JP2009006420A - 放電加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱変形による放電加工装置のZ加工軸傾きを低減する。
【解決手段】電極8を動かすヘッド1と、ヘッド1を駆動させるZ方向駆動機構9と、ヘッド1を支持するラム3及びコラム4と、ワーク7及びコラム4をその上面に設置するベッド2と、ベッド2を床面FSに固定する支持脚5から成る放電加工装置において、少なくとも2つの支持脚5Aの各々を、床面FSに固定された固定溝部材14の凹底面上で摺動可能な態様で設置し、更に、支持脚5Aと固定溝部材14の凹側面との間に、静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料から成る支持部材13を設けている。
【選択図】図1
【解決手段】電極8を動かすヘッド1と、ヘッド1を駆動させるZ方向駆動機構9と、ヘッド1を支持するラム3及びコラム4と、ワーク7及びコラム4をその上面に設置するベッド2と、ベッド2を床面FSに固定する支持脚5から成る放電加工装置において、少なくとも2つの支持脚5Aの各々を、床面FSに固定された固定溝部材14の凹底面上で摺動可能な態様で設置し、更に、支持脚5Aと固定溝部材14の凹側面との間に、静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料から成る支持部材13を設けている。
【選択図】図1
Description
この発明は、周囲温度変化による熱変位量と加工時の反発力による変形とを抑制することで、高い加工精度の実現が可能な放電加工装置に関するものである。
一般に、放電加工装置では、使用時の周囲温度変化に伴い、装置のテーブル面に対して水平方向(Y方向)及び垂直方向(Z方向)に相対熱変位が発生する。この相対熱変位は、主として、周囲温度上昇による放電加工装置本体の熱膨張と、放電加工装置各部の熱容量差による不均一な温度分布によりもたらされる放電加工装置の変形とによってもたらされるものであり、この相対熱変位により電極とワークの位置が変わるため、この相対熱変位は放電加工装置の加工精度の低下をもたらす。このため、例えば、特許文献1に記載の従来技術は、加工装置本体に取り付けられたセンサーから温度を測定し、予め構築しておいた温度と熱変位量との関係式から熱変位量を予測し、各軸方向の移動量を補正する方法を採用している。しかしながら、このような制御的な補正方法では、加工装置本体の変形による加工軸の傾きによる加工精度低下を防ぐのは困難であり、加工装置本体の構造的な改善が必要である。
この様な周囲温度変化の熱変形による加工精度低下を構造的に防ぐために、例えば、特許文献2に記載の従来技術は、加工装置本体の支持部材の一方を変形可能にし、熱変形による反りの発生を回避している。
背景技術で述べた支持部材の一方を変形可能にした構造では、熱変形による反りは回避できるが、装置本体の剛性の低下により、加工中の反発力に対して変形が大きくなり、加工精度が低下すると言う問題点がある。しかも、装置本体の固有振動数の低下により、加工時の振動的な反発力に対して共振し、加工精度が低下すると言う問題点もある。
本発明は、斯かる状況に鑑み成されたものであり、熱変形による反りを抑制すると共に、加工時の反発力に対する変形を低減する特性を有する放電加工装置を提供することを、その目的としている。
この発明の主題は、放電加工装置であって、電極を動かすヘッドと、前記ヘッドをZ方向に駆動させるZ方向駆動機構と、前記ヘッドを支持するラム及びコラムと、ワーク及び前記コラムが設置された上面を有するベッドと、前記ベッドを床面に設置するための複数の支持脚とを備えており、前記複数の支持脚の内の少なくとも二つの各々は、前記床面に固定された固定溝部材の底面上に摺動可能な形で設置されており、且つ、前記支持脚と前記固定溝部材の側面との間に設けられた、静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料から成る支持部材によって支持されていることを特徴とする。
