL system (Amersham Pharmacia Biotech社)で行った。
実施例3.遺伝子の発現に及ぼすセサミンの影響
G1−S期移行を制御する遺伝子の発現に及ぼすセサミンの効果を、ウエスタンブロット法で解析した。
1)RB(レチノブラストーマタンパク質)
100μMのセサミン類混合物添加によるRBの脱リン酸化を、常法に従いウエスタンブロットで検討した。具体的には、細胞は溶解液(50mM Tris−HCl,pH7.5, および0.1%SDS)にて溶解し、タンパク抽出物を5分煮沸した。サンプルは7% ポリアクリルアミドゲルにて泳動した。一次抗体には抗ヒトRBウサギポリクローナル抗体 (PM−14001A,Pharmingen社)を用い、検出はECL system (Amersham Pharmacia Biotech社)で行った。
結果を図3−aに示す。図中、ppRBはリン酸化されたRB、pRBは脱リン酸化されたRBを指す。セサミン類混合物を添加して約3時間後からリン酸化されたRB(ppRB)が減少した。すなわち、セサミン類混合物の添加により脱リン酸化され、活性型となることが示された。
2)細胞周期調節因子
サイクリン依存性キナーゼインヒビター(cdk阻害剤)であるINK4 ファミリータンパク質(p15、p18、p19)及びp21ファミリータンパク質(p57、p27、p21)の発現を常法に従い、ウエスタンブロットで検討した。ウエスタンブロットの方法は、ポリアクリルアミドゲル濃度を5%とし、検出用の一次抗体としてそれぞれのタンパク質に対する抗ヒトウサギポリクローナル抗体を用いた以外は、実施例3−1)と同様に行った。用いた抗体は、anti−p15 (C-20,Santa Cruz Biotechnology社)、 anti−p18 (N-20, Santa Cruz Biotechnology社)、anti−p19 (C-20, Santa Cruz Biotechnology社)、anti−p21 (C-19, Santa Cruz Biotechnology社)、anti−p27 (C-19, Santa Cruz Biotechnology社)、 anti−p57 (P-0357, Sigma社)である。
2)細胞周期調節因子
サイクリン依存性キナーゼインヒビター(cdk阻害剤)であるINK4 ファミリータンパク質(p15、p18、p19)及びp21ファミリータンパク質(p57、p27、p21)の発現を常法に従い、ウエスタンブロットで検討した。ウエスタンブロットの方法は、ポリアクリルアミドゲル濃度を5%とし、検出用の一次抗体としてそれぞれのタンパク質に対する抗ヒトウサギポリクローナル抗体を用いた以外は、実施例3−1)と同様に行った。用いた抗体は、anti−p15 (C-20,Santa Cruz Biotechnology社)、 anti−p18 (N-20, Santa Cruz Biotechnology社)、anti−p19 (C-20, Santa Cruz Biotechnology社)、anti−p21 (C-19, Santa Cruz Biotechnology社)、anti−p27 (C-19, Santa Cruz Biotechnology社)、 anti−p57 (P-0357, Sigma社)である。
結果を図3−bに示す。cdk阻害剤となるタンパク質の発現には、セサミン類混合物の添加の影響が認められなかった。
3)サイクリンD1
100μMのセサミン類混合物添加によるサイクリン(cyclinD1, cyclin E, cyclin A)のタンパク質発現を常法に従い、ウエスタンブロットで検討した。検出用の一次抗体として、サイクリンD1については抗ヒトサイクリンD1マウスモノクローナル抗体 (DCS−6, MBL社)を用い、サイクリンA、サイクリンEについては、それぞれ抗ヒトウサギポリクローナル抗体であるanti−cyclin A (C−19, Santa Cruz Biotechnology社)、anti−cyclin E (HE−12, Santa Cruz Biotechnology社)を用い、その他の操作は、実施例3−2)と同様に行った。サイクリンD1については、セサミンの濃度依存性も評価した。
3)サイクリンD1