以下、この発明の主題の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に、詳述する。
本発明の主題によれば、支持脚を摺動可能としたことにより、周囲温度変化に対してもベッドの反りを低減することが出来、Z加工軸傾き量を低減できるため、高い加工精度を維持することが出来る。しかも、摺動可能としたことに伴い、放電加工装置の剛性が低下して加工時の反発力に起因した変形が大きくなるところが、本構成の支持部材を設けることで、放電加工装置の剛性低下を防げ、変形が増大しなくなり、高い加工精度を維持することが出来る。更に、剛性低下を抑制することで、放電加工装置本体の固有振動数低下も抑制することが出来るため、加工時の振動的な反発力に対して共振し難くなり、高い加工精度を維持することが出来る。
(実施の形態1)
図8は、一般的な放電加工装置の構成を示す縦断面図である。図8に示す通り、電極8が取り付けられて電極8を駆動するヘッド1は、Z方向駆動機構9を通じて、ラム3に取り付けられている。又、ラム3は、X方向駆動機構10及びY方向駆動機構11を通じて、コラム4の上に設置されており、コラム4はベッド2の上面に固定されている。又、加工槽12の内部は加工油(加工液とも言う。)で満たされており、被加工物(ワーク)7は、加工槽12の中のテーブル6上に固定され、テーブル6はベッド2の上面に設置されている。そして、ベッド2は、4本の支持脚5で、床面(図示せず。)と固定されている(各支持脚5は例えば金属性のアンカー(図示せず。)を用いて床面に拘束されている。)。
図8は、一般的な放電加工装置の構成を示す縦断面図である。図8に示す通り、電極8が取り付けられて電極8を駆動するヘッド1は、Z方向駆動機構9を通じて、ラム3に取り付けられている。又、ラム3は、X方向駆動機構10及びY方向駆動機構11を通じて、コラム4の上に設置されており、コラム4はベッド2の上面に固定されている。又、加工槽12の内部は加工油(加工液とも言う。)で満たされており、被加工物(ワーク)7は、加工槽12の中のテーブル6上に固定され、テーブル6はベッド2の上面に設置されている。そして、ベッド2は、4本の支持脚5で、床面(図示せず。)と固定されている(各支持脚5は例えば金属性のアンカー(図示せず。)を用いて床面に拘束されている。)。
被加工物7の加工は、リニアモータ(図示せず。)等から構成される各軸方向駆動機構9〜11の位置決めの制御を行いながら、電極8を指定の位置まで動かし、加工槽9に満たされた加工液を通して電極8と被加工物7との間(点A−点B間)に放電を発生させることにより、行われる。この際、電極8の面積が大きくなるにつれて、加工液の粘性や放電により発生する気泡の影響で、反発力として、電極8にZ方向の大きな荷重が単発的及び振動的に発生する。
図8に示す様な放電加工装置において、例えば周囲温度を一様に上昇させた場合の熱変形として、Z加工軸の傾き量を図9に示す。なお、Z方向はテーブル6のテーブル面に対して垂直な方向である。Z加工軸の傾き量は、ベッド2の反りと各部材の熱容量差による温度分布とにより発生する。このため、温度変化が止まる付近でZ加工軸の傾き量は最大となり、その後、温度が一定に保持されると、温度分布が解消されるため、徐々にZ加工軸傾き量は減少するが、ベッド2の反りは解消されないため、Z加工軸傾きは一定値に落ち着く傾向を示す。この様なZ加工軸傾きの増大は、被加工物7に於ける穴の真直度や真円度、加工位置など、加工精度の低下をもたらすため、対策が必要となる。尚、周囲温度変化としては、エアコンのON、OFF状態又は昼夜の温度差が想定され、1日1サイクル程度の周期である。
ここで、図1は、本実施の形態に係る放電加工装置の構成を示す縦断面図である。図1に於いて、既述した図8の各部材と同一の参照符号を有する部材は、同一又は同等のものを示す。図1の放電加工装置が、構成的に、図8の現行の放電加工装置と相違する点は、支持脚の構成にある。図1の放電加工装置は、4本の支持脚5を有するが、その内の少なくとも2本の支持脚(図1の一例では、図1の紙面に垂直な方向に互いに対面し合う2本の支持脚)5Aは、次の特徴的構成を具備している(勿論、4本の支持脚を支持脚5Aとして構成しても良い。)。その他の残りの支持脚5は、図8の現行の放電加工装置に於ける支持脚5と同様の構成を有しており、その底面は床面FS上に直接に固定・設置されている。
即ち、支持脚5Aは、床面FS内に設けられた縦断面形状がU字型の低摩擦面の固定溝部材14上(on)に設置されており、支持脚5Aの底部に設けられたロッド5ALは、固定溝部材14の底面に対して、摺動可能な態様で設置されている。しかも、支持脚5Aは、支持脚5Aと固定溝部材14の側面との間に設けられた、静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料から成る支持部材13によって支持されている。換言すれば、支持脚5Aの水平方向の移動は、固定溝部材14内に設けられた静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料から成る支持部材13で以って拘束されている。
ここで、「静的弾性率」とは、縦弾性率のことであり、例えば、引張試験装置や動的粘弾性測定装置を用いて、瞬間的にある力で引っ張る時の伸び率によって静的弾性率を測定することが出来る。
又、「クリープ材料」とは、クリープ変形の大きな材料を、即ち、クリープ弾性率の低い材料を意味しており、12時間後(温度サイクルが1日24時間とした場合には、その半サイクルである12時間が温度上昇期間ないしは温度下降期間と考えられる。)のクリープ弾性率が、後述する様に、静的弾性率の80%以下である材料を、更に望ましくは静的弾性率の10%以下の材料であり、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン等の材料から成る。
以下に、本実施の形態(支持脚5Aを採用する点)の効果について記載する。放電加工装置では、加工時に瞬間的な反発力が発生し、装置本体が変形する可能性がある。反発力は、その周波数が数Hz〜数十Hzの振動として発生する場合もあるため、装置本体の剛性の他、装置本体の固有振動数を上げて、反発力との共振を避ける必要性がある。
そこで、本実施の形態では、支持部材13として、反発力の速度オーダーである数Hz〜数十Hzの静的弾性率が100MPa以上を有するクリープ材料を使用することで、装置本体の剛性の低下を防いでいる。その効果を示すため、図8に示した現行装置本体の剛性として、ヘッド1の先端に荷重を付与したときの荷重負荷点の変位を有限要素法で算出し、支持部材13の静的弾性率を変えた場合の上記変位の変化率を、支持部材13の静的弾性率が100000MPaの場合を基準化して、図2に示す。尚、金属の静的弾性率が100000MPaのオーダーであるため、静的弾性率が100000MPaの場合とは、金属製の部材で以って支持脚5を拘束している現行装置(図8)相当の状態を解析する場合に該当している。例えば、放電加工装置の耐振性を向上させるために防振材の使用が考えられるが、防振材として最も一般的に使用されるゴムでは、その静的弾性率は0.1MPa〜10MPaであるが、これを支持部材13に適用した場合には、負荷点の変位が顕著に増加する。他方、支持部材13の静的弾性率を100MPa以上にすれば、図2に示す通り、上記変位の増加を減らすことが出来、瞬間的な反発力に対しても加工精度を維持することが出来る。
又、振動的な反発力に対しても、支持部材13に静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料を使用することで、放電加工装置本体の固有振動数の低下を最小限に留められる。ここで、放電加工装置本体の固有振動数fbは、装置本体を一自由度振動系と看做せば、数1の(1)式で表される。