100μMのセサミン類混合物添加によるサイクリン(cyclinD1, cyclin E, cyclin A)のタンパク質発現を常法に従い、ウエスタンブロットで検討した。検出用の一次抗体として、サイクリンD1については抗ヒトサイクリンD1マウスモノクローナル抗体 (DCS−6, MBL社)を用い、サイクリンA、サイクリンEについては、それぞれ抗ヒトウサギポリクローナル抗体であるanti−cyclin A (C−19, Santa Cruz Biotechnology社)、anti−cyclin E (HE−12, Santa Cruz Biotechnology社)を用い、その他の操作は、実施例3−2)と同様に行った。サイクリンD1については、セサミンの濃度依存性も評価した。
結果を図3−c、図3−dに示す。セサミン類混合物添加の約1〜3時間後からサイクリンD1の発現が著明に抑制され、12時間後からサイクリンAの発現もわずかに抑制された。また、セサミン類混合物によるサイクリンD1の発現抑制には、濃度依存性が認められた(図3−d)。
上記2)及び3)は、セサミン類混合物添加後約1〜3時間後に、主にサイクリンD1タンパク質の発現が抑制されることによって、RBが脱リン酸化されることを示唆している。
さらに、100μMのセサミン類混合物によるサイクリンD1遺伝子の発現に及ぼす影響を検討するために、定量PCRを行った。具体的には、100μMのセサミン類混合物で処理したMCF−7 細胞から総RNAをSepasol−RNA I (ナカライテスク株式会社)を用いて抽出した。 10μgの総RNA鋳型に20 μl の反応系でoligo (dT) プライマー (東洋紡株式会社)を用い、 Superscript 逆転写酵素 (Invitrogen 株式会社)にてcDNAの合成を行った。反応は42℃で50分間行い、70℃で15分間加熱することで反応を停止した。 1 μlのcDNA 溶液を定量PCRの鋳型とした。 定量PCRはRT−PCR system GeneAmp 5700 (アプライドバイオシステムズ社)を用いて実施した。サイクリンD1のmRNAの発現量は同じサンプルのグリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ (GAPDH) の発現量を用いて標準化した。
結果を図4に示す。セサミン類混合物処理によっても、サイクリンD1遺伝子の発現はほとんど変化が認められなかった。
次に、セサミンによるサイクリンD1の分解に及ぼす影響を検討した。lactacystin及びMG132という2種類のプロテアソーム阻害剤により、セサミンのサイクリンD1の発現抑制が阻害されるかどうかを検討した。MCF−7細胞を10μM のプロテアソーム阻害剤で4時間前処理し、その後50 あるいは100μM のセサミン類混合物で3時間処置した。 その後全細胞抽出液を実験に用いた。
次に、セサミンによるサイクリンD1の分解に及ぼす影響を検討した。lactacystin及びMG132という2種類のプロテアソーム阻害剤により、セサミンのサイクリンD1の発現抑制が阻害されるかどうかを検討した。MCF−7細胞を10μM のプロテアソーム阻害剤で4時間前処理し、その後50 あるいは100μM のセサミン類混合物で3時間処置した。 その後全細胞抽出液を実験に用いた。
結果を図5に示す。いずれのプロテアソーム阻害剤によっても、セサミン類混合物添加によるサイクリンD1の発現抑制は阻害された(図5)。
以上より、MCF−7細胞において、セサミンはサイクリンD1遺伝子の合成には殆ど影響はなく、むしろプロテアソームによるサイクリンD1タンパク質の分解を促進することによって、RBを脱リン酸化し、細胞周期を主にG1期で停止していると考えられる。
以上より、MCF−7細胞において、セサミンはサイクリンD1遺伝子の合成には殆ど影響はなく、むしろプロテアソームによるサイクリンD1タンパク質の分解を促進することによって、RBを脱リン酸化し、細胞周期を主にG1期で停止していると考えられる。
Claims (6)
- セサミン類を有効成分として含有する、細胞増殖抑制剤。
- サイクリンD1分解促進剤である、請求項1記載の細胞増殖抑制剤。
- 癌治療又は予防剤である、請求項1又は2記載の細胞増殖抑制剤。
- 請求項1〜3のいずれか記載の細胞増殖抑制剤を含有する、医薬組成物。
- 請求項1〜3のいずれか記載の細胞増殖抑制剤を含有する、飲食品。
- サイクリンD1が過剰発現した哺乳動物への投与であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載の細胞増殖抑制剤。
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