(1)式に於いて、kは放電加工装置の剛性を1個のばねで近似した場合のバネ定数であり、mは放電加工装置の質量である。即ち、(1)式より、放電加工装置の剛性増加によりバネ定数の値を上げるか、放電加工装置を軽量化することで、放電加工装置の固有振動数を上げることが出来る。前述の様に、支持部材13に、その静的弾性率が100MPa以上のものを使用することで放電加工装置の剛性が増加するため、本放電加工装置の固有振動数は低下せず、図1の放電加工装置は、振動的な反発力に対して共振しにくい振動抑制効果のある構造となる。尚、ゴムの様な防振材でも振動抑制効果が得られるが、前述の様に剛性低下をもたらすため、瞬間的な反発力に対して変形が大きくなり、加工精度を維持することが出来ない。
次に、本実施の形態に係る放電加工装置が奏する熱変形抑制効果について記載する。クリープ材料は、荷重に対して時間依存型の変形であるクリープ変形を示す特徴を有しており、その特性は、JIS K 7115 “プラスチック―クリープ特性の試験方法―第1部:引張クリープ”にも記載されている様に、応力σを時間tにおけるひずみεtで除したクリープ弾性率(数2の(2)式を参照。)で表現出来る。
クリープ弾性率が低い材料は、クリープ変形し易い材料であり、従って、長期負荷に対して変形し易い性質を示す。放電加工装置に於いて通常の使用条件である1日1サイクル程度の温度変化によるベッド2の熱収縮又は熱膨張に対して、支持部材13は、支持脚5Aと固定溝部材14に挟まれるため、1日1サイクル程度の長期負荷を受けるが、クリープ変形が起きるため、支持部材13は、支持脚5Aと固定溝部材14の底面間での摺動運動を妨げない。この効果を確認するため、一日の温度変化を模擬した温度プロファイルを与えたときの熱変形を、有限要素法を用いて解析した。熱変形を示す指標としてZ加工軸傾き量を選択したとき、支持部材13にクリープ材料を使用した場合の効果として、支持部材13のクリープ弾性率と静的弾性率との比に対するZ加工軸傾き量の関係を求めた。その結果を図3に示す。図3で、クリープ弾性率/静的弾性率の比が1の材料はクリープ変形しないことを示し、当該材料はクリープ材料ではない。図3に於いて、クリープ弾性率/静的弾性率の比が小さい材料程、その物はクリープ変形し易い材料である。但し、一般的に樹脂はわずかながらクリープの性質を示すが、その多くは、クリープ弾性率/静的弾性率の比が0.9よりも大の材料である。そこで、本実施の形態で用いるクリープ材料は、少なくともクリープ弾性率/静的弾性率の比が0.9以下の物である。
図3に示す通り、クリープ弾性率の低下と共に、Z加工軸傾き量を低減することが可能となっている。クリープ弾性率は時間依存性を有しており、時間経過と共に低下するため、温度が上昇(あるいは下降)した状態で支持脚5Aが支持部材13で保持された場合を想定すると、時間と共に、Z加工軸傾き量が低減されることを意味する。
図3において、例えば、クリープ弾性率が静的弾性率の80%以下の材料を支持部材13のクリープ材料として使用すれば、Z加工軸傾きを5%低減することができる。
又、図3において、更に望ましくは、クリープ弾性率が静的弾性率の10%以下の材料を支持部材13のクリープ材料として使用すれば、Z加工軸傾き量を半減することが出来ると言う顕著な効果が得られる。
尚、固定溝部材14に関しては、支持脚5Aとの摩擦係数を下げるため、フッ素樹脂等でコーティングすることが望ましい。
又、図1に示す支持脚5Aと固定溝部材14の凹部底面との間の摺動を、例えばリニアガイドやボールローラ等で置き換えても、同様なZ加工軸傾き量の顕著な低減効果が得られる。
又、図8ではヘッドの支持部であるラムとコラムの間にXY方向の駆動機構を設けているが、XY方向の駆動機構の設置箇所が他場所、例えばテーブル面が動くようにXY方向駆動機構がテーブル下に置かれている放電加工装置でも、本発明の構成により同様の効果が得られる。
放電電極を備えたヘッド部がワークを載置するテーブル面の上方で支持され、また、テーブル面に垂直なZ方向に放電電極を駆動するZ方向駆動機構を備える放電加工装置では、これらのヘッド部およびZ方向駆動機構はラムおよびコラムなどの支持部によって支持される。このラムおよびコラムなどの支持部はテーブルから離れてベッド上に固定される。このため、ベッドが熱などで変形すると、テーブル面と支持部が固定される面とは平行でなくなり、その傾きが支持部によって増幅されて加工精度が悪くなっていた。一方、本実施の形態によれば、上記のような放電加工装置において、ベッドを床面に設置する複数の支持脚を備えて、その支持脚の内の少なくとも二つの各々は、床面に固定された固定溝部材の底面上に摺動可能な形で設置されており、且つ、支持脚と固定溝部材の側面との間に設けられた、静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料から成る支持部材によって支持されるので、以下の利点が得られる。即ち、周囲温度変化に対するベッド2の“反り”の一因は、放電加工装置を床面上に固定する脚部が、ベッド2が熱膨張(又は熱収縮)する際の拘束点となり、拘束の無いベッド2上部とのアンバランスから発生するものであるが、上記の通り、支持脚5Aを摺動可能とすることでベッド2の反りを抑制することが出来る。更に、固定溝部材14の凹部側面と支持脚5Aとの間に静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料から成る支持部材13を設けているため、周囲温度変化による熱膨張に対しては、支持部材13は柔となるために固定溝部材14の凹部内の支持脚5Aの摺動運動を拘束しない反面、加工時の反発力に対しては、支持部材13は剛となるために放電加工装置本体の剛性とその固有振動数の低下とを防ぎ、支持脚5A、固定溝部材14及び支持部材13から成る構造は、高い加工精度を実現可能とする。
(実施の形態2)
図4は、本実施の形態に係る放電加工装置の設置状態を示す縦断面図である。支持脚5と床面との固定以外は、本実施の形態に係る放電加工装置の構成は図8に示した一般的な放電加工装置の構成と同一である。本実施の形態では、放電加工装置の支持脚5を摩擦調整面15の上に設置する構造としている点に特徴がある。ここで、摩擦調整面15は、支持脚5との間に、数3の(3)式から算出される静摩擦係数μを有している。
図4は、本実施の形態に係る放電加工装置の設置状態を示す縦断面図である。支持脚5と床面との固定以外は、本実施の形態に係る放電加工装置の構成は図8に示した一般的な放電加工装置の構成と同一である。本実施の形態では、放電加工装置の支持脚5を摩擦調整面15の上に設置する構造としている点に特徴がある。ここで、摩擦調整面15は、支持脚5との間に、数3の(3)式から算出される静摩擦係数μを有している。
つまり、静摩擦係数μは、放電加工装置の剛性E、断面積S、質量m、線膨張係数α及び予想変化温度ΔTから算出される値Aと、放電加工装置の質量m及び予想される加工時の反発力fから算出される値Bとの間の値として与えられるのが良い。即ち、静摩擦係数μに関して、数4の(4)式が成立する。
本実施の形態の一例の効果として、例えば、放電加工装置が次の様な場合を考える。
E= 100 GPa
α=1.0×10-5 ppm/℃
S = 0.01 m2
ΔT = 1℃
m = 1000 kg
f=500N
g = 10 m/s2
このとき、A及びBの値は、
A=(100000×106)×1.0×10-5 ×0.01×1/(1000×10)=1
B=500/(1000×10)=0.05
となる。つまり、摩擦調整面15は、数5の(5)式を満たす静摩擦係数μを有するものとなる。
α=1.0×10-5 ppm/℃
S = 0.01 m2
ΔT = 1℃
m = 1000 kg
f=500N
g = 10 m/s2
このとき、A及びBの値は、
A=(100000×106)×1.0×10-5 ×0.01×1/(1000×10)=1
B=500/(1000×10)=0.05
となる。つまり、摩擦調整面15は、数5の(5)式を満たす静摩擦係数μを有するものとなる。
摩擦調整面15の静摩擦係数μが(4)式の特性を持てば、加工時の反発力fに対しては静摩擦力の方が大きいため、支持脚5は拘束され、放電加工装置の変形は小さい。他方、周囲温度変化に対しては、図5に示す様に、周囲温度が、静摩擦力を超える熱荷重に相当する変化温度ΔT1になると、熱変形が生じる。熱変形が生じると、支持脚5に働く熱荷重は緩和するため、支持脚5は摩擦力と釣り合う位置で停止するが、更なる温度変化が生じることで、再び熱荷重が静摩擦力を超えて熱変形が進行することで支持脚5が移動し、支持脚5は、図5に示す様なステップ状の挙動を示す。このため、図6に示す様に、Z加工軸傾き量も温度変化がなくなるまでは波状の挙動を示すが、支持脚5が初期位置より摺動しており、図8の現行の放電加工装置よりもZ加工軸傾き量を低減することが出来、加工精度を向上させることが出来る。
(4)式に示す様に、摩擦調整面15に要求される静摩擦係数μは、重量や剛性によって変わるが、一般には低摩擦係数であることが必要と予想されるため、例えば、支持脚5が設置される床面に対して、二硫化モリブデンによるコーティング処理や、フッ素系樹脂又はDLCによるコーティング処理、あるいは、窒化処理等の表面処理を施すと良い。
以上より、本実施の形態の構成によれば、支持脚5が静摩擦力で摩擦力調整面15上に拘束されるため、加工時の反発力に対する変形に対しても、現行形状と同等の加工精度を維持することが出来る。しかも、周囲温度変化に対しては、熱変形による荷重が静摩擦力を超えることで、支持脚5が摩擦調整面15上を摺動し、ベッド2の反りを低減することが出来、Z加工軸傾き量を低減することが出来るため、図8に示した現行の放電加工装置のそれよりも高い加工精度を維持することが出来る。
尚、本実施の形態に於いても、複数の支持脚5(図4では4本の支持脚5)の内で、少なくとも図4の紙面に垂直な方向に対向し合う二つの支持脚5の各々が、対応する摩擦調整面15の上に固定されていれば良い。
(実施の形態3)
図7は、本実施の形態に係る放電加工装置の構成を示す縦断面図である。図7中、図8と同一の参照符号を有する構成要素は同一あるいは同等のものを示す。実施の形態2の図4では、ベッド2が一体物から成り、支持脚5が設置される床面に、(4)式で与えられる静摩擦係数μを有する摩擦調整面15が設けられていた。これに対して、図7の放電加工装置では、ベッド2がベッド上部(第1ベッド)2Aとベッド下部2B(第2ベッド)とに分けられ、その間に、摩擦調整面16が設けられている。この摩擦調整面16もまた、図4の摩擦調整面15と同様の特性を、即ち、上記の(4)式で与えられる静摩擦係数μを有する。
図7は、本実施の形態に係る放電加工装置の構成を示す縦断面図である。図7中、図8と同一の参照符号を有する構成要素は同一あるいは同等のものを示す。実施の形態2の図4では、ベッド2が一体物から成り、支持脚5が設置される床面に、(4)式で与えられる静摩擦係数μを有する摩擦調整面15が設けられていた。これに対して、図7の放電加工装置では、ベッド2がベッド上部(第1ベッド)2Aとベッド下部2B(第2ベッド)とに分けられ、その間に、摩擦調整面16が設けられている。この摩擦調整面16もまた、図4の摩擦調整面15と同様の特性を、即ち、上記の(4)式で与えられる静摩擦係数μを有する。
本実施の形態の効果として、実施の形態2と同様に、ベッド上部2Aの熱変形による反りを低減することが出来、且つ、加工時の反発力による変形を低減することが出来る。
更に、周囲温度が変化した場合には、ベッド2は不均一な温度分布を有し、それは、床との拘束と同様に、反りの原因となる。例えば、ベッド上部2Aが高温、ベッド下部2Bが低温となる様な温度分布となる場合には、ベッド上部2Aの方がその熱膨張量は大きいため、ベッド2は、上側に向けて凸形状となる様な反り変形を示すが、本実施の形態では、ベッド上部2Aとベッド下部2Bの膨張量の差を摩擦調整面16で調整し、反り変形を低減することが出来ると言う利点がある。加えて、加工時の反発力による変形も低減することが出来る。
尚、図7ではベッド2をベッド上部2Aとベッド下部2Bの2つに分割しているが、ベッド2を3つ以上に分割構成しても良い。斯かる場合には、2つ以上の摩擦調整面16を設けることとなる。この場合、ベッド2の不均一な温度分布による反り変形の低減には、更なる効果が上げられる。
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
1 ヘッド、2 ベッド、3 ラム、4 コラム、5,5A 支持脚、6 テーブル、7 被加工物、8 電極、9 Z方向駆動機構、10 X方向駆動機構、11 Y方向駆動機構、12 加工槽、13 支持部材、14 固定溝部材、15,16 摩擦調整面、2A 第1ベッド、2B 第2ベッド。
Claims (5)
- 放電電極を備えたヘッド部と、
ワークを載置するテーブル面を備えたベッドと、
前記放電電極を前記テーブル面に対して垂直方向に駆動させるZ方向駆動機構と、
前記Z方向駆動機構を前記ベッドに設置するとともに前記ヘッド部を前記テーブル面の上方で支持する支持部と、
前記ベッドを床面に設置する複数の支持脚と、を備え、
前記複数の支持脚の内の少なくとも二つの各々は、前記床面に固定された固定溝部材の底面上に摺動可能な形で設置されており、且つ、前記支持脚と前記固定溝部材の側面との間に設けられた、静的弾性率が100MPa以上のクリープ材料から成る支持部材によって支持されていることを特徴とする、
放電加工装置。 - 請求項1記載の放電加工装置であって、
前記クリープ材料の12時間後のクリープ弾性率と静的弾性率との比が80%以下であることを特徴とする、
放電加工装置。 - 請求項2記載の放電加工装置であって、
前記クリープ材料の12時間後のクリープ弾性率と静的弾性率との比が10%以下であることを特徴とする、
放電加工装置。 - 放電電極を備えたヘッド部と、
ワークを載置するテーブル面を備えたベッドと、
前記放電電極を前記テーブル面に対して垂直方向に駆動させるZ方向駆動機構と、
前記Z方向駆動機構を前記ベッドに設置するとともに前記ヘッド部を前記テーブル面の上方で支持する支持部と、
前記ベッドを床面に設置する複数の支持脚と、を備える放電加工装置であって、
前記複数の支持脚の内の少なくとも二つの各々は、摩擦調整面を有する前記床面上に設置され、
前記摩擦調整面の静摩擦係数μは、
前記放電加工装置の剛性E、質量m、断面積S、線膨張係数α、予想される温度変化量ΔT及び重力加速度gから定まる値A=(E×α×S×ΔT)/(m×g)よりも小さく、且つ、前記放電加工装置の質量mと加工時の反発力fとから定まる値B=f/(m×g) よりも大きな値からなることを特徴とする、
放電加工装置。 - 放電電極を備えたヘッド部と、
ワークを載置するテーブル面を備えたベッドと、
前記放電電極を前記テーブル面に対して垂直方向に駆動させるZ方向駆動機構と、
前記Z方向駆動機構を前記ベッドに設置するとともに前記ヘッド部を前記テーブル面の上方で支持する支持部と、
前記ベッドを床面に固定するための複数の支持脚とを備える放電加工装置であって、
前記ベッドは、
前記支持部が設置される第1ベッドと、
その底面に前記複数の支持脚が設置された第2ベッドと、
前記第1ベッドと前記第2ベッドとの間に配設された摩擦調整面とを備えており、
前記摩擦調整面の静摩擦係数μは、
前記放電加工装置の剛性E、質量m、断面積S、線膨張係数α、予想される温度変化量ΔT及び重力加速度gから定まる値A=(E×α×S×ΔT)/(m×g)よりも小さく、且つ、前記放電加工装置の質量mと加工時の反発力fとから定まる値B=f/(m×g) よりも大きな値であることを特徴とする、
放電加工装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20120084909A (ko) * | 2011-01-21 | 2012-07-31 | 두산인프라코어 주식회사 | 고강성 복합가공기 |
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JP2015231654A (ja) * | 2014-06-10 | 2015-12-24 | 株式会社ディスコ | 加工装置設置用治具及び加工装置の設置方法 |
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